説明

現像装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】トナー担持体上の残留トナーの回収性を向上させて、現像履歴現象等の不都合を抑制することが可能な現像装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置10は、第1磁極71を有し、現像剤貯留部51から現像剤を受け取って現像剤層を第1磁極71の磁力により担持する現像剤担持体56と、現像剤担持体56に対向配置されており、この対向位置で現像剤層に接触した状態で回転しつつ、現像剤層からトナーを受け取って担持し、該トナーを所定の像担持体17に供給するトナー担持体58とを含み、トナー担持体58は、第1磁極71とは逆の極性を有し、第1磁極71との間で磁界を形成する第2磁極75を含み、第2磁極75の磁束密度は、前記対向位置から、トナー担持体58の回転方向の上流側に向かうにつれて増加するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる現像装置、およびそれを備えた、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置は、像担持体(例えば、感光体ドラムや転写ベルト)上に形成された静電潜像に現像剤を供給して該静電潜像を現像することにより、像担持体上にトナー像を形成する現像装置を含む。
【0003】
現像装置には、例えば、基本的な構成要素として、非磁性体のトナーおよび磁性体のキャリアを含む現像剤を攪拌しつつ貯留する現像剤貯留部と、現像剤貯留部から現像剤を受け取って現像剤層(いわゆる磁気ブラシ層)を担持する現像剤担持体と、現像剤担持体との間の電位差に基づいて磁気ブラシ層からトナーのみを受け取ってトナー層として担持し、次に、そのトナーを像担持体との間の電位差に基づいて像担持体に供給するトナー担持体とを含むものが知られている。
【0004】
また、上記構成の現像装置では、トナー担持体から像担持体に供給されず、トナー担持体上に残留する残留トナーは、現像剤担持体上の磁気ブラシ層によって掻き取られ、回収されている。
【0005】
ところが、磁気ブラシ層による残留トナーの回収が不十分となる場合がある。その場合、トナー担持体上には、トナー担持体から像担持体に供給されず、残留トナーが存在する領域と、静電潜像にトナーが供給されて残留トナーが存在しない領域とが形成される。残留トナー存在領域と残留トナー非存在領域とが並存した状態で、次の現像動作のために現像剤担持体からトナー担持体にトナーが供給されると、トナー担持体上に均一な層厚のトナー層が形成されない。その結果、いわゆる現像履歴現象が発生する。
【0006】
また、現像剤担持体からトナー担持体にトナーが十分に供給されない場合にも、トナー担持体上に均一な層厚のトナー層が形成されなくなり、現像履歴現象が発生する。
【0007】
現像履歴現象を抑制する技術として、例えば特許文献1のものが知られている。特許文献1の現像装置では、現像剤担持体(磁気ローラ)は、トナー担持体(現像ローラ)に最近接する部位の近傍に配置された2つの上流側S極および下流側S極を有し、トナー担持体は、下流側S極に略対向する位置に配置されたN極を有する。下流側S極とN極との間には、磁界が形成されているので、前記磁界中において良好な磁気ブラシが形成される。そのため、トナー担持体上の残留トナーは、磁気ブラシによって掻き取られて磁気ブラシ層に回収される。このようにして、特許文献1の現像装置は、現像履歴現象の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−221800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、単に、現像剤担持体のS極とトナー担持体のN極とを略対向させるだけでは、残留トナーを完全に回収できないと考えられる。特に、高画質化のためにトナーを小径化したり、現像動作の高速化のために現像剤担持体およびトナー担持体の各回転速度を上昇させたりした場合に残留トナーの回収が良好に行えないと考えられる。