現像装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
【課題】トナー担持体の表面電位の変動を抑制して表面電位を一定に維持し、画像の濃度ムラや地汚れのない安定した現像ができる現像装置を実現する。
【解決手段】所定の間隔で並べられた複数の電極を有するトナー担持体12と、電極間の電界が時間的に変化するように電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段を備え、電極間の電界によりトナー担持体上のトナーを飛翔させてクラウドを形成し潜像担持体上の潜像を現像する現像装置において、トナー担持体上のトナー量を規制する規制部材14と、トナー担持体表面の移動方向で現像領域下流から規制部材上流の間の位置に設けられた導電性のトナー漏れ防止部材16を備え、トナー漏れ防止部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、電圧印加手段によりトナー漏れ防止部材に印加するバイアスの平均値が、トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位となるようにする。
【解決手段】所定の間隔で並べられた複数の電極を有するトナー担持体12と、電極間の電界が時間的に変化するように電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段を備え、電極間の電界によりトナー担持体上のトナーを飛翔させてクラウドを形成し潜像担持体上の潜像を現像する現像装置において、トナー担持体上のトナー量を規制する規制部材14と、トナー担持体表面の移動方向で現像領域下流から規制部材上流の間の位置に設けられた導電性のトナー漏れ防止部材16を備え、トナー漏れ防止部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、電圧印加手段によりトナー漏れ防止部材に印加するバイアスの平均値が、トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位となるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像担持体上の静電潜像をトナーを用いて現像する現像装置と、その現像装置を備えたプロセスカートリッジ、および、前記現像装置または前記プロセスカートリッジを備えた複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等として、電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置が利用されているが、この画像形成装置に用いられる現像装置には、現像剤にトナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤を用いる2成分現像方式の現像装置や、現像剤にトナーのみを用いる1成分現像方式の現像装置などがある。
【0003】
2成分現像方式は、高速現像に非常に適しており、現在の中速や高速の画像形成装置の主流方式である。この2成分現像方式では、高画質を狙うためには、潜像担持体上の静電潜像との接触部における現像剤の状態を非常に緻密にする必要がある。そのために、現在はキャリア粒子の小径化が進んでおり、商用レベルでは30μm程度のキャリアも使われ始めている。
【0004】
1成分現像方式は、機構が小型軽量になることから、現在の低速の画像形成装置の主流方式である。この1成分現像方式では、現像ローラ上にトナー薄層を形成するために、ブレードやローラなどのトナー規制部材を現像ローラ上のトナーに当接させるが、そのときに現像ローラやトナー規制部材とトナーとの摩擦によってトナーは帯電される。現像ローラ上に薄層に形成された帯電トナー層は、現像部に運ばれて潜像担持体上の静電潜像を現像する。ここでの現像方式には大きく分けて接触型と非接触型があり、前者は現像ローラと潜像担持体とが接触するものであり、後者は現像ローラと潜像担持体とが非接触であるものである。
【0005】
上記2成分現像方式と1成分現像方式との欠点を補い合うべく、特許文献1に記載の従来技術のように、2成分現像方式と1成分現像方式とをハイブリッド化したハイブリッド化方式も幾つか提案されている。
また、高解像度の微小均一ドットを現像する方法としては、例えば特許文献2に記載の方式がある。この方式は、上記ハイブリッド化方式に対して、現像部に高周波バイアスを印加したワイヤを設置することにより、現像部でのトナーのクラウド化を行い、高解像度のドット現像性を実現するものである。
【0006】
特許文献3には、最も効率良く、且つ安定なトナークラウドを形成するために、回転ローラ上に電界カーテンを形成する方法が提案されている。
また、特許文献4には、トナー担持体の機械的な駆動をなくし、3相以上の交互電界によってトナーを静電的に搬送し現像する方法が提案されており、特許文献5には、固定搬送基板とその表面を移動するトナー担持体の組合せのような構造の現像装置が提案されている。
【0007】
さらに進行波電界による電界カーテンで現像剤を搬送する現像装置が特許文献6に記載されており、また、現像ローラの周面上にほぼ1層のキャリアをほぼ均等に吸着する複数の磁極を有する現像装置が特許文献7に記載されている。さらに特許文献8には、非磁性トナーを担持する現像剤担持体表面に、絶縁部を介して周期的な導電性電極パターンを設け、該電極に所定のバイアス電位を与えることで現像剤担持体表面近傍に電界勾配を発生せしめ、前記現像剤担持体上に前記非磁性トナーを付着搬送させる現像装置が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平3−100575号公報
【特許文献2】特開平3−113474号公報
【特許文献3】特開平3−21967号公報
【特許文献4】特開2002−341656号公報
【特許文献5】特開2004−286837号公報
【特許文献6】特開2003−15419号公報
【特許文献7】特開平9−269661号公報
【特許文献8】特開2003−84560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の2成分現像方式では、高画質化に対する要求が益々高まっており、必要とされる画素のドットサイズ自身が現状のキャリア粒子径と同等もしくはそれよりも小さいことが必要であるために、孤立ドットの再現性という意味では更にキャリア粒子を小さくする必要がある。しかし、キャリア粒子径を小さくしていくと、キャリア粒子の透磁率が低下するために、現像ローラからのキャリアの離脱が生じやすくなり、離脱したキャリア粒子が潜像担持体に付着した場合には、キャリア付着そのものによる画像欠陥が生じるだけでなく、それを起点として潜像担持体に傷をつけてしまうなどいろいろな副作用が生じる。
【0010】
このキャリア離脱を防止するために、材料面からキャリア粒子の透磁率を高くする試みや、現像ローラに内包されるマグネットの磁力を強くする試みが進められているが、低コスト化及び高画質化との兼ね合いの中で開発は困難を極めている。また、小型化の煽りを受けて、現像ローラは益々小径化の一途をたどっていることからも、キャリア離脱を完全に抑止できるような強力な磁場構成を有した現像ローラの設計が困難となっている。
【0011】
そもそも2成分現像方式は、磁気ブラシと呼ばれる2成分現像剤の穂を静電潜像に対して擦り付けるようにしてトナー像を形成するプロセスであるために、どうしても穂の不均一性によって、孤立ドットの現像性にムラが生じやすい。現像ローラと潜像担持体との間に交番電界を形成することで画質の向上は可能であるが、現像剤の穂のムラといった根本的な画像ムラを完全に消滅させることは困難である。
【0012】
1成分現像方式では、トナー規制部材により薄層化された現像ローラ上のトナー層は、現像ローラ上に十分に圧接されてしまっているために、現像部での電界に対するトナー応答性が非常に悪い。よって、通常は高画質を得るために、現像ローラと潜像担持体との間に強力な交番電場を形成するのが主流であるが、この交番電場の形成をもってしても静電潜像に対して一定量のトナーを安定して現像することは困難であり、高解像度の微小ドットを均一に現像することは難しい。また、この1成分現像方式は、現像ローラ上でのトナー薄層形成時にトナー規制部材によりトナーに対して大きなストレスをかけてしまうため、現像装置内を循環するトナーの劣化が早い。トナーの劣化につれて、現像ローラへのトナー薄層形成の工程でもムラなどが生じやすくなり、1成分現像方式は一般には高速や高耐久の画像形成装置としては向かない。
【0013】
前述の特許文献1等に記載のハイブリッド化方式では、現像装置そのものの大きさや部品点数は増えてしまうものの、幾つかの課題は克服される。しかし、現像部においてはやはり1成分現像方式と同様の問題があり、つまり高解像度の微小均一ドットを現像することには難が残る。
【0014】
前述の特許文献2に記載の方式は、高安定且つ高画質な現像が実現できるものと考えられるが、現像装置の構成が複雑になる。
また、特許文献3に記載の方法は、小型且つ高画質の現像を得るには非常に優れたものと解釈できるが、本発明者らが鋭意研究した結果、理想的な高画質を得るためには、形成する電界カーテンや現像などの条件を限定しなくてはならないことが発見された。すなわち、適正な条件から外れた条件で作像を行ってしまうと、全く効果が得られないばかりか、かえって粗悪な画質を提供してしまうことになる。
【0015】
ところで、潜像担持体に第一のトナー像が形成され、その上に順に第二のトナー像、第三のトナー像を形成していくような作像プロセスにおいては、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱さないような現像方式でなくてはならない。非接触一成分現像方式や、特許文献2に記載のトナークラウド現像方式を用いることで、潜像担持体上に順に各色トナー像を形成していくことは可能であるが、いずれの方式も、潜像担持体と現像ローラとの間に交番電界が形成されてしまうために、潜像担持体上に先に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまうという問題がある。これによって、潜像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。これらは高画質画像を得るには致命的であり、この問題を解決するためには潜像担持体と現像ローラとの間に交番電界を形成しない方法で現像する必要がある。
【0016】
このような現像を実現できる方法としては、先に挙げた特許文献3に記載のクラウド現像方式などが有効と考えられるが、これに関しては先にも述べた通り、適当な条件の元で利用しないと全く効果がない。
また、特許文献4に記載の方式などのように、トナー担持体の機械的な駆動をなくし、3相以上の交互電界によってトナーを静電的に搬送し現像する方法も有効と考えられる。しかし、この方法によれば、何かのきっかけで静電搬送できなくなったトナーを起点として、搬送基板上にトナーが堆積してしまい、結果として機能しなくなる問題を抱えてしまう。このような問題を解決すべく、例えば特許文献5に記載の方式のように、固定搬送基板とその表面を移動するトナー担持体の組合せのような構造も提案されているが、機構が非常に複雑になってしまう。
【0017】
以上のような従来技術の問題を解決する方式として、本出願人は先に、2相の電極間に時間周期的に変化する電界を印加してトナーをトナー担持体から飛翔(ホッピング)させて、前記トナー担持体を回転駆動させて潜像担持体との対向領域に運んで現像させる方式の現像装置や現像方法を提案している(特願2005−299082、特願2006−018892、特願2006−002028)。
このように従来の1成分現像ローラの代わりに、内部に2相の微細ピッチの電極群を埋め込んだローラ(以後、フレアローラと呼ぶ)を用いて、そのフレアローラ表面でトナーをホッピングさせる方式では、電極間の上に絶縁性の表面保護層を設けている。
【0018】
ところが、本発明者らが鋭意研究した結果、このようなフレアローラを回転駆動させると、トナー層厚規制部材とフレアローラの摩擦帯電や、ホッピングするトナー自身とフレアローラとの摩擦帯電、およびトナーを供給する供給ローラに印加するバイアスとフレアローラに印加するバイアスの平均値との電位差によるフレアローラ表面への電荷注入等の理由により、フレアローラの表面電位が大きく変動してしまうことを発見した。ひいては潜像担持体との対向部で、フレアローラ表面と潜像担持体の画像部、もしくは非画像部との電位差が変動し、画像の濃度ムラや、地汚れの原因となってしまう。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、さまざまな原因によるトナー担持体(フレアローラ)の表面電位の変動を抑制するために、本発明では、トナー担持体表面の移動方向で現像領域下流から規制部材上流の間に設けたトナー漏れ防止部材に所定の電圧を印加することによってトナー担持体(フレアローラ)の表面電位を一定に維持し、画像の濃度ムラや、地汚れのない安定した現像ができる現像装置を提供することを目的とし、さらには、その現像装置を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の手段は、潜像担持体と対向して配置され、内部に所定の間隔で並べられた複数の電極を有するトナー担持体と、前記複数の電極間の電界が時間的に変化するように該電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段を備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体上のトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置において、前記トナー担持体上のトナー量を規制する規制部材と、前記トナー担持体表面の移動方向で現像領域下流から規制部材上流の間の位置に設けられた導電性のトナー漏れ防止部材とを備え、前記トナー漏れ防止部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、該電圧印加手段により前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスの平均値が、前記トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の手段は、第1の手段の現像装置において、前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加される電極と第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加される電極が交互に配置されて第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群(A相またはB相の電極群)に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群(B相またはA相の電極群)に印加するバイアスは逆位相の時間的に変化する波形であり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは直流(DC)バイアスであることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の手段は、第1の手段の現像装置において、前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加される電極と第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加される電極が交互に配置されて第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群(A相またはB相の電極群)に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群(B相またはA相の電極群)に印加するバイアスは直流(DC)バイアスであり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは直流(DC)バイアスであることを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の手段は、第1の手段の現像装置において、前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加される電極と第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加される電極が交互に配置されて第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群(A相またはB相の電極群)に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群(B相またはA相の電極群)に印加するバイアスは逆位相の時間的に変化する波形であり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは時間的に変化する波形であることを特徴とする。
また、本発明の第5の手段は、第4の手段の現像装置において、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスが、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスと同一であることを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の手段は、第1の手段の現像装置において、前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加される電極と第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加される電極が交互に配置されて第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群(A相またはB相の電極群)に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群(B相またはA相の電極群)に印加するバイアスは直流(DC)バイアスであり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加する時間的に変化する波形と同一であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第7の手段は、第1〜第6いずれか1つの手段の現像装置において、前記トナー漏れ防止部材が、導電性の薄板状の弾性シール部材であることを特徴とする。
また、本発明の第8の手段は、第1〜第6いずれか1つの手段の現像装置において、前記トナー漏れ防止部材が、導電性の円筒形状の弾性部材であることを特徴とする。
【0026】
本発明の第9の手段は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体の潜像を現像する現像手段とを備えた画像形成装置において、前記現像手段として、第1〜第8のいずれか1つの手段の現像装置を用いたことを特徴とする。
また、本発明の第10の手段は、第9の手段の画像形成装置において、前記潜像担持体に対して前記現像装置を複数備え、該複数の現像装置はそれぞれ色の異なるトナーで前記潜像担持体上の潜像を順次現像し、前記潜像担持体上で複数回の色重ねを行うことを特徴とする。
【0027】
本発明の第11の手段は、電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置に装備されるプロセスカートリッジであって、潜像を担持する潜像担持体、帯電手段、クリーニング手段のうちの少なくとも一つと、第1〜第8のいずれか1つの手段の現像装置を一体に保持し、画像形成装置本体に対して着脱可能に設けられたことを特徴とする。
