説明

熱硬化型粘接着剤組成物、粘接着シート、及び粘接着シートの製造方法

【課題】一液性エポキシ樹脂で、保存安定性が良好であり、かつ比較的低温で硬化性が良好で接着強度にも優れている熱硬化型粘接着剤組成物を提供する。
【解決手段】1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として特定の固体状トリアジン誘導体(T)、及びイオン性液体(C)を含むことを特徴とする熱硬化型粘接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
硬化性が良好で保存安定性を有する、一液型エポキシ樹脂の熱硬化型粘接着剤組成物、該組成物から得られる粘接着シート、及び該粘接着シートの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その硬化物が機械的特性、電気的特性、熱的特性、耐薬品性、接着性等の点で優れた性能を有することから、塗料、電気電子用絶縁材料、接着剤等の幅広い用途に利用されている。現在一般に使用されているエポキシ樹脂組成物は、使用時にエポキシ樹脂と硬化剤との二液を混合する、いわゆる二液性のものである。二液性エポキシ樹脂組成物は室温で硬化しうる半面、エポキシ樹脂と硬化剤を別々に保管し、必要に応じて両者を計量、混合した後、使用する必要があるため、保管や扱いが煩雑である。その上、可使時間が限られているため、予め大量に混合しておくことができず、配合頻度が多くなり能率の低下を免れない。
【0003】
このような二液性エポキシ樹脂配合品の問題を解決する目的で、これまでいくつかの一液性エポキシ樹脂組成物が提案されてきている。例えば、ジシアンジアミド、BF−アミン錯体、アミン塩、変性イミダゾール化合物等の潜在性硬化剤をエポキシ樹脂に配合したものが知られている。
しかし、これらの潜在性硬化剤については、貯蔵安定性に優れているものは硬化性が低く、硬化に高温又は長時間必要であり、一方、硬化性が高いものは貯蔵安定性が低く、低温での保存が必要である。
近年、特に電子機器分野において、回路の高密度化や接続信頼性の向上に対応するため、モバイル機器の軽量化として耐熱性の低い材料を使用するため、あるいは生産性を大幅に改善するために、接続材料の一つとして用いられる一液性エポキシ樹脂組成物に対して、貯蔵安定性を損なわずに、硬化性の一層の向上が強く求められている。
【0004】
1分子中に2個以上のチオール基を有する化合物は、エポキシ樹脂や、ウレタン樹脂等と混合することにより容易に反応し硬化物となることから、シーリング材、塗料、接着剤等に広く用いられている。
例えば、非特許文献1には、低温硬化剤として種々のポリチオール系硬化剤が記載されている。しかしながら、従来のポリチオール系エポキシ樹脂硬化剤は、低温硬化性が高いものの、常温でエポキシ化合物および硬化助剤と混合してエポキシ樹脂組成物とした場合、その可使時間が3〜5分と短く、組成物の調製中に硬化が始まるという欠点を有している。
特許文献1には潜在性硬化促進剤を使用することで、可使時間が7日間であるエポキシ樹脂組成物が示されているが常温以外での保存安定性については記載されておらず、保存(使用)条件によっては、十分な保存安定性が得られない。また、チオール基を有する化合物として、金属と安定な化合物を形成するトリアジンチオール誘導体が知られている。難接着性の金属基材に対する接着性の改善や接着剤中の銅イオンのトラップ剤としての該トリアジンチオール誘導体の使用が提案されている(特許文献2)。しかし、トリアジンチオール誘導体は汎用の有機溶媒には難溶な固体状物質であり、エポキシ樹脂等の硬化剤として使用した場合、保存安定性は良好なものの高温での硬化が必要となる問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−284860号公報
【特許文献2】特開平5−65466号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】総説エポキシ樹脂、第1巻 基礎編I エポキシ樹脂技術協会発行、発行日2003年11月19日、P204
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決して、一液性エポキシ樹脂で、保存安定性が良好であり、かつ比較的低温で硬化性が良好で接着強度にも優れている熱硬化型粘接着剤組成物、該組成物より得られる粘接着シート、及び該粘接着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に、硬化剤として特定の固体状トリアジン誘導体、及びイオン性液体を含む熱硬化型粘接着剤組成物を形成することにより、上記課題を解決が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1)ないし(5)に記載する発明を要旨とする。
(1)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として下記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、及びイオン性液体(C)を含むことを特徴とする熱硬化型粘接着剤組成物(以下、第1の態様ということがある)。
【化1】