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、トナー担持体上の残留トナーの回収性を向上させて、現像履歴現象等の不都合を抑制することが可能な現像装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る現像装置は、非磁性体のトナーおよび磁性体のキャリアを含む現像剤を攪拌しつつ貯留する現像剤貯留部と、第1磁極を有し、前記現像剤貯留部から前記現像剤を受け取って現像剤層を前記第1磁極の磁力により担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に対向配置されており、この対向位置で前記現像剤層に接触した状態で回転しつつ、前記現像剤層から前記トナーを受け取って担持し、該トナーを所定の像担持体に供給するトナー担持体とを含み、前記トナー担持体は、前記第1磁極とは逆の極性を有し、前記第1磁極との間で磁界を形成する第2磁極を含み、前記第2磁極の磁束密度は、前記対向位置から、前記トナー担持体の回転方向の上流側に向かうにつれて増加するように設定されている。
【0012】
本発明に係る現像装置によれば、トナー担持体の第2磁極は、現像剤層を現像剤担持体上に磁力によって保持する第1磁極との間で磁界を形成するので、トナー担持体は、現像剤担持体との対向位置で現像剤層からトナーを良好に受け取ることができる。これにより、トナー担持体は像担持体に十分な量のトナーを供給することができる。
【0013】
また、本発明に係る現像装置では、トナー担持体が現像剤層から受け取ったトナーの全量が像担持体に供給されるわけではなく、一部のトナーがトナー担持体上に残留する。残留トナーは、トナー担持体の回転に伴い、現像剤担持体との対向位置に戻ってくる。本発明に係る現像装置では、第2磁極の磁束密度は、トナー担持体と現像剤担持体との対向位置からトナー担持体の回転方向上流側に向かうにつれて増加するように設定されているので、第2磁極が第1磁極との間で形成する磁界は、前記対向位置からトナー担持体の回転方向上流側にわたる広い範囲に及ぶ。そして、このように広い範囲の磁界が及ぼす影響により、残留トナーは前記対向位置に戻ってくるまでに現像剤担持体上の現像剤層によって掻き取られ、回収される。
【0014】
本発明に係る現像装置は、上記のように、像担持体に十分な量のトナーを供給することができると共に、残留トナーを回収することができるので、現像履歴現象等の不都合を抑制することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記第2磁極は、前記第1磁極に対向配置された対向磁極と、前記トナー担持体の回転方向から見て前記対向磁極よりも上流側に、かつ前記対向磁極に隣接して配置された上流側磁極とを有し、前記上流側磁極の磁束密度は、前記対向磁極の磁束密度よりも大きく設定されている。
【0016】
この構成によれば、対向磁極と上流側磁極とは同一の極性を有しているものの、上流側磁極の磁束密度は対向磁極の磁束密度よりも大きく設定されており、かつ、上流側磁極と対向磁極とは互いに隣接して配置されているので、2つの上流側磁極および対向磁極があたかも1つの磁極であるかのように磁束密度が分布され、そして、その分布の範囲は大きくなる。これにより、第2磁極の磁束密度が前記対向位置からトナー担持体の回転方向上流側に向かうにつれて増加するように設定することは容易である。
【0017】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記現像剤担持体は、所定の方向に回転可能に構成されたものであって、前記第1磁極とは逆の極性を有し、前記現像剤担持体の回転方向から見て前記第1磁極よりも下流側に、かつ前記第1磁極に隣接して配置された第3磁極をさらに含み、前記第3磁極の磁束密度は、前記対向磁極の磁束密度よりも大きく設定されている。
【0018】
この構成によれば、第3磁極の磁束密度は対向磁極の磁束密度よりも大きく設定されているので、第3磁極の磁力によって第1磁極の磁力が増加する。これにより、現像剤層を現像剤担持体上に保持し易くなり、現像剤層がトナー担持体に移動する、いわゆるキャリア引きを抑制することができる。
