説明

現像装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】スリーブの熱を十分に放散し、スリーブ外周面への現像剤の固着が発生せずに、高い画像品質を維持することができる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置100は、現像剤を担持して回転可能に支持されるスリーブ50aを有し、このスリーブ50aの内側に所定の間隔を設けて磁極部材50bが固定支持される現像ローラ50を備え、現像ローラ50はスリーブ50a外周面に担持した現像剤を感光体10に供給する。所定間隔には、熱伝導率の大きい複数のボール71がスリーブ50aの内周面と磁極部材50bの外周面に接触するように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、現像ローラ等ローラを冷却する現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を用いた画像形成装置では、トナーとキャリアからなる2成分現像剤を担持する現像ローラが用いられている。現像ローラは、像担持体としての感光体と対向し、感光体上に形成される静電潜像を現像する。ここで、現像ローラは、支軸となるシャフトに設けられた磁極部材と、磁極部材の外周に間隔を有して配置されるとともに回転自在に設けられるスリーブと、このスリーブ両端を支持するフランジとを備える。磁極部材は、回転しないように現像装置内に固設され、スリーブ外周面に所定の磁力分布を形成する。そして、現像装置内にてスリーブが回転し、現像剤が順次感光体に供給され、感光体上の静電潜像を現像している。
【0003】
ここで、現像剤同士の衝突、現像剤の撹拌スクリューへの衝突・摩擦、撹拌スクリューや現像ローラの摺動、現像ローラ上の現像剤の層厚を規制する規制ブレード等において熱が発生する。この熱によって、現像装置内の温度が上昇すると、現像剤が溶融して流動性が悪くなり、現像剤が撹拌スクリューやスリーブに固着してしまうおそれがある。撹拌スクリューやスリーブにトナーが固着して、さらに堆積していくと、現像剤の搬送性能が大幅に低下し、また感光体上で現像される画像に悪影響がおよび、用紙に形成される画像に不良が発生するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1では、現像ローラは、磁極部材の外周を所定の間隔を設けて覆い、磁極部材に対して回転可能に形成されたスリーブを備えている。このスリーブは熱伝導率の異なる複数の層を有し、磁極部材に近いスリーブ下層は、磁極部材から遠いスリーブ表面層に比べて、熱伝導率が高い材料で形成されている。これにより、スリーブ外周面の熱は、スリーブ表面層からスリーブ下層に向けて移動して、その後にスリーブ下層内周面から放散される。こうして、スリーブで生じる熱は蓄積されることなく放散され、スリーブ外周面でのトナー固着の発生を軽減している。
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、スリーブ下層内周面と磁極部材との間隔には、空気が介在するが、通常空気層は断熱作用を有する。従って、スリーブ下層内周面から放熱されても、空気層の断熱作用によって、スリーブ下層内周面から空気層を介してフランジや磁極部材に放熱され難く、スリーブ外周面の温度が十分に低下しないという問題があった。
【特許文献1】特開2004−109215号公報(段落[0038]〜[0040]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、スリーブの熱を十分に放散し、スリーブ外周面への現像剤の固着が発生せずに、高い画像品質を維持することができる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、現像剤を担持して回転可能に支持されるスリーブを有し、該スリーブの内側に間隔を設けて磁極部材が固定支持されるローラを備えた現像装置において、前記間隔には、熱伝導部材が前記スリーブの内周面と前記磁極部材の外表面に接触するように設けられることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、スリーブの熱はスリーブ内周面から熱伝導部材を介して磁極部材に移動し、磁極部材から放散される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、前記熱伝導部材は複数のボールであることを特徴としている。この構成によれば、スリーブの熱はスリーブ内周面から複数のボールを介して磁極部材に移動して、磁極部材から放散されるとともに、複数のボールがスリーブの内周面と磁極部材の外周面に接触し、スリーブと磁極部材は所定の間隔に保持される。