説明

熱硬化性光反射用樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を用いた光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置

【課題】硬化後の可視光から近紫外光の反射率が高く、耐熱劣化性に優れ、なおかつトランスファー成形時に樹脂汚れが生じ難い、硬化性光反射用樹脂組成物ならびにこれを用いた光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置を提供すること。
【解決手段】熱硬化性成分と、白色顔料と、添加剤とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物であって、成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件下でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下であり、かつ熱硬化後の上記樹脂組成物の波長350nm〜800nmにおける光反射率が80%以上であることを特徴とする熱硬化性光反射用樹脂組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子と蛍光体などの波長変換手段とを組み合わせた光半導体装置に用いる熱硬化性光反射用樹脂組成物、並びにこれを用いた光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)などの光半導体素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体装置は、高エネルギー効率及び長寿命などの利点から、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト及び車載用途などの様々な用途に適用され、その需要が拡大しつつある。それに伴って、LEDデバイスの高輝度化が進み、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇、あるいは直接的な光エネルギーの増大による素子材料の劣化が問題視されている。そのため当技術分野では、近年、熱劣化及び光劣化に対して耐性を有する素子材料の開発が望まれている。特許文献1では、耐熱試験後の光反射特性に優れる光半導体素子搭載用基板を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1で開示された熱硬化性光反射用樹脂組成物を用い、トランスファー成形によって光半導体素子搭載用基板を製造した場合、成形時に成形金型の上型と下型との隙間に樹脂組成物が染み出し、樹脂汚れが発生しやすい傾向がある。加熱成形時に樹脂汚れが発生すると、光半導体素子搭載領域となる開口部(凹部)に樹脂汚れが張り出し、光半導体素子を搭載する際の障害になる。また、開口部に光半導体素子を搭載できたとしても、樹脂汚れは、光半導体素子と金属配線とをボンディングワイヤなど公知の方法によって電気的に接続する際の障害になる。すなわち、樹脂汚れは、素子搭載及びワイヤボンディングといった半導体製造時の作業性を低下させるために望ましくない。一般に、基板の開口部に樹脂汚れが存在する場合には、半導体製造時に上述の障害が起こらないように光半導体素子搭載用基板の製造プロセスに樹脂汚れの除去工程が追加される。しかし、そのような除去工程は、コストや製造時間のロスとなるため、改善が望まれている。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、樹脂硬化後の可視光から近紫外光領域における反射率が高く、その一方で、耐熱劣化性に優れ、さらにトランスファー成形時に樹脂汚れが発生し難い硬化性光反射用樹脂組成物を提供することを目的とする。また本発明は、そのような樹脂組成物を用いてワイヤボンディング性に優れ、かつ耐熱劣化性に優れた光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示す(1)〜(15)に記載の事項をその特徴とする。
(1)熱硬化性成分と、白色顔料と、添加剤とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物であって、成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件下でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下であり、かつ熱硬化後の上記樹脂組成物の波長350nm〜800nmにおける光反射率が80%以上であることを特徴とする熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0007】
(2)上記添加剤が、上記熱硬化性成分と反応可能な反応性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の重合体又は共重合体を含むことを特徴とする上記(1)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0008】
(3)上記添加剤が、(メタ)アクリル酸グリシジルと、他のエチレン性不飽和化合物との共重合体を含むことを特徴とする上記(2)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0009】
(4)上記添加剤が、(メタ)アクリル酸グリシジルと、(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体を含むことを特徴とする上記(3)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0010】
(5)上記添加剤の重量平均分子量が、1,000〜100,000であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0011】
(6)上記熱硬化性成分が、エポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂と硬化可能な硬化剤とを含むことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0012】
