現像装置及びこれを用いた画像形成装置
【課題】トナー保持体上のトナーを振動電界によってクラウド化させて現像する方式にあって、現像量を確保しながらかぶりの発生も抑える。
【解決手段】トナー保持体3の外周面に対向して配置される第一の電極部材4と、第一の振動電界E1を第一の電極部材4とトナー保持体3との間に形成する第一の電界形成手段8と、第一の電極部材4に対しトナー保持体3の回転方向下流側に延びるように絶縁部5を介して設けられる第二の電極部材6と、この第二の電極部材6のうち現像領域に対応する位置に開けられる開口7と、第二の電極部材6とトナー保持体3との間に第一の振動電界E1を形成した場合に比べてトナーTの振動を抑制し且つ開口7から現像領域で必要とされる予め決められたトナー量を飛翔させるような第二の振動電界E2を第二の電極部材6とトナー保持体3との間に形成する第二の電界形成手段9と、を備える。
【解決手段】トナー保持体3の外周面に対向して配置される第一の電極部材4と、第一の振動電界E1を第一の電極部材4とトナー保持体3との間に形成する第一の電界形成手段8と、第一の電極部材4に対しトナー保持体3の回転方向下流側に延びるように絶縁部5を介して設けられる第二の電極部材6と、この第二の電極部材6のうち現像領域に対応する位置に開けられる開口7と、第二の電極部材6とトナー保持体3との間に第一の振動電界E1を形成した場合に比べてトナーTの振動を抑制し且つ開口7から現像領域で必要とされる予め決められたトナー量を飛翔させるような第二の振動電界E2を第二の電極部材6とトナー保持体3との間に形成する第二の電界形成手段9と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現像剤搬送体と像形成体との間に二層構成の電極を設けた態様が記載されている。
また、特許文献2には、飛翔電極とトナー保持電極との間の収容空間で導電性トナーをクラウド化させ、飛翔電極から飛翔したトナーを複数の穴に対応して設けられた制御電極にて制御することで、所望の穴からトナーを飛翔させて記録材上に画像を形成する構成が記載されている。
更に、特許文献3には、複数の電極を有するトナー担持体上にホッピング電界を形成してトナーをクラウド化させ、夫々制御電極を有する複数の穴を設けたトナー制御手段にて、所望の穴からのトナーを流出させて記録材上に画像を形成する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−220853号公報(実施例、図3)
【特許文献2】特開2010−194888号公報(第1実施形態、図2)
【特許文献3】特開2010−58345号公報(発明を実施するための最良の形態、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トナー保持体上のトナーを振動電界によってクラウド化させて現像する方式にあって、現像量を確保しながらかぶりの発生も抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、このトナー保持体の外周面に対向して配置され、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させる電界を形成するために用いられる第一の電極部材と、この第一の電極部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させるように、周期的に変化する電界成分が含まれる第一の振動電界を前記第一の電極部材と前記トナー保持体との間に形成する第一の電界形成手段と、前記像保持体と前記トナー保持体との間で現像に供される現像領域に面して設けられ、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させる電界を形成するために用いられ、前記第一の電極部材に対し前記トナー保持体の回転方向下流側に延びるように絶縁部を介して設けられ且つ当該絶縁部に対応した部位からはトナーが通過不能となるように配置される第二の電極部材と、この第二の電極部材のうち前記現像領域に対応する位置に開けられ、前記トナー保持体の回転方向に交差する幅方向に亘って連続的又は不連続的に形成されると共に前記像保持体に向かってトナーを通過させる開口と、前記第二の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成した場合に比べてトナーの振動を抑制し且つ前記開口から現像領域で必要とされる予め決められたトナー量を飛翔させるように、少なくとも一部に前記第一の振動電界の振幅より小さい部位を含み周期的に変化する電界成分が含まれる第二の振動電界を前記第二の電極部材と前記トナー保持体との間に形成する第二の電界形成手段と、を備えることを特徴とする現像装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る現像装置において、前記第二の振動電界の最大振幅は、前記第一の振動電界の最大振幅以下に設定されていることを特徴とする現像装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記第一の電界形成手段は、前記第一の電極部材を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、前記トナー保持体に交流電圧を印加することで、前記第一の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成し、一方、前記第二の電界形成手段は、前記第二の電極部材と接地部位との間に前記トナー保持体に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、前記第二の電極部材及び前記トナー保持体夫々に印加する交流電圧の電位差によって前記第二の振動電界を形成するようにしたことを特徴とする現像装置である。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る現像装置において、前記第二の電極部材に印加する交流電圧は、前記トナー保持体に印加する交流電圧と同位相に設定されていることを特徴とする現像装置である。
請求項5に係る発明は、請求項3に係る現像装置のうち前記第二の振動電界の最大振幅が前記第一の振動電界の最大振幅を超える態様において、前記第二の電極部材に印加する交流電圧の周波数は、前記トナー保持体に印加する交流電圧の周波数とは異なる周波数に設定されていることを特徴とする現像装置である。
【0007】
請求項6に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記第一の電界形成手段は、前記トナー保持体を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、前記第一の電極部材に交流電圧を印加することで、当該第一の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成し、一方、前記第二の電界形成手段は、前記第二の電極部材に前記第一の電極部材に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、当該第二の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第二の振動電界を形成するようにしたことを特徴とする現像装置である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る現像装置において、前記第二の振動電界は、前記第一の振動電界の周波数とは異なる周波数に設定されていることを特徴とする現像装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれかに係る現像装置において、前記第一の電極部材及び前記第二の電極部材は、前記第一の電極部材と前記トナー保持体との最短となる間隙をG1とし、前記第二の電極部材と前記トナー保持体との最短となる間隙をG2としたときに、G1≦G2の関係を満たすように配置されていることを特徴とする現像装置である。
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれかに係る現像装置において、更に、前記第一の電極部材及び前記第二の電極部材は、前記トナー保持体に面する部位が絶縁性の被覆層で覆われていることを特徴とする現像装置である。
【0008】
請求項10に係る発明は、静電潜像を保持して回転する像保持体と、前記像保持体に対向して配置され且つ前記像保持体の静電潜像を現像する請求項1乃至9のいずれかに係る現像装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項11に係る発明は、請求項10に係る画像形成装置のうち前記第二の電極部材に前記トナー保持体の回転方向に対して並ぶ二列の開口が設けられる態様において、前記第二の電極部材は、前記トナー保持体の回転方向に対して前記二列の開口間に位置する部位が前記像保持体に最近接するように配置されていることを特徴とする画像形成装置である。
請求項12に係る発明は、請求項10に係る画像形成装置のうち前記第二の電極部材に一列の開口が設けられる態様において、前記第二の電極部材は、前記開口に対応する部位が前記像保持体に最近接するように配置されていることを特徴とする画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、請求項10乃至12のいずれかに係る画像形成装置において、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配置された画素電極を有する像保持体と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより静電潜像を書き込む潜像書込手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、トナー保持体上のトナーを振動電界によってクラウド化させて現像する方式にあって、現像量を確保しながらかぶりの発生も抑えられる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の電極部材の先端部位(下流端)でのトナーの堆積及び凝集が抑えられると共に、かぶりの発生も効果的に抑えられる。
請求項3に係る発明によれば、現像装置を像保持体に対向して配置した場合に、本構成を有さない場合に比べて、第一の振動電界及び第二の振動電界による像保持体の静電潜像への影響が低減される。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の電極部材の先端部位(下流端部位)でのトナーの堆積及び凝集が効果的に抑えられる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、かぶりの発生を一層抑えられる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の振動電界及び第二の振動電界の選択肢が広がるようになる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、かぶりの発生を一層少なくできる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の電極部材でのトナーの堆積を抑えることができる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の電極部材及び第二の電極部材にトナーが付着してもトナーの電荷量の変化が抑えられる。
請求項10に係る発明によれば、トナー保持体上のトナーを振動電界によってクラウド化させて現像する方式を採用した画像形成装置にあって、現像量を確保しながらかぶりの発生も抑えられ画像形成装置を提供できる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、像保持体に対する現像量を十分確保できる。
請求項12に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、像保持体に対する現像量を十分確保できる。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、帯電工程が実施される際の画質低下を考慮することなく、高画質画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明が適用された現像装置の実施の形態の概要、(b)は(a)の要部拡大、(c)は第一及び第二の振動電界の波形を示す説明図である。
【図2】第一及び第二の振動電界の作用を示す説明図であり、(a)は第二の電極部材を有する場合、(b)は第二の電極部材を有さない場合である。
【図3】(a)及び(b)は画像形成装置における第一及び第二の電極部材のレイアウトを示す説明図である。
【図4】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成の概要を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の像保持体の構成を示す説明図である。
【図6】(a)(b)は画素電極の構成を示す説明図であり、(c)は等価回路を示す説明図である。
【図7】画素電極の駆動方式を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の現像装置を示す説明図である。
【図9】実施の形態1の現像装置の要部拡大を示す説明図である。
【図10】(a)及び(b)は導電性トナーを示す説明図である。
【図11】(a)〜(c)は比較例として第二の電極部材を有さない場合の作用を示す説明図である。
【図12】(a)は実施の形態1の構成要素を示す説明図であり、(b)は第一の振動電界に対応する波形、(c)は第二の電極部材に加えられる振動電界に対応する波形、(d)は第二の振動電界に対応する波形を示す説明図である。
【図13】(a)〜(d)は各種開口の形状を示す説明図である。
【図14】実施の形態2の現像装置の要部拡大を示す説明図である。
【図15】実施の形態3の現像装置の要部拡大を示す説明図である。
【図16】(a)は実施の形態4の現像装置の要部拡大を示す説明図であり、(b)は第一の振動電界の波形、(c)〜(e)は第二の振動電界の各種波形を示す。
【図17】(a)は実施の形態5の現像装置の要部拡大を示す説明図であり、(b)は第一の振動電界に対応する波形、(c)は第二の電極部材に加えられる電界に対応する波形、(d)は第二の振動電界に対応する波形を示す。
【図18】実施例1にて、(a)は第二の電極部材を設けた構成、(b)及び(c)は比較のために第二の電極部材を備えない構成を示す。
【図19】実施例1の結果を示すグラフである。
【図20】実施例2の構成を示す説明図である。
【図21】(a)及び(b)は実施例2の結果を示すグラフである。
【図22】(a)及び(b)は実施例3の結果を示すグラフである。
【図23】実施例4の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された現像装置における実施の形態の概要について説明する。
図1(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る現像装置2の概要、(b)は(a)の要部拡大を示している。このような中で、現像装置2は、静電潜像が保持された像保持体1に対向して配置され且つトナーTを外周面に保持して回転するトナー保持体3と、このトナー保持体3の外周面に対向して配置され、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材とトナー保持体3との間でトナーTを振動させる電界を形成するために用いられる第一の電極部材4と、この第一の電極部材4とトナー保持体3との間でトナーTを振動させるように、周期的に変化する電界成分が含まれる第一の振動電界E1を第一の電極部材4とトナー保持体3との間に形成する第一の電界形成手段8と、像保持体1とトナー保持体3との間で現像に供される現像領域に面して設けられ、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材とトナー保持体3との間でトナーTを振動させる電界を形成するために用いられ、第一の電極部材4に対しトナー保持体3の回転方向下流側に延びるように絶縁部5を介して設けられ且つ絶縁部5に対応した部位からはトナーTが通過不能となるように配置される第二の電極部材6と、この第二の電極部材6のうち現像領域に対応する位置に開けられ、トナー保持体3の回転方向に交差する幅方向に亘って連続的又は不連続的に形成されると共に像保持体1に向かってトナーTを通過させる開口7と、第二の電極部材6とトナー保持体3との間に第一の振動電界E1を形成した場合に比べてトナーTの振動を抑制し且つ開口7から現像領域で必要とされる予め決められたトナー量を飛翔させるように、少なくとも一部に第一の振動電界E1の振幅より小さい部位を含み周期的に変化する電界成分が含まれる第二の振動電界E2を第二の電極部材6とトナー保持体3との間に形成する第二の電界形成手段9と、を備えている。
【0012】
ここで、トナー保持体3としてはドラム状、ベルト状いずれでもよく、トナーTを保持して搬送できるようになっていればよい。
また、第一の電極部材4は、トナー保持体3との間で第一の振動電界E1によってトナー保持体2上のトナーに対し振動させることができればよく、例えばトナーTが通過できない微小な穴が開いていても差し支えないが、第一の振動電界E1の安定性を図る観点からすれば、穴のない板状部材が好適である。
【0013】
更に、第二の電極部材6は第一の電極部材4に一部重なってもよいし、第一の電極部材の下流側に離間して配置されていてもよく、第一の電極部材4とは絶縁部5を介していればよい。尚、第二の電極部材6の一部が第一の電極部材4に重なる場合、第一の電極部材4によって振動させられたトナーTの動きを妨げない点からすれば、第二の電極部材6が第一の電極部材4より像保持体1側に配置される方がよい。
【0014】
また、絶縁部5の絶縁性は、第一の電極部材4と第二の電極部材6とに夫々の振動電界(具体的には第一の振動電界E1及び第二の振動電界E2)が作用できる程度であればよい。そのため、絶縁部5としては、絶縁材料にて構成されていてもよいし、両者間にトナーTが通過不能な間隙(空気層)を用いる構成であってもよい。
【0015】
また、第二の電極部材6に開けられた開口7は、トナー保持体3の回転方向に対して並ぶ方向に一以上設けられればよい。また、開口7は、トナー保持体3の回転軸方向に対して設けられることが好適であるが、現像領域内であれば、例えばトナー保持体3の回転軸方向(幅方向)に対して連続的に繋がった形状であってもよいし、不連続的な形状であっても差し支えない。更に、開口7としては、トナー保持体3の回転軸方向に沿って設けられることが好適であるが、現像領域内であれば、例えばトナー保持体3の回転軸に対し斜めであってもよい。更にまた、開口7の大きさは、開口7を通ってトナーTが像保持体1側に飛翔できる大きさであればよく、開口7の幅(トナー保持体3の回転方向に沿う長さ)は第二の電極部材6の厚さを超えることが好ましい。尚、開口7が不連続的に設けられた態様にあっては、隣り合う開口7の間の部位の長さ(トナー保持体3の回転軸方向に沿う長さ)は、現像に影響のない範囲に設定されていることは言うまでもない。また、開口7の形状は、実験等で現像に供するトナー量(現像量)を例えば画像評価を行うことで確認し、より適正な形状を選定すればよい。
【0016】
また、第一の振動電界E1や第二の振動電界E2は、トナーTを振動させるための周期的に変化する電界成分が含まれていればよく、例えば直流成分が重畳された交流成分であっても差し支えない。そして、第二の振動電界E2は、第一の振動電界E1の振幅より小さい部位を有すればよく、図1(c)のように、同じ半周期(t/2)で第一の振動電界E1の振幅V1の方が第二の振動電界E2の振幅V2より小さい態様や、第二の振動電界E2の振幅の一部が第一の振動電界E1の振幅より小さくてもよい。更には、第二の電極部材6に第一の振動電界E1を形成した場合に比べてトナーTの振動が抑制し且つ開口7から現像領域で必要とするトナー量を飛翔できれば、第二の振動電界E2の振幅の一部が第一の振動電界E1の振幅を超えるものであっても差し支えない。
【0017】
ここで、第一の振動電界E1及び第二の振動電界E2の作用について、図2の模式図を用いて説明する。尚、図では、トナー保持体3等の形状を直線状に示し、トナーTの概略的な動きを動線として示したものであり、(a)が本実施の形態モデルの例を示している。また、(b)は比較のために第二の電極部材6を備えない比較例を示す。
【0018】