また、本発明の第12の手段は、電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置であって、第11の手段のプロセスカートリッジを一つまたは複数備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
第1の手段の現像装置では、電圧印加手段によりトナー漏れ防止部材に印加するバイアスとトナー担持体の表面電位が同電位であることにより、トナー担持体への注入帯電を防止することができる。
また、第2の手段の現像装置では、第1の手段の効果に加え、A相の電極群と、B相の電極群に逆位相の時間的に変化する波形のバイアスを印加することで、トナー担持体の印加バイアスの平均値が常に一定に保たれる。
また、第3の手段の現像装置では、第1の手段の効果に加え、時間的に変化する波形を出力する電源が一系統で済むため、電源の低コスト化が図れる。
【0029】
第4の手段の現像装置では、第1の手段の効果に加え、A相の電極群と、B相の電極群に逆位相の矩形波バイアスを印加することで、トナー担持体の印加バイアスの平均値が常に一定に保たれ、かつトナー漏れ防止部材にも時間的に変化する波形を印加することで、トナー担持体の表面電位を安定化できる。
また、第5の手段の現像装置では、第4の手段の効果に加え、A相の電極群と、B相の電極群に逆位相の矩形波バイアスを印加することで、トナー担持体の印加バイアスの平均値が常に一定に保たれ、かつトナー漏れ防止部材に印加する電圧印加手段に新たな電源が不要のため、電源が2チャンネルで済み、電源の低コスト化が図れる。
また、第6の手段の現像装置では、第1の手段の効果に加え、時間的に変化する波形の出力が1系統で済むため、電源の低コスト化が図れる。
【0030】
第7の手段の現像装置では、第1〜第6いずれか1つの手段の効果に加え、導電性で薄板状の弾性シール部材を用いることによって簡易な構成でトナーの現像装置外部へのトナーの漏れを防止しつつ、トナー担持体の表面電位を安定化できる。
また、第8の手段の現像装置では、第1〜第6いずれか1つの手段の効果に加え、導電性で円筒形状の弾性部材を用いることによって、トナーの現像装置外部へのトナーの漏れを防止しつつ、トナー担持体の表面電位を安定化できる。
【0031】
第9の手段の画像形成装置では、現像手段として、第1〜第8のいずれか1つの手段の現像装置を用いたことにより、潜像担持体と非接触の現像が可能となる。よって接触現像での潜像担持体の劣化がなくなり、高耐久化が可能となる。また、表面電位制御手段を有し、トナー担持体の表面電位を常に一定に維持することが可能な現像装置を用いて画像形成を行うことができるので、濃度ムラや地汚れのない良好な画像を得ることができる。
【0032】
第10の手段の画像形成装置では、第9の手段の構成および効果に加え、潜像担持体に対して現像装置を複数備え、該複数の現像装置はそれぞれ色の異なるトナーで前記潜像担持体上の潜像を順次現像し、前記潜像担持体上で複数回の色重ねを行うことにより、色ずれのない高画質な多色またはカラー画像を得ることができる。すなわち、第10の手段の画像形成装置では、非接触の現像で、かつ静電潜像近傍では直流電界であるため、潜像担持体上での色重ねが可能であり、簡易な構成でフルカラー画像の形成が可能となる。また、潜像担持体上で色重ねができるため、色ずれのない高画質なカラー画像を得ることができる。
【0033】
第11の手段のプロセスカートリッジでは、潜像担持体、帯電手段、クリーニング手段のうちの少なくとも一つと、第1〜第8のいずれか1つの手段の現像装置を一体に保持したことにより、安定した良好な画像形成を行うことができるプロセスカートリッジを提供することができる。また、このプロセスカートリッジは、画像形成装置に対して着脱可能に設けられているので、容易に交換やリサイクルが可能になり、画像形成装置のメンテンナンス性の向上や、省資源化に寄与することができる。
【0034】
第12の手段の画像形成装置では、第11の手段のプロセスカートリッジを一つまたは複数備え、単色、多色またはフルカラー画像を形成することにより、安定した良好な単色、多色またはカラー画像を形成することができる。また、プロセスカートリッジは、着脱可能に設けられているので、容易に交換やリサイクルが可能になり、画像形成装置のメンテンナンス性の向上や、省資源化に寄与することができる。また、画像形成装置の保守や管理も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に図示した実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
図1は本発明の一実施例を示す画像形成装置の概略構成図である。この実施例では、画像形成装置はフレア現像方式の現像装置を複数用いて構成され、潜像担持体である無端ベルト状の感光体2上に各色のトナー像を重ねて形成する画像形成装置の例である。
すなわち、この画像形成装置は、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック(以下、M、C、Y、Kと記す)のトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成することができるカラープリンタの例であり、ベルトユニット1、4つの現像装置10M,10C,10Y,10K、レジストローラ対20、転写ローラ21、定着装置22、図示しない給紙カセット、給紙装置、給紙路などを備えている。
【0037】
複数のフレア現像方式の現像装置10K,10Y,10C,10Mは同一の構成であり、現像ケース11内に、トナー担持体であるフレアローラ12、フレアローラにトナーを供給する供給ローラ13、フレアローラ上のトナー層厚を規制する層厚規制部材14、トナーを攪拌する攪拌パドル15、現像ケース11からのトナー漏れを防止するトナー漏れ防止部材16等を備えている。また、現像装置の構成例としては、図2に示すように、上記の構成に加えてトナー回収用の回収ローラ17やフリッカー18を設けても良い。なお、フレア現像方式については後で詳しく説明する。
【0038】
この実施例では、ベルトユニット1は、潜像担持体たる無端ベルト状の感光体2を、水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢で張架しながら図中時計回り方向に無端移動せしめる。より詳しくは、感光体2を、駆動ローラ3、テンションローラ4、転写上流ローラ5、転写バックアップローラ6、及び4つの現像対向ローラ7M,7C,7Y,7Kによって裏面側から支えながら張架している。そして、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる駆動ローラ3の回転によって感光体2を無端移動せしめる。この感光体2における図中左側の張架面(以下、左側張架面という)は、ほぼ鉛直方向に延在する姿勢になっている。
【0039】
感光体2の左側張架面の図中左側方には、マゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),ブラック(K)用の現像装置10M,10C,10Y,10Kが鉛直方向に並ぶように配設されており、それぞれ感光体2の左側張架面に対向している。
4つの現像装置10M,10C,10Y,10Kのうち、鉛直方向の最も下側に位置するM用の現像装置10Mの更に下方には、M用の帯電装置8Mが感光体2の左側張架面に対向するように配設されている。また、M用の現像装置10Mと、C用の現像装置10Cとの間には、C用の帯電装置8Cが感光体2の左側張架面に対向するように配設されている。また、C用の現像装置10Cと、Y用の現像装置10Yとの間には、Y用の帯電装置8Yが感光体2の左側張架面に対向するように配設されている。更に、Y用の現像装置10Yと、K用の現像装置10Kとの間には、K用の帯電装置8Kが感光体2の左側張架面に対向するように配設されている。
【0040】
鉛直方向に並ぶ4つの現像装置10M,10C,10Y,10Kの図中左側方には、図示しない光書込装置が配設されている。この光書込装置は、外部の図示しないパーソナルコンピュータやスキャナから送られてくる画像情報に基づいて、図示しない4つの半導体レーザを駆動してM,C,Y,K用の4つの書込光Lm,Lc,Ly,Lkを出射する。そして、これらを図示しないポリゴンミラーによって偏向せしめながら、図示しない反射ミラーで反射させたり光学レンズに通したりすることで感光体2に対する光走査を行う。なお、かかる構成のものに代えて、LEDアレイ等によって光走査を行うものを用いてもよい。また、光走査は暗中にて行われる。
【0041】
感光体2は、自らを張架している複数の張架ローラのうち、最も下方に位置する転写バックアップローラ6と、最も上方に位置する駆動ローラ3との間では、鉛直方向下方から上方に向けてほぼ真っ直ぐに移動する。そして、駆動ローラ3に対する掛け回し箇所を通過すると、今度は相対的に鉛直方向上方から下方に向けて移動する。駆動ローラ3に対する掛け回し箇所を通過して鉛直方向下方から上方に向けて移動するようになったベルト箇所は、M用の帯電装置8Mとの対向位置を通過する際に、例えば負極性に一様帯電される。そして、M用の書込光Lmによる光走査によってM用の静電潜像を担持した後、M用の現像装置10Mとの対向位置を通過する。この際、感光体2に書き込まれたM用の静電潜像がM用の現像装置10Mによって現像されてMトナー像になる。その後、感光体2は図示しない除電器により除電されて次の色の画像形成に備える。
【0042】
次いでMトナー像が形成された感光体2は、鉛直方向下方から上方に向けての移動に伴って、C用の帯電装置8Cによって再び一様帯電せしめられた後、C用の書込光Lcによる光走査によってC用の静電潜像を担持する。このC用の静電潜像は、C用の現像装置10Cによって現像されてCトナー像となる。このとき、Cトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体2上に形成されているMトナー像の上に重ね合わせた状態で現像される。そして、その重ね合わせ箇所は、M及びCによる2次色となる。その後、感光体2は図示しない除電器により除電されて次の色の画像形成に備える。
【0043】
さらにCトナー像が形成された感光体2は、鉛直方向下方から上方に向けての移動に伴って、Y用の帯電装置8Yによって再び一様帯電せしめられた後、Y用の書込光Lyによる光走査によってY用の静電潜像を担持する。このY用の静電潜像は、Y用の現像装置10Yによって現像されてYトナー像となる。このとき、Yトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体2上に形成されているMトナー像やCトナー像の上に重ね合わせた状態で現像される。そして、その重ね合わせ箇所は、M及びYによる2次色、C及びYによる2次色、あるいはM,C及びYによる3次色となる。その後、感光体2は図示しない除電器により除電されて次の色の画像形成に備える。
【0044】
最後にYトナー像が形成された感光体2は、鉛直方向下方から上方に向けての移動に伴って、K用の帯電装置8Kによって再び一様帯電せしめられた後、K用の書込光Lkによる光走査によってK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、K用の現像装置10Kによって現像されてKトナー像となる。このようなM,C,Y,Kトナー像の重ね合わせ現像により、感光体2のおもて面(ループ外面)には、4色重ね合わせトナー像が形成され、フルカラー画像が形成される。
【0045】
感光体2における転写バックアップローラ6に対する掛け回し箇所には、転写ローラ21が表面側から当接して転写ニップを形成している。転写バックアップローラ6は接地されているのに対し、導電性の転写ローラ21には図示しないバイアス印加手段によって転写バイアスが印加されている。これにより、転写ニップを間に挟んでいる転写バックアップローラ6と転写ローラ21との間には、感光体2上のトナー像を転写バックアップローラ6側から転写ローラ21側に静電移動させる転写電界が形成されている。
【0046】
一方、所定のタイミングで図示しない給紙カセットから図示しない給紙装置により給紙路に送り出された記録媒体(例えば記録紙)Pは、転写ニップの図中右側方に配設されたレジストローラ対20のローラ間に挟み込まれる。レジストローラ対20は、記録紙Pの先端部を挟み込むとすぐに回転駆動を一時停止する。そして、記録紙Pを感光体2上の4色重ね合わせトナー像と同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを転写ニップに送り出す。
【0047】
転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた4色重ね合わせトナー像は、ニップ圧や転写電界の作用によって感光体2から記録紙Pに一括転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0048】
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙Pは、転写ニップから定着装置22に送り込まれる。定着装置22は、例えばハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ22aと、これに圧接せしめられている加圧ローラ22bとの当接によって定着ニップを形成しており、送り込まれてきた記録紙Pをこの定着ニップ内に挟み込む。そして、定着ローラ22aによる加熱やニップ圧の作用によってフルカラー画像を記録紙Pに定着する。
【0049】
定着装置32内でフルカラー画像の定着処理が施された記録紙Pは、図示しない排紙ローラ対を経由した後、機外へと排出される。なお、転写ニップを通過した後の感光体2の表面に付着している転写残トナー等は、クリーニング手段としてのクリーニング装置9により除去される。
【0050】
以上に述べた実施例では、同一の感光体2上に4色分の書き込みを行うので、通常の4連タンデム方式と比較すると、原理的に位置ズレがほとんど発生せず、感光体上で色重ねができて位置ズレのない高画質のフルカラー画像を得ることができる。また、上記実施例の現像装置を用いた色重ねシステムは、トナー担持体(フレアローラ)12と感光体2が非接触で、かつ現像領域で交番電界がかかっていないため、次の色の現像工程が、感光体上に一度形成されたトナー像に対しては機械的にも電界的にも影響を与えないので、スキャベンジや混色などの問題が無く、高画質な作像プロセスを長期的に渡り安定して行うことができる。
【0051】
次に、フレア現像方式の現像装置とフレア現像について詳しく説明する。ここでは図2に示す構成の現像装置を例に上げて説明する。
現像装置10のケーシング11内には、トナー担持体であるフレアローラ12、フレアローラにトナーを供給する供給ローラ13、フレアローラ上のトナー層厚を規制する層厚規制部材14、トナーを攪拌する攪拌パドル15、現像ケース11からのトナー漏れを防止するトナー漏れ防止部材16、トナー回収用の回収ローラ17、フリッカー18等を備えている。
【0052】
現像装置10のケーシング11内に形成されたトナー収容部には図示しないトナーが収容されており、このトナーは、トナー収容部内で回転駆動される撹拌パドル15によって撹拌されている。トナー収容部の図中右側方には、供給ローラ13が配設されており、図中反時計回りに回転駆動されている。撹拌パドル15によってトナー収容部内から排出されるトナーは、この供給ローラ13に汲み上げられる。
供給ローラ13の図中右上には、トナー担持体であるフレアローラ12が配設されており、供給ローラ13に当接しながら図中反時計回りに回転駆動している。両ローラの当接部では、供給ローラ13上のトナーがフレアローラ12に供給される。供給ローラ13からフレアローラ12へのトナー供給効率を高める目的で、供給ローラ13には、図示しない供給バイアス電源によってトナーと同極性の供給バイアスが印加されている。
【0053】
フレアローラ12に供給されたトナーは、フレアローラ12の表面上でホッピングしながら、フレアローラ12の回転駆動に伴って図中反時計回りに回転する。そして、回転するフレアローラ12と、ケーシング11に固定されている層厚規制部材14との当接部に進入して、フレアローラ12の表面上における担持量が規制される。
【0054】
フレアローラ12は、ケーシング11に設けられた開口から周面の一部を露出させており、その露出箇所を前述の感光体2に対して所定の間隙を介して対向させている。層厚規制部材14によってフレアローラ12の表面上における担持量が規制されたトナーは、フレアローラ12の回転駆動に伴って、感光体と対向する現像領域に至る。そして、その一部が感光体上の静電潜像に付着して現像に寄与する。現像に寄与しなかったトナーは、フレアローラ12の回転駆動に伴って回収ローラ17との当接部に至り、回収ローラ17に回収される。そして、回収ローラ17に移ったトナーは、回収ローラ17の回転駆動に伴ってフリッカー18で掻き落とされ、ケーシング11内に戻る。
【0055】
図3は、フレアローラ12の一例を示す斜視図である。このフレアローラ12は、ローラ部の周面上において、ローラ軸線方向に延在しつつローラ周方向に所定のピッチで並ぶ複数の電極を有している。より詳しく説明すると、これら複数の電極は、図3〜図5に示すように、第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加されるA相電極31Aと、第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加されるB相電極31Bとがローラ周方向に交互に配置されたものであり、第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成している。
【0056】
また、図3、図5において、フレアローラ12のローラ部における軸線方向の一端部には、A相共通電極32Aがローラ部の全周に渡って延在するように設けられており、これには複数のA相電極31Aの一端部がそれぞれ接続されている。また、ローラ部における軸線方向の他端部には、B相共通電極32Bがローラ部の全周に渡って延在するように設けられており、これには複数のB相電極31Bの他端部がそれぞれ接続されている。
【0057】
図4はフレアローラの電極部分の周方向断面の概略図であり、便宜上、図3や図5には示していなかったが、図4に示すように、支持基板33上に複数のA相電極31AやB相電極31Bが所定の間隔で配置され、その上には、無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層34が積層されており、この表面保護層34によってそれら電極とトナーとの接触が回避される。但し、図3に示したA相共通電極32AやB相共通電極32Bの上には表面保護層が設けられておらず、それら共通電極は剥き出しの状態になっている。そして、フレアローラ12の回転に伴って無端移動するA相共通電極31Aには、上記のケーシング11に固定された図示しないA相ブラシ接点部材が摺擦する。A相電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段であるA相パルス電源35Aから出力されるA相パルス電圧は、このA相ブラシ接点部材とA相共通電極32Aとを介して、各A相電極31Aに印加される。また、フレアローラ12の回転に伴って無端移動するB相共通電極31Bには、ケーシングに固定された図示しないB相ブラシ接点部材が摺擦する。B相電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段であるB相パルス電源35Bから出力されるB相パルス電圧は、このB相ブラシ接点部材とB相共通電極32Bとを介して、各B相電極31Bに印加される。
【0058】
なお、図4において各電極から伸びる線は各電極に電圧を印加するための導電線を表しており、各線の重なる部分のうち黒丸で示した部分だけが電気的に接続されており、他の部分は電気的に絶縁状態である。各電極に対しては、本体側の電源35A,35Bから2相の異なる駆動電圧が印加される。
