説明

物体検知システム

【課題】車両のドライバが歩行者、自転車乗者および動物などの物体を運転中に識別するのを支援する。
【解決手段】車両用物体検知システムは、車両周辺の少なくとも一部の画像を収集する赤外線カメラと、カメラによって収集された画像の少なくとも一部分にアルゴリズムを適用する処理装置とを備える。上記アルゴリズムは、カメラにより検出された非関連高温物体(5、6、7)を識別し、画像内のこれら非関連物体(5、6、7)の明るさおよび/または弁別度を低下させる。上記システムはさらに、車両のドライバへ上記画像を表示するディスプレイを備えていて、赤外線カメラが遠赤外線画像を生成し、カメラにより検出された非関連高温物体(5、6、7)を上記アルゴリズムが識別することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は物体検知システムに関し、特に、車両のドライバが歩行者、自転車乗者および動物などの物体を運転中に識別するのを支援するシステムに関する。
【0002】
悪天候や照明が乏しいことにより視界が利かない状況下では、車両のドライバは歩行者、自転車乗者および動物などの重大な物体を識別することが難しくなる。車両と物体の衝突の可能性を最小限にするためには、このような物体を早期に識別することが重要なのは明らかである。
【0003】
そこで、赤外線(IR)カメラを備え付け、カメラによって収集された画像を車両内のディスプレイに表示することが、従来より提案されている。歩行者、自転車乗者および動物などの物体は概して周囲より高温であるため、このような物体はしばしば(IR)カメラによって収集された画像により容易に識別することができる。
【0004】
これに加え、赤外線カメラによって検出された高温の物体の明るさや視認性を向上させることが提案されている。これは、ドライバへ表示される画像内の物体に境界線や輪郭を施すことにより、あるいはディスプレイ内のこれらの物体の明るさおよび/もしくはコントラストを人工的に増大することにより、行われる。
【0005】
本発明は、このタイプの検知システムの改良に努めることを目的とする。
【0006】
したがって、本発明の1つの側面としては、車両周辺の少なくとも一部の画像を収集する赤外線カメラと、カメラによって収集された画像の少なくとも一部分にアルゴリズムを適用する処理装置であって、このアルゴリズムは、このカメラにより検出された非関連高温物体を識別し、画像内の非関連物体の明るさおよび/または弁別度を低下させる処理装置と、車両のドライバへ画像を表示するディスプレイと、を備える車両用物体検知システムにおいて、約5μmから20μmまでの範囲の光波長を利用して赤外線カメラが画像を生成し、カメラにより検出された非関連高温物体を上記アルゴリズムが識別することを特徴とする物体検知システムを提供する。
【0007】
好適には、非関連物体とは、排気管、高温の建造物および灯具を含む。
【0008】
好適には、所定の閾値を下回る形状変化率を有する物体が非関連物体として分類される。
【0009】
好適には、所定のテンプレートのいずれとも合致しない形状を有する物体が非関連物体として分類される。
【0010】
好適には、所定の範囲を逸脱した大きさを有する物体が非関連物体として分類される。
【0011】
好適には、所定の範囲を逸脱した温度を有する物体が非関連物体として分類される。
【0012】
好適には、アルゴリズムが画像内の高温関連物体をさらに識別する。
【0013】
好適には、画像内の関連物体の明るさおよび弁別度が増大される。
【0014】
好適には、画像内の関連物体が、明るさを増大して表示されるか、異なる色彩で表示されるか、または境界線を有する。
【0015】
好適には、赤外線カメラが約7.5μmから14μmの範囲の光波長を利用して画像を生成する。
【0016】
本発明の他の側面としては、車両周辺の少なくとも一部を赤外線で見た画像を収集する工程と、収集された画像にアルゴリズムを適用し、このアルゴリズムによって、画像内の非関連物体を識別し、画像内の非関連物体の明るさおよび/または弁別度を低下させる工程と、車両のドライバへ画像を表示する工程と、を含む画像強調方法において、画像は約5μmから20μmまでの範囲の光波長を利用して生成した画像であり、画像内の非関連高温物体を上記アルゴリズムによって識別することを特徴とする画像強調方法を提供する。
【0017】
本発明の他の側面としては、コンピュータ上で実行されると上述したすべての工程を実行するように構成されたコンピュータプログラムコードを包含するコンピュータプログラムを提供する。
【0018】
本発明の他の側面としては、上述したコンピュータプログラムであって、コンピュータ読取可能媒体として実装されたコンピュータプログラムを提供する。
【0019】
本発明をより簡易に理解するため、その実施形態を添付する図1、図2を参照して例を挙げて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかるアルゴリズムの適用前に、車両に搭載されたIRカメラによって収集された画像を示す図である。
【図2】本発明にかかるアルゴリズムの適用後に、車両のドライバへ表示される画像を示す図である。
【0021】
