説明

特に電子部品及び導体通路を貼り付け用の熱活性化可能な接着テープ

【課題】 熱活性化可能であり、加熱状態で架橋し、加熱状態で低い粘性を有し、ポリイミドへの接着性が良好であり、未架橋状態では有機溶剤に溶解しそして水吸収性が低い接着テープの提供。
【解決手段】 この課題は、少なくとも
a)アミノ基及び/又は酸末端基を持つポリアミド、
b)エポキシ樹脂、
c)少なくとも6個の炭素原子を持つ非極性の長い鎖及びエポキシ樹脂と反応することができる少なくとも一つの反応性末端を持つ化合物、
d)場合によっては可塑剤
よりなる接着剤を用いて特に電子部品及び導体通路を製造又は更に加工するための熱活性化可能な接着テープであって、前記ポリアミドが少なくとも150℃の温度でエポキシ樹脂と反応しそしてa)とb)との重量割合比が50:50〜99:1である、上記接着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit Boards;FPC基板)の貼り付け用の、高温での流動性が低い熱活性化可能な接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、フレキシブルプリント基板は携帯電話、ラジオ、コンピュータ、プリンター及びその他多くの製品の如き多くの電子機器において使用されている。これらは銅の層及び高融点の耐久性熱可塑性樹脂、大抵はポリイミド、稀にポリエステルの層で構成されている。これらのFPC基板を製造するためには、しばしば特に厳しい要求が求められている接着テープがしばしば使用される。その要求の一つは、FPC基板を製造するために銅製フォイルにポリイミドフィルムを貼り付けることであり、もう一つは個々のFPC基板も互いに貼り付けることであり、この場合にはポリイミドをポリイミドに貼り付けることも生じる。これらの他にFPC基板は他の基体にも貼り付けられる。
【0003】
この接着に使用される接着テープには非常に厳しい要求が前提とされる。非常に高い接着効率を達成しなければならないので、高温で加工される熱活性化可能な接着テープが一般に使用される。この接着テープは,200℃近辺の温度でしばしば発生する揮発性成分を、FPC基板の貼り付けのときの高い熱負荷の間に放出してはならない。高い凝集性を達成するためには、接着テープはこの熱負荷の間に架橋するべきである。貼り付け工程の間の高い圧力は、接着テープが高温で僅かの流動性しか有していないことを必要とする。これは未架橋の接着テープの高い粘度によって又は非常に迅速な架橋によって達成される。さらに、接着テープはハンダ槽で耐えなければならない。換言すれば、該接着テープは288℃の温度負荷に短時間の間耐えなければならない。
【0004】
純粋な熱可塑性樹脂は非常に容易に溶融し、貼り付けるべき基体を良好に濡らしそして数秒間に非常に速やかな接合をもたらすにも関わらず、前述の理由から該純粋の熱可塑性樹脂を使用することは合理的ではない。もう一方において、これらは高温のもとでは、加圧下での貼り付けのときに接合ラインから溢れ出す傾向がある程、柔らかい。従ってハンダ槽安定性もない。
【0005】
一般に架橋可能な接着テープには、特定の硬化剤でポリマー架橋反応するエポキシド樹脂又はフェノール樹脂が使用される。この特別な場合にはフェノール樹脂は架橋の際に分解生成物を発生させ、それが放出されそして硬化の間に又は最も遅くともハンダ槽中で気泡を生じるので、該フェノール樹脂は使用することができない。
【0006】
エポキシ樹脂は主として構造物の接合に使用されそして相応する架橋剤を用いての硬化の後に、確かに高い接着強度を達成するが殆ど柔軟性のない非常に脆弱な接着剤を生じる。
【0007】
柔軟性を高めることは、FPC基板で使用するのには不可欠である。一方においては理想的にロールに巻かれた接着テープによって接合を行うべきであり、もう一方においては曲げることもできなければならない柔軟な導体通路が適しており、折りたたみ可能なスクリーンがFPC基板を介して別の回路に連結されているラップトップの導体通路の例から容易にわかる。
【0008】
エポキシ樹脂接着剤の柔軟化には2つの方法が可能である。一つはエラストマー鎖で柔軟化されたエポキシ樹脂を存在させるものであるが、非常に短いエラストマー鎖によって制限された柔軟性しかもたらされない。別の可能な方法は、接着剤に添加されるエラストマーの添加による柔軟化を達成するものである。この変法は、エラストマーが化学的に架橋されず、それによって高温でも依然として高い粘度を持つエラストマーしか使用することができないという欠点を有している。
【0009】
接着テープは大抵、溶液から製造されるので、高温で流動性でないように十分に長鎖であるが、もう一方では溶液状態にすることができる程度の未だ短鎖であるエラストマーを見出すことがしばしば困難である。
