説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】 現像剤の通過領域が制限されることや、現像剤担持体を損耗することがなく、長期間安定した品質の画像を現像することができると共に、組立てコストを省いてコストダウンを図ることができる現像装置、及びその現像装置を備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 横搬送方式の現像装置において、複数からなる、例えば、第1の現像剤搬送路33Yaと第2の現像剤搬送路33Ybとからなる搬送路を隔てる隔壁35Yを、ハウジング31Yaとは別体に形成し、引き剥がす際に掴むための余剰代を有する2つの封止シールSを隔壁35Yの両連通孔35Yaを塞ぐようにそれぞれ固着した後、ハウジング31Yaに取り付け、ハウジング31Yaには、封止シールSの余剰代を外部へ露出するためのスリットS1を設ける。そして、スリットS1を塞ぎ部材Pで封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等の電子写真方式の画像形成装置に関し、詳しくは、そのような画像形成装置に搭載され、現像剤がプリセットされた状態で出荷される2成分現像剤を用いた横搬送方式の現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、装置全体がハウジングで一体化されており、そのハウジングに回転可能に軸支された現像剤担持体である現像ローラと、ハウジング内に現像ローラの回転軸と平行に形成され、現像ローラに現像剤を搬送するための2本の現像剤搬送路と、この2本の現像剤搬送路内にそれぞれ設けられ、互いに逆方向に現像剤を撹拌しながら搬送する2つのスクリュー形状の撹拌搬送部材と、が備えられ、前記2本の現像剤搬送路は、両端部にそれぞれ設けられた連通孔で連通されており、これら2つの連通孔を介して前記2本の現像剤搬送路間を現像剤が循環すると共に、別途新規トナーを補給しつつ前記2つの撹拌搬送部材で現像剤を撹拌・帯電させて現像ローラへ供給する2成分現像剤を用いた2軸搬送方式(横搬送方式)の現像装置が知られている。また、このような2軸搬送方式の現像装置のハウジング内に現像剤をプリセットして出荷する際にハウジングから外部へ現像剤が漏れたり、搬送中に現像剤と現像ローラの表面とが擦れ合って現像ローラの表面が損耗したりしないようにするために、現像剤搬送路の外周全域に亘って封止シールを溶着して封止し、画像形成装置に装着するときにユーザ等がこの封止シールを引き剥がして使用可能とする現像装置も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハウジングである現像ケースを、現像ローラ51Yが収容されるスペースを形成する上ケース75Yと、現像剤搬送路(53Y,54Y)を有する下ケース76Yと、に分割すると共に、この下ケース76Yの現像剤搬送路(53Y,54Y)に現像剤をプリセットして、これら両ケースを連通する連通口59Yを、2つ折にした封止シールである接着シート73Y−aが接着された枠体73Y−bで封止して、ユーザが現像装置を使用するときに、接着シート73Y−aの一端を現像ローラ51Yの軸方向(長手方向)に沿って引き抜くことで、下ケース76Yから現像ローラ51Yが収容されている上ケース75Yへの現像剤の移動を可能とする現像装置が記載されている(特許文献1の図2、図6等参照)。
【0004】
このような現像装置は、量産性や異物混入防止の観点から、接着シート(封止シール)の現像ケース(ハウジング)への熱溶着による接着工程を現像装置の組立工程と別工程で行うために、一度枠体に接着シートを接着するようにして、その接着シートが接着された枠体を下ケースと上ケースとの間に挟み込んで組み立てるように構成したものであるが、特許文献1に記載の現像装置では、現像剤搬送路から現像剤担持体である現像ローラを収容するスペースへ現像剤が通過する際の通過領域が前記枠体の接着シールの接着(又は溶着)代により制限され、ドクタブレード付近での現像ローラの軸方向に亘る現像剤の存在量が均一でなくなり、現像ローラへの現像剤の供給が不安定となって、現像した画像の品質低下を招来するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、前記従来の現像装置の問題を解決するべく、ハウジング内に現像剤をプリセットして出荷する際に現像剤が外部へ漏れないように封止する封止シールの取り付け位置や引き剥がし方向等を改良し、現像剤の通過領域が制限されることや、現像剤担持体を損耗することがなく、長期間安定した品質の画像を現像することができると共に、組立てコストを省いてコストダウンを図ることができる現像装置、及びその現像装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の現像装置の発明は、装置全体のハウジングと、このハウジングに回転可能に軸支されて現像剤を担持する現像剤担持体と、両端部付近にそれぞれ現像剤を循環させるための連通孔を有する隔壁で互いに隔てられ、前記ハウジング内に前記現像剤担持体の回転軸と平行に形成された複数の現像剤搬送路と、が備えられ、前記連通孔を介して現像剤が前記複数の現像剤搬送路間を循環しながら前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像装置において、前記隔壁は、前記ハウジングとは別体に形成されて、引き剥がす際に掴むための余剰代を有する封止シールが前記連通孔を塞ぐようにそれぞれ固着された後、前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングには、前記封止シールの余剰代を外部へ露出するためのスリットが設けられており、外部に露出する前記余剰代を掴んで引張って前記連通孔から前記封止シールを引き剥がすことにより前記複数の現像剤搬送路間が連通して現像剤が循環可能となることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の現像装置の発明は、請求項1に記載の現像装置において、隔壁は、封止シールを固着した面が現像剤担持体側となるようにハウジングに取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の現像装置の発明は、請求項1又は2に記載の現像装置において、スリットは、封止シールを引き剥がす際に当該封止シールと現像剤担持体とが接触しない位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の現像装置の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置において、スリットは、ハウジングの上面に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の現像装置の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置において、スリットは、複数の現像剤搬送路のうち