説明

現像装置およびこれを備えた画像形成装置

【課題】現像剤担持体と撹拌部材を近接配置する場合でも、充分に撹拌された現像剤を効率良く像担持体に供給することができる現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置50は、現像槽53、現像ローラ51、第2撹拌搬送部材56を備える。現像ローラ51は、現像スリーブ51Bと、現像スリーブ51B内に汲み上げ極N2及び釈放極N3を有する。第2撹拌搬送部材56は、現像スリーブ51Bの軸方向に平行に配置され回転方向Eに回転し撹拌および搬送することで現像剤溜まりHGを生成する。現像スリーブ51Bは、第2撹拌搬送部材56と感光体ドラム31に近接配置され回転方向Cに回転し感光体ドラム31に現像剤Gを搬送する。汲み上げ極N2は、現像剤溜まりHGに近接配置され現像剤溜まりHGから現像スリーブ51Bへ現像剤Gを吸着させる。釈放極N3は、現像スリーブ51Bから現像剤Gを離脱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現像剤を像担持体に供給する現像装置およびこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の小型化に伴い、画像形成装置に搭載される現像装置も小型化が進められている。小型化された現像装置では、充分に撹拌されていない現像剤が像担持体に供給され、像担持体から用紙に転写されるトナー像の濃度が不均一なものとなる、いわゆる濃度ムラを招くという問題があった。
【0003】
このような現像装置の中には、現像剤担持体から離脱した現像剤が現像剤担持体に面する筐体の内壁に一旦当接してから貯留槽の所定位置に落下し、現像剤が充分に撹拌されることで濃度ムラを抑制するようにしたものもある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−266366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に示す現像装置では、現像剤担持体と撹拌部材とをさらに近接させて配置すると、現像剤担持体から離脱した現像剤が貯留槽で撹拌される前に、現像剤を吸い上げる磁極の磁力により現像剤担持体に吸着される。このため、現像担持体と撹拌部材とを近接配置して現像装置の小型化を図ると、像担持体に供給する現像剤を充分に撹拌し帯電させることができなかった。このため、帯電量の不足した現像剤が像担持体に供給され、濃度ムラを招くという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、現像剤担持体と撹拌部材を近接配置する場合でも、充分に撹拌された現像剤を効率良く像担持体に供給することができる現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の現像装置は、貯留槽、現像剤担持体、撹拌部材を備えている。貯留槽は、現像剤を貯留する。現像剤担持体は、像担持体の軸方向と平行に配置された円筒状の現像スリーブと、現像スリーブ内に配置された第1磁性部材および第2磁性部材と、から構成される。撹拌部材は、現像スリーブの軸方向と平行に貯留槽に配置され、現像剤担持体へ向かう方向に回転し撹拌および搬送することで現像剤溜まりを生成する。第1磁性部材は、現像スリーブにおいて現像剤溜りと近接する位置に配置され現像剤溜りから現像スリーブへ現像剤をひきつける。現像スリーブは、撹拌部材および像担持体に近接する位置に配置され所定の回転方向に回転して像担持体に現像剤を搬送する。第2磁性部材は、現像スリーブにおいて所定の回転方向における第1磁性部材の上流側且つ現像スリーブが像担持体と対向する位置の下流側となる位置に配置され、第1磁性部材と反発磁界を形成し現像スリーブから現像剤を離脱させる。
【0007】
この構成では、撹拌部材が現像剤担持体へ向かう方向に回転して現像剤溜まりが生成される。現像スリーブにおいて、第1磁性部材は現像剤溜まりと近接する位置に配置され、現像剤溜まりから現像剤スリーブへ現像剤を吸着させる。
【0008】
これにより、第1磁性部材と、撹拌された現像剤から成る現像剤溜りと、を近接配置することができる。このため、現像剤溜まりから現像剤を効率よく現像剤スリーブへ吸着することができる。
【0009】
