説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】静電潜像担持体と現像剤担持体との間にフィルム部材を配置して前記静電潜像担持体及び現像剤担持体を回転させたときに、前記フィルム部材が引っ張られる力が所定範囲内となるようにして、現像剤担持体の静電潜像担持体とのニップ量を十分に確保することができ、ニップ量の低下による白抜けの発生を抑制することができるようにする。
【解決手段】静電潜像担持体と当接し、静電潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体を備える現像装置であって、静電潜像担持体と現像剤担持体との間に所定のフィルム部材を配置し、静電潜像担持体と現像剤担持体とを回転させたときにフィルム部材が引っ張られる力を引張力N〔N〕とし、現像剤担持体の中央部と両端部との外径差をA〔mm〕とし、振れをB〔mm〕とし、アスカーC硬度をF〔度〕とすると、A×B×exp(0.32×F−16)/N≦11.6となる関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の現像装置に用いられる現像剤担持体としては、当接する静電潜像担持体とのニップ量を均一にするために、軸方向の中央部と端部とに外径差をつけたクラウン形状のものが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−350351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の現像装置においては、現像剤担持体をクラウン形状にしても、現像剤担持体の弾性層の硬度が高く、端部の振れが大きい場合、端部においてニップ量が低下し、静電潜像担持体上の静電潜像が現像剤によって現像されず、画像上に白抜けが発生してしまう。
【0004】
本発明は、前記従来の現像装置の問題点を解決して、静電潜像担持体と現像剤担持体との間にフィルム部材を配置して前記静電潜像担持体及び現像剤担持体を回転させたときに、前記フィルム部材が引っ張られる力が所定範囲内となるようにして、現像剤担持体の静電潜像担持体とのニップ量を十分に確保することができ、ニップ量の低下による白抜けの発生を抑制することができる現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の現像装置においては、静電潜像担持体と当接し、該静電潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体を備える現像装置であって、前記静電潜像担持体と現像剤担持体との間に所定のフィルム部材を配置し、前記静電潜像担持体と現像剤担持体とを回転させたときに前記フィルム部材が引っ張られる力を引張力N〔N〕とし、前記現像剤担持体の中央部と両端部との外径差をA〔mm〕とし、振れをB〔mm〕とし、アスカーC硬度をF〔度〕とすると、A×B×exp(0.32×F−16)/N≦11.6となる関係を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、現像装置においては、静電潜像担持体と現像剤担持体との間にフィルム部材を配置して前記静電潜像担持体及び現像剤担持体を回転させたときに前記フィルム部材が引っ張られる力が所定範囲内となるようにして、現像剤担持体の静電潜像担持体とのニップ量を十分に確保することができ、ニップ量の低下による白抜けの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略図である。
【0009】
図において、1は本実施の形態における画像形成装置であり、例えば、プリンタ、ファクシミリ機、複写機、各種の機能を併せ持つ複合機等であるが、いかなる種類のものであってもよい。ここでは、前記画像形成装置1が、電子写真方式によって画像を形成する電子写真式プリンタであるものとして説明する。なお、前記画像形成装置1は、カラー画像を形成する装置であってもよいが、モノクロ画像を形成する装置であるものとする。
【0010】
この場合、前記画像形成装置1の内部には、画像形成ユニット2及び定着器27が媒体としての記録媒体Pの搬送路に沿って配設されている。そして、用紙カセット等に積層されてセットされた記録媒体Pは、給紙ローラ24によって1枚ずつ分離された状態で給紙され、矢印Aで示される方向に搬送されてレジストローラ25に送り込まれる。続いて、記録媒体Pは、レジストローラ25によって所定のタイミングで矢印Bで示される方向に送り出され、搬送路に沿って搬送される途中で、画像形成ユニット2によって形成されたトナー像が転写ローラ22により、転写される。
