説明

物体に暫定的に印を付ける方法、装置及びシステム

本発明は数分乃至数時間の限定された寿命の消去しうる暫定的な印を物体 (O)に付与する方法、装置及びシステムに関する。本発明はまた短寿命の放射性同位体を含むコーティング組成物と短寿命の放射性同位体を暫定的な印として用いることにに関する。この暫定的な印はより長寿命の前躯体核からin situで発生させた低濃度の短寿命の核種を含むコーティング組成物 (3) により該物体 (O) へ付与される。この印を付ける装置は核種発生器 (1)、in situで放射性の印を付けられた印刷インクを作製するための貯蔵槽 (2) および好ましくはドロップオンデマンド型のインクジェットまたは類似の印刷または噴霧ヘッド (8) を含む。該印は好ましくはγ放射線計数管により検知され、同定される。本発明はまた、後の時点で印を付けられた物体 (O) に操作を行うことを考慮して物体 (O) に数分乃至数時間の限定した寿命の放射性同位体で印を付けるシステムを請求する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は物体に印を付け同定する分野にある。本発明は特に限定された時間中のみ持続し検知できる不可視の印をつける方法、装置及びシステムに関するものである。
【0002】
技術の現状
同定及び確証のため物体に印を付けることは当該分野で知られており、特別のインク、例えば一種乃至数種の紫外線発光化合物を含む特別のインクで書類また商品に印を付ける等の目的のために多種の物理的効果が開拓されている。このような印は裸眼には不可視であり、適切な紫外光の照射により初めて明示される。前記の種類の印はまた永久的で対応して印を付けられた紙幣、パスポート、クレジットカード、ブランド名を付けられた商品等の全寿命にわたって永続する性質を持つ。
【0003】
例えば、識別を示す印が連鎖工程の最初の部分において限定された物体に付与され、該工程の第二の部分において前記識別に対応して印を付けられた物体に対して行為がなされ、そのために該工程の前記第二の部分は後の時点で別の場所で行われる連鎖工程において、識別目的のために、文献または商品に暫定的に印を付けることが要求される場合がある。前記行為が印を付けられた物品になされることになっていることを示す目的のみを有する印し付けは、該行為が行われた後で一般的には取り除かれなければならない。
【0004】
最も容易な場合は、前記印付けは単純な色の印またはラベルであって、その印の除去は簡単な洗浄操作で行なわれる。しかし、印が不可視でなければならず、洗浄操作によっては該印を除去することが不可能のために機械により読み取られ、そして限定された時間後にひとりでに消失しなければならないようなより繊細な付与を行う場合がある。
【0005】
上述の技術問題は全ての印にある種の固有計時機構を備えさせることを要求する。温度、光、酸素または湿気の条件下で適当な化学反応をうまく利用する化学的計時は、化学反応速度が温度及び印が付与される基材の起こり得る触媒的影響に依存するために充分に信頼できるものではない。同様の理由が、印を付ける化合物の物理的蒸発または拡散に基づく計時にも当てはまる。蒸発及び拡散過程は化学反応と同様に非常に環境及び温度依存性である。更に、印を付ける化合物はこれらの方法において実際に消失しないために、印を付けられていない物体が印を付けられた物体との接触を通して交差汚染される結果となるかもしれない。
【0006】
測定機器手段により検知され、予知される方法で時間と共にひとりでに消え去る不可視の印は付けは現在まで開示されていない。
印を付けるために放射性同位体を適用するいくつかのは先行技術、例えば米国特許第3,805,067号“核分裂生成物を用いる表面に秘密裏に印を付ける方法”、米国特許第3,959,630号“短半減期の放射性同位体を有する同定カード”及び国際公開公報第WO 02/00440 A2号において開示されているが、いずれの開示も上記技術問題に言及していない。これらの引用文献は放射性核分裂生成物を物質中へ単純冗長な時間をかけて埋め込むことを記述している。
【0007】
発明の概要