この構成において、現像剤担持体は撹拌部材の斜め上方に配置され、現像スリーブの所定の回転方向は撹拌部材の回転方向と同一方向であり、第1磁性部材の磁力が現像スリーブ表面において最大となる位置は撹拌部材および現像剤担持体の中心を結ぶ直線よりも所定の回転方向の下流側に位置するものとしても良い。これにより、第1磁性部材が現像剤溜まり以外の場所から現像剤を現像スリーブへ吸着するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、像担持体に充分に帯電された現像剤を供給し、用紙に転写されるトナー像の濃度が不均一になるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、この発明の実施形態に係る画像形成装置を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置100の全体構成を示す図である。図2は、感光体ドラム31周辺の構成を示す図である。画像形成装置100は、スキャナ部200、画像形成部300、給紙部400を備えている。
【0013】
スキャナ部200は、自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)201、第1原稿台202、第2原稿台203等を備えている。
【0014】
画像形成部300は、プロセス部30を構成する感光体ドラム(像担持体)31、帯電器32、露光装置33、現像装置50、転写ベルト35、クリーナ36、定着装置37を備え、用紙Pに印字処理を行なう。
【0015】
感光体ドラム31は、表面に感光層が形成された円筒状の像担持体であり回転方向BRへ回転する。
【0016】
帯電器32は、感光体ドラム31の表面を所定の電位に均一に帯電させる。帯電器32は、チャージャによる非接触方式、または、ローラ若しくはブラシによる接触方式の何れを用いてもよい。
【0017】
露光装置33は、感光体ドラム31の表面に画像データに基づく光を照射する。これによって、感光体ドラム31の表面には、感光層における光導電作用によって静電潜像が形成される。露光装置33は、画像データに基づいて変調されたレーザ光をポリゴンミラーを介して感光体ドラム31の軸方向に走査する。
【0018】
現像装置50は、感光体ドラム31の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像に可視像化する。
【0019】
転写ベルト35は、感光体ドラム31の下方において複数のローラ間にループ状に張架されている。転写ベルト35のループ状の移動経路の内側には、転写ベルト35を挟んで感光体ドラム31に圧接する転写ローラ35Aが備えられている。転写ローラ35Aに印加されている転写電界により、転写ベルト35と感光体ドラム31との間を通過する用紙Pに感光体ドラム31が担持するトナー像が転写される。
【0020】
定着装置37は、用紙Pに転写されたトナー像を加熱および加圧する定着ローラ対37Aを有しており、用紙Pに定着処理を行なう。定着処理された用紙Pは、搬送経路Aに沿って下流側へ搬送され排紙トレイから排出される。
【0021】
給紙部400は、給紙カセット401、402、403、404、手差しトレイ405、給紙機構413、搬送部430を備えている。給紙カセット401、402、403、404のそれぞれには、同じサイズの複数枚の用紙が収納される。手差しトレイ405には、使用頻度の低いサイズや紙質の用紙が載置される。そして、各給紙カセットに収納されている用紙Pは、各給紙トレイに対応して配置されている給紙機構413によって1枚ずつ繰り出され、搬送部430を介して各所定の搬送経路に沿って下流側のプロセス部30へと搬送される。
【0022】
制御部60は、スキャナ部200、画像形成部300、給紙部400、を制御する。
【0023】
図3は、この発明の現像装置である現像装置50の具体的な構成を示す概略図である。
【0024】
現像装置50は、現像ローラ(現像剤担持ローラ)51、ドクターブレード52、第1撹拌搬送部材55、第2撹拌搬送部材56、仕切り板57、筐体59、を備えている。
【0025】
筐体59は、感光体ドラム31と面する位置に感光体ドラム31の軸方向に沿って開口59Sが形成されており、現像ローラ51の周面の一部が開口59Sから感光体ドラム31側へ露出し感光体ドラム31と対向するように配置されている。また、筐体59の下部には、現像槽(貯留槽)53が設けられており、現像剤Gを貯留している。
【0026】
