説明

物品の仮止め固定用粘着テープおよび仮止め固定物品

【課題】 被着体である物品の被着部分に貼り付けた状態で応力が発生しても剥がれにくく、かつ、目的を達成した後、剥離する際には容易に剥がすことができ、且つ糊残りが生じにくい、物品の仮止め固定用粘着テープを提供すること。
【解決手段】 基材の片面に粘着剤層を有する、物品の仮止め固定用粘着テープにおいて、基材が、ポリエステル系フィルムであり、粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有する単量体混合物から得られたアクリル系共重合体エマルションおよびオキサゾリン基含有水系架橋剤を含有するアクリル系エマルション型粘着剤により形成されたものであり、基材と粘着剤層との間には、オキサゾリン基を含有する水系樹脂により形成された下塗り層を有することを特徴とする物品の仮止め固定用粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を仮止め固定するために用いられる粘着テープに関する。また本発明は前記粘着テープにより、物品が、仮止め固定された、仮止め固定物品に関する。なお、本発明の粘着テープは、テープ状またはシート状で用いられる。
【0002】
本発明の物品の仮止め固定用粘着テープは、例えば、電化製品、OA機器等の物品を製品出荷する際に、被着体である前記物品を梱包するにあたり、当該物品の内部部品やドア等の被着部分(例えば印刷鋼板や樹脂板等)を仮止め固定するために、前記被着部分に貼り付けて用いられる。例えば、物品が冷蔵庫の場合には、本発明の粘着テープは、冷蔵庫のドア等の仮止め固定に用いられる。
【背景技術】
【0003】
電化製品、OA機器等の物品の仮止め固定に用いられ粘着テープに要求される特性としては、被着体である物品の内部部品やドア等の被着部分を確実に固定するために、粘着テープが被着部分に貼り付けられた状態において応力が発生しても剥がれないことが求められる。また、前記物品はその使用にあたり、不要になった粘着テープを最終的に被着部分から剥離するため、当該粘着テープには容易に剥離することが求められる。このように、仮止め固定用粘着テープには相反する特性が要求される。
【0004】
従来より、仮止め固定用粘着テープとしては、支持体の片面または両面に粘着剤層を形成したものが知られている。仮止め固定用粘着テープは、できるだけ安価なものであることが要求されるため、通常、ダンボール箱封緘用粘着テープと同様のものが用いられている(特許文献1)。例えば、汎用の延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムからなる基材の一面に粘着剤層を、他面に離型剤層を形成した粘着テープが一般的に用いられてきた。又、近年、OPPフィルムに代わり、より基材強度の高いポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや縦一軸延伸ポリプロピレンフィルムを基材とした粘着テープも使用されてきている。
【0005】
一方、仮止め固定用粘着テープに使用される粘着剤としては、有機溶剤型粘着剤が使用されていたが、一般の粘着剤の場合と同様に、環境保護、省資源、安全衛生等に対する社会的な要請と規制強化から、有機溶剤型粘着剤に代わる粘着剤として、水系粘着剤が用いられるようになっている。水系粘着剤としてはアクリル系エマルション型粘着剤が、通常、用いられる。
【0006】
アクリル系エマルション型粘着剤を塗布して形成した粘着剤層は、家電製品等の物品の被着部分(例えば印刷鋼板や樹脂板等)に対する接着力が高い。しかしながら、前記基材とアクリル系エマルション型粘着剤により形成された粘着剤層とは密着力が弱い。そのため、仮止め固定用粘着テープを被着体から剥離する際には、被着部分の印刷面が毟り取られたり、粘着剤層の層間破壊により、被着体に糊残りが生じたりする問題があった。
【特許文献1】特開昭63−86786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、被着体である物品の被着部分に貼り付けた状態で応力が発生しても剥がれにくく、かつ、目的を達成した後、剥離する際には容易に剥がすことができ、且つ糊残りが生じにくい、物品の仮止め固定用粘着テープを提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は前記粘着テープにより、物品を、仮止め固定した、仮止め固定物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記粘着テープにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、基材の片面に粘着剤層を有する、物品の仮止め固定用粘着テープにおいて、
基材が、ポリエステル系フィルムであり、
粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有する単量体混合物から得られたアクリル系共重合体エマルションおよびオキサゾリン基含有水系架橋剤を含有するアクリル系エマルション型粘着剤により形成されたものであり、
基材と粘着剤層との間には、オキサゾリン基を含有する水系樹脂により形成された下塗り層を有することを特徴とする物品の仮止め固定用粘着テープ、に関する。
【0011】
また本発明は、前記物品の仮止め固定用粘着テープにより、物品が、仮止め固定されていることを特徴とする、仮止め固定物品、に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の仮止め固定用粘着テープは、粘着剤層の形成にアクリル系エマルション型粘着剤を用いており、物品の被着体(被着部分)に対する接着力が良好であり、被着部分に粘着テープを貼り付けた状態で応力が発生しても剥がれにくく、物品の仮止め固定を確実に行うことができる。
