説明

燃料遮断弁

【課題】燃料タンク内のデッドスペースを減少し、燃料タンクの容量を増大することのできる燃料遮断弁を提供する。
【解決手段】カットオフバルブ10は、燃料タンク26の気層部28に設けられかつフロート室43を形成するハウジング12と、フロート室43に上下動可能に収納されたフロート弁14とを備える。ハウジング12は、フロート室43の下部に開口する連通孔40、フロート室43の上壁部31に開口する蒸発燃料流出孔32、及び、フロート室43の側壁部30に開口する通気孔35を有する。フロート弁14は、弁本体部50、及び、蒸発燃料流出孔32を閉じる弁部51を有する。フロート弁14の弁本体部50を扁平形状とし、フロート弁14の浮力点14Fを弁本体部50の高さの中間位置よりも高い位置に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の燃料タンクに設けられる燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料遮断弁の従来例としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。図7は燃料遮断弁を示す断面図である。
図7に示すように、燃料遮断弁100は、自動車の燃料タンク内の気層部に設けられたハウジング110と、ハウジング110内のフロート室110aに上下動可能に収納されたフロート弁102とを備える。ハウジング110の上壁部112に蒸発燃料流出口113が形成されている。蒸発燃料流出口113は、図示しないエバポ回路いわゆる蒸発燃料通路を介してキャニスタと連通されている。ハウジング110の下壁部130に連通口131が形成されている。また、フロート弁102は、円柱状に形成された弁本体部102aの上面に、蒸発燃料流出口113に対応する弁部120を有する。そして、車両の通常時は、フロート弁102が下降位置にあり、弁部120が蒸発燃料流出口113を開いている。このため、燃料タンク内で発生した蒸発燃料は、連通口131からフロート室110aを通り、蒸発燃料流出口113からキャニスタへ流出する。また、車両の傾倒や転倒等によってハウジング110内の燃料の液面が所定の高さすなわちフロート弁102の浮力点以上に上昇すると、フロート弁102が浮力により上昇し、弁部120が蒸発燃料流出口113を閉じる。これによって、蒸発燃料流出口113からの燃料の流出が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−254980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記燃料遮断弁100において、満タン時における燃料タンク内の燃料の液面100Lは、フロート弁102が下降位置に位置するように設定する必要がある。そして、フロート弁102の弁本体部102aが外径と比べて高さの高い円柱状に形成されているため、満タン時における燃料タンク内の燃料の液面100Lを低く設定する必要があった。また、前記特許文献1には、フロート弁102の浮力点に関する記載がないため、その浮力点がどこに設定されているか不明であるが、一般的なフロート弁の浮力点は、燃料タンク内の燃料の液面の浮力を受けやすいように、弁本体部の高さの中間位置よりも低い位置に設定されていたため、満タン時における燃料タンク内の燃料の液面を低く設定せざるを得なかった。したがって、満タン時における燃料タンク内の気層部となるデッドスペースが増大し、燃料タンクの容量の減少を招くという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、燃料タンク内のデッドスペースを減少し、燃料タンクの容量を増大することのできる燃料遮断弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする燃料遮断弁により解決することができる。
