説明

燃料電池システム

【課題】 改質器と燃料電池を組み合わせた燃料電池システムの熱効率を高める。
【解決手段】 燃料電池システムは、水蒸気と燃料ガスの混合物から水素リッチな改質ガスを生成する内部加熱型の改質器2と、前記改質器2で得られた改質ガスを燃料として発電する燃料電池7と、燃料電池7を冷却する冷却水系統9を備えており、燃料電池7は冷却水系統9を循環する冷却水の一部を蒸発できる温度領域で運転されるように構成され、冷却水系統9に水蒸気を冷却水から分離する蒸気分離器30が設けられ、前記蒸気分離器30で分離された水蒸気を原料ガスと混合して前記改質器2に供給するための水蒸気供給系統35が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気と燃料ガスの混合物から水素リッチな改質ガスを生成する内部加熱型の改質器と、前記改質器で得られた改質ガスを燃料として発電する燃料電池と、燃料電池を冷却する冷却水系統を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気と燃料ガスの混合物から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、改質器で生成した水素リッチな改質ガスを燃料として発電する燃料電池を備えた燃料電池システムが知られている。燃料電池には種々の形式のものが存在するが、その中でも固体高分子型の燃料電池(PEFC)が有望視されている。
【0003】
水素リッチな改質ガスを生成する改質装置が特許文献1に記載されている。この改質装置は、燃料を燃焼して水蒸気を発生する水蒸気発生手段と、水蒸気発生手段で発生した水蒸気と原料ガスを混合した原料−水蒸気混合物を改質触媒の存在下に水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する内部加熱型の改質器を備えている。なお原料ガスとしては都市ガス、天然ガス、メタンガスなどが使用される。
【0004】
改質器には外部加熱型と内部加熱型がある。外部加熱型はバーナ等の燃焼装置で発生した燃焼ガスで改質器の壁面を外部から加熱し、その壁を通して改質器内部に改質反応に必要な熱を供給する方式である。内部加熱型は改質器の原料供給側に酸化触媒を充填した部分酸化反応層を設け、そこに空気を供給して原料ガスの一部を酸化し、その酸化熱を改質反応に必要な熱として利用する方式である。したがって、内部加熱型の改質器を採用する場合は、バーナ等による燃焼装置は改質器に水蒸気を供給する水蒸気発生手段だけに用いられる。
【0005】
運転温度が70℃程度の一般的な定置用の固体高分子型の燃料電池を用いて発電する燃料電池システムの場合、現状技術で発電効率33%(HHV)、熱効率45%(HHV)を達成している。しかし、この熱効率は燃料電池の排熱をその冷却水から回収することにより達成されるものであるが、燃料電池の70℃程度の低温の排熱回収は給湯設備との組み合わせによるシステムに限定されている。
【0006】
図4は従来の改質装置と、固体高分子型の燃料電池と、給湯設備とを組み合わせた燃料電池システムの例を示すプロセスフロー図である。この例における改質装置1は、外部加熱型の改質器2、水蒸気発生手段3、エジェクターで構成される混合器4、シフトコンバータ5及びCO低減器(PROX)6を備えている。
【0007】
図4に示す固体高分子型の燃料電池7は、運転温度が70℃程度の一般的な定置用の固体高分子型の燃料電池であり、改質装置1から供給される水素リッチな改質ガスと空気を反応させて発電し、その電力はインバータ8を経て家庭内給電系統に供給される。燃料電池7を冷却してその排熱を回収するため、燃料電池7の内部には冷却水系統9の冷却水が流通する。
【0008】
冷却水系統9は冷却水タンク10、循環配管11及びポンプ12を備え、循環配管11の途中に貯湯槽13が設けられる。ポンプ12を運転すると冷却水タンク10の冷却水が循環配管11により燃料電池7に供給され、燃料電池7で熱交換し加熱された冷却水は貯湯槽13で熱回収されて冷却水タンク10に戻る。
【0009】
一方、燃料電池7のアノードから排出するアノード排ガスは水素を20%程度含有するので、配管14で改質装置1に供給し熱源として利用される。具体的には、改質装置1を構成する水蒸気発生手段3と外部加熱型の改質器2をそれぞれ加熱するバーナ15にアノード排ガス(及び配管16からの空気)が供給される。
