説明

特に自動車にアクセスするためのトランスポンダシステムのセキュリティを向上させるための方法及び構成

アクセス識別のための手順の下で使用されるパッシブ・ワイヤレス・トランスポンダ・システムを提供するものであり、人間によって知覚可能なシグナルを使用するものである。これはまた、防ぐことが難しい中継攻撃が実行されているのを検出することを可能にする。また、他のタイプの通信との操作の干渉、及び高周波伝送に関するいくつかの問題に対しても、留意したものである。比較的安価で且つ信頼性の高い手段を採用することにより、アクセスのための識別プロセスにおけるこのほぼ同時の知覚によって、システムのセキュリティに対するそのような脅威が、非常に効果的に低減される。その他の簡単な手段は、それに基づく利点を有する。シグナルは、人間工学的なプロセスをアシストすることもできる。例えば、パッシブ・キーレス・エントリ・システムと呼ばれる特に作動されない自動車用エントリ又はアクセスシステムが、改良され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインクレームで明確にされているような方法及び構成(arrangement)に基礎を置くと共に、小型デバイスとベース端末(base station)との間の高周波メッセージ送信を利用したトランスポンダシステム又はリモートコントロールシステムに関しており、これらのシステムは、少なくとも幾つかの機能については、明示的に且つ意図的に駆動されることなしに動作するものである。単に通信範囲内に入り込むだけで、結果として通信が行われ、関連の特定の動作を引き起こす(トリガする)ことができる。
【背景技術】
【0002】
そのようなシステムは、パッシブと呼ばれる。自動車へのアクセスを可能にするためのシステムという特定の場合においては、「パッシブキーレスエントリシステム」という用語が広く使用されている。パッシブシステムとして挙げることができるシステムとしては、特に、自動車、その他の物理的な物体及び領域、電子デバイス、機械、車両、設備、及び施設へのアクセスを可能にするためのシステムや、IT及び通信の機能についての権限を付与するためのシステムや、更には、人物の識別用、労働時間のロギング用、及び物品のロジスティックスオペレーション用のシステムや、発券機能及び支払機能を実行するシステムがある。
【0003】
パッシブエントリシステム又はパッシブアクセスシステムは、アクセスのための権限が電子的に付与されるような手続の利用者にとって特に便利なことで知られる。そのようなシステムでは、アクセスできる権限が付与された人物は一般的に、小型デバイスを、識別の目的用に、自己の服の中又は上に携帯又は着用している。小型デバイスは、例えばチップカード、鍵、リモートコントロール、鍵飾り、又はバッジのような、様々な形態で製造することができる。以下の文脈では、小型デバイスは、トランスポンダとも略称されることになる。これに関し、トランスポンダがそれ自身のエネルギ源(一般的にはバッテリ)を有しているか否かは重要ではない。
【0004】
ベース端末は、トランスポンダがアクセスゾーン内にあるときには、数デシメートルから数メートルに及ぶ距離にわたって、トランスポンダと通信することができる。自動車へのアクセスの場合には、このゾーンは自動車のドアの前にある。
【0005】
今日の設計では、安全で且つ模倣することが困難な識別を達成するために、通信の過程において、暗号化の手続が使用される。もし識別プロセスが成功したならば、トランスポンダの着用者又は携帯者の側でのいかなる追加の動作もなしで、アクセスが許可される。例えば、自動車の電子セントラルロッキングシステムがオープンされる。
【0006】
かなり近い将来、自動車にパッシブエントリシステムが広範囲に及んで導入されることが期待でき、そのような装備は既に、いくつかの車両モデルで利用可能である。この文脈では一般に、「パッシブキーレスエントリ」という用語が又はPKEなる略称が使用される。
【0007】
既知のパッシブトランスポンダシステムは、中継攻撃(relay attack)に起因する不正アクセスから守ることが難しい。この場合に想定されるのは、電子攻撃は、信号がベース端末とトランスポンダとの間で伝送されるようなシステムに対して、たとえトランスポンダがアクセスゾーンの外部に(従って、アクセスできる権限が付与された人物もまたアクセスゾーンの外部に)存在するとしても、なされるということである。
