説明

熱硬化性重合体組成物およびその硬化物

【課題】耐熱性、可撓性、靭性、電気特性を改善する熱硬化性重合体組成物を提供する。
【解決手段】 式(1)で表されるシルセスキオキサン骨格を繰り返し単位として有する化合物の少なくとも1つである第1成分と、オキシラニル、オキシラニレンまたは3、4−エポキシシクロヘキシルを有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の少なくとも1つである第2成分と、硬化剤である第3成分とを必須成分として含有する熱硬化性重合体組成物:


ここに、R1a〜R1dはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子部品絶縁材料、積層板等の複合材料、接着剤、塗料等に用いられる熱硬化性重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、耐熱性や接着力、電気的性質、機械的性質が優れているため、電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等、広範囲の用途で使用されている。近年、電子機器のダウンサイジング化、ポータブル化、高性能化が急速に進んでいるため、エポキシ樹脂に対する要求がますます高まってきている。特に耐熱性の向上が求められるようになってきており、その解決手段として、エポキシ樹脂中の官能基密度を上げることにより硬化物の架橋密度を高める方法や、樹脂骨格中に剛直な骨格を導入する手法といった、エポキシ樹脂自体の構造改良や、ガラス繊維、シリカ粒子やマイカ等のフィラーを充填する方法が検討されている。しかし、このようなエポキシ樹脂自体の構造改良やフィラー等の添加による手法では充分な改善効果が得られていなかった。
【0003】
そこで特許文献1に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と加水分解性アルコキシシランを脱アルコール反応させて得られる、アルコキシ基を有するシラン変性エポキシ樹脂を使用する方法が提案されている。しかし、副生物として生成するアルコール、水のため硬化物にボイド等の欠陥が生じやすいという問題が指摘されている。特許文献2には分子中にケイ素とエポキシ基を持ったポリオルガノシロキサンを用いて改善する方法が提案されている。しかしこの方法により得られる化合物は、安定性向上の為に主鎖末端の水酸基および/またはアルコキシ基をエンドキャップする工程が必要であること、さらには目的物を得るためには、あらかじめメルカプト基を導入し、これにエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物をラジカル開始剤存在下でマイケル付加反応させることにより、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサンを得るという多段階の工程が必要であり効率的ではなかった。また本方法では、得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの耐熱性には言及されていなかった。特許文献3および特許文献4には、エポキシ基を置換基に有するトリアルコキシシランを、またはこの化合物とエポキシ基を有さないトリアルコキシシランとを、塩基性触媒の存在下、(共)加水分解縮合させて得られる、エポキシ基を有するケイ素化合物を用いる、熱硬化性重合体組成物が提案されている。しかし得られた硬化物は、高温時の弾性率、および線膨張係数に関して改善は認められたが、硬くて脆いといった欠点を有しており、改善が望まれていた。
【0004】
また、近年の各種電子情報機器の信号は、高速化、高周波数通信が必須となって、伝送特性の向上が求められるようになったため、低誘電率材料が望まれている。しかし、通常のエポキシ樹脂では、硬化剤との反応において、エポキシ基の開環により極性の高い水酸基が生成するため、誘電率を低下させることができなかった。
【0005】
そこで、多価カルボン酸を有する化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物から得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を持つ芳香族化合物を硬化剤として用いる方法が提案された(特許文献5)。この方法によれば、エポキシ樹脂と硬化剤の反応により生成する極性の高い水酸基が活性エステル基と反応して、極性の低いエステル基が生成するため、水酸基を生成せず低誘電性であるとされている。しかし、得られた硬化物の誘電率は、十分満足できるものではなかった。特許文献6には、多官能のエポキシ樹脂とシリコーンエポキシ樹脂、多官能のアクリル樹脂とシリコーンアクリル樹脂、硬化剤にアミン、そして無機フィラーを含有する重合体組成物が開示されている。この公報によればエポキシ樹脂とアクリル樹脂を反応させることによって、極性基の含有量を低下させて低
誘電率化し、シリコーン樹脂を含有させる事によって可撓性が付与されると記述されている。しかしながら、耐熱性と誘電特性は改善されているるものの必ずしも十分ではなく、可撓性に関しては具体的な記載が無い。特許文献7〜11には、かご型ケイ素化合物及びその重合体が開示されているが、本発明の熱硬化性重合体組成物は開示されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−059013号公報
【特許文献2】特開平10―324749号公報
【特許文献3】特開2004―256609号公報
【特許文献4】特開2004―346144号公報
【特許文献5】特開2002―012650号公報
【特許文献6】特開2000―017147号公報
【特許文献7】WO2004/081084号パンフレット
【特許文献8】特開2004−331647号公報
【特許文献9】特開2006−070049号公報
【特許文献10】WO2003/024870号パンフレット
【特許文献11】WO2004/024741号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱硬化性重合体硬化物の耐熱性、可撓性、靭性、電気特性を改善することを目的とし、そのための熱硬化性重合体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の[1]〜[16]項で構成される。
[1] 式(1)で表されるシルセスキオキサン骨格を繰り返し単位として有する化合物の少なくとも1つである第1成分と、オキシラニル、オキシラニレンまたは3、4−エポキシシクロヘキシルを有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の少なくとも1つである第2成分と、硬化剤である第3成分とを必須成分として含有し、オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有し、且つ分子中にケイ素を含まない化合物および硬化促進剤の少なくとも1つである第4成分を任意成分として含有する熱硬化性重合体組成物:
【化1】


