説明

現像装置

【課題】 高速現像システムでも、スリーブゴースト、ブロッチ及び画像スジを未然に防止し、長期にわたって良好な現像特性が得られる現像装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 第一現像剤規制部材の上流側で、現像剤担持体と接触する円筒形状の弾性材料から成る第二現像剤規制部材、及び現像剤層厚部材と第二現像剤規制部材の間に、現像剤担持体の回転方向と同じ方向へ現像剤担持体と当接または近接する第三現像剤規制部材を具備し、前記現像剤担持体上の樹脂層は少なくとも結着樹脂及び黒鉛化カーボンブラックを含有し、樹脂層のX線回折法によって測定されたカーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔d(002)が0.3370nm以上0.3450nm以下であり、且つ、樹脂層表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが0.07以上0.35以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置の現像剤担持体は、繰り返し回転を行っているうちに、現像剤担持体上に担持された現像剤の摩擦帯電量が現像剤担持体との接触により高くなり過ぎることがある。この場合、現像剤が現像剤担持体表面との鏡映力により引き合って現像剤担持体表面上で不動状態となる。その結果、現像剤が現像剤担持体から潜像担持体(感光ドラム)上の潜像に移動しなくなるという現象(チャージアップ現象)が、特に低湿環境下にて発生しやすくなる。チャージアップ現象が発生すると、上層の現像剤は摩擦帯電しにくくなり、現像剤の現像量が低下するため、ライン画像の細りやベタ画像の画像濃度薄の如き問題点を生じる。更に、チャージアップにより適正に摩擦帯電されない現像剤が規制不良となって現像剤担持体上に流出し、斑点状、細波状若しくは絨毯状のムラとなる「ブロッチ」が発生することがある。このような課題を解決するために、特許文献1では、基体表面に樹脂層を有し、該樹脂層が結着樹脂と黒鉛化カーボンブラックとを含有した現像剤担持体を使用することが記載されている。しかし、近年は電子写真装置の高速化及び長寿命化に対するニーズが高まってきており、このような状況下では、更なる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特WO07/011064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、環境特性に優れ、長期間にわたって画像形成を実施した場合に発生する画像濃度低下、スリーブゴースト、画像スジ、ブロッチの発生を抑制し、安定して良好な現像特性を得ることができる現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る現像装置は、現像剤及び該現像剤を収容するための現像容器、該現像剤を表面に担持し回転自在に保持された現像剤担持体、該現像剤担持体表面の現像剤量を非接触で磁気的に規制する第一現像剤規制部材を有し、潜像担持体に対向する現像領域へ担持された現像剤を搬送して該現像剤により該潜像担持体に形成された静電潜像を現像して可視像化する現像装置であり、
(ア)該現像装置は、第二現像剤規制部材と第三現像剤規制部材を有し、該第二現像剤規制部材は該第一現像剤規制部材の回転方向の上流に配置され、該現像剤担持体と接触する円筒形状の弾性材料で成形されており、該第三現像剤規制部材は該第一現像剤規制部材と該第二現像剤規制部材の間に配置され、該現像剤担持体の回転方向に沿う順方向に向かって延び、該第三現像剤規制部材の先端は該現像剤担持体に対向しており、
(イ)該現像剤は磁性一成分現像剤であり、
(ウ)該現像剤担持体は、基体と該基体の表面に樹脂層を有し、該樹脂層は少なくとも結着樹脂及び黒鉛化カーボンブラックを含有し、樹脂層のX線回折法によって測定された該カーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔d(002)が0.3370nm以上0.3450nm以下であり、且つ、該樹脂層表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが0.07以上0.35以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る現像装置は、第二現像剤規制部材によって、現像後に現像剤担持体表面に残った現像剤を剥ぎ取って回収し、再担持後の現像剤の摩擦帯電量を均一にする。そして、第三現像剤規制部材によって、現像剤担持体上に再担持された現像剤層をならすことで層厚の均一化を図ることができる。更に、前記現像剤担持体は、基体表面に結着樹脂と黒鉛化カーボンブラックとを含有し、且つ特有の表面粗さを規定した樹脂層を有する。そのため、本発明に係る現像装置は、高速プロセスであっても、長期にわたる評価にて高画像濃度を維持しつつ画像スジの発生を抑制できる。また、環境特性に優れ、スリーブゴースト及びブロッチが発生せず、長期間にわたって高品位の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る現像装置の概略図である。
【図2】現像剤担持体と第三現像剤規制部材との配置の説明図である。
【図3】現像剤担持体とそれに非接触の第三現像剤規制部材との配置の説明図である。
【図4】二乗平均平方根傾斜RΔqの算出方法の説明図である。
【図5】現像剤担持体の第二現像剤規制部材近傍の状態の説明図である。
【図6】スリーブゴーストの評価に用いたプリント画像の模式図である。
【図7】本発明に係る現像装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下に説明する。本発明に係る現像装置は、現像剤担持体表面の現像剤量を非接触で磁気的に規制する第一現像剤規制部材と、現像剤担持体と接触する円筒形状の弾性材料で成形される第二現像剤規制部材を有している。更に、第一現像剤規制部材と第二現像剤規制部材の間に配置され、現像剤担持体の回転方向に沿う順方向に向かって延びて、先端を現像剤担持体に対向させる第三現像剤規制部材を有することが特徴である。
【0009】
以下に、図面を用いて本発明における現像装置の構成について説明する。図1は、本発明にて使用され得る現像装置の模式図である。図1において,静電潜像を担持する潜像担持体(感光ドラム)1は、矢印B方向に回転する。現像剤担持体10は、現像容器3に供給された磁性トナー粒子を有する一成分磁性現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像剤担持体10と感光ドラム1とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。図1に示すように、回転自在に保持された現像剤担持体10においては、現像スリーブ8内に、現像剤担持体10上に磁気的に吸引且つ保持するための磁石(マグネットローラー)9が配置されている。
【0010】
本発明に係る現像剤担持体10は、基体としての金属円筒管6上に被覆された樹脂層7を有する。現像容器3には不図示の現像剤補給容器から現像剤供給部材12を経由して送り込まれた一成分磁性現像剤が収容されている。現像容器3は、第一室14、第二室15に分割されており、第一室14に存在する一成分磁性現像剤は、攪拌搬送部材5により現像容器3及び仕切り部材4により形成される隙間を通過して第二室15に送られる。一成分磁性現像剤はマグネットローラー9による磁力の作用により現像剤担持体10上に担持される。第二室15中には現像剤が滞留するのを防止するための攪拌搬送部材11が設けられている。
【0011】
現像剤は、一成分磁性現像剤相互間及び現像剤担持体10上の樹脂層7との摩擦により、感光ドラム1上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。現像剤担持体10に担持された一成分磁性現像剤を感光ドラム上の静電潜像に飛翔させるため、現像剤担持体10にはバイアス手段としての現像バイアス電源13により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像剤担持体10に印加するのが好ましい。現像された画像の濃度を高め、且つ階調性を向上させるためには、現像剤担持体10に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像剤担持体10に印加するのが好ましい。
