現像装置及び画像形成装置
【課題】磁性一成分トナーを用いた場合でも、現像剤担持体上に安定して均一にトナーを長期間コートし、かつ高画質を達成できる現像装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1のトナー担持体3aに担持されたトナーの層厚を規制する規制部材3jを有し、第2のトナー担持体3bに担持されたトナーの層厚規制を前記第1のトナー担持体により行う現像装置において、所定の吸引力W(W)で所定時間T(sec)に亘り前記トナー担持体の所定の吸引面積S(cm2)からトナーを吸引した後に前記トナー担持体に残留したトナー量をMy(mg)、吸引後にトナー量が安定するまでの平衡時間をTs(sec)とし、前記トナー担持体に対するトナーの付着力Afを(My×W/S)×(Ts/T)としたとき、前記第1のトナー担持体に対するトナーの付着力Afは、前記第2のトナー担持体に対するトナーの付着力Afよりも小さい。
【解決手段】第1のトナー担持体3aに担持されたトナーの層厚を規制する規制部材3jを有し、第2のトナー担持体3bに担持されたトナーの層厚規制を前記第1のトナー担持体により行う現像装置において、所定の吸引力W(W)で所定時間T(sec)に亘り前記トナー担持体の所定の吸引面積S(cm2)からトナーを吸引した後に前記トナー担持体に残留したトナー量をMy(mg)、吸引後にトナー量が安定するまでの平衡時間をTs(sec)とし、前記トナー担持体に対するトナーの付着力Afを(My×W/S)×(Ts/T)としたとき、前記第1のトナー担持体に対するトナーの付着力Afは、前記第2のトナー担持体に対するトナーの付着力Afよりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体等の像担持体上に形成された静電潜像を現像して現像剤像を形成する現像装置、及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタ等の画像形成装置は、ユーザからのニーズでもある高速対応にともない、現像装置の現像剤担持体も高速回転する必要がある。このため、現像剤担持体上の現像剤を感光体上の静電潜像を可視化する時間が短くなり、現像不良が発生する課題が生じている。
【0003】
また、高速化とともに、高耐久性、高信頼性の要望も増えている。しかしながら、従来の電子写真技術は、ユーザの使用条件、たとえば、使用環境や転写紙の種類、1日の使用枚数、原稿の画像比率などによって、画像品質へ影響を及ぼすことは公知である。更に、近年、業務の効率化が進み、画像形成装置の稼働時間が問題視され、特に、高速(100ppm以上)の画像形成装置では、10時間以上連続しても停止しない高生産性・高耐久性も求められている。
【0004】
更に、ユーザやサービスの作業効率を高めるため、メンテナンス性の向上が市場で求められている。
【0005】
従来技術では、高速化、高画質化を実現するために、複数の現像剤担持体を用いた技術が提案されている。
【0006】
特許文献1(特開2004−163906)では、複数の現像剤担持体を持ち、かつ上流の現像剤担持体のSm(表面の山と山の間隔)が下流の現像剤担持体のSmよりも大きくなるように、粗面化処理する。これにより、高画質化、高速化を達成し、かつ付着量を抑え、耐久による濃度安定を実現している。
【0007】
特許文献2(特開2005−99394)では、複数の現像剤担持体を持つ現像システムにおいて、現像剤担持体表面にフェノール樹脂によるコートを行い、下流の現像剤担持体側のみに4級アンモニム塩を入れる。さらに高速化、高画質化、耐久性を向上させるために、耐久寿命共通化を球状炭素粒子により行う。
【0008】
【特許文献1】特開2004−163906号公報
【特許文献2】特開2005−99394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例には以下の課題がある。
【0010】
a)Sm規定だけでは、上流下流の現像剤担持体の劣化(トナー付着、帯電量)を長寿命保つことができない。大きいSm、つまり山と山の隙間に小径物質(外添剤、微粉トナー)がはまりやすく、特に、複数の現像剤担持体を用いる現像装置では、上流現像剤担持体で現像剤担持体付着が発生する課題がある。
【0011】
b)樹脂コーティングでは、耐久で摩耗し、トナー量が低下、帯電能が低下し画質が低下する課題がある。
【0012】
c)下流に樹脂コートを用いると、上流にくらべ帯電能が低下し、画質が悪化する課題がある。
【0013】
そこで本発明は、磁性一成分トナー(一成分現像剤)を用いた場合でも、現像剤担持体上に安定して均一に現像剤(トナー)を長期間コートし、かつ高画質を達成できる現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る現像装置及び画像形成装置の代表的な構成は、像担持体に形成された静電像を現像するべく互いに近接して設けられ磁性トナーを磁気的に担持して搬送する第1及び第2のトナー担持体と、前記第1のトナー担持体に担持されたトナーの層厚を規制する規制部材と、を有し、前記第2のトナー担持体に担持されたトナーの層厚規制を前記第1のトナー担持体により行う現像装置において、所定の吸引力W(W)で所定時間T(sec)に亘り前記トナー担持体の所定の吸引面積S(cm2)からトナーを吸引した後に前記トナー担持体に残留したトナー量をMy(mg)、吸引後にトナー量が安定するまでの平衡時間をTs(sec)とし、前記トナー担持体に対するトナーの付着力Afを(My×W/S)×(Ts/T)としたとき、前記第1のトナー担持体に対するトナーの付着力Afは、前記第2のトナー担持体に対するトナーの付着力Afよりも小さいことを特徴とする
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁性一成分トナー(一成分現像剤)を用いた場合でも、現像剤担持体上に安定して均一に現像剤(トナー)を長期間コートし、かつ高画質を達成できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第一実施形態]
本発明に係る現像装置及び画像形成装置の第一実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態に係る現像装置3を備えた画像形成装置の構成図である。
【0017】
(画像形成装置)
図1に示すように、画像形成装置は、像担持体としての感光ドラム(正帯電のa−Si感光体)1の周囲に、一次帯電器2、現像装置3、転写前帯電器(ポスト帯電器)4、転写帯電器(転写手段)5、分離帯電器6、クリーニング装置7、定着装置8を有している。また、感光ドラム1と転写帯電器5との間には転写部が形成される。定着装置8は、転写部より転写材搬送方向の下流側に配置されている。
【0018】
感光ドラム1は、直径84mmであり、時計回り(矢印方向)に所定の周速(450mm/sec)で回転している。感光ドラム1は、一次帯電器2により例えば+500Vに帯電される。帯電された感光ドラム1は、図示しない露光装置により1200dpiで画像露光Lが与えられ、入力される画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。
【0019】
現像装置3の2つの現像剤担持体(第1のトナー担持体、第2のトナー担持体)3a、3bは、感光ドラム1の帯電極性と同極性の現像バイアス(DC成分にAC成分を重畳したバイアス)が印加されている。現像剤担持体3a、3bは、感光ドラム1の帯電極性と逆極性に帯電された現像剤(磁性トナー(磁性一成分トナー))tを感光ドラム1表面(静電潜像の現像部位)に付着させて、ジャンピング現像法により現像してトナー像として可視像化する。
【0020】
トナー像が形成された感光ドラム1表面を転写前帯電器(ポスト帯電器)4で転写前帯電する。感光ドラム1表面のトナー像が感光ドラム1と転写帯電器5間の転写部に到達する。このタイミングに合わせて給紙カセット(不図示)内の用紙などの転写材Pが転写部に搬送される。そして、トナーと逆極性の転写電圧が印加された転写帯電器5によりトナー像が転写材Pに転写される。そして、トナー像が転写された転写材Pは、分離帯電器6で感光ドラム1から分離されて定着装置8に搬送される。定着装置8の定着ローラ8aと加圧ローラ8b間の定着ニップ部にて、トナー像を転写材Pに加熱、加圧して熱定着した後に、転写材Pを外部に排出する。
【0021】
なお、トナー像転写後の感光ドラム1表面に残留している転写残トナー(残留現像剤)は、クリーニング装置(クリーニング手段)7によって除去され回収される。
【0022】
(現像装置3)
次に、現像装置3について詳細に説明する。現像剤は現像剤がコートされている現像剤担持体3aに高圧を印加することで、現像剤担持体3a表面の現像剤が感光体1へ飛翔し、静電潜像を可視化することができる。正規現像の場合、帯電電位と同じ極性の現像剤で可視化することができ、また逆に反転現像の場合、帯電電位とは逆の極性の現像剤で可視化できる。
【0023】
現像装置3は、現像容器3cの開口部に感光ドラム1と対向するよう近接して、矢印方向(反時計方向)に回転自在な現像剤担持体としての現像剤担持体3a、3bが、感光ドラム1の回転方向に沿ってそれぞれ配置されている。現像剤担持体3aは、感光ドラム1対向する現像部より感光ドラム1の回転方向上流に位置し、感光ドラム1と近接対向している。現像剤担持体3bは、現像剤担持体3aより感光ドラム1の回転方向下流側に位置し、感光ドラム1、現像剤担持体3aと近接対向している。
【0024】
現像剤担持体3a内部には上流マグネットロール3hが設けられている。現像剤担持体3b内部には下流マグネットロール3iが設けられている。現像容器3c内部において、現像剤は第二攪拌部(トナー攪拌部材)3eから第一攪拌部(トナー攪拌部材)3dへ移動し、現像剤担持体3a、3bに供給される。
【0025】
現像剤担持体3aは、層厚規制ブレード(規制部材)3jによってトナーtのコート厚が規制される。現像剤担持体3bは、近接して配置されている現像剤担持体3aによってトナーtのコート厚が規制される。
【0026】
現像装置3で可視化した現像剤像に対して、転写前帯電器4(ポスト帯電)を用いて、電荷を付与している。転写前帯電器4で転写するときに発生する現像剤と感光体との静電吸着力を弱める働きがある。このため、次の転写工程で転写材Pを感光ドラム1から分離しやすくなる。
【0027】
現像容器3c内には、2つのトナー攪拌部材3d、3eと、現像容器3c内のトナー量を検知する図示しないトナー量検知センサを有している。トナー攪拌部材3d、3eは、現像容器3c内のトナーtを攪拌して現像剤担持体3a、3b側に搬送する。トナー(磁性一成分トナー)tは、ネガトナーであり、重量平均粒径は5.0〜10.0μmであり、樹脂は少なくともスチレンアクリル樹脂またはポリエステル樹脂のどちらか一方から成り磁性体を50〜100重量部入れている。また、外添剤として、0.2〜2.0%(重量%)のSiO2を含有している。
【0028】
現像剤担持体3a、3bの表面3f、3gは、非磁性部材である直径20mmのSUS305の上にFGB#600でブラスト処理をして表面粗さRzを3μmとした。この表面粗さRzの測定には、接触式表面粗さ計(サーフコーダーSE−3300(株)小坂研究所)を用いた。また、測定条件は、カットオフ値が0.8mm、測定長さが2.5mm、送りスピードが0.1mm/sec、倍率5000倍である。下流現像剤担持体は、前記上流現像剤担持体よりも、メッキ厚が厚い。
【0029】
現像剤担持体3a、3bは、感光ドラム1の回転速度(プロセススピード)に対して50〜150%の速度で回転し、現像位置での現像剤担持体3a、3bと感光ドラム1間の隙間(ギャップ)は100〜400μmである。上流マグネットロール3hの磁力によってトナーが現像剤担持体3a上に担持される。上流マグネットロール3hの磁力によってトナーが下流現像剤担持体3b上に担持される。上流現像剤担持体3aと下流現像剤担持体3bの回転中心を結ぶ直線上における現像剤担持体3aと現像剤担持体3b間の隙間(ギャップ)は100〜400μmである。
【0030】
現像剤担持体3a、3bには、図示しない現像バイアス電源(バイアス印加手段)から+300Vの直流バイアスと交流バイアスを重畳した現像バイアスが印加されることにより、トナー(磁性一成分トナー)を感光ドラム1側に飛翔させて静電潜像を非接触現像する。なお、交流バイアスとは、図2に示すようなピーク間電圧(Vpp)が900〜2000V、周波数が1.0〜4.0kHzの矩形波である。また、本実施形態では矩形波を用いて良いるが、トナーの種類、感光ドラム、潜像方式等に応じて波形の形状を最適化する必要がある。この時の現像コントラストは飛翔方向に200Vであり、かぶりとりコントラストは150Vとした。
【0031】