【0013】
また、本発明では、基材として、機械的強度の良いポリエステル系フィルムを用い、粘着剤層の形成に用いるアクリル系エマルション型粘着剤には、架橋剤として、オキサゾリン基含有水系架橋剤を用い、かつ、前記基材と粘着剤層との間には、オキサゾリン基を含有する水系樹脂により下塗り層を設けている。このように、本発明では、基材、粘着剤層の架橋剤、下塗り層の材料として、それぞれ、選択して用いることにより、基材と粘着剤層との密着性を向上させている。そのため、本発明の仮止め固定用粘着テープは、目的を達成した後、被着体からの剥離を容易に行うことができ、被着部分の印刷面の毟り取りや、糊残りを生じにくくしている。また、本発明の仮止め固定用粘着テープの粘着剤層は、接着力が良好である他、凝集力(保持力)も良好であり、かかる点からも被着部分の印刷面の毟り取りや糊残りを生じにくくしている。
【0014】
このように本発明の仮止め固定用粘着テープは、物品の被着部分の仮止め固定を確実に行うことができる接着力を有し、かつ、糊残りなく、容易に剥がすことができ、接着性と剥離性の相反する特性を満足することができる。仮止め固定用粘着テープが適用される物品として例示される、家電製品の国内仕様では、流通段階における環境温度として、−20℃〜+50℃の範囲が想定されているが、かかる本発明の仮止め固定用粘着テープは、前記仕様において、好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の物品の仮止め固定用粘着テープは、基材として、ポリエステル系フィルムを用いる。ポリエステル系フィルムの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリナフチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。ポリエステル系フィルムは、延伸フィルムを用いることができる。ポリエステル系フィルムは、機械的強度の点より、厚みが30〜50μmの範囲のものを用いるのが、家電製品の部品等を確実に仮固定することができるので好ましい。なお、厚みが30μm未満のポリエステル系フィルムでは切れ易く、家電製品の部品を確実に仮固定するのに強度が不足する場合がある。一方、厚みが50μmを超えると鋼性が高くて扱い難く、コストが高くなるので好ましくない。
【0016】
上記ポリエステル系フィルム表面にはコロナ放電処理を設けておくのが好ましい。またポリエステル系フィルムには、必要に応じて印刷などを施すことができる。また、ポリエステル系フィルムの粘着剤層を設けない側には、粘着テープを巻回したときの剥離性を確保するために、長鏡アルキル系、シリコーン系の背面処理剤により背面処理層を設けることができる。
【0017】
本発明の仮止め固定用粘着テープにおいて粘着剤層を形成するアクリル系エマルション型粘着剤は、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有する単量体混合物から得られたアクリル系共重合体エマルションを含有する。アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを意味する。
【0018】
アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートとしては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、などがあげられ、これらの中からその1種または2種以上が用いられる。
【0019】
これらアルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートは、アクリル系共重合体エマルションを構成する単量体の主成分として、全単量体中、50〜99.9重量%程度を含むことが好ましい。好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、さらには93重量%以上の割合で用いられる。アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートの割合が少ないと、良好な接着性の粘着剤が得られにくい。
【0020】
共重合体エマルションを構成する単量体は、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートのほかに、被着体への接着力を向上させること、架橋点を導入すること、粘着剤の凝集力を高めることを目的とし、カルボキシル基含有単量体を含有している。カルボキシル基含有単量体は、分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を含有していればよい。カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などがあげられる。
【0021】
カルボキシル基含有単量体は、アクリル系共重合体エマルションを構成する全単量体中、0.1〜10重量%程度、好ましくは0.5〜7重量%の割合で用いられる。カルボキシル基含有単量体が0.1重量%未満では、凝集力が低下し、基材に対する密着性が低下するおそれある。一方、10重量%を超える場合には、粘着性が低下するおそれがある。なお、単量体として、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシル基含有単量体を用いる場合には、それらの合計量が100重量%になるように調整する。
【0022】
