説明

熱風乾燥機

【課題】水分を含んだ泥状物を機械的に攪拌しながら熱風を吹きかけて乾燥する熱風乾燥機であって、乾燥を効率良く行える構成を提供する。
【解決手段】下部筐体2内の回転軸4,5が回転駆動され、筐体2内に投下された泥状物がパドル41,51により攪拌される。上部筐体3の給気ダクト部32の上端の熱風入口から熱風が下方へ吹き込まれ、回転軸4,5の軸方向に拡がり、ダクト部32の下部内側から複数のノズル35を通り、前記軸方向に並ぶ複数箇所の位置で斜め下方に回転軸4,5上へ吹きかけられる。これにより泥状物が乾燥される。その後、熱風は後続の熱風により押し上げられて排気ダクト部31内を上昇し、上端の熱風出口311から排出される。ここでダクト部31内でのれん状仕切り部材36によって熱風の前記軸方向への移動が制限されるため、排気がスムーズに行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含んだ泥状物を機械的に攪拌しながら熱風を吹きかけて乾燥する熱風乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分を含んだ泥状物に熱風を吹きかけて泥状物を乾燥する工程において、工場の排熱の熱風を利用して乾燥を行うことができれば、排熱の有効利用で省エネルギーを図れる。しかしながら、排熱の熱風は圧力が低い。この低圧の熱風でも乾燥を効率良くして有効に行えるようにする必要がある。このため、泥状物を機械的に攪拌しながら熱風を泥状物に吹きかける方法が考えられる。この方法によれば、機械的に攪拌されている泥状物とこれに吹きかけられる熱風がよく混ざるので、乾燥を効率良く行うことができる。
【0003】
ここで泥状物を機械的に攪拌する攪拌機構の構成として、本出願人が先に提案している混練装置の攪拌機構の構成を利用することができる(特許文献1及び2参照)。その混練装置は、粉状物質と液体の混合物を攪拌して混練するものである。そして、攪拌機構の構成として、互いに平行に架設された2本の回転軸を有し、回転軸のそれぞれの外周面にはロッドやパドルなどの攪拌部材が複数立設されている。そして、2本の回転軸を互いに逆方向に回転させることにより、それぞれの攪拌部材が粉状物質と液体の混合物を攪拌し、回転軸の軸方向に搬送しながら混練する。そのとき2本の回転軸の攪拌部材が互いに相手の回転軸の外周面および攪拌部材に付着した混練物を掻き落とす、いわゆるセルフクリーニングを行うように構成することもできる。この混練装置の攪拌機構の構成を利用すれば、付着性の強い泥状物でも攪拌を支障なく行うことができる。
【特許文献1】特開平10−277376号公報
【特許文献2】特開2006−239554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような事情を考慮してなされたものである。本発明の課題は、水分を含んだ泥状物を機械的に攪拌しながら熱風を吹きかけて乾燥する熱風乾燥機であって、熱風による泥状物の乾燥を効率よく行え、低圧の熱風でも有効に行える熱風乾燥機の構成を提供することにある。より具体的には、上述した混練装置の攪拌機構の構成を利用するとともに、熱風の給気、吹きかけ、排気を適切に行って、泥状物の乾燥を効率良く行える構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明による熱風乾燥機は、
水分を含んだ泥状物を機械的に攪拌しながら熱風を吹きかけて乾燥する熱風乾燥機であって、
該乾燥機の筐体の下部内には、外周面に複数の攪拌部材を立設した複数の回転軸が前記筐体の幅方向に並んで互いに平行で水平または略水平に架設され、
前記筐体の上部側には、下側が開放され上端に熱風出口が形成された熱風の排気を導く排気ダクト部が前記複数の回転軸の真上で回転軸の軸方向に延びるように設けられるとともに、
上端に熱風入口が形成された熱風の給気を導く給気ダクト部が前記排気ダクト部に対して前記筐体の幅方向の片側のみに隣接して1つ又は両側のそれぞれに隣接して2つ、前記軸方向に延びるように設けられており、
