説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】トナーに電荷を十分付与させることができ、かぶりを抑制できる現像装置を提供する。
【解決手段】現像ローラ2へトナーを供給し、現像ローラ2からトナーを剥ぎとるトナー供給剥ぎとりローラ3と、現像ローラ2とトナー供給剥ぎとりローラ3とを備え、現像容器と現像ローラ2との間の開口部4を封止してトナーが漏れるのを防ぐトナー封止シート1と、を有し、トナー供給剥ぎとりローラ3は、画像形成領域よりも長く、かつ現像容器の開口部4よりも短く、トナー封止シート1の現像ローラ2側の表面は、画像形成領域内の仕事関数よりも仕事関数が小さい領域を有し、トナー封止シート1の仕事関数が小さい領域は、少なくともトナー供給剥ぎとりローラ3の外側かつ開口部4の内側の領域を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置及びこれに用いられる現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置では、図2に示すように、現像ローラ2上に供給されたトナー6は、現像ブレード7によってトナー量を規制され、帯電ローラ8によって一様に帯電された感光ドラム9に回転しながら当接する。そして、レーザ光によって形成された感光ドラム9上の静電潜像に応じて現像ローラ2上のトナー6が感光ドラム9に現像され、可視像となる。また、感光ドラム9に現像されず現像ローラ2上に残留したトナー6は、トナー封止シート1を通過してトナー供給剥ぎとりローラ3によって現像ローラ2から剥ぎとられる。そして、現像ローラ2上にはローラ3により新たにトナー6が供給される。
【0003】
トナー6が現像容器11から漏れない様に、トナー封止シート1及び現像ローラ2の端部において円弧上に現像ローラ2と当接する端部シール(不図示)が設けられている。特許文献1では、現像ローラ2を傷つけずに、トナー漏れを防止するために、端部シールは滑り性の高い繊維状のものが用いられている。
【0004】
特許文献2では、トナー供給剥ぎとりローラ3と現像容器11の内側との間に隙間を設ける構成が開示されている。この構成によれば、端部で現像剤の粉圧が高まって端部シールが変形してトナー6が漏れることを抑制できる。また、上述の様に端部シールに繊維状のものを用いた場合には、ローラ3と現像容器11の内壁との間に隙間を設けることで、端部シールの繊維がローラ3に巻き込まれないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−40402号公報
【特許文献2】特開平5−35069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の構成では、現像ローラ2の端部でローラ3が当接しないため、トナー6を剥ぎとれない領域が存在する。このため、現像ローラ2のこの領域に付着したトナー6は現像容器11内を循環することができず、印刷枚数が増えていくにつれ、現像ローラ2の他領域に付着するトナー6に比べて劣化が促進される。そして、現像ブレード7だけでは、十分に電荷を付与させることができなくなり、電荷を十分に持てないトナー6が発生し、かぶりが発生する。
【0007】
そこで本発明は、現像部材の長手方向において、トナー供給剥ぎとり部材の外側かつ現像容器の開口部の内側の領域のトナーに電荷を十分付与させることができ、かぶりを抑制できる現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る現像装置及び画像形成装置の代表的な構成は、像担持体上に形成された静電潜像をトナーを用いて現像する現像部材と、前記現像部材へトナーを供給し、前記現像部材からトナーを剥ぎとるトナー供給剥ぎとり部材と、前記現像部材と前記トナー供給剥ぎとり部材とを備え、トナーを収容する現像容器と、前記現像容器と前記現像部材との間の開口部を封止してトナーが漏れるのを防ぐトナー封止部材と、を有し、前記現像部材の長手方向において、前記トナー供給剥ぎとり部材は、画像形成領域よりも長く、かつ前記開口部よりも短い現像装置において、前記トナー封止部材の前記現像部材側の表面は、前記現像部材の長手方向において、前記画像形成領域内の仕事関数よりも仕事関数が小さい領域を有し、前記トナー封止部材の仕事関数が小さい領域は、前記現像部材の長手方向において、少なくとも前記トナー供給剥ぎとり部材の外側かつ前記現像容器の開口部の内側の領域を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現像部材の長手方向において、トナー封止シートの画像形成領域の外側のトナー供給剥ぎとり部材の端部から現像容器の開口部の内側までの領域のトナーに電荷を十分付与させることができ、かぶりを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の画像形成装置の構成図である。
【図2】本実施形態の現像装置の構成図である。
【図3】本実施形態に係るトナー封止シート及び電荷付与シートを示す図である。