(a)において、第一の電極部材4とトナー保持体3との間の第一の振動電界E1によって、トナー保持体3上のトナーTは第一の電極部材4とトナー保持体3との間で振動を繰り返しながら、トナー保持体3の移動に伴って下流側に進む。そして、トナーT同士の叩き出し効果もあり、徐々に振動するトナーTの量が増加する。第一の電極部材4のトナー保持体3の回転方向における下流端部位では、第一の電極部材4のエッジ効果による当該部位でのトナーTの集中が第二の電極部材6での電界作用によって低減されるので、トナーTは第一の電極部材4の下流端部位(先端部位)で堰き止められることなく、第二の電極部材6側へ移動する。そして、トナーTは第二の振動電界E2によってその振動幅が小さく抑えられ、第二の電極部材6に設けられた開口7から像保持体1側に向かって飛翔する。このとき、第二の電極部材6の開口7(本例ではトナー保持体3の回転方向に対して並ぶ方向に二つ有する)から像保持体1側に向かって飛翔するトナーTは、像保持体1側に向かう力が第一の振動電界E1によるものに比べ小さくなり、また、そのトナー量(M1+M2)も第一の振動電界E1によるものに比べやや少なくなる。つまり、第一の振動電界E1及びトナー保持体3の移動によって飛翔されるトナー量Mは、第二の電極部材6に設けられた開口7を通るトナー量(M1+M2)と、トナー保持体3の下流側に向かうトナー量M3に分かれる。
【0019】
一方、(b)のように、第二の電極部材6を備えていない場合、第一の振動電界E1によって、トナー保持体3上のトナーTは、第一の電極部材4’とトナー保持体3との間で振動を繰り返しながら、トナー保持体3の移動に伴って下流側に進む。そして、第一の電極部材4’の下流端部位では、第一の電極部材4’のエッジ効果も手伝ってトナーTは第一の電極部材4’の下流端部位(先端部位)に集中し、凝集するようになる。凝集したトナーTはそのまま像保持体1側に向かって飛翔する。このとき、第一の振動電界E1及びトナー保持体3の移動によって、第一の電極部材4’から飛翔されるトナー量Mは、像保持体1側に向かうトナー量M1’と、トナー保持体3の下流側に向かうトナー量M3’に分かれるようになる。
【0020】
像保持体1上の静電潜像を現像する場合、(b)のように第二の電極部材6を備えない構成では、第二の電極部材6を備える構成((a)に示す構成)より多くの現像量(トナー量)を確保し易くなる。つまり、(M1+M2)<M1’の関係となる。しかし、このように多くの現像量を確保するには、第一の振動電界E1として大きな電界強度を必要とする。そのため、像保持体1側に向かうトナーの運動エネルギーも大きくなり、像保持体1の非画像部にもトナーTが付着するという、所謂かぶり現象を生じ易くなる。
【0021】
更に、第一の振動電界E1として、このような大きな電界強度を作用し続けると、第一の電極部材4’の下流端部位ではトナーTが堆積するようになり、すだれ状の凝集物(拡大図参照)が形成され、すだれ状のまま現像が行われるため、現像に際して、むらを発生させ易く、均一性に劣るようにもなる。
【0022】
これに対し、(a)のように、第二の電極部材6を設けると、第一の振動電界E1の電界強度が大きくても、第二の電極部材6による作用により、開口7から像保持体1側に飛翔するトナーTはその運動エネルギーが小さくなり、かぶり現象の発生が抑えられる。また、第二の電極部材6を備えることで、第一の電極部材4の下流端部位での電界集中も弱められ、この部位でのトナーTのすだれ状の凝集物の発生も抑えられる。それ故、長期に亘って、むらのない安定した現像が維持されるようにもなる。
【0023】
更に、このような第二の振動電界E2による作用を一層効果的にしてかぶりを低減する観点からすれば、第二の振動電界E2の最大振幅は、第一の振動電界E1の最大振幅以下に設定されていることが好ましい。このように、第二の振動電界E2の最大振幅を第一の振動電界E1の最大振幅より小さくする場合、第二の振動電界E2の周期を第一の振動電界E1の周期とは異なるようにしても差し支えない。
【0024】
そして、図1に示すような現像装置2における構成において、当該現像装置2を像保持体1に対向して配置した場合に像保持体1が保持する静電潜像への影響を低減する観点からすれば、第一の電界形成手段8は、第一の電極部材4を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、トナー保持体3に交流電圧を印加することで、第一の電極部材4とトナー保持体3との間に第一の振動電界E1を形成し、一方、第二の電界形成手段9は、第二の電極部材6と接地部位との間にトナー保持体3に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、第二の電極部材6及びトナー保持体3夫々に印加する交流電圧の電位差によって第二の振動電界E2を形成することが好ましい。これによれば、第一の電極部材4と像保持体1との間に作用する電界が小さくなり、像保持体1上の静電潜像に対する影響が低減され、より高画質化が図られる。
【0025】
ここで、「第一の電極部材4を予め決められた直流電界を介して接地」とは、第一の電極部材4が必ずしも直接接地される態様ばかりではなく、直流電界を介して接地される態様を含む趣旨であり、像保持体1の静電潜像への影響を抑えることからすれば、この直流電圧は小さい方が好ましく、通常、数10V程度である。
また、この態様において、第二の振動電界E2を第一の振動電界E1より小さくする観点からすれば、第二の電極部材6に印加する交流電圧は、トナー保持体3に印加する交流電圧と同位相に設定されていることが好ましい。
【0026】
そして、第一の電極部材4を接地する態様において、第二の振動電界E2による抑制作用を図るには、第二の振動電界E2の振幅、周波数の双方の作用を考慮するようにしても差し支えない。この場合、第二の振動電界E2の最大振幅が第一の振動電界E1の最大振幅を超える態様において、第二の電極部材6に印加する交流電圧の周波数は、トナー保持体3に印加する交流電圧の周波数とは異なる周波数に設定されていることが好ましい。
このように第二の電極部材6に印加する交流電圧の周波数を、トナー保持体3に印加する交流電圧の周波数と異ならせると、第二の振動電界E2としては、その振幅が第一の振動電界E1の振幅を超える部位が生じるが、一方、その振幅が第一の振動電界E1の振幅より小さくなる部位も生じるため、この小さくなる部位にてトナーTの運動エネルギーが抑えられ、第二の振動電界E2の一部で第一の振動電界E1より大きな振幅があっても結果的には、トナーTの運動エネルギーが第一の振動電界E1のときより小さくなり、かぶりの発生が抑えられる。
【0027】
そして、このように周波数を異ならせる態様にあっては、第一の振動電界E1にてクラウド化されたトナーTの像保持体1側へ向かう運動エネルギーをより抑える観点からすれば、第二の電極部材6に印加する交流電圧の周波数をトナー保持体3に印加する交流電圧の周波数より高くする方が好ましい。
【0028】
また、現像装置2の構成において、第一の振動電界E1及び第二の振動電界E2の選択肢を広げる観点から、第一の電界形成手段8は、トナー保持体3を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、第一の電極部材4に交流電圧を印加することで、第一の電極部材4とトナー保持体3との間に第一の振動電界E1を形成し、一方、第二の電界形成手段9は、第二の電極部材6に第一の電極部材4に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、第二の電極部材6とトナー保持体3との間に第二の振動電界E2を形成することが好ましい。
【0029】
更に、トナーの振動を抑え、かぶりを低減する観点からすれば、トナー保持体3が直接又は予め決められた直流電圧を介して接地される態様において、第二の振動電界E2は、第一の振動電界E1の周波数と異なる周波数に設定してもよい。尚、この場合、トナーTの振動が抑えられれば、第二の振動電界E2の振幅の一部が第一の振動電界E1の振幅を超えるものであっても差し支えない。
そして、このように周波数を異ならせる態様にあっては、第一の振動電界E1にてクラウド化されたトナーTの像保持体1に向かう運動エネルギーをより抑える観点からすれば、第二の振動電界E2の周波数を第一の振動電界E1の周波数より高くする方が好ましい。
【0030】
また、第一の電極部材4側から第二の電極部材6側へのトナーの移動をよりスムーズに行う観点から、第一の電極部材4及び第二の電極部材6は、第一の電極部材4とトナー保持体3との最短となる間隙をG1とし、第二の電極部材6とトナー保持体3との最短となる間隙をG2としたときに、G1≦G2の関係を満たすように配置されていることが好ましい。
【0031】
更に、トナーとして例えば注入帯電型のトナーを用いた場合にトナーの電荷量の変化を抑える観点からすれば、第一の電極部材4及び第二の電極部材6は、トナー保持体3に面する部位が絶縁性の被覆層で覆われていることが好ましい。この場合の絶縁性とは、トナーTが第一の電極部材4及び第二の電極部材6に接触してもトナーTの電荷量が変化しない程度の体積抵抗率を有するものであればよい。
【0032】
そして、このような現像装置を画像形成装置に適用するには、静電潜像を保持して回転する像保持体1と、像保持体1に対向して配置され且つ像保持体1の静電潜像を現像する現像装置2と、を備え、この現像装置2として上述の現像装置2を採用するようにすればよい。
【0033】
ここで、像保持体1としてはドラム状、ベルト状を問わず、また、その回転方向もトナー保持体3との対向部位で同方向、逆方向のいずれであっても差し支えない。更に、像保持体1としては、静電潜像を保持できるものであればよく、画素電極構成を有する像保持体1や、感光層や誘電層を有する像保持体1であってもよい。
【0034】
そして、画像形成装置における、特に、第二の電極部材6の配置をより適正にする観点からは次のようにすればよい。
一つの例としては、図3(a)に示すように、第二の電極部材6にトナー保持体3の回転方向に対して並ぶ二列の開口7が設けられる態様において、第二の電極部材6は、トナー保持体3の回転方向に対して二列の開口7間に位置する部位が像保持体1に最近接するように配置されることが好ましい。つまり、図中G3が最も短くなるように第二の電極部材6が配置されることが好ましい。これによれば、像保持体1上の静電潜像がより効果的に現像されるようになる。尚、「最近接」としては部材の許容差や組立て精度によるばらつきを含むことは言うまでもない。
【0035】
更に、このような配置をなすには、第一の電極部材4の配置も考慮する方がよく、第一の電極部材4のトナー保持体3の回転方向の下流側端部とトナー保持体3との間隙G5が最短となるように第一の電極部材4を配置することが好ましい。これによれば、第一の振動電界E1によるクラウド化されるトナー量が十分確保されるようになる。
そして、第一の電極部材4及び第二の電極部材6をこのように配置するには、像保持体1に対してトナー保持体3が偏倚して配置されるようになる。
【0036】
また、他の例としては、図3(b)に示すように、第二の電極部材6に一列の開口7が設けられる態様において、第二の電極部材6は、開口7に対応する部位が像保持体1に最近接するように配置されることが好ましい。つまり、図中G4が最も短くなるように第二の電極部材6が配置されることが好ましい。このように、開口7を一列設けた態様にあっても、上述の開口7を二列設けた態様と同様に、第一の電極部材4の配置を考慮する方がよいことは言うまでもない。
【0037】
更に、上述の現像装置2を適用する好適な画像形成装置の一例としては次のものが挙げられる。すなわち、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配置された画素電極を有する像保持体1と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより静電潜像を書き込む潜像書込手段と、を備える態様の画像形成装置が挙げられる。
【0038】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図4は、本発明が適用された一例としての実施の形態1の画像形成装置における全体構成の概要を示す。
【0039】
<画像形成装置の全体構成>
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体15内に例えば電子写真方式にて夫々各色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のトナー像が形成される四つの像保持体20(20a〜20d)を略鉛直方向に並列配置したものである。
【0040】
四つの像保持体20a〜20dに対向する位置には、二つの張架ロール61、62に記録材を吸着して搬送する搬送ベルト60が掛け渡され、例えば張架ロール61を駆動ロールとして循環回転するようになっている。また、張架ロール62と搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、記録材を搬送ベルト60に吸着するための帯電器63が設けられている。そして、各色の像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像する現像装置40と、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃器65と、が設けられ、更に、像保持体20と搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、搬送ベルト60によって搬送される記録材上に像保持体20上のトナー像を転写する転写器64が設けられている。尚、符号41は現像装置40(詳細は後述する)内にて像保持体20にトナーを供給する現像ロールを示している。
【0041】
また、装置筐体15内の下方には、記録材を供給する供給装置70が設けられ、例えば供給容器71内に収容された記録材が、ピックアップロール72によって供給容器71から送り出された後、フィードロール及びリタードロールの対構成による捌き機構73にて一枚毎に鉛直方向に延びる記録材搬送路74に向かって供給される。
そして、供給装置70から記録材搬送路74に供給された記録材は、記録材搬送路74の下流側に配置された位置合わせロール(レジストロール)78にて一旦位置合わせされた後、予め決めたタイミングで記録材搬送路74を更に搬送される。
【0042】
搬送された記録材は、帯電器63によって搬送ベルト60に吸着され、そのまま搬送ベルト60の回転と共に搬送される。搬送ベルト60上の記録材には、各色の転写器64によって夫々のトナー像が順次転写されて多重化される。トナー像が多重化された記録材は定着器76にて定着された後、排出ロール77から装置筐体15の一部で構成される記録材排出受け16に排出される。尚、記録材搬送路74には、記録材を搬送するための搬送部材(例えば搬送ロール等)79が適宜設けられる一方、搬送ベルト60の出口近く(張架ロール61の近く)には図示外の剥離部材が設けられ、搬送ベルト60から記録材の剥離が容易になされるようになっている。
【0043】
<像保持体>
次に、本実施の形態で用いられる像保持体20について詳述する。
本実施の形態における像保持体20は、例えば図5に示すように、フィルム上に多数の画素電極34が所謂マトリクス状に行列配置された画素電極フィルム30を回転可能な支持体である剛体ドラム21上に巻き付けて固定支持したものとなっている。
本例において、画素電極フィルム30は、例えばポリイミドフィルム基体上に、所謂薄膜製造プロセスを利用して作製されたもので、画素電極34が行列配置されている。
【0044】
そして、このように行列配置された画素電極34は、例えば剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向をデータライン、剛体ドラム21の回転方向に沿った方向を走査ラインとし、各画素電極34に対応するデータライン及び走査ラインはまとめられて適宜数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32に接続されている。尚、画素電極フィルム30は画素電極34を覆うように全体が図示外の保護膜で覆われており、また、図中符号21aは、剛体ドラム21の外周面の一部に回転軸方向に沿って開口された溝である。
【0045】
−画素電極の周辺構造−
次に、画素電極フィルム30の画素電極34及びその周辺構造について説明する。
本実施の形態において、画素電極フィルム30は、図6(a)〜(c)に示すように、画素電極34が行列配置されており、各画素電極34は、所謂アクティブマトリクス方式で構成され、スイッチング素子として例えばTFT(Thin Film Transistor)33を用い、コンデンサ35及び配線(ソース線Ls、ゲート線Lg等)が夫々付加されている。
【0046】
そして、各画素電極34間の結線は、データライン毎にTFT33のソースSが結線されるソース線Ls、走査ライン毎にTFT33のゲートGが結線されるゲート線Lgとしてまとめられている。また、TFT33のドレインDには画素電極34とコンデンサ35が並列に接続され、コンデンサ35の一方は走査ライン毎にまとめられ(図示せず)、図6(c)のような等価回路を呈するように構成されている。
【0047】
画素電極34は画素電極フィルム30に対しマトリクス状に多数並べられた構成のために、画素電極34の駆動回路は次のように行われる。
つまり、画素電極フィルム30には、図7に示すように、データライン及び走査ライン毎に予め決めた数の画素電極34が配置されており、各画素電極34をスイッチングするTFT33のソースS側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT33のゲートG側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続されている。また、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、像保持体20に設けられた像書込制御装置80によって制御され、像書込制御装置80によってデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32が制御されることで、目的の画素電極34に画像信号に基づいた潜像電圧が印加され、コンデンサ35によって保持される。尚、図7では画素電極34は省略しているが、図6(c)に示すように、TFT33とコンデンサ35との間に画素電極34が接続されていることは言うまでもない。
【0048】
<現像装置>
−現像装置の構成例−
本実施の形態における各色の現像装置40は、用いるトナーが異なる他は略同様の構成が採用されているため、ここでは一つの現像装置40について説明する。
図8は、現像装置40の概略構成を示すもので、トナー(本実施の形態では導電性トナーを使用している)が収容される現像容器40aを有している。本実施の形態の現像装置40は、現像容器40aに像保持体20に対向して現像用開口40bを開設すると共に、この現像用開口40bに面して像保持体20と離間配置され且つ対向部位で同方向に回転するトナー保持体としての現像ロール41を配設し、像保持体20と現像ロール41との対向部位にて像保持体20上に形成された静電潜像を現像するものである。更に、本実施の形態では、像保持体20が現像ロール41の回転方向における下流側に偏倚した状態で配置されている。
【0049】
また、現像ロール41の像保持体20側と異なる側には、現像ロール41との間にてトナーに電荷注入を行う電荷注入ロール43が設けられ、互いに軽く接触又は微小間隙をもって支持された状態で対向部位では互いに同方向に回転している。本例では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速くなるように設定されている。そして、現像ロール41と電荷注入ロール43との間には、両者の対向部位にあるトナーに対して電荷注入を行うための注入電界を形成する注入電源90が設けられている。つまり、本実施の形態では電荷注入ロール43や注入電源90等でトナーに対する電荷注入がなされ、現像ロール41上には安定した帯電量が与えられたトナーが供される。
【0050】
また、本実施の形態では、現像ロール41と電荷注入ロール43との対向部位より電荷注入ロール43の回転方向における上流側に、電荷注入ロール43上にトナーの薄層を形成する層厚規制ブレード45が設けられており、この層厚規制ブレード45によって電荷注入ロール43上のトナーの層厚規制がなされることで、層厚規制がなされたトナーが現像ロール41との対向部位に搬送されて電荷注入がなされる。
更に、現像容器40a内の電荷注入ロール43の奥側にはトナーを攪拌するアジテータ48が設けられ、電荷注入ロール43側へのトナーの供給を行うようになっている。
【0051】