このように、上流下流現像剤担持体3a、3bに直流バイアスに重畳して交流バイアスが印加される。これにより、上流現像剤担持体3aによる現像に寄与しなかった余分なトナーを下流現像剤担持体3bによって回収し、再び現像容器3c内に戻すことができるため、トナーの消費量を減らすことができる。
【0032】
例えば、画像比率6%原稿を画像出力した場合において、従来の磁性一成分トナーを用いた現像装置ではトナー消費量が50〜60mg/枚であったが、本実施形態の現像装置3では、トナー消費量は約40mg/枚であった。
【0033】
(スリーブに対する現像剤の付着)
本実施形態の現像装置3は、従来技術に比べスリーブに対する現像剤の付着力を低減する構成となっている。
【0034】
図3に従来技術における通紙枚数に対する反射濃度と上流下流現像剤担持体表面(上流下流スリーブ表面)のトナー付着量の関係を示す。実験条件は、温度26度、湿度45%、画像比率5%で、連続耐久を1000k枚(100万枚)実施した。
【0035】
通紙枚数が進むほど、反射濃度が低下する。たとえば、150k時点では、反射濃度(分光測色濃度計 X-Rite 500測定値)は0.05しか低下していないが、200k時点で1.30を下回ってしまう。さらに通紙を継続すると、1000k時点で1.2程度まで低下する課題が発生した。
【0036】
本件では、濃度低下について、上流下流スリーブ表面の付着物に注目し、付着量について同時に観察した。上流下流スリーブ表面を一定圧で吸引し、残留した付着物をテープで剥ぎ取り、テープに残っている物質を透過濃度計で測定している。
【0037】
初期100k時点ですでに0.05の付着量が検出されている。更に濃度低下した200k時点では、0.15と顕著に多くなっている。以降、付着量は比例して増加していることがわかる。
【0038】
本件のテープ剥ぎ取り測定について説明する。本件では、現像スリーブ表面を500Wの吸引力で、約20秒、10cm2の領域を吸引機でトナーを吸引した。吸引機にはフィルタがあり、フィルタ内のトナーを測定する。更に、現像スリーブ表面に付着したトナーをテープ(scotchメンディングテープ基材アセテートフィルム、粘着材:アクリル系粘着剤)で剥離する。そして、透過濃度計(MacbethTDS904)を用いて、付着しているトナー量を換算している。
【0039】
スリーブ付着量と透過濃度の関係を図5に示す。スリーブ表面の付着物質は、電子線顕微鏡、ならびに元素分析装置を用いて、スリーブ表面の付着物質の質量分析を実施した結果である。透過濃度による付着量が増加すると、ほぼ同じ関係で、スリーブ表面の付着物質の質量も増加している。ほとんど比例の関係であり、透過濃度で間接的にスリーブ表面の付着量を測定することが可能である。
【0040】
図4にスリーブ付着量と反射濃度の関係を示す。反射濃度規格を1.4とした場合、スリーブ付着量規格はだいたい0.1程度になる。本実施例では上記規格値を元にスリーブ付着しやすさを比較している。
【0041】
上記実験結果から、スリーブ付着が有る一定量に達するとて濃度低下する、つまり付着量を低減すれば、濃度低下を抑えることが可能と言える。
【0042】
吸引しても現像スリーブに付着しているトナーは、一定の力で引き剥がすことのできない付着力の強いトナーであると言える。付着しているトナーは、スリーブと静電的、力学的、粘性的にくっついている。つまり、「一定の吸引力で引き剥がすことができない」=「付着しているトナーは一定の付着力(静電的、粘性的力等)を持つ」ことを意味している。
【0043】
しかしながら、付着量は、吸引のパワーである吸引力、吸引している時間、吸引する面積に影響がある。例えば、吸引パワーが強いほど、吸引時間が長いほど、吸引面積が小さいほど、静電的強く付着しているトナーを吸引し、異差を判断できない場合がある。また、初めのスリーブ上トナー量によっても付着量が異なるケースがある。
【0044】
図6に時間に対する、吸引力を400、600、800Wと変化したときのトナー残量を示す。付着量は吸引時間、吸引力、吸引面積によって変化するため、一定の評価が難しい。
【0045】
そこで、付着量ではなく付着力を下記で定義する。付着力(Af:mg・W/cm2)とは、現像剤(M:mg)が現像剤担持体表面に付着する力である。現像剤担持体表面を吸引する一定の吸引力(W:ワット)、一定時間(T秒)、一定の面積(S:cm2)吸った時の現像剤残量(My:mg)で表される。
【0046】
M=Mx+My(式1)
Af=My*(W)/S*Ts/T(式2)
現像剤担持体表面の現像剤量(M:mg)、吸引で吸い取られた現像剤量(Mx:mg)、現像剤担持体表面の現像剤残量(My:mg)、吸引力(W:ワット)、吸引時間(T:sec)、吸引面積(S:cm2)、付着力(Af:mg・W/cm2)、吸引して現像剤量が安定する平衡時間(Ts:sec)
【0047】
図21に、吸引パワーを400W、800W、時間を0secから60sec、と変化させたときの透過濃度である付着量、付着力(Af)を示す。なお、平衡時間は事前に測定済みの値を、吸引面積は10cm2で固定である。
【0048】
図21に示すように、吸引時間Tが増えるほど透過濃度Myが増加している。吸引力Wが大きいほど、スリーブ表面の付着している物質を剥ぎ取る力が大きいため、透過濃度が大きい。また、ある一定時間吸引すると、透過濃度は安定している。これは、スリーブ表面に静電的に付着している物質の付着力が、吸引力以上であることを意味する。この状態を平衡状態と呼び、平衡状態に達する時間を平衡時間Tsとしている。400wの場合、約50秒で平衡状態に達する。
【0049】
上記の実験では、平衡状態でない場合、透過濃度が変化するため、正確に付着力を判定することができない欠点がある。図21に付着力を示す。透過濃度に比べ、ほぼ同じ値を算出することが可能である。吸引力が800Wの場合、20mg・W/cm2である。吸引時間が少ない場合でもある程度予想して算出することができる。また、400Wの場合、5mg・W/cm2である。
【0050】
図7に、付着力と透過濃度の関係(付着力vs付着量)を示す。このように同じ吸引力で測定した場合、一定時間以内であれば、同じ付着力として算出することができる。このように、付着力を計算することで、付着しているトナーの静電的、粘性的力を間接的に、かつ正確に測定することが可能になる。
【0051】
次に、付着している物質について説明する。付着している物質は主に、高帯電量をもった微粉や外添剤と、トナーやWAXといった温度に弱い物質に分けられる。
【0052】
前者は、低湿環境や画像比率が低い場合など、帯電能力が高いときに発生しやすい。特に微粉やシリカなどのネガ系の強い物質は、鏡映力でスリーブ表面に付着しやすく、濃度低下の一要因となっている。
【0053】
付着力は大きく分けて以下の3つに分類できる。(1)トナーとスリーブの鏡映力で付着する静電的な力。(2)トナーが凹凸しているスリーブ表面に引っかかり付着する力学的な力。(3)粘トナー表面のWAXやスリーブ表面の水滴などの表面張力で付着する粘性的な力。本件の付着力は、上記3つの力をひとつの指標で表すことが可能である。
【0054】
図8に上流スリーブの帯電量であるQ/Mと上流スリーブ付着力について、絶対水分量が1g/KgDryAirの時、画像比率を1%(加速)、5%(標準)の2モードについて、50k枚通紙試験を実施した結果を示す。スリーブ上Q/Mが増加するとともに上流スリーブ上付着量も増加している。特に画像比率が1%の場合、5%に比べ増加傾向が著しい。スリーブ上Q/Mが5から15になると付着力は3倍に、画像比率が5%のときは、5倍に増加する。つまり、Q/Mを上昇させるとスリーブ付着が増加してしまう。
【0055】
スリーブ上Q/Mは画像形成でもっとも重要なパラメータのひとつである。一般にQ/Mが高いほど、感光ドラム上の潜像を少量のトナーでかつ、エッジ強調することなく忠実に再現できるため、飛び散りや尾引きなどが良くなり、消費量も低減が可能になる。実現するためには高Q/M物質の付着をなくすことが重要である。
【0056】
図9に画像比率に対するスリーブ付着力について、絶対水分量が1、10、20g/KgDryAir(絶対水分量(g)/DryAir(Kg))の詳細データを示す。図9に示すように、絶対水分量が少ないほど帯電量が上昇し、スリーブ付着も悪化していることがわかる。また、画像比率を低くすることで、チャージアップが激しくなり、スリーブ付着も悪化している。具体的には、画像比率を15%から1%にすることで5倍(絶対水分量が1g/KgDryAirの場合)、水分量を20gから1gにすることで2.5倍(画像比率が1%の場合)の付着量が増加している。
【0057】
付着力は規制力によって影響されやすい。本件の上流現像剤担持体3aは、粗さをもっている。図1に示すとおり、現像剤担持体3aは規制ブレード3jと接し、力学的に上流現像剤担持体3aは摺擦されやすい。つまり、トナー付着が発生しやすい状況にある。
【0058】
上流現像剤担持体3a(上流スリーブ)と規制ブレード3jのギャップであるSBギャップ(μ)と上流スリーブ付着力との関係について、絶対水分量を1、10、20g/KgDryAirと変化させたときのデータを図10に示す。
【0059】
図10に示すように、SBギャップが小さいほどスリーブ付着力が悪化している。また、絶対水分量が多いほどスリーブ付着力が増加している。一方で絶対水分量が1gと10gではほとんど同じである。これは、水分量が少ないとQ/Mが増加し、高Q/M付着が発生するためである。本実験は熱、圧の影響を加速的に見るため、機内温度を47度に設定した。通紙枚数は50k、画像比率は5%、Vslvは500mm/sである。付着力は、上流現像剤担持体と下流現像剤担持体の間(以下、SS部と呼ぶ)でも同様の付着が発生する。
【0060】
図11は、SS部の圧縮度、つまりSSギャップ(μm)に対する付着力を示している。SSギャップが大きくなるとスリーブ付着力は低下している。また、上流スリーブは下流スリーブに比べ付着力が大きいことがわかる。たとえば、SSギャップは400μを超えると安定し、上流スリーブ付着力は約0.7mg・W/cm2、下流スリーブ付着力は0.25mg・W/cm2である。
【0061】
このように、SBとともにSS部でも付着が発生している。つまり、上下流スリーブでは、SB、SSと接触している上流スリーブの方が下流スリーブより付着し易い状況にあるといえる。
【0062】
(トナーが付着する現像剤担持体)
トナーが付着する現像剤担持体(スリーブ)について説明する。スリーブは、トナーを送り、帯電する機能を持つ。そのために、有る一定の凹凸(粗さ)を持つことが重要である。
【0063】
粗さを形成するために、様々な材料が使われている。現像剤担持体の表面をサンドペーパーで擦るサンドペーパー法、球形粒子によるビーズブラスト法、不定形粒子によるサンドブラスト法、或いは、これらの混合法、更には、化学処理による化学エッチング法等が提案され、実施されている。
【0064】
現像剤担持体の材質では、AL、SUSなどがあり、直接、現像剤担持体自体を研摩し、粗さをつける場合がある。また、現像剤担持体表面に、ガラスビーズ等を一定の砥出口から圧力をかけ、現像剤担持体を回転しながら塗布する処理もある。材料には、アランダム系、モランダム系、ホワイトモランダム系など、砥粒の形状の円形度が高い材質や、鋭い形状を持つものなど、様々である。また、各砥粒は、粒径があり0.1μ〜10μまで用途に応じて使われている。
【0065】
しかしながら、上記コート性、帯電量、現像性を満足しても、環境変動や耐久条件によって、様々な欠点が生じる。長期間の使用により、トナー又はトナー中の成分がその粗面化された表面の凹凸の谷に引っかかり、付着し易いという課題がある。
【0066】
この谷に付着したトナーは、長期間の使用で、現像剤に加わる摩擦熱等により融着に至り、この結果、現像剤担持体表面がトナーで汚染される。特に、複数の接触部が有るほど付着量は増加する欠点がある。つまり、スリーブ表面の形状は、トナーの帯電量、画像比率、SBギャップ、SSギャップなどとともに重要なパラメータである。
【0067】
(熱、圧力)
熱、圧力も、スリーブ付着力に影響があり、一定以上の熱量、圧力をトナーに与えるとスリーブ付着力が増加する。トナーはある一定温度で溶け出す特性がある。当然、定着器以外の場所でも、周囲温度が上昇するとトナーが融着する。また、トナーに含まれるWAXがトナー内部から染み出し、スリーブ表面に付着し、核となりスリーブ付着レベルが悪化する。一方で、温度とともに圧依存によるスリーブ付着もある。ジャンピング現像の場合、トナー同士、トナーとスリーブとで摩擦帯電するため、ある一定の圧を力学的または磁気的に与えている。このため、あまりにも圧が高い場合、トナーをスリーブにこすり付けスリーブ付着が発生することがある。
【0068】