【0012】
<第一現像剤規制部材>
現像領域Dに搬送される現像剤担持体10上の現像剤層厚を規制するための現像剤層厚規制部材であり、現像剤担持体10に非接触とする。材質は、強磁性の金属製のものが好ましい。第一現像剤規制部材2は、現像剤担持体10の表面から50μm乃至500μmの間隙を有して現像剤担持体10に対向している。マグネットローラー9の磁極N1からの磁力線が第一現像剤規制部材2に集中することにより、現像剤担持体10上に現像剤の薄層が形成される。
【0013】
<第二現像剤規制部材>
第一現像剤規制部材2の回転方向の上流側に配設し、現像剤担持体10と接触する円筒形状の弾性材料で構成されたものである。現像工程終了後に現像剤担持体10上に残存した現像剤を回収すると共に、新たな現像剤を現像剤担持体10に供給する。第二現像剤規制部材16は、現像剤担持体10と一定の当接圧にて図示しない加圧手段によって固定されている。そして、表面の弾性層によって現像剤担持体10上の現像後の残現像剤を剥ぎ取り、回収を行なう。剥ぎ取られ、回収された現像剤は、攪拌搬送部材11によって現像容器3内部へ搬送される。第二現像剤規制部材16としては、樹脂、ゴム、スポンジの如き材料からなる弾性層を有する弾性ローラ部材が好ましい。具体的には、ポリウレタンフォームの如き発泡骨格構造を有する材料(発泡体)からなる弾性層を有する弾性ローラを好適に用いることができる。発泡体からなる弾性層を有する第二現像剤規制部材16は、表面に適度な凹凸が形成されているため、表面の凹凸により効果的に現像剤の剥ぎ取りを行なうことができるため好ましく用いられる。感光ドラム1に移行されなかった現像剤を現像剤担持体10表面から剥ぎ取ることにより、現像剤担持体10上に不動状態となった現像剤の発生を防ぐとともに、現像剤担持体10上の現像剤の摩擦帯電量を均一化することができる。
【0014】
第二現像剤規制部材16の弾性層を構成する発泡体の平均セル径は200μm以上500μm以下が好ましい。平均セル径は先ず任意断面の拡大画像から最大である発泡セルの面積を測定し、この面積から真円相当径を換算し最大セル径を得る。この最大セル径の1/2以下であるセルをノイズとして削除し、残りの個々のセルについて前記と同様にして個々のセル径を求め、これらの算術平均値を計算して得られたものである。平均セル径が上記数値範囲内にあるとセル内に現像剤が詰まり難い。また現像剤担持体10からの現像剤の回収(剥ぎ取り)効果が向上する。発泡体のセル数に関しては、1インチ当たりのセル数が50個以上200個以下であることが好ましい。セル数をこの範囲とすることで、現像剤への負荷が大きくならずに十分な剥ぎ取り性能が得られる。また第二現像剤規制部材16の硬度(アスカーF)は45°以上65°以下であることが好ましい。第二現像剤規制部材16の硬度(アスカーF)を上記数値範囲内とすることで、剥ぎ取りの際に現像剤に対する負荷が軽減され、駆動トルクが低下し現像剤の劣化を抑制できる。また、現像剤担持体10表面への当接性が良好となり、剥ぎ取り効果が高くなる。
【0015】
第二現像剤規制部材16は不図示の駆動モーターで現像剤担持体10と当接部にて逆方向に回転している。剥ぎ取り性を向上させるためには逆方向に回転することが好ましい。第二現像剤規制部材16は、当接部で逆方向に回転する場合、現像剤担持体10の周速に対して10乃至120%、特には20乃至100%が好ましい。第二現像剤規制部材16の周速を上記の数値範囲内とすることで、剥ぎ取り後に新たに現像剤担持体10へ供給される現像剤量を十分確保できる。また、現像剤の供給量が適正となり、第一現像剤規制部材2での現像剤層厚の規制を適正に行ない得る。また、現像剤に対するダメージを抑えることができるため、現像剤の劣化に伴う現像性の低下を抑制できる。
【0016】
また、本発明では現像剤担持体10と第二現像剤規制部材16の当接圧(線圧)は、18乃至36N/mが好ましい。当接圧(線圧)を上記数値範囲内とすることで、十分な現像剤の剥ぎ取り効果が得られ、また、現像剤の劣化が起こりにくく、更に、駆動トルクも小さくできる。また、現像剤担持体10と第二現像剤規制部材16の当接幅は1mm以上5mm以下が好ましい。当接幅を上記数値範囲内とすることで、現像剤の劣化を抑制できる。特に低融点成分を多く含んだ現像剤を用いた場合、現像剤担持体10上への現像剤融着等を抑制できる。また、セル内部への現像剤の侵入が起こり難く、十分な剥ぎ取り効果が得られる。
【0017】
<第三現像剤規制部材17>
弾性材料からなるシート状若しくは板状の形状で構成されており、図示していない固定部材に支持されて第一現像剤規制部材2と第二現像剤規制部材16の間に配設される。そして、現像剤担持体10の回転方向に沿う順方向に向かって延び、先端が現像剤担持体10と対向するように配置されている。ここで、順方向とは、現像剤担持体10の回転方向上流側から下流側に向かうに従って現像剤担持体10に接近する方向を指す。また、第三現像剤規制部材17は先端が現像剤担持体10に接触し、現像剤担持体10の表面を摺擦している。上記構成を採用することで、第三現像剤規制部材17は第二現像剤規制部材16によって剥ぎ取られた後に現像剤担持体10上に担持された現像剤層をならして均一化することができる。これにより、スジや濃度ムラの発生を防止することが可能となる。
【0018】
該第三現像剤規制部材17は前記第一現像剤規制部材2とは異なり、現像剤層の薄層化や摩擦帯電付与を目的とするのではないため、比較的軽圧で現像剤担持体10表面に当接する。第三現像剤規制部材17の材質としては、ウレタンゴムやシリコンゴムの如き弾性を有するものが好ましい。現像剤担持体10表面の当接圧としては1N/m以上10N/m以下、侵入量は0.3mm以上1.5mm以下とするのが好ましい。この範囲内に設定することで、現像剤層のならし効果が十分に発揮できる。なお第三現像剤規制部材17の材質、硬度、当接圧、侵入量の如き設定条件は、現像剤の物性に応じて適宜最適な条件で設定すればよい。
【0019】
次に第三現像剤規制部材17の配置について説明する。図2は現像剤担持体10と第三現像剤規制部材17との配置を示す断面図である。なお、図2は本発明の効果を説明するために、第三現像剤規制部材17は本発明で規定した方向と逆の方向に延伸した構成としている。図2に示した構成をとった場合、弾性力により第三現像剤規制部材17がもたらす力の方向は、現像剤担持体10の法線方向である矢印Vの方向及び現像剤担持体10の接線方向である矢印Wの方向である。一方、現像剤を担持搬送する現像剤担持体10の搬送力は、現像剤が第三現像剤規制部材17を通過する前では矢印Sの方向で、現像剤が第三現像剤規制部材17を通過した後では、矢印Tの方向である。このような第三現像剤規制部材17による矢印V及び矢印W、及び現像剤にかかる矢印S及び矢印Tの方向の力関係によって、一定量の現像剤を矢印Tの方向へ現像剤担持体10上に薄層で担持することが可能になる。しかし、現像剤担持体10が高速で回転すると、現像剤にかかる矢印Sの方向の力と第三現像剤規制部材17にかかる矢印Wの方向の力が反発し合い、第三現像剤規制部材17が現像剤担持体10表面の現像剤に対する接触圧力が高くなる。これにより、現像剤担持体10表面の現像剤劣化が促進され、現像特性の低下をもたらすことになる。また、第三現像剤規制部材17をすり抜ける現像剤が増加し、現像剤層の均一化が達成できなくなり、その結果、プリント画像上にて濃度ムラやスジが発生してしまう。これに対して、順方向の場合には、現像剤が受ける矢印Sの方向、及び第三現像剤規制部材17が及ぼす矢印Wの方向が同じになるので、第三現像剤規制部材17が現像剤に対して及ぼす接触圧力が小さくなる。即ち、逆方向の場合と比較して順方向の方が、第三現像剤規制部材17が現像剤担持体10に及ぼす接触圧力が小さく設定できることになる。よって、現像剤担持体10表面の現像剤劣化が抑制できる。更には高速プロセスでの長期間にわたる使用においても、第三現像剤規制部材17による現像剤担持体10上の現像剤層の均一化が達成できる。
【0020】
また、第三現像剤規制部材17は現像剤担持体10表面に接触するタイプの装置について説明してきたが、本発明では第三現像剤規制部材17が現像剤担持体10表面と非接触であるタイプも使用可能である。図3は、現像剤担持体10と現像剤担持体10に非接触タイプの第三現像剤規制部材17との配置を示す断面図である。図3において、第三現像剤規制部材17の先端(エッジ端)からの延長線と現像剤担持体10との交点をPとし、P点における現像剤担持体10の法線方向をQ方向とする。本発明では、図3に記載したように、第三現像剤規制部材17の方向はQ方向よりもX方向に傾いて配置していることが特徴であって、これが順方向に該当する。また、第三現像剤規制部材17の方向がQ方向よりもY方向に傾いている場合は、逆方向に該当する。