【0011】
そして、記録媒体Pが定着器27に送り込まれると、該定着器27によって定着プロセスが行われ、トナー像が記録媒体P上に定着される。続いて、トナー像が定着された記録媒体Pは、矢印Cで示される方向に搬送され、排出ローラ26によって矢印Dで示される方向に排出され、画像形成装置1の外部におけるスタッカに収容される。
【0012】
ここで、画像形成ユニット2は、現像装置3を有する。該現像装置3は、現像剤収容器としてのトナーカートリッジ18から補給された現像剤としてのトナー15を内部に収容する。そして、現像装置3は、静電潜像担持体としての感光体ドラム13、該感光体ドラム13に対向させて配設された回転可能な現像剤担持体としての現像ローラ11、該現像ローラ11にトナー15を供給する供給部材としてのトナー供給ローラ12、前記感光体ドラム13を帯電させる帯電部材としての帯電ローラ14、前記現像ローラ11上に供給されたトナー15を薄層形成するトナー層厚規制ブレードとしての現像ブレード16、現像装置3内のトナー15の流動性を維持するための撹拌(かくはん)部材17、並びに、前記感光体ドラム13上のかぶりトナー及び転写残トナーを回収するためのクリーニングブレード19を備える。また、20は前記クリーニングブレード19で掻(か)き落とされた廃トナーを収容するスペースであり、その廃トナーは図示されない廃トナー回収器にスパイラル等によって現像装置3から搬出される。なお、感光体ドラム13、現像ローラ11、トナー供給ローラ12及び帯電ローラ14は、それぞれ、矢印で示される方向に回転する。
【0013】
また、21は、発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)を備え、イメージデータに基づいて感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成するためのLEDヘッドとしての印刷ヘッドである。
【0014】
前記感光体ドラム13は、例えば、外径が30〔mm〕であり、厚さが0.75〔mm〕のアルミ素管上に電荷発生層及び電荷輸送層が形成される。なお、前記電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、セレン及びその合金、セレン化ヒ素化合物、硫化カドミニウム、酸化亜鉛、その他の無機光導電物質、フタロシアニン、アゾ色素、キナクリドン、多環キノン、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、インジゴ、チオインジゴ、アントアントロン、ピラントロン、シアニン等の各種有機顔料及び染料を使用することができる。中でも、無金属フタロシアニン、銅塩化インジウム、塩化ガリウム、錫(すず)、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又はその酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料が好ましい。
【0015】
また、電荷発生層は、これらの物質の微粒子を、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フエノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂で結着した形の分散層を使用してもよい。この場合の使用比率は、例えば、バインダー樹脂100重量部に対して30〜500重量部の範囲から使用される。また、前記電荷発生層の膜厚は、通常、0.1〜2〔μm〕が適している。
【0016】
前記電荷輸送層のバインダー樹脂としては、ポリカーボネートを使用した。なお、電荷輸送層の膜厚は、5〜30〔μm〕である。また、トナー15としては、平均粒径が5.7〔μm〕であり、円形度が0.950の粉砕トナーを用いた。なお、円形度の測定にはフロー式粒子像分析装置FPIA−3000(シスメックス株式会社製)を使用した。
【0017】
次に、前記画像形成装置1の制御装置について説明する。
【0018】
図2は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の制御ブロック図である。
【0019】
図において、30は、マイクロプロセッサ、ROM,RAM、入出力ポート、タイマ等を備える印刷制御部であり、図示されない上位装置からインターフェイス(I/F)制御部31を介して印刷データ及び制御コマンドを受信し、画像形成装置1の全体のシーケンスを制御して印刷動作を行わせる。
