説明

現像ローラ、現像装置及び画像形成装置

【課題】長期放置当接部によるバンディング画像弊害の抑制と、安定した画像濃度の得られる高信頼の現像ローラの提供。
【解決手段】現像ローラの表面層が、下記式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有する現像ローラ。(R〜Rは、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、またはアシル基であり、m、n、x、及びzは、それぞれ独立して正の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機、レーザープリンタ等の電子写真装置などにおいて用いられる現像ローラ及び現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリの受信装置など電子写真装置として、加圧現像法を採用した電子写真装置が知られている。加圧現像法は現像剤として非磁性一成分現像剤を用い、感光ドラムの潜像に該現像剤を付着させて潜像を可視化する現像法であり、磁性材料が不要であり簡素化や小型化が容易であることに加え、現像剤のカラー化が容易であることなどから、多用されている。
【0003】
このような加圧現像法を採用した電子写真装置は、図3に示すように、回転機構により回転する感光ドラム21と、この感光ドラム21の周囲に配置された、感光ドラム21を帯電させる帯電部材22、画像を通して感光ドラム21にレーザー光23を照射し画像に相当する部分以外、あるいは画像に相当する部分を放電することにより画像に対応した静電潜像を感光ドラム21上に形成する露光装置、感光ドラム21上に形成された静電潜像に現像剤を供給し現像する現像装置24、静電潜像に付着した現像剤を転写体(記録材)上へ転写する転写ローラ29、及び現像剤を転写した後の感光ドラム21の表面を除電しクリーニングを行うクリーニングブレード30と、更に転写体上の現像剤を定着する定着装置32と、を有する。上記現像装置24には、収納された現像剤28を現像ローラ25の表面に塗布する現像剤供給ローラ26、現像ローラ25の表面に塗布された現像剤をより均一な薄層に整える現像ブレード27、現像ブレードにより均一にされた現像剤を感光ドラム21へ供給する現像ローラ25が設けられ、現像ローラ25が感光ドラム21と接触または近接しながら回転することにより、薄層に形成された現像剤が現像ローラ25から感光ドラム21の潜像に付着して、該潜像が可視化するようになっている。
【0004】
この電子写真現像法で用いられる現像ローラは、所定の電気抵抗値であるのみならず、電気抵抗が変化しないことが必要であり、また感光ドラムを汚染しないことが求められる(特許文献1)。更に、温度、湿度等の環境の変化によって電気抵抗の振れ幅が大きくなるという欠点があるため、環境変化によって画像濃度が大きく変化する問題があった(特許文献2)。さらに厳しいことに、現像剤供給ローラと現像ローラは当接しているが、電子写真装置が継続して長期間に亘り作動されない状態に置かれる等によりこれらが長期間同じ位置で当接し続けることにより、現像剤供給ローラからの染み出し成分が現像ローラ表面に付着してしまい、その結果ハーフトーン画像などにおいてバンディングが発生する弊害が生じてしまう場合がある。特にこの現象は高温高湿(40℃/95%RH)環境下で長期間放置されることにより顕著に起こりうる。さらに、この高温高湿環境下に長期間置かれると、現像剤も吸湿することに因果して、適正な帯電を与えることが困難になり、安定した画像濃度が得られにくくなる。
【特許文献1】特許3186541号公報
【特許文献2】特開平7−13415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような現像剤供給ローラと現像ローラの長期放置当接部によるバンディング画像弊害を抑制すると共に、安定した画像濃度の得られる高信頼の現像ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、軸体と、該軸体上に設けられた導電性弾性層に、下記式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有することを特徴とする現像ローラとすることにより、現像剤供給ローラと現像ローラの長期当接放置における現像剤供給ローラからの染み出し成分の移行が現像ローラ表面にあったとしても、現像剤に対する帯電性が変化することを防ぎ、バンディングがなくかつ安定した画像濃度が得られることを見出した。
【0007】
【化1】

【0008】
(R1〜R6は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、またはアシル基であり、m、n、x、及びzは、それぞれ独立して正の整数である。)
本発明はかかる知見に基づいて達成したものである。すなわち本発明は、軸体と、該軸体上に設けられた導電性弾性層に、上記式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有することを特徴とする現像ローラに関するものである。
【0009】
さらに本発明は、前記の現像ローラと、現像剤供給ローラとを少なくとも有することを特徴とする現像装置に関するものである。
【0010】
