説明

現像装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】現像に供されない現像剤を現像ローラ上から確実に剥ぎ取り・回収し、画像形成の高速化に対応した良好な画像を得られる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置14は、周方向に複数の磁極を有する固定磁石体25を内蔵する現像ローラ27と、磁性トナーを撹拌して現像ローラ27に供給する撹拌部材24と、トナーを収容する現像容器22とを備える。現像容器22の容器内壁部には、トナーを現像ローラ27側から撹拌部材24側に通過させる現像剤通過路22fが形成されている。現像剤通過路22fの近傍には、磁石51が配置される。磁石51の現像ローラ27回転方向上流側が現像ローラ27の表面に近接し、磁石51の現像ローラ27回転方向下流側が現像ローラ27の表面から前記上流側よりも離間して配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光体等からなる像担持体上に形成した潜像を、現像装置により現像してトナー像として可視化することを行っている。このような現像装置の一つとして、小型で低コストな磁性一成分トナー用いた現像装置が実用化されている。この現像装置は、現像ローラの内部に複数の磁極を有する磁石を設け、更に現像ローラ上のトナーの量を規制する規制部材を設けて、規制部材と現像ローラとの間でトナーを帯電させ、現像ローラ上に所定量のトナー薄層を担持させている。
【0003】
近年、上述のような現像装置においても、出力スピードの高速化が必要になり、現像ローラの回転速度が大きくなっている。現像ローラの回転速度が大きくなると、現像ローラ上でトナーが強く帯電し、現像ローラ上に強固に付着することになる。このチャージアップしたトナーによって、その後に新たに供給されるトナーは現像ローラと接触することを妨げられ、十分な電荷を持つことができない。その結果、濃度低下やゴースト現象等の異常画像が発生する。また、チャージアップしたトナーによって、規制部材と現像ローラとの間でトナーが詰まりやすくなり、凝集トナーが発生する。この凝集トナーによって、グレー画像上に縦白筋の異常画像が発生する。
【0004】
そこで、トナーのチャージアップによって現像ローラ上に強固に付着したトナーを現像ローラから引き剥がすことが必要になる。特許文献1では、現像ローラは、その内部に、周方向に複数の磁極を有する固定磁石体を固定支持し、磁石からなる磁界発生部材は、規制部材よりも現像ローラの回転方向上流側で、固定磁石体の磁極間部に対向する位置に設けられ、この位置でトナーの磁気ブラシを形成するようになっている。この構成において、現像ローラ上のトナーが現像領域で像担持体に供給され、像担持体上の静電潜像が現像されると、像担持体上にトナー像が形成される。現像領域において、消費されずに現像ローラ上に残存したトナーは、磁気ブラシによって現像ローラ上から剥ぎ取られ、現像ローラの回転に伴い現像ローラの下側より現像容器内に回収される。
【0005】
しかしながら、上述した先行技術においては、磁界発生部材のN極とS極が現像ローラの法線方向に配置され、磁界発生部材が現像ローラの下側に配設される。この磁界発生部材と、現像ローラと、現像容器の下部内壁との間のスペースは、限られた狭い範囲であり、磁気ブラシによって剥ぎ取られたトナーは、このスペースを流通しがたく、このスペース内に詰まると、凝集するおそれがある。そうすると、凝集トナーによって筋状のトナー薄層が形成され、縦白筋の異常画像が発生し、更に、凝集トナーによって、剥ぎ取られたトナーが塞き止められ、現像容器外に漏れ出るという不都合が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−34267号公報(段落[0028]、[0033]〜[0035]、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、現像に供されない現像剤を現像ローラ上から確実に剥ぎ取り・回収し、画像形成の高速化に対応した良好な画像を得られる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、磁性現像剤を収容する現像容器と、像担持体に対向した現像領域に現像剤を供給し