【0020】
また、32は、前記上位装置からインターフェイス制御部31を介して入力された印刷データを一時的に記録する受信メモリである。さらに、33は、該受信メモリ32に記録された印刷データを受け取るとともに、該印刷データを編集処理することによって形成された画像データ、すなわち、イメージデータを記録する画像データ編集メモリである。
【0021】
そして、34は、画像形成装置1の状態を表示するためのLED等の表示手段、及び、画像形成装置1に操作者からの指示を与えるためのスイッチ等の入力手段を備える操作部である。さらに、35は、センサ群であり、画像形成装置1の動作状態を監視するための各種のセンサ、例えば、用紙位置検出センサ、温湿度センサ、濃度センサ等を備える。
【0022】
また、36は、帯電ローラ用電源であり、印刷制御部30の指示によって帯電ローラ14に電圧を印加し、感光体ドラム13の表面を帯電させる。そして、37は、静電潜像にトナー15を付着させるために現像ローラ11に所定の電圧を印加する現像ローラ用電源である。さらに、38は、前記現像ローラ11にトナー15を供給するためにトナー供給ローラ12に所定の電圧を印加するトナー供給ローラ用電源である。そして、39は、前記感光体ドラム13に形成された現像剤像としてのトナー像を記録媒体Pに転写するために転写ローラ22に所定の電圧を印加する転写ローラ用電源である。なお、前記帯電ローラ用電源36、現像ローラ用電源37及びトナー供給ローラ用電源38は、印刷制御部30の指示によって電圧を変更することができるようになっている。
【0023】
そして、40は、前記画像データ編集メモリ33に記録されたイメージデータを印刷ヘッド21に送り、該印刷ヘッド21を駆動するヘッド駆動制御部である。また、41は、転写されたトナー像を記録媒体Pに定着するために、定着手段としての定着器27に電圧を印加する定着制御部である。また、前記定着器27は、記録媒体P上のトナー像を構成するトナー15を溶融させるための図示されないヒータ、及び、温度を検出する図示されない温度センサ等を備える。前記定着制御部41は、前記温度センサのセンサ出力を読み込み、該センサ出力に基づいてヒータを通電させ、定着器27が一定の温度になるように制御を行う。
【0024】
そして、42は、前記記録媒体Pを搬送するための用紙搬送モータ43の制御を行う搬送モータ制御部である。該搬送モータ制御部42は、印刷制御部30の指示によって所定のタイミングで記録媒体Pを搬送したり停止させたりする。なお、前記給紙ローラ24、レジストローラ25及び排出ローラ26は、用紙搬送モータ43によって回転させられる。そして、記録媒体Pは矢印A〜Dで示される方向に搬送される。
【0025】
また、44は、前記感光体ドラム13を動作させるための駆動モータ45を駆動する駆動制御部である。そして、該駆動制御部44によって駆動モータ45が駆動されると、図1に示されるように、感光体ドラム13が矢印方向に回転させられるとともに、帯電ローラ14、現像ローラ11及びトナー供給ローラ12が、それぞれ、矢印方向に回転させられる。
【0026】
また、30aは、前記感光体ドラム13の回転数をカウントするドラムカウンタであり、30bは、印刷ドットをカウントするドットカウンタである。
【0027】
次に、前記現像ローラ11について説明する。
【0028】
図3は本発明の第1の実施の形態における現像ローラの概略図、図4は本発明の第1の実施の形態における現像ローラの軸受部の斜視図、図5は本発明の第1の実施の形態における現像ローラの軸受部の断面図、図6は本発明の第1の実施の形態における現像ローラと感光体ドラムとの回転軸の軸間距離を示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における引張力測定用のフィルムを示す図である。
【0029】
図3に示されるように、現像ローラ11は、SUS(ステンレス鋼)から成る芯(しん)金11a上にポリエーテル系ウレタンから成る弾性層(ゴム部)11bが配設される。前記芯金11aの弾性層11b部の外径は10〔mm〕であり、芯金11aの端部の外径は4〔mm〕であり、弾性層11bの長さは230〔mm〕である。そして、弾性層11bの両側の端部から10〔mm〕の位置をa及びcとし、弾性層11bの中央部の位置をbとし、位置a及びcの外径を15.90〔mm〕とした。なお、端部の外径を基準とし、位置bの外径値を変化させ、クラウン形状を形成する。
【0030】