現像剤担持体寄りの現像剤搬送路の外部側面に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の現像装置の発明は、請求項1又は2に記載の現像装置において、現像剤担持体の一部を露出するハウジングの現像剤担持体用の開口から封止シールの余剰代が外部へ露出され、スリットが当該開口と現像剤担持体との隙間で代用されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の現像装置の発明は、請求項6に記載の現像装置において、封止シールを引き剥がす際に、当該封止シールの隔壁との固着面が、現像剤担持体側とならないルートを通って余剰代が外部へ露出されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の現像装置の発明は、請求項7に記載の現像装置において、現像剤担持体に所定距離の間隙を介して対向配置され、現像剤担持体に担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、封止シールの余剰代は、前記間隙から外部へ露出されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の現像装置の発明は、請求項8に記載の現像装置において、ハウジングの層厚規制部材側の外部には、現像剤担持体用の開口の層厚規制部材側の現像領域を封止するシール材が、該シール材を支持固定するシール材固定部材を介して取り付けられ、該シール材固定部材の出隅部は、シール材の先端部より現像剤担持体に近接配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の画像形成装置の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の現像装置が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、前記のようであって、請求項1の発明によれば、装置全体のハウジングと、このハウジングに回転可能に軸支されて現像剤を担持する現像剤担持体と、両端部付近にそれぞれ現像剤を循環させるための連通孔を有する隔壁で互いに隔てられ、前記ハウジング内に前記現像剤担持体の回転軸と平行に形成された複数の現像剤搬送路と、が備えられ、前記連通孔を介して現像剤が前記複数の現像剤搬送路間を循環しながら前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像装置において、前記隔壁は、前記ハウジングとは別体に形成されて、引き剥がす際に掴むための余剰代を有する封止シールが前記連通孔を塞ぐようにそれぞれ固着された後、前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングには、前記封止シールの余剰代を外部へ露出するためのスリットが設けられており、外部に露出する前記余剰代を掴んで引張って前記連通孔から前記封止シールを引き剥がすことにより前記複数の現像剤搬送路間が連通して現像剤が循環可能となるので、現像剤の通過領域制限が無くなり、現像剤担持体の軸方向全域に亘って現像剤を安定して供給することができるため、長期に亘り安定した品質の画像を現像することができる。また、封止シールを隔壁に溶着(接着)する際の熱溶着も、従来のハウジングを上下に分離した水平な連通口の外周囲全域を熱溶着するのに比べて、現像剤搬送路の隔壁の連通孔の外周のみを熱溶着するだけで済むため、熱溶着の熱量も少なくて済み、部材の加工時間も少なくなるので、省エネ、コストダウン効果にも優れている。
【0017】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の現像装置において、隔壁は、封止シールを固着した面が現像剤担持体側となるようにハウジングに取り付けられているので、つまり、引き抜く封止シールが現像剤と接触する面が連通孔部分だけなので、前記効果に加え、封止シールを引き抜く際に装置内及び装置外において飛散してしまう現像剤を極力少なくすることができると共に、引き抜いた封止シールの現像剤で汚れた部分をユーザ等が触って手や周囲を汚してしまうおそれが少なくなる。
【0018】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2に記載の現像装置において、スリットは、封止シールを引き剥がす際に当該封止シールと現像剤担持体とが接触しない位置に設けられているので、前記効果に加え、封止シールを引き剥がす際に封止シールの端部などが現像剤担持体と接触して現像剤担持体の表面を傷つけるおそれが少なくなる。
【0019】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置において、スリットは、ハウジングの上面に設けられているので、つまり、現像装置を搬送する際には、スリットを塞ぐ塞ぎ材など何らかの手段でスリットを塞がなければならないが、前記効果に加え、その塞ぎ材等が振動や重力の影響で輸送中及び現像動作中に脱落して現像剤が漏出するおそれが少ない。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置において、スリットは、複数の現像剤搬送路のうち現像剤担持体寄りの現像剤搬送路の外部側面に設けられているので、前記効果に加え、封止シールが固着されている面に対して封止シールの余剰代を垂直に引き抜く構成とすることができ、ユーザ等が封止シールを引き剥がす際に、失敗して封止シールが連通孔周りに残存するおそれが少なくなるだけでなく、誰でも容易に封止シールを引き剥がすことができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、請求項1又は2に記載の現像装置において、現像剤担持体の一部を露出するハウジングの現像剤担持体用の開口から封止シールの余剰代が外部へ露出され、スリットが当該開口と現像剤担持体との隙間で代用されているので、前記効果に加え、ハウジングにスリットを設けたり、スリットを塞ぐ塞ぎ部材を設けたりする必要がなくなり、コストダウンを図ることができる。また、スリットが必要ないので、スリットから塞ぎ部材等が脱落して現像剤やトナーなどが飛散する心配がなくなる。
【0022】
請求項7の発明によれば、請求項6に記載の現像装置において、封止シールを引き剥がす際に、当該封止シールの隔壁との固着面が、現像剤担持体側とならないルートを通って余剰代が外部へ露出されているので、前記効果に加え、封止シールを隔壁から引き剥がした後の封止シールの固着面にある鋭利な断片や硬化した接着剤などが現像剤担持体の表面を傷つけてしまうおそれがない。
【0023】
請求項8の発明によれば、請求項7に記載の現像装置において、現像剤担持体に所定距離の間隙を介して対向配置され、現像剤担持体に担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、封止シールの余剰代は、前記間隙から外部へ露出されているので、前記効果に加え、現像動作中において、前記間隙は、現像剤で塞がれるので、そこから現像剤やトナーが飛散するおそれが最も少ない。