また、アクリル系共重合体エマルションには、本発明の特性に支障がない範囲で、前記以外の単量体を使用してもよい。これら他の単量体等は、アクリル系共重合体エマルションを構成する全単量体中、10重量%以下の割合で使用するのが好ましい。
【0023】
上述の他の単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有単量体;プロピルトリメトキシシラン(メタ)アクリレート、プロピルジメトキシシラン(メタ)アクリレート、プロピルトリエトキシシラン(メタ)アクリレートなどのアルコキシシリル基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどがあげられる。また、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜3のアルキル(メタ)アクリレート;トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が13〜18のアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエンなどがあげられる。また、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の二つ以上の重合性官能基を有するものがあげられる。これら単量体はその1種を単独でまたは2種以上を使用できる。
【0024】
アクリル系共重合体エマルションは、前記単量体を、乳化剤の存在下に、適宜の重合開始剤を用いて、常法により乳化重合することにより得られる。乳化重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などにより行う。
【0025】
乳化剤としては、乳化重合において用いられるアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤を特に制限なく使用できる。たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。その他、カチオン系乳化剤、両性乳化剤を用いることができる。乳化剤の使用量は、特に制限されないが、単量体(合計)100重量部に対して、0.3〜5重量部程度とするのが好ましい。
【0026】
重合開始剤としては、たとえば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイドなどの過酸化物系開始剤や、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドツクス系開始剤などがあげられる。また、乳化重合においては、得られる共重合体の分子量の調整のために、必要に応じて、メルカプタン類などに代表される適宜の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0027】
アクリル系共重合体エマルションは、重量平均分子量が100万以上であるのが好ましく、さらには100万〜200万であることが好ましい。重量平均分子量が100万未満の場合には、アクリル系エマルション型粘着剤の凝集力が低下し、基材に対する密着性も低下する傾向がある。重量平均分子量は、テトラヒドロフラン可溶分をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した値である。
【0028】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤は、上記アクリル系共重合体エマルションおよびオキサゾリン基含有水系架橋剤を含有する。オキサゾリン基含有水系架橋剤としては、分子内にオキサゾリン基を有し、かつ水分散性または水溶性の水系架橋剤であれば、制限なく使用できる。例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを1種又は2種以上用いて乳化重合等により得られた水系架橋剤が用いられる。具体的には、株式会社日本触媒製の商品名「エポクロスWS−500」、「エポクロスWS−700」があげられる。
【0029】
オキサゾリン基含有水系架橋剤(固形分)の配合量は、アクリル系共重合体エマルション100重量部(固形分)に対して、0.01〜10重量部程度とするのが好ましい。同配合量が0.01重量部未満の場合は、架橋剤としてのオキサゾリン基が少なくなるため、凝集力が低下し、基材に対する密着性も低下するおそれがある。一方、同配合量が10重量部%を超える場合は、接着力が低下する傾向がある。
【0030】
さらに、本発明で用いられるアクリル系エマルション型粘着剤には、その特性を阻害しない範囲で各種添加剤、例えば軟化剤、可塑剤、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤を用いることができる。また、前記オキサゾリン基と前記アクリル系共重合体エマルション中のカルボキシル基の反応速度の調整剤として、カルボキシル基と塩を形成する水酸化ナトリウムなどの水酸化金属化合物、アンモニア、アルキルアミンなどの塩基性化合物を配合することができる。
【0031】
なお、本発明の水性エマルション型粘着剤組成物は、ガラス転移温度が−20〜−80℃、さらに−10〜−60℃であることが望ましい。ガラス転移温度は、DSC(示差熱分析)により測定した値である。
【0032】
本発明の物品の仮止め固定用粘着テープは、前記基材と粘着剤層との間に、オキサゾリン基を含有する水系樹脂により形成された下塗り層を有する。
【0033】