また、A相パルス電圧が印加される複数のA相電極31Aの集合をA相電極群といい、B相パルス電圧が印加される複数のB相電極32Bの集合をB相電極群という。A相電極31AとB相電極31Bとは交互に配設されているため、複数のA相電極31Aはローラ周方向における所定位置からの並び順が何れも、奇数番目又は偶数番目となる。また、複数のB相電極31Bの並び順は、A相電極31Aの並び順が奇数番目である場合には偶数番目、A相電極31Aの並び順が偶数番目である場合には奇数番目となる。
【0059】
図5はフレアローラ電極部の平面展開図であり、これらの図からわかるようにフレアローラは、トナーをホッピングさせるための電界を発生する2相の電極群(A相電極群、B相電極群)を有し、偶数番目の電極群(A相電極群(またはB相電極群))と奇数番目の電極群(B相電極群(またはA相電極群))にそれぞれ図示しない駆動回路(図3、図4に示したA相パルス電源35A、B相パルス電源35B)から、一例としては図6(b)に示すような逆位相の駆動波形のパルス電圧が印加され、2相の電極間に時間周期的な電位差が形成される。そしてフレアローラは回転駆動され、回転軸の一方側の共通電極に奇数番電極が接続され、回転軸のもう一方側の共通電極に偶数番電極が接続されている。
【0060】
より詳しく述べると、一例として、A相電極群には、例えば図6(b)の上段に示すような所定周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す矩形波状のA相パルス電圧が印加される。これに対し、B相電極群には、例えば図6(b)の下段に示すような、立ち上がりや立ち下がりの位相がA相パルス電圧と逆位相になる矩形波状のB相パルス電圧が印加される。このようなパルス電圧が印加されると、フレアローラ12上のトナーは、A相電極31Aの真上から浮上して放物線を描くようにして隣のB相電極31Bの真上に着地した後、今度はB相電極31Bの真上から浮上して放物線を描くようにして隣のA相電極31A上に逆戻りするという、ホッピングによる往復移動を繰り返す。
【0061】
このようにしてホッピングによる往復移動を繰り返しているトナーは、フレアローラ12の回転駆動によって現像領域まで搬送される。そして、現像領域にて、その放物線状のホッピング軌跡の頂点付近で感光体2の静電潜像の近傍に位置すると、静電潜像の静電気力によって引かれながらホッピング軌跡から外れて、静電潜像に付着する。これに対し、放物線状のホッピング軌跡の頂点付近で感光体2の地肌部(一様帯電部)の近傍に位置すると、ホッピング軌跡から外れることなく下降して、フレアローラ12の表面に着地する。
【0062】
かかる構成においては、ホッピングによってフレアローラ12との吸着力が解かれた状態のトナーを現像に用いることで、従来の1成分現像方式や二成分現像方式では実現が望めなかったほどの低電位現像を実現することができる。そして、このようにフレアローラの電極間でトナーをホッピングによって往復移動させながら、フレアローラの表面移動によって現像領域まで搬送して現像を行う方式がフレア(Flare)現像方式である。
【0063】
上述した図2の現像装置10は、本発明の画像形装置に使われる現像装置の一例であり、このような構成にすることにより、供給ローラ13からフレアローラ12に供給されたトナーは、時間周期的に変化する電界に従ってホッピング運動を行う。そしてフレアローラ自体の回転駆動により、潜像担持体である感光体2との対向領域に搬送され、感光体上の潜像にトナーが電界からの力を受けて移動して現像が行われる。
【0064】
一方、現像に寄与しなかった不要なトナーはトナー漏れ防止部材16を通過して、回収ローラ17との対向領域へ運ばれてくる。フレアローラ12上のトナーはホッピングしているため、フレアローラ12とトナーの付着力は非常に低く、回収ローラ17で容易に回収される。そして供給ローラ13との対向領域では、再び新しいトナーがフレアローラ12に供給される。これを繰り返すことによって、フレアローラ上には常に一定量のトナーがホッピングしている状態が形成される。
【0065】
なお、フレアローラ12の支持基板33としては、ガラス基板、樹脂基板あるいはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、あるいはステンレススチール(SUS)等の導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドなどの材料からなる基板等を適用できる。
また、電極は、支持基板上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等で所要の電極形状にパターニングして形成している。
【0066】
次にトナーのホッピングを行うためのフレアローラ上の電極幅L及び電極間隔R、駆動波形形状並びに表面保護層について説明する。
図4に示す搬送部材における電極幅Lと電極間隔Rはトナーのホッピング効率に大きく影響する。なお電極ピッチPは、P=R+Lで表される。
【0067】
電極と電極の間にあるトナーはほぼ水平方向の電界により、基板表面を隣接する電極まで移動する。これに対して、電極上に乗っているトナーは、少なくとも垂直方向の成分も持った初速が与えられることから、多くは基板面から離れて飛翔する。
特に、電極端面付近にあるトナーは、隣接電極を飛び越えて移動するため、電極幅Lが広い場合には、その電極上に乗っているトナーの数が多くなり、移動距離の大きいトナーが増える。ただし、電極幅Lが広すぎると、電極中央付近の電界強度が低下するためにトナーが電極に付着し、ホッピング効率が低下することになる。そこで、本発明者らは鋭意研究した結果、低電圧で効率よくトナーをホッピングさせるための適正な電極幅があることを見出した。
【0068】
また、電極間隔Rは、距離と印加電圧の関係から電極間の電界強度を決定し、間隔Rが狭い程電界強度は当然強く、ホッピングの初速が得られやすい。しかし、電極から電極へ移動するようなトナーについては、一回の移動距離が短くなり、駆動周波数を高くしないとホッピングしている時間が短くなり、着地している時間が長くなる。これについても、本発明者らは鋭意研究した結果、低電圧で効率よくトナーを搬送、ホッピングするための適正な電極間隔があることを見出した。
【0069】
さらに、電極表面を覆う表面保護層34の厚さも電極表面の電界強度に影響を与え、特に垂直方向成分の電気力線への影響が大きく、ホッピングの効率を決定することをも見出した。
すなわちフレアローラの電極幅L、電極間隔R、表面保護層34の厚さの関係を適正に設定することによって、低電圧で効率的なホッピングを行うことができる。
そこで本実施例では、図4に示す電極幅Lは、トナー平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極間隔Rもトナー平均粒径の1倍以上20倍以下としている。
【0070】
次に、表面保護層34は、例えばSiO2、BaTiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5等を適用でき、厚さは0.5〜10μm、好ましくは0.5〜3μmで形成している。
また、SiO2等の上にポリカーボネートなどの有機材料をコートしても良い。また、ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。なお、表面保護層34は、絶縁性、耐久性、フレアローラ自体の製法、及び使用するトナーとの帯電列との関係から適宜選択される。
【0071】
本発明に係る現像装置10を画像形成装置に用いる場合、フレアローラ12として、少なくともA4縦幅21cm、または横幅30cm以上の長尺、大面積にファインピッチパターンの電極を形成したローラの実用化が必要になってくる。
【0072】
ここでフレアローラの製造方法について幾つか挙げる。
まず始めに、フレキシブルな電極パターンを形成し、それを支持ドラムに巻きつけてフレアローラを形成する場合について説明する。
フレキシブルなファインピッチ薄層電極を有する基板の一例としては、ポリイミドのベースフィルム(厚さ20〜100μm)を基材(支持基板33)として、その上に蒸着法によって0.1〜0.3μmのCu、Al、Ni−Cr等を成膜する。幅30〜60cmであれば、ロール・トゥ・ロールの装置で製造可能であり、量産性が非常に高まる。共通バスラインは同時に幅1〜5mm程度の電極を形成する。
【0073】
この蒸着法の具体的手段としては、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、イオンビーム法、等の方法が可能である。例えば、スパッタ法で電極を形成する場合において、ポリイミドとの密着性を向上させるため、Cr膜を介在させても良いし、プラズマ処理やプライマー処理によっても密着性を向上させることができる。
【0074】
また、蒸着法以外の工法としては、電着法によっても薄層電極を形成することができる。この場合は、前記ポリイミドの基材上に、まず無電解メッキによって電極を形成する。具体的には、塩化Sn、塩化Pd、塩化Niに順次浸漬して下地電極を形成した後、Ni電解液中で電解メッキを行ってNi膜1〜3μmをロール・トゥ・ロールで製造することが可能である。
【0075】
そして、これらの薄膜電極にレジスト塗布、パターニング、エッチングで電極31を形成する。この場合、0.1〜3μm厚さの薄層電極であれば、フォトリソ、エッチング処理によって5μm〜数10μm幅、又は間隔のファインパターン電極を精度良く形成することができる。
【0076】
次いで、表面保護層34としてSiO2、BaTiO2、TiO2等を厚さ0.5〜2μmをスパッタ等により形成する。あるいは、表面保護層34としてPI(ポリイミド)を厚さ2〜5μmにロールコータ、その他コーティング装置により塗布し、ベークして仕上げる。PIのままで支障を生じるときには、更に最表面にSiO2、その他無機膜を0.1〜0.5μmの厚みにスパッタ等で形成すればよい。また、SiO2等の上にポリカーボネートなどの有機材料をコートしても良い。なお、ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。
このようなフレキシブル基板を構成することによって、円筒形状のドラムに貼り付けることが容易に行える。
【0077】
また、別の例としては、ポリイミドのベースフィルム(厚さ20〜100μm)を基材(支持基板33)として、その上に電極材料として、厚さ10〜20μmのCu、SUS等を使用することも可能である。この場合は、逆に金属材の上にポリイミドをロールコータにて20〜100μm塗布してベークする。その後、金属材をフォトリソ、エッチング処理によって電極12の形状にパターン化し、その電極12面上に保護層13としてポリイミドをコーティング、金属材電極の厚さ10〜20μmに応じた凹凸がある場合は平坦化して完成する。
例えば、粘度50〜10,000cps、より好ましくは100〜300cpsのポリイミド系材料、ポリウレタン系材料をスピンコートして放置することによって、材料の表面張力によって基板の凹凸がスムージングされ、フレアローラ最表面が平坦化される。
【0078】
さらに、フレキシブル基板の強度を上げた更に他の例としては、基材として厚さ20〜30μmのSUS、Al材等を用いて、その表面に絶縁層(電極と基材との間の絶縁)として5μm程度の希釈したポリイミド材をロールコータによりコーティングする。そして、このポリイミドを例えば150℃−30分のプリベーク、350℃−60分のポストベークして薄層ポリイミド膜を形成して支持基板33とする。
【0079】
その後、密着性向上のプラズマ処理やプライマー処理を施した後、薄層電極層としてNi−Crを0.1〜0.2μmの厚みに蒸着し、フォトリソ、エッチングによって前記数10μmのファインパターンの電極31を形成する。さらに、表面に前記SiO2、BaTiO2、TiO2等の表面保護層13を0.5〜1μm程度の厚みにスパッタにより形成することで、フレキシブルな電極パターンを有する支持基板33を得ることができる。また、SiO2等の上にポリカーボネートなどの有機材料をコートしても良い。なお、ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。
【0080】
フレアローラの別の製法としては、はじめから円筒ドラムに対して電極をパターニングして、その上に表面保護層を形成する方法もある。一例として図7に示すような工法が挙げられる。
この図7に示す例では、工程(1)〜(5)によりパターン電極を形成する。工程(1)〜(5)の図はフレアローラ表面を、回転軸に沿った方向に見たときの部分断面図である。
【0081】
工程(1)ではローラ12の表面を外周旋削によって平滑に仕上げる。工程(2)では溝のピッチが100μm、溝幅が50μmとなるように溝切削を行う。工程(3)では無電解ニッケルメッキを施して電極膜31を形成し、工程(4)では外周を旋削して不要な導体膜を取り除く。この時点で電極(A相電極31A、B相電極31B)が溝部分に形成される。その後、シリコーン系樹脂でコーティングする事でローラ表面を平滑にし、同時に表面保護層34とした。なお、このとき、表面保護層34の厚みは約5μm、体積抵抗率約1010Ω・cmとした。
【0082】
さらに別のフレアローラの製法としては、導電インクを用いたスクリーン印刷、インクジェットによるプリント、メッキ加工した電極の非電極部をレーザ加工で除去する等の製法も挙げられる。
なお、フレアローラの電極パターンおよび表面保護層の作成方法は上述の方法に限定されるものではなく、電極材料としては銀、銅などを使用しても良い。
【0083】
次にその他の実験条件について説明する。ここでは現像装置として、図10に示す構成の現像装置10を用いた。この現像装置10では、トナー収容部に収容されているトナーが撹拌パドル15により、供給ローラ13’に運ばれる。さらに、供給ローラ13’をフレアローラ12とカウンター方向に回転させることによって、供給ローラ13’に回収ローラとしての機能も持たせている。すなわち、図10に示す現像装置では、供給と回収を兼ねた供給・回収ローラ13’を用いた構成となっている。
もちろん、このような機能集約化を図らずに、図2に示す現像装置のように供給ローラ13と回収ローラ17が独立していても良い。
【0084】
トナー供給・回収ローラ13’でフレアローラ12にトナーが供給されると、同時にトナーが摩擦帯電される。その後、トナーはフレアローラ12の回転とともに運ばれ、トナー層厚規制部材14で付着量が規制される。なお、この層厚規制部材14には絶縁性のゴムブレードを用いた。
【0085】
層厚規制部材14で付着量を規制されたトナーはホッピングしながら均一に再配置されつつ、現像領域に搬送され、感光体上の静電潜像を非接触で現像する。現像に使用されなかったトナーは、現像領域を通過して、トナー漏れ防止部材16を通過した後、供給・回収ローラ13’(回収機能と供給機能が集約されている場合(集約されていない場合は、図2に示すような回収ローラ17))で回収され、トナー収容部に一旦戻される。
【0086】
ここでトナー漏れ防止部材16について説明する。フレアローラ12上方のケーシング11の端部には、ケーシング内のトナーが現像装置10の外部へ漏れ出すのを防ぐためのトナー漏れ防止部材16としてシール部材が設けられている。このシール部材は、導電性を有する弾性材で薄板状に形成されており、その一方の端部はケーシング11に固着され、もう一方の端部はフレアローラ12の表面に対して弾性的に当接されている。
【0087】
次に、上記の実施例1で用いたフレアローラ12の2相の電極への印加バイアスと、トナー漏れ防止部材16に印加するバイアスについて説明する。
本実施例では、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(b)に示すような矩形波を用いた。すなわち、A相、B相の2相の電極31A,31Bとも平均値V0が−200[V]で、周波数fが1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧Vppが300[V]の矩形波バイアス(パルス電圧)である。
また、トナー漏れ防止部材16にはA相またはB相の電極の1相に印加したのと同じ直流(DC)バイアスV0として−200[V]を印加した。
【0088】
本実施例のように、矩形波バイアスのDutyが50%の場合は、フレアローラ12に印加するバイアスの平均値Vaveは矩形波バイアスのオフセット電圧V0に一致する。
一方、Dutyが50%でないなどの理由によって、フレアローラ12に印加するバイアスの平均値Vaveとオフセット電圧V0が一致しない場合には、トナー漏れ防止部材16に印加するバイアスはフレアローラ12に印加するバイアスの平均値Vaveを印加してトナー漏れ防止部材16を同電位にする。
【0089】
このような条件のもとで、図2に示す構成の現像装置10でフレアローラ12を連続回転させても、層厚規制部材14通過後のトナー付着量と帯電量は一定であった。さらに図8に示すように、クラウド電位が一定であった。なお、クラウド電位とは、フレアローラ12の上にトナーが付着した状態で、かつフレアバイアス印加状態でホッピング中の表面電位のことである。クラウド電位が一定であると、感光体上の潜像電位との電位差が一定に保たれるので、画像濃度は安定しており地汚れも発生せず、良好な画像形成を行うことができた。
【0090】
[比較例]
上記の実施例1と同様の構成の現像装置で、フレアローラ12に印加するバイアスは実施例1と同じにして、トナー漏れ防止部材に、−400[V]印加したところ、図9に示すように電位はローラ回転後、20秒程度まで下がり続けた。このとき現像領域で適正な現像ポテンシャルが維持されないため、画像濃度が濃くなり、地汚れも発生する不具合が生じた。
また、実質的に供給ポテンシャルが初期より小さくなってしまっているため、十分な量のトナーがフレアローラ12に供給されない問題も発生した。
これらの結果をまとめると、フレアローラ回転開始直後は、フレアローラ表面電位が0[V]であるため、狙い通りの画像が得られるが、表面電位がマイナス側に大きくなると、感光体上の潜像電位との差である現像ポテンシャルが大きくなり、画像濃度が濃く不具合が生じる。
【0091】
[実施例2]
次に実施例2として、現像装置10の構成は上記の実施例1と同様の構成とし、フレアローラ12に印加するバイアスは、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(a)に示すような矩形波を用いた。すなわち、A相とB相のうちの1相は平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧Vppが600[V]の矩形波(パルス電圧)であり、もう1相はDCバイアスV0として−300[V]を印加した。このように2相ある電極31A,31Bのうちの一方の電極には常に一定のDC電圧を印加しておき、もう一方の電極に矩形波電圧(パルス電圧)を印加しても、同様にトナーをホッピングさせることが可能である。
このようにフレアローラ12に印加する一方のバイアスをDCバイアスにすることで、パルスを生成する電源系統を1つ減らせ、電源の低コスト化が可能である。
【0092】
また、トナー漏れ防止部材16にはV0のDCバイアスを印加した。このようにしてトナー漏れ防止部材16に印加するバイアスとフレアローラ12に印加するバイアスの平均値を同電位とすることによって、フレアローラ表面電位を常に一定に維持することができ、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0093】
[実施例3]
次に実施例3として、現像装置10の構成は上記の実施例1と同様の構成とし、フレアローラ12に印加するバイアスは、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(b)に示す矩形波を用いた。すなわち、A相、B相の2相の電極とも、平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧Vppが300[V]の互いに逆位相の矩形波バイアス(パルス電圧)である。また、トナー漏れ防止部材16には、平均値V0が−300[V]、周波数f2が500[Hz]、ピーク・ツー・ピーク電圧V2が400「V」の矩形波バイアス(パルス電圧)を印加した。
