説明

物体の水平度を求める方法

【課題】物体の水平度を測定する専用の計器を用いることなく、前記物体の水平度を求める際に前記物体に取り付けるターゲットの数を少なくすることにより、前記物体への前記ターゲットの取付けに要する手間や費用を低減すること。
【解決手段】物体の水平度を求める方法は、ターゲットを有する台を前記物体に回転可能に取り付けること、前記台を回転させつつ、前記ターゲットが第1の位置にあるときにおける前記ターゲットの第1の三次元座標と、前記ターゲットが第2の位置にあるときにおける前記ターゲットの第2の三次元座標と、前記ターゲットが第3の位置にあるときにおける前記ターゲットの第3の三次元座標とを測定すること、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標から、水平面に対する、前記第1の位置と前記第2の位置と前記第3の位置とを含む平面の傾きを算出することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の水平度を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の基礎、土留め、止水壁等を構築するため、水中にケーソンが設置される。前記ケーソンを水中に設置するとき、まず、前記ケーソンを陸上で製作し、次に、前記ケーソンを進水させ、沈設位置まで曳航する。その後、前記沈設位置において前記ケーソンの水平度と位置とを求め、これらを調整する。その後、前記ケーソンを水中に沈める。前記ケーソンの水平度と位置とを調整した後に前記ケーソンを水中に沈めるため、前記ケーソンを予め決められた位置に、予め決められた姿勢で水中に設置することができる。
【0003】
前記ケーソンの水平度と位置とを求める従来の方法には、まず、一直線上にない前記ケーソンの第1の位置、第2の位置及び第3の位置にそれぞれ第1のターゲット、第2のターゲット及び第3のターゲットを取り付け、次に、前記ケーソンから隔てられた位置に、前記第1のターゲットの三次元座標を測定する第1の測量器械と、前記第2のターゲットの三次元座標を測定する第2の測量器械と、前記第3のターゲットの三次元座標を測定する第3の測量器械とを配置し、その後、前記第1の測量器械、前記第2の測量器械及び前記第3の測量器械を用いてそれぞれ前記第1のターゲットの三次元座標、前記第2のターゲットの三次元座標及び前記第3のターゲットの三次元座標を測定するものがある。
【0004】
前記第1のターゲットの三次元座標、前記第2のターゲットの三次元座標及び前記第3のターゲットの三次元座標から、水平面に対する、前記第1の位置と前記第2の位置と前記第3の位置とを含む平面の傾きを算出する。これにより前記ケーソンの水平度が得られる。前記ケーソンの重心に対する、前記第1の位置、前記第2の位置及び前記第3の位置のそれぞれの相対位置は予め知られており、前記第1のターゲットの三次元座標と、前記第2のターゲットの三次元座標と、前記第3のターゲットの三次元座標と、前記平面の傾きと、前記相対位置とから前記ケーソンの重心の三次元座標を算出する。これにより前記ケーソンの位置が得られる。
【0005】
前記従来の方法では、前記第1のターゲット、前記第2のターゲット及び前記第3のターゲットという3つのターゲットを前記ケーソンに取り付けるため、前記ケーソンに取り付けるターゲットの数が比較的多く、前記ケーソンへのターゲットの取付けに多くの手間や費用を要する。
【0006】
前記ケーソンの水平度と位置とを求める他の従来の方法には、まず、前記ケーソンにターゲットと加速度計とを取り付け、次に、前記ケーソンから隔てられた位置に、前記ターゲットの三次元座標を測定する測量器械を配置し、その後、前記加速度計を用いて前記ケーソンの水平度を測定するとともに、前記測量器械を用いて前記ターゲットの三次元座標を測定するものがある(特許文献1参照)。前記ケーソンの水平度は、前記加速度計を用いた測定により得られる。前記ケーソンの重心に対する前記ターゲットの相対位置は予め知られており、前記ターゲットの三次元座標と、前記ケーソンの水平度と、前記相対位置とから前記ケーソンの重心の三次元座標を算出する。これにより前記ケーソンの位置が得られる。
【0007】
前記他の従来の方法では、1つのターゲットを前記ケーソンに取り付ければよいため、前記ケーソンに取り付けるターゲットの数は比較的少ない。しかし、前記加速度計という、前記ケーソンの水平度を測定する専用の計器を用意しなければならず、不経済である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−60904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、物体の水平度を測定する専用の計器を用いることなく、前記物体の水平度を求める際に前記物体に取り付けるターゲットの数を少なくすることにより、前記物体への前記ターゲットの取付けに要する手間や費用を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、物体に回転可能に取り付けられた、1つのターゲットを有する台を回転させつつ、前記ターゲットが、異なる3つの位置のそれぞれにあるときにおける前記ターゲットの三次元座標を測定する。これにより、前記物体の水平度を測定する専用の計器を用いることなく、前記物体に取り付けるターゲットの数を少なくし、前記物体へのターゲットの取付けに要する手間や費用を減らす。
