説明

特別な機械的性質を有する軽量スパンボンド不織布

フィラメント繊度<1.6dtexのポリオレフィンフィラメントから成るスパンボンド不織布であって、スパンボンド不織布が≦20g/m2の坪量と、≧0.06g/cm3の密度と、機械方向で9.5〜62N、機械方向を横切る方向で4.5〜35Nの強力とを有するスパンボンド不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメント繊度<1.6dtexのポリオレフィンフィラメントから成るスパンボンド不織布に関する。このスパンボンド不織布は特別な機械的性質を特徴としている。
【0002】
本発明はさらに、本発明に係るスパンボンド不織布を利用した積層体の製造、スパンボンド不織布の使用、そしてスパンボンド不織布で製造した積層体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
不織布はさまざまな仕方で製造可能な繊維シート材である。湿式不織布材製造、乾式不織布材製造の他に、溶融紡糸とメルトブロー(メルトブロー技術)が区別される。溶融紡糸とメルトブローの両方の技術は、仕上げたシート材にプラスチック顆粒を相応する設備で直接移すことができる利点を有する。これにより不織布製造時にこの設備の比較的高い生産性が根拠付けられる。
【0004】
溶融紡糸時にポリマー顆粒は押出し機内で溶融され、紡糸装置の開口部、いわゆる紡糸口金に押し込まれ、冷却後に空気圧でまたは機械的に延伸される。延伸プロセスによってフィラメントの最終的強さが確定される。延伸後、移動する堆積ウェブ上に緩く堆積されるフィラメントは接触する交点の領域で化学的または熱的にいわゆる結合点で凝固される。こうして形成される不織布材の柔らかさは凝固が進むにつれて低下し、その曲げ硬さが強まる。上下に設けた同じまたは異なる複数のスパンボンド不織布層は熱的に、例えばカレンダ加工によって凝固させて複合材料(積層体)とすることができる。
【0005】
メルトブローでは生産性が溶融紡糸時よりも低い。それに加えて、メルトブローによって製造された不織布材は溶融紡糸によって製造した不織布よりも機械的負荷容量が小さい。しかしながらメルトブローによって製造される不織布材はきわめて良好な遮蔽特性を特徴としている。
【0006】
それゆえに低費用で不織布材を生産する目的は、メルトブローによって製造される不織布を、理想的には溶融紡糸によって完全に製造された不織布材に取替え、または積層体を製造する場合には減らすことである。
【0007】
スパンボンド不織布の性質は、坪量と密度とによって、また例えば強力、破断伸び等の機械的性質によって、さらには例えば水密性、通気性等の遮蔽特性によって包括的に記述される。
【0008】
スパンボンド不織布の坪量は面積に依存したその質量をg/m2で表し、スパンボンド不織布の密度はスパンボンド不織布の坪量と厚さとの商に一致する。従ってスパンボンド不織布の坪量の低下はスパンボンド不織布密度の低下またはスパンボンド不織布厚の低下のいずれかを介して達成することができる。しかしながら両方とも通常時、およびその他すべての生産パラメータを一定に保つとき、スパンボンド不織布の機械的性質の負担となり、遮蔽特性の負担ともなる。
【0009】
それでもなお坪量の低減は製品改善時の中心的パラメータである。なぜならば、不織布材から製造される製品の着用快適性をそれが実質的に一緒に決めるからである。幼児用おむつ、失禁製品および女性衛生製品では一層軽量のスパンボンド不織布への恒常的傾向を確認することができる。しかしそれに対して通気性は不織布厚の増すのにつれて低下する。しかしまさにこれらの製品は同時に、坪量低下時にも機械的性質と遮蔽特性との保証を必要とする。しかしながら坪量と機械的性質と遮蔽特性はさまざまなパラメータに依存している。前記変量のすべてを決定する決定的パラメータはフィラメント繊度である。糸またはフィラメントのフィラメント繊度は長さに関係した質量として明示され、その細かさを記述する。糸の細かさが高いとは小さな質量/長さ比を意味する。糸の細かさはテックス(tex)として測定され、1テックスは1000m当り1グラムであり、もしくは1デシテックス(dtex)は10000m当り1グラムに一致する。
【0010】
僅かなスパンボンド不織布厚は、低いフィラメント繊度を有するフィラメントを利用することによって基本的に達成可能である。というのも、不織布形成のため堆積させるとき総処理量を一定に留めかつ同時に搬送ベルト速度をそのままとするとき、一層細かなフィラメントはその直径が小さいので一層薄い不織布層を、一般に高い密度において生じるからである。
【0011】
