説明

燃料供給装置

【課題】燃料供給装置のワイヤハーネス接続部において、シール性を確保しつつ、限られたスペース内で端子を効率良く配置する。
【解決手段】フランジユニット7に形成された端子取付部82内にオス端子83を設ける。ハーネス17にメス端子84と、端子取付部82と嵌合するシールリップ部86を備えたグロメット85を設ける。円筒形状の端子取付部82には、オス端子83がそれぞれ電気的に絶縁された状態で個別に収容される。各端子取付部82は、各開口中心を結ぶ線分が折れ線状となるように2列交互に配置され、開口87がオリンピックマーク形に並んでいる。端子取付部82の先端部にはスリット89が設けられており、ゴムグロメット85を挿入する際に開口87が広がり易く、ゴムグロメット85を容易に組み付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプ装置を使用した車両用の燃料供給装置に関し、特に、自動二輪車用の燃料供給装置におけるモータ給電用配線のターミナル接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二輪車や四輪車などの車両用燃料供給装置として、部品点数の削減や組付作業の効率化等の観点から、燃料ポンプや圧力制御装置、ストレーナ等を一体化した燃料ポンプモジュールが広く用いられている。このような燃料ポンプモジュールでは、燃料ポンプとして、電動モータによって駆動される電動ポンプ装置(以下、適宜電動ポンプと略記する)が使用され、ポンプ駆動用のモータ共々ユニット化されて燃料タンク内や燃料タンク近傍に配置される。
【0003】
このような燃料供給装置では、フランジと呼ばれる円板状の部材に電動ポンプやストレーナ、プレッシャレギュレータ等を固定してポンプモジュールを形成する。そして、このフランジを燃料タンクの開口に装着することにより、ポンプモジュール、すなわち、燃料供給装置がタンク内に取り付けられる。そして、電動ポンプを駆動させると、フィルタを介して燃料タンク内の燃料が吸入され、圧力制御装置やストレーナ等によって、濾過・調圧された燃料がエンジンの燃料供給系に送給される。
【0004】
一方、前述のような燃料供給装置では、電動ポンプに対し電力を供給する給電配線として、フランジに設けられた給電端子とポンプモジュールとを接続するワイヤハーネスが取り付けられる。フランジ側の給電端子は、車載バッテリ等の電源と接続される外部電源端子と電気的に接続されており、電動ポンプは、給電端子からワイヤハーネスを介して駆動用の電力が供給される。フランジ内には、給電端子としてオス端子が配置されており、ワイヤハーネスは、ハーネス先端に取り付けられたメス端子をこのオス端子に嵌合させる形で接続される。
【0005】
図8,9は、このような電動ポンプにおけるフランジ側の給電端子構造を示す説明図である。図8に示すように、フランジ101には、円筒形状の端子取付部102が形成されている。各端子取付部102の奥部には、図9に示すように、オス端子103が収容されている。各オス端子103同士は、円筒ケース状の端子取付部102によって互いに電気的に絶縁されている。オス端子103には、ワイヤハーネス104の先端に取り付けられたメス端子105が接続される。メス端子105を端子取付部102内に挿入し、奥部のオス端子103と嵌合させることにより、ワイヤハーネス104は電源側と接続される。
【0006】
ワイヤハーネス104側のメス端子105にはゴムグロメット106が装着されている。メス端子105をオス端子103に嵌合接続させると、端子取付部102内にゴムグロメット106が挿入される。メス端子105は、ゴムグロメット106にて保持されつつ、端子取付部102内にてオス端子103と接続される。また、端子取付部102もゴムグロメット106によってシールされ、両端子105,106の接続部が外部に露出することなくシールされる。一方、フランジ101の下部には、カプラ取付部107が設けられている。カプラ取付部107には、オス端子103の一端部が電源端子108として配置されている。電源端子108は、カプラ仕様に合わせて、カプラ取付部107内に一列に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-270627号公報
【特許文献2】特開2003-201932号公報