泥状物の乾燥時には、前記複数の回転軸の回転駆動により、前記筐体内に投入された泥状物が攪拌されながら前記軸方向の一方向に搬送されるとともに、
熱風が前記熱風入口から前記給気ダクト部内に下方へ吹き込まれ、前記軸方向に拡がり、給気ダクト部の下部の前記排気ダクト部側から斜め下方に前記回転軸上へ吹きかけられて泥状物を乾燥し、その後、前記排気ダクト部内を上昇して前記熱風出口から排出されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による熱風乾燥機の構成によれば、乾燥動作時に、機械的に攪拌されている泥状物とこれに吹きかけられる熱風がよく混ざるので、乾燥を効率良く行うことができる。特に攪拌を熱風の圧力で行うわけではなく、機械的に行うので、熱風による乾燥を効率良く行うことができる。
【0007】
また、熱風の給気と排気を給気ダクト部と排気ダクト部に分けて互いに干渉せずにスムーズに行える。また、回転軸上への熱風の吹きかけは、給気ダクト部の下部の排気ダクト部側から斜め下方に向かって行われるので、支障なく行うことができる。さらに、熱風が給気ダクト部内で回転軸の軸方向に拡がってから回転軸上へ吹きかけられるので、回転軸の軸方向に均一に吹きかけることができる。これらの点からも熱風による乾燥を効率良く行うことができる。
【0008】
このように乾燥を効率良く行えるので、圧力が低い排熱の熱風を利用して泥状物の乾燥を有効に行うこともでき、排熱のエネルギーを利用して省エネルギーを図ることができるなどの優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付した図を参照して、本発明を実施するための最良の形態の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図11は実施例の熱風乾燥機(以下、単に乾燥機という)の構成を説明するものである。図1〜図4は乾燥機の全体を示す。図5〜図7は、乾燥機の筐体全体の下部(ほぼ下半部)を構成する下部筐体2側の構成を示す。図8〜図11は、筐体全体の上部(ほぼ上半部)を構成する上部筐体3側の構成を示している。
【0011】
これらの図において、下部筐体2はベースのフレーム1上に固定して設けられている。そして下部筐体2上に上部筐体3が固定され結合されて乾燥機の筐体全体が構成される。筐体2,3は、図1,2中の横方向に長く延びた形状に形成されている。以下、図1,2中の横方向を筐体の長さ方向(または後述する回転軸4,5の軸方向)という。また、筐体の長さ方向に直交する方向であって図3,4中の横方向を筐体の幅方向という。
【0012】
下部筐体2側の構成について説明する。下部筐体2の上側は開放されており、底面は後述する回転軸4,5のパドル41,51の軌跡に対応して湾曲している(図4,図7参照)。また、下部筐体2の長さ方向に沿った側面には、点検口22,23,24が形成されており、それぞれに着脱可能な蓋が設けられる(図1参照)。さらに、下部筐体2の図1,図6中で右端部の下側には泥状物を攪拌、乾燥して粒状化したものを排出するための排出口21が形成されている。
【0013】
そして、下部筐体2には、乾燥させる泥状物(以下、単に泥状物という)を回転軸4,5の回転駆動により攪拌しながら回転軸4,5の軸方向の一方向(図5,6中の右方向)に搬送する機構が設けられる。
【0014】
回転軸4,5は、下部筐体2内で筐体2,3の幅方向に並んで、筐体2,3の長さ方向に沿って、互いに平行で水平に架設される。厳密に水平ではなくて、略水平に架設してもよい。回転軸4,5の両端部は下部筐体2の外に突出しており、下部筐体2の外に固定された軸受6〜9により回転可能に支持されている。回転軸4,5の図5中の左端部にはギア10,11が固定されており、互いに噛み合っている。さらに回転軸4の左端にはスプロケット12が固定されている。
【0015】
一方、回転軸4,5を回転させる駆動源として、モータ13が下部筐体2外でフレーム1上に固定されている。モータ13の回転駆動力は、減速機14、スプロケット15、チェーン16及びスプロケット12を介して回転軸4に伝達される。これにより回転軸4が駆動軸として回転駆動される。さらに、その回転駆動力がギア10,11を介して回転軸5に伝達され、これにより回転軸5が従動軸として回転軸4に従動して逆方向に回転するようになっている。
