説明

現像装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】帯電時における逆極性トナーの発生を有効に防止しながら導電性トナーに対する効率的な帯電を実現し、従前の導電性トナーを使用する際の不具合を改善する。
【解決手段】 静電潜像Zを担持した像担持体1に対向配置され、帯電された導電性トナー2を担持搬送するトナー担持体3と、このトナー担持体3と像担持体1との間に現像電界が形成され、この現像電界領域にて像担持体1上の静電潜像Zをトナー現像する現像電界形成手段4と、トナー担持体3に対向配置され且つ導電部材6aの表面が絶縁被覆される分極帯電部材6を有し、この分極帯電部材6とトナー担持体3との間に電荷分極電界を作用させ、この電荷分極電界作用域にて導電性トナー2を挟んで電荷分極させる電荷分極手段5とを備える。これを用いた画像形成装置をも対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置で用いられる現像装置に係り、特に、帯電された導電性トナーによって静電潜像を可視像化する現像装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における電子写真方式の画像形成装置では、絶縁性トナーを摩擦帯電して電荷を与え、現像に供する方法が広く一般的に用いられている。
ここで、トナーを帯電させる方法としては、トナーのバインダ樹脂や添加剤との組合せによりトナーの摩擦帯電性を予め制御しておき、現像装置内でトナーが攪拌されたり搬送されたりしていることを利用し、搬送経路の途中におけるトナーの攪拌動作や搬送動作によりトナー同士を摩擦させることで、摩擦帯電を生じやすい物質とトナーとの摩擦によってトナーを帯電させる方法が多く採用されている。
【0003】
このようなトナーの帯電方法において、摩擦によって帯電したトナーの帯電量には、ある程度の帯電分布が存在しているため、トナーには、帯電量が少ない低帯電トナーや、トナー全体の帯電極性とは逆の帯電極性を有する逆極性トナーが含まれていることが多い。
このとき、低帯電トナーは、現像装置内のトナー担持体から離れて画像形成装置内を漂う所謂トナークラウドとなりやすく、このトナークラウドは画像形成装置の不良原因となる。
また、逆極性トナーは、像担持体上の静電潜像のうち、本来トナーが付着しない背景部に引きつけられ、背景部の一様な汚れである所謂かぶりを発生させる。
更に、この種の摩擦帯電方法にあっては、環境変化や経時変化の影響を受けやすく、トナーや攪拌部材等の摩擦帯電機構の表面状態が変化し、結果的に、トナーの帯電状態が不安定になり易い。
【0004】
そこで、このような不具合を解消するために、導電性トナーを使用する方法、具体的には、導電性トナーへ電荷を注入して帯電し、現像に供する方法が知られている。
この方法は、摩擦帯電を利用しないため、種々の利点がある。
特に、導電性トナーは電荷が移動し易く、均一な電荷をトナーに与えることができるため、かぶりやトナークラウドを防止でき、環境変化や経時劣化の影響を受けにくいことは最大の特長である。また、摩擦帯電機構が不要なため、構造が簡単で、小型化、低価格化が可能であることも、大きな魅力である。
【0005】
ところが、導電性トナーが汎用的にならない最大の理由は、コロトロンやバイアスロールといった汎用的な静電転写方式では、吸湿した記録紙へのトナー像の転写が困難なためである。
また、カラー画像を形成する場合、色材の異なるカラートナーを重ねて種々の色を再現するが、導電性トナーではトナーを重ねることができず、カラー化に対応できないためである。
この原因は、トナーが導電性であるが故に、吸湿して低抵抗になった記録紙やトナー相互間でトナー電荷の移動が発生し、トナーへの静電吸着力が失われてしまうことによる。
【0006】
また、別の技術的課題として、導電性トナーは容易に電荷注入するため、潜像電位が不安定になると、現像バイアスと静電潜像の背景部との間の小さな電位差(クリーニング電位とする)でも、トナーへ逆極性の電荷が電荷注入し、かぶりの原因になり易い。
【0007】
このような技術的課題を解決するために、従来にあっては、以下のa〜eの先行技術が提案されている。
すなわち、
a トナーとして、正負両極性のうち一方の極性に帯電し易く、かつ、該極性に帯電した後は他方の極性に帯電し難い特性を具備させた提案、言い換えれば、電荷を注入しやすいが、リークしにくいトナー材料に関する提案(例えば特許文献1参照)、
b 基体の少なくとも一方の面に絶縁性媒質を所定量塗工し、所定レベルの体積固有抵抗値を備えた記録紙(転写媒体)を用いることで、紙の電荷保持量を安定且つ均一とする提案(例えば特許文献2参照)、
c 現像後かつ転写に先立ち静電潜像の画像部電位を現像時の画像部電位の所定レベルまで低減させ、トナーの飛び散りを抑制する提案(例えば特許文献3参照)、
d 導電性トナーと絶縁性トナーとの混合により、転写時には、紙から導電性トナーへの電荷注入を絶縁性トナー(絶縁体)にて防ぎ、導電性トナーと紙との非接触化を図ることで、導電性トナーの電荷保持性を保つようにした提案(例えば特許文献4参照)、
e 像担持体上の導電性トナーを加熱することでトナーを軟化・溶融し、軟化・溶融したトナーの粘着力を利用することにより像担持体から被記録材への転写性を良好に保つようにした非静電転写技術に関する提案(例えば特許文献5参照)、などが試みられてきた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−111604号公報(発明の実施の形態、図1)
【特許文献2】特公昭58−26026号公報(第1−5頁、図1)
【特許文献3】特公昭63−10426号公報(第1−2頁、第2図)
【特許文献4】特開昭63−159870号公報(第1−4頁、第1図)
【特許文献5】特開平6−95518号公報(実施例、図1)
【特許文献6】特開2004−170731号公報(課題を解決するための手段,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、いずれの先行技術も絶縁トナー同等の転写性を得ることができないばかりでなく、例えば先行技術a,dにあっては、特殊な材料を使用しなければならないし、また、先行技術bにあっては、特殊な記録紙を使用しなければならず、更に、先行技術c,eにあっては、特殊な作像プロセスが必要不可欠になるため、いずれの先行技術にあっても、汎用性を大きく損なう懸念があり、現段階において実用化には至っていない。
【0010】
そこで、このような技術的課題を解決する手段としては、例えば図14に示すように、静電潜像を担持した感光体ドラム等の像担持体201に対向配置され、帯電された導電性トナー202を担持搬送する現像ロール(現像電極)203と、この現像ロール203と像担持体201との間に現像電界が形成され、この現像電界作用領域にて像担持体201上の静電潜像をトナー現像する現像バイアス電源204と、現像ロール203に対向配置される電荷注入ロール(注入電極)206を有し、現像ロール203と電荷注入ロール206との間に現像電界より大きな電荷注入電界を作用させ、導電性トナー202に電荷注入すると共に、電荷注入された導電性トナー202を現像ロール203に担持させる電荷注入装置205とを備えたものが既に提供されている(例えば特許文献6参照)。
