説明

燃料電池システム及びその電流制御方法

【課題】 燃料電池システムにおいて、発電電力目標値に基づいて燃料電池から取り出す電流を制御する際に、電流の上限値を最適に設定して、電圧低下による運転停止を可及的に減少させる。
【解決手段】 所定の遅れ時間(例えば10秒)前の電流平均値に所定のオフセット値(例えば2A)を付して、電流上限値を設定する。そして、発電電力目標値に基づいて燃料電池から取り出す電流を制御する際に、電流値を電流上限値と比較して、電流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に燃料電池から取り出す電流を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の燃料電池システム(発電ユニット)は、一般に、炭化水素系の燃料(例えば都市ガス、LPG、灯油など)を改質して水素を生成する改質器を含む水素製造装置と、生成した水素と空気中の酸素とから電気化学反応により直流電力を発生させる燃料電池(燃料電池スタック)と、燃料電池で発生した直流電力を取り出すと共に交流電力に変換して家庭内の電気機器に供給するパワーコンディショナーと、燃料電池などで発生する熱を回収して給湯ユニット側と熱交換する熱交換器とを含んで構成される。
【0003】
このような燃料電池システムでは、需要電力に応じて発電電力目標値を設定し、これに応じて燃料供給量等を調整することにより、発電電力を制御する一方、発電電力目標値に基づいて燃料電池から取り出す電流を制御し、また燃料電池から取り出す電流については、電流上限値と比較して、電流を制限する方法が知られている。
また、特許文献1では、燃料電池の出力電圧が燃料電池が安定して発電することができる電圧下限値を下回った場合は、燃料電池から取り出す電流を制限するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−309979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の燃料電池システムでは、発電電力目標値に基づいて燃料電池から取り出す電流を制御するようにしているが、発電電力目標値が急増して、燃料電池から取り出す電流が急増すると、I−V特性に従って、燃料電池の出力電圧が急減し、燃料電池が安定して発電することができる電圧下限値を下回り、運転停止に至ることがある。
そこで、燃料電池から取り出す電流に関し、電流上限値を設定して、制限しているが、従来は、発電電力目標値に応じて電流上限値を設定しており、電流が瞬時に電流上限値に近づいたときには、電圧が電圧下限値を超えて低下し、運転停止に至るのを防げなかった。
【0006】
また、特許文献1では、燃料電池の出力電圧が燃料電池が安定して発電することができる電圧下限値を下回った場合に燃料電池から取り出す電流を制限するようにしているが、燃料電池の電圧低下を生じてからの制御のため、電圧低下を未然に防止できないという問題点がある。
本発明は、このような実状に鑑み、燃料電池から取り出す電流の上限値を最適に設定して、電圧低下による運転停止を可及的に減少させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、発電電力目標値に基づいて燃料電池から取り出す電流を制御する電流制御手段と、前記電流を電流上限値と比較して、前記電流を制限する電流制限手段と、を備える燃料電池システムにおいて、前記電流上限値を、所定の遅れ時間前の電流平均値に所定のオフセット値を付して設定する、電流上限値設定手段を設ける構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電流上限値を、所定の遅れ時間前の電流平均値に所定のオフセット値を付して設定することにより、比較的緩やかな発電電力目標値の変化に対しては不必要な電流抑制を行うことなく、急激な発電電力目標値の変化に対しては、速やかに電流上限値を最適な値に更新することにより、急激な電流の上昇による電圧低下を防止でき、電圧低下による運転停止を可及的に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示す燃料電池システムの概略構成図
【図2】電流上限値設定のブロック図
【図3】電流上限値設定の説明図
【図4】電流上限値設定ルーチンのフローチャート
【図5】電流制御ルーチンの基本例のフローチャート
【図6】電力制御ルーチンの他の例のフローチャート
【図7】従来技術及び本実施形態での電流制御のタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す燃料電池システム(発電ユニット)の概略構成図である。