ここに、R1a〜R1dはそれぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数4〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;そして、R1a〜R1dの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である。
【0009】
[2] R1a〜R1dがそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル、シクロヘキシル、フェニル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;そして、R1a〜R1dの少なくとも1つがオキシラニル、オキシ
ラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である、[1]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0010】
[3] R1a〜R1dがそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル、フェニルまたはオキシラニルもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;そして、R1a〜R1dの少なくとも1つがオキシラニルもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である、[1]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0011】
[4] 第2成分が式(2)〜式(5)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化2】


ここに、Rは独立して、炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;炭素数1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよく;この炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素原子の数は1〜10であり、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Yは式(a)で表される基であり;
【化3】


ここに、Xは独立して、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;フェニルアルキルのアルキレンにおいて、1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Xの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポ
キシシクロヘキシルを有する基である:
【化4】


ここに、Rは式(2)におけるRと同じ意味を有し、Yは独立して式(b)で表される基または式(c)で表される基であり;
【化5】


ここに、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xは式(a)におけるXと同じ意味を有し、そして式(c)におけるZは−O−、−CH−または単結合である:
【化6】


ここに、RおよびYは式(2)におけるRおよびYとそれぞれ同一の意味を有する:
【化7】


ここに、Yはそれぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素原子の数が2〜10のアルケニル、アリール、式(d)で表される基、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;式(d)におけるXはシクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;フェニルアルキルのアルキレンにおいて、1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
そして、Yの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基、またはXがオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である式(d)の基である。
【0012】
[5] 第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つである、[4]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0013】
[6] 第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つであり;Rが独立して、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;
Xが独立して、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル
、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である、[4]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0014】
[7] 第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つであり;Rがシクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;
式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であって、残りのXが炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、[4]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0015】
[8] 第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つであり;Rがシクロヘキシルまたはフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニルまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチル、エチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルである、[4]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0016】
[9] 第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つであり;Rがフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニルまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチルまたはフェニルである、[4]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0017】
[10] 第2成分が式(2−1)で表される化合物である、[4]項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化8】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【0018】
[11] 第2成分が式(2−2)で表される化合物である、[4]項に記載の熱硬化性
重合体組成物:
【化9】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【0019】
[12] 第2成分が式(3−1)で表される化合物である、[4]項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化11】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【0020】
[13] 第2成分が式(3−2)で表される化合物である、[4]項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化11】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【0021】
[14] 第3成分がアミン化合物である、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0022】
[15] 第1成分と第2成分の配合比率が、重量比99/1〜1/99である、[1]〜[14]のいずれか1項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0023】
[16] [1]〜[15]のいずれか1項に記載の熱硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物。

【発明の効果】
【0024】
本発明により、従来のエポキシ基を有するラダー状のシルセスキオキサン重合体硬化物の脆性的性質を改善し、なお且つ低誘電率を示す硬化物が得られる。従って、本発明の硬化物は、例えば次世代の電気・電子産業、通信機器産業用材料(半導体封止材料やフレキシブル基板材料など)や塗料、接着剤として有用である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明で用いる用語について説明する。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても同様に簡略化して称することがある。「任意のAはBまたはCで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられる場合および少なくとも1つのAがCで置き換えられる場合に加えて、少なくとも1つのAがBで置き換えられると同時に、その他のAの少なくとも1つがCで置き換えられる場合があることを意味する。本明細書に記載される化学式において、Meはメチルであり、そしてPhはフェニルである。実施例においては、電子天秤の表示データを質量単位であるg(グラム)を用いて示した。重量%や重量比はこのような数値に基づくデータである。
【0026】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、必須の第1成分として式(1)で表されるシルセスキオキサン骨格を繰り返し単位として有する化合物の少なくとも1つを含有する。
【化12】