【0019】
本発明に係る画像形成装置は、トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体にトナーを供給して該像担持体上に前記トナー像を形成する現像装置と、前記トナー像をシート上に転写させる転写部材と、前記シート上の前記トナー像を該シート上に定着させる定着部とを含み、前記現像装置として、上記構成の現像装置が採用されている。
【0020】
本発明に係る画像形成装置によれば、現像履歴現象等の不都合を抑制することが可能な現像装置を採用しているので、良好なトナー像を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る現像装置およびそれを備えた画像形成装置によれば、トナー担持体上の残留トナーの回収性を向上させて、現像履歴現象等の不都合を抑制することができ、その結果、良好なトナー像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の内部構造を概略的に示す。
【図2】現像装置の内部構造を概略的に示す断面図である。
【図3】現像装置の磁気ローラおよび現像ローラに形成された磁極の配置を示す図である。
【図4】磁気ローラおよび現像ローラ間における磁力線の向きを示す図である。
【図5】磁気ローラおよび現像ローラ間における磁束の分布を示す図である。
【図6】磁気ローラおよび現像ローラ間における磁束の分布を示す図である。
【図7】現像装置の現像動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、画像形成装置の内部構造を示す断面図である。本実施形態では、画像形成装置の一例としてカラープリンタを例示する。画像形成装置1は、パーソナルコンピュータ(図示せず)等に直接またはLAN経由で接続される装置本体200と、装置本体200の下方に設けられ、用紙を装置本体200に供給可能に構成された用紙供給部130とを含む。なお、画像形成装置1は、該画像形成装置1の動作を制御する制御回路など、一般的な画像形成装置に設けられた他の構成要素も有する。
【0025】
図1に示すように、装置本体200は、画像形成部93、露光装置94、中間転写部92、定着部97および排紙部96を含む。
【0026】
画像形成部93は、対応する色のトナー像を担持する感光体ドラム17(像担持体)と、対応する色のトナーを感光体ドラム17に供給する現像装置10(イエロー用現像装置10Y、マゼンタ用現像装置10M、シアン用現像装置10C、ブラック用現像装置10K)とを含む。
【0027】
感光体ドラム17としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。
【0028】
感光体ドラム17の周囲には、現像装置10(10Y、10M、10C、10K)に加え、帯電器16、転写ローラ19およびクリーニング装置18等が配置されている。帯電器16は感光体ドラム17のドラム表面を均一に帯電する。帯電後の感光体ドラム17のドラム表面は、露光装置94によって露光され、静電潜像が形成される。現像装置10Y、10M、10C、10Kは、それぞれイエロー用トナーコンテナ900Y、マゼンタ用トナーコンテナ900M、シアン用トナーコンテナ900C、ブラック用トナーコンテナ900Kから供給される各色のトナーを用いて、各々の感光体ドラム17のドラム表面上に形成された静電潜像を現像(可視像化)する。これにより、感光体ドラム17のドラム表面上にトナー像が形成される。転写ローラ19は、中間転写ベルト921を挟んで感光体ドラム17とニップ部を形成し、感光体ドラム17上のトナー像を中間転写ベルト921上に一次転写する。クリーニング装置18はトナー像転写後の感光体ドラム17のドラム表面を清掃する。
【0029】
中間転写部92は、中間転写ベルト921、駆動ローラ922および従動ローラ923を含む。中間転写ベルト921は、複数の感光体ドラム17からトナー像が重ね塗り状態で一次転写される。このトナー像は、用紙供給部130から供給される用紙に、二次転写部98において二次転写される。駆動ローラ922および従動ローラ923は中間転写ベルト921を周回駆動させる。