【0016】
回転軸4の外周面上には複数のパドル41が、また回転軸5の外周面上には複数のパドル51がそれぞれ泥状物を攪拌するための攪拌部材として立設されている。パドル41,51は互いに同じものであり、長方形の板状の羽部分41a,51aの基端部に、長方形の板状の固定部41b,51bが垂直に形成されている。そして固定部41b,51bがネジなどで回転軸4,5の外周面に固定される。
【0017】
本実施例では、回転軸4,5の回転に伴って複数のパドル41,51どうしが互いに相手の回転軸5,4の外周面およびパドル51,41に付着した泥状物を掻き落とすセルフクリーニングを行うように構成する。このため、本実施例ではパドル41,51の配置などが以下のように構成される。
【0018】
各パドル51は、回転軸5の軸方向(筐体の長さ方向)に所定の等距離隔てて2枚ないし1枚ずつ設けられている。詳しくは、基本的には2枚ずつが互いに平行な2条の螺旋形の線に沿って並ぶように、周方向に全周の360°を5等分する72°の角度ピッチで配置されている(図7参照)。ただし、図5中の左端から3箇所目ごとに、一方の螺旋形の線上にのみ1枚のパドル51が配置されている。すなわち、左端から上記所定距離隔てて2枚、2枚、1枚の繰り返しで配置される。ただし右端は2枚、2枚で終わっている。
【0019】
パドル51の羽部分51aは、回転軸5の軸方向に対して所定角度(例えば45°)傾斜している。そして、羽部分51aの傾斜の向きは、上記2枚ずつの配置の所では、回転軸5の回転に伴って泥状物を搬送方向の正方向(図5中で右方向)に押圧する向きとなっている。これに対して上記1枚ずつの配置の所では、搬送方向の逆方向(左方向)に押圧する向きとなっている。
【0020】
各パドル41は、基本的にはパドル51と同様に、平行な2条の螺旋形の線に沿って、回転軸4の軸方向に所定の等距離隔てて、かつ周方向に所定角度ピッチで並ぶように配置されている。しかし、その螺旋形の線の巻回の向きはパドル41の螺旋形の線の向きと逆向きとする。また周方向の角度ピッチは全周を4等分する90°のピッチとしている(図7参照)。また、左端から上記所定距離隔てて2枚、2枚、1枚(向きは正、正、逆)の繰り返しで配置することはパドル51と同様である。ただし、例外として左端は1枚とし、その向きは正の向きとする。
【0021】
なお、パドル41,51が回転軸4,5の軸方向に隔てて配置される距離は等距離とし、パドル41,51は互いに軸方向に垂直な方向に対向する位置に配置される。また、回転軸4、5は、回転軸4、5が回転するにつれて各パドル41、51の先端が、対向する回転軸4、5の外周面に近接するように、互いに隔てて配置される。
【0022】
また回転軸4,5を不等速で回転させるものとする。そして、回転軸4,5の単位時間あたりの回転数比(ギア10,11のギア比の逆数の比)は、上記角度ピッチの比、ここでは90°:72°つまり5:4とする。このような構成により、セルフクリーニングを支障なく行うことができる。また、パドル41、51が形成する螺旋ピッチは、回転軸4、5の回転数と逆比、つまり1:1.25と成っており、回転軸4、5の軸方向の搬送速度を同じにすることができる。
【0023】
なお、パドル41,51の配置などの構成は上記のものに限らないことは勿論である。パドル41,51を配置する螺旋形の線は1条のみ、あるいは3条以上でもよい。上記の角度ピッチの比と回転数比は5:4に限らず、一般的に言うと、Nを2以上の整数としてN:N−1とすればよい。搬送方向の逆方向に対応した向きのパドルを混ぜる割合と配置や、枚数を減らす箇所の割合と配置なども上記のものに限らない。
【0024】
また、攪拌部材は、板状のパドルに限らず、例えば丸棒状のロッドなどを用いてもよい。
【0025】
