説明

燃料電池の冷却液温度調整システム及びサーモスタットバルブ

【課題】冷却液ポンプを停止させることなく、冷却液を、サーモスタットの設定温度よりも高い温度にすることができる、燃料電池の冷却液温度調整システム及びサーモスタットバルブを提供する。
【解決手段】冷却液が循環して流れるように、燃料電池10と放熱器20とを結んで設けられる冷却液循環流路30と、冷却液が放熱器20をバイパスするように、放熱器20よりも上流の冷却液循環流路30と放熱器よりも下流の冷却液循環流路30とを結ぶ放熱器バイパス流路40と、冷却液循環流路30と放熱器バイパス流路40との結合場所に設けられ、冷却液循環流路30を流れる流量及び放熱器バイパス流路40を流れる流量を調整するサーモスタットバルブ50と、冷却液がサーモスタットバルブ50をバイパスするように、冷却液循環流路30と放熱器バイパス流路40とを結んで設けられるバルブバイパス流路60と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池の冷却液の温度を調整するシステム及びサーモスタットバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、冷却液が循環して流れる冷却液循環流路が接続される。そして、この冷却液循環流路の途中にラジエーター(放熱器)が配置される。また、ラジエーターよりも上流の冷却液循環流路とラジエーターよりも下流の冷却液循環流路とを結ぶラジエーターバイパス流路が設けられる。さらに、冷却液循環流路とラジエーターバイパス流路との結合場所に、三方弁が設けられる。このような構成によって、ラジエーターに流れる冷却液の流量とラジエーターをバイパスする冷却液の流量とが運転状態に応じて三方弁によって調整される。この結果、冷却液が適度な温度に調整され、燃料電池が運転状態に応じた適切な温度に調整される。
【0003】
ところで、三方弁に電制バルブを使用してはコストが嵩む。そこで特許文献1では、サーモスタットバルブを使用するとともに、冷却液ポンプの回転を制御することで、冷却液の温度が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−305519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法では、冷却液の温度を上昇させるために、冷却液ポンプを間歇的に動作させ、冷却水の循環を極めて遅くすることで燃料電池付近の冷却液温度を上昇させる。しかしながら、この技術では燃料電池に供給される冷却液温度はサーモスタットを介して供給されるため、結局、サーモスタットの設定温度を超えることは無く、三方弁のように燃料電池へ供給する水温を可変にすることはできない。このため、サーモスタットを利用した冷却システムとして改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、本発明の目的は、燃料電池に供給する冷却液を、サーモスタットの設定温度よりも高い温度にすることができる、燃料電池の冷却液温度調整システム及びサーモスタットバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0008】
本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムのひとつの態様は、燃料電池と、冷却液の熱を放熱する放熱器と、冷却液が循環して流れるように、前記燃料電池と前記放熱器とを結んで設けられる冷却液循環流路と、冷却液が放熱器をバイパスするように、前記放熱器よりも上流の冷却液循環流路と前記放熱器よりも下流の冷却液循環流路とを結ぶ放熱器バイパス流路と、前記冷却液循環流路と前記放熱器バイパス流路との結合場所に設けられ、冷却液循環流路を流れる流量及び放熱器バイパス流路を流れる流量を調整するサーモスタットバルブと、を含む。そして、冷却液が前記サーモスタットバルブをバイパスするように、前記冷却液循環流路と放熱器バイパス流路とを結んで設けられるバルブバイパス流路をさらにを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この態様によれば、サーモスタットバルブによって所定温度(サーモスタット設定温度)に調整された冷却液に対して、バイパス流路から高温の冷却液が混入する。したがって、冷却液を、サーモスタットの設定温度よりも高い温度にすることができるのである。
【0010】
本発明の実施形態、本発明の利点については、添付された図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第1実施形態を示す図である。
【図2】図2は、本発明によるサーモスタットバルブの構造を示す断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態の作用効果を説明する図である。
【図4】図4は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第2実施形態を説明する図である。
【図5】図5は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第3実施形態を示す図である。
【図6】図6は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第3実施形態を説明する図である。
【図7】図7は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第4実施形態の構成を説明する図である。
【図8】図8は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第4実施形態を説明する図である。
