説明

燃料電池自動二輪車

【課題】燃料ボンベの支持剛性を十分に確保しつつ車幅の増加を抑えることが可能な燃料電池自動二輪車を提供する。
【解決手段】車体フレーム2に、燃料電池51で発生する電力を電源として車両駆動用モータ52を駆動する動力発生機関50を配置し、その燃料電池51に燃料を供給する燃料ボンベ22を車体フレーム2の後輪上方かつシート下方に配置した燃料電池自動二輪車1において、シート20を後方から回り込んで燃料ボンベ22の側方を覆うプロテクタ35を外観可能に露出させて支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部に燃料ボンベを搭載する燃料電池自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護や化石燃料に代わるエネルギ資源の確保の見地から燃料電池が着目されるようになり、燃料電池で発生する電気エネルギで駆動されるモータを駆動源とする燃料電池自動二輪車が開発されている。燃料電池自動二輪車は、燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ボンベを搭載しており、車体の前後中央に1本の燃料ボンベを拘束バンドで拘束して保持した車両や(特許文献1参照)、後輪上方に1本の燃料ボンベを保持した車両(特許文献2参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2005−28987号公報
【特許文献1】特開2006−312404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の燃料ボンベを車体の前後中央に配置した車両では、車体中央部に燃料ボンベが存在するため、燃料電池の動力発生機関を構成する各部品を車体中央部に集約して効率よく配置することが困難になる場合がある。これに対し、燃料ボンベを後輪上方に配置した車両では、動力発生機関を構成する各部品を車体中央部に効率よく配置でき、かつ、燃料ボンベの容量を確保し易い。
【0004】
しかし、燃料ボンベを後輪上方に配置した従来車両では、後輪との間のクリアランスを確保しつつ大型の燃料ボンベを配置するためにリヤフレームを車体幅方向外側に張り出して形成し、この張り出した部分に燃料ボンベを支持するため、車幅が拡がってしまう。また、燃料ボンベを支持するリヤフレームの剛性を確保するためにリヤフレームがさらに大型化して車幅が拡がる場合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、燃料ボンベの支持剛性を十分に確保しつつ車幅の増加を抑えることが可能な燃料電池自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述課題を解決するため、本発明は、車体フレームに、燃料電池で発生する電力を電源として車両駆動用モータを駆動する動力発生機関を配置し、その燃料電池に燃料を供給する燃料ボンベを車体フレームの後輪上方かつシート下方に配置した燃料電池自動二輪車において、前記シートを後方から回り込んで前記燃料ボンベの側方を覆うプロテクタを、外観可能に露出させて支持したことを特徴とする。
この発明によれば、シートを後方から回り込んで燃料ボンベの側方を覆うプロテクタを外観可能に露出させて支持したので、燃料ボンベをプロテクタでカバーすることができ、リヤフレームの車体幅方向外側への張り出しを抑えて車幅の増加を抑えることができる。また、プロテクタを車体後部を覆うリヤカバーに兼用することができ、リヤカバーを別途設ける場合に比して部品点数を低減することができる。
【0007】
この場合において、前記燃料ボンベを拘束する拘束バンドを備え、この拘束バンドを、車体外側の外側バンドと車体内側の内側バンドとに分割し、前記外側バンドを前記車体フレームに固定し、前記内側バンドを前記外側バンドに可動自在に連結することが好ましい。この構成によれば、拘束バンドの外側を、燃料ボンベの保護部材として機能させることができる。
【0008】
この場合において、前記燃料ボンベを前記車体フレームに左右一対で配置し、前記左右一対の燃料ボンベを各々結束する前記結束バンドを、車体の前後にずらして千鳥状に配置することが好ましい。この構成によれば、左右の拘束バンドを近接して配置でき、燃料ボンベをより車体内側に近接させて車幅の増加をより抑えることができる。
【0009】
