説明

特に乗り物の床パネルなどの騒音低減用構成部材

【課題】軽量で乗り物の床として使用することができると共に安定した音響効果を有する床の構成部材であって、特に、周波数に依存した遮音作用及び吸音作用を局所的に様々に変えて調節可能な構成部材を提供する。
【解決手段】乗り物内部における騒音レベルを低減するための構成部材は、内側プレート(2)と外側プレート(3)との間に封入されたチャンバー吸音体(4)を有している。このチャンバー吸音体(4)は、エアスペース(A)を形成することにより中間層(5)から離隔配置されている。この構成部材は、乗り物の床材として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前提部分に係る二重壁構成部材、及び請求項10に係るその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗り物内部における騒音レベルを低減するための構成部材は、例えばDE−44’12’427から知られている。この種の乗り物の遮音体においては、穿孔プレートが客室の外部に取り付けられており、それによってエアスペースが形成されている。このような構造により、ヘルムホルツ共鳴を利用して特にエンジン室から放出される望ましくない騒音レベルを低減することができる。穿孔プレートと床シートとの間に形成されたエアスペースは、広帯域に渡る吸音性を幾分かでも向上させるために、多孔材で充填されることが多い。残念なことには、そのような構成部材は、このように使用されるとたやすく汚損されてしまう。即ち、開放型細孔材が水及び/又は油で飽和され、穿孔プレートの細孔を詰まらせる。これらの構成部材は、急速にそれらの音響効果を失い、やがて段々重くなる。更に、このような構造は、局所的に異なる音響上の要件をほんの僅かしか満足しないか、又は全く満足しない。
【0003】
従って、例えばDE−U−296’17’845に開示されているようなチャンバー吸音体を使用することも、自動車技術では知られている。これらのチャンバー吸音体は、振動可能な薄いフォイルから成る複数の共鳴チャンバーを有しており、しかも、そのフォイルは穿孔されている。そのような構造は非常に損傷を受けやすく、また乗り物の床の構成部材として使用するのに適していないことは明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、軽量で乗り物の床として使用することができると共に安定した音響効果を有する床の構成部材を提供することにある。特に、周波数に依存した遮音作用及び吸音作用を局所的に様々に変えて調節可能な構成部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有する二重壁構成部材により本発明に従って達成される。特に、チャンバー吸音体は、この構成部材の二枚の支持プレートの間に封入されている。
【0006】
本発明の二重壁構成部材を更に有利に発展させたものは従属請求項の特徴を有している。かくして、好適な実施形態においては、二重壁構成部材の内側プレートと外側プレートとの間にエアスペースが設けられている。
【0007】
別の好適な実施形態においては、内側プレートと外側プレートとの間に吸音性の中間層が設けられていて、次の隣接層、次の隣接プレート又はチャンバー吸音体と共にエアスペースを形成しており、その際、この中間層は、少なくとも部分的に繊維質材、発泡材又は多層フォイルから成っている。
【0008】
本発明の構成部材の好適な実施形態においては、チャンバー吸音体は、外側プレート又は内側プレートに固定結合され、特にそれに対して接着、半田付け又は鋲留めされている。本発明のチャンバー吸音体は、好ましくは不規則に配置された及び/又は不同に形成された複数のチャンバーを有している。そしてまた、これらのチャンバーには、個別の瘤状部分又はスペーサ片が設けられている。
【0009】
本発明の別の実施形態では、チャンバー吸音体が外側プレート又は内側プレートに直接一体化されており、その際、このプレートは、格天井と同様に交差したリブ又は凸条を有していて、それらリブ又は凸条上には、複数の閉鎖チャンバーが形成されるようにフォイルが配置されている。これらの閉鎖チャンバーは、異なる寸法取りと配置が行われたり、又は同一の寸法取りと配置が行われる。適切なフォイルは、あらゆる種類の多孔材又は無孔材から成る一層又は多層の2次元プレストレスが施された又はプレストレスが施されていないフォイルとすることができる。このフォイルは、熱可塑性材から成り、予加熱されたり又はされなかったり、またエンボス加工されたり又はされなかったりする。更にこのフォイルは、予加熱後に局所的な伸長領域を誘起する製造プロセスによって達成される膜形態を呈することができる。フォイル素材の厚さの範囲は0.005〜2.0mmの間から選択される。そのようなフォイルの上記プレートに対する結合は、熱溶接、振動溶接又は超音波溶接、又は接着又はテーパリングにより行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施例によって、また図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0011】
図1に示されている二重壁構成部材1は、内側プレート2とこれから離隔配置されている外側プレート3とを有している。この内側プレート2は、乗り物における客室の床プレートとしての働きをし、乗り物のカーペット又はその他の乗り物の内装カバーによって被われる。外側プレート3は、乗り物の外部シールド又は床シールドとしての働きをする。本発明によれば、内側プレート2と外側プレート3との間の閉鎖空間にチャンバー吸音体4が設けられている。このチャンバー吸音体4は、好ましくは平坦で適切に成形された材料から成っており、外側プレート3に対して接着、半田付け又は鋲付けされる。チャンバー吸音体4の個々のチャンバー7の高さH及びこれらチャンバー7の側壁の傾角αは、専門家によって個別に選択される。チャンバー吸音体4と内側プレート4との間の距離Dも専門家によって調節されることになる。チャンバー吸音体4と内側プレートとの間のこの間隙は、利用可能な空間次第では省くことが可能であると理解されるべきである。別の実施例では、チャンバー吸音体4が更に内側プレート2にも取り付けられる。このチャンバー吸音体4は、好ましくは発泡材シート、フォイル又はプレス加工された繊維質材から成っている。この材料は、空気を透過させないか、又は所定の空気流抵抗を有することができる。局所的に異なる吸音性又は遮音性の値を得るために、チャンバー吸音体の個々のチャンバー7の形状、高さ、容積及び配置は様々に変えて選択される。