本実施の形態においては、図4に示されるように、現像ローラ11と感光体ドラム13との回転軸の軸間距離を固定して当接させる。前記現像ローラ11の軸受50は、図5に示されるように、外周の一部にギア50aが形成され、これにより、現像装置3の外部から、ギア50aを介して、軸受50を回転させることができる。
【0031】
該軸受50の回転軸50bと軸受部51の中心位置とがずれているので、軸受50を回転させることによって現像ローラ11と感光体ドラム13との回転軸の軸間距離Lを22.785〜22.986〔mm〕の範囲で調整することができる。なお、現像ローラ11の感光体ドラム13への押圧は14〔g/mm〕である。
【0032】
このような軸受50を用いることによって、現像ローラ11と感光体ドラム13とのニップ量を調整することができるが、ニップ量調整を行う際の指標として、図7に示されるようなフィルム部材としてのフィルム52を現像ローラ11と感光体ドラム13との間に挿入し、現像ローラ11及び感光体ドラム13が回転したときにフィルム52が引っ張られる力、すなわち、引張力を用いることとした。
【0033】
前記フィルム52の材質は、PP(ポリプロピレン)であり、幅は5〔mm〕であり、厚さは0.04〔mm〕であり、表面の十点平均粗さRzは0.5〔μm〕以下である。なお、53は前記フィルム52をテンションゲージに引っ掛けるための穴である。また、十点平均粗さRzは、「JIS B0601−1994」に準拠して測定した。
【0034】
次に、引張力の測定方法について説明する。
【0035】
図8は本発明の第1の実施の形態における引張力の測定方法を説明する図である。
【0036】
この場合、引張力の測定は、図4に示されるように、現像装置3が組み上がった状態(現像ローラ11の表面にトナー15がまぶされた状態)で行い、フィルム52の挿入位置は、図3に示される位置a及びc、すなわち、現像ローラ11の両端から10〔mm〕の位置である。そして、前記フィルム52は、図8に示されるように、現像ローラ11と感光体ドラム13との回転軸を結ぶ線に対して垂直に延在するように配置され、引張力を測定するテンションゲージ54もフィルム52の延長線上に、同じ角度で配置される。なお、テンションゲージ54としては、デジタルゲージモデルRX(アイコーエンジニアリング株式会社製)を使用した。
【0037】
前記感光体ドラム13及び現像ローラ11は、図8において、矢印で示される方向に回転する。そして、感光体ドラム13の周速は143〔mm/sec〕であり、現像ローラ11の周速は178〔mm/sec〕である。前記フィルム52が受ける引張力をテンションゲージ54で10秒間測定し、0.01秒毎の引張力の測定値を図示されないパーソナルコンピュータに取り込めるようにした。
【0038】
次に、前記構成の現像装置3において、白抜けの発生を抑制する条件を求める方法について説明する。
【0039】
図9は本発明の第1の実施の形態における現像ローラの表面の動摩擦係数μを測定する方法を示す図、図10は本発明の第1の実施の形態におけるクラウン量Aを変化させたときの白抜け発生の有無を示す表、図11は本発明の第1の実施の形態における振れBを変化させたときの白抜け発生の有無を示す表、図12は本発明の第1の実施の形態におけるアスカーC硬度Fを変化させたときの白抜け発生の有無を示す表、図13は本発明の第1の実施の形態における引張力Nを変化させたときの白抜け発生の有無を示す表、図14は本発明の第1の実施の形態における白抜けの発生の有無と式(2)の計算値との関係を示す表である。
【0040】
現像装置3において、硬度、クラウン量及び振れを変化させた現像ローラ11を使用し、低温低湿環境下、すなわち、温度10〔℃〕、相対湿度20〔%〕の環境下でべタ画像印刷を行い、画像の両端部で白抜けが発生するか否かを確認した。ここで、白抜けとは、現像ローラ11と感光体ドラム13とのニップ量不足によって、現像ローラ11上のトナー15が感光体ドラム13に現像されないことによって発生する現象である。なお、低温低湿環境下で印刷試験を行うのは、現像ローラ11の外径収縮によるニップ圧の低下を考慮したからである。
【0041】
前記現像ローラ11の弾性層11bは、ポリエーテル系ウレタンによって形成され、弾性層11bの表面にはトナー15に帯電性を付与するためのコーティング(例えば、イソシアネート処理、ポリエーテル系ウレタンコート等)が施される。前記弾性層11bの硬度は、架橋剤の配合比率を変えることによって変化させ、クラウン量及び振れは研磨条件を変えて変化させた。
【0042】