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0094】
[実施例4]
次に実施例4として、実施例3と同じ駆動波形をフレアローラ12のバイアスとして印加し、トナー漏れ防止部材16には、フレアローラ印加バイアスのA相もしくはB相に印加する矩形波バイアスと同一の波形を印加した。
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0095】
[実施例5]
次に実施例5として、現像装置10の構成は上記の実施例1と同様の構成とし、フレアローラ12に印加するバイアスは、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(a)に示す矩形波を用いた。すなわち、A相、B相のうちの1相は平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧Vppが600[V]の矩形波(パルス電圧)であり、もう1相はDCバイアスV0として−300[V]を印加した。このときのトナー漏れ防止部材16に印加するバイアスは、フレアローラ12の片側1相に印加した矩形波バイアスと同一の矩形波バイアスとした。
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0096】
[実施例6]
次に、本発明に係る現像装置のさらに別の実施例を説明する。
図15は本発明に係る現像装置のさらに別の実施例を示す概略構成図であり、トナー漏れ防止部材16として、円筒形状の弾性部材を用い、この円筒形状の弾性部材をフレアローラ12に当接させたものである。
【0097】
また、フレアローラ12の回転方向は、上述の実施例1で述べた方向(反時計回り)に限定されるものではなく、例えば一例として図16に示すように、図2や図10の現像装置とは逆方向に回転するタイプであっても構わないことは言うまでもない。
【0098】
次に、上記の実施例1〜5で述べた現像装置の実験結果のように、トナー漏れ防止部材16に適切な電圧を印加しないとフレアローラ12の表面電位が変動してしまうメカニズムについて説明しておく。
本発明者らが鋭意研究した結果、フレアローラ表面電位の変動要因には以下の3つがあることを発見した。
【0099】
(1)コンデンサーモデルによる電荷の蓄積。
上記の実施例で述べた構成の現像装置(例えば図2に示す構成の現像装置)10において、トナーの介在をなくし、供給ローラ13とフレアローラ12の影響のみを抽出するために、供給ローラ13とフレアローラ12のみを空回転させ、フレアローラ12の表面電位の時間推移を測定した結果を図11に示す。この挙動は図12に示すフレアローラのコンデンサモデルの、RC直列回路のコンデンサーCに蓄積される電荷が生み出すコンデンサーの表面電位に他ならない。
すなわち、供給ローラ13とフレアローラ12の表面電位の電位差がなくなるまでフレアローラ12の表面保護層34に電荷が蓄積し、電位が飽和する。
供給バイアス、フレアバイアスの電源をオフにして放置すれば電荷は徐々に失われるが、表面保護層は電極間の絶縁性を出すために抵抗が高いため、いったん蓄えた電荷をなかなか自然にはリークしない。したがって、除電機能を設けずにシステムを成立させるのは難しいと考えられる。
【0100】
(2)フレアローラと供給ローラの摩擦帯電。
供給ローラ13とフレアローラ12の表面電位の影響のうち、さらに、供給ローラ13に印加するバイアス、フレアローラ12に印加するバイアスの影響を取り除き、両者の摩擦帯電特性のみを調べるために、供給バイアスと、A相とB相の2相のフレアローラ印加バイアスのすべてをグランド接続して、同様にフレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を図13に示す。この挙動から、フレアローラ12と供給ローラ13の摩擦帯電のみでフレアローラが−40[V]程度帯電することが分かった。この値、収束速度は、供給ローラ13とフレアローラ12の表面保護層の材料の帯電列の関係や、供給ローラ13の喰い込み量なども影響する。
【0101】
(3)トナーのマイナス電荷を打ち消す電荷が誘起される(図14参照)。
供給ローラ13から供給されたトナーがフレアローラ12上でホッピングしていると、逆チャージのプラス電荷がフレアローラ12の表面保護層に誘起され、トナーを除去した後のフレアローラ表面電位を測定すると、図14に示すようにプラス側の表面電位を持つ。トナーの帯電量が高いほど、この値は顕著となる。
【0102】
上記の(1)のモデルだけならば、トナーの供給・回収を機械的な掻き取りのみに頼るようにして電界を使わなければ、コンデンサーモデルによる表面電位の変動は避けることができる。しかし、同時に上記の(2)や(3)のモデルで表面電位が帯電しているので、フレアローラ12の表面電位を常に一定にして感光体との対向領域へトナーを運ぶためには、いずれにしてもフレアローラ表面の除電が必要であるといえる。
【0103】
このため、本発明では、電圧印加手段によりトナー漏れ防止部材16に適切な電圧を印加して、トナー漏れ防止部材16に印加するバイアスとフレアローラ12の表面電位を同電位にしており、これにより、トナー担持体への注入帯電を防止することができ、フレアローラ12の表面電位を一定にすることができる。従って、感光体上の静電潜像の画像部、非画像部との電位差を一定にすることができ、画像濃度ムラのない良好な画像を得ることができる。
【0104】
さて、図1に示した実施例では、1つの潜像担持体(ベルト状の感光体)2に対して4つの現像装置10M,10C,10Y,10Kを配設してカラー画像を形成する画像形成装置の一例を示したが、本発明のフレア現像方式の現像装置(例えば図2、図10、図15.図16のいずれかの構成の現像装置)は、電子写真プロセスを利用して画像形成を行う種々の構成の画像形成装置や、その画像形成装置に用いるプロセスカートリッジに適用することができる。以下、その実施例について説明する。
【0105】
[実施例7]
図17は電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジの一例を示す概略断面図であり、このプロセスカートリッジ40は、潜像担持体であるドラム状の感光体2’と帯電装置8と本発明のフレア現像方式の現像装置10とクリーニング装置9をカートリッジ41内に一体に保持している。
このプロセスカートリッジ40を画像形成部として、図示しない光書込装置、転写装置、定着装置、給紙装置等を設ければ、単色の画像形成装置を構成することができる。
また、このプロセスカートリッジ40は、画像形成装置に対して着脱可能に設けられているので、容易に交換やリサイクルが可能であり、画像形成装置のメンテンナンス性の向上や、省資源化に寄与することができる。
【0106】
[実施例8]
次に、図18は、図17に示したプロセスカートリッジ40を複数備え、単色、多色またはフルカラー画像を形成するカラー画像形成装置の構成例を示す概略構成図である。
このカラー画像形成装置は、画像形成部(プリンタ部)100と画像読取部(スキャナ部)110と原稿自動給紙装置(ADF)120を備え、デジタル複写機、プリンタ、ファクシミリ等の機能を有する複合機の構成例であり、画像形成部(プリンタ部)100では、画像読取部(スキャナ部)110で読取った原稿の画像情報や、装置外部のパーソナルコンピュータ等からLANを通じて入力された画像情報、あるいは、通信回線を介して外部から送信されて来た画像情報等に応じて画像形成を行なう。
【0107】
画像形成部(プリンタ部)100の略中央部には、駆動ローラ52と従動ローラ54と二次転写対向ローラ53とに張架された中間転写ベルト51と、一次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kと、二次転写ローラ56を有する転写装置50が配設されている。この転写装置50の中間転写ベルト51の上面側には、図17に示す構成の4つのプロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kが並設されている。プロセスカートリッジ40Yは、帯電装置8による帯電、光書込装置45からの光ビームの露光、現像装置10による現像の電子写真プロセスにより感光体上にイエロー色のトナー像を形成し、プロセスカートリッジ40Mは同様の電子写真プロセスにより感光体上にマゼンタ色のトナー像を形成し、プロセスカートリッジ40Cは同様の電子写真プロセスにより感光体上にシアン色のトナー像を形成し、プロセスカートリッジ40Kは同様の電子写真プロセスにより感光体上にブラック色のトナー像を形成する。この各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kの感光体に形成された各色のトナー像は、一次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kに所定の転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト51上に順次重ね合わせて転写される。
【0108】
転写装置50の下方には、記録媒体である記録紙Pを収納した多段の給紙カセット60A,60Bが装着されており、上記の各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kでの画像形成動作にタイミングを合せて、給紙カセット60A,60Bのいずれか一方(あるいは、装置側面に設けた手差し給紙トレイ60C)から記録紙Pが給紙ローラ61と分離ローラ62により1枚づつ給紙され、複数の搬送ローラ63を経てレジストローラ64へ搬送される。そして、中間転写ベルト51に転写された4色重ね画像が二次転写ローラ56の位置に来るタイミングに合せて、レジストローラ64で二次転写部に記録材Pが送り出され、二次転写ローラ56で中間転写ベルト51上の重ね画像が記録紙Pに一括して転写される。画像が転写された記録紙Pは、搬送ベルト65等を経て定着装置22に搬送され、定着装置22により加熱・加圧されてトナー像が記録紙Pに定着される。定着後の記録紙Pは複数の排紙ローラ66を経て排紙トレイ67(あるいは外部の排紙装置、後処理装置等)に排紙される。また、トナー像転写後の各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kの感光体2’は、クリーニング装置9により残留トナーを清掃される。また、トナー像転写後の中間転写ベルト51の表面も、ベルトクリーニング装置54により残留トナーを清掃される。
【0109】
上記の構成のカラー画像形成装置では、各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kを選択的に駆動させることにより、単色、多色またはフルカラー画像を形成することができる。また、各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kは、画像形成装置に対して着脱可能に設けられているので、容易に交換やリサイクルが可能であり、画像形成装置のメンテンナンス性の向上や、省資源化に寄与することができ、カラー画像形成装置の保守、管理が容易である。
【0110】
なお、図18では、中間転写ベルト51に沿って4つのプロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kを並設した、中間転写方式のタンデム型カラー画像形成装置の構成例を示したが、中間転写ベルト51に代えて、記録紙Pを搬送する転写ベルトを用い、各プロセスカートリッジの感光体から記録紙に直接説トナー像を転写する構成とすれば、直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施例を示す画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例を示す現像装置の概略構成図である。
【図3】本発明の現像装置に用いられるトナー担持体の一例を示すフレアローラの概略斜視図である。
【図4】図3に示すフレアローラの電極部とバイアス印加例を示す図である。
【図5】図3に示すフレアローラの電極部の平面展開図である。
【図6】図3〜5に示すフレアローラの2相の電極に印加されるバイアスの波形の例を示す図である。
【図7】図3に示すフレアローラの製造工程の一例を示す図である。
【図8】フレアローラの回転時間とクラウド電位の関係の一例を示すグラフである。
【図9】フレアローラの回転時間とクラウド電位の関係の別の例を示すグラフである。
【図10】本発明の別の実施例を示す現像装置の概略構成図である。
【図11】現像装置の供給ローラとフレアローラのみを空回転させ、フレアローラの表面電位の時間推移を測定した結果を示すグラフである。
【図12】フレアローラのコンデンサモデルの説明図である。
【図13】供給バイアスと、A相とB相の2相のフレアローラ印加バイアスのすべてをグランド接続して、フレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を示すグラフである。
【図14】トナー吸引後のフレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を示すグラフである。
【図15】本発明のさらに別の実施例を示す現像装置の概略構成図である。
【図16】本発明のさらに別の実施例を示す現像装置の概略構成図である。
【図17】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略断面図である。
【図18】本発明の別の実施例を示す図であって、プロセスカートリッジを用いたカラー画像形成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0112】
1:ベルトユニット
2:ベルト状の感光体(潜像担持体)
2’:ドラム状の感光体(潜像担持体)
3:駆動ローラ
4:テンションローラ
5:転写上流ローラ
6:転写バックアップローラ
7M,7C,7Y,7K:現像対向ローラ
8(8M,8C,8Y,8K):帯電装置(帯電手段)
9:クリーニング装置(クリーニング手段)
10(10M,10C,10Y,10K):現像装置
11:ケーシング
12:フレアローラ(トナー担持体)
13:供給ローラ
13’:供給・回収ローラ
14:層厚規制部材
15:攪拌パドル
16:トナー漏れ防止部材
17:回収ローラ
18:フリッカー
20:レジストローラ対
21:転写ローラ
22:定着装置
31A:A相電極
31B:B相電極
32A:A相共通電極
32B:B相共通電極
33:支持基板
34:表面保護層
35A:A相パルス電源(電圧印加手段)
35B:B相パルス電源(電圧印加手段)
40(40Y,40M,40C,40K):プロセスカートリッジ
41:カートリッジ
45:光書込装置
50:転写装置
51:中間転写ベルト
55Y,55M,55C,55K:一次転写ローラ
56:二次転写ローラ
60A,60B:給紙カセット
60C:手差し給紙トレイ
61:給紙ローラ
62:分離ローラ
63:搬送ローラ
64:レジストローラ
65:搬送バルト
66:排紙ローラ
67:排紙トレイ
100:画像形成部(プリンタ部)
110:画像読取部(スキャナ部)
120:ADF
P:記録紙(記録媒体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像担持体上の静電潜像をトナーを用いて現像する現像装置と、その現像装置を備えたプロセスカートリッジ、および、前記現像装置または前記プロセスカートリッジを備えた複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等として、電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置が利用されているが、この画像形成装置に用いられる現像装置には、現像剤にトナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤を用いる2成分現像方式の現像装置や、現像剤にトナーのみを用いる1成分現像方式の現像装置などがある。
【0003】
2成分現像方式は、高速現像に非常に適しており、現在の中速や高速の画像形成装置の主流方式である。この2成分現像方式では、高画質を狙うためには、潜像担持体上の静電潜像との接触部における現像剤の状態を非常に緻密にする必要がある。そのために、現在はキャリア粒子の小径化が進んでおり、商用レベルでは30μm程度のキャリアも使われ始めている。
【0004】
1成分現像方式は、機構が小型軽量になることから、現在の低速の画像形成装置の主流方式である。この1成分現像方式では、現像ローラ上にトナー薄層を形成するために、ブレードやローラなどのトナー規制部材を現像ローラ上のトナーに当接させるが、そのときに現像ローラやトナー規制部材とトナーとの摩擦によってトナーは帯電される。現像ローラ上に薄層に形成された帯電トナー層は、現像部に運ばれて潜像担持体上の静電潜像を現像する。ここでの現像方式には大きく分けて接触型と非接触型があり、前者は現像ローラと潜像担持体とが接触するものであり、後者は現像ローラと潜像担持体とが非接触であるものである。
【0005】
上記2成分現像方式と1成分現像方式との欠点を補い合うべく、特許文献1に記載の従来技術のように、2成分現像方式と1成分現像方式とをハイブリッド化したハイブリッド化方式も幾つか提案されている。
また、高解像度の微小均一ドットを現像する方法としては、例えば特許文献2に記載の方式がある。この方式は、上記ハイブリッド化方式に対して、現像部に高周波バイアスを印加したワイヤを設置することにより、現像部でのトナーのクラウド化を行い、高解像度のドット現像性を実現するものである。
【0006】
特許文献3には、最も効率良く、且つ安定なトナークラウドを形成するために、回転ローラ上に電界カーテンを形成する方法が提案されている。
また、特許文献4には、トナー担持体の機械的な駆動をなくし、3相以上の交互電界によってトナーを静電的に搬送し現像する方法が提案されており、特許文献5には、固定搬送基板とその表面を移動するトナー担持体の組合せのような構造の現像装置が提案されている。
【0007】
さらに進行波電界による電界カーテンで現像剤を搬送する現像装置が特許文献6に記載されており、また、現像ローラの周面上にほぼ1層のキャリアをほぼ均等に吸着する複数の磁極を有する現像装置が特許文献7に記載されている。さらに特許文献8には、非磁性トナーを担持する現像剤担持体表面に、絶縁部を介して周期的な導電性電極パターンを設け、該電極に所定のバイアス電位を与えることで現像剤担持体表面近傍に電界勾配を発生せしめ、前記現像剤担持体上に前記非磁性トナーを付着搬送させる現像装置が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平3−100575号公報
【特許文献2】特開平3−113474号公報
【特許文献3】特開平3−21967号公報
【特許文献4】特開2002−341656号公報
【特許文献5】特開2004−286837号公報
【特許文献6】特開2003−15419号公報
【特許文献7】特開平9−269661号公報
【特許文献8】特開2003−84560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の2成分現像方式では、高画質化に対する要求が益々高まっており、必要とされる画素のドットサイズ自身が現状のキャリア粒子径と同等もしくはそれよりも小さいことが必要であるために、孤立ドットの再現性という意味では更にキャリア粒子を小さくする必要がある。しかし、キャリア粒子径を小さくしていくと、キャリア粒子の透磁率が低下するために、現像ローラからのキャリアの離脱が生じやすくなり、離脱したキャリア粒子が潜像担持体に付着した場合には、キャリア付着そのものによる画像欠陥が生じるだけでなく、それを起点として潜像担持体に傷をつけてしまうなどいろいろな副作用が生じる。