(7)上記エポキシ樹脂が1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、上記硬化剤が1分子中に1個以上の酸無水物基を有する化合物であることを特徴とする上記(6)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0013】
(8)上記添加剤の添加量が、上記エポキシ樹脂100重量部に対し、5〜30重量部の範囲であることを特徴とする上記(6)または(7)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0014】
(9)上記白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び無機中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0015】
(10)上記白色顔料の中心粒径が0.1〜50μmの範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0016】
(11)上記樹脂組成物が、さらに無機充填剤を含むことを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0017】
(12)上記無機充填剤と上記白色顔料との合計配合量が、上記樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲であることを特徴とする上記(11)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0018】
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物を用いてなることを特徴とする光半導体素子搭載用基板。
【0019】
(14)光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されてなる光半導体素子搭載用基板であって、少なくとも前記凹部の内周側面が上記(1)〜(12)のいずれかに記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物から構成されることを特徴とする光半導体素子搭載用基板。
【0020】
(15)上記(14)に記載の光半導体素子搭載用基板と、上記光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載された光半導体素子と、上記光半導体素子を覆うように前記凹部内に形成された蛍光体含有透明封止樹脂層とを少なくとも備えることを特徴とする光半導体装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、硬化後の可視光から近紫外光における光反射率が高く、耐熱劣化性やタブレット成形性に優れ、なおかつトランスファー成形時にバリが生じ難い、硬化性光反射用樹脂組成物、ならびにこれを用いた光半導体素子搭載用基板、光半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による光半導体搭載用基板の一実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はIb−Ib線に沿った断面図である。
【図2】本発明による光半導体装置の一実施形態を示す図であり、(a)及び(b)はそれぞれ側面断面図である。
【図3】本発明による光半導体装置の一実施形態を示す側面断面図である。
【図4】実施例において使用したバリ測定用金型を模式的に示した図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。
【図5】図4に示したバリ測定用金型を用いた成形時に生じたバリを模式的に示した図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物は、熱硬化性成分と、白色顔料と、添加剤とを含有し、例えば、成形温度100℃〜200℃、成形圧力20MPa以下、及び硬化時間60〜120秒といった代表的な条件下でトランスファー成形した時にバリの発生が少なく、熱硬化後の可視光から近紫外光における光反射特性に優れていることを特徴とする。より具体的には、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物は、成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件下でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下であり、それらの熱硬化後の波長350nm〜800nmにおける光反射率が80%以上であることを特徴とする。
【0024】
本明細書において使用する用語「成形時のバリ長さ」とは、図4に示したバリ測定用金型を用いてトランスファー成形を行った際に、金型中心部のキャビティから、金型の上型と下型との合せ目の隙間に放射方向にはみ出した樹脂硬化物の最大長さを意味する。このようなバリ長さが5mmを超えると、光半導体素子搭載領域の開口部(凹部)に樹脂汚れが張り出し、光半導体素子を搭載する際の障害となる可能性がある。あるいは、光半導体素子と金属配線とをボンディングワイヤなどの公知の方法によって電気的に接続する際の障害になる可能性がある。半導体装置製造時の作業性の観点から、本発明による樹脂組成物の成形時のバリ長さは、3mm以下がより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の硬化性光反射用樹脂組成物は、トランスファー成形を行うことを考慮して、熱硬化前は室温下(0〜30℃)で加圧成形可能であることが望ましい。より具体的には、例えば、室温下、5〜50MPa、1〜5秒程度の条件下で成形可能であればよい。熱硬化後は、光半導体装置の用途で使用する観点から、波長350nm〜800nmにおける光反射率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。光反射率が80%未満である場合は、光半導体装置の輝度向上に十分に寄与できない可能性がある。
