説明

燃料タンク製造方法及び燃料タンク

【課題】樹脂材料で構成されると共に燃料透過を抑制した燃料タンクを低コストで製造可能な燃料タンク製造方法と、樹脂材料で構成されると共に燃料透過を抑制でき部品点数も少なくて済む燃料タンクを得る。
【解決手段】上側燃料タンク構成体16Aを上下に挟んで、首部18及び延出部20を形成する。外型構成体62Aの凸部によって、延出部20には凹部26(薄層部28)を形成する。凹部26の下側では、延出部20を支持して補強する首部厚肉部42を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク製造方法及び燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に備えられる燃料タンクには、樹脂製のものがある。たとえば特許文献1では、燃料タンク本体をブロー成形すると共に開口部を一体的に形成する燃料タンクの製造方法が記載されている。特許文献1では、さらに、開口部を形成する部分を環状部材で囲繞し、環状部材の段部上で樹脂材料を圧縮して、燃料が透過することを確実に防止できるようにする点が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の製造方法では、樹脂材料を圧縮するために環状部材が必要であり、製造工程が増大し、製造コストの上昇を招く。また、製造された燃料タンクとしても、部品点数が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−220840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、樹脂材料で構成されると共に燃料透過を抑制した燃料タンクを低コストで製造可能な燃料タンク製造方法と、樹脂材料で構成されると共に燃料透過を抑制でき部品点数も少なくて済む燃料タンクを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、燃料タンクの外側を構成する外側樹脂層と、該燃料タンクの内側を構成する内側樹脂層と、前記外側樹脂層及び前記内側樹脂層よりも燃料透過性が低い材料によって外側樹脂層と内側樹脂層との間に配置されたバリアー層と、を備えた燃料タンク構成体で構成された燃料タンクを製造する燃料タンク製造方法であって、
【0007】
前記燃料タンク構成体を外型と内型とで圧縮することで、前記燃料タンクの外側に前記外側樹脂層が部分的に薄肉とされた環状の凹部を形成する。
【0008】
本発明では、燃料タンクを構成する燃料タンク構成体が外側樹脂層及び内側樹脂層を備えると共に、これらの樹脂層よりも燃料透過性が低い材料で構成されたバリアー層を備えており、製造された燃料タンクにおいては、燃料タンク構成体を通じての燃料透過が抑制される。
【0009】
また、この燃料タンク製造方法では、燃料タンク構成体を外型と内型とで圧縮することで、環状の凹部を高い精度で形成できる。凹部では、燃料タンクの外側において外側樹脂層が部分的に薄肉とされているので、特に燃料透過が抑制される。しかも、凹部(外側樹脂層が部分的に薄肉とされた部分)を、2つの金型(外型と内側)によって燃料タンク構成体を圧縮することで形成している。従来のような環状部材が不要となるので、環状部材の成形や配置等の工程が不要で、低コストで燃料タンクを製造できる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記燃料タンク構成体を前記外型と前記内型とで圧縮するときに、燃料タンク構成体が筒状に突出された首部と、該首部の突出先端側から首部の径方向内側に延出された延出部とを形成し、該延出部を外型と内型とで圧縮して前記凹部を形成する。
【0011】
燃料タンク構成体を外型と内型とで圧縮するときに首部及び延出部を形成し、さらに、延出部を、外型と内型とで圧縮して凹部を形成する。すなわち、首部、延出部及び凹部を有する燃料タンクを、外型と内型とで燃料タンク構成体を圧縮する単一の工程で成形することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記凹部を形成した後、前記首部よりも径方向内側で且つ前記凹部の燃料タンク内側に位置する部分の前記内型を後退させて前記燃料タンク構成体との間に第1キャビティー空間を構成し、該第1キャビティー空間に樹脂材料を供給することで首部の肉厚を増加させる。