また本発明は、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像を現像剤により現像して現像剤画像を形成するための現像装置と、該現像剤画像を転写材に転写するための転写装置とを有する画像形成装置において、該現像装置として、前記の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の現像ローラを用いることで、電子写真装置が継続して長期間に亘り作動されない状態に置かれた後であっても、電子写真装置により形成される画像において、現像剤供給ローラと現像ローラの当接部によるバンディング画像弊害を抑制でき、かつ画像濃度安定性に優れる高品位なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
【0013】
[現像ローラ]
本発明の現像ローラは、その断面構造の一例を図1に示すように、良導電性シャフト1の外周に導電性弾性層2を有する構成とすることができ、この導電性弾性層2に式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有することを特徴とする。このとき、導電性弾性層2は単層でも多層でもかまわないが、少なくとも表面層となる導電性弾性層に、式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有する必要がある。導電性弾性層が多層で構成される場合の表面層以外の導電性弾性層には、式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有しても良く、含有しなくても構わない。
【0014】
また本発明の現像ローラは、その断面構造の一例を図2に示すように、導電性弾性層2の上にさらに導電性樹脂層3を有する構成とすることもでき、この導電性樹脂層3に式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有することを特徴とする。この構成の現像ローラは、本発明の効果を最適に促進できるので好ましい。この導電性弾性層2及び導電性樹脂層3はおのおの単層でも多層でもかまわないが、少なくとも表面層となる導電性樹脂層に、式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有する必要がある。導電性樹脂層が多層で構成される場合の表面層以外の導電性樹脂層及び導電性弾性層には、式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有しても良く、含有しなくても構わない。
【0015】
上記良導電性シャフト1としては、良好な導電性を有するものであればいずれのものも使用し得るが、通常はアルミニウムや鉄、SUSなどで形成された外径4〜10mmの金属製円筒体が用いられる。
【0016】
上記良導電性シャフト1の外周に形成する導電性弾性層2は、EPDMまたはウレタン等のエラストマー、あるいはその他の樹脂成型体を基材として用い、それにカーボンブラック、金属、金属酸化物のような電子導電性物質や、過塩素酸ナトリウムのようなイオン導電性物質を配合し、適切な抵抗領域(体積抵抗率)として103〜1010Ωcm、好ましくは104〜108Ωcmに調整した材料で形成する。導電性弾性層の硬度はASKER−C硬度で25〜60度とすることが好ましい。導電性弾性層の厚みは0.3mm〜10mmの厚さとすることができ、好ましくは1.0mm〜5.0mmの範囲とする。
【0017】
上記基材としては、具体的には、ポリウレタン、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、及びこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくはシリコーンゴムまたはEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)が用いられる。
【0018】
この導電性弾性層2に導電性を付与するために用いられる電子導電性物質としては、ケッチェンブラックEC,アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー(インク)用カーボン、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び金属酸化物等が挙げられる。この中でも、少量で導電性を制御しやすいことからカーボンブラック(導電性カーボン、ゴム用カーボン、カラー(インク)用カーボンなど)が好ましい。
【0019】
また、導電性弾性層2に導電性を付与するために用いられるイオン導電性物質としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン導電性物質、更に変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテートの有機イオン導電性物質などが挙げられる。
【0020】
これら電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤は、導電性弾性層を前記のように適切な体積抵抗率にするのに必要な量が用いられるが、通常基材100質量部に対して0.5〜50質量部、好ましくは1〜30質量部の範囲で用いられる。
【0021】
図2で示す構成の導電性ローラが有する、導電性弾性層2を被覆する導電性樹脂層3の基材としては、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等及びこれらの混合物が挙げられる。ウレタン樹脂は摩擦により現像剤を帯電する能力が大きく、且つ耐摩耗性を有しているので、導電性樹脂層3の基材として好ましく用いられる。導電性樹脂層3は、上記基材に、電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤を配合し、適切な抵抗領域(体積抵抗率)として103〜1011Ωcm、好ましくは104〜1010Ωcmに調整した材料で形成する。また、導電性樹脂層の厚みは0.5μm〜200μmの範囲とすることができるが、好ましくは1.0μm〜100μmの範囲とする。