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、前記熱伝導部材は、前記間隔に封入される液体であることを特徴としている。この構成によれば、スリーブの熱はスリーブ内周面から熱伝導率の大きい液体を介して磁極部材に移動して、磁極部材から放散される。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、装置の外殻を形成するハウジングと、前記磁極部材を固定支持し前記ハウジング外に延在する支軸部材と、前記支軸部材の前記ハウジング外に設けられ、前記スリーブの熱を放散する放熱部材とを備えることを特徴としている。この構成によれば、スリーブ内周面から熱伝導部材を介して磁極部材に移動した熱は、支軸部材を介してハウジング外の放熱部材から放散される。
【0012】
また、請求項5に記載の発明では、上記の構成の現像装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、スリーブの熱はスリーブ内周面から熱伝導部材を介して磁極部材に移動し、磁極部材から放散されるので、スリーブ外周面の温度が低下し、現像剤がスリーブ外周面に固着せず、現像剤が感光体に供給され、高い画像品質を維持することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、スリーブの熱はスリーブ内周面から複数のボールを介して磁極部材に移動して、磁極部材から放散されるので、スリーブ外周面の温度が低下し、現像剤がスリーブ外周面に固着せず、スリーブに担持された現像剤が感光体に供給され、高い画像品質を維持することができる。また、複数のボールがスリーブ内周面と磁極部材外周面に接触し、スリーブと磁極部材は所定の間隔に保持されるので、スリーブと磁極部材が擦れて異音が発生することがなく、またスリーブが回転偏芯を起こさず、スリーブから現像剤が安定して供給される。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、スリーブの熱はスリーブ内周面から熱伝導率の大きい液体を介して磁極部材に移動して、磁極部材から放散されるので、スリーブ外周面の温度が低下し、現像剤がスリーブ外周面に固着せず、スリーブに担持された現像剤が感光体に供給され、高い画像品質を維持することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、スリーブ内周面から熱伝導部材を介して磁極部材に移動した熱は、支軸部材を介してハウジング外の放熱部材から放散されるので、スリーブ外周面の温度が低下し、現像剤がスリーブ外周面に固着せず、スリーブに担持された現像剤が感光体に供給され、高い画像品質を維持することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明によれば、スリーブの熱を十分に放散し、スリーブ外周面への現像剤の固着が発生せずに、スリーブに担持された現像剤が感光体に供給され、高い画像品質を維持することができる現像装置を備える画像形成装置にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。本発明の実施形態は発明の最も好ましい形態を示すものであり、また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の内部構成の概略を示す断面図である。画像形成装置1はタンデム型のカラープリンタであり、回転自在である感光体10a〜10dは、感光層を形成する感光材料として、アモルファスシリコン感光体が用いられ、ブラック(B)、イエロー(Y)、シアン(C)及びマゼンタ(M)の各色に対応させて配される。感光層は有機感光体(OPC感光体)でもよい。各感光体10a〜10dの周囲に、現像装置100a〜100d、帯電器40a〜40d及び光学露光器(図略)が配設される。現像装置100a〜100dは現像ローラとトナーの収容部とを有し、感光体10a〜10dにトナーを供給する。帯電器40a〜40dは感光体10a〜10d表面を一様に帯電させる。パーソナルコンピュータ等から画像入力部(図略)に入力された原稿画像データに基づいて、光学露光器から各感光体10a〜10d上にレーザビームが照射される。照射されたレーザ光により、各感光体10a〜10d表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が各現像装置100a〜100dにより現像される。
【0020】
中間転写ベルト5は、駆動ローラ25、従動ローラ27、及びテンションローラ9に張架されている。この中間転写ベルト5に接触するように各感光体10a〜10dが中間転写ベルト5の搬送方向(図1中矢印方向)に沿って上流側から隣り合うように配列されている。各1次転写ローラ26a〜26dは、中間転写ベルト5を挟んで各感光体10a〜10dと対向して中間転写ベルト5に圧接し、1次転写ニップ部を形成する。この各1次転写ニップ部において、中間転写ベルト5の回転とともに所定のタイミングで各感光体10a〜10dのトナー像が中間転写ベルト5に順次転写されることにより、中間転写ベルト5表面にはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされ、カラートナー像が形成される。