現像槽53は、感光体ドラム31の軸方向と平行に設けられた仕切り板57によって第1撹拌槽53Aと第2撹拌槽53Bとに区画されている。仕切り板57の両端部と筐体59との間には隙間が形成されており、第1撹拌槽53Aと第2撹拌槽53Bとを連通させている。これにより、現像槽53に貯留されている現像剤Gを第1撹拌槽53Aと第2撹拌槽53Bとの間を循環させることができる。
【0027】
第1撹拌搬送部材55は、第1撹拌槽53Aに現像ローラ51と平行に配置され、その周面の上部が第2撹拌槽53Bに貯留されている現像剤Gの貯留面(上面)SUから突き出す位置に配置されている。第1撹拌搬送部材55は、回転方向Fに回転して現像剤Gを撹拌しつつ軸方向に搬送するスクリュー状のローラ部材である。
【0028】
第2撹拌搬送部材56は、上記第1撹拌搬送部材55と同様に、現像剤Gの貯留面SUから突き出す位置に第2撹拌槽53Bに配置され、回転方向Eに回転して現像剤Gを撹拌しつつ軸方向に現像剤Gを搬送するスクリュー状のローラ部材である。ここで、第2撹拌搬送部材56の現像剤Gを搬送する軸方向は、第1撹拌搬送部材55の現像剤Gを搬送する軸方向とは反対に設定されている。これにより、現像剤Gを撹拌して帯電させるとともに第1撹拌槽53Aと第2撹拌槽53Bとの間で循環させることができる。第2撹拌搬送部材56の外径は、16mmである。
【0029】
第2撹拌搬送部材56の回転方向Eへの回転動作に伴い、現像ローラ51近傍に位置する第2撹拌搬送部材56が第2撹拌槽53Bに貯留されている現像剤Gの貯留面SUと交差する位置近傍に現像剤溜まりHGが生成される。
【0030】
現像剤溜まりHGは、貯留面SUよりも上方に盛り上がって形成されており、第2撹拌搬送部材56によって撹拌され帯電された現像剤Gによって形成されている。
【0031】
現像ローラ51は、円筒状に形成された現像スリーブ51Bと、現像スリーブ51Bの内部に配置された磁石部材51Aとを有し、第2撹拌搬送部材56および感光体ドラム31に近接して第2撹拌搬送部材56の斜め上方に配置されている。現像スリーブ51Aは、感光体ドラム31の軸方向に平行に配置されている。ここで、現像スリーブ51Bの外径は、18mmである。
【0032】
現像ローラ51は、経路Kに沿って第2撹拌槽53Bに貯留されている現像剤Gを吸い上げる。現像スリーブ51Bの周面に吸着された現像剤Gに含まれるトナーは、現像領域Jにおいて静電潜像が形成されている感光体ドラム31へ供給される。さらに、現像スリーブ51Bは、その周面に残留している現像剤Gを経路Kに沿って回転搬送する。
【0033】
なお、本実施形態では、現像剤Gを現像スリーブ51Bへ吸い上げる汲み上げ方式としているがこれに限定されるものではない。例えば、貯留槽に貯留されている現像剤Gと接触する位置に現像スリーブ51Bを配置するようにしても良い。なお、現像スリーブ51Bは、非磁性材料からなる部材である。より具体的には、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、銅、などによって形成される。
【0034】
ドクターブレード52は、開口59Sの下端に現像スリーブ51Bとの間に所定の隙間を挟んで設けられており、現像スリーブ51Bに磁気ブラシ状に担持される現像剤Gの量を均一に均す規制部材である。ここで、上記所定の隙間は、例えば、0.2mmから0.8mmに設定されている。
【0035】
現像スリーブ51Bは回転方向Cに沿って回転し、現像剤Gは現像領域Jと対向する位置で静電潜像が形成されている感光体ドラム31表面に供給される。これにより、第2撹拌槽53Bに貯留されている現像剤Gを現像領域Jへ供給することができる。さらに、現像スリーブ51Bは、現像スリーブ51Bの表面に残留した現像剤G、および、現像領域Jから引き戻されたキャリアを回転方向Cに沿って釈放極N3近傍の位置まで現像スリーブ51B上に担持する。ここで、回転方向C、E、F、BRは、回転方向が同じ方向に設定されている。
【0036】
磁石部材51Aは、現像スリーブ51Bの内側に配置され筐体59に固定支持されたマグネットローラである。磁石部材51Aは、現像スリーブ51Bを回転支持している。磁石部材51Aは、汲み上げ極(第1磁性部材)N2、規制極S1、主極(第3磁性部材)N1、S2極、釈放極(第2磁性部材)N3、を回転方向Cに沿ってこの順に設けられている。なお、永久磁石の代わりに、電磁石を磁石部材51Aとして用いても良い。また、磁石部材51Aは、汲み上げ極N2、釈放極N3、主極N1、を有し、現像スリーブ51B上に現像剤Gを担持できる場合には、磁極数は5極に限らない。また、磁石部材51Aは、複数の磁石を組み合わせて構成しても良い。