式(1)におけるR1a〜R1dは、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数4〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、トリル、ナフチル、およびオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基を挙げることができる。そして、R1a〜R1dの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である。なお、以下の説明においては、オキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基をエポキシ含有基と称することがある。
【0027】
1a〜R1dの好ましい例は、炭素数1〜6のアルキル、シクロヘキシル、フェニル、およびエポキシ含有基から独立して選択される基である。そしてR1a〜R1dの少なくとも1つはエポキシ含有基である。
【0028】
1a〜R1dのより好ましい例は、炭素数1〜3のアルキル、フェニル、およびエポキシ含有基から独立して選択される基である。そしてR1a〜R1dの少なくとも1つはエポキシ含有基である。
【0029】
化合物(1)は、公知の方法により得ることができる。例えば特許文献3によれば、エ
ポキシ含有基を有するアルコキシシランを、またはエポキシ含有基を有するアルコキシシランとエポキシ含有基を持っていないアルコキシシランとを、酸性或いは塩基性触媒の存在下で(共)加水分解するとともに、重縮合させることにより、重量平均分子量が400〜50000のエポキシ含有基を有するシルセスキオキサンを得ることができる。重量平均分子量が400以上であれば、耐熱性向上効果を期待でき、50000以下であれば、組成物にした場合の相溶性、粘度といった組成物としての物性を好ましく維持できる。
【0030】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、必須の第2成分としてエポキシ含有基を有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の少なくとも1つを含有する。このかご型構造は、複数の環状シロキサンが閉じた空間を形成している構造であり、その閉じた空間の形状は特に限定されない。さらに本発明では、かご型構造の少なくとも1箇所以上が塞がれていない構造を有するシルセスキオキサンも包含する。このようなかご形構造のシルセスキオキサン誘導体の例として、式(2)〜式(5)のそれぞれで表される化合物を示すことができる。
【0031】
【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
式(2)〜式(4)において、Rは独立して、炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、アリール、またはアリールアルキルである。即ち、式(2)および式(3)のそれぞれにおける8つのRは異なる2つ以上の基で構成されてもよいが、すべてが同じ基であることが好ましい。式(4)における7つのRについても同様である。この炭素数1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいが、隣接した−CH−がともに−O−で置き換えられることはない。このアルキルの好ましい炭素数は1〜10である。
【0035】
Rが炭素数4〜8のシクロアルキルであるとき、架橋構造の基であってもよい。シクロアルキルの好ましい例はシクロペンチルおよびシクロヘキシルであり、シクロヘキシルがより好ましい。
【0036】
Rがアリールまたはアリールアルキルであるとき、これらの基中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよい。ハロゲンの例はフッ素、塩素および臭素である。この炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいが、隣接した−CH−がともに−O−で置き換えられることはない。このアルキルの好ましい炭素数は1〜4である。アリールアルキル中のアルキレンにおいて、その炭素原子の数は1〜10であり、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいが、隣接した−CH−がともに−O−で置き換えられることはない。このアルキレンの好ましい炭素数は1〜4である。
【0037】
このようなアリールの例は、フェニル、ハロゲン化フェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−ブチルフェニル、4−オクチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−ブトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、3−クロロ−4−メチルフェニル、3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル、および2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニルである。これらのうちで、フェニルが特に好ましい。
【0038】
前記のようなアリールアルキルの例は、フェニルメチル、フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、4−クロロフェニルメチル、4−フルオロフェニルメチル、2−(4−フルオロフェニル)プロピル、2−(4−クロロフェニル)エチル、4−メチルフェニルメチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−(2,5ジメチルフ
ェニル)エチル、4−トリフルオロメチルフェニルメチル、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、2−(4−エテニルフェニル)エチル、4−メトキシフェニルメチル、4−エトキシフェニルメチル、2−(4−メトキシフェニル)エチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピル、2−クロロ−4−メチルフェニルメチル、および2,5−ジクロロ−4−メチルフェニルメチルである。
【0039】
式(2)におけるYは式(a)で表される基であり、式(4)におけるYも同じ意味を有する。
【化16】