【0013】
したがって、この燃料タンク製造方法では、第1キャビティー空間に樹脂材料を供給することで首部の肉厚を容易に増加させて、延出部を補強することができる。延出部を補強するためのあらたな部材が必要になることもない。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記首部よりも前記燃料タンク内側で首部の径方向内側に位置する部分の前記内型を後退させて前記燃料タンク構成体との間に第2キャビティー空間を構成し、該第2キャビティー空間に樹脂材料を供給することで首部の根元部の肉厚を増加させる。
【0015】
したがって、この燃料タンク製造方法では、第2キャビティー空間に樹脂材料を供給することで首部の根元部の肉厚を容易に増加させて、首部の根元部を補強することができる。首部の根元部を補強するためのあらたな部材が不要になることもない。
【0016】
請求項5に記載の発明では、燃料タンクの外側を構成する外側樹脂層と、該燃料タンクの内側を構成する内側樹脂層と、前記外側樹脂層及び前記内側樹脂層よりも燃料の透過性が低い材料によって外側樹脂層と内側樹脂層との間に配置されたバリアー層と、を備えた燃料タンク構成体で構成され、燃料タンクの外殻形状を成す燃料タンク本体と、前記燃料タンク構成体が前記燃料タンク本体から筒状に突出された首部と、前記首部の突出先端側から首部の径方向内側に延出された延出部と、前記延出部において前記外側樹脂層が前記燃料タンクの外側で部分的に薄肉とされた環状の凹部と、前記首部よりも径方向内側で且つ前記凹部の燃料タンク内側において前記燃料タンク構成体と一体的に設けられ、前記延出部と連続して延出部を補強する補強部と、を有する。
【0017】
すなわち、この燃料タンクでは、燃料タンク構成体が外側樹脂層及び内側樹脂層を備えると共に、これらの樹脂層よりも燃料透過性が低い材料で構成されたバリアー層を備えているので、燃料タンク構成体を通じての燃料透過が抑制される。
【0018】
また、この燃料タンクでは、首部及び延出部を有しているので、これらの首部や延出部を用いて他の部材(取付部材)を取り付けることが可能となる。このように取付部材を取り付けた場合、凹部にたとえばガスケットを配置することで、燃料タンクと取付部材とのシール性を高く確保することが可能になる。
【0019】
首部よりも径方向内側で且つ凹部の燃料タンク内側では、補強部によって延出部が補強されている。すなわち、外側樹脂層が部分的に薄肉とされた凹部を有する延出部が補強部で補強された燃料タンクとなる。延出部を補強するための部材が不要となるので、部品点数が少なくて済む。
【0020】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記補強部が、前記首部の前記燃料タンク内側から首部の根元部まで回り込んでいる。
【0021】
すなわち、補強部が、前記首部の前記燃料タンク内側から首部の根元部まで回り込んでいるので、首部及び首部の根元部が補強された燃料タンクとなる。首部及び首部の根元部を補強するための部材が不要となるので、部品点数が少なくて済む。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成としたので、樹脂材料で構成されると共に燃料透過を抑制した燃料タンクを低コストで製造可能な燃料タンク製造方法と、樹脂材料で構成されると共に燃料透過を抑制でき部品点数も少なくて済む燃料タンクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の燃料タンクを示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の燃料タンクを首部及びその近傍で拡大して示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の燃料タンクを構成する上側燃料タンク構成体を首部及びその近傍で拡大して示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の燃料タンクを製造する工程を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の燃料タンクを製造する工程を図4よりも進んだ状態で示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の燃料タンクを製造する工程を図5よりも進んだ状態で示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の燃料タンクを製造する工程を図6よりも進んだ状態で示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の燃料タンクを製造する工程を図7よりも進んだ状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、本発明の第1実施形態の燃料タンク12が示されている。