説明

燃焼の監視および制御のための方法と装置

選択されたレーザ発振周波数を有する2つ以上のダイオードレーザ(12)から成る検出装置(10)であって、ダイオードレーザの出力に光学結合されているマルチプレクサ(16)、および、このマルチプレクサは、さらに、ピッチ側の光ファイバに光学結合されている。多重化レーザ光が、石炭燃焼発電所またはガス燃焼発電所の燃焼室またはボイラであってよいプロセスチャンバ(22)に作動的に関連付けられているピッチ光学部品(20)にピッチ側光ファイバを通して伝送される。ピッチ光学部品(20)は、プロセスチャンバの中を通して多重化レーザ出力を放射するように方向配置されている。さらに、プロセスチャンバの中を通して放射された多重化レーザ出力を受け取るために、ピッチ光学部品に光学的に連絡しているキャッチ光学部品(24)が、プロセスチャンバと作動的に方向配置されている。このキャッチ光学部品(24)は、デマルチプレクサ(28)に多重化レーザ出力を伝送する光ファイバに光学結合されている。このデマルチプレクサ(28)はレーザ光を逆多重化し、および、光の選択されたレーザ発振周波数を検出器(25)に光学結合し、および、この検出器は、選択されたレーザ発振周波数の1つに対して感度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼プロセスの監視および制御のための方法と装置とに関し、および、さらに特に、燃焼プロセスの監視および制御のための可変波長ダイオードレーザ吸収分光法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカ合衆国内で発電される電力の大部分は石炭燃焼発電所で発電されている。同様に、世界中の発電の大部分が一次エネルギー源としての石炭に依存している。核エネルギー生産運転からの廃棄物の貯蔵に関する長期的な環境問題と、太陽光発電に関連した非効率性とを考慮に入れると、当分の間は石炭が一次エネルギー源のまま残る可能性が高い。これに加えて、現在の割合での200年以上にわたるエネルギー生産に十分なだけの莫大な埋蔵量の石炭が世界中に存在する。
【0003】
しかし、石炭燃焼発電に関連している汚染物質の放射を削減することと、石炭燃焼発電プロセスの全体的な効率を向上させることへの高い要求が存続しているし、将来も存続するだろう。従来においては、発電所と他の工業的な燃焼環境において、燃焼プロセスの効率と汚染物質放出のレベルとが、非分散型赤外(NDIR)光度測定のような技術を用いて抽出ガス標本から採られた測定値によって間接的に求められてきた。抽出サンプリングシステムは、ガス抽出時点と最終的な分析との間に大きな遅延が生じさせられる可能性があるので、燃焼プロセスの閉ループ制御には特に良く適しているというわけではない。さらに、抽出プロセスは、一般的に、高度に可変的で動的な燃焼プロセスチャンバであり得るものの内部における測定対象の化学種の実際濃度を表しているかも知れないし表していないかも知れない一点測定値を結果的にもたらす。
【0004】
最近では、レーザ方式の光学化学種センサ(optical species sensor)が、抽出測定技術に関連した問題に対処するために実現されている。レーザ方式の測定技術は「その場で」実現されることが可能であり、および、動的なプロセス制御に適している高速フィードバックというさらに別の利点を提供することが可能である。燃焼ガスの組成と温度と他の燃焼パラメータとを測定するための特に有望な技術が、波長可変ダイオードレーザ吸収分光法(tunable diode laser absorption spectroscopy)(TDLAS)である。TDLASは、典型的には、近赤外スペクトル領域と中赤外スペクトル領域とにおいて動作するダイオードレーザによって実現される。適しているレーザは、遠距離通信産業における使用のために大規模に開発されており、および、したがって、TDLAS用途のために容易に入手可能である。燃焼プロセスの検出と制御とに多少とも適している様々なTDLAS技術が開発されている。一般的に知られている技術が、波長変調分光法と、周波数変調分光法と、直接吸収分光法である。これらの技術の各々は、光が燃焼プロセスチャンバの中を通して伝導され、および、プロセスチャンバすなわち燃焼室内に存在するガスに固有の特定のスペクトル帯において吸収され終わった後に検出器によって受け取られる、レーザ光の量と性質との間の予め求められた関係に基づいている。検出器によって受け取られた吸収スペクトルは、分析対象であるガス化学種の量とこれに関連した燃焼パラメータ(例えば、温度)とを求めるために使用される。
【0005】
例えば、Von Drasek他の米国特許出願番号2002/0031737A1は、高温度のプロセスの監視および/または制御のために波長可変ダイオードレーザを使用する方法および装置を開示している。Von Drasekは、多数の燃焼化学種の相対濃度と温度と他のパラメータとを求めるための直接吸収分光法の使用を特徴とする。Calabroの米国特許番号第5,813,767号は、燃焼室内で生じる燃焼と汚染物質とを監視するための同様のシステムを開示する。Calabroは、吸収特徴の形態の観察されたドップラーの広がりが温度分析のための基礎の役割を果たす間接分光法技術を使用する。
【0006】
Teichert、FernholzおよびEbertは、実物大の石炭燃焼発電所のボイラ火球における幾つかの燃焼パラメータの検出に適している実現可能な実地解決策に対する既知の実験室分析としてTDLASの使用を拡張している。彼らの論文“Simultaneous in situ Measurement of CO, H20, and Gas Temperature in a Full-Sized, Coal-Fired Power Plant by Near-Infrared Diode Lasers”(Applied Optics,42(12):2043,20 April 2003)では、この著者たちは、石炭燃焼発電所における直接吸収分光法の実行の成功を発表し、および、石炭燃焼プロセスの極度に大きな規模と激しい性質とから結果的に生じる特定の技術的難題を論議する。特に、典型的な石炭燃焼発電所は10−20メートルの燃焼室直径を有する。この発電所は微粉炭によって燃焼させられ、このことは、高い粉塵負荷のせいでレーザ光の透過を遮りかつ極度に明るい燃焼プロセスを結果的に生じさせる。これに加えて、発電所の燃焼条件下において激しい外乱が発見される。プロセスチャンバの中を通過する光の総合的な透過率は、広帯域の吸収、微粒子による散乱、または、屈折率の変動に起因するビームの方向変化の結果として、時間の経過に応じて劇的に変動する。さらに、検出器信号に干渉する可能性がある燃焼石炭微粒子からの激しい熱背景放射もある。発電所ボイラの外側の環境も、TDLAS検出または制御システムの実現を困難なものにする。例えば、あらゆる電子機器、光学部品、または、他の高感度の分光法構成要素が、強烈な熱から遠く離されて配置されなければならず、または、適切に保護され冷却されなければならない。TDLASシステムの実現がこうした条件下では極めて困難であるが、TDLASは石炭燃焼プロセスを監視し制御するのに特に適している。本発明は、上述のTDLASの実現の問題点の1つまたは複数を克服することを意図している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面が、選択されたレーザ発振周波数を有する2つ以上のダイオードレーザと、これらのダイオードレーザの出力に光学結合されているマルチプレクサとから成り、および、このマルチプレクサがさらにピッチ側光ファイバ(pitch side optical fiber)に光学結合されている検出装置である。多重化されたレーザ光が、ピッチ側光ファイバを通して、石炭燃焼発電所またはガス燃焼発電所の燃焼室またはボイラであってよいプロセスチャンバに作動的に関連付けられているピッチ光学部品(pitch optic)に送られる。このピッチ光学部品は、プロセスチャンバの中を通して多重化レーザ出力を放射するように方向配置されている。さらに、プロセスチャンバの中を通して放射される多重化レーザ出力を受け取るために、ピッチ光学部品に光学的に連絡するキャッチ光学部品(catch optic)が、プロセスチャンバに作動的に適応させられている。本明細書で使用される場合の「結合されている(coupled)」、「光学結合されている(optically coupled)」または「光学的に連絡している(in optical communication with)」は、光が中間の構成要素または自由空間を通過してまたは通過せずに第1の構成要素から第2の構成要素に進むことができる、相対物の相互間の機能的関係と定義される。キャッチ光学部品は、多重化レーザ出力をデマルチプレクサに送る光ファイバに光学結合されている。このデマルチプレクサはレーザ光を逆多重化して、光の選択されたレーザ発振周波数を検出器に光学結合し、および、この検出器は、選択されたレーザ発振周波数の1つに対して感度を有する。採用随意に、この検出装置は、検出器と、デマルチプレクサの出力ファイバに光学結合されているマルチプレクサとの以前に、対応する別個の入力光ファイバに光学結合されている各々のダイオードレーザを有してもよい。ピッチ側の光ファイバは単一モードのファイバであってもよく、および、キャッチ側の光ファイバはマルチモードのファイバであってもよい。採用随意に、この検出装置は、さらに、ピッチ側の光ファイブに光学結合されており、かつ、プロセスチャンバに作動的に関連付けられている2つ以上の対のピッチ光学部品およびキャッチ光学部品に多重化レーザ出力を送る、ピッチ側の光路選択装置から成ってもよい。この光路選択装置は、光スイッチ、光スプリッタ、または、一般的に入手可能な他の標準規格品としての遠距離通信用の光路選択装置であってよい。採用随意に、この検出装置は、さらに、検出器からの入力を受け取り、かつ、その検出器データから燃焼パラメータを求めるために公知のレーザ分光法技術を使用するデータ処理システムから成ってよい。この検出装置は、さらに、そのデータ処理システムの出力に基づいて燃焼パラメータに影響を及ぼす手段を有してもよい。例えば、この検出装置は、そのデータ処理システムによって求められた燃焼パラメータにしたがって、そのデータ処理システムに対して応答する、空気流、燃料流、または、触媒もしくは化学薬剤の添加のような燃焼入力のクローズドループ制御を実現してもよい。
【0008】
この検出装置は、マルチプレクサまたはデマルチプレクサ内においてエシェル格子を使用してよい。マルチプレクサまたはデマルチプレクサの追加の構成要素が、光導波路と平行化/集束光学部品(collimating focusing optic)とを含んでもよい。平行化/集束光学部品に結合されている反射性のエシェル格子は、典型的には、複数の範囲の広く間隔があいた波長の光の同時逆多重化を実現するための溝間隔とブレーズ角とを有するだろう。適切なエシェル格子は、典型的には、670nm以上の波長から5200nm以下の波長までを多重化または逆多重化することが可能だろう。これを実現するために、エシェル格子は、2次から少なくとも14次の回折次数で動作するだろう。このエシェル格子は、典型的には、約171.4線/mmの溝間隔と約52.75度のブレーズ角とを有するだろう。
【0009】
採用随意に、この検出装置は、すべてよりは少ない数のダイオードレーザに光学結合されているマルチプレクサを有してよく、および、さらに、マルチプレクサの出力と任意の非多重化ダイオードレーザの別個の出力とに結合されている光カプラから成ってもよい。こうした採用随意の実施態様では、光カプラは、選択された長さの伝送光ファイバを経由してピッチ光学部品と光学的に連絡するだろう。伝送光ファイバの長さは、モードノイズを最小化するように選択されてよい。例えば、伝送光ファイバは3メートル以下の長さで具体化されてよく、および、1240nm未満の波長、特に760nmの波長が伝送光ファイバを経由した伝送中にマルチモーダルにならないことを確実なものにするCorning SMF 28 光ファイバで作られてよい。
【0010】
この検出装置は、さらに、キャッチ側のモードノイズを最小化するためにキャッチ側の光ファイバの一区間を機械的に操作するための手段から成ってもよい。キャッチ側の光ファイバの一区間を機械的に操作するための適切な手段の一例が、そのファイバに取り付けられているキャッチ側の光ファイバの縦軸に対して平行な軸を有しかつその縦軸を中心とした捻り運動を実現するモータから成る。この捻り運動は、伝送される信号を効果的に平均化してキャッチ側のモードノイズを低減させるために、少なくとも10Hzのレートにおける+360度および−360度の掃引(sweep)から成ってよい。
【0011】
採用随意に、この検出装置は、さらに、多重化レーザ出力の放射方向を基準としたキャッチ光学部品のアラインメント調整を可能にする、キャッチ光学部品に関連付けられているキャッチ側のアラインメント調整機構から成ってよい。このアラインメント調整機構は、ピッチ光学部品からキャッチ光学部品によって受け取られてキャッチ側の光ファイバに結合されるレーザ光の量を増大させるだろう。このアラインメント調整機構は、第1の軸とこの第1の軸に対して垂直である第2の軸とに沿ってキャッチ光学部品がチルト(tilt)することを可能にする装置から成ってよく、および、この第1の軸と第2の軸との両方は多重化レーザ出力の放射方向に対して実質的に直交している。ステップモータがキャッチ光学部品をチルトさせるために使用されてよく、および、データ処理システムが、さらに、このキャッチ側のアラインメント調整機構に関連付けられてよく、かつ、検出器に結合されている多重化レーザ出力の強度に関係付けられているその検出器からのデータを受け取り、かつ、そのキャッチ側のアラインメント調整機構がキャッチ光学部品をアラインメント調整することを生じさせてもよい。あるいは、これに対する代案として、別個のアラインメントビームがキャッチ光学部品に対して放射されて、アラインメント調整のための基準として使用されてもよい。同様のアラインメント調整機構が、ピッチ光学部品のアラインメント調整と多重化レーザ出力の放射方向の調整とを実現するために、検出装置のピッチ側に実装されてもよい。
【0012】
本発明の別の側面が、複数の選択されたレーザ発振周波数のレーザ光を供給することと、そのレーザ光を多重化することと、ピッチ側の光ファイバ内の多重化レーザ光をプロセス場所に伝送することとから成る、燃焼プロセスの検出方法である。このプロセス場所は、ガス燃焼発電所または石炭燃焼発電所のボイラのような燃焼室であってよい。多重化レーザ光をプロセス場所に伝送した後に、この方法は、さらに、多重化レーザ光を燃料プロセスの中を通して放射することと、キャッチ側の光ファイバ内に多重化レーザ光を受け取ることと、この多重化レーザ光を逆多重化することと、この逆多重化されたレーザ光の周波数を検出器に伝送することとから成る。採用随意に、この方法は、さらに、検出器の出力から燃焼パラメータを求めることと、その求められた燃焼パラメータにしたがって燃焼プロセスを制御することとから成ってよい。