【0021】
以上説明した現像装置構成により、第二現像剤規制部材16によって、現像後に現像剤担持体10表面に残った現像剤を回収し、再担持後の現像剤の摩擦帯電量を均一にすることでスリーブゴーストやブロッチの如き弊害を未然に防止できる。そして、第三現像剤規制部材17によって、現像剤担持体10上に再担持された現像剤層をならすことで層厚の均一化を図ることができるため、スジや濃度ムラの発生の如き画像不良がなく、良好な現像特性が得られる。また、本構成は高速プロセスにも対応することが可能である。しかし、長寿命化即ち高耐久性を達成するためにはこれだけでは十分ではない。特に、高速プロセスでの長期耐久では、現像剤のチャージアップ(摩擦帯電量過多)に伴い現像剤担持体10表面への鏡映力が増し、第二現像剤規制部材16の剥ぎ取り性が低下してしまう。その結果、スリーブゴーストやブロッチが発生する。更には、第二現像剤規制部材16と現像剤担持体10表面との長期にわたる摺擦によるストレスに伴い、現像剤担持体10表面に現像剤が付着し汚染することで、現像剤への摩擦帯電付与が十分に達成できなくなる。その結果、濃度や画質の如き現像特性の低下が発生する。上記のような弊害を未然に防止するために本発明者らが鋭意検討を行なった結果、以下に説明する現像剤担持体も改良を加える必要があることがわかった。
【0022】
<現像剤担持体>
本発明に係る現像剤担持体は、基体表面に樹脂層を有し、該樹脂層は少なくとも結着樹脂及び黒鉛化カーボンブラックを含有する。また、樹脂層のX線回折法によって測定された該カーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔d(002)が0.3370nm以上0.3450nm以下である。更に、樹脂層表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが0.07以上0.35以下である。
【0023】
<<基体>>
基体には、金属の如き剛体の円筒管もしくは中実棒を好ましく用いることができる。
【0024】
<<樹脂層>>
樹脂層に用いられる結着樹脂としては、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂等の公知の樹脂が使用可能である。本発明において樹脂層は、磁性一成分系現像剤の現像特性を良好なものにするために、樹脂層の体積抵抗値を10Ω・cm以下、更には10Ω・cm以上10−2Ω・cm以下とすることが好ましい。樹脂層の体積抵抗値を10Ω・cm以下とすることで、チャージアップに伴うブロッチの発生、及び現像剤担持体表面から現像剤への摩擦帯電付与不良を防止することができる。
【0025】
黒鉛化カーボンブラックは、従来のカーボンブラックを母体とするものであり、これに黒鉛化処理を施すことによってカーボンブラックの特性を相対的に黒鉛に近づけたものである。そのため、上記樹脂層中に含有させた場合、樹脂層のX線回折法により測定された該カーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔d(002)が0.3370nm以上0.3450nm以下の範囲に制御しやすくなる。その結果、十分な潤滑性と導電性及び均一な摩擦帯電特性を有する樹脂層を得ることができる。特に黒鉛化カーボンブラックの結晶性が高いものほど、上記のような特性をより高めることが可能となる。即ち、黒鉛化カーボンブラックは、熱処理による黒鉛化工程によって得られたものであるため、表面に官能基が存在せずに導電性が良好であり、S、Clの如き不純物含有量も極めて少なく、且つ水分の吸着性が小さい。よって、環境による導電特性の変化が少ない特徴がある。そのうえ黒鉛化カーボンブラックは、潤滑特性に優れた黒鉛型結晶構造に移行しているので、これを含有する樹脂層を有する現像剤担持体表面は、現像剤による汚染が発生し難くなる。従って、黒鉛化カーボンブラックを現像スリーブ表面の樹脂層中に含有させることで、少ない添加量でも現像剤のチャージアップを防止することができる。更には樹脂層の強度も向上するため、第二現像剤規制部材16による現像剤の剥ぎ取り及び第三現像剤規制部材17による現像剤層の均一化を長期間にわたって終始安定して実施することができる。
【0026】
樹脂層に配したカーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔d(002)が0.3370nm以上0.3450nm以下であると、樹脂層表面の潤滑性や導電性が均一にされ易く、さらに耐久による樹脂層表面の変化も発生しにくくなる。そのため、現像剤担持体は現像剤のチャージアップを長期にわたって抑制する効果が発揮され、現像剤の現像剤担持体表面への融着が発生し難く、かつ、安定して現像剤が均一に摩擦帯電される。また、現像剤担持体表面の潤滑性を高めることができるため、第二現像剤規制部材の現像剤剥ぎ取り性能も長期にわたって良好に維持できる。樹脂層に配したカーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔d(002)を0.3370nm未満に制御することは、配合しているカーボンブラックが結晶化しにくい材料であるため困難である。またd(002)が0.3450nm以下であると、樹脂層の潤滑性や導電性が良好となり、現像剤のチャージアップ抑制効果や現像剤担持体表面への現像剤の融着防止効果及び現像剤の剥ぎ取り性能が向上する。本発明に用いる黒鉛化カーボンブラックの基体となるカーボンブラックとしては、従来公知のものが使用できる。具体的には、ファーネス法、チャンネル法、サーマル法で製造されたカーボンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、チャネルブラック及び種々の副生カーボンブラックがある。
【0027】
黒鉛化処理は、カーボンブラックを黒鉛坩堝に充填し、通常のアチソン炉又は高周波炉で、非酸化性雰囲気下で加熱することにより行なうことができる。黒鉛化処理時の温度は1500℃以上3200℃以下の範囲に設定することが好ましい。1500℃を下回ると黒鉛化が十分に進行しなくなり、3200℃を超える加熱は、黒鉛化が飽和状態となるために、加熱エネルギーの無駄となる。言い換えると、黒鉛化カーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔の調整は、黒鉛化の温度を1500℃以上3200℃以下の範囲で変化させることで行なうことができる。
【0028】
黒鉛化カーボンブラックのDBP吸油量としては、50ml/100g以上200ml/100g以下、特には、70ml/100g以上200ml/100g以下が好ましい。DBP吸油量は、カーボンブラック粒子の凝集状態の目安であるストラクチャーのパラメーターとして示されるものであって、上記の範囲内であれば優れた導電性、潤滑性及び分散性を有する。これにより、樹脂層中でのカーボンブラック粒子の偏りや凝集が少なく、現像剤担持体表面に均一な導電性及び潤滑性が付与できる。DBP吸油量が200ml/100g以下の、ストラクチャーが過度に発達していない黒鉛化カーボンブラックを用いると、樹脂層を形成する際に使用する塗料の製造工程の一つである分散工程において塗料の粘度の増加が抑えられ、分散が均一化される。このような塗料を用いて形成した樹脂層は、黒鉛化カーボンブラックの凝集によって導電性及び潤滑性の不均一化が生じ難い。またDBP吸油量が50ml/100g以上の黒鉛化カーボンブラックを用いると、樹脂層を形成する際に塗料中での黒鉛化カーボンブラックの分散安定性が向上する。その結果、樹脂層中での黒鉛化カーボンブラックの分布が均一になるため、樹脂層表面の導電性の均一性や潤滑性が向上する。よって、現像剤の摩擦帯電量の過多を抑制できると共に、第二現像剤規制部材による現像剤担持体上の現像剤を剥ぎ取る性能を向上させることができる。
【0029】
