説明

熱型光検出器、熱型光検出装置、電子機器および熱型光検出器の製造方法

【課題】測定する波長帯域を広く設定できる熱型光検出器を提供する。
【解決手段】シリコン基板10と、シリコン基板10上に形成され凹部30を有するスペーサー部材20と、スペーサー部材20の凹部30に向き合いスペーサー部材20に支持される支持部材40と、支持部材40上に形成され熱を検出する焦電型の赤外線検出素子60と、を含み、凹部30は、底面にスペーサー部材20の厚み方向に対して交差する方向に形成された第1平面31と、底面と支持部材40との間に、スペーサー部材20の厚み方向に対して交差する方向に形成された第2平面32と、を備え、第1平面31および第2平面32に光を反射する反射膜36が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱型光検出器、熱型光検出装置、電子機器および熱型光検出器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサーとして熱型光検出器が知られている。熱型光検出器は、物体から放射された光を熱に変換して温度の変化を熱検出素子により測定する。熱型光検出器には、光吸収にともなう温度上昇を直接検出するサーモパイル、電気分極の変化として検出する焦電型素子、温度上昇を抵抗変化として検出するボロメーター等がある。近年、半導体製造技術(MEMS製造技術等)を利用して、より小型の熱型光検出器を製造する試みがなされている。
【0003】
特許文献1に記載される赤外線検出素子は、空洞部上にメンブレン(支持部材)が形成され、メンブレンには、赤外線吸収層、高熱伝導層、赤外線検知部が設けられている。この空洞部は素子と基板との熱分離のために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−133578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の構造において、メンブレンを透過した赤外線が空洞の底面で反射してメンブレンとの間で光学共振を起こさせ、メンブレンで赤外線を吸収させて効率化を図る構造をとることが可能である。この、光学共振する赤外線の波長は空洞部の深さに依存している。
しかしながら、従来の熱型光検出器では、1種類の空洞部の深さに対応する波長の光学共振を利用できるのみであり、測定する波長帯域を広く設定できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる熱型光検出器は、基板と、前記基板上に形成され凹部を有するスペーサー部材と、前記スペーサー部材の前記凹部に向き合い前記スペーサー部材に支持される支持部材と、前記支持部材上に形成され熱を検出する熱検出素子と、を含み、前記凹部は、底面に前記スペーサー部材の厚み方向に対して交差する方向に形成された第1平面と、前記底面と前記支持部材との間に、前記スペーサー部材の厚み方向に対して交差する方向に形成された第2平面と、を備え、前記第1平面および前記第2平面に光を反射する反射膜が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、スペーサー部材の凹部(空洞部)に第1平面と第2平面とが設けられている。そして、第1平面および第2平面で反射した異なる波長の光を支持部材で吸収させることができる。
このように本適用例の熱型光検出器は、光の波長を広範囲に捉え、測定する波長帯域を広く設定することができる。
ここで、「基板上」、「支持部材上」における「〜上」という表現は、直上であってもよく、あるいは、上部(別の層が介在する場合)であってもよい。他の箇所においても同様に、広義に解釈することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる熱型光検出器において、前記支持部材と前記第1平面の間で第1波長に対する第1光学共振器が形成され、前記支持部材と前記第2平面の間で前記第1波長とは異なる第2波長に対する第2光学共振器が形成されていることが望ましい。
【0010】
この構成によれば、複数の光学共振器を有することから光学共振を異なる波長に設定でき、この光学共振を起こした光を効率的に支持部材で吸収させることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる熱型光検出器において、前記基板の厚み方向から見た平面視で、前記第1平面と前記支持部材とが重なる面積と、前記第2平面と前記支持部材とが重なる面積とが、同じであることが望ましい。
【0012】
この構成によれば、平面視で第1平面と支持部材とが重なる面積と、第2平面と前記支持部材とが重なる面積とが、同じであることから、それぞれの面における光学共振を同じにすることで両者の測定感度のバランスをとることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる熱型光検出器において、前記凹部の前記第1平面と前記第2平面とを繋ぐ第1側壁および、前記第2平面と前記凹部の開口部とを繋ぐ第2側壁は前記支持部材に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されていることが望ましい。
【0014】
この構成によれば、第1側壁および第2側壁が支持部材に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されている。
側壁がテーパー形状であることから、入射する光が遮られる部分が無く、支持部材から透過する光を第1平面および第2平面で充分に受け入れることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる熱型光検出器において、前記第1側壁および前記第2側壁に光を反射する反射膜が形成されていることが望ましい。
【0016】
この構成によれば、第1側壁および第2側壁に反射膜が形成されている。このため、支持部材から透過する光を各側壁で反射させ、支持部材に吸収させて効率化を図ることができる。
【0017】