【図4】本実施形態の仕事関数の測定原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る現像装置及び画像形成装置の実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置100の構成図である。図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、走査光学装置97a〜97dから画像情報に基づいたレーザー光を出射し、帯電ローラ8a〜8dによって一様に帯電した感光ドラム(像担持体)9a〜9dの表面上を照射して静電潜像を形成する。像担持体上に形成された静電潜像は、現像装置40a〜40dによって各々シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのトナー像に可視像化される。一次転写ローラ91〜91dにより、中間転写ベルト19に一次転写される。
【0012】
一方、給送トレイに載置されたシートSが、給送ローラ94、搬送ローラ95により中間転写ベルト19と二次転写ローラ93とのニップ部(二次転写部)へ搬送される。シートSは、二次転写部にて、トナー像を転写され、定着ローラ60にてトナー像を定着され、排出トレイ62へ排出される。
【0013】
図2は本実施形態の現像装置40の構成図である。図2に示すように、現像装置40は、現像容器11を有している。現像容器11は、トナー貯留部10と、現像室12とに区画されている。トナー貯留部10は、トナー(現像剤)6を貯留しており、攪拌装置によって現像室12にトナー6を送り込む。現像室12には、現像ローラ(現像部材)2、トナー供給剥ぎとりローラ(トナー供給剥ぎとり部材)3、現像ブレード7、トナー封止シート(トナー封止部材)1、電荷付与シート5が設けられている。
【0014】
現像ローラ2は、現像電圧電源(不図示)により約−300Vの直流電圧を印加され、感光ドラム9上に形成された静電潜像に対してトナー6を用いて現像を行い、静電潜像をトナー像に可視像化させる。現像ローラ2は、Φ16のシリコンゴムを基層とし、アクリル・ウレタン系ゴムを表面にコートした二層構成となっている。
【0015】
ローラ3は、外周部に複数のセルを有するスポンジ状の弾性部材(Φ16のウレタンスポンジゴム)を有している。ローラ3が現像ローラ2に当接して外周部のセルがつぶされることにより、ローラ3に含まれたトナー6が吐出して現像ローラ2上に供給される。一方、ローラ3が現像ローラ2と離れる際に、つぶされたセルが開放されてセルが開き、セルに向けて吸気が行われて現像ローラ2上のトナーを剥ぎとる。
【0016】
現像ブレード7は、現像ローラ2上のトナーを規制する金属性のブレードである。攪拌装置、現像ローラ2、ローラ3は、外部から駆動が掛けられる構成になっており、現像プロセス中は、常に回転してトナー6を感光ドラム9に供給できるようになっている。
【0017】
トナー封止シート1は、現像ローラ2に接触することにより、現像容器11と現像ローラ2との間(現像容器11の開口部4)からトナーが漏れるのを防いでいる。
【0018】
一次転写後に、感光ドラム9上の転写残トナーは、ポリウレタンゴムからなるクリーニング部材であるクリーニングブレード13により感光ドラム9上から取り除かれる。そして、取り除かれたトナーは廃トナー収容部(不図示)に収容される。その後、感光ドラム9表面は次の画像形成に備えるため、再び帯電ローラ8により帯電される。
【0019】
(トナー封止シート1、トナー供給剥ぎとりローラ3)
図3(a)はトナー封止シート1及び電荷付与シート5を示す図である。図3(b)はトナー封止シート1、現像ローラ2、トナー供給剥ぎとりローラ3、現像装置40、画像形成領域A、通紙領域Bの長手方向の長さ関係を示す図である。ここでいう画像形成領域Aとは、本画像形成装置の長手方向における、最大寸法の画像が形成されうる領域である。本実施例においては、レーザ光の長手方向最大照射幅(最大静電潜像幅)に相当する。図3に示すように、トナー供給剥ぎとりローラ3は、画像形成領域Aよりも長手方向に長く、現像容器11の開口部4よりも長手方向に短い。
【0020】
電荷付与シート5は、現像ローラ2の長手方向において、トナー供給剥ぎとりローラ3より外側かつ開口部4より内側の領域のトナー封止シート1の現像ローラ2と接触する表面(現像部材側の表面)に貼られている。なお、電荷付与シート5は画像形成領域外かつ開口部4より内側の領域のトナー封止シート1の現像ローラ2と接触する表面に貼られていればよい。
【0021】
電荷付与シート5は、現像剤の仕事関数T−表面の材質の仕事関数X>0.77(式1)の関係式を満たす材質からなる。トナー封止シート1の画像形成領域A内で現像ローラ2と接触する表面は、現像剤の仕事関数T−表面の材質の仕事関数X≦0.77(式2)の関係式で満たす材質からなる。
【0022】
本実施形態では、具体的には、トナーとして、平均粒径6μm、平均円形度0.970、仕事関数5.62eVの球形トナーを用いている。また、トナー封止シート1として、トレリナシート(仕事関数5.70eV)を用いている。電荷付与シート5として、ポリ塩化ビニルシート(仕事関数4.85eV)を用いている。
【0023】
ここで、上記仕事関数の測定方法について説明する。図4に示すように、仕事関数は、ある物質から電子を取り出すためのエネルギー(eV)として数値化され、トナー及びシール部材の帯電性を評価しうるものである。仕事関数(Φ)は、表面分析装置(理研計器(株)AC−2)を使用して測定される。本実施形態にあっては、表面分析装置において、重水素ランプを使用し、照射光量を適宜設定し、分光機により単色光を選択する。そして、スポットサイズ4mm×4mm、エネルギー走査範囲3.4〜6.2eV、測定時間10sec/1ポイントでサンプル(測定試料)に照射する。