式(a)におけるXは、独立してシクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはエポキシ含有基である。フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。フェニルアルキルのアルキレンにおいて、1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよい。そして、Xの少なくとも1つはエポキシ含有基である。
【0040】
Xの1つがエポキシ含有基であって、残りのXがシクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、および任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基であることが好ましい。
【0041】
式(3)におけるYは、式(b)で表される基または式(c)で表される基である。製造コストを考慮するとき、式(2)における2つのYは同一の基であることが好ましいが、異なる基であっても構わない。
【化17】


ここに、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xは式(a)におけるXと同じ意味を有し、そして式(c)におけるZは−O−、−CH−または単結合である。
【0042】
【化18】

【0043】
式(5)におけるYは、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル、炭素原子の数が2〜10のアルケニル、アリール、式(d)で表される基、またはエポキシ含有基である。式(d)におけるXはシクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはエポキシ含有基である。フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。フェニルアルキルのアルキレンにおいて、1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよい。そして、Yの少なくとも1つはエポキシ含有基またはXがエポキシ含有基である式(d)の基である。
【0044】
上記の化合物(2)〜化合物(5)のうちで、化合物(2)および化合物(3)が好ましい。このとき、化合物(2)および化合物(3)の好ましい範囲は、RとXに関して次のように示される。即ち、Rが独立して、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;
Xが独立して、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはエポキシ含有基であり、フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、
Xの少なくとも1つはエポキシ含有基である。
【0045】
化合物(2)および化合物(3)のより好ましい範囲は、RとXに関して次のように示される。即ち、Rがシクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;
式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがエポキシ含有基であって、残りのXが炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。
【0046】
化合物(2)および化合物(3)のさらに好ましい範囲は、RとXに関して次のように示される。即ち、Rがシクロヘキシルまたはフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがエポキシ含有基であり、そして残りのXがメチル、エチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルである。
【0047】
化合物(2)および化合物(3)の特に好ましい範囲は、RとXに関して次のように示される。即ち、Rがフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがエポキシ含有基であり、そして残りのXがメチルまたはフェニルである。
【0048】
オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基の好ましい例を次に示す。
【化19】


これらの式において、RおよびRは炭素数1〜6のアルキレンである。このアルキレンにおける1つの−CH−は−O−または1,4−フェニレンで置き換えられてもよい。そして、Rは水素または炭素数1〜6のアルキルである。
【0049】
これらの式で表される基のうち、オキシラニルもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基がより好ましい。即ち、式(2)における式(a)、および式(3)における式(b)または式(c)においては、Xの1つがオキシラニルもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であることが好ましい。このような基の具体例として、2−グリシドキシエチル、3−グリシドキシプロピル、4−グリシドキシブチル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル、およびオキシラニルフェニルを挙げることができる。
【0050】
オキシラニルもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基の特に好ましい例は、3−グリシドキシプロピル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、およびオキシラニルフェニルである。
【0051】
化合物(2)および化合物(3)の特に好ましい例を次に示す。ここに例示する化合物は、特許文献10および11を参照することにより得ることができる。
【化20】