【0013】
本発明の別の側面が、選択されたレーザ発振周波数のレーザ光の多重化を実現する選択されたライン間隔と選択されたブレーズ角とを有する入力エシェル格子に光学結合されている選択されたレーザ発振周波数を有する2つ以上のダイオードレーザから成る、エシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置である。この装置は、さらに、エシェル格子の出力に光学結合されておりかつエシェル格子から多重化レーザ光を受け取る光ファイバから成る。これに加えて、ピッチ光学部品は光ファイバの遠位端部に光学結合されており、および、このピッチ光学部品は燃焼室であることが可能なプロセスチャンバに作動的に関連付けられており、かつ、プロセスチャンバの中を通してレーザ光を放射するように方向付けられている。この装置は、さらに、ピッチ光学部品に対して光学的に連絡している出力エシェル格子から成り、および、この出力エシェル格子は、選択されたレーザ発振周波数のレーザ光の逆多重化を実現する選択された溝間隔と選択されたブレーズ角とを有する。これに加えて、選択されたレーザ発振周波数の1つに対して感度を有する2つ以上の検出器が、出力エシェル格子に光学結合されている。本発明のこの側面の装置は、さらに、ピッチ光学部品と光学的に連絡しておりかつ出力エシェル格子と光学的に連絡しているキャッチ光学部品から成ってよい。さらに、1つまたは複数の平行化光学部品がエシェル格子の出力とこれに対応する検出器との間に光学結合されてよい。ダイオードレーザ分光ガス検出装置のエシェル格子は、複数の範囲の互いに広く間隔があいた波長の同時(逆)多重化を可能にする溝間隔とブレーズ角とを有してよい。適切なエシェル格子は、670nm以上の波長から5200nm以下の波長までを有する光学チャンネルを(逆)多重化することが可能である。こうしたエシェル格子は、2次から14次の屈折で動作し、および、約171.4線/mmの溝間隔と約52.75度のブレーズ角とを有してよい。
【0014】
本発明の別の側面が、複数の選択されたレーザ発振周波数のレーザ光を供給することと、エシェル格子を使用してそのレーザ光を多重化することと、燃焼プロセスの中を通して多重化レーザ光を放射することと、エシェル格子を使用して多重化レーザ光を逆多重化することと、逆多重化されたレーザ光の周波数を検出器に伝送することとから成る、燃焼プロセス検出方法である。この方法は、さらに、検出器の出力から燃焼パラメータを求めることと、その求められた燃焼パラメータにしたがって燃焼プロセスを制御することとから成ってよい。
【0015】
本発明の別の側面が、選択されたレーザ発振周波数を有する2つ以上のダイオードレーザから成り、かつ、この各ダイオードが個別の入力光ファイバの末端に結合されている、ダイオードレーザ分光法において使用するためのピッチ側光学システムである。このピッチ側光学システムは、さらに、すべてよりは少ない数の入力光ファイバの他方の末端に光学結合されているマルチプレクサから成ってよく、および、このマルチプレクサは多重化レーザ光をピッチ側光ファイバに出力する。典型的には、ダイオードレーザとマルチプレクサは、燃焼プロセスチャンバから遠く離して配置されている温度調整された室内に収容されるだろう。ピッチ側光学システムは、さらに、ピッチ側光ファイバの遠方の末端と非多重化入力光ファイバの遠方の末端とに光学結合されているカプラから成り、および、このカプラは多重化レーザ光と非多重化レーザ光とを組み合わせ、この組み合わされた光を伝送光ファイバに出力する。典型的には、このカプラは燃焼プロセスの付近に配置されている。ピッチ側光学システムは、さらに、伝送光ファイバに結合されているピッチ光学部品から成る。典型的には、ピッチ側光学システムで使用されるすべての光ファイバは単一モード光ファイバである。伝送光ファイバの長さは光学ノイズを最小化するように選択されてよい。特に、比較的より短い波長(例えば、760nm)のレーザ光が例えば1240nmから5200nmの比較的長い波長のレーザ光と多重化されており、かつ、こうした多重化ビームが、伝送スペクトル全体にわたって高い曲げの速度と他の伝送損失とを示さない適切な市販の遠距離通信用光ファイバにおいて伝送されている場合には、相対的により短い波長が、延長された距離にわたってマルチモーダルになることがある。したがって、伝送ファイバの長さが、モードノイズの発生を最小化するように選択されてよい。例えば、伝送ファイバがCorning SMF 28光ファイバである時に、3メートル以下の伝送ファイバ長さが、顕著なマルチモード挙動の発生なしに、760nmの波長を有するレーザ光をカプラからピッチ光学部品に伝送することが可能である。
【0016】
本発明の別の側面が、キャッチ側のマルチモード光ファイバに光学結合されているキャッチ側光学部品と、キャッチ側のモードノイズを最小化するためにキャッチ側のマルチモード光ファイバの一区間を機械的に操作する手段とから成る、ダイオードレーザ分光法で使用するためのキャッチ側光学システムである。この機械的操作は、キャッチ側のマルチモード光ファイバをその縦軸を中心として捻ることから成ってよい。上述の仕方でキャッチ側のマルチモード光ファイバの一区間を機械的に操作する手段は、ファイバの一区間がモータの軸位置に対して相対的に迅速に保持され、かつ、このモータの軸が+360度の運動と−360度の運動とによって反復的に掃引されるように、キャッチ側のマルチモード光ファイバに関連付けられているモータから成ってもよい。このモータの軸の掃引の周波数は、伝送される信号の効果的な平均化を可能にするために、かつ、それによってキャッチ側のモードノイズの影響を減少させるために、10Hz以上であってよい。
【0017】
本発明の別の側面が、選択されたレーザ発振周波数を有するダイオードレーザを備えるダイオードレーザ分光ガス検出装置であって、ピッチ光学部品がそのダイオードレーザに結合されており、および、そのピッチ光学部品は、プロセスチャンバに作動的に関連付けられており、かつ、プロセスチャンバを通過する放射ビームに沿ってレーザ光を放射するように方向付けられている。これに加えて、本発明のこの側面は、プロセスチャンバの中を通して放射されたレーザ光を受け取るためにピッチ光学部品と光学的に連絡しているキャッチ光学部品と、このキャッチ光学部品に光学結合されている光ファイバとを含む。これに加えて、キャッチ光学部品は、ピッチ光学部品からキャッチ光学部品によって受け取られるレーザ光の量を増大させるために放射ビームに対するキャッチ光学部品のアラインメント調整を可能にするキャッチ側のアラインメント調整機構に作動的に関連付けられており、および、光ファイバと、その光ファイバに光学結合されている選択されたレーザ発振周波数に対して感度を有する検出器とに結合されている。このキャッチ側アラインメント調整機構は、第1の軸とこの第1の軸に対して直交する第2の軸とに沿ってキャッチ光学部品をチルトさせる手段から成ってよく、および、この第1の軸と第2の軸との両方は放射ビームに対して実質的に直交である。キャッチ光学部品をチルトさせるこの手段は、ステップモータであってよい。ダイオードレーザ分光ガス検出装置は、さらに、ピッチ光学部品によって放射されてキャッチ光学部品によって受け取られるアラインメント光ビームから成ってよく、および、検出器とキャッチ側のアラインメント調整機構とに作動的に関連付けられているデータ処理システムが、アラインメントビームの強度に関係した検出器からのデータを受け取り、および、検出器に結合されているアラインメントビームの強度を最大化するために、キャッチ側のアラインメント調整機構がキャッチ側の光学部品を放射ビームとアラインメント調整することを生じさせてよい。本発明のこの側面のダイオードレーザ分光ガス検出装置は、さらに、ピッチ光学部品のアラインメント調整と放射ビームの方向の調整とを実現するためのピッチ側のアラインメント調整機構から成ってよい。このピッチ光学部品は、キャッチ光学部品に関して概ね上述した通りに実現されてよい。
【0018】
本発明の別の側面が、ダイオードレーザ分光ガス検出光学システムをアラインメント調整する方法である。この方法は、アラインメント光ビームを供給することと、プロセスチャンバの中を通してそのアラインメント光ビームを放射することと、キャッチ光学部品によってそのアラインメントビームを受け取ることとから成り、および、このキャッチ光学部品はプロセッサチャンバに作動的に関連付けられている。この方法は、さらに、キャッチ光学部品からのアラインメントビームを光ファイバを通して検出器に光学的に結合することと、キャッチ光学部品から光ファイバに結合されるアラインメントビームの強度を測定することとから成る。これに加えて、この方法は、キャッチ光学部品から光ファイバに結合されたアラインメントビームの強度を最大化するようにキャッチ光学部品をアラインメント調整することから成る。ダイオードレーザ分光ガス検出光学システムをアラインメント調整するこの方法は、さらに、第1の軸とこの第1の軸に対して直交する第2の軸とに沿ってキャッチ光学部品をチルトさせることから成ってよい。あるいは、これに対する代案として、アラインメントビームはピッチ光学部品によって放射されてもよく、および、このピッチ光学部品も、キャッチ光学部品から光ファイバに結合されるアラインメントビームの強度をさらに最大化するようにアラインメント調整されてよい。
【0019】
本発明の別の側面が、波長可変ダイオードレーザ吸収分光法を用いて燃焼プロセスにおけるNOを検出する方法である。このNO検出方法は、約670nmの波長のレーザ光を供給することと、ピッチ側の光ファイバ内のレーザ光を燃焼場所へ伝送することと、燃焼プロセスの中を通してレーザ光を放射することと、キャッチ側光ファイバの中にレーザ光を受け取ることとから成る。この方法は、さらに、キャッチ側の光ファイバの中のレーザ光を検出器に伝送することと、その検出器に伝送されるレーザ光に関係した検出器からの信号を生成することとから成る。これに加えて、この方法は、その信号からNO2濃度を計算することと、この計算されたNO2濃度からNO濃度を求めることとから成る。このNO検出方法は、ダイオードレーザによって約1340nmの波長を有するレーザ光を生じさせることと、疑似位相整合周期分極導波路(quasi-phase matched periodically polled waveguide)においてそのレーザ光を周波数2倍化することとによって、波長670nmのレーザ光を供給することによって実現されてよい。適している導波路は、疑似位相整合周期分極ニオブ酸リチウム導波路である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
検出装置
図1に示されているように、本発明の実施形態は、燃焼プロセスの検出と監視と制御とに適している検出装置10である。この検出装置10は、近赤外または中赤外スペクトルの選択された周波数でレーザ発振する一連の波長可変ダイオードレーザ12からのレーザ光を使用することによって波長可変ダイオードレーザ吸収分光法(TDLAS)を行う。各々の波長可変ダイオードレーザ12の出力は、単一モード光ファイバ14であってよい個別の光ファイバに結合され、および、マルチプレクサ16に送られる。本明細書で使用される場合に、「結合されている(coupled)」、「光学結合されている(optically coupled)」または「光学的に連絡している(in optical communication with)」は、光が中間の構成要素または自由空間を通解してまたは通過せずに第1の構成要素から第2の構成要素に進むことができる場合の相対物の相互間の機能的関係と定義される。マルチプレクサ16内では、その発生周波数の一部または全部の周波数のレーザ光が、複数の選択された周波数を有する多重化プローブビーム(multiplexed probe beam)を形成するために多重化される。この多重化プローブビームはピッチ側の光ファイバ18に結合され、および、図1に燃焼室22として示されているプロセスチャンバに作動的に関連付けられているピッチ光学部品20すなわちコリメータに伝送される。
【0021】
ピッチ光学部品20は、燃焼室22の中を通して多重化プローブビームを放射するように方向配置されている。キャッチ光学部品24が、燃焼室22を経由してピッチ光学部品20と光学的に連絡している。キャッチ光学部品24が、ピッチ光学部品20の概ね反対側に位置しており、かつ、燃焼室22に作動的に関連付けられていることが好ましい。このキャッチ光学部品24は、燃焼室22の中を通して放射される多重化プローブビームを受け取るように配置されかつ方向付けられている。キャッチ光学部品24は、キャッチ光学部品24によって受け取られる多重化プローブビームの一部分をデマルチプレクサ28に伝送するキャッチ側の光ファイバ26に光学的に結合されている。デマルチプレクサ28内では、キャッチ光学部品24によって受け取られた多重化プローブビームの一部分が逆多重化され、および、この逆多重化されたレーザ光の各波長が出力光ファイバ30に結合される。一方、各々の出力光ファイバ30は検出器32に光学的に結合されており、この検出器32は、典型的には、そのプローブビームを形成するように生成され多重化されたレーザ光の選択された周波数の中の1つの周波数に対して感度を有する光検出器である。検出器32は、検出器周波数で検出器32に伝送される光の性質と量とに基づいて電気信号を生成する。各検出器32からの電気信号は、典型的には、データ処理システム34内でデジタル化されて分析される。より詳細に後述するように、このデジタル化され分析されたデータは、燃焼室22内の様々なガス化学種の濃度と燃焼温度とを非限定的に含むプロセスチャンバ内の物理パラメータを検出するために使用されることが可能である。データ処理システム34は、さらに、フィードバックループ36を通して燃焼制御装置38に信号を送り、および、それによって選択されたプロセスパラメータを能動的に制御するために使用されることが可能である。燃焼プロセスの場合には、制御されるプロセスパラメータは、燃料(例えば、微粉炭)供給量と、酸素供給量と、触媒または化学薬剤の添加速度とを含むことが可能である。検出装置10のピッチ側とキャッチ側の両方の電子構成要素と光学構成要素との光ファイバ結合の使用が、波長可変ダイオードレーザ12と検出器32とデータ処理システム34とのような、壊れやすくて温度の悪影響を受けやすい装置が、安定した動作環境を有する制御室の中に配置されることを可能にする。したがって、比較的頑丈なピッチ光学部品20およびキャッチ光学部品24だけが、燃焼室22の過酷な環境の付近に配置されることが必要であるにすぎない。