【0008】
この問題を克服するための多数の提案済の解決策が、知られている。例として引用するのは、DE 40 20 445 C2、WO 00/12846、EP 0823 520 A2、DE 199 49 970 A1、DE 197 28 761 C1、DE 198 24 528 C1、WO 00/12848、WO 01/25060 A2、DE 199 39 064 A1、EP 1 136 955 A2、US 2001 033 222 A1、及びJP 2001 342 758 AAである。
【0009】
中継攻撃をかわす方法の一例として引用するのは、ドイツ出願公開公報DE 100 08 989 A1である。ここでは、レーダー技術から知られることになったFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave:周波数変調連続波)変調方法が使用されている。その他の解決策においては、無線伝送パス上の通過時間を測定又は制限することが提案されている。この通過時間はほんの数ナノ秒の範囲内なので、通過時間を決定することは、トランスポンダ技術の分野において今日利用可能な手段では、些細、自明な事柄ではない。
【0010】
既知の提案に共通しているのは、それらは、攻撃を困難にする又は攻撃を排除することを意図しているということである。この目的のためには一般的に、かなりの技術的な回路構成及びコストが必要とされる。しばしば提案されるのは、特別な対策が講じられているときにだけ十分にロバスト(robust)に行うことができるような測定方法である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による方法の場合には、人間が知覚可能なシグナルが、ベース端末と小型デバイスとの間の通信プロセスの一環として生じる、ということにより、セキュリティを向上させることが可能である。
【0012】
本発明による方法によれば、不正アクセスが禁止されるのではなく、最初に、不正アクセスを、アクセスできる権限が付与された人物によって気付かれずに開始することが単に禁止される。これは少なくとも、電子攻撃及び侵入者になる可能性のある者にとっての発見、識別、又は逮捕というリスクを高め、抑止効果を有することになる。危険性はこのようにして直接的に大幅に回避されることになる。
【0013】
もしアクセスできる権限が付与された人物が攻撃に気付いたならば、不正エントリ自体又は意図された目的、結果、又は反復を頓挫させることができるような対策を講じることができる。
【0014】
本発明は、中継攻撃から保護するための以前から知られている大部分の解決策よりも、かなり少ないコストで且つかなり小さな回路構成で実施することができる。また、以前に公表された多数の解決策を使用するよりも、かなり高い信頼性を期待することができる。構成要素、周波数等の部分に対しては、精度の高さは要求されない。結果として、安価で且つ質の良さが保証された(well−proven)手段を採用することができる。
【0015】
本発明による解決策は、場合によって認可の対象となり得るような、又は(移動無線網又はGPSのような)何らかの更なるインフラストラクチャを必要とし得るような、いかなる追加のワイヤレス通信も必要としない。本発明は、いかなる変更もなく国際的に適用可能であるが、このようなことは、一部の既知の方法においては、無線伝送の周波数帯域及び帯域幅の違いのため、可能ではない。
【0016】
特に音及び/又は光をシグナルとして発信することによって、知覚を引き起こすことが可能である。光が使用される場合、トランスポンダは、バッジ、識別カードタグ、又は腕章のように露出した位置に、又は服の表面に、着用又は携帯される必要がある。
【0017】
知覚を助けるために、更なる手段(measures)が加えられてもよく、このような手段には、知覚可能な振動、明らかに人目をひく又は触知できる刺激(操作手段への力の作用又は操作手段によって設定される反力の作用)である形状の機械的変化、及び場合によっては更に電気的又は熱的刺激、並びに特別な場合においては更に芳香性の又は不快なにおいのする物質の放出、が含まれる。
【0018】
知覚可能なシグナルは、トランスポンダ及び/又はアクセスシステム(例えば自動車)から生じるようにしてもよいし、相手側であるいずれかによって受信されて解析されるようにしてもよい。後述の実施形態において、これは、自動車へのアクセスに関する例によって明確にされることになる。