請求項1に記載された燃料遮断弁によると、燃料タンクの気層部に設けられかつフロート室を形成する中空状のハウジングと、フロート室に上下動可能に収納されたフロート弁とを備え、ハウジングは、フロート室の下部に開口する連通口、フロート室の上壁部に開口する蒸発燃料流出口、及び、フロート室の側壁部に開口する通気口を有し、フロート弁は、弁本体部、及び、フロート室に流入した燃料による浮力で上動したときに蒸発燃料流出口を閉じる弁部を有する燃料遮断弁であって、フロート弁の弁本体部を扁平形状とし、フロート弁の浮力点を弁本体部の高さの中間位置よりも高い位置に設定したものである。この構成によると、フロート弁の弁本体部を扁平形状とすることにより、従来例と比べて、満タン時における燃料タンク内の燃料の液面を高い位置に設定することができる。さらに、フロート弁の浮力点を弁本体部の高さの中間位置よりも高い位置に設定したことによっても、従来例と比べて、満タン時における燃料タンク内の燃料の液面を高い位置に設定することができる。したがって、燃料タンク内のデッドスペースを減少し、燃料タンクの容量を増大することができる。
【0007】
また、請求項2に記載された燃料遮断弁によると、通気口を、フロート弁の下降位置における浮力点と同じ高さ位置もしくは浮力点よりも高い位置に設定したものである。この構成によると、燃料タンク内の燃料の液面の波立ち等により飛散した飛沫状の燃料が通気口からフロート室を介して蒸発燃料流出口から流出することを防止できる。
【0008】
また、請求項3に記載された燃料遮断弁によると、通気口を、蒸発燃料流出口を空気が流通するときの圧力損失と比べ、通気口を空気が流通するときの圧力損失が小さくなるように設定したものである。この構成によると、燃料タンクの傾倒時等において、燃料タンク内の気層部の圧力に対するフロート室内の圧力の低下を防止することができる。これにより、フロート弁が閉じるよりも前に、フロート室内の燃料の液面が急激に上昇することによる蒸発燃料流出口からの燃料洩れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかるカットオフバルブを示す分解斜視図である。
【図2】カットオフバルブの開弁状態を示す断面図である。
【図3】カットオフバルブの閉弁状態を示す断面図である。
【図4】カットオフバルブを示す平断面図である。
【図5】カットオフバルブのフロート弁を示す側面図である。
【図6】カットオフバルブの傾き状態を示す説明図である。
【図7】従来例にかかる燃料遮断弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、燃料遮断弁としてのカットオフバルブ(ロールオーバーバルブ、燃料流出防止弁等とも呼ばれている)について説明する。図1はカットオフバルブを示す分解斜視図、図2は同じく開弁状態を示す断面図、図3は同じく閉弁状態を示す断面図、図4は同じく平断面図である。なお、カットオフバルブは、図2における上下方向が車両すなわち燃料タンクに対する上下方向に相当する。
【0011】
図1に示すように、カットオフバルブ10は、ハウジング12とフロート弁14とバルブスプリング16とを備えている。ハウジング12は、ハウジング本体20とリテーナ22とカバー24とにより構成されている。以下、説明の都合上、ハウジング本体20、リテーナ22、カバー24、フロート弁14、バルブスプリング16の順に説明する。なお、図2に示すように、カットオフバルブ10は、ハウジング12を燃料タンク26の上壁26aの下面側に装着されることによって、燃料タンク26内の気層部28に配置されている。
【0012】
ハウジング本体20を説明する。図2に示すように、ハウジング本体20は、中空円筒状の側壁部30、及び、側壁部30の上端開口部をその上端よりも一段低い位置において閉鎖する上壁部31を有している。上壁部31の中央部には、上下方向に貫通する中空円柱状の蒸発燃料流出孔32が形成されている。蒸発燃料流出孔32の下端開口部にはバルブシート部32aが形成されている。また、側壁部30の上端部には、上壁部31より上側において外側方(図1において左方)に向けて突出する接続管部33が形成されている。接続管部33内の管路が接続管路34となっている。また、側壁部30には、上壁部31の下方付近において径方向に貫通する複数個の丸孔状の通気孔35が形成されている(図4参照)。通気孔35は、側壁部30の周方向に所定の間隔で複数個(図4では4個を示す)配置されている。なお、蒸発燃料流出孔32は本明細書でいう「蒸発燃料流出口」に相当する。また、通気孔35は本明細書でいう「通気口」に相当する。また、ハウジング本体20は、例えば樹脂成形品で形成されている。