、周方向に複数の磁極を有する固定磁石体を内蔵する現像ローラと、前記現像ローラ上の現像剤の量を規制する規制部材と、現像剤を撹拌して前記現像ローラに供給する撹拌部材と、前記現像ローラ上の現像剤を剥ぎ取る磁性部材とを備える現像装置において、前記現像容器には、前記磁性部材により剥ぎ取られた現像剤を現像ローラ側から撹拌部材側に通過させる現像剤通過路が現像ローラ回転方向に対し現像領域の下流側に形成されており、前記磁性部材は、前記現像剤通過路の近傍に配置され、且つ、磁性部材の現像ローラ回転方向上流側を前記現像ローラの表面に近接させ、磁性部材の現像ローラ回転方向下流側を前記現像ローラの表面から前記上流側よりも離間させて配置されることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、現像領域において現像に供されずに、現像ローラ表面に残存する現像剤は、磁性部材によって、現像ローラ表面から剥ぎ取られ、剥ぎ取られた現像剤は、現像剤通過路を通って、撹拌部材側に回収される。ここで、磁性部材は、その現像ローラ回転方向上流側が現像ローラの表面に近接し、その現像ローラ回転方向下流側が現像ローラの表面から離間して配置されるので、現像剤通過路の開口は比較的に大きくなる、または、現像剤通過路は磁性部材から離間させられる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、前記磁性部材は、前記現像ローラの表面に対向する磁石を有することを特徴としている。この構成によれば、現像領域において現像に供されずに、現像ローラ表面に残存する現像剤は、磁石の磁力によって、現像ローラ表面から剥ぎ取られる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、前記磁性部材は、前記磁石と前記現像剤通路との間に配置される磁性板を有することを特徴としている。この構成によれば、磁性板は磁石の磁力線をその内部に引き込み、現像剤通過路は磁気シールドされた状態となり、現像剤通過路を通過する現像剤に対する磁石の磁力の影響を抑えられる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明では、前記現像剤通過路は、撹拌部材側の開口を現像ローラ側の開口より大きく形成されていることを特徴としている。この構成によれば、現像剤通過路の撹拌部材側の開口断面積は現像ローラ側の開口断面積より大きいので、撹拌部材側の開口部を通過する現像剤は、現像ローラ側の開口部を通過するときより、現像剤間で受ける圧力が小さくなる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、前記現像剤通過路は、現像ローラ側の開口部と撹拌部材側の開口部を略同じ大きさで形成されていることを特徴としている。この構成によれば、現像剤通路の開口を、現像容器の内壁部に平行に延びて形成することが可能である。一方、磁石は、現像ローラ回転方向上流側が現像ローラの表面に近接し、現像ローラ回転方向下流側が現像ローラの表面から離間して配置されるので、現像ローラ表面に対し傾斜して対向し、また磁石は現像剤通過路に対しても傾斜して配置されることになる。この現像剤通過路と磁石の配置によって、現像剤通過路は現像ローラ側から撹拌部材側に向かって磁石から離れた位置となり、現像剤通過路を通過する現像剤に対する磁石の磁力の影響を抑えられる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明では、上記の構成の現像装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、現像領域において現像に供されずに、現像ローラ表面に残存する現像剤は、磁性部材によって、現像ローラ表面から剥ぎ取られ、剥ぎ取られた現像剤は、現像剤通過路を通って、撹拌部材側に回収される。ここで、磁性部材は、その現像ローラ回転方向上流側が現像ローラの表面に近接し、その現像ローラ回転方向下流側が現像ローラの表面から離間して配置されるので、現像剤通過路の開口は比較的に大きくなる、または、現像剤通過路は磁性部材から離間させられる。従って、現像に供されない現像剤を現像ローラ上から確実に剥ぎ取り・回収することができ、更に、現像剤が凝集するおそれがないので、凝集した現像剤によって塞き止められて、現像剤が現像容器外に漏れ出ることがない。