【0052】
【化21】

【0053】
【化22】

【0054】
【化23】

【0055】
本発明の熱硬化性重合体組成物において、第2成分の使用割合は、第1成分と第2成分の合計量を基準として1〜99重量%であり、好ましくは25〜75重量%である。
【0056】
本発明の熱硬化性重合体組成物に必須の第3成分は硬化剤である。この硬化剤は、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、ケチミン系化合物などから選択することができ、選択に当たって特別の制限はない。硬化剤としては、脂肪族アミン、ピリジン、脂環式アミン、芳香族アミン、第3アミン、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、有機酸、フェノール類、イミダゾール類、三フッ化ホウ素−アミン錯体などを挙げることができる。
【0057】
脂肪族アミンの例は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレントリアミン、ビスシアノエチルアミン、およびテトラメチルグアニジンである。複素環式アミンの例は、ピリジン、ピラジン、キノリンおよびピペリジンである。脂環式アミンの例は、メセンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチル−シクロヘキサン、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタン、およびビス(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)メタンである。芳香族アミンの例は、ベンジルメチルアミン、α−メチル−ベンジルメチルアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、およびジアミノジフェニルエーテルである。第3アミンの例は、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ジメチルアミノメチルフェノール、およびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである。これらの他、ポリアミン-ビスフェノールAジグリシジルエーテル付加物、ポリアミン-フェニルグリシジルエーテル付加物、ポリアミン-エチレンオキシド付加物、ポリアミン-シアノエチル付加物などのアミンアダクト類や、ポリアミンとケトンの脱水反応物で第一アミノ基を封鎖したケチミン(ケトイミン)、潜在性硬化剤として知られているジシアンジアミドなども挙げることができる。
【0058】
脂肪族酸無水物の例は、無水マレイン酸、ドデシルコハク酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバチン酸無水物およびメチルシクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物である。脂環式酸無水物の例は、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物およびメチルテトラヒドロフタル酸無水物である。芳香族酸無水物の例は、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物およびベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物である。有機酸の例は、シュウ酸、トリメリット酸グリコールおよびカルボン酸含有ポリエステル樹脂である。フェノール類の例は、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼンおよびジヒドロキシナ
フタレンである。イミダゾール類の例は、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールおよび2−ヘプタデシルイミダゾールである。三フッ化ホウ素−アミン錯体の例は、BF−モノエチルアミン、BF−モノエタノールアミンおよびBF−ピペラジンである。これらの他、フェノール類と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類とジエン化合物との重合物などを挙げることができる。
【0059】
これらの硬化剤は用途や目的に応じて、単独で用いることもできるし、複数組み合わせて用いることもできる。硬化剤の使用量は、組成物中のエポキシ基1当量に対して0.2〜1.5当量が好ましく、0.3〜1.2当量が特に好ましい。ベンジルジメチルアミン等の3級アミンをアニオン重合触媒として使用する場合のその使用量は、組成物中のエポキシ基を有する化合物の全重量に対する重量比で、0.003〜0.20であることが好ましい。この重量比のより好ましい範囲は、0.005〜0.10である。
【0060】
以下の説明では、オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを含有し、且つ分子中にケイ素を含有しない化合物を、非ケイ素系エポキシ樹脂と称することがある。
本発明の熱硬化性重合体組成物の第4成分は必要に応じて用いられる成分である。この第4成分は、非ケイ素系エポキシ樹脂および硬化促進剤の少なくとも1つである。
非ケイ素系エポキシ樹脂の例は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂など)、2個のオキシラニルを有するエポキシ樹脂(ビフェニル型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)、多官能複素環式エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなど)、および3個以上のオキシラニルを有するエポキシ樹脂(ポリ(エポキシ化シクロヘキセンオキサイド)などの多官能脂環式エポキシ樹脂など)である。これらのうち、透明性の観点から着色の少ない、ビスフェノール型エポキシ樹脂や複素環式エポキシ樹脂を用いることがより好ましく、複素環式エポキシ樹脂の中でもトリグリシジルイソシアヌレートが好ましい。これらエポキシ樹脂は、2種以上を併用してもよい。
【0061】
非ケイ素系エポキシ樹脂を用いるとき、その割合は、第1成分と第2成分と非ケイ素系エポキシ樹脂との合計量を基準として、1〜90重量%である。この割合の好ましい範囲は1〜50重量%、より好ましい範囲は1〜10重量%である。前記の硬化剤の使用量は、非ケイ素系エポキシ樹脂のエポキシ基も考慮して設定される。
【0062】
硬化促進剤の具体例として、トリフェニルフォスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、第4級ホスホニウム塩、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などが挙げられる。硬化促進剤を用いるとき、その使用量は、組成物中のエポキシ基を有する化合物の全量に対する重量比で、0.0001〜0.15である。
【0063】
本発明の熱硬化性重合体組成物には、必要に応じてシリカ、アルミナ、ガラスファイバー、タルク等の充填材や離型剤、顔料、表面処理剤、粘度調整剤、可塑剤、安定剤、カップリング剤等、種々の配合剤を添加することができる。
【0064】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、これを溶剤に溶解してワニスとして使用されることができる。溶剤としては、組成物の各成分を溶解するものであれば特に限定されないが、例えばトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。このようなワニスを、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ、加熱乾
燥して得たプリプレグを熱プレス成形して本発明の硬化物を得ることもできる。このとき、本発明の熱硬化性重合体組成物と溶剤の合計重量に対する溶剤の割合は、10〜70重量%であり、好ましくは15〜65重量%である。
【0065】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の熱硬化性重合体組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば、上記第1成分の化合物と第2成分のシルセスキオキサン誘導体と第3成分の硬化剤並びに必要により第4成分の硬化促進剤および配合剤を、必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して重合体組成物を得、その重合体組成物を溶融後注型あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することによりその硬化物を得ることができる。
【0066】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、従来のエポキシ樹脂に比べ、耐熱性、可撓性、誘電特性に優れた硬化物を得ることができる。そのため、本発明の熱硬化性重合体組成物から得られる硬化物は、プリント基板用樹脂、積層板用樹脂、電気絶縁用樹脂、封止剤用樹脂、各種接着剤用樹脂等の用途に有効に用いることができる。そして、必要に応じて、ガラス、アラミド、ポリエステルなどのクロスや不織布などの基材、あるいはシリカやマイカなどの充填剤を含んだ形で、プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、ビルドアップの層間絶縁材用の融着フィルム、コート材、樹脂付き銅箔等の用途に有効に用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。
(1)重量平均分子量:GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定。
(2)エポキシ当量:JIS K−7236に準じた方法で測定。
【0068】
[合成例1]
<エポキシ基を有するシルセスキオキサン(PGPSQ)の合成>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン85.1部、フェニルトリメトキシシラン7.9部、メチルイソブチルケトン93部を反応容器に仕込み、80℃に昇温した。昇温後、0.1重量%水酸化カリウム水溶液21.6部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、生成するメタノールを除去しながら80℃にて5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりエポキシ基を有するケイ素化合物69部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は190g/eq、重量平均分子量は2200であった。本エポキシ化合物のH−NMR(CDCl溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、およびメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)が消失していることが確認できた。
【0069】
[合成例2]
<化合物(1−1)の合成>
エポキシ基を有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体(DDPSQ)である化合物(1−1)を以下のようにして合成した。
(第1段階)
環流冷却器、温度計、および滴下漏斗を取り付けた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(6.54kg)、水酸化ナトリウム(0.88kg)、水(0.66kg)、および2−プロピルアルコール(26.3リットル)を仕込んだ。窒素シールしたのち、撹拌しながら還流するまで加熱した。そして還流温度で4時間撹拌を継続したのち反応液を
室温で1晩静置した。そして窒素ガスを用いて加圧濾過器で濾過することにより固体を得た。得られた固体を2−プロピルアルコールで1回洗浄、濾過したのち70℃で5時間減圧乾燥を行いの白色状固体(2.22kg)を得た。これを化合物(d−1)とする。
【0070】
(第2段階)
滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた反応容器に、前段の方法により製造された化合物(d−1)(69g)、トルエン(540g)を仕込み、窒素シールした。撹拌しながらクロロジメチルシラン(91g)を約35分間で滴下した。そして還流するまで加熱したのち、還流開始から3時間撹拌を継続した。次いで反応液が50℃以下になるまで冷却したのち、水(160g)を滴下漏斗からゆっくりと滴下した。滴下終了後10分間撹拌したのち分液漏斗へ移し有機層と水層に分離した。有機層は3回水洗を行なったのち無水硫酸マグネシウムで乾燥した。そして無水硫酸マグネシウムを濾別したのち、濃縮して(71g)の固体を得た。得られた固体はノルマルヘプタン(240g)で洗浄したのち、減圧乾燥することにより白色状固体(d−2)(50g)を得た。
【0071】
(第3段階)
温度計、滴下漏斗、および還流冷却器を備えた反応容器に、前第2段階で合成した化合物(d−2)(39g)、アリルグリシジルエーテル(21g)、およびトルエン(60g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。そして撹拌しながら80℃に加熱したのち、Karsted触媒(白金−ジビニルジシロキサン錯体の3%キシレン溶液;40マイクロリットル)を添加した。そして3時間撹拌を継続したのち、反応液の一部をサンプリングして赤外線吸収スペクトルを測定した結果、Si−Hの伸縮振動に由来する2138cm−1のピークが消失していることを確認し、反応を終了した。そして反応液を減圧濃縮することにより化合物(1−1)(51g)を得た。
【0072】
<化合物(1−1)の分析結果>
29Si−NMR(溶剤:CDCl):δ(ppm);11.38、−75.79、−78.53
H−NMR(溶剤:CDCl):δ(ppm);0.02(s,24H)、
0.42−0.46(m,8H)、1.31−1.35(m,8H)、2.49−2.51(m,4H)、2.71−2.73(m,4H)、2.99−3.04(m,12H)、3.15―3.19(m,4H)、3.40−3.44(m,4H)、7.10−7.44(m,40H)
【化24】