【0019】
本発明の第1の実施形態においては、知覚可能なシグナルが、ベース端末によって発信される。この場合、小型デバイスが、当該シグナルの少なくとも一部を受信して解析するようにしてもよい。この実施形態においては、ベース端末即ち自動車が、知覚可能なシグナルを発信する。これが実施されると、当該シグナルは、人間によって気付かれると共に、トランスポンダによって受信され、アクセスプロセスのために解析される。
【0020】
このように、トランスポンダにとって既に標準であるウェイクアップ機能は、例えば、高周波シグナル(長波長通信がしばしば使用される)によってよりも寧ろ、音響シグナルによって実行されるようにしてもよい。しかしながら、場合によっては、もし識別の少なくとも一部が既に完了しているならば、シグナルの発信が開始されるのみで、(単数の又は複数の)トランスポンダが関連のものである場合又はベース端末が整合する場合にのみ、シグナルの発信が可能になるようにしてもよい。このために、小型デバイスは、もし当該シグナルも受信されているならば、上記の通信を安全な方法で完了するようにしてもよい。
【0021】
中継攻撃による不正アクセスの場合でさえも、上記のシグナルは必要とされることになる。従って、このアクセスも、知覚可能になると共に、以前のように気付かれないままでいることはなくなることになる。
【0022】
第2の実施形態では、知覚可能なシグナルが、小型デバイスによって発信される。この場合には、ベース端末が、当該シグナルの少なくとも一部を受信して解析するようにしてもよい。トランスポンダデバイスは、アクセスプロセスがあったときにはいつでも、即ち、たとえ不正アクセスプロセスがあったときでさえも知覚可能なメッセージを発信するようなシグナル発信手段を有している。
【0023】
上記のメッセージは例えば、ピエゾオーディオ発信器(emitter)によって与えられる特徴的な一続きの音(sequence of tones)であってもよい。当該一続きの音の効果はおそらく、更なるタイプのシグナルによって、例えばパルス振動メッセージによって、高められることになる。
【0024】
また、2つの実施形態は組み合わせることも可能であり、これは、トランスポンダ及び自動車の両方がシグナルを発信することを意味する。
【0025】
その他の従属クレームに記載されている手段は、メインクレームで規定される本発明についての可能な限り有利な改善及び改良を実現する。その他のクレームは、本発明による構成に関する。
【0026】
また、完了されていない、不完全である、又は中断されているようなアクセスプロセスについても、シグナルで合図することが可能である。いくつかの状況下で、これは、不正アクセス未遂の指標として解釈することができる。アクセスできる権限が付与された人物は、存在する状況を考慮して対応することができる。そこで、もしその人物が繰り返しを予期するならば、トランスポンダを、従ってパッシブエントリ機能を、スイッチオフすることができる、且つ/又は、チェックを行わせて一部の場合には逮捕さえも行わせるよう行動することができる。
【0027】
トランスポンダが、侵入者を防ぐ状態に自動車を設定する入力機能(例えばpressキー)を有するようにしてもよい。これには、警報システムをトリガすること、又は車両をロックすることが含まれる。特に、トランクリッド、フィラーキャップ、グローブコンパートメント、及び全てのドア(エントリドアを含む又は含まない)は、アクセスできる権限が付与された人物又はセキュリティ担当要員のみが可能な明確な動作(キーの使用、コードの入力)によってしか再ロック解除ができないような方法で、ロックされるようにしてもよい。
【0028】
このような警報の状態において、例えば操作手段又はハンドルにおける染料又はにおいのある(odoriferous)物質の放出によって、侵入者を染料又はにおいのある物質でマークすることが考えられる。
【0029】
侵入者への抑止力となるような期間(例えば15分)の間、この種のロック又は警報が維持されるようにしてもよい。イモビライザ(エンジン始動ロック)の動作が開始される場合、又は貴重な装備、備品、及び付属品がブロックされる場合においては、類似のものを適用するようにしてもよい。このようにして、ナビゲーションシステム、搭載コンピュータ、娯楽及び情報システム(ラジオ、ビデオ、インターネット)はロック解除されるまで機能が停止されるようにしてもよいし、ウィンドウリフタ及びベルトロックはクローズされるようにしてもよいし、燃料の供給又はエンジンの点火は防止されるようにしてもよいし、ブレーキ及びステアリングはブロックされるようにしてもよい。
