説明

燃料電池搭載車両

【課題】コンバータなどの電力変換器の良好な性能を維持することが可能な燃料電池搭載車両を提供する。
【解決手段】反応ガスの供給を受けて電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタック16と、該燃料電池スタック16の発電電力を変換する電力変換器17とがそれぞれ別々のケース21,22に覆われて車体11のフロアの下に搭載され、かつ、電力変換器17を制御する電力制御ユニット26がケース21,22とは別のケース27に覆われた状態で車両進退方向の一端側に設けられたコンパートメントC内に電力変換器17よりも高位となるように搭載された燃料電池搭載車両10であって、電力変換器17を覆うケース22と電力制御ユニット26を覆うケース27とを連通させる連通路23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックを搭載した燃料電池搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
反応ガスの供給を受けて発電する燃料電池スタックを搭載した燃料電池搭載車両として、例えば車室内空間の確保等を目的として、燃料電池スタック、ヒータ、DC−DCコンバータ等の電力変換器を車両のフロアパネルの下方に取り付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−15612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバータは、リアクトルや電流センサあるいはリレーなどを構成部品としており、これらの構成部品は、フェライトから形成された磁石を有しているが、フェライトは反応ガスとして用いられる水素ガスとの接触によって磁力が低下することがある。この対策として、燃料電池スタックを覆うケースとは別のケースによってコンバータを覆い、コンバータへの水素ガスの接触を抑制することがある。
【0005】
しかしながら、コンバータを覆うケースは、製造上の理由などから複数の分割体を組み合わせたものとされている。このため、例えば雨天時での走行の際に、車両の下部が水没してコンバータのケース内が急激に冷えて内部の圧力が低下すると、分割体同士のシール部分から水が入り込むおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、例えばコンバータなどの電力変換器の良好な性能を維持することが可能な燃料電池搭載車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池搭載車両は、反応ガスの供給を受けて電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、該燃料電池スタックの発電電力を変換する電力変換器とがそれぞれ別々のケースに覆われて車体のフロアの下に搭載され、かつ、前記電力変換器を制御する電力制御ユニットが前記ケースとは別のケースに覆われた状態で車両進退方向の一端側に設けられたコンパートメント内に前記電力変換器よりも高位となるように搭載された燃料電池搭載車両であって、前記電力変換器を覆うケースと前記電力制御ユニットを覆うケースとを連通させる連通路を有するものである。
【0008】
本発明の燃料電池搭載車両によれば、燃料電池スタックでの発電時に、燃料電池スタック内のシール部等から僅かに反応ガスである水素ガスが漏出したとしても、電力変換器が燃料電池スタックを覆うケースとは別個のケースに収納されているので、電力変換器が水素ガス雰囲気に晒されることはない。
【0009】
しかも、電力変換器を収納しているケース(電力変換器収納ケース)と、電力変換器よりも高位に配置された電力制御ユニットを収納しているケース(電子制御ユニット収納ケース)とが連通路を介して相互に連通していることにより、温度変化による電力変換器収納ケース内の圧力変動が抑制されるので、例えば雨天時での走行の際に、車体の下部が水没して電力変換器収納ケース内が冷却されるような事態が生じたとしても、ケース内圧の低下を抑制することが可能となり、内圧の低下によってケースのシール部分から水が入り込むことによる電力変換器の不具合の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の燃料電池搭載車両において、前記電力制御ユニットを覆うケースには開口部が形成されており、前記開口部には防水性及び通気性を有する防水膜が設けられていても良い。
このような構成によれば、外部から電力制御ユニット収納ケース及び連通路を介して電力変換器収納ケースへ水が侵入することをより一層抑制することが可能となる。
【0011】
本発明の燃料電池搭載車両において、前記連通路を画成する管を備え、
前記電力変換器と前記電子制御ユニットとを接続しているケーブルが前記管内に配索されていてもよい。
このような構成によれば、フロア下の狭小スペースの有効利用を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力変換器の良好な性能を維持して良好な走行を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る燃料電池搭載車両の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る燃料電池搭載車両の他の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る燃料電池搭載車両の一実施形態を説明する。
図1に示すように、燃料電池搭載車両10は、車体11に設けられたシート13の下部のフロア下に収容部14を有しており、この収容部14内に、燃料電池スタック16とコンバータ(電力変換器)17とを収容している。
【0015】
燃料電池スタック16は、燃料ガスである水素ガス(反応ガス)と酸化ガスである空気(反応ガス)との電気化学反応により電力を発生するもので、例えば高分子電解質形燃料電池であり、多数の単セルを積層したスタック構造となっている。単セルは、イオン交換膜からなる電解質の一方の面に空気極を有し、他方の面に燃料極を有し、さらに空気極および燃料極を両側から挟み込むように配置された一対のセパレータを有する構造となっている。