【特許文献3】特開2002-285931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、図8,9に示したような従来の燃料供給装置では、電源端子108の配置ピッチはカプラ仕様によって予め決まっており、それに合わせてオス端子103を配置すると、カプラ側の端子ピッチが狭いため、円筒形状の端子取付部102を設けることができなくなる。一方、図8のように、端子取付部102を円筒ケース状に形成してシール用の隔壁を設けると、例えば、5ピンカプラを使用する場合でも、端子取付部102側には端子4本分のスペースしか確保できず、カプラ端子を1本使用できなくなる。また、この場合、電源端子108用の金属部材は、一端側はカプラ仕様に合わせて配置されるが、他端側は、各端子取付部102内にオス端子103として配置される。このため、端子用の金属部材は、各端子ごとに部品形状が異なり、1装置に4種類の金属端子部材が必要となる。
【0009】
さらに、図8,9のような構造の場合、装置小型化の要請もあり、端子取付部102間の距離が小さくなっているため、グロメットを端子取付部102内に挿入しにくく、作業性の点で課題があった。しかしながら、前述のように、端子取付部102の設置スペースが限られていることから、端子取付部102の導入部に大きなテーパを形成することもができず、グロメット挿入時の作業性を改善する策が求められていた。
【0010】
本発明の目的は、燃料供給装置のワイヤハーネス接続部において、シール性を確保しつつ、限られたスペース内で端子を効率良く配置することにある。また、本発明の他の目的は、グロメットを用いたシール構造におけるグロメットの組付性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の燃料供給装置は、電動モータによって駆動される電動ポンプ装置と、前記電動ポンプ装置を収容保持するケース部材とを備える燃料供給装置であって、前記ケース部材は、前記電動モータの給電配線と接続される複数個の給電端子がそれぞれ電気的に絶縁された状態で個別に収容される複数個の端子取付部を有し、前記複数個の端子取付部は2列に配置され、他列の隣接する前記端子取付部が同列の隣接する前記端子取付部の間に配置されるように、各列の前記端子取付部が交互に設けられることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、端子取付部を2列交互に配置することにより、従来と同じ長さのスペースに端子取付部をより多く配置できる。また、同列にて隣接する端子取付部間のピッチも従来に比して大きく取ることができ、グロメット挿入時の作業性が改善される。さらに、給電端子を構成する端子部材の種類を2つに集約することもできる。
【0013】
前記燃料供給装置において、前記端子取付部を、内部に前記給電端子が収容可能な円筒形状に形成し、隣接する前記各端子取付部の開口中心を結ぶ線分が折れ線状となるようにしても良い。また、前記給電端子を、一端側が前記給電配線と接続され、他端側が外部電源と電気的に接続されたカプラと接続される金属製の端子部材にて形成し、この端子部材を、2列交互に配置された前記端子取付部の一の列側に配置される部品と、他の列側に配置される部品の2種類の部品から構成するようにしても良い。
【0014】
一方、本発明の他の燃料供給装置は、電動モータによって駆動される電動ポンプ装置と、前記電動ポンプ装置を収容保持するケース部材とを備える燃料供給装置であって、前記ケース部材に、前記電動モータの給電配線と接続される複数個の給電端子がそれぞれ電気的に絶縁された状態で個別に収容される複数個の端子取付部を設けると共に、前記端子取付部の先端部に該端子取付部の開口を弾性的に拡径可能とするスリットを設けたことを特徴とする。これにより、端子取付部に給電配線を取り付ける際、給電配線に取り付けられたゴムグロメットを端子取付部内に挿入し易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の燃料供給装置によれば、電動モータによって駆動される電動ポンプ装置と、電動ポンプ装置を収容保持するケース部材とを備える燃料供給装置にて、ケース部材に、電動モータの給電配線と接続される複数個の給電端子がそれぞれ電気的に絶縁された状態で個別に収容される複数個の端子取付部を設け、これらの端子取付部を2列に配置すると共に、他列の隣接する端子取付部を同列の隣接する端子取付部の間に配置して各列の端子取付部が交互に設けるようにしたので、従来と同じ長さのスペースに端子取付部をより多く配置することが可能となる。