また、縦白筋の異常画像が発生することがなく、画像形成の高速化に対応した良好な画像が得られる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、磁性部材は現像ローラの表面に対向する磁石を有するので、現像領域において現像に供されずに、現像ローラ表面に残存する現像剤は、磁石の磁力によって、現像ローラ表面から確実に剥ぎ取られる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明によれば、磁性板は磁石の磁力線をその内部に引き込み、現像剤通過路は磁石の磁力の影響を抑えられるので、現像ローラから剥ぎ取られた現像剤は、現像剤通過路内を円滑に通過し、撹拌部材側に確実に回収される。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、現像剤通過路の撹拌部材側の開口部を通過する現像剤は、現像ローラ側の開口部を通過するときより、現像剤間で受ける圧力が小さいので、現像剤通過路内を円滑に通過し、撹拌部材側に確実に回収される。
【0019】
また、請求項5に記載の発明によれば、現像剤通過路は現像ローラ側から撹拌部材側に向かって磁石から離して配置されるので、現像剤通過路を通過する現像剤に対する磁石の磁力の影響を抑えられ、現像ローラから剥ぎ取られた現像剤は、現像剤通過路内を円滑に通過し、撹拌部材側に確実に回収される。
【0020】
また、請求項6に記載の発明によれば、現像に供されない現像剤を現像ローラ上から確実に剥ぎ取り・回収し、画像形成の高速化に対応した良好な画像を得られる現像装置を備える画像形成装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置における現像装置の概略構成を示す断面図
【図3】本発明の第1実施形態に係る現像装置の要部構成を示す断面図
【図4】本発明の第2実施形態に係る現像装置の要部構成の断面を示す側面図
【図5】本発明の第3実施形態に係る現像装置の要部構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。画像形成装置1は、その下部に配設された給紙部2と、この給紙部2の側方に配設された用紙搬送部3と、この用紙搬送部3の上方に配設された画像形成部4と、この画像形成部4よりも排出側に配設された定着部5と、画像形成部4及び定着部5の上方に配設された画像読取部6とを備えている。
【0024】
給紙部2は、用紙9を収容する複数の給紙カセット7を備えており、給紙ローラ8の回転動作により、複数の給紙カセット7のうち選択された給紙カセット7から用紙9を1枚ずつ確実に用紙搬送部3に送り出す。
【0025】
用紙搬送部3に送られた用紙9は、用紙供給経路10を経由して画像形成部4に向けて搬送される。この画像形成部4は、電子写真プロセスによって、用紙9にトナー像を形成するものであり、図1の矢印方向に回転可能に軸支された感光体11と、この感光体11の周囲にその回転方向に沿って、帯電部12、露光部13、現像装置14、転写部15、クリーニング部16、及び除電部17を備えている。
【0026】
帯電部12は、高電圧を印加される帯電ワイヤを備えており、この帯電ワイヤからのコロナ放電によって感光体11表面に所定電位を与えると、感光体11表面が一様に帯電させられる。そして、画像読取部6によって読み取られた原稿の画像データに基づく光が、露光部13により感光体11に照射されると、感光体11の表面電位が選択的に減衰され、感光体11表面に静電潜像が形成される。次いで、現像装置14が感光体11表面の静電潜像を現像し、感光体11表面にトナー像が形成される。このトナー像が転写部15によって感光体11と転写部15との間に供給された用紙9に転写される。
【0027】
トナー像が転写された用紙9は、画像形成部4の用紙搬送方向の下流側に配置された定着部5に向けて搬送される。定着部5では、加熱部材18及び加圧ローラ19によって、用紙9が加熱加圧され、用紙9上にトナー像が溶融定着される。次いで、トナー像が定着された用紙9は、排出ローラ対20によって排出トレイ21上に排出される。転写部15による転写後、感光体11表面に残留しているトナーは、クリーニング部16により除去され、また感光体11表面の残留電荷は、除電部17により除去される。そして、感光体11は帯電部12によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われることになる。