上述したタイプの従来システムの課題は、他の車両の排気管、ヘッドライトおよびエンジン、高温の建造物や灯具といった外界の温度を超える非関連物体がシステムに度々識別されてしまうことである。このような場合、これらの非関連物体は、境界線を施したり、その物体の明るさを増大させたりすることにより、さらに目立つものとされる。
【0022】
本発明の実施形態では、IRカメラによって収集された画像にあるアルゴリズムを適用し、カメラで収集された画像に現れる非関連物体を識別する。そして、これらの非関連物体の明るさや弁別度を低下させる。好適な実施形態では、これは、非関連物体を構成するピクセルの明るさを低下させ、これによって、これらのピクセルのコントラストを周辺のピクセルに比して低下させることによって成される。
【0023】
以下、高温の非関連物体を識別する技術について説明する。
【0024】
人間や動物、より具体的に予期し得るものとしては歩行者、自転車乗者および動物などの、一般的に関連物体とされるものの特徴は、通常、その物体の形状が時間経過とともに変化することである。歩行者や動物は移動するので、画像上では、人や動物の足が動いているように表される。一方、固定された物体あるいは無生物や車両の一部、より明確に予期し得るものとしては建造物、排気管や街灯といった一般的に非関連物体とされるものの形状は、時間が経過してもほぼ不変である。これゆえ、所定の閾値を超える形状変化率を有する高温物体は、関連物体として分類してよく、他の物体は非関連物体として分類してよい。
【0025】
移動パターンおよび移動スピードもまた、様々な物体間の識別に利用することができる。
【0026】
しかしながら、歩行者や自転車乗者、動物は一時的に停止し、依然として危険の原因となるおそれがある。これらの実施形態にかかるアルゴリズムは、このような状況下においてドライバに関連物体を報知し損なうおそれがある。
【0027】
高温関連物体と非関連物体を識別する他の方法は、物体の温度解析によるものである。人間と動物は、一定で比較的狭い範囲に限られた体温を有する傾向にあり、この狭い範囲に該当しない温度を有する高温物体は、非関連物体として分類してよい。典型的には、この温度範囲は、以下の事実を考慮した上での、人間の外部温度である。すなわち、人間の皮膚が露出した部分と、人体によって暖められた衣類の部分の両方が画像に含まれていて、一般的に、後者の部分は人間の皮膚の部分よりも相当に温度が低くなる。
【0028】
多くの例では、赤外線カメラは絶対的な温度を明示する読値を与えられないが、温度の差異をある程度検知することはできる。人間とその周囲の温度の違いは比較的一様であるため、本発明の好適な実施形態では、絶対的な温度より、むしろ温度の差を分析して、物体が関連か非関連かを決定する。このような決定は、当業者にとって明らかなように、統計学的技術に基づいて行うことが予定されている。
【0029】
物体の温度分布も、物体が関連物体か非関連物体かを表示可能である。例えば、赤外線画像上で人間を表す形状は、一般的に、その形状の頂部に高温の部分を有する。これは、人間の頭部が体の他の部分と比べて相対的に温度が高いからであり、また人間の頭部は通常むきだしである一方、体の他の部分は衣類で覆われていることが多いからである。したがって、おおよそ人間の形状を有し、頂部(一般的に物体の形状の1/6から1/8)が他の部分より高温の物体は、関連物体として分類してよく、他の高温物体は非関連物体として分類してよい。
【0030】
他の使用可能な技術としては、高温物体の形状を調べることである。一般的に、歩行者、自転車乗者または動物などの関連物体は、赤外線カメラによって収集された画像上にて変化する形状として現れる一方で、排気管、街灯、高温の建造物といった物体は、不変の形状として現れる。
【0031】
他の可能な手段として、検出された高温物体の形状を、一連のテンプレートと比較してもよい。これらテンプレートの形状は、様々な角度から見た歩行者、自転車乗者または動物などの形状と合致する。これらのテンプレートの1つに略一致する形状を有する物体を検知した場合、その物体を関連物体として分類してよい。いずれにも一致しなければ、その物体は非関連物体として分類してよい。
【0032】
分類対象である物体の大きさを考慮してもよい。歩行者、自転車乗者または動物は、一般的に、街灯、ヘッドライト、排気管といった小さな非関連物体に比較すると相当に大きく、高温の建造物に比較すると著しく小さい。例えば、物体までの検出距離に基づいて物体のおおよその大きさを決定すれば、ある範囲の大きさの物体のみを関連物体として分類可能である。例えば、いかなる方向においても0.5mから2.5mまでの大きさを有する物体を関連物体として分類し、他の物体を非関連物体として分類することができる。
【0033】
非関連高温物体の明るさ/弁別度を低下させることに加えて、関連物体として分類される物体の明るさおよび/または弁別度を増大させてもよく、これはアルゴリズムの一部としてよい。上述したように、これは、ドライバへ表示する画像内において、関連物体を構成するピクセルと周辺のピクセルとのコントラストを人工的に増大させるか、あるいは、画像内の関連物体に輪郭を与えることによって、達成可能である。
【0034】
図面を参照すると、図1は本発明にかかるアルゴリズムの適用前に、車両に搭載されたIRカメラによって収集された画像を示す。4人の歩行者1、2、3、4が画像上に出現しているが、比較的はっきりとは識別できない。コントラストによって、車両近傍のテールライト5および排気管6は、比較的はっきりしていて、街灯7も同様である。