家庭用の燃料電池システム(発電ユニット)は、システム筐体1内に、水素製造装置2と、燃料電池3と、パワーコンディショナー(PCS)4と、熱交換器5とを備えて構成される。
【0011】
水素製造装置2は、炭化水素系の燃料(例えば都市ガス、LPG、灯油など)を改質触媒を用いて水蒸気供給下で改質により水素(H2、CO2を含む水素リッチな燃料ガス)を生成する改質器を主体として構成される。また、改質反応(吸熱反応)のための改質器加熱用の燃焼器(バーナー)6を備え、燃焼器6では、燃料電池3の燃料極側のオフガス(オフガス発生前は改質前の燃料)を燃焼させる。
【0012】
図示は省略するが、水素製造装置2は、この他、改質器の上流側に設けられて、改質前の炭化水素系の燃料に含まれる硫黄化合物を吸着剤を用いて吸着除去又は脱硫触媒を用いて変換除去する脱硫器と、改質器の下流側に設けられて、改質ガス中の副生COをシフト触媒により残留水蒸気と反応させてCO2とH2に変えるCOシフト反応器とを備える。
また、必要に応じ、シフト反応後のガス中にわずかながら残存するCOを選択酸化触媒を用いて空気供給下で選択的に酸化してCO2に変えるCO選択酸化器を更に備えてもよい。
【0013】
燃料電池3は、例えば固体高分子形(PEFC)の燃料電池スタックであり、複数の電池セルが積み重ねられて構成される。電池セルは、燃料極(アノード)と、空気極(カソード)と、これらの間に配置された電解質層(高分子のイオン交換膜)とを有している。従って、燃料電池3は、電解質層の一端側の燃料極に水素(水素リッチな燃料ガス)が供給され、電解質層の他端側の空気極に空気中の酸素が供給されることで、水素と酸素との電気化学反応(発熱反応)により、直流電力を発生する。尚、燃料電池3としては、固体高分子形(PEFC)のものに限らず、リン酸形(PAFC)、溶融炭酸塩形(MCFC)、固体酸化物形(SOFC)、あるいはアルカリ電解質形(AFC)などの他の形式の燃料電池であってもよい。
【0014】
パワーコンディショナー(PCS)4は、燃料電池3で発生した直流電力を取り出すものであり、また、インバータを備え、直流電力を交流電力に変換して、家庭内の電気機器(負荷)EIに供給する。また、パワーコンディショナー4には余剰電力ヒータ7が付設されており、燃料電池3の発電電力が電気機器EIの需要電力を超える場合、逆潮流防止のため、インバータによる変換前の直流電力又は変換後の交流電力の一部が余剰電力ヒータ7に供給されて、余剰電力が消費される。尚、燃料電池3の発電電力が電気機器EIの需要電力に満たない場合は、商用電力系統CEからの補助電力が電気機器EIに供給される。
【0015】
熱交換器5は、その一次側が燃料電池3冷却用の冷却水循環通路8の一部を構成し、その二次側が給湯ユニット(貯湯ユニット)側の熱回収通路12の一部を構成し、燃料電池3にて発生する熱を回収して給湯ユニットとの間で熱交換する。
熱交換器5の一次側の冷却水循環通路8では、水タンク9内の水を水ポンプ10により燃料電池3の冷却器11に送り、ここで昇温した水を熱交換器5の一次側に流して、給湯ユニットからの水と熱交換した後、水タンク9内に戻している。図示は省略するが、この冷却水は水素製造装置2内のCOシフト反応器及びCO選択酸化器での発熱反応の冷却にも用いられる。
【0016】
また、熱交換器5の二次側の熱回収通路12には、前記余剰電力ヒータ7を配置して、余剰電力を消費する際に、熱回収を行い、水素製造装置(改質器)2には改質に必要な水を供給する。
燃料電池システム(発電ユニット)はまた、電気機器EIの需要電力に応じて、燃料電池3の発電電力を制御する制御装置13を備えて構成される。制御装置13は、マイクロコンピュータにより構成され、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェイスなどを備えている。
【0017】
電気機器EIの需要電力に応じた制御のため、制御装置13には、計測器14、15から信号が入力される。計測器14は、燃料電池3から電気機器EIへ供給される供給電力を測定し、供給電力の測定値を制御装置13へ出力する。計測器15は、商用電力系統CEから電気機器EIへ供給される補助電力を測定し、補助電力の測定値を制御装置13へ出力する。電気機器EIの需要電力は、供給電力と補助電力との和として算出される。
【0018】