従来の溶融紡糸技術(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4または特許文献5)を使用する場合、一層細いフィラメントはポリマー処理量(毎分および孔当りのポリマーのグラム)を下げることによって生成される。しかしこの試みは設備総処理量の低下と結び付いており、それゆえに生産性を考慮すると望ましくない。それに対して総処理量を高めると、その他の生産パラメータを一定に保つとき一般にフィラメントが太くなり、従ってフィラメント繊度が高まる。しかしフィラメント繊度が高まることは、軽量スパンボンド不織布を製造することにある本発明の目標設定を考慮すると望ましくない。
【0012】
特許文献6により、軽量スパンボンド不織布を形成するフィラメントを製造するのに、紡糸板1メートル当り著しく多い数の口金孔を有する紡糸装置を使用すると、単位時間当りおよび孔当りのポリマー処理量のグラムは確かに低減するが、しかしながら全体として総処理量に変化はない。同時に、一層軽量のスパンボンド不織布の獲得を可能とする一層細いフィラメントが得られる。
【0013】
先行技術から知られている軽量スパンボンド不織布材の一般的問題は、既に触れたように機械的安定性が低いことにある。このようなスパンボンド不織布はなかんずく機械方向を横切る方向で容易にちぎれることがあり、寸法安定性が劣る。坪量約13.6g/m2のスパンボンド不織布を開示した特許文献7の場合、この欠点は、付加的に支出して、熱的接着時に強化した接着とエンボスローラの特殊なパターンとによって克服される。
【0014】
先行技術により多層複合不織布(積層体)も公知であり、その外側層は溶融紡糸されたスパンボンド不織布層から成り、内側層の少なくとも1つは好ましくはメルトブローで製造されるごく細い繊維から成る。メルトブローで生成される層の低い機械的負荷容量は、良好な機械的負荷容量を全体として複合不織布に与えるために、溶融紡糸によって製造される外側スパンボンド不織布層を不可避的に必要とする。つまり、遮蔽特性と機械的性質との最善の組合せを有するスパンボンド不織布の製造はこれまでこのような積層体の製造によってのみ保証された。
【0015】
さらに、溶融紡糸のみによって製造可能なスパンボンド不織布も先行技術により公知であり、低いフィラメント繊度を有するフィラメントが利用される。特許文献8は僅か0.33dtexのフィラメント繊度を有する繊維で構成されるポリオレフィン製不織布を開示しており、この不織布は改良された障壁特性および透湿性を特徴としている。しかし坪量は、不織布厚0.33mm、密度0.1336g/cm3のとき≧44.1g/m2と比較的高い。
【0016】
オレフィンポリマーから軽量スパンボンド不織布を製造するための選択的方法を特許文献9が述べている。押出しによって得られるフィラメントは「海島」構造を有する。海ポリマーは島ポリマーとは別の溶解特性を有し、不織布製造後に溶解によって不織布から取り除かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第3692618号明細書
【特許文献2】米国特許第5032329号明細書
【特許文献3】米国特許第5814349号明細書
【特許文献4】国際公開第03/038174号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/063087号パンフレット
【特許文献6】独国特許出願公開第10360845号明細書
【特許文献7】国際公開第99/32699号パンフレット
【特許文献8】米国特許第5885909号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0070101号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
こうした背景のもとで本発明の課題は、改善された機械的性質を有する、溶融紡糸によって作製された軽量スパンボンド不織布を得ることにある。機械的性質の改善は障壁特性(遮蔽特性)にも肯定的に作用しなければならない。さらに、スパンボンド不織布の製造は総処理量を低下させることなく生産性を保証するために行わねばならない。
【0019】
本発明の課題はさらに、改善された機械的性質と同時に改善された遮蔽特性を有する、別の複合不織布材(積層体)と比較して軽量な積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