【図9】図9は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第5実施形態の構成を説明する図である。
【図10】図10は、冷却液の目標温度を設定するためのマップの一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第6実施形態を説明する図である。
【図12】図12は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第7実施形態を説明する図である。
【図13】図13は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第8実施形態を説明する図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施形態によるサーモスタットバルブの構造を示す断面図である。
【図15】図15は、メインバルブが開き、バイパスバルブが閉じているときの他の実施形態によるサーモスタットバルブを示した図である。
【図16】図16は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの他の実施形態を示す図である。
【図17】図17は、本発明の他の実施形態によるサーモスタットバルブの構造を示す断面図である。
【図18】図18は、本発明の他の実施形態によるサーモスタットバルブの構造を示す断面図である。
【図19】図19は、参考形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第1実施形態を示す図である。
【0013】
燃料電池の冷却液温度調整システム1は、燃料電池10と、放熱器20と、冷却液循環流路30と、放熱器バイパス流路40と、サーモスタットバルブ50と、バルブバイパス流路60と、冷却液ポンプ70と、を含む。
【0014】
燃料電池10は、電解質膜の両面にカソード電極触媒層及びアノード電極触媒層が形成された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)が数百枚積層されて構成される。反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が供給されると、各膜電極接合体(MEA)は、カソード電極触媒層及びアノード電極触媒層において次式(1-1)(1-2)の反応が生じて発電する。
【0015】
カソード電極触媒層: 4H+ +4e- +O2 →2H2O ・・・(1-1)
アノード電極触媒層: 2H2 →4H+ +4e- ・・・(1-2)
【0016】
このような発電反応が効率的に行われるには、電解質膜が適度な湿潤状態に維持されていることが望ましい。電解質膜の湿潤状態は、燃料電池の温度と相関する。燃料電池の温度が高いと電解質膜の湿潤状態が下がって乾燥しやすくなる。燃料電池の温度が低いと電解質膜の湿潤状態が上がって湿潤しやすくなる。そこで燃料電池の温度を管理することが重要である。そこで、燃料電池スタック10には、冷却液循環流路30が接続される。
【0017】
放熱器20は、冷却液の熱を放熱する。放熱器20は、冷却液循環流路30に設けられる。
【0018】
冷却液循環流路30は、冷却液が循環して流れるように、燃料電池10と放熱器20とを結ぶ。なお本実施形態では、冷却液は、図中の矢印方向に流れて循環する。循環する冷却液は、燃料電池10の入口11から流入し、出口12から流出する。
【0019】
放熱器バイパス流路40は、放熱器20よりも上流の冷却液循環流路30と放熱器20よりも下流の冷却液循環流路30とを結ぶ。冷却液は、放熱器バイパス流路40を流れると、放熱器20をバイパスする。
【0020】
サーモスタットバルブ50は、冷却液循環流路30と放熱器バイパス流路40との結合場所に設けられる。本実施形態では、サーモスタットバルブ50は、冷却液循環流路30を流れた冷却液と放熱器バイパス流路40を流れた冷却液とが合流する合流部分に設けられる。サーモスタットバルブ50は、三方弁である。サーモスタットバルブ50は、冷却液循環流路30から流れてきた冷却液の流量と放熱器バイパス流路40から流れてきた冷却液の流量とを調整することで、所定温度(サーモスタット設定温度)になった冷却液を流出する。サーモスタットバルブ50の詳細については、後述する。
【0021】
バルブバイパス流路60は、放熱器バイパス流路40と冷却液循環流路30とを結ぶ。冷却液は、バルブバイパス流路60を流れると、サーモスタットバルブ50をバイパスする。本実施形態では、バルブバイパス流路60は、サーモスタットバルブ50よりも上流の放熱器バイパス流路40と、サーモスタットバルブ50よりも下流の冷却液循環流路30と、を結ぶ。この結果、放熱器バイパス流路40を流れる冷却液の一部が、放熱器バイパス流路40からバルブバイパス流路60に分岐し、冷却液循環流路30に合流して、サーモスタットバルブ50をバイパスする。
【0022】
冷却液ポンプ70は、冷却液循環流路30に設けられる。本実施形態では、冷却液ポンプ70は、サーモスタットバルブ50と燃料電池10との間の冷却液循環流路30に設けられる。冷却液ポンプ70は、たとえば電動モーターによって駆動される。冷却液の流量は、冷却液ポンプ70の回転速度によって調整される。冷却液ポンプ70の回転速度が大であるほど、冷却液の流量も大である。
【0023】
図2は、本発明によるサーモスタットバルブの構造を示す断面図である。
【0024】
サーモスタットバルブ50は、ハウジング51と、メインバルブ52と、バイパスバルブ53と、伸縮体54と、を含む。
【0025】
