説明

現像装置

【課題】長期に亘って繰り返し画像形成に使用しても、トナーの凝集体の滞留と付着等が生じることなく、現像ローラの表面に厚さが均一なトナー層を形成し、安定して良好な画像を形成することができる現像装置を提供する。
【解決手段】現像装置1において、固有振動数が異なる上流側規制ブレード9aと下流側規制ブレード9bが、現像ローラ6の回転方向の2箇所に夫々該現像ローラ6の表面に対設され、該現像ローラ6の表面に付着した現像剤の層厚を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流側規制ブレード及び下流側規制ブレードで現像ローラの表面に付着した現像剤の層厚を規制し、規制された現像剤を感光体表面の静電潜像に供給して静電潜像を可視像化する現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ、デジタル複写機、ファクシミリ、又は複合機等の電子写真方式を採用する画像形成装置は、現像ローラの表面に付着したトナーを感光体表面に形成された静電潜像に静電吸着させることにより、静電潜像を現像し、現像された静電潜像を記録紙に転写して、画像を形成する。
【0003】
感光体上の静電潜像を現像する現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤、又はトナーとキャリアとからなる二成分現像剤が一般に用いられる。一成分現像剤はキャリアを使用しないことから、トナーとキャリアとを均一に混合するための攪拌機構が不要となり、現像装置の構造が簡単になるといった利点がある。そのため、小型の画像形成装置では、一成分現像剤を使用するものが多い。
【0004】
一成分現像剤を用いた一成分現像方法は、現像ローラ上に帯電したトナー層を形成し、現像ローラの回転に伴って、形成されたトナー層を静電潜像が形成された感光体と対向する現像位置へ搬送して感光体表面の静電潜像を現像するものである。一成分現像方法では、現像ローラの表面に均一な層厚のトナー層をいかに安定して形成するということが良好な画像を得るためには重要である。
【0005】
この現像ローラの表面のトナー層の形成は、現像ローラの表面に対設された現像剤層規制部材により行われる。現像剤層規制部材は現像ローラの表面のトナー層に所定圧力で圧接し続けるため、摩擦熱、圧力、機内温度等の環境要因によって、トナーが溶融し、溶融したトナーが凝集して凝集体が生じる場合がある。
【0006】
トナーの凝集体が現像剤層規制部材と現像ローラとの間の規制領域(ニップ部)又はその近傍に生じる場合、現像剤層規制部材の表面に付着する恐れがある。このような付着物は、初期的には、画像形成に大きな影響を及ぼすことはないが、使用が長期化するにしたがって成長する。成長してきた付着物は、トナーの帯電性を悪化させたり、現像剤層規制部材と現像ローラとの間のトナーの流入口を塞いだり、現像剤層規制部材の現像ローラに相対している表面に凹凸を形成したりする恐れがあるため、全体的又は局所的なトナーの層厚の変化を招き、均一なトナー層の形成ができなくなってしまう。その結果、画像上で濃度低下、部分的な白スジ等の画質劣化が発生してしまう。
【0007】
また、トナーの凝集体が規制領域に流入した場合、凝集体の滞留又はすり抜けが生じる可能性がある。凝集体が規制領域に滞留したときには、凝集体が滞留した部分で、後から流入したトナーが通過しにくくなるため、トナーの層厚が薄くなり、反対にそれ以外の部分へ大量のトナーが流入し、均一なトナー層の形成ができない。一方で、凝集体が規制領域をすり抜けるときに、現像剤層規制部材を持ち上げる格好になるため、現像剤層規制部材と現像ローラとの間の間隔が一時に広がることとなり、感光体に供給するトナーの量が不安定となる。その結果、画像上で部分的な白スジ、濃淡ムラ等の画質劣化が発生してしまう。
【0008】
このような課題を解決するために、特許文献1には、ドクターブレードと現像ローラとが当接している位置を変化させる現像装置が開示されている。具体的には、現像装置は、ドクターブレードと、ドクターブレードを移動させる移動駆動手段とを有し、移動駆動手段にて現像ローラに対するドクターブレードの当接位置を変える。これにより、ドクターブレードへのトナーの付着を生じさせないようにし、又は付着したトナーを除去できるようにして、画質を劣化させないようにする。
【0009】
さらに、特許文献2には、現像ローラの表面に担持した現像剤の層厚を規制する層厚規制手段を移動することで現像剤の層厚を一定とすることができる現像装置が開示されている。具体的には、現像装置には、層厚規制手段の変化を検知する検知手段と、層厚規制手段に変位又は圧力を付与することで層厚規制手段を移動させる移動駆動手段とが設けられている。検知された層厚規制手段の変位に基づいて、層厚規制手段を現像ローラの表面に対して移動させることにより、現像剤の層厚を一定とする制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−127509号公報
【特許文献2】特開平7−234585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の現像装置にあっては、ドクターブレードを移動させる移動駆動手段の制御等による大幅なコストアップ、及び設置スペースが別に必要となり、既存の装置を流用するには限界がある。また、ドクターブレードの現像ローラとの当接位置を変更する時には、現像ローラを擦りながらドクターブレードを移動するため、現像ローラ及びドクターブレードに損傷を与える恐れがある。
【0012】
また、特許文献2の現像装置にあっては、層厚規制手段と現像ローラとの間隔を一定に制御したものの、トナーの凝集体の除去が不十分である。長期の使用により、小さな凝集体が規制領域に滞留する、又は層厚規制手段へ付着する可能性がある。また、現像ローラが回転するときに、回転方向で駆動又は偏心によって周期的に振動する。現像ローラの振動によって現像ローラと層厚規制手段との間隔が変動し、その間のトナーにかかる圧力が変動するため、規制領域へ流入するトナー量が不安定となる。トナー量を安定とさせるために、層厚規制手段の現像ローラに対する圧力を高く設定すれば、トナー量が安定となるものの、トナーに過剰なストレスがかかることとなり、流動性が一層低下し、現像性の低下又は画像のがさつきが生じやすくなるという問題が発生する。