また、黒鉛化カーボンブラックの一次粒子径としては、10乃至100nm、特には、16乃至80nmが好ましい。一次粒子径を上記範囲内とすることで、長時間にわたる使用に伴う現像剤担持体表面の樹脂層の劣化がより生じ難い。そのため、高耐久性を有し安定した画質が得られる現像装置を提供できる。また、樹脂層中に黒鉛化カーボンブラックを均一に分散させられる。更に、樹脂層を形成するために用いる塗料の粘度を適正範囲に制御できるため、黒鉛化カーボンブラックの塗料中での分散の不均一化を抑制できる。更にまた、樹脂層中で黒鉛化カーボンブラックをより均一に存在させられるため、導電性や潤滑性が均一化し、樹脂層表面で現像特性に偏りが生じるのを抑制できる。更に黒鉛化カーボンブラックのBET比表面積は500m/g以下、特には300m/g以下が好ましい。BET比表面積を上記の数値以下とすることで、樹脂層を形成する際の塗料の粘度が高くなりすぎることがなく、均一な分散性が得られる。
【0030】
本発明において、上述した黒鉛化カーボンブラックを樹脂層の構成成分として添加するには、他の構成材料と共に塗料中に添加し、該塗料を基体表面に塗布することで達成される。その際の黒鉛化カーボンブラックの使用量は、結着樹脂100質量部に対して1乃至100質量部が好ましい。これにより、樹脂層表面に十分な潤滑性を付与できると共に、樹脂層の抵抗値を適正範囲に制御できるため、終始安定した現像特性を得られる。また、塗料粘度の上昇を抑制でき、塗料中の黒鉛化カーボンブラックの均一分散性が向上する。
【0031】
本発明では、粘度の如き塗料物性の制御、塗料の保存安定性、或いは樹脂層の抵抗値を調整する目的で、黒鉛化カーボンブラックに加えて他の導電剤を添加してもかまわない。この際に使用可能な導電剤としては、グラファイトの如き炭化物、アルミニウム、銅、ニッケル、銀の如き金属粉体の微粉末が挙げられる。
【0032】
本発明に使用される現像剤担持体は後述するように樹脂層の表面粗さを規定した範囲内とする必要がある。そのためには、樹脂層中に前記黒鉛化カーボンブラックと共に凹凸形成粒子を含有することが好ましい。凹凸形成粒子は、該粒子表面に炭素化粒子や金属酸化物の如き微粉末を付着させることで、樹脂層の耐摩耗性向上や導電性向上の如き機能を付与することもできる。このような凹凸形成粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンの如きビニル系重合体や共重合体がある。また、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂の如き樹脂粒子、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫の如き酸化物粒子、炭素化粒子、導電処理を施した樹脂粒子の如き導電性粒子も使用可能である。上記凹凸形成粒子の粒径は、体積中位径で1μm以上15μm以下、好ましくは2μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上7μm以下である。上記範囲内の材料を使用し、且つ添加量を適宜調整することで、樹脂層表面に均一な凹凸が形成され、且つ本発明で規定した表面粗さを付与することができる。また、凹凸形成粒子の形状は球状であることが好ましい。本発明で用いられる凹凸形成粒子における球状とは、凹凸形成粒子の投影像における長径/短径の比が1.0以上1.5以下の物を意味しており、本発明においては、好ましくは長径/短径の比が1.0以上1.2以下の凹凸形成粒子を使用することがより好ましい。凹凸形成粒子の長径/短径の比を1.5以下とすることで、樹脂層中への凹凸形成粒子の分散性が向上し、樹脂層の表面粗さの均一化が達成できる。
【0033】
本発明においては、現像剤担持体の摩擦帯電付与能を調整するために、樹脂層中に荷電制御剤を上記黒鉛化カーボンブラックやその他添加剤と併用して含有させることが好ましい。この場合、荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上70質量部とすることが好ましい。荷電制御剤の添加量を上記範囲内とすることで荷電制御性が向上し、また樹脂層中での分散性も良好になる。荷電制御剤の具体例の以下に挙げる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩などによる変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩等。これらの荷電制御剤の中でも、高画質化を達成するために高球形化度で比較的低磁化の負帯電性現像剤を用いる場合は、下記一般式(1)で示される第4級ホスホニウム塩化合物を樹脂層中に含有させることが好ましい。上記構成を採用することで、現像剤への過多な摩擦帯電付与を未然に防止でき、終始安定した現像特性を得ることができる。
【0034】
【化1】

【0035】
式(1)中、R乃至Rは各々独立に、置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基及び置換基を有しても良いベンジル基のいずれかを示す。Rは置換基を有しても良い炭素数1以上16以下のアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアルキニル基、置換基を有しても良いフェニル基及び置換基を有しても良いベンジル基のいずれかを示す。置換基を有しても良いアルケニル基及びアルキニル基の炭素数は2以上16以下であることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、若しくはイオウ原子、またはこれらと炭素原子で形成される基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、が挙げられる。しかしこれらの置換基に限定するものではない。また、R乃至Rの少なくとも3つの官能基が、置換基を有しても良いブチル基、置換基を有しても良いフェニル基又は置換基を有しても良いベンジル基であることが好ましい。この場合、結着樹脂に対する第4級ホスホニウム塩の分散均一性が向上する傾向にあり、その結果、均一で高い負帯電性を有することが可能となる。式(1)に示されるXは、ハロゲンイオン、OH及び有機酸又は無機酸イオンの中から選ばれる陰イオンを示す。結着樹脂に添加して塗料とした場合の保存安定性がより優れる傾向にあることから、Xはハロゲンイオン又はOHであることが好ましい。表1に、本発明に好適に用いられる第4級ホスホニウム塩化合物を例示する。
【0036】
【表1】

【0037】
更に、前記樹脂層は、構造中に−NH基、=NH基、もしくは−NH−結合のいずれかを有する結着樹脂を含有するものとすることが好ましい。樹脂層に、本来は正帯電性の荷電制御剤である第4級ホスホニウム塩化合物と、構造中にアミノ基、=NH基、もしくは−NH−結合のいずれかを有する結着樹脂を含有させることで負帯電性現像剤への摩擦帯電量を適切な範囲に制御できる。これは、高球形化度で比較的低磁化の負帯電性現像剤を用いた場合に特に顕著な効果が発揮される。この明確な理由は定かではないが、本来は正帯電性である第四級ホスホニウム塩化合物が樹脂中に添加されると、構造中に−NH基、=NH基または−NH−結合の少なくとも1つを含む結着樹脂中に均一に分散される。そして更には、結着樹脂の構造中に取り込まれてしまうようになる。そして、ホスホニウムイオンのカウンターイオンの帯電極性が発現するようになり、その結果、このような化合物を有する樹脂層が負の摩擦帯電特性を持つようになるものと考えている。これら第4級ホスホニウム塩の存在は、例えば、現像剤担持体表面からの研削やクロロホルムの如き溶媒による抽出で採取したサンプルを、GC−MSの如き手法で測定することにより可能である。
【0038】
また本発明では、現像剤担持体表面への現像剤の付着をより軽減化する目的で、或いは第二現像剤規制部材の現像剤剥ぎ取り性をより向上させる目的で、樹脂層中に固体潤滑剤を含有させることもできる。この際に使用し得る固体潤滑剤としては、例えば、二硫化モリブデン、窒化硼素、銀−セレンニオブ、滑石が挙げられる。
【0039】
本発明において、現像剤担持体の基体表面に樹脂層を形成する方法としては、各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、前記基体上に塗工し、乾燥させることにより得ることが可能である。各成分の分散混合には公知の分散装置が好適に利用可能である。また、塗工方法としては、ディッピング法等の方法を用い得る。
【0040】
本発明に係る現像剤担持体は、基体表面に樹脂層を有し、該樹脂層表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが0.07以上0.35以下である。二乗平均平方根傾斜RΔqはJIS B0601に基づき測定される表面形状のパラメータであり、図4に示すように、粗さ曲線上で、基準長さにおける局部傾斜dZ(x)/dxの二乗平均平方根として表記され、式(2)により算出される値である。