下塗り層を形成するために用いられる下塗り剤は、オキサゾリン基を含有する水系樹脂は、水溶性ポリマー又は水系エマルションである。オキサゾリン基を含有する水系樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましく、具体的には、オキサゾリン基を側鎖に含有するアクリル樹脂、オキサゾリン基を側鎖に含有するポリスチレン−アクリルニトリル共重合体などのアクリル系樹脂等、があげられる。なお、下塗り剤には、オキサゾリン基を含有する水系樹脂の他に、本発明の目的を損なわない範囲で添加剤等を加えることもできる。
【0034】
オキサゾリン基を含有する水系樹脂の市販品としては、例えば、水系エマルションとしては、(株)日本触媒製の商品名「エポクロスK−1000」シリーズ、「エポクロスK−2000」シリーズがあげられる。
【0035】
本発明の物品の仮止め固定用粘着テープは、前記基材に、前記下塗り剤により形成された下塗り層を介して、粘着剤層が設けられている。
【0036】
下塗り層の形成は、通常、前記基材に、下塗り剤を塗工し、乾燥することにより行われる。下塗り層の厚み(乾燥後)は、通常、0.001〜3μm程度、好ましくは0.01〜2μmである、さらに好ましくは、0.03〜2μmである。かかる範囲の厚みであれば、基材と粘着剤層との密着性を十分向上させることができる。
【0037】
粘着剤層の形成は、上述のアクリル系エマルション型粘着剤を、下塗り層の表面に直接塗布し乾燥させることにより形成することができる。またセパレータ上に形成した粘着剤層を、下塗り層を有する基材上に転写することによっても粘着剤層を形成することができる。粘着剤層の厚み(乾燥後)は、通常、10〜50μm程度、好ましくは20〜40μmである。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、部は重量部を意味する。
【0039】
実施例1
(基材)
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。当該フィルムは、一方の面に、長鎖アルキル系背面処理剤(一方社油脂工業株式会社製,ピーロイル1010)を溶剤(トルエン)に溶解した溶液を、乾燥厚みが、0.5μmとなるように塗工した背面処理層を有する。
【0040】
(下塗り剤)
オキサゾリン基含有アクリル系エマルション(株式会社日本触媒製,エポクロスK−2020E)を用いた。
【0041】
(粘着剤)
アクリル系共重合体エマルション(DOW社製,DOW UCAR LATEX R‐9801M)の固形分100部に対し、オキサゾリン基含有水溶性架橋剤(株式会社日本触媒製,WS−700)2部(固形分換算)を配合して、アクリル系エマルション型粘着剤を調製した。
【0042】
前記アクリル系共重合体エマルションは、n−ブチルアクリレート95部およびアクリル酸5部を、アニオン系乳化剤の存在下に、乳化重合して得られたものであり、重量平均分子量は150万であった。また、アクリル系エマルション型粘着剤のガラス転移温度は−45℃であった。
【0043】
(粘着テープの作製)
上記基材の片面(背面処理層を設けていない側)に、上記下塗り剤を乾燥後の厚さが1μmになるように塗工して、100℃で1分間乾燥し、下塗り層を形成した。さらに、下塗り層の上に、上記アクリル系エマルション型粘着剤を、乾燥後の厚さが30μm厚みとなるように塗工して、120℃で3分間乾燥し、粘着剤層を形成して、粘着テープを得た。
【0044】
比較例1
(下塗り剤)
塩素化ポリエチレン(昭和電工株式会社製,エラスレン301A)を用いた。
【0045】
(粘着テープの作製)
実施例1において、下塗り剤として、上記記載のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下塗り層を形成した。また、実施例1と同様のアクリル系エマルション型粘着剤により、実施例1と同様にして粘着剤層を形成して、粘着テープを得た。
【0046】
比較例2
(下塗り剤)
メチルメタクリレートグラフト化天然ゴム100部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製,コロネートL)2部を配合したものを用いた。
【0047】
(粘着テープの作製)
実施例1において、下塗り剤として、上記記載のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下塗り層を形成した。また、実施例1と同様のアクリル系エマルション型粘着剤により、実施例1と同様にして粘着剤層を形成して、粘着テープを得た。
【0048】
比較例3
(下塗り剤)
アクリロニトリル−ブタジエンゴム85部とポリアミド15部の混合物を用いた。
【0049】
(粘着テープの作製)
実施例1において、下塗り剤として、上記記載のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下塗り層を形成した。また、実施例1と同様のアクリル系エマルション型粘着剤により、実施例1と同様にして粘着剤層を形成して、粘着テープを得た。
【0050】
比較例4
(粘着剤)
アクリル系共重合体エマルション(DOW社製,DOW UCAR LATEX R‐9801M)の固形分100部に対し、アジリジン系架橋剤(株式会社日本触媒製,ケミタイトPZ‐33)0.5部(固形分換算)を配合して、アクリル系エマルション型粘着剤を調製した。
【0051】
(粘着テープの作製)
実施例1において、実施例1と同様の下塗り剤により、実施例1と同様にして、下塗り層を形成した。また、粘着剤として、上記記載のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成して、粘着テープを得た。
【0052】
比較例5
(粘着剤)
アクリル系共重合体エマルション(DOW社製,DOW UCAR LATEX R‐9801M)の固形分100部に対し、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学株式会社製,TETRAD‐X)0.5部(固形分換算)を配合して、アクリル系エマルション型粘着剤を調製した。
