説明

熱硬化性樹脂の熱分解方法および装置

【課題】熱硬化性樹脂を酸素不存在下で連続的に熱分解してオリゴマーを生成する方法を提供する。
【解決手段】ポリウレタン等の熱硬化性樹脂を廃食用油等の液状分解剤と混合して連続的に熱分解する方法であって、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤のスラリー状混合物をスクリュー式の押出機9から配管14を介して熱分解器1に連続的に供給する。スラリー状混合物によって熱分解器1の原料供給側におけるシール性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性樹脂を熱分解する方法および装置に関し、詳しくは熱硬化性樹脂を液状分解剤と混合して連続的に熱分解する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場設備や家庭からは多量のプラスチック類が廃プラスチックとして排出される。従来から環境汚染の防止と資源回収を目的として、廃プラスチックを再利用できる形態に処理してリサイクルすることが行われている。廃プラスチックのリサイクルにはマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルがある。マテリアルリサイクルは廃プラスチックを溶融して再成形し、その再成形物を構造材などにリサイクルする方法である。ケミカルリサイクルは廃プラスチックを熱分解して燃料や化学原料としてリサイクルする方法である。
【0003】
マテリアルリサイクルは簡便であるが、再成形物の用途が限定されている。一方、ケミカルリサイクルは熱分解や加水分解システムを必要とするが、生成物の用途が広いという利点があり、近年採用される廃プラスチック処理システムの主流になっている。ケミカルリサイクルにおける熱分解方法は、廃プラスチックを酸素不存在状態にした熱分解器に供給し、そこで廃プラスチックの熱分解温度に加熱して熱分解するものである。なお、熱分解によるケミカルリサイクルにはモノマーやオリゴマーに分解し、化学原料、燃料、道路用アスファルトなどにリサイクルする方法がある。
【0004】
熱分解方法にはバッチ式と連続式がある。バッチ式は比較的大きな容量の熱分解器に廃プラスチックを所定量投入し、酸素不存在状態にして一定時間加熱して熱分解する方法である。この方法は1回の処理量が大きいというメリットはあるが、バッチごとに熱分解器の冷却、昇温、窒素封入等の処理を繰り返す必要があり、処理が煩雑でエネルギーコストが大きくなるので、主に比較的小規模のシステムに採用されている。一方、連続式はバッチ式のような問題がないので比較的大規模のシステムに多く採用されているが、熱分解器における原料としての廃プラスチックの供給側(原料供給側)のシール性確保が重要になる。
【0005】
廃プラスチックには大きく分けてポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂と、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂がある。この内、熱可塑性樹脂の廃プラスチックをオリゴマー段階まで連続式で熱分解する方法が特許文献1に記載されている。
【0006】
特許文献1の図4には実施の1例としてプラスチックを連続的に熱分解するシステムが示されている。すなわちプラスチックと廃食用油等の分解剤を溶融混合槽に供給し、そこで加熱溶融して分解剤が混合された溶融プラスチック液を生成し、それを原料として熱分解器に供給している。そして熱分解器の供給側におけるシール性は溶融混合槽の溶融プラスチック液により確保している。
【0007】
熱硬化性樹脂の廃プラスチックをオリゴマー段階に熱分解する方法は特許文献2に記載されている。特許文献2の方法は熱硬化性樹脂を分解剤としての植物性油と混合し、それを原料として熱分解器に供給して熱分解するものである。
【0008】
【特許文献1】特開2001−240871号公報
【特許文献2】特開2003−128834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法は、プラスチックを連続的に熱分解してオリゴマーを生成しており、熱分解器の原料供給側のシール性を加熱溶融槽における溶融プラスチック液で確保している。しかし、特許文献1の方法は熱硬化性樹脂の連続的な熱分解に適用することはできない。すなわち熱硬化性樹脂は加熱しても溶融しないので、熱分解器の原料供給側のシール性を溶融プラスチック液で確保する方法は採用できない。
【0010】
一方、特許文献2では熱硬化性樹脂を熱分解してオリゴマーを生成しているが、そこに具体的に記載されているのはビーカー段階の実施形態だけであり、連続的にオリゴマーを生成する方法および熱分解器の原料供給側におけるシール性の確保については記載されていない。
そこで本発明は、熱硬化性樹脂を熱分解器で連続的に熱分解すると共に、熱分解器の原料供給側のシール性を確保した熱分解方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する本発明の熱硬化性樹脂の熱分解方法は、熱硬化性樹脂を液状分解剤と混合して連続的に熱分解する方法である。そして、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物をスクリュー式の押出機から配管を介して熱分解器に連続的に供給することを特徴とする(請求項1)。