【0030】
アクセスできる権限が付与された人物は、オフスイッチにより、パッシブアクセス機能を一時的に停止(bar)してもよい。これは、例えば劇場に行くときのように、シグナルが迷惑になることになるときに、有用である。これは、その人物がトランスポンダデバイスを携帯していないために、シグナルに気付くことができないときについても同様である。オフスイッチの代わりを、高周波伝送が透過できないようなトランスポンダ用のカバー、ケース、又は箱が担うようにしてもよい、又は、例えば特別な長期の駐車又は休日向けの安全装置のような、車両の制御機能が担うようにしてもよい。
【0031】
検索又はテストモード(当該モードにおいては、通信が生じるや否や、アクセスは許可されないもののシグナルがトリガされる)が設定可能である。これは例えば、アクセスデータの不完全な又は改変された通信の形式で実施されるようにしてもよい。
【0032】
このモードは、トランスポンダ又は車両を、十分近い距離から見つけるために使用することができる。また、例えば当局による追跡又はチェックの際には、特別な検索デバイスが、シグナルの発信のみをもたらすようにしてもよい。この機能は、泥棒になる可能性のある者に対しての主な抑止力となり得る。
【0033】
通常の日々の使用において、シグナルは、主に人間工学的なプロセスをアシストすることが意図されている。知覚されるものを追加したおかげで、ユーザはパッシブエントリ機能をより迅速に習得する。知覚可能なフィードバックがあるとの理由で実行されるような動作のアシストがある。例えば、追加のオーディオ信号を提供する又は表示灯を有するような瞬間接触スイッチ(momentary−contact switches)のケースのように、類似のものが成功を収めているケースが多数存在する。
【0034】
シグナルが存在しないこと、又はその不完全さ又はその通常の経路との違いが、高周波伝送パスにおける問題(伝送帯域の干渉、シャドーイング)の存在を示すようにしてもよく、例えば更に、トランスポンダの位置の変えることによってアクセスを得るような企て、を行わせるようにしてもよい。また、シグナル発信手段が、他の目的のための診断機能の責務を負うようにしてもよく、例えば、バッテリが使い切られたという指標を与えるようにしてもよい。
【0035】
他の電子攻撃に対するセキュリティは、シグナルの助けによって向上させることもできる。この種の攻撃には、特に、それらのシグナルを気付かれずに傍受することによって、トランスポンダ及び/又はベース端末のパラメータ、暗号化オペレーション、又はコードの知識を得ることを目的としたものが含まれる。この情報の助けによって、シグナル又はオペレーションを模倣する、シグナルを再放射する、又は暗号攻撃(解読)を実行する、という企てを行うことが可能である。現在、専門家による見方としては一般的に、製造者は皆、よく考えられた暗号化手順、秘密性を保証するための手段、及びその他の組織的及び技術的な保護手段を使用しているので、この種のリスクはかなり小さい、とのことである。パッシブエントリシステムが有すると予想できる長い動作寿命、及び予想できるよりも遥かに広範囲なパッシブエントリシステムの使用を考慮すると、ある種の無傷性の損失については、完全には排除できない。説明したような主な利点を有することに加えて、本発明の助けによる保護には確かに予防的側面も存在しており、今日なされる長期システム設計の決定の際には、用心としてこれに注意が払われるべきである。
【0036】
電子攻撃に対するその他の防衛手段は、本発明によって大いに支援される。そのような方法と共に使用することによって、既知の方法の不都合はかなり低減できる。このようにして、遥かにより高い誤り率及びより低い精度が許容可能になる。頓挫した又は失敗した攻撃をシグナルで合図できるようにすることで、保護手段の効果が向上する。
【0037】
本発明の実施によって、新機能へのユーザの注意が高まると共に、より簡単に、ユーザが、作動機能が存在しない便利なパッシブ手順の日々の使用に慣れるようになる。
【0038】