【0053】
(粘着テープの作製)
実施例1において、実施例1と同様の下塗り剤により、実施例1と同様にして、下塗り層を形成した。また、粘着剤として、上記記載のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成して、粘着シートを得た。
【0054】
比較例6
(粘着テープの作製)
実施例1において、下塗り剤により、下塗り層を形成することなく、基材に、直接、実施例1と同様のアクリル系エマルション型粘着剤により、実施例1と同様にして粘着剤層を形成して、粘着テープを得た。
【0055】
比較例7
(粘着剤)
アクリル系共重合体エマルション(DOW社製,DOW UCAR LATEX R‐9801M)を、架橋剤を配合することなく用いた。
【0056】
(粘着テープの作製)
実施例1において、実施例1と同様の下塗り剤により、実施例1と同様にして、下塗り層を形成した。また、粘着剤として、上記記載のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成して、粘着シートを得た。
【0057】
(評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートを用いて、粘着力、剪断力、保持力および被着体に対する糊残り性を測定し、評価した。それぞれの測定方法および評価方法は以下の通りである。粘着シートの下塗り剤、粘着剤の成分とともに評価結果を表1に示す。なお、評価に用いたポリカーボネート板(PC板)は、粘着シートに対する粘着力が高く、糊残りしやすいことから、本発明の優位性を示す被着体としてポリカーボネート板(PC)を中心に特性比較を実施したものであり、当該評価は本発明の粘着シートが適用される材質を限定するものではない。
【0058】
〔粘着力〕
25mm幅の粘着シートを、予めトルエンにて洗浄したステンレス板(SUS304BA)およびポリカーボネート板(PC)に、23℃×60%RH中で、ゴムローラーにて、それぞれ貼り合わせ、30分間放置した後、当該試料を万能引張試験機(株式会社オリエテック製,RTM−100)にて、剥離速度300mm/minで180°方向に引き剥がした時の抵抗を、粘着力(N/25mm)として測定した。剥離性の点から、粘着力は、5〜15N/25mm、さらには5〜10N/25mmであることが好ましい。
【0059】
〔剪断力〕
25mm幅の粘着シートを、予めトルエンにて洗浄したステンレス板(SUS304BA)に、23℃×60%RH中で、圧着面積が25mm×25mmとなるようにゴムローラーにて貼り合わせ、30分間放置した後、当該試料を万能引張試験機(株式会社オリエテック製,RTM−100)にて、剥離速度300mm/minで剪断方向に剥がした時の抵抗を剪断力(N/25mm×25mm)として測定した。被着体に対する応力下における接着性の点から、剪断力は、100〜400N/25mm×25mm、さらには150〜250N/25mm×25mmであることが好ましい。
【0060】
〔保持力〕
JIS Z−0237に準じて、測定温度40℃、吊下げ荷重1kgの条件で60分間後のズレ距離(mm)を測定した。被着体に対する応力下における接着性の点から、保持力は、0〜1mm、さらには0〜0.3mmであることが好ましい。
【0061】
〔被着体に対する糊残り性〕
ポリカーボネート板(PC)およびポリスチレン板(PS)を被着体として、粘着シートをそれぞれ貼り付け、60℃にて120時間放置した後、室温(23℃)に戻してから、人の手により粘着シートを剥離し、剥離時に被着体から粘着剤が剥がれているかを以下の基準で目視観察し判定した。
◎:被着体に粘着剤の剥がれ残りが全く認められない。
△:被着体に粘着剤の剥がれが少し認められる。
×:被着体に粘着剤の剥がれ残りが認められる。
【0062】
【表1】

表1中、A:オキサゾリン基含有アクリル系エマルション(株式会社日本触媒製,エポクロスK−2020E)、B:塩素化ポリエチレン(昭和電工株式会社製,エラスレン301A)、C:メチルメタクリレートグラフト化天然ゴムとシソシアネート系架橋剤の配合物、D:アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリアミドの混合物、である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に粘着剤層を有する、物品の仮止め固定用粘着テープにおいて、
基材が、ポリエステル系フィルムであり、
粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有する単量体混合物から得られたアクリル系共重合体エマルションおよびオキサゾリン基含有水系架橋剤を含有するアクリル系エマルション型粘着剤により形成されたものであり、
基材と粘着剤層との間には、オキサゾリン基を含有する水系樹脂により形成された下塗り層を有することを特徴とする物品の仮止め固定用粘着テープ。
【請求項2】
請求項1記載の物品の仮止め固定用粘着テープにより、物品が、仮止め固定されていることを特徴とする、仮止め固定物品。

【公開番号】特開2006−282733(P2006−282733A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101524(P2005−101524)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(300007095)日東電工CSシステム株式会社 (16)
【Fターム(参考)】