【0012】
上記熱分解方法において、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤との混合を前記押出機で行うことができる(請求項2)。
【0013】
上記いずれかの熱分解方法において、前記押出機のスクリューは2軸スクリューとすることができる(請求項3)。
【0014】
さらに上記いずれかの熱分解方法において、前記スラリー状混合物の流通性を確保するように前記配管を加熱することができる(請求項4)。
【0015】
また、前記課題を解決する本発明の熱硬化性樹脂の熱分解装置は、熱硬化性樹脂を液状分解剤と混合して連続的に熱分解する装置である。そして、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物を生成するスクリュー式の押出機と、熱分解器と、前記押出機の出口側と熱分解器を接続する配管を備えていることを特徴とする(請求項5)。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱分解方法は、請求項1に記載のように、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物をスクリュー式の押出機から配管を介して熱分解器に連続的に供給することを特徴とする。
スクリュー式の押出機は粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤を効率よく混合してスラリー状混合物を生成し、それを原料として熱分解器に連続的に供給することができる。そして、前記スラリー状混合物の液成分の作用により熱分解器の原料側におけるシール性を確実に確保することができる。そのため熱分解器において熱硬化性樹脂を酸素不存在下で連続的に熱分解してオリゴマー等を生成することができる。
【0017】
上記熱分解方法において、請求項2に記載のように、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤との混合を前記押出機で行うことができる。この方法によれば粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤との混合を押出機内で行うので、それらを予め混合するミキサー等の混合手段を設ける必要がなく、熱分解システムが簡略化される。
【0018】
上記いずれかの熱分解方法において、請求項3に記載のように、前記押出機のスクリューは2軸スクリューとすることができる。2軸スクリューが各スクリュー表面に付着するスラリー状混合物を互いに掻き取りながらスラリー混合物を出口側に移送できるため、スラリー濃度などに左右されることなく、効率よく且つスムーズにスラリー状混合物を配管に押し出すことができる。
【0019】
上記いずれかの熱分解方法において、請求項4に記載のように、前記スラリー状混合物の流通性を確保するように前記配管を加熱することができる。このように配管を加熱すると押出機から熱分解器までのスラリー状混合物が温度降下による粘性増加を起こすことを防止して、常に最適な状態でスラリー状混合物を効率よく且つスムーズに熱分解器に供給することができる。
【0020】
また、本発明の熱分解装置は、請求項5に記載のように、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物を生成するスクリュー式の押出機と、熱分解器と、前記押出機の出口側と熱分解器を接続する配管を備えていることを特徴とする。本発明の熱分解装置を使用することにより、前記本発明の熱分解方法を好適に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の熱分解方法およびそれを実施する装置の最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の熱分解方法を実施する装置のプロセスフロー図である。
図1において、1は槽型の熱分解器、2は熱分解槽、3は原料供給部、3aはガス排出部3bは液排出部、4はスクレーパ、5は駆動手段、6は加熱部、7は混合手段、8は攪拌手段、9はスクリュー式の押出機、10はホッパ、11はシリンダ、12はスクリュー、12aは駆動手段、13は加熱ヒータ、14は配管、15は加熱ヒータ、16、17は開閉弁、18はポンプ、19は回収タンク、20は凝縮器、21は回収タンク、22は加熱ガス発生装置、23はバーナ、a〜gは配管、D1、D2はダクトである。
【0022】
熱分解器1はステンレス製の熱分解槽2とその周囲に配置した断熱壁の内側に構成される加熱部6を備えている。熱分解槽2は下部が円錐状に縮小され、該部分に攪拌(およびオリゴマー掻取り)作用を有するスクレーパ4が配置され、スクレーパ4の軸は外部に延長されて駆動モータ等の駆動手段5に連結する。熱分解槽2の上方に押出機9の出口側に連通する原料供給部3と凝縮器に連通するガス排出部3aが設けられ、底部に生成物を排出する液排出部3bが設けられる。そして液排出部3bは配管dを介して生成物の回収タンク19に連通する。