課題を解決するために、フィラメント繊度<1.6dtexのポリオレフィンフィラメントが使用され、溶融紡糸技術の応用時にこのフィラメントがもたらすスパンボンド不織布は、≦20g/m2の坪量と、≧0.06g/cm3の密度と、機械方向で10〜62N、機械方向を横切る方向で5〜35Nの強力とを特徴としている。
【0021】
本発明の中心的考えはまず、不織布材の機械的性質がなかんずくフィラメント繊度、すなわち利用したフィラメントの細かさに左右されるとの一般的知識に基づいている。というのも、大きな細かさ(すなわち低いフィラメント繊度)を有するフィラメントの間に、フィラメント堆積後、不織布製造の他のパラメータに実質変化がないことを前提に大量の交差点が生じるからである。これにより、不織布の化学的または熱的凝固後に大量の結合個所が生じることになる。この理由から、低いフィラメント繊度のフィラメントを有する不織布材において機械的性質が改善されている。しかし、恒常的に改善された機械的性質を有する不織布材の形成を細かなフィラメントが可能とするとの原則は無条件で妥当するのではない。
【0022】
本発明に係る不織布材の発明者達は、最高1.6dtex、特に1.6dtex〜1.0dtexの範囲内のフィラメント繊度を有するフィラメントがまさに、僅か4〜20g/m2、特に4.0〜12g/m2の坪量と同時に最適な機械的性質とを有する不織布材の製造を可能とすることを認識した。不織布密度の増加のゆえにフィラメントの細かさ増加に伴って確かに不織布材の坪量も上昇するが、それにもかかわらずフィラメント繊度を考慮すると、坪量と比較して機械的性質もしくは遮蔽特性が過比例的に改善される窓が存在すると考えられる。
【0023】
本発明に係るスパンボンド不織布は軽量であり、同時に改善された機械的性質を有する。それと並んで、軽量にもかかわらずスパンボンド不織布の遮蔽特性も改善されている。本発明の枠内で「軽量」とは、不織布材の坪量が4〜20g/m2であることを意味する。特徴として、本発明に係る不織布材は僅かな坪量にもかかわらず、匹敵する坪量の従来の不織布材を凌駕する機械的性質で優れている。
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態を詳しく説明する。
【0025】
1実施形態においてスパンボンド不織布は0.06〜0.084g/cm3の範囲内の密度を有する。0.084g/cm3の密度上限は、この枠内で設けられた約20g/m2の坪量上限に一致した坪量のスパンボンド不織布に該当する。このスパンボンド不織布の通気性の下限は3100l/(m2・s)、上限は8400l/(m2・s)である。それに対して水密性は比較的高く、水柱は17cm以下とすることができる。
【0026】
好ましい実施形態においてスパンボンド不織布は最高12g/m2の坪量を有する。特別均質かつ軽量であることを特徴とする4〜12g/m2の範囲内の坪量を有するスパンボンド不織布の場合、密度は最高0.073g/cm3である。密度と通気性は互いに逆に挙動するので、この軽量実施形態のスパンボンド不織布の場合通気性の下限は3900l/(m2・s)と著しく高い。相応に、最高11cmの水柱で水密性は低くなる。
【0027】
強力の上限も、4〜12g/m2の範囲内の坪量を有するスパンボンド不織布では坪量12g/m2以上のスパンボンド不織布の場合よりも著しく低い。坪量20g/m2以下のスパンボンド不織布では強力が機械方向(MD)で62N以下、機械方向を横切る方向(CD)で35N以下とすることができる。それに対して坪量12g/m2以下のスパンボンド不織布では強力が機械方向(MD)で最高32N、機械方向を横切る方向(CD)で最高20Nである。
【0028】
12g/m2以下のスパンボンド不織布の破断伸びは機械方向で75%以下、機械方向を横切る方向で75%以下である。
【0029】
特別好ましい実施形態において、その密度が0.06〜0.07g/cm3であるスパンボンド不織布は通気性が3900〜8300l/(m2・s)、水柱が7〜11cmである。測定された通気性は、3900l/(m2・s)のスパンボンド不織布の密度が低いので、0.06〜0.084g/cm3の範囲内の密度を有するスパンボンド不織布の通気性の相応する下限よりも著しく高い下限を有する。それに対して、測定された水柱値は密度の低い特別好ましいスパンボンド不織布では7〜11cmであり、密度が0.06〜0.084g/cm3の範囲内で5〜17cmの水柱が測定されたスパンボンド不織布よりも狭い範囲内にある。
【0030】
特別好ましくはフィラメント繊度が1〜1.3dtexの範囲内である。この細かさを有するフィラメントは坪量20g/m2以下のスパンボンド不織布の製造を可能とする。
【0031】