但し、式(1)中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基を示す。
【化2】

但し、式(2)中、R、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基を示し、R、Rは、同一であっても、異なっていてもよい。
(2)前記熱硬化型粘接着剤組成物がエポキシ樹脂(A)の1エポキシ当量に対して、硬化剤(B)として固体状トリアジン誘導体(T)がその活性水素当量が0.7〜1.2当量となるように配合され、かつ該トリアジン誘導体(T)100質量部に対してイオン性液体(C)が1〜10質量部配合されていることを特徴とする前記(1)に記載の熱硬化型粘接着剤組成物。
(3)前記熱硬化型粘接着剤組成物にアクリル樹脂(D)を配合してなる前記(1)又は(2)に記載の熱硬化型粘接着剤組成物。
【0010】
(4)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として下記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、及びイオン性液体(C)を含む熱硬化型粘接着剤組成物からなる粘接着剤層と、該層の片面又は両面に少なくとも剥離可能な保護フィルム層(P)を有することを特徴とする粘接着シート(以下、第2の態様ということがある)。
【化3】

但し、式(1)中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基を示す。
【化4】

但し、式(2)中、R、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基を示し、R、Rは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0011】
(5)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として下記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、イオン性液体(C)、及び溶剤(E)を含む熱硬化型粘接着剤組成物を剥離可能な保護フィルム層(P)上に塗布後、該溶剤を蒸発除去することを特徴とする粘接着シートの製造方法(以下、第3の態様ということがある)。
【化5】

但し、式(1)中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基を示す。
【化6】

但し、式(2)中、R、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基を示し、R、Rは、同一であっても、異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の態様の、一液性エポキシ樹脂である、熱硬化型粘接着剤組成物(以下、熱硬化型粘接着剤組成物(S)ということがある)は、保存安定性が良好であり、かつ高温にまで加熱しなくとも硬化性が良好で接着強度にも優れている。本発明の第2の態様である粘接着シート(以下、粘接着シート(L)ということがある)は、本発明の第3の態様である粘接着シート(L)の製造方法を採用して製造することが可能であり、第1の態様の熱硬化型粘接着剤組成物(S)と同様に、保存安定性は良好であり、かつ比較的低温でも硬化性が良好で接着強度にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の(1)熱硬化型粘接着剤組成物(S)(第1の態様)、(2)粘接着シート(L)(第2の態様)、及び(3)粘接着シート(L)の製造方法(第3の態様)について説明する。
(1)熱硬化型粘接着剤組成物(S)(第1の態様)
本発明の第1の態様である「熱硬化型粘接着剤組成物(S)」は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として下記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、及びイオン性液体(C)を含むことを特徴とする。
【化7】

