説明

物品管理システム

【課題】 大きなコストを要せずに比較的広範囲にある物品のタグからの情報を収集できる物品管理システムを提供する。
【解決手段】 各物品Gに添付され、ID情報20Aを格納した格納手段20と、ID情報20Aを電波信号にて送信するID送信手段24とを備えた複数のタグ2と、タグ2からのID情報20Aを受信する親機3と、各物品Gを特定する情報と各子機2のID情報20Aとを関連付けて記憶し、親機3が受信したID情報20Aを基に物品Gの存否を管理する物品管理装置5とを有し、親機3は、所定の子機に対しID情報の送信を要求する要求情報を電波信号にて送信し、各子機2は、要求情報を受信する要求受信手段21と、要求情報を電波信号にて送信する要求送信手段22とを備え、親機3からの要求情報が、要求受信手段21と要求送信手段22とにより上記所定の子機へリレーされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の在庫や商品の店内配置など複数の物品を管理するための物品管理システムに関する。特に、各物品にそれぞれ添付された子機(タグ)と、各タグからの情報を収集する親機と、親機により収集された情報に基づいて物品の管理を行う管理装置とを含んで構成される物品管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品や商品にタグを添付し、そのタグからの情報に基づいて製品等の存否や移動状態などを把握するように構成された物品管理システムが用いられている。下記の特許文献1、2は、そのような物品管理システムの一例を開示している。
【0003】
特許文献1には、在庫管理の手間と時間を省くことを目的とした構成として、商品に付される少なくとも1個の商品タグ、光送信手段、電波受信手段、および、情報収集手段とを有し、前記商品タグは、光受信手段、電波送信手段、識別情報が設定された設定手段、および、これらの手段を動作させる電源を有し、前記光受信手段は、空間的に伝送される所定の波長の光信号を検出し、前記電波送信手段を起動し、前記電波送信手段は、その起動から前記設定手段に設定された識別情報を電波信号として送出し、前記光送信手段は、前記情報収集手段の制御に従って前記光受信手段に前記光信号を送出し、前記電波受信手段は、前記商品タグからの電波信号を受信して前記識別情報を識別してこれを前記情報収集手段に通知し、前記情報収集手段は、前記電波受信手段で識別された前記識別情報に基づいて前記商品タグの付された商品の有無を判断する商品管理装置が記載されている。
【0004】
同文献の第1図に示すように、商品タグは、ショーケース内に配置された各商品に設けられ、各ショーケース内には、商品タグに応答要求信号(光信号)を送出する複数の光送信機が設けられている。商品タグは、光信号を受けて応答信号(電波信号)を発する。管理装置は、各商品タグからの応答信号を受信機(親機)を介して取得して各商品タグの有無を判断して在庫管理を行う。
【0005】
なお、商品タグからの応答信号の出力として、伝送距離が3〜4m程度の微弱電波を用いるのが好適であることが指摘されている。
【0006】
ところが、商品が配置される店舗のサイズは大小さまざまであり、特に大きな店舗の場合などには、商品タグからの応答信号が受信機まで届かないことも想定される。また、受信機に対して壁等の陰にある商品については、商品タグからの応答信号を受信できないことも想定される。そのような事態に対処するために、例えば特許文献1の第2の実施例にも記載のような、複数の受信機や管理装置を設けた構成のシステムが適用されている。
【0007】
このように複数の受信機(親機)や管理装置を要する構成を採用すると、比較的広範囲に亘って配置された物品のタグからの情報を収集できる一方で、システムの導入や保守には大きなコストが必要となるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−314996号公報(請求項2、明細書段落[0004)、[0012]、[0013]、[0016]、[0043]−[0046]、第1図、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたもので、大きなコストを掛けることなく、比較的広範囲に亘って配置された物品のタグからの情報を収集することが可能な物品管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の物品にそれぞれ添付され、固有のID情報を格納した格納手段と、前記ID情報を電波信号にて送信するID送信手段とをそれぞれ備えた複数の子機と、前記子機から送信された前記ID情報を受信する親機と、前記親機と通信可能に接続され、前記複数の物品をそれぞれ特定する情報と前記複数の子機のそれぞれの前記ID情報とを互いに関連付けて記憶し、前記親機により受信された前記ID情報に基づいて前記複数の物品の存否を管理する物品管理装置と、を有する物品管理システムであって、前記親機は、前記複数の子機の内の所定の子機に対して前記ID情報を送信するように要求する要求情報を電波信号にて送信し、前記複数の子機のそれぞれは、前記要求情報を受信する要求受信手段と、前記受信された前記要求情報を電波信号にて送信する要求送信手段とを備え、前記親機により送信された前記要求情報が、前記複数の子機の前記要求受信手段と前記要求送信手段とによって前記所定の子機へリレーされる、ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の物品管理システムであって、前記複数の子機のそれぞれは、前記ID情報を受信するID受信手段を備え、前記要求情報に応じて前記所定の子機から送信された前記ID情報が、前記複数の子機の前記ID受信手段と前記ID送信手段とによって前記親機までリレーされる、ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の物品管理システムであって、前記要求情報には、前記所定の子機の前記ID情報が含まれており、前記複数の子機のそれぞれは、前記要求情報に含まれる前記所定の子機のID情報と当該子機自身のID情報とを比較して、双方の前記ID情報が一致するか否かを判断