また、前記弾性層11bのアスカーC硬度は55〜83〔度〕であり、クラウン量は0.01〜0.1〔mm〕であり、現像ローラ11の表面の周方向の十点平均粗さRzは3〜5〔μm〕であり、粗さ密度Smは50〜120〔μm〕である。なお、粗さ密度Smは、「JIS B0601−1994」に準拠して測定した。
【0043】
ここで、クラウン量を0.01〜0.1〔mm〕としたのは、現像ローラ11と感光体ドラム13との軸方向における回転動作時の接触圧を均一にするためである。例えば、クラウン量が0.01〔mm〕未満になると、接触圧が均一とならず、軸方向の端部において接触圧が高くなり過ぎてしまい、トナー15の受けるダメージが大きくなってしまう。その結果、例えば、2by2(ドットを形成する際に、縦4ドット分、横4ドット分の16マスのうち、縦2ドット分、横2ドット分の4マス分のドットを形成する)などの微小なドットの再現性が低下してしまう。また、例えば、クラウン量が0.1〔mm〕を超過すると、接触圧が均一とならず、軸方向の端部において接触圧が低くなり過ぎてしまい、白抜けが発生してしまう。
【0044】
前記現像ローラ11の表面の動摩擦係数μは、オイラーのベルト式から算出し、1.3〜1.8であった。なお、動摩擦係数μは、図9に示されるようにして計測した。
【0045】
図9において、60は、テンションゲージであり、DIGITAL FORCE GAUGE ZP−50IN(IMADA製)を使用した。また、63は、矢印方向に動作するステージであり、小型直動シリーズSPL4.2(オリエンタルモーター株式会社製)を使用した。なお、ステージ63にはテンションゲージ60が固定される。そして、支持された現像ローラ11と所定の角度θ(本実施の形態においては、90〔度〕)で接触したベルト61(幅50〔mm〕、長さ200〔mm〕)は、一方の端部にテンションゲージ60が接続され、他方の端部には重り62が接続される。
【0046】
この状態において、ステージ63を1.2〔mm/sec〕の速度で5秒間矢印方向にスライドさせ、その際にテンションゲージ60にかかる荷重Kを読み取り、動摩擦係数μを測定した。なお、前記ベルト61には、表面状態の個体差が少ないものとしてエクセレントホワイト紙(型名:PPR−CA4NA、80〔g/m2 〕、株式会社沖データ製)を使用した。また、重り62の重量Wは10〔g〕とした。そして、動摩擦係数μは、オイラーのベルト式、すなわち、次の式(1)から算出した。
μ=1/θ×ln(K/W) ・・・式(1)
前記現像ローラ11は、感光体ドラム13に対して、0.1〔mm〕程度喰(く)い込んでいる。また、周速差を設け、現像ローラ11は、感光体ドラム13より早く回転している。そのため、引張力に対する現像ローラ11の表面の動摩擦係数μの影響度は小さく、現像ローラ11のニップ量及び硬度の影響が引張力に対して支配的となる。したがって、本実施の形態において使用した現像ローラ11の動摩擦係数μが1.3〜1.8というばらつきは無視することができるものと考えられる。
【0047】
そして、アスカーC硬度計で測定した現像ローラ11の硬度をF〔度〕とし、クラウン量(図3における位置bと位置a及びcとの外径差)をA〔mm〕とし、位置a及びcにおける振れをB〔mm〕とし、位置a及びcにおける引張力をN〔N〕としたときのべタ画像印刷時の白抜けの発生の有無について図10〜12の表に示す。なお、表において、白抜けが発生しなかったものは○で、白抜けが発生したものは×で表す。
【0048】
ただし、現像ローラ11のクラウン量A及び振れBの測定は、温度が25〔℃〕であり、相対湿度が50〔%〕の環境下において、ロール形状測定システムRM−202(アポロ精工株式会社製)を使用して行った。また、1箇所の測定時間は3秒とし、測定間隔は0.02秒とし、測定時の現像ローラ11の回転数を35〔rpm〕とした。なお、測定位置は図3に示される位置a〜cである。また、引張力Nの測定は、温度が25〔℃〕であり、相対湿度が50〔%〕の環境下において行った。図10〜14に示される表中の引張力Nの値は、テンションゲージ54により、0.01秒間隔で10秒間測定した1000個の測定値の平均値である。
【0049】
図10の表は、クラウン量Aを変化させたときの白抜け発生の有無を示している。そして、図11の表は、振れBを変化させたときの白抜け発生の有無を示している。また、図12の表は、アスカーC硬度Fを変化させたときの白抜け発生の有無を示している。さらに、図13の表は、引張力Nを変化させたときの白抜け発生の有無を示している。
【0050】