この場合において、前記燃料ボンベを、前記車体フレームの左右一対のリヤフレーム上に支持し、前記左右一対のリヤフレームを、前記燃料ボンベの下方で、前記燃料ボンベの車体外側の側縁よりも車体内側に延出させることが好ましい。この構成によれば、プロテクタで燃料ボンベの保護を図りつつ、リヤフレーム間の幅を狭くして車幅の増加をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、シートを後方から回り込んで燃料ボンベの側方を覆うプロテクタを外観可能に露出させて支持したので、燃料ボンベの支持剛性を十分に確保しつつ車幅の増加を抑えることができる。
また、燃料ボンベを拘束する拘束バンドを、車体外側の外側バンドと車体内側の内側バンドとに分割し、外側バンドを車体フレームに固定し、内側バンドを外側バンドに可動自在に連結したので、拘束バンドの外側を、燃料ボンベの保護部材として機能させることができる。
また、燃料ボンベを車体フレームに左右一対で配置し、左右一対の燃料ボンベを各々結束する結束バンドを、車体の前後にずらして千鳥状に配置したので、左右の拘束バンドを近接して配置でき、燃料ボンベをより車体内側に近接させて車幅の増加をより抑えることができる。
また、燃料ボンベを、車体フレームの左右一対のリヤフレーム上に支持し、左右一対のリヤフレームを、燃料ボンベの下方で、燃料ボンベの車体外側の側縁よりも車体内側に延出させたので、プロテクタで燃料ボンベの保護を図りつつ、リヤフレーム間の幅を狭くして車幅の増加をより抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を添付した図面を参照して説明する。なお説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、車体に対してのものとする。
図1は本発明の実施形態に係る自動二輪車の左側面図を示し、図2は自動二輪車の正面図であり、図3は自動二輪車の背面図である。
この自動二輪車1は、車体の略中央に搭載された燃料電池51から供給される電力に基づいて車両駆動用のモータ52を駆動させて走行する燃料電池自動二輪車である。また、この自動二輪車1は、シート20の前方に略U字状に窪んだ空間(U字空間)S、つまり、乗員(運転者)が乗降する際に足をまたぐ足またぎ空間Sを有するスクータ型車両に構成されている。
【0012】
この自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2のヘッドパイプ3に回動自在に支持されたステアリングステム4の下端に連結された左右一対のフロントフォーク5と、ステアリングステム4の上端に連結された操舵用のハンドル6と、フロントフォーク5に回転自在に支持された前輪7と、車体フレーム2の後部に上下に揺動自在に支持されたパワーユニット8と、パワーユニット8の後端部に回転自在に支持された後輪9と、パワーユニット8と車体フレーム2との間に配設されたリヤクッション10と、車体フレーム2の略中央上部に支持されたシート20とを備えている。
【0013】
車体フレーム2は、ヘッドパイプ3から車体後方へ延びる左右一対の上部フレーム11、11と、ヘッドパイプ3から車体下方へ延びた後に屈曲して車体後方へ延びる左右一対の下部フレーム12、12とを有し、上部フレーム11、11の後端および下部フレーム12、12の後端が左右一対のピボット部13、13を介して連結される。
上部フレーム11、11は、ヘッドパイプ3から後下がりに傾斜して延びる第1傾斜部11Aと、この第1傾斜部11Aの後端から屈曲して車体後方に水平に延びる水平部11Bと、この水平部11Bの後端から後下がりに傾斜して延びる第2傾斜部11Cとを各々一体的に備えている。また、第2傾斜部11Cの前部には、後上がりに延びてシート20を支持する左右一対のシート支持フレーム14、14が接合される。そして、これら上部フレーム11の第1傾斜部11A、水平部11B、および、シート支持フレーム14によって、車体側面視で、シート20の前方に略U字状に窪んだ足またぎ空間Sが確保される。
【0014】
シート支持フレーム14、14の後端には、左右一対のフレーム連結部材15、15を介して左右一対のサブフレーム16、16が連結され、サブフレーム16、16は車体下方に向けて延びて左右一対のピボット部13、13に連結される。