本実施の形態における現像ロール41は、例えば表面を陽極化成処理したアルミニウム合金製のロール部材で構成されている。また、電荷注入ロール43は、例えばサンドブラスト法や化学エッチング法等により表面に小さく均一な凹凸面を形成したアルミニウム合金製のロール部材で構成され、現像ロール41と電荷注入ロール43とは軽く接触又は微小間隙をもって支持されている。更に、層厚規制ブレード45は例えば厚さ0.03〜0.3mm程度のステンレス合金製の板ばねにシリコーンゴムやEPDMゴム等を接着剤等により固着したもので、この層厚規制ブレード45の一端は、電荷注入ロール43の表面に軽く接触し、他端は現像容器40aに支持されている。尚、上述した部材の構成はこれに限られるものでないことは言うまでもない。
【0052】
そして、本実施の形態では、像保持体20と現像ロール41との配置が、像保持体20が現像ロール41の回転方向に沿って下流側に偏倚した状態で配置されている。また、像保持体20と現像ロール41との間には、後述する第一の電極部材51及び第二の電極部材52等を有する電極機構50が設けられている。
【0053】
−電極機構−
図9は、図8の要部拡大を示す。同図において、本実施の形態の電極機構50は、現像ロール41の外周面に対向して配置され、導電性部材である電極基材51aと、電極基材51aの現像ロール41に面する側に設けられた絶縁性の被覆層51bと、で構成された第一の電極部材51と、この第一の電極部材51に対し現像ロール41の回転方向における下流側に絶縁部としての絶縁性の接着層53を介して設けられ、像保持体20と現像ロール41との間で現像に供される現像領域DRに対応して配置され、導電性部材である電極基材52aと、電極基材52aの現像ロール41に面する側に設けられた絶縁性の被覆層52bと、で構成された第二の電極部材52とを有している。更に、この第二の電極部材52には、現像領域DRに対応する位置にトナーが通過可能になるように開けられ、現像ロール41の回転方向に交差する幅方向に亘って連続的に形成された開口54が、現像ロール41の回転方向に対して並んで二列設けられている。
【0054】
本実施の形態の第一の電極部材51は、その現像ロール41の回転方向における下流側端部が、現像ロール41との間隙において略最小となる位置になるように配置されている。また、第二の電極部材52は、二列の開口54の間に位置する部位が、像保持体20と最近接するように配置されている。更に、第一の電極部材51の下流側端部と現像ロール41との間隙G1と、第二の電極部材52の上流側端部と現像ロール41との間隙G2とは略等しくなるようになっている。尚、図中L1は像保持体20の中心線を示し、L2は現像ロール41の中心線を示す。
【0055】
このような電極機構50における第一の電極部材51及び第二の電極部材52に対する電気的な接続は次のようになっている。
第一の電極部材51は接地され、第一の電極部材51と現像ロール41との間に第一の振動電界E1を形成するため現像ロール41に印加される交流電圧を供給する第一の電源91が接続されている。一方、第二の電極部材52には、現像ロール41に印加される交流電圧とは異なる交流電圧を印加するための電源93が接続され、この電源93の他端は接地されている。そのため、この電源93による交流電圧と、第一の電源91による交流電圧との電位差が、第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用する第二の振動電界E2(図示せず)となるようにしている。尚、ここでは、第一の電極部材51を直接接地する態様としてが、例えば数10V程度の直流電圧を介して接地するようにしても差し支えない。
【0056】
−導電性トナーの構成例−
本実施の形態で用いられるトナー(導電性トナー)は、例えば図10(a)に示すように、導電性を有する材料からなる導電性トナー基体(導電性コア)81を有し、この導電性コア81の周囲を絶縁性被覆層(例えば絶縁性樹脂層)82で被覆すると共に、導電性コア81の一部が露出するように絶縁性被覆層82に適宜数の凹部83を設けたものが用いられる。導電性トナーは、重合法や各種公知のカプセル化技術等で作製することができる。この時、導電性コア81は、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等に導電性カーボンやITO等の透明導電粉などの導電剤を分散させたり、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等からなる粒子表面を前記導電剤により被覆することによって、作製される。
【0057】
このような態様の導電性トナーに対し高電界を印加すると低抵抗化する傾向を示す。そして、低抵抗化する電界の大きさについては、トナーの主として凹部83の占有割合、あるいは、絶縁性被覆層82の厚さなどに依存する。
このメカニズムについては、次のように推測される。つまり、導電性コア81が絶縁性被覆層82にて被覆されているため、導電性コア81自体がコア同士接触することや直接電極部材等に接触することが殆どなく、絶縁性被覆層82を介して一定の微小間隙を保つことになり、この結果、例えば高電界が印加された時、トンネル効果等により導通することによる。
【0058】
また、導電性トナーの他の態様としては、例えば図10(b)に示すように、導電性コア81を絶縁性若しくは半導電性の被覆層84にて被覆し、被覆層84の厚さhを適宜調整することにより、トナーの抵抗を調整可能としたものが挙げられる。このとき、半導電性の被覆層84については、それ自体半導電性の材料を用いるようにしてもよいし、例えば絶縁性樹脂に、酸化チタンや酸化すず等の金属酸化物や導電性カーボンを微量含有させた半導電性樹脂を用いるようにしてもよい。そして、導電性コア81としては、例えば通常の絶縁性トナーからなる絶縁性トナー基体(絶縁性コア)の外表面近傍に導電性微粒子を付着させる態様や、絶縁性コアの内部に導電性微粒子を混入させるものなど適宜選定して差し支えない。
【0059】
<画像形成装置の作動>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動についてその概要を説明する。
−像保持体の潜像形成−
先ず、像保持体20での潜像形成について説明する。図7に示す像書込制御装置80によって、各色成分の像保持体20a〜20d(図4参照)の各画素電極34(図6参照)に対して各色の画像信号に対応した潜像電圧が印加されて保持され、これが、現像時の像保持体20側の潜像電位となる。
【0060】
−現像装置の作動−
次に、現像装置40での作動を説明するが、先ず、図8を用いて導電性トナーに対する電荷注入工程を中心に説明する。
アジテータ48により攪拌されたトナーは、電荷注入ロール43側に供給された後、電荷注入ロール43の回転に伴って搬送され、層厚規制ブレード45にてその層厚が規制されて電荷注入ロール43上には略均一なトナー層が形成される。この均一に形成されたトナー層は、電荷注入ロール43と現像ロール41とが対向する対向部位にて互いに同方向に回転する両者間に挟まれた状態で擦られながら、注入電源90による注入電界によって電荷注入される。このとき、特に本実施の形態では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速く設定されているため、トナーへの有効な擦りがなされ、良好な電荷注入がなされる。
【0061】
この場合、電荷注入ロール43と現像ロール41との間に挟まれたトナーは電荷注入ロール43と接触する確率が高められ、しかも、トナーとの接触抵抗も小さくなる。その結果、トナーの見かけ上の抵抗が小さくなり、トナーは低抵抗な状態のまま有効に電荷注入がなされる。そのため、注入電界としては、比較的低電界であってもトナーには効率的に電荷注入が行われる。
【0062】
このように、単層以下になったトナーに対して電荷注入を行うことで、トナーに対する電荷注入が効果的になされ、WST(Wrong Sign Toner:トナー本来の帯電極性とは異なる逆極性に帯電されたトナー)の発生が抑えられる。そして、電荷注入ロール43との対向部位を経た現像ロール41上には、略均一な電荷注入がなされた単層以下のトナー層が形成され、現像ロール41と像保持体20との対向領域に搬送される。尚、このような電荷注入方式にあっては、トナー層間にせん断力が与えられるため、トナー同士が分極状態で重なることが防止され、注入電界が仮に高電界の場合であってもWSTの発生は防止されるようになる。
【0063】
−現像ロールと像保持体との対向領域でのトナーの挙動−
次に、本実施の形態における像保持体20と現像ロール41との対向領域でのトナーの挙動について説明するが、その前に、先ず、図11(a)〜(c)を用いて、比較例として第二の電極部材52を備えていない態様について説明する。
同図において、現像ロール41に付着しているトナーを第一の電極部材51’と現像ロール41との間で振動させるには、ある程度の強電界を必要とするため、第一の振動電界E1として強電界を作用させ、トナーをクラウド化させる。その結果、(a)に示すように、トナーは第一の電極部材51’の先端部位を抜けて像保持体20側に向かい静電潜像に対する現像がなされる。
【0064】
しかしながら、現像ロール41上のトナーを振動させて像保持体20に向かって飛翔させるには、第一の振動電界E1として強電界を必要とすることから、像保持体20に向かう際のトナーの持つ運動エネルギーはある程度大きくなり、像保持体20上の非画像部にもトナーの付着が生じ易くなる。
【0065】
また、第一の電極部材51’と現像ロール41との間で第一の振動電界E1は、現像ロール41の表面に層形成されたトナーを空気中に飛翔させて振動させるほど強電界なので、トナーが第一の振動電界E1に捕捉され易く、その場振動が生じ易い。特に、第一の電極部材51’のエッジ効果によって第一の電極部材51’の先端部位では、(b)に示すように、トナーが徐々に凝集し、結果的にすだれ状に連なったトナーの凝集物Cが形成されるようになる。
【0066】
このようなすだれ状の凝集物Cが形成されると、第一の振動電界E1によって振動しているトナーは凝集物Cに捕捉され、第一の電極部材51’より下流側の領域に搬送されるクラウド化されたトナー量は少なくなる。また、像保持体20では凝集物Cがそのまま現像され易くなる。そのため、像保持体20の静電潜像に対してトナー付着量にむらが生じ易く、濃度不足等の画像欠陥を生じ易くなる。
【0067】
このような凝集物Cの形成を抑えるには、現像ロール41の回転速度を大きくすることが想定される。つまり、現像ロール41の回転によって現像ロール41と第一の電極部材51’との間の大気の流れを速くし、この部位でのトナーの動きを速くすることで、第一の電極部材51’の先端部位での凝集物Cの発生は抑えられる方向に向かう。しかし、現像ロール41の回転を速くし過ぎると、第一の電極部材51’より外方に移動したトナーは、現像ロール41の回転方向に沿う運動成分が大きいため、像保持体20側に向かう成分としては弱くなる。そのため、像保持体20での潜像電位を大きくする必要がある。
一方、像保持体20として、例えば画素電極を用いるような態様では、潜像電位を高くし難いこともあり、現像ロール41の回転速度はある程度抑える必要がある。そのため、凝集物Cの影響を低減することが重要となる。
【0068】
本実施の形態では、図12(a)に示すように、現像ロール41の回転方向における第一の電極部材51より下流側に第二の電極部材52を備え、この第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用させる第二の振動電界E2(図示せず)を工夫することで、凝集物Cの発生を抑えると共にかぶりの低減を図っている。
ここで、図12(b)〜(d)は、本実施の形態における一例として矩形波(デューティ50%)を用いた場合の各種の電圧波形を示すもので、(b)は第一の電源91の波形で第一の振動電界E1に対応する波形、(c)は電源93による第二の電極部材52に加える波形で振動電界E3に対応する波形、(d)は第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用する第二の振動電界E2に対応する波形となっている。尚、図中tは一周期を示す。
【0069】
今、第一の電源91に(b)のような振幅V1の矩形波を加えると、これが第一の振動電界E1に対応する。また、電源93から(c)のような振幅V3の矩形波を第二の電極部材52と接地との間に加えると、第二の電極部材52と現像ロール41との間には、(c)と(b)の電位差分として、(d)に示すように、振幅(V1―V3)の矩形波が作用するようになる。これが実質的な第二の振動電界E2に対応し、第一の振動電界E1と第二の振動電界E2との間では、第二の振動電界E2の振幅が第一の振動電界E1の振幅より小さいものとなっている。
【0070】
このように、第一の振動電界E1より第二の振動電界E2を弱くすることで、第一の振動電界E1によって振動したトナーは第一の電極部材51の先端部位では第二の振動電界E2に影響され、第二の電極部材52がない場合に比べて電界集中が低減し、第一の電極部材51の先端部位でのトナーのすだれ状の凝集物C(図11参照)の形成は抑えられる。また、第二の振動電界E2を第一の振動電界E1より小さくしたことで、第二の電極部材52での凝集物Cの形成も抑えられる。
【0071】
そして、第一の振動電界E1によって振動したトナーは、第二の振動電界E2によって像保持体20側に向かうが、第二の電極部材52がない場合に比べ像保持体20側に向かう運動エネルギーが弱められることで、かぶりの発生も抑えられる。このとき、電源93の振幅を大きくし過ぎると、第二の振動電界E2に対応する(d)の振幅が小さくなり過ぎ、かぶりの発生がより低減されるようになるが、像保持体20側に飛翔するトナー量も少なくなり、現像量が低下するようにもなる。そのため、第二の振動電界E2の振幅が第一の振動電界E1の振幅の70%以上100%未満、好ましくは80%以上90%以下となるように、電源93による振動電界E3の振幅を決める方がよい。
【0072】
また、本実施の形態では、第一の電極部材51を接地し、更に、第二の電極部材52に対して一端が接地された電源93から振幅の小さな振動電界E3を作用させるようにしたので、第一の電極部材51と像保持体20との間に作用する電界や、第二の電極部材52と像保持体20との間に作用する電界が小さくなり、像保持体20の静電潜像に与える影響も低減される。そして、現像ロール41の回転方向における第一の電極部材51の下流側端部がほぼ現像ロール41の中心線L2の位置になるように配置し、第二の電極部材52に設けられた二つの開口54の間の部位がほぼ像保持体20の中心線L1の位置になるように配置することで、第一の電極部材51によるトナーの振動が十分なされると共に、第二の電極部材52に開けられた開口54を通過するトナーが像保持体20の潜像電位に制御され易くなる。
【0073】
また、本実施の形態の第一の電極部材51及び第二の電極部材52は絶縁性の被覆層51b,52bが形成されているため、トナーが接触してもトナーの帯電量の変化が抑えられる。
【0074】
本実施の形態では、各種電源に矩形波を用いる態様を示したが、矩形波に限らず、正弦波でもよいし、三角波等でも差し支えない。また、第一の電極部材51及び第二の電極部材52に絶縁性の被覆層51b,52bを設ける態様を示したが、トナーとして注入帯電型以外のトナーを用いる場合には被覆層51b,52bを省くようにしても差し支えない。更には、第一の振動電界E1や第二の振動電界E2を有効に作用させるには、被覆層51b,52bを備えない方が実効的な電界強度が大きくなるため、トナーでの多少の帯電量の変化を踏まえて被覆層51b,52bを省くようにしても差し支えない。
【0075】
また、本実施の形態の第二の電極部材52に開けられた開口54の形状としては、トナーが通過できる形状であればよく、例えば図13(a)〜(d)に示すような形状が適用される。ここで、(a)〜(d)は、第二の電極部材52の平面図を示しており、図の縦方向が現像ロール41(例えば図9参照)の回転軸方向(幅方向に相当する図中X方向)となっている。
【0076】
(a)は、本実施の形態で使用した開口54を示すもので、電極基材52aに対しX方向に亘って連続的に開けられた開口54を現像ロール41の回転方向(Y方向)に対して二列配置したものとなっている。開口54のY方向の寸法W1は、トナーが通過できる大きさであればよいが、第二の電極部材52によるトナーへの電界作用を及ぼし且つトナーを容易に通過させる観点からすれば、第二の電極部材52の厚さを超え、像保持体20と現像ロール41との間隙より狭い条件で、実験等で求める方がよい。更に、二列の開口54のY方向の間隙W2は、広過ぎると、二つの開口54による一様なトナーの飛翔がなされ難くなることから、狭い方がよく、通常、100〜300μm程度の範囲内で選択すればよい。
【0077】
また、(b)は、X方向に不連続的に開口54を設けたもので、Y方向には二列に開口54を設けたものとなっている。このような第二の電極部材52では、X方向に亘って一つの連続した開口54を形成する場合よりも、強度が保たれるようになる。しかしながら、図中dの寸法を大きくし過ぎると、現像時のむらの発生にも繋がることが予想され、dの寸法としては、第二の電極部材52と像保持体20との間隙よりも小さい方がよく、更には、小さければ小さいほどよいが、部材の強度や加工の面からは、通常、50〜100μm程度が適用される。
【0078】
(c)は、X方向にはY方向で位置をずらした二つの開口54を設け、このような二つの開口54をY方向に二列配置したものとなっている。また、(d)は開口54が矩形ではなく、円形となっているもので、X方向に多数並べた構成となっている。(c)や(d)の構成における寸法関係も、(a)や(b)のところで説明したものと同様のため、ここでは省略する。
【0079】
第二の電極部材52にこのような開口54を形成するには、例えばレーザ加工やエッチング加工を適用すればよいが、開口54の断面形状をより直線状にするにはレーザ加工が好適である。尚、このような第二の電極部材52の加工はレーザ加工に限らず、公知の技術を適用すればよい。
【0080】
一般に、板状の電極部材(第一の電極部材51に相当)を使ってトナーのクラウド化を行い、現像させるという従来の方法としては、現像量を大きくするため、より強い振動電界でトナーをクラウド化させる、複数の開口部を設ける、クラウド化させながら現像域へトナーを送りだすという工程を繰り返す、などの方法がある。トナーは振動電界によって、像保持体と現像ロールとの間で垂直振動をしながら、像保持体の画像部電位によって現像され、非画像部電位によってトナーの付着が抑制される(現像されない)。しかしながら、像保持体と現像ロールの間隙が数100μm程度と狭い現像領域においては、振動電界に伴って垂直振動したトナーが、現像領域内の気流と合わさって、画像部、非画像部に関わらず像保持体に衝突するようになり、非画像部の領域において、所謂かぶりの発生を生じ易くなる。
【0081】
そこで、トナーの垂直振動による像保持体20側への移動を低減させることを目的に、本実施の形態では、クラウド発生用の振動電界(第一の振動電界E1に相当)を与える板状の第一の電極部材51と、現像を行う第二の電極部材52とをトナーの進行方向で分離し、上流側で強い第一の振動電界E1を与えてクラウドを発生させた後、下流側の第二の電極部材52には弱い第二の振動電界E2を与えて、画像部及び非画像部での好適な現像量(画像濃度向上、かぶり低減)を実施するという構成としたものである。この構成を採ることで、かぶりの発生が比較的抑えられるばかりでなく、第一の電極部材51の先端部位への電界集中が抑えられることから、この部位にすだれ状のトナーの凝集物の形成が抑えられ、結果的に長期的な画質の安定化が図られる。
【0082】
◎実施の形態2
図14は実施の形態2に係る現像装置の要部拡大を示すものである。本実施の形態の電極機構50は実施の形態1と異なり、第二の電極部材52に一列の開口54を備えたものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0083】
同図において、本実施の形態における第二の電極部材52には、現像ロール41の回転方向に対して並ぶ方向には一つの開口54しか開けられていない。また、現像ロール41の回転方向における開口54に対応する部位が、像保持体20の中心線L1に略対応する位置になるように第二の電極部材52が配置されている。
更に、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第一の電極部材51を接地し、第二の電極部材52には、接地との間に電源93を設けたので、実施の形態1と同様の作用を奏するようになる。尚、詳細については実施の形態1と同様のため省略する。
【0084】
◎実施の形態3
図15は実施の形態3に係る現像装置の要部拡大を示すものである。本実施の形態の電極機構50は、実施の形態1と略同様に構成されるが、第一の電極部材51と第二の電極部材52の一部とが接着層53(具体的には絶縁性の接着層)を介して重なっている点が実施の形態1と異なる。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0085】