ハウジング51には、低温部51aと高温部51bと中温部51cとが形成される。低温部51aには、放熱器20で放熱された低温の冷却液が流入する。高温部51bには、放熱器バイパス流路40を流れて放熱器20をバイパスした高温の冷却液が流入する。中温部51cは、低温側開口51dを介して低温部51aに連通するとともに高温側開口51eを介して高温部51bに連通する。
【0026】
メインバルブ52は、低温側開口51dを開閉する。
【0027】
バイパスバルブ53は、高温側開口51eを開閉する。
【0028】
伸縮体54は、メインバルブ52及びバイパスバルブ53に接続される。伸縮体54には、ワックス(たとえばパラフィンワックス)が内蔵される。このようなワックスは、温度に応じて熱膨張するので、温度に応じてメインバルブ52及びバイパスバルブ53を移動させる。すなわち中温部51cの温度が高いほど、メインバルブ52の開度が大きくなって、中温部51cに低温の冷却液が導入される。中温部51cの温度が低いほど、バイパスバルブ53の開度が大きくなって、中温部51cに高温の冷却液が導入される。
【0029】
このような構成であるので、冷却液は中温部51cで所定温度(サーモスタット設定温度)に調整されて流出路51fから流出する。
【0030】
なお以上のような構造及び作用は、一般的なサーモスタットバルブであるので、ここでは以上の説明にとどめる。
【0031】
さらに本実施形態のサーモスタットバルブ50は、ハウジング51に、高温部51bと、中温部51cに連続する流出路51fと、を接続するバイパス流路60が形成される。
【0032】
このような構成であるので、中温部51cで所定温度(サーモスタット設定温度)に調整されて流出路51fから流出する冷却液に高温の冷却液が混入する。この混入量によって流出路51fを流れる冷却液の温度を調整できる。
【0033】
次に図3を参照して本実施形態の効果について説明する。なおこの説明に先立って、図19を参照して参考形態について説明する。なお前述と同様の機能を果たす部分には同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0034】
要するに、この参考形態は、上述した第1実施形態に対してバルブバイパス流路60が無い。
【0035】
このような構成であると、サーモスタットバルブ50からは、所定温度(サーモスタット設定温度)に調整された冷却液が流出する。したがって図3に示されるように、参考形態では、燃料電池の発電量にかかわらず、燃料電池の冷却液入口温度が一定にされる。
【0036】
燃料電池は、出力が大きいほど、上式(1-1)(1-2)の反応が多く生じ、水が多く生成される。この水が燃料電池の内部に残留しては、フラッディングが生じるおそれがある。そこで、出力が大きいほど燃料電池の温度を高めるために冷却液の温度を高くして、生成水の蒸気化を促すことが望ましい。生成水が水蒸気化したほうが、カソードガスとともに外部に排出されやすいからである。
【0037】
しかしながら、参考形態では、燃料電池の冷却液入口温度が一定であるので、冷却液の温度が十分には高くない可能性がある。
【0038】
これに対して、本実施形態では、放熱器バイパス流路40と冷却液循環流路30とを結ぶバルブバイパス流路60を設けた。このバルブバイパス流路60によって、高温の冷却液がサーモスタットバルブ50をバイパスして冷却液循環流路30に混入する。したがって燃料電池の冷却液入口温度が高い。この結果、燃料電池の冷却液出口温度も高いのである。ゆえに燃料電池を適度に高温にでき、フラッディングが生じにくくなる。
【0039】
特に、燃料電池は出力が大きくなるほど、発熱量が大きくなるので、サーモスタットをバイパスする冷却液の温度も上昇する。このため、燃料電池の出力が大きくなるほど、燃料電池に供給される冷却液の温度が上昇する特性を本実施形態では提供できる。したがって、サーモスタットを使った冷却系においても、要求出力に応じて増加する生成水量に対応して、積極的に燃料電池に供給する冷却水温度を上昇させる特性を持ったシステムを実現できた。
【0040】
また図19の参考形態でも、冷却液ポンプ回転数を低下させることで燃料電池の冷却液出口温度を上昇させることで、燃料電池の冷却液の入出平均温度を上げることは可能であるが、本実施形態によれば、燃料電池の冷却液入口温度が高くなるので、参考形態に比べて、燃料電池の冷却液出口温度との温度差が小さくなり、燃料電池の入口と出口との温度分布が一様化し、セル内の発電ばらつきを抑制することが可能である。
【0041】
なお本実施形態では、バイパス流路60は、サーモスタットバルブ50のハウジング51に形成されていた。このようにすれば、システム全体をコンパクトにすることができるので、車両へ搭載しやすくなる。ただし、バイパス流路60は、ハウジング51に形成されなくてもよい。バイパス流路60が、放熱器バイパス流路40と冷却液循環流路30とを結ぶパイプであってもよい。
【0042】
(第2実施形態)
図4は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第2実施形態を説明する図である。
【0043】
上述のように、バイパス流路60を設けることで、冷却液の温度を高くできる。しかしながら、バイパス流路60が大径であるなどして圧力損失が小さすぎると、放熱器20への流量が十分にならない可能性がある。したがって、バイパス流路60は、圧力損失がある程度大きい必要がある。そこで圧力損失の具体的な設定方法について説明する。
【0044】
最初にΔP−Q特性図の見方について、図4(A)を参照して説明する。
【0045】
図4(A)の右上がりの細線は、参考形態(図19)においてサーモスタットバルブ50が全開状態であるときに冷却液循環流路30を流れる冷却液の流量Qとそのときの圧力損失ΔPとの関係を示す。なおサーモスタットバルブ50の全開状態とは、冷却液循環流路30を流れる冷却液の全量が放熱器20に流れ、放熱器バイパス流路40には流れない状態である。この図4(A)の細線から、冷却液の流量Qが大ほど、圧力損失ΔPが大であることが判る。