【0022】
図2は、ファイバ結合多重化検出システム40の全体的な構成要素の配置を概略的に示す。この検出システム40は、一般的に、システムラック42と、ブレイクアウトボックス44と、ピッチ光学部品48を有するトランスミッタヘッド46と、キャッチ光学部品52を有するレシーバヘッドと、接続光ファイバとから成る。システムラック42が燃焼室54から例えば1キロメートルのような距離に位置している遠隔制御室内に配置されていることが好ましい。この制御室は、典型的には、適度な環境を有するだろう。システムラック42は、レーザ56と、検出器58と、波長マルチプレクサ60と、波長デマルチプレクサ62とを含む。このシステムラック42は、さらに、システム電子機器と制御ソフトウェア(図2には示されていない)も収容する。システムラック42は、採用随意に、アラインメント光源64を収容してもよい。
【0023】
システムラック42をブレイクアウトボックス44に接続する光ファイバは、典型的には、標準的な単一モードの遠距離通信用光ファイバである。このタイプのファイバは安価であり、容易に入手可能であり、低損失であり、かつ、光スイッチと光スプリッタと波長分割マルチプレクサとのような光を操作するための様々な標準量産品の遠距離通信用部品にレーザ光が送られることを可能にする。光ファイバ結合なしでは、ずっと自由空間を通過してレーザ光が燃焼室54に送られなければならず、このことは実現が非常に困難であろうし、または、この代わりに、高感度の電子機器と光学部品とが燃焼室54の直ぐ近くに配置されることが必要だろう。
【0024】
さらに、図2にはブレイクアウトボックス44も示されている。このブレイクアウトボックス44は、ボイラの近くに配置されている堅牢化された密閉容器である。このブレイクアウトボックス44は、複数のトランスミッタヘッド/レシーバヘッド対に光学信号を送るために後述するように使用されてよい光スイッチと光スプリッタと光カプラ(一括して66で示されている)とを収容する。
【0025】
図2に示されている第3のグループのシステム構成要素がトランスミッタヘッド46とレシーバヘッド50である。トランスミッタヘッド46とレシーバヘッド50との中の光学部品と電子機器は、ファイバ68内の光を平行ビームに変換し、このビームを正確に燃焼室54の中を通して送り、燃焼室54の遠端上でビームを捕捉し、かつ、このビームをファイバ70の中に結合しなければならない。これを実現するための光学部品の選択が、伝送距離と、燃焼区域の乱流と、伝送されるビームの品質に対するこの乱流の影響と、ファイバ70のコアサイズとによって決定される。ファイバのコア径が50ミクロンであることが好ましく、このことは妥協であり、すなわち、より大きいコアはより多くのレーザ光を捕捉するが、しかし、同時に、はるかにより多くの背景光も捕捉する。キャッチ(レシーバ)側でのファイバ結合は幾つかの利点を有する。特に、レーザ光と同一の場所にありかつ同一の方向に進む光だけがファイバ70の中に集束される。このことは、検出される背景光の量を劇的に減少させる。別の実施形態では、光が幾つかのレシーバファイバの中の1つのレシーバファイバの中に捕捉されてもよく、および、光スイッチまたは他の光路選択装置が、検出器58への転送のために1つのファイバからの光を選択することが可能である。
【0026】
キャッチ側でのファイバ結合の使用は、トランスミッタの光学部品とレシーバの光学部品との両方のアラインメント公差が正確に維持されることを必要とする(トランスミッタの照準とレシーバの照準との両方に関して0.5ミリラジアン未満)。後述するアラインメント調整システムが、過酷な発電所環境においてこの公差を満たすことを可能にする。ピッチ光学部品48とキャッチ光学部品52との両方が、複数のレーザ信号が同時に効率的に送信および受信されることが可能であるように、660nmから1650nmまでの波長に関して特注設計かつ収差補正されることが好ましい。
【0027】
複数の組の検出光学部品を有する検出装置
図1を再び参照すると、この図には、単一の燃焼室22に関連付けられている2つ以上の組のピッチ光学部品20とキャッチ光学部品24とを特徴とする実施形態が概略的に示されている。多重化プローブビームは、図1に示されているように光スイッチ72であってよい経路選択装置によってピッチ光学部品20の各組に送られることが可能である。適している経路選択装置は、予め決められたシーケンスでピッチ光学部品/キャッチ光学部品の各組に対して最少の減衰を伴ってプローブビームを送るように実現されてよい光スイッチ、または、光学部品の各組に対して多重化プローブビームの分別部分を同時に送る光スプリッタを含む。
【0028】
図1においてマルチモード光スイッチ74として示されている同様の光経路選択装置が、各キャッチ光学部品24によって受け取られた多重化プローブビームの一部分をキャッチ側のデマルチプレクサ28に送るために、そのシステムのキャッチ側で使用されることが可能である。図1に示されている実施形態は2つの組のピッチ光学部品およびキャッチ光学部品だけを示すが、そのシステムは、任意の数の組のピッチ光学部品およびキャッチ光学部品を使用することが可能である。そのシステムのピッチ側とキャッチ側の両方でファイバ結合と(逆)多重化プローブビームとを使用することが、1つの組のレーザ12と検出器32とによって複数の組のピッチ光学部品とキャッチ光学部品が実現されることを可能にする。光多重化技術を含まない場合には、すべてが校正を必要とする別々の組のレーザと検出器とファイバケーブルが各々のトランスミッタ/レシーバ対毎に必要とされるだろう。詳細に後述するように、複数のトランスミッタ/レシーバ対が、例えば下流のガスプロセスを検出するための、燃焼室22または他の場所の全体にわたっての1つまたは複数の2次元検出格子の実現を可能にする。2つの極めて単純化された検出格子、すなわち、火球検出格子76と下流検出格子78との略図が図3に示されている。これに加えて、本発明のファイバ結合という特質が、容易に入手可能な遠距離通信用部品が有効な効果を得るために使用されることを可能にする。例えば、光ファイバスイッチが、測定のために異なる場所に多重化プローブビームを送るのに使用されることが可能である。Nが8までである1XNの光スイッチが、様々な供給業者から標準量産品の部品として容易に入手可能である。Nが16までであるスイッチが特別注文されることが可能である。
【0029】
スイッチと複数の対のピッチ光学部品/キャッチ光学部品とが、燃焼室全体にわたっての異なる場所でガス化学種の連続的な調査のために使用されることが可能である。平均化された結果で十分な状況では、異なるビーム経路の連続的な調査が許容可能である。しかし、特定の用途が検出格子全体の瞬時の調査を必要とすることがある。例えば、特定の燃焼プロセスのフローが高周波数変動を示すか、または、このフローが、例えば衝撃波管または衝撃波風洞のように、短時間の間だけしか存在しないだろう。この場合には、1XNスプリッタが、検出格子の互いに異なる位置を各々が占めるN個の分枝にプローブビームを分割するために使用されてよい。格子全体が同時に照明されるので、2次元分析が非常に迅速に生じさせられることが可能である。しかし、同時の2次元分析は、キャッチ側の各構成要素が、デマルチプレクサと、検出器と、A/Dカードのような電子機器と、ある程度はコンピュータとを含む各ビーム経路に再現されることを必要とするだろう。
【0030】
したがって、スイッチまたはスプリッタを特徴とする実施形態が、調査される領域の2次元断面の幾分か大まかなトモグラフィック再構成(tomographic reconstruction)を容易にする。ガス濃度のトモグラフィ法(tomography)を行うためにダイオードレーザを使用することは公知の技術であるが、しかし、大きな追加の利益が、波長多重化されているプローブビームの使用の結果として本発明によって得られる。波長多重化ビームは、2つ以上の吸収線の同時分光分析を可能にする。したがって、詳細に後述する温度測定のような2つ以上の吸収線に依存するTDLAS技術が、検出格子全体にわたって行われることが可能である。温度とガス化学種濃度の両方がこのようにしてマッピングされることが可能である。
【0031】
SCRとSNCRとにおけるトモグラフィの具体的な適用
上述の大まかなトモグラフィの具体的な適用が図3に概略的に示されており、および、石炭燃焼発電ボイラ廃出液またはガス燃焼発電ボイラ廃出液からのNOxの還元のためのSCR(選択触媒還元)とSNCR(無触媒還元)におけるアンモニア注入の最適化に関する。この用途では、アンモニア注入器または尿素注入器の行列80がボイラ廃出液の流れの中に配置される。NOx濃度を最小にするために、超過量のアンモニア(または尿素)がその廃出液に加えられてよい。NOxは厳しく規制された非常に有害な空気汚染物質のグループである。この加えられたアンモニアはNOxを化学的に還元し、および、無害な窒素気体と水とを生成物として生じさせる。しかし、加えられる過剰なアンモニア(または尿素)の量は、これらの化学物質自体が有害な大気汚染物質でありかつ非常に高価なので、最小限にされなければならない。典型的には、3−5ppm未満の超過濃度のアンモニアが望ましい。しかし、発電所の燃焼廃出液中のNOxの分布は均一ではなく、かつ、時間的に安定していない。これに加えて、アンモニア注入器の1つまたは複数が任意の特定の時点において故障するかも知れず、この故障はアンモニア濃度の局所的な減少の原因となり、および、このことがNOx濃度における局所的なブリードスルー(bleed through)を生じさせる可能性がある。上述の通りの下流TDLAS格子78検出によってアンモニアまたはNOxの空間濃度を監視することが可能なので、本発明は、不均一なアンモニア分布が検出されて軽減されることを可能にする。したがって、2次元化学種濃度によるアンモニア注入格子76の最適化と注入器全体にわたる個別的な制御とが、SCR/SNCRプロセスの最適化を可能にする。検出器とアンモニア注入器とが、アンモニア注入器の自動化されたフィードバック制御を実現するデータ処理システムにリンクさせられてもよい。
【0032】
本明細書に開示されているアンモニアスリップ(ammonia slip)検出システムのような最適化されたアンモニアスリップ検出システムが、NOx濃度を監視する能力を含むことが好ましいだろう。NOxはNOとNO2の両方を含む。残念であるが、頑丈なNIRダイオードレーザは、1.7ミクロンから1.8ミクロンの範囲内で生じる2次NOオーバートーン遷移だけにアクセスすることが可能であるにすぎない。大半の廃出液流の中に存在する比較的低い濃度を考慮すると、この遷移はNOを検出するためには弱すぎる。したがって、NO濃度を直接監視することは実際的ではない。しかし、NO2が、NOを生じさせるプロセスと同じプロセスで生じさせられる。熱NO2プロセスとして発電産業で公知であるこれらのプロセスは、NOとNO2の両方を生じさせ、および、典型的な条件下では、NOは総NOx濃度の約95%を占め、かつ、NO2は残りの5%を占める。この比率は、典型的には、環境の温度と酸化可能性とに依存する。上述したように、この技術は、標本採取されたガスの温度の測定も可能にする。しかし、NO濃度とNO2濃度とが互いに追従することが予測される。したがって、NO2はNOのための代用の分析化学種として使用されることが可能である。本発明は、670nmの波長においてNO2を監視する能力を実現する。この波長は、位相整合周期分極ニオブ酸リチウム導波路内で周波数2倍化された1340nm分散フィードバック(DFB)レーザを使用して生じさせられる。NO2濃度がNO濃度の5%にすぎなくても、NO2吸収強度は数桁大きい。したがって、NO2は、NOx還元プロセスの最適化を容易にするために、ボイラ内に存在する濃度で容易に検出されることが可能である。
【0033】
波長可変ダイオードレーザ吸収分光法
本発明は、レーザ分光法の分野の専門家にとって公知である技術を使用してTDLASを行う。一般的に、TDLASは、ターゲット環境の中を通したレーザ光の伝送と、その後での、一酸化炭素または酸素のようなターゲットのガスを原因とする特定の波長でのレーザ光の吸収の検出とによって行われる。検出された光のスペクトル分析が、レーザ経路に沿ったガスのタイプと量の識別を可能にする。直接吸収分光法の詳細が、Teichert,FernholzおよびEbertの“Simultaneous in situ Measurement of CO, H20, and Gas Temperature in a Full-Sized, Coal-Fired Power Plant by Near-Infrared Diode Lasers”(Applied Optics, 42(12):2043, 20 April 2003)に説明されており、この全体が本明細書に引例として組み込まれている。レーザ吸収分光法の非接触という特徴が、このレーザ吸収分光法を、石炭燃焼発電所の燃焼区域、または、他のプローブが使用不可能な易燃性もしくは有毒性の環境のような過酷な環境に適したものにする。レーザ光の使用が、こうした環境の幾つかにおいて遭遇することがある極度の減衰(典型的には、99.9%を超える光損失)の存在下において検出可能な伝送を得るために必要な高い輝度を実現する。ターゲット用途の過酷な条件により適切に耐えるために、レーザ光は、防護された光ファイバを通してターゲット環境に対して送り込まれてよい。
【0034】
温度または複数の燃焼プロセス成分ガスの効果的な検出が、複数の互いに広く間隔があいた周波数のレーザ光を使用するTDLASの実行を必要とする。選択された周波数は、監視される遷移の吸収線に適合しなければならない。例えば、上述したように、放射NO濃度を概算するためには670nmの波長でNO2を監視することが有用である。さらに、石炭燃焼ユーティリティボイラ(coal-fired utility boiler)において酸素と水(温度)と一酸化炭素とを監視することが極めて有用である。適している吸収線と、したがって、適しているレーザ発振周波数とが、燃焼室の中を通過するレーザプローブ経路長が10メートルに等しく、かつ、各化学種のモル画分がCO(1%)、O2(4%)、CO2(10%)、および、H2O(10%)であるという前提に基づいて選択されることが可能である。周波数の選択のために、プロセス温度が、石炭燃焼発電所で典型的に見られる温度よりもわずかに高い1800Kであると仮定されることが可能であるが、このクッションは計算における安全係数の役割を果たす。
【0035】
例えば、次の基準に合致する3つの水吸収線がTDLASのために選択されることが可能である。
1.それぞれに〜1000、2000、および、3000cm-1のより低い状態エネルギー。
2.共振時に約20%のビーム吸収を生じさせる約0.1−0.4の便利な吸光度を実現する。