【0024】
請求項9の発明によれば、請求項8に記載の現像装置において、ハウジングの層厚規制部材側の外部には、現像剤担持体用の開口の層厚規制部材側の現像領域を封止するシール材が、該シール材を支持固定するシール材固定部材を介して取り付けられ、該シール材固定部材の出隅部は、シール材の先端部より現像剤担持体に近接配置されているので、ユーザ等が、封止シールを引き抜く際に、シール材の先端部に封止シールが接触するおそれが少なく、そのため、現像領域の露光領域側をシールするシール材の先端部を損傷してシール機能を損ねるおそれが少ない。
【0025】
請求項10の発明によれば、請求項1ないし9のいずれかに記載の現像装置が備えられているので、画像形成装置において前記効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の内部構造の概略を正面視で示す構成説明図である。
【図2】同上のイエロー用の作像ユニット付近を拡大して示す鉛直断面図である。
【図3】実施例1に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。
【図4】実施例1に係る隔壁の連通孔付近を示す斜視図である。
【図5】実施例1に係る下ケースに隔壁をセットする前の状態を示す斜視図である。
【図6】同上のセット後の状態を示す斜視図ある。
【図7】実施例2に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。
【図8】実施例3に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。
【図9】実施例4に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。
【図10】実施例5に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。
【0028】
[画像形成装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の内部構造の概略を正面視で示す構成説明図である。図中の符号1は、本発明の画像形成装置の一実施の形態として例示する4連タンデム型中間転写方式の画像形成装置であり、色材3原色であるイエロー、マゼンタ、シアンと、無彩色であるブラックの4色のトナーからフルカラーの画像を形成するカラープリンタである。このカラープリンタ1は、装置全体の筐体である装置本体10と、この装置本体10の上部に配置され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーに対応した4つのトナー容器を収容するトナー容器収容部2と、装置本体10の中央に配置され、前記4色のトナーからそれぞれの単色トナー像を形成する作像部3と、この作像部3の下方に配置され、作像部3のそれぞれの潜像担持体に静電潜像を書き込む露光部4と、作像部3の上方に配置され、作像部3で形成したトナー画像をシート材に転写する転写部5と、この転写部5の上方の一側面寄りに配置され、転写部5で転写されたトナー像をシート材に定着する定着部6と、装置本体10の最下部に配置され、被転写材であるシート材を転写部5に給紙する給紙部7と、装置本体10の上面に形成され、定着部6で画像が定着されたシート材をスタックする排紙部8などから構成されている。
【0029】
トナー容器収容部2は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれの新規トナーを個別に収容する4つのトナー容器2Y,2M,2C,2Kを備え、このトナー容器2Y,2M,2C,2Kは、それぞれ装置本体10から着脱自在に構成されており、後述の対応する各現像装置へ新規トナーを供給する機能を有している。各トナー容器に収容されている新規トナーが無くなると、装置本体10からトナー容器ごと外して新規のトナー容器と交換される。
【0030】
作像部3は、前記4色のトナーに対応する潜像担持体である4つの感光体ドラムY,M,C,Kを中心とする後述の4つの作像ユニット3Y,3M,3C,3Kを備えており、各作像ユニット3Y,3M,3C,3Kでは、対応するトナー容器2Y,2M,2C,2Kから供給されるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーを使用して、それぞれ単色のトナー像が形成される。なお、作像ユニットの詳細構成は後述する。
【0031】
露光部4は、半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)などの図示しないレーザ光源や回転駆動可能なポリゴンミラー、fθレンズなどを有し、レーザ光源で発するレーザ光をポリゴンミラー、fθレンズなどで偏向・集光・走査して感光体ドラムY,M,C,Kに照射し、一様に所定の極性に帯電させた感光体ドラムY,M,C,Kの外周表面を露光して帯電レベルを変化させ、静電潜像を形成する露光装置40を備えている。
【0032】
転写部5は、中間転写体として半導電性の弾性樹脂を基体とする離型層などが設けられた多層構造の無端ベルトからなる中間転写ベルト50と、この中間転写ベルト50を支持・張架する4つの支持ローラ51,52,53,54と、前記4つの感光体ドラムY,M,C,Kとそれぞれ中間転写ベルト50を挟んで対向する4つの1次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kなどが備えられている。この支持ローラ51は、図示しない駆動手段の駆動力が伝達可能に構成され、中間転写ベルト50を図の矢印方向に回転駆動する駆動ローラとなっており、その他の支持ローラ52,53,54は、従動ローラとなっている。勿論、支持ローラ51,52,53,54のいずれか1つが駆動ローラとなっていればよい。この駆動ローラ51と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には、2次転写ローラ56が設けられ、この2次転写ローラ56は、中間転写ベルト50を挟んで駆動ローラ51に圧接されており、駆動ローラ51と2次転写ローラ56との間に2次転写ニップが形成されている。また、支持ローラ52と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には、中間転写ベルト50をクリーニングするクリーニングユニット57が設けられており、支持ローラ52は、このクリーニングユニット57のバックアップローラとしての機能を有している。支持ローラ53は、図示しない付勢手段で中間転写ベルト50の外側へ付勢され、中間転写ベルト50の張力を調整するテンションローラの機能を有している。
【0033】