ここで、導電性トナー202には、現像電界において高抵抗に変化し且つ現像電界より大きな電荷注入電界において低抵抗に変化する抵抗可変部を具備させることが必要である。尚、図14中、符号207は電荷注入バイアスを印加する電荷注入バイアス電源を示す。
【0011】
本態様によれば、導電性トナーに電荷を注入する場合に、抵抗可変部の抵抗を低くすることにより導電性トナーに対し容易に電荷を注入することができ、しかも、現像をする場合、可変抵抗部の抵抗を高くすることにより導電性トナーの電荷保持性を向上させることができる。
したがって、導電性トナーに対する電荷注入性と、注入された電荷保持性とを両立させることが可能になり、導電性トナーに対する電荷注入性を良好に保ちながら、現像電界作用領域において不要に電荷注入される事態を有効に回避することができる。このため、現像電界作用領域において、低電荷トナーや逆極性トナーが生成されることは少なく、かぶりやトナークラウドを有効に防止でき、導電性トナーに対する現像性能を良好に保つことができる。
【0012】
しかしながら、この種の電荷注入方式にあっては、電荷注入領域にて現像電界より大きな電荷注入電界を作用させるようにしているので、電荷注入領域にて逆極性トナー(WST:Wrong Sigh Tonerの略)が発生し易いという技術的課題が新たに見出された。
ここで、電荷注入方式において、電荷注入電界(導電性トナーの粒子層への印加電界に相当)の大きさを変え、逆極性トナー(WST)の発生率を調べたところ、図15に示す結果が得られた。
図15によれば、電荷注入電界が低電界である(図15中A領域)と、図16に示すように、帯電効率が悪く、帯電できないトナーが、帯電したトナーに付着し、又は、現像電極との非静電的付着力により現像電極側へ移動する。従って、電荷注入電界を高める程、帯電効率の上昇により、WSTが減少することが理解される。
一方、電荷注入電界が高電界である(図15中B領域)と、図17に示すように、帯電したトナーが現像電極へ移動し、多層を形成すると、トナー相互で電荷交換して分極してしまい、上層トナーがWST化する。従って、電荷注入電界を高める程、分極に起因するWSTが増加する傾向にある。
尚、電荷注入電界が高電界であると、異常放電が発生し易く、その分、WSTの発生率が増加する懸念もある。
【0013】
本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、帯電時における逆極性トナーの発生を有効に防止しながら導電性トナーに対する効率的な帯電を実現し、従前の導電性トナーを使用する際の不具合である静電転写性の改善、カラー適性の改善を行い、かぶりやトナークラウドを有効に防止でき、環境変化や経時劣化の影響を受けにくく、簡単で且つ汎用性のある現像装置及びこれを用いた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、図1(a)に示すように、導電性トナー2にて静電潜像Zを可視像化する現像装置において、静電潜像Zを担持した像担持体1に対向配置され、帯電された導電性トナー2を担持搬送するトナー担持体3と、このトナー担持体3と像担持体1との間に現像電界が形成され、この現像電界領域にて像担持体1上の静電潜像Zをトナー現像する現像電界形成手段4と、トナー担持体3に対向配置され且つ導電部材6aの表面が絶縁被覆される分極帯電部材6を有し、この分極帯電部材6とトナー担持体3との間に電荷分極電界を作用させ、この電荷分極電界作用域にて導電性トナー2を挟んで電荷分極させる電荷分極手段5とを備えたことを特徴とするものである。
【0015】
このような技術的手段において、導電性トナー2を扱う現像方式としては、例えば一成分現像方式や二成分現像方式などのいずれの現像方式であってもよい。
また、トナー担持体3としては、導電性トナー2を担持搬送するものであれば、ロール状、ベルト状など任意の形態でよく、磁極のレイアウト等も任意に設定して差し支えない。
更に、現像電界形成手段4は、像担持体1とトナー担持体3との間に現像電界を形成するものを広く含み、ここでいう現像電界としては直流電界のみ、あるいは、交番電界を重畳した直流電界など適宜選定してよい。
【0016】
また、本発明において、導電性トナー2の抵抗特性上からの好ましい態様としては、現像電界作用域にて高抵抗に変化し且つ電荷分極電界ED作用域にて低抵抗に変化する態様が挙げられる。この場合、現像領域(現像電界作用域)にて高抵抗であれば電荷保持性が良好であり、一方、分極帯電領域(電荷分極電界作用域)にて低抵抗であれば電荷分極性が良好である。
更に、導電性トナー2の製造上からの代表的態様としては、導電性トナー基体をベースとし、この表面に絶縁性又は半導電性被覆層を設けた態様や、例えば絶縁性トナー基体をベースとし、その表面に導電性微粒子を埋設する等各種の態様がある。
前者の態様にあっては、導電性トナー基体は結果的に導電性を有するトナー基体であればよく、例えば絶縁性トナー基体内に導電性微粒子を混入させたり、絶縁性トナー基体の外表面近傍に導電性微粒子を付着させる等適宜選定して差し支えない。また、被覆層の好ましい態様としては、例えば無定形高分子を主成分とする被覆層が挙げられる。ここで、無定形高分子を主成分とする被覆層とは、少なくとも無定形高分子相の割合が80%以上であることを意味する。更に、被覆層としては、導電性トナー基体を完全に被覆する態様に限らず、不完全に被覆する態様をも含む。この場合において、抵抗調整は被覆層の一部に凹所を設けたり、あるいは、層厚を調整することにより行うようにすればよい。
一方、後者の態様にあっては、絶縁性トナー基体は電子写真方式等で使用される絶縁性トナーであればよく、例えばスチレンアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂等を使用したものが挙げられる。更に、導電性微粒子としては、絶縁性トナー基体に埋め込む観点からは、好ましくは大きさがサブミクロンのものがよく、例えばITO、酸化すず、酸化亜鉛、酸化チタン等の微粒子が挙げられる。更に、導電性微粒子にあっては、導電性トナー2をカラートナーに適用するためには、透明性を備えていることが好ましく、このことでカラー適性(特に発色性)に優れた導電性トナー2を得ることが可能になる。
【0017】
更に、電荷分極手段5としては、図1(b)に示すように、分極帯電部材6とトナー担持体3との間に電荷分極電界EDを作用させ、この電荷分極電界ED作用下にて導電性トナー2を挟んで電荷分極させるものであればあればよい。