【0046】
また図4(A)の右下がりの線は、冷却液ポンプ70のポンプ圧力Pと吐出流量Qとの相関を示すPQ特性線である。
【0047】
この2本の線の交点Aが、冷却液ポンプ70の動作点である。
【0048】
したがって、参考形態(図19)の場合は、サーモスタットバルブ50の全開であって冷却液循環流路30を流れる冷却液の全量が放熱器20に流れるときに、冷却液ポンプ70から吐出される冷却液の流量は、Q1である。
【0049】
図4(A)の右上がりの太線は、実施形態(図1)においてサーモスタットバルブ50が全開状態であるときに冷却液循環流路30を流れる冷却液の流量Qとそのときの圧力損失ΔPとの関係を示す。サーモスタットバルブ50が全開であるので、放熱器バイパス流路40からサーモスタットバルブ50へ流れる冷却液は無い。バルブバイパス流路60が設けられているので、参考形態と同一流量であっても、圧力損失が小さい。
【0050】
この太線と、冷却液ポンプ70のPQ特性線との交点Bが、冷却液ポンプ70の動作点である。
【0051】
したがって、実施形態(図1)の場合は、冷却液ポンプ70から吐出される冷却液の流量は、Q2である。このうち一部が放熱器20を流れ、残りがバルブバイパス流路60を流れる。これについては、以下のように考えることができる。
【0052】
バルブバイパス流路60が無い場合の圧力損失特性線において、冷却液ポンプ70の動作点Bと圧力損失が同じとき流量Q0が、放熱器20に流れる流量である。そして残りの(Q2−Q0)がバルブバイパス流路60に流れる流量である。
【0053】
以上を踏まえて、バルブバイパス流路60の具体的な圧力損失の設定方法について、図4(B)を参照して説明する。
【0054】
燃料電池で要求される冷却性能を満足するために、放熱器20に流量Q3の冷却液を流す必要がある場合について考える。
【0055】
バルブバイパス流路60の圧力損失が大きいほど(たとえば、バルブバイパス流路60の流路径が小であるほど、バルブバイパス流路60に取り付けられたオリフィスの開口径が小であるほど)、バルブバイパス流路60が無い参考形態の特性線に近づく。
【0056】
バルブバイパス流路60の圧力損失が小さいほど(たとえば、バルブバイパス流路60の流路径が大であるほど、またはバルブバイパス流路60に取り付けられたオリフィスの開口径が大であるほど)、バルブバイパス流路60が無い参考形態の特性線から離れる。
【0057】
圧力損失が大のときの冷却液ポンプ70の動作点は、B1である。このとき冷却液ポンプ70から吐出される冷却液の流量は、Q21である。このうち、流量Q01が放熱器20に流れる。残りの流量(Q21−Q01)がバルブバイパス流路60に流れる。流量Q01は、流量Q3よりも大であるから、この場合は、放熱器20に流量Q3を流すことを実現することが可能である。
【0058】
圧力損失が小のときの冷却液ポンプ70の動作点は、B2である。このとき冷却液ポンプ70から吐出される冷却液の流量は、Q22である。このうち、流量Q02が放熱器20に流れる。残りの流量(Q22−Q02)がバルブバイパス流路60に流れる。流量Q01は、流量Q3よりも小であるから、この場合は、放熱器20に流量Q3を流すことを実現することは不可能である。
【0059】
このような考え方により、バルブバイパス流路60の圧力損失が小さくなりすぎないように、バルブバイパス流路60の流路径(バルブバイパス流路60にオリフィスが取り付けられているのであれば、そのオリフィスの開口径)の最大径を設定する。
【0060】
本実施形態によれば、燃料電池で要求される冷却性能を満足するために放熱器20に流すべき冷却液の流量を確保できるのである。
【0061】
(第3実施形態)
図5は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第3実施形態を示す図である。
【0062】
上述のように、燃料電池は、出力が大きいほど、多くの水を生成する。この水が燃料電池の内部に残留しては、フラッディングが生じるおそれがある。そこで、出力が大きいほど燃料電池の温度を高めるために冷却液の温度を高くして、生成水の蒸気化を促すことが望ましい。生成水が水蒸気化したほうが、カソードガスとともに外部に排出されやすいからである。
【0063】
そこで上述のように、バルブバイパス流路60を設ける。以下では上記を実現するためのバルブバイパス流路の圧力損失特性の設定方法について記載する。
【0064】
条件が最も厳しくなるのは、放熱器出口の冷却液水温が最も低く、燃料電池の出力が最大のときである。そこで、この条件で冷却液の目標温度を達成できるようにした。具体的には、放熱器バイパス流路40を流れてサーモスタットバルブ50に流入する流量Qb1とバルブバイパス流路60を流れる流量Qb2との流量比を以下のように設定する。なお図5には、流量Qb1,Qb2を調整するオリフィス40a,60bを模式的に図示したが、流路径自体を調整してもよい。
【0065】
【数1】

ただし
sst:サーモスタットの設定温度
in:燃料電池の目標水温
:放熱器の出口温度の下限値
m:冷却液ポンプの下限流量
c:冷却液の比熱(=0.06kW/(L/min)/℃)
H:燃料電池の発熱量
【0066】
たとえば、許容上限温度が80℃であって燃料電池の目標水温が80℃となる負荷での燃料電池の発熱量が50kW、放熱器の出口温度の下限値が−30℃、冷却液ポンプの下限流量が20L/min、サーモスタットの設定温度が60℃の場合には、流量比Qb2/Qb1を0.81以上に設定する。
【0067】
