説明

物質を処理するための方法及び組成物

毒素、化学兵器、昆虫、プリオン、微生物又は他の感染因子により汚染されている可能性がある非生体表面、生体組織、土壌又は大気などの物質を無害化或いは処理するための組成物及び方法を記述する。組成物を調製する方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を衛生的にするため或いは処理するための組成物及び方法に関する。該組成物は、1から6個の炭素原子(C〜C)を含む低級アルカノールの除染効果を改善する。該組成物は、生体組織(皮膚、手指等)及び無生命物体(器具、医療用装置、軍用及び民生用設備、家具、紙及び印刷資料等)から化学兵器(VX、マスタード、サリン、ソマン及びタブン)、毒素、原生動物、昆虫(例えば、疾患媒介体)、並びに細菌、真菌、ウイルス、真菌及び細菌胞子並びに立体構造変化プリオン(CJD、CWD、BSE、スクラピー)などの病原性感染因子を含むが、これらに限定されない有害汚染物を除去或いは無害化する。
【背景技術】
【0002】
殺菌薬は、防腐薬及び消毒薬を含む。防腐薬は、生体組織及び皮膚に適用される殺菌薬であり、一方、消毒薬は、無生命物体にのみ適用される抗菌薬である。一般的に、防腐薬は、皮膚にのみ用いられて、表面消毒には用いられず、消毒薬は、皮膚及び他の組織の損傷をもたらす可能性があるため、皮膚の消毒のためには用いられない(Rutala及びWeber、2004年)。
【0003】
過去においては、硬質面の消毒には重大な意思決定は必要でなく、標準的な粉末状洗剤、漂白剤又は研磨剤粉末を使用できた。議論の必要はなかった。今日では、硬質面消毒薬は、店全体の通路をふさいでおり、粉末及びクリーム状研磨剤(scourers)、並びにワイプなどの様々な種類の浴室、便器、ガラス、セラミック及び台所用消毒薬などの多くの特化された製品を含む。硬質面消毒薬の数の増加の1つの理由は、今日の硬質面が過去よりも多くの種類の材料を含むという単純な事実である。例えば、過去には、台所や浴室は主として木材や他の天然素材の面で仕上げられていたが、現代のものは、少し例を挙げれば、ステンレススチール、プラスチック、ガラス繊維、セラミック、大理石、エナメル及び磁器を含み、新たな消毒上の問題を生じさせている。
【0004】
他方で、最近、疾病予防管理センター(CDC)の「医療現場における手指衛生に関するガイドライン」の結果として手指衛生及び皮膚の健康に新たな重点が置かれている。手指衛生は、病院内の感染の広がりを低減する助けとなり得る1つの最も重要な処置である。約300の病院からデータを収集する、CDCの全米院内感染サーベイランス(NNIS)は、米国の病院において年間ほぼ90000例の死亡と45億ドルを超える医療費の発生の原因となる毎年200万件の医療関連感染があると推定している。現在の文献は、医療従事者(HCW)における手指衛生が許容できないほど低いレベルであることを実証している。医療従事者の手洗いの遵守に不利な影響を与える次のような多くの理由がある。(1)流しが利用し易さに欠ける、(2)手洗いが手指の乾燥と刺激をもたらす、(3)医療従事者は忙しすぎて十分な頻度で石けんと水で手を洗うことができない、(4)偶然の接触、手袋装着の前後などの手指衛生を行うべきときに関する知識の欠如など。
【0005】
石けんは、エステル化脂肪酸及び水酸化ナトリウム又はカリウムを含む洗剤ベースの製品である。普通の(plain)石けんは、たとえあるとしても、ごくわずかな抗菌活性を有する。いくつかの試験で、普通の石けんによる手洗いで病院の要員の手から病原体を除去することができず、ときとして、普通の石けんは汚染された状態になり、これがグラム陰性桿菌による要員の手における集落形成につながる可能性がある(Boyce及びPittet、2002年)。アルコール手指消毒剤は、推奨手指衛生ガイドラインへの医療従事者の遵守を促進するために医療施設に導入された。CDCは、アルコール消毒剤の有効性が手指の病原菌の数の低減に石けん及び水より大きいことを認識したので、アルコールベースの消毒剤を合法と認めた。しかし、アルコールは、殺胞子作用がなく、タンパク質に富む物質に浸透できないという主な理由のため、医療用及び手術用材料の滅菌に推奨されない(Rutala及びWeber、2004年)。アルコールベースの防腐剤の大多数は、イソプロパノール、エタノール、n−プロパノール又はこれらの製品の2つの配合を含む。アルコールの試験の大多数は、種々の濃度の個々のアルコールを評価したものであった。他の試験は、2種のアルコールの配合、又は限られた量のヘキサクロロフェン、第四級アンモニウム化合物、ポビドンヨード、トリクロサン若しくはグルコン酸クロルヘキシジンを含むアルコール溶液に焦点を合わせたものであった。
【0006】
Farahらへの米国特許第4,200,655号は、特に手指に使用し、特にライノウイルスの伝染を予防するためのin vivo及びin vitroでの局所殺ウイルス用の有効成分としてベンジルアルコールを含む組成物を開示している。
【0007】
Yangへの米国特許第4,446,153号は、防腐性成分として少なくとも1つのフェニルアルカノールを含む乳牛用の乳首浸液又は乳房洗浄液として特に適する皮膚消毒用組成物を開示している。
【0008】
Tuominenらへの米国特許第4,695,453号は、好ましくはエタノール、プロパノール及びベンジルアルコールを有効成分として含む濃厚化アルコール性抗菌組成物を開示している。
【0009】
Maignanらへの米国特許第4,956,175号は、モイスチャライジング及びコンディショニング剤を含む手指の消毒用の高アルコール含量抗菌ゲル組成物の使用を開示している。
【0010】
Jampaniらへの米国特許第6,022,551号は、30容積%を超えるアルコール及び有効な量のトリクロサン、並びに有効な量のフェノキシエタノール、有効な量の塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゾトニウム、並びに有効な量のPHOSPOLIPID CDMからなる群から選択される抗菌薬を含む抗菌組成物を開示している。この抗菌組成物は、手指などへの局所使用を目的とするものである。
【0011】
Jampaniらへの米国特許第6,248,343号は、皮膚に対して治療的恩恵をさらにもたらす抗菌組成物に関する。これは、30容積%を超えるアルコール、有効な量のトリクロサン及びその混合物、有効な量のフェノキシエタノール、有効な量の塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゾトニウム、並びに有効な量のPHOSPOLIPID CDM、並びに有効な量の天然に存在する植物又はその抽出物からなる群から選択される抗菌薬を含む抗菌組成物を開示している。
【0012】
Narulaらへの米国特許第6,617,294号は、皮膚の表面上の微生物の減少をもたらす有効な量のアルコール及び皮膚軟化剤又は皮膚湿潤用油を含む無水消毒手指洗浄剤を記述している。
【0013】
Brownへの米国特許出願公開第2005/0271595号は、アルコール、水、粘稠化剤及び抗菌薬を含む手指洗浄組成物としての使用に適する粘稠液又はゲルの形態の消毒用組成物を開示している。
【0014】
欧州特許出願第82110376.9号は、有効成分としてエタノール及び少なくとも1つのアルカリ性物質を含む、食品又は食品加工装置及び用具用水性滅菌剤を記述している。
【0015】
欧州特許出願第83303799.7号は、60〜80容積/容積%のC1〜C4アルカノール及び2重量/容積%までの溶液中合計濃度を有する少なくとも2つの抗菌薬を含む病院内の硬質面の消毒用の残存殺菌活性を有する水性消毒溶液に関する。第1の抗菌薬はビグアニド化合物であり、第2のものは第四級アンモニウム化合物である。
【0016】
Caseyらへの米国特許第4,678,658号は、低級アルキルアルコール、消毒用界面活性剤、pH感受性色素及び空気による速い中和時に色素が失色するときに液体中で発色させるために液のpHを調整するためのアルカリから本質的になる微細噴霧剤により表面を消毒する際に使用するためのエアゾール噴霧剤を記述している。
【0017】
Cusackらへの米国特許第5,180,749号は、約30重量%までのエチルアルコール、約2〜5重量%及び100%までの残余水を含む水性抗菌組成物、並びにそれにより汚染された無生物表面上の微生物を殺滅又はその数を減少させるための該組成物の使用の方法を開示している。
【0018】
Bennetらへの米国特許出願公開第2004/0213750号は、アルコール及び組成物のpH範囲が約7.0〜約13.0であるようなpH調整剤を含む水性硬質面抗菌処理組成物を開示している。
【0019】
Awadへの米国特許出願公開第2005/0202137号は、ヒト消費用赤肉を低級アルカノール及びpH修正剤を含む水溶液で衛生的にする方法を記述している。
【0020】
Bullockらへの米国特許第6,821,940号は、農産物、例えば、果実及び野菜、可食動物肉タンパク質などの食品、玩具、小児用食事椅子等を処理するための毒性学的に許容できる成分を用いた基材及び洗浄用組成物を含むあらかじめ湿らせたワイプを記述している。
【0021】
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)により引き起こされる医療関連下痢の広範な罹患並びに汚染された手紙による炭疽菌(Bacillus anthracis)への意図的な曝露の結果としてのヒト炭疽菌感染(11例の吸入炭疽及び11例の皮膚炭疽)の米国における最近の発生は、胞子形成細菌に対する防腐及び消毒薬の活性に関する問題を提起した。より最近、研究所勤務者が炭疽菌を含むバイアルの表面との接触の結果として炭疽に罹患した(Pageら、2002年)。従来技術において報告された薬品(アルコール、クロルヘキシジン、ヘキサクロロフェン、ヨードフォア、PCMX及びトリクロサン)のいずれも、防腐(ハンドウォッシュ又はハンドラブ)製剤に用いるか、又は硬質面消毒薬に用いるかにかかわりなく、クロストリジウム種(Clostridium spp.)又はバシルス種(Bacillus spp.)に対して確実に殺胞子性でない(Boyce及びPittet、2002年)。さらに、これらの薬品の一部(例えば、トリクロサン)は、実験室試験において抗生物質耐性細菌に関連づけられた。比較的高い濃度を用いる殺胞子試薬の例としては、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、塩素オキシ酸化合物、ペルオキソ酸及びエチレンオキシドなどがある。一般的に、これらの化合物のすべてが有毒であるとみなされる。他方で、エチレンオキシド滅菌、エタノール、ホルマリン、ベータ−プロピオラクトン、洗浄薬、第四級アンモニウム化合物、Lysol(登録商標)消毒溶液(Reckitt Benckiser、Berkshire、UK)、アルコール性ヨウ素、アセトン、過マンガン酸カリウム、過酸化水素及び二酸化塩素を含む、従来技術において報告された化学抗菌薬のすべて(殺胞子性であるか否かにかかわりなく)が、立体構造変化感染性プリオンの伝染力を不活性化するのに無効であり(Rosenbergら、1986年)、化学兵器に対するそれらの効果は報告されていない。
【0022】