【0010】
ホットメルト法による製造は、架橋性の系の場合には、製造工程の間に時期尚早な架橋を避けなければならないので非常に困難である。
【0011】
特別な凝集性及び高接着強度の組成物はエポキシ樹脂と架橋する可溶性ポリアミドの使用によって得ることができる。ポリアミドが水を吸収する傾向があることは欠点である。この欠点は、一方においては、吸収された水が再び蒸発され、接合部に気泡を生じる場合に接合に関してマイナスの影響を及ぼし得る。もう一方においては、水の吸収によって接着剤の電気的性質が変化し、絶縁効果を著しく弱める。
【0012】
ポリアミド又はその誘導体をベースとする架橋可能な接着剤が開示されている。
【0013】
この場合、米国特許第5,885,723A号明細書又は特開平10−183,074号公報或いは特開平10−183,073号公報にあるような、ポリカーボネート基又はポリアルキレングリコール基を有する変性ポリアミドが適する。ポリアミドは、エポキシ末端基を含有しておりそしてそれによってエポキシドと硬化剤によって架橋され得るように反応する。
【0014】
これとは別に、非常に特別な組成のポリアミドイミドを含有する接着剤が例えば米国特許第6,121,553A号明細書に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の課題は、熱活性化可能であり、加熱状態で架橋し、加熱状態で低い粘性を有し、ポリイミドへの接着性が良好であり、未架橋状態では有機溶剤に溶解しそして水吸収性が低い接着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は驚くべきことに、主請求項に詳細に記載するような接着テープによって解決される。従属形式の請求項の対象はこの発明の対象並びに使用可能性の別の有利な実施形態である。
【0017】
従って本発明の対象は、少なくとも
a)アミノ基及び/又は酸末端基を持つポリアミド、
b)エポキシ樹脂及び
c)少なくとも6個の炭素原子を持つ非極性の長い鎖及びエポキシ樹脂と反応することができる少なくとも一つの反応性末端を持つ化合物
よりなる接着剤を用いて特に電子部品及び導体通路を製造又は更に加工するための熱活性化可能な接着テープであって、前記ポリアミドが少なくとも150℃の温度でエポキシ樹脂と反応しそしてa)とb)との重量割合比が50:50〜99:1である、上記接着テープにある。
【0018】
本発明において“接着テープ”という一般的表現は、二次元に広がるフィルム又はフィルム片、長く伸びそして幅が制限されているテープ、テープ切片等、また、打ち抜き物等の平らなあらゆる構造物を包含する。
【0019】
a)とb)との重量割合比は好ましくは70:30〜95:5である。
【0020】
本発明の接着剤で使用されるポリアミドは高過ぎない分子量(好ましくは4000以下の重量平均分子量M)を有しそして柔軟化されているか或いは部分的に又は全く結晶質であるべきでない。これは、一方においては、接着剤の上述の柔軟性のために必要であり、もう一方においては原料が好ましくは溶液状態から加工されそして完全に結晶質のポリアミドは溶解が困難でありそしてトリフルオロ酢酸又は硫酸のような不都合な溶剤にしか溶解しない。
【0021】
それ故に本発明の有利な一つの実施形態によれば、ホモポリマー、例えばPA6,6の代わりにコポリマーを使用する。PA6,6を柔軟化するためにこれをPA6と共重合してもよい。他のコポリマーには例えばPA6,6/6,12又はPA6,6/6,11も同様に使用することができる。分子量を下げることによってポリアミドの溶解性が高められる。この場合、分子量は、良好な機械的性質が失われる所まで低下させるべきでない。
【0022】
重量平均分子量Mは500g/molより大きくあるべきである。
【0023】
結晶性を更に低下させるために、ターポリマーを使用することも可能である。純粋の脂肪族ポリアミドを使用することができるだけでなく、脂肪族芳香族ポリアミドも使用することができる。この場合、長い脂肪族鎖又は最良では共重合によって色々な長さの脂肪族鎖を含有するものが特に有利である。溶解性の改善はメタ位或いはオルト位で置換された芳香族化合物を使用することによっても行うことができる。テレフタル酸の代わりにイソフタル酸を使用することも結晶性を著しく低下させる。脂肪族芳香族ポリアミドにおいて結晶性を低下させるためには、以下の式のモノマーも使用することができる:
【0024】
【化1】

【0025】
上記式中、Xは酸素、窒素又は硫黄の各原子であるが、少なくとも一つの炭素原子を持つアルキレン基をも意味し得る。イソプロピレン基も可能である。
【0026】
同様にこの構造を、芳香族部分の所で置換することによって又は他の芳香族基でこの構造を延伸することによって拡張することが可能である。