サブフレーム16、16には、車体後方へ延出する左右一対の後部フレーム(リヤフレーム)17、17が連結される。後部フレーム17、17には、それぞれ拘束バンド18、18が固定され、各拘束バンド18、18によって2本の燃料ボンベ22、22を左右に並べた状態(図3参照)で拘束して保持するボンベ保持部30が構成される。さらに、後部フレーム17、17には、燃料ボンベ22、22の側方をガードするガード部材として機能するガードパイプ19、19が取り付けられている。
【0015】
左右一対のピボット部13、13には、車幅方向水平に延びるピボット軸25が支持され、このピボット軸25を介してパワーユニット8が上下に揺動自在に車体フレーム2に連結される。このパワーユニット8には、そのケーシング内にモータドライバ53および駆動源としてのモータ52等が収容される。
【0016】
車体フレーム2は、上述の各フレームによって全体がクレードル型つまり籠型に形成され、この籠型の車体フレーム2で囲まれる空間(機器配置領域)には、燃料電池51を含む燃料発電機関(動力発生機関)50、この燃料発電機関50および自動二輪車1の各部を制御する電子制御装置(ECU)70を収容するECUケース71、燃料発電機関(動力発生機関)50で発電された電力を調整する電圧調整器(VCU)75、および該電力を蓄える二次電池としてのバッテリ80等が配置される。また、この車体フレーム2の前部左右には、左右一対のラジエータ90、90が配置され、このラジエータ90、90には、ウォータポンプ91を介して燃料電池51を冷却する冷却水が供給される。
【0017】
この自動二輪車1は、車体が主として剛性樹脂からなる車体カバー40で覆われている。具体的には、この車体カバー40は、車体フレーム2の前部を覆うフロントカバー40Aと、左右一対のステップフロア26、26(図2、図3参照)に置かれた運転者の足の前方を覆うレッグシールド40Bと、車体フレーム2の中央部を覆うセンターカバー40Cと、車体フレーム2の下方を覆うアンダーカバー40Dとを備えている。
【0018】
次に図4を参照して燃料発電機関50の全体概要について説明する。
まず、燃料電池51は、単位電池(単位セル)を多数積層してなる周知の固体高分子膜型燃料電池(PEMFC)であり、そのアノード側に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード側に酸化剤ガスとして酸素を含む空気を供給することで、電気化学反応により電力を生成すると共に水を生成するものである。
この燃料電池51を含む燃料発電機関50は、燃料ボンベ22、22に充填されている高圧水素ガスを燃料電池51に供給する水素ガス供給部55と、燃料電池51に空気を供給する空気供給部58と、燃料電池51で発電に使用された後の余剰水素ガスを燃料電池51へ循環して再使用するための余剰ガス循環部61とを備える。
【0019】
水素ガス供給部55は、燃料ボンベ22、22と、調圧ユニット56と、イジェクタユニット57とを有し、空気供給部58は、エアクリーナ59と、過給器60とを有している。また、余剰ガス循環部61は、加湿器62と、気液分離器63と、希釈ボックス64と、前部排気管65Aと、この前部排気管65Aに連結されたサイレンサ66と、サイレンサ66に連結された後部排気管65Bとを有している。
【0020】
燃料ボンベ22、22に充填されている高圧水素ガスは、調圧ユニット56に含まれる手動弁56A、電磁遮断弁56B、第1レギュレータ56Cおよび第2レギュレータ56D等で供給圧力に調整されてイジェクタユニット57に供給される。イジェクタユニット57に供給された水素ガスは、イジェクタユニット57に含まれる熱交換器57Aで冷却される。冷却された水素ガスは、イジェクタ57Bおよび差圧レギュレータ57Cによって所定圧に調整されて燃料電池51に供給される。ここで、イジェクタ57Bは、調圧ユニット56から供給された水素ガスだけでなく、気液分離器63で気液分離された未反応水素ガスも負圧で吸い込んで燃料電池51に供給し、差圧レギュレータ57Cは、水素ガスを空気側の圧力に対して所定圧に調整して燃料電池51に供給する。
【0021】
また、燃料電池51には、空気供給部58のエアクリーナ59で清浄化された空気が、過給器60により所定圧力に加圧されて供給される。より具体的には、過給器60で加圧された空気は、加湿器62で加湿され、或いは、バイパス弁58Aを開いて加湿器62をバイパスするバイパス経路R1を通って燃料電池51に供給される。なお、上記バイパス弁58Aは低温始動時等に開かれる。