図6は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第3実施形態を説明する図である。
【0068】
上述のように、燃料電池は、出力が大きいほど、水が多く生成される。この水が燃料電池の内部に残留しては、フラッディングが生じるおそれがある。そこで、図6の太線で示すように、出力が大きいほど冷却液の温度を高くして、生成水を蒸気化して排出することが望ましい。そこで上述のように、バルブバイパス流路60を設ける。このとき前述のように、流量比Qb2/Qb1を0.81以上に設定したことで、燃料電池が最大出力の場合に冷却液の目標水温を達成できるように設定できることがわかる。またその他の負荷領域に関しては、冷却液ポンプの流量を増加させ、図6中の一点鎖線のように水温を下げることで、目標の水温に設定することが可能である。
【0069】
(第4実施形態)
図7は本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第4実施形態の構成を説明する図であり、図7(A)はシステム全体図、図7(B)は制御ブロック図である。
【0070】
なおブロック図に示される各ブロックは、コントローラーの各機能を仮想ユニットとして示すものであり、各ブロックは物理的な存在を意味しない。
【0071】
図7(A)に示されるように、第4実施形態の燃料電池の冷却液温度調整システム1では、燃料電池10の冷却液入口11の付近に入口温度センサー91が設けられる。また燃料電池10の冷却液出口12の付近に出口温度センサー92が設けられる。
【0072】
そして図7(B)に示されるように、要求出力に対して目標水温を設定する。そして、その目標水温と燃料電池の実水温との偏差に応じて冷却液ポンプ70の回転速度を調整する。なお燃料電池の実水温は、入口温度センサー91で検出された流入冷却液温と出口温度センサー92で検出された流出冷却液温との平均値である。
【0073】
図8は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第4実施形態を説明する図である。
【0074】
図8(A)の細線は、冷却液ポンプ70の回転速度が小のときの、燃料電池の発熱量と冷却液入口温度との相関を示す。図8(A)の太線は、冷却液ポンプ70の回転速度が大のときの、燃料電池の発熱量と冷却液入口温度との相関を示す。これらから明らかなように、燃料電池の発熱量が同一であれば、冷却液ポンプ70の回転速度が小のときのほうが、燃料電池の入口温度が高くなる。このようになるのは、冷却液ポンプ70の回転速度が小のほうが、バルブバイパスに流入する熱量が大きくなるためである。
【0075】
本実施形態の制御が実行されることで、図8(B)に示されるように、冷却液ポンプ70の回転速度が低いほど、燃料電池の入口温度を高くすることができる。したがって目標水温に対して燃料電池の実水温が低いときには、偏差が大きいほど冷却液ポンプ70の回転速度を小さくする。目標水温に対して燃料電池の実水温が大きいときには、偏差が大きいほど冷却液ポンプ70の回転速度を大きくする。
【0076】
このように、冷却液ポンプ70の回転速度をも制御することで、より精緻に冷却液温度を調整できるのである。したがって燃料電池を適切な湿潤状態で運転できる。
【0077】
なお本実施形態では、フィードバック制御器に対して、必要に応じてアンチワインドアップ等の制御を追加する。
【0078】
(第5実施形態)
図9は本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第5実施形態の構成を説明する図であり、図9(A)はシステム全体図、図9(B)は制御ブロック図である。
【0079】
第5実施形態では、第4実施形態に対して、カソードガス(吸入空気)の温度を検出するセンサー101と、相対湿度を検出するセンサー102と、をさらに含む。
【0080】
そしてカソードガス(吸入空気)の温度及び推定湿度から、カソードガス(吸入空気)の水蒸気濃度を推定する。そしてこの推定した水蒸気濃度をも考慮して、冷却液の目標温度を設定する。具体的には、予め実験等を通じて図10のように設定されたマップに基づいて目標温度を設定する。
【0081】
本実施形態によれば、吸入空気の湿度が高ければ、目標水温を上げるようにした。そのため、一層精緻に制御でき、燃料電池の内部に生成水が残留しにくくなってさらにフラッディングを防止しやすくなる。この結果、燃料電池を一層適切な湿潤状態で運転できるのである。
【0082】
(第6実施形態)
図11は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第6実施形態を説明する図である。
【0083】
本実施形態では、図11(A)に示されるように、要求出力に基づいて燃料電池の目標湿潤状態を設定する。なお目標湿潤状態は、予め実験等を通じて図11(B)のように設定されたマップに基づいて設定される。目標湿潤状態は、基本的には一定であるが、最大負荷付近で上昇する。
【0084】
また実湿潤状態を検出する。実湿潤状態は、燃料電池の内部抵抗を検出することによって検出可能である。このような手法は、公知であるので、ここでは説明を省略する。
【0085】
そして、その目標湿潤状態に対する実湿潤状態の偏差に応じて冷却液ポンプ70の回転速度を調整する。
【0086】
このようにして、冷却液ポンプ70の回転速度を制御することで、より精緻に湿潤状態を調整できるのである。したがって燃料電池を適切な湿潤状態で運転できる。
【0087】
(第7実施形態)
図12は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第7実施形態を説明する図である。
【0088】