制御装置13による発電電力の制御は、燃料供給制御手段(ポンプ及び/又は制御弁)16を介して水素製造装置2への燃料供給量を制御して、燃料電池3への改質燃料の供給量を制御し、また、空気供給制御手段(ポンプ及び/又は制御弁)17を介して燃料電池3への空気の供給量を制御することによって、行う。実際には、この他、水素製造装置(改質器)2への改質用水の供給、燃焼器6への燃料供給、CO選択酸化器への空気供給、各部への冷却水の供給などを協調制御する。
【0019】
従って、制御装置13は、電気機器EIの需要電力に応じて、燃料電池3の発電電力目標値を設定し、これに従って(発電電力目標値を得るように)、燃料供給量や空気供給量などを制御することにより、燃料電池3の発電電力を制御する。
制御装置13はまた、パワーコンディショナー4を制御する。具体的には、燃料電池3の発電電力目標値に基づいて、燃料電池3から取り出す電流を設定・制御する。より詳しくは、燃料電池3の発電電力目標値を燃料電池3の出力電圧(瞬時値)で除算して、電流目標値を設定し、この電流目標値に従って、燃料電池3から取り出す電流を制御する。
【0020】
尚、燃料電池3には、燃料電池3の出力電圧を検出する燃料電池電圧計18と、燃料電池3の出力電流を検出する燃料電池電流計19とが付設され、これらの信号は制御装置13に入力されている。
制御装置13は更にまた、燃料電池3の発電電力が電気機器EIの需要電力を超える場合は、燃料電池3の発電電力値を下げるが、パワーコンディショナー4を制御して、実電力が降下している間に生じる余剰電力を余剰電力ヒータ7に供給し、熱エネルギーに変換して、給湯に用いる。
【0021】
次に、本実施形態における、制御装置13での、パワーコンディショナー4を介して燃料電池3から取り出す電流を設定・制御する電流制御について、更に詳しく説明する。
図2は電流上限値設定のブロック図である。
平均化処理部21では、電流計19(図1)により検出される電流瞬時値を平均化(平滑化)する。具体的には、一定時間隔(例えば0.5秒)毎に、電流計出力(電流瞬時値)をサンプリングし、例えば、現時点、0.5秒前、1.0秒前、1.5秒前の4点の電流平均値を求める。
【0022】
すなわち、図3(a)を参照し、時点t0において、時点t0の電流値i0、時点t1’の電流値i1’、時点t2’の電流値i2’、時点t3’の電流値i3’の平均値を求める(次式参照)。
電流平均値=(i0+i1’+i2’+i3’)/4
遅れ処理部22では、平均化処理部21で求めた電流平均値の後段への出力を所定の遅れ時間(例えば10秒)遅らせる。言い換えれば、所定の遅れ時間(例えば10秒)前の電流平均値を後段(加算器23)へ出力する。
【0023】
すなわち、図3(a)を参照し、時点t0より10秒後の時点t20において、時点t0において求めた電流平均値を出力する。
言い換えれば、図3(b)を参照し、時点t0において、所定の遅れ時間(10秒)前の、時点t20’、t21’、t22’、t23’の4点の電流平均値を出力する(次式参照)。
【0024】
電流平均値=(i20’+i21’+i22’+i23’)/4
加算器23では、遅れ処理部22からの所定の遅れ時間前の電流平均値に、所定のオフセット値(例えば2A)を加算する。これが電流上限値となる。
図4は上記に基づく電流上限値算出のフローチャートである。本フローは一定時間隔(0.5秒)毎に実行される。
【0025】
S1では、実電流(電流瞬時値)iを検出する。
S2では、電流値について、現時点から0.5秒毎に21.5秒前まで計24点の電流データを記憶するシフトレジスタ(i0〜i23’)の記憶値をシフト処理する。すなわち、21.5秒前の電流データを記憶するi23’に21.0秒前のi22’のデータを書込み、以下同様に順にシフトして、最新の電流データを記憶するi0に今回検出した実電流iのデータを書込む。
【0026】
S3では、所定の遅れ時間(10秒)前の4点のデータi20’、i21’、i22’、i23’を読出し、これら4点の平均値を算出することで、所定の遅れ時間前の電流平均値を求める。
S4では、S3で求めた所定の遅れ時間前の電流平均値に、所定のオフセット値(例えば2A)を加算して、電流上限値を求める。
【0027】
図5は上記電流上限値を用いた電流制御のフローチャートであり、最もシンプルな制御としたものである。
S11では、図4のフローで算出される最新の電流上限値を読込む。
S12では、電流計19(図1)の出力より実電流(電流瞬時値)iを検出し、実電流iが電流上限値を超えた(実電流i>上限値)か否かを判定する。
【0028】
実電流i≦電流上限値の場合は、S21へ進んで、発電電流を上昇させる。その一方、実電流i>電流上限値の場合は、S22へ進んで、発電電流を降下させ、これによって電圧低下を抑制する。