【0011】
本発明に係る、物体の水平度を求める方法は、回転軸線及び該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲットを有する台を前記物体に回転可能に取り付ける第1ステップと、前記台を回転させつつ、前記ターゲットが第1の位置にあるときにおける前記ターゲットの第1の三次元座標と、前記ターゲットが、前記第1の位置と異なる第2の位置にあるときにおける前記ターゲットの第2の三次元座標と、前記ターゲットが、前記第1の位置及び前記第2の位置のそれぞれと異なる第3の位置にあるときにおける前記ターゲットの第3の三次元座標とを測定する第2ステップと、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標から、水平面に対する、前記第1の位置と前記第2の位置と前記第3の位置とを含む平面の傾きを算出する第3ステップとを含む。
【0012】
前記平面の傾きから前記ケーソンの水平度が得られる。前記物体に回転可能に取り付けられた、1つのターゲットを有する前記台を回転させつつ、前記ターゲットが、異なる3つの位置のそれぞれにあるときにおける前記ターゲットの三次元座標を測定するため、前記物体の水平度を測定する専用の計器を用いることなく、前記物体に取り付けるターゲットの数を少なくすることができる。これにより、前記物体へのターゲットの取付けに要する手間や費用を低減することができ、効率的かつ経済的に前記物体の水平度を求めることができる。
【0013】
前記第2ステップの前に、前記物体から隔てられた位置に測量器械を配置することを含み、前記第2ステップにおいて前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標の測定に前記測量器械を用いる。1つの測量器械を用いて、異なる3つの三次元座標を測定するため、3つの測量器械を用いて、異なる3つの三次元座標を測定する従来の場合と比べて、物体の水平度を求める際に用いる測量器械の数を少なくすることができ、測量器械を用意する手間や費用を低減することができる。
【0014】
前記物体の水平度を求める方法は、前記第2ステップの後に、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標のうちいずれか2つの三次元座標から前記ターゲットの回転中心の三次元座標を算出すること、前記回転中心の三次元座標から前記物体の重心の三次元座標を算出することを含むものとすることができる。これにより前記物体の位置が得られる。
【0015】
前記物体の水平度を求める方法は、前記第2ステップにおいて、前記ターゲットが、前記第1の位置、前記第2の位置及び前記第3の位置のそれぞれと異なる第4の位置にあるときにおける前記ターゲットの第4の三次元座標を測定し、前記第2ステップの後に、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標のうちいずれか1つの三次元座標と、前記第4の三次元座標とから前記ターゲットの回転中心の三次元座標を算出すること、前記回転中心の三次元座標から前記物体の重心の三次元座標を算出することを含むものとすることができる。これにより前記物体の位置が得られる。
【0016】
本発明に係る、物体の水平度を求める装置は、前記物体に回転可能に取り付けられる台であって回転軸線及び該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲットを有する台と、前記ターゲットの三次元座標を測定する測量器械とを含む。
【0017】
本発明に係る、物体の水平度を求める装置は、前記物体に回転可能に取り付けられる台であって回転軸線と、該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲットと、前記回転軸線と同軸的な回転軸とを有する台と、該台の前記回転軸に取り付けられた回転軸を有するモーターであって前記物体に固定されるモーターと、前記ターゲットの三次元座標を測定する測量器械とを含む。
【0018】