【0021】
2次転写ローラ7は、中間転写ベルト5を挟んで駆動ローラ25と対向し、中間転写ベルト4に圧接して2次転写ニップ部を形成する。用紙搬送部では、給紙カセット6に積載された用紙が1枚ずつ繰り出され、搬送ローラ対22が用紙を2次転写ニップ部に搬送する。この2次転写ニップ部において、バイアス電位(トナーの帯電極性と逆極性)が印加された2次転写ローラ7によって、中間転写ベルト5上に形成されたトナー像が用紙に2次転写され、転写された用紙は定着器8に搬送される。
【0022】
定着器8は、加熱ローラと、加熱ローラに圧接して配設された加圧ローラ等とを備え、トナー像が転写された用紙を加熱及び加圧することにより定着処理を行う。定着された用紙は、排出ローラ対(図略)によって装置本体外に排出される。
【0023】
図2は、上述の画像形成装置1に用いられる現像装置100a〜100dの構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、図1の感光体10aと相対する現像装置100aの構成及び動作について説明するが、現像装置100b〜100dの構成及び動作については現像装置100aと同様であり説明を省略し、また各色の現像装置及び感光体を示すa〜dの符号を省略する。
【0024】
図2に示すように、現像装置100は、一点鎖線で示すハウジング62と、ローラとしての現像ローラ50と、供給ローラ61と、規制ブレード64と、撹拌部材63及び放熱部材58とを備えて構成される。
【0025】
感光体10に対向し、一定の隙間を設けて現像ローラ50が配される。そして、図2の現像ローラ50に対して左斜め上方に、一定の隙間を設けて供給ローラ61が配され、供給ローラ61に対して左斜め下方に、撹拌部材63が配される。また、図2の供給ローラ61の上方に、規制ブレード64が配される。そして、ハウジング62内には、現像ローラ50、供給ローラ61、及び撹拌部材63が夫々回転可能に取り付けられ、規制ブレード64が固定支持される。ハウジング62外には、放熱部材58が支軸部材51に固定支持される。
【0026】
撹拌部材63は、撹拌スクリュー63aとパドルミキサー63bの2本で構成されて、磁性体のキャリアとトナーからなる現像剤を撹拌して、現像剤中のトナーを所定のレベルに帯電させる。帯電することにより、トナーはキャリアに保持される。撹拌スクリュー63aとパドルミキサー63bとの間には、隔壁として仕切り板62bが長手方向(現像ローラ50の軸方向)に延在して配され、仕切り板62bの長手方向の両側に形成された開口(図略)を現像剤が自由に通過できるようになっている。ハウジング62内の現像剤は、撹拌スクリュー63aによって撹拌されて帯電し、仕切り板62bの開口(図略)を通過して、パドルミキサー63b側に搬送される。
【0027】
供給ローラ61は、パドルミキサー63bから現像剤を引き上げ、引き上げた現像剤を現像ローラ50に供給するものである。供給ローラ61は、複数の磁極を周方向に並べたマグネットローラ(図略)を内蔵し、マグネットローラの磁力によって、現像剤を供給ローラ61外周面に引き上げ担持する。そして供給ローラ61の回転によって、現像剤は規制ブレード64の位置まで搬送されると、規制ブレード64により所定の層厚に調整される。さらに供給ローラ61が回転し、マグネットローラの同極磁極が隣り合う、磁力の殆どない位置で、現像剤は供給ローラ61から離脱し、現像ローラ50外周面に供給される。
【0028】
現像ローラ50を図3、図4に基づいて詳しく説明する。図3は現像ローラの構成を示す平面断面図であり、図4は現像ローラの構成を示す側面断面図である。
【0029】
図3に示すように、現像ローラ50は、非磁性の金属材料で円筒状に形成されるスリーブ50aと、その内部に配置された磁極部材50bと、磁極部材50bに固設される支軸部材51と、スリーブ50aの両端を支持するフランジ54、55と、フランジ55に固設される支軸部材56、及び熱伝導部材としての複数のボール71を備える。
【0030】
磁極部材50bは、円筒状の熱伝導率が大きいフェライト系のマグネットからなり、その中心部には支軸部材51が固設されている。支軸部材51は、ステンレス鋼等の熱伝導率の大きい材料からなり、その一端側(図3の左側)で断面小判形状の切り欠きとハウジング62の孔との嵌合によって、ハウジング62に対して回転しないように支持される。さらに支軸部材51はハウジング62外に向けて延び、ハウジング62外の支軸部材51には、放熱部材58が取り付けられている。
【0031】