自然界で知られている唯一の絶対的環境影響独立の固有計時機構は放射性同位体類の“原子崩壊時計”である。上述した技術的問題は本発明の短寿命の放射性同位体で以って前記物体に印を付けることにより解決される。
【0008】
本発明によれば、暫定的に物体に印を付ける方法は適切な短寿命の放射性同位体を含むコーティング組成物を施す工程を含む。本発明に関連して、用語“短寿命”は一秒乃至一日、好ましくは複数分乃至複数時の範囲の放射性同位体の半減期として定義される。該放射性同位体 (放射性核種) は好ましくは、印し付け操作と取られる工程行為、特に同定工程との間の過程に要求される、すなわち複数分乃至複数時の程度の時間遅れに匹敵する半減期を持つように選ばれる。
【0009】
該コーティング組成物は、印のいかなる損失または印を付けられた物体と印を付けられていない物体との接触による交差汚染をさけるために、印を付けられた物体上の放射性同位体の固定を確実にする等の結合剤を更に含んでも良い。注目すべき事であるが、前記結合剤は、印のいかなる可視衝撃を避けるために非常に少ない量で存在することができる。
【0010】
前記同位体は更に、好ましくはその放射性崩壊中に放出される充分なエネルギーのγ放射線によりその存在がある距離を置いて容易に検知される結果となるように選択される。空気または他の任意の材料に強く吸収されるαまたはβ- 放射線のような粒子放出のみを有する同位体は全ての実用状況下では信頼性のある敏感な検知を困難にする。しかし、β放射線を放出する同位体類は511 keVの電子-陽子 (対) 消滅γ放射線を通して検知可能である。
【0011】
前記同位体の半減期及び適用量は、現状の検知機器を用いて要求される操作条件下で信頼性のある検知となるように選択される。信頼性のある検知とは、印から得られる信号が好ましくはバックグラウンドを超える少なくとも5標準偏差を意味する。
【0012】
注目すべき事であるが、放射性崩壊は、ポアソン型統計に従う。すなわち測定された事象数の標準偏差は前期事象数の平方根に等しい。印の不存在下のバックグラウンド (適切な時間間隔Δtで測定されたカウント数) をBとし、印の存在下の信号 (同一の時間間隔で測定されたカウント数) をSとすると、該標準偏差はδ(S) = (S)1/2となる。上に述べた信頼性のある検知の条件は S ≧ 5 × (S)1/2 + B と言い換えられる。例えば、バックグラウンド Bを10とすると、測定されたSが50であることは信頼性のある検知の設定条件を満たす。
【0013】
上述より、印付けの目的のためには非常に少ない量の適用放射性同位体で充分であることが容易に推測される。この最小必要放射能は三半減期という短さの後にバックグラウンド濃度未満に安全に崩壊する。この印し付けに必要な放射能は全ての場合において医療用のラジオグラフに用いられているものよりもはるかに低い。
【0014】
該放射性同位体は好ましくはコーティング組成物にそれを溶解させるように選択される。これによる該同位体の可溶化は、全てが溶解するために必要な低濃度でそれを含む化学種の性質の機能のみならず該同位体が引き抜かれた放射性前駆体の化学的性質に主として依存する。
【0015】
注目すべき事であるが、短寿命の放射性同位体は、より長寿命の放射性親同位体の崩壊 (娘) 生成物としてin situで発生させることができる場合に、実用適用においてのみ取り扱われる。このような場合、この短寿命の放射性同位体はその放射性前駆体と永続平衡状態にあり (すなわち崩壊鎖元素の全ての濃度が定常状態にあり)、前駆体の数値放射能と半減期を採る。該娘同位体がその親から分離されるや否や自らのより短い寿命に従って崩壊する。
【0016】
このことは、親同位体は、発生した娘生成物がそれを生む親から容易に分離できる化学形態で存在しなければならないことを意味する。 注目すべき事であるが、(1) γ放射線を放出して短寿命崩壊を示し、(2) 充分に長寿命の親同位体を持ち、そして(3) その親から容易に分離できる化学的特性を有すると言う本発明で要求される条件全てを満たす同位体は僅かに過ぎないことが知られている。
【0017】