する判断手段を備え、前記判断手段により前記双方の前記ID情報が一致すると判断されたとき、前記ID送信手段は、前記格納手段に格納された前記ID情報を送信し、前記双方の前記ID情報が一致しないと判断されたとき、前記要求送信手段は、前記受信された前記要求情報を送信する、ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の物品管理システムであって、前記複数の子機のそれぞれは、前記要求受信手段により前記要求情報が受信されたことに対応して要求受信済情報を記録する第1の記録手段と、前記要求受信手段により要求情報が新たに受信され、その新たな要求情報に対応する前記要求受信済情報が前記第1の記録手段に記録されているときに、前記要求送信手段による前記新たな要求情報の送信を禁止する要求送信禁止手段と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の物品管理システムであって、前記複数の子機のそれぞれは、前記ID受信手段により前記ID情報が受信されたことに対応してID受信済情報を記録する第2の記録手段と、前記ID受信手段によりID情報が新たに受信され、その新たなID情報に対応する前記ID受信済情報が前記第2の記録手段に記録されているときに、前記ID送信手段による前記新たなID情報の送信を禁止するID送信禁止手段と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の物品管理システムであって、前記複数の子機のそれぞれは、前記親機からの要求に応じて、前記ID送信手段及び/又は前記要求送信手段による前記電波信号の出力強度を変更して前記電波信号の到達範囲を変更する出力強度変更手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の物品管理システムであって、前記複数の子機のそれぞれの前記ID送信手段は、当該子機を特定する子機特定情報を前記所定の子機の前記ID情報に添付して送信し、前記物品管理装置は、前記ID情報に添付された前記子機特定情報に基づいて、当該ID情報が経由した前記子機を表す経由情報を記憶する経由情報記憶手段と、当該ID情報の前記経由情報が新たに得られ、その新たな前記経由情報が前記経由情報記憶手段に既に記憶されている当該ID情報の前記経由情報と異なるときに報知を行う報知手段とを備えている、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の物品管理システムであって、前記要求情報は、前記複数の子機の内の2つ以上の子機に対して前記ID情報を送信するように要求することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の物品管理システムによれば、ID情報の要求対象である子機が親機と直接に通信可能な位置に配置されていない場合、例えば、当該子機が親機から遠い位置に配置されている場合や、当該子機と親機との間に壁などがある場合などであっても、他の子機が親機からの要求情報をリレーして要求対象の子機まで伝達することができる。したがって、従来のように大きなコストを掛けて複数の親機を設置しなくても、目的の子機まで要求情報を伝達することができ、比較的広範囲に亘って配置された物品に添付された子機からのID情報を収集することが可能となる。
【0019】
また、請求項2に記載の物品管理システムによれば、他の子機が要求対象の子機から送信されたID情報を親機までリレーして伝達することができる。したがって、複数の親機を設置しなくても、比較的広範囲に亘って配置された物品に添付された子機からのID情報を収集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る物品管理システムの好適な実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
[システム構成]
図1は、本発明に係る物品管理システム1の全体構成の一例を表す。本システム1は、例えば倉庫W内に配置された各種の物品Gの在庫管理等を行うために利用されるものであり、各物品Gに添付されたタグ(子機)2と、倉庫W内に設けられた親機3と、この親機3と通信線4を介して通信可能に接続された物品管理装置5とを含んで構成される。通信線4は、通信ケーブルを含んで構成されている。なお、通信線4に代えて、親機3と物品管理装置5とを無線通信方式にて接続していてもよい。
【0022】
なお、倉庫W内には複数の物品が配置され、各物品毎にタグ2が添付されているが、図1においては、図解を容易にするために、その複数の物品の内の1つのみが記載されている。
【0023】
ここで、本発明に係る物品管理システム1について簡単に説明しておく。物品管理システム1は、倉庫W内に配置された複数の物品Gを管理するために用いられる。物品管理装置5は、各物品Gを特定する情報と、その物品Gに添付されたタグ2に格納された後述のID情報とを関連付けた物品管理情報を記憶している。なお、各物品Gを特定する情報(物品特定情報と呼ぶ)としては、その製品名や製品番号、あるいは、各物品に対して任意に付与された番号や文字列などを使用することができる。
【0024】
親機3は、例えば物品管理装置5からの指示に応じ、複数のタグの内の所定のタグに対してID情報を送信するように要求する要求情報を電波信号にて送信する。この要求情報は、複数のタグによりリレーされて目的のタグまで伝達される。この目的のタグは、要求情報に応じて自身のID情報を送信する。送信されたID情報は、再び複数のタグによりリレーされて親機3まで伝達される。なお、このような複数のタグによる情報のリレーが本発明の特徴の一つである。
【0025】
親機3は、受信したID情報を通信線4を通じて物品管理装置5に送る。物品管理装置5は、親機3からのID情報と上記物品管理情報に基づいて、当該ID情報を有するタグが添付された物品の存否を把握することができる。
【0026】
以下、このような処理を実現する物品管理システム1を構成する各要素の詳細を説明する。ここで、倉庫W内に配置された物品の個数をNとする。これらN個の物品をそれぞれ符号G−1〜G−Nで表すことがある。また、物品G−1〜G−Nにそれぞれ添付されたタグを符号2−1〜2−Nで表すことがある。