このため、燃料電池51には、アノード側に燃料ガスとして水素ガスが供給されると共に、カソード側に酸化剤ガスとして酸素を含む空気が供給されて、電気化学反応により電力を生成すると共に水を生成する。
【0022】
この燃料電池51で発電に供給された後の水素ガスは、湿潤な余剰ガスとして気液分離器63に供給され、気液分離器63で水分が分離された未反応の水素ガスが戻り経路R2を介してイジェクタ57Bに供給される。
また、燃料電池51で生成された水の一部は、燃料電池51から排出される空気(オフガス)と共に水蒸気として加湿器62内に導入され、エアクリーナ59から取り込まれて過給器60で圧縮された空気(酸化剤ガス)の加湿に供給される。
上述のように気液分離器63で抽出された水素ガスは、燃料電池51に再使用されるが、再使用を続けると不純物濃度が高くなるので、電磁弁61Aを時々開いて適宜排出する。排出された水素ガスは希釈ボックス64に導入され、加湿器62を経て希釈ボックス64に導入される燃料電池51のオフガスで希釈される。この希釈されたガスは、前部排気管65A、サイレンサ66および後部排気管65Bを経由して外気に放出される。
【0023】
この燃料発電機関50の運転は、電子制御装置(ECU)70により制御される。そして、燃料電池51で発電された電力は、電子制御装置70の制御の下、電圧調整器(VCU)75で電圧が調整され、モータドライバ53を介して駆動電力としてモータ52に供給され、余剰電力はバッテリ80に蓄電される。
また、電子制御装置70は、ハンドル6に設けられたスロットルグリップ6A(図2参照)の操作に応じた加速要求信号が入力され、該信号に応じてモータ52を駆動制御する。このモータ52は、燃料電池51或いはバッテリ80からの直流電流が、モータドライバ53において三相交流電流に変換された後に供給されて駆動する三相交流モータとして構成されている。
【0024】
次に、燃料発電機関50等の各種部品の配置について説明する。
図1に示すように、燃料電池51は、車体フレーム2の前後方向略中央位置に斜めに配置される。そして、この燃料電池51の上方のシート20との間に、電子制御装置70を収容するECUケース71が配置され、燃料電池51の下方に、当該燃料電池51の出力側に配管接続される気液分離器63および希釈ボックス64が近接配置される。
希釈ボックス64の前部には、この希釈ボックス64に配管接続される加湿器62と加湿器62に配管接続される過給器60とが車体前方に向けて順に配置され、これら加湿器62および過給器60の上方、つまり、足またぎ空間Sとの間に電圧調整器75が配置される。
【0025】
この配置構成では、比較的重量を有する部品、つまり、燃料発電機関50の一部を構成する燃料電池51、電圧調整器75、加湿器62、過給器60および電圧調整器75を、車体前後方向において、車体フレーム2の略中央領域内に集約して配置するので、レイアウト効率が向上し、かつ、各部品をつなぐ配管経路長および電子制御装置70等との配線経路長を短くすることができる。
なお、図3に示すように、電圧調整器75の前側にはイオン交換器67が配置され、このイオン交換器67は、燃料電池51で生成された水にイオン交換処理を行う。
【0026】
また、燃料発電機関50の一部を構成する比較的軽量の部品であるエアクリーナ59は、図1に示すように、ヘッドパイプ3の略前部に配置されて車体カバー40のフロントカバー40A内に収まる。このため、エアクリーナ59をフロントカバー40A内の空間範囲で大容量化でき、吸気効率を向上させることができる。また、希釈ボックス64の右側方(図1における紙面裏側)には、前部排気管65A(図1には不図示)が接続され、この前部排気管65Aは車体後方に延出してサイレンサ66(図3参照)が連結される。
図3に示すように、サイレンサ66の後方からは後部排気管65Bが延出し、この後部排気管65Bは、車体後方で車体幅方向中央に向けて屈曲してその出口65Cが、車体後方かつやや下方に向けられて設けられる。これら前部排気管65A、サイレンサ66および後部排気管65Bは、燃料電池51の排気を車体外に排出すると共に、燃料電池51で生成された水分も混入された排気を排出して排水管としても機能し、出口65Cが排水口としても機能する。
【0027】