各1次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kは、空隙放電を考慮し、各感光体ドラムY,M,C,Kと中間転写ベルト50を挟んで当接する正対位置から中間転写ベルト50の移動方向下流側へ少しずらした位置に配設され、図示しないバイアス電源に接続されている接触方式の転写バイアス(転写電圧)印加手段である。これらの1次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kは、接離機構58,58により中間転写ベルト50の内周面と接離可能に構成されており、この接離機構58に押圧されて各感光体ドラムY,M,C,Kへ圧接されることによりそれぞれ1次転写ニップを形成し、これらの各1次転写ニップにおいて各感光体ドラム上のトナー像と逆極性の1次転写バイアスを印加して転写電界を形成し、クーロン力によりトナー像を引き寄せて各感光体ドラムから中間転写ベルト50の外周表面に転写する仕組みとなっている。
なお、転写バイアス印加手段として、転写チャージャを用いた非接触方式のものでもよいが、本実施の形態では、転写チリの発生が少ない1次転写ローラが採用されている。
【0034】
2次転写ローラ56は、図示しない付勢手段により駆動ローラ51の外周において中間転写ベルト50に圧接され、2次転写ニップを形成するよう構成されており、図示しないバイアス電源に接続され、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを印加する接触方式の転写バイアス印加手段となっている。また、駆動ローラ51が転写バイアス印加手段となっていてもよく、その場合、転写するトナー像とは同極性の転写バイアスを印加することになる。
【0035】
クリーニングユニット57は、中間転写ベルト50の外周表面に付着した転写残トナーをクリーニングブレードで掻きとって回収し、ファーブラシ等で離型剤を塗布するクリーニング装置であり、回収した転写残トナーは、クリーニングユニット57内から図示しない搬送手段により図示しない廃トナータンクまで搬送され、廃棄される。
【0036】
定着部6は、内部に発熱手段を有する定着ローラ60と、図示しない付勢手段により付勢されて定着ローラ60と圧接可能な加圧ローラ61などを備え、この定着ローラ60と加圧ローラ61とが圧接されて密着し、定着ニップが形成される。そして、定着部6では、この定着ニップにおいて、後述の給紙部7から搬送されてきたシート材に熱と圧力を加えることにより、転写部5で転写されたトナー像をシート材に定着する。勿論、定着ローラ61は、定着ベルトタイプのものであっても構わない。
【0037】
給紙部7は、それぞれ所定の大きさのシート材(コピー用紙や葉書などの紙に限られず、OHPシートなどの樹脂シートを含むシート状のものを指す)を収容・ストックする上下2段の給紙カセット70,71と、手差し用のシート材を載置する手差トレイ72と、図示しない制御手段の制御信号に基づいて回転駆動し、シート材を搬送路Rに送り出すピックアップローラ73,74,75などを備えている。各給紙カセット70,71は、底板が付勢手段で上方へ付勢され、収容するシート材の束をピックアップローラ73,74へ圧接する仕組みとなっている。また、搬送路Rには、シート材を搬送する複数の搬送ローラ対76、シート材の2次転写ニップへの搬送のタイミングを調整するレジストローラ対77などが設けられている。
【0038】
排紙部8は、装置本体10の上面に形成された排紙トレイ80と、この排紙トレイ80に装置本体10からシート材を排紙する排紙ローラ対81などを備え、定着部6を通過したシート材が排紙ローラ対81から排紙されて排紙トレイ80上に集積されるようになっている。
【0039】
[作像ユニット]
次に、プリンタ1の作像ユニットの構成について説明する。
図2は、図1のイエロー用の作像ユニット付近を拡大して示す鉛直断面図である。前述のように、カラープリンタ1は、中間転写ベルト50の下面に沿って表面移動方向上流側からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順番に4つの作像ユニット3Y,3M,3C,3Kが配設されている(図1参照)。これらの作像ユニット3Y,3M,3C,3Kは、使用するトナーの色が相違するだけで略同様な構成となっているので、最上流に配設されたイエロー用の作像ユニット3Yを例に挙げて説明し、他は説明を省略する。
【0040】
図2に示すように、イエロー用の作像ユニット3Yは、矢印方向に回転駆動する感光体ドラムYを中心として回転順に、感光体ドラムYの外周表面を一様に帯電させる帯電装置30Y、感光体ドラムY上に形成された静電潜像に(イエロー色の)トナーを供給してトナー像に現像する現像装置31Y、1次転写後も感光体ドラムY上に付着・残留する残留トナーをクリーニングするクリーニング装置32Yなどが配設されており、帯電装置30Yと現像装置31Yとの間には、露光装置40(図1参照)からレーザ光が通過・照射されるスペースとして露光領域が設けられ、現像装置31Yとクリーニング装置32Yとの間が、1次転写ローラ55Yと対向し、転写が行われる前記1次転写ニップとなっている。
【0041】
帯電装置30Yは、感光体ドラムYと近接して対向配置され、感光体ドラムYの外周表面を所定の極性に一様に帯電させる帯電部材である帯電ローラ30Yaと、この帯電ローラ30Yaに接触するように配置され、帯電ローラ30Yaの外周表面に付着したトナーを除去するクリーニングローラ30Ybなど、から構成されている。なお、現像装置31Yについては後述する。
【0042】
クリーニング装置32Yは、感光体ドラムYに当接し1次転写後も感光体ドラムYの外周表面に付着する1次転写残トナーを掻きとってクリーニングするクリーニングブレード32Yaと、その支持部材32Ybと、クリーニングブレード32Yaで掻きとった転写残トナーを図示しない廃トナータンクへ搬送する廃トナー搬送スクリュー32Ycなど、から構成されている。
【実施例1】
【0043】
[現像装置]
次に、本発明の実施例1に係る現像装置の構成について図2、図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施例1に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。図2及び図3に示すように、実施例1に係る現像装置31Yは、本発明の現像装置の一実施例として例示する2成分現像剤を用いた2軸搬送方式の現像装置であり、主にトナーとキャリアからなる粉体状の2成分現像剤を収容し、装置全体の筐体であるハウジング31Yaと、このハウジング31Yaに軸支され、図の矢印法方向に回転駆動し、現像剤を担持する現像剤担持体である現像ローラ31Ybと、この現像ローラ31Ybに間隙dを介して対向配置され、現像ローラ31Ybに担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材であるドクタブレード31Ycと、2成分現像剤のトナー濃度を検知する濃度検知手段である濃度センサ31Yd(図2参照)と、から主に構成されている。
【0044】