図10〜13に示されるような結果から、各パラメータと白抜けの発生との関係には、クラウン量Aが大きい方が白抜けが発生しやすく、振れBが大きい方が白抜けが発生しやすく、アスカーC硬度Fが高い方が白抜けが発生しやすく、引張力Nが小さい方が白抜けが発生しやすい傾向があることが分かる。
【0051】
なお、振れBは現像ローラ11の外周の真円に対するずれに相当するものであるので、振れBが大きいと感光体ドラム13とのニップのばらつき、すなわち、現像ローラ11の周方向のニップのばらつきが大きくなる。しかし、振れBが大きくても、アスカーC硬度Fが低ければ、感光体ドラム13に対する接触回転時の追従性が確保されるので、ニップのばらつきは抑えられる。現像ローラ11の周方向のニップのばらつきが大きいと、周期的にニップ量が低下し、そのときに白抜けが発生しやすくなる。また、引張力Nの大きさは感光体ドラム13に対する現像ローラ11の押付力に相当するので、引張力Nが大きいほどニップのばらつきは抑えられる。
【0052】
前述された傾向、及び、各パラメータの白抜けに対する寄与度を考慮し、白抜けが発生するレベルを数値として表すために次の式(2)を導き出した。
A×B×exp(0.32×F−16)/N ・・・式(2)
図14の表には、各種の数値を変化させた現像ローラ11を使用した現像装置3における白抜けの発生の有無を確認した結果と、式(2)の計算値との関係が示されている。図14に示される結果から、式(2)の値11〜12が白抜け発生の閾(しきい)値となっていることが分かる。したがって、式(2)の値が11.6以下になるような形態の現像ローラ11及び引張力Nであれば白抜けは発生しない。
【0053】
ただし、アスカーC硬度Fが55〔度〕の現像ローラ11の場合、白抜けは発生しなかったが、常温環境下(温度23〜25〔℃〕、相対湿度40〜50〔%〕)での2日間の放置によって感光体ドラム13とのニップ部に凹みが発生し、画像上に横すじが発生した。現像ローラ11の硬度が低い方が、同じニップ量において感光体ドラム13に対する圧力は小さくなり、引張力Nも小さくなる。すなわち、現像ローラ11のアスカーC硬度Fが低い方が、同じ引張力Nでも感光体ドラム13に対するニップ量が大きくなり、低硬度であるが故に弾性層11bの架橋密度が低く、圧縮永久歪(ひず)みを起こしやすくなる。このように、アスカーC硬度Fが55〔度〕の現像ローラ11は、引張力Nによるニップ量調整が難しく、白抜けが発生しなくてもニップ量が過大になり、凹みが発生しやすい。
【0054】
一方、アスカーC硬度Fが65〔度〕の現像ローラ11の場合、引張力Nを2.0〔N〕としても白抜けも発生せず、ニップ部の凹みも発生しなかった。
【0055】
現像装置3の放置によって発生する現像ローラ11のニップ部の凹みについては、クラウン量A及び振れBの影響は小さく、主として、アスカーC硬度Fとニップ量、すなわち、引張力Nとが関係する。現像ローラ11の硬度が低く、ニップ量が大きい方が凹みやすいので、前記式(2)の値が小さい方が白抜けは発生しなくなるが、凹みが発生しやすくなる。
【0056】
図14に示される例において、アスカーC硬度Fが65〔度〕の現像ローラ11の場合、クラウン量A及び振れBがともに本実施の形態における最小値であり、引張力Nを最大の2.0〔N〕としても、白抜けは未発生であり、凹みも未発生である。このことから、アスカーC硬度Fが65〜83〔度〕の現像ローラ11の場合、前記式(2)の値が0.0030以上、かつ、11.6以下であれば、白抜けも凹みが発生しないことが分かる。
【0057】
なお、アスカーC硬度Fが83〔度〕を超過すると、現像ローラ11の表面が硬くなり過ぎるので、感光体ドラム13に当接した場合に、該感光体ドラム13の表面形状に対する追従性が低下する。そのため、白抜けが発生してしまう。また、トナー15の受けるダメージが大きくなり、ドットの再現性が低下してしまう。
【0058】
以上のことから、前記式(2)の値が小さいほど良く、0であることが最も好ましく、0に近いほど好ましい、と言える。しかし、式(2)の値を0にすることは、製造上困難であるので、本実施の形態においては、式(2)の値が0.0025未満となるような現像ローラ11及び引張力Nによる評価を行わなかった。このように、前記式(2)の値は0であることが最も好ましく、0に近いほど好ましいにも係わらず、式(2)の値が0.0025未満となる場合の評価を行うことができなかったので、式(2)の値の下限値は0.0025である。
【0059】
ただし、アスカーC硬度Fは65〜83〔度〕であることが好ましく、この場合には前記式(2)の値の下限値は0.0030となる。