【0030】
定着部97は、トナー像が二次転写された用紙上のトナー像に対し、定着処理を施すものであり、熱源が内蔵された定着ローラ971と、該定着ローラ971と定着ニップ部を形成する加圧ローラ972とを含む。定着処理が完了した用紙は、装置本体200の上部に形成された排出ユニット96へ向けて搬送される。
【0031】
排紙部96は、排出ローラ対961を有し、定着部97から搬送された用紙を排出ローラ対961の回転によって排紙トレイ911上に排出する。
【0032】
用紙供給部130は、装置本体200の筐体90に対して着脱自在に装着される用紙カセット41と、装置本体200のフロントカバー23に対して前方に(図では右方に)引出し可能に装着された手差しトレイ40とを含む。用紙供給部130と二次転写部98との間には、用紙供給部130からの用紙が搬送される給紙搬送路24が設けられている。給紙搬送路24には、用紙を二次転写部98に給送するための搬送ローラ対27が複数設けられている。
【0033】
手差しトレイ40の用紙載置面42に載置された用紙は、用紙が1枚ずつ給紙搬送路24へと繰り出され、搬送ローラ対27の回転によって二次転写部98へ導入される。一方、用紙カセット41の用紙載置面43に載置された用紙は、ピックアップローラ44等の駆動により、用紙が1枚ずつ給紙搬送路24へと繰り出され、搬送ローラ対27の回転によって二次転写部98へ導入される。
【0034】
なお、以上説明した画像形成装置1では、画像形成部93は、上記のようにフルカラー画像を形成することができる構成であるが、これに限定されることはなく、白黒画像やフルカラーではないカラー画像を形成する構成のものであってもよい。
【0035】
図2は、現像装置10の内部構造を概略的に示す断面図である。現像装置10はその内部空間を画定する現像容器50を含む。現像装置10は、前記内部空間内において、現像容器50の底部分に形成された現像剤貯留部51と、現像剤貯留部51の上方に配置された磁気ローラ56(現像剤担持体)と、磁気ローラ56の斜め上方位置で磁気ローラ56に対向配置された現像ローラ58(トナー担持体)と、磁気ローラ56の側方位置で磁気ローラ56に対向配置された現像剤規制ブレード55とを含む。
【0036】
現像剤貯留部51は、非磁性体のトナーおよび磁性体のキャリアを含む現像剤を貯留すると共に、現像剤を攪拌しつつ搬送することが可能に構成されている。現像剤貯留部51は、現像装置10の長手方向に延びる2つの隣り合う現像剤貯留室51a,51bから構成されている。現像剤貯留室51a,51bは、現像容器50の底部分に固定された仕切り板52によって長手方向において互いに仕切られているが、長手方向における両端部において互いに連通されている。また、各現像剤貯留室51a,51bには、回転により現像剤を攪拌するスクリューフィーダ53,54が回転可能に装着されている。スクリューフィーダ53,54は、回転方向が互いに逆方向に設定されているので、現像剤は、現像剤貯留室51aおよび現像剤貯留室51b間を攪拌されつつ搬送される。この攪拌により、非磁性体からなるトナーと磁性体からなるキャリアとが混合され、トナーが例えばプラスに帯電され、キャリアが例えばマイナスに帯電される。また、キャリアおよびトナー間の静電気力により、キャリアにトナーが付着する。
【0037】
磁気ローラ56は、現像装置10の長手方向に延びるように配設され、図2では矢印で示すように反時計回りに回転可能な中空の磁気スリーブ57と、磁気スリーブ57を回転させる図略の回転軸とを含む。磁気スリーブ57は非磁性材料から形成されている。磁気スリーブ57の内部空間には、該磁気スリーブ57の軸方向に延びる第1磁石ロール63が内蔵されている。第1磁石ロール63は、支持軸64に固定状態で支持されており、磁気スリーブ57と共に回転しない。第1磁石ロール63には、現像剤貯留部51から現像剤を該磁気スリーブ57の周面61上に磁気的に汲み上げるための磁極、いわゆる汲上極(図示せず)が形成されている。周面61に汲み上げられた現像剤は、磁気スリーブ57の周面61上に現像剤層として磁気的に保持され、磁気スリーブ57の回転に伴って現像剤規制ブレード55に向けて搬送される。なお、磁気スリーブ57、第1磁石ロール63および支持軸64は互いに同軸に設定されている。