【0027】
〔タグの構成〕
図2、3を参照して、タグ2(符号「2−1」のタグとする)の構成について説明する。図2は、タグ2の機能的構成の一例を表す。また、図3は、この機能的構成を実現するためのタグ2のハードウェア構成の一例を表す。
【0028】
(タグの機能的構成)
まず、図2を参照して、タグ2の機能的構成について説明する。タグ2は、格納手段20、要求受信手段21、要求送信手段22、ID受信手段23、ID送信手段24、判断手段25、要求受信済記録手段26、ID受信済記録手段27、要求送信禁止手段28、ID送信禁止手段29及び制御手段30を含んで構成される。タグ2は、親機3からの要求情報の例えばヘッダに設けられた処理開始コマンドに基づいて処理を開始する。
【0029】
制御手段30は、各手段20〜29の動作を制御するもので、特に、各手段20〜29に対する各種情報の送信や受信、電力の供給などを実行する。制御手段30の具体的な処理内容については適宜後述することとする。
【0030】
格納手段20は、タグ2に固有のID情報20Aを格納している。このID情報20Aは、例えば、数字やアルファベット等の各種文字や各種記号などの任意の組み合わせからなる所定の文字列により形成される。
【0031】
タグ2−1〜2−NのID情報20Aをそれぞれ符号20A−1〜20A−Nで表すと、各ID情報20A−1〜20A−Nは全て相違している。例えば、タグ2−k(k=1〜N)のID情報20A−kを文字列「2k」などから形成することができる。それにより、各物品G−1〜G−Nの物品特定情報と各ID情報20A−1〜20A−Nとを、一対一に対応付けることができる。上記の例の場合においては、物品G−kの物品特定情報(例えば「Gk」)と、ID情報20A−kの文字列「2k」とが対応付けられる。なお、物品管理装置5に記憶される上述の物品管理情報は、この対応関係に基づいて形成される。
【0032】
要求受信手段21は、親機3あるいは他のタグ2−2〜2−Nから送信された要求情報を受信する処理を行う。受信された要求情報は制御手段30に送られる。
【0033】
要求送信手段22は、要求受信手段21が受信した要求情報を制御手段30から受け、電波信号として送信する処理を行う。要求送信手段22による送信処理は、例えば、直接の送信先を指定して行われるものではなく、電波信号の到達範囲内に全方位的に送信するようになっている。その場合、タグ2−1の要求送信手段22から送信された要求情報は、他のタグ2−2〜2−N及び親機3の内、電波信号の到達範囲内に存在するものによって受信される。ここで、「到達範囲」とは、この電波信号により有効に通信可能な範囲、換言すれば、送信される要求情報やID情報が、他の機器によって有効に受信される範囲を意味しているものとする。
【0034】
ID受信手段23は、他のタグ2−2〜2−Nのいずれかから送信されたID情報20A−2〜20A−Nを受信する処理を行う。受信されたID情報20A−2〜20A−Nは制御手段30に送られる。
【0035】
ID送信手段24は、タグ2−1自身の格納手段20に格納されたID情報20−1を制御手段30から受けて電波信号として送信する処理と、ID受信手段23が受信した他のタグ2−2〜2−NのID情報20−2−20−Nを制御手段30から受けて電波信号として送信する処理とを行う。
【0036】
判断手段25は、要求情報によりID情報の送信を要求されるタグ(要求対象タグ2−Sと表す;S=1〜N)がタグ2−1自身であるか否かを判断する処理を行う。より具体的に説明すると、要求情報には、要求対象タグ2−SのID情報20A−Sが含まれており、判断手段25は、このID情報20A−Sと自身のID情報20A−1とを比較して、双方が一致するときに、要求対象タグ2−Sはタグ2−1自身であると判断し、一致しないときに、要求対象タグ2−Sはタグ2−1自身ではないと判断する。上記の例においては、判断手段25は、要求情報に含まれるID情報「2S」と、自身のID情報「21」とを比較し、これらが一致しているか否か(すなわちS=1であるか否か)を判断することにより、要求対象タグ2−Sがタグ2−1自身であるか否か判断する。
【0037】
判断手段25により要求対象タグ2−Sがタグ2−1自身であると判断された場合、制御手段30は、格納手段20に格納された自身のID情報20A−1をID送信手段24に送る。ID送信手段24は、この自身のID情報20A−1を送信する。一方、要求対象タグ2−Sがタグ2−1自身ではないと判断された場合、制御手段30は、要求情報を要求送信手段22に送る。要求送信手段22は、この要求情報を送信する。
【0038】
要求受信済情報記録手段26は、本発明にいう「第1の記録手段」に相当し、要求受信手段21により要求情報が受信されたことに対応して所定の要求受信済情報26Aを記録する。要求受信済情報26Aは、要求情報が受信されたことに対応して制御手段30により生成され、制御手段30により要求受信済情報記録手段26に記録される。この要求受信済情報26Aとしては、例えばフラグ等を用いることができる。また、要求情報に含まれる要求対象タグ2−SのID情報20A−Sなどの要求対象タグ2―Sに固有の情報を、要求受信済情報26Aとして記録することもできる。
【0039】
ID受信済情報記録手段27は、本発明にいう「第2の記録手段」を構成し、ID受信手段23により他のタグ2−2〜2−NのID情報20A−2〜20A−Nが受信されたことに対応して所定のID受信済情報を記録する。ID受信済情報27Aは、ID情報20A−2〜20A−Nが受信されたことに対応して制御手段30により生成され、制御手段30によりID受信済情報記録手段27に記録される。このID受信済情報27Aとしては、要求受信済情報26Aと同様に、例えば、フラグや他のタグ2−2〜2−Nに固有の情報を用いることができる。
【0040】