ここで、分極帯電部材6は、ステンレス、アルミニウム、導電性ゴム又は樹脂等の導電部材6aの表面を絶縁被覆層6bにて絶縁被覆した態様であればよく、この絶縁被覆層6bは通常導電部材6aと別部材(絶縁性樹脂層や塗装膜など)であるが、これに限られるものではなく、例えばアルミニウムにアルマイト処理を施すなど導電部材6aに所定の表面処理を施して一体的に形成してもよい。このとき、分極帯電部材6の導電部材6aを電極として利用(所定のバイアスを印加若しくは接地)することにより電荷分極電界EDを生成可能とし、絶縁被覆層6bにて電荷分極作用を生じさせることが可能である。尚、トナー担持体3は帯電された導電性トナー2を担持搬送し、かつ、像担持体1や分極帯電部材6との間で電極として作用することが必要であるため、導電基材3aの表面を絶縁被覆層3bに絶縁被覆した態様が採用されている。
【0018】
そして、分極帯電部材6の形態としては、導電性トナー2を挟んで電荷分極される機能部材であれば、ロール状、プレート状、ブレード状等適宜選択して差し支えない。
そしてまた、電荷分極手段5としては、分極帯電部材6とトナー担持体3との間に電荷分極電界EDを生成させるための要素として、通常電源等の電荷分極電界形成手段7が用いられる。ここでいう電荷分極電界EDとしては直流電界のみ、あるいは、交番電界を重畳した直流電界など適宜選定してよい。
この場合において、電荷分極電界EDとしては適宜選定して差し支えないが、導電性トナー2へ作用する電界の大きさにより導電性トナー2aの電気抵抗を上下にスイッチング可能な態様にあっては、例えば分極帯電部材6とトナー担持体3との間に現像電界より大きな電荷分極電界EDを作用させ、導電性トナー2aの電気抵抗を低下させることが好ましい。
【0019】
このような電荷分極手段5によれば、電荷分極電界ED作用下では、導電性トナー2層間で電荷交換が行われ、トナー担持体3側の導電性トナー2aが正規帯電(例えば負帯電)、分極帯電部材6側の導電性トナー2bが正規帯電とは逆極の逆極帯電し、夫々の導電性トナー2a,2bが静電的吸引力によりトナー担持体3、分極帯電部材6に保持される。このため、正規極性トナー2aのみがトナー担持体3に移行することになり、逆極性トナー2bがトナー担持体3に移行し、現像領域にて現像に供されることはない。
【0020】
また、電荷分極手段5としては、分極帯電部材6とトナー担持体3にトナーが供給可能なトナー供給部材とを兼用する態様であってもよいし、トナー担持体3に担持された状態のトナーに対して分極帯電する分極帯電部材6を有する態様であってもよい。
ここで、前者の兼用型の態様にあっては、分極帯電部材6は、分極帯電機能の他に、トナー供給機能を実現する部材であることが必要である。
一方、後者の態様は、分極帯電部材6をトナー供給部材とは別個に設ける態様であり、トナー供給機能を考慮することなく、分極帯電機能のみを追求することができるため、トナーの帯電性を確保する上で好ましい。
【0021】
また、導電性トナー2を分極帯電させる態様としては、少なくとも電荷分極電界EDを作用させることが必要であるが、電荷分極電界EDを低電界にて導電性トナー2を分極帯電させるには、分極帯電部材6とトナー担持体3との間で導電性トナー2を摺擦する態様(摺擦方式)が好ましい。
この種の摺擦方式を用いた電荷分極手段5の代表的態様としては、分極帯電部材6とトナー担持体3との間に周速差を持たせるものであればよい。
より具体的には、電荷分極手段5としては回動可能な分極帯電部材6を有し、トナー担持体3との間に周速差を持たせて分極帯電部材6を回動させる態様が挙げられる。この態様では、分極帯電部材6の回動方向は任意であるが、トナーの帯電性を考慮すると、分極帯電部材6とトナー担持体3との周速差が1.5倍以上であることが好ましい。
更に、トナー供給部材と兼用する分極帯電部材6の好ましい態様としては、トナー担持体3との対向部位にて同方向で且つ周速差をもって回動するものであればよい。このとき、分極帯電部材6の回動方向が同方向である方式(With方式)では帯電可能であるが、分極帯電部材6の回動方向が逆方向である方式(Against方式)では、分極帯電部材6とトナー担持体3との間に導電性トナー2が挟まれる前にトナー担持体3にトナーが転移する挙動になるため、帯電し難い懸念がある。
【0022】
また、前記周速差を持たせる別の電荷分極手段5としては、トナー担持体3に対向して分極帯電部材6を固定配置し、トナー担持体3との間に周速差を持たせるようにした態様が挙げられる。本態様の分極帯電部材6としてはブレード状部材が好ましい。
【0023】
また、電荷分極手段5は、分極帯電部材6とトナー担持体3との間に電荷分極電界EDを作用させるものであるが、摺擦方式にあっては、電荷分極手段5による分極帯電方式は、分極帯電部材6とトナー担持体3との間に導電性トナー2を挟んで摺擦しているため、導電性トナー2の見かけ上の抵抗を下げた状態で電荷分極することが可能であり、その分、電荷分極電界EDをある程度低く設定したとしても、帯電性能を良好に保つことが可能である。
このため、現像電界に比べて電荷分極電界EDを必ずしも大きく設定しなくても、導電性トナー2に対して電荷分極を行うことが可能になる。
よって、導電性トナー2としては、現像電界作用域にて高抵抗に変化し且つ電荷分極電界作用域にて低抵抗に変化するという挙動を実現することができる。つまり、図2(a)に示すように、導電性トナー2は、現像電界作用域にて高抵抗に変化し、電荷分極電界作用域にて低抵抗に変化する抵抗可変部8を備えている挙動を示すのである。
【0024】
但し、導電性トナー2はトナーへ印加する電界の大きさに依存して抵抗変化する挙動を示すため、現像電界作用領域に比べて電荷分極電界作用域にて導電性トナー2をより低抵抗にするには、現像電界より大きな電荷分極電界を作用させることが好ましい。
このように、電荷注入電界>現像電界の関係を満たす電荷分極手段5にあっては、導電性トナー2の電気抵抗を以下のようにスイッチングさせることが必要である。
すなわち、静電潜像Zの画像部電位と現像バイアス電位とで形成される現像電界より大きく且つ電荷分極電界よりも小さい電界で高抵抗から低抵抗へスイッチング(抵抗変化)するようにすればよい。
本態様においては、導電性トナー2としては、体積抵抗率が電荷分極電界にて1010Ω・cm以下であり且つ現像電界にて1011Ωcm以上であることが好ましい。これは、電荷分極電界にて1010Ω・cm以下であれば、電荷分極し易く、一方、現像電界にて1011Ωcm以上であれば、電荷保持し易いことによる。
【0025】
更に、導電性トナー2の抵抗変化の好ましい態様としては、例えば静電潜像Zの背景部電位と現像バイアス電位とで形成されるクリーニング電界より大きく且つ電荷分極電界よりも小さい電界で高抵抗から低抵抗へスイッチング(抵抗変化)するものが挙げられる。
本態様によれば、クリーニング電界と電荷注入電界との中間電界にて導電性トナー2は高抵抗から低抵抗へスイッチングするため、クリーニング電界作用域においては、導電性トナー2は高抵抗に保たれることになり、トナー担持体3上の先端の導電性トナー2に逆極性の電荷が誘導されることはない。
このため、トナー担持体3上の導電性トナー2に逆極性電荷が誘導され、静電潜像の背景部に付着するという所謂かぶり現象は有効に抑制される。
更にまた、導電性トナー2の抵抗変化の好ましい態様としては、転写時に形成される転写電界よりも大きく且つ電荷分極電界よりも小さい電界で高抵抗から低抵抗へスイッチングする態様が挙げられる。