本実施形態に係る燃料タンク12は、一例として、略直方体状の燃料タンク本体14が、上下に分割された2つの燃料タンク構成体16(上側燃料タンク構成体16A及び下側燃料タンク構成体16B)によって構成されたものを挙げている。上側燃料タンク構成体16Aは全体として上に凸に、下側燃料タンク構成体16Bは全体として下に凸に形成されており、これらの外周部分を接合することで、略直方体状の燃料タンク本体14となる。
【0025】
燃料タンク構成体16は、図2にも詳細に示すように、たとえば高密度ポリエチレン(HDPE)製の樹脂層22(外側樹脂層22A及び内側樹脂層22C)と、これら樹脂層22の間のバリアー層24Aとが重層され、図示しない接着層により接着されて構成されている。バリアー層24Aは、たとえば、EVOH(エチレンビニルアルコール)等、樹脂層22よりも燃料透過性の低い(燃料が透過しづらい)材料で構成されている。
【0026】
燃料タンク本体14の天板14Tには、上側燃料タンク構成体16Aを上方に向かって略円筒状に突出させた首部18が形成されている。首部18の突出先端部分からは、首部18の径方向内側に向かって延出された環状の延出部20が形成されている。首部18及び延出部20の上面は円形の支持面20Sとされているが、この支持面20Sの径方向中間部分には、上方から局所的に凹ませた環状の凹部26が形成されており、延出部20はこの部分において、局所的に薄肉とされた薄層部28となっている。図2に示すように、凹部26には、環状のガスケット32が収容される。
【0027】
延出部20よりも径方向内側には、ポンプモジュール30(図1参照)が矢印A方向に挿入される挿入孔36が形成されている。ポンプモジュール30の上部に形成された取付フランジ30Fを、支持面20Sに面接触させることで、ポンプモジュール30が首部18に支持される。
【0028】
特に、図2から分かるように、取付フランジ30Fの上方からは、リテーナ34が装着されるようになっており、このリテーナ34により、取付フランジ30Fを介してガスケット32を上方から押圧することで、取付フランジ30Fと燃料タンク12(ガスケット32)との間のシール性が高められている。
【0029】
首部18の外周には雄ネジ38が形成されている。これに対し、リテーナ34の内周面には雌ネジ40が形成されており、雌ネジ40を雄ネジ38にねじ込むことで、リテーナ34から取付フランジ30Fを強く押圧することができる。
【0030】
また、凹部26が形成された箇所では、上記したように、延出部20の板厚が薄くなった薄層部28となっているが、この薄層部28では、図3に詳細に示すように、特に外側樹脂層22Aの厚みが薄くなっている。たとえば、燃料タンク本体14の一般部14G((延出部20や首部18が形成されていない部分、図1参照)と比較すると、薄層部28では、内側樹脂層22Cも薄くなっているが、外側樹脂層22Aはさらに薄くなっている。このように、外側樹脂層22Aを薄くすることで、図3に矢印PPで示す燃料の透過経路を想定した場合の透過面積が狭くなり、燃料透過性も低くなる。
【0031】
凹部26は、図2及び図3から分かるように、首部18よりも径方向内側に位置しているが、凹部26の下方には、首部18よりも径方向内側に形成されて、実質的に首部18を厚肉としている首部厚肉部42が形成されている。本実施形態では、首部厚肉部42も首部18の内周側において略円筒状に形成されており、首部18(雄ネジ部38)を全周にわたって補強している。
【0032】
また、このような首部厚肉部42が形成されていない構造では、延出部20(特に、薄層部28)を下側から支持する部材が存在しないことになるが、首部厚肉部42は薄層部28の下側に位置して延出部20を支持しており、延出部20も補強している。すなわち、首部厚肉部42は、本発明における「補強部」となっている。