この同位体の一つで鋭意研究されて医療用途に用いられているのが99m-テクネチウム (Tc) である。99m-Tcは半減期が6.01時間で、142.68 keVのエネルギーを有するγ線放射体である。この同位体は99-モリブデン (Mo) から99-テクネチウムへのβ崩壊おいて準安定エネルギー準位にある。99-Mo は今度は66時間 (2.75日)の半減期を持つ。99-Moは原子炉中での235-ウランの核分裂生成物であり、現在は特別に設計された原子炉で照射された核燃料から抽出される。これはまた98-モリブデンターゲットの高磁束中性子照射により生成される。
【0018】
該99-Mo前躯体同位体を、イオン交換体、ゲルまたは同類のクロマトグラフ支持体に付着したモリブデートイオンの化学形態で含有する99m-テクネチウム発生器は放射性医薬会社から商業的に入手できる。99m-Tcは親99-Moの崩壊を通してその補給に対応する間隔で単純な溶出によりこれらの発生器から少しずつ取り出す (milked) ことができる。99m-Tc発生器の使用可能な寿命は99m-Mo前躯体の約5半減期、すなわち約2週間である。この時以降、該発生器は新しいものと交換されなければならない。
【0019】
本発明によると、この種の発生器から得られた99m-Tcはin situで印刷液と制御され標準化された放射能を有する液体を得るように制御された方法で混合される。
当該物体の印し付けは限定された量の前記印刷液をその表面へ施すことにより達成される。これは、当分野で知られた任意の方法により、好ましくは(放射性) インクの外部の再循環を必要としないので、ドロップオンデマンド(drop-on-demand)型のインクジェット印刷または噴霧方法によりなされる。これにより印刷ヘッドのインク流束駆動子は電気機械式または圧電式の何れでも良い。またインクは、その放射能を一定の濃度に保ち且つ印刷または印し付け操作中に必要な圧力勾配を与えるために、好ましくは該印刷ヘッドを通して内的に循環される。
【0020】
更に“印刷”操作は、用いられた放射性同位体の寿命内に対応する放射線感応領域感知機器により読み取られる単純印し付け、或いは代わりに指標の形態で行うことができる。該印刷または印付け操作は対応する信号、好ましくは電気信号の受け取り時に起動される。
【0021】
本発明の印し付けの付与に必要な放射性同位体の量は非常に少ないので直接の放射線の効果以外には毒物学的問題はなく、つまり印し付けで析出した同位体原子数は確立されている化学毒性濃度よりはるかに低く、また大概の従来の分析機器の検知限度よりもはるかに低い。
【0022】
印し付けに必要な放射性原子総数Nは同位体の半減期t1/2及び所望の初期絶対崩壊速度I0から式:N = 1.44 × I0× t1/2 により計算でき、好ましい初期絶対崩壊速度I0は1,000ベクレル (崩壊/秒) 未満である。10分の半減期を持つ同位体を用いると、1.6 × 10-18モル未満に相当する100万原子未満が必要である。
【0023】
注目すべきことに、本発明の印し付け方法は長寿命の放射線親同位体の直接または間接の娘である短寿命の放射線同位体を用いて可能であり、その化学的分離方法は知られている。以下の放射線親同位体類は本印し付け装置の選択の対象となる態様において用いることができる。
【0024】
60-Fe親 (150万年の半減期) は印し付け (marker) 同位体として60m−Co (10.5分の半減期) を発生し、60-Co (5.27年の半減期) を生成し放射性バックグラウンド濃度未満の速度で安定な60-Niへ崩壊する。
【0025】
90-Sr親 (28.79年の半減期) は印し付け同位体として90m-Y (3.19時間の半減期) を発生し、90-Y (64時間の半減期) を生成し元の放射能濃度の5%の割合で安定な90-Zrへ崩壊する。
【0026】
103-Ru親 (39.26日の半減期) は印し付け同位体として103m-Rh (56分の半減期) を発生し、安定な103-Rh (56分の半減期) を生成する。
106-Ru親 (373.6日の半減期) は印し付け同位体として106m-Rh (131分の半減期) を発生し、106-Rh (29.8秒の半減期) を生成し直ちに安定な106-Pdへ崩壊する。
【0027】