[適用例6]本適用例にかかる熱型光検出器は、基板と、前記基板上に形成され第1凹部と第2凹部とを有するスペーサー部材と、前記スペーサー部材の前記第1凹部に向き合い前記スペーサー部材に支持される第1支持部材と、前記スペーサー部材の前記第2凹部に向き合い前記スペーサー部材に支持される第2支持部材と、前記第1支持部材上に形成され熱を検出する第1熱検出素子と、前記第2支持部材上に形成され熱を検出する第2熱検出素子と、を含み、前記第1凹部は底面に前記スペーサー部材の厚み方向に対して交差する方向に形成された第1平面を備え、前記第2凹部は前記第1凹部とは異なる深さの底面に前記スペーサー部材の厚み方向に対して交差する方向に形成された第2平面を備え、前記第1平面および前記第2平面に光を反射する反射膜が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、スペーサー部材に第1凹部(空洞部)および第2凹部(空洞部)が設けられ、それぞれの底面は異なる深さに形成されている。つまり、第1平面と第2平面で反射した異なる波長の光を各支持部材で吸収させることができる。
このように本適用例の熱型光検出器は、光の波長を広範囲に捉え、測定する波長帯域を広く設定することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる熱型光検出器において、前記支持部材と前記第1平面の間で第1波長に対する第1光学共振器が形成され、前記支持部材と前記第2平面の間で前記第1波長とは異なる第2波長に対する第2光学共振器が形成されていることが望ましい。
【0020】
この構成によれば、複数の光学共振器を有することから光学共振を異なる波長に設定でき、この光学共振を起こした光を効率的に支持部材で吸収させることができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる熱型光検出器において、前記第1平面と前記第2平面の面積とが同じであることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、第1平面と前記第2平面の面積とが同じであることから、それぞれの面における光学共振を同じにすることで両者の測定感度のバランスをとることができる。
【0023】
[適用例9]上記適用例にかかる熱型光検出器において、前記第1凹部および前記第2凹部の側壁は、前記第1支持部材または前記第2支持部材に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されていることが望ましい。
【0024】
この構成によれば、第1凹部および第2凹部の側壁は支持部材に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されている。
側壁がテーパー形状であることから、入射する光が遮られる部分が無く、支持部材から透過する光を凹部の底面に形成された第1平面および第2平面で充分に受け入れることができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる熱型光検出器において、前記第1凹部および前記第2凹部の前記側壁には光を反射する反射膜が形成されていることが望ましい。
【0026】
この構成によれば、側壁に反射膜が形成されている。このため、支持部材から透過する光を各側壁で反射させ、支持部材に吸収させて効率化を図ることができる。
【0027】
[適用例11]本適用例にかかる熱型光検出装置は、上記の熱型光検出器を複数用いて、2次元配置されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、熱型光検出器が二軸方向に沿って二次元配置されている。
この熱型光検出装置は、各セルの熱型光検出器が測定する波長帯域が広いことから、広い温度範囲の分布画像を提供できる。
【0029】
[適用例12]本適用例にかかる電子機器は、上記の熱型光検出器と、前記熱型光検出器の出力を処理する制御部と、を有することを特徴とする。
【0030】
本適用例に係る電子機器は、上述した熱型光検出器または熱型光検出装置を有し、1セル分または複数セルの熱型光検出器をセンサーとして用いることで、光(温度)分布画像を出力するサーモグラフィー、監視カメラの他、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられる工程監視機器などに利用することができる。
【0031】
[適用例13]本適用例にかかる熱型光検出器の製造方法は、基板上に第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層に第1トレンチを形成する工程と、前記第1トレンチを形成した面に第1反射膜を形成する工程と、前記第1反射膜の上から前記第1トレンチを埋めて第1犠牲層を形成する工程と、前記第1犠牲層の上に第2絶縁層を形成し、前記第2絶縁層に前記第1トレンチよりも開口が大きく、平面視において前記第1トレンチを含む第2トレンチを形成する工程と、前記第2トレンチを形成した面に第2反射膜を形成する工程と、前記第2トレンチにおける底部の一部の第2反射膜を削除する工程と、前記第2トレンチを埋めて第2犠牲層を形成する工程と、前記第2犠牲層上に支持部材を形成する工程と、前記支持部材上に熱検出素子を形成する工程と、前記支持部材の一部を除去する工程と、前記第1犠牲層および前記第2犠牲層を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0032】
この熱型光検出器の製造方法によれば、凹部に底面および底面と開口部の間にもう一つの平面を形成することができる。このように、熱型光検出器において、1つの凹部に2つの平面を形成することができ、それぞれの平面と支持部材の間において支持部材を透過した光の光学共振を利用できる。
【0033】
[適用例14]本適用例にかかる熱型光検出器の製造方法は、基板上に第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層に複数の第1トレンチを形成する工程と、前記第1トレンチを形成した面に第1反射膜を形成する工程と、前記第1反射膜の上から前記第1トレンチを埋めて第1犠牲層を形成する工程と、前記第1犠牲層の上に第2絶縁層を形成し、前記第2絶縁層に前記第1トレンチよりも開口が大きく、平面視において前記第1トレンチと重なる複数の第2トレンチを形成する工程と、前記第2トレンチを形成した面に第2反射膜を形成する工程と、選択した前記第2トレンチにおける底部の第2反射膜を削除する工程と、前記第2トレンチを埋めて第2犠牲層を形成する工程と、前記第2犠牲層上に支持部材を形成する工程と、前記支持部材上に熱検出素子を形成する工程と、前記支持部材の一部を除去する工程と、前記第2犠牲層を除去する工程と、前記第2トレンチにおける、削除した第2反射膜の下方の前記第1犠牲層を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0034】