【0060】
近年の印刷速度の高速化に伴い、現像ローラ11の回転速度が高速化し感光体ドラム13に対するニップの安定的な確保が困難になっているので、本実施の形態は、高速機において、特に有効な手段である。
【0061】
このように、本実施の形態においては、現像ローラ11のクラウン量をA〔mm〕とし、端部の振れをB〔mm〕とし、アスカーC硬度をF〔度〕とし、現像ローラ11と感光体ドラム13との間の引張力をN〔N〕としたとき、前記式(2)の値が11.6以下となるようにする。すなわち、次の式(3)を満たすようにする。
A×B×exp(0.32×F−16)/N≦11.6 ・・・式(3)
これにより、低温低湿環境下において現像ローラ11の外径が収縮しても、感光体ドラム13とのニップ量を十分に確保することができ、ニップ量不足による白抜け現象の発生を抑えることができる。
【0062】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0063】
図15は本発明の第2の実施の形態における現像ローラと感光体ドラムとを当接させる構造を示す図である。
【0064】
前記第1の実施の形態において、現像ローラ11と感光体ドラム13とは、それぞれの回転軸間の距離が固定された状態で、互いに当接するようになっている。これに対し、本実施の形態においては、図15に示されるように、感光体ドラム13に対して現像ローラ11を付勢して当接させるようになっている。具体的には、現像ローラ11の芯金11aの両端部をばね70によって、感光体ドラム13に対して付勢する。なお、付勢する向きは、現像ローラ11と感光体ドラム13との回転軸を結ぶ線と同じ向きである。
【0065】
また、前記ばね70は、前記第1の実施の形態と同程度の引張力Nを再現させるために、1.0〜2.0〔kg〕のものを適宜使用した。
【0066】
次に、本実施の形態において、各種の数値を変化させた現像ローラ11を使用した現像装置3における白抜けの発生の有無を確認した結果と、前記式(2)の計算値との関係について説明する。
【0067】
図16は本発明の第2の実施の形態における白抜けの発生の有無と式(2)の計算値との関係を示す表である。
【0068】
本実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様の方法で、白抜けの発生の有無を確認した。図16に示される結果から、前記第1の実施の形態の結果と同様に、前記式(2)の値11〜12が白抜け発生の閾値となっていることが分かる。したがって、現像ローラ11を感光体ドラム13に付勢させた場合でも、式(2)の値が11.6以下になるようにすれば、白抜けが発生しないことが分かる。また、アスカーC硬度Fが55〔度〕の現像ローラ11の場合、前記第1の実施の形態と同様に、感光体ドラム13とのニップ部に凹みが発生した。
【0069】
このように、本実施の形態においては、現像ローラ11のクラウン量をA〔mm〕とし、端部の振れをB〔mm〕とし、アスカーC硬度をF〔度〕とし、現像ローラ11と感光体ドラム13との間の引張力をN〔N〕としたとき、前記式(2)の値が11.6以下となるようにする。すなわち、次の式(4)を満たすようにする。
A×B×exp(0.32×F−16)/N≦11.6 ・・・式(4)
これにより、現像ローラ11を感光体ドラム13に付勢する場合であっても、低温低湿環境下において現像ローラ11の外径が収縮しても、感光体ドラム13とのニップ量を十分に確保することができ、ニップ量不足による白抜け現象の発生を抑えることができる。
【0070】
なお、前記第1及び第2の実施の形態においては、一つの現像装置を有するLED方式の画像形成装置について説明したが、複数の現像装置を有する画像形成装置にも適用することができる。
【0071】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の制御ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における現像ローラの概略図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における現像ローラの軸受部の斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における現像ローラの軸受部の断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