本発明に係る、物体の水平度を求める装置は、前記物体に回転可能に取り付けられる台であって回転軸線と、該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲットと、前記回転軸線と同軸的な、前記物体に設けられた穴に受け入れられる回転軸とを有する台と、前記ターゲットの三次元座標を測定する測量器械とを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、物体に回転可能に取り付けられた、1つのターゲットを有する台を回転させつつ、前記ターゲットが、異なる3つの位置のそれぞれにあるときにおける前記ターゲットの三次元座標を測定するため、前記物体の水平度を測定する専用の計器を用いることなく、前記物体の水平度を求める際に前記物体に取り付けるターゲットの数を少なくすることができる。これにより、前記物体へのターゲットの取付けに要する手間や費用を低減することができ、効率的かつ経済的に前記物体の水平度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】物体の水平度を求める装置の斜視図。
【図2】台を回転させつつ、ターゲットが第1の位置にあるときにおけるターゲットの第1の三次元座標を測定していることを示す図。
【図3】台を回転させつつ、ターゲットが第2の位置にあるときにおけるターゲットの第2の三次元座標を測定していることを示す図。
【図4】台を回転させつつ、ターゲットが第3の位置にあるときにおけるターゲットの第3の三次元座標を測定していることを示す図。
【図5】物体の重心についてのX軸周りの回転方向とY軸周りの回転方向とZ軸周りの回転方向とを示す図。
【図6】第1の三次元座標と第4の三次元座標とからターゲットの回転中心の三次元座標を算出することを示す図。
【図7】第1の三次元座標と第4の三次元座標とからターゲットの回転中心の三次元座標を算出するとともに、第1の三次元座標と第5の三次元座標とからターゲットの回転中心の三次元座標を算出することを示す図。
【図8】本発明の第1実施例に係る、物体の水平度を求める装置の正面図。
【図9】本発明の第2実施例に係る、物体の水平度を求める装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、物体10の水平度を求める。物体10は、水12に浮かべられたケーソンである。前記ケーソンは、陸上で製作され、進水された後、沈設位置まで曳航されたものである。前記沈設位置において前記ケーソンの水平度と位置とを求め、これらを調整する。その後、前記ケーソンを水中に沈める。沈められた前記ケーソンは、建造物の基礎、土留め、止水壁等として用いられる。
【0022】
物体10の水平度を求めるとき、まず、物体10の水平度を求める装置14を用意する。物体10の水平度を求める装置14は、回転軸線16及び該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲット18を有する台20と、ターゲット18の三次元座標を測定する測量器械22とを含む。
【0023】
測量器械22は、トータルステーションと呼ばれる、測角機能を有する光波測距儀である。測量器械22は、ターゲット18へ光を発し、該ターゲットに反射した光を感知することにより、測量器械22とターゲット18との間の距離を測定する。測量器械22は、自動追尾式であり、ターゲット18が移動しているときに該ターゲットを自動的に追って前記距離を測定する。
【0024】
物体10の水平度を求める装置14を用意した後、物体10に台20を回転軸線16の周りに回転可能に取り付ける。物体10は、相対する頂部24及び底部26と、頂部24と底部26とを取り巻く周壁28とを有する。物体10の姿勢が、予め決められた姿勢であるとき、物体10の頂部24及び底部26のそれぞれは水平である。台20は、回転軸線16に垂直な本体30を有する。物体10に台20を取り付けるとき、本体30が物体10の頂部24に平行となるようにする。
【0025】
物体10への台20の取付け後、物体10から隔てられた地上の位置32に測量器械22を配置する。その後、測量器械22を用いて、測量器械22と該測量器械から隔てられた地上の基準位置(図示せず)との間の距離と、前記基準位置に関する鉛直角(鉛直面で見て、測量器械22と前記基準位置とを結ぶ直線と、水平面とがなす角度)とを測定する。
【0026】
その後、台20を回転させる。図2に示すように、台20の回転中、ターゲット18が第1の位置34にあるとき、測量器械22からターゲット18へ光36を発する。光36は、ターゲット18により反射され、測量器械22により感知される。このとき、測量器械22は、該測量器械とターゲット18との間の第1の距離と、ターゲット18に関する第1の鉛直角(鉛直面で見て、測量器械22とターゲット18とを結ぶ直線と、水平面とがなす角度)と、前記基準位置に対するターゲット18の第1の水平角(水平面で見て、測量器械22と前記基準位置とを結ぶ直線と、測量器械22とターゲット18とを結ぶ直線とがなす角度)とを測定する。その後、測量器械22は、該測量器械と前記基準位置との間の距離と、前記基準位置に関する鉛直角と、前記第1の距離と、前記第1の鉛直角と、前記第1の水平角とからターゲット18の第1の三次元座標を計算する。