本態様によれば、転写電界と電荷分極電界との中間電界にて導電性トナー2は高抵抗から低抵抗へとスイッチングするため、転写電界作用域では、導電性トナー2は高抵抗に保たれることになり、転写時において、導電性トナー2と記録紙との間で電荷の移動が発生することはなく、例えば高含水紙などに対しても導電性トナー2の電荷が保持され、良好な転写性能が得られる。
【0026】
また、本発明は、現像装置を組み込んだ画像形成装置をも対象とする。
この場合、本発明に係る画像形成装置は、静電潜像Zを担持した像担持体1と、この像担持体1に対向配置される現像装置とを備えたものであればよい。
この場合において、画像形成装置の作像方式としては、導電性トナーを用いるものであれば電子写真方式は勿論、静電記録方式など広く採用することができ、また、画像形成装置のモデル態様についても、一つの像担持体1の周囲に複数の現像装置を設ける態様(複数サイクル型マシン)や、複数の像担持体1に夫々現像装置を設ける態様(所謂タンデム型マシン)など適宜選定して差し支えない。
【0027】
次に、本発明に係る現像装置の作用について説明する。
図2(b)に示すように、電荷分極手段5の分極帯電部材6とトナー担持体3との間に電荷分極電界が作用すると、この電荷分極電界作用域(分極帯電領域)にて導電性トナー2は電荷分極され、正規極性に分極された導電性トナー2のみがトナー担持体3側へ移動し、正規極性と逆極性に分極された導電性トナー2は分極帯電部材6側に残る。
このとき、導電性トナー2は、図1(b)及び図2(a)に示すように、電荷分極電界作用域では、導電性トナー2の抵抗可変部8が低抵抗に変化し、導電性トナー2では容易に電荷が分極される。
この後、トナー担持体3上に担持された導電性トナー2は、図2(b)に示すように、像担持体1とトナー担持体3との間の現像領域へ搬送され、現像電界作用域に入り、像担持体1へと移動して像担持体1上の静電潜像Zを可視像化する。
このとき、導電性トナー2は、図2(a)に示すように、現像電界作用域では、前記導電性トナー2の抵抗可変部8が高抵抗に変化することから、導電性トナー2は電荷を保持した状態を保ち、導電性トナー2相互間等で電荷の移動は行われない。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る現像装置によれば、導電性トナーの帯電方式として、表面が絶縁化された分極帯電部材とトナー担持体との間に電荷分極電界を作用させ、かつ、この電荷分極電界作用域にて導電性トナーを挟んで電荷分極するという分極帯電方式を採用したので、導電性トナー層間で電荷分極が起こり、正規極性に分極された導電性トナーのみをトナー担持体側に転移させ、正規極性と逆極性に分極された導電性トナーを分極帯電部材側に残存させることができ、逆極性トナーの発生を抑えながら導電性トナーを確実に帯電することができる。
このとき、分極帯電領域にて導電性トナーの抵抗を低減化するようにすれば、導電性トナー層の電荷分極をより促進させることが可能になり、導電性トナーの帯電効率を容易に高めることが可能である。
特に、分極帯電部材とトナー担持体とを周速差をもって移動させ、両者間で導電性トナーを摺擦させる方式を採用するようにすれば、導電性トナー層間の接触抵抗を小さくすることにより、その分、見かけ上のトナー抵抗を低減することができ、比較的低い電荷分極電界で導電性トナーに対し均一に電荷分極することができる。更に、電荷分極電界作用域では、トナー移動量を単層若しくは薄層に制御することが容易であるため、導電性トナーに対し均一な帯電を実現でき、逆極性トナーの発生率を効果的に抑制することができる。更にまた、比較的低い電荷分極電界にて導電性トナーに対し電荷分極することができるため、異常放電の発生リスクも少なく、その分、逆極性トナーの発生率を効果的に抑制することができる。
このため、本発明にあっては、導電性トナーを帯電する場合には導電性トナーを低抵抗に変化させ、導電性トナーに対し容易に電荷を分極させることができ、しかも、導電性トナーを現像に供する場合には導電性トナーを高抵抗に変化させ、導電性トナーの電荷保持性を向上させることができる。
従って、本発明によれば、導電性トナーに対する帯電性と帯電された電荷保持性とを両立させることが可能になり、導電性トナーに対する帯電性を良好に保ちながら、現像電界作用域にて不要に電荷注入される事態を有効に回避することができる。このため、現像電界作用域にて、低電荷トナーや逆極性トナーが生成されることは少なく、かぶりやトナークラウドを有効に防止でき、導電性トナーに対する現像性能を良好に保つことができる。
【0029】
また、本発明によれば、電荷分極電界作用域にて導電性トナーの抵抗を容易に低減可能とし、それ以外では導電性トナーを高抵抗に保つことが可能である。このため、例えば転写電界作用域にて、導電性トナーを摺擦することなく、トナーの移動を低電界で行うようにすれば、導電性トナーの抵抗を高くすることが可能になり、転写時における導電性トナーの電荷保持性を良好に保つことができる。
それゆえ、導電性トナーに保持している電荷が吸湿した記録紙やトナー相互間で移動することを有効に防止することができ、トナーへの静電吸着力を維持することができる。
よって、高含水紙などへのトナー画像の転写も可能となり、しかも、カラートナーの重ねによるカラー画像を形成することも可能になるから、導電性トナーに対する良好な転写性能を簡単に実現することができる。
このように、本発明に係る現像装置によれば、従前の導電性トナーを使用する際の不具合である、静電転写性の改善、カラー適性の改善を行い、かぶりやトナークラウドを有効に防止でき、環境変化や経時劣化の影響を受けにくく、簡単で且つ汎用性のある現像装置を提供することができる。
【0030】
更に、このような現像装置を用いた画像形成装置によれば、分極帯電方式を採用することにより、導電性トナー帯電時に正規極性と逆極性に帯電された導電性トナーの発生を抑えることを可能としたので、導電性トナーに対する現像性能を良好に保つことができ、しかも、導電性トナーに対する良好な転写性能を簡単に実現することができる。このため、導電性トナーを用いた良好な作像性能を簡単且つ確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は本発明が適用された現像装置を含む画像形成装置の実施の形態1を示す。
同図において、本実施の形態に係る画像形成装置は、所定方向に回転する像担持体としての感光体ドラム20を有し、この感光体ドラム20の周囲には、感光体ドラム20を帯電する帯電装置21と、この感光体ドラム20上に静電潜像Zを形成する潜像書込装置としての例えば露光装置22と、感光体ドラム20上に形成された静電潜像Zを可視像化する現像装置30と、感光体ドラム20上で可視像化されたトナー像を記録媒体である記録紙28に転写する転写装置24と、感光体ドラム20上の残留トナーを清掃するクリーニング装置25とを順次配設したものである。
【0032】