大量破壊兵器に関連する化学生物剤にかかわるテロリストの脅威は、国防及び地方法施行に対する大きい問題である。数十年にわたり、これらの心配は、米軍、及びエネルギー省又は国防先端技術計画局により資金供給されている国内兵器研究所の平穏な領域(quiet domain)であった。科学者が言うことには、将来のバイオテロ兵器は、遺伝子工学的に改変された病原体、プリオン及びバイオレギュレータ(bioregulators)を含むであろう(Brown、2004)。2003年の春にシアトル(Seattle)で実施された放射能汚染爆弾模擬攻撃中に、学んだ教訓の1つは、応答者は放射能ダストの広がりを止めるための何物も持っていなかったということであった(Weiss、2005年)。同様な理由で、テロリストの攻撃が起った場合、生物化学兵器の広がりも、不可能でないにしても従来技術の手法を用いて阻止することは非常に困難である。大規模攻撃が起った場合、犯人は、次の攻撃を加える価値を決定するために、おそらく浄化の速度と効力をモニターしているであろう。二酸化塩素を用いたHart Senate Office Buildingの炭疽除染(Hsu、2002年)は、大規模な生物学的攻撃に対処するための準備に関する問題を提起した。二酸化塩素及び次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)は、環境表面の消毒に用いられており、皮膚に適用される防腐薬として用いられない。
【0023】
Tadrosらへの米国特許第6,566,574号は、化学及び生物剤を中和するための水性製剤の使用を教示している。該製剤は、少なくとも2つの可溶化剤(第四級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤及び臭化テトラペンチルアンモニウムなどの陽イオンヒドロトロピー剤)、少なくとも1つの反応性化合物及び水性製剤を製造するための水を含む。この技術に関連する技術的問題は、(1)各特定の化学及び生物剤について異なる製剤が必要であること、(2)それは感染性プリオンに対する効果を有さないこと、(3)それは、用いる試薬の腐食性及び毒性のため、生体組織、例えば、皮膚における局所治療に用いることはできないこと、(4)それは、用いる試薬が食品用(GRAS)でないので、農業テロリストの攻撃の場合に、食品を除染するのに用いることができないこと、並びに(5)それは、石けんと水の代わりに手指消毒剤として医療施設で用いることができないことなどである。
【0024】
Tuckerらへの米国特許出願公開第2004/0022867号は、少なくとも2つの可溶化剤(陽イオン界面活性剤及び陽イオンヒドロトロピー剤)、反応性化合物(過酸化水素、尿素過酸化水素、ヒドロペルオキシカーボネート、過酢酸、過ホウ酸ナトリウム、ペルオキシピロリン酸ナトリウム、ペルオキシケイ酸ナトリウム及びペルカーボネートからなる群から選択される)、漂白活性化剤及び吸着添加剤を含む、毒物(toxants)を中和するための水性製剤の使用を教示している。この技術に関連する技術的問題は、(1)漂白活性化剤が不安定であるため、現場で組成物を調製すること、(2)貯蔵寿命が短く(約8時間)、したがって、石けんと水の代わりに手指消毒剤として医療施設で用いることができないこと、(3)感染性プリオンに対する効果を有さないこと、(4)用いる試薬の腐食性及び毒性のため、創傷、例えば、創傷皮膚における局所治療に用いることができないこと、並びに(5)用いる試薬が食品用(GRAS)でないので、農業テロリストの攻撃の場合に、食品を除染するのに用いることができないことなどである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
すなわち、従来技術において、化学兵器(VX、マスタード、サリン、ソマン及びタブン)、毒素、昆虫(例えば、疾患媒介体)、並びに細菌、真菌、ウイルス、真菌及び細菌胞子並びに立体構造変化プリオン(CJD、CWD、BSE、スクラピー)などの病原性感染因子からなる有害汚染物の無生命物体及び生体組織からの除染のための単一の有効で、一般的で、ヒト及び環境にとって安全かつ使用し易い製剤の実際的かつ継続的な必要性が認識されている。
【0026】
物質を衛生的にするための組成物及び方法を提供することが本発明の目的である。これら及び他の目的は、以下の議論の参照によりいっそう明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、生体組織(皮膚、手等)及び無生命物体(器具、紙及び印刷資料、医療用装置、硬質面、軍用及び民生用設備等)を先例のない速度、経済性、安全性、穏やかさで、残存抗菌作用により消毒するための低級アルカノール(C1〜C6)の殺菌及び殺胞子スペクトル及び活性を改善する方法を提供する。さらに、本発明は、化学及び生物兵器戦(CBW)剤曝露後の皮膚/創傷を除染してCBWを封じ込め、破壊して、皮膚浸透及びさらなる汚染を防ぐことができる低級アルカノール(C1〜C6)組成物を提供する。該組成物は、可能な最高健康保護基準を消費者に提供するために、リンゴ、ベビーキャロット、イチゴ、ハードチーズブロック、殻付き卵及び新鮮な赤肉屠体などの新鮮な産物を除染して、立体構造変化プリオン、細菌、真菌、寄生虫及びウイルスなどの感染因子を除くことができる。さらに、該組成物は、飼料に用いられる動物副産物を除染するのに用いることができ、したがって、伝統的な精製法の代わりに用いることができる。さらに、該組成物は、クロパンカビ胞子に感染した家庭、建築物材料及び家具を除染するのに用いることができる。該組成物は、感染性病原体の伝播を低減するために昆虫ベクターの抑制(例えば、ダニ、蚊等)のために用いることができる。さらに、該組成物は、消費者による可能な誤使用を防ぐためにGRAS(一般的に安全と認められた)と確認されている物質、例えば、食品用のものを含む。
【0028】
したがって、本発明は、(a)1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールと約14以上のpHで塩又はエステルである脂肪酸誘導体との混合物を含み、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である水性組成物を準備するステップと、(b)組成物を、物質を衛生的にするのに有効な量で物質に適用するステップと、ステップ(b)の結果として生ずる組成物を場合によって除去するステップとを含む、物質を衛生的にする方法を提供する。
【0029】
該方法のさらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、アルカリ又はアルカリ土類金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、4から22個の炭素原子を含む脂肪酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ラウリン酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ラウリン酸カリウムである。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ブチルエステル、エチルエステル、メチルエステル、脂肪アシル−補酵素A、スクロースエステル及びモノグリセリドからなる群から選択されるエステルである。さらなる実施形態において、モノグリセリドは、4から22個の炭素原子を有する1つ又は複数の脂肪酸或いは8から16個の炭素原子を有する1つ又は複数の飽和又は不飽和脂肪アルコールにエステル又はエーテル結合により結合したグリセロール部分を含む。さらなる実施形態において、毒素は、スタキボトリス(Stachybotrys)毒素である。さらなる実施形態において、微生物又は他の感染因子は、真菌、細菌、真菌胞子、細菌胞子、ウイルス又は立体構造変化プリオンである。さらなる実施形態において、真菌胞子は、スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子である。さらなる実施形態において、細菌胞子は、バシラス・アトロフェウス(Bacillus atropheus)胞子である。さらなる実施形態において、化学兵器は、VX、マスタード、サリン、ソマン又はタブンである。さらなる実施形態において、立体構造変化プリオンは、CJD、CWD、BSE及びスクラピーからなる群から選択される。
【0030】
本発明は、1から6個の炭素原子を含む低級アルカノール及びアルカノールに可溶な塩又はエステルである脂肪酸誘導体を混合物として含み、14以上のpHを有し、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である、組成物を提供する。さらなる実施形態において、組成物を水溶液として提供する。さらなる実施形態において、低級アルカノールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はその混合物である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、アルカリ又はアルカリ土類金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、4から22個の炭素原子を含む脂肪酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ラウリン酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ラウリン酸カリウムである。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ブチルエステル、エチルエステル、メチルエステル、脂肪アシル−補酵素A、スクロースエステル及びモノグリセリドからなる群から選択されるエステルである。さらなる実施形態において、モノグリセリドは、4から22個の炭素原子を有する1つ又は複数の脂肪酸或いは8から16個の炭素原子を有する1つ又は複数の飽和又は不飽和脂肪アルコールにエステル又はエーテル結合により結合したグリセロール部分を含む。さらなる実施形態において、組成物は、粘稠化剤、皮膚軟化剤、モイスチャライザー、腐食抑制剤、噴射剤、香料、着香剤、消泡剤、抗酸化剤、染料からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む。
【0031】
本発明は、(a)1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールと約14以上のpHで塩又はエステルである脂肪酸誘導体との混合物を含み、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である水性組成物を準備するステップと、(b)組成物を、物質を処理するのに有効な量で物質に適用するステップとを含む、物質を処理する方法を提供する。さらなる実施形態において、ステップ(b)の結果として生ずる組成物を物質から除去する。
【0032】
本発明は、1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールを準備することと、アルカノールに可溶の塩又はエステルである脂肪酸誘導体を準備することと、低級アルカノールと脂肪酸誘導体を混合して組成物を得ることとを含み、組成物が14以上のpHを有し、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である、組成物を調製する方法を提供する。さらなる実施形態において、低級アルカノールは、エタノールである。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、アルカリ又はアルカリ土類金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、4から22個の炭素原子を含む脂肪酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ラウリン酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ラウリン酸カリウムである。さらなる実施形態において、脂肪酸誘導体は、ブチルエステル、エチルエステル、メチルエステル、脂肪アシル−補酵素A、スクロースエステル及びモノグリセリドからなる群から選択されるエステルである。さらなる実施形態において、モノグリセリドは、4から22個の炭素原子を有する1つ又は複数の脂肪酸或いは8から16個の炭素原子を有する1つ又は複数の飽和又は不飽和脂肪アルコールにエステル又はエーテル結合により結合したグリセロール部分を含む。
