説明

現像装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】現像ローラに担持された現像剤のうち、出力用紙の幅からはみ出す分に対しては余計なストレスを与えないようにする。
【解決手段】画像形成装置1は、感光体ドラム10の表面の静電潜像に現像装置13でトナーを付着させ、トナー像を形成する。現像装置13は、トナー成分と磁性キャリアからなる2成分現像剤を磁界で現像ローラ33表面に担持する。現像剤の層厚を規制する規制部材35はシャフト36とブレード37からなり、ブレード37の長手方向対向辺には、A3サイズを縦にした用紙幅に対応する第1の規制部K1と、A4サイズを縦にした用紙幅に対応する第2の規制部K2とを形成する。電動機22でブレード37を上下反転させることにより、第1の規制部K1と第2の規制部K2を使い分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の現像装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、静電潜像が形成された像担持体、例えば感光体ドラム表面をトナーで現像する。最近では、トナー成分と磁性キャリアからなる2成分現像剤が用いられることが多い。2成分現像剤は磁界で現像ローラに担持され、トナー成分のみ電界によって像担持体に付着せしめられる。このような現像装置を備えた画像形成装置の例を特許文献1、2に見ることができる。
【0003】
電子写真方式画像形成装置の現像装置では、像担持体に供給するトナー量を規制するため、現像ローラに規制部材を対向させる。規制部材の存在は不可欠であるが、反面、その存在によりトナーが機械的ストレスを受け、劣化が促進される。
【0004】
上記の問題は以前から認識されており、特許文献1にもそれを解決する手段が記載されている。特許文献1記載の装置では、規制部材と現像ローラとの間に形成される規制ギャップに発生する磁界の強さを、画像の印字率に応じて調節し、トナーへの機械的ストレスを低減する。具体的には、低印字率の画像を連続印刷する場合に現像ローラ内の磁界発生部材を所定量回転移動させて規制ギャップにおける磁界の強さを変化させ、現像剤に加わるストレスを緩和する。また特許文献2にはブレード部材を個別に出入りさせることにより規制ブレードの厚みを変化させる装置が記載されている。この装置も現像剤に加わるストレスの軽減に役立てることができる。
【特許文献1】特開2006−208579号公報
【特許文献2】特開2000−267436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子写真方式画像形成装置では、通常、2種類以上の幅の出力用紙(合成樹脂フィルムも含む)に画像を形成する。ドラム類やローラ類の幅は、その画像形成装置で取り扱う最大幅の出力用紙に合わせて決められる。
【0006】
現像ローラは、幅の狭い出力用紙に画像を形成するときも、最大幅の出力用紙に対するのと同じ幅で現像剤を担持する。現像剤は規制ギャップでストレスを受け、トナー表面処理剤の脱離や埋め込み、キャリアのコート剤剥がれ、温度上昇による性能劣化などの悪影響を被る。規制ギャップ通過時に受けるストレスは、出力用紙の幅内の現像剤にとっては仕方のないことと言えるが、出力用紙の幅からはみ出し、トナー像形成に関わることなく回収される現像剤にとっては過剰なストレス以外の何者でもない。このように、単に余分なストレスを経験したのみで回収される現像剤の累積量が多くなるにつれ、現像剤全体としての劣化が進む。この問題に関しては特許文献1記載の装置も特許文献2記載の装置も解決策を見出し得ていない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、磁性を有する現像剤を磁界で現像ローラ表面に担持させ、所定の規制ギャップを隔てて現像ローラに対向する規制部材により担持現像剤の層厚を規制した上で像担持体に供給する現像装置において、現像ローラに担持された現像剤のうち、出力用紙の幅からはみ出す分に対しては余計なストレスを与えないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために本発明は、磁性を有する現像剤を磁界で現像ローラ表面に担持させ、所定の規制ギャップを隔てて現像ローラに対向する規制部材により担持現像剤の層厚を規制した上で像担持体に供給する現像装置において、前記規制部材の中で、前記現像ローラとの間に前記規制ギャップを形成する部分の幅を、現像剤中のトナーが転写される出力用紙の幅に応じて変えられるようにしたことを特徴としている。
【0009】
この構成によると、現像ローラの表面に担持された現像剤の中で、出力用紙の幅に応じた箇所の現像剤は正規の規制ギャップを通すが、そこからはみ出した箇所の現像剤はそれよりも広い間隙を通すこととして、ストレスを軽減することができる。従って、トナー像の形成に関わることなく回収される現像剤の累積量が多くなったとしても現像剤の劣化は遅く、長期間にわたり現像剤性能を維持して安定したトナー像を形成できる。
【0010】
(2)また本発明は、上記構成の現像装置において、前記規制部材は前記現像ローラと平行な軸線まわりに回動可能であり、回動角によって、現像ローラとの間に前記規制ギャップを形成する部分の幅が異なることを特徴としている。
【0011】