【0016】
そして、一方のセパレータの水素ガス流路に水素ガスが供給され、他方のセパレータの酸化ガス流路に空気が供給され、これらの反応ガスが電気化学反応することで電力が発生する。
【0017】
コンバータ17は、燃料電池スタック16の発電電力を変換する装置であり、例えば、燃料電池スタック16からの出力電圧を所定電圧まで昇圧して駆動モータ25に電力を供給する。
【0018】
これら燃料電池スタック16とコンバータ17とは、電力ケーブル19によって接続されている。そして、電力ケーブル19の一端側と後述のスタックケース21との接続部、および、電力ケーブル19の他端側と後述のコンバータケース22との接続部は、所定のシール構造にてシールされている。
【0019】
燃料電池スタック16は、スタックケース21によって覆われており、また、コンバータ17は、コンバータケース22によって覆われている。これら燃料電池スタック16を収納するスタックケース21及びコンバータ17を収納するコンバータケース22は、例えば樹脂や金属等からなる複数の分割体をボルト等により相互に結合した構成となっており、分割体同士の接合箇所はOリング等によってシールされている。
【0020】
本実施形態では、スタックケース21の上面には開口部21aが形成されており、この開口部21aを覆うように防水性及び通気性を有する防水膜21bが設けられている。同様に、コンバータケース22の上面には開口部22aが形成されており、この開口部22aを覆うように防水性及び通気性を有する防水膜22bが設けられている。
【0021】
コンバータケース22には、その車両搭載状態での上部に、例えば樹脂や金属からなる連通管(連通路)23の一端が接続されている。この連通管23は、コンバータケース22との接続箇所近傍にて屈曲されて車体11の車両進行方向前方側(以下、単に「前方側」という場合がある。)へ延在し、コンバータケース22の上方を水平に通っている。
【0022】
さらに、この連通管23は、コンバータケース22よりも車体11の前方側の位置にて屈曲されて車体11の上方へ延在し、後述の電力制御ユニット(PCU)26を収納しているPCUケース27に接続されている。
【0023】
車体11の前方に設けられたコンパートメントC内には、駆動モータ25及び電力制御ユニット26が搭載されている。電力制御ユニット26は、インバータと、このインバータとコンバータ17を制御する電子制御ユニット(ECU)とを備えて構成されており、PCUケース27内に収納されている。そして、インバータとコンバータ17とは送電ケーブル31によって接続され、駆動モータ25とインバータとは給電ケーブル32によって接続されている。
【0024】
送電ケーブル31の一端側とコンバータケース22との接続部、送電ケーブル31の他端側とPCUケース27との接続部、および、給電ケーブル32の一端側とPCUケース27との接続部は、所定のシール構造にてシールされている。
【0025】
駆動モータ25は、例えば三相交流モータであり、燃料電池搭載車両10の主動力源を構成する。つまり、この駆動モータ25の駆動力によって車体11の車輪33が回転駆動され、燃料電池搭載車両10が走行する。インバータは、直流電流を三相交流に変換して駆動モータ25に供給し、駆動モータ25を駆動させる。
【0026】
上記構成からなる燃料電池搭載車両10では、燃料電池スタック16での発電時に、燃料電池スタック16内のシール部等から僅かに水素ガスが漏出したとしても、空気より軽い水素ガスが燃料電池スタック16の上方へと上昇し、スタックケース21から防水膜21bを介してフロア下の空間に排出される。
【0027】
このとき、フロア下の空間の一部は、極めて低濃度とはいえ水素ガス雰囲気となるが、本実施形態では、コンバータ17が燃料電池スタック16を覆うスタックケース21とは別個に構成されたコンバータケース22に収納されているので、コンバータ17が水素ガス雰囲気に晒されることはない。
【0028】
また、コンバータ17を収納しているコンバータケース22と、コンバータ17よりも高位に配置された電力制御ユニット26を収納しているPCUケース27とが連通路23を介して相互に連通していることにより、温度変化によるコンバータケース22内の圧力変動が抑制される。
【0029】
したがって、例えば雨天時での走行の際に、車体の下部が水没してコンバータケース22内が冷却されるような事態が生じたとしても、ケース内圧の低下を抑制することが可能となり、内圧の低下によってコンバータケース22のシール部分から水が入り込むことによるコンバータ17の不具合の発生を抑制することができる。
【0030】
以上説明したとおり、本実施形態の燃料電池搭載車両10によれば、電力変換器であるコンバータ17の良好な性能を維持して良好な走行を確保することが可能となる。
【0031】
次に、本発明に係る燃料電池搭載車両の他の実施形態について、図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図1に係る上記実施形態と同一あるいは同様の構成部分については、図1と同一の符号を付している。
【0032】
図2に示すように、本実施形態に係る燃料電池搭載車両100は、車体11に設けられたシート13の下部のフロア下に収容部14を有しており、この収容部14内に、燃料電池スタック16とコンバータ(電力変換器)17とを収容している。
また、車体11の前方に設けられたコンパートメントC内には、駆動モータ25及び電力制御ユニット26が搭載されている。
【0033】
燃料電池スタック16とコンバータ17とは、電力ケーブル19によって接続されている。そして、電力ケーブル19の一端側とスタックケース21との接続部、および、電力ケーブル19の他端側とコンバータケース22との接続部は、所定のシール構造にてシールされている。
【0034】