要求送信禁止手段28は、要求受信手段21により要求情報が受信されたときに制御手段30から送られる制御信号に基づいて、要求送信手段22による要求情報の送信処理を禁止するように動作する。制御手段30は、要求情報が受信されたことに対応し、要求受信済情報記録手段26を検索して、当該要求情報に対応する要求受信済情報26Aが記録されているかどうか判断する。記録されている場合、制御手段30は、要求送信禁止手段28に制御信号を送って、要求送信手段22による送信処理を禁止させる。一方、記録されていない場合には、制御手段30は、制御信号の送信を行わず、要求送信手段22に要求情報の送信処理を実行させる。
【0041】
ID送信禁止手段29は、ID受信手段23により他のタグ2−2〜2−NのID情報20A−2〜20A−Nが受信されたときに制御手段30から送られる制御信号に基づいて、ID送信手段24による当該ID情報20A−2〜20A−Nの送信処理を禁止するように動作する。制御手段30は、ID情報20A−2〜20A−Nが受信されたことに対応し、ID受信済情報記録手段27を検索して、当該ID情報20A−2〜20A−Nに対応するID受信済情報27Aが記録されているかどうか判断する。記録されている場合、制御手段30は、ID送信禁止手段29に制御信号を送って、ID送信手段24による送信処理を禁止させる。一方、記録されていない場合には、制御手段30は、制御信号の送信を行わず、ID送信手段24に当該ID情報20A−2〜20A−Nの送信処理を実行させる。
【0042】
(タグのハードウェア構成)
次に、図3を参照して、上記のような機能を実現するタグ2のハードウェア構成について説明する。タグ2は、コントローラ200、メモリ210、アンテナ220、RF(Radio Frequency;無線周波数)回路230及びバッテリ240を含んで構成される。
【0043】
コントローラ200は、タグ2の各部を制御するコントロール回路を含んで構成され、判断手段25、要求送信禁止手段28、ID送信禁止手段29及び制御手段30としてそれぞれ機能する。
【0044】
メモリ210は、例えばICチップ等を含んで構成され、格納手段20、要求受信済情報記録手段26及びID受信済情報記録手段27としてそれぞれ機能する。メモリ210に記録された情報の読み出し、書き込みは、コントローラ200によって行われる。
【0045】
アンテナ220は、要求受信手段21、要求送信手段22、ID受信手段23及びID送信手段24としてそれぞれ機能する。
【0046】
RF回路230は、電波信号と電気信号とを相互に変換するように作用し、アンテナ220により受信された電波信号を電気信号に変換してコントローラ200に入力する処理と、コントローラ200から出力された電気信号を電波信号に変換してアンテナ220に出力する処理とを行う。なお、RF回路230は、電気信号を増幅する増幅回路を含んで構成されていてもよい。
【0047】
バッテリ240は、充電式あるいは非充電式の電池等を含んで構成される。コントローラ200は、バッテリ240から電力を受けて動作し、また、タグ2の各部に対して電力の供給を行う。
【0048】
〔親機、物品管理装置の構成〕
図4は、親機3及び物品管理装置5の構成の一例を表している。
【0049】
(親機の構成)
親機3は、制御部31、電波送受信部32、メモリ部33及び通信インターフェイス(I/F)部34を含んで構成されている。親機3は、通信I/F部34により通信線4を介して物品管理装置5と情報の送受を行う。
【0050】
制御部31は、例えばメモリ部33に格納されたプログラムに基づいて親機3の各部の制御を行うもので、例えばCPU等の演算制御装置を含んで構成される。制御部31は、物品管理装置5から入力される要求情報を電波送受信部32に出力する。なお、物品管理装置5から入力された要求情報をメモリ部33に一時的に記憶させ、所定のタイミングで電波送受信部32に送るようにしてもよい。
【0051】
電波送受信部32は、電波信号を送受信するアンテナを含んで構成されており、タグ2−1〜2−Nに対して電波信号を送信する処理と、タグ2−1〜2−Nから送信された電波信号を受信する処理とを行う。特に、電波送受信部32は、制御部31から送られた要求情報を電波信号としてタグ2−1〜2−N送信する。電波送受信部32による電波信号は、所定の到達範囲を有している。
【0052】
また、電波送受信部32は、タグ2−1〜2−Nから送信されたID情報20A−1〜20A−Nを受信して制御部31に入力する。制御部31は、電波送受信部32から入力されたID情報20A−1〜20A−Nを通信I/F部34に送り、通信線4を通じて物品管理装置5に入力させる。なお、タグ2−1〜2−NからのID情報20A−1〜20A−Nをメモリ部33に一時的に記憶させ、所定のタイミングで物品管理装置5に送るようにしてもよい。
【0053】
(物品管理装置の構成)
物品管理装置5は、物品管理用のコンピュータ端末などを含んで構成され、制御部51、管理情報記憶部52、通信I/F部53、入力操作部54及び表示部55を有している。物品管理装置5は、通信I/F53により通信線4を介して情報の送受を行う。
【0054】
管理情報記憶部52は、例えばハードディスクドライブ等の記憶装置を含んで構成され、物品G−1〜G−Nをそれぞれ特定する上述の物品特定情報と、各物品G−1〜G−Nに添付されたタグ2−1〜2−NのID情報20A−1〜20A−Nとを関連付けた物品管理情報を記憶している。
【0055】
制御部51は、所定のプログラムに基づいて物品管理装置5の各部の制御を行うもので、例えばCPU等の演算制御装置を含んで構成される。制御部51は、特に、要求情報を生成して親機3に送信する処理や、親機3から入力されるID情報20A−1〜20A−Nと管理情報記憶部52内の物品管理情報とに基づいて各物品G−1〜G−Nが倉庫W内に存在するか否かを判断する処理などを行う。
【0056】
入力操作部54は、物品管理装置5のオペレータが各種の入力操作を行うためのもので、例えば、キーボード、マウス、トラックボール等の入力デバイスや、タグ2−1〜2−NからID情報20A−1〜20A−Nを読み取るリーダ(データ書込機能も具備したリーダライタでもよい)やスキャナ等の情報入力装置などが含まれる。
【0057】
表示部55は、物品管理用の操作画面などの各種画面を表示するモニタ装置を含んで構成される。
【0058】
[動作態様]
以上のような構成を有する本実施形態の物品管理システム1の動作態様について、図5を参照して説明する。
【0059】