車両の購入者に対しては、電子攻撃によってもたらされる脅威の厳密な性質について、いかなる詳細な理解も提供する必要がない。シグナルの抑止効果は、たとえそのような理解がなくても影響力を持つ。攻撃者になる可能性のある者は、結果的にもたらされる発見のリスク及び保護手段を与えるその他のポイント、を認識するのに必要な適切な特殊知識を有しているものと想定することができる。
【0039】
万一依然として脅威が存在する場合には、ユーザも、行動及び対抗手段の適切な規則をすぐに熟知することができる。リスクのある国又は領域に旅行に行くときには、パッシブ機能については選択的に、使用できないようにすることができる。このために、本発明による構成において、小型デバイスに、ワイヤレス伝送を少なくとも一時的に作動させないようにするための操作手段が存在するようにしてもよい。
【0040】
ワイヤレス識別を採用しており、意図的で積極的な動作がなされる必要がないようなアクセス、識別、ロギング、発券、及び支払システムも、本発明によって改良可能である。この場合にも、セキュリティ及び操作の観点からの同様の利点は、本発明を使用することによって、わずかな回路構成及びコストで達成することができる。
【0041】
本発明のこれら及びその他の側面は、以下に記載の実施形態から明らかになると共に、以下に記載の実施形態を参照して明確にされることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図1は、第1の実施形態についての概略図である。車両1からは、例えば一続きの音又は光シグナルのような知覚可能なシグナル4が発信される。このシグナルは、シグナル発信器3によって発信される。そのシグナルは、アクセスできる権限が付与された人物5(トランスポンダの携帯者又は着用者)によって知覚され、同時に、トランスポンダ6によって受信されて解析される。このために、トランスポンダ6は、例えば光電気の又は音響の受信機のような適切な受信機に設けるようにしてもよい。
【0043】
さらに、ワイヤレス通信7が、トランスポンダ6とベース端末8との間に引き起こされる。この通信は、様々な周波数帯域の交番電磁場(alternating fields)を使用し、その通信は、知覚することができない。
【0044】
エネルギを節約するために、ドアハンドル2が操作されるまでは、全体的な機能がスイッチオンされないようにしてもよい。アクセスゾーンへの進入がなされていることを示すその他のことも使用可能である(光バリア、動きセンサ、磁界解析)。
【0045】
シグナル発信器3及びベース端末8は、車両内の異なるポイントに、又は結合サブアセンブリとして例えばドアミラー内又はドアハンドル2上に、設けるようにしてもよい。
【0046】
図2は、第2の実施形態についての概略図である。トランスポンダ11からは、例えば一続きの音又は光シグナルのような知覚可能なシグナル10が発信される。このシグナルは、トランスポンダ11内に組み込まれたシグナル発信器によって発信される。そのシグナルは、アクセスできる権限が付与された人物5(この人物5はトランスポンダを自己のポケット内に携帯している)によって知覚され、同時に、車両1内にあるシグナルセンサ9によって受信されて解析される。知覚することができないトランスポンダ11とベース端末8との間のワイヤレス通信7が続行する。
【0047】
この実施形態では、シグナルセンサ9を省略した場合でさえも、セキュリティが大幅に向上する。そのとき、シグナルの機能が、トランスポンダデバイスの振動及び/又はトランスポンダデバイスによる触知できる刺激(形状の変化)のみによって、又は類似の手段のみによって、単独で又は補足として達成されるようにしてもよい。シグナルセンサ9を設けた場合、使用されるシグナルは主として、音シグナル又は光シグナルである。もし触覚、視覚、又は聴覚の刺激がドアハンドル2において同期的に又は一致したリズムで与えられるならば、注意と人間工学的な効果とを、更に高めることができる。また、ハンドルが、電源投入スイッチの機能も果たすようにしてもよい。
【0048】
図3は、第3の実施形態についての概略図である。トランスポンダ6からは、例えば一続きの音又は光シグナルのような知覚可能なシグナル14が発信される。このシグナルは、トランスポンダ6内に組み込まれたシグナル発信器によって発信される。そのシグナルは、アクセスできる権限が付与された人物5によって知覚され、同時に、車両1内に又は車両1上にある結合されたシグナル発信器及びセンサ3によって受信されて解析される。