発熱に影響のあるスリーブの回転速度(Vslv)に対するスリーブ付着量について、絶対水分量を1から20gまで変化させたデータを図12に示す。速度が上がるとスリーブ付着力も悪化している。また、絶対水分量が高いほど傾向が多いことがわかる。これは、高速回転によって、発生熱量が大きくなり、トナーとスリーブの摺擦力が上昇し、トナーが劣化し、スリーブに付着しているためである。スリーブの回転速度は画像形成装置の生産性に直接影響を与える。回転速度によって1分あたりの出力枚数が決定するといっても過言ではない。よって、いかに高速回転でもスリーブ付着が発生しない条件を見つけることが重要である。また、上流スリーブは下流スリーブより付着量が増加していることが分かる。
【0069】
上述の如く、スリーブの付着は、トナーの帯電量(Q/M)、現像スリーブの粗さ、材質、SB部、SS部の規制、画像duty、耐久枚数、温度・圧力要因、回転数要因など様々である。
【0070】
(スリーブ付着を改善する方法)
次にスリーブ付着を改善する方法について述べる。スリーブ付着を改善する方法として、様々な方法がある。例えば、現像剤担持体表面に付着した物質を機械的に除去する方法、バイアスを印加して付着物を吐き出す方法、現像剤担持体自体を軟らかい樹脂で構成し耐久で表面を磨耗する方法などがある。
【0071】
しかしながら、現像剤担持体自体の寿命の低下や、バイアスでは完全に剥ぎ取れないこと、現像剤担持体表面を削ると粗さが変化し、初期と耐久後でトナー量、帯電量などが変化し画像不良が生じるなどの課題がある。
【0072】
図22に実施例(1)と従来例とを比較した実験結果を示す。本実験では、SBギャップ200μ、SSギャップ400μ、上流下流現像剤担持体回転速度を500mm/sec、環境23度70%、画像duty5%、連続通紙でスリーブ付着力、画質、を測定している。なお、スリーブ付着力の測定は、測定値を安定させるために連続通紙後、1分以上5分以内で測定している。
【0073】
図22に示すように、実施例(1)では、上流下流スリーブ付着力、画質のトナーのチリである飛び散り、耐久濃度安定性である耐久性を検証した。主に、トナー関連のパラメータである粒度、外添剤のシリカ量、トナーの微粉量、現像剤担持体(スリーブ)表面の表面粗さRz等をパラメータとした。
【0074】
トナーの外添剤シリカ量は、主に、トナーの帯電量をコントロールしている。多いほど、ネガ付与性が高く、スリーブ付着力が大きくなる傾向がある。実施例(1)―1では、シリカ量を、従来例の2%(重量比)の半分(1%)にすることで、上流スリーブ付着力を従来の0.2から0.18へ10%削減している。
【0075】
トナーの微粉量は、トナーに含まれる小さい粒子のトナーの量である。微粉量が少ない場合、スリーブ表面の凹凸に付着する物質が少なくなるため、スリーブ付着力が低減する。実施例(1)―2では、従来例に比べ微粉量を20%から10%(対全トナー量)に減らすことで、スリーブ付着力を0.18から0.17へ低下させている。
【0076】
粒度(μm)は、大きいほど、上流下流スリーブ表面の凹凸に付着しにくくなる傾向があるため大きくすると、スリーブ付着力が低下する。従来例に比べ実施例(1)―3では、粒度を8から10に増やすことで、スリーブ付着力を0.17から0.16まで低下させている。
【0077】
しかしながら、上記説明した粒度、シリカ量、微粉量は画質や耐久安定性に影響をあたえる。実際、シリカ量を低減することで、画像のトナーのチリを示す飛び散り(指数:あるラインからの距離と面積で計算。数値が大きいほどチリが悪いことを示す)が従来の20に比べ22へ悪化。また、粒度をアップさせるこで、チリの面積が増加し、飛び散り指数が22から25へと悪化している。更に、濃度やかぶりの安定性を示す耐久性も従来は500k枚保障できたが、シリカ量減で400k、と低下している。
【0078】
本件では、高画質化、高生産性を向上させるため、対策手段として、現像剤担持体表面形状に着目し、耐久性、現像剤担持体付着を防止する方法を提案する。まず、現像剤担持体表面粗さについて図16(a)、図17、図18に名称と記号を、図16(b)に3次元形状を示す(JISb0601−1982、1994、ISO468−1982Surfaceroughness参照)。Rzは表面10点平均粗さといい一定幅における高いポイント5点と低いポイント5点の平均値を表す。
【0079】
現像スリーブの表面荒さ(Rz)が大きいと、スリーブ付着の原因である微粉が付着しにくくなるため、スリーブ付着力を低減できる。図22の実施例(1)―4では、特にスリーブ付着の悪い上流スリーブのRzを従来の6μから8μに上げている。結果、スリーブ付着力は従来の0.2に比べ0.15と飛躍的に向上し、また、飛び散りも従来なみの21、耐久性は、スリーブ付着力が改善したため500k枚から650k枚と約1.3倍まで良くなっていることがわかる。
【0080】
さらに表面粗さRzを10まで大きくした例を実施例(1)―5に示す。上流スリーブの付着力は0.14と低下し、反射濃度1.4以上の耐久性も675kと良くなっている。しかしながら、現像剤担持体上でトナー同士が磁気的に形成している穂立ちの高さ・太さ(コート性と呼ぶ)が不均一になり、画像ムラが悪化している。これは、粗さRzが高く、スリーブ上の乗り量mg/cm2が非常に大きくなり、磁気規制力よりトナー量が上回っなったためである。
【0081】
以上より、上流スリーブの粗さRzは6〜8が好ましい。上流スリーブのRzを大きくするために、ブラスト条件をSUS305の上にFGB#400でブラスト処理をして表面粗さRzを10μmとした。ブラストの番手を小さくするとブラストする粒子の粒径が大きくなり、上流スリーブ表面の凹凸が大きく形成でき、Rzを高めにすることが可能になる。
【0082】
下流スリーブの付着力を上流スリーブと同じように下げた場合、たとえばRzを大きくすると、スリーブ付着は上流と同じく減少する。しかしながら、トナー量が増加し、帯電量が減少、画質、特にドット再現性、飛び散りなどが悪化する。つまり、下流スリーブの付着力をある程度保ちながらコントロールすることで、画質、耐久性、コート性をバランスよく満足することが可能になる。好ましくは、上流現像剤担持体の表面10点平均粗さを6.0以上8.0以下、下流の現像剤担持体の表面10点平均粗さを3.0以上6.0以下とする。
【0083】
上記説明のとおり、所定の吸引力W(W)で所定時間T(sec)に亘りトナー担持体の所定の吸引面積S(cm2)からトナーを吸引した後にトナー担持体に残留したトナー量をMy(mg)、吸引後にトナー量が安定するまでの平衡時間をTs(sec)とし、トナー担持体に対するトナーの付着力Afを(My×W/S)×(Ts/T)としたとき、現像剤担持体3aに対するトナーの付着力Afを現像剤担持体3bに対するトナーの付着力Afよりも小くする。これにより、画質的安定し、かつ濃度の耐久性を向上させることができた。
【0084】
[第二実施形態]
次に本発明に係る現像装置及び画像形成装置の第二実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
上記第一実施形態では、上流スリーブのRzを下流より大きくし、付着力を低減することで対応しているが、十分な耐久性があるといえない(濃度低下)。
【0086】
現像剤担持体表面に大きな凹凸があると、特に凸部のまわり、つまり凹部にトナーが付着し、核となり、新たなトナーが付着、成長する現象であるトナー融着が発生する。すると、先ず、現像領域へのトナー量が低下するために画像濃度の低下が生じる。また、従来、良好な現像を行わせるために、現像時に現像剤担持体には、直流電圧及び/又は交流電圧の重畳された現像バイアスを印加する。しかし、現像剤担持体表面にトナー融着が生じると、現像剤担持体表面に融着物による高抵抗層ができてしまい、現像時に現像剤担持体と像担持体間の現像領域に所望の電界が形成されないことが起こる。この結果、現像バイアスによる十分な現像効果が得られず、画像濃度が低下し、白抜けのような画像不良が生じる。上記説明したトナー融着は、微粉などの高Q/Mトナーの付着力と異なる。必要以上の凸を設けないことが必要である。
【0087】
そこで、本実施形態では、対策手段として、K(形状係数)に注目する。まず、現像剤担持体表面粗さについて図16(a)、図17、図18に名称と記号を、図16(b)に3次元形状を示す(JISb0601−1982、1994、ISO468−1982Surfaceroughness参照)。Smは、山と山の平均間隔を、Δaは山の傾斜角度θaのTanを示す。Rmaxは、高いポイントと低いポイントの高さを示す。
【0088】
本実施形態では、上記粗さ以外に、谷高さRp、谷深さRv、山谷の高さRmaxからなる形状係数K(K=Rv/Rmax)に注目し現像剤担持体付着を防止する方法を提案している。
【0089】
現像剤担持体の表面粗さ面積を二分する平均値に対して、Rpは粗さの平均線から山の頂上までの高さをいい、Rvは粗さの平均線から谷の底までの高さをいう。つまりRp+Rv=Rmaxである。
【0090】
上記述べたとおり、現像剤担持体付着は現像剤担持体の凹凸の凹部で主に発生する。凹部に微粒子が付着し核となり、周囲に他の物質が付着、成長することで現像剤担持体汚染が発生する。つまり、凹部をなくせば、付着することはない。凹部は、粗さの谷の部分にあるため、谷の粗さを極力おさえる、理想的には平らにすることで、現像剤担持体汚染が解決できる。
【0091】
K値をコントロールするためには、ブラスト条件を変更することで対応できる。たとえば、圧力を高く、ブラスト時間を長く、現像剤担持体とブラスト先端の距離を遠くするなどでK値を小さくすることが可能になる。
【0092】
図13に理想の粗さ形状を示す。図13(a)では、谷部の粗さを平らにし、全体の粗さを一定量保つことで、トナー量を保持しながら現像剤担持体付着を低減させている。図13(b)では、谷部に一定の粗さを持たせ、全体の粗さは同じとしている。また、それぞれの3次元形状の一例を、図13(c)、図13(d)に示す。
【0093】
図14に形状係数Kの計算結果を示す。形状係数Kは、RvとRmaxで決定される。凹部を減らす、つまり谷の高さを小さくする場合、Rmaxを小さくするか、形状係数を小さくすことで対応できる。なお、本実験の形状作成の基本条件は、スリーブ材質アルミ、FGB#600、ブラスト圧2kgf、回転速度10rpm、ブラスト時間10sec、ブラスト距離150mm、ブラスト口径Φ10、である。Rmaxを上昇させたい場合はブラスト圧をあげること、またRVを下げるにはFGBの番手を大きくすること、またはブラスト時間を延ばすことなどが上げられる。組み合わせは無数あり、スリーブの材質やトナーの物性によって適正化することが望ましい。
【0094】
図19は、形状係数に対する上流スリーブ付着力について、スリーブ上のQ/Mを4μc/cm2から20μc/cm2まで変化させたときにデータである。なお、本件では、下流にくらべ上流の付着力が画像濃度耐久性に影響を与える寄与度が高いため、上流のみのデータとしている。
【0095】
実験条件は、スリーブ材質アルミ、FGB#600、ブラスト圧2kgf、回転速度10rpm、ブラスト時間10sec、ブラスト距離150mm、ブラスト口径Φ10、ネガトナー、画像比率1%、水分量1g、加速、50k時点データである。Q/Mの大きさはトナーの外添処方をかえることで対応している。
【0096】
図19に示すように、形状係数が0.45を超えるとスリーブ付着力が増加していることがわかる。つまり、下地のでこぼこに付着させない形状は、山と谷の比率を55:45にする必要があることになる。これは、トナーの粒径やQ/Mとの関係もある。本実施形態では、約5μ〜7μのトナー、ネガ系の外添剤は50nm〜100nmを採用している。つまり、更に小径化が進むと、形状係数を下げる必要がある。粒径が大きくなると画質、とくに飛び散りや文字の再現性が悪化する。一般、7μ以下のトナーが使われているため、0.45以下で十分である。
【0097】
つぎに下限の形状係数について述べる。形状係数は卓上である程度値をだすことができる。
【0098】
図15に計算に用いる図を示す。下地に付着しない場合、つまり、下地の粗さがほぼゼロであるときが下限の形状係数になる。まず、トナー粒径が5μ〜7μで、トナー量を安定した状態のRmaxを測定したところ、10.419μm、下地の長さSm2はほぼ60μであった。本実施形態では、ブラストする砥粒の形状はほぼ円形であるため、外接円の角度θaは60度である。これらの条件から、平均値より高い面積をS1、低い谷の部分の面積をS2とした場合、S1=S2を満たす値が下限の形状係数となる。
【0099】
下記連立方程式を解くと、
・S1=(Sm1+Sm2)×y/2
・S2=(x/30.5)×2×x/2
・x+y=Rmax
・Sm1=Sm2−y/30.5
面積は、約48μm2であり、形状係数は0.1247となる。
【0100】
本実施形態の実験結果を図23に示す。本実験の条件は、SBギャップ200μ、SSギャップ400μ、上流下流現像剤担持体回転速度を500mm/sec、シリカ量2%、粒度8μm、微粉量20%、環境23度70%、画像duty5%、連続通紙でスリーブ付着力、画質、を測定している。