本実施形態では、第6実施形態に対して、要求出力に応じて冷却液ポンプ70の回転速度を補正する。具体的には、要求出力が高いほど、冷却液ポンプ70の回転速度を大きく補正する。
【0089】
図12(B)に示されるように、燃料電池の出力が大きいほど、出力変化に対する温度変化も大きい。すなわち、燃料電池の出力が大きいほど、温度の上昇速度が速い。これに対して本実施形態では、要求出力が高いほど、冷却液ポンプ70の回転速度を大きく補正するようにした。すなわちゲインを大きくした。このようにすれば、フィードバック制御するときのオーバーシュートを抑制できるのである。
【0090】
(第8実施形態)
図13は、本発明による燃料電池の冷却液温度調整システムの第8実施形態を説明する図である。
【0091】
本実施形態では、第6実施形態に対して、冷却液ポンプ70の下限回転速度を設定する。具体的には、システムの耐熱性能などから設定される目標上限温度と、燃料電池の出口温度と、の偏差に応じて冷却液ポンプ70の回転速度を演算する。そしてその回転速度を、第6実施形態と同様に演算された冷却液ポンプ70の回転速度が下回るときには、その回転速度を、冷却液ポンプ70の回転速度とする。下回らなければ、第6実施形態と同様に演算された回転速度を、冷却液ポンプ70の回転速度とする。
【0092】
図13(B)に示されるように、冷却液ポンプ70の回転速度が小さくなると、燃料電池の入口温度及び出口温度が上がる。この場合に、第6実施形態のように制御することで湿潤状態は適切になっても、システムの耐熱温度を超えてしまうことがあり得る。これに対して、本実施形態のように冷却液ポンプ70の回転速度の下限を制限することで、システムの耐熱温度を超えることを防止できるのである。
【0093】
(第9実施形態)
本実施形態では、前述した第1実施形態から第8実施形態で使用したサーモスタットバルブ50の他の実施形態について説明する。
【0094】
図14は、本実施形態によるサーモスタットバルブ500の構造を示す断面図であり、メインバルブ52が閉じ、バイパスバルブ53が開いているときの状態を示した図である。本実施形態によるサーモスタットバルブ500は、バイパスバルブ53に中温部51cと高温側開口51eとを連通する連通孔531を設けた点で、サーモスタットバルブ50と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、本実施形態によるサーモスタットバルブ500において、サーモスタットバルブ50と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0095】
図14に示すように、サーモスタットバルブ500は、バイパスバルブ53に中温部51cと高温側開口51eとを連通する連通孔531を備える。本実施形態ではバイパスバルブ53に連通孔531を複数個形成したが、1個であっても良い。
【0096】
次に、図15を参照し、サーモスタットバルブ500の作用効果について説明する。
【0097】
図15は、メインバルブ52が開き、バイパスバルブ53が閉じているときのサーモスタットバルブ500を示した図である。図15において、破線の矢印Aは低温の冷却液の流れを示し、実線の矢印Bは高温の冷却液の流れを示す。
【0098】
図15に矢印Aで示すように、メインバルブ52の開弁時には、放熱器20から流れてきた低温の冷却液が、メインバルブ52と低温側開口51dとの隙間から中温部51cへ流入する。中温部51cに流入した低温の冷却液は、バイパスバルブ53の開弁時に放熱器バイパス流路40から中温部51cに流入していた高温の冷却液と混合されて流出路51fから排出される。
【0099】
ここで、本実施形態によるサーモスタットバルブ500は、バイパスバルブ53に連通孔531が設けられている。そのため、図15に矢印Bで示すように、バイパスバルブ53の閉弁後も連通孔531から高温の冷却液が中温部51cに流入し、低温部51a側から中温部51cに流入してきた低温の冷却液と混合されて流出路51fから排出される。
【0100】
燃料電池10は出力が大きくなるほど発熱量が大きくなるので、燃料電池10の出口12から流出する冷却液の温度も高くなる。つまり、放熱器バイパス流路40を経由して連通孔531から中温部51cに流入してくる高温の冷却液の温度は、燃料電池10の出力が大きくなるほど高くなる。
【0101】
したがって、本実施形態のように、燃料電池10の出力が大きくなるほど温度が高くなる高温の冷却液を、連通孔531を介して中温部51cに流入させることで、燃料電池10の出力が大きくなるほど燃料電池10に供給される冷却液の温度を上昇させることができる。
【0102】
その結果、本実施形態によるサーモスタット500を使った冷却系においても、要求出力に応じて増加する生成水量に対応して、積極的に燃料電池10に供給する冷却水温度を上昇させる特性を持ったシステムを実現することができる。
【0103】
また、バイパスバルブ53に連通孔531を設けたことによって、前述した燃料電池10の出力が大きくなるほど燃料電池10に供給される冷却液の温度を上昇させることができるという効果のほかにも以下のような効果を得ることができる。
【0104】
図2を参照して第1実施形態で説明した一般的なサーモスタットバルブ50の場合、メインバルブ52が開き始めると、中温部51cに低温の冷却液が流入する一方で、バイパスバルブ53が閉じられて中温部51cには高温の冷却液が流入しなくなる。
【0105】
そのため、メインバルブ52の開弁時に一時的に中温部51c内の冷却液の温度が低下し、いったん開いたメインバルブ52が再び閉じてしまうという現象が繰り返し起こることがある。このように、冷温側弁体52の開閉が連続するハンチングが起きると、中温部51c内の冷却液の温度が上下するので、結果として流出路51fから排出される冷却液の温度も上下してしまう。