放熱部材58はアルミニウム合金等の熱伝導率の大きい平板を多数枚並べて配され、現像ローラ50の熱は、支軸部材51を介して放熱部材58の平板表面から放散される。
【0032】
スリーブ50aは、磁極部材50bの外周面と所定の間隔を設けて、その両端部を圧入等によってフランジ54、55に固着されている。フランジ54の内周部には軸受け52が固着され、フランジ55の内周部には軸受け53が固着され、各軸受け52、53を介して、フランジ54、55は支軸部材51に対して回転可能になる。またフランジ54、55は、それらの側面部54a、55aにおいて、磁極部材50bとの軸方向の相対的な移動を規制している。フランジ55には、支軸部材56が支軸部材51と同軸に設けられている。支軸部材56は、ハウジング62に回転可能に支持され、さらにハウジング62外に向けて延びている。ハウジング62外に延びた支軸部材56の端部には、ギヤ57が設けられ、図示しないモータ等の駆動源に接続され、駆動源の駆動によって、ギヤ57が回転し、支軸部材56も回転する。支軸部材56の回転により、スリーブ50aは支軸部材56、フランジ55を介して回転することになる。
【0033】
複数のボール71は、ステンレス鋼等の熱伝導率の大きい材料で形成される球体であって、スリーブ50aと磁極部材50bとの間隔に軸方向と周方向に並べて設けられる。スリーブ50aが回転可能であるように、複数のボール71は、スリーブ50aまたは磁極部材50bの一方と僅かな隙間を有して、スリーブ50aの内周面と磁極部材50bの外周面に接触している。つまり、現像ローラ50が現像装置100に装着された状態では、図3に示す下側の複数のボール71は、磁極部材50bの外周面に対して僅かな隙間を有してスリーブ50a内周面に接触し、上側の複数のボール71は、磁極部材50bの外周面及びスリーブ50a内周面に接触している。尚、複数のボール71が軸方向に所定の位置に配されるように、複数のボール71の間にステンレス鋼等の線材を軸方向に並べるとよい。また、図4に示すように、複数のボール71が周方向に所定の位置に配されるように、磁極部材50bの外周面に軸方向に延びる丸い僅かな窪みを形成し、この窪みに複数のボール71が収まるようにするとよい。
【0034】
図4に示すように、現像ローラ50は感光体10に対向する。磁極部材50bは、スリーブ50a内部において、感光体10の対向位置に磁極N2、そして、この磁極N2からスリーブ50aの回転方向(図4の時計回り方向)に順に磁極S2、磁極N3、磁極N1、磁極S1がそれぞれ着磁されている。磁極N1と磁極S1近辺のスリーブ50a上に供給ローラ61から供給された現像剤は、スリーブ50aの回転によって、スリーブ50a外周面で磁極N2の位置に搬送される。磁極N2の現像位置で、現像剤中のトナーが感光体10上に形成された潜像に飛翔する。トナーを消費した後の現像剤は、磁極N3と磁極N1との間の磁力がほとんど存在しない位置で、スリーブ50a外周面から離脱する。離脱した現像剤は、撹拌部材側に搬送され、現像装置内を循環し再度現像に供される。
【0035】
現像装置内では、現像剤同士の衝突、現像剤の撹拌スクリューや規制ブレードへの衝突・摩擦、また撹拌スクリューや現像ローラの摺動等において熱が発生する。この熱によって、スリーブ50aの温度が上昇すると、スリーブ50a外周面の現像剤が、スリーブ50a外周面に固着するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、スリーブ50aの熱は、スリーブ50aの内周面から熱伝導率の大きい複数のボール71に移動し、さらに熱伝導率の大きい磁極部材50b及び支軸部材51に移動し、ハウジング62外の放熱部材58に放散される。
【0036】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態である現像装置に用いられる現像ローラの構成を示す平面断面図である。第1実施形態と異なる、熱伝導部材である液体について主に説明し、以降第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0037】
現像ローラ50は、非磁性の金属材料で円筒状に形成されるスリーブ50aと、その内部に配置された磁極部材50bと、磁極部材50bに固設される支軸部材51と、スリーブ50aの両端を支持するフランジ54、55と、フランジ55に固設される支軸部材56、及び熱伝導部材としての液体75を備える。
【0038】
磁極部材50bは、円筒状の熱伝導率が大きいフェライト系のマグネットからなり、その中心部には支軸部材51が固設されている。支軸部材51は、ステンレス鋼等の熱伝導率の大きい材料からなり、その一端側(図5の左側)で断面小判形状の切り欠きとハウジング62の孔との嵌合によって、ハウジング62に対して回転しないように支持される。
【0039】