但し、式(1)中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基を示す。
【化8】

但し、式(2)中、R、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基を示し、R、Rは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0014】
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)によれば、被着対象の材質を問わず適用することができる。また、シート適正にも優れている。更に、硬化前には適度な粘弾性を有するので、弱い圧力で圧着させることができ、且つ、硬化の際には高温下で長時間反応させることなく高い凝集力を示すので、特に、真空成形による一体成形法に好適に使用することができる。そして、熱硬化型粘接着剤組成物(S)からなる粘接着剤層は、被着体に対して良好な接着性と密着性とを示し、また、耐久性に優れる。以下、本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)に含まれる各成分について、具体的に説明する。
【0015】
(1−1)エポキシ樹脂(A)
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)に配合するエポキシ樹脂(A)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、例えば、ビスフェノール型、エーテルエステル型、ノボラックエポキシ型、エステル型、脂肪族型、その他公知の変性エポキシ樹脂を用いることができる。本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)では、保存安定性と硬化性の双方を満足するためには1分子中に2個エポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましいが、1分子中に1個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂もエポキシ樹脂(A)中に10モル%を超えない量配合することが可能である。分子中のエポキシ基濃度が高いほど(エポキシ当量が低いほど)、硬化剤との反応確率が高く、一般的に反応速度が速くなり、またエポキシ基濃度が高いほどガラス転移温度は高くなる。貯蔵安定性と反応性が高く短時間での硬化性を考慮すると、エポキシ樹脂(A)中に、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が50モル%以上含有されることが好ましく、70モル%以上含有されることがより好ましく、80モル%以上含有されることが更に好ましい。
【0016】
また、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、100〜800g/eq.の範囲内であることが好ましい。上記エポキシ当量は、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。また、エポキシ樹脂(A)の質量平均分子量は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは300〜2000の範囲内である。そして、形成される粘接着剤層の接着力、耐久性等を向上させるためには、上記範囲内において高分子量のものを用いることがより好ましい。エポキシ樹脂(A)は固体状、液状のいずれのものでも使用することができる。
【0017】
エポキシ樹脂(A)には、上記以外の他のエポキシ樹脂(以下、エポキシ樹脂(R)ということがある)として、末端にエポキシ基を有する比較的高分子量の樹脂でエポキシ樹脂と反応して、熱硬化性樹脂として使用可能なフェノキシ樹脂等を配合することができる。フェノキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM骨格(4,4’−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP(4,4’−(1,4)−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ(4,4’−シクロヘキシィジエンビスフェノール骨格)骨格を有するフェノキシ樹脂等ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノキシ樹脂、ノルボルネン骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するフェノキシ樹脂等を挙げることができる。前記フェノキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量が5000〜100000であることが好ましい。さらに好ましくは10000〜70000である。重量平均分子量が前記下限値以上であれば、製膜性を向上させる効果を十分に得ることができる。一方、前記上限値以下であれば、溶解性を維持することができて好適である。
エポキシ樹脂(R)は、熱硬化型粘接着剤組成物(S)中でエポキシ樹脂(A)100質量部に対し、30質量部以下の割合で配合することができる。
【0018】
(1−2)硬化剤(B)
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)に配合する硬化剤(B)は上記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)である。尚、該固体状とは、エポキシ樹脂(A)を硬化させる際の加熱温度条件を除く常温等において固体状であることを意味する。
チオール基を有する化合物として、金属と安定な化合物を形成する固体状トリアジン誘導体は、難接着性の金属基材に対する接着性の改善や接着剤中の銅イオンのトラップ剤として使用できる可能性があったが、固体状トリアジン誘導体は汎用の有機溶媒には難溶な固体状物質であり、エポキシ樹脂等の硬化剤として使用した場合、保存安定性は良好なものの高温での硬化が必要になるという問題点があった。本発明において、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)である固体状トリアジン誘導体(T)に更に、イオン性液体(C)を配合した熱硬化型粘接着剤組成物(S)が高温に加熱しなくとも硬化性に優れている理由は定かではないが熱硬化型粘接着剤組成物(S)を硬化させるために加熱すると、イオン性液体(C)の固体状トリアジン誘導体(T)に対する相溶性が発現して、固体状トリアジン誘導体(T)が液状を形成するようになり、高温に加熱しなくとも硬化剤(B)としての作用を発揮するようになると推定される。