【0022】
本発明の導電性弾性層や導電性樹脂層の厚さは、導電性弾性層と導電性表面層が形成されたローラを切り取り、その断面における厚さを等間隔に9点測定し、その平均値とした。導電性樹脂層のように厚みが薄い場合は断面における厚さをビデオマイクロスコープ(倍率1000〜3000倍)などで等間隔に9点測定し、その平均値とした。
【0023】
この導電性樹脂層3に導電性を付与するために用いられる電子導電性物質としては、ケッチェンブラックEC,アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラ−(インク)用カーボン、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び金属酸化物等が挙げられる。この中でも、少量で導電性を制御しやすいことからカーボンブラック(導電性カーボン、ゴム用カーボン、カラー(インク)用カーボンなど)が好ましい。
【0024】
また、導電性樹脂層3に導電性を付与するために用いられるイオン導電性物質としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン導電性物質、更に変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテート、等の有機イオン導電性物質などが挙げられる。
【0025】
これら導電性付与剤は、導電性樹脂層を前記のような適切な体積抵抗率にするのに必要な量が用いられるが、通常基材100質量部に対して1〜50質量部の範囲で用いられる。
【0026】
本発明は、上記のような構成を有する現像ローラの表面層が、下記式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有するものである。
【0027】
【化2】

【0028】
(R1〜R6は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、またはアシル基であり、m、n、x、及びzは、それぞれ独立して正の整数である。)
式(A)〜(C)で示される構造を有する化合物は、それぞれ、
(A)主鎖構造がポリエチレングリコールからなり、直鎖構造でも分岐構造をもってもよいが、分子末端にある水酸基はエーテル結合、エステル結合などの官能基化された有機構造になっている化合物、
(B)主鎖構造がポリプロピレングリコールからなり、直鎖構造でも分岐構造をもってもよいが、分子末端にある水酸基はエーテル結合、エステル結合などの官能基化された有機構造になっている化合物、
(C)主鎖構造がエチレングリコールとプロピレングリコールランダム共重合体またはブロック共重合体からなり、直鎖構造でも分岐構造をもってもよいが、分子末端にある水酸基はエーテル結合、エステル結合などの官能基化された有機構造になっている化合物、
である。
【0029】
しかるに、式(A)〜(C)で示される構造を有する化合物の末端となるR1〜R6は、アルキル基、アリール基、またはアシル基のいずれかから構成される。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基のような一般的な炭化水素からなるものが挙げられる。アルキル基の炭素数は1個〜18個が好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキル置換フェニル基のような一般的なものが挙げられる。アリール基の炭素数は6個〜30個が好ましい。アシル基としては、例えば、カルボニル基に結合している炭素数が1個〜12個が好ましい。
【0030】
また式(A)〜(C)において、m、n、x、及びzは、それぞれ独立して正の整数であり、所望の数平均分子量となるように選択される。式(C)で示される構造を有する化合物において、x及びzの比(x/z)は5/1〜1/9が好ましい。
【0031】
この中でも、現像剤への帯電付与能力が一番高く、本発明の効果をより促進することから、式(A)で示される構造を有する化合物を選択して添加することが好ましい。さらに、式(A)で示される構造を有する化合物の中でも、ポリエチレングリコールの安息香酸エステルを用いることが、簡単に合成できることなどから好ましい。なお、式(A)で示される構造を有する化合物のみを用いることもでき、式(A)で示される構造を有する化合物と、式(B)又は(C)で示される構造を有する化合物とを併用することもできる。式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物の合計の質量に対する式(A)で示される構造を有する化合物の質量は、20〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。
【0032】
また、上記(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物は、数平均分子量Mnが350〜5500であることが好ましい。数平均分子量が350より小さいと、高温にさらされた場合、特に硬化反応中などに現像ローラの表面から化合物が揮発してしまう場合がある。また、数平均分子量が5500より大きくなると、有機溶剤などに不溶な場合が生じ、適切に現像ローラを製造できないなどの不都合が生じる場合がある。