【0010】
このキャリア離脱を防止するために、材料面からキャリア粒子の透磁率を高くする試みや、現像ローラに内包されるマグネットの磁力を強くする試みが進められているが、低コスト化及び高画質化との兼ね合いの中で開発は困難を極めている。また、小型化の煽りを受けて、現像ローラは益々小径化の一途をたどっていることからも、キャリア離脱を完全に抑止できるような強力な磁場構成を有した現像ローラの設計が困難となっている。
【0011】
そもそも2成分現像方式は、磁気ブラシと呼ばれる2成分現像剤の穂を静電潜像に対して擦り付けるようにしてトナー像を形成するプロセスであるために、どうしても穂の不均一性によって、孤立ドットの現像性にムラが生じやすい。現像ローラと潜像担持体との間に交番電界を形成することで画質の向上は可能であるが、現像剤の穂のムラといった根本的な画像ムラを完全に消滅させることは困難である。
【0012】
1成分現像方式では、トナー規制部材により薄層化された現像ローラ上のトナー層は、現像ローラ上に十分に圧接されてしまっているために、現像部での電界に対するトナー応答性が非常に悪い。よって、通常は高画質を得るために、現像ローラと潜像担持体との間に強力な交番電場を形成するのが主流であるが、この交番電場の形成をもってしても静電潜像に対して一定量のトナーを安定して現像することは困難であり、高解像度の微小ドットを均一に現像することは難しい。また、この1成分現像方式は、現像ローラ上でのトナー薄層形成時にトナー規制部材によりトナーに対して大きなストレスをかけてしまうため、現像装置内を循環するトナーの劣化が早い。トナーの劣化につれて、現像ローラへのトナー薄層形成の工程でもムラなどが生じやすくなり、1成分現像方式は一般には高速や高耐久の画像形成装置としては向かない。
【0013】
前述の特許文献1等に記載のハイブリッド化方式では、現像装置そのものの大きさや部品点数は増えてしまうものの、幾つかの課題は克服される。しかし、現像部においてはやはり1成分現像方式と同様の問題があり、つまり高解像度の微小均一ドットを現像することには難が残る。
【0014】
前述の特許文献2に記載の方式は、高安定且つ高画質な現像が実現できるものと考えられるが、現像装置の構成が複雑になる。
また、特許文献3に記載の方法は、小型且つ高画質の現像を得るには非常に優れたものと解釈できるが、本発明者らが鋭意研究した結果、理想的な高画質を得るためには、形成する電界カーテンや現像などの条件を限定しなくてはならないことが発見された。すなわち、適正な条件から外れた条件で作像を行ってしまうと、全く効果が得られないばかりか、かえって粗悪な画質を提供してしまうことになる。
【0015】
ところで、潜像担持体に第一のトナー像が形成され、その上に順に第二のトナー像、第三のトナー像を形成していくような作像プロセスにおいては、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱さないような現像方式でなくてはならない。非接触一成分現像方式や、特許文献2に記載のトナークラウド現像方式を用いることで、潜像担持体上に順に各色トナー像を形成していくことは可能であるが、いずれの方式も、潜像担持体と現像ローラとの間に交番電界が形成されてしまうために、潜像担持体上に先に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまうという問題がある。これによって、潜像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。これらは高画質画像を得るには致命的であり、この問題を解決するためには潜像担持体と現像ローラとの間に交番電界を形成しない方法で現像する必要がある。
【0016】
このような現像を実現できる方法としては、先に挙げた特許文献3に記載のクラウド現像方式などが有効と考えられるが、これに関しては先にも述べた通り、適当な条件の元で利用しないと全く効果がない。
また、特許文献4に記載の方式などのように、トナー担持体の機械的な駆動をなくし、3相以上の交互電界によってトナーを静電的に搬送し現像する方法も有効と考えられる。しかし、この方法によれば、何かのきっかけで静電搬送できなくなったトナーを起点として、搬送基板上にトナーが堆積してしまい、結果として機能しなくなる問題を抱えてしまう。このような問題を解決すべく、例えば特許文献5に記載の方式のように、固定搬送基板とその表面を移動するトナー担持体の組合せのような構造も提案されているが、機構が非常に複雑になってしまう。
【0017】
以上のような従来技術の問題を解決する方式として、本出願人は先に、2相の電極間に時間周期的に変化する電界を印加してトナーをトナー担持体から飛翔(ホッピング)させて、前記トナー担持体を回転駆動させて潜像担持体との対向領域に運んで現像させる方式の現像装置や現像方法を提案している(特願2005−299082、特願2006−018892、特願2006−002028)。
このように従来の1成分現像ローラの代わりに、内部に2相の微細ピッチの電極群を埋め込んだローラ(以後、フレアローラと呼ぶ)を用いて、そのフレアローラ表面でトナーをホッピングさせる方式では、電極間の上に絶縁性の表面保護層を設けている。
【0018】
ところが、本発明者らが鋭意研究した結果、このようなフレアローラを回転駆動させると、トナー層厚規制部材とフレアローラの摩擦帯電や、ホッピングするトナー自身とフレアローラとの摩擦帯電、およびトナーを供給する供給ローラに印加するバイアスとフレアローラに印加するバイアスの平均値との電位差によるフレアローラ表面への電荷注入等の理由により、フレアローラの表面電位が大きく変動してしまうことを発見した。ひいては潜像担持体との対向部で、フレアローラ表面と潜像担持体の画像部、もしくは非画像部との電位差が変動し、画像の濃度ムラや、地汚れの原因となってしまう。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、さまざまな原因によるトナー担持体(フレアローラ)の表面電位の変動を抑制するために、本発明では、トナー担持体表面の移動方向で現像領域下流から規制部材上流の間に設けたトナー漏れ防止部材に所定の電圧を印加することによってトナー担持体(フレアローラ)の表面電位を一定に維持し、画像の濃度ムラや、地汚れのない安定した現像ができる現像装置を提供することを目的とし、さらには、その現像装置を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の手段は、潜像担持体と対向して配置され、内部に所定の間隔で並べられた複数の電極を有するトナー担持体と、前記複数の電極間の電界が時間的に変化するように該電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段を備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体上のトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置において、前記トナー担持体上のトナー量を規制する規制部材と、前記トナー担持体表面の移動方向で現像領域下流から規制部材上流の間の位置に設けられた導電性のトナー漏れ防止部材とを備え、前記トナー漏れ防止部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、該電圧印加手段により前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスの平均値が、前記トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の手段は、第1の手段の現像装置において、前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加される電極と第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加される電極が交互に配置されて第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群(A相またはB相の電極群)に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群(B相またはA相の電極群)に印加するバイアスは逆位相の時間的に変化する波形であり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは直流(DC)バイアスであることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の手段は、第1の手段の現像装置において、前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加される電極と第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加される電極が交互に配置されて第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群(A相またはB相の電極群)に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群(B相またはA相の電極群)に印加するバイアスは直流(DC)バイアスであり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは直流(DC)バイアスであることを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の手段は、第1の手段の現像装置において、前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加される電極と第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加される電極が交互に配置されて第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群(A相またはB相の電極群)に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群(B相またはA相の電極群)に印加するバイアスは逆位相の時間的に変化する波形であり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは時間的に変化する波形であることを特徴とする。
また、本発明の第5の手段は、第4の手段の現像装置において、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスが、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスと同一であることを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の手段は、第1の手段の現像装置において、前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加される電極と第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加される電極が交互に配置されて第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群(A相またはB相の電極群)に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群(B相またはA相の電極群)に印加するバイアスは直流(DC)バイアスであり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加する時間的に変化する波形と同一であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第7の手段は、第1〜第6いずれか1つの手段の現像装置において、前記トナー漏れ防止部材が、導電性の薄板状の弾性シール部材であることを特徴とする。
また、本発明の第8の手段は、第1〜第6いずれか1つの手段の現像装置において、前記トナー漏れ防止部材が、導電性の円筒形状の弾性部材であることを特徴とする。
【0026】
本発明の第9の手段は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体の潜像を現像する現像手段とを備えた画像形成装置において、前記現像手段として、第1〜第8のいずれか1つの手段の現像装置を用いたことを特徴とする。
また、本発明の第10の手段は、第9の手段の画像形成装置において、前記潜像担持体に対して前記現像装置を複数備え、該複数の現像装置はそれぞれ色の異なるトナーで前記潜像担持体上の潜像を順次現像し、前記潜像担持体上で複数回の色重ねを行うことを特徴とする。
【0027】
本発明の第11の手段は、電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置に装備されるプロセスカートリッジであって、潜像を担持する潜像担持体、帯電手段、クリーニング手段のうちの少なくとも一つと、第1〜第8のいずれか1つの手段の現像装置を一体に保持し、画像形成装置本体に対して着脱可能に設けられたことを特徴とする。
また、本発明の第12の手段は、電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置であって、第11の手段のプロセスカートリッジを一つまたは複数備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
第1の手段の現像装置では、電圧印加手段によりトナー漏れ防止部材に印加するバイアスとトナー担持体の表面電位が同電位であることにより、トナー担持体への注入帯電を防止することができる。
また、第2の手段の現像装置では、第1の手段の効果に加え、A相の電極群と、B相の電極群に逆位相の時間的に変化する波形のバイアスを印加することで、トナー担持体の印加バイアスの平均値が常に一定に保たれる。
また、第3の手段の現像装置では、第1の手段の効果に加え、時間的に変化する波形を出力する電源が一系統で済むため、電源の低コスト化が図れる。
【0029】
第4の手段の現像装置では、第1の手段の効果に加え、A相の電極群と、B相の電極群に逆位相の矩形波バイアスを印加することで、トナー担持体の印加バイアスの平均値が常に一定に保たれ、かつトナー漏れ防止部材にも時間的に変化する波形を印加することで、トナー担持体の表面電位を安定化できる。
また、第5の手段の現像装置では、第4の手段の効果に加え、A相の電極群と、B相の電極群に逆位相の矩形波バイアスを印加することで、トナー担持体の印加バイアスの平均値が常に一定に保たれ、かつトナー漏れ防止部材に印加する電圧印加手段に新たな電源が不要のため、電源が2チャンネルで済み、電源の低コスト化が図れる。
また、第6の手段の現像装置では、第1の手段の効果に加え、時間的に変化する波形の出力が1系統で済むため、電源の低コスト化が図れる。
【0030】
第7の手段の現像装置では、第1〜第6いずれか1つの手段の効果に加え、導電性で薄板状の弾性シール部材を用いることによって簡易な構成でトナーの現像装置外部へのトナーの漏れを防止しつつ、トナー担持体の表面電位を安定化できる。
また、第8の手段の現像装置では、第1〜第6いずれか1つの手段の効果に加え、導電性で円筒形状の弾性部材を用いることによって、トナーの現像装置外部へのトナーの漏れを防止しつつ、トナー担持体の表面電位を安定化できる。
【0031】
第9の手段の画像形成装置では、現像手段として、第1〜第8のいずれか1つの手段の現像装置を用いたことにより、潜像担持体と非接触の現像が可能となる。よって接触現像での潜像担持体の劣化がなくなり、高耐久化が可能となる。また、表面電位制御手段を有し、トナー担持体の表面電位を常に一定に維持することが可能な現像装置を用いて画像形成を行うことができるので、濃度ムラや地汚れのない良好な画像を得ることができる。
【0032】
第10の手段の画像形成装置では、第9の手段の構成および効果に加え、潜像担持体に対して現像装置を複数備え、該複数の現像装置はそれぞれ色の異なるトナーで前記潜像担持体上の潜像を順次現像し、前記潜像担持体上で複数回の色重ねを行うことにより、色ずれのない高画質な多色またはカラー画像を得ることができる。すなわち、第10の手段の画像形成装置では、非接触の現像で、かつ静電潜像近傍では直流電界であるため、潜像担持体上での色重ねが可能であり、簡易な構成でフルカラー画像の形成が可能となる。また、潜像担持体上で色重ねができるため、色ずれのない高画質なカラー画像を得ることができる。
【0033】
第11の手段のプロセスカートリッジでは、潜像担持体、帯電手段、クリーニング手段のうちの少なくとも一つと、第1〜第8のいずれか1つの手段の現像装置を一体に保持したことにより、安定した良好な画像形成を行うことができるプロセスカートリッジを提供することができる。また、このプロセスカートリッジは、画像形成装置に対して着脱可能に設けられているので、容易に交換やリサイクルが可能になり、画像形成装置のメンテンナンス性の向上や、省資源化に寄与することができる。
【0034】
第12の手段の画像形成装置では、第11の手段のプロセスカートリッジを一つまたは複数備え、単色、多色またはフルカラー画像を形成することにより、安定した良好な単色、多色またはカラー画像を形成することができる。また、プロセスカートリッジは、着脱可能に設けられているので、容易に交換やリサイクルが可能になり、画像形成装置のメンテンナンス性の向上や、省資源化に寄与することができる。また、画像形成装置の保守や管理も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に図示した実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
図1は本発明の一実施例を示す画像形成装置の概略構成図である。この実施例では、画像形成装置はフレア現像方式の現像装置を複数用いて構成され、潜像担持体である無端ベルト状の感光体2上に各色のトナー像を重ねて形成する画像形成装置の例である。
すなわち、この画像形成装置は、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック(以下、M、C、Y、Kと記す)のトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成することができるカラープリンタの例であり、ベルトユニット1、4つの現像装置10M,10C,10Y,10K、レジストローラ対20、転写ローラ21、定着装置22、図示しない給紙カセット、給紙装置、給紙路などを備えている。
【0037】
複数のフレア現像方式の現像装置10K,10Y,10C,10Mは同一の構成であり、現像ケース11内に、トナー担持体であるフレアローラ12、フレアローラにトナーを供給する供給ローラ13、フレアローラ上のトナー層厚を規制する層厚規制部材14、トナーを攪拌する攪拌パドル15、現像ケース11からのトナー漏れを防止するトナー漏れ防止部材16等を備えている。また、現像装置の構成例としては、図2に示すように、上記の構成に加えてトナー回収用の回収ローラ17やフリッカー18を設けても良い。なお、フレア現像方式については後で詳しく説明する。
【0038】
この実施例では、ベルトユニット1は、潜像担持体たる無端ベルト状の感光体2を、水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢で張架しながら図中時計回り方向に無端移動せしめる。より詳しくは、感光体2を、駆動ローラ3、テンションローラ4、転写上流ローラ5、転写バックアップローラ6、及び4つの現像対向ローラ7M,7C,7Y,7Kによって裏面側から支えながら張架している。そして、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる駆動ローラ3の回転によって感光体2を無端移動せしめる。この感光体2における図中左側の張架面(以下、左側張架面という)は、ほぼ鉛直方向に延在する姿勢になっている。