【0026】
本発明による硬化性光反射用樹脂組成物は、少なくとも、熱硬化性成分と、白色顔料と、添加剤とを含有するものであって、成形時のバリ長さ及び光反射率を上記所定の範囲内に制御することが可能であれば、その配合比は特に限定されない。熱硬化性成分は、主にエポキシ樹脂と硬化剤とから構成され、必要に応じて硬化触媒を含んでもよい。また、本発明による樹脂組成物は、上述の成分の他に、無機充填剤、カップリング剤といった光半導体搭載用基板材料として周知の各種成分を含んでもよい。本発明の一実施態様において、樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒、(D)無機充填剤、(E)白色顔料、(F)カップリング剤、及び(G)添加剤を含有することが好ましい。特に、樹脂組成物の成形性を高め、成形時の樹脂汚れをより効果的に抑制するために、本発明では(G)添加剤として、熱硬化性成分と反応可能な反応性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の重合体又は共重合体を使用することが好ましい。
【0027】
ここで、「熱硬化性成分と反応可能な反応性基」とは、熱硬化性成分の主成分となるエポキシ樹脂および硬化剤の反応系に関与し得る、例えば、エポキシ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基等の官能基を意味する。そのような反応性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の具体例として、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及び(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルと多価イソシアネート化合物から得られる(メタ)アクリル酸イソシアネート含有エステルなどが挙げられる。特に限定するものではないが、化合物の反応性および価格面を考慮すると、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。このような反応性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体は、本発明では(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の反応性基を持たない(メタ)アクリル酸誘導体と区別される。
【0028】
本発明による樹脂組成物では、(G)添加剤として、上述の反応性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の1種から誘導される単独重合体、またはそれら誘導体の2種以上から構成される共重合体を使用することが好ましい。共重合体は、上述の反応性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の1種以上と、他のエチレン性不飽和化合物とから構成されるものであってもよい。共重合に使用される他のエチレン性不飽和化合物は、上述の(メタ)アクリル酸誘導体と共重合可能な化合物であれば特に限定されない。適切な化合物を選択することによって、熱硬化性成分との相溶性の改善、共重合体の粘度の調整、さらにトランスファー成形時の流動性の制御などが可能となるため、本発明では、添加剤として、上述の反応性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体と、他のエチレン性不飽和化合物との共重合体を使用することが好ましい。
【0029】
共重合可能な化合物としては、例えば、ビニルブチラール、酢酸ビニル、スチレン、オキサゾリン、塩化ビニル、フルオロエチレン、反応性基を持たない(メタ)アクリル酸誘導体といった化合物が挙げられる。これらの化合物を2種以上組み合わせて使用してもよい。高温環境下における着色性の観点から、反応性基を持たない(メタ)アクリル酸誘導体を選択することが好ましい。より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0030】
本発明による樹脂組成物の一実施形態では、添加剤として(メタ)アクリル酸グリシジルの単独重合体を使用することが好ましい。メタクリル酸グリシジルの単独重合体がより好ましい。そのような単独重合体は、(メタ)アクリル酸グリシジルを周知の方法に従って重合させることにより合成することが可能である。また、そのような化合物は市販品として入手することも可能であり、例えば、日油株式会社製のマープルーフ「G−01100(商品名)」が好適である。この化合物は、メタクリル酸グリシジルの単独重合体であり、重量平均分子量12,000、エポキシ当量170である。
【0031】
また、別の実施形態では、添加剤として、下式(1)で示される繰り返し単位を有する共重合体を使用することが好ましい。このような共重合体は、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを周知の方法に従って共重合させることにより合成することが可能である。
【化1】

(式中、Rはグリシジル基であり、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、Rはアルキルオキシカルボニル基であり、n又はmは正の整数を示す。)
【0032】
上式(1)で示される繰り返し単位を有する化合物の中でも、R及びRがそれぞれメチル基であり、Rがメチルオキシカルボニル基である化合物が好ましい。そのような化合物は、メタクリル酸グリシジルと、メタクリル酸メチルと、必要に応じて他の不飽和化合物とを共重合させることによって合成することが可能である。また、そのような化合物は、市販品として入手することも可能であり、例えば、日油株式会社製のマープルーフ「G−0150M(商品名)」が挙げられる。この化合物は、メタクリル酸グリシジルと、アクリル酸メチルとの共重合によって得られる共重合体に該当し、上記一般式(1)において、n=30、m=30であり、重量平均分子量は10,000である。その他、同シリーズのマープルーフ「G−017581(商品名)」なども使用できる。