以下、説明の簡略化を考慮して、図5に示す物品管理システム1について説明をする。同図のシステム1は、5個の物品G−1〜G−5の存否を管理しており、各物品G−1〜G−5にそれぞれ添付されたタグ2−1〜2−5と、親機3とを含んでいる(物品管理装置5は図示省略)。親機3及び各タグ2−1〜2−5は、上述のように所定の到達範囲内の機器と通信することが可能である。ここでは、親機3とタグ2−1、2−4がそれぞれ信可能であり、タグ2−1とタグ2−2、タグ2−2とタグ2−3、タグ2−4とタグ2−5が、それぞれ通信可能であるとし、その他の組み合わせは通信できないものとする。
【0060】
まず、物品管理装置5の制御部51が、要求情報の生成を行う。このとき、制御部51は、例えば、オペレータが入力操作部54から行う物品の存否確認の開始指示を受けたときや、定期的なタイミングなどで、要求情報生成処理を実行する。生成された要求情報は、通信線4を介して親機3に送られる。
【0061】
親機3の制御部31は、物品管理装置5から入力された要求情報を電波送受信部32に送り電波信号として出力させる。親機3から出力された電波信号、すなわち要求情報は、タグ2−1及びタグ2−4の要求受信手段21によってそれぞれ受信される。
【0062】
〔1:要求対象タグがタグ2−1である場合〕
この要求情報の要求対象タグはタグ2−1であるとする。タグ2−1の制御手段30は、要求受信手段21が要求情報を受信したことに対応して、要求受信済情報26Aを生成して要求受信済情報記録手段26に記録させる。また、タグ2−1の判断手段25は、この要求情報に含まれるID情報と、自身のID情報20A−1との比較により双方のID情報は一致すると判断する。制御手段30は、判断手段25による判断結果を受け、格納手段20に格納された自身のID情報20A−1をID送信手段24に送り、電波信号として出力させる。
【0063】
タグ2−1から出力された電波信号は、親機3により受信されて電気信号として物品管理装置5に送られる。物品管理装置5は、この電気信号に含まれるID情報20A−1と管理情報記憶部52内の物品管理情報とに基づいて、物品G−1が存在することを把握する。
【0064】
なお、タグ2−1から出力された電波信号はタグ2−2にも受信されるが、当該電波信号は要求情報ではなく単なるID情報20A−1であるから、タグ2−2は、特に何の処理も行わない。また、タグ2−3についても、電波信号を何ら受信しないので、特に処理は行わない。
【0065】
一方、親機3からの要求情報を受信したタグ2−4は、制御手段30により要求受信済情報26Aを生成して記録させるとともに、判断手段25によって当該要求情報に含まれるID情報と自身のID情報20A−4とを比較する。ここで、要求対象はタグ2−1のID情報20A−1であるから、タグ2−4の判断手段25は、双方のID情報は一致しないと判断する。制御手段30は、その判断結果を受け、受信した要求情報を要求送信手段22に送り電波信号として出力させる。この電波信号は、タグ2−5によって受信される。
【0066】
タグ2−4からの電波信号(要求情報)を受信したタグ2−5は、要求受信済情報26Aを生成して記録させるとともに、判断手段25により当該要求情報に含まれるID情報と自身のID情報20A−4とを比較する。これらのID情報は相違しているので、タグ2−5の制御手段30は、当該要求情報を要求送信手段22に送り電波信号として出力させる。
【0067】
出力された要求情報は、タグ2−4により再び受信される。タグ2−4の要求受信済情報記録手段26には、当該要求情報に対応する要求受信済情報26Aが記録されているので、制御手段30は、要求送信禁止手段28に制御信号を送信して当該要求情報の送信を禁止させ、処理を終了する。また、このタグ2−4と通信可能なタグ2−5は、当該要求情報を再び受信することはなく、以降は何の処理も行わない。
【0068】
なお、親機3から出力された要求情報の要求対象タグがタグ2−4である場合については、上記と同様の処理が実行されるので、説明は省略することとする。
【0069】
〔2:要求対象タグがタグ2−2である場合〕
次に、親機3から出力された要求情報による要求対象タグがタグ2−2である場合の処理について説明する。なお、タグ2−4、2−5による処理については、上記の場合と同様であるので説明は省略する。
【0070】
タグ2−1の制御手段30は、要求受信手段21が親機3からの要求情報を受信したことに対応して、要求受信済情報26Aを生成して要求受信済情報記録手段26に記録させる。また、判断手段25は、この要求情報に含まれるID情報と、自身のID情報20A−1との比較を行う。双方のID情報は異なるので、制御手段30は、受信した要求情報を要求送信手段22に送り、電波信号として出力させる。
【0071】
タグ2−2は、要求受信手段21によりタグ2−1からの要求情報を受信する。タグ2−2の制御手段30は、要求受信済情報26Aを生成して要求受信済情報記録手段26に記録させるとともに、判断手段25を制御して、当該要求情報に含まれるID情報と自身のID情報20A−2とを比較させる。判断手段25は、これらのID情報は一致すると判断する。制御手段30は、この判断結果を受け、格納手段20に格納された自身のID情報20A−2をID送信手段24に送り電波信号として送信させる。この電波信号はタグ2−1、2−3によりそれぞれ受信される。なお、タグ2−3については、当該電波信号は要求情報ではないことから、何の処理も行わない。
【0072】
タグ2−1は、タグ2−2から出力されたID情報20A−2を受信する。ID受信済情報記録手段27にはID受信済情報27Aが記録されていないことから、タグ2−1の制御手段30は、受信したID情報20A−2をID送信手段24に送り電波信号として出力させる。また、タグ2−1の制御手段30は、ID情報20A−2を受信したことを示すID受信済情報27Aを生成してID受信済情報記録手段27に記録させる。
【0073】
タグ2−1から出力された電波信号(ID情報20A−2)は、親機3により受信される。親機3は、受信したID情報20A−2を電気信号に変換して物品管理装置5に出力する。物品管理装置5は、この電気信号に含まれるID情報20A−2と管理情報記憶部52内の物品管理情報とに基づいて、物品G−2が存在することを把握する。