また、同列にて隣接する端子取付部間のピッチも従来に比して大きく取ることができ、グロメット挿入作業の作業性を改善することが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の燃料供給装置によれば、電動モータによって駆動される電動ポンプ装置と、電動ポンプ装置を収容保持するケース部材とを備える燃料供給装置にて、ケース部材に、電動モータの給電配線と接続される複数個の給電端子がそれぞれ電気的に絶縁された状態で個別に収容される複数個の端子取付部を設けると共に、端子取付部の先端部に端子取付部の開口を弾性的に拡径可能とするスリットを設けたので、端子取付部に給電配線を取り付ける際、給電配線に取り付けられたゴムグロメットを端子取付部内に挿入し易くなり、グロメット挿入作業の作業性を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例である電動ポンプ装置を使用した燃料供給装置の構成を示す断面図である。
【図2】フランジユニットにポンプアッセンブリを取り付け、アッパーカップを装着した状態を示す斜視図である。
【図3】ターミナル接続部の構成を示す説明図である。
【図4】ターミナル接続部の断面構成を示す説明図である。
【図5】(a)は図1の電動ポンプ装置にて使用されているゴムグロメットの構成を示す断面図、(b)は従来のゴムグロメットの構成を示す断面図である。
【図6】(a)は本発明による燃料供給装置の端子取付部の配置状態を示す説明図、(b)は従来の燃料供給装置の端子取付部の配置状態を示す説明図である。
【図7】ターミナル板の構成を示す説明図である。
【図8】従来のターミナル接続部の構成を示す説明図である。
【図9】従来のターミナル接続部の断面構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の一実施例である電動ポンプ装置を使用した燃料供給装置の構成を示す断面図である。図1の燃料供給装置1は、自動二輪車用の装置である。燃料タンク2では、アルコールとガソリンとを任意の割合で混合させた燃料を貯留する。燃料供給装置1は、燃料タンク2の底部にタンク下方から挿入される形で取り付けられる。燃料供給装置1は、図示しないエンジンの燃料供給系に接続され、燃料配管3を介して、エンジンの燃料噴射弁に対し燃料供給を行う。
【0019】
燃料供給装置1は、電動モータ4や燃料ポンプ(ポンプ)5などを一体化したポンプアッセンブリ(電動ポンプ装置)6をフランジユニット(ケース部材)7に収容し、その上にアッパーカップ8を装着した構成となっている。ポンプアッセンブリ6では、電動モータ4の一端側に燃料ポンプ5が配される一方、その他端側には、燃圧調整用のプレッシャレギュレータ21や、燃料逆流防止用のチェックバルブ22を備えたアウトレットカバー(カバー部材)24が配されている。
【0020】
フランジユニット7は、円筒状のケース部7aと、フランジ部7bとを備えている。ケース部7aの内側には、フィルタ9が取り付けられ、その上方にポンプアッセンブリ6が取り付けられる。図2は、フランジユニット7にポンプアッセンブリ6を取り付け、アッパーカップ8を装着した状態を示す斜視図であり、燃料供給装置1は、この状態で燃料タンク2の底面2aに形成されたポンプ取付孔2bからタンク内部に挿入される。その際、フランジ部7bは、図示しないボルト・ナットによって、燃料タンク2の底部に固定される。
【0021】
フランジユニット7の下端部には、アウトレットパイプ11と電源コネクタ12が設けられている。アウトレットパイプ11には燃料配管3が接続される。アウトレットパイプ11は、ポンプアッセンブリ6の燃料吐出口13と連絡パイプ14を介して接続されている。連絡パイプ14には、燃料配管3内の燃圧を調整するためのリリーフバルブ15が取り付けられている。電源コネクタ12には電源端子16が収容されており、電源端子16は、ターミナル接続部81にてハーネス(給電配線)17と接続されている。ハーネス17は、ポンプアッセンブリ6の側方を上方に向かって延び、ポンプアッセンブリ上端部にて電動モータ4と電気的に接続されている。
【0022】
図3,4は、ターミナル接続部81の構成を示す説明図である。図3に示すように、フランジユニット7には、図1において上下方向に延びる円筒形状の端子取付部82が形成されている。端子取付部82の奥部には、図4に示すように、電源端子16と電気的に接続されたオス端子(給電端子)83が収容されている。ここでは、オス端子83及び電源端子16として、一端側がオス端子83、他端側が電源端子16となった金属製のターミナル板(端子部材)88が使用されている。各オス端子83は、端子取付部82の外壁90によって、互いに電気的に絶縁された状態で端子取付部82内に配置されている。