【0101】
図23に示すように、実施例(2)―1は、実施例(1)―4に比べ、上流スリーの形状係数を下流にくらべ小さく0.45まで少なくした。これにより、上流スリーブ付着力を0.10まで低下させることができ、かつ、反射濃度1.4以上の濃度耐久性も650k枚から700k枚まで向上した。さらに実施例(2)―2は、形状係数を0.25まで下げると上流スリーブ付着力は0.08まで低下し、反射濃度1.4以上の耐久枚数も750k枚まで向上している。
【0102】
トナーの粒度を小径化(8μから5.5μ)した実施例(2)―3では、おなじ形状係数であるが付着力が増加している。これは、微粉が増加したためである。さらに、実施例(2)―4では形状係数を0.2まで下げると、逆にミクロなコート性が悪化している。コート性とは、トナー同士が磁気的に形成している穂立ちの高さ・太さの均一性である。コート性は、主に磁気規制力とトナー量によって決定される。マクロなコート性は、大きなトナー量であるRzやRmaxが影響する。一方ミクロなコート性、Rzの山と山の間の穂立ち形成は、形状係数が影響する。上記説明した形状係数は理論的には0.12程度が限界であるが、平坦になりすぎると、ミクロな穂立ち(50μ間隔)が形成できず、高解像度のドット再現性などに影響を与える。本件では、トナーの粒度を5〜7μとしているため、実験では、形状係数を0.20以上0.45以下がコート性を安定させる領域であった。
【0103】
実施例(2)―5は、上流、下流スリーブの形状係数をともに0.25とすると、下流スリーブ付着力が0.05まで低下している。しかしながら、下流スリーブでミクロなコート性が悪化した。原因は上流スリーブと同じである。同じトナー、同じ形状係数なのに下流が悪い理由は、下流スリーブの磁気規制力が上流に比べ大きいためである。上流はマグネットの磁束密度と規制ブレードの磁気によって規制されている。一方、下流スリーブは、下流マグネットの磁束密度と上流の密度で規制されているため磁気拘束力が上流にくらべ大きい。したがって、ある程度のトナー量でないとミクロなコート性を満足することができない。
【0104】
このように、上流現像剤担持体に比べ下流現像剤担持体の形状係数を少なくすることで、上流現像剤担持体の付着力を低下させ、かつ、画質を安定させ、また、耐久安定性を向上することができた。好ましくは、上流現像剤担持体の形状係数を0.20以上0.45以下、下流現像剤担持体の形状係数を0.3以上0.55以下とする。
【0105】
尚、本件の現像条件、あくまでも一例であり、画像形成装置の仕様、条件に応じて最適化することが望ましい。
【0106】
[第三実施形態]
次に本発明に係る現像装置及び画像形成装置の第三実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0107】
上記第二実施形態では、スリーブ付着力が低減し濃度安定は達成できた。しかし、画質的に従来例とほぼ同じである。たとえば、飛び散りは従来の21に対して、実施例(2)―1では21でほとんど変わらない。そこで、本実施形態では、スリーブ付着力を下げたまま、画質、特に飛び散りを高める方法について提案する。
【0108】
現像における飛び散りは、潜像と現像間に形成された電界に応じてトナーが飛翔し、ライン潜像、ドット潜像のエッジ部で、不適切なトナー、たとえば、ネガ帯電量が少ないトナーが潜像のない場所へ飛翔する現象である。また、感光ドラム表面のトナー像を転写するとき、トナー像に電荷を与えるときなどでもトナーが潜像形成部から散ることがある。つまり、トナー自体の電荷量であるトリボを上げることで、対ドラムとの吸着力をため、飛び散りを改善することが可能になる。
【0109】
しかしながら、上記説明したとおり、トリボをあげるために、外添剤であるシリカ量を増加する、粒径を小さくするなどを実施すると、スリーブ付着が発生し、耐久による濃度低下が発生する。
【0110】
そこで本実施形態では、トナーではなく現像剤担持体でトナーの帯電量をコントロールする。上記説明したが、主にスリーブ付着力が高いのは上流現像剤担持体である。そこで、下流現像剤担持体に注目した。
【0111】
下流現像剤担持体のスリーブ付着力は、図22に示す実施例(1)の場合、ほぼ上流現像剤担持体の半分、0.1弱である。しかも下流スリーブの付着力が増加しても濃度耐久性は低下していない。
【0112】
そこで、下流現像剤担持体の粗さRzを下げることで、帯電量を増加させ、画質による影響を検証した。実験結果を図24に示す。本実験の条件は、SBギャップ200μ、SSギャップ400μ、上流下流現像剤担持体回転速度を500mm/sec、上流現像剤担持体と感光ドラムの距離を200μm、下流現像剤担持体と感光ドラムとの距離を300μm、現像バイアスはVpp1.5kv、f2.7kHz、シリカ量2%、粒度8μm、微粉量20%、環境23度70%、画像duty5%、連続通紙でスリーブ付着力、画質、を測定している。
【0113】
図24に示すように、実施例(3)―1は、実施例(2)―1にくらべ、下流現像剤担持体(スリーブ)のRzを6μから5μに小さくしている。これにより、スリーブ付着力は0.1mg・W・cm2から0.15mg・W・cm2と増加しているが、飛び散りは21から19と良くなり、かつ耐久安定性は、700k枚と変化していない。これは、上流と下流の現像剤担持体の機能が異なるため発生している。
【0114】
本実施例(3)では、上流現像剤担持体は主にベタ潜像の現像を行い、下流現像剤担持体は小さいドット(3dotや5dot、1dotは解像度1200dpiの場合、約21μ×21μ)やライン潜像の現像を行う機能分離を実現している。これにより、下流現像剤担持体は多少スリーブ付着が発生しても、濃度などの耐久安定性に影響を及ぼすことはすくない。一方で、下流現像剤担持体の帯電量をあげることで、飛び散りや、ドット再現性を向上させている。具体的には、現像剤担持体3aに担持されたトナーの帯電量(μc/mg)を、現像剤担持体3bに担持されたトナーの帯電量(μc/mg)よりも小さくする。これにより、飛び散りや、ドット再現性を向上させている。
【0115】
本実施例(3)―1では、実施例(2)-1に比べ、Rzを6μから5μにした。これにより、トナーの載り量が減少し、帯電量を9μc/mgから12μc/mgへ増加させている。これにより、飛び散りも従来の21から19へ良くなり、反射濃度が1.4以上である耐久性も700k枚とほぼ同じ寿命をもつ。
【0116】
実施例(3)―3では、下流スリーブの粗さRzを3μまで下げている。結果、トナーの乗り量が減少し、帯電量は14まで上昇、飛び散りも17までよくなっている。濃度耐久性も700k枚と維持している。しかしながら、現像剤担持体上でコート性が不均一になり、画像ムラが悪化している。これは、粗さRzが低く、磁気規制力よりトナー量が小さくなったためである。このように下流スリーブの粗さRzは4μから6μが好ましい。
【0117】
本実施例(3)の帯電量(Q:μc/mg)は、現像剤(M:mg)が保持する単位質量あたりの電荷量であり、現像剤担持体表面を一定の吸引力(W:ワット)、一定時間(T秒)、一定の面積(S:cm2)吸った時のQ/Mであらわす。
【0118】
M=Mx+My(式3)
Q=Mx/S(式4)
現像剤担持体表面の現像剤量(M)、吸引で吸い取られた現像剤量(Mx:mg)、現像剤残量(My:mg)、吸引力(W:ワット)、吸引時間(T:sec)、吸引面積(S:cm2)、吸引電荷量(Q:μc)
【0119】
上記説明したとおり、現像スリーブの表面荒さ(Rzと形状係数)の最適化によって、スリーブは付着力を低減し、かつ帯電量を増加させ、画質の向上、耐久安定性を実現できる。
【0120】
本実施例によれば、形状係数、最大高さ等の粗さを規定することで山と山の隙間に小径物質の付着を抑制できる。平均山間隔によって、トナー量を安定させ、高速回転でも十分コートを安定させることができる。現像剤担持体表面に安定して均一に現像剤(トナー)を薄層コートし、かつ、環境変動や耐久変動等に対応し長時間安定コート、特に現像剤担持体付着を低減できる。
【0121】
尚、本件の現像条件はあくまでも一例であり、画像形成装置の仕様、条件に応じて最適化することが望ましい。
【0122】
図20は、上記説明したパラメータを変更した場合の効果を記載した図である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第一実施形態に係る現像装置を備えた画像形成装置の構成図である。
【図2】現像バイアスを示す図である。
【図3】従来例のスリーブ付着量、濃度推移を示す図である。
【図4】スリーブ付着力と反射濃度の関係図である。
【図5】スリーブ付着量(透過濃度)と付着量の関係図である。
【図6】吸引時間に対するスリーブ付着量の関係図である。
【図7】スリーブ付着力に対する付着力(透過濃度)の関係図である。
【図8】帯電量に対するスリーブ付着力の関係図である。
【図9】画像比率に対するスリーブ付着力の関係図である。
【図10】SBギャップに対するスリーブ付着力の関係図である。
【図11】SSギャップに対するスリーブ付着力の関係図である。
【図12】回転速度に対するスリーブ付着力の関係図である。
【図13】第二実施形態に係る現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図14】第二実施形態に係る谷の高さと形状係数の関係を示す図である。
【図15】第二実施形態に係る現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図16】現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図17】現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図18】現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図19】第二実施形態における形状係数とスリーブ付着力の関係を示す図である。
【図20】パラメータと効果の関係を示す図である。
【図21】透過濃度と付着力との関係
【図22】実施例(1)の実験結果を示す図である。
【図23】実施例(2)の実験結果を示す図である。
【図24】実施例(3)の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0124】
L …画像露光
P …転写材
t …トナー
1 …感光ドラム(像担持体)
2 …一次帯電器
3 …現像装置
3a …現像剤担持体(第1のトナー担持体)
3b …現像剤担持体(第2のトナー担持体)
3c …現像容器
3d …第一攪拌部
3e …第二攪拌部
3f …表面
3g …表面
3h …上流マグネットロール
3i …下流マグネットロール
3j …層厚規制ブレード(規制部材)
4 …ポスト帯電器
5 …転写帯電器
6 …分離帯電器
7 …クリーニング装置
8 …定着装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体等の像担持体上に形成された静電潜像を現像して現像剤像を形成する現像装置、及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタ等の画像形成装置は、ユーザからのニーズでもある高速対応にともない、現像装置の現像剤担持体も高速回転する必要がある。このため、現像剤担持体上の現像剤を感光体上の静電潜像を可視化する時間が短くなり、現像不良が発生する課題が生じている。
【0003】
また、高速化とともに、高耐久性、高信頼性の要望も増えている。しかしながら、従来の電子写真技術は、ユーザの使用条件、たとえば、使用環境や転写紙の種類、1日の使用枚数、原稿の画像比率などによって、画像品質へ影響を及ぼすことは公知である。更に、近年、業務の効率化が進み、画像形成装置の稼働時間が問題視され、特に、高速(100ppm以上)の画像形成装置では、10時間以上連続しても停止しない高生産性・高耐久性も求められている。
【0004】
更に、ユーザやサービスの作業効率を高めるため、メンテナンス性の向上が市場で求められている。
【0005】
従来技術では、高速化、高画質化を実現するために、複数の現像剤担持体を用いた技術が提案されている。
【0006】
特許文献1(特開2004−163906)では、複数の現像剤担持体を持ち、かつ上流の現像剤担持体のSm(表面の山と山の間隔)が下流の現像剤担持体のSmよりも大きくなるように、粗面化処理する。これにより、高画質化、高速化を達成し、かつ付着量を抑え、耐久による濃度安定を実現している。
【0007】
特許文献2(特開2005−99394)では、複数の現像剤担持体を持つ現像システムにおいて、現像剤担持体表面にフェノール樹脂によるコートを行い、下流の現像剤担持体側のみに4級アンモニム塩を入れる。さらに高速化、高画質化、耐久性を向上させるために、耐久寿命共通化を球状炭素粒子により行う。