【0027】
図3に示すように、台20の回転(図3に回転方向を矢印38で示す。)によりターゲット18が第1の位置34から第2の位置40へ移動したとき、再度、測量器械22からターゲット18へ光36を発する。光36は、ターゲット18により反射され、測量器械22により感知される。このとき、測量器械22は、該測量器械とターゲット18との間の第2の距離と、ターゲット18に関する第2の鉛直角と、前記基準位置に対するターゲット18の第2の水平角とを測定する。その後、測量器械22は、該測量器械と前記基準位置との間の距離と、前記基準位置に関する鉛直角と、前記第2の距離と、前記第2の鉛直角と、前記第2の水平角とからターゲット18の第2の三次元座標を計算する。
【0028】
図4に示すように、台20の回転によりターゲット18が第2の位置40から第3の位置42へ移動したとき、再度、測量器械22からターゲット18へ光36を発する。光36は、ターゲット18により反射され、測量器械22により感知される。このとき、測量器械22は、該測量器械とターゲット18との間の第3の距離と、ターゲット18に関する第3の鉛直角と、前記基準位置に対するターゲット18の第3の水平角とを測定する。その後、測量器械22は、該測量器械と前記基準位置との間の距離と、前記基準位置に関する鉛直角と、前記第3の距離と、前記第3の鉛直角と、前記第3の水平角とからターゲット18の第3の三次元座標を計算する。
【0029】
このようにして、台20を回転させつつ、測量器械22を用いて、ターゲット18が第1の位置34にあるときにおけるターゲット18の前記第1の三次元座標と、ターゲット18が、第1の位置34と異なる第2の位置40にあるときにおけるターゲット18の前記第2の三次元座標と、ターゲット18が、第1の位置34及び第2の位置40のそれぞれと異なる第3の位置42にあるときにおけるターゲット18の前記第3の三次元座標とを測定する。
【0030】
その後、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標から、水平面に対する、第1の位置34と第2の位置40と第3の位置42とを含む平面の傾きを算出する。このとき、例えば、前記第1の三次元座標を(x1,y1,z1)とし、前記第2の三次元座標を(x2,y2,z2)とし、前記第3の三次元座標を(x3,y3,z3)としたとき、まず、第1の位置34から第2の位置40へのベクトルSと、第1の位置34から第3の位置42へのベクトルTとを次式により計算する。
S=(x2−x1,y2−y1,z2−z1)
T=(x3−x1,y3−y1,z3−z1)
その後、SとTとの外積を次式により計算することにより、前記平面の法線ベクトルNを求める。これにより前記平面の傾きが得られる。
N=S×T=((y2−y1)(z3−z1)−(y3−y1)(z2−z1),(z2−z1)(x3−x1)−(z3−z1)(x2−x1),(x2−x1)(y3−y1)−(x3−x1)(y2−y1))
前記平面の傾きから、物体10の重心44について、X軸周りの回転角度(ロール角)と、Y軸周りの回転角度(ピッチ角)と、Z軸周りの回転角度(ヨー角)とを算出する(図5に、X軸周りの回転方向を矢印44aで示し、Y軸周りの回転方向を矢印44bで示し、Z軸周りの回転方向を矢印44cで示す。)。これにより、水平面に対する物体10の傾き、すなわち物体10の水平度が得られる。
【0031】
前記平面が水平であるとき、物体10の頂部24は水平であり、物体10は水平面に対して傾いていない。このため、物体10の姿勢は、予め決められた姿勢と一致する。他方、前記平面が水平面に対して傾いているとき、物体10の頂部24は水平ではなく、物体10は水平面に対して傾いている。このため、物体10の姿勢は、予め決められた姿勢と異なる。
【0032】
物体10に回転可能に取り付けられた、1つのターゲット18を有する台20を回転させつつ、ターゲット18が、異なる3つの位置のそれぞれにあるときにおけるターゲット18の三次元座標を測定するため、物体10の水平度を測定する専用の計器を用いることなく、物体10の水平度を求める際に物体10に取り付けるターゲットの数を少なくすることができる。これにより、物体10へのターゲットの取付けに要する手間や費用を低減することができ、効率的かつ経済的に物体10の水平度を求めることができる。
【0033】
ところで、図1に示したように、物体10が、水12に浮かべられたケーソンである場合、前記ケーソンが波、風等を受けて動くことがある。このように物体10が動く場合、物体10の動きによる悪影響を受けることなく物体10の水平度を求められるようにするため、台20の回転速度は、物体10の動きと比べて非常に速いことが望ましい。物体10は、前記ケーソンである図1に示した例に代え、船舶、車両、建設機械等でもよい。