次に、上部筐体3側の構成について説明する。図4の断面図に示すように、上部筐体3は、内部のスペースが内側板33,33によって、筐体の幅方向に3つのスペースに仕切られている。すなわち、中央の排気ダクト部31と、これに対して筐体の幅方向の左右両側に隣接した給気ダクト部32,32に仕切られている。排気ダクト部31は熱風の排気を導くものであり、給気ダクト部32,32は熱風の給気を導くものである。
【0026】
排気ダクト部31は、幅が下部筐体2と同じであって、下側が開放されており、下部筐体2の真上、つまり回転軸4,5の真上に配置される。そして排気ダクト部31内のスペースがそのまま下部筐体2内のスペースに連通するようになっている。
【0027】
排気ダクト部31と給気ダクト部32,32は回転軸4,5の軸方向に沿って延びている。
【0028】
また、図1〜図3などに示すように、給気ダクト部32,32の上面(上端)には、ここから外部の工場の排熱などの熱風が吹き込まれる熱風入口(給気口)321が設けられている。そして、排気ダクト部31の上面(上端)には、泥状物の乾燥に使用されて温度が下がった熱風を排気するための熱風出口(排気口)311が設けられている。
【0029】
また、排気ダクト部31には、点検を行うための点検口312,313が上面と図1中の右側の側面に設けられている。給気ダクト部32,32にも点検口322,323が図1中で左右の側面に設けられ、さらに給気ダクト部32内の清掃を行うための清掃口324,325が下面に設けられている。これらの口の全てに着脱可能な蓋が設けられ、蓋を外して点検ないし清掃を行い、また、蓋を装着してこれらの口を密閉できるようになっている。
【0030】
また、排気ダクト部31の図1で左側の側面には、図11に示すように、投入口314が形成されている。この投入口314に対して、図1,図9中に一点鎖線で示すように泥状物の投入装置50の先端部が嵌入される。そして、不図示のシール構造で投入口314をシールした状態で泥状物を筐体内に投入するようになっている。なお、前記シールを行う理由は、熱風の吹き出しによる火傷などの危険を防止するためである。
【0031】
一方、図10に示すように、排気ダクト部31側から給気ダクト部32側に向かって見て、内側板33の下部(給気ダクト部32の下部の排気ダクト部31側)には、複数のつば付きのノズル連結口34が排気ダクト部31側に少し突出して設けられている。ノズル連結口34は、筐体の長さ方向に間隔をおいて上下2列で互い違いに並んで複数設けられている。また、複数のノズル連結口34の2列の複数個所(ここでは3箇所)で筐体の長さ方向の間隔が大きくなっている。これにより複数のノズル連結口34が筐体の長さ方向に複数(ここでは4つ)のグループに分けられている。
【0032】
そして、図4,図8,図9に示すように、ノズル連結口34のそれぞれに対してノズル35が連結される。ノズル35は、それぞれ給気ダクト部32の下部からの熱風を斜め下方に導いて下部筐体2内の回転軸4,5上に吹きかけて泥状物の乾燥を行うためのものである。ノズル35は、ほぼ「へ」の字形に屈曲されており、基端部から先端部へ行くにつれて径が小さくなっている。そして、ノズル35は、ノズル連結口34に連結されて排気ダクト部31の下部内を通り、先端部が下部筐体2内において回転軸4,5の上方でパドル41,51に当たらない高さの位置に臨むように配置されている。各ノズル35は、各ノズル連結口34に連結されて、筐体の長さ方向に複数(ここでは4つ)のグループに分けられる。
【0033】
一方、図1,図4,図8,図9中に符号36で示すのれん状仕切り部材が排気ダクト部31のスペース内でのれん状に垂れ下がって揺動可能に設けられている。この仕切り部材36は揺動可能な複数枚の板材から構成される。ここでは図4に示すように、仕切り部材36は、ヒンジ36aを介して縦方向に2枚の板材を互いに揺動可能に連結したものを横方向に3組連ねて上端をヒンジ軸37で揺動可能に支持した6枚1組ののれん状のものとして構成される。縦方向に連結された2枚の板材はヒンジ36aの所で折り畳むことができる。ヒンジ軸37の両端部は、筐体の幅方向両側の内側板33,33の上部寄りの所定高さの位置のそれぞれに固定される。ヒンジ軸37の方向、つまり仕切り部材36の幅(横)方向は筐体の幅方向に沿っている。仕切り部材36の板材部分の全幅は排気ダクト部31の内側の幅より僅かに小さい。