ハウジング31Yaは、第1のハウジングである下ケース33Yと、第2のハウジングである上ケース34Yと、から構成され、上ケース34Yの両端部付近の一側面には、図示しない円筒形状のボスが突設され、このボスと対応する下ケース33Yの両端部には、ボス穴が設けられ、このボスとボス穴とを嵌合させて、下ケース33Yに上ケース34Yの一側面をセットし、そこを支点として上ケース34Yを回転させることにより、両ケースは、図示しないスナップフィットで容易に嵌着できるようになっている。また、符号31Yeは、現像ローラ31Ybの一部を露出して感光体ドラム(Y)と近接対向させるための開口部であり、符号31Yfは、トナー容器2Yと連通するトナー補給口(図2参照)、符号31Ygは、シール材、符号31Yhは、シール材固定部材である。なお、これらシール材31Yg及びシール材固定部材31Yhについては後述する。
【0045】
この下ケース33Yには、図3に示すように、現像ローラ31Ybへ現像剤を搬送する2本の第1の現像剤搬送路33Yaと第2の現像剤搬送路33Ybとが、現像ローラ31Ybの回転軸と平行に、且つ、この現像ローラ31Ybの軸方向を長手方向とする概略が平面視で長方形状に形成され、これらの現像剤搬送路33Ya,33Ybには、それぞれ2成分現像剤を撹拌しながら搬送する2本の撹拌搬送部材であるスクリュー33Yc,スクリュー33Ydが装備されている。第1の現像剤搬送路33Ya及び第2の現像剤搬送路33Ybは、下ケース33Yとは別体に金属又は樹脂などの所定の剛性を有する素材から形成された概略矩形平板状の隔壁35Yで互いに隔てられており、この隔壁35Yの両端付近には、現像剤を循環させるための2つの連通孔35Ya,35Yaが形成され、第1の現像剤搬送路33Yaと第2の現像剤搬送路33Ybとが、その両端部で連通されている(図5参照)。また、スクリュー33Ycとスクリュー33Ydとは、現像ローラ31Ybの回転軸に沿って互いに逆方向に搬送するように設定されており、このスクリュー33Ycとスクリュー33Ydとにより、連通孔35Ya,35Yaを介して第1の現像剤搬送路33Yaと第2の現像剤搬送路33Ybとの間を現像剤が循環する構成となっている。
なお、図5及び図6に示すように、下ケース33Yは両端部が上方に突出した形状となっており、その突出した部分で現像ローラ31Ybの回転軸が軸支される。
【0046】
上ケース34Yには、第1の現像剤搬送路33Yaの上部空間を形成するトナー補給部34Yaと、第2の現像剤搬送路33Ybの上部空間を形成すると共に、現像ローラ31Ybの周囲を覆う現像ローラ収容部34Ybと、これらトナー補給部34Yaと現像ローラ収容部34Ybとを隔てる隔壁部34Ycと、から主に構成され、現像ローラ収容部34Ybの上部面には、後述の封止シールS(の余剰代)を露出するための2つのスリットS1,S1が、隔壁部34Ycに沿って形成されている。
【0047】
現像ローラ31Ybは、図3に示すように、ハウジング31Yaに対して固定され、所定の箇所において異なる磁性を発生させる磁界発生手段であるマグネットローラMYと、このマグネットローラMYに外嵌されて回転可能な現像スリーブSYと、から構成され、ハウジング31Yaの開口部31Yeから部分的に露出して感光体ドラムYと近接対向し、図の矢印方向に回転駆動される。
【0048】
ドクタブレード31Ycは、現像ローラ31Ybの軸方向を長手方向とする断面L字状のブレード板からなり、現像ローラ31Ybの外周表面に向けて下ケース33Yに突設され、その突端と現像ローラ31Ybの外周面とが所定距離(間隙d分)だけ離間するようにハウジング31Yaの下ケース33Yにネジ止めされている。
【0049】
なお、ドクタブレード31Ycの外部側面には、ポリウレタンなどの樹脂シートからなる現像ローラ31Ybの幅より広い矩形状のシール材31Ygが、シール材固定部材31Yhを介してその先端が感光体ドラムYの外周表面に摺接するよう突設されており、このシール材31Ygで現像領域の露光領域側をシールし、ハウジング31Yaから外部へのトナーの飛散や、逆に紙粉などの粉塵のハウジング31Ya内への侵入を防止している。シール材固定部材31Yhのハウジング31Yaへの固定は、ドクタブレード31Yc及び下ケース33Yの側面を貫通する図示しない複数の係合孔と、この係合孔に係合するシール材固定部材31Yhに突設された図示しない係合突起と、を係合させて装着するスナップフィットとなっている。また、シール材31Ygのシール材固定部材31Yhへの固定は、両面テープなどで接着固定されている。
【0050】
(現像動作)
次に、現像装置の動作について図2及び図3を用いて説明する。
ハウジング31Ya内の現像剤Gは、濃度センサ31Yd(図2参照)で現像剤中のトナー濃度が測定されており、トナー濃度が低下すると消費トナーに応じて図示しない制御手段の指令によりトナー補給口31Yfを介してトナー容器2Yからトナーが補給され、トナー濃度が所定範囲内に制御・調整されている。先ず、現像剤Gは、スクリュー33Ycで第1の現像剤搬送路33Ya内を混合・撹拌されながら搬送されて行き、連通孔35Yaを通過して第2の現像剤搬送路33Ybへ搬送される。そして、スクリュー33Ydで搬送方向を変えて第2の現像剤搬送路33Yb内を搬送されて行くと共に、現像ローラ31Ybに担持される。現像ローラ31Ybに担持されない現像剤Gは、もう一方の連通孔35Yaを通過して第1の現像剤搬送路33Yaの始端付近へ循環する。
【0051】
現像ローラ31Ybへの現像剤Gの供給は、第2の現像剤搬送路33Yb内を搬送されて行く途中に現像剤GがマグネットローラMYの磁力に汲み上げられ、現像ローラ31Yb(現像スリーブSY)に担持されることで行われる。そして、ドクタブレード31Ycの先端と現像ローラ31Ybとの間隙dにより現像剤の層厚が規制され、現像スリーブSYが回転することにより感光体ドラムYの外周面と近接対向する現像領域に運ばれる。そこで、現像ローラ31Ybに担持されたイエロー色のトナーが、感光体ドラムYの外周面に形成された静電潜像にクーロン力により静電的に移行することにより感光体ドラムY上の静電潜像が可視化されてイエロートナー像となる。現像後に感光体ドラムYの外周表面に残る現像剤は、現像スリーブSYの更なる回転によりマグネットローラMYの反発磁界領域まで搬送されて現像スリーブSYの表面から磁力により離脱する。現像スリーブSYの表面から離脱した現像剤は、第2の現像剤搬送路33Ybに落下し、循環して再度の現像に使用される。
【0052】
(作像ユニットの動作)
次に、作像ユニットの動作について図2を用いて説明する。
先ず、帯電ローラ30Yaにより感光体ドラムYの外周表面を均一に所定の極性に帯電し、この帯電ローラ30Yaの感光体ドラムYの回転方向下流域において、露光部4により画像情報に基いてレーザ光を照射し、一様に帯電させた感光体ドラムYの表面電位を照射した部分だけ低下させることにより静電潜像を形成する。そして、前記のように現像装置31Yで静電潜像をトナー像化して現像する。このトナー像は、感光体ドラムYの回転に伴って1次転写ニップに移動し、そこで、1次転写ローラ55Yから1次転写バイアスが印加され、クーロン力により中間転写ベルト50へ転写される。そして、1次転写後も感光体ドラムYの外周表面に付着する1次転写残トナーが、クリーニング装置32Yでクリーニングされ、再度の画像形成に備えられる。
【0053】