【0027】
本発明に従って使用できるアミンの別の例は米国特許第6,121,553A号明細書に記載されている。
【0028】
支持体上に塗布するのに適する溶剤にポリエステルアミドが溶解することを前提として、該ポリエステルアミドも使用できる。
【0029】
ポリアミドの合成にとって、アミノ成分又は酸成分を過剰に使用することが重要である。何故ならば、一つには分子量が大きくなり過ぎないし、もう一方ではエポキシ樹脂と反応する反応性末端基が存在するからである。
【0030】
ポリアミドは架橋されるので、十分な強度を得るために低分子量のオリゴマー(すなわち、500〜2000g/molの重量平均分子量Mを持つもの)を使用することも可能である。
【0031】
エポキシ樹脂としては一般に分子当たり1つより多いエポキシ基を持つモノマー或いはオリゴマー化合物を意味する。これらはグリシドエステル又はエピクロロヒドリンとビスフェノールA又はブスフェノールF又はこれら両者の混合物との反応生成物もある。同様にフェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物にエピクロロヒドリンが反応して得られるエポキシドノボラック樹脂も使用することができる。エポキシ樹脂の希釈剤として使用される、複数のエポキシ基を持つモノマー化合物も使用することができる。同様に弾性変性されたエポキシ樹脂も使用することできる。
【0032】
エポキシ樹脂の例にはCiba Geigy社のAralditeTM 6010、CY-281TM、ECNTM 1273、ECNTM 1280、MY 720及び RD-2;Dow Chemicals社のDERTM 331、732、736及びDENTM 432;Shell Chemicals社のEponTM 812、825、826、828、830等; 同じShell Chemicals社のHPTTM 1071、1079;Bakelite AG社のBakeliteTM EPR 161、166、172、191、194等がある。
【0033】
市販の脂肪族エポキシ樹脂には例えばUnion Carbide Corp.社のERL-4206、4221、4201、4289又は0400のようなビニルシクロヘキサンジオキサイドがある。
【0034】
弾性化エラストマーはHycarの名称でNoveon社から入手される。
【0035】
エポキシ希釈剤、すなわち複数のエポキシ基を持つモノマー化合物には例えばBakelite AG 社のBakeliteTM EPD KR、EPD Z8、EPD HD、EPD WF等又はUCCP社のPolypoxTM R 9、R12、R 15、R 19、R 20等がある。
【0036】
本発明の特に有利な一つの実施態様によれば1種類より多いエポキシ樹脂を同時に使用する。
【0037】
ポリアミドの高い強度及びこのポリアミド硬化剤とエポキシ樹脂との追加的な架橋反応によって接着フィルム内部に非常に大きい強度が達成される。しかしながらポリイミドに対する接着強度も極めて高い。
【0038】
理想的にはエポキシ樹脂及びポリアミドは、エポキシ基とアミノ基或いは酸基のモル割合が正に当量である量比で使用する。
【0039】
しかしながら硬化剤の基とエポキシ基との比は広い範囲で変更することができ、十分な架橋のためには両方の基が10倍より多い過剰モル当量で存在するべきでない。
【0040】
追加的な架橋のためには、エポキシ樹脂と反応する化学的架橋剤を添加することも可能である。架橋剤は反応のために必須ではないが、過剰のエポキシ樹脂を捕捉するには添加するのが有利である。
【0041】
架橋剤或いは硬化剤としては原則として、米国特許第3,970,608A号明細書に詳細に記載されている様な以下の化合物が使用される:
− 多価の脂肪族アミン、例えばトリエチレンテトラミン;
− 多価の芳香族アミン、例えばイソホロンジアミン;
− グアニジン、例えばジシアンジアミド;
− 多価フェノール;
− 多価アルコール;
− 多価メルカプタン;
− 多価カルボン酸;
− 一つ又は複数の酸無水物基を持つ酸無水物;
【0042】
ポリアミド及びエポキシ樹脂をベースとする硬化剤含有又は不含の接着テープは、非常に高い保持力を達成することができ、この接着剤の軟化点は比較的に高く、このことは若干の場合に加工を限定する。接着テープは被貼り付け対象物に押し付ける前にラミネートされるので、160℃以上の非常に高い温度を必須とする。この温度を下げるために、本発明の別の有利な一つの実施態様によれば可塑剤が添加される。ポリアミドをベースとする可塑剤混入接着剤の場合の貯蔵後の安定性を可塑剤未添加のものよりも著しく高くする試みも以下に示す。ラミネート温度の他に可塑剤の添加によって架橋温度も低下させることができ、同時に貯蔵安定性も向上される。