【0038】
現像剤規制ブレード55は、磁気スリーブ57の周面61上の現像剤層の層厚を規制するものである。現像剤規制ブレード55は、磁気スリーブ57の長手方向に沿って延びる磁性材料からなる板部材であり、現像容器50の適所に支持されている。また、現像剤規制ブレード55は、磁気スリーブ57の周面61との間で所定の規制ギャップを形成する先端部を有する。
【0039】
磁気スリーブ57内の第1磁石ロール63には、前記汲上極に加え、現像剤規制ブレード55の先端部に対向配置された磁極、いわゆる規制極(図示せず)が形成されている。したがって、磁性材料から形成された現像剤規制ブレード55は、磁気ローラ56の前記規制極によって磁化されて、現像剤規制ブレード55の先端部と前記規制極との間に、つまり規制ギャップにおいて磁路が形成される。
【0040】
現像ローラ58は、磁気スリーブ57に対して平行に延びるように配設され、図2では矢印で示すように反時計回りに回転可能な中空の現像スリーブ59と、現像スリーブ59を支持しつつ該現像スリーブ59を回転させる図略の回転軸とを含む。現像スリーブ59は、後述するように、磁気スリーブ57の周面61上の現像剤層からトナーのみを受け取り、該トナーをその周面62上に担持するものである。また、現像スリーブ59は、非磁性材料から形成され、磁気スリーブ57と略同一の長手方向寸法を有する。なお、現像スリーブ59の径と磁気スリーブ57の径とは、同一に設定してもよいし、同一に設定しなくてもよい。
【0041】
現像スリーブ59の周面62と磁気スリーブ57の周面61との間には、軸方向に均一な大きさの隙間Gが形成されている。隙間Gの大きさは、磁気スリーブ57の周面61上の現像剤層が現像剤規制ブレード55によって規制された後に現像スリーブ59の周面62に接触しつつ、隙間Gを通過できる程度に設定されている。本実施形態では、隙間Gは例えば0.3mmに設定されている。隙間Gの大きさが所定範囲を超えると、現像スリーブ59上にトナー層が形成され難くなり、所定範囲未満であると、現像剤層が隙間Gを通過できず、現像スリーブ59の周面62上に形成されたトナー層を乱してしまうおそれがある。また、現像スリーブ59の周面62と感光体ドラムのドラム表面との間にも、軸方向に均一な大きさの隙間が形成されている。本実施形態では、前記隙間は例えば0.12mmに設定されている。
【0042】
現像スリーブ59の内部空間には、該現像スリーブ59の軸方向に延びる第2磁石ロール65が内蔵されている。第2磁石ロール65は、支持軸66に固定状態で支持されており、現像スリーブ59と共に回転しないように構成されている。なお、現像スリーブ59、第2磁石ロール65および支持軸66は互いに同軸に設定されている。
【0043】
次に、図3を参照しながら、前記汲上極および前記規制極に加え、第1磁石ロール63に形成された他の複数の磁極、および第2磁石ロール65に形成された複数の磁極について説明する。同図に示すように、第1磁石ロール63には、第1磁極71が形成されている。第1磁極71は、第1磁石ロール63の軸方向に延び、磁気スリーブ57に面する側に、例えばN極が位置する磁極である。また、第1磁極71は、磁気スリーブ57における現像スリーブ59に対向した部位、つまり磁気スリーブ57における現像スリーブ59に最も近接する部位に対応する位置に形成されている。
【0044】
一方、第2磁石ロール65には、対向磁極73が形成されている。対向磁極73は、第2磁石ロール65の軸方向に延び、現像スリーブ59に面する側に、例えばS極が位置する磁極である。また、対向磁極73は、第1磁石ロール63の第1磁極71に対向するように形成されている。
【0045】