【0019】
一般式(1)、及び(2)の固体状トリアジン誘導体(T)には、2個のチオール基が存在するので、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)と反応、硬化して高分子のエポキシ樹脂が容易に形成される。一般式(1)の固体状トリアジン誘導体(T)中のRは水素原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基であるので、物性が相互に類似しており、イオン性液体(C)との相溶性、及び、エポキシ樹脂(A)との反応性を有することになる。
上記炭素原子数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基類が挙げられる。
また、一般式(2)の固体状トリアジン誘導体(T)の中のR、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基を示し、R、Rは、同一であっても、異なっていてもよい。
該R、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基であるので、物性が相互に類似しており、イオン性液体(C)との相溶性、及び、エポキシ樹脂(A)との反応性を有することになる。R、Rの炭素原子数1〜5のアルキル基の具体例は、Rのアルキル基における記載内容と同様である。
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)中における硬化剤(B)として固体状トリアジン誘導体(T)の配合量は、エポキシ樹脂(A)の1エポキシ当量に対して、その活性水素当量が0.7〜1.2当量となるように配合されることが好ましい。固体状トリアジン誘導体(T)の配合量が前記0.7当量以上で比較的低温でも硬化性が良好で硬化後の接着強度にも優れるという効果が顕著に発揮される。一方、固体状トリアジン誘導体(T)の配合量が前記1.2当量を超えると初期粘着性及び接着性の低下やコスト高という不都合を生ずるおそれがある。
【0020】
(1−3)イオン性液体(C)
「塩」は、通常、食塩のように常温下では固定であるが、塩を構成するイオンを比較的サイズの大きな(バルキーな)有機イオンに置換すると融点が低下して、常温付近でも液体状態で存在するものがあり、このような塩はイオン性液体(又はイオン液体)(ionic liquid)と呼ばれる。イオン性液体は、一般に、−30℃以上〜+300℃以下の温度範囲でも液体状を維持し、蒸気圧は極めて低い。また、イオン性液体は、一般に不揮発性であり、粘度が低い。
本発明で使用するイオン性液体(C)の陽イオンとしては、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類等のアンモニウム系、ホスホニウム系イオン等が挙げられる。また、陰イオンの例としては、トリフルオロスルホン酸(−CFSO)、トリフラート(−SOCF)などのハロゲン系、ヘキサフルオロホスフェート(−PF)などのリン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系等が挙げられる。
【0021】
本発明のイオン性液体(C)の陽イオンとしては、上記例示の中でもイミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類等のアンモニウム系が好ましく、陰イオンとしては、トリフルオロスルホン酸(−CFSO)、トリフラート(−SOCF)などのハロゲン系、ヘキサフルオロホスフェート(−PF)などのリン系が好ましい。
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)中におけるイオン性液体(C)の配合量は、固体状トリアジン誘導体(T)100質量部に対して1〜10質量部配合されていることが好ましい。
イオン性液体(C)の配合量が前記1質量部以上で比較的低温でも硬化性が良好で硬化後の接着強度にも優れるという効果が顕著に発揮される。一方イオン性液体(C)の配合量が前記10質量部を超えると可塑化作用により硬化時に液垂れが発生することやコスト高という不都合を生ずるおそれがある。
【0022】
(1−4)硬化遅延剤
硬化遅延剤は熱硬化型粘接着剤組成物(S)がゲル化までの可使時間(ポットライフ)を長くするために必要に応じて使用することができる。硬化遅延剤を含有させることにより、得られる熱硬化型粘接着剤組成物(S)は可使時間が長くなり、塗布性が向上する。上記硬化遅延剤は特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、クラウンエーテル化合物等のポリエーテル化合系物、カルボン酸ホウ酸、サリチル酸、シュウ酸、テレフタル酸、リン酸、乳酸、フェニルボロン酸、トルエンスルホン酸などを使用することができ、使用量は硬化剤(B)である固体状トリアジン誘導体(T)のモル当量を基準に0.1〜10モル当量が好ましく、0.5〜5モル当量がより好ましい。
【0023】
(1−5)溶剤(E)
溶剤(E)としては、特に限定されるものではないが、例えば、希釈溶剤としてトルエン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等、これらの混合溶液等を好適に使用することができる。また、溶剤(E)の使用量も特に限定されるものではなく、塗布方法に合せて適宜設定すればよい。ただし、残留溶媒量の観点から熱硬化型粘接着剤組成物(S)中に10〜70質量%になるように配合することが好ましい。
【0024】
(1−6)アクリル樹脂(D)
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)には、熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂(D)を含有させることができる。本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)にアクリル樹脂(D)を含有させることにより、硬化前の凝集力付与によるシート形成能の向上と微粘着性(タック性)を向上することができるので各種被着体への仮固定が容易となる。
上記硬化を得るためには、アクリル樹脂(D)は液状のものが好ましく、重量平均分子量は10万から100万の範囲のものが好ましく、またシート化物の柔軟性を向上させるためにはガラス転移温度は20℃以下であることが好ましい。
【0025】