【0023】
加熱部6には加熱ガス供給用のダクトD1と排ガス用のダクトD2が接続され、D1は加熱ガス発生装置22に連通する。加熱ガス発生装置22は図示しない燃料タンクから供給される燃料をバーナ23で燃焼して高温の燃焼ガスを生成し、その燃焼ガスを加熱ガスとして加熱部6に供給するものである。
【0024】
スクリュー式の押出機9はホッパ10と、ホッパ10に連通する細長いシリンダ11と、シリンダ11の内部に配置されたスクリュー12と、スクリュー12を回転駆動する駆動手段12aと、シリンダ11の周囲に配置された加熱ヒータ13を有し、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物を生成して熱分解器1に供給するものである。混合手段7は配管aから供給される粉末状の熱硬化性樹脂と配管bから供給される液状分解剤を混合し、その混合物を配管cから押出機9のホッパ10に供給するものであり、攪拌翼と駆動モータからなる攪拌手段8を有する。
【0025】
押出機9の出口側と熱分解槽2の上方に設けた原料供給部3は配管14で連通され、配管14の途中に開閉弁16が設けられると共に、配管14の周囲に沿って加熱ヒータ15が配置される。なお開閉弁16は必要に応じて設けられ、例えば熱分解器1の起動時または熱分解器1の運転中における原料供給を一時的に停止する場合に操作される。また加熱ヒータ15は、外気温度が低い場合などにおいて配管14の温度降下を防止し、押出機9から熱分解器1までの間に流通するスラリー状混合物の粘性増加による流動性低下を回避するために設けられる。
【0026】
凝縮器20は熱分解器1でオリゴマーを主成分とする液状回収物を生成する際に、副生物として生成する分解ガスを冷却水等の冷媒で冷却・凝縮するものである。凝縮器20で得られた凝縮液は配管fから回収タンク21に回収し、非凝縮ガスは例えば図示のように配管gから加熱ガス発生装置23の燃料の一部として回収する。
【0027】
次に図1の熱分解装置を用いて熱硬化性樹脂を熱分解する方法を説明する。本発明の熱分解方法に用いられる熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリイミド等があり、それらには発泡樹脂または非発泡樹脂が含まれるが、以下の実施形態は発泡ポリウレタン(いわゆるウレタンフォーム)について説明する。
【0028】
熱分解に先立って、熱分解器1の内部を窒素等の不活性ガスで置換して酸素不存在状態にすると共に、加熱ガス発生装置22から加熱ガスを熱交換器1の加熱部6に供給し、熱分解槽2の内部温度を所定の熱分解温度に昇温する。一方、冷蔵庫の断熱材などに使用された硬質ウレタンフォームを図示しない粉砕機で微粉砕して圧縮減容し、得られた粉末状のポリウレタンを配管aから混合手段7に所定量連続的に供給する。なお硬質ウレタンフォームを粉砕機で粉砕する際に、フォームの気泡内に閉じ込められていたフロンなどの発泡剤ガスが放散されるが、通常、その放散ガスは粉砕機に備えられたガス回収部に回収される。
【0029】
粉末状のポリウレタンの平均粒径は熱分解器1の原料供給側におけるシール性を十分に確保できる範囲に設定される。粉末の平均粒径が大きいとシール性が不十分になり、小さ過ぎると微粉砕に要するエネルギーが増大する。好ましい平均粒径の上限は1mm程度であり、下限は経済性から適宜選択されるが、好ましい範囲は0.1〜1.0mm程度である。
【0030】
上記のように混合手段7に配管aから粉末状のポリウレタンを連続的に供給すると共に、配管bからは液状分解剤を混合手段7に連続的に供給し、攪拌手段8でポリウレタンと均一に混合する。液状分解剤としては廃植物性油、エチレングリコールやプロピレングリコール等のグリコール類やエタノールアミン等のアミン類を用いることができる。廃植物性油としては、大豆油、菜種油、オリーブ油、ひまし油、落花生油、パーム油、亜麻仁油などがある。
【0031】
ポリウレタンに対する液状分解剤の混合割合(重量割合)は押出機9で得られるスラリー状混合物の流動性(または配管14の内壁に対する潤滑性)を十分に確保できると共に、ポリウレタンの分解促進効果が十分に発揮できる範囲に設定される。使用する液状分解剤の種類によっても異なるが、例えばポリウレタンの場合、それに対する液状分解剤の混合割合を0.1〜3.0倍程度の範囲に設定することが好ましい。
【0032】
ポリウレタンに対する液状分解剤の混合割合が上記範囲より小さいと押出機9で得られるスラリー状混合物の流動性が低下すると共に、ポリウレタンの分解促進効果が不十分になる。また液状分解剤の混合割合が上記範囲より大きいと必要以上の分解剤を供給することになるので経済的に不利になる。なおポリウレタンに食用油を混合する場合、実験によればポリウレタンに対する液状分解剤の混合割合を1.0倍程度にすると好ましい結果が得られている。
【0033】