【0074】
このように、親機3と直接に通信することができないタグ2−2のID情報20A−2が要求された場合、親機3から送信された要求情報は、タグ2−1を経由してタグ2−2にリレーされる。また、要求情報に応じてタグ2−2から送信されたID情報20A−2は、タグ2−1を経由して親機3までリレーされる。
【0075】
なお、親機3は、要求対象タグのID情報を受信したことに対応して、各タグ2−1〜2−5に記録された要求受信済情報26A及びID受信済情報27Aを消去するように要求する情報を出力する。各タグ2−1〜2−5の制御手段30は、その情報にしたがって、要求受信済情報記録手段26及びID受信済情報記録手段27の記録内容をそれぞれ消去する。
【0076】
親機3から出力された要求情報の要求対象タグがタグ2−5である場合については、以上と同様の処理が実行されるので、説明は省略することとする。
【0077】
〔3:要求対象タグがタグ2−3である場合〕
次に、親機3から出力された要求情報による要求対象タグがタグ2−3である場合の処理について説明する。
【0078】
タグ2−1の制御手段30は、要求受信手段21が親機3からの要求情報を受信したことに対応して、要求受信済情報26Aを生成して要求受信済情報記録手段26に記録させる。また、判断手段25は、この要求情報に含まれるID情報と、自身のID情報20A−1との比較を行う。双方のID情報は異なるので、制御手段30は、受信した要求情報を要求送信手段22に送り、電波信号として出力させる。
【0079】
タグ2−2は、要求受信手段21によりタグ2−1からの要求情報を受信する。タグ2−2の制御手段30は、要求受信済情報26Aを生成して要求受信済情報記録手段26に記録させるとともに、判断手段25を制御して、当該要求情報に含まれるID情報と自身のID情報20A−2とを比較させる。双方のID情報は異なるので、制御手段30は、受信した要求情報を要求送信手段22に送り、電波信号として出力させる。
【0080】
この電波信号(要求情報)はタグ2−1、2−3により受信される。当該要求情報を受信したタグ2−1の制御手段30は、要求受信済情報記録部26に記録された要求受信済情報26Aが当該要求情報に対応するものであることから、要求送信禁止手段28に制御信号を送り、要求送信手段22による要求情報の送信処理を禁止させる。
【0081】
また、タグ2−3は、要求受信手段21によりタグ2−2からの要求情報を受信すると、その制御手段30は、要求受信済情報26Aを生成して要求受信済情報記録手段26に記録させるとともに、判断手段25を制御して、当該要求情報に含まれるID情報と自身のID情報20A−3とを比較させる。判断手段25は、これらのID情報は一致すると判断する。制御手段30は、この判断結果を受け、格納手段20に格納された自身のID情報20A−3をID送信手段24に送り電波信号として送信させる。この電波信号はタグ2−2により受信される。
【0082】
タグ2−2は、タグ2−3からのID情報20A−3を受信する。ID受信済情報記録手段27にはID受信済情報27Aが記録されていないことから、タグ2−2の制御手段30は、受信したID情報20A−3をID送信手段24に送り電波信号として出力させる。また、タグ2−2の制御手段30は、ID情報20A−3を受信したことを示すID受信済情報27Aを生成してID受信済情報記録手段27に記録させる。
【0083】
タグ2−1は、タグ2−2から出力されたID情報20A−3を受信する。ID受信済情報記録手段27にはID受信済情報27Aが記録されていないことから、タグ2−1の制御手段30は、受信したID情報20A−3をID送信手段24に送り電波信号として出力させる。また、タグ2−1の制御手段30は、ID情報20A−3を受信したことを示すID受信済情報27Aを生成してID受信済情報記録手段27に記録させる。
【0084】
タグ2−1から出力された電波信号(ID情報20A−3)は、親機3により受信される。親機3は、受信したID情報20A−3を電気信号に変換して物品管理装置5に出力する。物品管理装置5は、この電気信号に含まれるID情報20A−3と管理情報記憶部52内の物品管理情報とに基づいて、物品G−3が存在することを把握する。
【0085】
なお、タグ2−2もタグ2−1からのID情報20A−3を受信するが、当該ID情報20A−3に対応するID受信済情報27AがID受信済情報記録手段27に記録されていることから、制御手段30からID送信禁止手段29に制御信号が送信されてID送信手段24によるID情報送信処理を禁止させる。
【0086】
親機3は、要求対象タグのID情報を受信したことに対応して、各タグ2−1〜2−5に記録された要求受信済情報26A及びID受信済情報27Aを消去するように要求する情報を出力する。各タグ2−1〜2−5の制御手段30は、その情報にしたがって、要求受信済情報記録手段26及びID受信済情報記録手段27の記録内容をそれぞれ消去する。
【0087】
このように、親機3と直接に通信することができないタグ2−3のID情報20A−3が要求された場合、親機3から送信された要求情報は、タグ2−1、2−2を経由してタグ2−3にリレーされる。また、要求情報に応じてタグ2−3から送信されたID情報20A−3は、タグ2−2、2−1を経由して親機3までリレーされる。
【0088】
[効果]
以上のような処理を実行する物品管理システム1の効果について説明する。
【0089】
本システム1によれば、要求対象タグが親機3と直接に通信可能な位置に配置されていない場合、例えば親機3から遠い場合や親機3との間に壁などがある場合などにおいても、タグを順次経由して親機3から出力された要求情報を要求対象タグまでリレーして伝達することができる。また、その要求情報に応じて要求対象タグから送信されたID情報も、タグを経由して親機3までリレー方式で伝達される。したがって、従来のように大きなコストを掛けて複数の親機を設置しなくても、比較的広範囲に亘って配置された物品のタグからの情報を収集することが可能である。
【0090】