前記アクリル樹脂(D)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂(D)の製造に使用されるモノマーとしてメチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)における上記アクリル樹脂(D)の含有量(固形分換算)は、10〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。なお、アクリル樹脂(D)の含有量が10質量%以上で硬化前の粘接着剤層の凝集力が向上して、シート化が良好になる。また、50質量%を超えると、十分な 接着強度が得られない場合がある。
【0026】
(1−7)その他の成分
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)には、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、各種添加剤を配合することができる。例えば、硬化速度を調整するために硬化促進剤を配合することができ、粘着性や密着性を向上するために、カップリング剤を配合することができ、粘着性を調整するために架橋剤を配合することができ、更に、酸化防止剤、顔料、占領、帯電防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0027】
(1−8)熱硬化型粘接着剤組成物(S)の物性
(イ)保存安定性
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)は、該組成物を40℃で保存する場合には、ゲル化するまでの日数が2〜3週間程度以上であり、保存安定性に優れている。
(ロ)粘着性
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)は粘着性に優れており、特に該組成物にアクリル樹脂(D)が配合される場合には、更に粘着性が向上する。
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)は、厚さ30μm の粘接着剤層を形成した場合において、上記粘接着剤層のステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、硬化前では0.5〜20N/25mmであることが好ましい。硬化前の粘着力が0.5N/25mm未満であると、被着体によっては初期粘着性が劣る場合があり、20N/25mmを超えると、初期粘着力としては強いため、被着体によっては作業性や再剥離性が劣る場合がある。
(ハ)硬化性
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)は粘着性に優れている。該組成物の効果性は、硬化させる際の発熱量を示差走査熱量測定(DSC)により、発熱ピークの温度と発熱量により評価できる。発熱ピークの温度は低温側の方が低温硬化性に優れることになり、発熱量を示すDCS曲線はブロードよりは、鋭い方が一般に感温性が高く、固化性に優れるといえる。
【0028】
(2)粘接着シート(L)
本発明の第2の態様である「粘接着シート(L)」は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として前記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、及びイオン性液体(C)を含む熱硬化型粘接着剤組成物(S)からなる粘接着剤層と、該層の片面又は両面に少なくとも剥離可能な保護フィルム層(P)を有することを特徴とする。
本発明の熱硬化型粘接着剤組成物(S)は、硬化前には適度な粘弾性を有するので、弱い圧力で圧着させることができ、且つ、高温下で長時間反応させることなく高い凝集力を示すので、被着対象の材質を問わず適用することができる。また、シート適正にも優れる。
そして、このような熱硬化型粘接着剤組成物(S)からなる粘接着剤層を有する粘接着シート(L)は、適度な粘接着性と良好な密着性とを示す。
【0029】
(2−1)エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、イオン性液体(C)、及び硬化遅延剤
粘接着シート(L)を製造する際に使用する、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、イオン性液体(C)、及び硬化遅延剤は第1の態様の「熱硬化型粘接着剤組成物(S)」における記載内容と同様である。
(2−2)溶剤(E)、アクリル樹脂(D)
第1の態様の「熱硬化型粘接着剤組成物(S)」における記載内容と同様である。
【0030】
(2−3)保護フィルム(P)
粘接着シート(L)は、粘接着剤層の片面又は両面に少なくとも剥離可能な保護フィルム層(P)を有している。
保護フィルム層(P)は、合成樹脂フィルムと該フィルム上に積層された剥離性を有する剥離部材とからなり、粘接着剤層の表面を保護する機能を有する。保護フィルム層(P)は、必要な強度や柔軟性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、一般的には、シリコーン離型処理した合成樹脂フィルムが用いられる。該合成フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が好ましい。なお、保護フィルム層(P)の厚みは、特に限定されるものではないが、機械的強度の維持等の点から25〜100μmが好ましい。
【0031】
(2−4)粘接着シート(L)
粘接着シート(L)は、本発明の第3の態様の「粘接着シート(L)の製造方法」に記載の方法により製造することができる。
上記粘接着組成物からなる粘接着剤層の厚みは、特に限定されるものではなく、用途に応じて、適宜選択することができるが、通常、5〜500μmであり、好ましくは10〜50μmである。厚みが5μm未満であると、十分な接着強度が得られない場合があり、500μmを超えると、性能に対してコスト高となったり、また、加工条件によっては、十分な接着性を発現するための熱量や圧力が不足したりする可能性がある。
【0032】
(2−5)粘接着シート(L)の用途
本発明の粘接着シート(L)は、粘接着剤層を構成する粘接着組成物の硬化前においては、被着体に弱い圧力で圧着させることができ、その後の低温且つ短時間での硬化により、被着体の材質を問わず適用することができ、耐久性にも優れるので、例えば、自動車、鉄道等の車両、航空機、及び船舶の内装材や外装材、窓枠や扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、机、テーブル、本棚等の家具、テレビや空調機等の家電製品の筐体や容器、パソコン等のOA機器や携帯電話、電子書籍等の小型電子モバイルの筐体等にも適用することができる。
【0033】
(3)粘接着シート(L)の製造方法
本発明の第3の態様である「粘接着シート(L)の製造方法」は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として前記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、イオン性液体(C)、及び溶剤(E)を含む熱硬化型粘接着剤組成物(S)を剥離可能な保護フィルム層(P)上に塗布後、該溶剤を蒸発除去することを特徴とする。