137-Cs親 (30年の半減期) は印し付け同位体として137m-Ba (2.55分の半減期) を発生し、安定な137-Baを生成する。
144-Ce親 (285日の半減期) は印し付け同位体として144m-Pr (7.2分の半減期) を発生し、144-Pr (17.28分の半減期) を生成し安定な144-Ndへ崩壊する。
【0028】
本発明に関連して、用いることのできる別の短寿命放射能源は232-トリウム (1.4 ×1010年の半減期) または好ましくは、その第一直接娘同位体の228-ラジウム (5.7年の半減期) である。図1aは232-トリウム放射性族の崩壊スキームを示す。有効な印し付け同位体は212-鉛 (212-Pb、10.6時間の半減期) であり、そのより長寿命の放射性親類と永続平衡状態にある。この平衡鎖の一員が気体状の220-ラドン (トロン、55.6秒の半減期) であり、該トリウム及びラジウム源からそれぞれ空気流を介して放射能を取り出して、そしてそれをコーティング組成物へ移して用いることができ、該コーティング組成物中で該220-Rnは212-Pbへ崩壊する。このようにして生成したコーティング組成物の放射能は212-Pbにより装置のスイッチを切って約一週間後には完全に消失する。
【0029】
更に別の適当な放射能源は235-ウラン (7.0 ×108年の半減期) またはその娘核の一つの、好ましくは227-アクチニウム (21.77年の半減期) であり、印し付け同位体211-鉛 (211-Pb、36.1分の半減期を有する) 用の発生器として用いることができる。図1bは235-ウラン放射性族の崩壊スキームを示す。該211-Pbをそのより長寿命の放射性親類に繋ぐ永久平衡鎖の一員が気体状の219-ラドン (3.9秒の半減期) である。該ラドンは空気流により発生器から抜き取られてそしてコーティング組成物中へ導入され、そこで該ラドンは212-Pbへ崩壊する。該211-Pb崩壊の最終生成物は安定な207-Pb同位体である。このようにして生成したコーティング組成物の放射能は212-Pbにより装置のスイッチを切って6時間後には完全に消失する。
【0030】
同位体発生器部分は、同位体施設等から購入される一体化したモジュレーター装置として取り扱われ、これは使用者レベルではその仕様書に従ってそれを用いること以外にはいかなる操作もそれに対して行わないこと意味する。99m-Tc発生器は二週間置きに交換する必要があるが、228-ラジウム系212-Pb発生器は約30年持続し、また227-アチウム系211-Pb発生器は約100年持続する。
【0031】
本発明の印を検知するために用いられる装置は好ましくはシンチレーター型または半導体型のγ線検知器である。シンチレーター型検知器において、印し付け同位体の放射性崩壊で生成されるγ量子は、重原子含有の光学的に透明な固体 [例えば、NaI:Tl、 CsI:Tl、BGO (ゲルマニウム酸ビスマス)、CWO (タングステン酸カドミウム) またはPWO (タングステン酸鉛) の様な物質の結晶] に吸収されて紫外、可視または近赤外領域の複数の低エネルギー光子を生成する。これによって、生成された光子数は多かれ少なかれ元のγ量子のエネルギーに比例する。前記光子は次いでそれらの相対的エネルギーにより該γ線を識別するように操作された光電子増倍管により検知される。前以って設定したエネルギー窓へ該当するγ線を印し付け同位体に由来するものとして数える。
【0032】
例えば、米国特許第4,788,436号に記載されているようなシンチレーター検知器類の興味ある変形はγ線用の活性吸着剤媒体として対応してドープされた光ファイバーを用いる。該ファイバー中で発生したフォトンはファイバー中を両方向へ移動して該ファイバーの端部に配置されたそれぞれの光電子増倍管に至り、そこで対応する光パルスが識別され、数えられる。注目すべき事であるが、光ファイバーは検知界面を簡単な方法で殆ど任意の形状にすることができ、結果的にゲートの形、或いは他の任意の便利な構造にすることができる。放射線感知光ファイバーは多くの供給者、例えば、三菱電機から商業的に入手可能である。
【0033】