第2磁石ロール65には、現像スリーブ59の回転方向から見て対向磁極73よりも上流側に、かつ対向磁極73に隣接した上流側磁極74がさらに形成されている。上流側磁極74は、対向磁極73と同様に、第2磁石ロール65の軸方向に延び、現像スリーブ59に面する側にS極が位置する磁極である。第2磁石ロール65の対向磁極73および上流側磁極74は、本発明において第2磁極75を構成し、第1磁極71との間で磁界を形成する。
【0046】
第1磁石ロール63には、磁気スリーブ57の回転方向から見て第1磁極71よりも下流側に、かつ第1磁極71に隣接した第3磁極72がさらに形成されている。第3磁極72は、第1磁石ロール63の軸方向に延び、磁気スリーブ57に面する側に、例えばS極が位置する磁極である。
【0047】
本実施形態では、対向磁極73および上流側磁極74からなる第2磁極75の磁束密度は、磁気スリーブ57と現像スリーブ59との対向位置、つまり、磁気スリーブ57と現像スリーブ59との最近接位置から、現像スリーブ59の回転方向の上流側に向かうにつれて増加するように設定されている。これにより、第2磁極75が第1磁極71との間で形成する磁界は、前記対向位置から現像スリーブ59の回転方向上流側にわたる広い範囲に及ぶ。
【0048】
本実施形態では、そのような広い範囲に及ぶ磁界を次のようにして形成している。すなわち、対向磁極73の磁束密度ピーク値をF1とし、上流側磁極74の磁束密度ピーク値をF2とすると、F1およびF2を以下の関係を満たすように設定している。
F2>F1・・・(1)
対向磁極73の磁束密度ピーク値F1は、例えば45mTに設定され、上流側磁極74の磁束密度ピーク値F2は、例えば60mTに設定されている。
【0049】
本実施形態では、上記関係(1)が満たされていると共に、対向磁極73と上流側磁極74とを隣接して配置している。そのため、対向磁極73と上流側磁極74とが同一の極性を有している場合であっても、第1磁極71から出た磁力線Fは、図4に示すように、対向磁極73だけでなく上流側磁極74にも向かう。また、第1磁極71と上流側磁極74との間の磁束密度は、第1磁極71と対向磁極73との間の磁束密度よりも高くなる。これにより、2つの対向磁極73および上流側磁極74があたかも1つの磁極であるかのように第2磁極75と第1磁極71との間で磁束が分布され、そして、その分布の範囲は大きくなる。
【0050】
図5は、第1磁極71と第2磁極75との間の磁束分布を示す。同図に示すように、本実施形態では、第1磁極71と対向磁極73との間の磁束分布E1と、第1磁極71と上流側磁極74との間の磁束分布E2との間で磁束密度の低下が見られず、現像スリーブ59の回転方向上流側に向かうにつれて磁束密度が増加する。このように、あたかも1つの磁極として作用する2つの対向磁極73および上流側磁極74を用いることで、第2磁極75の磁束密度を、前記対向位置から現像スリーブ59の回転方向上流側に向かうにつれて増加させることは容易である。一方、上記関係(1)を満たさないうえに、対向磁極73と上流側磁極74とを離間して配置した場合、図6に示すように、第1磁極71と対向磁極73との間の磁束分布E1と、第1磁極71と上流側磁極74との間の磁束分布E2との間で磁束密度の低下が見られる。
【0051】
また、本実施形態では、第3磁極72の磁束密度ピーク値をF3とすると、F3は、対向磁極73の磁束密度ピーク値F1に対して次の関係を満たすように設定されている。
F3>F1・・・(2)
第3磁極72の磁束密度ピーク値F3は、例えば55mTに設定されている。
【0052】
本実施形態では、上記関係(2)が満たされていると共に、第3磁極72と第1磁極71とを隣接して配置しているので、第3磁極72の磁力により、該第3磁極72とは逆極性の第1磁極71の磁力を増加させることができる。そのため、現像剤層を磁気スリーブ57の周面61上に保持し易くなる。これにより、現像剤層が現像スリーブ59に磁気的に引き付けられて周面62に移動してしまう、いわゆるキャリア引きを抑制することができる。
【0053】
なお、第1磁極71の磁束密度ピーク値は、他の磁極よりも高い、例えば95mTに設定されている。また、第1磁極71および第3磁極72は、磁気スリーブ57の周面61に対して周方向に延びる所定の極幅を有し、また、対向磁極73および上流側磁極74も、現像スリーブ59の周面62に対して周方向に延びる所定の極幅を有している。本実施形態では、第1磁極71および上流側磁極74の各極幅は対向磁極73の極幅よりも大きく設定されている。