【0043】
− フタレート、例えばDEHP(ジエチルヘキシルフタレート)、DBP(ジブチルフタレート)、BBzP(ブチルベンジルフタレート)、DnOP(ジ−n−オクチルフタレート)、DiNP(ジイソノニルフタレート)、DiCP(ジデシルフタレート);
− トリメリテート類、例えばTOTM(トリオクチルトリメリテート)、TINTM(トリイソノニルトリメリテート);
− 脂肪族ジカルボン酸エステル、例えばDOM(ジオクチルマレエート)、DOA(ジオクチルアジペート)、DINA(ジイソノニルアジペート);
− リン酸エステル、例えばTCEP(トリス(2−クロロエチル)ホスファート);
− 天然油、例えばひまし油又は樟脳。
【0044】
さらに以下の可塑剤も使用することができる:
− 低分子量ポリアルキレンオキサイド、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド及びポリTHF;
− 低い軟化点を持つコロホニウムをベースとする粘着樹脂、例えばEastman社のAbalyn又はForalyn 5040。
【0045】
この場合、後者の二つのグループはそれらの環境適合性が良好でありそして接着剤複合体から拡散する傾向が低いので有利である。
【0046】
個々の可塑剤の混合物も使用することができる。
【0047】
可塑剤の割合は本発明の有利な一つの実施態様によれば接着剤の総質量の5重量%〜45重量%である。
【0048】
水吸収性を低下させるためには、一方においてはエポキシ樹脂或いはポリイミド自体と加熱状態で反応することができそしてもう一方においては全く非極性基を含有している化合物を使用する。これらの全ての化合物はポリアミドと、同じ溶剤に溶解しなければならない。
【0049】
非極性基は好ましくは炭化水素鎖であり、これらは完全に飽和されており、分子中に二重結合も有していてもよい。水吸収性を低下させるためには、非極性の鎖は少なくとも6個の炭素原子を有していなければならない。
【0050】
エポキシ樹脂又はポリアミドと反応することができる架橋可能基は例えば酸基、酸無水物基、アミノ基、アルコール基、メルカプト基、ニトリル基、ハロゲン原子又はエポキシ基であってもよい。二つの官能性基が分子中に存在することも可能である。非極性基は両方の前記基の間に配置されていてもよい。
【0051】
官能性基が加熱状態において初めて化学反応によって生じる分子も使用可能である。
【0052】
非極性基及び反応性基の他に別の官能性及び非官能性基が分子中に存在していてもよい。
【0053】
エポキシドと反応することを可能とする官能性基を持つ、水吸収性を低下させるこのような化合物の例には、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ドデシルアミン、オクチルアミン、ドデシルメルカプタムがある。
【0054】
2官能性の群には例えばセバシン酸、アミノウンデカン酸、ジアミノオクタンがある。
【0055】
反応性基を持つ化合物の割合は、本発明の有利な一つの実施態様によれば、接着剤の総質量を基準として1重量%〜10重量%である。
【0056】
ポリアミド、エポキシ樹脂及び水吸収性を低下させる化合物の他に別の成分も接着剤中に存在していてもよい。
【0057】
架橋反応の反応速度を早めるために、いわゆる促進剤を使用することが可能である。促進剤を以下に例示する:
− 第三アミン、例えばベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール;
− 三ハロゲン化硼素−アミン錯塩、
− 置換されたイミダゾール;
− トリフェニルホスフィン。
【0058】
他の添加物としては典型的な以下のものが使用できる:
− 第一酸化防止剤、例えば立体障害フェノール;
− 第二酸化防止剤、例えばホスフィット又はチオエーテル;
− 加工安定剤、例えばC−ラジカル捕捉剤;
− 光保護剤、例えば紫外線吸収剤又は立体障害アミン;
− 加工助剤;
− 末端ブロック強化用樹脂;
− 充填剤、例えば二酸化珪素、ガラス(粉砕物又は球状物)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、金属粉末等;
− 着色顔料及び染料並びに蛍光増白剤。
【0059】
接着テープを製造するためには、接着剤の成分は適用な溶剤、例えば熱いエタノール、熱いメタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン又はハロゲン化炭化水素又は上述の溶剤の混合物に溶解しそして剥離層、例えば剥離紙又は剥離フィルムを設けそして乾燥し、結果として接着剤は基体から容易に剥離することができる。適当な加工の後に、打ち抜き物、ロール状物又は他の成形体を室温で製造することができる。相応する成形体を次いで好ましくは高温で、接合用基体、例えばポリイミドに貼り付ける。