【0041】
【数1】

【0042】
本発明では、現像剤担持体上の樹脂層のRΔqを上記範囲内とすることが、黒鉛化カーボンブラック添加による現像剤担持体表面の樹脂層の潤滑性向上との相乗効果となって、高速プロセス条件下での高耐久性が得られることがわかった。
【0043】
即ち、高速プロセス条件下での高耐久性を達成するためには、現像剤担持体上の現像後の残現像剤を剥ぎ取る性能を向上させ、且つ現像剤担持体に再担持された現像剤層の均一化が終始良好な状態で維持されなければならない。これを達成するために、黒鉛化カーボンブラック添加による現像剤担持体表面の樹脂層の潤滑性向上と樹脂層のRΔq規定が必須となる。そして、この両者を併用することで現像特性向上も達成でき、その結果、画像濃度だけでなく細線再現性の如き画質の向上も図ることができる。
【0044】
まず、樹脂層表面のRΔqが0.07未満の場合を説明する。図5(a)は、樹脂層表面のRΔqが比較的小さい場合に、現像剤が現像剤担持体10に担持された際の、第二現像剤規制部材16近傍を図示した模式図である。但し、現像剤担持体上の現像剤は、複数個の現像剤粒子からなる「穂立ち」を形成しつつ現像剤担持体上に担持されているが、模式図の煩雑性をさけるべく、図5(a)では現像剤担持体の最下層の現像剤のみを記載した。現像剤担持体10の樹脂層表面の凹部は、深さ(F)は小さく、幅(L)が広くなっている。このため、現像剤粒子が凹部の底近傍に容易に入り込むことができる。この凹部の底近傍では、現像剤粒子と樹脂層表面との接触面積が大きくなり、更に現像剤粒子が移動し難くなる。よって、高速系での長時間にわたるプリント時では現像剤担持体10上の樹脂層表面からの摩擦帯電付与を受け易くなり、その結果、過多の摩擦帯電を保持してしまいチャージアップしてしまう。そのため鏡映力がアップし、強固に現像剤担持体10の表面に静電的に強く拘束される。このような状態になると、第二現像剤規制部材16による現像剤の剥ぎ取りが十分に達成されなくなり、過帯電の現像剤が現像剤担持体表面に残存することになってしまい、スリーブゴーストやブロッチレベルの悪化を招いてしまう。
【0045】
これに対して、図5(b)に示したように樹脂層表面のRΔqが適正範囲の場合、現像剤担持体10の樹脂層表面の凹部は深さ(F)はやや大きくなるものの、幅(L)は狭くなる。そのため、現像剤粒子が凹部の底近傍に入り込み難くなる。よって、現像担持体上の現像剤は過剰に摩擦帯電付与されることがないため、現像剤担持体への鏡映力も過多とはならない。更に、第二現像剤規制部材16により、現像剤担持体上の現像剤が剥ぎ取りやすくなると共に、第三現像剤規制部材17により均一な現像剤の薄層を形成することが可能となる。
【0046】
この結果、高速系での長時間にわたるプリント時においても、終始スリーブゴースト、ブロッチ及びスジの如き弊害が発生することなく、良好な現像特性が維持できる。
【0047】
一方、樹脂層表面のRΔqが0.35を超える場合、即ち凸部の傾斜が大き過ぎる場合について説明する。凸部の傾斜が大きくなると、凹部に存在する現像剤が現像剤担持体上で動き難くなると共に、現像剤の剥ぎ取り効果も不十分となってしまう。また、凸部の先端が鋭利になるために、第三現像剤規制部材17の表面にキズをつけ易くなると共にスジが発生し易くなり、その結果、高画質化を達成することが困難になる。
【0048】
なお本発明において、樹脂層表面のRΔqを本願規定の範囲内とする方法は特に限定はない。例えば、比較的小粒径で球状の凹凸形成粒子を、結着樹脂量に対して比較的多量添加することや球状の凹凸形成粒子を含有する樹脂層の層厚を小さくすることによって、容易に達成することができる。
【0049】
また本発明に使用される現像剤担持体は、樹脂層表面のRΔqを本願の規定範囲内に制御する目的で、表面処理工程として、表面に磨き加工を施すことは好例である。これは粗さの調整だけでなく、樹脂層表面に黒鉛化カーボンブラックの露出性を高めることができ、その結果、現像剤に対する摩擦帯電付与能力や潤滑性を高めることができるためである。更に凸部の頂点が平滑化され、第三現像剤規制部材17により現像剤担持体上により均一な現像剤の薄層を形成し易くなる。
【0050】
磨き加工としては、フェルト、織布、紙の如き砥粒を含まない磨き部材を用いても良いが、研磨粒子を表面に担持した帯状研磨材を用いた方が効率の面から好ましい。帯状研磨材としては、酸化アルミニウム、シリコンカーバイト、酸化クロム、ダイヤモンドの如き比較的高硬度の微粒子を、ポリエステルの如きフィルムに塗布・固定したものを用いることができる。また、これら研磨粒子の粒度としてはJIS R 6001において#800以上のものが好ましい。粒度が#800未満(粗すぎるもの)では、樹脂層の表面粗さが不均一になり易い。以上説明したように、高速系での長時間にわたる使用でも、スリーブゴーストやブロッチの如き弊害が発生せず、終始良好な現像特性を得るためには、現像剤担持体の樹脂層に黒鉛化カーボンブラックを添加し、更に表面粗さを適正に制御することが有効である。
【0051】
(現像剤)
本発明に係る現像剤は、結着樹脂と磁性粉を含有する磁性トナーを含む磁性一成分現像剤である。そして、796kA/mの磁場を加えた際の飽和磁化が、15Am/kg以上40Am/kg以下であることが好ましい。飽和磁化を上記範囲に設定することにより、現像剤担持体上の磁性現像剤の「穂立ち」を短く且つ密に形成することができる。これにより、尾引きや飛び散りの如き弊害の発生を抑制でき、その結果、高精細な画像を得られる。加えて、第二現像剤規制部材での現像剤の剥ぎ取り性向上、或いは第三現像剤規制部材での現像剤層の均一化にも有効に作用する。また、本発明に係る現像剤担持体の樹脂層の表面粗さ(RΔq)及びカーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔との相乗効果により、現像剤の摩擦帯電量がより安定に均一化する。その結果、現像剤の穂立ちを、より一層短く、且つ均一に形成することができ、更なる高画質化を達成しつつ、高耐久性も得られる。磁性トナーの飽和磁化を上記の範囲とする方法としては、磁性粉が有する飽和磁化を考慮し、該磁性粉の添加量を調整することが挙げられる。
【0052】
本発明に用いることのできる磁性粉としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルの如き金属、或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属との合金、及びその混合物を挙げられる。磁性粉は、その表面或いは内部にケイ素元素を含有するものが好ましい。これらの中でも工業的及びコストメリットの面から酸化鉄が好適に用いられ、特にマグネタイトを好ましく用いることができる。この場合、例えばマグネタイトの形状を変えて磁気異方性に特徴を持たせる、或いは、任意のドーパントを添加することにより、磁気的特性を制御することが可能である。
【0053】
磁性粉の一次平均粒子径としてはトナー粒子に対する分散性を考慮すると、0.05μm以上1.00μm以下、特には0.10μm以上0.50μm以下が好ましい。更にトナー粒子に含有させる磁性粉の量は、所望のトナー磁気特性を得る目的から、結着樹脂100質量部に対して18質量部以上90質量部以下、特には20質量部以上85質量部以下が好ましい。
【0054】
本発明に用いることのできる磁性粉は、飽和磁化σsが60Am/kg以上100Am/kg以下、更には70Am/kg以上95Am/kg以下であることが好ましい。飽和磁化σsが上記範囲内にある磁性粉を使用し、添加量を前記説明した範囲内に設定することが好ましい。このような磁気特性を有することで、長期安定的に優れた現像特性を維持することが可能となる。更に磁性粉の残留磁化σr、及び保持力Hcは各々以下の数値範囲内にあることが好ましい。
残留磁化σr:5乃至20Am/kg、特には10乃至20Am/kg。
保磁力Hc:1乃至30kA/m、特には5乃至15kA/m。
【0055】
本発明に用いることのできる磁性一成分現像剤(磁性トナー)の結着樹脂としては、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を用い得る。中でも特にビニル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0056】