3.最適の状況が、安価で高出力のDFBダイオード遠距離通信用レーザが使用可能である1250nmから1650nmの範囲内の遷移を使用することである。
4.遷移が容易な多重化を可能にするように適切に分離されなければならない。
5.選択された波長が、既存の(デ)マルチプレクサ格子によって効率的に回折させられなければならない。
【0036】
適切な水吸収線が次の波長で生じる。
US04/10048
故意に残されたページ
白紙
【0037】
【表1】

【0038】
他のあらゆる燃焼ガスからの干渉は想定されていない。干渉の可能性が最も高い化学種であるCO2がモデル化され、および、1.3ミクロンから1.4ミクロンの範囲内では強い干渉線が存在しない。
【0039】
同様に、適している一酸化炭素線が、引例として組み入れられている上記のEbertの研究に基づいて選択されることが可能である。適している一酸化炭素線が、石炭燃焼ユーティリティボイラ内でR(24)線を使用して1559.562nmで発見されている。この線の選択が、水と二酸化炭素とからの干渉を回避する。既知の格子が、光通信C帯にあるので、この波長範囲内で極めて効率的である。この波長における吸光度が0.7%であると予測される。
【0040】
さらに、酸素が760.0932nmで測定されることが可能である。好ましい(逆)多重化格子効率がこの範囲内では40%にすぎないことが算出されるが、適しているレーザ出力が適切な測定効率を得るために使用可能であるべきである。
【0041】
本明細書で説明するように、TDLAS検出装置のピッチ側とキャッチ側の両方でのファイバ結合の使用が、ピッチ光学部品とキャッチ光学部品の厳密なアラインメント調整を必要とする。能動アラインメント調整が、選択されたアラインメント波長を用いて行われることが好ましい。採用可能な1つのアラインメント波長が660nmであるが、これは、高出力(45mW)ダイオードがその周波数で入手可能であり、かつ、660nmが14次格子動作のピークの付近にあるからである。他のアラインメント波長が同等に適しているかまたはそれ以上に適していると判断されることがある。
【0042】
要約すると、本発明において具体化されるTDLASのためのプローブビームに多重化するために選択された適切な波長の組が図2に示されている。この波長の組が、石炭燃焼発電所の検出と制御とに適しているTDLAS検出装置の一実施形態のためのものであるということに留意されたい。他の波長の組が同様に適していることが可能である。
【0043】
【表2】

【0044】
多重化ビームを使用するTDLASの具体的な利点
波長多重化プローブビームを使用するTDLASの具体的な利点が、温度測定値の精度の向上である。TDLASを使用して正確な濃度測定を行うためには、監視対象のガスの温度を知らなければならない。分子吸光の強度は温度の関数である。従って、吸収特徴の振幅を濃度に変換するためには、温度を知らなければならない。COのような燃焼化学種の濃度を測定しようとする以前の幾つかの試みは、定量化における誤りの原因となる不十分な精度の温度測定値という欠点を有する。これは、伝統的に温度測定を全く含まない、ダイオードレーザに基づいたアンモニアスリップ監視装置の場合に特に当てはまる。本発明の検出システムでは、温度は、2つ以上の分子水線の強度の比率を測定することによって求められてよい。この2つの線の積分強度の比率は(システム全体の圧力が一定不変であると仮定すると)温度だけの関数である。したがって、原理的には、2つの線が正確な温度を与える。しかし、(工業燃焼プロセスにおいて典型的に見られるような)不均一な温度分布の場合には、2つの線は温度分布を求めるには不十分である。こうした不均一な温度分布の場合には、2つの線は「経路平均(path-averaged)」温度だけを求めることが可能であるにすぎない。これとは対照的に、(同一の化学種の)3つ以上の線の積分振幅を測定することが、温度の不均一性が調査されることを可能にする。この技術の例が、Sanders、Wang、Jeffries、および、Hansonによって“Applied Optics”(vol.40, num.24, 20 August 2001)においてプローブ分子として酸素を使用することによって示されており、このことは全体として本明細書に引例として組み入れられている。この好ましい技術は、照準線に沿って測定されたピーク強度の分布が、例えば、その経路の一方の半分が300Kでありかつその他方の半分が700Kであるので、例えば500Kの平均温度における経路とは同一でないということに基づく。
【0045】
より正確な温度測定という利点に加えて、多重化プローブビームの使用は、2つ以上の燃焼ガス化学種の同時監視を可能にし、および、燃焼プロセス全体にわたってのより厳密な制御を可能にすることができる。
【0046】
エシェル格子に基づいた装置
本発明は、遠距離通信産業で使用するために設計された比較的安価でありかつ一般的に入手可能な光学部品の使用から利益を得る。こうした遠距離通信装置は、このシステムのピッチ側とキャッチ側をファイバ結合するために適切に機能する。遠距離通信用途は、典型的には、一定不変の値(例えば、0.8nm)の差で比較的近接して互いに間隔をおいて分離させられている波長の複数の光ビームを受け入れる光学マルチプレクサを使用する。その次に、光ビームは、一般的に、単一モードの光ファイバ上に結合される。デマルチプレクサが逆のプロセスを行う。遠距離通信機器は、典型的には、1520nmから1620nmの波長で動作するように設計されており、および、1528nmから1563nmの光学C帯が最も多く利用されている。
【0047】
(デ)マルチプレクサの場合には、同一の物理装置が、その装置の中を通過する光の方向に応じて、多重化と逆多重化のどちらにも使用されてよい。従って、本明細書で使用される術語「マルチプレクサ」すなわち「mux」は、多重化機能と逆多重化機能の両方を含むものとして理解されるだろう。
【0048】
光学マルチプレクサが、多重化/逆多重化機能を果たすために幾つかの技術のどれかを使用してよい。しかし、エシェル格子によるマルチプレクサが、非常に単純でコンパクトな設計の形に実装できるので有利である。エシェル格子は、典型的には45度よりも大きいブレーズ角を有する、一次以外の次数で動作する比較的目が粗い回折格子である。高次の動作と組み合わされたエシェル格子上の目の粗い線間隔が、その装置がコンパクトであることを可能にする大きな角分散を結果的に生じさせる。
【0049】
遠距離通信用途の中には、C帯の完全に外側の他の波長(例えば、1310nm)が光学マルチプレクサによって同時処理されることを必要とする用途があることがある。さらに、本発明のTDLAS検出/制御装置のような遠距離通信分野以外の用途が、例えばおよそ数百nmの間隔のような互いに広く間隔が開けられている波長のレーザ光の多重化を必要とすることがある。エシェル格子に基づく多重化検出装置の利点を示す例が図4から図7に示されている。図4は、光84が一方の側から炎86を貫く形に方向付けられているガス検出装置82を示す。炎の他方の側にあるセンサ88が伝送される光を検出し、および、どれほど多くの光が炎86中のガスによって吸収されているかを測定する。図4に示されている装置では、単一の光ビームだけが炎86の中を通過させられる。この光の波長が、特定のガスの吸収波長に適合するように選択されてよい。あるいは、この代わりに、その光は、炎86の中を通過した後に例えばプリズムによって様々な波長に分割される白色光であってもよい。その次に、検出対象の波長の各々における吸光度が測定されることが可能である。
【0050】
わずかにより高度な従来技術の代替案として、図5に示されている装置のような装置が、n個の別々の光ビーム90A−90nを炎92の中を通過させるために使用されてよい。光ビーム90A−90nの各々は互いに異なる検出対象の波長の光ビームであり、および、炎92の他方の側にあるセンサ94A−94nが、選択された検出対象ガスの相対量を示す、各波長における吸収を測定する。複数の別々のビームを使用することには幾つかの欠点がある。第1に、炎に対するアクセスが制限される可能性があり、および、限られた空間の中を通して複数のビームを放射しようとする試みは、不可能ではないとしても、困難であり得る。第2に、典型的には、炎の中の乱流と不均一性のポケット(pockets of non-uniformity)とが存在する。複数のビームは、非常に接近する形で互いに間隔があいていても、同一の標本採取空間の中を通過しない可能性があり、および、したがって、ばらつきのない結果または比較可能な結果を生じさせない可能性がある。最後に、複数ビーム装置では、放射/検出光学部品と検出器とが、単一ビーム装置における放射/検出光学部品および検出器に比較して、より複雑で高コストである。
【0051】
本発明のエシェル格子マルチプレクサに基づく検出装置は、従来の技術を上回る大きな利点を有する。エシェル格子は、典型的には45度より大きいブレーズ角を伴って1次以外の次数で動作することが可能であることによって、優れた柔軟性を実現する。例えば、Zolo Technologies, Inc. のZmuxTMは、1545nmにおいて6次でリトロー配置の形で動作するように最適化されており、および、機械的に罫線が引かれた格子が171.4線/mmの線間隔と52.75度のブレーズ角とを有する。リトロー配置に関する格子の式は、
mλ=2dsinΘb (1)
であり、前式中でmは次数であり、λは波長であり、dは罫線の間隔であり、および、Θbはブレーズ角である。
【0052】
特定の格子の場合に、mλは定数である。上記のZmux格子の場合には、mλ=6(1.545)=9.27ミクロンである。この格子は、6次において1.545ミクロンの場合に最適の効率を実現する。しかし、この格子は、さらに、他の次数の場合にも非常に高い効率を実現する。例えば、7次が9.27/7=1.32ミクロンで生じる。したがって、Zmuxのような格子は、C帯光と1310nm光とを高い効率で同時に多重化することが可能である。図6は、単一ビーム102の形にコリメータ100によって光98Aが平行化されるように光98A−98nを多重化する、エシェル格子96を示す。
【0053】
数百nmを超えることが多い間隔で互いに広く間隔があいた波長のレーザ光を多重化するための遠距離通信分野以外の用途が、本発明に特に関連している。本発明のTDLASに基づくガス検出装置のような用途では、プローブビームのすべての波長成分が同一の空間領域を標本採取することが重要であり、および、多くの波長が、単一の化学種を検出するために、または、複数の化学種を検出するために必要であることがある。これらの用途のためには、エシェル格子に基づくマルチプレクサ/デマルチプレクサが特有の解決策を提供する。例えば、上述のエシェル格子に基づくデ/マルチプレクサは、各波長領域が互いに異なる格子次数に対応する、次の表3に示されている中心波長を中心とする大きな波長領域を多重化することが可能である。
【0054】
【表3】

【0055】
14次までのおよび14次を超えるより高次の次数が、さらに、これに対応してより狭い波長範囲と多重化されてもよい。これらの波長のすべてのための単一モード伝送は、容易に入手可能な光ファイバでは不可能であるということが注目に値する。本発明のガス検出装置104の一側面が図7に概略的に示されている。この側面は、上述の従来技術の具体例よりも優れている、多重化レーザ出力を有するTDLASの利点を強調する。図7の実施形態では、互いに広く間隔があいた波長で動作するn個のレーザ源106A−106nが、エシェル格子108によって単一の光ファイバ110上に多重化される。単一のファイバ110からの光がコリメータすなわちピッチ光学部品112によって平行化され、および、分析対象である(炎のような)標本114の中を通過させられる。標本114の中を通過した後に、その光は別のエシェル格子116によって逆多重化される。各々の波長の伝送光は、対応する光検出器118A−118nによって検出される。レーザ106A−106nが狭いスペクトル領域(例えば1−2nm)全体にわたって同調させられ、および、標本114による吸収が、走査された各スペクトル領域全体にわたって監視される。このようにして、検査対象のガスが完全に識別および定量化されることが可能である。ガス温度と圧力とのような他のパラメータが同様に測定されてよい。燃焼検出に加えて、互いに広く間隔があいた波長に基づくエシェル格子多重化/逆多重化技術は、医療装置が吐出し息の中のガスを測定することを可能にし、および、祖国防衛装置が化学兵器薬剤を検出することを可能にする。エシェル格子に基づくマルチプレクサと赤/緑/青カプラ装置とを使用することによって、ディスプレイおよび顕微鏡視覚技術の分野における他の応用が可能である。
【0056】
モードノイズ
本発明のTDLASシステムの光学列(optical train)と、互いに広く間隔があいた波長から多重化された信号を必要とする類似の具体例とが、モードノイズの低減と高い効率の光収集という互いに対立する設計上の要件を原因として様々な設計上の難題をもたらす。モードノイズは、本明細書においては、測定対象のプロセスチャンバから光を収集するために、および、このプロセスチャンバに光を伝送するために使用されるファイバのコアの中における、時間および波長に応じて変動する不均一な光分布の結果として生じる検出光の信号レベルの変化として定義されている。
【0057】
マルチモードファイバでは、異なるモードが屈折率の変動を原因として異なる速度で伝播する。この場合に、ファイバ内の強度の分布は、互いに異なる有効経路長を経た伝播モードすべての干渉の結果として生じるスペックルパターンである。このスペックルパターンのすべての光が収集されて検出される場合には、強め合う干渉と弱め合う干渉とが互いに正確に打ち消し合い、および、伝送される出力の合計は波長またはファイバ長には依存しない。クリッピングがある場合には、周辺減光または他の損失が生じさせられて、正確な打ち消し合いが行われず、かつ、検出された出力が波長および/または時間に応じて変化する。ファイバの長さzの後での検出された出力に関する一般式は、
P=P0+Σijijijcos[(2πv0Δnijz)/c+Δφij(T,σ)] (2)
であり、前式中で、
0=波長非依存の平均出力、
i=i次横モードにおける光の振幅、
ij=i次横モードとj次横モードの間の重なり積分、
Δnij=i次モードとj次モードの間の屈折率の差、
Δφij=温度および応力を原因とするi次モードとj次モードの間の位相ずれ
である。
【0058】
正規直交セットのモードと無損失との場合には、cij=0である。しかし、あらゆるビームクリッピング、または、周辺減光、または、あらゆるその他のモード依存損失が、何らかのcij≠0の原因となる。このことは、平均伝送出力におけるリップルを生じさせる。
【0059】