またγ線検知器の別の変形は、珪素、ゲルマニウム、CdZnTe2及びその他の適切な半導体材料にγ線の吸収による直接電荷搬送体の発生に基づくものである。更に別の変形には、シンチレーター結晶と共同して珪素ホトダイオードが用いられる。これら全ての種類のγ線検知器は当業者には知られており、種々の供給源、例えば三菱電機から商業的に入手可能であり、それらは本明細書において更に記載されるには及ばない。
【0034】
本発明はまた暫定的に物体に印を付け、そして後の時点で前記の印をつけた物体に対して特定の行為を行うためにその印を検知するシステムを含む。本発明のこのシステムは物体に印を付けるための少なくとも一種の装置と物体上の暫定的な印の存在を検知するための少なくとも一種の装置を含む。暫定的な印を付与すための該装置は短寿命核種発生器、第一印刷液貯蔵槽、放射線監視装置、制御装置及び印刷または印し付けヘッドを含む。この印し付け装置は信号、例えば電気信号を受け取ると駆動する。該検知装置はγ放射線を検知でき、そして前記の暫定的な印を検知して信号、好ましくは電気信号を生み出すことができる。前記の信号、例えば電気信号は、次いで同類の物体の流れから前記印の付けられた物体を取り出すような特別の行為を該物体に対して行うために用いることができる。
【0035】
好ましくは、該印し付け装置と該検知装置は位置の上で互いに離されている。好ましい態様において、該印し付け装置は分配弁及び/またはポンプを含む。更に別の態様において、該印し付け装置はいかなる短寿命放射線同位体をも含まない、すなわち同位体のないコーティング組成物、好ましくは印刷インク用の第二貯蔵槽を含むことができる。この貯蔵槽は第一貯蔵槽を補充し、第一貯蔵槽中の液体をはぼ一定の量に保つために用いられる。
【0036】
本システムは、必要ならば、複数の独立した印し付け装置を含むことができ、また必要ならば、複数の独立した検知装置を含むことができる。それぞれの印し付け及び検知装置は用いられた印し付け核種及び用いられた検知機材に関して、同一の、または異なる種類でも良い。印し付け装置は、印し付けが正しく行われたかを確証するために、外部の放射線検知器と連動させても良い。
【0037】
本発明の別の側面はコーティング組成物、好ましくはインクジェット印刷インクである。該コーティング組成物は少なくとも一種の短寿命の放射線同位体を含むことを特徴とする。
【0038】
該コーティング組成物とそこで特にインクジェット印刷インクは主成分として水、エチルアルコール、イソプロパノール、それらの混合物または他の任意の易蒸発性溶媒または溶媒混合物等の単純な溶媒である液体を含む。しかし、好ましくは、該コーティング組成物は、(i) 種々の基体に対してコーティング組成物の湿潤性を増強するための、(ii) 印を該基体上に固定するための及び (iii) 該印し付け装置中でのコーティング組成物の泡立ちを防ぐための 少量の、すなわち1重量%未満の添加剤を含む。(i) 用の添加剤は陰イオン、陽イオンまたは中性界面活性剤の部類から選択され、(ii) 用の添加剤はでん粉、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、アセチルセルロース、ポリアクリル酸誘導体等の水溶性及び溶媒可溶性の非架橋性結合剤の部類から選択さる。インク中に配合される結合剤の量はコーティング組成物全重量に対して最高5重量%までの範囲である。好ましくは、結合剤は2重量%未満の濃度で、より好ましくは、0.1重量%未満の濃度で用いられ、そして (iii) 用の添加剤は 消泡剤の部類から選択される。用途により殺菌剤及び電解質等の添加剤を備えていても良い。
【0039】
該コーティング組成物に配合される放射性同位体は先に記載したものと同じものである。
他の放射性同位体及び/または他の検知機器及び/または他の装置の配置を用いる本発明の更に別の態様は当業者が本明細書の記載に基づいて容易に思いつくところである。本発明は図面及び例示の態様の助けを借りて更に概説される。
【0040】
実施例