【0013】
次に、リテーナ22を説明する。図1に示すように、リテーナ22は、円板状の底板部36と、底板部36の外周縁から立ち上がる円環状の側板部37と、側板部37から上方へ延びかつ上端部において径方向外方へ延びる取っ手状部38とを有している。底板部36には、板厚方向(図2において上下方向)に貫通する多数個の丸孔状の連通孔40が分散的に形成されている(図1参照)。また、リテーナ22は、例えば金属製の板状材をプレス成形することにより一体形成されている。
【0014】
前記リテーナ22は、前記ハウジング本体20の側壁部30の下端部に対して側板部37を嵌合するようにして装着されている(図2参照)。これにより、ハウジング本体20の側壁部30の下面開口部がリテーナ22の底板部36で閉塞され、ハウジング本体20内に中空円筒状のフロート室43が形成されている。また、取っ手状部38の上端部は、燃料タンク26の上壁26aの下面側に対して溶着(例えば溶接)等により取付けられるようになっている。なお、リテーナ22は、本明細書でいう「下壁部形成部材」に相当する。また、底板部36は本明細書でいう「下壁部」に相当する。また、連通孔40は本明細書でいう「連通口」に相当する。
【0015】
次に、カバー24を説明する。図1に示すように、カバー24は、例えば樹脂成形品で、円板状に形成されている。カバー24は、前記ハウジング本体20の側壁部30の上端部に対して嵌合するようにして装着されている(図2参照)。これにより、ハウジング本体20の側壁部30の上面開口部がカバー24で閉塞されている。また、ハウジング本体20の上壁部31とカバー24との間の空間部により中空状の連通室45が形成されている。連通室45は、前記蒸発燃料流出孔32(バルブシート部32aを含む)を介して前記フロート室43と連通されているとともに前記接続管路34と連通されている。連通室45と接続管路34とは相互に連通する「接続通路」を構成している。また、接続管部33には、ホース等の配管部材47を介してキャニスタ48が接続される。キャニスタ48は燃料タンク26外に配置されている。なお、配管部材47は蒸発燃料通路を形成している。
【0016】
次に、フロート弁14を説明する。図5はフロート弁を示す側面図である。
図5に示すように、フロート弁14は、円柱状の弁本体部50と、弁本体部50の中央部上に突出された円錐状の弁部51とを同心状に有している。弁本体部50は、中心線(軸線)50Lに直交する下面50b及び上端面50c、円筒状の外周面50eを有する。上端面50c上に弁部51が形成されている。また、弁本体部50の上端面50cの外周縁と外周面50eの上端縁との間における上面50aは、上端面50cの外周縁から径方向外方に向かって下方へ緩やかに傾斜する円錐台状の傾斜面で形成されている。また、弁本体部50の外周面50eには、軸方向(上下方向)に延びる複数本(本実施形態では8本)のリブ部53が周方向に等間隔で形成されている(図4参照)。また、図5に示すように、弁本体部50の下面50bの外周部には、径方向に延びる複数個(本実施形態では4個)の支持突起54が周方向に等間隔で形成されている。また、各支持突起54は、周方向に1つおきのリブ部53の下端部と連続している。また、フロート弁14は、例えば樹脂成形品で形成されている。
【0017】
前記フロート弁14は、前記フロート室43内に上下動可能に収納されている(図2参照)。フロート弁14の弁部51は、前記バルブシート部32aと同心状に対応する。これとともに、フロート弁14のリブ部53が、フロート室43の周壁面すなわち前記側壁部30の内周面に対して摺接可能に当接又は近接される(図4参照)。これにより、フロート弁14が側壁部30に沿って軸方向(上下方向)に案内される。
【0018】
次に、バルブスプリング16を説明する。図1に示すように、バルブスプリング16は、コイルスプリングからなる。バルブスプリング16は、前記リテーナ22と前記フロート弁14との間に介装されている(図2参照)。また、バルブスプリング16のスプリング力は、車両の通常時にはフロート弁14を上動させる付勢力はないが、フロート室43内に燃料が流入したときには、フロート弁14に作用する浮力を補助する付勢力として作用する。また、フロート弁14は、車両の通常時には自重によりバルブスプリング16の付勢力に抗して下降し、支持突起54がフロート室43の底板部36に当接した状態で底板部36上に支持される。このフロート弁14の位置を「下降位置」という。