【0054】
次に、上記構成の現像装置10による現像動作およびその作用について、図2および図5を参照しながら説明する。
【0055】
まず、非磁性体のトナーは、現像剤貯留部51において磁性体のキャリアと共に攪拌されることで帯電され、キャリアに付着する。キャリアと帯電されたトナーとを含む現像剤は、磁気ローラ56の前記汲上極の磁力によって現像剤貯留部51から磁気スリーブ57の周面61に汲み上げられる。汲み上げられた現像剤は、磁気スリーブ57の周面61上に現像剤層として磁気的に保持され、磁気スリーブ57の回転に伴って現像剤規制ブレード55に向けて搬送される。
【0056】
そして、現像剤規制ブレード55は、前記規制ギャップにおいて周面61上の現像剤層を規制して均一化かつ薄層化する。これにより、周面61上には、所定厚さの現像剤層(以下、磁気ブラシ層Dという)が形成される。
【0057】
周面61上の磁気ブラシ層Dは、磁気スリーブ57の回転に伴い、磁気スリーブ57と現像スリーブ59との対向位置に搬送される。その対向位置は、第1磁極71と第2磁極75の対向磁極73との間で形成される強い磁界内にあるため、磁気ブラシ層Dにおいて、キャリアCからなる磁気ブラシDBが立ち上がって現像スリーブ59の周面62に接触する。このように、第1磁極71および対向磁極73間の磁界によって良好な磁気ブラシDBが形成される。
【0058】
磁気スリーブ57および現像スリーブ59のそれぞれには、所定のバイアスが印加されているため、現像スリーブ59の周面62に接触した状態の磁気ブラシDBに付着しているトナーTは、磁気スリーブ57および現像スリーブ59間の電位差によって磁気ブラシDBから現像スリーブ59の周面62に移動する。これにより、周面62上に所定厚さのトナー層が形成される。磁気ブラシDBを構成するキャリアCは、第1磁極71の磁力によって磁気スリーブ57の周面61上に保持され、現像スリーブ59に移動しない。
【0059】
周面62上のトナー層は、現像スリーブ59の回転に伴って感光体ドラム17のドラム表面に向けて搬送される。感光体ドラム17にも所定のバイアスが印加されているので、感光体ドラム17と現像スリーブ59との間の電位差によってトナー層のトナーTが感光体ドラム17のドラム表面に移動する。これにより、ドラム表面上の静電潜像が現像される。
【0060】
一方、現像スリーブ59からドラム表面に移動せず、現像スリーブ59上に残留する残留トナーTAは、つまり、現像に用いられなかった残留トナーTAは、感光体ドラム17を通過した後、磁気スリーブ57の回転に伴って磁気スリーブ57と現像スリーブ59との対向位置に戻ってくる。
【0061】
本実施形態では、現像スリーブ59の回転方向から見て前記対向位置よりも上流側には、第2磁極75の上流側磁極74が位置しており、上流側磁極74と第1磁極71との間で磁界が形成されている。この磁界の強度は、上記したように、前記対向位置から現像スリーブ59の回転方向上流側に向かうにつれて、つまり対向磁極73から上流側磁極74に向かうにつれて増加する。そのため、磁気スリーブ57の周面61上の磁気ブラシDBは、前記対向位置を過ぎても、上流側磁極74の磁力が及ぶ範囲内において立ち上がった状態を維持して、現像スリーブ59の周面62に接触することができる。このように、本実施形態では、上流側磁極74を設けない構成と比較して、磁気ブラシDBが現像スリーブ59の周面62に周方向に接触する距離が大きい。これにより、残留トナーTAが前記対向位置に到達する前に残留トナーTAを磁気ブラシDBによって掻き取って回収することができると共に、残留トナーTAの回収性を向上させることができる。
【0062】
以上の説明から明らかなように、現像スリーブ59は、磁気スリーブ57から良好にトナーTを受け取り、十分な量のトナーTを感光体ドラム17に供給できると共に、磁気スリーブ57の周面61上の磁気ブラシDBは、現像スリーブ59の周面62上の残留トナーTAを良好に回収することができるので、現像履歴現象等の不都合を抑制することができる。