【0028】
次に、現像装置について図2に基づいて説明する。図2は本発明の実施形態に係る画像形成装置1に用いられる現像装置の概略構成を示す断面図である。
【0029】
現像装置14は、磁性一成分現像剤を収容する現像容器22と、この現像剤(以下、「トナー」と記すことがある)を撹拌する撹拌部材23、24と、現像ローラ27、及び規制部材28とを備えている。そしてトナータンク31は現像装置14にトナーを供給する。
【0030】
撹拌部材23、24は、現像容器22内に回転可能に配設され、トナーを撹拌、循環させて、現像ローラ27に供給する。
【0031】
現像ローラ27は、固定磁石体25と現像スリーブ26とを備える。現像スリーブ26は、円筒状の非磁性材からなり、撹拌部材24に隣接する位置で現像容器22に回転可能に支持される。固定磁石体25は、現像スリーブ26内に固設される永久磁石からなり、現像スリーブ26に向けて磁界を発生する。また、現像ローラ27は、現像容器22の開口から露出し、像担持体である感光体11に一定の間隔を隔てて対向している。この対向する領域は、現像スリーブ26上に担持されているトナーを感光体11に向けて供給するための現像領域Dとなっている。更に、現像スリーブ26には、トナーを感光体11に供給するために、直流に交流を重畳した現像バイアス29が印加される。
【0032】
規制部材28は、現像スリーブ26表面に担持されるトナーを所定の層厚に規制するものであり、ブレード状をなし現像スリーブ26の略上方で現像スリーブ26表面との間に所定間隔を設けて、現像容器22に取り付けられる。
【0033】
現像スリーブ26内の固定磁石体25の磁力により、撹拌部材24から供給されたトナーが現像スリーブ26表面に担持される。担持されたトナーは、規制部材28により所定の層厚に規制され、現像スリーブ26の回転(図2の矢印方向の回転)により、現像流域Dに向けて搬送される。現像スリーブ26に現像バイアス29が印加されることにより、現像領域Dにおいて現像スリーブ26と感光体11との間に電位差が発生し、現像スリーブ26上のトナーは感光体11に供給され、感光体11上の静電潜像はトナー像に現像される。
【0034】
次に、現像装置14の構成を図3に基づいて詳しく説明する。図3は現像装置の要部構成を示す断面図である。
【0035】
現像容器22は、その容器内壁部に、トナーを収容する現像剤収容部22aと、トナーを収容するとともにトナーを感光体11に供給する現像剤供給部22bと、現像容器22の下方で現像剤収容部22aと現像剤供給部22bとの間に介在する隣接部22cとを有し、樹脂で形成される。
【0036】
現像剤収容部22aには、2つの撹拌部材23、24が隔壁22hを挟んで配設されている。撹拌部材23、24は、現像剤収容部22aに回転可能に支持される支軸と、支軸の軸方向に螺旋状に形成される羽根とを備える。トナータンク31(図2参照)から現像装置14に供給されたトナーが撹拌部材23の回転によって撹拌され、撹拌されたトナーが隔壁22hに設けた穴を介して、撹拌部材24へ搬送される。更に、撹拌部材24の回転によってトナーが撹拌されながら、現像剤収容部22a内を循環する。そして、撹拌されたトナーは現像スリーブ26に供給される。
【0037】
現像剤供給部22bには、現像スリーブ26が回転可能に配設される。現像スリーブ26はアルミニウム等の非磁性材料で円筒状に形成される。現像スリーブ26内には、固定磁石体25が現像剤供給部22bに固定支持される。固定磁石体25は、S極とN極が周方向に交互に配列され、現像スリーブ26表面に向けて磁界を発生させる。
【0038】
固定磁石体25の撹拌部材24に対向する位置には、磁極N1が配置され、磁極N1の磁力によって撹拌部材24から供給されるトナーが現像スリーブ26表面に付着する。また、規制部材28に対向する位置には、磁極S1が配置されている。規制部材28と現像スリーブ26との間隔とともに、この磁極S1と磁性部材からなる規制部材28との磁界によって、現像スリーブ26表面へのトナー付着量が規制される。また、現像領域Dに対向する位置には磁極N2が配置され、更に、現像容器22の隣接部22cに対向する位置には磁極S2が配置されている。