混合手段7で得られた粉末状のポリウレタンと分解剤との混合物は、図示しない調整弁を調整することにより所定流量で押出機9のホッパ10に連続的に供給する。ホッパ10に供給された前記混合物はシリンダ11に流入し、そこで回転するスクリュー12(本例では2軸スクリュー式)により攪拌および混練され、且つスクリュー12による圧縮作用で空気が圧縮排除されたスラリー状態(スラリー状混合物)になって配管14に連続的且つ定量的に押し出される。なおシリンダ11には必要に応じてスラリー状混合物から排除された空気や僅かに生成する気体成分を外部に放出するためのベント部を設けることができる。
【0034】
押出機9のスクリュー12として2軸スクリュー式(いわゆる2軸押出機)を採用すると、前述のようにスラリー状混合物を効率よく且つスムーズに出口側に押し出すことができる。なお2軸スクリュー式におけるスクリュー形状は一般的なものでよく、混練用の特殊なものを使用する必要はない。またスクリュー12を回転駆動する駆動モータ等の駆動手段12aは熱可塑性樹脂を溶融混練する場合より小容量で足りる。
【0035】
ウレタン粉末は、水分を含有している場合が多く、100℃以上に加熱すると水蒸気を発生する。シリンダ11の中間部に開口部(ベントロ)を設け、蒸発する水蒸気を抜き取ることが必要である。スラリー状混合物は加熱ヒータ13で加熱されることにより、十分な流動性(潤滑性)が確保できる温度になる。加熱ヒータ13による加熱温度はポリウレタンの熱分解温度に近いほど熱分解器1における熱分解操作が容易になるが、あまり温度を上げると押出機9の内部でポリウレタンの分解ガスが生成し、その分解ガスがホッパ10から外部へ漏洩する恐れがあるので、スラリー状混合物の流動性を十分に確保できる範囲に抑えることが望ましい。
例えばポリウレタンに液状分解剤として食用油を混合した場合、そのスラリー状混合物の熱分解温度は最低で280℃、通常300℃以上であるので、加熱ヒータ13による加熱温度はそれ以下、例えば200℃〜250℃程度の範囲に設定することが望ましい。なお、植物性油などの液状分解剤は上記温度範囲では分解せず、スラリー状混合物を安定に構成する成分として十分に機能できる。
【0036】
配管14に押し出されたスラリー状混合物は、加熱ヒータ15で周囲から加熱されるので、十分な流動性を維持した状態で熱分解器1に連続的に供給される。その際、熱分解器1の原料供給側におけるシール性はスラリー状混合物の液成分の存在により確実に確保される。なお加熱ヒータ15による加熱温度は、少なくとも100℃以上、好ましくは200℃程度に設定するが、前記加熱ヒータ13と同じような範囲に設定してもよい。
【0037】
粉末状のポリウレタンと液状分解剤との均一混合体であるスラリー状混合物は、熱分解器1内で酸素不存在状態において、加熱部6によりオリゴマー段階に熱分解できる温度、例えばポリウレタンの場合は300〜350℃程度の範囲に加熱される。その際、加熱によるポリウレタンの長鎖の切断が液状分解剤により促進されるので、ポリウレタンは比較的短い時間でオリゴマー段階まで熱分解される。所定のオリゴマー段階まで熱分解するために必要な熱分解時間(滞留時間)は加熱温度に概略反比例する傾向にあるが、通常、数十分〜1〜2時間程度の範囲である。なお加熱温度と滞留時間は目的とする分解物の分子量分布が所定範囲になるように適宜選択される。
【0038】
熱分解器1におけるスラリー状混合物の温度を300℃〜350℃程度の範囲に加熱するには、加熱ガス発生装置22から加熱部6に供給される加熱ガスの温度を400℃〜450℃程度の範囲にすることが望ましい。加熱ガス発生装置22における燃焼ガス温度は通常1000℃以上の高温になるが、例えば図示しない冷却空気供給手段により冷却空気を混合することにより、上記範囲の温度に調整して加熱部6に供給することができる。
【0039】
熱分解器1でポリウレタン等の熱硬化性樹脂から生成したオリゴマーの分子量分布は1000〜10000程度の範囲であり、残留する液状分解剤との混合液として熱分解槽3の底部に滞留する。滞留したオリゴマーと液状分解剤の混合液は開閉弁17を適宜開けることにより排出部3bから配管dに排出し回収タンク19に回収される。回収タンク19に回収された目的物は通常アスファルトとして知られている物質と似た性状を有し、例えば道路材や燃料、あるいは化学原料として利用される。
【0040】
一方、熱分解器1ではポリウレタンの一部がガス成分として蒸発し、ガス排出部3aから配管eを経て凝縮器20に流入する。凝縮器20に流入したガス成分はそこで冷却水等の冷媒により冷却され、高沸点成分が油分として凝縮されて配管fを経て回収タンク21に回収される。また凝縮器20で凝縮しない低沸点成分は配管gから流出する。この低沸点成分は炭化水素系の可燃性ガスであるから、例えば図示のように加熱ガス発生装置22に供給し、その燃料の一部として利用される。なお回収タンク21に回収された油分も加熱ガス発生装置22の燃料として利用することができる。
【0041】
図2は本発明の熱分解方法を実施する他の装置のプロセスフロー図である。図2の実施形態が図1の例と異なる部分は、熱分解器1が管型であること、粉末状のポリウレタンと液状分解剤を混合する混合手段7が省略され、押出機9のシリンダ11部分に液状分解剤直接供給されること、の2点であり、そのほかは前記同様に構成される。従って図1と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