【0033】
さらに、首部18の根元部44の下側には、根元部44の近傍において天板14Tを実質的に厚肉としている根元部厚肉部46が形成されている。本実施形態では、根元部厚肉部46は、首部厚肉部42が回り込んで連続する環状に形成されており、首部18の根元部44を補強している。すなわち、このような根元部厚肉部46が形成されていない構造では、根元部44を下側から支持する部材が存在しないことになるが、根元部厚肉部46は根元部44及びその外周側を下側から支持している。根元部厚肉部46も、本発明における「補強部」である。
【0034】
次に、本実施形態の燃料タンク12を製造する燃料タンク製造方法、及び燃料タンク12の作用を説明する。
【0035】
まず、上側燃料タンク構成体16Aを、外型62及び内型52を用いて、全体として上に凸の形状に形成する。図4に示すように、内型52は、複数の内型構成体52A、52B、52C、52Dで構成されている。また、外型62も、複数の外型構成体62A、62B、62Cで構成されている。
【0036】
内型52を構成する内型構成体52A、52Bの上部は、内型構成体52C、52Dの上部よりも上方に位置しており、燃料タンク12の首部18及び延出部20を成形する。図6及び図7に示すように、内型構成体52Bは、内型構成体52A、52C、52Dに対し、相対的に下方にスライド可能とされている。内型構成体52Aには、第1キャビティー空間54に樹脂を供給するための材料供給ゲート58が形成されている。
【0037】
これに対し、内型構成体52C、52Dは、外型構成体62Cとの間で燃料タンク12の一般部(天板14T等)を形成する。特に、図7に示すように、内型構成体52Cは、内型構成体52Bが所定量だけ下方にスライドすると、この内型構成体52Bと一体となって、内型構成体52A、52Dに対し相対的に下方にスライドする。これにより、天板14T、内型構成体52D、52Cで囲まれると共に、第1キャビティー空間54から連続する第2キャビティー空間56が構成される。
【0038】
また、外型構成体62Aは、内型構成体52A、52Bとの間で延出部20を形成するが、特に、内型構成体52Bとの間で上側燃料タンク構成体16Aを部分的に挟み込んで凹部26を形成するための環状の凸部64が形成されている。
【0039】
外型構成体62Bは、首部18を構成するが、首部18の外周に雄ネジ38を形成するためのダイス部66が設けられている。すなわち、外型構成体62Bは、回転しつつ内型52に接近することで、内型構成体52Bとの間で雄ネジ部38を形成することが可能な構造である。
【0040】
外型構成体62Cは、内型構成体52C、52Dとの間で燃料タンク12の一般部14Gを構成する。
【0041】
このような構造とされた内型52及び外型62を用いて、まず、図4に示すように、上側燃料タンク構成体16Aを上下に挟み、所定の熱を加えながら成形する。これにより、燃料タンク構成体16Aが、全体として上に凸の形状に成形されると共に、首部18及び延出部20が形成される。
【0042】
また、このとき、延出部20には、外型62と内型52とで圧縮される際に、凸部64によって凹部26(薄層部28)が形成されるが、凹部26の下側では、延出部20を内型構成体52Bが支持している。したがって、このように凹部26の下側を支持しない構成と比較して、延出部20の形状を安定的に維持でき、薄層部28の薄肉形状も確実に形成できることとなる。
【0043】
このようにして、延出部20が形成された後、内型構成体52Bのみを降下(後退)させると、図6に示すように、首部18、延出部20、内型構成体52A及び内型構成体52Bの間に、第1キャビティー空間54が構成される。この第1キャビティー空間54に、材料供給ゲート58から樹脂材料60を供給しつつ、図7に示すように、さらに内型構成体52Bを内型構成体52Cと同位置(上面が面一になる位置)まで降下させる。この樹脂材料60としては、樹脂層22と同一の材料であってもよいが、樹脂層22と溶融可能であれば異なる種類の材料であってもよい。これにより、供給された樹脂材料60が成形時の熱で溶融されて首部18における内側樹脂層22Cと一体化するため、首部18の内側には、首部18を実質的に厚肉とする首部厚肉部42が形成される。首部厚肉部42は、薄層部28の下側に位置しており、薄層部28を下方から支持している。