【0035】
図2を参照すると、本発明にかかるアルゴリズムの適用後における同様の画像が示されている。4人の歩行者1、2、3、4はさらに顕著に際立って、テールランプ5および排気管6、街灯7は相当に目立たなくなっている。実際に視認者の注意は、画像上の4人の歩行者1、2、3、4に即座に引き寄せられる。
【0036】
IRカメラは遠赤外線カメラである。遠赤外線は、好ましくは、波長が約5μmから20μmの間の範囲にある電磁スペクトルであり、さらに好ましくは、7.5μmから14μmの間である。好適な実施形態では、画像は、主としてこれらの波長から形成され、あるいは、これらの波長のみから生成される。
【0037】
本発明の実施形態によれば、視界が利かない状況下において高温関連物体を容易に車両のドライバに識別させ、さらに、非関連物体によってドライバが惑わされる可能性を低下させるシステムを提供可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の少なくとも一部の画像を収集する赤外線カメラと、
前記カメラによって収集された前記画像の少なくとも一部分にアルゴリズムを適用する処理装置であって、該アルゴリズムは、該カメラにより検出された非関連高温物体を識別し、該画像内の該非関連物体の明るさおよび/または弁別度を低下させる処理装置と、
前記車両のドライバへ前記画像を表示するディスプレイと、を備える車両用物体検知システムにおいて、
約5μmから20μmまでの範囲の光波長を利用して前記赤外線カメラが画像を生成し、
前記カメラにより検出された非関連高温物体を、時間経過と共に変化する物体の形状変化率に基づき、前記アルゴリズムが識別することを特徴とする車両用物体検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記非関連物体は、排気管と、高温の建造物および灯具とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、所定の閾値を下回る前記形状変化率を有する物体が前記非関連物体として分類されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステムにおいて、所定のテンプレートのいずれとも合致しない形状を有する物体が前記非関連物体として分類されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のシステムにおいて、所定の範囲を逸脱した大きさを有する物体が前記非関連物体として分類されることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のシステムにおいて、所定の範囲を逸脱した温度を有する物体が前記非関連物体として分類されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシステムにおいて、前記アルゴリズムが前記画像内の関連高温物体をさらに識別することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記画像内の前記関連物体の明るさおよび弁別度が増大されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記画像内の前記関連物体が、明るさを増大して表示されるか、異なる色彩で表示されるか、または境界線を有することを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のシステムにおいて、前記赤外線カメラが約7.5μmから14μmの範囲の光波長を利用して画像を生成することを特徴とするシステム。
【請求項11】
車両周辺の少なくとも一部を赤外線で見た画像を収集する工程と、
前記収集された画像にアルゴリズムを適用し、該アルゴリズムによって、該画像内の非関連物体を識別し、該画像内の該非関連物体の明るさおよび/または弁別度を低下させる工程と、
車両のドライバへ前記画像を表示する工程と、を含む画像強調方法において、
前記画像は約5μmから20μmまでの範囲の光波長を利用して生成した画像であり、
前記画像内の非関連高温物体を前記アルゴリズムによって識別することを特徴とする画像強調方法。
【請求項12】
コンピュータ上で実行されると請求項11に記載のすべての工程を実行するように構成されたコンピュータプログラムコードを包含することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムであって、コンピュータ読取可能媒体として実装されたコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−131491(P2012−131491A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282632(P2011−282632)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2009−535239(P2009−535239)の分割
【原出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【Fターム(参考)】