図6は図5と同様に上記電流上限値を用いた電流制御のフローチャートであり、発電電力目標値等との関連を含めて記述したものである。
【0029】
S11では、図4のフローで算出される最新の電流上限値を読込む。
S12では、電流計19(図1)の出力より実電流(電流瞬時値)iを検出し、実電流iが電流上限値を超えた(実電流i>上限値)か否かを判定する。
実電流i≦電流上限値の場合は、S13へ進む。
S13では、過去に実電流i>電流上限値となって、フラグF=1にセットされたままか否かを判定し、NO、すなわちF=0の場合は、通常モードでの制御のため、S14、S15へ進む。
【0030】
S14では、燃料電池の発電電力目標値を読込む。発電電力目標値は、別ルーチンにより、需要電力に応じて設定されている。
S15では、発電電力目標値に基づいて、燃料電池から取り出す電流を設定・制御する。具体的には、燃料電池の発電電力目標値を燃料電池の出力電圧(瞬時値)で除算して、電流目標値を設定し、この電流目標値に従って、燃料電池から取り出す電流を制御する。
【0031】
S12の判定で、実電流i>上限値の場合は、S16へ進み、フラグF=1にセットした後、制限モードでの制御のため、S17、S18へ進む。
S17では、電力制限値を設定し、実電力を制限する。従って、このときは、燃料電池の発電電力を電力制限値に抑制するように、燃料電池への燃料供給量や空気供給量などを減少させる。
【0032】
S18では、電力制限値に基づいて、燃料電池から取り出す電流を制御する。具体的には、燃料電池の電力制限値を燃料電池の出力電圧(瞬時値)で除算して、電流目標値を設定し、この電流目標値に従って、燃料電池から取り出す電流を制御する。
制限モードに入ったときは、フラグF=1となる(S16)。従って、その後、S12の判定で、実電流i≦上限値となっても、S13の判定でYESとなり、S19で所定の回復条件が成立しない限り、S17、S18へ進み、制限モードが継続される。回復条件が成立しない場合としては、例えば、セル温度が許容上限値より高い、燃料利用率が許容上限値より高い、空気利用率が許容上限値より高い場合などが挙げられる。S19で所定の回復条件が成立すると、S20でフラグF=0とした後、S14、S15へ進み、通常モードに戻る。
【0033】
尚、本実施形態では、制限モードにおいて、電力目標値とは別に電力制限値を設定したが、電力目標値を減少側に補正して用いるようにしてもよい。
次に、図7を参照して、従来技術と本実施形態とでの制御の違いについて説明する。
図7(a)は従来技術の場合である。
従来技術では、発電電力目標値に基づいて燃料電池から取り出す電流を制御するようにしている(電流=電力目標値/電圧)。しかし、発電電力目標値が急増して、燃料電池から取り出す電流が急増すると、I−V特性に従って、燃料電池の出力電圧が急減し、燃料電池が安定して発電することができる電圧下限値を下回り、運転停止に至ることがある。
【0034】
そこで、燃料電池から取り出す電流に関し、電流上限値を設定して、制限しているが、従来技術では、発電電力目標値に応じて電流上限値を設定しており、電流が瞬時に電流上限値に近づいたときには、電圧が電圧下限値を超えて低下し、運転停止に至るエラーを防げなかった。
すなわち、電力目標値が増大して、実電流が増大し、これに伴って実電圧が低下するときに、何らかの理由で実電圧が急低下し、実電流が急上昇すると、実電流を抑制することができず、電圧の低下を抑えることができない。このため、実電圧が電圧下限値を下回って、運転停止に至るエラーとなる。
【0035】
図7(b)は本実施形態の場合である。
本実施形態によれば、電流上限値を、所定の遅れ時間前の実電流平均値に所定のオフセット値を付して設定している。
従って、発電電力目標値が増大して、燃料電池から取り出す電流が増大し、I−V特性に従って燃料電池の出力電圧が低下し、このときに出力電圧が急低下すると、電流が更に増大しても、電流の上昇を速やかに抑制でき、その分、電圧の低下を抑えることができる。これにより、実電圧が電圧下限値を下回って運転停止に至るエラーを防止することができる。
【0036】
本実施形態によれば、電流上限値を、所定の遅れ時間(例えば10秒)前の電流平均値に所定のオフセット値(例えば2A)を付して設定することにより、電流の急激な変動を抑制でき、システム内の急激な変動に対し過敏に反応過ぎることなく、安定して運転することができる。
特に、電流上限値を、電流平均値に基づいて設定することで、電流瞬時値の変動の影響を受けて電流上限値が変動するのを回避できる。すなわち、電流が瞬間的に低下した直後にすぐ反応して不必要に電流を抑制するのを回避できる。従って、電流平均値は、電流瞬時値の影響を回避できる程度の平均化(平滑化)を実現するように設定される。