【0044】
内型構成体52Bの上面が内型構成体52Cの上面と同位置まで降下すると、次に、内型構成体52Bと内型構成体52Cとを一体的に降下させる。これにより、天板14T、内型構成体52D、内型構成体52Cで囲まれると共に、第1キャビティー空間54から連続する第2キャビティー空間56が構成される。内型構成体52Bと内型構成体52Cの降下量L1は、たとえば、第1キャビティー空間54の幅W1(図7参照)と同程度とされる。
【0045】
ここで、材料供給ゲート58からは引き続き樹脂材料を供給すると、樹脂材料は第2キャビティー空間56にも流れる。これにより、首部18及びその近傍における天板14Tの下方には、首部18の根元部44を厚肉とする根元部厚肉部46が形成される。根元部厚肉部46は根元部44の近傍において天板14Tを補強している。
【0046】
そして、首部厚肉部42及び根元部厚肉部46が形成された状態で、内型52及び外型62を脱型し、延出部20の中央に挿入孔36を形成する。これにより、所望の形状に成形された上側燃料タンク構成体16Aが得られる。
【0047】
また、下側燃料タンク構成体16Bについても、図示しない内型および外側を用いて、所望の形状(下に凸の形状)に成形する。そして、上側燃料タンク構成体16Aと下側燃料タンク構成体16Bとを接合して、全体として略箱状の燃料タンク12が得られる。
【0048】
このようにして製造された本実施形態の燃料タンク12では、挿入孔36からポンプモジュール30が挿入され、取付フランジ30Fが支持面20Sに接触されて支持される。そして、リテーナ34が首部18にねじ込まれると、取付フランジ30Fによって、ガスケット32が下方に押し込まれ、取付フランジ30Fと燃料タンク12(ガスケット32)との間が高いシール性でシールされる。
【0049】
凹部26(薄層部28)は、首部厚肉部42によって支持されて補強され、さらに、首部18も首部厚肉部42によって補強されている。したがって、薄層部28がガスケット32から下方へ押付力を受けてもこれに対する反力を確保でき、薄層部28(さらには延出部20)の変形を抑制して、凹部26が形成された延出部20を高精度で成形できる。これにより、取付フランジ30Fと燃料タンク12(ガスケット32)とのシール性を高く確保することが可能となる。
【0050】
しかも、このように高いシール性を確保するために、従来の環状部材のような別部材が不要なので、燃料タンク12として部品点数が少なくて済むと共に、低コストで構成できる。
【0051】
特に、首部補強部42は、首部18の径方向内側に形成されているので、首部厚肉部42を首部18の径方向外側に形成して首部18を補強した構成と比較して、首部18の小型化を図ることができる。
【0052】
加えて、本実施形態の燃料タンク12では、首部18の根元部44が根元部厚肉部46によって補強されている。外部から首部18に外力が作用すると、根元部44にもモーメントが作用することがあるが、根元部44が根元部厚肉部46によって補強されて、強度及び剛性が向上されている。根元部44の変形を抑制することで、首部18へのリテーナ34の締結や、さらにはポンプモジュール30の取り付けに対する信頼性も向上する。根元部44を補強するための部材も不要なので、燃料タンク12として部品点数が少なくて済み、低コストで構成できる。
【0053】
このように、本実施形態の燃料タンク12は、雄ネジ部38にリテーナ34をねじ込むことで、ガスケット32の反力を確保すると共に、首部18の強度や剛性を確保できるように、首部18及び根元部44の実質的な板厚を首部厚肉部42及び根元部厚肉部46によって設定できる。首部18及び根元部44以外の部分(一般部14G)における燃料タンク構成体16の板厚を厚くする必要はないので、軽量且つ低コストで構成できる燃料タンク12となる。
【0054】
なお、上記では、首部厚肉部42と根元部厚肉部46の双方が形成された燃料タンク12を挙げたが、根元部厚肉部46が形成されていない燃料タンクであっても、延出部20及び首部18を補強すると共に、薄層部28の変形を抑制して、取付フランジ30Fと燃料タンク12(ガスケット32)とのシール性を高く確保することは可能である。
【0055】