【0008】
【特許文献1】特開2004−163906号公報
【特許文献2】特開2005−99394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例には以下の課題がある。
【0010】
a)Sm規定だけでは、上流下流の現像剤担持体の劣化(トナー付着、帯電量)を長寿命保つことができない。大きいSm、つまり山と山の隙間に小径物質(外添剤、微粉トナー)がはまりやすく、特に、複数の現像剤担持体を用いる現像装置では、上流現像剤担持体で現像剤担持体付着が発生する課題がある。
【0011】
b)樹脂コーティングでは、耐久で摩耗し、トナー量が低下、帯電能が低下し画質が低下する課題がある。
【0012】
c)下流に樹脂コートを用いると、上流にくらべ帯電能が低下し、画質が悪化する課題がある。
【0013】
そこで本発明は、磁性一成分トナー(一成分現像剤)を用いた場合でも、現像剤担持体上に安定して均一に現像剤(トナー)を長期間コートし、かつ高画質を達成できる現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る現像装置及び画像形成装置の代表的な構成は、像担持体に形成された静電像を現像するべく互いに近接して設けられ磁性トナーを磁気的に担持して搬送する第1及び第2のトナー担持体と、前記第1のトナー担持体に担持されたトナーの層厚を規制する規制部材と、を有し、前記第2のトナー担持体に担持されたトナーの層厚規制を前記第1のトナー担持体により行う現像装置において、所定の吸引力W(W)で所定時間T(sec)に亘り前記トナー担持体の所定の吸引面積S(cm2)からトナーを吸引した後に前記トナー担持体に残留したトナー量をMy(mg)、吸引後にトナー量が安定するまでの平衡時間をTs(sec)とし、前記トナー担持体に対するトナーの付着力Afを(My×W/S)×(Ts/T)としたとき、前記第1のトナー担持体に対するトナーの付着力Afは、前記第2のトナー担持体に対するトナーの付着力Afよりも小さいことを特徴とする
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁性一成分トナー(一成分現像剤)を用いた場合でも、現像剤担持体上に安定して均一に現像剤(トナー)を長期間コートし、かつ高画質を達成できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第一実施形態]
本発明に係る現像装置及び画像形成装置の第一実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態に係る現像装置3を備えた画像形成装置の構成図である。
【0017】
(画像形成装置)
図1に示すように、画像形成装置は、像担持体としての感光ドラム(正帯電のa−Si感光体)1の周囲に、一次帯電器2、現像装置3、転写前帯電器(ポスト帯電器)4、転写帯電器(転写手段)5、分離帯電器6、クリーニング装置7、定着装置8を有している。また、感光ドラム1と転写帯電器5との間には転写部が形成される。定着装置8は、転写部より転写材搬送方向の下流側に配置されている。
【0018】
感光ドラム1は、直径84mmであり、時計回り(矢印方向)に所定の周速(450mm/sec)で回転している。感光ドラム1は、一次帯電器2により例えば+500Vに帯電される。帯電された感光ドラム1は、図示しない露光装置により1200dpiで画像露光Lが与えられ、入力される画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。
【0019】
現像装置3の2つの現像剤担持体(第1のトナー担持体、第2のトナー担持体)3a、3bは、感光ドラム1の帯電極性と同極性の現像バイアス(DC成分にAC成分を重畳したバイアス)が印加されている。現像剤担持体3a、3bは、感光ドラム1の帯電極性と逆極性に帯電された現像剤(磁性トナー(磁性一成分トナー))tを感光ドラム1表面(静電潜像の現像部位)に付着させて、ジャンピング現像法により現像してトナー像として可視像化する。
【0020】
トナー像が形成された感光ドラム1表面を転写前帯電器(ポスト帯電器)4で転写前帯電する。感光ドラム1表面のトナー像が感光ドラム1と転写帯電器5間の転写部に到達する。このタイミングに合わせて給紙カセット(不図示)内の用紙などの転写材Pが転写部に搬送される。そして、トナーと逆極性の転写電圧が印加された転写帯電器5によりトナー像が転写材Pに転写される。そして、トナー像が転写された転写材Pは、分離帯電器6で感光ドラム1から分離されて定着装置8に搬送される。定着装置8の定着ローラ8aと加圧ローラ8b間の定着ニップ部にて、トナー像を転写材Pに加熱、加圧して熱定着した後に、転写材Pを外部に排出する。
【0021】
なお、トナー像転写後の感光ドラム1表面に残留している転写残トナー(残留現像剤)は、クリーニング装置(クリーニング手段)7によって除去され回収される。
【0022】
(現像装置3)
次に、現像装置3について詳細に説明する。現像剤は現像剤がコートされている現像剤担持体3aに高圧を印加することで、現像剤担持体3a表面の現像剤が感光体1へ飛翔し、静電潜像を可視化することができる。正規現像の場合、帯電電位と同じ極性の現像剤で可視化することができ、また逆に反転現像の場合、帯電電位とは逆の極性の現像剤で可視化できる。
【0023】
現像装置3は、現像容器3cの開口部に感光ドラム1と対向するよう近接して、矢印方向(反時計方向)に回転自在な現像剤担持体としての現像剤担持体3a、3bが、感光ドラム1の回転方向に沿ってそれぞれ配置されている。現像剤担持体3aは、感光ドラム1対向する現像部より感光ドラム1の回転方向上流に位置し、感光ドラム1と近接対向している。現像剤担持体3bは、現像剤担持体3aより感光ドラム1の回転方向下流側に位置し、感光ドラム1、現像剤担持体3aと近接対向している。
【0024】
現像剤担持体3a内部には上流マグネットロール3hが設けられている。現像剤担持体3b内部には下流マグネットロール3iが設けられている。現像容器3c内部において、現像剤は第二攪拌部(トナー攪拌部材)3eから第一攪拌部(トナー攪拌部材)3dへ移動し、現像剤担持体3a、3bに供給される。
【0025】
現像剤担持体3aは、層厚規制ブレード(規制部材)3jによってトナーtのコート厚が規制される。現像剤担持体3bは、近接して配置されている現像剤担持体3aによってトナーtのコート厚が規制される。
【0026】
現像装置3で可視化した現像剤像に対して、転写前帯電器4(ポスト帯電)を用いて、電荷を付与している。転写前帯電器4で転写するときに発生する現像剤と感光体との静電吸着力を弱める働きがある。このため、次の転写工程で転写材Pを感光ドラム1から分離しやすくなる。
【0027】
現像容器3c内には、2つのトナー攪拌部材3d、3eと、現像容器3c内のトナー量を検知する図示しないトナー量検知センサを有している。トナー攪拌部材3d、3eは、現像容器3c内のトナーtを攪拌して現像剤担持体3a、3b側に搬送する。トナー(磁性一成分トナー)tは、ネガトナーであり、重量平均粒径は5.0〜10.0μmであり、樹脂は少なくともスチレンアクリル樹脂またはポリエステル樹脂のどちらか一方から成り磁性体を50〜100重量部入れている。また、外添剤として、0.2〜2.0%(重量%)のSiO2を含有している。
【0028】
現像剤担持体3a、3bの表面3f、3gは、非磁性部材である直径20mmのSUS305の上にFGB#600でブラスト処理をして表面粗さRzを3μmとした。この表面粗さRzの測定には、接触式表面粗さ計(サーフコーダーSE−3300(株)小坂研究所)を用いた。また、測定条件は、カットオフ値が0.8mm、測定長さが2.5mm、送りスピードが0.1mm/sec、倍率5000倍である。下流現像剤担持体は、前記上流現像剤担持体よりも、メッキ厚が厚い。
【0029】
現像剤担持体3a、3bは、感光ドラム1の回転速度(プロセススピード)に対して50〜150%の速度で回転し、現像位置での現像剤担持体3a、3bと感光ドラム1間の隙間(ギャップ)は100〜400μmである。上流マグネットロール3hの磁力によってトナーが現像剤担持体3a上に担持される。上流マグネットロール3hの磁力によってトナーが下流現像剤担持体3b上に担持される。上流現像剤担持体3aと下流現像剤担持体3bの回転中心を結ぶ直線上における現像剤担持体3aと現像剤担持体3b間の隙間(ギャップ)は100〜400μmである。
【0030】
現像剤担持体3a、3bには、図示しない現像バイアス電源(バイアス印加手段)から+300Vの直流バイアスと交流バイアスを重畳した現像バイアスが印加されることにより、トナー(磁性一成分トナー)を感光ドラム1側に飛翔させて静電潜像を非接触現像する。なお、交流バイアスとは、図2に示すようなピーク間電圧(Vpp)が900〜2000V、周波数が1.0〜4.0kHzの矩形波である。また、本実施形態では矩形波を用いて良いるが、トナーの種類、感光ドラム、潜像方式等に応じて波形の形状を最適化する必要がある。この時の現像コントラストは飛翔方向に200Vであり、かぶりとりコントラストは150Vとした。
【0031】
このように、上流下流現像剤担持体3a、3bに直流バイアスに重畳して交流バイアスが印加される。これにより、上流現像剤担持体3aによる現像に寄与しなかった余分なトナーを下流現像剤担持体3bによって回収し、再び現像容器3c内に戻すことができるため、トナーの消費量を減らすことができる。
【0032】
例えば、画像比率6%原稿を画像出力した場合において、従来の磁性一成分トナーを用いた現像装置ではトナー消費量が50〜60mg/枚であったが、本実施形態の現像装置3では、トナー消費量は約40mg/枚であった。
【0033】
(スリーブに対する現像剤の付着)
本実施形態の現像装置3は、従来技術に比べスリーブに対する現像剤の付着力を低減する構成となっている。
【0034】
図3に従来技術における通紙枚数に対する反射濃度と上流下流現像剤担持体表面(上流下流スリーブ表面)のトナー付着量の関係を示す。実験条件は、温度26度、湿度45%、画像比率5%で、連続耐久を1000k枚(100万枚)実施した。
【0035】
通紙枚数が進むほど、反射濃度が低下する。たとえば、150k時点では、反射濃度(分光測色濃度計 X-Rite 500測定値)は0.05しか低下していないが、200k時点で1.30を下回ってしまう。さらに通紙を継続すると、1000k時点で1.2程度まで低下する課題が発生した。
【0036】
本件では、濃度低下について、上流下流スリーブ表面の付着物に注目し、付着量について同時に観察した。上流下流スリーブ表面を一定圧で吸引し、残留した付着物をテープで剥ぎ取り、テープに残っている物質を透過濃度計で測定している。
【0037】
初期100k時点ですでに0.05の付着量が検出されている。更に濃度低下した200k時点では、0.15と顕著に多くなっている。以降、付着量は比例して増加していることがわかる。
【0038】
本件のテープ剥ぎ取り測定について説明する。本件では、現像スリーブ表面を500Wの吸引力で、約20秒、10cm2の領域を吸引機でトナーを吸引した。吸引機にはフィルタがあり、フィルタ内のトナーを測定する。更に、現像スリーブ表面に付着したトナーをテープ(scotchメンディングテープ基材アセテートフィルム、粘着材:アクリル系粘着剤)で剥離する。そして、透過濃度計(MacbethTDS904)を用いて、付着しているトナー量を換算している。
【0039】
スリーブ付着量と透過濃度の関係を図5に示す。スリーブ表面の付着物質は、電子線顕微鏡、ならびに元素分析装置を用いて、スリーブ表面の付着物質の質量分析を実施した結果である。透過濃度による付着量が増加すると、ほぼ同じ関係で、スリーブ表面の付着物質の質量も増加している。ほとんど比例の関係であり、透過濃度で間接的にスリーブ表面の付着量を測定することが可能である。
【0040】
図4にスリーブ付着量と反射濃度の関係を示す。反射濃度規格を1.4とした場合、スリーブ付着量規格はだいたい0.1程度になる。本実施例では上記規格値を元にスリーブ付着しやすさを比較している。
【0041】
上記実験結果から、スリーブ付着が有る一定量に達するとて濃度低下する、つまり付着量を低減すれば、濃度低下を抑えることが可能と言える。
【0042】
吸引しても現像スリーブに付着しているトナーは、一定の力で引き剥がすことのできない付着力の強いトナーであると言える。付着しているトナーは、スリーブと静電的、力学的、粘性的にくっついている。つまり、「一定の吸引力で引き剥がすことができない」=「付着しているトナーは一定の付着力(静電的、粘性的力等)を持つ」ことを意味している。
【0043】