このようなフィラメントを得るのに適し、従って本発明に係るスパンボンド不織布を製造するのに適しているのはなかんずくポリオレフィンポリマーとその共重合体混合物である。「ポリマー」は、簡単な分子(モノマー)から重合、重縮合または重付加によって構成された高分子物質である。ポリオレフィンの類はなかんずくポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE、VLDPE;ULDPE、UHMW‐PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(1‐ブタン)、ポリイソブチレン、ポリ(1‐ペンテン)、ポリ(4‐メチルペント‐1エン)、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよび各種オレフィン共重合体を含む。これらの他に、ヘテロフェーズブレンドもポリオレフィンに含まれる。例えばポリオレフィン、特にポリプロピレンまたはポリエチレン、ポリオレフィンとα、β不飽和カルボン酸または無水カルボン酸とのグラフト重合体または共重合体を使用することができる。
【0032】
しかしポリオレフィンの特別な適性はポリエステル、ポリカーボネイト、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリアミドまたはそれらの混合物の使用を排除しない。
【0033】
両方の事例において原料ポリマーの列挙は最終的なものではない。それゆえに、当業者に周知の他のすべての溶融紡糸可能なポリマーがスパンボンド不織布材を製造するための応用から排除されてはいない。
【0034】
本発明に係る不織布材を製造するのに特別適しているのはポリエチレンとポリプロピレン、そしてオレフィン共重合体もしくはそれらの混合物である。自明のことであるが、使用されるポリエチレンは既に各種ポリエチレンの混合物のことがある。使用されるポリプロピレンにも同様のことが妥当する。
【0035】
メタロセン触媒で製造されたポリプロピレン(m‐PP)はポリマー単位の分子量の均一分布を有する。そのことから、処理量が強く高まった場合でもm‐PPが直径の小さいフィラメントをなお生じることを説明することができよう。
【0036】
押出し前にポリマーに充填材または顔料が添加されるようになっている。基本的に、当業者に周知のかつ予定された不織布の使用に適したすべての充填材または顔料が考慮の対象となる。費用上の理由のみからでも炭酸カルシウムは特別興味ある充填材である。二酸化チタン(TiO2)も充填材として適しており、本発明に係る不織布材の製造に予定されている。
【0037】
特別好ましい実施形態においてフィラメントは5重量%超の充填材含有量を有することができる。充填材(D50)の平均粒径が好ましくは2μm〜6μmであり、粒子(D98)のトップカットは≦10μmである。
【0038】
スパンボンド不織布の凝固は当業者に周知のあらゆる方法で行うことができる。好ましくは、凝固は化学的または熱的なものである。カレンダ加工による熱的凝固の場合、エンボス箇所の領域で不織布厚が低減している。
【0039】
凝固されたスパンボンド不織布の不織布厚は115〜296μmの範囲内である。5000孔/m(紡糸ダイマニホールド幅150mm)の紡糸装置の場合不織布厚は約130〜約296μmの範囲内である。7000孔/m(紡糸ダイマニホールド幅150mm)の紡糸装置の場合不織布厚は約115〜約266μmの範囲内である。これは、細かなフィラメントが傾向的に不織布厚を小さくすることを示している。
【0040】
本発明に係るスパンボンド不織布は少なくとも2つのスパンボンド不織布層から成る積層体内に1つの層を形成する。第2層または他の層は、使用時の必要に応じて、本発明に係るスパンボンド不織布に類似した性質または明確に異なる性質を有することができる。本発明に係る不織布材はその軽量さのみに基づいても数多くの組合せに適している。積層体の層の1つまたは複数をメルトブローによって製造することも考えられる。
【0041】
スパンボンド不織布の使用可能性の多様さも本発明の枠内のことである。本発明に係る不織布材の最重要な使用可能性とされるのは挿入材料、身体衛生品(おむつ、生理用ナプキン、化粧用パッド)、ぞうきん、ふきん、モップクロスの製造、そしてガスフィルタ、液体フィルタ、創傷用包帯、創傷湿布用である。絶縁材料、防音不織布材およびルーフィングアンダーフェルトの製造も考えられる。ジオノンウーブンとしての利用も考えられる。ジオノンウーブンが利用されるのは例えば堤防を固化するとき、屋根緑化分野で、地層とばら物とを分離するためのごみ処理場カバーの層として、または道路舗装のバラスト道床の下方の中間層としてである。田畑においても不織布材はカバーとして有益に利用可能である。