【0012】
図2は、やはり外側プレート3及び内側プレート2を有する本発明に係る構成部材1を、更に発展させたものを示している。この実施例では、チャンバー吸音体4と内側プレート2との間に中間層5が配置されている。この中間層5は、少なくとも部分的に繊維質材、発泡材又は多層フォイルから成っており、そして好ましくは、チャンバー吸音体4から又は必要ならば内側プレート2から該中間層5を離隔配置するための瘤状部分6、即ち、チャンバー吸音体4と該中間層5との間又は該中間層5と内側プレート2との間にエアスペースAを形成するための瘤状部分6を有している。このエアスペースAの大きさは、局所的な要件を満たすように専門家により寸法取りされるものと理解されるべきである。
【0013】
本発明に係る構成部材は、幾つかの音響機能を同時に満たすことができる。特に、吸音、遮音及び減衰作用は局所的に且つ簡単な方法で調節される。中間層5は、まず第一にチャンバー吸音体4と内側プレート2とを互いから離隔配置する働きをするが、しかし、それは同時に吸音体として働く開放型細孔を備えたものとすることができる。更に、この中間層5はまた、バネ−質量−系の音響効果のあるスプリングとしての働きをもすることができ、又は遮音目的に役立つことができ、又はシール機能を有することができる。最初の試験結果は、包囲されたチャンバー吸音体4を使用することで2dBよりも大きな騒音低減が達成されることを示した。
【0014】
本発明に係る構成部材の利点は、専門家には明らかに歴然としており、そして特に、その軽量性、その音響的安定性、遮音作用及び吸音作用を局所的に別々に調節可能である点に見いだされるべきである。この二重壁構成部材1を更に発展させたものは、専門家の視野の範囲内にある。特に、チャンバー吸音体4の個々のチャンバー7には、所望のエアスペースAを形成するための瘤状部分6を設けることができる。チャンバー吸音体4、エアスペースA及び中間層5の配置は、要件に応じて専門家により調節されるものと理解されるべきである。特に、中間層5は、複数の金属フォイルから形成することができ、また、開放型細孔を備えたもの又は穿孔されたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る構成部材の概略図である。
【図2】本発明に係る構成部材を好ましく発展させたものの概略図である。
【符号の説明】
【0016】
1 二重壁構成部材
2 内側プレート
3 外側プレート
4 チャンバー吸音体
5 中間層
6 瘤状部分
7 チャンバー
α 傾角
A エアスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の内部における騒音を低減するための二重壁構成部材であって、内側プレート(2)とそれから離隔配置された外側プレート(3)とを有していて、そこで間に複数の閉鎖チャンバー(7)を有するチャンバー吸音体(4)が、内側プレート(2)と外側プレート(3)との間に封入されていることを特徴とする二重壁構成部材。
【請求項2】
中間層(5)が、内側プレート(2)と外側プレート(3)との間に設けられている請求項1に記載の構成部材。
【請求項3】
エアースペース(A)が、内側プレート(2)と外側プレート(3)との間に設けられている請求項1又は2に記載の構成部材。
【請求項4】
チャンバー吸音体(4)が、少なくとも部分的に発泡材、フォイル又はプレス加工された繊維質材から成っている請求項1〜3の何れか一つに記載の構成部材。
【請求項5】
チャンバー吸音体(4)が、外側プレート(3)若しくは内側プレート(2)に対して固定取付け、特に接着、半田付け若しくは鋲付けされているか、又は、チャンバー吸音体(4)が、外側プレート(3)若しくは内側プレート(4)に一体化されていて、そのために、上記外側プレート(3)又は内側プレート(4)が格天井様式の複数のリブ又は凸条を有し、それらリブ又は凸条に対してフォイルが、複数の閉鎖チャンバー(7)が形成されるように固定されている請求項4に記載の構成部材。
【請求項6】
チャンバー吸音体(4)が、不規則に配置された及び/又は不同に形成されたチャンバー(7)を有している請求項4に記載の構成部材。
【請求項7】
チャンバー吸音体(4)に瘤状部分(6)が設けられている請求項4に記載の構成部材。
【請求項8】
中間層(5)が、少なくとも部分的に繊維質材、発泡材、又は多層フォイルから形成されている請求項1〜3に記載の構成部材。
【請求項9】
中間層(5)に瘤状部分(6)が設けられている請求項8に記載の構成部材。
【請求項10】
請求項1に記載された構成部材の音響効果を有する乗り物用床材としての使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−502748(P2007−502748A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529534(P2006−529534)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000298
【国際公開番号】WO2004/101320
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(502324354)リーター テクノロジーズ アー ゲー (11)
【氏名又は名称原語表記】RIETER TECHNOLOGIES A.G.
【Fターム(参考)】