【0039】
感光体2の左側張架面の図中左側方には、マゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),ブラック(K)用の現像装置10M,10C,10Y,10Kが鉛直方向に並ぶように配設されており、それぞれ感光体2の左側張架面に対向している。
4つの現像装置10M,10C,10Y,10Kのうち、鉛直方向の最も下側に位置するM用の現像装置10Mの更に下方には、M用の帯電装置8Mが感光体2の左側張架面に対向するように配設されている。また、M用の現像装置10Mと、C用の現像装置10Cとの間には、C用の帯電装置8Cが感光体2の左側張架面に対向するように配設されている。また、C用の現像装置10Cと、Y用の現像装置10Yとの間には、Y用の帯電装置8Yが感光体2の左側張架面に対向するように配設されている。更に、Y用の現像装置10Yと、K用の現像装置10Kとの間には、K用の帯電装置8Kが感光体2の左側張架面に対向するように配設されている。
【0040】
鉛直方向に並ぶ4つの現像装置10M,10C,10Y,10Kの図中左側方には、図示しない光書込装置が配設されている。この光書込装置は、外部の図示しないパーソナルコンピュータやスキャナから送られてくる画像情報に基づいて、図示しない4つの半導体レーザを駆動してM,C,Y,K用の4つの書込光Lm,Lc,Ly,Lkを出射する。そして、これらを図示しないポリゴンミラーによって偏向せしめながら、図示しない反射ミラーで反射させたり光学レンズに通したりすることで感光体2に対する光走査を行う。なお、かかる構成のものに代えて、LEDアレイ等によって光走査を行うものを用いてもよい。また、光走査は暗中にて行われる。
【0041】
感光体2は、自らを張架している複数の張架ローラのうち、最も下方に位置する転写バックアップローラ6と、最も上方に位置する駆動ローラ3との間では、鉛直方向下方から上方に向けてほぼ真っ直ぐに移動する。そして、駆動ローラ3に対する掛け回し箇所を通過すると、今度は相対的に鉛直方向上方から下方に向けて移動する。駆動ローラ3に対する掛け回し箇所を通過して鉛直方向下方から上方に向けて移動するようになったベルト箇所は、M用の帯電装置8Mとの対向位置を通過する際に、例えば負極性に一様帯電される。そして、M用の書込光Lmによる光走査によってM用の静電潜像を担持した後、M用の現像装置10Mとの対向位置を通過する。この際、感光体2に書き込まれたM用の静電潜像がM用の現像装置10Mによって現像されてMトナー像になる。その後、感光体2は図示しない除電器により除電されて次の色の画像形成に備える。
【0042】
次いでMトナー像が形成された感光体2は、鉛直方向下方から上方に向けての移動に伴って、C用の帯電装置8Cによって再び一様帯電せしめられた後、C用の書込光Lcによる光走査によってC用の静電潜像を担持する。このC用の静電潜像は、C用の現像装置10Cによって現像されてCトナー像となる。このとき、Cトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体2上に形成されているMトナー像の上に重ね合わせた状態で現像される。そして、その重ね合わせ箇所は、M及びCによる2次色となる。その後、感光体2は図示しない除電器により除電されて次の色の画像形成に備える。
【0043】
さらにCトナー像が形成された感光体2は、鉛直方向下方から上方に向けての移動に伴って、Y用の帯電装置8Yによって再び一様帯電せしめられた後、Y用の書込光Lyによる光走査によってY用の静電潜像を担持する。このY用の静電潜像は、Y用の現像装置10Yによって現像されてYトナー像となる。このとき、Yトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体2上に形成されているMトナー像やCトナー像の上に重ね合わせた状態で現像される。そして、その重ね合わせ箇所は、M及びYによる2次色、C及びYによる2次色、あるいはM,C及びYによる3次色となる。その後、感光体2は図示しない除電器により除電されて次の色の画像形成に備える。
【0044】
最後にYトナー像が形成された感光体2は、鉛直方向下方から上方に向けての移動に伴って、K用の帯電装置8Kによって再び一様帯電せしめられた後、K用の書込光Lkによる光走査によってK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、K用の現像装置10Kによって現像されてKトナー像となる。このようなM,C,Y,Kトナー像の重ね合わせ現像により、感光体2のおもて面(ループ外面)には、4色重ね合わせトナー像が形成され、フルカラー画像が形成される。
【0045】
感光体2における転写バックアップローラ6に対する掛け回し箇所には、転写ローラ21が表面側から当接して転写ニップを形成している。転写バックアップローラ6は接地されているのに対し、導電性の転写ローラ21には図示しないバイアス印加手段によって転写バイアスが印加されている。これにより、転写ニップを間に挟んでいる転写バックアップローラ6と転写ローラ21との間には、感光体2上のトナー像を転写バックアップローラ6側から転写ローラ21側に静電移動させる転写電界が形成されている。
【0046】
一方、所定のタイミングで図示しない給紙カセットから図示しない給紙装置により給紙路に送り出された記録媒体(例えば記録紙)Pは、転写ニップの図中右側方に配設されたレジストローラ対20のローラ間に挟み込まれる。レジストローラ対20は、記録紙Pの先端部を挟み込むとすぐに回転駆動を一時停止する。そして、記録紙Pを感光体2上の4色重ね合わせトナー像と同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを転写ニップに送り出す。
【0047】
転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた4色重ね合わせトナー像は、ニップ圧や転写電界の作用によって感光体2から記録紙Pに一括転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0048】
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙Pは、転写ニップから定着装置22に送り込まれる。定着装置22は、例えばハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ22aと、これに圧接せしめられている加圧ローラ22bとの当接によって定着ニップを形成しており、送り込まれてきた記録紙Pをこの定着ニップ内に挟み込む。そして、定着ローラ22aによる加熱やニップ圧の作用によってフルカラー画像を記録紙Pに定着する。
【0049】
定着装置32内でフルカラー画像の定着処理が施された記録紙Pは、図示しない排紙ローラ対を経由した後、機外へと排出される。なお、転写ニップを通過した後の感光体2の表面に付着している転写残トナー等は、クリーニング手段としてのクリーニング装置9により除去される。
【0050】
以上に述べた実施例では、同一の感光体2上に4色分の書き込みを行うので、通常の4連タンデム方式と比較すると、原理的に位置ズレがほとんど発生せず、感光体上で色重ねができて位置ズレのない高画質のフルカラー画像を得ることができる。また、上記実施例の現像装置を用いた色重ねシステムは、トナー担持体(フレアローラ)12と感光体2が非接触で、かつ現像領域で交番電界がかかっていないため、次の色の現像工程が、感光体上に一度形成されたトナー像に対しては機械的にも電界的にも影響を与えないので、スキャベンジや混色などの問題が無く、高画質な作像プロセスを長期的に渡り安定して行うことができる。
【0051】
次に、フレア現像方式の現像装置とフレア現像について詳しく説明する。ここでは図2に示す構成の現像装置を例に上げて説明する。
現像装置10のケーシング11内には、トナー担持体であるフレアローラ12、フレアローラにトナーを供給する供給ローラ13、フレアローラ上のトナー層厚を規制する層厚規制部材14、トナーを攪拌する攪拌パドル15、現像ケース11からのトナー漏れを防止するトナー漏れ防止部材16、トナー回収用の回収ローラ17、フリッカー18等を備えている。
【0052】
現像装置10のケーシング11内に形成されたトナー収容部には図示しないトナーが収容されており、このトナーは、トナー収容部内で回転駆動される撹拌パドル15によって撹拌されている。トナー収容部の図中右側方には、供給ローラ13が配設されており、図中反時計回りに回転駆動されている。撹拌パドル15によってトナー収容部内から排出されるトナーは、この供給ローラ13に汲み上げられる。
供給ローラ13の図中右上には、トナー担持体であるフレアローラ12が配設されており、供給ローラ13に当接しながら図中反時計回りに回転駆動している。両ローラの当接部では、供給ローラ13上のトナーがフレアローラ12に供給される。供給ローラ13からフレアローラ12へのトナー供給効率を高める目的で、供給ローラ13には、図示しない供給バイアス電源によってトナーと同極性の供給バイアスが印加されている。
【0053】
フレアローラ12に供給されたトナーは、フレアローラ12の表面上でホッピングしながら、フレアローラ12の回転駆動に伴って図中反時計回りに回転する。そして、回転するフレアローラ12と、ケーシング11に固定されている層厚規制部材14との当接部に進入して、フレアローラ12の表面上における担持量が規制される。
【0054】
フレアローラ12は、ケーシング11に設けられた開口から周面の一部を露出させており、その露出箇所を前述の感光体2に対して所定の間隙を介して対向させている。層厚規制部材14によってフレアローラ12の表面上における担持量が規制されたトナーは、フレアローラ12の回転駆動に伴って、感光体と対向する現像領域に至る。そして、その一部が感光体上の静電潜像に付着して現像に寄与する。現像に寄与しなかったトナーは、フレアローラ12の回転駆動に伴って回収ローラ17との当接部に至り、回収ローラ17に回収される。そして、回収ローラ17に移ったトナーは、回収ローラ17の回転駆動に伴ってフリッカー18で掻き落とされ、ケーシング11内に戻る。
【0055】
図3は、フレアローラ12の一例を示す斜視図である。このフレアローラ12は、ローラ部の周面上において、ローラ軸線方向に延在しつつローラ周方向に所定のピッチで並ぶ複数の電極を有している。より詳しく説明すると、これら複数の電極は、図3〜図5に示すように、第一のバイアス(A相のバイアスとする)が印加されるA相電極31Aと、第二のバイアス(B相のバイアスとする)が印加されるB相電極31Bとがローラ周方向に交互に配置されたものであり、第一(A相)の電極群と第二(B相)の電極群を構成している。
【0056】
また、図3、図5において、フレアローラ12のローラ部における軸線方向の一端部には、A相共通電極32Aがローラ部の全周に渡って延在するように設けられており、これには複数のA相電極31Aの一端部がそれぞれ接続されている。また、ローラ部における軸線方向の他端部には、B相共通電極32Bがローラ部の全周に渡って延在するように設けられており、これには複数のB相電極31Bの他端部がそれぞれ接続されている。
【0057】
図4はフレアローラの電極部分の周方向断面の概略図であり、便宜上、図3や図5には示していなかったが、図4に示すように、支持基板33上に複数のA相電極31AやB相電極31Bが所定の間隔で配置され、その上には、無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層34が積層されており、この表面保護層34によってそれら電極とトナーとの接触が回避される。但し、図3に示したA相共通電極32AやB相共通電極32Bの上には表面保護層が設けられておらず、それら共通電極は剥き出しの状態になっている。そして、フレアローラ12の回転に伴って無端移動するA相共通電極31Aには、上記のケーシング11に固定された図示しないA相ブラシ接点部材が摺擦する。A相電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段であるA相パルス電源35Aから出力されるA相パルス電圧は、このA相ブラシ接点部材とA相共通電極32Aとを介して、各A相電極31Aに印加される。また、フレアローラ12の回転に伴って無端移動するB相共通電極31Bには、ケーシングに固定された図示しないB相ブラシ接点部材が摺擦する。B相電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段であるB相パルス電源35Bから出力されるB相パルス電圧は、このB相ブラシ接点部材とB相共通電極32Bとを介して、各B相電極31Bに印加される。
【0058】
なお、図4において各電極から伸びる線は各電極に電圧を印加するための導電線を表しており、各線の重なる部分のうち黒丸で示した部分だけが電気的に接続されており、他の部分は電気的に絶縁状態である。各電極に対しては、本体側の電源35A,35Bから2相の異なる駆動電圧が印加される。
また、A相パルス電圧が印加される複数のA相電極31Aの集合をA相電極群といい、B相パルス電圧が印加される複数のB相電極32Bの集合をB相電極群という。A相電極31AとB相電極31Bとは交互に配設されているため、複数のA相電極31Aはローラ周方向における所定位置からの並び順が何れも、奇数番目又は偶数番目となる。また、複数のB相電極31Bの並び順は、A相電極31Aの並び順が奇数番目である場合には偶数番目、A相電極31Aの並び順が偶数番目である場合には奇数番目となる。
【0059】
図5はフレアローラ電極部の平面展開図であり、これらの図からわかるようにフレアローラは、トナーをホッピングさせるための電界を発生する2相の電極群(A相電極群、B相電極群)を有し、偶数番目の電極群(A相電極群(またはB相電極群))と奇数番目の電極群(B相電極群(またはA相電極群))にそれぞれ図示しない駆動回路(図3、図4に示したA相パルス電源35A、B相パルス電源35B)から、一例としては図6(b)に示すような逆位相の駆動波形のパルス電圧が印加され、2相の電極間に時間周期的な電位差が形成される。そしてフレアローラは回転駆動され、回転軸の一方側の共通電極に奇数番電極が接続され、回転軸のもう一方側の共通電極に偶数番電極が接続されている。
【0060】
より詳しく述べると、一例として、A相電極群には、例えば図6(b)の上段に示すような所定周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す矩形波状のA相パルス電圧が印加される。これに対し、B相電極群には、例えば図6(b)の下段に示すような、立ち上がりや立ち下がりの位相がA相パルス電圧と逆位相になる矩形波状のB相パルス電圧が印加される。このようなパルス電圧が印加されると、フレアローラ12上のトナーは、A相電極31Aの真上から浮上して放物線を描くようにして隣のB相電極31Bの真上に着地した後、今度はB相電極31Bの真上から浮上して放物線を描くようにして隣のA相電極31A上に逆戻りするという、ホッピングによる往復移動を繰り返す。
【0061】
このようにしてホッピングによる往復移動を繰り返しているトナーは、フレアローラ12の回転駆動によって現像領域まで搬送される。そして、現像領域にて、その放物線状のホッピング軌跡の頂点付近で感光体2の静電潜像の近傍に位置すると、静電潜像の静電気力によって引かれながらホッピング軌跡から外れて、静電潜像に付着する。これに対し、放物線状のホッピング軌跡の頂点付近で感光体2の地肌部(一様帯電部)の近傍に位置すると、ホッピング軌跡から外れることなく下降して、フレアローラ12の表面に着地する。
【0062】
かかる構成においては、ホッピングによってフレアローラ12との吸着力が解かれた状態のトナーを現像に用いることで、従来の1成分現像方式や二成分現像方式では実現が望めなかったほどの低電位現像を実現することができる。そして、このようにフレアローラの電極間でトナーをホッピングによって往復移動させながら、フレアローラの表面移動によって現像領域まで搬送して現像を行う方式がフレア(Flare)現像方式である。
【0063】
上述した図2の現像装置10は、本発明の画像形装置に使われる現像装置の一例であり、このような構成にすることにより、供給ローラ13からフレアローラ12に供給されたトナーは、時間周期的に変化する電界に従ってホッピング運動を行う。そしてフレアローラ自体の回転駆動により、潜像担持体である感光体2との対向領域に搬送され、感光体上の潜像にトナーが電界からの力を受けて移動して現像が行われる。
【0064】
一方、現像に寄与しなかった不要なトナーはトナー漏れ防止部材16を通過して、回収ローラ17との対向領域へ運ばれてくる。フレアローラ12上のトナーはホッピングしているため、フレアローラ12とトナーの付着力は非常に低く、回収ローラ17で容易に回収される。そして供給ローラ13との対向領域では、再び新しいトナーがフレアローラ12に供給される。これを繰り返すことによって、フレアローラ上には常に一定量のトナーがホッピングしている状態が形成される。
【0065】
なお、フレアローラ12の支持基板33としては、ガラス基板、樹脂基板あるいはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、あるいはステンレススチール(SUS)等の導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドなどの材料からなる基板等を適用できる。
また、電極は、支持基板上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等で所要の電極形状にパターニングして形成している。
【0066】
次にトナーのホッピングを行うためのフレアローラ上の電極幅L及び電極間隔R、駆動波形形状並びに表面保護層について説明する。
図4に示す搬送部材における電極幅Lと電極間隔Rはトナーのホッピング効率に大きく影響する。なお電極ピッチPは、P=R+Lで表される。
【0067】
電極と電極の間にあるトナーはほぼ水平方向の電界により、基板表面を隣接する電極まで移動する。これに対して、電極上に乗っているトナーは、少なくとも垂直方向の成分も持った初速が与えられることから、多くは基板面から離れて飛翔する。
特に、電極端面付近にあるトナーは、隣接電極を飛び越えて移動するため、電極幅Lが広い場合には、その電極上に乗っているトナーの数が多くなり、移動距離の大きいトナーが増える。ただし、電極幅Lが広すぎると、電極中央付近の電界強度が低下するためにトナーが電極に付着し、ホッピング効率が低下することになる。そこで、本発明者らは鋭意研究した結果、低電圧で効率よくトナーをホッピングさせるための適正な電極幅があることを見出した。
【0068】
また、電極間隔Rは、距離と印加電圧の関係から電極間の電界強度を決定し、間隔Rが狭い程電界強度は当然強く、ホッピングの初速が得られやすい。しかし、電極から電極へ移動するようなトナーについては、一回の移動距離が短くなり、駆動周波数を高くしないとホッピングしている時間が短くなり、着地している時間が長くなる。これについても、本発明者らは鋭意研究した結果、低電圧で効率よくトナーを搬送、ホッピングするための適正な電極間隔があることを見出した。
【0069】
さらに、電極表面を覆う表面保護層34の厚さも電極表面の電界強度に影響を与え、特に垂直方向成分の電気力線への影響が大きく、ホッピングの効率を決定することをも見出した。
すなわちフレアローラの電極幅L、電極間隔R、表面保護層34の厚さの関係を適正に設定することによって、低電圧で効率的なホッピングを行うことができる。