【0042】
以下、図1〜図7を基に本発明を例示的に詳しく説明する。しかし指摘される実施例は本発明の特殊性を説明するものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】異なる坪量を有するスパンボンド不織布で測定した繊維の細かさ(フィラメント繊度)を示す。
【図2】さまざまなスパンボンド不織布のスパンボンド不織布密度を坪量にわたってプロットして示す。
【図3】異なる坪量を有するスパンボンド不織布の機械方向(MD)における強力を示す。
【図4】異なる坪量を有するスパンボンド不織布の横方向(CD)における強力を示す。
【図5】異なる坪量を有するスパンボンド不織布で測定した通気性を示す。
【図6】異なる坪量を有するスパンボンド不織布の水柱を示す。
【図7】軽量スパンボンド不織布の光学顕微鏡写真である。
【図8】スパンボンド不織布の組成、プロセス条件および特徴的性質を示す表1である。
【図9】スパンボンド不織布と、2つのスパンボンド不織布層から成る積層体との組成、プロセス条件および特徴的性質を示す表2である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
【表1】

【0045】
明示されているのは紡糸板1メートル当りの孔の総数であり、口金孔を備えた口金パック面の幅は150mmである。
【実施例1】
【0046】
チーグラー・ナタ触媒によって製造された、以下でZN‐PPと称するポリプロピレン(モプレンMoplen(登録商標)HP560R;製造業者:バーゼルBasell)から、溶融紡糸によって異なる坪量を有するスパンボンド不織布が製造された。スパンボンド不織布を形成するフィラメントのフィラメント繊度は1.3dtex、1.8dtex、2.1dtexに調整された。
【0047】
相応するスパンボンド不織布は「試料1」〜「試料14」とされた。ZN‐PPから製造されたスパンボンド不織布の組成、プロセス条件および特徴的性質は図8の表1から読み取ることができる。
【0048】
スパンボンド不織布の製造は従来の「ライコフィルReicofil 3」スパンボンド不織布設備において行われた。すなわち、
a.紡糸板1メートル当り5000個の口金孔と、口金孔を備えた口金パック面の幅150mmとを有する紡糸装置を備えた従来の紡糸装置(「試料1〜10」)と、
b.紡糸板1メートル当り口金孔7000個と紡糸板面当り高めた数の口金孔と、口金孔を備えた口金パック面の幅150mmとを有する紡糸板を含む変更された紡糸装置(「試料11〜14」)が、使用された。
【実施例2】
【0049】
比較のため、紡糸板1メートル当りの数を高められた口金孔(1メートル当り口金孔7000個と、口金孔を備えた口金パック面の幅150mm)を有するこの変更された紡糸装置で、メタロセン触媒によって製造されたポリプロピレン(メトセネMetocene HM562S;製造業者バーゼル)‐以下でm‐PPと称する‐から、異なる坪量を有するスパンボンド不織布も生産された。スパンボンド不織布を形成するフィラメントのフィラメント繊度は1.3dtexと1.1dtexに調整された。
【0050】
こうして生成されたスパンボンド不織布が「試料15」〜「試料24」とされた。m‐PPから製造されたスパンボンド不織布と、2つのスパンボンド不織布層から成る積層体との組成、プロセス条件および特徴的性質は、図9の表2から読み取ることができる。
【0051】
製造された単層スパンボンド不織布の坪量は7g/m2から20g/m2まで変更された。
【0052】
例えば二酸化チタン等の溶融添加剤または顔料のさらなる添加は、本発明の枠内のことであるが、ここでは行われなかった。
【実施例3】
【0053】
「試料25」のスパンボンド不織布の製造は、1つのプロセスステップで2つのスパンボンド不織布層を接合した積層体を形成する形で、「ライコフィル3」スパンボンド不織布設備において行われた。このために選択された構成では、第1層を製造するために(a)従来の紡糸装置(1メートル当り5000個の口金孔を有する紡糸板;口金孔を備えた口金パック面の幅150mm)が使用され、第2スパンボンド不織布層を製造するために(b)紡糸板の面積当り口金孔の数を高めた変更された紡糸装置(紡糸板1メートル当り口金孔7000個;口金孔を備えた口金パック面の幅150mm)が使用された。設備総処理量は、両方の紡糸装置(a)、(b)で同じ処理量が達成されるように選択された。これは、両方の紡糸装置(a)、(b)の構成の違いに基づいて、口金孔の処理量が紡糸装置(a)では約0.63gPolmer/孔*分(試料25、第1層)、紡糸装置(b)では約0.45gPolymer/孔*分(試料25、第1層)であることを意味する。