また、各タグ2は、要求情報を受信すると要求受信済情報26Aを記録するようになっており、また、新たな要求情報を受信したときに、当該要求情報に対応する要求受信済情報26Aの有無を判断し、対応する要求受信済情報26Aが既に記録されている場合には、当該要求情報を再度送信しないようになっている。したがって、同じ要求情報が複数のタグ2間を何度も行き来することがないので、処理を効果的に行うことができるとともに、タグ2のバッテリ240の無駄な使用を回避することができる。
【0091】
同様に、各タグ2は、他のタグからID情報を受信するとID受信済情報27Aを記録するようになっており、また、新たなID情報を受信したときに、当該ID情報に対応するID受信済情報27Aの有無を判断し、対応するID受信済情報27Aが既に記録されている場合には、当該ID情報を再度送信しないようになっている。したがって、同じID情報が複数のタグ2間を何度も行き来することがないので、処理を効果的に行うことができるとともに、タグ2のバッテリ240の無駄な使用を回避することができる。
【0092】
[各種変形例]
以上のような物品管理システム1の各種の変形例を説明する。
【0093】
(変形例1)
上記の実施形態では、親機3から送信される要求情報には、要求対象タグが1つしか含まれていないが、一度に複数のタグに対してID情報の送信を要求するように構成することも可能である。その場合、タグ2は、要求情報に含まれる複数のID情報のそれぞれを自身のID情報20Aと比較して同一性を判断する。同一と判断されたID情報に対しては自身のID情報20Aを送信し、同一ではないと判断されたID情報に対しては要求情報をリレーする。また、あるタグから送信されたID情報は、上記実施形態と同様にして親機3までリレーされる。
【0094】
なお、本変形例においては、ID受信済情報27Aは、単に情報の受信を示すフラグではなく、要求情報に含まれる複数のID情報をそれぞれ判別可能とする情報(例えばID情報自体)である必要がある。
【0095】
また、要求情報に含まれる複数のID情報と同一のID情報20Aを送信したタグ2は、要求情報から自身のID情報20Aを要求するコマンドを削除してから、他のタグに要求情報を送信するようにしてもよい。
【0096】
(変形例2)
各タグ2や親機3は、電波信号の出力強度を変更可能とされていてもよい。タグ2は、例えば、親機3からの要求に応じて電波信号の出力強度を変更するように構成される。このような出力強度の変更は、各タグ2の制御手段30(コントローラ200)が、アンテナ220からの電波信号出力に対するバッテリ240の使用電力量を増減させることにより行われる。このとき、制御手段30(コントローラ200)は、本発明の「出力強度変更手段」として作用する。
【0097】
その一例として、要求対象タグが他のタグと通信可能な範囲にない場合など、親機3が要求したID情報を受信できなかったときに、各タグ2に対して出力強度の増大を要求する電波信号を親機3から出力させる。この電波信号を受けたタグは、出力強度を所定量だけ増大させて、当該電波信号をリレーする。それにより、要求対象タグの出力強度を増大させることができ、ひいては、この要求対象タグからのID情報を親機3までリレーして伝達させることができる。
【0098】
なお、要求したID情報が伝達されたら、親機は、各タグ2の出力強度を元に戻すように要求する電波信号を出力して、各タグ2の出力強度を元の値に復帰させるようにしてもよい。それにより、各タグ2の出力強度を必要なときだけ増大させることができるので、バッテリ240の消費を節約することが可能となる。
【0099】
(変形例3)
要求対象タグからのID情報をリレーするときに、当該ID情報がどのタグを経由して親機3まで伝達されたかを把握できるように構成することも可能である。
【0100】
そのために、各タグ2は、他のタグからID情報を受信したとき、制御手段30によりそのID情報に例えば自身のID情報20A等の自身を特定する情報(子機特定情報)を添付してID送信手段24に送るようにすればよい。このとき、自身のID情報20A等は、要求対象タグのID情報と区別して添付される。また、受信したID情報に既に他のタグのID情報が添付されている場合には、既に添付されているID情報の後に自身のID情報を添付するなどして、要求対象タグのID情報をリレーした複数のタグのリレー順を把握できるように構成することが望ましい。
【0101】
このような本変形例によれば、例えば次のような処理を行うことができる。まず、物品管理装置5は、要求対象タグのID情報とそのリレー順を示す経由情報とを互いに関連づけて管理情報記憶部52(経由情報記憶手段)に格納するように構成される。
【0102】
物品管理装置5の制御部51は、要求対象タグのID情報(経由情報が添付されている)が親機3から入力されると、当該ID情報の過去の経由情報を管理情報記憶部52から検索する。そして、新たに入力された経由情報と過去の経由情報とが一致しているか、すなわち、当該ID情報が過去と同一のタグを(同一の順序で)経由して親機3までリレーされたか否かを判断する。新たに入力された当該要求対象タグのID情報が過去と異なるタグ(あるいはリレー順)を経由してきたと判断された場合、制御部51は、例えば表示部55(報知手段)にメッセージを表示するなどして、オペレータ等に報知する。
【0103】
同一のID情報のリレー順が変更されたことは、要求対象タグが移動されたことに対応すると考えられる。したがって、本変形例は、物品Gが移動されたか否かを把握するために用いることができる。本変形例は、美術館やショーケース等の展示品など、移動が頻繁になされない物品Gを管理する場合などに、特に有効に利用できると思われる。
【0104】
以上に詳述した構成は、本発明を実施するための一例に過ぎないものである。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る物品管理システムの実施形態の全体構成の一例を表す概略システム構成図である。
【図2】本発明に係る物品管理システムの実施形態のタグ(子機)の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図3】本発明に係る物品管理システムの実施形態のタグのハードウェア構成の一例を表すブロック図である。