【0034】
物体10に台20を取り付けるとき、図1に示した例では、台20の本体30が物体10の頂部24に平行となるようにするが、仮に、物体10が水平な頂部24を有しない場合、台20の本体30が物体10の底部26に平行となるようにしてもよいし、物体10を横断する水平な仮想面(図示せず)に平行となるようにしてもよい。台20は、図1に示した例では、物体10の頂部24に取り付けられるが、これに代え、物体10の底部26に取り付けられてもよいし、物体10の周壁28に取り付けられてもよい。
【0035】
物体10に台20を取り付けるとき、本体30が物体10の頂部24に平行となるようにする図1に示した例に代え、本体30が物体10の頂部24に対して傾斜するようにしてもよいし、物体10の頂部24に垂直となるようにしてもよい。台20が物体10の頂部24に対して傾斜する場合、物体10の頂部24に対する台20の傾きは予め知られているか又は予め測定されている。物体10の水平度を求めるとき、水平面に対する、第1の位置34と第2の位置40と第3の位置42とを含む前記平面の傾きから、物体10の頂部24に対する台20の傾きを差し引く。
【0036】
物体10から隔てられた位置32への測量器械22の配置を物体10への台20の取付け後に行う上記の例に代え、物体10から隔てられた位置32への測量器械22の配置を物体10への台20の取付け前に行ってもよいし、物体10への台20の取付けと同時に行ってもよい。
【0037】
図6に示す例では、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標を測定するとき、測量器械22を用いて、ターゲット18が、第1の位置34、第2の位置40及び第3の位置42のそれぞれと異なる第4の位置46にあるときにおけるターゲット18の第4の三次元座標を測定する。第4の位置46は、台20の回転方向38における第1の位置34の後方にあって第1の位置34の近傍に位置する。ターゲット18は台20の回転により第4の位置46から第1の位置34へ移動する。
【0038】
前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標、前記第3の三次元座標及び前記第4の三次元座標を測定した後、前記第1の三次元座標と前記第4の三次元座標とからターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出する。このとき、例えば、前記第1の三次元座標を(x1,y1,z1)とし、前記第4の三次元座標を(x4,y4,z4)とし、ターゲット18の回転中心48の三次元座標を(x0,y0,z0)とし、ターゲット18の回転半径(台20の回転軸線16とターゲット18が固定された位置との間の距離)をRとしたとき、次式が成り立つ。
(x0−x1)+(y0−y1)+(z0−z1)=R
(x0−x4)+(y0−y4)+(z0−z4)=R
また、ターゲット18の回転中心48は、第1の位置34と第2の位置40と第3の位置42とを含む前記平面に含まれ、前記平面の法線ベクトルNと第1の位置34からターゲット18の回転中心48へのベクトル(x0−x1,y0−y1,z0−z1)との内積が0であるため、次式が成り立つ。
{(y2−y1)(z3−z1)−(y3−y1)(z2−z1)}(x0−x1)+{(z2−z1)(x3−x1)−(z3−z1)(x2−x1)}(y0−y1)+{(x2−x1)(y3−y1)−(x3−x1)(y2−y1)}(z0−z1)=0
これらの式によりターゲット18の回転中心48の三次元座標(x0,y0,z0)を計算する。
【0039】
その後、ターゲット18の回転中心48の三次元座標から物体10の重心44の三次元座標を算出する。物体10の重心44に対するターゲット18の回転中心48の相対位置は予め知られているか又は予め測定されている。物体10の重心44の三次元座標の算出は、回転中心48の三次元座標と、物体10の水平度と、前記相対的位置とから物体10の重心44の三次元座標を計算することによる。これにより物体10の位置が得られる。
【0040】
ターゲット18が第1の位置34にあるときに測定した前記第1の三次元座標と、ターゲット18が、第1の位置34の近傍に位置する第4の位置46にあるときに測定した前記第4の三次元座標とからターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出することにより、比較的短い時間内に測定した2つの三次元座標から回転中心48の三次元座標を求めることができる。これにより、物体10が動く場合に該物体の動きによる悪影響を受けることなく、物体10の位置を正確に求めることができる。
【0041】