【0033】
本発明は、1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールを準備することと、脂肪酸を準備することと、アルカリ化剤を準備することと、低級アルカノール、脂肪酸及びアルカリ化剤を混合して組成物を得ることとを含み、組成物が14以上のpHを有し、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である、組成物を調製する方法を提供する。低級アルカノールは、エタノールである。さらなる実施形態において、脂肪酸は、4から22個の炭素原子を有する脂肪酸である。さらなる実施形態において、脂肪酸は、ラウリン酸である。さらなる実施形態において、アルカリ化剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属又は炭酸水素及びその混合物からなる群から選択される。さらなる実施形態において、アルカリ化剤は、水酸化アンモニウム、水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及びその混合物からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する組成物FBの異なる濃度の効果を示す図で、クロパンカビ胞子の減少に対する100%FBの効果を示す図である。
【図1B】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する組成物FBの異なる濃度の効果を示す図で、クロパンカビ胞子の減少に対する60%FBの効果を示す図である。
【図1C】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する組成物FBの異なる濃度の効果を示す図で、クロパンカビ胞子の減少に対する50%FBの効果を示す図である。
【図1D】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する組成物FBの異なる濃度の効果を示す図で、クロパンカビ胞子の減少に対する40%FBの効果を示す図である。
【図1E】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する組成物FBの異なる濃度の効果を示す図で、クロパンカビ胞子の減少に対する30%FBの効果を示す図である。
【図2】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する組成物(FB)の異なる濃度(30、60及び100%)の効果を示すグラフである。
【図3A】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する家庭用Clorox(登録商標)漂白剤の異なる濃度の効果を示す図で、クロパンカビ胞子の殺滅に対する12.5%NaOClの効果を示す図である。
【図3B】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する家庭用Clorox(登録商標)漂白剤の異なる濃度の効果を示す図で、クロパンカビ胞子の殺滅に対する7.5%NaOClの効果を示す図である。
【図3C】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する家庭用Clorox(登録商標)漂白剤の異なる濃度の効果を示す図で、クロパンカビ胞子の殺滅に対する3.75%NaOClの効果を示す図である。
【図4】クロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する塩素漂白剤の異なる濃度(3.75、7.5及び12.5%次亜塩素酸ナトリウム)の効果を示す図である。
【図5】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を接種したじゅうたんに対する組成物(50%FB)及び家庭用Clorox(登録商標)漂白剤の効果を示す図である。
【図6】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を接種した天井タイルに対する組成物(50%FB)及び家庭用Clorox(登録商標)漂白剤の効果を示す図である。
【図7】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を接種した汎用印刷紙に対する組成物(50%FB)及び家庭用Clorox(登録商標)漂白剤の効果を示す図である。
【図8】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を接種し、暗所で30日間インキュベートしたじゅうたんにおけるクロパンカビの増殖を示す図である。
【図9】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を接種し、暗所で30日間インキュベートした汎用印刷紙におけるクロパンカビの増殖を示す図である。
【図10】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を接種し、暗所で30日間インキュベートした天井タイルにおけるクロパンカビの増殖を示す図である。
【図11A】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を木材に接種した後の木材上への組成物FBの噴霧の効果を示す図で、多孔質材料としての木材へのクロパンカビの接種を示す図である。
【図11B】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を木材に接種した後の木材上への組成物FBの噴霧の効果を示す図で、多孔質材料としての木材へのクロパンカビの接種を示す図である。
【図11C】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を木材に接種した後の木材上への組成物FBの噴霧の効果を示す図で、木材上に噴霧した50%FBの性能を示す図である。
【図11D】スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子を木材に接種した後の木材上への組成物FBの噴霧の効果を示す図で、木材上に噴霧した50%FBの性能を示す図である。
【図11E】木材上に噴霧した1.84%次亜塩素酸ナトリウムの効果を示す図である。
【図11F】木材上に噴霧した1.84%次亜塩素酸ナトリウムの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書で引用したすべての特許、特許出願、政府刊行物、政府規則及び文献は、それにより、参照としてそれらの全体として本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書における記述が支配するものとする。
【0036】
本明細書で用いる「CFU」という用語は、コロニー形成単位を意味する。
【0037】
本明細書で用いる「処理する」という用語は、物質が1つ又は複数の点で出発物質と異なるようになるように物質を被覆し、変化させ、改変し、変化を与え、かつ/又は修正することを意味する広い用語である。該用語は、該用語によっても包含される化学反応、可溶化及び/又は乳化に起因するものを含むが、これらに限定されない物理的及び/又は化学的変化を意味し得る。
【0038】
本明細書で用いる「FB」という用語は、表1に示すような本発明の組成物の1つの実施形態を意味する。
【0039】
本明細書で用いる「物質」という用語は、空気、化学物質、無生命表面、生体組織、土壌又は大気などがあるが、これらに限定されない固体、液体及び/又は気体物質を意味する。
【0040】
本明細書で用いる「衛生的にする」という用語は、生存動物の健康を損なう能力のある病原体のレベル又は有害な能力を低減又は無くすことを意味する。生存動物の健康を損なう能力のある病原体のいくつかの例は、毒素、化学兵器、昆虫、プリオン、微生物又は他の感染因子などがあるが、これらに限定されない汚染物である。衛生的にすることの例は、化学的修飾及び分解を含むが、可溶化による病原体の除去も該用語により包含される。
【0041】
本発明は、生体組織(皮膚、手指等)及び無生命物体(器具、医療用装置、軍用及び民生用設備、家具、紙及び印刷資料等)などであるが、これらに限定されない物質から化学兵器(VX、マスタード、サリン、ソマン及びタブン)、毒素、原生動物、昆虫(例えば、疾患媒介体)、並びに細菌、真菌、ウイルス、真菌及び細菌胞子などの病原性感染因子、並びに立体構造変化プリオン(CJD、CWD、BSE、スクラピー)などであるが、これらに限定されない有害汚染物を除くための1から6個の炭素原子(C〜C)を含む低級アルカノールの除染効果を改善するための組成物及び方法を提供する。新たな殺菌剤を開発するに際しての継続的な課題は、安全性、利便性及び有効性の間のバランスをとることである。使用の容易さ及び安全性は、重要であり、最善の効果的化学技術を用いることより時には重要である。細菌胞子、真菌胞子及び感染性プリオンは、化学的及び物理的消毒薬に対して高度に抵抗性である。食品、医薬品、医療品及び他の製品の滅菌を達成するために設計された方法は、したがって必然的に、この高いレベルの抵抗性を考慮に入れたものでなければならない。このスキームから、抵抗性のより高い感染因子(例えば、バシラス・アトロフェウス(Bacillus atropheus)胞子及び感染性プリオン)に対する活性は抵抗性の最も低い感染因子(例えば、植物細菌、脂質ウイルス)に対する活性を包含すると考えることができる。
【0042】
参照としてそれらの全体として本明細書に組み込まれるAwadへの米国特許出願公開第2005/0202137号(出願番号11/031,935)は、生物組織、特にヒト消費用食肉を、組織を衛生的にするように処理する方法を教示している。該方法は、組織中の微生物及び病原性プリオン(タンパク質)を不活性化する。衛生的にする方法は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及びその混合物並びに1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールからなる群から選択される水溶液で、溶液と接触しているプリオンが不活性化されるように処理することを含む。本発明は、低級アルカノールC〜Cの除染特性を、脂肪酸誘導体、アルカリ化剤、水及びその混合物を本質的に含むGRAS成分と混合することにより改善する方法を記述する。場合によって、粘稠化剤、皮膚軟化剤、モイスチャライザー、腐食抑制剤、消泡剤、着香剤、噴射剤、香料、抗酸化剤及び染料からなる群から選択される1つ又は複数の成分を加えることができる。得られる組成物は、生体組織(皮膚、手指等)及び無生命物体(器具、医療用装置、軍用及び民生用設備、家具、紙及び印刷資料等)から化学兵器(VX、マスタード、サリン、ソマン及びタブン)、毒素、原生動物、昆虫(例えば、疾患媒介体)、並びに細菌、真菌、ウイルス、真菌及び細菌胞子などの病原性幹線因子、並びに立体構造変化プリオン(CJD、CWD、BSE、スクラピー)からなる有害汚染物を除くのに用いることができる。