【0033】
なお、上式(1)で示される繰り返し単位を有する化合物は、n/mの比率、式中のRにおける炭素数等によって、エポキシ樹脂などの組成物を構成する他成分との相溶性を調整することも可能である。特に限定するものではないが、n/mは0.1〜10の範囲が好ましい。またRにおける炭素数は1〜12の範囲が好ましい。
【0034】
本発明において(G)添加剤として使用する重合体又は共重合体は、特に限定されるものではないが、その重量平均分子量が、1,000〜100,000であることが好ましい。より好ましくは1,000〜50,000であり、さらに好ましくは5,000〜20,000である。重量平均分子量が1,000よりも低分子量であると、トランスファー成形時にバリが低減されない恐れがあり、特性上好ましくない。一方、重量平均分子量が100,000より高分子量であると、樹脂組成物の溶融時の流動性が損なわれるとともに硬化後に充分な材料強度が得られない恐れがある。
【0035】
上記(G)添加剤の配合量としては、(A)エポキシ樹脂100重量部に対し、5〜30重量部であることが好ましい。より好ましくは5〜20重量部であり、さらに好ましくは10〜20重量部である。配合量が5重量部よりも小さい場合、トランスファー成形時に樹脂汚れが低減されない恐れがあり、特性上好ましくない。一方、配合量が30重量部よりも多い場合は、樹脂組成物の溶融時の流動性が損なわれるとともに硬化後に充分な材料強度が得られない恐れがある。
【0036】
本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物によって、成形時の樹脂汚れを低減し、優れたパッケージ外観を得るためには、上述の(G)添加剤が、熱硬化性成分となる(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方に対して優れた相溶性を示すことが好ましい。なお、本明細書で使用する用語「相溶性」とは、(G)成分が、その他の成分(A)又は(B)と親和性を示し、均一な溶液または混合物として存在することを意味する。より具体的には、以下の手順に沿って評価する。先ず(A)成分又は(B)成分と、(G)成分とを1/1の重量比で混合し、それら成分を180℃にて完全に溶解した後に攪拌することによって混合液を調製する。次いで、調製した混合液を30分にわたって静置した後に、混合液の一部を取り出して目視によって評価する。混合液を目視した時、成分間の分離がなく透明な液体として確認できる状態を「可溶」と称す。一方、成分が分離し不透明な液体となる場合を「不溶」と称す。すなわち、本発明では(G)添加剤が(A)エポキシ樹脂などの他の成分に対して「可溶」となる状態が好ましい。
【0037】
(G)添加剤が、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤に対して難溶である場合、又は(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤のいずれか一方と難溶である場合、必要に応じて、樹脂組成物の溶融混練を行う前処理として予備加熱混合を実施してもよい。このような予備加熱混合によって、(G)添加剤の相溶性を改善し、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の中に(G)添加剤を均一に分散させ、トランスファー成形時の樹脂汚れを抑制する効果を高めることも可能となる。
【0038】
予備加熱混合を行う場合、(G)添加剤は室温(0〜35℃)において固体であり、好ましくは中心粒径1mm以下、より好ましくは中心粒径50μm以下になるように粉砕加工されていることが望ましい。(G)添加剤の中心粒径が1mmを超える粉砕状態では、予備混合を実施する際に、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤に完全に溶解するまでに時間がかかるため、長時間にわたる加熱により多くの熱エネルギーが必要となり、生産性やコストの面で不利となる。
【0039】
予備加熱混合の具体的な方法としては、例えば、(A)エポキシ100重量部、(B)硬化剤120重量部、(G)添加剤10重量部を耐熱ガラス製の混合容器内に秤量し、この混合容器をシリコーンオイルや水などの流体を媒体としたヒーターを用いて、35℃〜180℃の温度範囲で加熱する方法が挙げられる。加熱方法は、先に例示した方法に限定されるものではなく、熱電対、電磁波照射など公知の方法を適用することも可能である。また、予備加熱混合の際には、成分の溶解を促進するために超音波などを照射する方法を追加適用してもよい。
【0040】
本発明で使用可能な(A)エポキシ樹脂は、特に限定されず、エポキシ樹脂成形材料として一般に使用されている樹脂であればよい。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの; ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビスフェノール等のジグリシジルエーテル; ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂; オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂; 及び脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。特に限定するものではないが、使用するエポキシ樹脂は、無色または例えば淡黄色の比較的着色していないものが好ましい。そのようなエポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0041】
本発明で使用可能な(B)硬化剤は、特に限定されず、エポキシ樹脂と反応可能な化合物であればよいが、その分子量は100〜400程度のものが好ましい。また、無色、または例えば淡黄色の比較的着色していないものが好ましい。そのような硬化剤として、例えば、酸無水物系硬化剤、イソシアヌル酸誘導体、フェノール系硬化剤などが挙げられる。
【0042】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0043】