50ミクロンコアを有する典型的な屈折率分布ファイバの場合には、屈折率の変化の合計Δnが〜1%であるが、大半のモードがファイバコアの中心付近で大量の伝送時間を費やし、したがって、一般的にΔnij≦0.0005である。一般的に入手可能な光ファイバGIF50が約135個のモードをサポートし、これは、適切に実現可能なビームクリッピングレベルを仮定すれば、波長走査中に顕著なモードノイズを生じさせるのに十分なだけ粗い。
【0060】
モードノイズの具体例として、モードノイズを示す実現可能な最も単純なシステム、すなわち、1次元において最低のモードだけをサポートし、および、直交次元において2つの最低モードだけをサポートする方形導波路が、考察されることが可能であり、
最低モード: E1=E10[exp i(kz−ωt)]cos πx/2a
その次のモード:E2=E20[exp i(kz−ωt)]sin πx/a
である。
【0061】
ファイバに沿ったポイントzにおける強度が、
I(x)=│E1+E22であり且つ合計出力がP=∫│E1+E22dx (3)
であり、前式中で積分がクリッピングと周辺減光との影響を含まなければならない。
【0062】
クリッピングがない場合には、P〜E12+E22であり、かつ、波長依存性がない。クリッピングの付加がその積分の限界を変化させることになる。クリッピングが追加の項〜E12cosΔφを結果的にもたらすことが示されることが可能であり、前式中でΔφ=ΔkL=2πΔnL/λである。
【0063】
単一モードのファイバが本発明のキャッチ側の光学列で使用されることが可能な場合には、モードノイズは問題ではないだろう。しかし、マルチモードファイバが、典型的には、2つの理由から本発明のキャッチ側の光学列で使用されなければならない。第1に、測定体積(10メートルを超える測定経路を有する燃焼室)を横断した後に、最初には単一モード(ガウス空間分布)のビームが著しく品質低下させられる。したがって、この大きく歪んだビームを単一モードのファイバの中に結合する効率は非常に低いだろう。そのビームは、煤と飛散灰とによる散乱と掩蔽とを主な原因として、測定体積の中を貫いて通過する時に3−4桁は減衰させられるので、このことは受け入れ難い状況である。単一モードのファイバを使用することによって生じる減衰の増加が測定を妨げるだろう。第2に、火球中の屈折ビーム方向付け効果(refractive beam steering effect)がそのビームの位置と照準とが不安定であることの原因となる。この効果がある場合には、単一モードのファイバのコアに規則性をもって「命中する(hit)」ことは困難だろう。
【0064】
一方、マルチモードファイバのコアは、単一モードのファイバのターゲット横断面積の25倍以上のターゲット横断面積を有する。したがって、ビーム方向付け効果は著しく低減させられることが可能である。さらに、マルチモードファイバの中への結合の効率が光の空間モードとは無関係なので、火球の中を通過した後に得られる低いビーム品質は問題ではない。
【0065】
しかし、マルチモードファイバ列の中で生じるモード依存損失が設計上の大きな難題である。マルチモードファイバのコアから発散する光分布が、ランダムなスペックルパターンを示し、すなわち、そのファイバの互いに異なるモードの間の強め合う干渉と弱め合う干渉とによって明るい区域と暗い区域のランダムなパターンを示す。このスペックルパターンが時間と波長とに応じて全体的に一定不変である場合には、このスペックルパターンは問題を生じさせないだろう。しかし、上述したように、ビームがマルチモードのキャッチ側光学列内のどこかでクリッピングされる場合には、特に波長に応じたスペックルパターンの緩慢な変化が、モードノイズの原因となる可能性がある。このクリッピングを回避することは困難であり、このクリッピングを低減させることだけしかできない。したがって、モードノイズを低減させるための追加の方策が、そのシステムの検出感度を改善するために実現されなければならない。
【0066】
モードノイズを軽減させる方法が幾つかある。上記の式2から、モードノイズは、
1)モード依存の損失を減少させ、すなわち、クリッピングを減少させ、それによってcijを小さく保ち、
2)zを減少させ、それによって検査対象の吸収線よりも著しく大きいようにモデルノイズの期間を増大させ、
3)低分散ファイバを使用することによってΔnijを減少させ、
4)モードをスクランブルする(しかし、後述するように、すべてのモードスクランブル技術が同等に効果的であるというわけでない)、
ことによって減少させられることが可能である。
【0067】
本発明のキャッチ光学部品は、モーダルノイズを低減させるために上記のもののすべてを含むように設計され具体化されることが好ましい。これらの光学部品は、そのシステムの概ね完全なアラインメントを仮定して、あらゆるビームクリッピングが低レベルで生じるように設計される。マルチモードファイバの長さを最小限に保つように努力が払われなければならない。しかし、用途によっては、環境調整された区域内に制御電気機器を有するために、zが長くなければならない。Δnijの値は、極めて高品質の低分散マルチモードファイバを使用することによって、低減させられることが可能である。さらに、キャッチ側のマルチモードファイバの機械的な操作によってモードをスクランブルすることによって、非常に優れた結果を得ることも可能である。
【0068】
マルチモードファイバで示されるスペックルパターンは時間と波長とに応じて変化し、および、さらには、そのファイバの機械的な位置に応じて変化する。そのファイバを屈曲させることと、そのファイバを特定の仕方で操作することとが、スペックルパターンが変化することを生じさせることが可能である。この機械的操作が一定の時間期間にわたって連続的に行われる場合には、そのファイバから放射される光の空間分布が比較的均一なパターンに平均化する。本発明のスクランブラの最も重要な点は、不可避的な低レベルのビームクリッピングを被る時にモードノイズを発生させない均一な光ビームを平均的に生じさせるように、マルチモードファイバを機械的に操作することによって、モードノイズを低減させることである。
【0069】
特定のファイバ操作モードの中には、他よりもモードノイズを低減させる上でより効果的であるものがある。特に、ファイバ上の何らかの他のポイントを基準としてそのファイバの縦(z)軸を中心としてそのファイバを捻ることが、スペックルパターンの変化を生じさせる。特に、得られる支配的な変化は、z軸を中心としたスペックルパターンの回転である。ファイバが機械的に回転させられるのと同じ距離だけスペックルパターンが軸を中心として回転することがないということが重要である。二次的な効果が、実際の光分散がこの回転によって幾分か変化させられるということである。スペックルパターンの回転は、応力によって生じさせられるファイバ内の屈折率の変化を原因とはしないが、このファイバ内の屈折率の変化は、スペックル強度パターンにおけるわずかな変化の原因である可能性がある。むしろ、この回転は、導波路が捻り運動の形で操作されるので、光がその導波路に完全に追従することが不可能であることを原因とする。
【0070】
この観察は、キャッチ側の光学列のためのマルチモードファイバの使用によって引き起こされるモードノイズを実質的に除去するために使用されることが可能である。本発明の極めて好ましい実施形態が、マルチモードファイバが中を通して配置されて締付け固定される中空軸モータを使用する。ファイバの遠隔セクションがこのモータの軸位置に対して迅速に保持され、および、このモータが+360°の移動とその次に−360°の移動とによって反復的に掃引される。この運動の周波数は、伝送される信号の効果的な平均化を可能にするために、かつ、キャッチ側のモードノイズの影響を著しく低減させるために、10ヘルツ以上であることが好ましい。
【0071】
さらに、測定領域を通して伝送されるべきすべての波長に関して単一モードのビームを生じさせることが必要なので、本発明のピッチ側の光学列は、大きな設計上の難問をもたらす。単一モードのファイバがピッチ側光学列の全体において使用可能である場合には、モードノイズは問題ではないだろう。しかし、ファイバは、制限された波長窓の全体にわたって単一モードの導波路としてだけ動作するにすぎない。特定のファイバに関する短い波長カットオフを超えて、光が幾つかのより高次の空間モードにおいてファイバを通して送られることが可能である。光がそのファイバから出て行く時に、これらのより高次のモードは干渉し合ってスペックルパターンを生じさせる。このスペックルパターンは時間および波長に応じて変動する。その次に、わずかな量のビームクリッピングが測定におけるノイズを生じさせる。
【0072】
これとは反対に、伝送されることが必要な最短の波長に一致する単一モードのカットオフを有するファイバが選択される場合には、より長い波長が、ファイバに中に結合される時に大きな損失を被るだろうし、および、このファイバは、より長い波長に関して大きな曲げ損失を示すだろう。
【0073】
この問題は、本発明のファイバ結合型波長多重化TDLAS検出/制御装置においては、1.76ミクロンの長さの波長を760nmまたは670nmの短さの波長と多重化することが必要なので、深刻な問題である。こうした広範囲の波長に関して単一モード動作と高い結合効率と低い曲げ損失とを実現する既知の単一の市販のファイバは存在していない。将来的には、フォトニック結晶ファイバがこの難問に対する解決策をもたらすだろうが、フォトニック結晶ファイバ技術は現時点では初期段階の状態である。
【0074】
図8に示しているように、本発明は、単一モードカットオフよりも短い波長に関するより高次の空間モードが生じることを可能にしないマルチモードファイバ120の非常に短い伝送区間を使用することによって、670nmまたは760nmから1.67ミクロンの単一モードビーム中の光を多重化およびピッチング(pitching)するという問題を改善する。上記の式2を参照すると、マルチモードファイバの長さLが短い場合には、モードノイズが最小化されるだろう。この場合には、例えば、760nmの光が1280nmのカットオフ波長を有する単一モードファイバ(例えば、Corning SMF 28)の短い区間に結合されれば、その760nmの光は少なくとも数メートルにわたって単一モードのままである。したがって、ピッチ側のモードノイズに対する解決策は、その760nmの光が測定区域を通過して伝送されるように平行化される前に進むべき短い距離に対して、1280nmよりも長い波長に関しては単一モードであるが760nmに関してはマルチモードであり得るファイバの中に、その760nmの光を結合することである。
【0075】
このシステムの略図が図8と図2に示されている。最初に図8を参照すると、互いに広い間隔があいたレーザ発振周波数でレーザ発振する複数のレーザ源120が、個別の単一モード光ファイバ122A−122nに結合されている。1349nmから1670nmの波長でレーザ発振するダイオードレーザがマルチプレクサ124によって多重化される。マルチプレクサ124の出力が、大きな伝送損失なしにかつモードノイズの発生なしに1349nmから1670nmの範囲内の波長を有する光を伝送するのに適した寸法を有する、ピッチ側の光ファイバ126に結合される。これらの波長に適している光ファイバは Corning SMF 28 である。しかし、760nmの入力は、多重化されて SMF 28 光ファイバに結合される場合には、比較的短い距離にわたる伝送の後に、マルチモーダルになるだろう。したがって、760nmレーザの出力が、 SMF 750 のような1280nm未満の波長に対して単一モードであるファイバに結合される。入力ファイバ122n中を伝送されるレーザ光と、ピッチ側の光ファイバ126の中を伝送される多重化レーザ光とが、ピッチ光学部品128の付近で結合されることが可能である。カプラ130とピッチ光学部品128とが短い伝送光ファイバ132によって光学的に接続され、および、その伝送光ファイバ132が大きな損失なしに結合および多重化された波長のすべてを伝送するように選択されることが好ましい。図8に示されているシステムに適している伝送光ファイバが Corning SMF 28 だろう。光ファイバが比較的短ければ、伝送光ファイバ132に結合される760nmレーザ光はマルチモーダルな挙動を示さないだろう。図8に示されているシステムとファイバの場合には、伝送光ファイバが、大きなマルチモーダルノイズの発生を回避するために3メートル以下の長さに保たれなければならないということが判明している。
【0076】
類似のシステムが図2に示されており、このシステムでは、カプラ136が、760mmダイオードレーザからの入力と、より著しく長い波長を有するダイオードレーザからの多重化ビームからの入力とを受け取る。
【0077】
アラインメント調整システム
本発明の検出システムが、熱の効果と風と振動とからの運動をそれ自体が受けるボイラまたは他の過酷なプロセスチャンバの上にピッチ光学部品とキャッチ光学部品とがボルト固定されていても、そのピッチ光学部品とキャッチ光学部品とが最適のアラインメントを維持することを可能にする自動アラインメント調整機能を含むことが好ましい。本発明の極めて好ましい実施形態では、ピッチ光学部品とキャッチ光学部品の両方がフィードバック制御されたチップ/チルト段(tip/tilt stage)上に装着される。このピッチ光学部品とキャッチ光学部品の両方がチップ/チルト段の上に装着されるという必要条件は、センサが完全にファイバ結合されるという事実に起因する。したがって、多重化された光が、入力ファイバに直接取り付けられている平行化ピッチ光学部品によって測定領域をはさんで放射され、および、キャッチ光学部品が、典型的にはマルチモードファイバである出力ファイバの中に伝送光を直接結合させる。したがって、キャッチ光学部品は、ピッチ光学部品から放射されるビームと同一直線上にあるように方向付けられなければならない。このことは、集束された伝送ビームがマルチモードキャッチファイバの受容円錐(acceptance cone)内に到着するために必要である。
【0078】