燃料電池スタック16は、スタックケース21によって覆われており、また、コンバータ17は、コンバータケース22によって覆われている。これら燃料電池スタック16を収納するスタックケース21及びコンバータ17を収納するコンバータケース22は、例えば樹脂や金属等からなる複数の分割体をボルト等により相互に結合した構成となっており、分割体同士の接合箇所はOリング等によってシールされている。
【0035】
コンバータケース22には、その車両搭載状態での前面部に、例えば樹脂や金属からなる蛇腹状の連通管(連通路)101の一端が接続されている。この連通管101は、電力制御ユニット26に向かって車体11の上方へ延在し、電力制御ユニット26を収納しているPCUケース27の後面部に接続されている。連通管101が金属製である場合には、その内外面に絶縁層を備えていることが好ましい。
【0036】
電力制御ユニット26は、インバータと、このインバータとコンバータ17を制御する電子制御ユニット(ECU)とを備えて構成されており、PCUケース27内に収納されている。そして、インバータとコンバータ17とは送電ケーブル31によって接続され、駆動モータ25とインバータとは給電ケーブル32によって接続されている。
【0037】
本実施形態においては、送電ケーブル31が連通管101内に収納されている。この連通管101は、コンバータケース22とPCUケース27との間の通気性を確保する必要から、当該連通管101の内径は、送電ケーブル31全体の外径よりも所定寸法大きく設定されている。つまり、コンバータケース22とPCUケース27との間の通気性確保は、連通管101と送電ケーブル31との間に形成される隙間によって実現されている。
【0038】
駆動モータ25は、例えば三相交流モータであり、燃料電池搭載車両10の主動力源を構成する。つまり、この駆動モータ25の駆動力によって車体11の車輪33が回転駆動され、燃料電池搭載車両10が走行する。インバータは、直流電流を三相交流に変換して駆動モータ25に供給し、駆動モータ25を駆動させる。
【0039】
上記構成からなる燃料電池搭載車両10では、燃料電池スタック16での発電時に、燃料電池スタック16内のシール部等から僅かに水素ガスが漏出したとしても、空気より軽い水素ガスが燃料電池スタック16の上方へと上昇し、スタックケース21から防水膜21bを介してフロア下の空間に排出される。
【0040】
このとき、フロア下の空間の一部は、極めて低濃度とはいえ水素ガス雰囲気となるが、本実施形態においても、コンバータ17が燃料電池スタック16を覆うスタックケース21とは別個に構成されたコンバータケース22に収納されているので、コンバータ17が水素ガス雰囲気に晒されることはない。
【0041】
また、コンバータ17を収納しているコンバータケース22と、コンバータ17よりも高位に配置された電力制御ユニット26を収納しているPCUケース27とが連通管101を介して相互に連通していることにより、温度変化によるコンバータケース22内の圧力変動が抑制される。
【0042】
したがって、例えば雨天時での走行の際に、車体の下部が水没してコンバータケース22内が冷却されるような事態が生じたとしても、ケース内圧の低下を抑制することが可能となり、内圧の低下によってコンバータケース22のシール部分から水が入り込むことによるコンバータ17の不具合の発生を抑制することができる。
【0043】
以上説明したとおり、本実施形態の燃料電池搭載車両100によれば、電力変換器であるコンバータ17の良好な性能を維持して良好な走行を確保することが可能となる。
【0044】
さらに、本実施形態の燃料電池搭載車両100は、送電ケーブル31が連通管101内に収納されていると共に、当該連通管101の一端側とコンバータケース22とが所定のシール性を確保したうえで接続され、かつ、当該連通管101の他端側とPCUケース27とが所定のシール性を確保したうえで接続されているので、送電ケーブル31の一端側とコンバータケース22との接続部、および、送電ケーブル31の他端側とPCUケース27との接続部において確保しなければならないシール構造よりもシール構造を簡略化することできる。
【符号の説明】
【0045】
10,100…燃料電池搭載車両、11…車体、16…燃料電池スタック、17…コンバータ(電力変換器)、21…スタックケース(ケース)、22…コンバータケース(ケース)、22a…開口部、22b…防水膜、23,101…連通管(連通路、管)、26…電力制御ユニット、27…PCUケース(ケース)、31…送電ケーブル(ケーブル)、C…コンパートメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスの供給を受けて電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、該燃料電池スタックの発電電力を変換する電力変換器とがそれぞれ別々のケースに覆われて車体のフロアの下に搭載され、かつ、前記電力変換器を制御する電力制御ユニットが前記ケースとは別のケースに覆われた状態で車両進退方向の一端側に設けられたコンパートメント内に前記電力変換器よりも高位となるように搭載された燃料電池搭載車両であって、前記電力変換器を覆うケースと前記電力制御ユニットを覆うケースとを連通させる連通路を有する燃料電池搭載車両。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池搭載車両であって、
前記電力制御ユニットを覆うケースには開口部が形成されており、前記開口部には防水性及び通気性を有する防水膜が設けられている燃料電池搭載車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池搭載車両であって、
前記連通路を画成する管を備え、
前記電力変換器と前記電子制御ユニットとを接続しているケーブルが前記管内に配索されている燃料電池搭載車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−260391(P2010−260391A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110819(P2009−110819)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】