【0049】
また、結合されたシグナル発信器及びセンサ3がシグナル4を発信し、そして、当該シグナル4が、もう一度、知覚されて且つ更にトランスポンダ6によって受信されて解析されるようにしてもよい。このために、トランスポンダ6は、言及したシグナル発信器だけでなくシグナルセンサも有する。
【0050】
2つのシグナル4及び14は、同じ種類のものとしても異なるものとしてもよい。それらのシグナルは、トランスポンダ6及び車両1から生じる更なる刺激が、それらのシグナルと一時的に結び付けられることで、その結果、特にはっきりと目立つものとなり得る。
【0051】
図4は、仮想的な電子中継攻撃及びシグナル発信の有利な効果を表す。
【0052】
中継攻撃に使用される延長無線伝送パス19の2つのエンドの内の一方は、車両のところにある。このエンドはここでは、潜在的侵入者(侵入者になる可能性のある者)15の運ぶスーツケースに隠された中継局17として示されている。ここで、トランスポンダとベース端末との間でノーマルに交信されるシグナル21が、延長無線送信パス19の他のエンドに向けて渡され、中間点を介して再び送り返される。延長パスの他のエンドは例えば、侵入者の共犯者16の運ぶスーツケースとして偽装された中継局18の形を取る。共犯者16は、アクセスできる権限が付与された人物5のかなり近くにいるが、この時、その人物5は、自分の車両を全く見ることができないものとなっている。
【0053】
このエンドからは、中間点を介して伝送された無線シグナル22が再発信され、他の方向において検出される。このようにして、トランスポンダ23のすぐそばでベース端末擬装がなされ、トランスポンダ23は、巧みに騙されて、適切な動作をさせられてしまう。トランスポンダからの伝送は、実際のベース端末へと送り返される。このようにして、車両1は、アクセスできる権限が付与された人物5がアクセスゾーンから遥か遠くにいる場合でさえも、権限なしで開けることができる。距離としては、10mから50kmまでの間、又はそれ以上の距離が考えられる。延長無線伝送パスとしては、必要な帯域幅を有するような、任意の所定の伝送媒体(無線リンク、同軸ケーブル、電話)を採用することが可能である。
【0054】
従来、この種の電子攻撃は特別の脅威であった。というのは、このようなプロセスは全く気付かれずに生じ得るから、即ち、侵入者15についても共犯者16についての発見されることはないから、である。
【0055】
しかしながら、電子攻撃と関連させて本発明によるシグナルを発信させると、潜在的侵入者(侵入者になる可能性のある者)15が仮にあったとすると、ほぼ必ず侵入者が発見される。シグナル20は、車両1と中継局17との間で伝送される必要がある。また、中継局18は、シグナル24を、アクセスできる権限が付与された人物5に、及びトランスポンダ23に伝送する必要がある。
【0056】
シグナルが中継局18によって発信される場合、上記の例では、共犯者16があらわになることになる。アクセスできる権限が付与された人物5の注意は、トランスポンダ23からの発信25によっても喚起され、その人物5は、ある種の対抗手段を講じることができるようになる。
【0057】
一方、もしも侵入者が発見されるリスクを是認して(トランスポンダを強盗又は窃盗によって手に入れる、力ずくで押し入る)いるならば、侵入者は、複雑な電子攻撃を行うことはまず選択しないだろう。この種のリスクについては、他の手段によって低減されなければならない。
【0058】
図5は、特定の空間アクセスゾーン内に人間が進入する場合又は人間が存在する場合にシグナル発信機能が動作するような一実施形態の概略図である。
【0059】
ベース端末26又は複数のアンテナは、自動車の周りのドア(サイド及びリア)の領域に設けるようにしてもよい。トランスポンダのレンジに起因して、約1mから最大約5mに至る範囲のアクセスゾーンが形成される。
【0060】
第2の実施形態の変形として、これらのアクセスゾーン28への進入がなされるや否やシグナルが生じるようにすることができる。アクセスできる権限が付与された人物に対して、自身がちょうど今パッシブに識別されていることを、シグナルによって強制的に気付かせることができる。その人物は、更なる動作を行う必要なしにドアハンドル26を操作することができ、その人物が識別の一環としてうまく認識された場合には、ハンドル26がロック解除される。