この熱型光検出器の製造方法によれば、一つの基板に深さの異なる凹部を容易に形成できる。
このように、熱型光検出器の1つの基板に2つの深さの異なる凹部を形成することができ、それぞれの凹部の平面と支持部材の間において支持部材を透過した光の光学共振を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態における赤外線検出器の構成を示す概略平面図。
【図2】第1実施形態における赤外線検出器の構成を示す概略断面図。
【図3】第1実施形態における赤外線検出器の製造工程を示す工程図(その1)。
【図4】第1実施形態における赤外線検出器の製造工程を示す工程図(その2)。
【図5】第1実施形態における赤外線検出器の製造工程を示す工程図(その3)。
【図6】第1実施形態における赤外線検出器の製造工程を示す工程図(その4)。
【図7】第2実施形態における赤外線検出器の構成を示す概略平面図。
【図8】第2実施形態における赤外線検出器の構成を示す概略断面図。
【図9】第2実施形態における赤外線検出器の製造工程を示す工程図(その1)。
【図10】第2実施形態における赤外線検出器の製造工程を示す工程図(その2)。
【図11】第2実施形態における赤外線検出器の製造工程を示す工程図(その3)。
【図12】第2実施形態における赤外線検出器の製造工程を示す工程図(その4)。
【図13】熱型光検出装置の回路構成の一例を示す回路図。
【図14】電子機器としての赤外線カメラの構成を示すブロック図。
【図15】電子機器としての工程監視装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
(第1実施形態)
【0037】
以下の実施形態では熱型光検出器として、焦電型の赤外線検出器を例にとって説明する。
図1は焦電型の赤外線検出器の構成を示す概略平面図である。図2は焦電型の赤外線検出器の構成を示す概略断面図である。なお、図1は、後述する第2電極に接続される配線層より上方の部材を省略した平面図である。
【0038】
図2に示すように、焦電型の赤外線検出器100は、シリコン基板10と、スペーサー部材20と、支持部材(メンブレン)40と、赤外線検出素子60とを有している。
シリコン基板10上には、第1絶縁層21および第2絶縁層22が順次積層されスペーサー部材20を構成している。第1絶縁層21および第2絶縁層22はSiO2などの絶縁材料にて形成されている。
【0039】
このスペーサー部材20には段付の凹部30が形成されている。凹部30は第1絶縁層21に形成された凹部35aと、第2絶縁層22に形成された第1絶縁層21の凹部35aよりも開口の大きい凹部35bとを重ねた形状である。凹部35aは平面視で支持部材40の面積の半分をカバーするように配置されている(図1参照)。
凹部30の底面にはスペーサー部材20の厚み方向に交差する第1平面31が形成されている。また、第2絶縁層22に形成された凹部35bの底面にはスペーサー部材20の厚み方向に交差する第2平面32が形成されている。
なお、第1平面31および第2平面32は、支持部材40の対する面と平行に配置されていることが望ましい。
また、凹部35aは支持部材40までの距離がD1の凹部であり、凹部35bは支持部材40までの距離がD2の凹部である。
このように、凹部30は支持部材40までの距離がD1とD2となる2つの平面を有する形状となっている。
【0040】
また、第1平面31と第2平面32とを繋ぐ第1側壁33、および第2平面と凹部30の開口部とを繋ぐ第2側壁34は、凹部30の開口部に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されている。
そして、凹部30の第1平面31、第2平面32、第1側壁33、第2側壁34には赤外線を反射するTi膜などの反射膜36が形成されている。なお反射膜36としては、AlOX膜またはSiN膜の上にTi膜を形成した積層膜であってもよい。
【0041】
スペーサー部材20の上には凹部30を覆う支持部材40が設けられている。支持部材40はSiN膜またはAlOX膜などで形成されている。
そして、支持部材40の一方の面には赤外線検出素子60が形成され、他方の面は凹部30に向き合って配置されている。
【0042】
赤外線検出素子60は、キャパシター50と赤外線吸収部材70とを含み構成されている。
キャパシター50は第1電極51と、第2電極52と、焦電体53とを有する。焦電体53は第1、第2電極51,52間に配置され、温度に基づいて分極量が変化するキャパシター50を構成する。そして、キャパシター50は第1電極51が支持部材40に搭載されることで支持されている。
第1電極51および第2電極52の電極材料としては例えばPt,Irなどが用いられる。また、焦電体53の焦電材料としては例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PZTN(PZTにNbを添加したもの)などが用いられる。
【0043】
キャパシター50の表面には保護膜54が形成され、製造工程における還元雰囲気から焦電体53を保護している。さらに、保護膜54を覆って絶縁膜55が形成されている。
保護膜54および絶縁膜55には第1電極51に通ずるコンタクトホール56と、第2電極52に通ずるコンタクトホール57とが形成されている。
【0044】
コンタクトホール56には第1プラグ61が埋め込み形成される。絶縁膜55および支持部材40の上には、第1プラグ61に接続される第1電極配線層58が形成されている。
同様に、コンタクトホール57には第2プラグ62が埋め込み形成される。絶縁膜55及び支持部材40上には、第2プラグ62に接続される第2電極配線層59が形成されている。
このように、赤外線検出素子60にはプレーナー型のキャパシター50を備えている。
【0045】
第1、第2電極配線層58,59を覆って、SiO2またはSiNのパッシベーション膜63が設けられている。そして、キャパシター50の上方には、パッシベーション膜63上に赤外線吸収部材70が設けられている。この赤外線吸収部材70はSiO2またはSiNにて形成される。
【0046】
この赤外線吸収部材70を含む赤外線検出器100の外表面を覆って、保護膜71が設けられている。
この保護膜71は、例えばAl23にて形成され、赤外線の透過を阻害しないように10〜50nm、例えば20nmの厚さで成膜して形成される。
【0047】