【0034】
また、仕切り部材36は、排気ダクト部31内で筐体の長さ方向(回転軸4,5の軸方向)の複数箇所(ここでは4箇所)の位置に設けられる。その配置により、排気ダクト部31内の空間で排気ダクト部31の高さの中間の所定高さ(ヒンジ軸37の高さ)以下の空間が筐体の長さ方向(回転軸方向)に複数(ここでは5つ)に仕切られる。
【0035】
なお、仕切り部材36は、ノズル35に当たらないように、ノズル35の上記グループどうしの間隔があいた所と、排出口21側の端のグループの近傍の所で垂れ下がるように配置される。
【0036】
なお、乾燥機の点検時には、点検者が仕切り部材36の6枚1組の板材をヒンジ36aの所で折り畳んだり、ヒンジ軸37を支点に所望の角度に回動させたりして、邪魔にならないようにすることができる。
【0037】
仕切り部材36を構成する板材の縦、横の枚数は、それぞれ2枚と3枚以外の複数枚としてもよいことは勿論である。また、縦と横のいずれか一方を1枚とし、他方を複数枚とすることも考えられる。また、乾燥機の仕様によっては、仕切り部材36を1箇所にのみ設けることも考えられる。また、排気ダクト部31内の空間を筐体の幅方向に複数に仕切るように仕切り部材36を配置することも考えられる。
【0038】
次に、実施例の乾燥機の動作を説明する。乾燥動作時には、投入装置50により不図示の泥状物が投入口314から上部筐体3の排気ダクト部31の図1,図2中で左端部内に逐次投入される。投入された泥状物は下部筐体2の左端部内に落下する。これとともにモータ13がオンされて駆動し、回転軸4,5が図4及び図7中に矢印で示すように互いに逆方向に回転する。また、工場の排熱などの熱風が熱風入口321,321のそれぞれから給気ダクト部32,32のそれぞれに吹き込まれる。その熱風は、例えば温度が350℃程度とし、気圧が350mmAq程度の比較的低圧であるものとする。
【0039】
下部筐体2の図5中で左端部内に落下した泥状物は、回転している回転軸4,5のパドル41,51により攪拌される。また、左側から2枚、2枚、1枚の繰り返しで配置されたパドル41,51において2枚の組により右方向に押圧され、1枚の組により左方向に押圧される。これにより、泥状物は、1枚の組の所で少し停滞するものの、全体として回転軸4,5の軸方向に沿って排出口21側に向かって右方向へ順次搬送される。1枚の組の所で停滞することにより、攪拌を充分に行うことができる。
【0040】
ここで、回転軸4,5は、5:4の回転数比で互いに不等速で回転している。このため、回転軸4,5の軸方向に同じ位置で互いに対向するパドル41,51は、回転軸4,5の回転に伴って互いに接近、離間する動作を繰り返し、互いに相手に付着した泥状物を掻き落す。上記回転数比とパドル41,51の先述した角度ピッチが同じであることにより、パドル41,51どうしが衝突することはない。また、回転軸4,5の回転に伴ってパドル41,51は互いに先端部が相手の回転軸5,4の外周面の近傍を通過する。このため、回転軸4,5の外周面にある程度の厚さ以上に泥状物が付着したらパドル51,41により掻き落とすことができる。このようにしてセルフクリーニングを行うことができる。
【0041】
一方、熱風入口321,321のそれぞれから給気ダクト部32,32内に下方へ吹き込まれた熱風は、回転軸4,5の軸方向に延びる給気ダクト部32,32内で前記軸方向に拡がる。そして、給気ダクト部32,32内の下部で排気ダクト部31側のノズル連結口34からノズル35のそれぞれを通って斜め下方へ吹きかけられ、下部筐体2内の上部で回転軸4,5上に吹きかけられる。
【0042】
ここで複数のノズル35の配置に対応して、回転軸4,5の軸方向に並ぶ複数箇所の位置のそれぞれで回転軸4,5上に熱風が吹きかけられることになる。これにより、回転軸4,5のパドル41,51のそれぞれに攪拌されている泥状物に熱風が吹きかけられて混じるので、泥状物が順次乾燥され、粒状化されていく。乾燥に使用された熱風は、その後から順次吹き込まれる後続の熱風に押し上げられて、下部筐体2内から排気ダクト部31内を上昇し、熱風出口311から排出される。