図2における熱分解器1は、ステンレス製の細長い管型の熱分解管24と、その周囲に配置された加熱部6を有する。熱分解管24の一方の端部に原料供給部3が設けられ、その原料供給部3は配管14を介して2軸スクリュー式の押出機9のシリンダ11に連通する。また熱分解管24の他方の端部上方にガス排出部3aが設けられ、ガス排出部3aは配管eを介して凝縮器20に連通する。
【0043】
さらに熱分解管24の他方の端部下部に生成物を排出する液排出部3bが設けられ、液排出部3bは配管dを介して生成物の回収タンク19に連通する。このような管型の熱分解管24は内容積が比較的小さく、熱分解温度を高めに設定してスラリー状混合物の滞留時間を短くして運転できることであり、連続運転に適している。
【0044】
次に原料供給系について説明すると、図2の例では粉末状のポリウレタンを押出機9のホッパ10に直接供給する。さらに押出機9におけるシリンダ11の途中に液状分解剤を導入する導入部11aが設けられ、その導入部11aに配管bからポンプ25で液状分解剤を供給するようになっている。シリンダ11に供給された液状分解剤は、そこでホッパ10から供給される粉末状のポリウレタンと混合され、スラリー状混合物となってシリンダ11の出口部から配管14に排出される。なお図2に示す原料供給系は図1の原料供給系に適用することもできる。
【0045】
これまで説明した実施形態では、熱硬化性樹脂として発泡ポリウレタンを原料として使用しているが、本発明の熱分解方法は、それ以外の種類の発泡もしくは非発泡の熱硬化性樹脂にも適用できる。また前記実施形態では説明していないが、目的物であるオリゴマーの引火点を下げ、またはその臭気を低減するようにスラリー混合物を熱分解することもできる。その場合には熱分解器1を減圧状態で運転したり、生成したオリゴマーをさらに蒸留装置で蒸留するなどの手段を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の熱硬化性樹脂の熱分解方法および装置は、ポリウレタン等の熱硬化性の廃プラスチックをオリゴマーに熱分解するために利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の熱分解方法を実施する装置のプロセスフロー図。
【図2】本発明の熱分解方法を実施する他の装置のプロセスフロー図。
【符号の説明】
【0048】
1 熱分解器
2 熱分解槽
3 原料供給部
3a ガス排出部
3b 液排出部
4 スクレーパ
5 駆動手段
【0049】
6 加熱部
7 混合手段
8 攪拌手段
9 押出機
10 ホッパ
11 シリンダ
11a 導入部
12 スクリュー
12a 駆動手段
【0050】
13 加熱ヒータ
14 配管
15 加熱ヒータ
16、17 開閉弁
18 ポンプ
19 回収タンク
20 凝縮器
【0051】
21 回収タンク
22 加熱ガス発生装置
23 バーナ
24 熱分解管
25 ポンプ
a〜g配管
D1、D2 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を液状分解剤と混合して連続的に熱分解する方法であって、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物をスクリュー式の押出機9から配管14を介して熱分解器1に連続的に供給することを特徴とする熱硬化性樹脂の熱分解方法。
【請求項2】
請求項1において、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤との混合を前記押出機9で行うことを特徴とする熱硬化性樹脂の熱分解方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記押出機9のスクリュー12が2軸スクリューであることを特徴とする熱硬化性樹脂の熱分解方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、前記スラリー状混合物の流通性を確保するように前記配管14を加熱することを特徴とする熱硬化性樹脂の熱分解方法。
【請求項5】
熱硬化性樹脂を液状分解剤と混合して連続的に熱分解する装置であって、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物を生成するスクリュー式の押出機9と、熱分解器1と、前記押出機9の出口側と熱分解器1を接続する配管14を備えていることを特徴とする熱硬化性樹脂の熱分解装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−204516(P2007−204516A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21876(P2006−21876)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【出願人】(599003811)東京エルテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】