(例えば、石炭炉内の火炎からの)強い背景光から伝送レーザ光を識別するために、検出器の視界と焦点とが、入力レーザ光と同一の方向および位置を有する光だけを検出するように制限されることが可能である。これは、適切な検出器に結合されている光ファイバの中に検出光を集束させることによって簡便に行われてよい。本発明の実施形態の基本的な光学システム設計が図9に概略的に示されている。図7のトランスミッタ136は、ピッチ光学部品138、すなわち、1つまたは複数の層の平行化レンズのようなコリメータと、これに関連した装着/アラインメント調整構造と、電子機器とから成る。同様に、図7のレシーバ140は、ピッチ光学部品に類似した構造またはピッチ光学部品から変更された構造のキャッチ光学部品142と、これに関連した装着/アラインメント調整電気機器とから成る。トランスミッタ/レシーバ対の効率と背景識別は、アラインメント公差に関連付けられている。最も高い効率と背景識別を得るためには、トランスミッタとレシーバの両方に関するアラインメント公差は厳格である。トランスミッタは、図10に示されているように、伝送される光の大部分がキャッチ光学部品142の開放口に当たるように十分なだけ正確に方向付けられなければならない。典型的なシステムでは、これは、典型的な10メートルの伝送距離において1cmの公差、すなわち、1ミリラジアンに相当する。(5メートルから30メートルのターゲット距離と、1cmから3cmの放射スポットサイズとの場合には、回折はわずかな寄与である)。
【0079】
図11に図解されているように、レシーバの角許容性(angular acceptance)が、キャッチ光学部品150の焦点距離によって割り算されたファイバコア148の直径によって決定される。より短い焦点距離が角許容性を増大させるが、これに対応してレシーバの開放口がより小さくなる。適切な開放口と角許容性とを有する妥協点が、焦点距離50mmのレンズと50マイクロメートルのコアのファイバとを使用することである。このことが、2cmの開放口と1ミリラジアンの角許容円錐(cone of angular acceptance)とを結果的にもたらす。
【0080】
したがって、好ましいアラインメント調整システムは、合計で4つの自由度のためにチップ(tip)とチルト(tilt)の両方において1ミリラジアンの公差で互いに向き合うように2つの光学部品を配置しなければならない。これらの4つの自由度は、一方の側の大まかなアラインメント調整と、その後に続く、他方の側の4次元アラインメント調整(チップ、チルト、および、xとyとにおける横方向位置)とによって実現されてよいが、しかし、このことは、大きな横方向の動きが許容可能であることを前提としている。ターゲット環境に対するアクセスポートが1インチほどの小ささである可能性があるので、これは潜在的に不確実な解決策である。この代わりに、両側における能動的な照準アラインメント調整が、制限された空間が横方向の動きに対して使用可能である時に適正なアラインメントを確保することが可能である。
【0081】
ピッチ光学部品とキャッチ光学部品の厳密なアラインメントが過酷で可変的な環境内において維持されなければならない。振動、風荷重、温度変化、および、他の構造的変動のすべてがミスアラインメントの原因となり、および、同様に、トランスミッタおよびレシーバの光学機械装置における機械的クリープもミスアラインメントの原因になるだろう。ミスアラインメントは、さらに、定期的な保守整備の後に、トランスミッタヘッドおよびレシーバヘッドがクリーニングのために取り外されて再び取り付けられる時に発生することが予想される。本発明の光学システムが、50ミリラジアンに近づく可能性があるシステムのミスアラインメントにも係わらず、その1ミリラジアンの光学アラインメントを維持することが可能であることが理想的である。アラインメント調整システムは、さらに、出力停止中に位置を保持し、全信号損失を許容し、および、アラインメントを失うことなくオフにされるべきである。最後に、好ましくは、このシステム自体が、露出された工業的環境において長期間にわたって連続的に機能するのに十分なだけ堅牢でなければならない。
【0082】
図12は、アラインメント調整可能なピッチ光学部品またはキャッチ光学部品の実施形態を概略的に示す。トランスミッタとレシーバは設計が類似している。トランスミッタは、光ファイバから出てくる光から平行化レーザ光ビームを発生させ、および、レシーバは、レーザ光の平行化ビームを捕捉してファイバの中に集束する。(この光学システムを通して光を逆方向に送ることが可能であり、および、トランスミッタおよびレシーバの素子の大部分が互いに同一である。)トランスミッタ光学部品とレシーバ光学部品は、環境からこれらの光学部品を保護するためにNEMA−4容器の中に装着されてよい。以下の説明はトランスミッタモジュールとレシーバモジュールのどちらにも当てはまる。
【0083】
図10に示すように、前平行化ファイバ/レンズ対152が、光学軸に対して垂直なチップ/チルトを可能にするように配置されている運動チルト段(kinematic tilt stage)154に取り付けられている。2つの直結駆動ステップモータ156がチップ/チルトを実現する。これらのモータは、イーサネット(登録商標)または類似の接続を介してコンピュータによって制御される。この接続は、電気的な干渉を回避するために光ファイバを経由してよい。ステップモータ156は、電力が取り除かれる時にそのステップモータの状態を保持し、したがって、光学アラインメントは電力供給停止によって影響されることはない。
【0084】
定期的または連続的なシステムアラインメント調整の最中に、制御コンピュータが、伝送されて検出されるレーザ光の量を監視する。個別のアラインメント波長が、図3の可視光供給源64のような連続的または定期的なアラインメント調整処置のために提供されることが可能であることが好ましい。何らかのミスアラインメントがこの検出された信号を減少させるだろう。自動アラインメント調整モードでは、コンピュータが検出された信号を測定して、一方向に小さな量だけ動くように2つのステップモータの一方のモータを制御し、その次に、その検出信号を再測定する。その検出信号が増大する場合には、コンピュータが、その信号が増大しなくなるまで、ステップモータを同一方向に再び動くように制御する。その次に、コンピュータは、検出信号を最大化するために他方のステップモータが直交軸に沿って動くように制御し、その次に、他方のセンサヘッドに関してこのプロセス全体を繰り返す。検出信号が増大するのに応じて、自動アラインメント調整プロセスが数十年間の信号サイズにわたって進行するように、検出器の増幅器利得が自動的に減少する。自動アラインメント調整システムは、ナノワットからミリワットの検出出力と共に機能することが可能である。
【0085】
この「ヒルクライミング(hill-climbing)」アルゴリズムは、大きなノイズの存在下において、信号のほぼ完全な損失の後にそのシステムをアラインメント調整することが可能であり、および、他のアラインメント調整システムが制御電子機器の限界までのミスアラインメントを発生させる原因になる可能性があるビームの遮断と、電力供給停止と、機械的衝撃と、他の外乱とに対して耐久性がある。自動アラインメント調整に必要とされるものは、位置空間内のグローバル最大を有する有限信号だけである。個々の設置条件に応じて、自動アラインメント調整が、例えば1時間毎のような設定された時間間隔で定期的に行われてもよく、または、数日の運転日のような長期間の後に必要に応じて行われてもよい。制御コンピュータは、事前設定された閾値よりも信号が低下する時にだけ、検出信号を監視して自動アラインメント調整することができる。
【0086】
トランスミッタモジュールとレシーバモジュールは、工業用途のために有用な幾つかの他の特徴を含んでもよい。採用随意のセンサが、これらのモジュールがクリーニングまたは保守整備のために所定位置から移動させられてすべてのレーザが安全のためにオフにされる時点を検出してもよい。図10に示されているように、電気的接続および光学的接続のすべてが保守整備作業によって妨害されないように、こうした接続のすべてがヒンジ158を経由して行われてもよい。容器160が高感度の内部光学部品を汚染物質から保護し、および、ホーサブル(hosable)であることが好ましい。ヒンジの動作範囲は、操作員の負傷を回避するために制限されてよい。各センサヘッドが自動アラインメント調整中に10ワット未満の入力電力しか必要とせず、および、自動アラインメント調整が完了した後には0.1ワット未満の入力電力しか必要としないことが好ましい。
【0087】
代案の設計が、異なる用途に適していることが可能である。NEMA−4容器等級が必要とされない場合には、サイズと重量との著しい削減が可能である。異なる伝送距離が、異なる焦点距離と開放口の光学部品が捕捉された信号を最適化することを可能にする。ファイバ/レンズアセンブリ全体を動かすことによって照準を制御するための上記のステップモータ駆動チルト段に対する代案として、ファイバが、より著しく小さい質量を動かしながら同一の照準の変化を生じさせるために、レンズに対して相対的に横方向に移動させられてもよい。さらに、ピエゾ電気素子またはボイスコイルのような様々な電気機械装置が、自動アラインメント調整システムの速度を増大させるために使用されてもよい。
【0088】
上述のアラインメント調整の問題に加えて、ピッチ光学部品とキャッチ光学部品との特定の選択が、次の通りの幾つかの形で、本発明のTDLAS検出システムの性能に影響を与える可能性がある。
(1)検出器に結合された信号強度がピッチ/キャッチ効率に依存する。
(2)検出器に結合された不要な背景放射の量がキャッチ光学部品のetendueに依存する。
(3)760nmにおけるfew−モードノイズ(few-mode noise)の効果が、ピッチ/キャッチ構成に対して非常に敏感である。
(4)ノイズ特性(小さいが、より安定しているか、または、より大きいが、激しい変動を伴う)が、発射されるビームのサイズに依存すると予想される。より大きい発射ビームが好ましい。
(5)システムのミスアラインメント感度が、ピッチ焦点距離およびキャッチ焦点距離と、これに関連したファイバサイズとの一次関数である。
【0089】
典型的な石炭燃焼発電所の燃焼区域の非常に単純な状況が、光学成分選択分析のために採用されることが可能である。この分析の目的は、火球の詳細に関する可能な限り少ない知識だけによって、火球の中を通過するレーザビームに対する一般的な影響に焦点を当てることである。火球を横断することは、光ビームに対する次の3つの影響を有する。
(1)すすの微粒子が光の一部分を吸収する。
(2)大きな角度の屈折または拡散が、光の一部分がキャッチ光学部品に到達することを妨げる。
(3)光が多数の小さい温度勾配を通過し、および、したがって、ランダムに方向付けられるが、依然としてキャッチ光学部品に到達する。
【0090】
この第3の光のカテゴリだけが収集のために使用可能である。典型的な光線が火球を横断する最中に複数の屈折事象を受けると仮定すると、その光線の方向はランダムな経路を辿り、および、その初期方向からずれる可能性がある。光線が、類似しているが同一ではないずれを被る他の光線で構成されているより大きいビームの一部分である場合には、そのビームに対する火球の影響が、次の4つの異なるタイプの変化を引き起こす。
(1)ビーム全体の全方向における変化、
(2)ビームの中心軌跡の位置の変化、
(3)ビームサイズの変化、
(4)ビームの開き/波面の平面度の変化。
【0091】
これらの4つのタイプの変化は、収集効率に悪影響を与えるビームに対する大きな効果の原因となる物理的現象の如何に関わらず、これらの大きな効果のすべてを含むパラメータである。
【0092】
火球中での光線の方向がランダムなずれを被る場合には、この光線の方向は、標準的な拡散依存性にしたがって初期の(通常は最適の)方向から拡散するだろう。しかし、当初の軸からの光線の距離はその以前の方向に依存する。したがって、火球の詳細によって決定される特定の量のrmsビーム方向付けの場合に、正比例した量のビームオフセットが予想されることが可能である。火球を横断するレーザビームがその当初のサイズの数倍に拡大される場合には、最終的なビームのサイズと最終的なビームの開きとの間に同一の関係が当てはまる。
【0093】
キャッチ光学部品上に入射する光の角度と位置とビームサイズとが分かれば、光収集効率を推定することが可能である。この推定は、単純な光線光学部品と、フラットトップ強度(flat-top intensity)と、単純な推定、ファイバ開口数NAの範囲内でありかつファイバのコアに当たるように照準されているキャッチ光学部品上に入射する光の量を仮定する。この最終結果がオフセット角度空間(offset-angle space)における「丘(hill)」である。最適のアラインメントを仮定すると、収集効率はその丘の頂上に近いが、ビームの角度と位置とが変動するのに応じて急速にその丘を越えておよびその丘の付近で変化するだろう。この収集効率の丘が可能な限り高くかつ広大であることが好ましい。この丘に関する次の幾つかの特徴が注目に値する。
(1)(ゼロのビームオフセットとチルトの場合の)収集効率の丘のピーク高さが、キャッチ光学部品が入射ビーム全体を捕捉するのに十分な大きさではない場合に、キャッチ光学部品のetendue(焦点距離×NA)の2乗に比例しており、このポイントにおいてはキャッチ効率が100%である。
(2)丘が長円であり、および、キャッチ焦点距離を変化させることが、一方の軸をより長くし、かつ、他方の軸をより短くする。
(3)ビームのジッタを原因とする光収集効率の変動がノイズ発生源である。
【0094】
上述の分析方法に基づいて、異なるピッチ/キャッチ組合せの信号対ノイズ比が比較できる。乗法ノイズが同一であると仮定すると、火球暗騒音または検出器ノイズが優勢である場合にだけ、異なるキャッチ光学部品がその最終的な性能において互いに異なる。
【0095】
本発明の目的が、本明細書に開示されている実施形態によって完全に実現されている。当業者は、本発明の本質的な機能から逸脱することなしに、本発明の様々な側面が、異なる実施形態によって実現できるということを理解するだろう。こうした特定の実施形態は例示のためのものであって、後述の特許請求項に記載の本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は本発明の検出装置の略図である。
【図2】図2は、燃焼室の付近の構成要素に光学的に結合されている遠隔配置された構成要素を特徴とする、本発明の検出装置の略図である。
【図3】図3は、複数の検出格子を特徴とする本発明の一側面の説明図である。
【図4】図4は、従来技術の単一ビームガス検出装置の説明図である。
【図5】図5は、従来技術の複数ビームガス検出装置の説明図である。
【図6】図6は、本発明におけるエシェル格子の使用の説明図である。
【図7】図7は、本発明のエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置の説明図である。
【図8】図8は、モードノイズを最小化するのに適しているピッチ側光学システムの説明図である。
【図9】図9は、ファイバ結合ガス検出装置の説明図である。
【図10】図10は、ピッチ光学部品とキャッチ光学部品との間で損失される光の説明図である。
【図11】図11は、ファイバ光学システムの角許容円錐の説明図である。
【図12】図12は、本発明のアラインメント調整機構の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置であって、