前記第1の三次元座標と前記第4の三次元座標とを測定する前に、台20の回転角度を測定する角度センサー(図示せず)を用意しておき、該角度センサーにより、ターゲット18が第4の位置46から第1の位置34へ移動したときの台20の回転角度(ターゲット18が第4の位置46にあるときにおけるターゲット18と回転中心48とを結ぶ直線と、ターゲット18が第1の位置34にあるときにおけるターゲット18と回転中心48とを結ぶ直線とがなす角度)を測定し、前記回転角度に基づいて回転中心48の三次元座標を補正してもよい。これにより回転中心48の三次元座標をより正確に求めることができる。
【0042】
第4の位置46は、台20の回転方向38における第1の位置34の後方にある図6に示した例に代え、第1の位置34の前方にあってもよい。第4の位置46は、第1の位置34の近傍に位置する図6に示した例に代え、第2の位置40の近傍に位置してもよいし、第3の位置42の近傍に位置してもよい。第4の位置46が第2の位置40の近傍に位置する場合、ターゲット18の回転中心48の三次元座標を前記第2の三次元座標と前記第4の三次元座標とから算出する。第4の位置46が第3の位置42の近傍に位置する場合、ターゲット18の回転中心48の三次元座標を前記第3の三次元座標と前記第4の三次元座標とから算出する。
【0043】
前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標のうちいずれか1つの三次元座標と、前記第4の三次元座標とからターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出する上記の例に代え、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標のうちいずれか2つの三次元座標からターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出してもよい。すなわち、前記第1の三次元座標と前記第2の三次元座標とからターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出してもよく、前記第2の三次元座標と前記第3の三次元座標とからターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出してもよく、前記第1の三次元座標と前記第3の三次元座標とからターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出してもよい。
【0044】
図7に示す例では、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標を測定するとき、第1の位置34、第2の位置40及び第3の位置42のそれぞれと異なる第4の位置46にあるときにおけるターゲット18の第4の三次元座標と、第1の位置34、第2の位置40、第3の位置42及び第4の位置46のそれぞれと異なる第5の位置50にあるときにおけるターゲット18の第5の三次元座標とを測定する。第4の位置46は台20の回転方向38における第1の位置34の後方にあって第1の位置34の近傍に位置し、第5の位置50は台20の回転方向38における第1の位置34の前方にあって第1の位置34の近傍に位置する。
【0045】
前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標、前記第3の三次元座標、前記第4の三次元座標及び前記第5の三次元座標を測定した後、前記第1の三次元座標と前記第4の三次元座標とからターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出するとともに、前記第1の三次元座標と前記第5の三次元座標とからターゲット18の回転中心48の三次元座標を算出する。その後、前記第1の三次元座標と前記第4の三次元座標とから算出した回転中心48の三次元座標を、前記第1の三次元座標と前記第5の三次元座標とから算出した回転中心48の三次元座標に基づいて補正する。これにより回転中心48の三次元座標をより正確に求めることができる。
【0046】
図8に示すように、台20は、回転軸線16と同軸的な回転軸52を有する。物体10の水平度を求める装置14は、台20の回転軸52に取り付けられた回転軸54を有するモーター56であって物体10に固定されるモーター56を含む。モーター56は台20を回転させる。物体10への台20の取付けは、モーター56を物体10に固定することにより行う。
【0047】