【0033】
本発明において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布の測定方法を用いる。
【0034】
GPCによるクロマトグラムの数平均分子量(Mn)は次の条件で測定される。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整したTHF試料溶液を約50〜200μl注入して測定する。試料の数平均分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の、数平均分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0035】
カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。
【0036】
また、上記(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物は、表面層を形成する樹脂(基材)100質量部に対して1〜30質量部添加するのが好ましい。添加部数が1質量部より少ないと、特に高温高湿環境下に長期間放置された場合に、安定した画像濃度が十分に発現できない場合があり、また添加部数が30質量部より多いと現像ローラと現像ブレード当接位置で、現像ローラ表面から(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物が染み出してしまう場合がある。
【0037】
樹脂と、電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤と、少なくとも表面層を形成する際に添加する式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物との混練りは、ボールミル等を用いて、適時必要に応じ現像ローラ表面粗さを形成するための粗し粒子を添加し分散させた後、適時硬化剤もしくは硬化触媒等を添加し、攪拌することにより行うことができる。そして得られた組成物を、スプレー、ディッピング等の方法で塗布する。または、芯金を予め配した成型金型のキャビティ内に得られた組成物を注入し、加熱して反応硬化または固化させることにより一体的に導電性弾性層又は導電性樹脂層を形成し製造する方法、予め、上記組成物を用いて別途形成したスラブやブロックから、切削加工等により、チューブ状等の所定の形状、寸法に切り出し、これに芯金を圧入して芯金上に導電性弾性層又は導電性樹脂層を被覆して製造する方法またはこれらの方法を適宜組み合わせた方法などを挙げることができる。所望の場合には、さらに、切削や研磨処理などによって所定の外径に調整してもよい。
【0038】
上記粗し粒子としては、例えば、EPDM、NBR、SBR、CR、シリコーンゴム等のゴム粒子、またはポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー(TPE)等のエラストマー粒子、またはPMMA粒子、ウレタン樹脂粒子、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂等の樹脂粒子を単独または組み合わせて用いることができる。このとき現像ローラの表面粗さRzは一般的に1〜15μmに調整されるが、このとき、ローラの表面粗さは、JIS B0601:2001によるRzとする。
【0039】
[現像装置]
本発明は、上記のような本発明の現像ローラと、現像剤供給ローラとを少なくとも有することを特徴とする現像装置である。
【0040】
本発明の現像装置は、複写機、ファクシミリ、プリンターなどの電子写真装置に設けられる現像装置であれば特に限定されるものではなく、例えば、図3に示す構成を有する複写機などの電子写真装置の現像装置(詳細は後述する)に、本発明の現像ローラを搭載したものを挙げることができる。
【0041】
本発明の現像装置に用いられる現像剤供給ローラを詳しく説明する。現像剤供給ローラとしては、芯金としての良導電性シャフトと、その外周に形成された発泡弾性層を備え、該発泡弾性層が、シリコーンとポリエーテルの共重合体を含有する現像剤供給ローラを好適に用いることができる。
【0042】
発泡弾性層の材料(基材)としては、例えば、ポリウレタン、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴムなどのゴム原料、または、これらゴム原料の製造原料である単量体等(これら単量体等をもゴム原料と表すことがある)を用いて得られる発泡弾性体のなかから選択して用いればよい。前記ゴム原料単独でまたはこれらのゴム原料の二種以上を組み合わせたゴム原料を用いて得られる発泡弾性体であってもよい。これらの発泡弾性体の中ではポリウレタンフォームが好ましく用いられる。
【0043】
ポリウレタンフォームを形成するための原料を構成するポリオール成分としては、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられている、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等の公知のポリオール類の何れもが用いられ得る。またポリウレタンフォームを形成するための原料を構成するポリイソシアネート成分としては、公知の、少なくとも2官能以上のポリイソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が、単独で、または併用される。
【0044】
これらポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるポリウレタンフォーム原料には、シリコーンとポリエーテルの共重合体が含有されることが好ましい。この成分は整泡剤として役割を果たすが、特にシリコーン部、ポリエーテル部共に大きな制約はなく、公知の材料で好適に用いられる。
【0045】
更に、架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、界面活性剤、触媒、所望の導電性を付与するための導電性付与剤や、帯電防止剤等も添加せしめることができる。
【0046】
本発明の現像剤供給ローラの製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法の中から適した方法を選択しこれによって製造すればよい。具体的には、鉄やステンレス鋼等の金属材料等からなる、通常直径が4〜10mm、長さが200〜400mmの芯金を発泡弾性体で被覆して発泡弾性層を形成することにより製造することができる。現像剤供給ローラの外径は、特に限定されず、その目的によりさまざまの外径を有するものとすることができるが、一般的には10〜20mmの外径とすることができる。
【0047】
例えば、ポリウレタン原料、シリコーンとポリエーテルの共重合体、発泡剤、所望により用いられる触媒、架橋剤、鎖延長剤、その他の助剤等を均質に混合してポリウレタン原料組成物を調製した後、芯金を予め配した成型金型のキャビティ内に前記原料組成物を注入し、加熱して反応硬化または固化させることにより一体的に発泡弾性層を形成し製造する方法、予め、上記ポリウレタン原料組成物を用いて別途形成した発泡弾性体のスラブやブロックから、切削加工等により、チューブ状等の所定の形状、寸法に切り出し、これに芯金を圧入して芯金上に発泡弾性層を被覆して製造する方法またはこれらの方法を適宜組み合わせた方法などを挙げることができる。所望の場合には、さらに、切削や研磨処理などによって所定の外径に調整してもよい。
【0048】
[画像形成装置]
本発明は、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像を現像剤により現像して現像剤画像を形成するための現像装置と、該現像剤画像を転写材に転写するための転写装置とを有する画像形成装置において、該現像装置として、上記のような本発明の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0049】
図3は、本発明の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0050】
像担持体としての感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電部材22によって一様に帯電され、感光ドラム21に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能なプロセスカートリッジに保持される現像装置24によって現像剤を付与されることにより現像され、現像剤像として可視化される。
【0051】
現像は露光部に現像剤像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム21上の現像剤像は、転写部材である転写ローラ29によって記録媒体である紙33に転写される。現像剤像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0052】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残現像剤は、感光ドラム表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード30により掻き取られ廃現像剤容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21は上述の作用を繰り返し行う。
【0053】
現像装置24は、一成分現像剤として非磁性現像剤28を収容した現像容器34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像ローラ25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。また電子写真プロセスカートリッジは、現像装置と、像担持体、帯電部材、クリーニング部材および転写部材の少なくとも一つとを有し、これらが一体的に保持されてなるものであり、画像形成装置に着脱可能に設けられる。
【0054】
尚、現像ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置24においては、現像剤供給ローラ26が、現像容器34内で、現像剤規制部材である現像ブレード27の現像ローラ25表面との当接部に対し現像ローラ25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0056】
数平均分子量や構造の異なる、式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物は、表1のような材料(ポリオキシアルキレン)を用いて以下の方法で合成を行った。
【0057】
【表1】

【0058】
表1のポリオキシアルキレンと塩化ベンゾイル(aldrich社製)をピリジンの存在下、材料が可溶する有機溶媒を適切に選択し、十分に加熱攪拌することにより、エステル化反応を行った。これにより、それぞれのポリオキシアルキレンの安息香酸エステルである、式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を得た。