【0054】
プロセスは、紡糸装置(a)ではZN‐PP(モプレンHP560R)が処理され、紡糸装置(b)ではm‐PP(メトセネHM562S)が処理されるように管理された。両方の紡糸装置の処理量が概ね同じに選択されたので、積層体の両方の層の坪量も同じである。すなわち、個々の層の坪量がそれぞれ5g/m2である積層体が製造された。
【0055】
図に示されたデータの説明を行う。
【0056】
図1は、異なる坪量を有するスパンボンド不織布がごく均一なフィラメント細かさ(フィラメント繊度)を有することを示している。
【0057】
図2は、調整されたプロセス条件によって、坪量とスパンボンド不織布厚との測定された値から計算したスパンボンド不織布密度を著しく変更できることを示している。計算されたスパンボンド不織布密度はスパンボンド不織布の坪量の関数として示してある。7000孔/mの紡糸装置で製造されたフィラメントはフィラメント繊度が1〜1.3dtexである。高められた孔数(口金孔を備えた口金パック面の幅150mmにおいて1メートル当り7000個の口金孔)を有するこの紡糸装置を使用する場合特に、図2によれば、従来の紡糸装置(口金孔を備えた口金パック面の幅150mmにおいて1メートル当り5000個の口金孔を備えた紡糸板)を使用する場合よりもスパンボンド不織布密度が著しく高いことが判明する。高められた孔密度を有する紡糸装置を使用した場合の不織布密度の増加は繊維の高い細かさに帰すことができる。
【0058】
図3と図4にはスパンボンド不織布の機械的性質について例示的に、異なる坪量を有するスパンボンド不織布で測定した機械方向(MD)の強力‐図3参照‐と機械方向を横切る方向(CD)の強力‐図4参照‐が示してある。
【0059】
製造時に使用される紡糸装置にかかわりなく強力は機械方向でも横方向でも狭い範囲内にあることが判明する。ZN‐PPと比較してm‐PPから製造されたスパンボンド不織布の強力値は傾向的に多少小さいが、そのことは両方のポリマーの分子的違いに帰すことができよう。利用されたZN‐PPのメルトフローインデックスは25dg/分、利用されたm‐PPのメルトフローインデックスは30dg/分であり、これはm‐PPの分子量が小さいことを示唆している。
【0060】
図5によれば、図2に関連して述べたスパンボンド不織布密度の変化からスパンボンド不織布の通気性の顕著な変化が生じる。図5に示す通気性データを基に、こうして製造されるスパンボンド不織布用に使用される両方の紡糸装置の働きを明らかにすることができる。紡糸板の面積当り高められた数の口金孔(1メートル当り7000個の口金孔;口金孔を備えた口金パック面の幅150mm)を有する紡糸装置を用いて製造された軽量スパンボンド不織布について、純粋に検討して、1メートル当り5000個の口金孔と口金孔を備えた口金パック面の幅150mmとを有する紡糸装置を用いて製造された各スパンボンド不織布よりも著しく低い通気性が測定された。
【0061】
しかしながら気付く点として、坪量12g/m2のスパンボンド不織布(試料21:スパンボンド不織布密度0.071g/cm3、m‐PPフィラメント繊度1.1dtex、1メートル当り7000個の口金孔を有する紡糸板)と、坪量17g/m2のスパンボンド不織布(試料6:密度0.068g/cm3、ZN‐PPフィラメント繊度1.8dtex、1メートル当り5000個の口金孔を有する紡糸板)と、坪量20g/m2のスパンボンド不織布(試料1:密度0.068g/cm3、ZN‐PPフィラメント繊度2.1dtex、1メートル当り5000個の口金孔を有する紡糸板)は、類似オーダ内の約5320l/(m2・s)の通気性を十分に有する。
【0062】
さらに、紡糸板の面積当り高めた数の口金孔(1メートル当り7000個の口金孔)を有する変更された紡糸装置でm‐PP(フィラメント繊度1.1dtex)から製造された坪量7g/m2、密度0.063g/cm3のスパンボンド不織布(試料24)は通気性が8350l/(m2・s)であり、1メートル当り5000個の口金孔を有する紡糸板でZN‐PP(フィラメント繊度1.8dtex)から製造された坪量10g/m2、密度0.058g/cm3のスパンボンド不織布(試料8)と同じ通気性を有し、または1メートル当り5000個の口金孔を有する従来の紡糸装置でZN‐PP(フィラメント繊度2.1dtex)から製造された坪量12g/m2、密度0.056g/cm3のスパンボンド不織布(試料3)とさえ同じ通気性を有する。