また、図2に示すように、フロントカバー40Aには、エアクリーナ59を取り囲むように複数(本例では丸形2灯式)のヘッドライト42、42が配置され、また、図3に示すように、車体の後部には、テールライト45とリヤフェンダ46が配設されている。
【0028】
左右一対のラジエータ90、90は、図1および図2に示すように、上下方向に延びる略矩形形状を有する左右対称形状を有し、その上部を下部より車体前側に前傾させ、かつ、車体幅方向内向きに傾けた姿勢で配置されており、車体カバー40のレッグシールド40Bで覆われ、或いは、レッグシールド40Bがボックス形状の場合はレッグシールド40B内に収容される。
この配置により、ラジエータ90、90は、車体前方から見た場合に前輪7を支持するフロントフォーク5の左右に位置し、このため、車体前方からの走行風が前輪7およびフロントフォーク5で妨げられることなくラジエータ90、90を通過し、ラジエータ90、90の熱交換効率を実質的に向上でき、十分な熱交換率を確保可能なラジエータ90、90を小型化することが可能になる。
また、各ラジエータ90、90には、図1に示すように、その背面側にファン90A、90Aが取り付けられ、各ファン90A、90Aを駆動することによってラジエータ90、90に室外空気を強制的に通過させ、冷却水との熱交換(冷却)を強制実行することが可能である。なお、図1および図3中、符号92は、ラジエータ90、90のリザーバタンクであり、このリザーバタンク92は、ヘッドパイプ3の後部に取り付けられている。
【0029】
また、車体前部のレッグシールド40B内において、左右一対のラジエータ90、90間の領域には、バッテリ80が配置される。このバッテリ80は、別体で構成された複数(本例では2個)のバッテリで構成され、以下、バッテリ80の一方を第1バッテリ(上側バッテリ)81と表記し、他方を第2バッテリ(下側バッテリ)82と表記する。
第1バッテリ81および第2バッテリ82は、車体幅方向に延出する略直方体形状に形成されており、車体上下方向に離間させて配置される。より具体的には、第1バッテリ81は、ヘッドパイプ3近傍にて下部フレーム12、12間に固定され、かつ、図1に示すように、その上部を下部よりも車体前側に前傾した前傾姿勢で配置される。
【0030】
また、第2バッテリ82は、図1に示すように、下部フレーム12、12の屈曲部12A、12A近傍にて下部フレーム12、12間に固定され、かつ、その上部を下部よりも車体後側に後傾させた後傾姿勢で配置される。
このように、第1バッテリ81を前傾姿勢で配置することによって、前傾させずに配置する場合よりもその重心位置を車体前寄りにすることができる。また、同様に、第2バッテリ82を後傾姿勢で配置することによっても、後傾させずに配置する場合よりもその重心位置を車体前寄りにすることができる。このため、第1バッテリ81の前傾角度および第2バッテリ82後傾角度の調整によって、これらバッテリ81、82からなるバッテリ80の重心位置を容易に前後に調整することができ、例えば、バッテリ80全体の重心位置を前輪7に近づけるといった設計変更を容易に行うことができる。
【0031】
次に、ボンベ保持部30について説明する。図5(A)はボンベ保持部30の上面図を示し、図5(B)はその側面図を示している。図6および図7は燃料ボンベ22、22を取り外した状態を示す斜視図である。ボンベ保持部30は、図5(A)(B)に示すように、後部フレーム(リヤフレーム)17、17に支持される拘束バンド18、18と、この拘束バンド18、18に拘束された左右一対の燃料ボンベ22、22を覆うプロテクタ35とを備えている。拘束バンド18、18は、図5(A)および図6に示すように、左右で車体前後にずらして千鳥状に配置され、各々が左右対称形状に形成されている。このため、以下、一方の拘束バンド18について詳述する。
【0032】
拘束バンド18は、車体外側の略半円弧状に屈曲した外側バンド18Aと、車体内側の略半円弧状に屈曲した前後一対の内側バンド18Bとを備え、各バンド18A、18Bは、剛性を有する材料、例えば、軽金属(アルミ、タングステン、マグネシウム等)の金属製、若しくは、グラスファイバ、FRP等の強化樹脂で形成されている。
外側バンド18Aは、内側バンド18Bに比して車体前後方向に長い幅広形状に形成され、本実施形態では、図5(B)に示すように、燃料ボンベ22のボンベ部の前後長LAの略半分に相当する長さLBに形成されている。また、この外側バンド18Aの前部には、図6に示すように、このバンド18Aの円弧に沿って下方に延びる板状の足部18A1が一体に設けられ、この板状の足部18A1は、後部フレーム17の内側に設けられた前側ブラケット17Aに連結されている。