【0037】
汲み上げ極N2は、磁石部材51Aの最下部近傍に位置しており、経路Kに沿って第2撹拌槽53Bに形成されている現像剤溜まりHGから現像剤Gを現像スリーブ51Bの表面に吸い上げる。吸い上げられた現像剤Gは、磁気ブラシ状に現像スリーブ51Bの表面に担持される。ここで、現像スリーブ51B表面において汲み上げ極N2の磁力が最大となる位置は、現像剤溜まりHGの直上方に位置している。このため、充分に撹拌されている現像剤溜まりHGの現像剤Gを効率良く現像スリーブ51Bへ汲み上げることができる。
【0038】
汲み上げ極N2、規制極S1、主極N1、S2極、釈放極N3の周辺には、それぞれ現像剤Gを吸引する磁界が形成されている。一方、周方向に隣り合う位置に配置されている汲み上げ極N2と釈放極N3との間には、反発磁界が形成されるため、現像剤Gを吸引する磁力は生成されていない。
【0039】
汲み上げ極N2、規制極S1、主極N1、S2極、釈放極N3は、この順に配置されることにより、現像スリーブ51Bの外周面に現像剤Gを担持させる磁界を汲み上げ極N2近傍から釈放極N3近傍にかけて生成している。これにより、汲み上げ極N2近傍の現像スリーブ51Bの外周面に磁力によって吸着された現像剤Gを釈放極N3近傍の現像スリーブ51Bの外周面まで磁気ブラシ状に担持することができる。
【0040】
一方、現像スリーブ51B上を釈放極N3近傍まで担持搬送された現像剤Gは上記反発磁界の作用によって現像スリーブ51Bから離脱する。そして、下方に配置された第2撹拌槽53Bへ落下する。
【0041】
本実施形態の現像剤Gは、非磁性トナーと磁性キャリアから成る2成分現像剤である。1成分現像剤を用いた場合には、トナー粒子間での摩擦力が低下すると、トナーの帯電量の低下を招く。これに対して、2成分現像剤では、非磁性トナー粒子と磁性キャリアが混合されているため、1成分現像剤と比較して粒子間での摩擦が低下しても帯電量の低下を抑制することができる。
【0042】
図4は、汲み上げ極N2の磁力が現像スリーブ51B表面で最大となる位置P1を示す図である。ここで、角αは、位置P1を通る現像スリーブ51Bの半径と、第2撹拌搬送部材56の中心56Cから現像スリーブ51Bの中心51Cに引いた直線と、が成す角である。角αは、回転方向Cを正方向として示している。なお、位置P1における汲み上げ極N2の磁力をAとする。中心56Cと中心51Cとの間の距離は22mmである。
【0043】
図5は、主極N1の磁力が現像スリーブ51B表面で最大となる位置P2を示す図である。ここで、角βは、位置P2を通る現像スリーブ51Bの半径と、現像スリーブ51Bの中心51Cから感光体ドラム31の中心31Cに引いた直線と、が成す角である。角βは、回転方向Cと反対方向を正方向とする。なお、位置P2における主極N1の磁力をBとする。
【0044】
図6は、画像形成装置100において、角α、角β、磁力A、磁力Bを種々変化させて行なった画像品質評価試験の結果を示す表である。この画像品質評価試験では、サンプル1〜15の設定値ごとに、10000枚の用紙Pに印字処理を連続して行ない、「現像剤の凝集」、「濃度ムラの有無」、「キャリアの付着」について評価した。用紙PはA4サイズである。また、各用紙Pに印字処理された画像の印字率は5%である。
【0045】
現像剤の凝集は、印字処理を行なった後の現像剤Gの流動性を測定して凝集の有無を測定した。なお、流動性測定は、流動性測定装置(振動移送式流動性測定装置 株式会社エトワス社製)を用い、電圧60V、振動数137Hzの試験条件で現像剤Gの移送時間を測定して行なった。ここで、未使用の現像剤Gの移送時間は5分未満であった。
【0046】
評価方法は、移送時間が5分未満の場合には「○」、移送時間が5分以上10分未満の場合には「△」、移送時間が10分以上の場合には「×」として評価した。なお、移送時間が5分未満の場合には、用紙Pに印字処理されたベタ画像にかすれは発生しない。移送時間が5分以上10分未満の場合には、用紙Pに印字処理されたベタ画像にかすれが発生する。移送時間10分以上の場合には、用紙Pに印字処理されたベタ画像に白スジが発生する。
【0047】
濃度ムラの有無は、用紙Pに印字処理されたベタ画像を目視で確認し判定した。濃度ムラが確認できない場合には「○」、濃度ムラがはっきりと確認できる場合には「×」として評価した。
【0048】