【0043】
ここで、複数ののれん状仕切り部材36の仕切りにより、排気ダクト部31内で仕切り部材36の下端から上端までの高さの範囲内の空間で、回転軸4,5の軸方向に沿った方向への熱風の移動が制限される。このため、乾燥に使用された後の熱風はスムーズに上方へ案内され、熱風出口311から排出される。排出された熱風の温度は、それまでの過程で例えば120℃程度まで下がっている。
【0044】
なお、仕切り部材36の上端のヒンジ軸37の高さは排気ダクト部31の天井の高さより大分低くなっている。そのヒンジ軸37の高さ以上では、仕切り部材36によって回転軸4,5の軸方向に沿った方向への熱風の移動が制限されることはない。このため、排気ダクト部31内において熱風出口311に対して回転軸4,5の軸方向に離れた所からでも熱風の熱風出口311からの排出が妨げられることはない。
【0045】
このようにして、泥状物が順次パドル41,51により攪拌され熱風により乾燥されながら図6中で右方向に搬送され、粒状化して下部筐体2の右端部で排出口21に投下され、排出される。
【0046】
排出された処理物は、次の処理を行う不図示の装置へと搬送される。このときの搬送のタイミングと搬送量などを適当にすることにより、常時、排出口21の下に処理物が適当に溜まって、排出口21を気密にシールするようにする。
【0047】
以上のような本実施例によれば、泥状物を機械的に攪拌しながら熱風を吹きかけて乾燥するので、泥状物と熱風が良く混ざって、乾燥を効率良く行うことができる。すなわち、熱伝導だけで乾燥する伝熱乾燥より高い乾燥効率が得られる。また特に、攪拌を熱風の圧力で行うわけではなく、機械的に行うので、低圧の熱風を利用して乾燥を効率良く行うことができる。
【0048】
また、熱風の給気と排気を互いに仕切られた給気ダクト部32と排気ダクト部31に分けて互いに干渉せずにスムーズに行える。さらに、仕切り部材36の作用により熱風の排気をスムーズに行うことができる。また、給気ダクト部32から回転軸4,5上への熱風の吹きかけは、ノズル35を介して行うので、排気ダクト部31内の熱風の排気の気流に干渉されずに有効に行うことができる。また、給気ダクト部32と複数のノズル35を介して、回転軸4,5の軸方向に並ぶ複数箇所の位置において熱風を吹きかけるので、前記軸方向に沿ってほぼ均一に熱風を吹きかけることができる。これらの点からも熱風による乾燥を効率良く行うことができる。
【0049】
したがって、圧力が比較的に低い排熱の熱風を利用して泥状物の乾燥を有効に行うことができ、排熱のエネルギーを利用して省エネルギーを図ることができる。
【0050】
なお、回転軸4,5のパドル41,42による攪拌では、セルフクリーニングが行われるので、付着性の強い泥状物でも支障なく攪拌を行うことができる。
【0051】
以上に説明した実施例では、給気ダクト部32は排気ダクト部31に対して筐体の幅方向の両側のそれぞれに隣接して2つ設けるものとしたが、筐体の幅方向の片側のみに隣接して1つだけ設けるものとしてもよい。
【0052】
また給気ダクト部32は、少なくとも一部が筐体と別体の管状に構成してもよい。
【0053】
また回転軸4、5は2本に限らず、例えば4本や6本など他の複数本設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例による熱風乾燥機の筐体の長さ方向に沿った側面図である。
【図2】同乾燥機の上面図である。
【図3】同乾燥機の図1中で右側の側面図である。
【図4】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図5】同乾燥機の下部筐体側の構成を示す横断平面図である。
【図6】同乾燥機の下部筐体側の一方の回転軸4に沿った縦断側面図である。
【図7】図5中のB−B線に沿った断面図である。
【図8】同乾燥機の上部筐体の横断平面図である。
【図9】同乾燥機の上部筐体の幅方向中央部での縦断側面図である。
【図10】同乾燥機の上部筐体の内側板に向かって見た給気ダクト部の側面図である。