【0033】
ここで、左右一対の後部フレーム17、17は、図6および図7に示すように、車体後方に行くに従って後部フレーム17、17間を徐々に幅狭にするように延びる第1フレーム17B、17Bと、この第1フレーム17B、17Bの後端から屈曲して後部フレーム17、17間を徐々に幅広にするように延びる第2フレーム17C、17Cとを一体に備え、第1フレーム17B、17Bの後部間、および、第2フレーム17C、17Cの後部間にクロスパイプ17Dおよび17Eが配設されて補強されている。
上記前側ブラケット17Aは、第1フレーム17Bの上記クロスパイプ17Dで補強される部分の内側に接合され、これによって、外側バンド18Aを後部フレーム17の強度が強い箇所に支持することができる。
【0034】
外側バンド18Aは、前側ブラケット17Aに連結された上記足部18A1に沿って円弧状に屈曲して第1フレーム17Bの車体外側に張り出した後、車体内側に向けて屈曲し、その上端縁部に前後に間隔を空けて複数の孔部(引掛部)18A2、18A2が形成されている。
これら孔部(引掛部)18A2、18A2には、前後一対の内側バンド18B、18Bの基端部が引っ掛けられて各内側バンド18B、18Bが可動自在に連結されている。なお、外側バンド18Aには、複数(本例では3つ)の開口孔V、V、Vが形成され、これら開口孔Vによって外側バンド18Aの剛性を十分に確保しつつ軽量化を図っている。
【0035】
図6および図7に示すように、内側バンド18B、18Bは、同形状であり、各々の先端は外側に屈曲してこの屈曲部にボルト挿通部18B1、18B1が形成されている。そして、前側の内側バンド18Bのボルト挿通部18B1には、弾性部材として機能するコイルばね37を間に挟んで、車体内側からボルト36が挿入され、このボルト36は、外側バンド18Aの前側ブラケット17A、および、後部フレーム17の前側ブラケット17Aを貫通して図示せぬナットにより締結される。
【0036】
また、後側の内側バンド18Bのボルト挿通部18B1にも、同様に、弾性部材として機能するコイルばね37を間に挟んで、車体内側からボルト36が挿通され、このボルト36は、後部フレーム17の第2フレーム17Cの内側に設けられた後側ブラケット17Fを貫通して図示せぬナットにより締結される。
このように、コイルばね37を介してボルト36を挿通するため、ボルト36をある程度締め付けると、コイルばね37の弾性力によって内側バンド18Bを閉じ側へ付勢し、かつ、ボルト36の緩みを防止することができる。また、内側バンド18B、18Bには、その内周側に弾性部材として機能するゴムマット18B2、18B2が各々取り付けられている。
【0037】
上述の構成により、ボルト36を外して内側バンド18B、18Bを外側バンド18Aに対して開き、燃料ボンベ22を装填した後に、内側バンド18B、18Bを閉じて該ボルト36を締結することによって、燃料ボンベ22を拘束することができる。この場合、上記コイルばね37の弾性力によって、燃料ボンベ22を確実に拘束できる。また、燃料ボンベ22と内側バンド18B、18Bとの間に挟持されるゴムマット18B2、18B2によって燃料ボンベ22と内側バンド18Bとの間の隙間を無くし、燃料ボンベ22をより確実に拘束することができ、これらにより燃料ボンベ22の支持剛性を十分に確保することができる。
【0038】
また、外側バンド18Aを燃料ボンベ22の略半分を覆う幅広形状に形成しているので、燃料ボンベ22を広い面積で拘束することができ、燃料ボンベ22を確実に拘束することができ、しかも、この外側バンド18Aを燃料ボンベ22を保護する保護カバーとしても機能させることができる。
【0039】
また、本構成では、図5(A)に示すように、燃料ボンベ22間の隙間にも、衝撃吸収部材として機能するゴム部材38が挟持される。このため、車体走行時に、車体振動等によって、燃料ボンベ22と内側バンド18B、18Bとを相対移動させる力が生じたり、左右の燃料ボンベ22を相対移動させる力が生じたりした場合でも、その移動エネルギ(慣性エネルギ)を、上述したコイルばね37、ゴムマット18B2、18B2およびゴム部材38で緩和および吸収することができる。
【0040】