【0019】
図2に示すように、前記カットオフバルブ10にはリリーフ弁56が内蔵されている。リリーフ弁56は、弁ハウジング57と弁体60とリリーフスプリング61とにより構成されている(図1参照)。弁ハウジング57は、前記ハウジング本体20の上壁部31の一側部(図2において左側部)において縦方向(上下方向)に延びる中空円筒状に一体形成されている。弁ハウジング57内には、前記連通室45と前記フロート室43とを連通するリリーフ通路58が形成されている。また、弁ハウジング57の下端部には、径方向内方へ円環状に突出する弁座59が形成されている。また、弁体60は、ボール弁であって、前記リリーフ通路58内に上下動可能に配置されている。弁体60は、下動により弁座59に着座して閉弁し、また、上動により弁座59から離れて開弁する。また、リリーフスプリング61は、コイルスプリングからなり、弁体60とカバー24との間に介装されている。リリーフスプリング61は、弁体60を常に閉弁方向すなわち下方に付勢している。
【0020】
前記カットオフバルブ10において、フロート弁14の弁本体部50は、外径50Dと比べて高さ50Hを小さくする扁平形状とされている(図5参照)。本実施形態では、外径50Dの約3/5の高さ50Hに設定されている。なお、弁本体部50の外径50D及び高さ50Hには、弁部51、リブ部53及び支持突起54が含まれない。このため、弁本体部50の外径50Dは、外周面50eの直径に相当する。また、弁本体部50の高さ50Hは、下面50bから上端面50cまでの高さ(軸方向長さ)に相当する。
【0021】
前記フロート弁14の浮力点14Fは、前記弁本体部50の中心線50L上において、高さ50Hの中間位置(1/2)よりも高い位置に設定されている(図5参照)。本実施形態では、浮力点14Fは、弁本体部50の中心線50L上における上端面50cの下方近くに設定されている。また、フロート弁14の浮力点14Fは、弁本体部50の中心線50L上において、高さ50Hの中間位置よりも高い位置にあればよい。また、フロート弁14の浮力点14Fは、弁本体部50の中心線50L上において、高さ50Hの2/3よりも高い位置に設定するとよく、望ましくは高さ50Hの3/4よりも高い位置に設定するとよく、より望ましくは高さ50Hの4/5よりも高い位置に設定するとよい。なお、浮力点14Fとは、浮力作用点とも呼ばれ、フロート弁14が受ける浮力の作用点いわゆる浮力中心のことをいう。
【0022】
前記フロート弁14の浮力点14Fに基づいて、前記通気孔35の位置が設定されている(図2参照)。すなわち、通気孔35は、フロート弁14の下降位置における浮力点14Fよりも高い位置に設定されている。本実施形態では、フロート弁14の下降位置における浮力点14Fの位置よりも所定高さ分、例えばフロート弁14の弁部15がバルブシート部32aを閉じるのに要する移動ストロークに相当する分、又は、移動ストロークに略相当する分だけ高い位置に設定されている。また、通気孔35(詳しくは孔中心)は、フロート弁14の下降位置における浮力点14Fと同じ高さ位置もしくは浮力点14Fよりも高い位置に設定されていればよい。
【0023】
前記通気孔35は、前記蒸発燃料流出孔32を空気が流通するときの圧力損失と比べ、通気孔35を空気が流通するときの圧力損失を小さくするように設定されている。すなわち、通気孔35の開口面積(全ての通気孔35の開口面積を合計した開口面積)が、蒸発燃料流出孔32の開口面積と比べて大きくなるように、各通気孔35の開口面積が設定されている。なお、本実施形態における各通気孔35は同一口径で形成されている。
【0024】
次に、前記カットオフバルブ10の作動について説明する。