【0043】
さらに、組成物の活性は、溶媒の蒸発の後かなりの時間保持される。生物兵器攻撃において、最初のステップは、病原体のさらなる移動を防ぐことである。生物兵器(例えば、細菌胞子等)を固定化することも、救助作業員が汚染された状態にならずにそれらの職務を行うことを可能にすると思われる。本発明の非常に重要な態様は、溶媒の蒸発の後に結果として生ずるフィルムが、細菌又は真菌胞子を物理的に閉じ込め、したがって、感染の伝播及び環境表面の汚染の主な原因である胞子の再懸濁を防ぐことである。本発明の組成物は、測定量の必要な成分を低級アルカノールと、続いて自由選択の成分と単に混合し、包装することにより非常に容易に調製することができる。
【0044】
本発明において有用な低級アルカノール(C〜C)は、約3〜95%の量で存在するメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びその混合物(これらに限定されない)からなる群から選択される。エタノール又はイソプロパノールが最も好ましい。本発明に有用であると思われる適切な脂肪酸誘導体の例は、4から22個の炭素原子を含む脂肪酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩(Na、K、Li、Mg等)などである。ここで有用な他の脂肪酸誘導体は、ブチル、エチル、メチルエステル、脂肪アシル−補酵素A、スクロースエステル及び望ましい脂肪酸のモノグリセリドなどのエステル誘導体を含む。
【0045】
本発明に有用なモノグリセリドは、4から22個の炭素原子(C〜C22)を有する脂肪酸或いは8から16個の炭素原子(C〜C16)を有する飽和又は不飽和脂肪アルコールにエステル又はエーテル結合により結合したグリセロール部分である。一般的に、0.1重量%から約25重量%、特に5から10重量%の量の脂肪酸誘導体の包含が有用であることが認められた。ラウリン酸誘導体が最も好ましい。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態において、アルカリ化剤は、水酸化アンモニウム、水酸化アルミニウム、アルカリ金属水酸化物(Na、K、Li)、アルカリ土類金属水酸化物(Ca、Mg)、アルカリ金属又は炭酸水素、例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム、或いはその混合物を含む群から選択される。一般的に、アルカリ化剤の量は、0.01重量%から10重量%まで変化してよく、最も好ましくは3〜6重量%の範囲内、例えば、5重量%であってよい。
【0047】
本発明の組成物は、溶媒として水、最も好ましくは脱イオン水を含む。水の量は、5から95重量%まで変化してよく、最も好ましくは15〜60重量%の範囲内であってよい。組成物は、フュームドシリカ、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、天然ゴム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシポリメチレン、アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレートクロスポリマー及び水溶性ワックスからなるが、これらに限定されない群から選択される粘稠化剤を場合によって含んでいてよい。そのような成分は、有効な量で含まれていてもよい。組成物はまた、1つ又は複数の腐食抑制剤を場合によって含んでいてよい。適切な腐食抑制剤の例は、モノ及びトリエタノールアミン、亜硝酸ジシクロヘキシルアミン及びN,N−ジベンジルアミンなどであり、そのような成分は、有効な量で含めることができる。
【0048】
本発明の組成物は、皮膚軟化剤及び/又はモイスチャライザーを用いて場合によって製剤化することができる。用いることができる皮膚軟化剤及び/又はモイスチャライザーは、当技術分野でよく知られ、通常のものであり、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、グリセリン、塩化アセトアミドプロピルトリモニウムを含むが、これらに限定されない。そのような成分は、有効な量で含めることができる。組成物はまた、従来の加圧容器用のエアゾール剤として調剤するために従来の噴射剤を用いて場合によって製剤化することができる。適切な噴射剤の例は、イソブテン、n−ブタン、プロパン、ジメチルエーテル及びその混合物を含むが、これらに限定されない。そのような成分は、有効な量で含めることができる。さらに、組成物は、1つ又は複数の香料を場合によって含んでいてよい。望ましい香りをもたらす物質を用いることができる。特に好ましいものは、大量のテルペンを含む柑橘類、例えば、オレンジ、レモン、ライム等から得られる油である。そのような成分は、有効な量で含めることができる。
【0049】
本発明の組成物は、1つ又は複数の消泡剤を場合によって含んでいてよい。適切な消泡剤の例は、シリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、C〜C18脂肪族アルコール又はC〜C12アルキル置換フェノール又はその混合物などである。組成物はまた、1つ又は複数の抗酸化物を場合によって含んでいてよい。適切な抗酸化物の例は、トコフェロール(例えば、ビタミンE又は酢酸トコフェロール)、ビタミンC及びその混合物を含むが、これらに限定されない。これらの成分は、有効な量で含めることができる。組成物はまた、1つ又は複数の染料を場合によって含んでいてよい。適切な染料の例は、pH依存性染料(例えば、青色染料チモールフタレイン)、非染色染料を含むが、これらに限定されず、そのような成分は、有効な量で含めることができる。組成物はまた、1つ又は複数の着香剤を場合によって含んでいてよい。望ましい香りをもたらすあらゆる物質を用いることができ、該成分を有効な量で含めることができる。
【0050】
本発明は、低級アルカノールC〜Cの殺菌及び殺胞子スペクトル及び活性を改善する目的のためにこれらのアルカノールの除染活性に対する特定のGRAS成分の複合効果を含む。本明細書における実施例で試験した成分は、安全性の観点から選択し、脂肪酸誘導体、アルカリ化剤、水及びその混合物から選択した。場合によって、粘稠化剤、皮膚軟化剤、モイスチャライザー、腐食抑制剤、噴射剤、香料、着香剤、消泡剤、抗酸化剤及び染料から選択される1つ又は複数の成分も組成物に含める。本発明の組成物は、複数の抗菌化合物により病原体の生活環における複数の段階において病原体を攻撃する。抗菌化合物は、個別に作用するだけでなく、付加的かつ相乗的にも作用することによって病原体を不活性化する。本明細書において開示する組成物は、非腐食性かつ無毒性であり、様々な担体に組み込むことができる。したがって、それらは、従来のエアゾール容器、噴霧体発生装置にエアゾールの形で、又はトリガーポンプ噴霧びん及びスクイーズびん(液体/ゲル)に液体の形で包装することができる。それらは、様々な操作目的を満たすために個別の投与のために小さな紙タオル(織り又は不織性)に含浸し、個別に包装するか、又はバルクで包装することができる。
【0051】
本発明は、生体組織及び無生命物体から有害汚染物を除くための低級アルカノールC〜Cの除染特性を改善するための水性製剤を提供する。本発明の組成物は、約3から95%までの量で存在するメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びその混合物を含むが、これらに限定されない低級C〜Cアルカノールを含む。組成物はまた、エタノール又はイソプロパノールが最も好ましい。組成物はまた、4から22個の炭素原子を有する脂肪酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩(Na、K、Li、Mg等)並びにその混合物を含むが、これらに限定されない脂肪酸誘導体を含む。他の有用な脂肪酸誘導体は、ブチル、エチル、メチルエステル、脂肪アシル−補酵素A、スクロースエステル及び望ましい脂肪酸のモノグリセリドなどのエステル誘導体を含む。本発明に有用なモノグリセリドは、4から22個の炭素原子(C〜C22)を有する脂肪酸或いは8から16個の炭素原子(C〜C16)を有する飽和又は不飽和脂肪アルコールにエステル又はエーテル結合により結合したグリセロール部分、並びにその混合物である。一般的に、0.1重量%から約25重量%、特に5から10重量%の量の脂肪酸誘導体の包含が有用であることが認められた。ラウリン酸誘導体が最も好ましい。アルカリ化剤は、水酸化アンモニウム、水酸化アルミニウム、アルカリ金属水酸化物(Na、K、Li)、アルカリ土類金属水酸化物(Ca、Mg)、アルカリ金属又は炭酸水素、例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム、或いはその混合物を含むが、これらに限定されない。一般的に、アルカリ化剤の量は、0.01重量%から10重量%まで変化してよく、最も好ましくは3〜6重量%の範囲内、例えば、5重量%であってよい。また、場合によって、1つ又は複数の成分は、粘稠化剤、皮膚軟化剤、モイスチャライザー、腐食抑制剤、噴射剤、香料、着香剤、消泡剤、抗酸化剤及び染料からなる群から選択される。
【0052】
本発明が有効である有害汚染物は、化学兵器(VX、マスタード、サリン、ソマン及びタブン)、毒素、昆虫(例えば、疾患媒介体)、並びに細菌、真菌、ウイルス、真菌及び細菌胞子並びに立体構造変化プリオン(CJD、CWD、BSE、スクラピー)などの病原性感染因子などである。有効である無生命物体は、器具、医療用装置、軍用及び民生用設備、家具、紙及び印刷資料等、ステンレススチール、プラスチック、ガラス繊維、セラミック、大理石、エナメル及び磁器を含むが、これらに限定されない。
【0053】
いくつかの実施形態において、溶媒は、水である。さらなる実施形態において、アルカノールは、エタノールである。いくつかの実施形態において、溶媒は、エタノールである。さらなる実施形態において、汚染物質は、化学兵器、生物兵器、タンパク質(例えば、感染性プリオン)、毒素(例えば、スタキボトリス毒素、ボツリヌス菌)、昆虫(例えば、疾患媒介体)、病原性感染因子(細菌、真菌、ウイルスなど)、真菌胞子(例えば、スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))又は細菌胞子(例えば、バシラス・アトロフェウス(Bacillus atropheus)胞子)である。さらなる実施形態において、汚染物質は、表面上、大気中、土壌中、医療用及び外科用器具上、食品上、動物飼料中、紙及び印刷資料中、軍用装置、皮膚、手指、筋肉、動物及び植物起源の生物学的組織を含むが、これらに限定されない生体組織中に存在する。
【0054】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を促進することを意図するものである。本発明の組成物は、下に記載するような特定の製剤の実施例(しかし、それに限定されない)により説明する。これらの実施例は説明のみのために記載するものであり、本発明の範囲内に入るさらなる有用な製剤は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者が容易に製造することができることを理解すべきである。
【0055】
(実施例1)
表1:
【表1】