キャリア付着は、用紙Pに印字処理を行なった後、感光体ドラム31に付着しているキャリアの数を測定して判定した。具体的には、18mm×360mmのテープを感光体ドラム31の回転方向BRに沿って張り、テープに付着したキャリアの数を測定した。テープは、住友スリーエム(株)社製の商品名メンディングテープ(CAT.NO.810‐8‐18)を用いた。上記テープに付着したキャリアの数が5個未満の場合には「○」、10個以上の場合には「×」として評価した。ここで、キャリアの数が5個未満の場合には、用紙Pに印字処理された画像に濃度ムラ等の画質劣化が起こらない。キャリアの数が10個以上の場合には、用紙Pに印字処理された画像に画質劣化が発生する。
【0049】
以下、各実験結果について説明する。
【0050】
角αについては、サンプル9、12〜15のように角αを8.1°に設定した場合や、サンプル10の角αを−0.3°に設定すると、汲み上げ極N2が現像剤溜まりHGから現像剤Gをスムーズに吸い上げることができず、現像剤の凝集、濃度ムラ、キャリア付着が発生することが判明した。
【0051】
これに対し、サンプル1〜8、11のように角αが式(1)の条件を満たすことで、現像剤の凝集、濃度ムラ、キャリア付着の発生を抑制できることが判明した。
【0052】
0°<α≦7.6°・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
そこで、現像装置50では、式(1)の条件を満たすように、角αを設定している。
【0053】
これにより、汲み上げ極N2の磁力が現像スリーブ51B表面で最大となる位置P1を現像剤溜まりHGの直上方に位置させて、現像剤溜まりHGからスムーズに現像剤Gを現像スリーブ51Bへ汲み上げることができる。すなわち、角αを0°よりも大きく設定することで、現像剤溜まりHG以外の場所から汲み上げ極N2が現像剤Gを吸い上げるのを防止することができる。より具体的には、汲み上げ極N2と釈放極N3との間に形成される反発磁界の磁力によって現像スリーブ51Bから離脱された現像剤Gがそのまま汲み上げ極N2の磁力により現像スリーブ51Bへ吸着されるといったことを防止することができる。一方、角αを7.6°以下とすることにより、貯留面SUから隆起して形成される現像剤溜まりHGから現像剤Gを吸い上げることができる。ここで、現像剤溜まりHGは、第2撹拌搬送部材56が下方から上方に現像剤Gを撹拌する位置に生成されるため、充分に撹拌され帯電した現像剤Gによって形成されている。また、現像剤溜まりHGの直上方にP1を位置させることで、汲み上げ極N2の磁力が小さい場合でもスムーズに現像剤Gを現像スリーブ51Bへ吸着させるという効果も得ることができる。この結果、感光体ドラム31に充分に帯電された現像剤Gに含まれるトナーを供給し、用紙Pに転写されるトナー像の濃度が不均一となることを防止することができる。
【0054】
本実施形態の現像装置50では、スクリュー状に形成された第2撹拌搬送部材56によって現像剤Gを撹拌し、角αが式(1)の条件を満たすように配置されている例を挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スクリュー状に形成された第2撹拌搬送部材56の代わりに櫛歯状に形成された撹拌部材によって現像剤Gを撹拌することも考えられる。この場合には、撹拌部材によって生成される現像剤溜まりの直上方の近接位置に汲み上げ極を配置できるのであれば、角αが式(1)の条件を満たさなくとも良い。但し、櫛歯状に形成された撹拌部材では、現像剤Gを撹拌しつつ搬送することができないので、本実施形態のように第2撹拌搬送部材56を用いる方がより好ましい。
【0055】
A/Bの絶対値については、サンプル9、11、14、15のように7.0よりも大きく設定した場合には、汲み上げ極N2の磁力が相対的に小さくなりすぎ現像スリーブ51Bへスムーズに現像剤Gを吸着させることができず濃度ムラ等が発生することが判明した。
【0056】
一方、A/Bの絶対値をサンプル10、13のように4.4よりも小さく設定した場合には、汲み上げ極N2の磁力が相対的に大きくなりすぎる。このため、現像スリーブ51Bへ吸着させる現像剤Gの量が増えすぎる。この結果、現像スリーブ51Bに吸着された現像剤Gが現像スリーブ51Bとドクターブレード52との隙間を通過するときに大きな摩擦力が現像剤Gに作用し、現像剤Gの凝集が発生することが判明した。
【0057】