【0039】
隣接部22cは、断面略三角形状をなして装置の長手方向(図3の紙面方向)に延び、現像剤通路22fと取り付け部22gを形成している。
【0040】
取り付け部22gは、磁石51と磁性板53とを有する磁性部材を取り付ける平坦面であり、現像ローラ27側から撹拌部材24側に向けて上方に傾斜して形成される。
【0041】
磁石51は長手方向に延びる板状の2極磁石である。磁性板53は、板状で長手方向に延びる鉄等の磁性材料からなり、磁石51の磁力線を引き込む。磁性板53が取り付け部22gに接着剤で固着され、更に、その上面に磁石51が接着剤で固着される。
【0042】
このように、磁石51が磁性板53を介して隣接部22cに取り付けられると、磁石51は現像スリーブ26に対向する。この磁石51のN極は、現像スリーブ26表面と所定の空間を有して近接し、磁石51のS極は、現像スリーブ26表面からN極よりも大きく離間して配設されることになる。そして、磁石51のN極は、現像スリーブ26を介して対向する固定磁石体25とともに、現像スリーブ26に付着した残存トナーを剥ぎ取る。また、磁性板53は、磁石51の固定磁石体25とは反対側の磁力線をその内部に引き込み、後述する現像剤通過路22fに向かう磁力線をシールドすることになる。
【0043】
現像剤通過路22fは、取り付け部22gの下方近傍で現像ローラ27側から撹拌部材24側に貫通し、且つ長手方向に延びるトンネル状の開口であり、剥ぎ取られたトナーを現像ローラ27側から撹拌部材24側に通過させるものである。現像剤通過路22fは、現像ローラ側開口部22f1から撹拌部材側開口部22f2まで開口している。
【0044】
ここで、磁性部材(磁石51、磁性板53)は現像ローラ27側から上方に傾斜して配置されるので、撹拌部材側開口部22f2の開口断面積は現像ローラ側開口部22f1の開口断面積より大きく形成することが可能である。撹拌部材側開口部22f2の開口断面積を大きくすることで、撹拌部材側開口部22f2を通過するトナーは、現像ローラ側開口部22f1を通過するときより、トナー間で受ける圧力が小さくなる。
【0045】
現像スリーブ26の周りには、図3の矢印方向(現像スリーブ26の回転方向)に沿って、順に、規制部材28と、感光体11と対向する現像領域Dと、現像スリーブ26と現像剤供給部22bとの間に形成されるトナー循環領域T、及び磁石51が配置されることになる。尚、トナー循環領域Tは、その隙間を小さく形成され、現像容器22内のトナーが外部に漏れるのを防いでいる。
【0046】
従って、現像領域Dで感光体11に供給されなかったトナーは、現像スリーブ26表面に付着し、現像スリーブ26の回転に伴って、トナー循環領域Tを通って磁石51に至る。磁石51のN極と、対向する固定磁石体25のS極とで生じる磁界によって、残存トナーは現像スリーブ26表面から剥ぎ取られ、剥ぎ取られたトナーは現像ローラ側開口部22f1から現像剤通過路22f内に入る。ここで、トナー循環領域T、及び現像スリーブ26のトナー剥ぎ取り部に比べると、撹拌部材側開口部22f2及び現像剤収容部22a内はトナーによる圧力が小さく、また、磁性板53によって、現像剤通過路22f内は磁石51の磁力に対して磁気シールドされているので、剥ぎ取られたトナーは、現像剤通過路22f内を撹拌部材側開口部22f2に向かって円滑に通り、撹拌部材24側に回収される。
【0047】
上記第1実施形態によれば、現像装置14は、磁性トナーを収容する現像容器22と、感光体11に対向した現像領域Dにトナーを供給し、周方向に複数の磁極を有する固定磁石体25を内蔵する現像ローラ27と、この現像ローラ27上のトナー量を規制する規制部材28と、トナーを撹拌して現像ローラ27に供給する撹拌部材24とを備える。現像容器22には、現像ローラ27及び撹拌部材24を回転可能に支持するとともに、トナーを現像ローラ27側から撹拌部材24側に通過させる現像剤通過路22fが形成されている。この現像剤通路22fは、現像領域Dの現像ローラ27回転方向下流側にある隣接部22cに設けられて、現像剤通過路22fの近傍には、磁石51(磁性部材)が設けられる。磁石51の現像ローラ27回転方向上流側が現像ローラ27の表面に近接し、磁石51の現像ローラ27回転方向下流側が現像ローラ27の表面から前記上流側よりも離間して配置される。
【0048】