本実施の形態では、第一の電極部材51と第二の電極部材52とを接着層53にて固着することで、第一の電極部材51と第二の電極部材52とがより強固に繋がり、これらを一緒に配置することができるようになり、現像装置の組立てが容易になされる。
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第一の電極部材51を接地し、第二の電極部材52には、接地との間に電源93を設けたので、実施の形態1と同様の作用を奏するようになる。この場合、尚、詳細については実施の形態1と同様のため省略する。
【0086】
◎実施の形態4
図16(a)は実施の形態4に係る現像装置の要部拡大を示すものである。本実施の形態の現像装置は、これまでの実施の形態と異なり、第一の電極部材51を接地することなく、この第一の電極部材51と現像ロール41との間に第一の電源91を接続し、一方、第二の電極部材52と現像ロール41との間に第二の電源92を接続し、現像ロール41を接地するようにしたものである。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施の形態における第一の振動電界E1に対応する交流電圧としては、例えば図16(b)のような振幅がV1、周期がt0の矩形波が適用され、一方、第二の振動電界E2に対応する交流電圧としては、(c)のような振幅がV2(V2<V1)、周期がt0の矩形波が適用されている。また、本実施の形態では、第一の電極部材51の像保持体20に面する側には、絶縁層55が形成されている。
【0088】
本実施の形態では、第一の電極部材51及び第二の電極部材52は互いに独立に交流電圧を印加する構成としているので、第一の振動電界E1と第二の振動電界E2とは夫々独立に作用する。そのため、第一の振動電界E1によって第一の電極部材51と現像ロール41との間で振動を繰り返したトナーは、第二の振動電界E2によって振動させられ、第二の電極部材52に設けられた開口54を通って像保持体20側に至る。この場合であっても、第一の電極部材51の先端部位でのトナーの凝集物の発生が抑えられると共に、かぶりも抑えられた現像がなされる。
【0089】
また、第一の電極部材51が接地されないことから、第一の電源91による電界強度の大きな第一の振動電界E1が第一の電極部材51に直接作用することで、第一の振動電界E1が像保持体20上の潜像電位に直接影響を及ぼすことが想定される。しかしながら、本実施の形態では第一の電極部材51の像保持体20に面する側に絶縁層55が形成されているため、この絶縁層55の比誘電率(空気層より大きい)により、この絶縁層55に作用する分圧分だけ像保持体20に作用する電界が小さくなり、像保持体20の静電潜像に対する第一の振動電界E1からの影響が抑えられる。
【0090】
本実施の形態における第二の振動電界E2としては、(c)に示す波形に限られず、例えば(d)のように、振幅がV2、周期が第一の振動電界E1の周期t0より短いt1(t0>t1)の矩形波を用いるようにしてもよい。このように、第二の振動電界E2の周期を第一の振動電界E1の周期より短くする(周波数を高くする)ことで、電界によるトナーの振れ幅が小さくなり、トナーの像保持体20側へ向かう運動エネルギーが小さく抑えられ、かぶりの抑制に繋がり易くなる。
【0091】
また、第二の振動電界E2に対応する交流電圧としては、(e)のように、振幅を第一の振動電界E1に対応する交流電圧と同様にV1とし、半周期(t0/2)のうち、tAの間は±V1の電圧を印加し、tBの間はゼロとする波形を適用することも可能である。このように、第二の振動電界E2としてtBという時間分だけ電界をゼロとすることで、第一の振動電界E1より弱い部分を有するようになり、第二の振動電界E2によるトナーの運動エネルギーが抑えられ、かぶりの発生が抑えられると共に、第一の電極部材51の先端部位での凝集物の形成も抑えられる。
【0092】
◎実施の形態5
図17は実施の形態5の現像装置の要部拡大を示すものである。本実施の形態の現像装置は、実施の形態1の現像装置と略同様の構成をしているが、第二の電極部材52に与える交流電圧(第二の電極部材52と接地との間に作用する振動電界E3に対応する交流電圧)が実施の形態1と異なるものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0093】
同図において、(a)は装置構成、(b)は現像ロール41に与える交流電圧の波形で第一の振動電界E1に対応する波形、(c)は第二の電極部材52に与える交流電圧の波形で振動電界E3に対応する波形、(d)は現像ロール41に与えた交流電圧と第二の電極部材52に与えた交流電圧との電位差によって、現像ロール41と第二の電極部材52との間に得られる電位の波形であり、第二の振動電界E2に対応する波形となっている。
本実施の形態では、振動電界E3は、第一の振動電界E1より高い周波数のものが用いられている。そのため、第二の振動電界E2としては、振動電界E3と第一の振動電界E1との合成分が作用するようになる。今、第一の振動電界E1として、振幅がV1、周期t1の波形を適用し、一方、振動電界E3として、振幅がV3、周期t3の波形を適用する。このとき、V1>V3、t1>t3となっている。
【0094】
接地された第一の電極部材51と現像ロール41との間に第一の振動電界E1を作用させ、振動電界E3を第二の電極部材52と接地との間に作用させると、第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用する第二の振動電界E2は、(d)のように、第一の振動電界E1の振幅から、出張る部分α(電位が±(V3+V1)となる部分)と、窪む部分β(電位が±(V3―V1)となる部分)とを有する波形となる。このような波形は、周期t1とt3の最小公倍数の時間を一周期とする波形となる。
【0095】
本実施の形態では、第二の振動電界E2としては、その周期が第一の振動電界E1の周期より短く、その振幅が第一の振動電界E1の振幅を超える部位(図中αの部分)及び第一の振動電界E1の振幅より小さい部位(図中βの部分)を有し、更に、その振幅の平均(±V1に相当)が第一の振動電界E1の振幅(振幅の平均に相当し±V1)と等しくなっている。
【0096】
このような電界によるトナーへの作用は次のように推定される。第二の振動電界E2の振幅が第一の振動電界E1の振幅より小さい部位(βの部分)によって、第一の振動電界E1によって振動を繰り返されたトナーは、この部位によってその運動エネルギーが低減される。更に、第一の振動電界E1の振幅と第二の振動電界E2の振幅の平均とが等しくなっていることから、第二の振動電界E2で振幅が大きい部位があっても全体として運動エネルギーが低下する。そのため、第二の振動電界E2として第一の振動電界E1を作用させる場合に比べて、かぶりの低減が図られる。
【0097】
以上の実施の形態1〜5では、画像形成装置として四色に対応する像保持体20を用いた構成のものを示したが、これに限られず、単色のものであってもよい。
また、第一の電極部材51や第二の電極部材52として金属製の板状部材の構成を示したが、例えば銅箔の両面をポリイミドフィルムにて挟んだ構成の印刷配線板等を用い、第二の電極部材52にあっては、開口54を設けるようにしてもよい。更には、例えば第二の電極部材52として、板状部材の代わりに、例えば現像ロール41の回転軸方向に延びるワイヤ状部材を現像ロール41の回転方向に対して並ぶ方向に並べるようにしても差し支えなく、そのとき、複数のワイヤ状部材を接触させて用いるようにしてもよい。
【0098】
更に、像保持体20として画素電極34(図6参照)を使用した構成のものとしたが、例えば画素電極34を用いない感光体を適用することも可能であり、この場合、感光体側の潜像電圧を小さく設定してもかぶりの発生が抑えられるようになり、感光体自体の長寿命化が実現される。更にまた、トナーとして電荷注入型のものを示したが、例えば摩擦帯電型のトナーを用いるようにしてもよく、この場合、特に、第一の電極部材51及び第二の電極部材52の被覆層51b,52bは省略しても差し支えない。
【実施例】
【0099】
◎実施例1
本実施例は、第一の電極部材51と第二の電極部材52とを備える構成と、第二の電極部材52を備えない構成(第一の電極部材51’のみ有する構成)での像保持体20上の現像量について評価確認したものである。
図18は各構成の模式図を示すもので、(a)は実施の形態4(図16参照)の構成であり、(b)及び(c)は比較例としての構成を示している。ここで、(a)での第一の振動電界E1は、(b)の振動電界E0(加える電圧がVpp)の1.5倍の大きさであり、(c)での振動電界E0’も第一の振動電界E1と同様の大きさとしている。更に、(a)の第二の振動電界E2は、第一の振動電界E1より小さく、ここでは約80%となるように設定されている。
【0100】
このような構成において、像保持体20の電位と現像量との関係を確認したところ、図19のような結果が得られた。
同図において、第二の電極部材52を備えないものでは、(b)のように、振動電界E0が小さいと、像保持体20の電位の小さい部分より低い方では現像量が少なく、所謂かぶりに対しては良好となるが、像保持体20の電位が大きい部分(所謂画像部に相当)での現像量が少なくなり、所謂濃度不足となる。そのため、(b)のように、濃度を上げようと大きな振動電界E0’とすると、濃度不足は良好となるものの、かぶりが発生するようになる。これらに対し、第二の電極部材52を設け、第一の電極部材51には大きな第一の振動電界E1を与え、第二の電極部材52には第一の振動電界E1より弱い第二の振動電界E2を加えることで、かぶり及び現像量(画像部の濃度)が良好な構成が得られた。
【0101】
(a)の方が(c)より画像部における現像量が大きくなったことは、次のように推測される。現像量の増加は、第一の電極部材51の先端部位における電界集中が第二の電極部材52によって抑えられ、トナーの所謂すだれ状の凝集物の発生が抑制されたことによる。
更に、本実施例では、(a)の第二の振動電界E2を第一の振動電界E1の70〜90%になるように調整して確認したところ、同様の結果が得られることを確認した。
【0102】
◎実施例2
本実施例は、実施の形態1と同様の構成の実験装置にて、第一の電極部材51を接地し、第二の電極部材52に振動電界E3を加えて、像保持体20上の画像部及び非画像部での現像量を評価確認した。実験は、図20に示す構成で行い、実験条件は以下の通りとした。
・像保持体20:平板状で、画像部の電位+50V、非画像部の電位−20V
・第一の電極部材51:板厚100μm、現像ロール41との間隙100μm
・第二の電極部材52:板厚100μm、現像ロール41との間隙100μm、開口54の幅250μm、開口54の前後の幅250μm
・像保持体20と現像ロール41との間隙400μm
・第一の振動電界(E1):±500V(1000Vpp)、10kHz、Duty50%
・電界(E3):0、100、200、300、400Vppの五箇所、10kHz、Duty50%
【0103】
実験結果を図21の(a)及び(b)に示す。ここで、(a)は画像部における現像量であり、(b)は非画像部における現像量を示すグラフである。
この結果によれば、電界E3のピークツウーピーク電圧Vppが100〜300Vppであれば、振動電界E3がゼロのときよりも画像部の濃度が高く、非画像部でのかぶりも少ないことが判明した。更に、振動電界E3が100Vpp及び200Vppの方が300Vppより良好であることが判明した。
【0104】
本例では、第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用する第二の振動電界E2(図示せず)は振動電界E3と第一の振動電界E1との差分となることから、第二の振動電界E2としては、第一の振動電界E1の90%、80%、70%であれば良好であると言える。また、このうち、90%及び80%の方が画像部の濃度及びかぶりの点で好ましいことが理解された。
【0105】
◎実施例3
本実施例は、実施例2と同様の構成にて、実施の形態5(図17参照)のように、振動電界E3に対応する交流電圧の周波数を第一の振動電界E1に対応する交流電圧の周波数より高くして評価確認した。
本例では、第一の振動電界E1の周波数を10kHzとし、振動電界E3の周波数として、15kHz及び20kHzの二箇所とし、振動電界E3の大きさは0、100、200、300Vppの四箇所で実験した。
【0106】
結果は、図22(a)及び(b)に示すように、周波数に関わらず、Vppが100Vpp及び200Vppで良好であり、300Vppでは画像部の現像量が若干低下すると共にかぶりも若干増加する傾向を示した。また、周波数は15kHzの方が20kHzに比べかぶりが小さいことが確認された。
このことは次のように推測される。振動電界として、作用させる周波数を高くしていくと(周期を短くしていくと)、トナーは初めのうちは周波数に対応して第二の電極部材52と現像ロール41との間を移動し、開口54から像保持体20側へ飛翔するようになるが、周波数が高くなり過ぎると、トナーが周波数に追従でき難くなり、第一の振動電界E1の作用を第二の振動電界E2で抑えることがなされ難く、像保持体20側へ向かうトナー量が増加する。その結果、周波数が15kHzよりも20kHzの方が画像部での現像量や非画像部での現像量(かぶり)が増加したものと思われる。
【0107】
そして、図22の結果から、振動電界E3の周波数を第一の振動電界E1の周波数より高くする場合、第二の振動電界E2としては、第一の振動電界E1の90%及び80%の場合に画像部の濃度及びかぶりの点で好ましいことが理解された。
【0108】
◎実施例4
本実施例は、実施例1のところで示した比較例とは異なり、本例のような貫通孔(開口54に相当)を第一の電極部材51’に設けた場合の効果を評価確認したものである。実験は図23に示す構成で、第一の電極部材51’を接地し、画像部及び非画像部での現像量を評価確認した。実験条件は以下の通りとした。
・像保持体20:平板状で、画像部の電位+50V、非画像部の電位−20V
・第一の電極部材51’:板厚100μm、現像ロール41との間隙100μm、貫通孔の幅250μm、貫通孔の前後の幅250μm
・像保持体20と現像ロール41との間隙400μm
・第一の振動電界(E1):±500V(1000Vpp)、10kHz、Duty50%
【0109】
結果は、図22の振動電界E3をゼロとしたものと同様の結果が得られたので、ここでは省略する。
【符号の説明】
【0110】
1…像保持体,2…現像装置,3…トナー保持体,4…第一の電極部材,5…絶縁部,6…第二の電極部材,7…開口,8…第一の電界形成手段,9…第二の電界形成手段,T…トナー,E1…第一の振動電界,E2…第二の振動電界
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現像剤搬送体と像形成体との間に二層構成の電極を設けた態様が記載されている。
また、特許文献2には、飛翔電極とトナー保持電極との間の収容空間で導電性トナーをクラウド化させ、飛翔電極から飛翔したトナーを複数の穴に対応して設けられた制御電極にて制御することで、所望の穴からトナーを飛翔させて記録材上に画像を形成する構成が記載されている。
更に、特許文献3には、複数の電極を有するトナー担持体上にホッピング電界を形成してトナーをクラウド化させ、夫々制御電極を有する複数の穴を設けたトナー制御手段にて、所望の穴からのトナーを流出させて記録材上に画像を形成する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−220853号公報(実施例、図3)
【特許文献2】特開2010−194888号公報(第1実施形態、図2)
【特許文献3】特開2010−58345号公報(発明を実施するための最良の形態、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トナー保持体上のトナーを振動電界によってクラウド化させて現像する方式にあって、現像量を確保しながらかぶりの発生も抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、このトナー保持体の外周面に対向して配置され、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させる電界を形成するために用いられる第一の電極部材と、この第一の電極部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させるように、周期的に変化する電界成分が含まれる第一の振動電界を前記第一の電極部材と前記トナー保持体との間に形成する第一の電界形成手段と、前記像保持体と前記トナー保持体との間で現像に供される現像領域に面して設けられ、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させる電界を形成するために用いられ、前記第一の電極部材に対し前記トナー保持体の回転方向下流側に延びるように絶縁部を介して設けられ且つ当該絶縁部に対応した部位からはトナーが通過不能となるように配置される第二の電極部材と、この第二の電極部材のうち前記現像領域に対応する位置に開けられ、前記トナー保持体の回転方向に交差する幅方向に亘って連続的又は不連続的に形成されると共に前記像保持体に向かってトナーを通過させる開口と、前記第二の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成した場合に比べてトナーの振動を抑制し且つ前記開口から現像領域で必要とされる予め決められたトナー量を飛翔させるように、少なくとも一部に前記第一の振動電界の振幅より小さい部位を含み周期的に変化する電界成分が含まれる第二の振動電界を前記第二の電極部材と前記トナー保持体との間に形成する第二の電界形成手段と、を備えることを特徴とする現像装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る現像装置において、前記第二の振動電界の最大振幅は、前記第一の振動電界の最大振幅以下に設定されていることを特徴とする現像装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記第一の電界形成手段は、前記第一の電極部材を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、前記トナー保持体に交流電圧を印加することで、前記第一の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成し、一方、前記第二の電界形成手段は、前記第二の電極部材と接地部位との間に前記トナー保持体に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、前記第二の電極部材及び前記トナー保持体夫々に印加する交流電圧の電位差によって前記第二の振動電界を形成するようにしたことを特徴とする現像装置である。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る現像装置において、前記第二の電極部材に印加する交流電圧は、前記トナー保持体に印加する交流電圧と同位相に設定されていることを特徴とする現像装置である。
請求項5に係る発明は、請求項3に係る現像装置のうち前記第二の振動電界の最大振幅が前記第一の振動電界の最大振幅を超える態様において、前記第二の電極部材に印加する交流電圧の周波数は、前記トナー保持体に印加する交流電圧の周波数とは異なる周波数に設定されていることを特徴とする現像装置である。
【0007】
請求項6に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記第一の電界形成手段は、前記トナー保持体を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、前記第一の電極部材に交流電圧を印加することで、当該第一の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成し、一方、前記第二の電界形成手段は、前記第二の電極部材に前記第一の電極部材に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、当該第二の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第二の振動電界を形成するようにしたことを特徴とする現像装置である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る現像装置において、前記第二の振動電界は、前記第一の振動電界の周波数とは異なる周波数に設定されていることを特徴とする現像装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれかに係る現像装置において、前記第一の電極部材及び前記第二の電極部材は、前記第一の電極部材と前記トナー保持体との最短となる間隙をG1とし、前記第二の電極部材と前記トナー保持体との最短となる間隙をG2としたときに、G1≦G2の関係を満たすように配置されていることを特徴とする現像装置である。