(画像形成動作)
次に、カラープリンタ1の画像形成動作について図1を用いて説明する。
先ず、前述のように、作像ユニット3Yにおいてイエローの単色トナー像が感光体ドラムY上に形成される。続いて、1次転写ニップまで感光体ドラムYを回転させ、そこで、1次転写ローラ55Yにより、トナーの極性とは逆極性(例えば、プラス)の1次転写バイアスを印加し、静電引力により中間転写ベルト50にイエロー単色のトナー像を転写する。これと同様に、その他の作像ユニット3M,3C,3Kにおいても単色トナー像の画像形成が行われると共に、中間転写ベルト50の回転のタイミングに合わせてイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順番で1次転写が行われ中間転写ベルト50上に重畳されて、フルカラーのトナー像が形成される。
【0054】
一方、給紙部7から搬送されてきたシート材がレジストローラ対77により転写とのタイミングを調整されて2次転写ニップに送られる。そこで、2次転写ローラ56により2次転写バイアスが印加され、静電引力により中間転写ベルト50上のフルカラーのトナー像がシート材上に転写される。次に、この未定着のトナー像を表面に担持したシート材が定着部6の定着ニップに送られ、熱と圧力が加えられて定着される。このように、シート材に画像が定着された後、排紙部8に排出されてスタックされる。また、2次転写後の中間転写ベルト50の表面に転写後も付着する転写残トナーは、クリーニングユニット57により除去され、再度の画像形成動作に備えられる。そして、クリーニングユニット57で除去された転写残トナーは、図示しない廃トナータンクなどに運ばれ廃棄される。
【0055】
ところで、このように構成される実施例1に係る現像装置31Yは、現像剤Gがプリセットされて出荷される。このとき、輸送中にハウジング31Yaから外部へ現像剤が漏れたり、現像剤と現像ローラ31Ybの表面とが擦れ合って現像ローラ31Ybの表面が損傷したりしないようにするために、従来の現像装置と同様、2つ折りにした封止シールSで現像剤が封止され、カラープリンタ1に装着するときにユーザ等がこの封止シールSの一端を引張って封止シールを引き剥がして使用するようになっている。しかし、この封止シールSが、実施例1に係る現像装置31Yでは、隔壁35Yの2つの連通孔35Ya,35Yaに固着されている点が従来の画像形成装置と相違する。
【0056】
(封止シール)
次に、実施例1に係る封止シール、及びその封止シールの現像装置への配設、並びにその経路について図4〜図6、及び図3を用いて説明する。図4は、実施例1に係る隔壁の連通孔付近を示す斜視図、図5は、実施例1に係る下ケースに隔壁をセットする前の状態を示す斜視図、図6は、図5のセット後の状態を示す斜視図ある。
封止シールSは、図5及び図6に示すように、連通孔35Yaの開口幅より少し広く、開口高さよりかなり長い余剰代を有する帯状の樹脂フィルムからなり、図4に示すように、ハウジング31Yaとは別体に作られた隔壁35Yの連通孔35Yaの周り(図中の点描部分は、熱溶着の範囲を示す)に、その一端付近の所定範囲が機械式の熱溶着器具(図示せず)により熱溶着されて固着されている。そして、図5及び図6に示すように、この封止シールSが熱溶着された状態の隔壁35Yをハウジング31Yaの下ケース33Yの嵌合スリット33Yeに押し込むことにより隔壁35Y及び封止シールSがハウジング31Yaに嵌合・セットされる。
【0057】
この嵌合スリット33Yeは、図5に示すように、現像剤搬送路33Ya及び33Ybの搬送方向(現像ローラ31Ybの幅方向)全域に亘って形成され、その幅は、隔壁35Yの厚みより僅かに狭く設定されており、嵌合スリット33Yeに隔壁35Yを軽圧入することで、隔壁35Yがハウジング31Yaの下ケース33Yに嵌着されるようになっている。このとき、隔壁35Yは、封止シールSが溶着された面が現像ローラ31Yb側、即ち、封止シールSが溶着された面が第2の現像剤搬送路33Ybに面するようにセットされる。そのようにセットすることで、封止シールSが現像剤と接触する面積を極力少なくすることができ、封止シールSを引き抜く際にハウジング31Ya内外に飛散してしまう現像剤を少なくすることができると共に、引き抜いた封止シールSの現像剤で汚れた部分をユーザ等が触って手や周囲を汚してしまうおそれを少なくなくすることができる。
【0058】
なお、図5及び図6は、この隔壁35Yの下ケース33Yへの嵌着工程を分り易くするため、下ケース33Yと、封止シールSが溶着された隔壁35Yのみを図示するが、この嵌着工程は、下ケース33Yの第1の現像剤搬送路33Ya,第2の現像剤搬送路33Ybに、それぞれスクリュー33Yc,スクリュー33Ydを装着した後に行ってもよい。
【0059】
また、図3に示したように、封止シールSの連通孔35Yaを塞ぐ溶着部分以外の余剰代は、下ケース33Yの底面で折り返して真っ直ぐ上に引き回して配設され、その自由端が、上ケース34Yの現像ローラ収容部34Ybの上面、且つ連通孔35Yaの直上に開口するスリットS1からハウジング31Yaの外部へ露出するようにセットされる。このとき、前記のように下ケース33Yのボス穴に上ケース34Yのボスを嵌合させて、そこを支点として上ケース34Yを回転させることにより、両ケースをスナップフィットで嵌着できるので、封止シールSの余剰代の自由端をスリットS1に通した後に容易に両ケースを嵌着することができる。そして、封止シールSを配設した後、塞ぎ部材PでスリットS1を塞ぎ、現像剤がスリットS1から漏れないようにする。この塞ぎ部材Pは、硬質樹脂などの所定の剛性を有する板状の小片からなる基体P1に、発泡PUR樹脂(ポリウレタン系樹脂)などの弾性体P2が貼着されたものである。
【0060】
(現像剤の充填)
このように塞ぎ部材Pを圧入してスリットS1を塞いだ後は、第1の現像剤搬送路33Yaの始端付近の上方に設けられたトナー補給口31Yf(図2参照)を介して現像剤Gが第1の現像剤搬送路33Yaにだけ充填される。このとき、スクリュー33Ycを回転駆動させることで第1の現像剤搬送路33Ya全体に満遍なく現像剤Gを充填することができる。また、本実施の形態に係る上ケース34Yのトナー補給部34Yaは、図3に示すように、その天井高が一般の現像剤搬送路の2倍、即ち、第1の現像剤搬送路33Yaの容積が2倍となるように設計されているので、第1の現像剤搬送路内にだけ現像剤を充填しても、封止シールSを撤去した後に、第2の現像剤搬送路33Ybも充填させる分だけの現像剤を充填できるようになっている。このように現像剤が充填された現像装置31Yは、出荷されてユーザ等がカラープリンタ1に装着する際に、封止シールSのスリットS1から外部に露出する余剰代を掴んで引張って隔壁35Yの連通孔35Yaから封止シールSを引き剥がすことにより第1の現像剤搬送路33Yaと第2の現像剤搬送路33Ybとが連通して現像剤が循環可能となり、現像装置31Yが使用できるようになる。
【0061】