しかしながら、付着量は、吸引のパワーである吸引力、吸引している時間、吸引する面積に影響がある。例えば、吸引パワーが強いほど、吸引時間が長いほど、吸引面積が小さいほど、静電的強く付着しているトナーを吸引し、異差を判断できない場合がある。また、初めのスリーブ上トナー量によっても付着量が異なるケースがある。
【0044】
図6に時間に対する、吸引力を400、600、800Wと変化したときのトナー残量を示す。付着量は吸引時間、吸引力、吸引面積によって変化するため、一定の評価が難しい。
【0045】
そこで、付着量ではなく付着力を下記で定義する。付着力(Af:mg・W/cm2)とは、現像剤(M:mg)が現像剤担持体表面に付着する力である。現像剤担持体表面を吸引する一定の吸引力(W:ワット)、一定時間(T秒)、一定の面積(S:cm2)吸った時の現像剤残量(My:mg)で表される。
【0046】
M=Mx+My(式1)
Af=My*(W)/S*Ts/T(式2)
現像剤担持体表面の現像剤量(M:mg)、吸引で吸い取られた現像剤量(Mx:mg)、現像剤担持体表面の現像剤残量(My:mg)、吸引力(W:ワット)、吸引時間(T:sec)、吸引面積(S:cm2)、付着力(Af:mg・W/cm2)、吸引して現像剤量が安定する平衡時間(Ts:sec)
【0047】
図21に、吸引パワーを400W、800W、時間を0secから60sec、と変化させたときの透過濃度である付着量、付着力(Af)を示す。なお、平衡時間は事前に測定済みの値を、吸引面積は10cm2で固定である。
【0048】
図21に示すように、吸引時間Tが増えるほど透過濃度Myが増加している。吸引力Wが大きいほど、スリーブ表面の付着している物質を剥ぎ取る力が大きいため、透過濃度が大きい。また、ある一定時間吸引すると、透過濃度は安定している。これは、スリーブ表面に静電的に付着している物質の付着力が、吸引力以上であることを意味する。この状態を平衡状態と呼び、平衡状態に達する時間を平衡時間Tsとしている。400wの場合、約50秒で平衡状態に達する。
【0049】
上記の実験では、平衡状態でない場合、透過濃度が変化するため、正確に付着力を判定することができない欠点がある。図21に付着力を示す。透過濃度に比べ、ほぼ同じ値を算出することが可能である。吸引力が800Wの場合、20mg・W/cm2である。吸引時間が少ない場合でもある程度予想して算出することができる。また、400Wの場合、5mg・W/cm2である。
【0050】
図7に、付着力と透過濃度の関係(付着力vs付着量)を示す。このように同じ吸引力で測定した場合、一定時間以内であれば、同じ付着力として算出することができる。このように、付着力を計算することで、付着しているトナーの静電的、粘性的力を間接的に、かつ正確に測定することが可能になる。
【0051】
次に、付着している物質について説明する。付着している物質は主に、高帯電量をもった微粉や外添剤と、トナーやWAXといった温度に弱い物質に分けられる。
【0052】
前者は、低湿環境や画像比率が低い場合など、帯電能力が高いときに発生しやすい。特に微粉やシリカなどのネガ系の強い物質は、鏡映力でスリーブ表面に付着しやすく、濃度低下の一要因となっている。
【0053】
付着力は大きく分けて以下の3つに分類できる。(1)トナーとスリーブの鏡映力で付着する静電的な力。(2)トナーが凹凸しているスリーブ表面に引っかかり付着する力学的な力。(3)粘トナー表面のWAXやスリーブ表面の水滴などの表面張力で付着する粘性的な力。本件の付着力は、上記3つの力をひとつの指標で表すことが可能である。
【0054】
図8に上流スリーブの帯電量であるQ/Mと上流スリーブ付着力について、絶対水分量が1g/KgDryAirの時、画像比率を1%(加速)、5%(標準)の2モードについて、50k枚通紙試験を実施した結果を示す。スリーブ上Q/Mが増加するとともに上流スリーブ上付着量も増加している。特に画像比率が1%の場合、5%に比べ増加傾向が著しい。スリーブ上Q/Mが5から15になると付着力は3倍に、画像比率が5%のときは、5倍に増加する。つまり、Q/Mを上昇させるとスリーブ付着が増加してしまう。
【0055】
スリーブ上Q/Mは画像形成でもっとも重要なパラメータのひとつである。一般にQ/Mが高いほど、感光ドラム上の潜像を少量のトナーでかつ、エッジ強調することなく忠実に再現できるため、飛び散りや尾引きなどが良くなり、消費量も低減が可能になる。実現するためには高Q/M物質の付着をなくすことが重要である。
【0056】
図9に画像比率に対するスリーブ付着力について、絶対水分量が1、10、20g/KgDryAir(絶対水分量(g)/DryAir(Kg))の詳細データを示す。図9に示すように、絶対水分量が少ないほど帯電量が上昇し、スリーブ付着も悪化していることがわかる。また、画像比率を低くすることで、チャージアップが激しくなり、スリーブ付着も悪化している。具体的には、画像比率を15%から1%にすることで5倍(絶対水分量が1g/KgDryAirの場合)、水分量を20gから1gにすることで2.5倍(画像比率が1%の場合)の付着量が増加している。
【0057】
付着力は規制力によって影響されやすい。本件の上流現像剤担持体3aは、粗さをもっている。図1に示すとおり、現像剤担持体3aは規制ブレード3jと接し、力学的に上流現像剤担持体3aは摺擦されやすい。つまり、トナー付着が発生しやすい状況にある。
【0058】
上流現像剤担持体3a(上流スリーブ)と規制ブレード3jのギャップであるSBギャップ(μ)と上流スリーブ付着力との関係について、絶対水分量を1、10、20g/KgDryAirと変化させたときのデータを図10に示す。
【0059】
図10に示すように、SBギャップが小さいほどスリーブ付着力が悪化している。また、絶対水分量が多いほどスリーブ付着力が増加している。一方で絶対水分量が1gと10gではほとんど同じである。これは、水分量が少ないとQ/Mが増加し、高Q/M付着が発生するためである。本実験は熱、圧の影響を加速的に見るため、機内温度を47度に設定した。通紙枚数は50k、画像比率は5%、Vslvは500mm/sである。付着力は、上流現像剤担持体と下流現像剤担持体の間(以下、SS部と呼ぶ)でも同様の付着が発生する。
【0060】
図11は、SS部の圧縮度、つまりSSギャップ(μm)に対する付着力を示している。SSギャップが大きくなるとスリーブ付着力は低下している。また、上流スリーブは下流スリーブに比べ付着力が大きいことがわかる。たとえば、SSギャップは400μを超えると安定し、上流スリーブ付着力は約0.7mg・W/cm2、下流スリーブ付着力は0.25mg・W/cm2である。
【0061】
このように、SBとともにSS部でも付着が発生している。つまり、上下流スリーブでは、SB、SSと接触している上流スリーブの方が下流スリーブより付着し易い状況にあるといえる。
【0062】
(トナーが付着する現像剤担持体)
トナーが付着する現像剤担持体(スリーブ)について説明する。スリーブは、トナーを送り、帯電する機能を持つ。そのために、有る一定の凹凸(粗さ)を持つことが重要である。
【0063】
粗さを形成するために、様々な材料が使われている。現像剤担持体の表面をサンドペーパーで擦るサンドペーパー法、球形粒子によるビーズブラスト法、不定形粒子によるサンドブラスト法、或いは、これらの混合法、更には、化学処理による化学エッチング法等が提案され、実施されている。
【0064】
現像剤担持体の材質では、AL、SUSなどがあり、直接、現像剤担持体自体を研摩し、粗さをつける場合がある。また、現像剤担持体表面に、ガラスビーズ等を一定の砥出口から圧力をかけ、現像剤担持体を回転しながら塗布する処理もある。材料には、アランダム系、モランダム系、ホワイトモランダム系など、砥粒の形状の円形度が高い材質や、鋭い形状を持つものなど、様々である。また、各砥粒は、粒径があり0.1μ〜10μまで用途に応じて使われている。
【0065】
しかしながら、上記コート性、帯電量、現像性を満足しても、環境変動や耐久条件によって、様々な欠点が生じる。長期間の使用により、トナー又はトナー中の成分がその粗面化された表面の凹凸の谷に引っかかり、付着し易いという課題がある。
【0066】
この谷に付着したトナーは、長期間の使用で、現像剤に加わる摩擦熱等により融着に至り、この結果、現像剤担持体表面がトナーで汚染される。特に、複数の接触部が有るほど付着量は増加する欠点がある。つまり、スリーブ表面の形状は、トナーの帯電量、画像比率、SBギャップ、SSギャップなどとともに重要なパラメータである。
【0067】
(熱、圧力)
熱、圧力も、スリーブ付着力に影響があり、一定以上の熱量、圧力をトナーに与えるとスリーブ付着力が増加する。トナーはある一定温度で溶け出す特性がある。当然、定着器以外の場所でも、周囲温度が上昇するとトナーが融着する。また、トナーに含まれるWAXがトナー内部から染み出し、スリーブ表面に付着し、核となりスリーブ付着レベルが悪化する。一方で、温度とともに圧依存によるスリーブ付着もある。ジャンピング現像の場合、トナー同士、トナーとスリーブとで摩擦帯電するため、ある一定の圧を力学的または磁気的に与えている。このため、あまりにも圧が高い場合、トナーをスリーブにこすり付けスリーブ付着が発生することがある。
【0068】
発熱に影響のあるスリーブの回転速度(Vslv)に対するスリーブ付着量について、絶対水分量を1から20gまで変化させたデータを図12に示す。速度が上がるとスリーブ付着力も悪化している。また、絶対水分量が高いほど傾向が多いことがわかる。これは、高速回転によって、発生熱量が大きくなり、トナーとスリーブの摺擦力が上昇し、トナーが劣化し、スリーブに付着しているためである。スリーブの回転速度は画像形成装置の生産性に直接影響を与える。回転速度によって1分あたりの出力枚数が決定するといっても過言ではない。よって、いかに高速回転でもスリーブ付着が発生しない条件を見つけることが重要である。また、上流スリーブは下流スリーブより付着量が増加していることが分かる。
【0069】
上述の如く、スリーブの付着は、トナーの帯電量(Q/M)、現像スリーブの粗さ、材質、SB部、SS部の規制、画像duty、耐久枚数、温度・圧力要因、回転数要因など様々である。
【0070】
(スリーブ付着を改善する方法)
次にスリーブ付着を改善する方法について述べる。スリーブ付着を改善する方法として、様々な方法がある。例えば、現像剤担持体表面に付着した物質を機械的に除去する方法、バイアスを印加して付着物を吐き出す方法、現像剤担持体自体を軟らかい樹脂で構成し耐久で表面を磨耗する方法などがある。
【0071】
しかしながら、現像剤担持体自体の寿命の低下や、バイアスでは完全に剥ぎ取れないこと、現像剤担持体表面を削ると粗さが変化し、初期と耐久後でトナー量、帯電量などが変化し画像不良が生じるなどの課題がある。
【0072】
図22に実施例(1)と従来例とを比較した実験結果を示す。本実験では、SBギャップ200μ、SSギャップ400μ、上流下流現像剤担持体回転速度を500mm/sec、環境23度70%、画像duty5%、連続通紙でスリーブ付着力、画質、を測定している。なお、スリーブ付着力の測定は、測定値を安定させるために連続通紙後、1分以上5分以内で測定している。
【0073】
図22に示すように、実施例(1)では、上流下流スリーブ付着力、画質のトナーのチリである飛び散り、耐久濃度安定性である耐久性を検証した。主に、トナー関連のパラメータである粒度、外添剤のシリカ量、トナーの微粉量、現像剤担持体(スリーブ)表面の表面粗さRz等をパラメータとした。
【0074】
トナーの外添剤シリカ量は、主に、トナーの帯電量をコントロールしている。多いほど、ネガ付与性が高く、スリーブ付着力が大きくなる傾向がある。実施例(1)―1では、シリカ量を、従来例の2%(重量比)の半分(1%)にすることで、上流スリーブ付着力を従来の0.2から0.18へ10%削減している。
【0075】
トナーの微粉量は、トナーに含まれる小さい粒子のトナーの量である。微粉量が少ない場合、スリーブ表面の凹凸に付着する物質が少なくなるため、スリーブ付着力が低減する。実施例(1)―2では、従来例に比べ微粉量を20%から10%(対全トナー量)に減らすことで、スリーブ付着力を0.18から0.17へ低下させている。
【0076】
粒度(μm)は、大きいほど、上流下流スリーブ表面の凹凸に付着しにくくなる傾向があるため大きくすると、スリーブ付着力が低下する。従来例に比べ実施例(1)―3では、粒度を8から10に増やすことで、スリーブ付着力を0.17から0.16まで低下させている。
【0077】
しかしながら、上記説明した粒度、シリカ量、微粉量は画質や耐久安定性に影響をあたえる。実際、シリカ量を低減することで、画像のトナーのチリを示す飛び散り(指数:あるラインからの距離と面積で計算。数値が大きいほどチリが悪いことを示す)が従来の20に比べ22へ悪化。また、粒度をアップさせるこで、チリの面積が増加し、飛び散り指数が22から25へと悪化している。更に、濃度やかぶりの安定性を示す耐久性も従来は500k枚保障できたが、シリカ量減で400k、と低下している。