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれかに係る現像装置において、更に、前記第一の電極部材及び前記第二の電極部材は、前記トナー保持体に面する部位が絶縁性の被覆層で覆われていることを特徴とする現像装置である。
【0008】
請求項10に係る発明は、静電潜像を保持して回転する像保持体と、前記像保持体に対向して配置され且つ前記像保持体の静電潜像を現像する請求項1乃至9のいずれかに係る現像装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項11に係る発明は、請求項10に係る画像形成装置のうち前記第二の電極部材に前記トナー保持体の回転方向に対して並ぶ二列の開口が設けられる態様において、前記第二の電極部材は、前記トナー保持体の回転方向に対して前記二列の開口間に位置する部位が前記像保持体に最近接するように配置されていることを特徴とする画像形成装置である。
請求項12に係る発明は、請求項10に係る画像形成装置のうち前記第二の電極部材に一列の開口が設けられる態様において、前記第二の電極部材は、前記開口に対応する部位が前記像保持体に最近接するように配置されていることを特徴とする画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、請求項10乃至12のいずれかに係る画像形成装置において、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配置された画素電極を有する像保持体と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより静電潜像を書き込む潜像書込手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、トナー保持体上のトナーを振動電界によってクラウド化させて現像する方式にあって、現像量を確保しながらかぶりの発生も抑えられる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の電極部材の先端部位(下流端)でのトナーの堆積及び凝集が抑えられると共に、かぶりの発生も効果的に抑えられる。
請求項3に係る発明によれば、現像装置を像保持体に対向して配置した場合に、本構成を有さない場合に比べて、第一の振動電界及び第二の振動電界による像保持体の静電潜像への影響が低減される。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の電極部材の先端部位(下流端部位)でのトナーの堆積及び凝集が効果的に抑えられる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、かぶりの発生を一層抑えられる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の振動電界及び第二の振動電界の選択肢が広がるようになる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、かぶりの発生を一層少なくできる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の電極部材でのトナーの堆積を抑えることができる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、第一の電極部材及び第二の電極部材にトナーが付着してもトナーの電荷量の変化が抑えられる。
請求項10に係る発明によれば、トナー保持体上のトナーを振動電界によってクラウド化させて現像する方式を採用した画像形成装置にあって、現像量を確保しながらかぶりの発生も抑えられ画像形成装置を提供できる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、像保持体に対する現像量を十分確保できる。
請求項12に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、像保持体に対する現像量を十分確保できる。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、帯電工程が実施される際の画質低下を考慮することなく、高画質画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明が適用された現像装置の実施の形態の概要、(b)は(a)の要部拡大、(c)は第一及び第二の振動電界の波形を示す説明図である。
【図2】第一及び第二の振動電界の作用を示す説明図であり、(a)は第二の電極部材を有する場合、(b)は第二の電極部材を有さない場合である。
【図3】(a)及び(b)は画像形成装置における第一及び第二の電極部材のレイアウトを示す説明図である。
【図4】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成の概要を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の像保持体の構成を示す説明図である。
【図6】(a)(b)は画素電極の構成を示す説明図であり、(c)は等価回路を示す説明図である。
【図7】画素電極の駆動方式を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の現像装置を示す説明図である。
【図9】実施の形態1の現像装置の要部拡大を示す説明図である。
【図10】(a)及び(b)は導電性トナーを示す説明図である。
【図11】(a)〜(c)は比較例として第二の電極部材を有さない場合の作用を示す説明図である。
【図12】(a)は実施の形態1の構成要素を示す説明図であり、(b)は第一の振動電界に対応する波形、(c)は第二の電極部材に加えられる振動電界に対応する波形、(d)は第二の振動電界に対応する波形を示す説明図である。
【図13】(a)〜(d)は各種開口の形状を示す説明図である。
【図14】実施の形態2の現像装置の要部拡大を示す説明図である。
【図15】実施の形態3の現像装置の要部拡大を示す説明図である。
【図16】(a)は実施の形態4の現像装置の要部拡大を示す説明図であり、(b)は第一の振動電界の波形、(c)〜(e)は第二の振動電界の各種波形を示す。
【図17】(a)は実施の形態5の現像装置の要部拡大を示す説明図であり、(b)は第一の振動電界に対応する波形、(c)は第二の電極部材に加えられる電界に対応する波形、(d)は第二の振動電界に対応する波形を示す。
【図18】実施例1にて、(a)は第二の電極部材を設けた構成、(b)及び(c)は比較のために第二の電極部材を備えない構成を示す。
【図19】実施例1の結果を示すグラフである。
【図20】実施例2の構成を示す説明図である。
【図21】(a)及び(b)は実施例2の結果を示すグラフである。
【図22】(a)及び(b)は実施例3の結果を示すグラフである。
【図23】実施例4の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された現像装置における実施の形態の概要について説明する。
図1(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る現像装置2の概要、(b)は(a)の要部拡大を示している。このような中で、現像装置2は、静電潜像が保持された像保持体1に対向して配置され且つトナーTを外周面に保持して回転するトナー保持体3と、このトナー保持体3の外周面に対向して配置され、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材とトナー保持体3との間でトナーTを振動させる電界を形成するために用いられる第一の電極部材4と、この第一の電極部材4とトナー保持体3との間でトナーTを振動させるように、周期的に変化する電界成分が含まれる第一の振動電界E1を第一の電極部材4とトナー保持体3との間に形成する第一の電界形成手段8と、像保持体1とトナー保持体3との間で現像に供される現像領域に面して設けられ、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材とトナー保持体3との間でトナーTを振動させる電界を形成するために用いられ、第一の電極部材4に対しトナー保持体3の回転方向下流側に延びるように絶縁部5を介して設けられ且つ絶縁部5に対応した部位からはトナーTが通過不能となるように配置される第二の電極部材6と、この第二の電極部材6のうち現像領域に対応する位置に開けられ、トナー保持体3の回転方向に交差する幅方向に亘って連続的又は不連続的に形成されると共に像保持体1に向かってトナーTを通過させる開口7と、第二の電極部材6とトナー保持体3との間に第一の振動電界E1を形成した場合に比べてトナーTの振動を抑制し且つ開口7から現像領域で必要とされる予め決められたトナー量を飛翔させるように、少なくとも一部に第一の振動電界E1の振幅より小さい部位を含み周期的に変化する電界成分が含まれる第二の振動電界E2を第二の電極部材6とトナー保持体3との間に形成する第二の電界形成手段9と、を備えている。
【0012】
ここで、トナー保持体3としてはドラム状、ベルト状いずれでもよく、トナーTを保持して搬送できるようになっていればよい。
また、第一の電極部材4は、トナー保持体3との間で第一の振動電界E1によってトナー保持体2上のトナーに対し振動させることができればよく、例えばトナーTが通過できない微小な穴が開いていても差し支えないが、第一の振動電界E1の安定性を図る観点からすれば、穴のない板状部材が好適である。
【0013】
更に、第二の電極部材6は第一の電極部材4に一部重なってもよいし、第一の電極部材の下流側に離間して配置されていてもよく、第一の電極部材4とは絶縁部5を介していればよい。尚、第二の電極部材6の一部が第一の電極部材4に重なる場合、第一の電極部材4によって振動させられたトナーTの動きを妨げない点からすれば、第二の電極部材6が第一の電極部材4より像保持体1側に配置される方がよい。
【0014】
また、絶縁部5の絶縁性は、第一の電極部材4と第二の電極部材6とに夫々の振動電界(具体的には第一の振動電界E1及び第二の振動電界E2)が作用できる程度であればよい。そのため、絶縁部5としては、絶縁材料にて構成されていてもよいし、両者間にトナーTが通過不能な間隙(空気層)を用いる構成であってもよい。
【0015】
また、第二の電極部材6に開けられた開口7は、トナー保持体3の回転方向に対して並ぶ方向に一以上設けられればよい。また、開口7は、トナー保持体3の回転軸方向に対して設けられることが好適であるが、現像領域内であれば、例えばトナー保持体3の回転軸方向(幅方向)に対して連続的に繋がった形状であってもよいし、不連続的な形状であっても差し支えない。更に、開口7としては、トナー保持体3の回転軸方向に沿って設けられることが好適であるが、現像領域内であれば、例えばトナー保持体3の回転軸に対し斜めであってもよい。更にまた、開口7の大きさは、開口7を通ってトナーTが像保持体1側に飛翔できる大きさであればよく、開口7の幅(トナー保持体3の回転方向に沿う長さ)は第二の電極部材6の厚さを超えることが好ましい。尚、開口7が不連続的に設けられた態様にあっては、隣り合う開口7の間の部位の長さ(トナー保持体3の回転軸方向に沿う長さ)は、現像に影響のない範囲に設定されていることは言うまでもない。また、開口7の形状は、実験等で現像に供するトナー量(現像量)を例えば画像評価を行うことで確認し、より適正な形状を選定すればよい。
【0016】
また、第一の振動電界E1や第二の振動電界E2は、トナーTを振動させるための周期的に変化する電界成分が含まれていればよく、例えば直流成分が重畳された交流成分であっても差し支えない。そして、第二の振動電界E2は、第一の振動電界E1の振幅より小さい部位を有すればよく、図1(c)のように、同じ半周期(t/2)で第一の振動電界E1の振幅V1の方が第二の振動電界E2の振幅V2より小さい態様や、第二の振動電界E2の振幅の一部が第一の振動電界E1の振幅より小さくてもよい。更には、第二の電極部材6に第一の振動電界E1を形成した場合に比べてトナーTの振動が抑制し且つ開口7から現像領域で必要とするトナー量を飛翔できれば、第二の振動電界E2の振幅の一部が第一の振動電界E1の振幅を超えるものであっても差し支えない。
【0017】
ここで、第一の振動電界E1及び第二の振動電界E2の作用について、図2の模式図を用いて説明する。尚、図では、トナー保持体3等の形状を直線状に示し、トナーTの概略的な動きを動線として示したものであり、(a)が本実施の形態モデルの例を示している。また、(b)は比較のために第二の電極部材6を備えない比較例を示す。
【0018】
(a)において、第一の電極部材4とトナー保持体3との間の第一の振動電界E1によって、トナー保持体3上のトナーTは第一の電極部材4とトナー保持体3との間で振動を繰り返しながら、トナー保持体3の移動に伴って下流側に進む。そして、トナーT同士の叩き出し効果もあり、徐々に振動するトナーTの量が増加する。第一の電極部材4のトナー保持体3の回転方向における下流端部位では、第一の電極部材4のエッジ効果による当該部位でのトナーTの集中が第二の電極部材6での電界作用によって低減されるので、トナーTは第一の電極部材4の下流端部位(先端部位)で堰き止められることなく、第二の電極部材6側へ移動する。そして、トナーTは第二の振動電界E2によってその振動幅が小さく抑えられ、第二の電極部材6に設けられた開口7から像保持体1側に向かって飛翔する。このとき、第二の電極部材6の開口7(本例ではトナー保持体3の回転方向に対して並ぶ方向に二つ有する)から像保持体1側に向かって飛翔するトナーTは、像保持体1側に向かう力が第一の振動電界E1によるものに比べ小さくなり、また、そのトナー量(M1+M2)も第一の振動電界E1によるものに比べやや少なくなる。つまり、第一の振動電界E1及びトナー保持体3の移動によって飛翔されるトナー量Mは、第二の電極部材6に設けられた開口7を通るトナー量(M1+M2)と、トナー保持体3の下流側に向かうトナー量M3に分かれる。
【0019】
一方、(b)のように、第二の電極部材6を備えていない場合、第一の振動電界E1によって、トナー保持体3上のトナーTは、第一の電極部材4’とトナー保持体3との間で振動を繰り返しながら、トナー保持体3の移動に伴って下流側に進む。そして、第一の電極部材4’の下流端部位では、第一の電極部材4’のエッジ効果も手伝ってトナーTは第一の電極部材4’の下流端部位(先端部位)に集中し、凝集するようになる。凝集したトナーTはそのまま像保持体1側に向かって飛翔する。このとき、第一の振動電界E1及びトナー保持体3の移動によって、第一の電極部材4’から飛翔されるトナー量Mは、像保持体1側に向かうトナー量M1’と、トナー保持体3の下流側に向かうトナー量M3’に分かれるようになる。
【0020】
像保持体1上の静電潜像を現像する場合、(b)のように第二の電極部材6を備えない構成では、第二の電極部材6を備える構成((a)に示す構成)より多くの現像量(トナー量)を確保し易くなる。つまり、(M1+M2)<M1’の関係となる。しかし、このように多くの現像量を確保するには、第一の振動電界E1として大きな電界強度を必要とする。そのため、像保持体1側に向かうトナーの運動エネルギーも大きくなり、像保持体1の非画像部にもトナーTが付着するという、所謂かぶり現象を生じ易くなる。
【0021】
更に、第一の振動電界E1として、このような大きな電界強度を作用し続けると、第一の電極部材4’の下流端部位ではトナーTが堆積するようになり、すだれ状の凝集物(拡大図参照)が形成され、すだれ状のまま現像が行われるため、現像に際して、むらを発生させ易く、均一性に劣るようにもなる。
【0022】
これに対し、(a)のように、第二の電極部材6を設けると、第一の振動電界E1の電界強度が大きくても、第二の電極部材6による作用により、開口7から像保持体1側に飛翔するトナーTはその運動エネルギーが小さくなり、かぶり現象の発生が抑えられる。また、第二の電極部材6を備えることで、第一の電極部材4の下流端部位での電界集中も弱められ、この部位でのトナーTのすだれ状の凝集物の発生も抑えられる。それ故、長期に亘って、むらのない安定した現像が維持されるようにもなる。
【0023】
更に、このような第二の振動電界E2による作用を一層効果的にしてかぶりを低減する観点からすれば、第二の振動電界E2の最大振幅は、第一の振動電界E1の最大振幅以下に設定されていることが好ましい。このように、第二の振動電界E2の最大振幅を第一の振動電界E1の最大振幅より小さくする場合、第二の振動電界E2の周期を第一の振動電界E1の周期とは異なるようにしても差し支えない。
【0024】
そして、図1に示すような現像装置2における構成において、当該現像装置2を像保持体1に対向して配置した場合に像保持体1が保持する静電潜像への影響を低減する観点からすれば、第一の電界形成手段8は、第一の電極部材4を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、トナー保持体3に交流電圧を印加することで、第一の電極部材4とトナー保持体3との間に第一の振動電界E1を形成し、一方、第二の電界形成手段9は、第二の電極部材6と接地部位との間にトナー保持体3に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、第二の電極部材6及びトナー保持体3夫々に印加する交流電圧の電位差によって第二の振動電界E2を形成することが好ましい。これによれば、第一の電極部材4と像保持体1との間に作用する電界が小さくなり、像保持体1上の静電潜像に対する影響が低減され、より高画質化が図られる。
【0025】
ここで、「第一の電極部材4を予め決められた直流電界を介して接地」とは、第一の電極部材4が必ずしも直接接地される態様ばかりではなく、直流電界を介して接地される態様を含む趣旨であり、像保持体1の静電潜像への影響を抑えることからすれば、この直流電圧は小さい方が好ましく、通常、数10V程度である。
また、この態様において、第二の振動電界E2を第一の振動電界E1より小さくする観点からすれば、第二の電極部材6に印加する交流電圧は、トナー保持体3に印加する交流電圧と同位相に設定されていることが好ましい。
【0026】
そして、第一の電極部材4を接地する態様において、第二の振動電界E2による抑制作用を図るには、第二の振動電界E2の振幅、周波数の双方の作用を考慮するようにしても差し支えない。この場合、第二の振動電界E2の最大振幅が第一の振動電界E1の最大振幅を超える態様において、第二の電極部材6に印加する交流電圧の周波数は、トナー保持体3に印加する交流電圧の周波数とは異なる周波数に設定されていることが好ましい。
このように第二の電極部材6に印加する交流電圧の周波数を、トナー保持体3に印加する交流電圧の周波数と異ならせると、第二の振動電界E2としては、その振幅が第一の振動電界E1の振幅を超える部位が生じるが、一方、その振幅が第一の振動電界E1の振幅より小さくなる部位も生じるため、この小さくなる部位にてトナーTの運動エネルギーが抑えられ、第二の振動電界E2の一部で第一の振動電界E1より大きな振幅があっても結果的には、トナーTの運動エネルギーが第一の振動電界E1のときより小さくなり、かぶりの発生が抑えられる。
【0027】
そして、このように周波数を異ならせる態様にあっては、第一の振動電界E1にてクラウド化されたトナーTの像保持体1側へ向かう運動エネルギーをより抑える観点からすれば、第二の電極部材6に印加する交流電圧の周波数をトナー保持体3に印加する交流電圧の周波数より高くする方が好ましい。
【0028】
また、現像装置2の構成において、第一の振動電界E1及び第二の振動電界E2の選択肢を広げる観点から、第一の電界形成手段8は、トナー保持体3を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、第一の電極部材4に交流電圧を印加することで、第一の電極部材4とトナー保持体3との間に第一の振動電界E1を形成し、一方、第二の電界形成手段9は、第二の電極部材6に第一の電極部材4に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、第二の電極部材6とトナー保持体3との間に第二の振動電界E2を形成することが好ましい。
【0029】