【0034】
本発明の粘接着シート(L)の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及びイオン性液体(C)、及び溶剤(E)と、更に必要に応じて、上記各種樹脂と、上記各種添加剤とを溶剤(E)に溶解、分散等させることにより、熱硬化型粘接着剤組成物(S)を得る。次いで、該組成物(S)を、剥離可能な保護フィルム層(P)の剥離処理面上にアプリケータ等により全面塗工し、粘接着剤層を形成する。その後、該粘接着剤層を乾燥させ、必要に応じて更に剥離可能な保護フィルムをラミネートすることにより、本発明の粘接着シート(L)を形成することができる。
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、イオン性液体(C)、及び溶剤(E)については、前記第1の態様、第2の態様における記載内容と同じである。上記熱硬化型粘接着剤組成物(S)を、剥離可能な保護フィルム層(P)上に塗工する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ダイコート法、コンマコート法等が挙げられる。
本発明の粘接着シート(L)の厚みは、特に限定されるものではないが、5〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましい。上記範囲であれば、適度な柔軟性を有するので、取り扱いが容易となる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下に記載する方法に限定されるものではない。以下に実施例、比較例で使用した原材料、評価方法を記載する。
(1)原材料
(1−1)エポキシ樹脂
(i)エポキシ樹脂1
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER828)
エポキシ当量:184〜194、分子量:370
(ii)エポキシ樹脂2
固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:jER1001)
エポキシ当量:450〜500、分子量:900
(iii)ポキシ樹脂3
NBR変性エポキシ樹脂(ADEKA(株)製、商品名:EPR−4030)
エポキシ当量:380
(iv)エポキシ樹脂4
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(前記エポキシ樹脂(R)に相当する)(新日鐵化学(株)製、商品名:YP−50EK35、不揮発分35%のMEK溶液)
(1−2)溶剤
トルエンとメチルエチルケトン(MEK)の等質量混合物
【0036】
(1−3)硬化剤
(i)硬化剤1
前記一般式(1)のRがメチル基(−CH)であるトリアジン誘導体(川口化学(株)製、商品名:TSH)、活性水素当量:59、分子量:177、粉末、分解温度:300℃
(ii)硬化剤2
前記一般式(2)のRが共にt−ブチル基であるトリアジン誘導体(三協化成(株)製、商品名:ジスネットDB)、活性水素当量:136.1、分子量:272.2、粉末、分解温度:137〜140℃
(1−4)イオン性液体
(i)イオン性液体1
1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホン酸)(日本カーリット(株)製、商品名:CIL313)
(ii)イオン性液体2
1−ブチル−3−メチルイミダゾリニウムビス(トリフロオロメタンスルホン酸イミド)(日本合成(株)製、商品名:BMI-TFSI)
(iii)イオン性液体3
1−ブチル−3−メチルイミダゾリニウム六フッ化リン酸(日本合成(株)製、商品名:BMI-PF6)
【0037】
(1−5)硬化促進剤
(i)促進剤1
マイクロカプセル(芳香族アミン)(旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名:ノバキュア3721)
(ii)促進剤2
エポキシアダクト第3級アミン(味の素ファインテックノ(株)製、商品名:ajicure MY-H、粉末)
(iii)促進剤3
脂肪族ポリアミン(富士化成工業(株)製、商品名:フジキャアー1030、粉末)
(iv)促進剤4
DBUファオスホネート塩(サンアプロ(株)製、商品名:U-CAT502)
(v)促進剤5
ジカルボン酸系化合物に包接されたイミダゾール化合物(日本曹達(株)製、商品名:NIPA-2E4MZ、粉末)
(1−6)アクリル樹脂
アクリル酸エステル共重合物(BA−EA−AN共重合体、ナガセケムテックス(株)製、商品名:SG-P3)
ガラス転移温度:12℃、重量平均分子量:85万、不揮発分15%のMEK溶液)
(1−7)硬化遅延剤
ほう酸n−トリブチル
【0038】
(2)評価
(2−1)保存安定性
(i)粘接着剤組成物
得られた粘接着剤組成物を10mlの遮光瓶に密閉した後、恒温室(23℃)にて保管した前記組成物がゲル化し、流動性がなくなるまでの日数をゲル化日数とした。
(ii)粘接着シート
得られた粘接着シートを恒温室(40℃)にて保管し、常温(23℃)で2時間放置した後の前記シートの引張りせん断力を測定し、初期値の80%以下になるまでの日数をゲル化日数とした。
【0039】
(2−2)粘着性
実施例及び比較例で得られた粘接着シートの剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、基材シート(商品名:E5100、片面にコロナ処理が施されてなるPETフィルム,膜厚:38μm,東洋紡績(株)製)のコロナ処理面に貼付させた後、25mm×150mmに切断し、試験片を作製した。この試験片を、ステンレス板(SUS304)に2kgのローラーを用いてラミネートした。そして、引張試験機(A&D社製、製品名:RTF−1150H)を用いて、硬化前のステンレス板面に対する粘着力を測定(JIS Z0237準拠,速度:300mm/min,剥離距離:150mm,剥離角:180°)した。
(2−3)硬化性
実施例及び比較例で得られた粘接着シートの剥離シート(両面)を剥離させ、示差走査熱量計(DSC)のサンプル容器に10〜20mg秤量し、組成物の反応開始温度をDSC測定により求めた。DSC測定には(株)島津製作所製、型式:DSC(DSC−60)を使用した。なお、測定条件として、25℃で15分保持した後、昇温速度5℃/minで200℃(25〜200℃)まで昇温させ、得られたDSCチャートの最大値の温度を反応ピーク温度とした。
【0040】
(2−4)引張せん断応力