なお、図1に示すように、支持部材40は赤外線検出素子60を搭載して支持する2本のアーム45を有し、2本のアーム45の自由端部がポスト28に連結されている。2本のアーム45は、赤外線検出素子60を熱分離するために、細幅でかつ長く延びた形状に形成される。
【0048】
赤外線検出器100は、2本のポスト28と接続される以外は非接触であり、赤外線検出器100の下方には凹部30が形成され、平面視で赤外線検出器100の周囲には、凹部30に連通する開口部65が配置される。これにより、赤外線検出器100は、赤外線検出素子60とシリコン基板10とが熱的に分離されている。
【0049】
(赤外線検出器の動作)
次に赤外線検出器100の動作について説明する。
赤外線検出器100の赤外線検出素子60に入射した光(赤外線)の一部は、赤外線吸収部材70で吸収され、赤外線吸収部材70に熱が発生する。また、支持部材40の表面に到達した光は、支持部材40にて吸収され熱が発生する。
さらに、支持部材40を透過した光は凹部30の第1平面31および第2平面32で反射し、支持部材40にて吸収され熱が発生する。
これらの発生した熱はキャパシター50に伝達され、キャパシター50の自発分極量が熱によって変化し、自発分極による電荷を検出することで赤外線を検出している。
なお、凹部30の第1側壁33、第2側壁34に入射した光も反射し、支持部材40に到達した光は支持部材40に吸収される。
【0050】
ここで、凹部30における光の反射では、支持部材40と凹部の底面との間で光学共振を起こさせることが、支持部材40での赤外線の吸収に有効である。
光学共振を起こさせる波長をλ、光学共振が起こる2平面間の距離をD、2平面間の媒質の屈折率をnとすると、D=λ/4n、という関係が成り立つ。屈折率nは真空中と仮定して、n=1とすると、D=λ/4、と書き表せる。
上の式から、光学共振を起こさせる赤外線の波長を例えば、λ1=10μm、λ2=5μmとすると、2平面間の距離がD1=2.5μm、D2=1.25μmとなる。
図2において、D1=2.5μm、とすると、支持部材40と第1平面31との間で赤外線の波長λ1=10μmに対する光共振器が構成される。
同様に、図2において、D2=1.25μm、とすると、支持部材40と第2平面32との間で赤外線の波長λ2=5μmに対する光共振器が構成される。
このように、支持部材40と凹部30との間に2つの光共振器を形成することができる。
なお、赤外線の波長としてλ1=10μmはおよそ20℃の温度に相当し、λ2=5μmはおよそ300℃の温度に相当する。
【0051】
このように、赤外線検出器100は、支持部材40と凹部の第1平面と第2平面の間で光学共振器を有することから光学共振を異なる波長に設定でき、この光学共振を起こした光を効率的に支持部材で吸収させることができる。
また、2個の光共振器を構成することによって、異なる2つの波長において共振ピークが生じることから、ピーク同士が合成されて、赤外線検出器100が検出できる波長帯域が拡大される。つまり、赤外線検出器100が検出可能な光の波長帯域(波長幅)を広げることができる。このように、赤外線検出器100は光の波長を広範囲に捉え、測定する波長帯域を広く設定することができる。
【0052】
また、シリコン基板10の厚み方向から見た平面視で、第1平面31と支持部材40とが重なる面積と、第2平面32と支持部材40とが重なる面積とが、同じであることが望ましい。
この構成によれば、それぞれの面における光学共振を同じにすることで両者の測定感度のバランスをとることができる。
【0053】
(第1実施形態における赤外線検出器の製造方法)
次に、上記赤外線検出器の製造方法について説明する。
図3〜図6は赤外線検出器の製造工程を示す工程図である。
まず、シリコン基板10を用意する(図3(a))。
次に、シリコン基板10の上にSiO2などの第1絶縁層21を形成し、その上からレジスト80を塗布して第1トレンチを形成する部分に開口81を形成する(図3(b))。第1絶縁層21の形成はスパッタリング、CVDなどの手法により成膜する。
続いて、レジスト80の開口81を通してエッチングを行い第1絶縁層21に第1トレンチ82を形成する(図3(c))。エッチングはフッ酸系の溶液を用いて、第1絶縁層21をウェットエッチングする。
そして、レジスト80を除去して、第1絶縁層21の表面に赤外線を反射する反射膜36を形成する(図3(d))。反射膜36としてはTi膜や、AlOX膜またはSiN膜の上にTi膜を形成した積層膜を形成する。この反射膜36は後工程にけるSiO2膜をエッチングする際のバリア膜としても機能する。
【0054】
次に、反射膜36の上からSiO2など第1犠牲層23を成膜する(図4(a))。この成膜では、第1トレンチ82が埋まる厚みまで行なわれる。
そして、第1犠牲層23を化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)する(図4(b))。研磨は第1トレンチ82に埋め込んだ第1犠牲層23と反射膜36が平坦となるように行なう。
続いて、CMP加工した表面に、SiO2などの第2絶縁層22を成膜し、その上からレジスト80を塗布して第2トレンチを形成する部分に開口83を形成する(図4(c))。ここでの第2トレンチを形成する位置は、平面視において第1トレンチ82を含む位置であり、一方向にずれた位置に形成する。
また、第2絶縁層22の材料は第1絶縁層21の材料と同じ材料が好ましい。
そして、レジスト80の開口83を通してエッチングを行い第2絶縁層22に、第1トレンチ82よりも開口の大きい第2トレンチ84を形成する(図4(d))。エッチングは第1絶縁層21のエッチングと同様に行なう。
【0055】
次に、レジスト80を除去して、第2絶縁層22の表面に赤外線を反射する反射膜36を形成する(図5(a))。反射膜36としてはTi膜や、AlOX膜またはSiN膜の上にTi膜を形成した積層膜を形成する。この反射膜36は後工程にけるSiO2膜をエッチングする際のバリア膜としても機能する。
そして、第1犠牲層23の上に形成された反射膜36をパターニングして除去する(図5(b))。このようにして、第1犠牲層23の上に開口85を形成する。
続いて、反射膜36の上からSiO2など第2犠牲層24を成膜する(図5(c))。この成膜では、第2トレンチ84が埋まる厚みまで行なわれる。
そして、第2犠牲層24をCMP加工する(図5(d))。研磨は第2トレンチ84に埋め込んだ第2犠牲層24と反射膜36が平坦となるように行なう。
【0056】
次に、CMP加工した表面に支持部材40を形成し、支持部材40の上に赤外線検出素子60および保護膜71を形成する(図6(a))。