【0060】
接着剤をポリイミド支持体に直接的に塗布することも可能である。かかる接着フィルムはFPC基板の銅製導体路を貼り付けるために使用することができる。
【0061】
接着を一段階法として行うことは必要ない。すなわち、熱い状態でラミネートすることによって、二つの基体の一つの上に少なくとも接着テープを貼り付けることが可能である。第二の基体(第二のポリイミドフィルム又は銅製フィルム)との本来の、加熱状態での接着過程では、エポキシ樹脂が完全に又は部分的に硬化しそして接合ラインで高い接合強度を達成する。
【0062】
混入されたエポキシ樹脂は好ましくはラミネート温度では化学反応に入らないが、加熱状態での接着法で初めて酸基又は酸無水物基と反応する。
混合されたエポキシ樹脂及びポリアミドは好ましくはラミネート温度において未だ化学反応を開始せずに、熱い状態での接合のときに初めて互いに反応するべきである。
【0063】
製造された接着剤はFPC基板の接着用の慣用の多くの接着剤に比べて、接着後に非常に高い温度安定性を有するという長所を有しており、その結果製造された複合体は150℃以上の温度でも高い強度のままである。
【0064】
本発明の接着剤の長所は、エラストマーが実際に樹脂で化学的に架橋されており、エラストマー自体が硬化剤として作用するので、エポキシ樹脂用硬化剤の添加を必要としないことにある。
【0065】
この場合、架橋は末端位の酸基並びに末端位のアミノ基を介して行われる。両方のメカニズムによる架橋も同時に起こり得る。十分な末端基を存在させるためにポリアミドの分子量を大き過ぎる程にしてはならない。さもないと架橋度が小さ過ぎる。40,000以上の分子量は架橋の少ない生成物しかもたらさない。
【0066】
重量平均分子量Mwの分子量測定はゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によって行う。溶離液として0.1容量%のトルフルオロ酢酸を含有するTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。測定は25℃で行った。予備カラムとしてPSS−SDVタイプのカラム(5μm、10オングストローム、ID 8.0mm×50mm)を使用した。分離は、カラムPSS−SDV(5μ、10並びに10及び10オングストローム、それぞれのID 8.0mm×300mm)を使用した。試料濃度は4g/Lで、流量は1.0mL/分である。PMMAを基準として測定した。
【0067】
[実施例]
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0068】
ISO 307に従う96%の硫酸中で122mL/gの粘度数を有する90部のコポリアミド6/66/136(BASF社のUltramid 1C )を、沸騰エタノールに攪拌下に溶解し(20%濃度溶液)そして冷却した溶液を12部のエポキシ樹脂EPR161(製造元:Bakelite社、172のエポキシ価)、平均分子量2000のポリエチレングリコール20部及びラウリン酸3部と混合する。
【0069】
個々の成分を完全に溶解した後に、この溶液をシリコ−ン加工済み支持体に塗布し、乾燥後に厚さ25μmの接着剤塗膜を得る。
[比較例]
ポリアミドをエポキシ樹脂及び可塑剤と一緒に実施例1におけるように溶解するが、今度はラウリン酸を省く。上述のように、厚さ25μmの接着剤塗膜が塗布される。
【0070】
製造された接着テープでのFPC基板の貼り付け:
2つのFPC基板を実施例1及び比較例に従って製造された接着テープで貼り付ける。この目的のために接着テープをポリイミドフィルム/銅製フォイルよりなるFPC基板のポリイミドフィルムの上に140℃或いは170℃でラミネート貼り付ける。次いで別のFPC基板の第二のポリイミドフィルムを該接着テープに貼り付けそしてその全複合体を加熱可能なブリクレ(Burkle)式プレス装置において200℃、1.3MPaの圧力で1時間プレス成形する。
【0071】
試験方法:
上述の各例に従って製造した接着フィルムの性質を以下の試験法で試験した:
FPC基板を用いるT字型剥離試験:
Zwick社の引張り試験機を用いて、上述の方法で製造された、FPC基板/接着テープ/FPC基板−複合体を180°の角度で50mm/分の速度で互い引き剥がしそしてそれに必要な力を(N/cm)を測定する。測定は20℃、50%の相対湿度で行った。各測定値は三度測定した。
【0072】
ハンダ槽安定性:
上記の方法に従って貼り付けたFPC基板複合体を288℃の熱いハンダ槽に10秒間置く。接合は、FPC基板のポリイミドフィルムを膨張させる気泡が生じない場合にハンダ槽安定性があると評価した。この試験は、既に僅かな気泡の発生が有った場合に安定性がないと評価した。
【0073】
水吸収性:
純粋な接着剤を5×5cmの大きさで、炉中で110℃で乾燥し、乾燥剤の入ったデシケーター中で室温に冷しそして秤量する。次いで試料を水中に23℃で24時間保存する。水浴から取り出した後に試料をセルロースで拭いて乾かしそして再度秤量する。両方の測定の差及び乾燥後の測定値との比を吸収され得る水の含有量を示している。
【0074】
結果:
上述の実施例及び比較例を接着技術的に評価するために最初にT字型剥離試験を実施した。
【0075】
結果を表1に示した:
【0076】
【表1】

【0077】
実施例並びに比較例は非常に高い接着強度の接着剤をもたらす。この接着強度は水吸収性低下剤の添加によって殆ど影響を受けない。
【0078】
ハンダ槽試験では両方の例が合格である。このことは、ラウリン酸がネットワーク中に組み入れられそして実際にエポキシ樹脂と反応したことを示している。
【0079】
両方の例の違いは水吸収性に現れている。比較例では3.6重量%の水を吸収するのに、実施例1の場合には2.1重量%しか吸収していない。このことは、水吸収性を明らかに低下させることができたことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
a)アミノ基及び/又は酸末端基を持つポリアミド、
b)エポキシ樹脂、
c)少なくとも6個の炭素原子を持つ非極性の長い鎖及びエポキシ樹脂と反応することができる少なくとも一つの反応性末端を持つ化合物、
d)場合によっては可塑剤
よりなる接着剤を用いて特に電子部品及び導体通路を製造又は更に加工するための熱活性化可能な接着テープであって、前記ポリアミドが少なくとも150℃の温度でエポキシ樹脂と反応しそしてa)とb)との重量割合比が50:50〜99:1である、上記接着テープ。
【請求項2】
ポリアミドが非晶質コポリアミド、例えばPA6、6/6、12又はPA6,6/6,11である、請求項1に記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項3】
ISO 307に従う96%の硫酸中で測定したポリアミドの粘度数が100〜130mL/gである、請求項1又は2に記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項4】
化合物C)が酸基、酸無水物基、アミノ基、アルコール基、メルカプト基、ニトリル基、ハロゲン原子又はエポキシ基を有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項5】
反応性基を持つ化合物の割合が接着剤の総質量の1重量%〜10重量%である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ。
【請求項6】
可塑剤をフタレート、トリメリテート類、リン酸エステル、天然油、ポリアルキレンオキサイド、コロホニウム樹脂及び/又はポリエチレングリコールよりなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ 。
【請求項7】
可塑剤の割合が接着剤の総質量を基準として5重量%〜45重量%である、請求項1〜6のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ 。
【請求項8】
接着テープが促進剤、染料、カーボンブラック及び/又は金属粉末を含有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープ 。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープの、合成樹脂部材の貼り付けへの使用。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープの、電子部品及び/又はフレキシブルプリント回路(FPC)基板の貼り付けへの使用。
【請求項11】
ポリイミドに貼り付けるための、請求項1〜8のいずれか一つに記載の熱活性化可能な接着テープの使用。

【公表番号】特表2010−505976(P2010−505976A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530840(P2009−530840)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060084
【国際公開番号】WO2008/043658
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】