【図11】同乾燥機の上部筐体の図9中で左側の側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 フレーム
2 下部筐体
3 上部筐体
4,5 回転軸
6〜9 軸受
10,11 ギア
12,15 スプロケット
13 モータ
14 減速機
16 チェーン
21 排出口
22〜24 点検口
31 排気ダクト部
32 給気ダクト部
33 内側板
34 ノズル連結口
35 ノズル
36 のれん状仕切り部材
36a ヒンジ
37 ヒンジ軸
41,51 パドル
50 泥状物の投入装置
311 熱風出口
312,313 点検口
314 泥状物の投入口
321 熱風入口
322,323 点検口
324,325 清掃口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含んだ泥状物を機械的に攪拌しながら熱風を吹きかけて乾燥する熱風乾燥機であって、
該乾燥機の筐体の下部内には、外周面に複数の攪拌部材を立設した複数の回転軸が前記筐体の幅方向に並んで互いに平行で水平または略水平に架設され、
前記筐体の上部側には、下側が開放され上端に熱風出口が形成された熱風の排気を導く排気ダクト部が前記複数の回転軸の真上で回転軸の軸方向に延びるように設けられるとともに、
上端に熱風入口が形成された熱風の給気を導く給気ダクト部が前記排気ダクト部に対して前記筐体の幅方向の片側のみに隣接して1つ又は両側のそれぞれに隣接して2つ、前記軸方向に延びるように設けられており、
泥状物の乾燥時には、前記複数の回転軸の回転駆動により、前記筐体内に投入された泥状物が攪拌されながら前記軸方向の一方向に搬送されるとともに、
熱風が前記熱風入口から前記給気ダクト部内に下方へ吹き込まれ、前記軸方向に拡がり、給気ダクト部の下部の前記排気ダクト部側から斜め下方に前記回転軸上へ吹きかけられて泥状物を乾燥し、その後、前記排気ダクト部内を上昇して前記熱風出口から排出されるようにしたことを特徴とする熱風乾燥機。
【請求項2】
前記複数の回転軸の回転に伴って、複数の回転軸の前記複数の攪拌部材どうしが互いに相手の回転軸の外周面および攪拌部材に付着した泥状物を掻き落とすように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱風乾燥機。
【請求項3】
前記給気ダクト部の下部の排気ダクト部側から排気ダクト部の下部内を通って先端が前記回転軸上に臨むノズルが前記軸方向に並んで複数設けられており、給気ダクト部からの熱風が前記複数のノズルを通じて斜め下方に前記回転軸上へ吹きかけられることを特徴とする請求項1または2に記載の熱風乾燥機。
【請求項4】
揺動可能な複数枚の板材から構成されたのれん状の仕切り部材が前記排気ダクト部内の少なくとも1箇所に垂れ下がるように設けられ、これにより排気ダクト部内の空間が複数に仕切られるようにしたことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱風乾燥機。
【請求項5】
前記のれん状の仕切り部材は、前記排気ダクト部内の空間で排気ダクト部の高さの中間の所定高さ以下の空間を前記軸方向に複数に仕切るように配置されたことを特徴とする請求項4に記載の熱風乾燥機。
【請求項6】
前記のれん状の仕切り部材において、縦方向に複数枚の板材がヒンジを介して互いに揺動可能に連結されており、該縦方向に連結された複数枚の板材を前記ヒンジの所で折り畳むことができるように構成されたことを特徴とする請求項4または5に記載の熱風乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−276009(P2009−276009A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129049(P2008−129049)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(594148520)株式会社新日南 (11)
【Fターム(参考)】