赤外線検出素子60の形成は、支持部材40の上にキャパシター50および配線(図示せず)を形成した後に、キャパシター50の上部に赤外線吸収部材70を形成する。
保護膜71は、Al23膜などにより赤外線吸収部材70を含む赤外線検出器の外表面を覆って設ける。
そして、第1、第2犠牲層23,24をエッチングするために、保護膜71、支持部材40に開口86を形成する。また、図示しないが、同時に支持部材40をエッチングしアームを形成する(図6(b))。
続いて、開口86などを通して第2犠牲層24をエッチングし、さらにエッチングを続けて第1犠牲層23をエッチングして凹部30を形成する。これらの犠牲層のエッチングではウェットエッチング、ドライエッチング、気相エッチングなどの手法を利用することができる。
このようにして、赤外線検出器100の凹部30に第1平面31および第2平面32を容易に形成することができる。
(第2実施形態)
【0057】
次に、赤外線検出器の他の実施形態について説明する。
本実施形態の赤外線検出器では、一つの基板(セル)に深さの異なる複数の凹部を有する点が第1実施形態と異なる。
図7は焦電型の赤外線検出器の構成を示す概略平面図である。図8は焦電型の赤外線検出器の構成を示す概略断面図である。
本実施形態の説明では、第1実施形態と同様な構成については同符号を付し、説明を省略あるいは簡略化する。
【0058】
図8に示すように、焦電型の赤外線検出器200は、第1赤外線検出器200aと第2赤外線検出器200bとを備えている。
第1赤外線検出器200aおよび第2赤外線検出器200bは、シリコン基板10と、スペーサー部材20と、を共通にして、それぞれに支持部材40a,40bと、赤外線検出素子60a、60bとを有している。
【0059】
スペーサー部材20には2つの凹部30a,30bが形成されている。
第1赤外線検出器200aの凹部30aは第2絶縁層22を貫き第1絶縁層21に達し、凹部30aの底部と支持部材40aとの距離がD1に設定されている。
第2赤外線検出器200bの凹部30bは第2絶縁層22を貫いたところで止まり、凹部30bの底部と支持部材40bとの距離がD2に設定されている。
凹部30aの底面にはスペーサー部材20の厚み方向に交差または直交する第1平面31aが形成されている。また、凹部30bの底面にはスペーサー部材20の厚み方向に交差または直交する第2平面32aが形成されている。
このように、赤外線検出器200には2つの凹部30a,30bが形成され、それぞれの凹部は支持部材までの距離がD1とD2となる2つの平面を有する形状となっている。
この第1平面31a、第2平面32aと支持部材までの距離D1,D2は特定波長の光において光学共振が起こる距離に設定され、例えば光学共振を起こさせる赤外線の波長を、λ1=10μm、λ2=5μmとして、D1=2.5μm、D2=1.25μm、に設定されている。
【0060】
また、凹部30aの第1平面31aと開口部とを繋ぐ側壁37は凹部30aの開口部に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されている。
同様に、凹部30bの第2平面32aと開口部とを繋ぐ側壁38は凹部30bの開口部に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されている。
【0061】
凹部30aの上方には支持部材40aが設けられ、凹部30bの上方には支持部材40bが設けられている。
そして、支持部材40aの一方の面には赤外線検出素子60aが形成され、他方の面は凹部30aに向き合って配置されている。同様に、支持部材40bの一方の面には赤外線検出素子60bが形成され、他方の面は凹部30bに向き合って配置されている。
【0062】
赤外線検出素子60a、60bは、それぞれキャパシター50と赤外線吸収部材70とを有し、これらの構成は第1実施形態と同様な構成のためここでは説明を省略する。
そして、赤外線吸収部材70を含む赤外線検出器の外表面を覆って保護膜71が設けられている。
【0063】
なお、図7に示すように、支持部材40aは赤外線検出素子60aを搭載して支持する2本のアーム45を有し、2本のアーム45の自由端部がポスト28に連結されている。2本のアーム45は、赤外線検出素子60aを熱分離するために、細幅でかつ長く延びた形状に形成される。
同様に、支持部材40bは赤外線検出素子60bを搭載して支持する2本のアーム45を有し、2本のアーム45の自由端部がポスト28に連結されている。2本のアーム45は、赤外線検出素子60bを熱分離するために、細幅でかつ長く延びた形状に形成される。
【0064】
赤外線検出器200において、第1赤外線検出器200aおよび第2赤外線検出器200bは、2本のポスト28と接続される以外は非接触である。そして、第1赤外線検出器200aおよび第2赤外線検出器200bの下方には凹部30a,30bが形成され、平面視で赤外線検出器200の周囲には、凹部30a,30bに連通する開口部65が配置される。これにより、赤外線検出器200は、赤外線検出素子60a,60bとシリコン基板10とが熱的に分離されている。
【0065】
(赤外線検出器の動作)
次に赤外線検出器の動作について説明する。
第1赤外線検出器200aの赤外線検出素子60aに入射した光(赤外線)の一部は、赤外線吸収部材70で吸収され、赤外線吸収部材70に熱が発生する。また、支持部材40aの表面に到達した光は、支持部材40aにて吸収され熱が発生する。
さらに、支持部材40aを透過した光は光共振器を構成する凹部30aの第1平面31aで反射し、支持部材40aにて吸収され熱が発生する。
これらの発生した熱はキャパシター50に伝達され、キャパシター50の自発分極量が熱によって変化し、自発分極による電荷を検出することで赤外線を検出している。
なお、凹部30aの側壁37に入射した光も反射して支持部材40aに吸収される。
【0066】
また、第2赤外線検出器200bの赤外線検出素子60bに入射した光(赤外線)の一部は、赤外線吸収部材70で吸収され、赤外線吸収部材70に熱が発生する。また、支持部材40bの表面に到達した光は、支持部材40bにて吸収され熱が発生する。
さらに、支持部材40bを透過した光は光共振器を構成する凹部30bの第2平面32aで反射し、支持部材40bにて吸収され熱が発生する。
これらの発生した熱はキャパシター50に伝達され、キャパシター50の自発分極量が熱によって変化し、自発分極による電荷を検出することで赤外線を検出している。