【図4】本発明に係る物品管理システムの実施形態の親機及び物品管理装置の構成の一例を表すブロック図である。
【図5】本発明に係る物品管理システムの実施形態の動作態様の一例を説明するための概略システム構成図である。
【符号の説明】
【0106】
1 物品管理システム
2、2−1〜2−5 タグ(子機)
20 格納手段
20A ID情報
21 要求受信手段
22 要求送信手段
23 ID受信手段
24 ID送信手段
25 判断手段
26 要求受信済情報記録手段
26A 要求受信済情報
27 ID受信済情報記録手段
27A ID受信済情報
28 要求送信禁止手段
29 ID送信禁止手段
200 コントローラ
210 メモリ
220 アンテナ
230 RF回路
240 バッテリ
3 親機
31 制御部
32 電波送受信部
33 メモリ部
34 通信インターフェイス(I/F)部
4 通信線
5 物品管理装置
51 制御部
52 管理情報記憶部
53 通信インターフェイス(I/F)部
54 入力操作部
55 表示部
G、G−1〜G−5 物品
W 倉庫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品にそれぞれ添付され、固有のID情報を格納した格納手段と、前記ID情報を電波信号にて送信するID送信手段とをそれぞれ備えた複数の子機と、
前記子機から送信された前記ID情報を受信する親機と、
前記親機と通信可能に接続され、前記複数の物品をそれぞれ特定する情報と前記複数の子機のそれぞれの前記ID情報とを互いに関連付けて記憶し、前記親機により受信された前記ID情報に基づいて前記複数の物品の存否を管理する物品管理装置と、
を有する物品管理システムであって、
前記親機は、前記複数の子機の内の所定の子機に対して前記ID情報を送信するように要求する要求情報を電波信号にて送信し、
前記複数の子機のそれぞれは、前記要求情報を受信する要求受信手段と、前記受信された前記要求情報を電波信号にて送信する要求送信手段とを備え、
前記親機により送信された前記要求情報が、前記複数の子機の前記要求受信手段と前記要求送信手段とによって前記所定の子機へリレーされる、
ことを特徴とする物品管理システム。
【請求項2】
前記複数の子機のそれぞれは、前記ID情報を受信するID受信手段を備え、
前記要求情報に応じて前記所定の子機から送信された前記ID情報が、前記複数の子機の前記ID受信手段と前記ID送信手段とによって前記親機までリレーされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品管理システム。
【請求項3】
前記要求情報には、前記所定の子機の前記ID情報が含まれており、
前記複数の子機のそれぞれは、
前記要求情報に含まれる前記所定の子機のID情報と当該子機自身のID情報とを比較して、双方の前記ID情報が一致するか否かを判断する判断手段を備え、
前記判断手段により前記双方の前記ID情報が一致すると判断されたとき、前記ID送信手段は、前記格納手段に格納された前記ID情報を送信し、
前記双方の前記ID情報が一致しないと判断されたとき、前記要求送信手段は、前記受信された前記要求情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の物品管理システム。
【請求項4】
前記複数の子機のそれぞれは、
前記要求受信手段により前記要求情報が受信されたことに対応して要求受信済情報を記録する第1の記録手段と、
前記要求受信手段により要求情報が新たに受信され、その新たな要求情報に対応する前記要求受信済情報が前記第1の記録手段に記録されているときに、前記要求送信手段による前記新たな要求情報の送信を禁止する要求送信禁止手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の物品管理システム。
【請求項5】
前記複数の子機のそれぞれは、
前記ID受信手段により前記ID情報が受信されたことに対応してID受信済情報を記録する第2の記録手段と、
前記ID受信手段によりID情報が新たに受信され、その新たなID情報に対応する前記ID受信済情報が前記第2の記録手段に記録されているときに、前記ID送信手段による前記新たなID情報の送信を禁止するID送信禁止手段と、
を備えていることを特徴とする請求項2に記載の物品管理システム。
【請求項6】
前記複数の子機のそれぞれは、前記親機からの要求に応じて、前記ID送信手段及び/又は前記要求送信手段による前記電波信号の出力強度を変更して前記電波信号の到達範囲を変更する出力強度変更手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の物品管理システム。
【請求項7】
前記複数の子機のそれぞれの前記ID送信手段は、当該子機を特定する子機特定情報を前記所定の子機の前記ID情報に添付して送信し、
前記物品管理装置は、前記ID情報に添付された前記子機特定情報に基づいて、当該ID情報が経由した前記子機を表す経由情報を記憶する経由情報記憶手段と、当該ID情報の前記経由情報が新たに得られ、その新たな前記経由情報が前記経由情報記憶手段に既に記憶されている当該ID情報の前記経由情報と異なるときに報知を行う報知手段とを備えている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の物品管理システム。
【請求項8】
前記要求情報は、前記複数の子機の内の2つ以上の子機に対して前記ID情報を送信するように要求することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の物品管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−100893(P2006−100893A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281072(P2004−281072)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(503292001)株式会社アイウェーブ・データ (1)
【Fターム(参考)】