また、多量の現像剤Gが感光体ドラム31に供給され、感光体ドラム31へのキャリアの付着も発生することも判明した。これは、感光体ドラム31へ供給されたキャリアを感光体ドラム31から引き戻す磁力が不足して発生する。ここで、感光体ドラム31がマイナス帯電しているのに対し、キャリアはプラス帯電している。
【0058】
これに対し、サンプル1〜8のようにA/Bの絶対値が式(2)の条件を満たすことで、現像剤の凝集や、濃度ムラ、キャリア付着の発生を抑制できることが判明した。但し、サンプル12のように、A/Bの絶対値が式(2)の条件を満たす場合でも、角αが式(1)の条件を満たさない場合には濃度ムラやキャリア付着を防止できないことも判明した。
【0059】
4.4≦|A/B|≦7.0・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
そこで、現像装置50では、式(2)の条件を満たすようにA/Bの絶対値を設定している。
【0060】
Aの絶対値については、サンプル9、11、14、15のように140以上に設定する場合には、希土類磁石以外の強力な磁力を有する磁石を磁極に用いる必要がある。このため、製造コストの増加を招くという問題がある。
【0061】
一方、Aの絶対値をサンプル10の106やサンプル12の110に設定すると、感光体ドラム31にキャリアが付着し濃度ムラが発生することが判明した。
【0062】
これに対し、サンプル1〜8のようにAの絶対値が式(3)の条件を満たすことで濃度ムラの発生等を防止することができることが判明した。但し、サンプル13のようにAの絶対値が式(3)の条件を満たす場合でも、角αが式(1)の条件を満たさない場合には現像剤の凝集や濃度ムラの発生を防止できないことも判明した。
【0063】
111mT≦|A|≦139mT・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
そこで、現像装置50では、式(3)の条件を満たすように、Aの絶対値を設定し、濃度ムラの発生を抑制している。
【0064】
なお、製造コストが問題とならない場合には、希土類磁石以外の強力な磁力を有する磁石を磁極に用いても良い。
【0065】
角βについては、サンプル10の0°に設定した(位置P2が中心51Cと中心31Cを結ぶ直線上に位置する)場合には、感光体ドラム31からキャリアを現像スリーブ51Bへスムーズに引き戻して吸着させることができないことが判明した。このため、濃度ムラが発生する。
【0066】
一方、角βをサンプル9、12、13、15のように4°に設定すると、現像スリーブ51B表面に吸着されている現像剤Gの搬送が不安定なものとなり、感光体ドラム31へ現像剤Gをスムーズに供給することができず濃度ムラが発生することが判明した。但し、サンプル11のように角βを4°に設定する場合でも角αが式(1)の条件を満たす場合には濃度ムラ、キャリアの付着については防止できることも判明した。
【0067】
また、サンプル1〜8のように、角βが式(4)の条件を満たすことで、感光体ドラム31に付着しているキャリアを現像スリーブ51Bへスムーズに引き戻すことができ、濃度ムラの発生等を防止できることが判明した。但し、サンプル14のように、角βが式(4)の条件を満たす場合でも、角αが式(1)の条件を満たさない場合には現像剤の凝集や濃度ムラの発生を防止できないことも判明した。
【0068】
0°<β≦3°・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
そこで、現像装置50では、角βが式(4)の条件を満たすように設定し、濃度ムラの発生を防止している。
【0069】
Bの絶対値については、サンプル9の18(mT)に設定すると、汲み上げ極N2と釈放極N3との間に形成される反発磁界が小さくなりすぎる。このため、反発磁界の作用によって、現像スリーブ51Bから現像剤Gを充分に離脱させることができなくなり、現像スリーブ51Bに残留した現像剤Gがそのまま感光体ドラム31に供給され濃度ムラが発生することが判明した。但し、サンプル11のように18(mT)に設定した場合でも、角αが式(1)の条件を満たす場合には濃度ムラとキャリアの付着の発生は防止でき、一定の効果が得られることが判明した。
【0070】
一方、Bの絶対値をサンプル10の27(mT)に設定すると、汲み上げ極N2が吸い上げる現像剤Gの量が増えすぎる。このため、感光体ドラム31とドクターブレード52との隙間を現像剤Gが通過する際に、現像剤Gに大きな摩擦力が作用し現像剤の凝集を招き、白抜けといった画質劣化が発生することが判明した。