実施例及び比較例で得られた粘接着シートを25mm×10mmに切断し、剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、アルコール洗浄された溶融亜鉛鍍金鋼板に圧着後に、剥離シート(SP−PET−03)を剥がし、もう1つの試験片と圧着し、1kgの荷重を加えたまま各温度の送風式オーブンにて表1、3に示す条件で加熱硬化させ、常温(23℃)にて放冷して、測定用試料を作製した。そして、引張試験機(製品名:RTA−1T,A&D社製を用いて、室温での引張剪断応力を測定(JIS K6850に準拠、引張り速度0.5mm/min)した。
【0041】
[実施例1〜3]
(1)熱硬化型粘接着剤組成物の調製と評価
実施例1〜3において、エポキシ樹脂1(ビスフェノール型エポキシ樹脂)100質量部、硬化剤1 30質量部、溶剤20質量部、及び表1に示すイオン性液体1〜3をそれぞれ用いてディスパー(プライミクス(株)製、分散機:商品 T.K.ホモディスパー2.5型)を用いて充分に撹拌した。その後、アクリル樹脂50質量部(固形分ベース)、溶剤30質量部を更に加え、ディスパーを用いて十分に撹拌した後、室温にて脱泡させ熱硬化型粘接着剤組成物を調製した。尚、撹拌条件は、1000rpmで15分である。得られた熱硬化型粘接着剤組成物について、保存安定性と、粘着性、及び硬化性の評価を行った。
(2)粘接着シートの作製と評価
上記熱硬化型粘接着剤組成物を保護フィルム(片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム、商品名:S−PET−03、膜厚38μm、三井化学東セロ(株)製)の剥離処理面上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるようにアプリケータで全面塗工し、粘接着剤層を形成した。
その後、乾燥オーブンにて80℃で、3分間乾燥させ、保護フィルム(片面シリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム、商品名:S−PET−03、膜厚38μm、三井化学東セロ(株)製)の剥離面を粘接着シートにラミネートし、実施例1〜3の粘接着シートをそれぞれ作製した。得られた粘接着シートについて、保存安定性と、引張せん断力の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0042】
[実施例4]
アクリル樹脂50質量部(固形分ベース)の代わりに、エポキシ樹脂4(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂)50質量部(固形分ベース)を使用した以外は表1に示すように実施例1に記載した通りに熱硬化型粘接着剤組成物の調製と評価を行った。
次に該熱硬化型粘接着剤組成物を使用して実施例1に記載した通りに、粘接着シートの作製と評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
硬化剤1の代わりに、硬化剤2を使用した以外は表1に示すように実施例1に記載した通りに熱硬化型粘接着剤組成物の調製と評価を行った。
次に該熱硬化型粘接着剤組成物を使用して実施例1に記載した通りに、粘接着シートの作製と評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
比較例1において、イオン性液体を配合しなかった以外は表2に示すように実施例1の記載に準じて熱硬化型粘接着剤組成物を調製し、実施例1〜3に記載したと同様の評価を行った。
次に、実施例1〜3に記載したと同様に粘接着シートを作製し、得られた粘接着シートについて保存安定性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0044】
[比較例2〜6]
比較例2〜6において、イオン性液体の代わりに表2に示す硬化促進剤をした以外は実施例1〜3に記載したと同様に熱硬化型粘接着剤組成物を作製し、実施例1に記載したと同様の評価を行った。
次に、実施例1に記載したと同様に粘接着シートを作製し、得られた粘接着シートについて保存安定性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
[比較例7]
硬化剤1の代わりに、硬化剤2を使用した以外は表2に示すように比較例1に記載した通りに熱硬化型粘接着剤組成物の調製と評価を行った。
次に該熱硬化型粘接着剤組成物を使用して実施例1の記載に準じて、粘接着シートの作製と評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
[実施例6、7]
実施例6、7において、表3に示す成分からなる熱硬化型粘接着剤組成物を調製し、該組成物から、粘接着シートを形成し、固体状トリアジン誘導体に対する相溶性の比較的高いイオン性液体を使用した場合の粘着力と、引張せん断力について評価を行った。
実施例6においては、エポキシ樹脂1、硬化剤1等を表3に示す量配合した以外は実施例1に記載したと同様に熱硬化型粘接着剤組成物を調製し、該組成物を使用して実施例1に記載したのと同様に粘接着シートを作製した。該粘接着シートについて上記評価を行った。
実施例7において、アクリル樹脂の代わりに、エポキシ樹脂4(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂)を使用した以外は表3に示すように実施例1に記載したと同様に熱硬化型粘接着剤組成物を調製し、該組成物を使用して実施例1に記載したのと同様に粘接着シートを作製した。該粘接着シートについて上記評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0048】
[比較例1、8〜12]
比較例1、8〜12において、表3に示す成分からなる熱硬化型粘接着剤組成物を調製し、該組成物から、粘接着シートを形成し、イオン性液体の代わりに固体状トリアジン誘導体に対する相溶性の低い硬化促進剤を使用した場合の粘着力と、引張せん断力について評価を行った。
比較例8〜12において、イオン性液体の代わりに表3に示す硬化促進剤をした以外は実施例1〜3に記載したと同様に熱硬化型粘接着剤組成物を作製し、該組成物を使用して実施例1に記載したのと同様に粘接着シートを作製した。該粘接着シートについて上記評価を行った。尚、前記比較例1で作製した該粘接着シートについても上記評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0049】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として下記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、及びイオン性液体(C)を含むことを特徴とする熱硬化型粘接着剤組成物。
【化1】