なお、凹部30bの側壁38に入射した光も反射して支持部材40bに吸収される。
このように、支持部材と凹部との間に異なる光の波長に対応する2つの光共振器が形成されている。
赤外線の波長としてλ1=10μmはおよそ20℃の温度に相当し、λ2=5μmはおよそ300℃の温度に相当する。
【0067】
以上のように、赤外線検出器200は、第1赤外線検出器200aと第2赤外線検出器200bとを備えている。そして、2つの深さの異なる凹部30a,30bを有し、支持部材40aと第1平面31aと、支持部材40bと第2平面32aとの間で光学共振器を有することから光学共振を異なる波長に設定でき、この光学共振を起こした光を効率的に支持部材で吸収させることができる。
また、2個の光共振器を構成することによって、異なる2つの波長において共振ピークが生じることから、ピーク同士を合成することで、熱型光検出器が検出感度を有する波長帯域が拡大される。つまり、赤外線検出器200が検出可能な光の波長帯域(波長幅)を広げることができる。このように、赤外線検出器200は光の波長を広範囲に捉え、測定する波長帯域を広く設定することができる。
【0068】
また、光共振器を構成する第1平面31aと第2平面32aの面積が同じであることが望ましい。第1平面31aと第2平面32aの面積が同じであれば、それぞれの面における光学共振を同じにすることで両者の測定感度のバランスをとることができる。
【0069】
(第2実施形態における赤外線検出器の製造方法)
本実施形態における赤外線検出器の製造は第1実施形態における赤外線検出器と同様の工程にて製造が可能であり、以下に簡単にその製造方法を説明する。
図9〜図12は赤外線検出器の製造工程を示す工程図である。
まず、シリコン基板10を用意する(図9(a))。
次に、シリコン基板10の上にSiO2などの第1絶縁層21を形成し、その上からレジスト90を塗布して複数の第1トレンチを形成する部分に開口91を形成する(図9(b))。
続いて、レジスト90の開口91を通してエッチングを行い第1絶縁層21に第1トレンチ92a,92bを形成する(図9(c))。
そして、レジスト90を除去して、第1絶縁層21の表面に赤外線を反射する反射膜36を形成する(図9(d))。
【0070】
次に、反射膜36の上からSiO2など第1犠牲層23を成膜する(図10(a))。
そして、第1犠牲層23を化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)する(図10(b))。
続いて、CMPした表面に、SiO2などの第2絶縁層22を成膜し、その上からレジスト90を塗布して複数の第2トレンチを形成する部分に開口93を形成する(図10(c))。
そして、レジスト90の開口93を通してエッチングを行い第2絶縁層22に、第2トレンチ94a,94bを形成する(図10(d))。第2トレンチ94a,94bは、第1トレンチ92a,92bよりも開口が大きく、平面視において第1トレンチ92a,92bと重なる位置に形成する。
【0071】
次に、レジスト90を除去して、第2絶縁層22の表面に赤外線を反射する反射膜36を形成する(図11(a))。
そして、第2トレンチ94aの底面に形成された反射膜36をパターニングして除去する(図11(b))。このようにして、第1犠牲層23の上に開口95を形成する。
続いて、反射膜36の上からSiO2など第2犠牲層24を成膜する(図11(c))。
そして、第2犠牲層24をCMP加工する(図11(d))。
【0072】
次に、CMP加工した表面に支持部材40a,40bを形成し、支持部材40a,40bの上に赤外線検出素子60a、60bおよび保護膜71を形成する(図12(a))。
赤外線検出素子60a、60bの形成は、支持部材40a,40bの上にキャパシター50および配線(図示せず)を形成した後に、キャパシター50の上部に赤外線吸収部材70を形成する。
保護膜71は、Al23膜などにより赤外線吸収部材70を含む赤外線検出器の外表面を覆って設ける。
そして、第1、第2犠牲層23,24をエッチングするための開口96を形成する。また、図示しないが、同時に支持部材40a,40bをエッチングしアームを形成する(図12(b))。
続いて、開口96などを通して第2トレンチ94bの第2犠牲層24をエッチングして凹部30bを形成する。また、同時に第2トレンチ94aの第2犠牲層24をエッチングする。そして、さらにエッチングを続けて第1トレンチ92aの第1犠牲層23をエッチングして凹部30aを形成する(図12(c))。
このようにして、赤外線検出器200に第1赤外線検出器200aと第2赤外線検出器200bとを形成する。
以上のように、赤外線検出器200に深さの異なる凹部30a,30bを設けることで、それぞれの底面に第1平面31aおよび第2平面32aを容易に形成することができる。
【0073】
なお、第1実施形態および第2実施形態の赤外線検出器では熱検出素子として焦電型キャパシターを例にとって説明したが、熱型光検出器として焦電型キャパシターに限らず、温度上昇によって抵抗が変化する物質を利用するボロメーターであっても実施が可能である。
また、第1実施形態および第2実施形態の赤外線検出器では、2種類の深さにおいて光共振器を形成する平面を形成したが、3種類以上の深さに平面を形成してもよい。
(第3実施形態)
【0074】
図13は、熱型光検出装置(熱型光検出アレイセンサー)の回路構成の一例を示す回路図である。熱型光検出装置300には、複数の熱型光検出器300a〜300dが2次元的に配置されている。複数の熱型光検出器300a〜300dの中から一つの光検出セルを選択するために、走査線W1a,W1bと、データ線D1a,D1bが設けられている。
【0075】
第1の光検出セルとしての熱型光検出器300aは、熱型光検出素子としての圧電コンデンサーZCと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。圧電コンデンサーZCの両極の電位関係は、RDr1に印加する電位を切り換えることによって反転することができる。なお、他の光検出セルも同様の構成である。
【0076】
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路310によって電圧に変換され、アンプ320によって増幅され、A/D変換器330によってデジタルデータに変換される。
【0077】
本実施形態では、複数の熱型光検出器が2次元的に配置された熱型光検出装置(熱型光検出アレイセンサー)が実現される。
(第4実施形態)