この構成によると、撹拌部材24で撹拌されたトナーは、現像ローラ27内の固定磁石体25により、現像ローラ27表面に担持され、規制部材28によって、現像ローラ27上に所定量の薄層として付着する。そして、トナーが現像領域Dに供給されると、感光体11上の静電潜像が現像され、感光体11上にトナー像が形成される。現像領域Dにおいて現像に供されずに、現像ローラ27表面に残存するトナーは、磁石51によって、現像ローラ27表面から剥ぎ取られ、剥ぎ取られたトナーは、現像剤通過路22fを通って、撹拌部材24側に回収される。従って、現像に供されないトナーを現像ローラ27上から確実に剥ぎ取り・回収することができ、更に、トナーが凝集するおそれがないので、凝集したトナーによって塞き止められて、トナーが現像容器22外に漏れ出ることがない。また、縦白筋の異常画像が発生することがなく、画像形成の高速化に対応した良好な画像が得られる。
【0049】
また、上記第1実施形態によれば、磁石51と現像剤通過路22fとの間には磁性板53が配置される。これによって、磁性板53は磁石51の磁力線をその内部に引き込み、現像剤通過路22fは磁石51の磁力の影響を抑えられるので、現像に供されないトナーは、現像剤通過路22f内を円滑に通過し、撹拌部材24側に確実に回収される。
【0050】
また、上記第1実施形態によれば、現像剤通過路22fは、撹拌部材側開口部22f2を現像ローラ側開口部22f1より大きく形成されている。これによって、撹拌部材側開口部22f2を通過するトナーは、現像ローラ側開口部22f1を通過するときより、トナー間で受ける圧力が小さくなるので、現像剤通過路22f内を円滑に通過し、撹拌部材24側に確実に回収される。
【0051】
尚、上記第1実施形態では、磁性部材は、磁石と、この磁石と現像剤通路との間に配置される磁性板とを有する構成を示したが、本発明はこれに限らず、磁性部材は磁石のみで構成してもよい。
【0052】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る現像装置の要部構成の断面を示す側面図である。第1実施形態と異なる、現像剤通路の構成について説明し、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0053】
隣接部222cは、断面略三角形状(図3参照)をなして装置の長手方向(図4の左右方向)に延びる。現像剤通過路222fは隣接部222cの長手方向に複数個形成される。各現像剤通過路222fは、三方を囲まれ、上側を開放して形成される。隣接する現像剤通過路222f間に形成される立壁の上面部222dには、磁性板253が接着剤で固着される。磁性板253は、鉄等の磁性材料からなり長手方向に延びる。隣接部222cに取り付けられると、磁性板253は現像剤通過路222fの上側の開口を覆うことになる。
【0054】
更に、磁性板253の上面に磁石251が接着剤で固着される。磁石251は長手方向に延びる板状の2極磁石である。磁石251が磁性板253を介して隣接部222cに取り付けられると、第1実施形態と同様に、磁石251は現像スリーブ26(図略)に対向し、磁石251のN極は、現像スリーブ26表面と所定の空間を有して近接し、磁石251のS極は、現像スリーブ26表面からN極よりも大きく離間して配設されることになる。
【0055】
上記第2実施形態によると、磁性板253は磁石251の磁力線をその内部に引き込み、現像剤通過路222fは磁石251の磁力の影響を抑えられるので、現像スリーブ26から剥ぎ取られたトナーは、現像剤通過路222f内を円滑に通過し、撹拌部材24側に確実に回収される。更に、現像剤通過路222fを隣接部222cに形成するときに、現像剤通過路222fの上方が開放されているので、簡単な金型構成で現像容器を成型加工することができる。
【0056】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る現像装置の要部構成を示す断面図である。上記実施形態と異なる、現像剤通路の構成について主に説明する。
【0057】
現像容器322は、その容器内壁部に、トナーを収容する現像剤収容部322aと、トナーを収容するとともにトナーを感光体11に供給する現像剤供給部322bと、現像容器322の下方で現像剤収容部322aと現像剤供給部322bとの間に介在する隣接部322cとを有し、樹脂で形成される。