但し、式(1)中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基を示す。
【化2】

但し、式(2)中、R、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基を示し、R、Rは、同一であっても、異なっていてもよい。
【請求項2】
前記熱硬化型粘接着剤組成物がエポキシ樹脂(A)の1エポキシ当量に対して、硬化剤(B)として固体状トリアジン誘導体(T)がその活性水素当量が0.7〜1.2当量となるように配合され、かつ該固体状トリアジン誘導体(T)100質量部に対してイオン性液体(C)が1〜10質量部配合されていることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型粘接着剤組成物。
【請求項3】
前記熱硬化型粘接着剤組成物にアクリル樹脂(D)を配合してなる請求項1又は2に記載の熱硬化型粘接着剤組成物。
【請求項4】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として下記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、及びイオン性液体(C)を含む熱硬化型粘接着剤組成物からなる粘接着剤層と、該層の片面又は両面に少なくとも剥離可能な保護フィルム層(P)を有することを特徴とする粘接着シート。
【化3】

但し、式(1)中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基を示す。
【化4】

但し、式(2)中、R、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基を示し、R、Rは、同一であっても、異なっていてもよい。
【請求項5】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)として下記一般式(1)又は(2)で表される固体状トリアジン誘導体(T)、イオン性液体(C)、及び溶剤(E)を含む熱硬化型粘接着剤組成物を剥離可能な保護フィルム層(P)上に塗布後、該溶剤を蒸発除去することを特徴とする粘接着シートの製造方法。
【化5】

但し、式(1)中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜5のアルキル基から選ばれる基を示す。
【化6】

但し、式(2)中、R、Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基を示し、R、Rは、同一であっても、異なっていてもよい。

【公開番号】特開2012−229371(P2012−229371A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99823(P2011−99823)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】