【0023】
これに対し、ハーネス17の先端には、メス端子84が取り付けられている。燃料供給装置1においても、メス端子84を端子取付部82内に挿入し、端子取付部82の奥部に配置されたオス端子83と嵌合させることにより、ハーネス17は電源端子16と電気的に接続される。ハーネス17とメス端子84の接合部には、ゴムグロメット85が装着されている。図5(a)は、ゴムグロメット85の構成を示す断面図である。図5(a)に示すように、ゴムグロメット85の外周部には、複数個の凹凸からなるシールリップ部86が形成されている。メス端子84をオス端子83に嵌合接続させると、ゴムグロメット85は端子取付部82内に挿入され、端子取付部82の内壁にシールリップ部86が密接する。これにより、メス端子84は、ゴムグロメット85に保持されつつ、端子取付部82内にてオス端子83と接続される。
【0024】
ここで、燃料供給装置1にて使用するゴムグロメット85では、このシールリップ部86の凸部先端角θが鈍角となっている。従来より、大気中で使用される防水カプラ等では、シール用のグロメットの素材として、NBRやシリコン等が使われている。ところが、グロメットを液体中、特にアルコール入りのガソリン中で使用すると、シリコンでは膨潤が大きく、NBRではアルコール濃度が高いと膨潤するという問題がある。その点、耐油性のあるフッ素ゴムをグロメット素材として使用すればこれらの問題は生じないが、図5(b)のようにシールリップ部109が突起状に設けられている従来のグロメット形状では、NBRやシリコンの場合のように、成形時に型からの取り出しが困難となる。このため、成形型を割り型とせざるを得ず、シール面にパーティングラインが生じ、シール性が低下するおそれがある。
【0025】
そこで、当該燃料供給装置1では、シールリップ部86を鈍角形状とし、フッ素ゴムを使用しても、ゴムグロメット85を成形時に型から取り出しが可能な形態とした。これにより、ゴムグロメットのシール面にパーティングラインが生ぜず、シール性の低下を招来することなく耐油性の高いフッ素ゴムをゴムグロメット素材として使用することができる。また、シールリップ部86が鈍角なため、ゴムグロメット85を端子取付部82内に挿入した後、ゴムグロメット85によるシール距離を長くとることができ、シールの信頼性向上も図られる。そして、このようなゴムグロメット85により、端子取付部82の開口87も気密状態で閉塞され、両端子83,84は、外部に露出することなく端子取付部82内に絶縁状態でシールされる。
【0026】
一方、燃料供給装置1では、図3に示すように、端子取付部82が2列交互に配置されている。図6(a)は、本発明による燃料供給装置における端子取付部82の配置状態を示す説明図である。図6(a)に示すように、ここでは、各端子取付部82a〜82eが2列(列A,B)に配置されている。そして、他列の隣接する端子取付部82が、同列の隣接する端子取付部82の間に配置されるように、各列の端子取付部82が交互に設けられている。すなわち、例えば、列Aの82aから見て他列Bの82bが、列Aにて隣接する82a,82cに配置されている。従って、隣接する各端子取付部82a〜82eの開口中心O〜Oを結ぶと、その線分は折れ線状となる。ここでは、端子取付部82が5個設けられているため、各中心O〜Oを結んだ線分がW字状となっており、端子取付部82全体を見ると、開口87がオリンピックマーク形に並んでいる。
【0027】
このように、端子取付部82を2列交互に配置すると、従来と同じ長さのスペースに端子取付部82をより多く配置することが可能となる。つまり、図6(b)に示すような従来の燃料供給装置における1列直列配置では、スペースの関係から4個しか設けられなかった端子取付部が図3のように5個設けることができる。このため、5ピンカプラ使用時にも、従来のように使用不能なピンが生じることがなく、電源端子16の配列自由度を高めることが可能となる。従って、燃料供給装置の取り付けスペースやカプラ仕様に制限がある場合でも、ハーネス17との接続部のシール機能や絶縁性能を損なうことなく、カプラ側に合わせた設計が可能となる。
【0028】