【0073】
<化合物(2−1)の合成>
エポキシ基を有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体(DDPSQ)である化合物(2−1)を以下のようにして合成した。
(第1段階)
滴下漏斗、還流冷却器、および温度計を備えた反応容器に、合成例1の第1段階で示し
た方法と同様にして製造した(d−1)(3.0kg)、ジクロロメタン(20kg)、トリエチルアミン(130g)仕込み窒素シールした。そして、撹拌しながら10℃以下に冷却したのちメチルジクロロシラン(744g)を液温が25℃以下に保たれるように滴下した。次いで、1時間撹拌を継続したのち、3重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液(7.3kg)、水(7.3kg)仕込んで撹拌した。10分間静置したのち有機層を抜き出し、得られた有機層を水(7.3kg)で1回洗浄した。そして無水硫酸マグネシウム(1kg)で乾燥したのち濾過し、濃縮した。得られた残渣は酢酸エチル(6.6kg)で再結晶を行い化合物(d−3)(1.6kg)を得た。
【0074】
(第2段階)
還流冷却器、温度計を取り付けた反応容器に、前段の第1段階で示した方法により製造された化合物(d−3)(69g)、トルエン(700ミリリットル)、アリルグリシジルエーテル(27g)仕込み、乾燥窒素にてシールした。そして撹拌しながら100℃に加熱したのち、前記のKarsted触媒(白金−ジビニルジシロキサン錯体の3%キシレン溶液;(40マイクロリットル)を添加した。そして100℃で5時間撹拌を継続したのち、反応液の一部をサンプリングして赤外吸収スペクトルを測定した結果、Si−Hの伸縮振動に由来する吸収ピーク(2170cm−1)が消失していることを確認し、反応を終了した。そして、反応液を減圧濃縮することにより化合物(2−1)(77g)を得た。
【0075】
<化合物(2−1)の分析結果>
29Si−NMR(溶剤:CDCl):δ(ppm);−17.33、−78.39、−79.23、−79.31、−79.38
H−NMR(溶剤:CDCl):δ(ppm);0.30(s,6H)、0.72−0.77(m,4H)、1.64−1.72(m,4H)、2.42−2.66(m,4H)、2.95−2.98(m,2H)、3.15−3.19(m,2H)、3.31―3.37(m,4H)、3.43−3.47(m,2H)、7.17−7.53(m,40H)
【化25】