プロテクタ35は、図1および図5(A)に示すように、シート20を後方から回り込んで左右一対の燃料ボンベ22、22を覆う形状を有し、剛性を有する材料、例えば、軽金属(アルミ、タングステン、マグネシウム等)の金属製、若しくは、グラスファイバ、FRP等の強化樹脂で一体的に形成されている。
詳述すると、プロテクタ35は、車体前方に延びる左右一対の先端部35A、35Aと、この先端部35A、35Aに連続するようにシート20の左右に延びた後に車体下方に延出して燃料ボンベ22、22の上方から側方にかけて覆う側方覆い部35Bと、側方覆い部35Bに連続して燃料ボンベ22、22の後方を覆う後方覆い部35Cとを有している。
そして、このプロテクタ35は、左右一対の先端部35A、35Aがボルト(不図示)を介して車体フレーム2のフレーム連結部材15、15(図1参照)に固定されると共に、後方覆い部35Cの左右端部がボルト34、34(図7参照)を介して後部フレーム17、17(第2フレーム17C、17C)に連結される。この場合、プロテクタ35は後部フレーム17、17に前後で連結されて後部フレーム17、17を補強する補強フレームとしても機能している。
【0041】
また、図7に示すように、後部フレーム17、17に設けられたガードパイプ19、19には、その先端内側にプレート部材19A、19Aが接合されており、このプレート部材19Aは、プロテクタ35の側方覆い部35Bの内側に延出し、ボルト39によって、側方覆い部35Bに固定される。これによって、後部フレーム17、17とプロテクタ35とが、後部フレーム17およびプレート部材19Aを介して連結され、後部フレーム17、17をより補強することができ、また、ガードパイプ19、19の支持剛性も高めることができる。
ここで、図8は図7のX-X断面を示している。この図に示すように、プロテクタ35の側方覆い部35Bには、外側バンド18Aに内側から挿通されたボルト39が締結される。これによって、プロテクタ35に外側バンド18Aが一体化され、車体振動等による外側バンド18Aの移動をプロテクタ35で規制することができる。
また、プロテクタ35の後方覆い部35Cの上部には、ランプユニットが内蔵されてテールライト45が一定的に構成されると共に、車体下方に延出してリヤフェンダ46が一体に形成されている。このように、プロテクタ35にテールライト45およびリヤフェンダ46を一体に形成したので、これらを別体に形成した場合に比して部品点数を低減することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、シート20を後方から回り込んで燃料ボンベ22、22の側方を覆うプロテクタ35を設け、このプロテクタ35を外観可能に露出させて車体フレーム2の後部フレーム(リヤフレーム)17、17に支持したので、燃料ボンベ22、22をプロテクタ35でカバーすることができ、後部フレーム17、17の車体幅方向外側への張り出しを抑えることができ、また、プロテクタ35によって後部フレーム17、17のフレーム剛性を向上することができる。
このため、本構成では、後部フレーム17、17を、燃料ボンベ22、22の下方で燃料ボンベ22、22の車体外側側縁より内側に延出させることにより、燃料ボンベ22、22の保護を図りつつ、後部フレーム17、17間の幅を狭くでき、車幅の増加を抑えると共に、後部フレーム17(車体フレーム2)の設計自由度を向上することができる。
また、このプロテクタ35を外観可能に露出させるので、このプロテクタ35を車体後部を覆うリヤカバーに兼用することができ、リヤカバーを別途設ける場合に比して部品点数を低減でき、その分、軽量化を図ることもできる。
【0043】
さらに、本構成では、燃料ボンベ22、22を拘束する拘束バンド18、18を、外側バンド18Aと内側バンド18Bとに分割し、外側バンド18Aを後部フレーム17に固定し、内側バンド18Bを外側バンド18Aに可動自在に連結したので、外側バンド18Aを燃料ボンベ22、22の外側を保護する保護部材として機能させることができ、燃料ボンベ22、22をより確実に保護することができる。また、内側バンド18Bを可動自在にしているので、燃料ボンベ22の脱着も容易である。
さらに、本構成では、後部フレーム17、17に、燃料ボンベ22、22の側方をガードするガード部材として機能する左右一対のガードパイプ19、19を設けるので、これによっても燃料ボンベ22、22のより十分な保護が可能になる。
【0044】