【0106】
第1実施形態で説明したサーモスタットバルブ50でも、本実施形態によるサーモスタットバルブ500でも、流出路51fから排出される冷却液の温度を所望の温度に保持する機能(以下「温調機能」という。)が求められる。そのため、流出路51fから排出される冷却液の温度の上下動は好ましくない。また、冷温側弁体52のハンチングは、冷温側弁体52及びバイパスバルブ53の劣化にもつながるため、耐久性にとっても好ましくない。
【0107】
以上の通り、第1実施形態のように、一般的なサーモスタットバルブ50に、単に高温部51bと流出路51fとを接続するバイパス流路60を設けたものでは、メインバルブ52の開弁時における温調機能が低下しやすい。また、サーモスタットバルブ50自体の耐久性も低下しやすい。
【0108】
これに対し、本実施形態によるサーモスタットバルブ500は、メインバルブ52の開弁時(すなわちバイパスバルブ53の閉弁時)において、第1実施形態ではバイパス流路60を経由して流出路51fに合流させていた高温の冷却液を、バイパスバルブ53の連通孔531を介して中温部51cに流入させた後に流出路51fに合流させている。
【0109】
これにより、メインバルブ52の開弁時において、中温部51cに低温の冷却液が流入してきたとしても、バイパスバルブ53の連通孔531を介して中温部51cに流入してくる高温の冷却液によって、中温部51c内の冷却液の温度低下を抑えることができる。
【0110】
よって、冷温側弁体52のハンチングを抑制することができるので、サーモスタットバルブ500の温調機能及び耐久性を向上させることができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0112】
たとえば、上記実施形態では、サーモスタットバルブ50は、冷却液循環流路30を流れた冷却液と放熱器バイパス流路40を流れた冷却液とが合流する合流部分に設けられていた。しかしながらこれに限られない。図16に示されるように、サーモスタットバルブ50は、冷却液循環流路30を流れた冷却液の一部が放熱器バイパス流路40に分岐する分岐部分に設けられてもよい。そして、バルブバイパス流路60は、冷却液がサーモスタットバルブ50をバイパスするように、冷却液循環流路30と放熱器バイパス流路40とを結ぶとよい。
【0113】
このような構成であっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0114】
また第1実施形態では、バイパス流路60は、サーモスタットバルブ50のハウジング51に形成されていたが、ハウジング51に形成されなくてもよい。バイパス流路60が、放熱器バイパス流路40と冷却液循環流路30とを結ぶパイプであってもよい。
【0115】
また第9実施形態では、バイパスバルブ53に連通孔531を設けることで、バイパスバルブ53の閉弁後も連通孔531から高温の冷却液が中温部51cに流入するようにしていたが、例えば図17に示すように、バイパスバルブ53に切り欠き532を形成しても良い。また、図18に示すように、高温側開口51eを形成するハウジング51に切り欠き511を形成しても良い。
【0116】
このような切り欠き532、511を形成することでも、第9実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
なお上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 燃料電池の冷却液温度調整システム
10 燃料電池
11 冷却液入口
12 冷却液出口
20 放熱器(ラジエーター)
30 冷却液循環流路
40 放熱器バイパス流路
50 サーモスタットバルブ
51 ハウジング
51a 低温部
51b 高温部
51c 中温部(混合通路)
51d 低温側開口
51e 高温側開口
52 メインバルブ(弁体)(低温側弁体)
53 バイパスバルブ(弁体)(高温側弁体)
54 伸縮体
60 バルブバイパス流路
70 冷却液ポンプ
511 切り欠き(ハウジングに形成された切り欠き)
531 連通孔(バイパス流路)(連通路)
532 切り欠き(高温側弁体に形成された切り欠き)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
冷却液の熱を放熱する放熱器と、
冷却液が循環して流れるように、前記燃料電池と前記放熱器とを結んで設けられる冷却液循環流路と、
冷却液が前記放熱器をバイパスするように、放熱器よりも上流の冷却液循環流路と放熱器よりも下流の冷却液循環流路とを結ぶ放熱器バイパス流路と、
前記冷却液循環流路と前記放熱器バイパス流路との結合場所に設けられ、冷却液循環流路を流れる流量及び放熱器バイパス流路を流れる流量を調整するサーモスタットバルブと、
冷却液が前記サーモスタットバルブをバイパスするように、前記冷却液循環流路と前記放熱器バイパス流路とを結んで設けられるバルブバイパス流路と、
を含む燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
前記バルブバイパス流路は、前記サーモスタットバルブのハウジングに形成される、
燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
前記バイパスバルブ流路は、前記放熱器への最大目標流量を達成できるように圧力損失が設定される、
燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
前記冷却液の上限温度を達成できるように、前記放熱器バイパス流路を流れてサーモスタットバルブに流入する流量と前記バルブバイパス流路を流れる流量との流量比が決められる、
燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
要求出力が大きいほど冷却液の目標温度を大きく設定する温度設定部と、
前記冷却液の温度を検出する温度センサーと、
前記冷却液循環流路に設けられ、前記温度センサーで検出された温度が前記目標温度に対して低いほど流量を小にする冷却液ポンプと、
をさらに含む燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
前記燃料電池に供給されるカソードガスの湿度を推定する湿度推定部をさらに含み、
前記温度設定部は、前記カソードガスの湿度が大きいほど冷却液の目標温度を大きく設定する、
燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
要求出力に基づいて燃料電池の目標湿潤状態を設定する湿潤設定部と、
前記燃料電池の湿潤状態を検出する湿潤検出部と、
前記冷却液循環流路に設けられ、前記湿潤検出部で検出された湿潤状態が前記目標湿潤状態に対して低くて乾燥しているほど流量を小にする冷却液ポンプと、
をさらに含む燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項8】
請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
要求出力が大きいほど、冷却液ポンプの流量を大に補正する補正部をさらに含む、
燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項9】
請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
燃料電池から流出した冷却液の温度が上限温度に達するときの冷却液ポンプの下限流量を求める下限流量演算部と、
前記冷却液ポンプの流量が前記下限流量を下回るときには、冷却液ポンプの流量を下限流量で制限する流量制限部と、
をさらに含む燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項10】
低温の流体が流入する低温部、高温の流体が流入する高温部、低温側開口を介して低温部に連通するとともに高温側開口を介して高温部に連通する中温部を備えるハウジングと、
前記低温側開口を開閉する低温側弁体と、
前記高温側開口を開閉する高温側弁体と、
前記低温側弁体及び前記高温側弁体に接続され、温度に応じて伸縮して低温側弁体及び高温側弁体を移動させることで、低温部から中温部に流入する流体の流量と、高温部から中温部に流入する流体の流量と、を調整して、中温部の流体の温度を所定温度にする伸縮体と、
前記ハウジングに形成され、前記中温部に連続する流出路と前記高温部とを接続するバイパス流路と、
を含むサーモスタットバルブ。
【請求項11】
燃料電池と、
冷却液の熱を放熱する放熱器と、
冷却液が循環して流れるように、前記燃料電池と前記放熱器とを結んで設けられる冷却液循環流路と、
冷却液が前記放熱器をバイパスするように、放熱器よりも上流の冷却液循環流路と放熱器よりも下流の冷却液循環流路とを結ぶ放熱器バイパス流路と、
前記冷却液循環流路と前記放熱器バイパス流路との結合場所に設けられ、冷却液循環流路を流れる流量及び放熱器バイパス流路を流れる流量を調整するサーモスタットバルブと、
を含む燃料電池の冷却液温度調整システムにおいて、
前記サーモスタットバルブが、
前記冷却液循環流路から流入してきた冷却液と、前記放熱器バイパス流路から流入してきた冷却液と、を混合させて前記燃料電池に供給する混合通路と、
混合通路内の温度に応じて、前記冷却液循環流路から前記混合通路に流入する冷却液の流量及び前記放熱器バイパス流路から前記混合通路に流入する冷却液の流量を調整する弁体と、
前記放熱器バイパス流路から流入してきた冷却液を、前記弁体をバイパスさせて前記混合通路内に導入するバイパス流路と、
を含む燃料電池の冷却液温度調整システム。
【請求項12】
低温の流体が流入する低温部、高温の流体が流入する高温部、低温側開口を介して低温部に連通するとともに高温側開口を介して高温部に連通する中温部を備えるハウジングと、
前記中温部内に設けられ、温度に応じて伸縮する伸縮体と、
前記伸縮体の伸縮に応じて、前記低温部から前記中温部に流入する流体の流量と、前記高温部から前記中温部に流入する流体の流量と、を調整する弁体と、
前記高温部と前記中温部とを常時連通する連通路と、
を含むサーモスタットバルブ。
【請求項13】
請求項12に記載のサーモスタットバルブにおいて、
前記弁体は、前記高温側開口を開閉する高温側弁体をさらに含み、
前記連通路は、前記高温側弁体を貫通する孔である、
サーモスタットバルブ。
【請求項14】
請求項12に記載のサーモスタットバルブにおいて、
前記弁体は、前記高温側開口を開閉する高温側弁体をさらに含み、
前記連通路は、前記高温側弁体に形成された切り欠きと、前記高温側開口と、の間に形成される通路である、
サーモスタットバルブ。
【請求項15】
請求項12に記載のサーモスタットバルブにおいて、
前記弁体は、前記高温側開口を開閉する高温側弁体をさらに含み、
前記連通路は、前記高温側弁体と、その高温側弁体が当接する前記高温側開口部の前記ハウジングに形成された切り欠きと、の間に形成される通路である、
サーモスタットバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−33712(P2013−33712A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−56387(P2012−56387)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】