図9に示す例では、台20の回転軸52が、物体10に固定されるモーター56の回転軸54に取り付けられている図8に示した例に代え、台20の回転軸52が、物体10に設けられた穴58に受け入れられる。台20の本体30は、円盤状であり、該本体の周縁部に形成された歯(図示せず)を有する。物体10の水平度を求める装置14は、物体10に固定されるモーター56であって回転軸54と、該回転軸に取り付けられ、前記歯と係合する歯車60とを有するモーター56を含む。モーター56は台20を回転させる。物体10に台20を取り付けるとき、台20の回転軸52を穴58に挿入し、モーター56を、歯車60が台20の歯と係合するように物体10に固定する。なお、モーター56により台20を回転させる上記の例に代え、手動で台20を回転させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 物体
14 物体の水平度を求める装置
16 回転軸線
18 ターゲット
20 台
22 測量器械
34 第1の位置
40 第2の位置
42 第3の位置
46 第4の位置
48 回転中心
52 回転軸
56 モーター
58 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の水平度を求める方法であって、
回転軸線及び該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲットを有する台を前記物体に回転可能に取り付ける第1ステップと、
前記台を回転させつつ、前記ターゲットが第1の位置にあるときにおける前記ターゲットの第1の三次元座標と、前記ターゲットが、前記第1の位置と異なる第2の位置にあるときにおける前記ターゲットの第2の三次元座標と、前記ターゲットが、前記第1の位置及び前記第2の位置のそれぞれと異なる第3の位置にあるときにおける前記ターゲットの第3の三次元座標とを測定する第2ステップと、
前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標から、水平面に対する、前記第1の位置と前記第2の位置と前記第3の位置とを含む平面の傾きを算出する第3ステップとを含む、物体の水平度を求める方法。
【請求項2】
前記第2ステップの前に、前記物体から隔てられた位置に測量器械を配置することを含み、
前記第2ステップにおいて前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標の測定に前記測量器械を用いる、請求項1に記載の物体の水平度を求める方法。
【請求項3】
前記第2ステップの後に、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標のうちいずれか2つの三次元座標から前記ターゲットの回転中心の三次元座標を算出すること、
前記回転中心の三次元座標から前記物体の重心の三次元座標を算出することを含む、請求項1又は2に記載の物体の水平度を求める方法。
【請求項4】
前記第2ステップにおいて、前記ターゲットが、前記第1の位置、前記第2の位置及び前記第3の位置のそれぞれと異なる第4の位置にあるときにおける前記ターゲットの第4の三次元座標を測定し、
前記第2ステップの後に、前記第1の三次元座標、前記第2の三次元座標及び前記第3の三次元座標のうちいずれか1つの三次元座標と、前記第4の三次元座標とから前記ターゲットの回転中心の三次元座標を算出すること、
前記回転中心の三次元座標から前記物体の重心の三次元座標を算出することを含む、請求項1又は2に物体の水平度を求める方法。
【請求項5】
物体の水平度を求める装置であって、
前記物体に回転可能に取り付けられる台であって回転軸線及び該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲットを有する台と、
前記ターゲットの三次元座標を測定する測量器械とを含む、物体の水平度を求める装置。
【請求項6】
物体の水平度を求める装置であって、
前記物体に回転可能に取り付けられる台であって回転軸線と、該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲットと、前記回転軸線と同軸的な回転軸とを有する台と、
前記台の前記回転軸に取り付けられた回転軸を有するモーターであって前記物体に固定されるモーターと、
前記ターゲットの三次元座標を測定する測量器械とを含む、物体の水平度を求める装置。
【請求項7】
物体の水平度を求める装置であって、
前記物体に回転可能に取り付けられる台であって回転軸線と、該回転軸線から偏った位置に固定されたターゲットと、前記回転軸線と同軸的な、前記物体に設けられた穴に受け入れられる回転軸とを有する台と、
前記ターゲットの三次元座標を測定する測量器械とを含む、物体の水平度を求める装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−127918(P2011−127918A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284132(P2009−284132)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】