車両の通常時において、燃料タンク26内の燃料の液面Lはカットオフバルブ10のハウジング12よりも下方に位置する。このため、フロート弁14は、下降位置に位置する(図2参照)。この状態では、フロート弁14の弁部51がハウジング12のバルブシート部32aから下方へ離れる(離座する)ため、蒸発燃料流出孔32が開かれた状態すなわち開弁状態となる。この開弁状態において、燃料タンク26内の気層部28に発生した蒸発燃料は、ハウジング12の通気孔35及び連通孔40からフロート室43内へ流入した後、蒸発燃料流出孔32から、接続通路の連通室45及び接続管路34を通り、配管部材47を介してキャニスタ48へ流出される。
【0025】
また、車両(燃料タンク26)の傾倒や転倒等したときには、燃料タンク26内の燃料がハウジング12の連通孔40からフロート室43内へ流入する。そして、ハウジング12内の燃料の液面Lが所定の高さすなわちフロート弁14の浮力点14F以上に上昇することにより、フロート弁14が浮力及びバルブスプリング16の付勢力により上昇し、フロート弁14の弁部51がハウジング12のバルブシート部32aに着座することにより、蒸発燃料流出孔32が閉じられた状態すなわち閉弁状態となる(図3参照)。このため、燃料タンク26内の燃料(液体燃料)が蒸発燃料流出孔32からキャニスタ48へ流出することが防止される。また、車両の反転時においては、フロート弁14の自重とバルブスプリング16の付勢力とによって、フロート弁14が閉弁状態に保持される。
【0026】
また、車両が傾斜や転倒等から通常時に戻るときには、フロート室43内の燃料が、ハウジング12の連通孔40から燃料タンク26内へ流下するにともない、フロート弁14が自重により下降位置すなわち開弁位置に戻る。
【0027】
また、リリーフ弁56は、車両の通常時において、リリーフスプリング61の付勢により弁体60が弁座59に着座しているため閉弁状態にある(図2参照)。そして、燃料タンク26内の気層部28の圧力が所定値に達した時には、リリーフスプリング61の付勢に抗して弁体60が弁座59から離れることにより開弁する。これにより、カットオフバルブ10の蒸発燃料流出孔32を迂回するリリーフ通路58が開通し、燃料タンク26内の気層部28の圧力が逃される。これにより、燃料タンク26内の気層部28の圧力が所定値以上に上昇することが防止される。なお、燃料タンク26内の気層部28の圧力が所定値に低下すれば、リリーフ弁56はリリーフスプリング61の付勢により閉弁する。
【0028】
前記したカットオフバルブ10によると、フロート弁14の弁本体部50を扁平形状としたものである(図5参照)。これにより、従来例と比べて、満タン時における燃料タンク26内の燃料の液面L(図2参照)を高い位置に設定することができる。さらに、フロート弁14の浮力点14Fを弁本体部50の高さ50Hの中間位置よりも高い位置に設定したものである(図5参照)。これによっても、従来例と比べて、満タン時における燃料タンク26内の燃料の液面L(図2参照)を高い位置に設定することができる。したがって、燃料タンク26内のデッドスペースを減少し、燃料タンク26の容量を増大することができる。
【0029】
また、各通気孔35を、フロート弁14の下降位置における浮力点14Fよりも高い位置に設定したものである(図2参照)。したがって、燃料タンク26内の燃料の液面Fの波立ち等により飛散した飛沫状の燃料が通気孔35からフロート室43を介して蒸発燃料流出孔32から流出することを防止できる。
【0030】
また、各通気孔35を、蒸発燃料流出孔32を空気が流通するときの圧力損失と比べ、各通気孔35を空気が流通するときの圧力損失が小さくなるように設定したものである。したがって、燃料タンク26の傾倒時等において、燃料タンク26内の気層部28の圧力に対するフロート室43内の圧力の低下を防止することができる。これにより、フロート弁14が閉じるよりも前に、フロート室43内の燃料の液面が急激に上昇することによる蒸発燃料流出孔32からの燃料洩れを防止することができる。
【0031】
この点について説明する。図6はカットオフバルブの傾き状態を示す説明図である。