における現像ローラと感光体ドラムとの回転軸の軸間距離を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における引張力測定用のフィルムを示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における引張力の測定方法を説明する図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における現像ローラの表面の動摩擦係数μを測定する方法を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態におけるクラウン量Aを変化させたときの白抜け発生の有無を示す表である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における振れBを変化させたときの白抜け発生の有無を示す表である。
【図12】本発明の第1の実施の形態におけるアスカーC硬度Fを変化させたときの白抜け発生の有無を示す表である。
【図13】本発明の第1の実施の形態における引張力Nを変化させたときの白抜け発生の有無を示す表である。
【図14】本発明の第1の実施の形態における白抜けの発生の有無と式(2)の計算値との関係を示す表である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における現像ローラと感光体ドラムとを当接させる構造を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における白抜けの発生の有無と式(2)の計算値との関係を示す表である。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
3 現像装置
11 現像ローラ
13 感光体ドラム
50b 回転軸
52 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)静電潜像担持体と当接し、該静電潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体を備える現像装置であって、
(b)前記静電潜像担持体と現像剤担持体との間に所定のフィルム部材を配置し、前記静電潜像担持体と現像剤担持体とを回転させたときに前記フィルム部材が引っ張られる力を引張力N〔N〕とし、前記現像剤担持体の中央部と両端部との外径差をA〔mm〕とし、振れをB〔mm〕とし、アスカーC硬度をF〔度〕とすると、
A×B×exp(0.32×F−16)/N≦11.6
となる関係を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記静電潜像担持体の回転軸と現像剤担持体の回転軸との間の距離を固定して、前記静電潜像担持体と現像剤担持体とを当接させる請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記静電潜像担持体に対して現像剤担持体を付勢する付勢部材を有し、該付勢部材によって前記静電潜像担持体に現像剤担持体を当接させる請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤担持体の中央部と両端部との外径差Aが0.01〜0.1〔mm〕である請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体のアスカーC硬度Fが65〜83〔度〕である請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
0.0025≦A×B×exp(0.32×F−16)/N
となる関係を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
0.003≦A×B×exp(0.32×F−16)/N
となる関係を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記請求項l〜7のいずれか1項に記載の現像装置を有する画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−292940(P2008−292940A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140706(P2007−140706)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】