そこで本実施例では、図4に示す電極幅Lは、トナー平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極間隔Rもトナー平均粒径の1倍以上20倍以下としている。
【0070】
次に、表面保護層34は、例えばSiO2、BaTiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5等を適用でき、厚さは0.5〜10μm、好ましくは0.5〜3μmで形成している。
また、SiO2等の上にポリカーボネートなどの有機材料をコートしても良い。また、ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。なお、表面保護層34は、絶縁性、耐久性、フレアローラ自体の製法、及び使用するトナーとの帯電列との関係から適宜選択される。
【0071】
本発明に係る現像装置10を画像形成装置に用いる場合、フレアローラ12として、少なくともA4縦幅21cm、または横幅30cm以上の長尺、大面積にファインピッチパターンの電極を形成したローラの実用化が必要になってくる。
【0072】
ここでフレアローラの製造方法について幾つか挙げる。
まず始めに、フレキシブルな電極パターンを形成し、それを支持ドラムに巻きつけてフレアローラを形成する場合について説明する。
フレキシブルなファインピッチ薄層電極を有する基板の一例としては、ポリイミドのベースフィルム(厚さ20〜100μm)を基材(支持基板33)として、その上に蒸着法によって0.1〜0.3μmのCu、Al、Ni−Cr等を成膜する。幅30〜60cmであれば、ロール・トゥ・ロールの装置で製造可能であり、量産性が非常に高まる。共通バスラインは同時に幅1〜5mm程度の電極を形成する。
【0073】
この蒸着法の具体的手段としては、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、イオンビーム法、等の方法が可能である。例えば、スパッタ法で電極を形成する場合において、ポリイミドとの密着性を向上させるため、Cr膜を介在させても良いし、プラズマ処理やプライマー処理によっても密着性を向上させることができる。
【0074】
また、蒸着法以外の工法としては、電着法によっても薄層電極を形成することができる。この場合は、前記ポリイミドの基材上に、まず無電解メッキによって電極を形成する。具体的には、塩化Sn、塩化Pd、塩化Niに順次浸漬して下地電極を形成した後、Ni電解液中で電解メッキを行ってNi膜1〜3μmをロール・トゥ・ロールで製造することが可能である。
【0075】
そして、これらの薄膜電極にレジスト塗布、パターニング、エッチングで電極31を形成する。この場合、0.1〜3μm厚さの薄層電極であれば、フォトリソ、エッチング処理によって5μm〜数10μm幅、又は間隔のファインパターン電極を精度良く形成することができる。
【0076】
次いで、表面保護層34としてSiO2、BaTiO2、TiO2等を厚さ0.5〜2μmをスパッタ等により形成する。あるいは、表面保護層34としてPI(ポリイミド)を厚さ2〜5μmにロールコータ、その他コーティング装置により塗布し、ベークして仕上げる。PIのままで支障を生じるときには、更に最表面にSiO2、その他無機膜を0.1〜0.5μmの厚みにスパッタ等で形成すればよい。また、SiO2等の上にポリカーボネートなどの有機材料をコートしても良い。なお、ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。
このようなフレキシブル基板を構成することによって、円筒形状のドラムに貼り付けることが容易に行える。
【0077】
また、別の例としては、ポリイミドのベースフィルム(厚さ20〜100μm)を基材(支持基板33)として、その上に電極材料として、厚さ10〜20μmのCu、SUS等を使用することも可能である。この場合は、逆に金属材の上にポリイミドをロールコータにて20〜100μm塗布してベークする。その後、金属材をフォトリソ、エッチング処理によって電極12の形状にパターン化し、その電極12面上に保護層13としてポリイミドをコーティング、金属材電極の厚さ10〜20μmに応じた凹凸がある場合は平坦化して完成する。
例えば、粘度50〜10,000cps、より好ましくは100〜300cpsのポリイミド系材料、ポリウレタン系材料をスピンコートして放置することによって、材料の表面張力によって基板の凹凸がスムージングされ、フレアローラ最表面が平坦化される。
【0078】
さらに、フレキシブル基板の強度を上げた更に他の例としては、基材として厚さ20〜30μmのSUS、Al材等を用いて、その表面に絶縁層(電極と基材との間の絶縁)として5μm程度の希釈したポリイミド材をロールコータによりコーティングする。そして、このポリイミドを例えば150℃−30分のプリベーク、350℃−60分のポストベークして薄層ポリイミド膜を形成して支持基板33とする。
【0079】
その後、密着性向上のプラズマ処理やプライマー処理を施した後、薄層電極層としてNi−Crを0.1〜0.2μmの厚みに蒸着し、フォトリソ、エッチングによって前記数10μmのファインパターンの電極31を形成する。さらに、表面に前記SiO2、BaTiO2、TiO2等の表面保護層13を0.5〜1μm程度の厚みにスパッタにより形成することで、フレキシブルな電極パターンを有する支持基板33を得ることができる。また、SiO2等の上にポリカーボネートなどの有機材料をコートしても良い。なお、ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。
【0080】
フレアローラの別の製法としては、はじめから円筒ドラムに対して電極をパターニングして、その上に表面保護層を形成する方法もある。一例として図7に示すような工法が挙げられる。
この図7に示す例では、工程(1)〜(5)によりパターン電極を形成する。工程(1)〜(5)の図はフレアローラ表面を、回転軸に沿った方向に見たときの部分断面図である。
【0081】
工程(1)ではローラ12の表面を外周旋削によって平滑に仕上げる。工程(2)では溝のピッチが100μm、溝幅が50μmとなるように溝切削を行う。工程(3)では無電解ニッケルメッキを施して電極膜31を形成し、工程(4)では外周を旋削して不要な導体膜を取り除く。この時点で電極(A相電極31A、B相電極31B)が溝部分に形成される。その後、シリコーン系樹脂でコーティングする事でローラ表面を平滑にし、同時に表面保護層34とした。なお、このとき、表面保護層34の厚みは約5μm、体積抵抗率約1010Ω・cmとした。
【0082】
さらに別のフレアローラの製法としては、導電インクを用いたスクリーン印刷、インクジェットによるプリント、メッキ加工した電極の非電極部をレーザ加工で除去する等の製法も挙げられる。
なお、フレアローラの電極パターンおよび表面保護層の作成方法は上述の方法に限定されるものではなく、電極材料としては銀、銅などを使用しても良い。
【0083】
次にその他の実験条件について説明する。ここでは現像装置として、図10に示す構成の現像装置10を用いた。この現像装置10では、トナー収容部に収容されているトナーが撹拌パドル15により、供給ローラ13’に運ばれる。さらに、供給ローラ13’をフレアローラ12とカウンター方向に回転させることによって、供給ローラ13’に回収ローラとしての機能も持たせている。すなわち、図10に示す現像装置では、供給と回収を兼ねた供給・回収ローラ13’を用いた構成となっている。
もちろん、このような機能集約化を図らずに、図2に示す現像装置のように供給ローラ13と回収ローラ17が独立していても良い。
【0084】
トナー供給・回収ローラ13’でフレアローラ12にトナーが供給されると、同時にトナーが摩擦帯電される。その後、トナーはフレアローラ12の回転とともに運ばれ、トナー層厚規制部材14で付着量が規制される。なお、この層厚規制部材14には絶縁性のゴムブレードを用いた。
【0085】
層厚規制部材14で付着量を規制されたトナーはホッピングしながら均一に再配置されつつ、現像領域に搬送され、感光体上の静電潜像を非接触で現像する。現像に使用されなかったトナーは、現像領域を通過して、トナー漏れ防止部材16を通過した後、供給・回収ローラ13’(回収機能と供給機能が集約されている場合(集約されていない場合は、図2に示すような回収ローラ17))で回収され、トナー収容部に一旦戻される。
【0086】
ここでトナー漏れ防止部材16について説明する。フレアローラ12上方のケーシング11の端部には、ケーシング内のトナーが現像装置10の外部へ漏れ出すのを防ぐためのトナー漏れ防止部材16としてシール部材が設けられている。このシール部材は、導電性を有する弾性材で薄板状に形成されており、その一方の端部はケーシング11に固着され、もう一方の端部はフレアローラ12の表面に対して弾性的に当接されている。
【0087】
次に、上記の実施例1で用いたフレアローラ12の2相の電極への印加バイアスと、トナー漏れ防止部材16に印加するバイアスについて説明する。
本実施例では、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(b)に示すような矩形波を用いた。すなわち、A相、B相の2相の電極31A,31Bとも平均値V0が−200[V]で、周波数fが1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧Vppが300[V]の矩形波バイアス(パルス電圧)である。
また、トナー漏れ防止部材16にはA相またはB相の電極の1相に印加したのと同じ直流(DC)バイアスV0として−200[V]を印加した。
【0088】
本実施例のように、矩形波バイアスのDutyが50%の場合は、フレアローラ12に印加するバイアスの平均値Vaveは矩形波バイアスのオフセット電圧V0に一致する。
一方、Dutyが50%でないなどの理由によって、フレアローラ12に印加するバイアスの平均値Vaveとオフセット電圧V0が一致しない場合には、トナー漏れ防止部材16に印加するバイアスはフレアローラ12に印加するバイアスの平均値Vaveを印加してトナー漏れ防止部材16を同電位にする。
【0089】
このような条件のもとで、図2に示す構成の現像装置10でフレアローラ12を連続回転させても、層厚規制部材14通過後のトナー付着量と帯電量は一定であった。さらに図8に示すように、クラウド電位が一定であった。なお、クラウド電位とは、フレアローラ12の上にトナーが付着した状態で、かつフレアバイアス印加状態でホッピング中の表面電位のことである。クラウド電位が一定であると、感光体上の潜像電位との電位差が一定に保たれるので、画像濃度は安定しており地汚れも発生せず、良好な画像形成を行うことができた。
【0090】
[比較例]
上記の実施例1と同様の構成の現像装置で、フレアローラ12に印加するバイアスは実施例1と同じにして、トナー漏れ防止部材に、−400[V]印加したところ、図9に示すように電位はローラ回転後、20秒程度まで下がり続けた。このとき現像領域で適正な現像ポテンシャルが維持されないため、画像濃度が濃くなり、地汚れも発生する不具合が生じた。
また、実質的に供給ポテンシャルが初期より小さくなってしまっているため、十分な量のトナーがフレアローラ12に供給されない問題も発生した。
これらの結果をまとめると、フレアローラ回転開始直後は、フレアローラ表面電位が0[V]であるため、狙い通りの画像が得られるが、表面電位がマイナス側に大きくなると、感光体上の潜像電位との差である現像ポテンシャルが大きくなり、画像濃度が濃く不具合が生じる。
【0091】
[実施例2]
次に実施例2として、現像装置10の構成は上記の実施例1と同様の構成とし、フレアローラ12に印加するバイアスは、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(a)に示すような矩形波を用いた。すなわち、A相とB相のうちの1相は平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧Vppが600[V]の矩形波(パルス電圧)であり、もう1相はDCバイアスV0として−300[V]を印加した。このように2相ある電極31A,31Bのうちの一方の電極には常に一定のDC電圧を印加しておき、もう一方の電極に矩形波電圧(パルス電圧)を印加しても、同様にトナーをホッピングさせることが可能である。
このようにフレアローラ12に印加する一方のバイアスをDCバイアスにすることで、パルスを生成する電源系統を1つ減らせ、電源の低コスト化が可能である。
【0092】
また、トナー漏れ防止部材16にはV0のDCバイアスを印加した。このようにしてトナー漏れ防止部材16に印加するバイアスとフレアローラ12に印加するバイアスの平均値を同電位とすることによって、フレアローラ表面電位を常に一定に維持することができ、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0093】
[実施例3]
次に実施例3として、現像装置10の構成は上記の実施例1と同様の構成とし、フレアローラ12に印加するバイアスは、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(b)に示す矩形波を用いた。すなわち、A相、B相の2相の電極とも、平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧Vppが300[V]の互いに逆位相の矩形波バイアス(パルス電圧)である。また、トナー漏れ防止部材16には、平均値V0が−300[V]、周波数f2が500[Hz]、ピーク・ツー・ピーク電圧V2が400「V」の矩形波バイアス(パルス電圧)を印加した。
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0094】
[実施例4]
次に実施例4として、実施例3と同じ駆動波形をフレアローラ12のバイアスとして印加し、トナー漏れ防止部材16には、フレアローラ印加バイアスのA相もしくはB相に印加する矩形波バイアスと同一の波形を印加した。
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0095】
[実施例5]
次に実施例5として、現像装置10の構成は上記の実施例1と同様の構成とし、フレアローラ12に印加するバイアスは、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(a)に示す矩形波を用いた。すなわち、A相、B相のうちの1相は平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧Vppが600[V]の矩形波(パルス電圧)であり、もう1相はDCバイアスV0として−300[V]を印加した。このときのトナー漏れ防止部材16に印加するバイアスは、フレアローラ12の片側1相に印加した矩形波バイアスと同一の矩形波バイアスとした。
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0096】
[実施例6]
次に、本発明に係る現像装置のさらに別の実施例を説明する。
図15は本発明に係る現像装置のさらに別の実施例を示す概略構成図であり、トナー漏れ防止部材16として、円筒形状の弾性部材を用い、この円筒形状の弾性部材をフレアローラ12に当接させたものである。
【0097】
また、フレアローラ12の回転方向は、上述の実施例1で述べた方向(反時計回り)に限定されるものではなく、例えば一例として図16に示すように、図2や図10の現像装置とは逆方向に回転するタイプであっても構わないことは言うまでもない。
【0098】
次に、上記の実施例1〜5で述べた現像装置の実験結果のように、トナー漏れ防止部材16に適切な電圧を印加しないとフレアローラ12の表面電位が変動してしまうメカニズムについて説明しておく。
本発明者らが鋭意研究した結果、フレアローラ表面電位の変動要因には以下の3つがあることを発見した。
【0099】
(1)コンデンサーモデルによる電荷の蓄積。
上記の実施例で述べた構成の現像装置(例えば図2に示す構成の現像装置)10において、トナーの介在をなくし、供給ローラ13とフレアローラ12の影響のみを抽出するために、供給ローラ13とフレアローラ12のみを空回転させ、フレアローラ12の表面電位の時間推移を測定した結果を図11に示す。この挙動は図12に示すフレアローラのコンデンサモデルの、RC直列回路のコンデンサーCに蓄積される電荷が生み出すコンデンサーの表面電位に他ならない。
すなわち、供給ローラ13とフレアローラ12の表面電位の電位差がなくなるまでフレアローラ12の表面保護層34に電荷が蓄積し、電位が飽和する。
供給バイアス、フレアバイアスの電源をオフにして放置すれば電荷は徐々に失われるが、表面保護層は電極間の絶縁性を出すために抵抗が高いため、いったん蓄えた電荷をなかなか自然にはリークしない。したがって、除電機能を設けずにシステムを成立させるのは難しいと考えられる。
【0100】
(2)フレアローラと供給ローラの摩擦帯電。
供給ローラ13とフレアローラ12の表面電位の影響のうち、さらに、供給ローラ13に印加するバイアス、フレアローラ12に印加するバイアスの影響を取り除き、両者の摩擦帯電特性のみを調べるために、供給バイアスと、A相とB相の2相のフレアローラ印加バイアスのすべてをグランド接続して、同様にフレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を図13に示す。この挙動から、フレアローラ12と供給ローラ13の摩擦帯電のみでフレアローラが−40[V]程度帯電することが分かった。この値、収束速度は、供給ローラ13とフレアローラ12の表面保護層の材料の帯電列の関係や、供給ローラ13の喰い込み量なども影響する。
【0101】
(3)トナーのマイナス電荷を打ち消す電荷が誘起される(図14参照)。
供給ローラ13から供給されたトナーがフレアローラ12上でホッピングしていると、逆チャージのプラス電荷がフレアローラ12の表面保護層に誘起され、トナーを除去した後のフレアローラ表面電位を測定すると、図14に示すようにプラス側の表面電位を持つ。トナーの帯電量が高いほど、この値は顕著となる。
【0102】
上記の(1)のモデルだけならば、トナーの供給・回収を機械的な掻き取りのみに頼るようにして電界を使わなければ、コンデンサーモデルによる表面電位の変動は避けることができる。しかし、同時に上記の(2)や(3)のモデルで表面電位が帯電しているので、フレアローラ12の表面電位を常に一定にして感光体との対向領域へトナーを運ぶためには、いずれにしてもフレアローラ表面の除電が必要であるといえる。
【0103】
このため、本発明では、電圧印加手段によりトナー漏れ防止部材16に適切な電圧を印加して、トナー漏れ防止部材16に印加するバイアスとフレアローラ12の表面電位を同電位にしており、これにより、トナー担持体への注入帯電を防止することができ、フレアローラ12の表面電位を一定にすることができる。従って、感光体上の静電潜像の画像部、非画像部との電位差を一定にすることができ、画像濃度ムラのない良好な画像を得ることができる。
【0104】
さて、図1に示した実施例では、1つの潜像担持体(ベルト状の感光体)2に対して4つの現像装置10M,10C,10Y,10Kを配設してカラー画像を形成する画像形成装置の一例を示したが、本発明のフレア現像方式の現像装置(例えば図2、図10、図15.図16のいずれかの構成の現像装置)は、電子写真プロセスを利用して画像形成を行う種々の構成の画像形成装置や、その画像形成装置に用いるプロセスカートリッジに適用することができる。以下、その実施例について説明する。
【0105】
[実施例7]
図17は電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジの一例を示す概略断面図であり、このプロセスカートリッジ40は、潜像担持体であるドラム状の感光体2’と帯電装置8と本発明のフレア現像方式の現像装置10とクリーニング装置9をカートリッジ41内に一体に保持している。
このプロセスカートリッジ40を画像形成部として、図示しない光書込装置、転写装置、定着装置、給紙装置等を設ければ、単色の画像形成装置を構成することができる。