更に、トナーの振動を抑え、かぶりを低減する観点からすれば、トナー保持体3が直接又は予め決められた直流電圧を介して接地される態様において、第二の振動電界E2は、第一の振動電界E1の周波数と異なる周波数に設定してもよい。尚、この場合、トナーTの振動が抑えられれば、第二の振動電界E2の振幅の一部が第一の振動電界E1の振幅を超えるものであっても差し支えない。
そして、このように周波数を異ならせる態様にあっては、第一の振動電界E1にてクラウド化されたトナーTの像保持体1に向かう運動エネルギーをより抑える観点からすれば、第二の振動電界E2の周波数を第一の振動電界E1の周波数より高くする方が好ましい。
【0030】
また、第一の電極部材4側から第二の電極部材6側へのトナーの移動をよりスムーズに行う観点から、第一の電極部材4及び第二の電極部材6は、第一の電極部材4とトナー保持体3との最短となる間隙をG1とし、第二の電極部材6とトナー保持体3との最短となる間隙をG2としたときに、G1≦G2の関係を満たすように配置されていることが好ましい。
【0031】
更に、トナーとして例えば注入帯電型のトナーを用いた場合にトナーの電荷量の変化を抑える観点からすれば、第一の電極部材4及び第二の電極部材6は、トナー保持体3に面する部位が絶縁性の被覆層で覆われていることが好ましい。この場合の絶縁性とは、トナーTが第一の電極部材4及び第二の電極部材6に接触してもトナーTの電荷量が変化しない程度の体積抵抗率を有するものであればよい。
【0032】
そして、このような現像装置を画像形成装置に適用するには、静電潜像を保持して回転する像保持体1と、像保持体1に対向して配置され且つ像保持体1の静電潜像を現像する現像装置2と、を備え、この現像装置2として上述の現像装置2を採用するようにすればよい。
【0033】
ここで、像保持体1としてはドラム状、ベルト状を問わず、また、その回転方向もトナー保持体3との対向部位で同方向、逆方向のいずれであっても差し支えない。更に、像保持体1としては、静電潜像を保持できるものであればよく、画素電極構成を有する像保持体1や、感光層や誘電層を有する像保持体1であってもよい。
【0034】
そして、画像形成装置における、特に、第二の電極部材6の配置をより適正にする観点からは次のようにすればよい。
一つの例としては、図3(a)に示すように、第二の電極部材6にトナー保持体3の回転方向に対して並ぶ二列の開口7が設けられる態様において、第二の電極部材6は、トナー保持体3の回転方向に対して二列の開口7間に位置する部位が像保持体1に最近接するように配置されることが好ましい。つまり、図中G3が最も短くなるように第二の電極部材6が配置されることが好ましい。これによれば、像保持体1上の静電潜像がより効果的に現像されるようになる。尚、「最近接」としては部材の許容差や組立て精度によるばらつきを含むことは言うまでもない。
【0035】
更に、このような配置をなすには、第一の電極部材4の配置も考慮する方がよく、第一の電極部材4のトナー保持体3の回転方向の下流側端部とトナー保持体3との間隙G5が最短となるように第一の電極部材4を配置することが好ましい。これによれば、第一の振動電界E1によるクラウド化されるトナー量が十分確保されるようになる。
そして、第一の電極部材4及び第二の電極部材6をこのように配置するには、像保持体1に対してトナー保持体3が偏倚して配置されるようになる。
【0036】
また、他の例としては、図3(b)に示すように、第二の電極部材6に一列の開口7が設けられる態様において、第二の電極部材6は、開口7に対応する部位が像保持体1に最近接するように配置されることが好ましい。つまり、図中G4が最も短くなるように第二の電極部材6が配置されることが好ましい。このように、開口7を一列設けた態様にあっても、上述の開口7を二列設けた態様と同様に、第一の電極部材4の配置を考慮する方がよいことは言うまでもない。
【0037】
更に、上述の現像装置2を適用する好適な画像形成装置の一例としては次のものが挙げられる。すなわち、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配置された画素電極を有する像保持体1と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより静電潜像を書き込む潜像書込手段と、を備える態様の画像形成装置が挙げられる。
【0038】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図4は、本発明が適用された一例としての実施の形態1の画像形成装置における全体構成の概要を示す。
【0039】
<画像形成装置の全体構成>
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体15内に例えば電子写真方式にて夫々各色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のトナー像が形成される四つの像保持体20(20a〜20d)を略鉛直方向に並列配置したものである。
【0040】
四つの像保持体20a〜20dに対向する位置には、二つの張架ロール61、62に記録材を吸着して搬送する搬送ベルト60が掛け渡され、例えば張架ロール61を駆動ロールとして循環回転するようになっている。また、張架ロール62と搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、記録材を搬送ベルト60に吸着するための帯電器63が設けられている。そして、各色の像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像する現像装置40と、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃器65と、が設けられ、更に、像保持体20と搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、搬送ベルト60によって搬送される記録材上に像保持体20上のトナー像を転写する転写器64が設けられている。尚、符号41は現像装置40(詳細は後述する)内にて像保持体20にトナーを供給する現像ロールを示している。
【0041】
また、装置筐体15内の下方には、記録材を供給する供給装置70が設けられ、例えば供給容器71内に収容された記録材が、ピックアップロール72によって供給容器71から送り出された後、フィードロール及びリタードロールの対構成による捌き機構73にて一枚毎に鉛直方向に延びる記録材搬送路74に向かって供給される。
そして、供給装置70から記録材搬送路74に供給された記録材は、記録材搬送路74の下流側に配置された位置合わせロール(レジストロール)78にて一旦位置合わせされた後、予め決めたタイミングで記録材搬送路74を更に搬送される。
【0042】
搬送された記録材は、帯電器63によって搬送ベルト60に吸着され、そのまま搬送ベルト60の回転と共に搬送される。搬送ベルト60上の記録材には、各色の転写器64によって夫々のトナー像が順次転写されて多重化される。トナー像が多重化された記録材は定着器76にて定着された後、排出ロール77から装置筐体15の一部で構成される記録材排出受け16に排出される。尚、記録材搬送路74には、記録材を搬送するための搬送部材(例えば搬送ロール等)79が適宜設けられる一方、搬送ベルト60の出口近く(張架ロール61の近く)には図示外の剥離部材が設けられ、搬送ベルト60から記録材の剥離が容易になされるようになっている。
【0043】
<像保持体>
次に、本実施の形態で用いられる像保持体20について詳述する。
本実施の形態における像保持体20は、例えば図5に示すように、フィルム上に多数の画素電極34が所謂マトリクス状に行列配置された画素電極フィルム30を回転可能な支持体である剛体ドラム21上に巻き付けて固定支持したものとなっている。
本例において、画素電極フィルム30は、例えばポリイミドフィルム基体上に、所謂薄膜製造プロセスを利用して作製されたもので、画素電極34が行列配置されている。
【0044】
そして、このように行列配置された画素電極34は、例えば剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向をデータライン、剛体ドラム21の回転方向に沿った方向を走査ラインとし、各画素電極34に対応するデータライン及び走査ラインはまとめられて適宜数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32に接続されている。尚、画素電極フィルム30は画素電極34を覆うように全体が図示外の保護膜で覆われており、また、図中符号21aは、剛体ドラム21の外周面の一部に回転軸方向に沿って開口された溝である。
【0045】
−画素電極の周辺構造−
次に、画素電極フィルム30の画素電極34及びその周辺構造について説明する。
本実施の形態において、画素電極フィルム30は、図6(a)〜(c)に示すように、画素電極34が行列配置されており、各画素電極34は、所謂アクティブマトリクス方式で構成され、スイッチング素子として例えばTFT(Thin Film Transistor)33を用い、コンデンサ35及び配線(ソース線Ls、ゲート線Lg等)が夫々付加されている。
【0046】
そして、各画素電極34間の結線は、データライン毎にTFT33のソースSが結線されるソース線Ls、走査ライン毎にTFT33のゲートGが結線されるゲート線Lgとしてまとめられている。また、TFT33のドレインDには画素電極34とコンデンサ35が並列に接続され、コンデンサ35の一方は走査ライン毎にまとめられ(図示せず)、図6(c)のような等価回路を呈するように構成されている。
【0047】
画素電極34は画素電極フィルム30に対しマトリクス状に多数並べられた構成のために、画素電極34の駆動回路は次のように行われる。
つまり、画素電極フィルム30には、図7に示すように、データライン及び走査ライン毎に予め決めた数の画素電極34が配置されており、各画素電極34をスイッチングするTFT33のソースS側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT33のゲートG側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続されている。また、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、像保持体20に設けられた像書込制御装置80によって制御され、像書込制御装置80によってデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32が制御されることで、目的の画素電極34に画像信号に基づいた潜像電圧が印加され、コンデンサ35によって保持される。尚、図7では画素電極34は省略しているが、図6(c)に示すように、TFT33とコンデンサ35との間に画素電極34が接続されていることは言うまでもない。
【0048】
<現像装置>
−現像装置の構成例−
本実施の形態における各色の現像装置40は、用いるトナーが異なる他は略同様の構成が採用されているため、ここでは一つの現像装置40について説明する。
図8は、現像装置40の概略構成を示すもので、トナー(本実施の形態では導電性トナーを使用している)が収容される現像容器40aを有している。本実施の形態の現像装置40は、現像容器40aに像保持体20に対向して現像用開口40bを開設すると共に、この現像用開口40bに面して像保持体20と離間配置され且つ対向部位で同方向に回転するトナー保持体としての現像ロール41を配設し、像保持体20と現像ロール41との対向部位にて像保持体20上に形成された静電潜像を現像するものである。更に、本実施の形態では、像保持体20が現像ロール41の回転方向における下流側に偏倚した状態で配置されている。
【0049】
また、現像ロール41の像保持体20側と異なる側には、現像ロール41との間にてトナーに電荷注入を行う電荷注入ロール43が設けられ、互いに軽く接触又は微小間隙をもって支持された状態で対向部位では互いに同方向に回転している。本例では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速くなるように設定されている。そして、現像ロール41と電荷注入ロール43との間には、両者の対向部位にあるトナーに対して電荷注入を行うための注入電界を形成する注入電源90が設けられている。つまり、本実施の形態では電荷注入ロール43や注入電源90等でトナーに対する電荷注入がなされ、現像ロール41上には安定した帯電量が与えられたトナーが供される。
【0050】
また、本実施の形態では、現像ロール41と電荷注入ロール43との対向部位より電荷注入ロール43の回転方向における上流側に、電荷注入ロール43上にトナーの薄層を形成する層厚規制ブレード45が設けられており、この層厚規制ブレード45によって電荷注入ロール43上のトナーの層厚規制がなされることで、層厚規制がなされたトナーが現像ロール41との対向部位に搬送されて電荷注入がなされる。
更に、現像容器40a内の電荷注入ロール43の奥側にはトナーを攪拌するアジテータ48が設けられ、電荷注入ロール43側へのトナーの供給を行うようになっている。
【0051】
本実施の形態における現像ロール41は、例えば表面を陽極化成処理したアルミニウム合金製のロール部材で構成されている。また、電荷注入ロール43は、例えばサンドブラスト法や化学エッチング法等により表面に小さく均一な凹凸面を形成したアルミニウム合金製のロール部材で構成され、現像ロール41と電荷注入ロール43とは軽く接触又は微小間隙をもって支持されている。更に、層厚規制ブレード45は例えば厚さ0.03〜0.3mm程度のステンレス合金製の板ばねにシリコーンゴムやEPDMゴム等を接着剤等により固着したもので、この層厚規制ブレード45の一端は、電荷注入ロール43の表面に軽く接触し、他端は現像容器40aに支持されている。尚、上述した部材の構成はこれに限られるものでないことは言うまでもない。
【0052】
そして、本実施の形態では、像保持体20と現像ロール41との配置が、像保持体20が現像ロール41の回転方向に沿って下流側に偏倚した状態で配置されている。また、像保持体20と現像ロール41との間には、後述する第一の電極部材51及び第二の電極部材52等を有する電極機構50が設けられている。
【0053】
−電極機構−
図9は、図8の要部拡大を示す。同図において、本実施の形態の電極機構50は、現像ロール41の外周面に対向して配置され、導電性部材である電極基材51aと、電極基材51aの現像ロール41に面する側に設けられた絶縁性の被覆層51bと、で構成された第一の電極部材51と、この第一の電極部材51に対し現像ロール41の回転方向における下流側に絶縁部としての絶縁性の接着層53を介して設けられ、像保持体20と現像ロール41との間で現像に供される現像領域DRに対応して配置され、導電性部材である電極基材52aと、電極基材52aの現像ロール41に面する側に設けられた絶縁性の被覆層52bと、で構成された第二の電極部材52とを有している。更に、この第二の電極部材52には、現像領域DRに対応する位置にトナーが通過可能になるように開けられ、現像ロール41の回転方向に交差する幅方向に亘って連続的に形成された開口54が、現像ロール41の回転方向に対して並んで二列設けられている。
【0054】
本実施の形態の第一の電極部材51は、その現像ロール41の回転方向における下流側端部が、現像ロール41との間隙において略最小となる位置になるように配置されている。また、第二の電極部材52は、二列の開口54の間に位置する部位が、像保持体20と最近接するように配置されている。更に、第一の電極部材51の下流側端部と現像ロール41との間隙G1と、第二の電極部材52の上流側端部と現像ロール41との間隙G2とは略等しくなるようになっている。尚、図中L1は像保持体20の中心線を示し、L2は現像ロール41の中心線を示す。
【0055】
このような電極機構50における第一の電極部材51及び第二の電極部材52に対する電気的な接続は次のようになっている。
第一の電極部材51は接地され、第一の電極部材51と現像ロール41との間に第一の振動電界E1を形成するため現像ロール41に印加される交流電圧を供給する第一の電源91が接続されている。一方、第二の電極部材52には、現像ロール41に印加される交流電圧とは異なる交流電圧を印加するための電源93が接続され、この電源93の他端は接地されている。そのため、この電源93による交流電圧と、第一の電源91による交流電圧との電位差が、第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用する第二の振動電界E2(図示せず)となるようにしている。尚、ここでは、第一の電極部材51を直接接地する態様としてが、例えば数10V程度の直流電圧を介して接地するようにしても差し支えない。
【0056】
−導電性トナーの構成例−
本実施の形態で用いられるトナー(導電性トナー)は、例えば図10(a)に示すように、導電性を有する材料からなる導電性トナー基体(導電性コア)81を有し、この導電性コア81の周囲を絶縁性被覆層(例えば絶縁性樹脂層)82で被覆すると共に、導電性コア81の一部が露出するように絶縁性被覆層82に適宜数の凹部83を設けたものが用いられる。導電性トナーは、重合法や各種公知のカプセル化技術等で作製することができる。この時、導電性コア81は、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等に導電性カーボンやITO等の透明導電粉などの導電剤を分散させたり、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等からなる粒子表面を前記導電剤により被覆することによって、作製される。
【0057】
このような態様の導電性トナーに対し高電界を印加すると低抵抗化する傾向を示す。そして、低抵抗化する電界の大きさについては、トナーの主として凹部83の占有割合、あるいは、絶縁性被覆層82の厚さなどに依存する。
このメカニズムについては、次のように推測される。つまり、導電性コア81が絶縁性被覆層82にて被覆されているため、導電性コア81自体がコア同士接触することや直接電極部材等に接触することが殆どなく、絶縁性被覆層82を介して一定の微小間隙を保つことになり、この結果、例えば高電界が印加された時、トンネル効果等により導通することによる。
【0058】
また、導電性トナーの他の態様としては、例えば図10(b)に示すように、導電性コア81を絶縁性若しくは半導電性の被覆層84にて被覆し、被覆層84の厚さhを適宜調整することにより、トナーの抵抗を調整可能としたものが挙げられる。このとき、半導電性の被覆層84については、それ自体半導電性の材料を用いるようにしてもよいし、例えば絶縁性樹脂に、酸化チタンや酸化すず等の金属酸化物や導電性カーボンを微量含有させた半導電性樹脂を用いるようにしてもよい。そして、導電性コア81としては、例えば通常の絶縁性トナーからなる絶縁性トナー基体(絶縁性コア)の外表面近傍に導電性微粒子を付着させる態様や、絶縁性コアの内部に導電性微粒子を混入させるものなど適宜選定して差し支えない。
【0059】
<画像形成装置の作動>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動についてその概要を説明する。
−像保持体の潜像形成−
先ず、像保持体20での潜像形成について説明する。図7に示す像書込制御装置80によって、各色成分の像保持体20a〜20d(図4参照)の各画素電極34(図6参照)に対して各色の画像信号に対応した潜像電圧が印加されて保持され、これが、現像時の像保持体20側の潜像電位となる。
【0060】
−現像装置の作動−
次に、現像装置40での作動を説明するが、先ず、図8を用いて導電性トナーに対する電荷注入工程を中心に説明する。
アジテータ48により攪拌されたトナーは、電荷注入ロール43側に供給された後、電荷注入ロール43の回転に伴って搬送され、層厚規制ブレード45にてその層厚が規制されて電荷注入ロール43上には略均一なトナー層が形成される。この均一に形成されたトナー層は、電荷注入ロール43と現像ロール41とが対向する対向部位にて互いに同方向に回転する両者間に挟まれた状態で擦られながら、注入電源90による注入電界によって電荷注入される。このとき、特に本実施の形態では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速く設定されているため、トナーへの有効な擦りがなされ、良好な電荷注入がなされる。
【0061】
この場合、電荷注入ロール43と現像ロール41との間に挟まれたトナーは電荷注入ロール43と接触する確率が高められ、しかも、トナーとの接触抵抗も小さくなる。その結果、トナーの見かけ上の抵抗が小さくなり、トナーは低抵抗な状態のまま有効に電荷注入がなされる。そのため、注入電界としては、比較的低電界であってもトナーには効率的に電荷注入が行われる。