本実施の形態において、現像装置30は、図4に示すように、導電性トナー40を含む現像剤Gが収容される現像ハウジング31を有し、この現像ハウジング31には感光体ドラム20に対向して現像用開口32を開設すると共に、この現像用開口32に面して現像ロール(現像電極)33を配設し、この現像ロール33に所定の現像バイアスを印加することで、感光体ドラム20と現像ロール33との間の現像領域に現像電界を作用させ、更に、現像ハウジング31内には前記現像ロール33と対向して分極帯電ロール(分極電極)34を設けたものである。
特に、本実施の形態では、分極帯電ロール34は現像ロール33に導電性トナー40を供給するためのトナー供給ロールをも兼用したものになっている。
【0033】
ここで、現像ロール33はSUS又はアルミニウム等のロール状導電基材33a表面を絶縁被覆層33bにて被覆したものであり、例えば表面をアルマイト処理したアルミニウム製のロールで構成される。そして、現像ロール33には現像バイアス電源37からの現像バイアスが印加され、それにより、感光体ドラム20の静電潜像Zと現像ロール33との間には現像電界が作用するようになっている。
【0034】
また、分極帯電ロール34は、SUS又はアルミニウム等のロール状導電基材34aと、この導電基材34aの表面を絶縁被覆する絶縁被覆層34bとを備えている。この場合において、絶縁被覆層34bとしては、樹脂製の熱収縮チューブや塗装膜のような導電基材34aと別体のものは勿論のこと、例えば導電基材34aの表面に所定の表面処理を施したもの(例えばアルミニウム製の導電基材34a表面にアルマイト処理による絶縁被覆層34bを形成した態様)が挙げられる。
更に、この分極帯電ロール34と現像ロール33とは軽く接触又は微小間隙をもって配置されている。
そして、分極帯電ロール34には電荷分極バイアス電源38からの電荷分極バイアスが印加されるようになっている。それにより、現像ロール33と分極帯電ロール34との間には電荷分極電界が作用するようになっている。
更に、本実施の形態では、分極帯電ロール34の回転方向については適宜選定して差し支えないが、トナーの供給性及び分極帯電特性を考慮すると、分極帯電ロール34としては、現像ロール33との対向部にて同方向で且つ周速差(例えば1.5倍以上)をもって回動し、分極帯電ロール34と現像ロール33との間に導電性トナー40を挟持し、摺擦しながら電荷分極する態様が好ましい。
【0035】
更にまた、この現像装置30は、図4に示すように、現像ハウジング31内の分極帯電ロール34の表面に導電性トナー40の薄層形成用の層形成ブレード35を接触配置し、また、現像ハウジング31内の分極帯電ロール34の奥側には導電性トナー40が含まれる現像剤Gを撹拌するアジテータ36を配設したものである。
ここで、層形成ブレード35は例えば厚さ0.03〜0.3mm程度のステンレスの板ばねにシリコーンゴムやEPDMを接着剤等により接着したものである。この層形成ブレード35の一端は、分極帯電ロール34の表面に軽く接触し、他端は現像ハウジング31の一部に支持されている。
【0036】
尚、本実施の形態で用いられる現像装置30以外の各デバイスについては適宜選定して差し支えない。例えば転写装置24としては、図3に示すように、例えば感光体ドラム20に対向して図示外の転写ロールを配設し、この転写ロールに転写バイアスを印加することで感光体ドラム20と転写ロールとの間に転写電界を作用させ、記録媒体である記録紙28に感光体ドラム20上のトナー像を静電的に転写させるもの等適宜選定して差し支えない。
【0037】
次に、本実施の形態で用いられる現像剤Gとしての導電性トナー40について説明する。
本実施の形態における導電性トナー40としては、例えば図5(a)に示すように、導電性を有する材料からなる導電性トナー基体(導電性コア)401を有し、この導電性コア401の周囲を絶縁性被覆層(例えば絶縁性樹脂層)402で被覆すると共に、導電性コア401の一部が露出するように前記絶縁性被覆層402に適宜数の凹部403を設けたものが用いられる。
本実施の形態において、導電性トナー40は、重合法や各種公知のカプセル化技術で作製することができる。この時、導電性コア401は、ポリエステルやスチレンアクリル系樹脂に導電性カーボンブラック、磁性粉、ITO/酸化チタン/酸化すず等の透明導電粉等の導電剤を分散させたり、ポリエステルやスチレンアクリル系樹脂からなる粒子表面を前記導電剤により被覆することによって、作製する。
このような態様の導電性トナー40は、高電界を印加すると低抵抗化する傾向を示す。そして、低抵抗化する電界の大きさについては、導電性トナー40の主として凹部403の占有割合、あるいは、絶縁性被覆層402の厚さなどに依存する。
このメカニズムについては、導電性コア401が絶縁性被覆層402にて被覆されているため、導電性コア401は、直接的にトナー相互や電極部材等に接触することがなく、絶縁性被覆層402を介して一定の微小間隙を保つことになり、この結果、例えば高電界が印加された時、トンネル効果等により導通することになる、と推測される。
【0038】
また、導電性トナー40の他の態様としては、例えば図5(b)に示すように、導電性コア401を絶縁性若しくは半導電性の被覆層404にて被覆し、被覆層404の厚さhを適宜調整することにより、導電性トナー40の抵抗を調整可能とした態様等適宜選定して差し支えない。
このとき、半導電性の被覆層404については、それ自体半導電性の材料を用いるようにしてもよいし、例えば絶縁性樹脂に、酸化チタンや酸化すず等の金属酸化物や導電性カーボンを微量含有させた半導電性樹脂を用いるようにしてもよい。
【0039】
ここで、図5(b)に示す導電性トナー40の好ましい態様としては、導電性コア401の表面に無定形高分子を主成分とする、言い換えれば無定形高分子相の割合が80%以上である被覆層404が被覆されたものが挙げられる。
本態様において、導電性コア401としては、例えば通常の絶縁性トナーからなる絶縁性トナー基体(絶縁性コア)の外表面近傍に導電性微粒子を付着させる態様や、絶縁性コアの内部に導電性微粒子を混入させるものなど適宜選定して差し支えない。
【0040】
次に、導電性トナーの製造方法については、湿式製造方法、乾式製造方法、及び、両者を組み合わせる等適宜選定して差し支えない。
先ず、絶縁性コアの製造については、乾式製造製法である混練粉砕法や、湿式製造製法である乳化凝集法、溶解懸濁法等いずれの方法で作製してもよいが、トナーの粒度分布シャープ化や形状制御の自由度という観点から乳化凝集法が好ましい。乳化凝集法とは、乳化重合により樹脂微粒子分散液を調製し、また着色剤を溶媒に分散した着色剤分散液や必要に応じて離型剤分散液を調製した後、これらを混合し、トナー粒径に相当する凝集粒子を形成し、加熱して凝集粒子を融合・合一してトナーを製造する方法である。この製造プロセスは一括で混合し凝集してもよいし、凝集工程を複数段階的に行わせ、第1段階の母体凝集を形成した後、凝集形成の第2段階で加えた粒子を第1段階の母体凝集粒子の表面に付着させるようにしてもよい。
このような乳化凝集法によるトナー作製時に、絶縁性コア表面に導電性微粒子を付着させ、更に、被覆層を被膜形成するようにしてもよい。