このような実施例1に係る現像装置31Yによれば、スリットS1が連通孔35Yaの直上に設けられ、封止シールSの余剰代は、下ケース33Yの底面で折り返して真っ直ぐ上に引き回して配設されているので、封止シールSを引き剥がす際に封止シールSと現像剤担持体である現像ローラ31Ybとが接触しない位置関係となっており、封止シールSを引き剥がす際に封止シールSの端部などが現像ローラ31Ybの表面と接触して傷つけるおそれが少ない。また、スリットS1が上ケース34Yの上面に設けられているので、このスリットS1に圧入して装着されている塞ぎ部材Pが輸送中(又は現像動作中)の重力や振動などの作用で脱落するおそれが少なく、現像剤Gがハウジング31Yaから漏れる心配も少ない。
【実施例2】
【0062】
次に、本発明の実施例2に係る現像装置について図7を用いて説明する。図7は、実施例2に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。図7に示す実施例2に係る現像装置31Yが、実施例1に係る現像装置31Yと相違する点は、ハウジングに設けられたスリットの位置と封止シールの配設経路だけなので、その点について説明し、同様な構成は同じ符号付して説明を省略する。図7に示すように、実施例2に係る現像装置31Yは、封止シールSの余剰代を外部へ露出するためのスリットS2が、下ケース33Yの第2の現像剤搬送路33Ybの現像ローラ31Yb寄りの外部側面に設けられている。
【0063】
また、封止シールSは、隔壁35Yへの溶着が実施例1と上下が反対になっており、その配設経路は、図7に示すように、封止シールSの余剰代が隔壁35Yの上端付近で折り返して、そこからスクリュー33Ydの下側を通り、その周縁に沿って引き回されてスリットS2から露出するよう配設されている。なお、実施例1と同様に、スリットS2にも封止シールSの余剰代が露出した状態で塞ぎ部材Pが圧入されて封止されている。
【0064】
このような実施例2に係る現像装置31Yによれば、スリットS2が、第2の現像剤搬送路33Ybの現像ローラ31Yb寄りの外部側面に設けられ、封止シールSの余剰代が隔壁35Yの上端付近で折り返して、そこからスクリュー33Ydの下側を通り、その周縁に沿って引き回されてスリットS2から露出するよう配設されているので、封止シールSを引き剥がす際に封止シールSと現像ローラ31Ybとが接触しない位置関係となっており、封止シールSを引き剥がす際に封止シールSの端部などが現像ローラ31Ybの表面と接触して傷つけるおそれが少ない。また、封止シールSが溶着されている面に対して封止シールSの余剰代を垂直に引き抜く構成となっており、ユーザ等が封止シールSを引き剥がす際に、失敗して封止シールSが連通孔35Yaの周りに残存するおそれが少なく、誰でも容易に封止シールSを引き剥がすことができる。
【実施例3】
【0065】
次に、本発明の実施例3に係る現像装置について図8を用いて説明する。図8は、実施例3に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。図8に示す実施例3に係る現像装置31Yが、実施例1に係る現像装置31Yと相違する点は、ハウジングにスリットが設けられていない点と封止シールの配設経路だけなので、その点について説明し、同様な構成は同じ符号付して説明を省略する。図8に示すように、実施例3に係る現像装置31Yは、封止シールSの余剰代を外部へ露出するためのスリットが、ハウジング31Yには設けられておらず、その代わりにハウジング31Yaの開口部31Yeと現像ローラ31Ybとの間の上の隙間から封止シールSの自由端が外部へ露出するように配設されている。
【0066】
封止シールSは、実施例1と同様に隔壁35Yへ溶着され、その配設経路は、封止シールSの余剰代が、下ケース33Yの底面で折り返して上方へ、そして、現像ローラ31Ybの周縁に沿って引き回され、ハウジング31Yaの開口部31Yeと現像ローラ31Ybとの間の上の隙間からその自由端が外部へ露出するように配設されている。
【0067】
このような実施例3に係る現像装置31Yによれば、ハウジング31Yaに封止シールSの余剰代を外部へ露出するためのスリットを設ける必要がないので、スリット形成のコストや前記塞ぎ部材Pの製造コストを下げることができる。また、現像装置の輸送中に塞ぎ部材Pが脱落して現像剤が漏れる心配を完全に払拭することができる。
【実施例4】
【0068】
次に、本発明の実施例4に係る現像装置について図9を用いて説明する。図9は、実施例4に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。図9に示す実施例4に係る現像装置31Yが、実施例3に係る現像装置31Yと相違する点は、封止シールの配設経路だけなので、その点について説明し、同様な構成は同じ符号付して説明を省略する。図9に示すように、実施例4に係る現像装置31Yは、封止シールSは、実施例3と同様に隔壁35Yへ溶着され、その配設経路は、封止シールSの余剰代が、下ケース33Yの底面で折り返してスクリュー33Ydの周縁に沿って引き回されて、現像ローラ31Ybとドクタブレード31Ycとの間隙dからその自由端が外部へ露出するように配設されている。
【0069】
このような実施例4に係る現像装置31Yによれば、スリットを設けなくて済むので、スリット形成のコストや塞ぎ部材の製造コストを削減することができると共に、現像装置の輸送中に塞ぎ部材が脱落して現像剤が漏れる心配を完全に払拭することができるだけでなく、マグネットローラMYの磁力で引き付けられた現像剤をドクタブレード31Ycの先端で削り取っているので、現像動作中において間隙dは、現像剤で完全に塞がれるため、そこから現像剤やトナーが飛散するおそれがない。
【0070】
なお、実施例4に係る現像装置31Yのシール材固定部材31Yhの頂部に位置する出隅部X(現像ローラ31Ybへ最も近接している出張った隅角部)は、図9に示すように、シール材31Ygの先端部Yより、高く、即ち現像剤ローラ31Ybと近接するよう配置されており、ユーザ等が、封止シールSを引き抜く際に、シール材31Ygの先端部Yに封止シールSが接触するおそれが少なく、シール材31Ygの先端部Yを損傷するおそれが少なくなっている。
【実施例5】
【0071】
次に、本発明の実施例5に係る現像装置について図10を用いて説明する。図10は、実施例5に係る現像装置の構成及び封止シールの配設経路を主に示す鉛直断面図である。図10に示す実施例5に係る現像装置31Yが、実施例3に係る現像装置31Yと相違する点は、隔壁への封止シールの溶着向きと、封止シールの配設経路だけなので、その点について説明し、同様な構成は同じ符号付して説明を省略する。図10に示すように、実施例5に係る現像装置31Yは、実施例3に係る現像装置31Yと同様に、開口部31Yeと現像ローラ31Ybとの間の上の隙間からその自由端が外部へ露出するように配設されている。
【0072】