【0059】
(実施例1)
外径8mmの芯金(軸体)を内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、導電性弾性層を形成する材料として液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニングシリコーン社製、ASKER−C硬度40度、体積抵抗率1×107Ω・cm品)を注型後、130℃のオーブンに入れ20分加熱成型し、脱型後、200℃のオーブンで4時間2次加硫を行い、厚み4mmの導電性弾性層を形成した。
【0060】
ポリウレタンプレポリマー 82質量部
(商品名:ニッポランN5033 日本ポリウレタン社製)
イソシアネート 18質量部
(商品名:B830 三井武田ケミカル社製)
上記原料混合液にメチルエチルケトンを加え固形分25〜30質量%になるように調整したものを導電性樹脂層形成用の原料液とした。この原料液の固形分に対してカーボンブラック(商品名:MA77、三菱化学社製)20質量部、アクリル粒子(商品名:MX−1000、綜研化学社製)30質量部、No.1の安息香酸エステル0.8質量部を添加し、この塗料液をボールミルで攪拌分散し、得られた塗料を先に成型した導電性弾性層上にディッピングにより膜厚15μmとなるように塗布し、80℃のオーブンで15分乾燥後、140℃のオーブンで4時間硬化し、表面層として導電性樹脂層を有する現像ローラを得た。
【0061】
(実施例2)
実施例1において使用したNo.1の安息香酸エステル0.8質量部を、No.2の安息香酸エステル1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0062】
(実施例3)
実施例1において使用したNo.1の安息香酸エステル0.8質量部を、No.3の安息香酸エステル10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0063】
(実施例4)
実施例1において使用したNo.1の安息香酸エステル0.8質量部を、No.4の安息香酸エステル30質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0064】
(実施例5)
実施例1において使用したNo.1の安息香酸エステル0.8質量部を、No.5の安息香酸エステル35質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0065】
(実施例6)
実施例1において使用したNo.1の安息香酸エステル0.8質量部を、No.2の安息香酸エステル30質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0066】
(実施例7)
実施例1において使用したNo.1の安息香酸エステル0.8質量部を、No.4の安息香酸エステル1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0067】
(比較例1)
実施例1において使用したNo.1の安息香酸エステル0.8質量部を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0068】
(比較例2)
実施例1において使用したNo.1の安息香酸エステル0.8質量部を、No.6の安息香酸エステル10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0069】
<現像剤供給ローラの作製>
次に、本発明に用いることのできる現像剤供給ローラの作製例を以下に示す。ポリオール(商品名:FA908、三洋化成工業社製)90質量部、ポリオール(商品名:POP34−28、三洋化成工業社製)10質量部、TOYOCAT−ET(東ソー株式会社製商品名、第3級アミン触媒)0.1質量部、TOYOCAT−L33(東ソー株式会社製商品名、第3級アミン触媒)0.5質量部、水(発泡剤)2.5質量部、シリコーンとポリエーテル共重合体としてSH190(東レダウコーニングシリコーン社製商品名)1質量部を予め混合した。その後、この混合物にポリイソシアネートとしてコロネート1021(日本ポリウレタン工業株式会社製商品名、NCO%=45)を24質量部加えて、混合攪拌し、次いで、上記成形型にて発泡成形することにより外径5mm芯金の周りに、厚さ4.5mmのポリウレタンスポンジからなる発泡弾性層を一体的に形成せしめてなる現像剤供給ローラを作製した。
【0070】
<画像評価>
(現像ローラ、現像剤供給ローラ当接部バンディング評価)
上記現像ローラと現像剤供給ローラを電子写真プロセスカートリッジに装着し、このカートリッジを高温高湿環境下(40℃/95RH)に30日放置した。その後、カラーレーザープリンタ(商品名:LBP5500、キヤノン社製)で実際に画だしをし、画像評価を行った。用いた現像剤は個数平均粒径7.0μmのマゼンダ現像剤を使用した。現像剤の個数平均粒径は、レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型粒度分布計(コールター製商品名)を用いて測定し、個数分布から算出した値である。
【0071】
(ハーフトーン画像におけるバンディング評価)
◎:バンディングが全く認められない
○:バンディングが極軽微認められるが、実用上全く問題ない。
×:実画像上問題になるバンディングが認められる。
【0072】
(画像濃度評価)