【0062】
このように、単層以下になったトナーに対して電荷注入を行うことで、トナーに対する電荷注入が効果的になされ、WST(Wrong Sign Toner:トナー本来の帯電極性とは異なる逆極性に帯電されたトナー)の発生が抑えられる。そして、電荷注入ロール43との対向部位を経た現像ロール41上には、略均一な電荷注入がなされた単層以下のトナー層が形成され、現像ロール41と像保持体20との対向領域に搬送される。尚、このような電荷注入方式にあっては、トナー層間にせん断力が与えられるため、トナー同士が分極状態で重なることが防止され、注入電界が仮に高電界の場合であってもWSTの発生は防止されるようになる。
【0063】
−現像ロールと像保持体との対向領域でのトナーの挙動−
次に、本実施の形態における像保持体20と現像ロール41との対向領域でのトナーの挙動について説明するが、その前に、先ず、図11(a)〜(c)を用いて、比較例として第二の電極部材52を備えていない態様について説明する。
同図において、現像ロール41に付着しているトナーを第一の電極部材51’と現像ロール41との間で振動させるには、ある程度の強電界を必要とするため、第一の振動電界E1として強電界を作用させ、トナーをクラウド化させる。その結果、(a)に示すように、トナーは第一の電極部材51’の先端部位を抜けて像保持体20側に向かい静電潜像に対する現像がなされる。
【0064】
しかしながら、現像ロール41上のトナーを振動させて像保持体20に向かって飛翔させるには、第一の振動電界E1として強電界を必要とすることから、像保持体20に向かう際のトナーの持つ運動エネルギーはある程度大きくなり、像保持体20上の非画像部にもトナーの付着が生じ易くなる。
【0065】
また、第一の電極部材51’と現像ロール41との間で第一の振動電界E1は、現像ロール41の表面に層形成されたトナーを空気中に飛翔させて振動させるほど強電界なので、トナーが第一の振動電界E1に捕捉され易く、その場振動が生じ易い。特に、第一の電極部材51’のエッジ効果によって第一の電極部材51’の先端部位では、(b)に示すように、トナーが徐々に凝集し、結果的にすだれ状に連なったトナーの凝集物Cが形成されるようになる。
【0066】
このようなすだれ状の凝集物Cが形成されると、第一の振動電界E1によって振動しているトナーは凝集物Cに捕捉され、第一の電極部材51’より下流側の領域に搬送されるクラウド化されたトナー量は少なくなる。また、像保持体20では凝集物Cがそのまま現像され易くなる。そのため、像保持体20の静電潜像に対してトナー付着量にむらが生じ易く、濃度不足等の画像欠陥を生じ易くなる。
【0067】
このような凝集物Cの形成を抑えるには、現像ロール41の回転速度を大きくすることが想定される。つまり、現像ロール41の回転によって現像ロール41と第一の電極部材51’との間の大気の流れを速くし、この部位でのトナーの動きを速くすることで、第一の電極部材51’の先端部位での凝集物Cの発生は抑えられる方向に向かう。しかし、現像ロール41の回転を速くし過ぎると、第一の電極部材51’より外方に移動したトナーは、現像ロール41の回転方向に沿う運動成分が大きいため、像保持体20側に向かう成分としては弱くなる。そのため、像保持体20での潜像電位を大きくする必要がある。
一方、像保持体20として、例えば画素電極を用いるような態様では、潜像電位を高くし難いこともあり、現像ロール41の回転速度はある程度抑える必要がある。そのため、凝集物Cの影響を低減することが重要となる。
【0068】
本実施の形態では、図12(a)に示すように、現像ロール41の回転方向における第一の電極部材51より下流側に第二の電極部材52を備え、この第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用させる第二の振動電界E2(図示せず)を工夫することで、凝集物Cの発生を抑えると共にかぶりの低減を図っている。
ここで、図12(b)〜(d)は、本実施の形態における一例として矩形波(デューティ50%)を用いた場合の各種の電圧波形を示すもので、(b)は第一の電源91の波形で第一の振動電界E1に対応する波形、(c)は電源93による第二の電極部材52に加える波形で振動電界E3に対応する波形、(d)は第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用する第二の振動電界E2に対応する波形となっている。尚、図中tは一周期を示す。
【0069】
今、第一の電源91に(b)のような振幅V1の矩形波を加えると、これが第一の振動電界E1に対応する。また、電源93から(c)のような振幅V3の矩形波を第二の電極部材52と接地との間に加えると、第二の電極部材52と現像ロール41との間には、(c)と(b)の電位差分として、(d)に示すように、振幅(V1―V3)の矩形波が作用するようになる。これが実質的な第二の振動電界E2に対応し、第一の振動電界E1と第二の振動電界E2との間では、第二の振動電界E2の振幅が第一の振動電界E1の振幅より小さいものとなっている。
【0070】
このように、第一の振動電界E1より第二の振動電界E2を弱くすることで、第一の振動電界E1によって振動したトナーは第一の電極部材51の先端部位では第二の振動電界E2に影響され、第二の電極部材52がない場合に比べて電界集中が低減し、第一の電極部材51の先端部位でのトナーのすだれ状の凝集物C(図11参照)の形成は抑えられる。また、第二の振動電界E2を第一の振動電界E1より小さくしたことで、第二の電極部材52での凝集物Cの形成も抑えられる。
【0071】
そして、第一の振動電界E1によって振動したトナーは、第二の振動電界E2によって像保持体20側に向かうが、第二の電極部材52がない場合に比べ像保持体20側に向かう運動エネルギーが弱められることで、かぶりの発生も抑えられる。このとき、電源93の振幅を大きくし過ぎると、第二の振動電界E2に対応する(d)の振幅が小さくなり過ぎ、かぶりの発生がより低減されるようになるが、像保持体20側に飛翔するトナー量も少なくなり、現像量が低下するようにもなる。そのため、第二の振動電界E2の振幅が第一の振動電界E1の振幅の70%以上100%未満、好ましくは80%以上90%以下となるように、電源93による振動電界E3の振幅を決める方がよい。
【0072】
また、本実施の形態では、第一の電極部材51を接地し、更に、第二の電極部材52に対して一端が接地された電源93から振幅の小さな振動電界E3を作用させるようにしたので、第一の電極部材51と像保持体20との間に作用する電界や、第二の電極部材52と像保持体20との間に作用する電界が小さくなり、像保持体20の静電潜像に与える影響も低減される。そして、現像ロール41の回転方向における第一の電極部材51の下流側端部がほぼ現像ロール41の中心線L2の位置になるように配置し、第二の電極部材52に設けられた二つの開口54の間の部位がほぼ像保持体20の中心線L1の位置になるように配置することで、第一の電極部材51によるトナーの振動が十分なされると共に、第二の電極部材52に開けられた開口54を通過するトナーが像保持体20の潜像電位に制御され易くなる。
【0073】
また、本実施の形態の第一の電極部材51及び第二の電極部材52は絶縁性の被覆層51b,52bが形成されているため、トナーが接触してもトナーの帯電量の変化が抑えられる。
【0074】
本実施の形態では、各種電源に矩形波を用いる態様を示したが、矩形波に限らず、正弦波でもよいし、三角波等でも差し支えない。また、第一の電極部材51及び第二の電極部材52に絶縁性の被覆層51b,52bを設ける態様を示したが、トナーとして注入帯電型以外のトナーを用いる場合には被覆層51b,52bを省くようにしても差し支えない。更には、第一の振動電界E1や第二の振動電界E2を有効に作用させるには、被覆層51b,52bを備えない方が実効的な電界強度が大きくなるため、トナーでの多少の帯電量の変化を踏まえて被覆層51b,52bを省くようにしても差し支えない。
【0075】
また、本実施の形態の第二の電極部材52に開けられた開口54の形状としては、トナーが通過できる形状であればよく、例えば図13(a)〜(d)に示すような形状が適用される。ここで、(a)〜(d)は、第二の電極部材52の平面図を示しており、図の縦方向が現像ロール41(例えば図9参照)の回転軸方向(幅方向に相当する図中X方向)となっている。
【0076】
(a)は、本実施の形態で使用した開口54を示すもので、電極基材52aに対しX方向に亘って連続的に開けられた開口54を現像ロール41の回転方向(Y方向)に対して二列配置したものとなっている。開口54のY方向の寸法W1は、トナーが通過できる大きさであればよいが、第二の電極部材52によるトナーへの電界作用を及ぼし且つトナーを容易に通過させる観点からすれば、第二の電極部材52の厚さを超え、像保持体20と現像ロール41との間隙より狭い条件で、実験等で求める方がよい。更に、二列の開口54のY方向の間隙W2は、広過ぎると、二つの開口54による一様なトナーの飛翔がなされ難くなることから、狭い方がよく、通常、100〜300μm程度の範囲内で選択すればよい。
【0077】
また、(b)は、X方向に不連続的に開口54を設けたもので、Y方向には二列に開口54を設けたものとなっている。このような第二の電極部材52では、X方向に亘って一つの連続した開口54を形成する場合よりも、強度が保たれるようになる。しかしながら、図中dの寸法を大きくし過ぎると、現像時のむらの発生にも繋がることが予想され、dの寸法としては、第二の電極部材52と像保持体20との間隙よりも小さい方がよく、更には、小さければ小さいほどよいが、部材の強度や加工の面からは、通常、50〜100μm程度が適用される。
【0078】
(c)は、X方向にはY方向で位置をずらした二つの開口54を設け、このような二つの開口54をY方向に二列配置したものとなっている。また、(d)は開口54が矩形ではなく、円形となっているもので、X方向に多数並べた構成となっている。(c)や(d)の構成における寸法関係も、(a)や(b)のところで説明したものと同様のため、ここでは省略する。
【0079】
第二の電極部材52にこのような開口54を形成するには、例えばレーザ加工やエッチング加工を適用すればよいが、開口54の断面形状をより直線状にするにはレーザ加工が好適である。尚、このような第二の電極部材52の加工はレーザ加工に限らず、公知の技術を適用すればよい。
【0080】
一般に、板状の電極部材(第一の電極部材51に相当)を使ってトナーのクラウド化を行い、現像させるという従来の方法としては、現像量を大きくするため、より強い振動電界でトナーをクラウド化させる、複数の開口部を設ける、クラウド化させながら現像域へトナーを送りだすという工程を繰り返す、などの方法がある。トナーは振動電界によって、像保持体と現像ロールとの間で垂直振動をしながら、像保持体の画像部電位によって現像され、非画像部電位によってトナーの付着が抑制される(現像されない)。しかしながら、像保持体と現像ロールの間隙が数100μm程度と狭い現像領域においては、振動電界に伴って垂直振動したトナーが、現像領域内の気流と合わさって、画像部、非画像部に関わらず像保持体に衝突するようになり、非画像部の領域において、所謂かぶりの発生を生じ易くなる。
【0081】
そこで、トナーの垂直振動による像保持体20側への移動を低減させることを目的に、本実施の形態では、クラウド発生用の振動電界(第一の振動電界E1に相当)を与える板状の第一の電極部材51と、現像を行う第二の電極部材52とをトナーの進行方向で分離し、上流側で強い第一の振動電界E1を与えてクラウドを発生させた後、下流側の第二の電極部材52には弱い第二の振動電界E2を与えて、画像部及び非画像部での好適な現像量(画像濃度向上、かぶり低減)を実施するという構成としたものである。この構成を採ることで、かぶりの発生が比較的抑えられるばかりでなく、第一の電極部材51の先端部位への電界集中が抑えられることから、この部位にすだれ状のトナーの凝集物の形成が抑えられ、結果的に長期的な画質の安定化が図られる。
【0082】
◎実施の形態2
図14は実施の形態2に係る現像装置の要部拡大を示すものである。本実施の形態の電極機構50は実施の形態1と異なり、第二の電極部材52に一列の開口54を備えたものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0083】
同図において、本実施の形態における第二の電極部材52には、現像ロール41の回転方向に対して並ぶ方向には一つの開口54しか開けられていない。また、現像ロール41の回転方向における開口54に対応する部位が、像保持体20の中心線L1に略対応する位置になるように第二の電極部材52が配置されている。
更に、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第一の電極部材51を接地し、第二の電極部材52には、接地との間に電源93を設けたので、実施の形態1と同様の作用を奏するようになる。尚、詳細については実施の形態1と同様のため省略する。
【0084】
◎実施の形態3
図15は実施の形態3に係る現像装置の要部拡大を示すものである。本実施の形態の電極機構50は、実施の形態1と略同様に構成されるが、第一の電極部材51と第二の電極部材52の一部とが接着層53(具体的には絶縁性の接着層)を介して重なっている点が実施の形態1と異なる。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0085】
本実施の形態では、第一の電極部材51と第二の電極部材52とを接着層53にて固着することで、第一の電極部材51と第二の電極部材52とがより強固に繋がり、これらを一緒に配置することができるようになり、現像装置の組立てが容易になされる。
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第一の電極部材51を接地し、第二の電極部材52には、接地との間に電源93を設けたので、実施の形態1と同様の作用を奏するようになる。この場合、尚、詳細については実施の形態1と同様のため省略する。
【0086】
◎実施の形態4
図16(a)は実施の形態4に係る現像装置の要部拡大を示すものである。本実施の形態の現像装置は、これまでの実施の形態と異なり、第一の電極部材51を接地することなく、この第一の電極部材51と現像ロール41との間に第一の電源91を接続し、一方、第二の電極部材52と現像ロール41との間に第二の電源92を接続し、現像ロール41を接地するようにしたものである。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施の形態における第一の振動電界E1に対応する交流電圧としては、例えば図16(b)のような振幅がV1、周期がt0の矩形波が適用され、一方、第二の振動電界E2に対応する交流電圧としては、(c)のような振幅がV2(V2<V1)、周期がt0の矩形波が適用されている。また、本実施の形態では、第一の電極部材51の像保持体20に面する側には、絶縁層55が形成されている。
【0088】
本実施の形態では、第一の電極部材51及び第二の電極部材52は互いに独立に交流電圧を印加する構成としているので、第一の振動電界E1と第二の振動電界E2とは夫々独立に作用する。そのため、第一の振動電界E1によって第一の電極部材51と現像ロール41との間で振動を繰り返したトナーは、第二の振動電界E2によって振動させられ、第二の電極部材52に設けられた開口54を通って像保持体20側に至る。この場合であっても、第一の電極部材51の先端部位でのトナーの凝集物の発生が抑えられると共に、かぶりも抑えられた現像がなされる。
【0089】
また、第一の電極部材51が接地されないことから、第一の電源91による電界強度の大きな第一の振動電界E1が第一の電極部材51に直接作用することで、第一の振動電界E1が像保持体20上の潜像電位に直接影響を及ぼすことが想定される。しかしながら、本実施の形態では第一の電極部材51の像保持体20に面する側に絶縁層55が形成されているため、この絶縁層55の比誘電率(空気層より大きい)により、この絶縁層55に作用する分圧分だけ像保持体20に作用する電界が小さくなり、像保持体20の静電潜像に対する第一の振動電界E1からの影響が抑えられる。
【0090】
本実施の形態における第二の振動電界E2としては、(c)に示す波形に限られず、例えば(d)のように、振幅がV2、周期が第一の振動電界E1の周期t0より短いt1(t0>t1)の矩形波を用いるようにしてもよい。このように、第二の振動電界E2の周期を第一の振動電界E1の周期より短くする(周波数を高くする)ことで、電界によるトナーの振れ幅が小さくなり、トナーの像保持体20側へ向かう運動エネルギーが小さく抑えられ、かぶりの抑制に繋がり易くなる。
【0091】
また、第二の振動電界E2に対応する交流電圧としては、(e)のように、振幅を第一の振動電界E1に対応する交流電圧と同様にV1とし、半周期(t0/2)のうち、tAの間は±V1の電圧を印加し、tBの間はゼロとする波形を適用することも可能である。このように、第二の振動電界E2としてtBという時間分だけ電界をゼロとすることで、第一の振動電界E1より弱い部分を有するようになり、第二の振動電界E2によるトナーの運動エネルギーが抑えられ、かぶりの発生が抑えられると共に、第一の電極部材51の先端部位での凝集物の形成も抑えられる。
【0092】
◎実施の形態5
図17は実施の形態5の現像装置の要部拡大を示すものである。本実施の形態の現像装置は、実施の形態1の現像装置と略同様の構成をしているが、第二の電極部材52に与える交流電圧(第二の電極部材52と接地との間に作用する振動電界E3に対応する交流電圧)が実施の形態1と異なるものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0093】
同図において、(a)は装置構成、(b)は現像ロール41に与える交流電圧の波形で第一の振動電界E1に対応する波形、(c)は第二の電極部材52に与える交流電圧の波形で振動電界E3に対応する波形、(d)は現像ロール41に与えた交流電圧と第二の電極部材52に与えた交流電圧との電位差によって、現像ロール41と第二の電極部材52との間に得られる電位の波形であり、第二の振動電界E2に対応する波形となっている。
本実施の形態では、振動電界E3は、第一の振動電界E1より高い周波数のものが用いられている。そのため、第二の振動電界E2としては、振動電界E3と第一の振動電界E1との合成分が作用するようになる。今、第一の振動電界E1として、振幅がV1、周期t1の波形を適用し、一方、振動電界E3として、振幅がV3、周期t3の波形を適用する。このとき、V1>V3、t1>t3となっている。
【0094】
接地された第一の電極部材51と現像ロール41との間に第一の振動電界E1を作用させ、振動電界E3を第二の電極部材52と接地との間に作用させると、第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用する第二の振動電界E2は、(d)のように、第一の振動電界E1の振幅から、出張る部分α(電位が±(V3+V1)となる部分)と、窪む部分β(電位が±(V3―V1)となる部分)とを有する波形となる。このような波形は、周期t1とt3の最小公倍数の時間を一周期とする波形となる。
【0095】
本実施の形態では、第二の振動電界E2としては、その周期が第一の振動電界E1の周期より短く、その振幅が第一の振動電界E1の振幅を超える部位(図中αの部分)及び第一の振動電界E1の振幅より小さい部位(図中βの部分)を有し、更に、その振幅の平均(±V1に相当)が第一の振動電界E1の振幅(振幅の平均に相当し±V1)と等しくなっている。
【0096】
このような電界によるトナーへの作用は次のように推定される。第二の振動電界E2の振幅が第一の振動電界E1の振幅より小さい部位(βの部分)によって、第一の振動電界E1によって振動を繰り返されたトナーは、この部位によってその運動エネルギーが低減される。更に、第一の振動電界E1の振幅と第二の振動電界E2の振幅の平均とが等しくなっていることから、第二の振動電界E2で振幅が大きい部位があっても全体として運動エネルギーが低下する。そのため、第二の振動電界E2として第一の振動電界E1を作用させる場合に比べて、かぶりの低減が図られる。
【0097】
以上の実施の形態1〜5では、画像形成装置として四色に対応する像保持体20を用いた構成のものを示したが、これに限られず、単色のものであってもよい。
また、第一の電極部材51や第二の電極部材52として金属製の板状部材の構成を示したが、例えば銅箔の両面をポリイミドフィルムにて挟んだ構成の印刷配線板等を用い、第二の電極部材52にあっては、開口54を設けるようにしてもよい。更には、例えば第二の電極部材52として、板状部材の代わりに、例えば現像ロール41の回転軸方向に延びるワイヤ状部材を現像ロール41の回転方向に対して並ぶ方向に並べるようにしても差し支えなく、そのとき、複数のワイヤ状部材を接触させて用いるようにしてもよい。