また、同列にて隣接する端子取付部82間のピッチ(開口中心O間の距離)も従来の構成に比して大きく取ることができ(従来P,本発明P;図5参照)、装置小型化の要請を満たしつつ、グロメット挿入作業の作業性を改善することができる。なお、燃料供給装置1では、端子取付部82の先端部にスリット89が設けられており、ゴムグロメット85を挿入する際、開口87の外縁部87aが弾性的に拡径可能なようになっている。このため、従来の装置に比して、さらにグロメット挿入作業が容易となっており、開口ピッチの拡大と相俟ってグロメットの組付作業性が大幅に改善される。
【0029】
さらに、ターミナル板88に関しても、当該燃料供給装置1では、その種類を2つに集約することができる。図6は、ターミナル板88の構成を示す説明図である。前述のように、従来の装置では、ターミナル板として4種類の部品が必要であり、部品点数の増大や組み付け作業性などの点で問題があった。その点、燃料供給装置1においては、奥側の端子取付部82a,82c,82eに対応したターミナル板88a(3本)と、手前側の端子取付部82b,82dに対応したターミナル板88b(2本)に部品を集約できる。このため、従来の装置に比して、部品点数を削減することができ、その分、コストの低減を図ることが可能となると共に、組み付け時の作業性も改善され、製造工数の削減や誤組み付けの低減も図られる。
【0030】
フランジユニット7では、ケース部7aの底部はリザーバ部71となっている。リザーバ部71は、燃料タンク2の底面2aより下方に設置され、アッパーカップ8の側面に形成された燃料流入孔72からリザーバ部71内に燃料が流入する。フィルタ9はこのリザーバ部71内に2つ折りにされた状態で収容されており、リザーバ部71内に流入・貯留された燃料は、フィルタ9を介して燃料ポンプ5によって吸引される。
【0031】
ポンプアッセンブリ6は、電動モータ4、燃料ポンプ5、プレッシャレギュレータ21及びチェックバルブ22を鋼製のシェルケース23内に一体に収容した構成となっている。円筒状のシェルケース23の両端には、アウトレットカバー24とインレットカバー25がカシメ固定されている。アウトレットカバー24は合成樹脂にて形成され、シェルケース23の一端側に取り付けられる。
【0032】
アウトレットカバー24には、電動モータ4のブラシ26を保持するブラシホルダ部27が設けられている。すなわち、アウトレットカバー24は、シェルケース23のカバーと、電動モータ4のブラシホルダを兼ねた構成となっている。また、アウトレットカバー24には、プレッシャレギュレータ21とチェックバルブ22が収容されている。チェックバルブ22は、燃料吐出口13に配されており、その端部は連絡パイプ14と連通接続されている。これに対し、プレッシャレギュレータ21の端部は燃料タンク2内に開口している。
【0033】
インレットカバー25はアルミダイキャストにて形成され、シェルケース23の他端側に取り付けられる。インレットカバー25の下端側には燃料吸入部28が突設されている。燃料吸入部28の外側には、フィルタ9が取り付けられている。フィルタ9は、全体が略長方形状に形成されており、コの字形に2つ折りにされた状態でフランジユニット7のケース部7a内に収容される。
【0034】
電動モータ4は、ブラシ付の直流モータとなっている。シェルケース23は電動モータ4のヨークを兼ねており、その内周面には複数の永久磁石31が固定されている。永久磁石31の内側には、アーマチュア32が回転自在に配設されている。アーマチュア32は、軸方向に延びる複数のスロット33を有するコア34と、スロット33に巻回された巻線35とを備えている。アーマチュア32は回転軸36に固定され、アウトレットカバー24に設けられた軸受部37と、ポンプケース61に取り付けられた軸受38との間に回転自在に支持されている。アーマチュア32の図1において上側にはコンミテータ40が設けられている。コンミテータ40は回転軸36に固定されている。コンミテータ40には、径方向からブラシ26が当接している。
【0035】
プレッシャレギュレータ21は、アウトレットカバー24内に形成されたレギュレータ収容部41内に、ボール(鋼球)42を備えたアーマチュア43と、バルブスプリング44とを収容した構成となっている。レギュレータ収容部41は、上流側(図1において下側)に小径部45、下流側に大径部46を備えており、小径部45と大径部46の境界部分にはバルブ面が形成されている。バルブ面は、小・大径部の境界部のエッジをポンチングによって塑性変形させたものであり、ボール42がバルブ面に密接するとプレッシャレギュレータ21は閉弁状態となる。一方、大径部46の下流側の端部には、リテーナ47が圧入固定されている。リテーナ47は略リング状に形成されており、その上流側(下端面)にはバルブスプリング44の一端側が当接している。