【0010】
水蒸気発生手段3にはポンプ17および配管18により純水等の水が供給される。水蒸気発生手段3ではバーナ15の燃焼により水が加熱されて水蒸気を発生し、その水蒸気が混合器4に供給される。混合器4は供給された水蒸気の吸引力により配管19から流入する原料ガスを吸引し、生成する原料−水蒸気混合物が改質器2に供給される。なお原料ガスは脱硫装置20で硫黄成分を除去されてから配管19を経て混合器4に供給される。
【0011】
改質器2で原料ガスが改質触媒の存在下に水蒸気改質されて水素リッチな改質ガスを生成する。生成した改質ガスは、シフト触媒を備えたシフトコンバータ5でCO(一酸化炭素)を除去した後、さらにCO低減器6に供給され、そこで僅かに残留するCOをppmオーダまで低減してから燃料電池7に供給される。
【0012】
図5は従来の改質装置と、固体高分子型の燃料電池と、給湯設備とを組み合わせた燃料電池システムの他の例を示すプロセスフロー図である。この例が図4の例と異なる部分は、改質装置1を構成する改質器が内部加熱型の改質器2とされることのみで、そのほかは同様に構成される。従って同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
内部加熱型の改質器2は、前述のように改質器の原料供給側に酸化触媒を充填した部分酸化反応層を設け、そこに空気を供給して原料ガスの一部を酸化し、その酸化熱を改質反応に必要な熱として利用する方式なので、アノード排ガスを燃焼するバーナ15は水蒸気発生手段3だけを加熱する。一方、改質器2の酸化用空気は配管21から供給される。
【0014】
【特許文献1】特開2004−155650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図4または図5に示すような改質装置1と、燃料電池7と、貯湯槽13等の給湯設備とを組み合わせた従来の燃料電池システムでは、システムとしての有効性を生かすために、給湯の需要変動に適合もしくは追従するような燃料電池の発電パターン(もしくは発電運転パターン)を採用せざるを得ないという問題がある。
【0016】
具体的には、現在、日本で大規模実証試験が行われている1KW級の家庭発電用の燃料電池システムを例にとると、標準的な家庭が消費する1日分の湯を貯湯槽で所定温度に昇温するために必要な加熱時間は半日程度でよいので、それに適合させる燃料電池システムの稼働率も低くならざるを得ない。さらに、燃料電池システムの稼働率は、湯の需要量が少ない夏季には一層低下し、このように稼働率の低いことが定置用の燃料電池システムの普及拡大の障害の一つになっている。
【0017】
さらに、従来の燃料電池システムでは燃料電池のアノード排ガスで水蒸気を発生させているので、他の熱負荷設備の熱源としてアノード排ガスを利用することができない。そこで本発明はこのような従来の燃料電池システムにおける問題を解決することを課題とし、そのための新しい燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決する本発明の燃料電池システムは、水蒸気と燃料ガスの混合物から水素リッチな改質ガスを生成する内部加熱型の改質器と、前記改質器で得られた改質ガスを燃料として発電する燃料電池と、前記燃料電池を冷却する冷却水系統を備えた燃料電池システムである。そして、前記燃料電池は、冷却水系統を循環する冷却水の一部を蒸発できる温度領域で運転するように構成され、前記冷却水系統に蒸発により生成する水蒸気を冷却水から分離する蒸気分離器が設けられ、前記蒸気分離器で分離された水蒸気を原料ガスと混合して前記改質器に供給するための水蒸気供給系統が設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0019】
上記燃料電池システムにおいて、前記燃料電池のアノード排ガスを熱負荷設備に供給するように構成することができる(請求項2)。
【0020】
上記熱負荷設備はガスヒートポンプ式の冷暖房設備であり、前記アノード排ガスを前記ガスヒートポンプ式の冷暖房設備を構成する水素エンジンの燃料として供給するように構成することができる(請求項3)。
【0021】
前記熱負荷設備は吸収式ガス冷暖房設備であり、前記アノード排ガスを前記吸収式ガス冷暖房設備の再生器加熱用の燃料として供給するように構成することができる(請求項4)。