本発明の暫定的に物体 (O) に印を付ける印し付け装置の第一の態様において、そして図3のスキームに関して、遮蔽された99m-Tc発生器 (1) が放射性同位体源として用いられる。該印し付け装置は前記放射性同位体源に加えて更に無色印刷液 (3) を含む貯蔵槽 (2)、循環ポンプ (4)、分配弁 (5)、放射線監視装置 (6)、制御装置 (プロセッサー) (7) 及び印刷または印し付けヘッドに対応する制御電子機器 (9) を有する印刷または印し付けヘッド (8) を含む。該貯蔵槽 (2) 中の該印刷液 (3) は典型的には着色剤または顔料を含まないインクジェットインク系のもので前記循環ポンプ (4) により連続的に循環する。前記印刷液の一部は前記分配弁 (5) を経由して前記99m-Tc発生器 (1) 中へ外れ、そこで99m-Tc放射能を付与されて貯蔵槽(2)へ流れ帰る。該貯蔵槽中の印刷液の全99m-Tc放射能は前記放射線監視装置 (6) 及び制御装置 (7)で監視され、今度は印刷液 (3) の得られた99m-Tc放射能が所定の濃度に留まるように前記分配弁 (5)を駆動させることができる。全装置は適切な放射線遮蔽 (10) 中に含まれているのでいかなる放射線危害も操作者に対して生み出されない。該装置中の放射性インク (3) の全容積は都合の良いことには少量に保たれており、そして必要に応じて該インク貯蔵槽 (2) をそれぞれが前記プロッセサー (7) で制御されている計量ポンプ (13) 及びレベル検出器 (14) により非放射性液 (12) で満たすための第二の非放射性インク貯蔵槽 (11) を設けることができる。
【0041】
印し付け装置のスイッチを切ると、印刷液の該99m-放射能は該99m-Tc同位体の6時間の半減期に従って一日後にはその初期値の約12.5%、二日後には1.5%、そして待機三日後には0.2%へ減衰する。これは、数日の待機期間後には有意な放射能は遮蔽された99m-Tc発生器中以外には装置中にはもや存在せず、機器は自由に使え、また修理される。
【0042】
印し中の該99m-Tcの崩壊後、得られた99-Tc同位体も放射性であり、210,000年の半減期をもつ安定な99-Ruへ崩壊する。しかし、使用された量ではこの長期の放射能は絶対的に無害であり、その寄与は、自然に発生する放射性同位体元素40-K (天然カリウムの0.0117%であって半減期1.28×109年のβ-、β+及びγ線放射体) であって、カリウムは地球上の生命の必要構成成分のために全生物中に存在するバックグラウンド放射能と比べて実際に無視し得るものである。
【0043】
第二の態様により、また図3のスキームに関して、本発明の物体 (O) に印を付ける装置は放射性印し付け同位体源として228-ラジウム (Ra) 系212-Pb発生器を含む。該228-Raは乾燥遮蔽発生器ユニット (package) (1) に含まれ、そこでその娘核、すなわち注目すべきことであるが気体状220-ラドン (55.6秒の半減期のトロン)と永続平衡状態にある。該装置は更に無色印刷液を含む貯蔵槽 (2)、空気ポンプ (4)、循環ポンプ (5)、放射線監視装置 (6)、制御装置プロセッサー (7) 及び印刷または印し付けヘッドに対応する制御電子機器 (9)を有する印刷または印し付けヘッド (8) を含む。貯蔵槽 (2) 中の印刷液 (3) は典型的には着色剤または顔料を含まないインクジェットインク系であり、ポンプ (5) により印刷ヘッド (8) へ連続的に循環する。プロセッサー (6) により制御されて空気含有ラドンが空気ポンプ (4) により該発生器ユニットから抜き取られて多孔性フリットガラス界面 (F) の助けを借りて該液(3) 中に通気される。貯蔵槽 (2) 中の該印刷液 (3) の“220-Rn及び娘たち”の全放射能は放射線監視装置 (6) とプロッセサー (7) とで検知され、それにより得られた印刷液の主として212-Pb由来の放射能が所定の濃度を保つように該空気ポンプ (4) を作用させることができる。全装置は適切な放射線遮蔽 (10) 中に含まれているため、いかなる放射線危害も操作者に対して生み出されない。装置中の放射性インク (3) の全容積は都合の良いことに少量に保たれており、そして必要に応じて該インク貯蔵槽 (2) をそれぞれが前記プロッセサー (7) で制御されている計量ポンプ (13) 及びレベル検出器 (14) により非放射性液で満たすための第二の非放射性インク貯蔵槽 (11) を設けることができる。