本発明に用いられる磁性一成分現像剤(磁性トナー)には、摩擦帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤を磁性トナー粒子に配合(内添)、または磁性トナー粒子と混合(外添)して用いることができる。また、荷電制御樹脂も用いることができ、上述の荷電制御剤と併用することもできる。本発明に用いられる磁性一成分現像剤(磁性トナー)には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、及び保存性向上のために、シリカ微粉体やアルミナの如き無機微粉体を適宜添加(外添)して用いることが好ましい。また本発明に用いられる磁性一成分現像剤(磁性トナー)は、画像濃度、解像度の如き観点から、重量平均粒径が4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0057】
次に、具体的実施例をもって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0058】
以下、本発明に関わる物性の測定方法について述べる。
(1)黒鉛化カーボンブラックの炭素(002)面の面間隔d(002)の測定
層面間隔d(002)の測定は、試料水平型強力X線回折装置:「RINT/TTRII」(商品名、リガク社製)を用い、カーボンブラックのX線回折スペクトルから求めた。
【0059】
先ず測定サンプルを無反射試料板に充填し、モノクロメ−タ−により単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得た。これより(002)回折線のピ−ク位置を求め、Braggの公式
d(002)=λ/2sinθ (3)
よりd(002)を計算したものである。ここでCuKα線の波長λは、0.15418nmとした。なお、主な測定条件は以下の通りである。
光学系:平行ビーム光学系、
ゴニオメータ:ローター水平型ゴニオメータ(TTR−2)、
管電圧:50kV、管電流:300mA、
測定法:連続法、
スキャン軸:2θ/θ、開始角度:10°、終了角度:50°、
サンプリング間隔:0.02°、スキャン速度:4.00°/min、
発散スリット:開放、発散縦スリット:10mm、散乱スリット:開放、受光スリット:1.00mm。
(2)樹脂層の体積抵抗の測定
樹脂層の体積抵抗値は、先ず100μmの厚さのPETシート上に、現像剤担持体上の樹脂層を構成する同じ塗工液を用い、7μm以上20μm以下の厚さの樹脂層を形成した。そして、該樹脂層の体積抵抗値を、抵抗測定器:「ローレスターAP」(商品名、三菱油化(株)製)に4端子プローブを取り付けて測定した。なお、測定環境は20℃以上25℃以下、50%RH以上60%RH以下とした。
(3)黒鉛化カーボンボンブラックのDBP吸油量測定方法
吸収量測定装置:「S−410」(商品名、(株)あさひ総研製)を用い、ジブチルフタレートを用いてJIS K 6217に従って測定した。
(4)黒鉛化カーボンブラック及び1μm未満の微粒子の粒径測定
電子顕微鏡を用いて粒径を測定した。撮影倍率は6万倍にしたが、難しい場合は低倍率で撮影した後に6万倍となるように写真を拡大プリントした。写真上で一次粒子の粒径を測る。この際、長軸と短軸を測り、平均した値を粒径とする。これを、100サンプルについて測定し、50%値をもって一次粒子径とした。
(5)黒鉛化カーボンブラックのBET比表面積
ASTM−D3037−78「窒素吸着によるカーボンブラック表面積処理標準法」の方法Cの規定に従って測定した。
(6)凹凸形成粒子及び固体潤滑剤の粒径測定
レーザー回折型粒度分布計:「コールターLS−230型粒度分布計」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としてはイソプロピルアルコールを使用した。イソプロピルアルコールにて粒度分布計の測定系内を5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg以上25mg以下加えて、バックグラウンドファンクションを実行した。
【0060】
次にイソプロピルアルコール50ml中に界面活性剤3滴を加え、更に測定試料を5mg以上25mg以下加えた。試料を懸濁した水溶液は超音波分散器で2分間分散処理を行なって試料液とした。この試料液を前記測定装置の測定系内に徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%以上55%以下になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行なった。そして、体積分布から算術した体積中位径を求めた。
(7)樹脂層の表面粗さの測定
樹脂層の表面粗さの測定は、JIS−B0601(2001)の表面粗さに基づき、表面粗さ測定装置:「SURFCOM 1500DX」(商品名、東京精密社製)を用いて実施した。測定条件としてはカットオフ0.8mm、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sにて、軸方向3点×周方向3点=9点について各々測定し、その平均値をとった。
(8)現像剤及び磁性粉の磁気特性
現像剤及び磁性粉の磁気特性(保磁力Hc、残留磁化σr、飽和磁化σs)は、振動試料型磁力計:「VSM−3S−15」(商品名、東英工業株式会社製)を用い、外部磁場を796kA/m(10kOe)として測定した。
(9)トナー粒子の粒径測定
測定装置としては、「コールターマルチサイザーIII」(商品名、べックマン・コールター社製)を用いた。電解液は、「ISOTON−II」(商品名、べックマン・コールター社製)を使用した。測定方法としては、前記電解水溶液100ml以上150ml以下中に分散剤として、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.1ml以上5ml以下加え、さらに測定試料を2mg以上20mg以下加えた。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で2分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。この結果より、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。チャンネルは、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の計13チャンネルとした。
【0061】
<<現像剤担持体の製造例>>
<結着樹脂>
レゾ−ル型フェノール樹脂:「J325」(商品名、大日本インキ化学工業社製;アンモニア触媒使用、メタノール40質量%含有)を用いた。
【0062】
<黒鉛化カーボンブラック>
市販のアモルファス状カーボンブラックを黒鉛化処理することで、本発明にて使用することのできるカーボンブラックを製造した。その際に、ベースになるカーボンブラックとしては、一次粒子径が20nm以上70nm以下のものを用い、該カーボンブラックを黒鉛坩堝に充填し、窒素ガス雰囲気中で熱処理することで黒鉛化処理した。なお、A−1及びA−2は各々「トーカブラック#5500」及び「シーストSY SRF−HS」(いずれも商品名、東海カーボン株式会社製)を黒鉛化処理したものである。また、A−3乃至A−5はいずれも「トーカブラック#4500」(商品名、東海カーボン株式会社製)を出発原料とし、焼成条件を変えて黒鉛化したものである。さらに、A−6は黒鉛化処理を実施していない「トーカブラック#4500」(商品名、東海カーボン株式会社製)である。A−1乃至A−6の物性値を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
<凹凸形成粒子>
C−1として、球状粒子「ベルパール CR2−2000」(商品名、エア・ウォーター株式会社製、体積中位径=5.0μm)を、また、C−2として、「ニカビーズ ICB0520」(商品名、日本カーボン株式会社製、体積中位径=7.1μm)を使用した。
【0065】
<現像剤担持体S−1>
基体表面に樹脂層を有する現像剤担持体を以下のようにして作製した。
結着樹脂 固形分として100質量部
黒鉛化カーボンブラックA−1 33質量部
第4級ホスホニウム塩化合物(例示No.1) 25質量部
凹凸形成粒子C−1 50質量部
上記材料に全体としての固形分が55%となるようにメタノールを添加した。更に直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として加え、サンドミルにて1時間分散した後、篩を用いてビーズを分離し、メタノールで固形分を40%に調整し塗工液を得た。