【0022】
前記熱負荷設備はバイオマスエタノール製造設備であり、前記アノード排ガスをバイオマスエタノール製造設備の加熱用の燃料として供給するように構成することができる(請求項5)。
【0023】
上記バイオマスエタノール製造設備を設けた燃料電池システムにおいて、前記蒸気分離器で分離された水蒸気をバイオマスエタノール製造設備の熱源として供給するための水蒸気供給系統を設けることができる(請求項6)。
【0024】
上記バイオマスエタノール製造設備を設けた燃料電池システムにおいて、バイオマスエタノール製造設備で生成したエタノールの少なくとも一部を改質器に原料ガスとして供給するように構成することができる(請求項7)。
【発明の効果】
【0025】
本発明の燃料電池システムは、請求項1に記載のように、燃料電池が冷却水系統を循環する冷却水の一部を蒸発できる温度領域、例えば100℃以上、好ましくは150℃以上の中温もしくは高温の温度領域で運転するように構成され、燃料電池の冷却水系統に設けられた蒸気分離器で分離した水蒸気を原料ガスと混合して前記改質器に供給するための水蒸気供給系統が設けられている。
【0026】
このように構成すると、燃料電池の排熱を利用して改質器へ水蒸気を供給できるので、水蒸気発生のための燃料消費が実質的に不要になる。さらに燃料電池のアノード排ガスを水蒸気発生用として消費しなくてよいので、それを他の熱負荷設備の熱源として利用できる。そのため高い熱効率を有する燃料電池システムを構築することが可能になる。さらに、冷却水系統における蒸気分離器が一種のバッファー機能を有するので、水蒸気供給系統による水蒸気供給は冷却水系統の温度変動に大きく影響されることがない。そのため電力需要の変化などに左右されることなく、改質器への水蒸気供給量の制御を独立的に行うことができる。
【0027】
上記燃料電池システムにおいて、請求項2に記載のように、前記燃料電池のアノード排ガスを熱負荷設備に供給するように構成すると、高い熱効率を有する燃料電池システムを構築することが可能になる。
【0028】
請求項3に記載のように、前記熱負荷設備がガスヒートポンプ式の冷暖房設備である場合、前記ガスヒートポンプ式の冷暖房設備を構成する水素エンジンの燃料を前記アノード排ガスで賄うことができる。
【0029】
請求項4に記載のように、前記熱負荷設備が吸収式ガス冷暖房設備である場合、前記吸収式ガス冷暖房設備の再生器加熱用の燃料を前記アノード排ガスで賄うことができる。
【0030】
請求項5に記載のように、前記熱負荷設備がバイオマスエタノール製造設備である場合、バイオマスエタノール製造設備の加熱用燃料を前記アノード排ガスで賄うことができる。
【0031】
上記バイオマスエタノール製造設備を設けた燃料電池システムにおいて、請求項6に記載のように、前記蒸気分離器で分離された水蒸気をバイオマスエタノール製造設備の熱源として供給するための水蒸気供給系統を設けることができる。このように構成すると、燃料電池システムの熱効率をさらに向上させることができる。
【0032】
上記バイオマスエタノール製造設備を設けた燃料電池システムにおいて、請求項7に記載のように、バイオマスエタノール製造設備で生成したエタノールの少なくとも一部を改質器の原料ガスとして供給するように構成することができる。このように構成すると、改質器の原料ガスをバイオマスエタノール製造設備から供給できるので、燃料電池システムのエネルギー消費量を一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に図面に基づいて本発明の最良の実施形態を説明する。図1は本発明の燃料電池システムの1例を示すプロセスフロー図である。なお図1の実施形態において図5の従来例と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
本実施形態では、改質装置1を構成する改質器2として図5の例と同様な内熱型の改質器2を用いている。しかし燃料電池7は運転温度領域が150℃程度である中温型の固体高分子型の燃料電池(PEFC)を用いている。そして燃料電池7を冷却する冷却水系統9には、図5の例のような冷却水タンク10は設けないが、代わりに蒸気分離器30が設けられる。
【0035】