【0098】
更に、像保持体20として画素電極34(図6参照)を使用した構成のものとしたが、例えば画素電極34を用いない感光体を適用することも可能であり、この場合、感光体側の潜像電圧を小さく設定してもかぶりの発生が抑えられるようになり、感光体自体の長寿命化が実現される。更にまた、トナーとして電荷注入型のものを示したが、例えば摩擦帯電型のトナーを用いるようにしてもよく、この場合、特に、第一の電極部材51及び第二の電極部材52の被覆層51b,52bは省略しても差し支えない。
【実施例】
【0099】
◎実施例1
本実施例は、第一の電極部材51と第二の電極部材52とを備える構成と、第二の電極部材52を備えない構成(第一の電極部材51’のみ有する構成)での像保持体20上の現像量について評価確認したものである。
図18は各構成の模式図を示すもので、(a)は実施の形態4(図16参照)の構成であり、(b)及び(c)は比較例としての構成を示している。ここで、(a)での第一の振動電界E1は、(b)の振動電界E0(加える電圧がVpp)の1.5倍の大きさであり、(c)での振動電界E0’も第一の振動電界E1と同様の大きさとしている。更に、(a)の第二の振動電界E2は、第一の振動電界E1より小さく、ここでは約80%となるように設定されている。
【0100】
このような構成において、像保持体20の電位と現像量との関係を確認したところ、図19のような結果が得られた。
同図において、第二の電極部材52を備えないものでは、(b)のように、振動電界E0が小さいと、像保持体20の電位の小さい部分より低い方では現像量が少なく、所謂かぶりに対しては良好となるが、像保持体20の電位が大きい部分(所謂画像部に相当)での現像量が少なくなり、所謂濃度不足となる。そのため、(b)のように、濃度を上げようと大きな振動電界E0’とすると、濃度不足は良好となるものの、かぶりが発生するようになる。これらに対し、第二の電極部材52を設け、第一の電極部材51には大きな第一の振動電界E1を与え、第二の電極部材52には第一の振動電界E1より弱い第二の振動電界E2を加えることで、かぶり及び現像量(画像部の濃度)が良好な構成が得られた。
【0101】
(a)の方が(c)より画像部における現像量が大きくなったことは、次のように推測される。現像量の増加は、第一の電極部材51の先端部位における電界集中が第二の電極部材52によって抑えられ、トナーの所謂すだれ状の凝集物の発生が抑制されたことによる。
更に、本実施例では、(a)の第二の振動電界E2を第一の振動電界E1の70〜90%になるように調整して確認したところ、同様の結果が得られることを確認した。
【0102】
◎実施例2
本実施例は、実施の形態1と同様の構成の実験装置にて、第一の電極部材51を接地し、第二の電極部材52に振動電界E3を加えて、像保持体20上の画像部及び非画像部での現像量を評価確認した。実験は、図20に示す構成で行い、実験条件は以下の通りとした。
・像保持体20:平板状で、画像部の電位+50V、非画像部の電位−20V
・第一の電極部材51:板厚100μm、現像ロール41との間隙100μm
・第二の電極部材52:板厚100μm、現像ロール41との間隙100μm、開口54の幅250μm、開口54の前後の幅250μm
・像保持体20と現像ロール41との間隙400μm
・第一の振動電界(E1):±500V(1000Vpp)、10kHz、Duty50%
・電界(E3):0、100、200、300、400Vppの五箇所、10kHz、Duty50%
【0103】
実験結果を図21の(a)及び(b)に示す。ここで、(a)は画像部における現像量であり、(b)は非画像部における現像量を示すグラフである。
この結果によれば、電界E3のピークツウーピーク電圧Vppが100〜300Vppであれば、振動電界E3がゼロのときよりも画像部の濃度が高く、非画像部でのかぶりも少ないことが判明した。更に、振動電界E3が100Vpp及び200Vppの方が300Vppより良好であることが判明した。
【0104】
本例では、第二の電極部材52と現像ロール41との間に作用する第二の振動電界E2(図示せず)は振動電界E3と第一の振動電界E1との差分となることから、第二の振動電界E2としては、第一の振動電界E1の90%、80%、70%であれば良好であると言える。また、このうち、90%及び80%の方が画像部の濃度及びかぶりの点で好ましいことが理解された。
【0105】
◎実施例3
本実施例は、実施例2と同様の構成にて、実施の形態5(図17参照)のように、振動電界E3に対応する交流電圧の周波数を第一の振動電界E1に対応する交流電圧の周波数より高くして評価確認した。
本例では、第一の振動電界E1の周波数を10kHzとし、振動電界E3の周波数として、15kHz及び20kHzの二箇所とし、振動電界E3の大きさは0、100、200、300Vppの四箇所で実験した。
【0106】
結果は、図22(a)及び(b)に示すように、周波数に関わらず、Vppが100Vpp及び200Vppで良好であり、300Vppでは画像部の現像量が若干低下すると共にかぶりも若干増加する傾向を示した。また、周波数は15kHzの方が20kHzに比べかぶりが小さいことが確認された。
このことは次のように推測される。振動電界として、作用させる周波数を高くしていくと(周期を短くしていくと)、トナーは初めのうちは周波数に対応して第二の電極部材52と現像ロール41との間を移動し、開口54から像保持体20側へ飛翔するようになるが、周波数が高くなり過ぎると、トナーが周波数に追従でき難くなり、第一の振動電界E1の作用を第二の振動電界E2で抑えることがなされ難く、像保持体20側へ向かうトナー量が増加する。その結果、周波数が15kHzよりも20kHzの方が画像部での現像量や非画像部での現像量(かぶり)が増加したものと思われる。
【0107】
そして、図22の結果から、振動電界E3の周波数を第一の振動電界E1の周波数より高くする場合、第二の振動電界E2としては、第一の振動電界E1の90%及び80%の場合に画像部の濃度及びかぶりの点で好ましいことが理解された。
【0108】
◎実施例4
本実施例は、実施例1のところで示した比較例とは異なり、本例のような貫通孔(開口54に相当)を第一の電極部材51’に設けた場合の効果を評価確認したものである。実験は図23に示す構成で、第一の電極部材51’を接地し、画像部及び非画像部での現像量を評価確認した。実験条件は以下の通りとした。
・像保持体20:平板状で、画像部の電位+50V、非画像部の電位−20V
・第一の電極部材51’:板厚100μm、現像ロール41との間隙100μm、貫通孔の幅250μm、貫通孔の前後の幅250μm
・像保持体20と現像ロール41との間隙400μm
・第一の振動電界(E1):±500V(1000Vpp)、10kHz、Duty50%
【0109】
結果は、図22の振動電界E3をゼロとしたものと同様の結果が得られたので、ここでは省略する。
【符号の説明】
【0110】
1…像保持体,2…現像装置,3…トナー保持体,4…第一の電極部材,5…絶縁部,6…第二の電極部材,7…開口,8…第一の電界形成手段,9…第二の電界形成手段,T…トナー,E1…第一の振動電界,E2…第二の振動電界
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、
このトナー保持体の外周面に対向して配置され、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させる電界を形成するために用いられる第一の電極部材と、
この第一の電極部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させるように、周期的に変化する電界成分が含まれる第一の振動電界を前記第一の電極部材と前記トナー保持体との間に形成する第一の電界形成手段と、
前記像保持体と前記トナー保持体との間で現像に供される現像領域に面して設けられ、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させる電界を形成するために用いられ、前記第一の電極部材に対し前記トナー保持体の回転方向下流側に延びるように絶縁部を介して設けられ且つ当該絶縁部に対応した部位からはトナーが通過不能となるように配置される第二の電極部材と、
この第二の電極部材のうち前記現像領域に対応する位置に開けられ、前記トナー保持体の回転方向に交差する幅方向に亘って連続的又は不連続的に形成されると共に前記像保持体に向かってトナーを通過させる開口と、
前記第二の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成した場合に比べてトナーの振動を抑制し且つ前記開口から現像領域で必要とされる予め決められたトナー量を飛翔させるように、少なくとも一部に前記第一の振動電界の振幅より小さい部位を含み周期的に変化する電界成分が含まれる第二の振動電界を前記第二の電極部材と前記トナー保持体との間に形成する第二の電界形成手段と、
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
前記第二の振動電界の最大振幅は、前記第一の振動電界の最大振幅以下に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記第一の電界形成手段は、前記第一の電極部材を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、前記トナー保持体に交流電圧を印加することで、前記第一の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成し、
一方、前記第二の電界形成手段は、前記第二の電極部材と接地部位との間に前記トナー保持体に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、前記第二の電極部材及び前記トナー保持体夫々に印加する交流電圧の電位差によって前記第二の振動電界を形成するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項3記載の現像装置において、
前記第二の電極部材に印加する交流電圧は、前記トナー保持体に印加する交流電圧と同位相に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項3記載の現像装置のうち前記第二の振動電界の最大振幅が前記第一の振動電界の最大振幅を超える態様において、
前記第二の電極部材に印加する交流電圧の周波数は、前記トナー保持体に印加する交流電圧の周波数とは異なる周波数に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記第一の電界形成手段は、前記トナー保持体を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、前記第一の電極部材に交流電圧を印加することで、当該第一の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成し、
一方、前記第二の電界形成手段は、前記第二の電極部材に前記第一の電極部材に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、当該第二の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第二の振動電界を形成するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項6記載の現像装置において、
前記第二の振動電界は、前記第一の振動電界の周波数とは異なる周波数に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の現像装置において、
前記第一の電極部材及び前記第二の電極部材は、前記第一の電極部材と前記トナー保持体との最短となる間隙をG1とし、前記第二の電極部材と前記トナー保持体との最短となる間隙をG2としたときに、G1≦G2の関係を満たすように配置されていることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の現像装置において、
更に、前記第一の電極部材及び前記第二の電極部材は、前記トナー保持体に面する部位が絶縁性の被覆層で覆われていることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
静電潜像を保持して回転する像保持体と、
前記像保持体に対向して配置され且つ前記像保持体の静電潜像を現像する請求項1乃至9のいずれかに記載の現像装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10記載の画像形成装置のうち前記第二の電極部材に前記トナー保持体の回転方向に対して並ぶ二列の開口が設けられる態様において、
前記第二の電極部材は、前記トナー保持体の回転方向に対して前記二列の開口間に位置する部位が前記像保持体に最近接するように配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項10記載の画像形成装置のうち前記第二の電極部材に一列の開口が設けられる態様において、
前記第二の電極部材は、前記開口に対応する部位が前記像保持体に最近接するように配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の画像形成装置において、
最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配置された画素電極を有する像保持体と、
前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより静電潜像を書き込む潜像書込手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、
このトナー保持体の外周面に対向して配置され、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させる電界を形成するために用いられる第一の電極部材と、
この第一の電極部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させるように、周期的に変化する電界成分が含まれる第一の振動電界を前記第一の電極部材と前記トナー保持体との間に形成する第一の電界形成手段と、
前記像保持体と前記トナー保持体との間で現像に供される現像領域に面して設けられ、少なくとも一部が導電性部材にて構成され且つ当該導電性部材と前記トナー保持体との間でトナーを振動させる電界を形成するために用いられ、前記第一の電極部材に対し前記トナー保持体の回転方向下流側に延びるように絶縁部を介して設けられ且つ当該絶縁部に対応した部位からはトナーが通過不能となるように配置される第二の電極部材と、
この第二の電極部材のうち前記現像領域に対応する位置に開けられ、前記トナー保持体の回転方向に交差する幅方向に亘って連続的又は不連続的に形成されると共に前記像保持体に向かってトナーを通過させる開口と、
前記第二の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成した場合に比べてトナーの振動を抑制し且つ前記開口から現像領域で必要とされる予め決められたトナー量を飛翔させるように、少なくとも一部に前記第一の振動電界の振幅より小さい部位を含み周期的に変化する電界成分が含まれる第二の振動電界を前記第二の電極部材と前記トナー保持体との間に形成する第二の電界形成手段と、
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
前記第二の振動電界の最大振幅は、前記第一の振動電界の最大振幅以下に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記第一の電界形成手段は、前記第一の電極部材を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、前記トナー保持体に交流電圧を印加することで、前記第一の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成し、
一方、前記第二の電界形成手段は、前記第二の電極部材と接地部位との間に前記トナー保持体に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、前記第二の電極部材及び前記トナー保持体夫々に印加する交流電圧の電位差によって前記第二の振動電界を形成するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項3記載の現像装置において、
前記第二の電極部材に印加する交流電圧は、前記トナー保持体に印加する交流電圧と同位相に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項3記載の現像装置のうち前記第二の振動電界の最大振幅が前記第一の振動電界の最大振幅を超える態様において、
前記第二の電極部材に印加する交流電圧の周波数は、前記トナー保持体に印加する交流電圧の周波数とは異なる周波数に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記第一の電界形成手段は、前記トナー保持体を直接又は予め決められた直流電圧を介して接地し、前記第一の電極部材に交流電圧を印加することで、当該第一の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第一の振動電界を形成し、
一方、前記第二の電界形成手段は、前記第二の電極部材に前記第一の電極部材に印加する交流電圧とは異なる交流電圧を印加することで、当該第二の電極部材と前記トナー保持体との間に前記第二の振動電界を形成するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項6記載の現像装置において、
前記第二の振動電界は、前記第一の振動電界の周波数とは異なる周波数に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の現像装置において、
前記第一の電極部材及び前記第二の電極部材は、前記第一の電極部材と前記トナー保持体との最短となる間隙をG1とし、前記第二の電極部材と前記トナー保持体との最短となる間隙をG2としたときに、G1≦G2の関係を満たすように配置されていることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の現像装置において、
更に、前記第一の電極部材及び前記第二の電極部材は、前記トナー保持体に面する部位が絶縁性の被覆層で覆われていることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
静電潜像を保持して回転する像保持体と、
前記像保持体に対向して配置され且つ前記像保持体の静電潜像を現像する請求項1乃至9のいずれかに記載の現像装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10記載の画像形成装置のうち前記第二の電極部材に前記トナー保持体の回転方向に対して並ぶ二列の開口が設けられる態様において、
前記第二の電極部材は、前記トナー保持体の回転方向に対して前記二列の開口間に位置する部位が前記像保持体に最近接するように配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項10記載の画像形成装置のうち前記第二の電極部材に一列の開口が設けられる態様において、
前記第二の電極部材は、前記開口に対応する部位が前記像保持体に最近接するように配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の画像形成装置において、
最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配置された画素電極を有する像保持体と、
前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより静電潜像を書き込む潜像書込手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−44945(P2013−44945A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182696(P2011−182696)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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