イソシアヌル酸誘導体としては、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0044】
フェノール系硬化剤としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂; フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂; ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂; フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンとの共重合によって合成される、ジシクロベンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂; トリフェニルメタン型フェノール樹脂; テルペン変性フェノール樹脂; パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂; メラミン変性フェノール樹脂; シクロペンタジエン変性フェノール樹脂; 及びこれら2種以上を共重合して得られるフェノール樹脂などが挙げられる。
【0045】
上述した硬化剤は単独で用いても、2種類以上併用しても良い。なかでも、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸からなる群から選択される酸無水物、又は1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート酸誘導体の少なくとも一方を使用することが好ましい。
【0046】
本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との配合比は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基との反応可能な(B)硬化剤中の活性基(酸無水物基または水酸基)が0.5〜0.8当量となるように配合することが好ましく、0.7〜0.8当量とすることがより好ましい。上記活性基が0.5当量未満の場合には、樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなる場合があり、充分な弾性率が得られない場合がある。一方、上記活性基が0.8当量を超える場合には硬化後の強度が減少する場合がある。
【0047】
本発明で使用可能な(C)硬化触媒(硬化促進剤)は、特に限定されず、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン類; 2−エチル−4メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類; トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレートなどのリン化合物; 4級アンモニウム塩; 有機金属塩類; 及びこれらの誘導体などであってよい。これらは単独で使用してもよく、あるいは、併用してもよい。これらの硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。
【0048】
上記(C)硬化触媒(硬化促進剤)の含有率は、エポキシ樹脂に対して、0.01〜8.0重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜3.0重量%である。硬化促進剤の含有率が0.01%重量%未満となると、十分な硬化促進効果が得られない場合がある。また8.0重量%を超えると、硬化によって得られる成形体に変色が見られる場合がある。
【0049】
本発明で使用可能な(D)無機充填剤は、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる1種以上を用いることができる。熱伝導性、光反射特性、成形性、難燃性の点からは、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのうち2種以上を組合せて使用することが好ましい。また、(D)無機充填剤の中心粒径は、特に限定されるものではないが、白色顔料とのパッキングが効率良くなるように1〜100μmの範囲のものを用いることが好ましい。
【0050】
本発明で使用可能な(E)白色顔料は、公知のものであってよく、特に限定されないが、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、無機中空粒子を用いることができ、これらは単独でも2種類以上併用してもかまわない。無機中空粒子は、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラスなどが挙げられる。白色顔料の粒径は、中心粒径が0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい、この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすく分散性が悪くなる傾向があり、50μmを超えると硬化物の反射特性が十分に得られない恐れがある。
【0051】
上記(D)無機充填剤と上記(E)白色顔料との合計配合量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲であることが好ましい、この合計配合量が10体積%未満であると硬化物の光反射特性が十分に得られない恐れがあり、85体積%を超えると樹脂組成物の成形性が悪くなり基板の作製が困難となる。
【0052】
本発明で使用可能な(F)カップリング剤は、特に限定されず、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等であってよい。より具体的には、シランカップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系等が挙げられる。使用量は、無機充填材に対する表面被覆量を考慮して、適宜調整することが可能である。本発明において使用する(F)カップリング剤の種類及びその処理方法について、特に制限はないが、本発明の一実施形態ではそれらの配合量を樹脂組成物に対して5重量%以下とすることが好ましい。