混合物は、脱イオン水で100mlの定容にした。
【0056】
結果及びデータの以下の要約は、表1の組成物(FB)を用いてクロパンカビ胞子において実施した試験に基づいている。「クロカビ(black house−mold)」として一般的に知られているスタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)は、建築及び保険産業に毎年数10億ドルを費やさせる、住宅及びオフィスビルにおける重大な問題になっている。真菌は、凝縮、漏洩及び洪水による水害を以前に受けた住宅などの湿潤温暖環境におけるミルペーパー(mill paper)、ファイバーボード、木材及び石膏ボードなどのセルロース含有物質において最もよく増殖する。このような水害を潜在的に受けやすいほぼ1億2千万の住宅と5百万の商用ビルが米国に存在する。スタキボトリス(Stachybotrys)汚染麦わら又は穀物と接触し、感染したことが認められた人は、皮膚炎、口及び喉の粘膜の疼痛及び炎症、鼻管の灼熱感、胸部ひっ迫、咳、血性鼻炎、発熱、頭痛、皮疹及び疲労などの症状を発現する。汚染穀物を摂取した人は、口内の灼熱感、悪心、嘔吐、下痢及び腹痛を報告した。スタキボトリス(Stachybotrys)は、「シックビルディング症候群」及び幼児における肺出血に関連づけられた。この真菌は、多くのトリコテセンマイコトキシン、とりわけ、サトラトキシン(satratoxins)(G、F及びH)、ロリジン(roridin)、トリコデルモール(trichodermol)及びトリコベロール(trichoverrol)を産生する。サトラトキシンの作用機序は十分に理解されていないが、強力なタンパク質合成阻害剤であると同様に、非常に低い濃度で免疫抑制剤であると考えられている。矯正は、一般的にスタキボトリス(Stachybotrys)汚染部分の破壊と除去を必要とする。本発明の組成物によるこの真菌及びその毒素の破壊は、矯正費用を著しく低減するであろう。
【0057】
真菌胞子の準備:高度に有毒であると判断されたスタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子及び既知のサトラトキシン濃度(ng/g)を有するサトラトキシン抽出物をこの実験に用いた。既知の濃度のスタキボトリス(Stachybotrys)胞子をジャガイモデキストロース寒天(PDA)又は麦芽抽出物寒天(MEA)プレート上で継代培養した。プレートを暗所で室温(26℃)で、密集成長が達成されるまで、5〜7日間インキュベートした。胞子は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.0を用いて10及び10胞子/mlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の最終濃度で収集した。
【0058】
処理の有効性の測定:胞子。9ミリリットル(ml)の組成物(FB)に1mlの胞子濃縮物を接種した。最初の胞子濃度は、溶液10ミリリットル当たり6.65logコロニー形成単位(CFU/10ml)であった。サンプリングは、滅菌済み試験管で行った。試験管を、最初の10分間は1分当たり3回、次いで、合計10分間、30分間及び60分間にわたり5分ごとに1回激しく撹拌した。次いで、試験管を空にし、処理を行ったのと同じ方法で、脱イオン水(5ml)で3回各5分間すすいだ。各処理からの溶液を合わせた。陽性(実験的処理なしに接種した胞子)及び陰性(胞子を用いない実験的処理)対照を含めた。各処理の合わせた溶液の100マイクロリットル(μl)を暗所、室温で7日間PDAプレート上で平板培養した。この手順を3回繰り返した。1週間後に胞子を数えた。
【0059】
組成物(FB)の3つの濃度を用いた(30%、60%及び100%)。希釈は、蒸留水を用いて行った。塩素漂白剤3.75%、7.5%及び12.5%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液も用いた。処理液を0、1、5、30及び60分目に試料採取した。胞子の成長の完全な抑制が30%FBについて5分後に認められた。60及び100%FBについては図2に示すように1分後に成長は認められなかった。図1A〜Eにクロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する組成物FBの異なる濃度の効果を示す。図1Aにクロパンカビの低減に対する100%FBの効果を示す。図1Bにクロパンカビの低減に対する60%FBの効果を示す。図1Cにクロパンカビの低減に対する50%FBの効果を示す。図1Dにクロパンカビの低減に対する40%FBの効果を示す。図1Eにクロパンカビの低減に対する30%FBの効果を示す。
【0060】
塩素漂白剤の場合、図4に示すように1分後に用いた洗剤の3つの濃度すべて(3.75%、7.5%及び12.5%次亜塩素酸ナトリウム)について胞子の成長の完全な抑制が認められた。図3A〜Cにクロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子の殺滅に対する家庭用Clorox(登録商標)漂白剤の異なる濃度の効果を示す。図3Aにクロパンカビ胞子の殺滅に対する12.5%NaOClの効果を示す。図3Bにクロパンカビ胞子の殺滅に対する7.5%NaOClの効果を示す。図3Cクロパンカビ胞子の殺滅に対する3.75%NaOClの効果を示す。
【0061】
これらの試験の結果は、本発明の組成物がクロパンカビ胞子の除染に非常に有効であることを明確に示している。漂白剤が非常に有効な除染剤であることも明らかである。漂白剤の代用品の所見の主な動機づけは、その高い腐食性によるものであって、微生物を殺滅するその無能力ではない。組成物(FB)をさらに最適化し、30%、40%、50%及び60%溶液を用いて、1分で胞子の成長を妨げる最適濃度について試験した。試料は、1及び5分目に採取した。前に認められたように30%濃度で5分後に成長が認められた。表2においてわかるように40%濃度は5分後に成長を完全に抑制し、50%及び60%濃度は1分後に成長を抑制した。この時点では、50%希釈度を1分以内に胞子を抑制する組成物(FB)の最適濃度として選択し、この濃度を建築用材料に関する後続の試験に用いた。
表2:時間の経過に伴うクロパンカビ(スタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum))胞子数の低減に対する組成物(FB)の異なる濃度の効果(logCFU/10ml)
【表2】