選択されたレーザ発振周波数を各々が有する2つ以上のダイオードレーザと、
前記ダイオードレーザの2つ以上に光学結合されているマルチプレクサであって、多重化レーザ出力を出力し、かつ、前記多重化レーザ出力はピッチ側光ファイバの遠位端部に光学結合されているマルチプレクサと、
前記ピッチ側光ファイバの遠位端部に光学結合されているピッチ光学部品であって、プロセスチャンバに作動的に関連付けられており、および、前記プロセスチャンバの中を通して前記多重化レーザ出力を放射するように方向配置されているピッチ光学部品と、
前記プロセスチャンバの中を通して放射された前記多重化レーザ出力を受け取るために前記ピッチ光学部品に光学的に連絡している、前記プロセスチャンバに作動的に関連付けられているキャッチ光学部品と、
前記キャッチ光学部品に近位端部において光学結合されているキャッチ側光ファイバと、
前記キャッチ側光ファイバの遠位端部に光学結合されているデマルチプレクサであって、前記選択されたレーザ発振周波数の各々のレーザ光を逆多重化するデマルチプレクサと、
前記デマルチプレクサに光学結合されている検出器であって、前記選択されたレーザ発振周波数の1つに対する感度を有する検出器と、
を含む検出装置。
【請求項2】
前記ダイオードレーザの2つ以上の各々を前記マルチプレクサに対して光学結合する入力光ファイバと、
前記デマルチプレクサの出力を前記検出器に結合する出力光ファイバと、
をさらに含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記ピッチ側光ファイバは単一モードファイバである、請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記キャッチ側光ファイバはマルチモードファイバである、請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記ピッチ側光ファイバの前記遠位端部に光学結合されているピッチ側光路選択装置であって、さらに2つ以上のピッチ光学部品に光学結合されているピッチ側光路選択装置と、
前記キャッチ側光ファイバの前記近位端部に光学結合されているキャッチ側光路選択装置であって、さらに2つ以上のキャッチ光学部品に光学結合されているキャッチ側光路選択装置と、
をさらに含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項6】
前記ピッチ側光路選択装置は、光スイッチと光スプリッタの一方である、請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記検出器から入力を受け取りかつ燃焼パラメータを測定するデータ処理システムをさらに含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項8】
前記データ処理システムに作動的に関連付けられている、前記燃焼パラメータに影響を与える手段をさらに含む、請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記マルチプレクサと前記デマルチプレクサの一方はエシェル格子を含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項10】
前記マルチプレクサと前記デマルチプレクサの一方は、さらに、
単一の光学信号として多重化された互いに異なる波長の複数の光チャンネルを伝播させる多重光導波路と、
選択された焦点距離で前記多重光導波路に光学結合されている平行化/集束光学部品と、
前記平行化/集束光学部品に光学結合されているエシェル格子であって、複数の波長範囲の同時の逆多重化/多重化のために設けられている溝間隔とブレーズ角とを含み、および、前記波長範囲の各々は複数の中心波長の付近に集中させられており、かつ、前記中心波長の各々はこのエシェル格子動作の選択された次数に対応するエシェル格子と、
を含む、請求項9に記載の検出装置。
【請求項11】
前記個別の波長範囲の複数の光チャンネルは、670nm以上の波長から5200nm以下の波長まで及ぶ、請求項10に記載の検出装置。
【請求項12】
前記エシェル格子動作の前記選択された次数は2次から14次である、請求項10に記載の検出装置。
【請求項13】
前記エシェル格子の前記溝間隔は約171.4線/mmであり、および、前記エシェル格子の前記ブレーズ角は約52.75度である、請求項10に記載の検出装置。
【請求項14】
前記マルチプレクサは、すべてよりは少ない数の前記ダイオードレーザに光学結合されており、かつ、前記ピッチ側光ファイバの前記遠位端部と非多重化入力ファイバの遠位端部とに光学結合されている光カプラをさらに含み、前記光カプラは、前記ピッチ側光ファイバからの多重化レーザ光と前記非多重化入力光ファイバからの非多重化レーザ光とを光学結合し、および、前記光カプラは前記ピッチ光学部品に光学的に連絡している、請求項2に記載の検出装置。
【請求項15】
前記光カプラは、選択された長さの伝送光ファイバを経由して前記ピッチ光学部品に光学的に連絡し、および、前記伝送光ファイバの前記長さは、選択されたレベルよりも低くモードノイズを維持するように選択される、請求項14に記載の検出装置。
【請求項16】
前記多重化レーザ光の波長は1240nmから5200nmの範囲内であり、および、非多重化レーザ光の波長は1240nm未満である、請求項15に記載の検出装置。
【請求項17】
前記光カプラは、選択された長さの伝送光ファイバを経由して前記ピッチ光学部品に光学的に連絡し、および、前記伝送光ファイバの前記長さは、前記伝送光ファイバを経由した伝送中に非多重化レーザ光がマルチモーダルにならないように選択される、請求項14に記載の検出装置。
【請求項18】
前記非多重化入力光ファイバはSM 750ファイバであり、および、前記ピッチ側光ファイバと前記伝送光ファイバはSMF 28光ファイバである、請求項17に記載の検出装置。
【請求項19】
前記伝送光ファイバの長さは3メートル以下である、請求項18に記載の検出装置。
【請求項20】
キャッチ側のモードノイズを最小化するために前記キャッチ側のマルチモード光ファイバの一区間を機械的に操作するための手段をさらに含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項21】
前記キャッチ側のマルチモード光ファイバは前記ファイバ長さに対して平行な縦軸を有し、および、前記機械的操作は、前記縦軸を中心として前記キャッチ側のマルチモード光ファイバを捻ることを含む、請求項20に記載の検出装置。
【請求項22】
前記キャッチ側のマルチモード光ファイバの一区間を機械的に操作する前記手段は、前記ファイバの前記区間がモータの軸位置に対して相対的に取り付けられるように前記キャッチ側のマルチモード光ファイバに作動的に関連付けられているモータを含み、および、前記モータの軸は+360度から−360度の動作によって反復的に掃引される、請求項21に記載の検出装置。
【請求項23】
前記モータ軸の掃引の周波数が、前記伝送信号の有効な平行化を可能にし、かつ、それによってキャッチ側のモードノイズの影響を低減させるのに十分である、請求項22に記載の検出装置。
【請求項24】
前記モータ軸の掃引の前記周波数は10ヘルツ以上である、請求項23に記載の検出装置。
【請求項25】
前記キャッチ側の光ファイバに結合されているレーザ光の量を増大させるために、前記多重化レーザ出力の放射の方向に対する前記キャッチ光学部品のアラインメント調整を可能にする、前記キャッチ光学部品に作動的に関連付けられているキャッチ側のアラインメント調整機構をさらに含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項26】
前記キャッチ側のアラインメント調整機構は、第1および第2の直交軸に沿って前記キャッチ光学部品をチルトさせる手段を含み、直交の、前記第1および第2の軸は前記多重化レーザ出力の放射方向に対して実質的に直交している、請求項25に記載の検出装置。
【請求項27】
前記キャッチ光学部品をチルトする前記手段はステップモータを含む、請求項26に記載の検出装置。
【請求項28】
データ処理システムが、さらに、前記キャッチ側のアラインメント調整機構に作動的に関連付けられており、および、前記データ処理システムは、検出器に結合されている多重化レーザ出力の強度に関係している前記キャッチ側光ファイバに光学結合されている前記検出器からのデータを受け取り、および、さらに、前記検出器に結合されている前記多重化レーザ出力の強度を最大化するように、前記キャッチ側のアラインメント調整機構が前記キャッチ光学部品をアラインメント調整することを引き起こす、請求項27に記載の検出装置。
【請求項29】
前記ピッチ光学部品のアラインメント調整と前記多重化レーザ出力の放射方向の調整とを可能にするピッチ側のアラインメント調整機構をさらに含む、請求項28に記載の検出装置。
【請求項30】
前記ピッチ側のアラインメント調整機構は、第1および第2の直交軸に沿って前記ピッチ光学部品をチルトさせる手段を含み、および、前記第1および第2の軸は前記多重化レーザ出力の放射の方向に対して実質的に直交している、請求項29に記載の検出装置。
【請求項31】
前記ピッチ光学部品をチルトする前記手段はステップモータを含む、請求項30に記載の検出装置。
【請求項32】
前記データ処理システムは、さらに、前記キャッチ光学部品によって受け取られかつ前記検出器に結合される前記多重化レーザ出力の強度を最大化するために、前記ピッチ側アラインメント調整機構が前記多重化レーザ出力の方向をアラインメント調整することを引き起こす、請求項31に記載の検出装置。
【請求項33】
燃焼プロセスを検出する方法であって、
複数の選択されたレーザ発振周波数でレーザ光を供給することと、
前記レーザ光を多重化することと、
ピッチ側の光ファイバの中の前記多重化レーザ光をプロセス場所に伝送することと、
前記多重化レーザ光を燃焼プロセスの中を通して放射することと、
前記多重化レーザ光をキャッチ側の光ファイバの中に受け取ることと、
前記多重化レーザ光を逆多重化することと、
逆多重化レーザ光の周波数を検出器に伝送することと、
を含む方法。
【請求項34】
前記検出器の出力から燃焼パラメータを求めることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記求められた燃焼パラメータにしたがって前記燃焼プロセスを制御することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
エシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置であって、
選択されたレーザ発振周波数を有する2つ以上のダイオードレーザと、
前記ダイオードレーザに光学結合されている入力エシェル格子であって、前記選択されたレーザ発振周波数のレーザ光を多重化することを可能にする選択されたライン間隔と選択されたブレーズ角とを有する入力エシェル格子と、
前記エシェル格子からの多重化レーザ光を受け取るために前記エシェル格子に光学結合されている近位端部を有する光ファイバと、
前記光ファイバの遠位端部に光学結合されているピッチ光学部品であって、プロセスチャンバに作動的に関連付けられており、かつ、前記プロセスチャンバの中を通してレーザ光を放射するように方向配置されているピッチ光学部品と、
前記ピッチ光学部品に光学的に連絡している出力エシェル格子であって、前記選択されたレーザ発振周波数のレーザ光を逆多重化することを可能にする選択されたライン間隔と選択されたブレーズ角とを有する出力エシェル格子と、
対応する逆多重化レーザ発振周波数に光学結合されている、前記選択されたレーザ発振周波数の1つに対して感度を有する検出器と、
を備えるエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項37】
前記ピッチ光学部品に光学的に連絡しておりかつ前記出力エシェル格子に光学的に連絡しているキャッチ光学部品をさらに備える、請求項36に記載のエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項38】
2つ以上の平行化光学部品をさらに備え、および、前記平行化光学部品の1つが前記出力エシェル格子と対応する検出器との間に光学結合されている、請求項36に記載のエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項39】
前記入力エシェル格子と前記出力エシェル格子との各々は、さらに、複数の波長範囲の同時(逆)多重化を可能にする溝間隔とブレーズ角とを備え、および、前記波長範囲の各々は複数の中心波長の付近に集中させられており、かつ、前記中心波長の各々はエシェル格子動作の選択された次数に対応する、請求項36に記載のエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項40】
前記複数のレーザ発振周波数の前記波長は、670nm以上の波長から5200nm以下の波長に及ぶ、請求項39に記載のエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項41】
前記エシェル格子動作の選択された次数は2次から14次である、請求項39に記載のエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項42】
前記溝間隔は約171.4線/mmであり、および、前記ブレーズ角は約52.75度である、請求項39に記載のエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項43】
前記入力エシェル格子と前記出力エシェル格子は単一の格子ではない、請求項36に記載のエシェル格子に基づくダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項44】
燃焼プロセスを検出する方法であって、
複数の選択された周波数のレーザ光を供給することと、
エシェル格子によって前記レーザ光を多重化することと、
前記多重化されたレーザ光を燃焼室の中を通して放射することと、
前記多重化レーザ光をエシェル格子によって逆多重化することと、
逆多重化されたレーザ光の周波数を検出器に伝送することと、
を含む方法。
【請求項45】
前記検出器の出力から燃焼パラメータを求めることをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記求められた燃焼パラメータにしたがって前記燃焼プロセスを制御することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ダイオードレーザ分光測定で使用するためのピッチ側光学システムであって、