【0078】
本件では、高画質化、高生産性を向上させるため、対策手段として、現像剤担持体表面形状に着目し、耐久性、現像剤担持体付着を防止する方法を提案する。まず、現像剤担持体表面粗さについて図16(a)、図17、図18に名称と記号を、図16(b)に3次元形状を示す(JISb0601−1982、1994、ISO468−1982Surfaceroughness参照)。Rzは表面10点平均粗さといい一定幅における高いポイント5点と低いポイント5点の平均値を表す。
【0079】
現像スリーブの表面荒さ(Rz)が大きいと、スリーブ付着の原因である微粉が付着しにくくなるため、スリーブ付着力を低減できる。図22の実施例(1)―4では、特にスリーブ付着の悪い上流スリーブのRzを従来の6μから8μに上げている。結果、スリーブ付着力は従来の0.2に比べ0.15と飛躍的に向上し、また、飛び散りも従来なみの21、耐久性は、スリーブ付着力が改善したため500k枚から650k枚と約1.3倍まで良くなっていることがわかる。
【0080】
さらに表面粗さRzを10まで大きくした例を実施例(1)―5に示す。上流スリーブの付着力は0.14と低下し、反射濃度1.4以上の耐久性も675kと良くなっている。しかしながら、現像剤担持体上でトナー同士が磁気的に形成している穂立ちの高さ・太さ(コート性と呼ぶ)が不均一になり、画像ムラが悪化している。これは、粗さRzが高く、スリーブ上の乗り量mg/cm2が非常に大きくなり、磁気規制力よりトナー量が上回っなったためである。
【0081】
以上より、上流スリーブの粗さRzは6〜8が好ましい。上流スリーブのRzを大きくするために、ブラスト条件をSUS305の上にFGB#400でブラスト処理をして表面粗さRzを10μmとした。ブラストの番手を小さくするとブラストする粒子の粒径が大きくなり、上流スリーブ表面の凹凸が大きく形成でき、Rzを高めにすることが可能になる。
【0082】
下流スリーブの付着力を上流スリーブと同じように下げた場合、たとえばRzを大きくすると、スリーブ付着は上流と同じく減少する。しかしながら、トナー量が増加し、帯電量が減少、画質、特にドット再現性、飛び散りなどが悪化する。つまり、下流スリーブの付着力をある程度保ちながらコントロールすることで、画質、耐久性、コート性をバランスよく満足することが可能になる。好ましくは、上流現像剤担持体の表面10点平均粗さを6.0以上8.0以下、下流の現像剤担持体の表面10点平均粗さを3.0以上6.0以下とする。
【0083】
上記説明のとおり、所定の吸引力W(W)で所定時間T(sec)に亘りトナー担持体の所定の吸引面積S(cm2)からトナーを吸引した後にトナー担持体に残留したトナー量をMy(mg)、吸引後にトナー量が安定するまでの平衡時間をTs(sec)とし、トナー担持体に対するトナーの付着力Afを(My×W/S)×(Ts/T)としたとき、現像剤担持体3aに対するトナーの付着力Afを現像剤担持体3bに対するトナーの付着力Afよりも小くする。これにより、画質的安定し、かつ濃度の耐久性を向上させることができた。
【0084】
[第二実施形態]
次に本発明に係る現像装置及び画像形成装置の第二実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
上記第一実施形態では、上流スリーブのRzを下流より大きくし、付着力を低減することで対応しているが、十分な耐久性があるといえない(濃度低下)。
【0086】
現像剤担持体表面に大きな凹凸があると、特に凸部のまわり、つまり凹部にトナーが付着し、核となり、新たなトナーが付着、成長する現象であるトナー融着が発生する。すると、先ず、現像領域へのトナー量が低下するために画像濃度の低下が生じる。また、従来、良好な現像を行わせるために、現像時に現像剤担持体には、直流電圧及び/又は交流電圧の重畳された現像バイアスを印加する。しかし、現像剤担持体表面にトナー融着が生じると、現像剤担持体表面に融着物による高抵抗層ができてしまい、現像時に現像剤担持体と像担持体間の現像領域に所望の電界が形成されないことが起こる。この結果、現像バイアスによる十分な現像効果が得られず、画像濃度が低下し、白抜けのような画像不良が生じる。上記説明したトナー融着は、微粉などの高Q/Mトナーの付着力と異なる。必要以上の凸を設けないことが必要である。
【0087】
そこで、本実施形態では、対策手段として、K(形状係数)に注目する。まず、現像剤担持体表面粗さについて図16(a)、図17、図18に名称と記号を、図16(b)に3次元形状を示す(JISb0601−1982、1994、ISO468−1982Surfaceroughness参照)。Smは、山と山の平均間隔を、Δaは山の傾斜角度θaのTanを示す。Rmaxは、高いポイントと低いポイントの高さを示す。
【0088】
本実施形態では、上記粗さ以外に、谷高さRp、谷深さRv、山谷の高さRmaxからなる形状係数K(K=Rv/Rmax)に注目し現像剤担持体付着を防止する方法を提案している。
【0089】
現像剤担持体の表面粗さ面積を二分する平均値に対して、Rpは粗さの平均線から山の頂上までの高さをいい、Rvは粗さの平均線から谷の底までの高さをいう。つまりRp+Rv=Rmaxである。
【0090】
上記述べたとおり、現像剤担持体付着は現像剤担持体の凹凸の凹部で主に発生する。凹部に微粒子が付着し核となり、周囲に他の物質が付着、成長することで現像剤担持体汚染が発生する。つまり、凹部をなくせば、付着することはない。凹部は、粗さの谷の部分にあるため、谷の粗さを極力おさえる、理想的には平らにすることで、現像剤担持体汚染が解決できる。
【0091】
K値をコントロールするためには、ブラスト条件を変更することで対応できる。たとえば、圧力を高く、ブラスト時間を長く、現像剤担持体とブラスト先端の距離を遠くするなどでK値を小さくすることが可能になる。
【0092】
図13に理想の粗さ形状を示す。図13(a)では、谷部の粗さを平らにし、全体の粗さを一定量保つことで、トナー量を保持しながら現像剤担持体付着を低減させている。図13(b)では、谷部に一定の粗さを持たせ、全体の粗さは同じとしている。また、それぞれの3次元形状の一例を、図13(c)、図13(d)に示す。
【0093】
図14に形状係数Kの計算結果を示す。形状係数Kは、RvとRmaxで決定される。凹部を減らす、つまり谷の高さを小さくする場合、Rmaxを小さくするか、形状係数を小さくすことで対応できる。なお、本実験の形状作成の基本条件は、スリーブ材質アルミ、FGB#600、ブラスト圧2kgf、回転速度10rpm、ブラスト時間10sec、ブラスト距離150mm、ブラスト口径Φ10、である。Rmaxを上昇させたい場合はブラスト圧をあげること、またRVを下げるにはFGBの番手を大きくすること、またはブラスト時間を延ばすことなどが上げられる。組み合わせは無数あり、スリーブの材質やトナーの物性によって適正化することが望ましい。
【0094】
図19は、形状係数に対する上流スリーブ付着力について、スリーブ上のQ/Mを4μc/cm2から20μc/cm2まで変化させたときにデータである。なお、本件では、下流にくらべ上流の付着力が画像濃度耐久性に影響を与える寄与度が高いため、上流のみのデータとしている。
【0095】
実験条件は、スリーブ材質アルミ、FGB#600、ブラスト圧2kgf、回転速度10rpm、ブラスト時間10sec、ブラスト距離150mm、ブラスト口径Φ10、ネガトナー、画像比率1%、水分量1g、加速、50k時点データである。Q/Mの大きさはトナーの外添処方をかえることで対応している。
【0096】
図19に示すように、形状係数が0.45を超えるとスリーブ付着力が増加していることがわかる。つまり、下地のでこぼこに付着させない形状は、山と谷の比率を55:45にする必要があることになる。これは、トナーの粒径やQ/Mとの関係もある。本実施形態では、約5μ〜7μのトナー、ネガ系の外添剤は50nm〜100nmを採用している。つまり、更に小径化が進むと、形状係数を下げる必要がある。粒径が大きくなると画質、とくに飛び散りや文字の再現性が悪化する。一般、7μ以下のトナーが使われているため、0.45以下で十分である。
【0097】
つぎに下限の形状係数について述べる。形状係数は卓上である程度値をだすことができる。
【0098】
図15に計算に用いる図を示す。下地に付着しない場合、つまり、下地の粗さがほぼゼロであるときが下限の形状係数になる。まず、トナー粒径が5μ〜7μで、トナー量を安定した状態のRmaxを測定したところ、10.419μm、下地の長さSm2はほぼ60μであった。本実施形態では、ブラストする砥粒の形状はほぼ円形であるため、外接円の角度θaは60度である。これらの条件から、平均値より高い面積をS1、低い谷の部分の面積をS2とした場合、S1=S2を満たす値が下限の形状係数となる。
【0099】
下記連立方程式を解くと、
・S1=(Sm1+Sm2)×y/2
・S2=(x/30.5)×2×x/2
・x+y=Rmax
・Sm1=Sm2−y/30.5
面積は、約48μm2であり、形状係数は0.1247となる。
【0100】
本実施形態の実験結果を図23に示す。本実験の条件は、SBギャップ200μ、SSギャップ400μ、上流下流現像剤担持体回転速度を500mm/sec、シリカ量2%、粒度8μm、微粉量20%、環境23度70%、画像duty5%、連続通紙でスリーブ付着力、画質、を測定している。
【0101】
図23に示すように、実施例(2)―1は、実施例(1)―4に比べ、上流スリーの形状係数を下流にくらべ小さく0.45まで少なくした。これにより、上流スリーブ付着力を0.10まで低下させることができ、かつ、反射濃度1.4以上の濃度耐久性も650k枚から700k枚まで向上した。さらに実施例(2)―2は、形状係数を0.25まで下げると上流スリーブ付着力は0.08まで低下し、反射濃度1.4以上の耐久枚数も750k枚まで向上している。
【0102】
トナーの粒度を小径化(8μから5.5μ)した実施例(2)―3では、おなじ形状係数であるが付着力が増加している。これは、微粉が増加したためである。さらに、実施例(2)―4では形状係数を0.2まで下げると、逆にミクロなコート性が悪化している。コート性とは、トナー同士が磁気的に形成している穂立ちの高さ・太さの均一性である。コート性は、主に磁気規制力とトナー量によって決定される。マクロなコート性は、大きなトナー量であるRzやRmaxが影響する。一方ミクロなコート性、Rzの山と山の間の穂立ち形成は、形状係数が影響する。上記説明した形状係数は理論的には0.12程度が限界であるが、平坦になりすぎると、ミクロな穂立ち(50μ間隔)が形成できず、高解像度のドット再現性などに影響を与える。本件では、トナーの粒度を5〜7μとしているため、実験では、形状係数を0.20以上0.45以下がコート性を安定させる領域であった。
【0103】
実施例(2)―5は、上流、下流スリーブの形状係数をともに0.25とすると、下流スリーブ付着力が0.05まで低下している。しかしながら、下流スリーブでミクロなコート性が悪化した。原因は上流スリーブと同じである。同じトナー、同じ形状係数なのに下流が悪い理由は、下流スリーブの磁気規制力が上流に比べ大きいためである。上流はマグネットの磁束密度と規制ブレードの磁気によって規制されている。一方、下流スリーブは、下流マグネットの磁束密度と上流の密度で規制されているため磁気拘束力が上流にくらべ大きい。したがって、ある程度のトナー量でないとミクロなコート性を満足することができない。
【0104】
このように、上流現像剤担持体に比べ下流現像剤担持体の形状係数を少なくすることで、上流現像剤担持体の付着力を低下させ、かつ、画質を安定させ、また、耐久安定性を向上することができた。好ましくは、上流現像剤担持体の形状係数を0.20以上0.45以下、下流現像剤担持体の形状係数を0.3以上0.55以下とする。
【0105】
尚、本件の現像条件、あくまでも一例であり、画像形成装置の仕様、条件に応じて最適化することが望ましい。
【0106】
[第三実施形態]
次に本発明に係る現像装置及び画像形成装置の第三実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0107】
上記第二実施形態では、スリーブ付着力が低減し濃度安定は達成できた。しかし、画質的に従来例とほぼ同じである。たとえば、飛び散りは従来の21に対して、実施例(2)―1では21でほとんど変わらない。そこで、本実施形態では、スリーブ付着力を下げたまま、画質、特に飛び散りを高める方法について提案する。
【0108】
現像における飛び散りは、潜像と現像間に形成された電界に応じてトナーが飛翔し、ライン潜像、ドット潜像のエッジ部で、不適切なトナー、たとえば、ネガ帯電量が少ないトナーが潜像のない場所へ飛翔する現象である。また、感光ドラム表面のトナー像を転写するとき、トナー像に電荷を与えるときなどでもトナーが潜像形成部から散ることがある。つまり、トナー自体の電荷量であるトリボを上げることで、対ドラムとの吸着力をため、飛び散りを改善することが可能になる。