根元部厚肉部46が形成されていない燃料タンクを製造する場合には、内型構成体52Bを降下させて、その上部が内型構成体52Cの上部と面一になったとき(図7参照)に、内型構成体52Bの降下及び材料供給ゲート58からの樹脂材料の供給を停止し、内型52及び外型62を脱型すればよい。
【0056】
上記の製造方法では、首部厚肉部42を形成した後に根元部厚肉部46を形成しているが、実質的にこれらが同時に形成されるような製造方法でもよい。たとえば、材料供給ゲート58から樹脂材料60を供給する前に、内型構成体52B、52Cをまず図8に示す位置まで降下させて第1キャビティー空間54及び第2キャビティー空間56を構成しておき、この状態で材料供給ゲート58から樹脂材料60を供給すれば、首部厚肉部42及び根元部厚肉部46を略同時に形成できる。
【0057】
また、本発明の補強部としては、上記した首部厚肉部42のように、首部18の内周側で周方向に連続して形成されている必要はなく、たとえば、周方向に所定間隔をあけて断続的に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
12 燃料タンク
14 燃料タンク本体
16 燃料タンク構成体
18 首部
20 延出部
22A 外側樹脂層
22C 内側樹脂層
24A バリアー層
26 凹部
28 薄層部
42 首部厚肉部(補強部)
44 根元部
46 根元部厚肉部(補強部)
52 内型
54 第1キャビティー空間
56 第2キャビティー空間
58 材料供給ゲート
60 樹脂材料
62 外型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの外側を構成する外側樹脂層と、該燃料タンクの内側を構成する内側樹脂層と、前記外側樹脂層及び前記内側樹脂層よりも燃料透過性が低い材料によって外側樹脂層と内側樹脂層との間に配置されたバリアー層と、を備えた燃料タンク構成体で構成された燃料タンクを製造する燃料タンク製造方法であって、
前記燃料タンク構成体を外型と内型とで圧縮することで、前記燃料タンクの外側に前記外側樹脂層が部分的に薄肉とされた環状の凹部を形成する燃料タンク製造方法。
【請求項2】
前記燃料タンク構成体を前記外型と前記内型とで圧縮するときに、燃料タンク構成体が筒状に突出された首部と、該首部の突出先端側から首部の径方向内側に延出された延出部とを形成し、該延出部を外型と内型とで圧縮して前記凹部を形成する請求項1に記載の燃料タンク製造方法。
【請求項3】
前記凹部を形成した後、前記首部よりも径方向内側で且つ前記凹部の燃料タンク内側に位置する部分の前記内型を後退させて前記燃料タンク構成体との間に第1キャビティー空間を構成し、該第1キャビティー空間に樹脂材料を供給することで首部の肉厚を増加させる請求項2に記載の燃料タンク製造方法。
【請求項4】
前記首部よりも前記燃料タンク内側で首部の径方向内側に位置する部分の前記内型を後退させて前記燃料タンク構成体との間に第2キャビティー空間を構成し、該第2キャビティー空間に樹脂材料を供給することで首部の根元部の肉厚を増加させる請求項2又は請求項3に記載の燃料タンク製造方法。
【請求項5】
燃料タンクの外側を構成する外側樹脂層と、該燃料タンクの内側を構成する内側樹脂層と、前記外側樹脂層及び前記内側樹脂層よりも燃料の透過性が低い材料によって外側樹脂層と内側樹脂層との間に配置されたバリアー層と、を備えた燃料タンク構成体で構成され、燃料タンクの外殻形状を成す燃料タンク本体と、
前記燃料タンク構成体が前記燃料タンク本体から筒状に突出された首部と、
前記首部の突出先端側から首部の径方向内側に延出された延出部と、
前記延出部において前記外側樹脂層が前記燃料タンクの外側で部分的に薄肉とされた環状の凹部と、
前記首部よりも径方向内側で且つ前記凹部の燃料タンク内側において前記燃料タンク構成体と一体的に設けられ、前記延出部と連続して延出部を補強する補強部と、
を有する燃料タンク。
【請求項6】
前記補強部が、前記首部の前記燃料タンク内側から首部の根元部まで回り込んでいる請求項5に記載の燃料タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−218692(P2011−218692A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91396(P2010−91396)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】