【0063】
結果としてこれは、細かなフィラメントから製造された不織布がその高い密度のゆえに確かに低い通気性を有するが、しかし同時に著しく軽量であり得ることを意味する。それに加えて、曲線推移を正確に検討して気付くように通気性の低下は坪量の増加に伴って直線的に推移するのではない。すなわち、従来の不織布と軽量不織布との間の通気性差は坪量の増加に伴って小さくなる。
【0064】
図6には水柱がそれぞれスパンボンド不織布の坪量との関係で示してある。
【0065】
図7には坪量約7g/m2の2つのスパンボンド不織布の2つの光学顕微鏡写真が示してある。試料10(図8の表1参照)は坪量が7g/m2である。紡糸板1メートル当り5000個の孔を有する紡糸装置を利用してZN‐PPから製造されたフィラメントは繊度が1.8dtexである。試料は10倍に拡大して示してある。試料24(図9の表2参照)は坪量が7g/m2である。紡糸板1メートル当り7000個の孔を有する紡糸装置を利用してm‐PPから製造されたフィラメントは繊度が僅か1.1dtexである。試料は10倍に拡大して示してある。これらの写真がスパンボンド不織布密度の測定を確認するものであり、試料24は密度が高い。
【0066】
本発明に係る軽量スパンボンド不織布では、
a)スパンボンド不織布を形成するフィラメントが、紡糸板の面積当り口金孔数を高めた変更された紡糸装置を用いて紡出される、
b)スパンボンド不織布を形成するフィラメントのフィラメント繊度が極力小さい、
c)スパンボンド不織布が高められたスパンボンド不織布密度を有する、
d)好ましくはm‐PPがスパンボンド不織布の製造に利用される、
以上の条件のもとで機械的性質と障壁特性との最良の組合せが観察された。
【0067】
方法
本発明に係るスパンボンド不織布の特性を究明するために以下の方法が援用された。
【0068】
フィラメント繊度/坪量/不織布厚/スパンボンド不織布密度
フィラメント繊度の究明は顕微鏡で行われた。測定されたフィラメント繊度をデシテックス(マイクロメートル)に換算することは次式で行われた(密度PP=0.91g/cm3):
【0069】
【数1】

【0070】
スパンボンド不織布の坪量(basis weight)の判定はDIN EN 29073‐1に従って10×10cm大の試料体で行われた。
【0071】
スパンボンド不織布の厚さは、所定の測定圧力のもとでスパンボンド不織布を介装した2つの面平行な測定面の距離として測定された。測定はDIN EN ISO 9073‐2と同様に実施され、堆積重量125g、測定面積25cm2、測定圧力5g/cm2が利用された。
【0072】
スパンボンド不織布密度はスパンボンド不織布の坪量と厚さとから計算される。
【0073】
通気性
スパンボンド不織布の通気性の測定はDIN EN ISO 9237に従って行われた。測定ヘッドの面積は20cm2、印加試験圧力は200Paであった。
【0074】
水柱
水柱の判定はDIN EN 20811に依拠して実施された。試験圧力の勾配は10mbar/分。測定試料の第3の箇所から水が初めて進出する水圧が水密性の尺度としてmbarもしくは水柱cmで示される。
【0075】
機械的性質
スパンボンド不織布の機械的性質はDIN EN 29073‐3に従って究明された。ゲージ長:100mm、試料幅:50mm、送り量:200mm/分。「強力」は力‐伸び曲線を通過時に達成される最大力、「破断伸び」は力‐伸び曲線中の強力に付属した伸びである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメント繊度<1.6dtexのポリオレフィンフィラメントから成るスパンボンド不織布であって、スパンボンド不織布が≦20g/m2の坪量と、≧0.06g/cm3の密度と、機械方向で9.5〜62N、機械方向を横切る方向で4.5〜35Nの強力とを有するスパンボンド不織布。
【請求項2】
スパンボンド不織布が0.06〜0.084g/cm3の範囲内の密度を有することを特徴とする、請求項1記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
密度0.06〜0.084g/cm3においてスパンボンド不織布が3100〜8400l/(m2・s)の通気性、5〜17cmの水柱を有することを特徴とする、請求項2記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
スパンボンド不織布が4〜12g/m2の坪量、0.06〜0.073g/cm3の範囲内の密度を有することを特徴とする、請求項1記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