【0037】
また、所定の遅れ時間前の電流平均値に基づいて設定することで、急激な電流上昇を抑制する一方、比較的緩やかな電流上昇については抑制することなく対応できる。尚、所定の遅れ時間は、長すぎると、通常の比較的緩やかな負荷上昇でも不必要な電流抑制を行うので、比較的緩やかな負荷上昇では電流抑制を行わないような値、機種によるが、例えば、20秒では長すぎ、10秒程度とするのがよい。すなわち、負荷上昇速度と遅れ時定数とを考慮して設定する。
【0038】
また、所定のオフセット値を付して設定することで、上限値を実電流より高側にすると共に、電流の高側への追従速度を規制するように制御することができる。尚、所定のオフセット値は、小さすぎると、定常状態での通常的な電流変動でも不必要な電流抑制が行われ電流上昇速度が遅くなり過ぎるため、通常的な電流変動では電流抑制を行わないような値、機種によるが、例えば、0.5A程度ではなく、1A以上に設定するとよい。また、新品電池搭載機に比べ、劣化電池搭載機では、通常的な電流変動が大きくなるので、電池の劣化度合をも考慮して設定するとよい。
【0039】
このようにして、燃料電池から取り出す電流の上限値を最適に設定でき、比較的緩やかな電力目標値の変化に対しては負荷追従の妨げになるような過剰な電流抑制を行うことなく、急激な電力目標値の変化に対しては、速やかに電流上限値を最適な値に更新することにより、急激な電流の上昇による電圧低下を防止でき、電圧低下による運転停止を可及的に減少させることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、前記電流平均値を、一定時間隔(例えば0.5秒間隔)の複数点(例えば4点)の電流の平均値とすることにより、比較的簡単に、電流瞬時値の変動の影響を回避できる。但し、時間隔及び点数は、実施形態で示したものに限るものではなく、2点以上の平均値であればよい。
また、本実施形態によれば、燃料電池から取り出す電流が前記電流上限値を超えたときに、発電電流を制御することにより、電圧低下を確実に抑制することができる。
【0041】
尚、以上の説明では、水素製造装置を備える燃料電池システムについて説明したが、水素製造装置の代わりに、水素ボンベ等を使用する、いわゆる純水素型の燃料電池システムにも、本発明を適用可能である。
また、以上の図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 システム筐体
2 水素製造装置(改質器)
3 燃料電池(スタック)
4 パワーコンディショナー
5 熱交換器
6 燃焼器
7 余剰電力ヒータ
8 冷却水循環通路
9 水タンク
10 水ポンプ
11 冷却器
12 熱回収通路
13 制御装置
14 計測器
15 計測器
16 燃料供給制御手段
17 空気供給制御手段
18 燃料電池電圧計
19 燃料電池電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電電力目標値に基づいて燃料電池から取り出す電流を制御する電流制御手段と、前記電流を電流上限値と比較して、前記電流を制限する電流制限手段と、を備える燃料電池システムにおいて、
前記電流上限値を、所定の遅れ時間前の電流平均値に所定のオフセット値を付して設定する、電流上限値設定手段を設けたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記電流平均値は、一定時間隔の複数点の電流の平均値である請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記電流制限手段は、前記電流が前記電流上限値を超えたときに、発電電流を制御することにより、電圧低下を抑制することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
発電電力目標値に基づいて燃料電池から取り出す電流を制御する一方、前記電流を電流上限値と比較して、前記電流を制限するに際し、
前記電流上限値を、所定の遅れ時間前の電流平均値に所定のオフセット値を付して設定することを特徴とする燃料電池システムの電流制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187391(P2011−187391A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53936(P2010−53936)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】