この構成によると、規制部材を回転させることにより規制部材の幅を確実且つ速やかに切り換えることができる。
【0012】
(3)また本発明は、上記構成の現像装置を備える画像形成装置であることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、長期間にわたり安定した画像形成を行うことができる画像形成装置が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、現像ローラの表面に担持された現像剤の中で、出力用紙の幅に応じた箇所の現像剤は正規の幅の規制ギャップを通すが、そこからはみ出した箇所の現像剤はそれよりも広い間隔を通すこととして、トナー像の形成に関わることなく回収される現像剤に無用のストレスを与えず、現像剤の劣化を抑制することができる。これにより、長期間にわたり現像剤性能を維持して安定したトナー像を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1実施形態を図1−5に示す。図1は画像形成装置の概略構成図、図2は現像装置の垂直断面図、図3及び図4は規制部材の正面図にして互いに異なる動作状態を示すもの、図5は規制ギャップの間隔と現像剤に加わるストレスとの相関関係を示すグラフである。
【0016】
図1に示す画像形成装置1はプリンタである。画像形成装置1は、像担持体である感光体ドラム10と、感光体ドラム10の表面を均一に帯電させる帯電装置11と、感光体ドラム10の帯電表面を露光して静電潜像を形成する画像書込装置(レーザスキャンユニット)12と、感光体ドラム10の表面の静電潜像をトナー像として現像する現像装置13と、感光体ドラム10との間に転写ニップ部14を形成し、出力用紙にトナー転写を行う転写ローラ15と、トナー転写後感光体ドラム10の表面に残留するトナーを回収するクリーニング装置16と、出力用紙に転写されたトナーを定着する定着装置17と、転写ニップ部14に供給する出力用紙を収容する出力用紙収容部18と、トナー定着後の出力用紙を受ける排紙部19と、出力用紙収容部18から排紙部まで出力用紙を搬送する搬送部20と、全体動作を統括制御する制御部21を備える。現像装置13以外の構成要素は従来公知のものをそのまま使用することができる。
【0017】
続いて図2−4に基づき現像装置13の構造を説明する。現像装置13の構造は特許文献1に記載されたものと基本的に同じであり、ケーシング30の内部に、第1攪拌スクリュー31及び第2攪拌スクリュー32と、現像ローラ33とが水平軸線まわりに回転自在に軸支されている。第1攪拌スクリュー31、第2攪拌スクリュー32、及び現像ローラ33には図示しない電動機より回転動力が与えられる。現像ローラ33の一部はケーシング30の開口部34から露出し、感光体ドラム10に向き合う。
【0018】
現像ローラ33の上には、現像ローラ33に担持された現像剤の層厚を規制する規制部材35が配置されている。規制部材35はシャフト36に磁性または非磁性のブレード37を取り付けたものであり、電動機22によってシャフト36が回転せしめられるとブレード37も回転する。ブレード37は現像ローラ33との間に所定間隔の規制ギャップ38を形成する。
【0019】
現像ローラ33の内部には、現像ローラ33の外側に磁界を発生させる5個の磁極40a、40b、40c、40d、40eが配置される。これらの磁極はいずれも永久磁石からなり、その中で磁極40a、40c、40dがS極であり、磁極40b、40eがN極とされている。磁極40a、40b、40c、40d、40eは位置不動であり、現像ローラ33がその周囲を回る。
【0020】
画像形成装置1は出力用紙の幅が2種類に設定されている。1種類は縦にしたA3サイズの用紙の幅、言い換えれば横にしたA4サイズの用紙の幅である。もう1種類は縦にしたA4サイズの用紙の幅である。ブレード37の長手方向対向辺には出力用紙の幅に対応させて2種類の幅の規制部を形成する。
【0021】
ブレード37の一方の辺全体が第1の規制部K1となる。第1の規制部K1の幅は縦にしたA3用紙の幅より若干大きい。
【0022】
第2の規制部K2は、第1の規制部K1と反対側の辺に、その中央部から突き出す形で設けられる。第2の規制部K2の幅は縦にしたA4用紙の幅より若干大きい。規制ギャップ38の間隔は0.3〜1mm、第2の規制部K2の突き出し量は0.1〜0.3mmである。
【0023】
シャフト36の軸心から第1の規制部K1までの距離、言い換えれば第1の規制部K1の半径と、シャフト36の軸心から第2の規制部K2までの距離、言い換えれば第2の規制部K2の半径は、相等しい。
【0024】
現像装置13の動作は次の通りである。感光体ドラム10が回転するに従い、第1攪拌スクリュー31、第2攪拌スクリュー32、現像ローラ33も同期回転する。現像ローラ33の表面にはN極である磁極40eの磁界で現像剤が汲み上げられる。現像ローラ33の表面に付着した現像剤は、規制ギャップ38に至ると、S極である磁極40aによる磁界でブラシ状に起立する。いわゆる磁気ブラシとなる。磁気ブラシの高さはブレード37で規制される。
【0025】
規制ギャップ38を通過した磁気ブラシは、感光体ドラム10に対向する位置まで移動すると、N極である磁極42bによる磁界で感光体ドラム10に接触し、感光体ドラム10表面の静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する。
【0026】