選択されたレーザ発振周波数を有する2つ以上のダイオードレーザであって、別個の入力光ファイバの近位端部に各々が結合されているダイオードレーザと、
すべてよりは少ない数の前記入力光ファイバの遠位端部に光学結合されているマルチプレクサであって、前記すべてよりは少ない数の入力光ファイバからの多重化レーザ光をピッチ側の光ファイバの近位端部に光学結合するマルチプレクサと、
前記ピッチ側光ファイバの遠位端部と非多重化入力光ファイバの遠位端部とに光学結合されているカプラであって、前記ピッチ側光ファイバからの多重化レーザ光と前記非多重化入力光ファイバからの非多重化レーザ光とを伝送光ファイバの近位端部に光学結合するカプラと、
前記伝送光ファイバの遠位端部に光学結合されているピッチ光学部品と
を備えるピッチ側光学システム。
【請求項48】
前記入力光ファイバと、前記ピッチ側光ファイバと、前記伝送光ファイバは、単一モードの光ファイバである、請求項47に記載のピッチ側光学システム。
【請求項49】
前記伝送光ファイバの長さは、モードノイズを選択されたレベルより低く維持するように選択される、請求項47に記載のピッチ側光学システム。
【請求項50】
前記多重化レーザ光の波長は1240nmから5200nmの範囲内であり、および、前記非多重化レーザ光の波長は1240nm未満である、請求項49に記載のピッチ側光学システム。
【請求項51】
前記伝送光ファイバの長さは、前記非多重化レーザ光が前記伝送光ファイバを経由した伝送中にマルチモーダルにならないように選択される、請求項50に記載のピッチ側光学システム。
【請求項52】
前記非多重化入力光ファイバはSM 750ファイバであり、および、前記多重光ファイバと前記伝送光ファイバはSMF 28光ファイバである、請求項51に記載のピッチ側光学システム。
【請求項53】
前記伝送光ファイバの長さは3メートル以下である、請求項52に記載のピッチ側光学システム。
【請求項54】
ダイオードレーザ分光測定で使用するキャッチ側の光学システムであって、
キャッチ側のマルチモード光ファイバの近位端部に光学結合されているキャッチ光学部品と、
キャッチ側のモードノイズを低減させるために前記キャッチ側のマルチモード光ファイバの一区間を機械的に操作する手段と、
を備えるキャッチ側光学システム。
【請求項55】
前記キャッチ側のマルチモード光ファイバは前記ファイバ長さに対して平行な縦軸を有し、および、前記機械的操作は、前記縦軸を中心として前記キャッチ側のマルチモード光ファイバを捻ることを含む、請求項54に記載のキャッチ側光学システム。
【請求項56】
前記キャッチ側のマルチモード光ファイバの前記区間を機械的に操作する手段は、前記ファイバの前記区間がモータの軸位置に対して相対的に取り付けられるように前記キャッチ側のマルチモード光ファイバに作動的に関連付けられているモータを備え、および、前記モータの軸は+360度から−360度の動作によって反復的に掃引される、請求項55に記載のキャッチ側光学システム。
【請求項57】
前記モータ軸の掃引の周波数が、前記伝送信号の有効な平均化を可能にし、かつ、それによってキャッチ側のモードノイズの影響を低減させる、請求項56に記載のキャッチ側光学システム。
【請求項58】
前記掃引軸の周波数は10ヘルツ以上である、請求項57に記載のキャッチ側光学システム。
【請求項59】
ダイオードレーザ分光ガス検出装置であって、
選択されたレーザ発振周波数を有するダイオードレーザと、
前記ダイオードレーザに光学結合されているピッチ光学部品であって、プロセスチャンバに作動的に関連付けられており、かつ、前記プロセスチャンバの中を通して放射ビームに沿ってレーザ光を放射するように方向配置されているピッチ光学部品と、
前記プロセスチャンバの中を通して放射される前記レーザ光を受け取るために前記ピッチ光学部品に光学的に連絡しているキャッチ光学部品と、
前記キャッチ光学部品に光学結合されている光ファイバと、
前記ピッチ光学部品から前記キャッチ光学部品によって受け取られかつ前記光ファイバに結合されるレーザ光の量を最大化するように、前記放射ビームに対する前記キャッチ光学部品のアラインメント調整を可能にする、前記キャッチ光学部品に作動的に関連付けられているキャッチ側のアラインメント調整機構と、
前記光ファイバに光学結合されている、前記選択されたレーザ発振周波数に対して感度を有する検出器と、
を備えるダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項60】
前記キャッチ側のアラインメント調整機構は、第1および第2の直交軸に沿って前記キャッチ光学部品をチルトさせる手段を含み、および、前記第1および第2の軸は前記放射ビームに対して実質的に直交している、請求項59に記載のダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項61】
前記キャッチ光学部品をチルトする手段はステップモータを含む、請求項60に記載のダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項62】
前記ピッチ光学部品によって放射されて前記キャッチ光学部品によって受け取られるアラインメント光ビームと、
前記検出器と前記キャッチ側アラインメント調整機構とに作動的に関連付けられているデータ処理システムであって、前記検出器に結合されている前記アラインメントビームの強度に関係している前記検出器からのデータを受け取り、および、さらに、前記検出器に結合されている前記アラインメントビームの強度を最大化するために、前記キャッチ側アラインメント調整機構が前記キャッチ側光学部品を前記放射ビームに対してアラインメント調整することを引き起こすデータ処理システムと、
をさらに備える、請求項59に記載のダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項63】
前記ピッチ光学部品のアラインメント調整と前記放射ビームの方向の調整とを可能にするピッチ側アラインメント調整機構をさらに備える、請求項59に記載のダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項64】
前記ピッチ側アラインメント調整機構は、第1および第2の直交軸に沿って前記キャッチ光学部品をチルトさせる手段を含み、および、前記第1および第2の軸は前記放射ビームに対して実質的に直交している、請求項63に記載のダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項65】
前記ピッチ光学部品をチルトさせる前記手段はステップモータを含む、請求項64に記載のダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項66】
前記データ処理システムは、さらに、前記キャッチ光学部品によって受け取られかつ前記検出器に結合される前記アラインメントビームの強度を最大化するために、前記ピッチ側アラインメント調整機構が前記放射ビームの方向をアラインメント調整することを引き起こす、請求項65に記載のダイオードレーザ分光ガス検出装置。
【請求項67】
ダイオードレーザ分光ガス検出光学システムをアラインメント調整する方法であって、
アラインメント光ビームを供給することと、
プロセスチャンバの中を通して前記アラインメントビームを放射することと、
前記プロセスチャンバに作動的に関連付けられているキャッチ光学部品によって前記アラインメントビームを受け取ることと、
前記キャッチ光学部品からの前記アラインメントビームを光ファイバを経由して検出器に光学結合させることと、
前記キャッチ光学部品から前記光ファイバに結合された前記アラインメントビームの強度を測定することと、
前記キャッチ光学部品から前記光ファイバに結合された前記アラインメントビームの強度を最大化するように前記キャッチ光学部品をアラインメント調整することと、
を含む、ダイオードレーザ分光ガス検出光学システムをアラインメント調整する方法。
【請求項68】
前記アラインメント調整段階は、第1および第2の直交軸に沿って前記キャッチ光学部品をチルトさせることを含む請求項67に記載のダイオードレーザ分光ガス検出光学システムをアラインメント調整する方法。
【請求項69】
前記アラインメントビームはピッチ光学部品によって放射され、および、前記キャッチ光学部品から光学部品前記光ファイバに結合された前記アラインメントビームの強度を最大化するために前記ピッチ光学部品をアラインメント調整することをさらに含む、請求項67に記載のダイオードレーザ分光ガス検出光学システムをアラインメント調整する方法。
【請求項70】
前記ピッチ光学部品をアラインメント調整する前記段階は、第1および第2の直交軸に沿って前記ピッチ光学部品をチルトさせることを含む、請求項69に記載のダイオードレーザ分光ガス検出光学システムをアラインメント調整する方法。
【請求項71】
前記アラインメントビームの強度を最大化するために前記ピッチ光学部品と前記キャッチ光学部品とを逐次的にチルトさせることをさらに含む、請求項70に記載のダイオードレーザ分光ガス検出光学システムをアラインメント調整する方法。
【請求項72】
波長可変ダイオードレーザ吸収分光法を使用して燃焼プロセスにおけるNOを検出する方法であって、
約670nmの波長のレーザ光を供給することと、
ピッチ側光学部品の中の前記レーザ光をガスプロセス場所に伝送することと、
ガスプロセスの中を通して前記レーザ光を放射することと、
キャッチ側の光ファイバ内に前記レーザ光を受け取ることと、
前記キャッチ側の光ファイバ内の前記レーザ光を検出器に伝送することと、
前記検出器に伝送された前記レーザ光に関係している前記検出器からの信号を生成することと、
前記信号からNO2濃度を計算することと、
前記NO2濃度からNO濃度を求めることと、
を含む方法。
【請求項73】
約670nmの波長の前記レーザ光は、
ダイオードレーザによって約1340nmの波長を持つレーザ光を生じさせることと、
疑似位相整合周期分極導波路内で前記レーザ光を周波数2倍化することと、
によって提供される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記疑似位相整合周期分極導波路は疑似位相整合周期分極ニオブ酸リチウム導波路である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
NOxの選択触媒還元または無触媒還元においてアンモニア注入を最適化する方法であって、
NOx搬送ガスシステム内にアンモニア注入器を設けることと、
NOx搬送ガス流の一部分のアンモニア濃度またはNOx濃度を求めるために、前記アンモニア注入器の下流において前記NOx搬送ガス流の一部分を「その場で」多重化光ビームによって標本抽出することと、
を含む方法。
【請求項76】
アンモニア注入器の2次元格子が前記NOx搬送ガス流内に設けられ、および、前記標本抽出段階は、前記NOx搬送ガス流の一部分の2次元格子を複数の多重化光ビームによって同時に標本抽出することをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記NOx搬送ガス流の標本抽出された部分において、選択されたレベルにNOx濃度を減少させるために、必要に応じて前記アンモニア注入器の放出量を調整することをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記多重化光ビームの選択された波長の吸収を測定することと、
前記測定された吸収から前記NOx搬送ガス流の前記一部分の温度を測定することと、
をさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
NOx含有ガス流中のNOxの選択触媒還元または無触媒還元のための装置であって、
前記NOx含有ガス流中に存在するように構成されているアンモニア注入器と、
多重化光ビームによって前記アンモニア注入器の下流において前記NOx含有ガス流の一部分を標本抽出するように構成されているレーザ分光装置と、
を備える装置。
【請求項80】
前記NOx含有ガス流中に存在するように構成されているアンモニア注入器の2次元格子と、
多重化光ビームによって前記アンモニア注入器の下流において前記NOx搬送ガスの一部分の2次元格子を標本抽出するように構成されているレーザ分光装置と、
をさらに含む、請求項79に記載の装置。
【請求項81】
前記レーザ分光装置は、
選択されたレーザ発振周波数を各々が有する2つ以上のダイオードレーザと、
前記ダイオードレーザの2つ以上に光学結合されているマルチプレクサであって、多重化レーザ出力を出力し、かつ、前記多重化レーザ出力はピッチ側光ファイバの近位端部に光学結合されているマルチプレクサと、
前記ピッチ側光ファイバの遠位端部に光学結合されているピッチ光学部品であって、プロセスチャンバに作動的に関連付けられており、および、前記プロセスチャンバの中を通して前記多重化レーザ出力を放射するように方向配置されているピッチ光学部品と、
前記プロセスチャンバの中を通して放射される前記多重化レーザ出力を受け取るために前記ピッチ光学部品に光学的に連絡している、前記プロセスチャンバに作動的に関連付けられているキャッチ光学部品と、
前記キャッチ光学部品に近位端部において光学結合されているキャッチ側光ファイバと、
前記キャッチ側光ファイバの遠位端部に光学結合されているデマルチプレクサであって、前記選択されたレーザ発振周波数の各々のレーザ光を逆多重化するデマルチプレクサと、
前記デマルチプレクサに光学結合されている検出器であって、前記選択されたレーザ発振周波数の1つに対する感度を有する検出器と、
を備える、請求項79に記載の装置。
【請求項82】
前記ピッチ側光ファイバの前記遠位端部に光学結合されている光スプリッタであって、2つ以上のピッチ光学部品に結合されている光スプリッタと、
各ピッチ光学部品に光学的に連絡しているキャッチ光学部品と、
をさらに備える、請求項81に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−522938(P2006−522938A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509589(P2006−509589)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/010048
【国際公開番号】WO2004/090496
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(505365415)ゾロ テクノロジーズ,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】