【0053】
本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物では、上述の成分(A)〜(F)に加えて、必要に応じて、酸化防止剤、離型剤、イオン捕捉剤等の公知の各種添加剤を添加してもよい。
【0054】
本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物は、上記した各成分を均一に分散混合することによって得ることができ、その調製手段や条件等は特に限定されない。一般的な手法として、所定配合量の各種成分をミキサー等によって十分に均一に撹拌及び混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール及びエクストルーダー等を用いて混練し、さらに得られた混練物を冷却及び粉砕する方法を挙げることができる。なお、混練形式についても特に限定されるものではないが、溶融混練が好ましい。溶融混練の条件は、使用した成分の種類や配合量によって適宜決定すればよく、特に限定されない。例えば、15〜100℃の範囲で5〜40分間にわたって溶融混練することが好ましく、20〜100℃の範囲で10〜30分間にわたって溶融混練することがより好ましい。溶融混練時の温度が15℃未満であると、各成分を溶融混練させることが困難であり、分散性も低下する傾向にある。一方、100℃よりも高温であると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、樹脂組成物が硬化してしまう恐れがある。また、溶融混練の時間が5分未満であると、樹脂汚れを効果的に抑制することができない傾向にあり、40分よりも長いと、樹脂組成物の高分子量化が進行し、成形前に樹脂組成物が硬化してしまう恐れがある。
【0055】
本発明による光半導体素子搭載用基板は、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物を使用して構成されることを特徴とする。具体的には、光半導体素子搭載領域となる1つ以上の凹部を有し、少なくとも上記凹部の内周側面が本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成される基板が挙げられる。図1は、本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示すものであり、(a)は斜視図、(b)はIb−Ib線に沿った断面図である。図1に示したように、本発明の光半導体素子搭載用基板110は、リフレクター103と、Ni/Agメッキ104及び金属配線105を含む配線パターン(リードフレーム)とが一体化され、光半導体素子搭載領域となる凹部200が形成された構造を有し、少なくとも上記凹部の内周側面は本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成されていることを特徴とする。
【0056】
本発明の光半導体素子搭載用基板の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物またはそのタブレット成形体をトランスファー成形によって製造することができる。より具体的には、以下の手順に従って製造することが可能である。最初に光半導体素子搭載用基板は、金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法によって金属配線を形成する。次に、該金属配線を所定形状の金型に配置し、金型の樹脂注入口から本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物(タブレット成形体の溶融物)を注入する。次に、注入した樹脂組成物を、好ましくは金型温度170〜190℃、成形圧力2〜8MPaで60〜120秒にわたって硬化させた後に金型を外し、アフターキュア温度120℃〜180℃で1〜3時間にわたって熱硬化させる。そして、硬化した熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成されるリフレクターに周囲を囲まれた光半導体素子搭載領域となる凹部の所定位置に、Ni/銀メッキを施す。
【0057】
本発明による光半導体装置は、先に説明した本発明による光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載される光半導体素子と、光半導体素子を覆うように凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層とを少なくとも備えることを特徴とする。図2(a)及び(b)は、それぞれ本発明による光半導体装置の一実施形態を示す側面断面図である。より具体的には、図2に示した光半導体装置では、本発明の光半導体素子搭載用基板110の光半導体素子搭載領域となる凹部(図1の参照符号200)の底部所定位置に光半導体素子100が搭載され、該光半導体素子100と金属配線105とが、ボンディングワイヤ102やはんだバンプ107などの公知の方法により、Ni/銀メッキ104を介して電気的に接続されている。そして、光半導体素子100は公知の蛍光体106を含む透明封止樹脂101によって覆われている。図3は、本発明による光半導体装置の別の実施形態を示す側面断面図である。図中、参照符号300はLED素子、301はワイヤボンド、302は透明封止樹脂、303はリフレクター、304はリード、305は蛍光体、306はダイボンド材を示しており、リフレクター303の少なくとも凹部表面が本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成されている。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜12、比較例1〜4)
1.熱硬化性光反射用樹脂組成物の調製
下記表1及び表2に示した配合割合に従って各成分を配合し、ミキサーによって十分に混練した後にミキシングロールによって所定条件下で溶融混練して混練物を得た。さらに、得られた混練物を粉砕することによって、実施例1〜12及び比較例1〜4の熱硬化性光反射用樹脂組成物を各々調製した。なお、表1及び2に示した各成分の配合量の単位は重量部である。表における空欄は該当する成分の配合が無いことを意味する。