尚、上述した製造方法は、絶縁性コアの表面に導電性微粒子を付着させるようにしているが、乳化凝集法によるトナー作製時に絶縁性コア内に導電性微粒子を混入させるようにしても差し支えない。
【0041】
また、導電性トナーの乾式製造方法としては、例えば乳化凝集法で製造した絶縁性コアを乾燥後、その表面に導電性微粒子を付着させ、更に、被覆層としての樹脂微粒子を被膜形成するようにしたものが挙げられる。
この製造方法は、例えば撹拌混合機に絶縁性コアと導電性微粒子とを混入した後に所定時間撹拌混合し、絶縁性コアに導電性微粒子を付着させ、導電性コアを形成する(撹拌混合工程(I))。
しかる後、撹拌混合機に導電性コアとポリエステルやスチレンアクリルなどからなる樹脂微粒子とを混入した後、所定時間撹拌混合し、導電性コアの周囲に被覆層(絶縁層)を形成するようにすればよい(撹拌混合工程(II))。
ここで、導電性トナーの乾式製造方法の具体例を挙げると、例えば平均粒径6.5μmの絶縁性コアに例えばIOT微粒子(住友金属鉱山株式会社製)所定量(例えば15wt%)加え、サンプルミル(型式:SK−M10型協立理工株式会社製)により所定時間撹拌混合し(例えば12000rpm、30秒)、絶縁性コアの表面にITO微粒子を付着させる。しかる後、ITO微粒子が付着された絶縁性コア(導電性コア)に、ポリエステル等の樹脂微粒子を所定量(例えば10wt%)加え、前記サンプルミルにて所定時間撹拌混合し(例えば12000rpm、30分)、所定の絶縁層を形成するようにするものが挙げられる。
尚、後述する実施例では、この乾式製造方法の具体例にて作製した導電性トナーを用いた。
【0042】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動について図3により説明する。
今、作像プロセスが開始されると、先ず、感光体ドラム20表面が帯電装置21により帯電され、露光装置22が帯電された感光体ドラム20上に静電潜像Zを書き込み、現像装置30が前記静電潜像Zを可視像化する。
しかる後、感光体ドラム20上のトナー像は転写部位へと搬送され、転写装置24が記録媒体である記録紙28に感光体ドラム20上のトナー像を静電的に転写する。
尚、感光体ドラム20上の残留トナーはクリーニング装置25にて清掃される。
【0043】
ここで、本実施の形態における現像装置30の作動について図6(a)を基に詳述する。
同図において、本実施の形態における現像装置30では、図4に示すアジテータ36により撹拌された導電性トナー40が、トナー供給ロールと兼用する分極帯電ロール34表面に供給され、この分極帯電ロール34と層形成ブレード35との間を通過することにより、分極帯電ロール34の表面に均一なトナー層が形成される。更に、この形成されたトナー層は、分極帯電ロール34の回転により、現像ロール33と分極帯電ロール34との対向位置に搬送される。
このとき、現像ロール33と分極帯電ロール34との間には、現像ロール33に接続している現像バイアス電源37の現像バイアスと、分極帯電ロール34に接続している電荷分極バイアス電源38による電荷分極バイアスとの差により形成された電荷分極電界が作用し、導電性トナー40は、現像ロール33と分極帯電ロール34との間に挟持され、摺擦されながら電荷分極される。すると、正規極性に帯電された導電性トナー40bは現像ロール33側に静電的吸引力により保持され、正規極性と逆極性に帯電された導電性トナー(図示せず)は分極帯電ロール34側に残存する。
尚、図6(a)では、符号40aは帯電前の導電性トナー、40bは帯電後の導電性トナーを夫々示す。
【0044】
このような状態において、導電性トナー40層間の接触抵抗を小さくすることが可能になり、その分、導電性トナー40の見かけ上の抵抗が小さくなり、導電性トナー40は低抵抗な状態で電荷分極される。このため、電荷分極電界としては、比較的低電界であっても、導電性トナー40には効率的に電荷分極が行われる。
この分極帯電方式は、逆極性トナー(WST:Wrong Sign Tonerの略)の発生率を下げる点で好ましく、このことは後述する実施例にて裏付けられる。
この点、例えば図6(b)に示すように、現像ロール33との対向部位にて分極帯電ロール34を逆方向に回転させる態様にあっては、導電性トナー40は分極帯電ロール34上に層形成ブレード35にて層厚規制された後現像ロール33へと供給されるが、供給された導電性トナー40は現像ロール33と分極帯電ロール34との間のニップ部を通過することなく、現像ロール33へと担持されることから、導電性トナー40での電荷分極が不足し、帯電が不十分になる懸念がある。
【0045】
そして、分極帯電により帯電された導電性トナー40は、そのまま現像ロール33上を搬送され、現像ロール33と感光体ドラム20との対向部位に進む。ここで、感光体ドラム20上の静電潜像Zと、現像ロール33に接続している現像バイアス電源37の現像バイアスとの差により形成された現像電界が、導電性トナー40に加わることとなる。
また、感光体ドラム20上に露光装置22(図3参照)によって書き込まれた静電潜像部分は、表面帯電が除電されていることから、現像電界によって、この部分のみ導電性トナー40が感光体ドラム20に移動し、静電潜像Zを可視像化する。
本実施の形態において、この現像電界は電荷分極電界より低電界となっているため、電荷分極電界作用域にて導電性トナー40に分極帯電された電荷が、現像電界で逃げることもなく、良好な現像が実施される。
【0046】
更に、感光体ドラム20上で可視像化されたトナー像は、図3に示すように、感光体ドラム20と転写装置24との対向する位置で、記録紙28に転写される。
このとき、この転写工程において、感光体ドラム20と転写装置24とで形成される転写電界として、電荷分極電界より低電界で行うようにすれば、電荷分極電界作用域にて導電性トナー40に分極帯電された電荷が、転写電界で逃げることなく、良好な転写が実施される。
【0047】
尚、本実施の形態では、分極帯電ロール34は、図6(a)に示すように配設されているが、これに限定されるものではなく、感光体ドラム20の回転方向が逆方向である態様(本態様では、露光装置22の配設位置が感光体ドラム20の下側に制限される)では、例えば図7(a)に示すように、現像ロール33、分極帯電ロール34を配設するようにすればよく、本態様では、分極帯電ロール34から現像ロール33にかけて導電性トナー40を重力方向に沿って供給することができるため、現像ロール33へのトナーの供給性を上げることが可能である。
更に、この態様において、図7(b)に示すように、現像ロール33のうち分極帯電ロール34位置の上流側に除電用のリフレッシュロール39を配設するようにすれば、例えば現像ロール33の表面に例えば電荷分極電界作用域にて体積抵抗率が1011Ω・cm以上の高抵抗層を設けたとしても、現像ロール33に不必要に電荷が蓄積することなく、常にリフレッシュされた状態で、現像ロール33上の導電性トナー40に対し分極帯電ロール34による電荷分極動作が効率的に行なわれる。
尚、本例では、リフレッシュロール39は現像ロール33と同電位の状態で接触配置されている。
【0048】
◎実施の形態2
図8は実施の形態2に係る現像装置を示し、図9は図8の要部を示す模式図である。