スリーブ50aは、磁極部材50bの外周面と所定の間隔を設けて、その両端部を圧入等によってフランジ54、55に固着されている。フランジ54の内周部には、軸受け52が固着され、フランジ55の内周部には軸受け53が固着され、各軸受け52、53を介して、フランジ54、55は支軸部材51に対して回転可能になる。フランジ55には、支軸部材56が支軸部材51と同軸に設けられている。支軸部材56は、ハウジング62に回転可能に支持され、さらにハウジング62外に向けて延びている。ハウジング62外に延びた支軸部材56の端部には、ギヤ57が設けられ、図示しないモータ等の駆動源に接続され、駆動源の駆動によって、ギヤ57が回転し、支軸部材56も回転する。支軸部材56の回転により、スリーブ50aは支軸部材56、フランジ55を介して回転することになる。
【0040】
液体75は、水銀、またはナノ流金属を分散した液体等の熱伝導率の大きい材料で形成され、熱伝導率として45W/(m・℃)以上を備える。液体75は、スリーブ50a、磁極部材50b及びフランジ54、55により形成される空間内に密封される。スリーブ50aとフランジ54、55の圧入部分、及び支軸部材51と軸受け52、53の摺動部分には、液体75が外部に漏れないように、シール処理が施されている。
【0041】
従って、現像剤同士の衝突、現像剤の撹拌スクリューや規制ブレードへの衝突・摩擦、また撹拌スクリューや現像ローラの摺動等において熱が発生し、この熱によって、スリーブ50aの温度が上昇すると、スリーブ50a外周面の現像剤が、スリーブ50a外周面に固着するおそれがあるが、本実施形態では、スリーブ50aの熱は、スリーブ50aの内周面から熱伝導率の大きい液体75に移動し、さらに熱伝導率の大きい磁極部材50b及び支軸部材51に移動し、ハウジング62外の放熱部材に放散される。
【0042】
上記第1及び第2実施形態によれば、現像装置100は、現像剤を担持して回転可能に支持されるスリーブ50aを有し、このスリーブ50aの内側に所定の間隔を設けて磁極部材50bが固定支持される現像ローラ50を備え、現像ローラ50はスリーブ50a外周面に担持した現像剤を感光体10に供給する。所定間隔には、熱伝導率の大きい複数のボール71または液体75(熱伝導部材)がスリーブ50aの内周面と磁極部材50bの外周面に接触するように設けられる。
【0043】
この構成によると、スリーブ50aの熱は、スリーブ50aから熱伝導部材を介して磁極部材50bに移動して、磁極部材50bから放散されるので、スリーブ50a外周面の温度が低下し、現像剤がスリーブ50a外周面に固着せず、スリーブ50aに担持された現像剤が感光体10に供給され、高い画像品質を維持することができる。
【0044】
また、熱伝導部材を複数のボール71によって構成すると、スリーブ50aの熱を放散することができるとともに、複数のボール71がスリーブ50aの内周面と磁極部材50bの外周面に接触し、スリーブ50aと磁極部材50bは所定の間隔に保持されるので、スリーブ50aと磁極部材50bが擦れて異音が発生することがなく、またスリーブ50aが回転偏芯を起こさず、スリーブ50aから安定して現像剤を供給することができる。
【0045】
また、上記第1及び第2実施形態によると、装置の外殻を形成するハウジング62と、磁極部材50bを固定支持し、ハウジング62に支持される支軸部材51と、スリーブ50aの熱を放散する放熱部材58とを備え、放熱部材58は、支軸部材51のハウジング62外の部分に設けられる。これにより、スリーブ50aから熱伝導部材を介して磁極部材50bに移動した熱は、支軸部材51を介してハウジング62外の放熱部材58から放散されるので、スリーブ50a外周面の温度が低下し、現像剤がスリーブ50a外周面に固着せず、スリーブ50aに担持された現像剤が感光体10に供給され、高い画像品質を維持することができる。
【0046】
尚、上記第1及び第2実施形態では、熱伝導部材をボールまたは液体で構成したが、本発明はこれに限らず、熱伝導部材をアルミニウム線材によってブラシ状に形成し、このブラシ状部材の一端をスリーブ内周面に軸方向に延在して固着し、他端を磁極部材の外周面に接触させるように構成しても、スリーブの熱はスリーブ内周面からブラシ状部材を介して磁極部材に移動して、磁極部材から放散され、スリーブ外周面の温度を低下させることができる。この場合、または液体を封入する場合には、磁極部材は円筒形状でなくとよく、例えば、磁極部材の外表面は、スリーブの内周面と形成する間隔を全外表面で一定にしないような形状でもよい。
【0047】