スパンボンド不織布が3900〜8350l/(m2・s)の通気性、7〜11cmの水柱を有することを特徴とする、請求項4記載のスパンボンド不織布。
【請求項6】
密度0.06〜0.073g/cm3においてスパンボンド不織布が機械方向で10〜32N、機械方向を横切る方向で5〜20Nの強力を有することを特徴とする、請求項4、5のいずれか記載のスパンボンド不織布。
【請求項7】
スパンボンド不織布が機械方向で20〜75%、機械方向を横切る方向で20〜75%の破断伸びを有することを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項8】
フィラメントが1〜1.3dtexの範囲内のフィラメント繊度を有することを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項9】
凝固されたスパンボンド不織布が約7〜約20g/m2の坪量を有することを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項10】
不織布厚が約115〜約296μmであることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項11】
ポリオレフィンフィラメントがポリプロピレンまたはポリエチレンまたは両方の混合物から成ることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項12】
ポリオレフィンフィラメントがオレフィン共重合体から成ることを特徴とする、請求項11記載のスパンボンド不織布。
【請求項13】
ポリオレフィンフィラメントが、メタロセン触媒によって製造されたポリオレフィンから成ることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項14】
ポリオレフィンフィラメントが、メタロセン触媒によって製造されたポリプロピレン(mポリプロピレン)から成ることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項15】
ポリオレフィンフィラメントが充填材または顔料を含むことを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項16】
充填材が炭酸カルシウムであり、ポリマーフィラメントを基準に充填材含有量が>5重量%であることを特徴とする、請求項15記載のスパンボンド不織布。
【請求項17】
充填材粒子(D98)のトップカットが≦10μm、充填材(D50)の平均粒径が好ましくは約2〜約6μmであることを特徴とする、請求項15記載のスパンボンド不織布。
【請求項18】
溶融紡糸法で生成されて不織布へと堆積されるフィラメントが熱的および/または化学的に凝固されていることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
【請求項19】
少なくとも2つのスパンボンド不織布層で構成された積層体であって、少なくとも1つの層が請求項1〜18のいずれか1項記載の軽量スパンボンド不織布から成る積層体。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項記載のスパンボンド不織布または請求項19記載の積層体の、
‐身体衛生品(おむつ、生理用ナプキン、化粧用パッド)、
‐ぞうきん、ふきん、モップクロス、
‐例えばガス、エアゾールおよび液体用のフィルタ、
‐創傷用包帯、創傷湿布、
‐絶縁材料、防音不織布、
‐挿入材料、
‐ルーフィングアンダーフェルト、
‐ジオノンウーブン、または田畑用カバーを製造することへの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−504441(P2010−504441A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528644(P2009−528644)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008182
【国際公開番号】WO2008/034613
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(597018945)ファイバーウェブ コロビン ゲーエムベーハー (16)
【住所又は居所原語表記】Woltorfer Strasse 124, D−31224 Peine,Germany
【Fターム(参考)】