【0071】
これに対して、サンプル1〜8のようにBの絶対値が式(5)の条件を満たすことで現像剤Gの凝集を防止できることが判明した。但し、サンプル15のようにBの絶対値が式(5)の条件を満たす場合でも、角αが式(1)の条件を満たさない場合には現像剤の凝集や濃度ムラの発生を防止できないことも判明した。
【0072】
19mT≦|B|<25mT・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
そこで、現像装置50では、Bの絶対値が式(5)の条件を満たすように設定し、現像剤Gの凝集を防止している。
【0073】
現像装置50では、式(1)〜(5)の条件を満たすことにより、図6に示す用紙Pに転写されるトナー像の濃度の安定度を評価する基準である「現像剤の凝集」、「濃度ムラ」、「キャリア付着」について良好な結果を得ることができる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、現像装置の仕様に応じて式(2)〜(5)の条件を充足できない場合でも、式(1)の条件を満たすことで現像剤の凝集、濃度ムラ、キャリア付着の発生を抑制する効果を得ることができる。
【0074】
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す図である。
【図2】感光体ドラム周辺の構成を示す図である。
【図3】現像装置の構成を示す図である。
【図4】汲み上げ極の磁力が現像スリーブ表面で最大となる位置を示す図である。
【図5】主極の磁力が現像スリーブ表面で最大となる位置を示す図である。
【図6】画像形成装置において設定したサンプルごとに行なった画像品質評価試験の結果を示す表である。
【符号の説明】
【0076】
31 感光体ドラム(像担持体)
50 現像装置
51 現像ローラ(現像剤担持ローラ)
51B 現像スリーブ
53 現像槽(貯留槽)
56 第2撹拌搬送部材
N2 汲み上げ極(第1磁性部材)
N3 釈放極(第2磁性部材)
G 現像剤
HG 現像剤溜まり
SU 貯留面(上面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を貯留する貯留槽と、
像担持体の軸方向と平行に配置された円筒状の現像スリーブと、前記現像スリーブ内に配置された第1磁性部材および第2磁性部材と、から構成される現像剤担持体と、
前記現像スリーブの軸方向と平行に前記貯留槽に配置され、前記現像剤担持体へ向かう方向に回転し撹拌および搬送することで、現像剤溜まりを生成する撹拌部材と、
を備え、
前記第1磁性部材は、前記現像スリーブにおいて前記現像剤溜りと近接する位置に配置され前記現像剤溜りから前記現像スリーブへ現像剤をひきつけ、
前記現像スリーブは前記撹拌部材および前記像担持体に近接する位置に配置され所定の回転方向に回転して前記像担持体に現像剤を搬送し、
前記第2磁性部材は、前記現像スリーブにおいて前記所定の回転方向における前記第1磁性部材の上流側且つ前記現像スリーブが前記像担持体と対向する位置の下流側となる位置に配置され、前記第1磁性部材と反発磁界を形成し前記現像スリーブから現像剤を離脱させる、
現像装置。
【請求項2】
前記現像剤担持体は前記撹拌部材の斜め上方に配置され、前記現像スリーブの前記所定の回転方向は前記撹拌部材の回転方向と同一方向であり、
前記第1磁性部材の磁力が前記現像スリーブ表面において最大となる位置は、前記撹拌部材および前記現像剤担持体の中心を結ぶ直線よりも前記所定の回転方向の下流側に位置している、
請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤は、トナーとキャリアから成る2成分現像剤である、
請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に現像剤を供給する請求項1から3のいずれか1項に記載の現像装置と、
を備えている画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−237430(P2009−237430A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85761(P2008−85761)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】