【0078】
次に熱型光検出器または熱型光検出装置を含む電子機器について説明する。
図14に電子機器の一例として赤外線カメラの構成を示す。
赤外線カメラ400は、光学系410、センサーデバイス(熱型光検出装置)420、画像処理部430、処理部440、記憶部450、操作部460、表示部470を含む。
【0079】
光学系410は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス420への物体像の結像などを行う。また必要に応じてフォーカス調整なども行う。
【0080】
センサーデバイス420は、上述した本実施形態の熱型光検出器を二次元配列させて構成され、複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス420は、検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
【0081】
画像処理部430は、センサーデバイス420からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。
【0082】
処理部440は、赤外線カメラ400の全体の制御を行い、赤外線カメラ400内の各ブロックの制御を行う。この処理部440は、例えばCPU等により実現される。記憶部450は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部440や画像処理部430のワーク領域として機能する。操作部460は、ユーザーが赤外線カメラ400を操作するためのインターフェイスとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部470は、例えばセンサーデバイス420により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
【0083】
このように、1セル分の熱型光検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の熱型光検出器を二軸方向例えば直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス420を構成することができ、熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス420を用いて、サーモグラフィー、監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
【0084】
もちろん、1セル分または複数セルの熱型光検出器をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場など工程監視機器などの各種の電子機器を構成することもできる。
(第5実施形態)
【0085】
図15に本実施形態の熱型光検出器または熱型光検出装置を含む電子機器の一例として工程監視装置の構成を示す。工程監視装置は工場などの装置の温度(発熱)を監視しながら、装置に異常がある場合には人間が近づくのに対して警告などを行なう装置である。
【0086】
工程監視装置500は図15に示すように、赤外線カメラ510と、温度分析部520と、人検出部530と、制御部540と、情報通知装置550とを備えて構成される。
赤外線カメラ510は、図示しないレンズなどの光学系とセンサーデバイスを含んで構成されている。
【0087】
赤外線カメラ510は工程の対象領域を撮影し、撮影された領域の画像情報を温度分析部520に送信する。温度分析部520では、図示しないが赤外線カメラ510からの熱分布画像を読み取る画像読取処理ユニットと、画像読取処理ユニットからのデータと画像分析設定テーブルに基づいて温度分析テーブルを作成する温度分析処理ユニットとを含み、温度分析テーブルに基づいて温度データを制御部540へ送信する。
また、人検出部530では、赤外線カメラ510から情報から対象領域に人間570がいるかどうかを検出する。この検出は人間570の体温と動きから検出を行う。この人検出部530での情報は制御部540へ送られる。
そして制御部540では、温度分析部520から送られたデータに基づき、工程内の装置560に異常が無いかを判断する。装置560が高温になるなどの異常がある場合には、情報通知装置550にデータを送信し、情報通知装置550から異常の通知を行なう。
また、装置560に異常がある場合に、人間570が近づいてきた検出をしたときには、制御部540では、情報通知装置550にデータを送信し、警報などのアラームなどで人間570に通知を行なう。
【0088】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0089】
10…シリコン基板、20…スペーサー部材、21…第1絶縁層、22…第2絶縁層、23…第1犠牲層、24…第2犠牲層、28…ポスト、30…凹部、30a…第1凹部、30b…第2凹部、31…第1平面、31a…第1平面、32…第2平面、32a…第2平面、33…第1側壁、34…第2側壁、35a,35b…凹部、36…反射膜、37…側壁、38…側壁、40…支持部材、40a…第1支持部材、40b…第2支持部材、45…アーム、50…キャパシター、51…第1電極、52…第2電極、53…焦電体、54…保護膜、55…絶縁膜、56,57…コンタクトホール、58…第1電極配線層、59…第2電極配線層、60…赤外線検出素子、60a,60b…赤外線検出素子、61…第1プラグ、62…第2プラグ、63…パッシベーション膜、65…開口部、70…赤外線吸収部材、71…保護膜、82…第1トレンチ、84…第2トレンチ、92a,92b…第1トレンチ、94a,94b…第2トレンチ、100…熱型光検出器としての赤外線検出器、200…熱型光検出器としての赤外線検出器、200a…第1赤外線検出器、200b…第2赤外線検出器、300…熱型光検出装置(熱型光検出アレイセンサー)、400…電子機器としての赤外線カメラ、420…センサーデバイス、500…電子機器としての工程監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され凹部を有するスペーサー部材と、
前記スペーサー部材の前記凹部に向き合い前記スペーサー部材に支持される支持部材と、
前記支持部材上に形成され熱を検出する熱検出素子と、を含み、
前記凹部は、底面に前記スペーサー部材の厚み方向に対して交差する方向に形成された第1平面と、前記底面と前記支持部材との間に、前記スペーサー部材の厚み方向に対して交差する方向に形成された第2平面と、を備え、