【0036】
バルブスプリング44はコイルバネからなり、その他端側はアーマチュア43のスプリング受48に当接している。ボール42は、バルブスプリング44の付勢力によって、通常時はバルブ面に圧接されている(閉弁状態)。これに対し、小径部45側から流体圧が加わり流体圧がバルブスプリング44の付勢力に勝ると、ボール42が上方に移動し、バルブ面とボール42との間に隙間が生じ開弁状態となる。すなわち、シェルケース23内の燃圧が所定の調整圧を超えると、アーマチュア43が燃圧を受けて上方に移動し、余分な燃料が燃料タンク2内に戻される。また、流体圧が低下しバルブスプリング44の付勢力が勝ると、バルブスプリング44の付勢力によってボール42が下方に移動してバルブ面に当接し、小径部45が閉鎖されて閉弁状態となる。
【0037】
チェックバルブ22は、アウトレットカバー24内に形成されたチェックバルブ収容部51内に、一端側が半球状のシール部52となったバルブ53と、バルブスプリング54とを収容した構成となっている。チェックバルブ収容部51もまた、上流側に小径部55、下流側に大径部56を備えている。小径部55と大径部56の境界部分にはテーパ面57が形成されており、シール部52がテーパ面57に当接するとチェックバルブ22は閉弁状態となる。一方、大径部56の下流側の端部には、バルブガイド58がカシメ固定されている。バルブガイド58の上流側(下端面)にはバルブスプリング54の一端側が当接している。
【0038】
バルブスプリング54もまたコイルバネからなり、その他端側はバルブ53に当接している。バルブ53のシール部52は、バルブスプリング54の付勢力によって、通常時はテーパ面57に圧接されている(閉弁状態)。これに対し、小径部55側から流体圧が加わり流体圧がバルブスプリング54の付勢力に勝ると、バルブ53が上方に移動し、テーパ面57とシール部52との間に隙間が生じ開弁状態となる。従って、燃料ポンプ5が作動し、小径部55側から燃料が供給されると、その圧力によってチェックバルブ22が開弁し、燃料配管3側に燃料が送給される。また、燃料ポンプ5が停止し流体圧が低下すると、バルブスプリング54の付勢力が勝り、バルブスプリング54の付勢力によってバルブ53が下方に移動する。これにより、シール部52がテーパ面57に当接し、小径部55が閉鎖されて閉弁状態になると共に、チェックバルブ22によって、燃料配管3側から燃料ポンプ5に対する燃料の逆流が抑止される。
【0039】
燃料ポンプ5は非容積型の再生式ポンプとなっており、ポンプケース61とインペラ62とから形成されている。ポンプケース61の下端側には、円筒形状のインペラ収容部63が没設されている。インペラ収容部63内には、電動モータ4の回転軸36と連結されたインペラ62が配される。回転軸36にはDカット部36aが形成されており、インペラ62はこのDカット部36aに取り付けられ回転軸36と一体に回転する。インペラ62の外周寄りにはポンプ室64が周方向に沿って多数設けられている。
【0040】
インレットカバー25には、ポンプ室64に対応して燃料吸入部28が設けられている。前述のように、燃料吸入部28の前段にはフィルタ9が設置されている。一方、インペラ収容部63の上端側には、ポンプ室64に対応して、シェルケース23内に臨んで開口する連通孔65が設けられている。このような燃料ポンプ5では、電動モータ4が駆動され回転軸36が作動すると、インペラ62が回転し、このインペラ62の回転に伴って燃料吸入部28からポンプ室64内に燃料が吸い込まれる。ポンプ室64内に送り込まれた燃料は、インペラ62の回転により連通孔65からシェルケース23内に送出され、チェックバルブ22を介して燃料配管3側に送給される。
【0041】
このような構成を備えた燃料供給装置1は次のように機能する。まず、電動モータ4が駆動され燃料ポンプ5が作動すると、燃料タンク2内の燃料が燃料流入孔72を通ってリザーバ部71内に流入し、フィルタ9を介して燃料吸入部28から吸い込まれる。この際、燃料ポンプ5では、回転軸36と共にインペラ62が回転し、インペラ62の回転に伴って燃料吸入部28からポンプ室64内に燃料が吸い込まれる。ポンプ室64内に送り込まれた燃料は、インペラ62の回転によりシェルケース23内に送出され、チェックバルブ22を介して燃料吐出口13から燃料配管3側に送給される。