また、本構成では、燃料ボンベ22、22を左右一対で配置するので、燃料ボンベを一個にした場合に比して、十分な容量を確保しつつ一つ一つの燃料ボンベ22、22を小型化することができる。このため、燃料ボンベ22、22を後輪9の上方に配置しても、後輪9とのクリアランスを十分に確保しつつ、燃料ボンベ22、22を、互いに車体内側に近接して配置することができる。
しかも、燃料ボンベ22、22を拘束する拘束バンド18、18を車体の前後にずらして千鳥状に配置しているので、左右の拘束バンド18、18をより近接して配置でき、燃料ボンベ22、22をより車体内側に近接させて車幅をより狭くすることができる。
【0045】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、種々の設計変形を行うことができる。例えば、上述の実施形態では、本発明を、スクータ型の燃料電池自動二輪車の燃料ボンベ支持構造に適用する場合について説明したが、これに限らず、スクータ型以外の燃料電池二輪車両に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】自動二輪車の正面図である。
【図3】自動二輪車の背面図である。
【図4】燃料発電機関の全体概要を説明するためのブロック図である。
【図5】(A)はボンベ保持部の上面図であり、(B)はその側面図である。
【図6】燃料ボンベを取り外した状態のボンベ保持部を示す斜視図である。
【図7】燃料ボンベを取り外した状態のボンベ保持部をプロテクタを一部カットして示す斜視図である。
【図8】図7のX−X断面を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動二輪車
2 車体フレーム
8 パワーユニット
17 後部フレーム(リヤフレーム)
17A 前側ブラケット
17B 第1フレーム
17C 第2フレーム
17D、17E クロスパイプ
17F 後側ブラケット
18 拘束バンド
18A 外側バンド
18B 内側バンド
18B1 ボルト挿通部
18B2 ゴムマット(弾性部材)
20 シート
22 燃料ボンベ
30 ボンベ保持部
35 プロテクタ
35A 先端部
35B 側方覆い部
35C 後方覆い部
37 コイルばね(弾性部材)
38 ゴム部材(衝撃吸収部材)
50 燃料発電機関(動力発生機関)
51 燃料電池
52 モータ(車両用駆動モータ)
55 水素ガス供給部
58 空気供給部
61 余剰ガス循環部
70 電子制御装置
75 電圧調整器
80、81、82 バッテリ
90 ラジエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに、燃料電池で発生する電力を電源として車両駆動用モータを駆動する動力発生機関を配置し、その燃料電池に燃料を供給する燃料ボンベを車体フレームの後輪上方かつシート下方に配置した燃料電池自動二輪車において、
前記シートを後方から回り込んで前記燃料ボンベの側方を覆うプロテクタを、外観可能に露出させて支持したことを特徴とする燃料電池自動二輪車。
【請求項2】
前記燃料ボンベを拘束する拘束バンドを備え、この拘束バンドを、車体外側の外側バンドと車体内側の内側バンドとに分割し、前記外側バンドを前記車体フレームに固定し、前記内側バンドを前記外側バンドに可動自在に連結したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池自動二輪車。
【請求項3】
前記燃料ボンベを前記車体フレームに左右一対で配置し、前記左右一対の燃料ボンベを各々結束する前記結束バンドを、車体の前後にずらして千鳥状に配置したことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池自動二輪車。
【請求項4】
前記燃料ボンベを、前記車体フレームの左右一対のリヤフレーム上に支持し、前記左右一対のリヤフレームを、前記燃料ボンベの下方で、前記燃料ボンベの車体外側の側縁よりも車体内側に延出させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−247311(P2008−247311A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93906(P2007−93906)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】