トナー像の形成に使用されなかった現像剤はS極である磁極42cで現像装置13内に回収される。さらに現像剤は、同じくS極である磁極42dによる磁界で現像ローラ33から離脱する。そして第2攪拌スクリュー32により攪拌、搬送された後、磁極42eの磁界により再び現像ローラ33に付着する。
【0027】
ここで、出力用紙の幅がA4の縦サイズであるときは、図3に示すように、ブレード37の第2の規制部K2を下に向け、現像ローラ33に対向させておく。このようにしておくと、現像ローラ33の表面に担持された現像剤の中で、出力用紙の幅に応じた箇所の現像剤は正規の規制ギャップ38を通ることになり、層厚を規制されるが、そこからはみ出した箇所の現像剤は規制ギャップ38よりも広い間隙を通ることになり、受けるストレスが軽減される。従って、トナー像の形成に関わることなく回収される現像剤の累積量が多くなったとしても、現像剤の劣化は遅く、長期間にわたり現像剤性能を維持して安定したトナー像を形成できる。
【0028】
出力用紙の幅がA3の縦サイズあるいはA4の横サイズであるときは、電動機22を駆動してブレード37を回動させ、ブレード37の上下を反転する。図4のように第1の規制部K1が下を向くと、現像ローラ33に担持された現像剤の全体が第1の規制部K1によって層厚を規制されることになる。
【0029】
規制ギャップの間隔と現像剤の受けるストレスの間には図5のグラフのような相関関係がある。ストレスを図る尺度としては現像ローラの回転トルクを用いた。
【0030】
幅315mmのブレードの全幅を規制部として用い、規制ギャップを0.55mmとして現像ローラの回転トルクを測定したところ、1.3kgf・cmであった。規制ギャップが0.55mmである箇所の幅を225mmに減らし、残りの箇所の規制ギャップを0.7mmに広げて現像ローラの回転トルクを測定したところ、1.0kgf・cmであった。ストレス低減率は約23%となった。
【0031】
本発明の第2実施形態を図6−8に示す。図6は現像装置の垂直断面図、図7及び図8は規制部材の正面図にして互いに異なる動作状態を示すものである。
【0032】
第2実施形態の現像装置13では、規制部材35を構成する部品として、ブレード37に代わりローラ39が用いられている。ローラ39の両端部には、円周の半分に肉盗み部39aが設けられ、その間の部分が第2の規制部K2となる。肉盗み部39aが設けられなかった箇所は第1の規制部K1となる。それ以外の構成は第1実施形態と変わらない。
【0033】
第1実施形態はブレード37の上下反転で、第2実施形態はローラ39の上下反転で、第1の規制部K1と第2の規制部K2を切り換えるものであるが、第1の規制部K1と第2の規制部K2の切り換え手段はこれに限定されない。例えば第1の規制部K1の幅を有するブレードと第2の規制部K2の幅を有するブレードを別々に用意し、それらを使い分けるといった構成が可能である。また、「A3縦」「A4縦」以外の用紙幅にも対応できるように、規制部の幅の段階を多くすることも可能である。
【0034】
以上本発明の実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することができる。例えばドラムでなくベルトを像担持体とする構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、2成分現像剤を磁界で現像ローラに引きつける方式の画像形成装置に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】画像形成装置の概略構成図
【図2】現像装置の垂直断面図
【図3】規制部材の正面図
【図4】規制部材の正面図にして、図3と異なる動作状態を示すもの
【図5】規制ギャップの間隔と現像剤に加わるストレスとの相関関係を示すグラフ
【図6】第2実施形態に係る現像装置の垂直断面図
【図7】第2実施形態に係る規制部材の正面図
【図8】第2実施形態に係る規制部材の正面図にして、図7と異なる動作状態を示すもの
【符号の説明】
【0037】
1 画像形成装置
10 感光体ドラム(像担持体)
13 現像装置
33 現像ローラ
35 規制部材
37 ブレード
38 規制ギャップ
39 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する現像剤を磁界で現像ローラ表面に担持させ、所定の規制ギャップを隔てて現像ローラに対向する規制部材により担持現像剤の層厚を規制した上で像担持体に供給する現像装置において、
前記規制部材の中で、前記現像ローラとの間に前記規制ギャップを形成する部分の幅を、現像剤中のトナーが転写される出力用紙の幅に応じて変えられるようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記規制部材は前記現像ローラと平行な軸線まわりに回動可能であり、回動角によって、現像ローラとの間に前記規制ギャップを形成する部分の幅が異なることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−275662(P2008−275662A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115516(P2007−115516)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】