【0076】
<化合物(2−2)の合成>
エポキシ基を有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体(DDPSQ)である化合物(2−2)を以下のようにして合成した。
還流冷却器、および温度計を取り付けた反応容器に、合成例2の第1段階で示した方法により製造された化合物(d−3)(3.0g)、トルエン(26g)、前記のKarsted触媒(白金−ジビニルジシロキサン錯体の3%キシレン溶液)(5マイクロリットル)を加えて90℃に加熱した。そして4−ビニル−1−シクロヘキセン 1,2−エポキシド(0.7g)を滴下したのち、還流温度で5時間撹拌を継続した。そして室温まで冷却したのち、トルエン(26g)、水(70g)を加えて抽出した。有機層は水洗したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。そして減圧下濃縮し、得られた残査をシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:トルエン/酢酸エチル)で精製した。減圧下で溶媒を溜去したのち、エタノール/酢酸エチルから再結晶して、化合物(2−2)(0.8g)を得た。
【0077】
29Si−NMR(溶媒:CDCl):δ(ppm);−17.0、−78.7、−79.6(s,4Si)
H−NMR(溶媒:CDCl):δ(ppm);0.27(s,6H)、0.60−0.73(m,5H)、0.84−0.92(m,1H)、0.97−1.07(m,2H)、1.62−1.68(m,1H)、1.76−1.84(m,2H)、1.94−1.98(m,2H)、2.90−3.00(m,4H)、7.13−7.54(m,40H)
【化26】