【0044】
該印刷液は本質的に短寿命の同位体のみを、すなわち全ての同位体類うちで最も長い半減期 (10.6時間) を持つ212-Pbを含む。装置のスウィッチを切った後で印し付け液の放射能は一日後でその元の値の21%、二日後で4.3%、そして三日後で0.9%に落ちる。このことは、約一週間の待機期間後には有意な放射能は遮蔽された発生器の部分中以外には装置中にはもはや存在せず、機器は自由に使え、また修理できる。該212-Pb崩壊の最終生成物は安定な208-Pbである。
【0045】
図4のスキームに関する本発明の印し付け及び検知システムは複数の印し付け位置と単一の検知位置を含み、以下のように具現される。
郵便局のロケット (lockets) 広間は一連のロケット (L) を含む。本発明の印し付け装置 (D) (例えば図2) は物体 (O) が計量及び出荷のために受け入れられる箇所の各ロケット (L) に位置している。計量操作中に電気信号により起動されて不可視放射性速乾インクジェットの印が物体 (O) の下部に施される。これにより、物体の行く先等の所定の条件を満たす帰結として限定された物体に印を付ける要求が手動で与えられるか、或いは自動的に発せられる。印し付け操作直後に物体は該印し付け装置 (D) に連結したγ線計数管 (C) 上を通過する。付与された印が該γ計数管 (C)により検知される場合、該印し付け操作は成功したものと見做され、そして物体 (O) はコンベヤーベルト (B) を経由して中央収集点 (P) へ送られる。印を付けられたはずの物体が該計数管 (C)によりその印が検知されない場合は、不良警報が出されて該ロケットの操作員により適切な処理がさせる。
【0046】
中央収集点 (P) で物体は、シンチレーター検知器とそれに対応する検地、識別及びγ放射線の計数用のプロセス電子機器類を含むゲート (G) を通過する。該ゲート (G)は主送路 (M) から物体(O) を必要ならば二次的送路 (S) へ逸らす機械的駆動子 (A) と更に連結されている。物体上の印に対応するγ放射線を検知すると、該機械的駆動子は印を付けられた物体を主流から二次的送路 (S)へ 逸らせるように設定されている。このようにして分離された物体類は検査位置 (図示されていない) へ運ばれ、そこでX線走査及び/または他の適切な検知操作を受け、そして該物体類は必要なら最終目的地へ送付する前に手動で検査することもできる。印を付けられていない物体は今度は該主送路 (M)を経由して直行して輸送車に乗せられる。
【0047】
当業者であれば本明細書における開示に基づき該印し付け方法、印し付け装置及び印し付けおよび検知システムの多くの他の変形を思いつくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1aは天然232-Thの崩壊鎖を表し、図1bは天然235-U/227-Acの崩壊鎖を表す。
【図2】図2は99m-Tc発生器を用いる一態様を概略的に表す。
【図3】図3は212-Pb発生器を用いる一態様を概略的に表す。
【図4】図4は印し付け装置及び空間的に分離した自動化検知装置 (ゲート) を含む本発明の印し付けシステムの一応用を概略的に表す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連鎖工程において物体 (O) に暫定的に印を付ける方法であって、該方法は該物体 (O) に印し付け装置によりコーティング組成物 (3) を施すことを含み、前記コーティング組成物 (3) は短寿命の放射線同位体を含み、前記短寿命の放射線同位体をより長寿命の放射線前躯体同位体からin situで発生させて前記印し付け装置中の前記コーティング組成物 (3) へ添加する方法。
【請求項2】
前記短寿命の放射線同位体が1分乃至1時間の半減期を持つ、請求項1の方法。
【請求項3】
前記短寿命の放射線同位体がγ線放射体またはβ (+) 線放射体である、請求項1または2の方法。
【請求項4】
該短寿命の放射線同位体が99m−Tc、60m-Co、90m-Y、103m-Rh 、106m-Rh 137m-Ba、144m-Pr、144-Pr、212-Pb及び211-Pbを含む群より選ばれる、請求項1〜3のいずれかの方法。