燃料電池7から蒸気分離器30に戻る循環配管11には、温度調整器34または圧力調整部34aからの制御信号により駆動する三方調整弁31が設けられる。三方調整弁31の接続部Bは配管32を介して図5の例と同様な給湯設備としての貯湯槽13の入口側に連通し、貯湯槽13の出口側は配管33を介して蒸気分離器30に連通している。
【0036】
上記のように本実施形態では、燃料電池7から流出する冷却水が蒸気分離器30に流入し、そこで水蒸気を発生させて熱回収すると共に、燃料電池7から流出する冷却水の少なくとも一部を貯湯槽13に熱源として供給し熱回収している。なお貯湯槽13(及び三方調整弁31)は必要に応じて省略することもできる。
【0037】
上記のように貯湯槽13による熱回収を行うようにシステムを構成した場合は、蒸気分離器30における水蒸気発生が確実に行われるように三方調整弁31を制御することができる。例えば燃料電池7から流出する冷却水の温度が低くなった場合には、蒸気分離器30の温度または圧力が低下するので、温度調整器34または圧力調整部34aからの制御信号により、貯湯槽13を循環する冷却水の流量を減らすように三方調整弁31を制御することができる。
【0038】
蒸気分離器30で分離した水蒸気は水蒸気供給系統35を経て改質装置1を構成する混合器4に供給される。水蒸気供給系統35は蒸気分離器30の上部と混合器4の蒸気供給部との間を連通する配管36と、配管36に設けた蒸気制御弁37と、蒸気制御弁37を制御する流量制御部38が設けられる。なお蒸気分離器30に必要に応じて純水等の水を補給するため、ポンプ30aを設けた配管30bが接続される。流量制御部38は蒸気制御弁37に制御信号を出力するが、例えば燃料電池7の負荷に応じた水蒸気量が改質器2に供給されるように蒸気制御弁37に制御信号を出力することができる。
【0039】
本実施形態では、熱負荷設備としてのガスヒートポンプ式の冷暖房設備40に燃料電池7のアノード排ガスを熱源(もしくは燃料源)として供給している。具体的には、燃料電池7のアノード排ガスを配管46により前記冷暖房設備40を構成する水素エンジン41に燃料として供給する。ガスヒートポンプ式の冷暖房設備40は、水素を燃料として回転する水素エンジン41、水素エンジン41で駆動されるコンプレッサ42、コンプレッサで圧縮された作動媒体を蒸発させる蒸発器43、作動媒体の膨張弁44および凝縮器45等を備えている。
【0040】
次に、図1の燃料電池システムの作用を説明する。配管19から供給した原料ガスと配管36から供給した水蒸気が混合器4で混合され、混合器4の出口から流出する原料−水蒸気混合物が改質器2に供給される。改質器2に供給された原料ガスの一部は酸化触媒の作用により燃焼し、改質器2内部を改質反応温度(例えば700℃程度)に昇温する。残りの大部分の原料ガスは改質触媒の作用により水蒸気と反応して水蒸気改質され、水素リッチな改質ガスを生成する。
【0041】
生成した改質ガスにはCOが含まれているので、シフト触媒を充填したシフトコンバータ5でCOを除去され、さらに改質ガスに残留するCOがCO低減器6でPPmオーダまで低減された後、アンモニア除去器6aで原料ガス由来のアンモニアが除去されてから燃料電池7に供給される。
【0042】
燃料電池7は供給される改質ガスに含まれる水素と、別に供給される空気中の酸素とを反応させて発電し、その電力はインバータ8で交流に変換されて家庭内の受電系統などに供給される。一方、燃料電池7は蒸気分離器30から循環配管11で送られてくる冷却水で冷却され、内部の熱交換により加熱されて燃料電池7から流出する冷却水は、循環配管11に設けた三方調整弁31を経て蒸気分離器30に戻り、一部は三方調整弁31から分かれて貯湯槽13を経由してから蒸気分離器30に戻る。
【0043】
蒸気分離器30で分離された水蒸気は、水蒸気供給系統35により改質装置1の混合器4に供給される。その際、水蒸気供給系統35に設けた流量調整部37からの制御信号により、蒸気制御弁38の開度が調整されて混合器4への水蒸気供給量が制御される。一方、燃料電池7から排出するアノード排ガスは未反応の水素が20%程度含まれているが、配管46からガスヒートポンプ式の冷暖房設備40に供給することにより、未反応の水素が熱源として回収される。
【0044】
図2は本発明の燃料電池システムの他の例を示すプロセスフロー図である。なお図2の実施形態において図1の例と異なる部分は、燃料電池7から排出されるアノード排ガスが吸収式ガス冷暖房設備50に供給されることであり、そのほかは同様に構成される。従って図1と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