【0042】
一方、ポンプ動作に伴い、燃圧が所定の調整圧を超えると、プレッシャレギュレータ21が開弁状態となり、シェルケース23内の燃料が燃料タンク2内に戻される。これにより、燃料配管3側に供給される燃料の圧力が適宜調整される。燃料配管3は前述のようにエンジンの燃料噴射弁に接続されており、燃料供給装置1によって燃料タンク2から吸入された燃料は、燃料配管3を介して燃料噴射弁に供給される。
【0043】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
前述の実施例では、アルコールとガソリンとを任意の割合で混合させた燃料に使用される燃料供給装置について説明したが、ガソリンのみを対象とした燃料供給装置にも本発明は適用可能である。また、ターミナル接続部81の端子数(5個)はあくまでも一例であり、端子数は特に限定されない。また、端子のオス・メスの関係も前述のものには限定されず、ハーネス17側をオス、端子取付部82側をメスにしても良い。
【0044】
一方、前述の実施例では、本発明による燃料供給装置を自動二輪車用として用いた例を示したが、その用途はこれには限定されず、四輪自動車等、種々の車両の燃料供給装置として使用することも可能である。また、本発明の構成は、燃料ポンプのみならず、水や薬品などの液体や空気等の気体などのポンプにも適用可能である。さらに、電動モータ4や燃料ポンプ5の構成には特に限定はなく、例えば、極数やスロット数、インペラ形状などは適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 燃料供給装置
2 燃料タンク
17 ハーネス
81 ターミナル接続部
82 端子取付部
82a〜82e 端子取付部
83 オス端子(給電端子)
84 メス端子
85 ゴムグロメット
87 開口
87a 外縁部
88 ターミナル板
88a ターミナル板
88b ターミナル板
89 スリット
90 外壁
A 端子取付部の列
B 端子取付部の列
O 開口中心
〜O 開口中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータによって駆動される電動ポンプ装置と、前記電動ポンプ装置を収容保持するケース部材とを備える燃料供給装置であって、
前記ケース部材は、前記電動モータの給電配線と接続される複数個の給電端子がそれぞれ電気的に絶縁された状態で個別に収容される複数個の端子取付部を有し、
前記複数個の端子取付部は2列に配置され、他列の隣接する前記端子取付部が同列の隣接する前記端子取付部の間に配置されるように、各列の前記端子取付部が交互に設けられることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃料供給装置において、前記端子取付部は、内部に前記給電端子が収容可能な円筒形状に形成され、隣接する前記各端子取付部の開口中心を結ぶ線分が折れ線状となることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料供給装置において、前記給電端子は、一端側が前記給電配線と接続され、他端側が外部電源と電気的に接続されたカプラと接続される金属製の端子部材にて形成され、
前記端子部材は、2列交互に配置された前記端子取付部の一の列側に配置される部品と、他の列側に配置される部品の2種類の部品からなることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項4】
電動モータによって駆動される電動ポンプ装置と、前記電動ポンプ装置を収容保持するケース部材とを備える燃料供給装置であって、
前記ケース部材は、前記電動モータの給電配線と接続される複数個の給電端子がそれぞれ電気的に絶縁された状態で個別に収容される複数個の端子取付部を有し、
前記端子取付部は、その先端部に該端子取付部の開口を弾性的に拡径可能とするスリットを有することを特徴とする燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−196620(P2010−196620A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43720(P2009−43720)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】