【0059】
2.熱硬化性光反射用樹脂組成物の評価
先に調製した実施例1〜12及び比較例1〜4の各々の樹脂組成物について、以下の手順に従って、光反射率及びバリ長さを測定した。また、各々の樹脂組成物を成形して得られる基板のワイヤボンディング性について検討し、評価した。それらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0060】
(光反射率)
先に調製した各々の熱硬化性光反射用樹脂組成物を、成形金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件下でトランスファー成形した後、150℃で2時間にわたって後硬化することによって、厚み1.0mmの試験片をそれぞれ作製した。次いで、積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製)を用いて、波長400nmにおける各試験片の光反射率を測定した。
【0061】
(バリ長さ)
先に調製した各々の熱硬化性光反射用樹脂組成物を、ポットを用いて、バリ測定用金型(図4を参照)に流し込み、次いで硬化させることによって樹脂組成物を成形した。なお、成形時の金型温度は180℃、成形圧力は6.9MPa、樹脂の流し込み時間(トランスファー時間)は10秒であり、硬化温度は180℃、硬化時間は90秒とした。成形後、バリ測定用金型の上型を外し、成形時に金型の上型と下型との隙間を流れて生じたバリの長さの最大値を、ノギスを使用して測定した。
【0062】
図4は、先のバリ長さの測定時に使用するバリ測定用金型の構造を模式的に示した図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。図4に示したように、バリ測定用金型は、一対の上型400と下型401とから構成され、上型400は樹脂注入口402を有する。また、下型401は、樹脂注入口402に対向するキャビティ403と、キャビティ403から金型外周部に向かって伸びる6本のスリット404、405、406、407、408及び409を有する。実際に使用したバリ測定用金型の寸法は、図4に示したように上型400及び下型401の外形が140mm×140mm、樹脂注入口402の上径が7mm及び下径が4mm、キャビティ403の径が30mm及び深さが4mmである。また、キャビティ403から延びる6本のスリット404から409の幅はそれぞれ5mmであり、深さは順に75、50、30、20、10及び2μmであった。図5は、図4に示したバリ測定用金型を用いた成形時に生じたバリを模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。バリは、図5に示したように、樹脂組成物がキャビティ403の外延から各スリットに沿って流れ込み硬化した部分410を意味する。本発明で規定する「バリ長さ」は、参照符号410で示されるバリの最大値を、ノギスで測定した値である。
【0063】
(ワイヤボンディング性の評価)
最初に、成形金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件下でトランスファー成形した後、150℃で2時間にわたって後硬化することによって、光半導体素子搭載用基板をそれぞれ作製した。
次に、作製した上記基板の光半導体素子搭載領域となる凹部に光半導体素子を搭載した後、ワイヤボンダ(HW22U−H、九州松下電器株式会社製、商品名)及び直径28μmのボンディングワイヤを使用して、光半導体素子と基板とをワイヤボンディングすることによって、電気的に接続した。ワイヤボンディング時の基板の加熱温度は180℃とした。ワイヤボンディング性は、光半導体素子と基板とを電気的に接続するワイヤボンディングのワイヤ引っ張り強度を、プルテスターPTR−01(株式会社レスカ製、商品名)を使用して測定し、その値について下記の評価基準に従って評価した。
【0064】
ワイヤボンディング性の評価基準
◎:引っ張り強度10g以上
○:引っ張り強度4g以上10g未満
△:引っ張り強度4g未満
×:ボンディング不可
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
*1:トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100、日産化学社製、商品名TEPIC−S)
*2:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬社製)
*3:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業社製、商品名HN5500)
*4:日本化学工業社製、商品名PX−4ET
*5:トリメトキシエポキシシラン(東レダウコーニング社製、商品名A−187)
【0069】
*6:脂肪酸エステル(クラリアント社製、商品名 ヘキストワックスE)
*7:脂肪族エーテル(東洋ペトロライト社製、商品名 ユニトックス420)
*8:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名FB−301)
*9:中空粒子(住友3M社製、商品名S60−HS)
*10:アルミナ(アドマテックス社製、商品名AO−25R)
【0070】
*11:添加剤(日油株式会社製、商品名マープルーフG−0150M、重量平均分子量10,000、エポキシ当量370、メタクリル酸グリシジルとメタクリル酸メチルとの共重合体)
*12:添加剤(日油株式会社製、商品名マープルーフG−017581、重量平均分子量10,000、エポキシ当量240、メタクリル酸グリシジルとメタクリル酸メチルとの共重合体)
*13:添加剤(日油株式会社製、商品名マープルーフG−01100、重量平均分子量12,000、エポキシ当量170、メタクリル酸グリシジルの単独重合体)
【0071】