【0066】
外径24.5mm、中心線平均粗さRa=0.2μmの研削加工し、上下両端部をマスキングしたアルミニウム製円筒管を鉛直方向に保持し、一定速度で回転させた。このアルミニウム製円筒管に対し、スプレーガンを一定速度で下降させながら該塗工液を吹き付けて樹脂層を形成した。樹脂層の厚みは、塗工液の塗布量を調整して12μmとなるようにした。続いて熱風乾燥炉により温度150℃で30分間加熱して樹脂層を硬化させた。空冷後、磁界発生手段であるマグネットローラーを装着し、フランジを嵌合して現像剤担持体S−1を作製した。
【0067】
<現像剤担持体S−2〜S−17>
前記現像剤担持体S−1と同様の方法にて、現像剤担持体S−2〜S−17の製造を行なった。各現像剤担持体の樹脂層処方及び物性を表3に示した。このうちS−12、S−14、S−16は、外径24.5mm、中心線平均粗さRa=0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管上に樹脂層を形成した。一方、S−13、S−15、S−17は、外径20mm、中心線平均粗さRa=0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管上に樹脂層を形成した。S−14及びS−15(塗工液P−13)は、第4級ホスホニウム塩化合物を下記式(4)で示される第4級アンモニウム塩化合物に変えた。
【0068】
【化2】

【0069】
【表3】

【0070】
<<現像剤の製造例>>
<結着樹脂>
プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA 70mol%
エチレンオキサイド付加ビスフェノールA 33mol%
テレフタル酸 28mol%
トリメリット酸 30mol%
アジピン酸 38mol%
上記原料を5リットル4口フラスコに仕込み、還流冷却器、水分離装置、Nガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、フラスコ内にNガスを導入しながら温度180℃で縮重合反応を行ない、ポリエステル樹脂の製造を行なった。該ポリエステル樹脂溶液中に、
スチレン 85mol%
n−ブチルアクリレート 12mol%
ベンゾイルパーオキサイド 3mol%
の混合物を滴下ロートから4時間かけて滴下した。なお、ポリエステル部(PES)とスチレンアクリル部(St−Ac)との質量比はPES/St−Ac=80/20となるようにした。その後、温度140℃で5時間反応した後、温度230℃に昇温してジブチル錫オキシド(DBO)を0.2質量%添加し、6時間縮重合反応を行なった。重合終了後、濾別し、充分に水洗した後に脱水乾燥して結着樹脂を得た。
【0071】
<現像剤G−1>
下記表4に示した材料をヘンシェルミキサー:「FM−75型」(商品名、三井三池化工機株式会社製)でよく混合し、温度130℃に設定した2軸混練機:「PCM−30型」(商品名、池貝鉄工株式会社製)にて混練した。
【0072】
【表4】

【0073】
上記混合物を得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー製造用粉体原料である粉体原料(粗粉砕物)を得た。そして、該粉体原料を微粉砕機:「ターボミルT−250型」(商品名、ターボ工業社製)を用いて微粉砕を行なった後、熱球形化処理を行なった。熱球形化処理を行なった微粉砕粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置:「エルボジェット分級機」(商品名、日鉄鉱業社製)で、超微粉および粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒子径(D)が6.8μmの磁性トナー粒子を得た。前記磁性トナー粒子100質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンにて疎水化処理したシリカ微粉体(一次平均粒径12nm)1質量部とチタン酸ストロンチウム3質量部を添加した。そして、ヘンシェルミキサー:「FM−75型」(商品名、三井三池化工機株式会社製)にて外添することで磁性現像剤G−1を得た。該磁性現像剤G−1の796kA/mの磁場を加えた際の飽和磁化は24.8Am/kgであった。
【0074】
<現像剤G−2〜G−6>
現像剤G−1と同様の方法にて重量平均粒子径(D)が6.8μmの磁性トナー粒子を作製し外添処理した。マグネタイトの添加量は、G−2:70質量部、G−3:20質量部、G−4:85質量部、G−5:15質量部。G−6:95質量部とした。各磁性現像剤の796kA/mの磁場を加えた際の飽和磁化は、G−2:33.8Am/kg、G−3:16.4Am/kg、G−4:38.1Am/kg、G−5:14.7Am/kg、G−6:41.4Am/kgであった。
【0075】
〔実施例1〕
作製した現像剤担持体S−1を図1示す構成を有する現像装置に組み込んだ。第一現像剤規制部材として鉄製の磁性ブレードを使用した。第二現像剤規制部材には芯金上にポリウレタンフォームからなる弾性層を設けた直径14mmの弾性ローラ(セル径320μm、セル数75個/inch、アスカーF硬度53°)を用いた。現像剤担持体との当接幅は3.5mm、当接圧(線圧)は25N/mとした。また、図1に示したように、現像剤担持体と当接部にて逆方向に、現像剤担持体の周速の30%の速度で回転するように設定した。第三現像剤規制部材としてはウレタンゴムからなるシート状部材(JIS K 6253に基づいて測定したゴム硬度が70°)を使用した。そして、図1のように、現像剤担持体の回転方向に沿う順方向に向かって延びて、先端を前現像剤担持体に対向させるように配置した。なお、現像剤担持体表面への当接圧は4N/m、侵入量は0.6mmとした。なお、現像装置構成に関しては表5に記載した。該現像装置をデジタル複写機(商品名:IR−5075、キヤノン(株)製)に装着した。評価用の現像剤としては、磁性現像剤G−1を用いた。画像評価は、温度23℃/湿度50%RH(N/N)環境、温度23℃/湿度5%RH(N/L)環境、及び温度35℃/湿度85%RH(H/H)環境において、画像比率5%の文字画像を連続100万枚複写耐久により行なった。その他の評価条件は以下の通りである。
・プロセス速度(潜像担持体1の周速):700mm/s、
・現像剤担持体10の周速:800mm/s、
・第一現像剤規制部材2と現像剤担持体10との間隙:230μm、
・第1現像剤担持体10と潜像担持体1との間隙:250μm、
・現像バイアス Vp−p:1500V、周波数:2700Hz。
【0076】
画像評価の結果は表5に挙げたように、いずれの環境下においても終始良好な画像特性を得ることができた。評価方法及び評価基準は以下の通りである。
【0077】
(1)画像濃度
画像比率5.5%であるテストチャート上の5mm丸部のコピー画像濃度を、反射濃度計:「RD918」(商品名、マクベス社製)により反射濃度測定を行ない、10点の平均値をとって画像濃度とした。
A:濃度1.45以上
B:濃度1.40以上1.45未満
C:濃度1.30以上1.40未満
D:濃度1.20以上1.30未満
E:濃度1.20未満
(2)スリーブゴースト
幅x×長さlの帯状ベタ黒部(図6(a))を画出しした後、幅y(但し、y>x)×長さlのハーフトーン(図6(b))を画出しする。このハーフトーン画像の画像濃度を図6(c)の領域ア、領域イ及び領域ウでそれぞれ画像濃度を測定し、現れた濃度差(濃淡の程度)を、下記基準にてスリーブゴーストを評価した。領域アは、画像形成開始点から現像剤担持体1回転の長さz以降の部分である。領域イは、画像形成開始点から現像剤担持体1回転の長さzまででベタ黒画像の画出しをした部分と重なる部分である。領域ウは、画像形成開始点から現像剤担持体1回転の長さzまででハーフトーンのみを画出しした部分である。
A:濃度差が全く見られない(濃度差が0.02未満)
B:領域イと領域ウで軽微な濃度差が見られる(濃度差が0.02以上0.04未満)
C:各領域で濃度差が見られる(濃度差が0.04以上0.07未満)
D:各領域での濃度差が見られる(濃度差が0.07以上0.12未満)
E:各領域で顕著な濃度差が見られる(濃度差が0.12以上)
(3)画像スジ
ベタ黒画像及びハーフトーン画像の画出しを行ない、それぞれの画像上及び現像剤担持体上の現像剤層のスジを目視により観察し、以下の基準に従い評価した。
A:現像剤担持体上、ベタ黒画像及びハーフトーン画像共にスジは見られない。