【0061】
アクセスできる権限が付与された人物が、このようにしてリマインドされないならば、パッシブ機能が作動しないようにされているか、動作に障害があるか、のいずれかである。いずれの場合にも、その人物は、何らかの積極的な措置をとる必要がある。
【0062】
しかしながら、アクセスできる権限が付与された人物が、自己の車両のアクセスゾーンの外部でシグナルを十分に受信したならば、無権限のアクセスが差し迫っているか又はその瞬間に発生している。トランスポンダによって果たされるパッシブ識別機能は、操作手段の簡単な操作によって、作動させないようにすることができる。これに代えて、警報機能がトリガされるようにすることができ、又はその他の対抗手段が講じられる。ドアハンドルは、シグナルがオープンプロセスをうまく作動させた後、すべての時間にわたって(しかし所定の時間枠だけ)操作できないようにしてもよい。ドアハンドルの永続的な操作は、いずれにしても許可されるべきではない。人間工学的な観点から、シグナルの発信は、ドアが開くのを許可された有効期間にうまく一致されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ベース端末(この場合は自動車)によりシグナルが発信される場合についての概略図である。
【図2】トランスポンダによりシグナルが発信される場合についての概略図である。
【図3】ベース端末(この場合は自動車)とトランスポンダの両方によりシグナルが発信される場合についての概略図である。
【図4】仮想的な中継攻撃及びシグナル発信の有利な効果(抑止効果)を示す。
【図5】特定の空間アクセスゾーン内におけるシグナル発信を採用した一実施形態の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのベース端末と、人間が携帯可能な少なくとも1つの小型デバイスと、の間のワイヤレス伝送を利用したトランスポンダシステムのセキュリティを向上させる方法であって、前記小型デバイスが空間的に近接していることを認識させる通信が、前記ベース端末と前記小型デバイスとの間で生じ、人間が知覚可能なシグナルが、前記ベース端末と前記小型デバイスとの間の前記通信プロセスの一環として生じることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記知覚可能なシグナルが、前記ベース端末から発信されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小型デバイスが、前記シグナルの少なくとも一部を受信して解析することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記小型デバイスは、もし前記シグナルの受信もされているならば、前記通信を安全な方法で完了することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記知覚可能なシグナルが、前記小型デバイスから発信されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ベース端末が、前記シグナルの少なくとも一部を受信して解析することを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ベース端末は、もし前記シグナルの受信もされているならば、前記通信に関連する動作だけを実行することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
通常は前記通信によって引き起こされるべき動作が、前記小型デバイスの操作手段の操作によって、及び前記ベース端末へのデータの伝送によって、禁止されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記小型デバイスにシグナルが存在しないこと及び/又は改変されたシグナルが存在することは、前記伝送プロセスにおける動作に障害があることを示すことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
警報が、前記小型デバイスの操作手段の操作によって、及びデータの伝送によって、トリガされることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