【0109】
しかしながら、上記説明したとおり、トリボをあげるために、外添剤であるシリカ量を増加する、粒径を小さくするなどを実施すると、スリーブ付着が発生し、耐久による濃度低下が発生する。
【0110】
そこで本実施形態では、トナーではなく現像剤担持体でトナーの帯電量をコントロールする。上記説明したが、主にスリーブ付着力が高いのは上流現像剤担持体である。そこで、下流現像剤担持体に注目した。
【0111】
下流現像剤担持体のスリーブ付着力は、図22に示す実施例(1)の場合、ほぼ上流現像剤担持体の半分、0.1弱である。しかも下流スリーブの付着力が増加しても濃度耐久性は低下していない。
【0112】
そこで、下流現像剤担持体の粗さRzを下げることで、帯電量を増加させ、画質による影響を検証した。実験結果を図24に示す。本実験の条件は、SBギャップ200μ、SSギャップ400μ、上流下流現像剤担持体回転速度を500mm/sec、上流現像剤担持体と感光ドラムの距離を200μm、下流現像剤担持体と感光ドラムとの距離を300μm、現像バイアスはVpp1.5kv、f2.7kHz、シリカ量2%、粒度8μm、微粉量20%、環境23度70%、画像duty5%、連続通紙でスリーブ付着力、画質、を測定している。
【0113】
図24に示すように、実施例(3)―1は、実施例(2)―1にくらべ、下流現像剤担持体(スリーブ)のRzを6μから5μに小さくしている。これにより、スリーブ付着力は0.1mg・W・cm2から0.15mg・W・cm2と増加しているが、飛び散りは21から19と良くなり、かつ耐久安定性は、700k枚と変化していない。これは、上流と下流の現像剤担持体の機能が異なるため発生している。
【0114】
本実施例(3)では、上流現像剤担持体は主にベタ潜像の現像を行い、下流現像剤担持体は小さいドット(3dotや5dot、1dotは解像度1200dpiの場合、約21μ×21μ)やライン潜像の現像を行う機能分離を実現している。これにより、下流現像剤担持体は多少スリーブ付着が発生しても、濃度などの耐久安定性に影響を及ぼすことはすくない。一方で、下流現像剤担持体の帯電量をあげることで、飛び散りや、ドット再現性を向上させている。具体的には、現像剤担持体3aに担持されたトナーの帯電量(μc/mg)を、現像剤担持体3bに担持されたトナーの帯電量(μc/mg)よりも小さくする。これにより、飛び散りや、ドット再現性を向上させている。
【0115】
本実施例(3)―1では、実施例(2)-1に比べ、Rzを6μから5μにした。これにより、トナーの載り量が減少し、帯電量を9μc/mgから12μc/mgへ増加させている。これにより、飛び散りも従来の21から19へ良くなり、反射濃度が1.4以上である耐久性も700k枚とほぼ同じ寿命をもつ。
【0116】
実施例(3)―3では、下流スリーブの粗さRzを3μまで下げている。結果、トナーの乗り量が減少し、帯電量は14まで上昇、飛び散りも17までよくなっている。濃度耐久性も700k枚と維持している。しかしながら、現像剤担持体上でコート性が不均一になり、画像ムラが悪化している。これは、粗さRzが低く、磁気規制力よりトナー量が小さくなったためである。このように下流スリーブの粗さRzは4μから6μが好ましい。
【0117】
本実施例(3)の帯電量(Q:μc/mg)は、現像剤(M:mg)が保持する単位質量あたりの電荷量であり、現像剤担持体表面を一定の吸引力(W:ワット)、一定時間(T秒)、一定の面積(S:cm2)吸った時のQ/Mであらわす。
【0118】
M=Mx+My(式3)
Q=Mx/S(式4)
現像剤担持体表面の現像剤量(M)、吸引で吸い取られた現像剤量(Mx:mg)、現像剤残量(My:mg)、吸引力(W:ワット)、吸引時間(T:sec)、吸引面積(S:cm2)、吸引電荷量(Q:μc)
【0119】
上記説明したとおり、現像スリーブの表面荒さ(Rzと形状係数)の最適化によって、スリーブは付着力を低減し、かつ帯電量を増加させ、画質の向上、耐久安定性を実現できる。
【0120】
本実施例によれば、形状係数、最大高さ等の粗さを規定することで山と山の隙間に小径物質の付着を抑制できる。平均山間隔によって、トナー量を安定させ、高速回転でも十分コートを安定させることができる。現像剤担持体表面に安定して均一に現像剤(トナー)を薄層コートし、かつ、環境変動や耐久変動等に対応し長時間安定コート、特に現像剤担持体付着を低減できる。
【0121】
尚、本件の現像条件はあくまでも一例であり、画像形成装置の仕様、条件に応じて最適化することが望ましい。
【0122】
図20は、上記説明したパラメータを変更した場合の効果を記載した図である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第一実施形態に係る現像装置を備えた画像形成装置の構成図である。
【図2】現像バイアスを示す図である。
【図3】従来例のスリーブ付着量、濃度推移を示す図である。
【図4】スリーブ付着力と反射濃度の関係図である。
【図5】スリーブ付着量(透過濃度)と付着量の関係図である。
【図6】吸引時間に対するスリーブ付着量の関係図である。
【図7】スリーブ付着力に対する付着力(透過濃度)の関係図である。
【図8】帯電量に対するスリーブ付着力の関係図である。
【図9】画像比率に対するスリーブ付着力の関係図である。
【図10】SBギャップに対するスリーブ付着力の関係図である。
【図11】SSギャップに対するスリーブ付着力の関係図である。
【図12】回転速度に対するスリーブ付着力の関係図である。
【図13】第二実施形態に係る現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図14】第二実施形態に係る谷の高さと形状係数の関係を示す図である。
【図15】第二実施形態に係る現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図16】現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図17】現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図18】現像剤担持体の表面粗さを示す図である。
【図19】第二実施形態における形状係数とスリーブ付着力の関係を示す図である。
【図20】パラメータと効果の関係を示す図である。
【図21】透過濃度と付着力との関係
【図22】実施例(1)の実験結果を示す図である。
【図23】実施例(2)の実験結果を示す図である。
【図24】実施例(3)の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0124】
L …画像露光
P …転写材
t …トナー
1 …感光ドラム(像担持体)
2 …一次帯電器
3 …現像装置
3a …現像剤担持体(第1のトナー担持体)
3b …現像剤担持体(第2のトナー担持体)
3c …現像容器
3d …第一攪拌部
3e …第二攪拌部
3f …表面
3g …表面
3h …上流マグネットロール
3i …下流マグネットロール
3j …層厚規制ブレード(規制部材)
4 …ポスト帯電器
5 …転写帯電器
6 …分離帯電器
7 …クリーニング装置
8 …定着装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成された静電像を現像するべく互いに近接して設けられ磁性トナーを磁気的に担持して搬送する第1及び第2のトナー担持体と、前記第1のトナー担持体に担持されたトナーの層厚を規制する規制部材と、を有し、前記第2のトナー担持体に担持されたトナーの層厚規制を前記第1のトナー担持体により行う現像装置において、
所定の吸引力W(W)で所定時間T(sec)に亘り前記トナー担持体の所定の吸引面積S(cm2)からトナーを吸引した後に前記トナー担持体に残留したトナー量をMy(mg)、吸引後にトナー量が安定するまでの平衡時間をTs(sec)とし、前記トナー担持体に対するトナーの付着力Afを(My×W/S)×(Ts/T)としたとき、
前記第1のトナー担持体に対するトナーの付着力Afは、前記第2のトナー担持体に対するトナーの付着力Afよりも小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー担持体の表面粗さ面積を二分する平均値に対して、山の高さをRp、谷の高さをRv、山谷の高さをRmaxとしたとき、
前記第1のトナー担持体の形状係数Kは0.20以上0.45以下、前記第2のトナー担持体の形状係数Kは0.3以上0.55以下であり、且つ、前記第1のトナー担持体の形状係数K(K=Rv/Rmax)は前記第2のトナー担持体の形状係数Kよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第1のトナー担持体に担持されたトナーの帯電量(μc/mg)は、前記第2のトナー担持体に担持されたトナーの帯電量(μc/mg)よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記第1のトナー担持体の表面粗さRzは6.0以上8.0以下、前記第2のトナー担持体の表面粗さRzは3.0以上6.0以下であり、且つ、前記第2のトナー担持体の表面粗さRzは前記第1のトナー担持体の表面粗さRzよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記第1のトナー担持体と前記第2のトナー担持体に直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアスを印加するバイアス印加手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項1】
像担持体に形成された静電像を現像するべく互いに近接して設けられ磁性トナーを磁気的に担持して搬送する第1及び第2のトナー担持体と、前記第1のトナー担持体に担持されたトナーの層厚を規制する規制部材と、を有し、前記第2のトナー担持体に担持されたトナーの層厚規制を前記第1のトナー担持体により行う現像装置において、
所定の吸引力W(W)で所定時間T(sec)に亘り前記トナー担持体の所定の吸引面積S(cm2)からトナーを吸引した後に前記トナー担持体に残留したトナー量をMy(mg)、吸引後にトナー量が安定するまでの平衡時間をTs(sec)とし、前記トナー担持体に対するトナーの付着力Afを(My×W/S)×(Ts/T)としたとき、
前記第1のトナー担持体に対するトナーの付着力Afは、前記第2のトナー担持体に対するトナーの付着力Afよりも小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー担持体の表面粗さ面積を二分する平均値に対して、山の高さをRp、谷の高さをRv、山谷の高さをRmaxとしたとき、
前記第1のトナー担持体の形状係数Kは0.20以上0.45以下、前記第2のトナー担持体の形状係数Kは0.3以上0.55以下であり、且つ、前記第1のトナー担持体の形状係数K(K=Rv/Rmax)は前記第2のトナー担持体の形状係数Kよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第1のトナー担持体に担持されたトナーの帯電量(μc/mg)は、前記第2のトナー担持体に担持されたトナーの帯電量(μc/mg)よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記第1のトナー担持体の表面粗さRzは6.0以上8.0以下、前記第2のトナー担持体の表面粗さRzは3.0以上6.0以下であり、且つ、前記第2のトナー担持体の表面粗さRzは前記第1のトナー担持体の表面粗さRzよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記第1のトナー担持体と前記第2のトナー担持体に直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアスを印加するバイアス印加手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置。
【図1】
【図2】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−282074(P2009−282074A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131081(P2008−131081)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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