また、上記第1及び第2実施形態では、熱伝導部材を現像ローラに適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、供給ローラのスリーブとマグネットローラとの間に熱伝導部材を介在させてもよいし、また、撹拌部材から現像剤を汲み上げる汲み上げローラのスリーブとマグネットローラとの間に熱伝導部材を介在させてもよい。この場合も上記同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施形態をさらに具体化した実施例を表1に示し、比較例を表2に示す。なお、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。実施例はローラ50のスリーブ50aと磁極部材50bとの間に複数のボールを介在させたものであり、比較例はスリーブ50aと磁極部材50bとの間に介在物がないものである。実施例には、図3に示す支軸部材51の左端に放熱部材が取り付けられている。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
画像形成装置の始動時において、現像装置内の温度が32.5℃であり、現像剤を現像装置に内蔵させないで連続駆動し、撹拌スクリューが3Wに発熱した時の実施例と比較例の各スリーブ外周面の温度分布を測定した。その結果を図6に示す。図6の縦軸はスリーブ外周面温度を示し、横軸は、図3に示す矢印A位置を基準にしたスリーブ外周面の軸方向位置を示す。図6の実線は実施例の温度分布を示し、破線は比較例の温度分布を示す。
【0052】
図6から明らかなように、実施例は、スリーブの中央部の温度が略41℃であり、画像形成装置の始動時から温度が8.5℃上昇し、比較例は、スリーブの中央部の温度が略48℃であり、画像形成装置の始動時から温度が15.5℃上昇している。従って、実施例は、スリーブの中央部において、比較例に対して温度が略7℃低くなっていることになる。また、実施例は比較例に対して、スリーブ0mm位置付近の温度が略8℃低く、スリーブ260mm位置近辺の温度が略6℃低くなっている。実施例において、スリーブ0mm位置付近とスリーブ260mm位置近辺で温度差があり、スリーブ0mm位置付近の温度がスリーブ260mm位置近辺より、略2℃低いのは、スリーブの熱が支軸部材を介して放熱部材によって放散されていることによる。以上より実施例では良好な結果が得られた。尚、ボールにSUS316系ステンレス鋼を用いても、上記実施例と略同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、現像ローラ等ローラを冷却する現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置に用いられる現像装置の構成を示す斜視図である。
【図3】は、本発明の第1実施形態である現像装置に用いられる現像ローラの構成を示す平面断面図である。
【図4】は、本発明の第1実施形態である現像装置に用いられる現像ローラの構成を示す側面断面図である。
【図5】は、本発明の第2実施形態である現像装置に用いられる現像ローラの構成を示す平面断面図である。
【図6】は、本発明の実施例における現像ローラの温度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置
10a〜10d 感光体
50 現像ローラ(ローラ)
50a スリーブ
50b 磁極部材
51、56 支軸部材
52、53 軸受け
54、55 フランジ
57 ギヤ
58 放熱部材
61 供給ローラ
62 ハウジング
63 撹拌部材
63a 撹拌スクリュー
63b パドルミキサー
64 規制ブレード
71 ボール(熱伝導部材)
75 液体(熱伝導部材)
100a〜100d 現像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持して回転可能に支持されるスリーブを有し、該スリーブの内側に間隔を設けて磁極部材が固定支持されるローラを備えた現像装置において、
前記間隔には、熱伝導部材が前記スリーブの内周面と前記磁極部材の外表面に接触するように設けられることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記熱伝導部材は複数のボールであることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記熱伝導部材は、前記間隔に封入される液体であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
装置の外殻を形成するハウジングと、前記磁極部材を固定支持し前記ハウジング外に延在する支軸部材と、前記支軸部材の前記ハウジング外に設けられ、前記スリーブの熱を放散する放熱部材とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の現像装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−54901(P2010−54901A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221013(P2008−221013)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】