上記現像ローラと現像剤供給ローラを電子写真プロセスカートリッジに装着し、このカートリッジを高温高湿環境下(40℃/95RH)に30日放置した。その後、カラーレーザープリンタ(商品名:LBP5500、キヤノン社製)で実際にベタ画像を出力し、画像評価を行った。用いた現像剤は個数平均粒径7.0μmのマゼンダ現像剤を使用した。反射濃度計RD918(マクベス社製商品名)を使用し、ベタ部の濃度を9点測定し、その平均値を画像濃度とした。通常、初期におけるベタ濃度は1.3以上が高品位な画像としては好ましく、さらに1.35以上になることがより好ましい。
【0073】
【表2】

【0074】
評価結果を表2にまとめて示した。
【0075】
表2に示す実施例1〜7の結果から明らかなように、軸体と、該軸体上に設けられた導電性弾性層とを有する現像ローラにおいて、該現像ローラの表面層が、式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有することを特徴とする現像ローラを用いた場合は、現像剤供給ローラと同じ位置で長期間当接してもハーフトーン画像においてバンディングの発生のない高品位の画像が得ることができた。また、同時にこれらの現像ローラは安定した画像濃度が得られる高品位なものであった。
【0076】
比較例1は、現像ローラの表面層に式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物が添加されていないために、レベルの悪いバンディングが発生した。比較例2では、現像ローラの表面層に添加されているものがポリテトラメチレングリコールの安息香酸エステルであるために、バンディングが発生してしまった。また、これら比較例の現像ローラでは高温高湿環境放置後に安定した画像濃度が得られにくい結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す軸方向の断面図である。
【図2】本発明の現像ローラの一例を示す軸方向の断面図である。
【図3】本発明の現像装置を用いた電子写真装置の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1:良導電性シャフト(軸体)
2:導電性弾性層
3:導電性樹脂層
21:感光ドラム
22:帯電部材
23:レーザー光
24:現像装置
25:現像ローラ
26:現像剤供給ローラ
27:現像ブレード
28:現像剤
29:転写ローラ
30:クリーニングブレード
31:廃現像剤容器
32:定着装置
33:紙
34:現像容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、該軸体上に設けられた導電性弾性層とを有する現像ローラにおいて、
該現像ローラの表面層が、下記式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物を含有することを特徴とする現像ローラ。
【化1】

(R1〜R6は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、またはアシル基であり、m、n、x、及びzは、それぞれ独立して正の整数である。)
【請求項2】
前記導電性弾性層の外周に、該現像ローラの表面層となる導電性樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
該導電性樹脂層がウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
該表面層に含有される前記式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物の合計の質量が、該表面層に含有される樹脂100質量部に対して1〜30質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物の数平均分子量(Mn)が、350〜5500であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項6】
該現像ローラの表面層が、前記式(A)〜(C)のいずれかで示される構造を有する化合物として、前記式(A)で示される構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項7】
前記式(A)で示される構造を有する化合物として、ポリエチレングリコールの安息香酸エステルを含有することを特徴とする請求項6に記載の現像ローラ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の現像ローラと、現像剤供給ローラとを少なくとも有することを特徴とする現像装置。
【請求項9】
前記現像剤供給ローラが、芯金と、該芯金の周りに形成された発泡弾性層とを備え、該発泡弾性層が、シリコーンとポリエーテルの共重合体を含有することを特徴とする請求項8に記載の現像装置。
【請求項10】
静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像を現像剤により現像して現像剤画像を形成するための現像装置と、該現像剤画像を転写材に転写するための転写装置とを有する画像形成装置において、該現像装置として、請求項8または9に記載の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−41451(P2007−41451A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227751(P2005−227751)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】