前記第1平面および前記第2平面に光を反射する反射膜が形成されている
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱型光検出器において、
前記支持部材と前記第1平面の間で第1波長に対する第1光学共振器が形成され、
前記支持部材と前記第2平面の間で前記第1波長とは異なる第2波長に対する第2光学共振器が形成されている
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱型光検出器において、
前記基板の厚み方向から見た平面視で、前記第1平面と前記支持部材とが重なる面積と、前記第2平面と前記支持部材とが重なる面積とが、同じである
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱型光検出器において、
前記凹部の前記第1平面と前記第2平面とを繋ぐ第1側壁および、前記第2平面と前記凹部の開口部とを繋ぐ第2側壁は前記支持部材に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されている
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱型光検出器において、
前記第1側壁および前記第2側壁に光を反射する反射膜が形成されている
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に形成され第1凹部と第2凹部とを有するスペーサー部材と、
前記スペーサー部材の前記第1凹部に向き合い前記スペーサー部材に支持される第1支持部材と、
前記スペーサー部材の前記第2凹部に向き合い前記スペーサー部材に支持される第2支持部材と、
前記第1支持部材上に形成され熱を検出する第1熱検出素子と、
前記第2支持部材上に形成され熱を検出する第2熱検出素子と、を含み、
前記第1凹部は底面に前記スペーサー部材の厚み方向に対して交差する方向に形成された第1平面を備え、
前記第2凹部は前記第1凹部とは異なる深さの底面に前記スペーサー部材の厚み方向に対して交差する方向に形成された第2平面を備え、
前記第1平面および前記第2平面に光を反射する反射膜が形成されている
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項7】
請求項6に記載の熱型光検出器において、
前記支持部材と前記第1平面の間で第1波長に対する第1光学共振器が形成され、
前記支持部材と前記第2平面の間で前記第1波長とは異なる第2波長に対する第2光学共振器が形成されている
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項8】
請求項6または7に記載の熱型光検出器において、
前記第1平面と前記第2平面の面積とが同じである
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の熱型光検出器において、
前記第1凹部および前記第2凹部の側壁は、前記第1支持部材または前記第2支持部材に向かうに従って開口が大きくなるテーパー状に形成されている
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項10】
請求項9に記載の熱型光検出器において、
前記第1凹部および前記第2凹部の前記側壁には光を反射する反射膜が形成されている
ことを特徴とする熱型光検出器。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱型光検出器を複数用いて、2次元配置されていることを特徴とする熱型光検出装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱型光検出器と、前記熱型光検出器の出力を処理する制御部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項13】
基板上に第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層に第1トレンチを形成する工程と、
前記第1トレンチを形成した面に第1反射膜を形成する工程と、
前記第1反射膜の上から前記第1トレンチを埋めて第1犠牲層を形成する工程と、
前記第1犠牲層の上に第2絶縁層を形成し、前記第2絶縁層に前記第1トレンチよりも開口が大きく、平面視において前記第1トレンチを含む第2トレンチを形成する工程と、
前記第2トレンチを形成した面に第2反射膜を形成する工程と、
前記第2トレンチにおける底部の一部の第2反射膜を削除する工程と、
前記第2トレンチを埋めて第2犠牲層を形成する工程と、
前記第2犠牲層上に支持部材を形成する工程と、
前記支持部材上に熱検出素子を形成する工程と、
前記支持部材の一部を除去する工程と、
前記第1犠牲層および前記第2犠牲層を除去する工程と、
を含むことを特徴とする熱型光検出器の製造方法。
【請求項14】
基板上に第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層に複数の第1トレンチを形成する工程と、
前記第1トレンチを形成した面に第1反射膜を形成する工程と、
前記第1反射膜の上から前記第1トレンチを埋めて第1犠牲層を形成する工程と、
前記第1犠牲層の上に第2絶縁層を形成し、前記第2絶縁層に前記第1トレンチよりも開口が大きく、平面視において前記第1トレンチと重なる複数の第2トレンチを形成する工程と、
前記第2トレンチを形成した面に第2反射膜を形成する工程と、
選択した前記第2トレンチにおける底部の第2反射膜を削除する工程と、
前記第2トレンチを埋めて第2犠牲層を形成する工程と、
前記第2犠牲層上に支持部材を形成する工程と、
前記支持部材上に熱検出素子を形成する工程と、
前記支持部材の一部を除去する工程と、
前記第2犠牲層を除去する工程と、
前記第2トレンチにおける、削除した第2反射膜の下方の前記第1犠牲層を除去する工程と、
を含むことを特徴とする熱型光検出器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−44590(P2013−44590A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181287(P2011−181287)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】