【0063】
また、第3磁極72の磁力によって第1磁極71の磁力が増加しているので、磁気ブラシ層Dを磁気スリーブ57の周面61上に保持し易くなる。これにより、磁気ブラシ層Dが対向磁極73の磁力によって現像スリーブ59に磁気的に引き付けられて周面62に移動してしまう、いわゆるキャリアC引きを抑制することができる。
【0064】
以上説明した実施形態では、第2磁極75を対向磁極73および上流側磁極74の2つから構成した場合につき説明したが、第2磁極75は、前記対向位置から現像スリーブ59の回転方向上流側に向かって配置された3つ以上の磁極から構成してもよい。この場合であっても、それらの磁極の磁束密度ピーク値は、前記回転方向上流側に向かうにつれて大きくなるように設定される。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
10 現像装置
17 感光体ドラム(像担持体)
56 磁気ローラ(現像剤担持体)
57 磁気スリーブ
58 現像ローラ(トナー担持体)
59 現像スリーブ
71 第1磁極
72 第3磁極
73 対向磁極
74 上流側磁極
75 第2磁極
C キャリア
D 磁気ブラシ層
DB 磁気ブラシ
T トナー
TA 残留トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体のトナーおよび磁性体のキャリアを含む現像剤を攪拌しつつ貯留する現像剤貯留部と、
第1磁極を有し、前記現像剤貯留部から前記現像剤を受け取って現像剤層を前記第1磁極の磁力により担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に対向配置されており、この対向位置で前記現像剤層に接触した状態で回転しつつ、前記現像剤層から前記トナーを受け取って担持し、該トナーを所定の像担持体に供給するトナー担持体と、
を備え、
前記トナー担持体は、前記第1磁極とは逆の極性を有し、前記第1磁極との間で磁界を形成する第2磁極を含み、
前記第2磁極の磁束密度は、前記対向位置から、前記トナー担持体の回転方向の上流側に向かうにつれて増加するように設定されている現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において、前記第2磁極は、前記第1磁極に対向配置された対向磁極と、前記トナー担持体の回転方向から見て前記対向磁極よりも上流側に、かつ前記対向磁極に隣接して配置された上流側磁極とを有し、
前記上流側磁極の磁束密度は、前記対向磁極の磁束密度よりも大きく設定されている現像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現像装置において、前記現像剤担持体は、所定の方向に回転可能に構成されたものであって、前記第1磁極とは逆の極性を有し、前記現像剤担持体の回転方向から見て前記第1磁極よりも下流側に、かつ前記第1磁極に隣接して配置された第3磁極をさらに含み、
前記第3磁極の磁束密度は、前記対向磁極の磁束密度よりも大きく設定されている現像装置。
【請求項4】
トナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体にトナーを供給して該像担持体上に前記トナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像をシート上に転写させる転写部材と、
前記シート上の前記トナー像を該シート上に定着させる定着部と、
を備え、
前記現像装置として、請求項1〜3のいずれか一項に記載の現像装置が採用されている画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−150220(P2011−150220A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12861(P2010−12861)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】