【0024】
そして、サンプル表面から放出される光電子を検知し、表面分析装置に組み込まれた仕事関数計ソフトを使用して演算処理して得られる。この表面分析においては、単色光の励起エネルギーを低い方から高いほうにスキャンすると、あるエネルギーから(eV)から光量子放出が始まり、このエネルギー閾値を仕事関数(eV)とする。
【0025】
電荷付与シート5として、上述のポリ塩化ビニルシート以外にもメタルミーシート(仕事関数4.21eV)、PETシート(仕事関数5.33eV)、ポリイミドシート(仕事関数5.6eV)を用いて検討を行った。この結果、かぶりに対して十分な効果を得ることができたのは、式(1)を満たす、ポリ塩化ビニルシートとメタルミーシートであった。
これは、(式1)を満たす材質は、(式2)を満たす材質よりも、トナーと摩擦することで、帯電した感光ドラム9と同じ極性の電荷を付与しやすいため、トナー封止シート1の画像形成領域A外に、(式1)を満たす材質の部材(電荷付与シート5)を用いることにより、劣化したトナーにも電荷を持たせることができるからである。これにより、劣化したトナーが感光ドラム9の電位と反発し、トナーかぶりが発生することを抑制できる。
【0026】
特に、印刷枚数が多くなり、現像ローラ2のローラ3より外側の領域にトナーが付着し、ローラ3により回収されずに劣化した場合においても、このトナーにかぶりを発生させない電荷をたせることができる。このため、かぶりを低減することができる。なお、電荷付与シート5は、現像ローラ2に長手方向に渡って均一に当接するようになっている。これにより、トナーに電荷を均一に付与できる。
【0027】
また、トナー封止シート1の画像形成領域A内に、(式2)を満たす材質の部材を用いることにより、電荷付与シート5によりトナーに電荷を付与しすぎることがなく、画像形成領域内では画像の濃度薄等の画像弊害の発生を抑制できる。
【0028】
トナー封止シート1とは、別部材の電荷付与シート5を用いて、トナー封止シート1の長手方向における電荷の付与のしやすさ(仕事関数)を変えることで、簡単に低コストで劣化したトナーに電荷を付与できる。
【符号の説明】
【0029】
A …画像形成領域
B …通紙領域
S …シート
1 …トナー封止シート(トナー封止部材)
2 …現像ローラ(現像部材)
9 …感光ドラム(像担持体)
3 …トナー供給剥ぎとりローラ(トナー供給剥ぎとり部材)
4 …開口部
5 …電荷付与シート
6 …トナー
7 …現像ブレード
8 …帯電ローラ
10 …トナー貯留部
11 …現像容器
12 …現像室
13 …クリーニングブレード
19 …中間転写ベルト
40 …現像装置
60 …定着ローラ
62 …排出トレイ
91 …一次転写ローラ
93 …二次転写ローラ
94 …給送ローラ
95 …搬送ローラ
97 …走査光学装置
100 …画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された静電潜像をトナーを用いて現像する現像部材と、
前記現像部材へトナーを供給し、前記現像部材からトナーを剥ぎとるトナー供給剥ぎとり部材と、
前記現像部材と前記トナー供給剥ぎとり部材とを備え、トナーを収容する現像容器と、
前記現像容器と前記現像部材との間の開口部を封止してトナーが漏れるのを防ぐトナー封止部材と、
を有し、
前記現像部材の長手方向において、前記トナー供給剥ぎとり部材は、画像形成領域よりも長く、かつ前記開口部よりも短い現像装置において、
前記トナー封止部材の前記現像部材側の表面は、前記現像部材の長手方向において、前記画像形成領域内の仕事関数よりも仕事関数が小さい領域を有し、
前記トナー封止部材の仕事関数が小さい領域は、前記現像部材の長手方向において、少なくとも前記トナー供給剥ぎとり部材の外側かつ前記現像容器の開口部の内側の領域を含むことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー封止部材の仕事関数が小さい領域は、トナーの仕事関数T−表面の材質の仕事関数X>0.77の関係式を満たす材質で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナー封止部材の仕事関数が小さい領域は、別部材により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
像担持体と、
前記像担持体に形成された静電潜像をトナーを用いてトナー像として現像する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置と、
前記現像装置により形成されたトナー像をシートに転写する転写手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−128058(P2012−128058A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277788(P2010−277788)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】