同図において、本実施の形態における現像装置30は、実施の形態1における現像装置と略同様に構成されているが、実施の形態1と異なり、導電性トナー40を現像ロール33上に供給担持するトナー供給ロール41と、導電性トナー40を分極帯電する分極帯電ロール42とを別個に備えている。
尚、実施の形態1と同様な構成要素には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0049】
本実施の形態での現像装置30は、現像ロール33に対向する位置に、導電性トナー40を現像ロール33上に供給担持するトナー供給ロール41を有し、現像ロール33のうちトナー供給ロール41位置よりも下流側に分極帯電ロール42が配設されている。
そして、現像ロール33には現像バイアス電源37からの現像バイアスが印加される一方、この現像バイアス電源37がトナー供給ロール41にも接続され、トナー供給ロール41と現像ロール33とが同電位になるようになっている。一方、分極帯電ロール42には電荷分極バイアス電源38から電荷分極バイアス(本例では現像バイアスより大きく設定)が印加されている。
また、本実施の形態におけるトナー供給ロール41は、表面をサンドブラスト法や化学エッチング法等により小さく均一な凹凸面が形成されたアルミニウム製のロールから構成され、現像ロール33とトナー供給ロール41とは軽く接触又は微小間隙をもって配置されている。
更に、本実施の形態では、分極帯電ロール42は実施の形態1と同様に構成され、現像ロール33との間に周速差をもって回動するようになっている。
【0050】
次に、本実施の形態に係る現像装置30の作動について説明する。
現像装置30は、現像ハウジング31内において導電性トナー40がアジテータ36により撹拌され、撹拌された導電性トナー40は、トナー供給ロール41と層形成ブレード35との間を通過することにより、トナー供給ロール41の表面に均一なトナー層を形成する。
更に、このトナー層は、トナー供給ロール41の回転により、現像ロール33とトナー供給ロール41との対向位置に搬送され、現像ロール33上に供給担持される。
そして、現像ロール33上に担持された導電性トナー40には、現像ロール33と分極帯電ロール42との対向部位で、この間に形成される電荷分極電界が作用し、この電荷分極電界作用域にて導電性トナー40の電荷が分極される。すると、正規極性に帯電された導電性トナー40bは現像ロール33側に静電的吸引力により保持され、正規極性と逆極性に帯電された導電性トナー(図示せず)は分極帯電ロール42側に残存する。尚、図9中、40aは帯電前の導電性トナーを示す。
【0051】
このとき、導電性トナー40は、現像ロール33と分極帯電ロール42との間に挟持され、かつ、両者間の周速差によって摺擦しながら電荷分極されることになり、導電性トナー40層間の接触抵抗を小さくすることが可能になり、その分、導電性トナー40の見かけ上の抵抗が小さくなり、導電性トナー40は低抵抗な状態で電荷分極される。
この後、現像ロール33上で分極帯電にて帯電された導電性トナー40は、そのまま現像ロール33上を搬送され、現像ロール33と感光体ドラム20との対向部位に進む。
ここで、感光体ドラム20上の静電潜像Zと、現像ロール33に接続している現像バイアス電源37の現像バイアスとの差により形成された現像電界が、導電性トナー40に加わることとなる。
このため、感光体ドラム20上の静電潜像Zに導電性トナー40が移動し、静電潜像Zを可視像化する。本実施の形態においては、この現像電界は電荷分極電界より低電界となっているため、電荷分極電界作用域にて導電性トナー40に分極帯電注入された電荷が、現像電界で逃げることもなく、良好な現像が実施される。
【0052】
尚、本実施の形態においては、分極帯電ロール42に代えて、図10に示すように、現像ロール33に対向して分極帯電ブレード43の一端を固定配置し、この分極帯電ブレード43の先端部を前記現像ロール33に接触配置するようにしてもよい。この分極帯電ブレード43としては、金属等の導電性支持板のうち、少なくとも現像ロール33に接触する部分を絶縁被覆したものが用いられる。
本態様においては、固定型の分極帯電ブレード43と現像ロール33との間には当然ながら周速差があるから、本実施の形態と同様な作用を奏する。
【実施例】
【0053】
◎実施例1
図11は、実施の形態1に係る現像装置モデル(図4参照)において、実施の形態1に係る導電性トナーに相当する導電性トナーに電界を印加したとき、この導電性トナーの体積抵抗率変化を測定した結果である。
同図によれば、導電性トナーは、高電界が印加されると、高抵抗から低抵抗へと急激に低抵抗化することが理解される。
ここで、電荷分極電界A及び現像電界Bと、導電性トナーの電気抵抗との関係について説明する。
一般的に、導電性トナーに印加される電界Eは、以下のように表現される。
E=(V−VS)/εt(Dp+Dt+Dm+Dg)
但し、V:対向電極の電位、VS:移動前トナー層上の電位、Dp〜Dg:ニップを形成する各層の誘電厚さ(Dp:像担持体誘電厚さ、Dt:トナー層誘電厚さ、Dm:トナー担持体誘電厚さ、Dg:空隙層誘電厚さ)、εt:トナーの比誘電率である。
以上から予測すると、上記条件では、分極帯電時に導電性トナーへ印加される電界は7×10V/cm、現像時に導電性トナーに印加される電界は8×10V/cmであった。
このとき、図11に示すように、8×10V/cmと7×10V/cmとの間で、導電性トナーの体積抵抗率は、1016Ω・cmから10Ω・cmへ変化している。
そして、電荷分極電界A領域及び現像電界B領域の通過時間は0.01秒程度であるので、電荷を容易に注入するためには、時定数0.01秒以下であることが好ましく、導電性トナーの体積抵抗率は、1010Ω・cm以下であればよい。
また、帯電した電荷を保持するためには、現像電界Bが印加されている時間内で、電荷移動等が起こらないことが必要なので、時定数で0.1秒以上であることが好ましく、導電性トナーの体積抵抗率は、1011Ω・cm以上であればよい。
尚、導電性トナーの体積抵抗率は、φ30mmのセル中にトナーを充填し、上下面に電圧を印加し、流れる電流を測定することにより計算した。
【0054】
◎実施例2
実施の形態1において、図4に示す現像装置モデルを用い、現像ロール(現像電極)に対向する分極帯電ロール(分極電極)34の回転方向を「With」とし、分極電極/現像電極速度比(スピード比)をパラメータとし、電荷分極電界(導電性トナーの粒子層印加電界)を変化させ、そのときのWST発生率及び分極帯電量を測定した。
ここで、実験条件としては、分極帯電ロール(分極電極)34は表面が素アルミニウムにて構成され、現像ロール(現像電極)33に対し1100μm食い込んで配設されている。
また、現像ロール33は直径40mmであり、電極表面が25μm厚ポリエステルフィルムと導電性スポンジとからなり、速さ120mm/sec.にて移動する。更に、導電性トナーとしては実施の形態1の具体例で示したものを用いた。また、分極帯電量の測定は、ホソカワミクロン製のイ−スパートアナライザを用いた。