しかし、封止シールSの隔壁35Yへの溶着向きは、実施例3と反対、即ち、実施例2と同様に溶着され、その配設経路は、封止シールSの余剰代が隔壁35Yの上端付近で折り返して、そこからスクリュー33Yd下をその周縁に沿って引き回されて開口部31Yeと現像ローラ31Ybとの間の上の隙間から露出するよう配設されている。一般に、封止シールSの溶着面(隔壁35Yに固着されていた面)は、バリなど粗面となっており、引き剥がす際にこの溶着面が現像ローラ31Ybと擦れることにより現像ローラ31Ybを損傷し、耐久性を低下させてしまうおそれがある。しかし、前記のように、封止シールSを配設すれば、溶着面が引き剥がす際にも現像ローラ31Ybと接触することがない。
【0073】
このような実施例5に係る現像装置31Yによれば、溶着面が引き剥がす際にも現像ローラ31Ybと接触することがないので、現像ローラ31Ybを損傷するおそれが少ない。
【0074】
以上のように、この発明の実施の形態に係る画像形成装置として4連タンデム型中間転写方式のカラープリンタ1を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようなものに限られず、例えば、モノクロ用のプリンタやファクシミリ(FAX)などにも本発明を適用することができる。また、現像装置として、2軸搬送方式の現像装置を例に挙げて説明したが、このような現像装置に限られず、例えば、3軸搬送方式の現像装置にも本発明を適用することができる。要するに、ハウジング内に現像剤担持体の回転軸と平行に形成された複数の現像剤搬送路を備え、連通孔を介して現像剤が複数の現像剤搬送路間を循環しながら現像剤担持体に現像剤を供給する横搬送方式の現像装置、及びその現像装置を備えた画像形成装置には本発明を適用することができる。特に、封止シールが各連通孔に一枚ずつ固着されているものを例に挙げて説明したが、勿論、1つの連通孔を複数の封止シールで封止しても構わない、また、連通孔の数も2つのものに限られず、隔壁の一端に複数ずつ穿設されていても構わない。
【0075】
そして、実施の形態の説明におけるトナー容器収容部、露光部、転写部、定着部、給紙部、排紙部、作像部などは、あくまでも一例を示したものであって、他の公知の装置・手段などの構成を採用することができる。その場合でも、前記課題に対して同様の作用効果を奏することは明らかである。また、図面で示した各構成部材の形状や構造等も、あくまでも好ましい一例を示すものであり、特許請求の範囲内で適宜設計変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1 カラープリンタ(画像形成装置)
3 作像部
3Y,3M,3C,3K 作像ユニット
31Y 現像装置
31Ya ハウジング
31Yb 現像ローラ(現像剤担持体)
31Yc ドクタブレード(層厚規制部材)
31Ye 開口部(現像剤担持体用の開口)
31Yf トナー補給口
33Y 下ケース(第1のハウジング)
33Ya 第1の現像剤搬送路(現像剤搬送路)
33Yb 第2の現像剤搬送路(現像剤搬送路)
33Yc,33Yd スクリュー(撹拌搬送部材)
33Ye 嵌合スリット
34Y 上ケース(第2のハウジング)
35Y 隔壁
35Ya 連通孔
S1,S2 スリット

P 塞ぎ部材
S 封止シール
X 出隅部
Y 先端部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2006−23619号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置全体のハウジングと、
このハウジングに回転可能に軸支されて現像剤を担持する現像剤担持体と、
両端部付近にそれぞれ現像剤を循環させるための連通孔を有する隔壁で互いに隔てられ、前記ハウジング内に前記現像剤担持体の回転軸と平行に形成された複数の現像剤搬送路と、が備えられ、
前記連通孔を介して現像剤が前記複数の現像剤搬送路間を循環しながら前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像装置において、
前記隔壁は、前記ハウジングとは別体に形成されて、引き剥がす際に掴むための余剰代を有する封止シールが前記連通孔を塞ぐようにそれぞれ固着された後、前記ハウジングに取り付けられ、
前記ハウジングには、前記封止シールの余剰代を外部へ露出するためのスリットが設けられており、
外部に露出する前記余剰代を掴んで引張って前記連通孔から前記封止シールを引き剥がすことにより前記複数の現像剤搬送路間が連通して現像剤が循環可能となることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記隔壁は、前記封止シールを固着した面が前記現像剤担持体側となるように、前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記スリットは、前記封止シールを引き剥がす際に当該封止シールと前記現像剤担持体とが接触しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記スリットは、前記ハウジングの上面に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記スリットは、前記複数の現像剤搬送路のうち前記現像剤担持体寄りの現像剤搬送路の外部側面に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤担持体の一部を露出する前記ハウジングの現像剤担持体用の開口から前記封止シールの余剰代が外部へ露出され、前記スリットが当該開口と前記現像剤担持体との隙間で代用されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項7】
前記封止シールを引き剥がす際に、当該封止シールの前記隔壁との固着面が、前記現像剤担持体側とならないルートを通って前記余剰代が外部へ露出されていることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記現像剤担持体に所定距離の間隙を介して対向配置され、前記現像剤担持体に担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、
前記封止シールの余剰代は、前記間隙から外部へ露出されていることを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
前記ハウジングの前記層厚規制部材側の外部には、前記現像剤担持体用の開口の層厚規制部材側の現像領域を封止するシール材が、該シール材を支持固定するシール材固定部材を介して取り付けられ、該シール材固定部材の出隅部は、前記シール材の先端部より前記現像剤担持体に近接配置されていることを特徴とする請求項8に記載の現像装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の現像装置が備えられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−217238(P2010−217238A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60661(P2009−60661)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】