【0062】
処理の有効性の測定:建築用材料。組成物は、様々な基材表面の除染にも有効であることが示された。次の3種類の材料をHome Depot(登録商標)Home Improvement Center(Homer TLC,Inc.、Claymont、Delaware)から入手した。1)じゅうたん(Journey’s End Loop Harbor Lig)、2)天井タイル、3)汎用印刷紙(白色)及び4)木材。試料を2インチ平方に切断し、10ミリリットル(10ml)の脱イオン水中に一夜浸漬し、高圧滅菌により121℃で1時間滅菌した。滅菌済み材料を冷却し、2組に分けた。第1の組の滅菌済み材料に100μLの胞子懸濁液(10胞子/10ml溶液)を接種し、フード下で30分間風乾し、次いで、約1mlの水(対照)、組成物(50%FB)及び家庭用Clorox(登録商標)漂白剤(Clorox Company、Oakland、CA)をそれぞれ噴霧し、暗所で室温で30日間インキュベートした。30日後に、すべての対照処理(水で処理した材料)で成長が認められた。組成物(50%FB)又は家庭用Clorox(登録商標)漂白剤で処理した材料における成長は認められなかった(図5、図6、図7及び図11A〜F)。第2の組の滅菌済み材料に100μLの同じ濃度の胞子懸濁液(10胞子/10ml溶液)を接種し、暗所で室温で30日間インキュベートした。成長がすべての試料に認められ、試料上の成長は次の順序であった:天井タイル>じゅうたん>紙(図8、図9及び図10)。次いで、これらの試料を30ミリリットル(30ml)の水(対照)、組成物(50%FB)及び家庭用Clorox(登録商標)漂白剤中にそれぞれ5分間浸漬し、フード下で1.5時間風乾した。サトラトキシンを10ミリリットル(10ml)のメタノールで抽出した。約4ミリリットル(4ml)の抽出物をフード下で約1.5mlの最終容積まで一夜風乾した。各試料からの最小量(100μL)を900μLの脱イオン水に再懸濁し、各処理/懸濁液の8μlを酵母毒性検定に用いた。
【0063】
酵母毒性検定:クルイベロミセス・マルキアヌス(Kluyveromyces marxianus)(No.8554;ATCC、Manassas、VA)の培養を37℃で成長させ、酵母−ペプトン−グルコース(YPG)寒天(1%(重量/容積)酵母抽出物、1%(重量/容積)細菌学的ペプトン、2%(重量/容積)グルコース及び2%(重量/容積)寒天)上で4℃で保存した。検定のために、寒天プレートからの単一コロニーを培養管中の5mlのYPG−50液体培地(1%(重量/容積)酵母抽出物、1%(重量/容積)細菌学的ペプトン及び50mMグルコース)に加えた。管を回転インキュベーター中で37℃で16時間インキュベートして、YPG−50中1×10細胞/mlの最終密度を有する培養を得た。YPG−50に硫酸ポリミキシンB(PMBS)(ICN Biomedicals、Aurora、Ohio)の保存溶液を添加して、バイオアッセイ法用の1ml当たり15ミリリットル(15mg/ml)の最終濃度を得た。試験は3回行った。アッセイ法のために、136マイクロリットル(μl)のPMBS添加YPG−50培地を96ウエルポリスチレンマイクロタイタープレートのウエルに加えた。8マイクロリットル(μl)の試験又は対照試料を各ウエルに加え、続いて16マイクロリットル(μl)の酵母接種物を加えて、約1×10細胞/mlの初期細胞密度を得た。ブランクウエル(陰性対照)は、152μlの培地及び8μlの水を含んでいた。対照ウエル(陽性対照)は、144μlの培地及び16μlの酵母接種物を含んでいた。プレートを密封し、プレート振とう機上で37℃で8時間(細胞が休止期に達するとき)インキュベートした。マイクロタイタープレートリーダーで570nmの波長での吸光度を測定することによって、細胞密度を2時間ごとに測定した。吸光度をK.marxianus(クルイベロミセス・マルキアヌス)8時間成長曲線と相関させて、細胞密度を求めた。これらの培養は、トリコテセンマイコトキシンに対して感受性が高く、非常に少量(100〜200ng/ml)の存在下で成長しない。高い光学濃度(OD)は、生物体の成長を意味する濁度の増加の結果であり、低ODは、生物体の成長がほとんど又は全くないことに起因する。処理のすべて(培地+(組成物(50%FB)又は家庭用Clorox(登録商標)漂白剤処理)+酵母接種物)のOD値は、すべての試料採取時点(0、2、4、6.5及び8時間)においてそれらの陽性対照(培地+水処理+酵母接種物)より高かった。これは、組成物(50%FB)は建築材料中の毒素を5分以内に分解することができ、解毒済み材料のメタノール抽出物は水処理試料と比較して微量のサトラトキシンを生じなかった(表3、4、5)ことを示している。
表3:カビ成長後に組成物(50%FB)及び家庭用Clorox(登録商標)漂白剤(CB)で処理したじゅうたん試料の光学濃度(570nm)
【表3】