【請求項5】
該コーティング組成物 (3) が前記物体 (O) にインクジェット印刷または噴霧操作により施される、請求項1〜4のいずれかの方法。
【請求項6】
前記インクジェット印刷または噴霧がドロップオンデマンド型である、請求項5の方法。
【請求項7】
前記コーティング組成物 (3) が少なくとも一種の結合剤を含む、請求項1〜6のいずれかの方法。
【請求項8】
該コーティング組成物 (3) を施すことが特別の信号、好ましくは電気信号を受け取ったとき前記印し付け装置により行われる、請求項1〜7のいずれかの方法。
【請求項9】
連鎖工程において物体 (O) に暫定的に印し付けをするために適した装置であって、前記装置が短寿命の放射性核種発生器 (1)、第一印刷液貯蔵槽 (2)、分配弁 (5)、放射線監視装置 (6)、制御装置 (7) 及び印刷または印し付けヘッド (8) を含む装置。
【請求項10】
前記放射性核種発生器 (1)がγ線放出またはβ (+) 線放出放射線同位体を発生し、前記放射線同位体が1分乃至1時間を含む半減期を持つ、請求項9の方法。
【請求項11】
前記放射性核種発生器 (1)が好ましくは99m-Tc、60m-Co、90m-Y、103m-Rh 、106m-Rh 137m-Ba、144m-Pr、144-Pr、212-Pb及び211-Pbを含む群より選ばれるγ線放出短寿命放射線同位体を発生する、請求項10の装置。
【請求項12】
前記印刷または印し付けヘッド (8) がインクジェット印刷ヘッド、好ましくはドロップオンデマンド型のインクジェット印刷ヘッドである、請求項9〜11のいずれかの装置。
【請求項13】
前記装置が更に印刷液を含む第二印刷液貯蔵槽 (11) 及び計量ポンプ (13) を含み、該印刷液が放射性同位体を含まない、請求項9〜12のいずれかの装置。
【請求項14】
連鎖工程において物体 (O) に暫定的に印をつけるシステムであって、前記システムは (a) 物体 (O) に暫定的に印をつけるための少なくとも一種の装置、好ましく請求項9乃至請求項13のいずれかの装置であって、前記装置は短寿命な放射性核種発生器 (1)、第一印刷液貯蔵槽 (2)、分配弁 (5)、放射線監視装置 (6)、制御装置 (7) 及び印刷または印し付けヘッド (8) を含み、信号、特に電気信号を受け取ると駆動する装置と (b) 物体 (O) 上の暫定的な印の存在を検知する少なくとも一種の装置であって、γ線を感知でき、そして前記暫定的な印を検知すると信号、好ましくは電気信号を発することができる装置とを含むシステム。
【請求項15】
物体 (O) に暫定的に印しを付け、そして同定する方法であって、前記方法は短寿命の放射線同位体を含むコーティング組成物(3) を印し付け装置により該物体 (O) に施す工程と該短寿命の放射線同位体により放出されたγ線を検出することにより該暫定的な印を同定する工程を含み、前記短寿命の放射線同位体をより長寿命の放射線前躯体同位体からin situで発生させて前記マーキング装置中の前記コーティング組成物 (3) へ添加する方法。
【請求項16】
連鎖工程において物体 (O) に暫定的に印をつけ、そして同定するためのインクまたはコーティング組成物中の短寿命の放射線同位体の使用であって、前記短寿命の放射線同位体をより長寿命の放射線前躯体同位体からin situで発生させて前記印し付け装置中の前記コーティング組成物 (3) へ添加する使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−515810(P2006−515810A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566750(P2004−566750)
【出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010614
【国際公開番号】WO2004/065134
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】