【0058】
現像剤収容部322aには、2つの撹拌部材23、24が配設されている。撹拌部材23、24は、現像剤収容部322aに回転可能に支持されて軸方向に螺旋状に形成される羽根を備え、撹拌されたトナーを現像ローラ27に供給する。
【0059】
現像剤供給部322bには、現像ローラ27が配設される。現像ローラ27は、固定磁石体25と現像スリーブ26とを備える。現像スリーブ26は、現像剤供給部322bに回転可に支持され、アルミニウム等の非磁性材料で円筒状に形成される。現像スリーブ26内には、固定磁石体25が固定支持される。固定磁石体25は、S極とN極が周方向に交互に配列され、現像スリーブ26表面に向けて磁界を発生させる。
【0060】
固定磁石体25の撹拌部材24に対向する位置には、磁極N1が配置され、磁極N1の磁力によって撹拌部材24から供給されるトナーが現像スリーブ26表面に付着する。また、規制部材28に対向する位置には、磁極S1が配置されている。規制部材28と現像スリーブ26との間隔とともに、この磁極S1と磁性部材からなる規制部材28との磁界によって、現像スリーブ26表面へのトナー付着量が規制される。また、現像領域Dに対向する位置には磁極N2が配置され、更に、現像容器322の隣接部322cに対向する位置には磁極S2が配置される。
【0061】
隣接部322cは、断面略三角形状をして装置の長手方向に延び、現像剤通過路322fと、取り付け部322g、及び磁気シールド部322iを有する。
【0062】
取り付け部322gは、磁性部材である磁石351を取り付ける平坦面であり、現像ローラ27側から撹拌部材24側に向けて上方に傾斜し、且つ長手方向に延びて形成される。
【0063】
磁石351は長手方向に延びる板状の2極磁石であり、取り付け部322gに接着剤で固着される。磁石351が隣接部322cに取り付けられると、磁石351は現像スリーブ26に対向し、磁石351のN極は、現像スリーブ26表面と所定の空間を有して近接し、磁石351のS極は、現像スリーブ26表面からN極よりも大きく離間して配設されることになる。そして、磁石351のN極は、現像スリーブ26を介して対向する固定磁石体25とともに、現像スリーブ26に付着した残存トナーを剥ぎ取る。
【0064】
現像剤通過路322fは、取り付け部322gの下方近傍で現像ローラ27側から撹拌部材24側に貫通し、且つ長手方向に延びるトンネル状の開口であり、剥ぎ取られたトナーを現像ローラ27側から撹拌部材24側に通過させるものである。現像剤通過路322fは、現像ローラ側開口部322f1から撹拌部材側開口部322f2まで水平方向に平行に延び、現像ローラ側開口部322f1と撹拌部材側開口部322f2との各開口の断面積は略同じである。
【0065】
磁気シールド部322iは、傾斜して形成される取り付け部322gと、水平方向に平行に延びる現像剤通過路322fとの間に形成され、現像剤通過路322fを磁石351から離間させ、特に撹拌部材側開口部322f2側を一層大きく離間させることになる。この磁気シールド部322iによって、現像剤通過路322f内における磁石351の磁力が現像ローラ26側から攪拌部材24側に向かって徐々に小さくなり、現像剤通過路322f内をトナーが滑らかに通過することになる。
【0066】
現像スリーブ26の周りには、図5の矢印方向(現像スリーブ26の回転方向)に沿って、順に、規制部材28、現像領域Dと、循環領域T、及び磁石351が配置されることになる。
【0067】
従って、現像領域Dで感光体11に供給されなかったトナーは、現像スリーブ26表面に付着し、現像スリーブ26の回転に伴って、トナー循環領域Tを通って磁石351に至る。磁石351のN極と、対向する固定磁石体25のS極とで生じる磁界によって、残存トナーは現像スリーブ26表面から剥ぎ取られ、剥ぎ取られたトナーは現像ローラ側開口部322f1から現像剤通路322f内に入る。ここで、トナー循環領域T、及び現像スリーブ26のトナー剥ぎ取り部に比べると、現像剤収容部322a内はトナーによる圧力が小さく、また、磁気シールド部322iによって、現像剤通過路322f内における磁石351の磁力が小さくなるので、剥ぎ取られたトナーは、現像剤通過路322f内を撹拌部材側開口部322f2に向かって円滑に通り、撹拌部材24側に回収される。
【0068】