本実施形態では、燃料電池7のアノード排ガスを熱負荷設備としての吸収式ガス冷暖房設備50の熱源(もしくは燃料)として供給している。具体的には、燃料電池7のアノード排ガスを配管46により吸収式ガス冷暖房設備50を構成する再生器51の加熱用燃料として供給している。このように構成することにより、燃料電池7から排出するアノード排ガスは、配管46から吸収式ガス冷暖房設備50に供給され、未反応の水素が熱源として回収される。
【0046】
なお、本実施形態における吸収式ガス冷暖房設備50は、再生器51、再生器51で生成する水蒸気を凝縮する凝縮器52、凝縮器52で凝縮した水を蒸発させる蒸発器53、吸収器54および冷却塔55及び凝縮器52に循環する作動媒体で冷暖房を行う室内機56を備えている。
【0047】
図3は本発明の燃料電池システムのさらに他の例を示すプロセスフロー図である。なおこの実施形態の特徴部分は、燃料電池7から排出されるアノード排ガスが熱負荷設備としてのバイオマスエタノール製造設備60に供給されること、バイオマスエタノール製造設備60で生成したエタノールの少なくとも一部を改質器2に原料ガスとして供給すること、および燃料電池7の排熱を水蒸気に変換した一部をバイオマスエタノール製造設備60の熱源として供給することであり、そのほかは図1の例と同様に構成される。従って図1と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
バイオマスエタノール製造設備60は、バイオマスの原料となる木片等を粉砕・乾燥する粉砕乾燥装置61、糖化装置62、発酵装置63、蒸留装置64及び脱水装置65を備えている。本実施形態では、燃料電池7のアノード排ガスを熱負荷設備としてのバイオマスエタノール製造設備60の熱源(もしくは燃料)として供給している。
【0049】
具体的には、燃料電池7のアノード排ガスを配管46によりバイオマスエタノール製造設備60を構成する蒸留装置64の蒸留操作の熱源として供給している。なおバイオマス原料に木質が使用される場合、糖化装置62は300℃程度の温度が必要になるので、その熱源として、アノード排ガスを点線で示すように糖化装置62の加熱用バーナに供給することもできる。
【0050】
バイオマスエタノール製造設備60を構成する粉砕乾燥装置61(例えば105℃)、糖化装置62(例えば90℃)及び発酵装置63(例えば60℃)には、それぞれ所定の温度に制御するための熱交換器が設けられる。そこで本実施形態では、蒸気分離器30で分離された水蒸気を水蒸気供給系統35で改質装置1の混合器4に供給すると共に、バイオマスエタノール製造設備60の粉砕乾燥装置61、糖化装置62及び発酵装置63の各熱交換器に別の水蒸気供給系統66で水蒸気の一部を供給している。
【0051】
水蒸気供給系統66は、蒸気分離器30の上部とバイオマスエタノール製造設備60の前記各装置とを連通する配管67、配管67に設けた蒸気制御弁68及び蒸気制御弁68を制御する流量制御部69を有する。なお蒸気制御弁68と流量制御部69の作用は前記水蒸気供給系統35における蒸気制御弁38と流量制御部37の作用と同様である。
【0052】
本実施形態では上記のように、燃料電池7から排出するアノード排ガスが配管46からバイオマスエタノール製造設備60に供給されてその熱回収が行われる。また燃料電池7の排熱を水蒸気に変換してバイオマスエタノール製造設備60の熱源として供給することにより、燃料電池7の排熱の熱回収が行われる。
【0053】
一方、バイオマスエタノール製造設備60で生成したエタノールの少なくとも一部は、配管67a、混合器4を経由して改質器2に原料ガスとして供給されるので、改質器2には他から原料ガスを供給する必要がなくなるか、または他から改質器2に供給する原料ガスの量を減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の燃料電池システムは、燃料電池の排熱を回収しアノード排ガスを熱負荷設備の熱源として用いる家庭用などの燃料電池システムとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の燃料電池システムの1例を示すプロセスフロー図。