【0078】
[実施例1〜3]
<硬化物の調製>
合成例1で得られたエポキシ基を有するシルセスキオキサン(PGPSQ)(第1成分)、合成例2で得られたエポキシ基を有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体(DDPSQ)(第2成分)、および硬化剤としてテトラエチレンペンタミン(第3成分)を、表1に示す配合量で均一に混合した。このようにして得られた重合体組成物をアルミカップに移し、実施例1は60℃で2時間、80℃で2時間、90℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で2時間、190℃で2時間加熱し硬化物を得た。実施例2および3では、それぞれ80℃で2時間、150℃で2時間、190℃で2時間加熱し、硬化物を得た。
【0079】
[比較例]
エポキシ基を有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体を加えない以外は、実施例1と同様にして熱硬化性重合体組成物を調製し、加熱して硬化物を得た。
【0080】
<ガラス転移点(Tg)の測定>
(株)レオロジ製 DVE−V4を用いて、温度依存性、引っ張りモード、測定周波数10Hz、変位幅5.0μm、温度範囲−150〜250℃、昇温速度2℃/min、歪み波形は正弦波で測定した。試料は幅が4mm、長さが30mm、厚みが0.4mmの帯状直方体の試験片を、減圧下180℃で4時間アニーリング処理を行ったものを用いた。
【0081】
<引っ張り試験>
株式会社島津製作所製 AGS−J 100を用いて、試験速度1mm/minで測定した。試料は(JIS K7113) 1号形試験片に準じて作製し用いた。
【0082】
<誘電率>
セイコー電子工業株式会社製 DES 100を用いて、測定周波数 100kHz、温
度範囲−100〜100℃、昇温速度4℃/minで測定した。試料は直径44mm、厚さ0.5mmの円盤平板状のものを用いた。
評価結果を表1に示した。
【0083】
【表1】

【0084】
表1から、本発明のかご型構造を有するシルセスキオキサンを含有する組成物から得られる硬化物は、かご型構造ではないエポキシ含有シルセスキオキサンのみの組成物から得られる硬化物に比べて、誘電率が低く、そして靭性が高いことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるシルセスキオキサン骨格を繰り返し単位として有する化合物の少なくとも1つである第1成分と、オキシラニル、オキシラニレンまたは3、4−エポキシシクロヘキシルを有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の少なくとも1つである第2成分と、硬化剤である第3成分とを必須成分として含有し、オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有し、且つ分子中にケイ素を含まない化合物および硬化促進剤の少なくとも1つである第4成分を任意成分として含有する熱硬化性重合体組成物:
【化1】


ここに、R1a〜R1dはそれぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数4〜8のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリール、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;そして、R1a〜R1dの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である。
【請求項2】
1a〜R1dがそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル、シクロヘキシル、フェニル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;そして、R1a〜R1dの少なくとも1つがオキシラニル、オキシラニレンもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である、請求項1に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項3】
1a〜R1dがそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル、フェニルまたはオキシラニルもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;そして、R1a〜R1dの少なくとも1つがオキシラニルもしくは3、4−エポキシシクロヘキシルを有する基である、請求項1に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項4】
第2成分が式(2)〜式(5)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化2】


ここに、Rは独立して、炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;炭素数1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよく;この炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素原子の数は1〜10であり、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Yは式(a)で表される基であり;
【化3】


ここに、Xは独立して、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;フェニルアルキルのアルキレンにおいて、1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Xの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である:
【化4】


ここに、Rは式(2)におけるRと同じ意味を有し、Yはそれぞれ独立して式(b)で表される基または式(c)で表される基であり;
【化5】


ここに、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xは式(a)におけるXと同じ意味を有し、そして式(c)におけるZは−O−、−CH−または単結合である:
【化6】


ここに、RおよびYは式(2)におけるRおよびYとそれぞれ同一の意味を有する:
【化7】


ここに、Yはそれぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素原子の数が2〜10のアルケニル、アリール、式(d)で表される基、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;式(d)におけるXはシ
クロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;フェニルアルキルのアルキレンにおいて、1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
そして、Yの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基、またはXがオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である式(d)の基である。
【請求項5】
第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つである、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項6】
第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つであり;Rが独立して、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;
Xが独立して、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの少なくとも1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項7】
第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つであり;Rがシクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;
式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であって、残りのXが炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項8】
第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つであり;Rがシクロヘキシルまたはフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニルまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチル、エチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルである、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項9】
第2成分が式(2)および式(3)のそれぞれで表される化合物の少なくとも1つであり;Rがフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニルまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチルまたはフェニルである、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項10】
第2成分が式(2−1)で表される化合物である、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化8】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【請求項11】
第2成分が式(2−2)で表される化合物である、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化9】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【請求項12】
第2成分が式(3−1)で表される化合物である、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化10】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【請求項13】
第2成分が式(3−2)で表される化合物である、請求項4に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化11】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【請求項14】
第3成分がアミン化合物である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項15】
第1成分と第2成分の配合比率が、重量比99/1〜1/99である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか1項に記載の熱硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物。

【公開番号】特開2007−332211(P2007−332211A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163563(P2006−163563)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】