上記第3実施形態によれば、磁石351は、隣接部322cに傾斜して取り付けられ、現像剤通過路322fは、現像ローラ側開口部322f1と撹拌部材側開口部322f2を略同じ大きさで、隣接部322cに水平方向に形成されている。この現像剤通過路322fと磁石351の配置によって、現像剤通路322fは現像ローラ27側から撹拌部材24側に向かって磁石351から離れた位置となり、現像剤通過路322fを通過するトナーは磁石351の磁力の影響を抑えられるので、現像スリーブ26から剥ぎ取られたトナーは、現像剤通過路322f内を円滑に通過し、撹拌部材24側に確実に回収される。
【0069】
尚、上記実施形態では、現像ローラの固定磁石体の磁極と、対向する磁性部材の磁石の磁極とを異極にする構成を示したが、本発明はこれに限らず、固定磁石体の磁極と、対向する磁石の磁極とを同極にして、固定磁石体と磁石とで反発磁界を形成し、この反発磁界によって、現像スリーブ表面に付着したトナーを剥ぎ取るようにしてもよい。また、磁性部材の磁石を固定磁石体の磁極Nと磁極Sとの間に配置し、磁石の磁力を比較的に強くしておき、磁石の磁力によって、トナーの磁気ブラシを形成し、この磁気ブラシで、現像スリーブ表面に付着したトナーを剥ぎ取るようにしてもよい。この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 画像形成装置
11 感光体(像担持体)
14 現像装置
22、322 現像容器
22a、322a 現像剤収容部(容器内壁部)
22b、322b 現像剤供給部(容器内壁部)
22c、222c、322c 隣接部(容器内壁部)
22f、222f、322f 現像剤通過路
22f1、322f1 現像ローラ側開口部
22f2、322f2 撹拌部材側開口部
22g、322g 取り付け部
23、24 撹拌部材
25 固定磁石体
26 現像スリーブ
27 現像ローラ
28 規制部材
51、251、351 磁石(磁性部材)
53、253 磁性板(磁性部材)
322i 磁気シールド部
D 現像領域
T トナー循環領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性現像剤を収容する現像容器と、像担持体に対向した現像領域に現像剤を供給し、周方向に複数の磁極を有する固定磁石体を内蔵する現像ローラと、前記現像ローラ上の現像剤の量を規制する規制部材と、現像剤を撹拌して前記現像ローラに供給する撹拌部材と、前記現像ローラ上の現像剤を剥ぎ取る磁性部材とを備える現像装置において、
前記現像容器には、前記磁性部材により剥ぎ取られた現像剤を現像ローラ側から撹拌部材側に通過させる現像剤通過路が現像ローラ回転方向に対し現像領域の下流側に形成されており、
前記磁性部材は、前記現像剤通過路の近傍に配置され、且つ、磁性部材の現像ローラ回転方向上流側を前記現像ローラの表面に近接させ、磁性部材の現像ローラ回転方向下流側を前記現像ローラの表面から前記上流側よりも離間させて配置されることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記磁性部材は、前記現像ローラの表面に対向する磁石を有することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記磁性部材は、前記磁石と前記現像剤通過路との間に配置される磁性板を有することを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤通過路は、撹拌部材側の開口を現像ローラ側の開口より大きく形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤通過路は、現像ローラ側の開口と撹拌部材側の開口を略同じ大きさで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の現像装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−95348(P2011−95348A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247195(P2009−247195)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】