追加の動作モードは、通信を前記ベース端末と小型デバイスとの間に確立することを可能にするが、前記シグナルの発信のみを実行可能にし、通常の動作(アクセス権限の付与、識別、支払、ロギング等)を、少なくとも特定の意図的な動作(例えば特別な操作手段の操作、コードの入力、機械的なロック解除等)が実行されるまで、及び/又は期間が満了するまで、禁止することを可能にすることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記デバイスは、操作手段によって、及び/又は少なくとも一部が不透過性のカバーによって、少なくとも一時的に動作不能にさせられることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記シグナルは、アクセスゾーンへの進入がなされたとき及び/又は前記アクセスゾーンに進入している存在があるときに生じ、且つ、識別プロセスの前に生じることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのベース端末(8)と、人間が携帯可能な少なくとも1つの小型デバイス(6)と、の間のワイヤレス伝送を利用したトランスポンダシステムのセキュリティを向上させるための構成であって、前記小型デバイス(6)が空間的に近接していることを認識させる通信が、前記ベース端末(8)と前記小型デバイス(6)との間で生じ、人間が知覚可能なシグナルを発信するための少なくとも1つの発信器(3)が、前記ベース端末(8)に装備されており、当該ベース端末(8)の発信器(3)は、前記通信によって作動させることが可能であることを特徴とする構成。
【請求項15】
少なくとも1つのベース端末(8)と、人間が携帯可能な少なくとも1つの小型デバイス(6)と、の間のワイヤレス伝送を利用したトランスポンダシステムのセキュリティを向上させるための構成であって、前記小型デバイス(6)が空間的に近接していることを認識させる通信が、前記ベース端末(8)と前記小型デバイス(6)との間で生じ、人間が知覚可能なシグナルを発信するための少なくとも1つの発信器(3)が、前記小型デバイス(6)に装備されており、当該小型デバイス(6)の発信器(3)は、前記通信によって作動させることが可能であることを特徴とする構成。
【請求項16】
前記ワイヤレス伝送を少なくとも一時的に作動させないようにするための操作手段が、前記小型デバイスに設けられていることを特徴とする請求項15に記載の構成。
【請求項17】
前記ベース端末を含む技術システムの状況に応じて保護手段をトリガするための操作手段が、前記小型デバイスに設けられていることを特徴とする請求項15に記載の構成。
【請求項18】
警報をトリガするための操作手段が、前記小型デバイスに設けられていることを特徴とする請求項15に記載の構成。
【請求項19】
前記ベース端末によって発信された前記シグナル用の受信機と、解析手段とが、前記小型デバイスに設けられていることを特徴とする請求項14に記載の構成。
【請求項20】
前記小型デバイス(6)によって発信された前記シグナル用の受信機(9)と、整合解析手段とが、前記ベース端末(8)に設けられていることを特徴とする請求項15に記載の構成。
【請求項21】
少なくとも1つのベース端末(8)と、人間が携帯可能な少なくとも1つの小型デバイス(6)と、の間のワイヤレス伝送を利用したトランスポンダシステムのセキュリティを向上させるための構成であって、前記小型デバイス(6)が空間的に近接していることを認識させる通信が、前記ベース端末(8)と前記小型デバイス(6)との間で生じ、前記ワイヤレス伝送を少なくとも時々作動させないようにするための操作手段が、前記小型デバイス(6)に存在することを特徴とする構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−527961(P2007−527961A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516714(P2006−516714)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050933
【国際公開番号】WO2004/114227
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】