また、このプロセスカートリッジ40は、画像形成装置に対して着脱可能に設けられているので、容易に交換やリサイクルが可能であり、画像形成装置のメンテンナンス性の向上や、省資源化に寄与することができる。
【0106】
[実施例8]
次に、図18は、図17に示したプロセスカートリッジ40を複数備え、単色、多色またはフルカラー画像を形成するカラー画像形成装置の構成例を示す概略構成図である。
このカラー画像形成装置は、画像形成部(プリンタ部)100と画像読取部(スキャナ部)110と原稿自動給紙装置(ADF)120を備え、デジタル複写機、プリンタ、ファクシミリ等の機能を有する複合機の構成例であり、画像形成部(プリンタ部)100では、画像読取部(スキャナ部)110で読取った原稿の画像情報や、装置外部のパーソナルコンピュータ等からLANを通じて入力された画像情報、あるいは、通信回線を介して外部から送信されて来た画像情報等に応じて画像形成を行なう。
【0107】
画像形成部(プリンタ部)100の略中央部には、駆動ローラ52と従動ローラ54と二次転写対向ローラ53とに張架された中間転写ベルト51と、一次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kと、二次転写ローラ56を有する転写装置50が配設されている。この転写装置50の中間転写ベルト51の上面側には、図17に示す構成の4つのプロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kが並設されている。プロセスカートリッジ40Yは、帯電装置8による帯電、光書込装置45からの光ビームの露光、現像装置10による現像の電子写真プロセスにより感光体上にイエロー色のトナー像を形成し、プロセスカートリッジ40Mは同様の電子写真プロセスにより感光体上にマゼンタ色のトナー像を形成し、プロセスカートリッジ40Cは同様の電子写真プロセスにより感光体上にシアン色のトナー像を形成し、プロセスカートリッジ40Kは同様の電子写真プロセスにより感光体上にブラック色のトナー像を形成する。この各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kの感光体に形成された各色のトナー像は、一次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kに所定の転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト51上に順次重ね合わせて転写される。
【0108】
転写装置50の下方には、記録媒体である記録紙Pを収納した多段の給紙カセット60A,60Bが装着されており、上記の各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kでの画像形成動作にタイミングを合せて、給紙カセット60A,60Bのいずれか一方(あるいは、装置側面に設けた手差し給紙トレイ60C)から記録紙Pが給紙ローラ61と分離ローラ62により1枚づつ給紙され、複数の搬送ローラ63を経てレジストローラ64へ搬送される。そして、中間転写ベルト51に転写された4色重ね画像が二次転写ローラ56の位置に来るタイミングに合せて、レジストローラ64で二次転写部に記録材Pが送り出され、二次転写ローラ56で中間転写ベルト51上の重ね画像が記録紙Pに一括して転写される。画像が転写された記録紙Pは、搬送ベルト65等を経て定着装置22に搬送され、定着装置22により加熱・加圧されてトナー像が記録紙Pに定着される。定着後の記録紙Pは複数の排紙ローラ66を経て排紙トレイ67(あるいは外部の排紙装置、後処理装置等)に排紙される。また、トナー像転写後の各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kの感光体2’は、クリーニング装置9により残留トナーを清掃される。また、トナー像転写後の中間転写ベルト51の表面も、ベルトクリーニング装置54により残留トナーを清掃される。
【0109】
上記の構成のカラー画像形成装置では、各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kを選択的に駆動させることにより、単色、多色またはフルカラー画像を形成することができる。また、各プロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kは、画像形成装置に対して着脱可能に設けられているので、容易に交換やリサイクルが可能であり、画像形成装置のメンテンナンス性の向上や、省資源化に寄与することができ、カラー画像形成装置の保守、管理が容易である。
【0110】
なお、図18では、中間転写ベルト51に沿って4つのプロセスカートリッジ40Y,40M,40C,40Kを並設した、中間転写方式のタンデム型カラー画像形成装置の構成例を示したが、中間転写ベルト51に代えて、記録紙Pを搬送する転写ベルトを用い、各プロセスカートリッジの感光体から記録紙に直接説トナー像を転写する構成とすれば、直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施例を示す画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例を示す現像装置の概略構成図である。
【図3】本発明の現像装置に用いられるトナー担持体の一例を示すフレアローラの概略斜視図である。
【図4】図3に示すフレアローラの電極部とバイアス印加例を示す図である。
【図5】図3に示すフレアローラの電極部の平面展開図である。
【図6】図3〜5に示すフレアローラの2相の電極に印加されるバイアスの波形の例を示す図である。
【図7】図3に示すフレアローラの製造工程の一例を示す図である。
【図8】フレアローラの回転時間とクラウド電位の関係の一例を示すグラフである。
【図9】フレアローラの回転時間とクラウド電位の関係の別の例を示すグラフである。
【図10】本発明の別の実施例を示す現像装置の概略構成図である。
【図11】現像装置の供給ローラとフレアローラのみを空回転させ、フレアローラの表面電位の時間推移を測定した結果を示すグラフである。
【図12】フレアローラのコンデンサモデルの説明図である。
【図13】供給バイアスと、A相とB相の2相のフレアローラ印加バイアスのすべてをグランド接続して、フレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を示すグラフである。
【図14】トナー吸引後のフレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を示すグラフである。
【図15】本発明のさらに別の実施例を示す現像装置の概略構成図である。
【図16】本発明のさらに別の実施例を示す現像装置の概略構成図である。
【図17】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略断面図である。
【図18】本発明の別の実施例を示す図であって、プロセスカートリッジを用いたカラー画像形成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0112】
1:ベルトユニット
2:ベルト状の感光体(潜像担持体)
2’:ドラム状の感光体(潜像担持体)
3:駆動ローラ
4:テンションローラ
5:転写上流ローラ
6:転写バックアップローラ
7M,7C,7Y,7K:現像対向ローラ
8(8M,8C,8Y,8K):帯電装置(帯電手段)
9:クリーニング装置(クリーニング手段)
10(10M,10C,10Y,10K):現像装置
11:ケーシング
12:フレアローラ(トナー担持体)
13:供給ローラ
13’:供給・回収ローラ
14:層厚規制部材
15:攪拌パドル
16:トナー漏れ防止部材
17:回収ローラ
18:フリッカー
20:レジストローラ対
21:転写ローラ
22:定着装置
31A:A相電極
31B:B相電極
32A:A相共通電極
32B:B相共通電極
33:支持基板
34:表面保護層
35A:A相パルス電源(電圧印加手段)
35B:B相パルス電源(電圧印加手段)
40(40Y,40M,40C,40K):プロセスカートリッジ
41:カートリッジ
45:光書込装置
50:転写装置
51:中間転写ベルト
55Y,55M,55C,55K:一次転写ローラ
56:二次転写ローラ
60A,60B:給紙カセット
60C:手差し給紙トレイ
61:給紙ローラ
62:分離ローラ
63:搬送ローラ
64:レジストローラ
65:搬送バルト
66:排紙ローラ
67:排紙トレイ
100:画像形成部(プリンタ部)
110:画像読取部(スキャナ部)
120:ADF
P:記録紙(記録媒体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と対向して配置され、内部に所定の間隔で並べられた複数の電極を有するトナー担持体と、前記複数の電極間の電界が時間的に変化するように該電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段を備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体上のトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置において、
前記トナー担持体上のトナー量を規制する規制部材と、前記トナー担持体表面の移動方向で現像領域下流から規制部材上流の間の位置に設けられた導電性のトナー漏れ防止部材とを備え、前記トナー漏れ防止部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、該電圧印加手段により前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスの平均値が、前記トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアスが印加される電極と第二のバイアスが印加される電極が交互に配置されて第一の電極群と第二の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスは逆位相の時間的に変化する波形であり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは直流バイアスであることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアスが印加される電極と第二のバイアスが印加される電極が交互に配置されて第一の電極群と第二の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスは直流バイアスであり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは直流バイアスであることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアスが印加される電極と第二のバイアスが印加される電極が交互に配置されて第一の電極群と第二の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスは逆位相の時間的に変化する波形であり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは時間的に変化する波形であることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項4記載の現像装置において、
前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスが、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスと同一であることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアスが印加される電極と第二のバイアスが印加される電極が交互に配置されて第一の電極群と第二の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスは直流バイアスであり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加する時間的に変化する波形と同一であることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の現像装置において、
前記トナー漏れ防止部材が、導電性の薄板状の弾性シール部材であることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか1項に記載の現像装置において、
前記トナー漏れ防止部材が、導電性の円筒形状の弾性部材であることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体の潜像を現像する現像手段とを備えた画像形成装置において、
前記現像手段として、請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
前記潜像担持体に対して前記現像装置を複数備え、該複数の現像装置はそれぞれ色の異なるトナーで前記潜像担持体上の潜像を順次現像し、前記潜像担持体上で複数回の色重ねを行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置に装備されるプロセスカートリッジであって、
潜像を担持する潜像担持体、帯電手段、クリーニング手段のうちの少なくとも一つと、請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像装置を一体に保持し、画像形成装置本体に対して着脱可能に設けられたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置であって、
請求項11に記載のプロセスカートリッジを一つまたは複数備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
潜像担持体と対向して配置され、内部に所定の間隔で並べられた複数の電極を有するトナー担持体と、前記複数の電極間の電界が時間的に変化するように該電極に所定のバイアスを印加する電圧印加手段を備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体上のトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置において、
前記トナー担持体上のトナー量を規制する規制部材と、前記トナー担持体表面の移動方向で現像領域下流から規制部材上流の間の位置に設けられた導電性のトナー漏れ防止部材とを備え、前記トナー漏れ防止部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、該電圧印加手段により前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスの平均値が、前記トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアスが印加される電極と第二のバイアスが印加される電極が交互に配置されて第一の電極群と第二の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスは逆位相の時間的に変化する波形であり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは直流バイアスであることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアスが印加される電極と第二のバイアスが印加される電極が交互に配置されて第一の電極群と第二の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスは直流バイアスであり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは直流バイアスであることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアスが印加される電極と第二のバイアスが印加される電極が交互に配置されて第一の電極群と第二の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスは逆位相の時間的に変化する波形であり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは時間的に変化する波形であることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項4記載の現像装置において、
前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスが、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスと同一であることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の電極として、前記トナー担持体の内部には第一のバイアスが印加される電極と第二のバイアスが印加される電極が交互に配置されて第一の電極群と第二の電極群を構成しており、前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスは時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスは直流バイアスであり、前記トナー漏れ防止部材に印加するバイアスは前記トナー担持体内部の一方の電極群に印加する時間的に変化する波形と同一であることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の現像装置において、
前記トナー漏れ防止部材が、導電性の薄板状の弾性シール部材であることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか1項に記載の現像装置において、
前記トナー漏れ防止部材が、導電性の円筒形状の弾性部材であることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体の潜像を現像する現像手段とを備えた画像形成装置において、
前記現像手段として、請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
前記潜像担持体に対して前記現像装置を複数備え、該複数の現像装置はそれぞれ色の異なるトナーで前記潜像担持体上の潜像を順次現像し、前記潜像担持体上で複数回の色重ねを行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置に装備されるプロセスカートリッジであって、
潜像を担持する潜像担持体、帯電手段、クリーニング手段のうちの少なくとも一つと、請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像装置を一体に保持し、画像形成装置本体に対して着脱可能に設けられたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置であって、
請求項11に記載のプロセスカートリッジを一つまたは複数備えていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−25431(P2009−25431A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186544(P2007−186544)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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