尚、比較例として、分極帯電ロール34に代えて導電基材の表面が絶縁被覆されていない電荷注入ロールを用い、導電性トナーに電荷注入する電荷注入方式(スピード比:1)のものを用いた。
【0055】
図12は電荷分極電界とWST発生率との関係を示し、また、図13は電荷分極電界と分極帯電量との関係を示す。
図12によれば、分極帯電方式によるWST発生率が電荷注入方式に比べて少ないことが理解される。
そして、注入電極/現像電極速度差を設けることによってWST発生率が低下していることが理解される。特に、本実施例では、速度比の一例(1.75)をパラメータとして例示しているが、1.5倍以上の速度差を設けるようにすれば、等速の場合に比べて、例えば1/10以下程度までWST発生率を低下させることができる。尚、実施の形態2のモデルについて同様な実験を行ったところ、同様な傾向が見られた。
また、図13によれば、分極帯電方式による分極帯電量については電荷注入方式に相当する以上のものであることが理解される。特に、同図によれば、注入電極/現像電極速度差を設けることによって分極帯電量が増加していることが理解される。
このことは、本実施例モデルが帯電効率向上と逆極性トナーの発生防止の点で寄与しているものと推測される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は本発明に係る現像装置及び画像形成装置の概要を示す説明図、(b)は電荷分極手段の要部を示す説明図である。
【図2】(a)は本発明に係る導電性トナーの抵抗変化状態を示す説明図、(b)は本発明に係る現像装置の作動状態を示す説明図である。
【図3】本発明が適用された画像形成装置の実施の形態1を示す説明図である。
【図4】実施の形態1で用いられる現像装置の詳細を示す説明図である。
【図5】(a)(b)は実施の形態1で用いられる導電性トナーの構造を示す説明図ある。
【図6】(a)は実施の形態1に係る現像装置の作動状態を示す説明図、(b)は比較の形態モデルに係る現像装置の作動状態を示す説明図である。
【図7】(a)は実施の形態1に係る現像装置の変形形態を示す説明図、(b)は更にその変形形態を示す説明図である。
【図8】実施の形態2に係る現像装置を示す説明図である。
【図9】実施の形態2に係る現像装置の作動状態を示す説明図である。
【図10】実施の形態2に係る現像装置の変形形態を示す説明図である。
【図11】実施例1における印加電界に対する導電性トナーの体積抵抗率変化を示す説明図である。
【図12】実施例2において、分極電極移動方向及び分極電極/現像電極速度比をパラメータとし、粒子層印加電界と逆極性トナーの発生率との関係を示す説明図である。
【図13】実施例2において、分極電極移動方向及び分極電極/現像電極速度比をパラメータとし、粒子層印加電界と分極帯電量との関係を示す説明図である。
【図14】従来の現像装置で用いられる電荷注入方式を示す説明図である。
【図15】従前の導電性トナーに対する粒子層への印加電界と逆極性トナー(Wrong Sign Toner)の発生率との関係を示す説明図である。
【図16】従前の導電性トナーの電荷注入時(低電界作用時)における挙動を模式的に示す説明図である。
【図17】従前の導電性トナーの電荷注入時(高電界作用時)における挙動を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1…像担持体,2(2a,2b)…導電性トナー,3…トナー担持体,3a…導電部材,3b…絶縁被覆層,4…現像電界形成手段,5…電荷分極手段,6…分極帯電部材,6a…導電部材,6b…絶縁被覆層,7…電荷分極電界形成手段,ED…電荷分極電界,Z…静電潜像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性トナーにて静電潜像を可視像化する現像装置において、
静電潜像を担持した像担持体に対向配置され、帯電された導電性トナーを担持搬送するトナー担持体と、
このトナー担持体と像担持体との間に現像電界が形成され、この現像電界領域にて像担持体上の静電潜像をトナー現像する現像電界形成手段と、
トナー担持体に対向配置され且つ導電性部材の表面が絶縁被覆される分極帯電部材を有し、この分極帯電部材とトナー担持体との間に電荷分極電界を作用させ、この電荷分極電界作用域にて導電性トナーを挟んで電荷分極させる電荷分極手段とを備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
導電性トナーは現像電界作用域にて高抵抗に変化し且つ電荷分極電界作用域にて低抵抗に変化することを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1記載の現像装置において、
導電性トナーは、導電性トナー基体の周囲に絶縁性若しくは半導電性被覆層を被覆したものであることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1記載の現像装置において、
電荷分極手段は、分極帯電部材とトナー担持体との間に現像電界より大きな電荷分極電界を作用させるものであることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1記載の現像装置において、
電荷分極手段は、分極帯電部材とトナー担持体にトナーが供給可能なトナー供給部材とを兼用することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1記載の現像装置において、
電荷分極手段は、トナー担持体に担持された状態のトナーを挟んで電荷分極させる分極帯電部材を有することを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1記載の現像装置において、
電荷分極手段は、分極帯電部材とトナー担持体との間に周速差を持たせることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1記載の現像装置において、
電荷分極手段は回動可能な分極帯電部材を有し、トナー担持体との間に周速差を持たせて分極帯電部材を回動させることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
請求項5記載の現像装置において、
トナー供給部材を兼用する分極帯電部材は、トナー担持体との対向部位にて同方向で且つ周速差をもって回動するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
静電潜像を担持した像担持体と、この像担持体に対向配置される請求項1ないし9いずれかに記載の現像装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−267693(P2006−267693A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87091(P2005−87091)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】