B:現像剤担持体の現像剤層には若干スジの発生あり。但し、ベタ黒画像及びハーフトーン画像では共にスジは見られない。
C:ハーフトーン画像で軽微なスジの発生があるが、ベタ黒画像ではスジは見られない。
D:ベタ黒画像及びハーフトーン画像共に軽微なスジが確認できる。
E:ベタ黒画像及びハーフトーン画像共に明瞭なスジが確認できる。
【0078】
(4)ブロッチ
ベタ黒画像及びハーフトーン画像を出力し、それぞれの画像上及び現像剤担持体上のブロッチ(斑点状、細波状若しくはは絨毯状のムラ)発生状況を目視により観察し、評価結果を下記の指標で示した。
A:画像上、現像剤担持体上共にブロッチが全く見られない。
B:現像剤担持体上には、僅かにブロッチが確認されるが、画像上には出現しない。
C:ハーフトーン画像上の一部に僅かにブロッチ画像が出現する。
D:ハーフトーン画像上もしくはベタ黒画像上の一部に明確なブロッチが現れる。
E:画像上のほぼ全面にブロッチが現れている。
【0079】
(5)画質
2mm角の「電」の文字を30倍に拡大し、以下の評価基準に基づいて細線の再現性を評価することで判定した。
【0080】
A:文字ラインがシャープである。
【0081】
B:文字ラインがややかすれているか、やや太りが見られる。
【0082】
C:文字ラインがかすれているか、太りが見られるが、文字を判定できる。
【0083】
D:文字ラインにかすれや太りが見られ、文字が判定できない。
【0084】
E:ラインのかすれや太さムラに加えて、ラインのつぶれも見られる。
【0085】
なお表5において、(1)画像濃度と(2)スリーブゴーストに関しては、評価ランクと共に測定値もあわせて記載した。
【0086】
〔実施例2〜実施例9及び比較例1〜比較例8〕
実施例2〜実施例9及び比較例1〜比較例8の現像装置構成に関しては、表5に記載した。表5に記載した項目以外は、実施例1と同様の現像装置を用い、実施例1と同様にして画像評価を行なった。評価結果は表6〜表8に記載した。
【0087】
比較例1は、第一現像剤規制部材には第三現像剤担持部材として使用したウレタンゴムからなるシート状部材を、現像剤担持体表面へ当接圧20N/mで当接させたものとした。比較例3では、第三現像剤規制部材を、現像剤担持体の回転方向に沿う逆方向に向かって延びて、先端を現像剤担持体に対向させるように設定した。実施例4では、第二現像剤規制部材をセル径600μm、セル数40個/inchのポリウレタンフォームからなる弾性層を設けた直径14mmの弾性ローラに変更した。実施例5では、第三現像剤規制部材をシリコーンゴムからなるシート状部材(JIS K 6253に基づいて測定したゴム硬度が65°)を使用した。現像剤担持体表面への当接圧は5N/m、侵入量は0.3mmとした。
【0088】
〔実施例10〕
図7は実施例10にて使用した現像装置の模式図である。実施例10の現像装置構成のうちで、実施例1で使用した現像装置構成(図1)と同一の符号を用い、且つ適宜説明を省略する。実施例10では、現像剤担持体として、互いに表面が対向する位置に配設されて同一方向に回転する第一現像剤担持体10及び第二現像剤担持体22とを有する。ここで、回転自在に保持された第二現像剤担持体22は、現像スリーブ20内に、現像剤担持体22上に磁気的に吸引且つ保持するための磁石(マグネットローラー)21が配置されている。更に、第一現像剤担持体10と同様、基体としての金属円筒管18上に被覆された樹脂層19を有している。また第二現像剤担持体22は、潜像担持体1表面に対向して潜像担持体1の回転方向の下流側に、第一現像剤担持体10と所定の間隙をおいて配設されている。第二現像剤担持体22の回転方向は、第一現像剤担持体10の回転方向と同じである。更に第二現像剤担持体22は、マグネットローラー21のN11極を第一現像剤担持体10と近接する位置に配置した。第二現像剤規制部材16は、第一現像剤担持体に当接するように配設した。第三現像剤規制部材17は第一現像剤担持体10表面に非接触とし、且つ第一現像剤担持体10の回転方向に沿う順方向に延びるように設定した。画像評価は、実施例1と同様の手順にて実施した。評価条件は以下の通りである。
・第一現像剤担持体10:S−12、
・第二現像剤担持体22:S−13
・プロセス速度(潜像担持体1の周速):800mm/s
・第一現像剤担持体10の周速:800mm/s、・第二現像剤担持体22の周速:500mm/s
・第一現像剤規制部材2と第一現像剤担持体10との間隙:230μm
・第一現像剤担持体10と第二現像剤担持体22との間隙:210μm
・第一現像剤担持体10と潜像担持体1との間隙:250μm
・第二現像剤担持体22と潜像担持体と1の間隙:300μm
・現像バイアス Vp−p:1500V、周波数:2700Hz
実施例10の現像装置構成に関しては表5に記載した。画像評価の結果は表9に示した。
【0089】
〔実施例11〜実施例16及び比較例9〜比較例10〕
実施例11〜実施例16及び比較例9、比較例10に使用した現像剤担持体の樹脂処方及び物性は、表3に記載した。また、実施例11〜実施例16及び比較例9、比較例10の現像装置構成に関しては、表4に記載した。表3に及び表4に記載した項目以外は、実施例1と同様に作製した現像剤担持体、実施例10と同様の現像装置を用い、実施例10と同様にして画像評価を行なった。結果は表9及び表10に記載した。ここで比較例9にて用いたファーブラシは、ナイロン66の導電糸を繊維密度が93本/mmとなるように基布に植え付け、それを直径6mmの芯金上に巻き付けて直径14mmのブラシ状に構成したものを使用した。また比較例10は、第二現像剤規制手段を第一現像剤担持体10表面と200μmの間隙を開けて非接触とした。
【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
【表10】

【符号の説明】
【0096】
1 潜像担持体(感光ドラム)
2 第一現像剤規制部材
3 現像容器
4 仕切り部材
5、11 攪拌搬送部材
6、18 基体(金属円筒管)
7、19 樹脂層
8、20 現像スリーブ
9、21 磁石(マグネットローラー)
10、22 現像剤担持体
12 現像剤供給部材
13 現像バイアス電源
14 第一室
15 第二室
16 第二現像剤規制部材
17 第三現像剤規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤及び該現像剤を収容するための現像容器、該現像剤を表面に担持し回転自在に保持された現像剤担持体、該現像剤担持体表面の現像剤量を非接触で磁気的に規制する第一現像剤規制部材を有し、潜像担持体に対向する現像領域へ担持された現像剤を搬送して該現像剤により該潜像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置において、
(ア)該現像装置は、第二現像剤規制部材と第三現像剤規制部材を有し、該第二現像剤規制部材は、該第一現像剤規制部材の回転方向の上流に配置され、該現像剤担持体と接触する円筒形状の弾性材料で成形されており、該第三現像剤規制部材は、該第一現像剤規制部材と該第二現像剤規制部材の間に配置され、該現像剤担持体の回転方向に沿う順方向に向かって延び、該第三現像剤規制部材の先端は、該現像剤担持体に対向しており、
(イ)該現像剤は磁性一成分現像剤であり、
(ウ)該現像剤担持体は、基体と該基体の表面に樹脂層を有し、該樹脂層は少なくとも結着樹脂及び黒鉛化カーボンブラックを含有し、樹脂層のX線回折法によって測定された該カーボンブラックの黒鉛(002)面の面間隔d(002)が0.3370nm以上0.3450nm以下であり、且つ、該樹脂層表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが0.07以上0.35以下であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
該磁性一成分現像剤は、少なくとも結着樹脂と磁性粉を有する磁性トナーを含有し、該磁性トナーは、796kA/mの磁場を加えた際の飽和磁化が、15Am/kg以上40Am/kg以下であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−128489(P2011−128489A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288806(P2009−288806)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】