【図2】本発明の燃料電池システムの他の例を示すプロセスフロー図。
【図3】本発明の燃料電池システムのさらに他の例を示すプロセスフロー図。
【0056】
【図4】従来の燃料電池システムの1例を示すプロセスフロー図。
【図5】従来の燃料電池システムの他の例を示すプロセスフロー図。
【符号の説明】
【0057】
1 改質装置
2 改質器
3 水蒸気発生手段
4 混合器
5 シフトコンバータ
6 CO低減器
7 燃料電池
8 インバータ
9 冷却水系統
10 冷却水タンク
【0058】
11 循環配管
12 ポンプ
13 貯湯槽
14 配管
15 バーナ
16 配管
17 ポンプ
18,19 配管
20 脱硫装置
21 配管
【0059】
30 蒸気分離器
30a ポンプ
30b 配管
31 三方調整弁
32,33 配管
34 温度調整器
34a 圧力調整部
35 水蒸気供給系統
36 配管
37 蒸気制御弁
38 流量制御部
【0060】
40 ガスヒートポンプ式の冷暖房設備
41 水素エンジン
42 コンプレッサ
43 蒸発器
44 膨張弁
45 凝縮器
46 配管
【0061】
50 吸収式ガス冷暖房設備
51 再生器
52 凝縮器
53 蒸発器
54 吸収器
55 冷却塔
56 室内機
【0062】
60 バイオマスエタノール製造設備
61 粉砕乾燥装置
62 糖化装置
63 発酵装置
64 蒸留装置
65 脱水装置
66 水蒸気供給系統
67 配管
67a 配管
68 蒸気制御弁
69 流量制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気と燃料ガスの混合物から水素リッチな改質ガスを生成する内部加熱型の改質器2と、前記改質器2で得られた改質ガスを燃料として発電する燃料電池7と、前記燃料電池7を冷却する冷却水系統9を備えた燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池7は冷却水系統9を循環する冷却水の一部を蒸発できる温度領域で運転されるように構成され、前記冷却水系統9に蒸発により生成する水蒸気を冷却水から分離する蒸気分離器30が設けられ、前記蒸気分離器30で分離された水蒸気を原料ガスと混合して前記改質器2に供給するための水蒸気供給系統35が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記燃料電池7のアノード排ガスを熱負荷設備に供給するように構成したことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2において、前記熱負荷設備はガスヒートポンプ式の冷暖房設備40であり、前記アノード排ガスを前記ガスヒートポンプ式の冷暖房設備40を構成する水素エンジン41の燃料として供給するように構成したことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2において、前記熱負荷設備は吸収式ガス冷暖房設備50であり、前記アノード排ガスを前記吸収式ガス冷暖房設備50の再生器51の加熱用燃料として供給するように構成したことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項2において、前記熱負荷設備はバイオマスエタノール製造設備60であり、前記アノード排ガスをバイオマスエタノール製造設備60の加熱用燃料として供給するように構成したことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項5において、前記蒸気分離器30で分離された水蒸気をバイオマスエタノール製造設備60の熱源として供給するための水蒸気供給系統66が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、バイオマスエタノール製造設備60で生成したエタノールの少なくとも一部を改質器2に原料ガスとして供給するように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−230927(P2009−230927A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72425(P2008−72425)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】