表4:カビ成長後に組成物(50%FB)及び家庭用Clorox(登録商標)漂白剤(CB)で処理した汎用紙試料の光学濃度(570nm)
【表4】


表5:カビ成長後に組成物(50%FB)及び家庭用Clorox(登録商標)漂白剤(CB)で処理した天井タイル試料の光学濃度(570nm)
【表5】

【0064】
(実施例2)
あらかじめ調製した脂肪酸石けん及び遊離脂肪酸を過剰量のアルカリ化剤で中和することによりin situで生成させた脂肪酸石けんを含む組成物を用いてスタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子に対する抗菌作用を検討した。
表6:
【表6】


混合物は、脱イオン水で100mlにした。
【0065】
表6の組成物によるスタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子の殺滅は、完全であった。
表7:
【表7】


混合物は、脱イオン水で100mlにした。
【0066】
表7の組成物によるスタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子の殺滅は、完全であった。
【0067】
したがって、あらかじめ調製した脂肪酸石けんを用いた組成物と過剰量のアルカリ化剤を加えて遊離脂肪酸を中和することによりin situで生成させた脂肪酸石けんを用いた組成物との間に抗菌作用の差はなかった。その後の実験においては、脂肪酸石けんをin situで生成させた。
【0068】
(実施例3)
細菌胞子は、化学的及び物理的作用因子に対して高度に抵抗性である。それらは、殺滅するのが最も困難な微生物であると認識されている。最も重要な胞子形成細菌は、バシラス(Bacillus)及びクロストリジウム(Clostridium)属のメンバーである。炭疽菌(Bacillus anthracis)及びクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は、ほぼ全世界に分布している。病院におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の大発生が記載された。この病原体の胞子は、病院環境、例えば、床及び洗面所まわりで長期間生存することができる。バシラス属胞子は、土壌中に豊富に存在し、家畜及び野生動物、並びに感染動物と接触する又は汚染食肉を摂取したヒトに感染を引き起こす。炭疽菌(Bacillus anthracis)胞子は、非常に危険な生物兵器と認識されている。これらの感染因子を中和するための効果的な防除処置を発見することが極めて重要である。本発明の組成物の滅菌作用を、ステンレススチールディスクの表面に付着したバシラス・アトロフェウス(Bacillus atropheus)胞子について検討した。炭疽菌(Bacillus anthracis)のよく知られている代用物であるバシラス・アトロフェウス(Bacillus atropheus)をすべての実験で用いた。すべての処理及び時点について3つの試料(3つの異なるディスク)を実施した。
【0069】
ステンレススチールディスク上の定量的生存可能胞子ポピュレーションアッセイの手順
材料:1枚のディスク当たりバシラス・アトロフェウスの2×10個の胞子を接種したステンレススチールディスク(SGM Biotech Inc)、滅菌済み6mmガラスビーズ、水中0.1%Tween 80及びトリプトソイ寒天プレート
【0070】
実験手順:1枚の接種済みディスクを滅菌済み平底シンチレーションバイアルに入れる。10mlの処理液(水、本発明の組成物等)を加え、室温で規定の時間(15秒、5分、30分等)インキュベートする。処理後、火にあてたピンセットを用いてディスクを取り出し、ディスクの一端を滅菌ろ紙に接触させて吸い取って、過剰の処理液を除去する。処理済ディスクを、4個の6mmガラスビーズ及び5.0mlの0.1%Tween 80を満たした平底試験管(21.5×95mm)に入れる。各試験管を5分間音波処理し、次いで、各試験管を5分間ボルテックスする(Vortex Genie 2で速度5で)。5.0mlの滅菌精製水を加え、5分間再びボルテックスする。82℃で10分間熱ショックを加える。熱ショック試験管を10秒間ボルテックスする。0.9mlの滅菌水を含む希釈試験管に0.1mlを移して、連続10倍希釈を行う。各試験管を10秒間ボルテックスする。最初の熱ショック試験管の1.0ml並びに最初の熱ショック試験管及び各希釈度の0.1mlを3つずつトリプトソイ寒天プレート上で平板培養する。プレートを32℃でインキュベートする。24、48及び72時間インキュベートした後に回収されたコロニーを数える。最後に、水中のみでインキュベートした対照ディスクと比較して生存率及び殺滅率を計算する。
【0071】
定性的胞子生存試験
材料:1枚のディスク当たりバシラス・アトロフェウスの2×10個の胞子を接種したステンレススチールディスク(SGM Biotech Inc)及びトリプトソイブロス
【0072】
実験手順:1枚の接種済みディスクを滅菌済み平底シンチレーションバイアルに入れる。10mlの処理液(水、本発明の組成物等)を加え、室温で規定の時間(15秒、5分、30分等)インキュベートする。処理後、火にあてたピンセットを用いてディスクを取り出し、ディスクの一端を滅菌ろ紙に接触させて吸い取って、過剰の処理液を除去する。処理済ディスクを、10ミリリットル(10ml)のトリプトソイブロスを含む50ml滅菌済みねじ蓋付き試験管に入れる。試験管を32℃でインキュベートする。14日間又はすべての試験管が最大濁度に達するまで毎日、McFarland濁度標準と濁度を比較することによって、成長について試験管を観察する。0=見える成長なし及び7=稠密成長として0から7までの評点をつける。試験管が7のスコアに達したならば、実験の残りについて7と記録する。
【0073】
本発明の組成物により殺滅された胞子の定性的分析:表8に示すように11種の組成物を、バシラス・アトロフェウスの胞子を殺滅するそれらの能力について定性的に試験した。2×10個のバシラス・アトロフェウス(B.atropheus)胞子を接種した3枚のステンレススチールディスクを各製剤に室温で30分間個別に曝露させた。曝露済みディスクを処理液から取り出し、吸い取って過剰な処理液を除去し、10mlのトリプトソイブロス増殖培地に入れ、32℃でインキュベートした。14日間毎日成長について培養を観察した。表9に示したこれらの実験の結果は、各処理の3つの別個の培養のスコアの合計として記録した。最大スコア=21である。6又はそれより高いスコアは、有意な成長を示す。
表8:異なる成分の組成物の組合せ
【表8】


混合物は、脱イオン水で100mlにした。
表9:各種組成物の殺胞子活性の結果
【表9】

【0074】
これらの結果は、組成物6、7及び8が最も有効であることを示唆している。キレート化剤EDTAは、組成物の殺胞子作用に対する非常に有害な影響を有する。これらの試験の結果は、組成物の劇的な殺胞子作用の原因である、ラウリン酸カリウム、エタノール及びKOHの間の相乗作用を明らかに示している。これらの結果から、組合せにおける3成分(すなわち、エタノール、脂肪酸石けん及びアルカリ化剤)の使用が、エタノール及びアルカリ化剤の個別使用若しくは併用又はエタノール及び遊離ラウリン酸の併用から予期されるよりはるかに強い相乗的滅菌効果をもたらし、個々の成分の必要な濃度を著しく低くする可能性があることがわかる。組成物の抗菌性化合物は、相乗的に作用して、病原体を不活性化するのに必要な個々の化合物の濃度を低下させ、かつ、重要なことに病原体の不活性化に必要な時間を著しく短縮する。病原体の不活性化が急速なほど、それらが感染を確立する可能性が低くなる。驚くべきことに、我々は、組成物によってもたらされた総抗菌作用は各化合物の個別の抗菌作用を検討することによって説明できるよりはるかに大きいと思われることを見出した。
【0075】
本発明の組成物1、6、8及び11による胞子殺滅の定量的分析:処理で生残する胞子の数を測定するための定量的検定法を用いて、4種の組成物を、バシラス・アトロフェウス(Bacillus atropheus)の胞子を殺滅するそれらの能力について試験した。2×10個のバシラス・アトロフェウス(B.atropheus)胞子を接種した3枚のステンレススチールディスクを各製剤に室温で15秒間又は30分間個別に曝露させた。曝露済みディスクを処理液から取り出し、処理してディスクから胞子を除去した。ディスクから除去した胞子懸濁液を希釈し、希釈物をトリプトソイ寒天プレート上で3つずつ平板培養した。プレートを32°で72時間インキュベートし、24、48及び72時間目にコロニーを数えた。3つの複製試料の平均として表した、これらの実験の結果を表10に示す。
表10:選択した組成物を用いたバシラス・アトロフェウス胞子の減少の割合
【表10】

【0076】
これらの結果は、製剤6及び8が室温で30分間に2×10個の胞子の完全又はほぼ完全な殺滅をもたらすことを示している。
【0077】
(実施例4)
昆虫ベクター(例えば、蚊等)の防除は、感染症(西ナイル、マラリア、脳炎等)の伝染を防除する不可欠な部分である。本発明の組成物は、これらの感染症を引き起こす病原体並びにこれらの病原体を伝播する媒介生物を殺滅するのに有効であり、したがって、感染症のリスクの低減をもたらす。殺虫剤の毒性は、生物学的防除を含む媒介生物防除方法の代替及び総合的実施への関心を高めた。本発明の組成物は、GRAS成分を用いて製造されるため、有毒でなく、ヒト及び環境にとって安全であり、食品と直接接触する面をすすぐ必要がない。
表11:
【表11】


混合物は、脱イオン水で100mlにする。
【0078】
殺虫活性は、アカイエカの群の蚊であるネッタイイエカ(Culex pipiens quinquefasciatus)の第3齢幼生を用いて測定する。幼生を、100mlの本発明の組成物を含む6オンス紙カップに入れる。処理済み幼生を70°Fで保存し、48時間後に死亡率を記録する。
【0079】
(実施例5)
テロリストによる脅威をもたらす可能性がある化学兵器は、サリン(O−イソプロピルメチルホスホノフルオリデート)、ソマン(O−ピナコリルメチルホスホノフルオリデート)、タブン(O−エチルN,N−ジメチルホスホルアミドシアニデート)及びVX(O−エチルS−2−ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレート)などである。これらの物質の化学構造は、リン含有化合物であるということの類似性を示し、本発明の組成物を用いて求核攻撃により化学的に変化させ、それにより化学兵器として中和することができる。
表12:
【表12】