表1及び表2に示したように、本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物は、光反射特性に優れ、バリの発生を低減することが可能である。本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物を用いてトランスファー成形を行うことによって、光半導体素子搭載領域の開口部に樹脂汚れが発生せず、光半導体素子を効率良く搭載することが可能になる。また、ボンディングワイヤなどの公知の方法によって、光半導体素子と金属配線とを電気的に確実に接続することが可能である。その結果、光半導体搭載用基板及び光半導体素子搭載用基板の製造工程において、バリを除去する工程が不要となり、コストや製造時間など生産性の面で非常に有利となる。
【符号の説明】
【0072】
100 光半導体素子
101 透明封止樹脂
102 ボンディングワイヤ
103 熱硬化性反射用樹脂(リフレクター)
104 Ni/Agめっき
105 金属配線
106 蛍光体
107 はんだバンプ
110 光半導体素子搭載用基板
200 光半導体素子搭載領域
300 LED素子
301 ワイヤボンド
302 透明封止樹脂
303 リフレクター
304 リード
305 蛍光体
306 ダイボンド材
400 バリ測定用金型(上型)
401 バリ測定用金型(下型)
402 樹脂注入口
403 キャビティ
404 スリット(75μm)
405 スリット(50μm)
406 スリット(30μm)
407 スリット(20μm)
408 スリット(10μm)
409 スリット(2μm)
410 樹脂バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性成分と、白色顔料と、添加剤とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物であって、成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件下でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下であり、かつ熱硬化後の前記樹脂組成物の波長350nm〜800nmにおける光反射率が80%以上であることを特徴とする熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項2】
前記添加剤が、前記熱硬化性成分と反応可能な反応性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の重合体又は共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項3】
前記添加剤が、(メタ)アクリル酸グリシジルと、他のエチレン性不飽和化合物との共重合体を含むことを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項4】
前記添加剤が、(メタ)アクリル酸グリシジルと、(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体を含むことを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項5】
前記添加剤の重量平均分子量が、1,000〜100,000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性成分が、エポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂と硬化可能な硬化剤とを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、前記硬化剤が1分子中に1個以上の酸無水物基を有する化合物であることを特徴とする請求項6に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項8】
前記添加剤の添加量が、前記エポキシ樹脂100重量部に対し、5〜30重量部の範囲であることを特徴とする請求項6または7に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項9】
前記白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び無機中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項10】
前記白色顔料の中心粒径が0.1〜50μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物が、さらに無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項12】
前記無機充填剤と前記白色顔料との合計配合量が、前記樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物を用いてなることを特徴とする光半導体素子搭載用基板。
【請求項14】
光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されてなる光半導体素子搭載用基板であって、少なくとも前記凹部の内周側面が請求項1〜12のいずれかに記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物から構成されることを特徴とする光半導体素子搭載用基板。
【請求項15】
請求項14に記載の光半導体素子搭載用基板と、
前記光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載された光半導体素子と、
前記光半導体素子を覆うように前記凹部内に形成された蛍光体含有透明封止樹脂層とを少なくとも備えることを特徴とする光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91809(P2013−91809A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10094(P2013−10094)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2008−122014(P2008−122014)の分割
【原出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】