図6において、例えば、通気孔35が、蒸発燃料流出孔32を空気が流通するときの圧力損失と比べ、通気孔35を空気が流通するときの圧力損失を大きくするように設定された場合を仮定する。この場合、燃料タンク26内の気層部28の圧力が燃料の液面の変動や温度上昇等によって、フロート室43内の圧力(大気圧とほぼ同圧)よりも高くなることがある。すると、燃料タンク26の傾倒時等において、通気孔35の圧力損失により、燃料タンク26内の気層部28の圧力に対してフロート室43内の圧力が低下してしまい、フロート弁14が閉じる前に、フロート室43内の燃料の液面(符号、L1を付す)が急激に上昇し、甚だしいときには燃料が蒸発燃料流出孔32から流出する(洩れる)おそれがある。このことは、通気孔35を、フロート弁14の下降位置における浮力点14Fよりも高い位置に設定した場合に起こりやすい。
【0032】
これに対し、本実施形態では、通気孔35が、蒸発燃料流出孔32を空気が流通するときの圧力損失と比べ、該通気孔35を空気が流通するときの圧力損失を小さくするように設定されている。したがって、燃料タンク26内の気層部28の圧力が高くなったときでも、燃料タンク26内の気層部28の圧力に対してフロート室43内の圧力が同圧化されるため、燃料タンク26内の気層部28の圧力に対するフロート室43内の圧力の低下を防止することができる。このため、通気孔35をフロート弁14の下降位置における浮力点14Fよりも高い位置に設定したにも関わらず、フロート弁14が閉じる前にフロート室43内の燃料の液面L1が急激に上昇することを防止することができる。これにより、フロート室43内の燃料の液面L1の上昇に追従してフロート弁14が上昇するため、その液面L1の急激な上昇による蒸発燃料流出孔32からの燃料洩れを防止することができる。
【0033】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明の燃料遮断弁は、カットオフバルブに限らず、燃料が満タンになったときに通気系を遮断する満タン制御弁にも適用することができる。また、前記実施形態におけるフロート弁14の弁本体部50の上面50aと上端面50cとは同一平面で形成してもよい。前記フロート弁14の弁本体部50は、円柱状以外の形状でもよい。また、各通気孔35、各連通孔40の形状、個数等は適宜変更することができる。また、連通孔40は、フロート室43の側壁部30の下端部端部に開口してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…カットオフバルブ(燃料遮断弁)
12…ハウジング
14…フロート弁
26…燃料タンク
28…気層部
30…側壁部
31…上壁部
32…蒸発燃料流出孔(蒸発燃料流出口)
35…通気孔(通気口)
40…連通孔(連通口)
43…フロート室
50…弁本体部
51…弁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの気層部に設けられかつフロート室を形成する中空状のハウジングと、
前記フロート室に上下動可能に収納されたフロート弁と
を備え、
前記ハウジングは、前記フロート室の下部に開口する連通口、該フロート室の上壁部に開口する蒸発燃料流出口、及び、該フロート室の側壁部に開口する通気口を有し、
前記フロート弁は、弁本体部、及び、前記フロート室に流入した燃料による浮力で上動したときに前記蒸発燃料流出口を閉じる弁部を有する
燃料遮断弁であって、
前記フロート弁の弁本体部を扁平形状とし、
前記フロート弁の浮力点を前記弁本体部の高さの中間位置よりも高い位置に設定した
ことを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁であって、
前記通気口を、前記フロート弁の下降位置における浮力点と同じ高さ位置もしくは浮力点よりも高い位置に設定したことを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料遮断弁であって、
前記通気口を、前記蒸発燃料流出口を空気が流通するときの圧力損失と比べ、該通気口を空気が流通するときの圧力損失が小さくなるように設定したことを特徴とする燃料遮断弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24288(P2013−24288A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157951(P2011−157951)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】