混合物は、脱イオン水で100mlにする。
【0080】
アルカリ化剤は、存在する遊離脂肪酸を中和するのに十分である量より最大1〜3倍多い量で組成物に加える。化学兵器を加水分解し、感染性プリオンを変性するのに十分な求核剤を得るために、ラウリン酸の中和を超える過剰な量を加える。本発明の組成物における求核剤は、水酸化物及びアルコキシドを含む。アルカリ化剤は、エタノールと反応してエトキシドを生成する。エトキシドは、水酸化物よりアルカリ性であり、強い。
【0081】
以下の試験手順を用いて反応速度を測定する。すべての試験をCASARM等級の試薬(化学試薬標準分析参照物質(Chemical Agent Standard Analytical Reference Material))を用いて行う。すべての試験を、混合機を備えたジャケット付き反応器中で室温で行う。本発明の組成物(100ml)を反応容器に入れ、撹拌する。試験の開始時に、2ミリリットル(2ml)の化学兵器を反応容器に入れる。試料を異なる時点に混合容器から除去する。試料を溶媒で失活させ、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC MS)により未反応物質について分析する。すべての試験試料を3回分析する。
【0082】
(実施例6)
散発型クロイツフェルト−ヤコブ病(生殖系プリオンタンパク質遺伝子(PRNP)突然変異の非存在、PRNPコドン129における同型接合メチオニン)を有する被験者から剖検時に得る組織切片で人為的に汚染させたガラススライドを表13に示す以下の組成物による1分間及び10分間処理で常温に曝露させる。
表13:異なる成分の組成物の組合せ
【表13】


混合物は、脱イオン水で100mlにする。
【0083】
曝露後、Castelleniら(1996年)により記載されたように組織を溶解緩衝液中でホモジナイズする。対照CJD組織及び表13に報告した組成物に曝露させた組織をその後2X試料緩衝液で処理し、10分間煮沸する。対照CJD試料も限定タンパク質分解(100マイクログラム/プロテイナーゼK)に37℃で1時間供し、プロテアーゼ阻害剤(Pefabloc、Roche Applied Science、Indianapolis、IN)により反応を停止させ、等量の2X試料緩衝液を加えた後、10分間煮沸する。次いで、すべての試料を12%ポリアクリルアミドミニゲル上に加え、Immobilon(登録商標)転移膜(Millipore Corporation、Billerica、Massachusetts)に転移させる前に150Vで4℃で2時間電気泳動する。膜上の試料を、ヒトプリオンタンパク質の残基109〜112を認識するモノクローナル抗体と反応させる。免疫反応性は、化学発光により視覚化し、標準的オートラジオグラフィーにより検出する。
【0084】
本発明は示した実施形態に関して本明細書で説明するが、本発明はこれに限定されないことを理解すべきである。通常の技術の熟練を有し、本明細書における教示を閲覧している人びとは、その範囲内のさらなる変更形態及び実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付する特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールと約14以上のpHで塩又はエステルである脂肪酸誘導体との混合物を含み、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である水性組成物を準備するステップと、
(b)組成物を、物質を衛生的にするのに有効な量で物質に適用するステップと、
(c)ステップ(b)の結果として生ずる組成物を場合によって除去するステップと
を含む、物質を衛生的にする方法。
【請求項2】
脂肪酸誘導体がアルカリ又はアルカリ土類金属塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪酸が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
脂肪酸誘導体が4から22個の炭素原子を含む脂肪酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
脂肪酸誘導体がラウリン酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
脂肪酸誘導体がラウリン酸カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
脂肪酸誘導体が、ブチルエステル、エチルエステル、メチルエステル、脂肪アシル−補酵素A、スクロースエステル及びモノグリセリドからなる群から選択されるエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
モノグリセリドが、4から22個の炭素原子を有する1つ又は複数の脂肪酸或いは8から16個の炭素原子を有する1つ又は複数の飽和又は不飽和脂肪アルコールにエステル又はエーテル結合により結合したグリセロール部分を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
毒素がスタキボトリス(Stachybotrys)毒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
微生物又は他の感染因子が、真菌、細菌、真菌胞子、細菌胞子、ウイルス又は立体構造変化プリオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
真菌胞子がスタキボトリス・チャルトラム(Stachybotrys chartarum)胞子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細菌胞子がバシラス・アトロフェウス(Bacillus atropheus)胞子である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
化学兵器が、VX、マスタード、サリン、ソマン又はタブンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
立体構造変化プリオンが、CJD、CWD、BSE及びスクラピーからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
(a)1から6個の炭素原子を含む低級アルカノール、及び
(b)アルカノールに可溶な塩又はエステルである脂肪酸誘導体
を混合物として含み、14以上のpHを有し、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である組成物。
【請求項16】
水溶液である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
低級アルカノールが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はその混合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
脂肪酸誘導体がアルカリ又はアルカリ土類金属塩である、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
脂肪酸が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)塩である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
脂肪酸誘導体が、4から22個の炭素原子を含む脂肪酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
脂肪酸誘導体がラウリン酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
脂肪酸誘導体がラウリン酸カリウムである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
脂肪酸誘導体が、ブチルエステル、エチルエステル、メチルエステル、脂肪アシル−補酵素A、スクロースエステル及びモノグリセリドからなる群から選択されるエステルである、請求項15に記載の組成物。
【請求項24】
モノグリセリドが、4から22個の炭素原子を有する1つ又は複数の脂肪酸或いは8から16個の炭素原子を有する1つ又は複数の飽和又は不飽和脂肪アルコールにエステル又はエーテル結合により結合したグリセロール部分を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
粘稠化剤、皮膚軟化剤、モイスチャライザー、腐食抑制剤、噴射剤、香料、着香剤、消泡剤、抗酸化剤及び染料からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項26】
(a)1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールと約14以上のpHで塩又はエステルである脂肪酸誘導体との混合物を含み、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である水性組成物を準備するステップと、
(b)組成物を、物質を処理するのに有効な量で物質に適用するステップと
を含む物質を処理する方法。
【請求項27】
ステップ(b)の結果として生ずる組成物を物質から除去する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(a)1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールを準備するステップと、
(b)アルカノールに可溶の塩又はエステルである脂肪酸誘導体を準備するステップと、
(c)低級アルカノールと脂肪酸誘導体を混合して組成物を得るステップと
を含み、組成物が14以上のpHを有し、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である、組成物を調製する方法。
【請求項29】
低級アルカノールがエタノールである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
脂肪酸誘導体が、アルカリ又はアルカリ金属塩である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
脂肪酸が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)塩である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
脂肪酸誘導体が、4から22個の炭素原子を含む脂肪酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
脂肪酸誘導体がラウリン酸のアルカリ又はアルカリ金属塩である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
脂肪酸誘導体がラウリン酸カリウムである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
脂肪酸誘導体が、ブチルエステル、エチルエステル、メチルエステル、脂肪アシル−補酵素A、スクロースエステル及びモノグリセリドからなる群から選択されるエステルである、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
モノグリセリドが、4から22個の炭素原子を有する1つ又は複数の脂肪酸或いは8から16個の炭素原子を有する1つ又は複数の飽和又は不飽和脂肪アルコールにエステル又はエーテル結合により結合したグリセロール部分を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
(a)1から6個の炭素原子を含む低級アルカノールを準備するステップと、
(b)脂肪酸を準備するステップと、
(c)アルカリ化剤を準備するステップと、
(d)低級アルカノール、脂肪酸及びアルカリ化剤を混合して組成物を得るステップと
を含み、組成物が14以上のpHを有し、脂肪酸誘導体が組成物の約0.1重量%〜25重量%である、組成物を調製する方法。
【請求項38】
低級アルカノールがエタノールである、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
脂肪酸が、4から22個の炭素原子を含む脂肪酸である、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
脂肪酸がラウリン酸である、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
アルカリ化剤が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属又は炭酸水素及びその混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
アルカリ化剤が、水酸化アンモニウム、水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及びその混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【公表番号】特表2010−504279(P2010−504279A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519443(P2009−519443)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/014486
【国際公開番号】WO2008/008161
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509010816)アーステック、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】