【0013】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、現像ローラの表面に厚さが均一なトナー層を形成して、画質を向上させることができ、かつ長期に亘って繰り返し画像形成に使用しても、画質の低下を招くことなく、安定して良好な画像を形成することができる現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る現像装置は、表面に現像剤を担持する現像ローラと、該現像ローラの回転方向の2箇所に夫々該現像ローラの表面に対設され、該現像ローラの表面に付着する現像剤の層厚を規制する上流側規制ブレード及び下流側規制ブレードとを備え、規制された現像剤を感光体表面の静電潜像に供給して該静電潜像を可視像化する現像装置において、前記上流側規制ブレードの固有振動数と前記下流側規制ブレードの固有振動数とが異なることを特徴とする。
【0015】
本発明では、上流側規制ブレード及び下流側規制ブレードは、振動が付与された場合に、異なる振幅を発生させることが可能である。
【0016】
本発明に係る現像装置は、前記下流側規制ブレードの固有振動数よりも、前記上流側規制ブレードの固有振動数に近い振動数の振動を前記上流側規制ブレード及び/又は下流側規制ブレードに付与する振動手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明では、上流側規制ブレードの固有振動数に近い振動数の振動を付与することで、上流側規制ブレードの振幅を下流側規制ブレードの振幅より大きくさせることが可能である。
【0018】
本発明に係る現像装置は、前記上流側規制ブレードは、基端部が前記下流側規制ブレードに連結してあることを特徴とする。
【0019】
本発明では、下流側規制ブレードに付与した振動を上流側規制ブレードに伝えることが可能である。
【0020】
本発明に係る現像装置は、前記下流側規制ブレードは、前記現像ローラの軸線方向に平行に延びる板状部材であり、自由端部が前記現像ローラの回転方向の上流側に向かって延設されるように、片持ち状に支持され、前記現像ローラと相対する面で前記現像ローラに付着する現像剤の層厚を規制するように設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明では、簡単な構造で確実に現像剤の層厚を規制することが可能である。
【0022】
本発明に係る現像装置は、前記下流側規制ブレードと前記上流側規制ブレードとが現像ローラ側でなす角は鈍角であることを特徴とする。
【0023】
本発明では、上流側規制ブレードが現像ローラに相対する面の面積を大きくするとともに、上流側規制ブレードと下流側規制ブレードとの間でトナーが一時蓄積された空間を形成することが可能である。
【0024】
本発明に係る現像装置は、前記下流側ブレード及び前記現像ローラ夫々の前記現像ローラの回転方向の変位を検知する検知手段を備え、前記振動手段は、該検知手段にて検知した変位に基づいて、前記下流側規制ブレードに振動を付与することを特徴とする。
【0025】
本発明では、下流側ブレード及び現像ローラ夫々の現像ローラの回転方向の変位を検知し、下流側ブレードの変位と現像ローラの変位との差が一定となるように、下流側規制ブレードに振動を付与することが可能である。
【0026】
本発明に係る現像装置は、前記振動手段は、前記下流側規制ブレードに、前記現像ローラの前記変位と同振幅、逆位相となる振動を付与するということを特徴とする。
【0027】
本発明では、下流側規制ブレードに、現像ローラの変位と同振幅、逆位相となる振動を付与することで、下流側ブレードと現像ローラとの間隔を常に一定とさせることが可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、固有振動数が異なる上流側規制ブレードと下流側規制ブレードとを、夫々現像ローラの回転方向の上流側と下流側との2箇所に配置することにより、振動する場合に現像ローラの回転方向の2箇所でそれぞれ現像ローラに付着したトナーに異なる振動の作用を与えることができる。このように、サイズが異なるトナーの凝集体があったとしても、上流側規制ブレード及び/又は下流側規制ブレードで潰すことができ、凝集体の付着等を防止することができるため、現像ローラの表面に均一な薄層を形成して、画質を向上することができ、かつ長期に亘って繰り返し画像形成に使用しても、画質の低下を招くことなく、安定して良好な画像を形成することができる等、優れた効果を奏する。
【0029】
本発明では、振動手段にて、下流側規制ブレードの固有振動数よりも、上流側規制ブレードの固有振動数に近い振動数の振動を上流側規制ブレード及び/又は下流側規制ブレードに付与することにより、上流側規制ブレードの振幅が下流側規制ブレードよりも大きくなるため、上流側規制ブレードによる現像ローラの表面に衝突する力が大きくなる。従って、上流側規制ブレードの振動でトナーの凝集体を規制領域に入る前に予め潰すことができ、トナーの凝集体が規制領域に入ることを効率的に防止することができる等、優れた効果を奏する。
【0030】
本発明では、上流側規制ブレードと下流側規制ブレードとを連結することにより、振動手段は振動を上流側規制ブレード及び下流側規制ブレードの何れかの一つに付与すればよい。従って、振動手段の簡素化、ひいては現像装置の小型化が図れる等、優れた効果を奏する。
【0031】
本発明では、現像ローラの軸線方向に平行に延びる板状部材である下流側規制ブレードを、自由端部が前記現像ローラの回転方向の上流側に向かって延設されるように、片持ち状に支持しており、現像ローラに相対する面で現像ローラに付着する現像剤の層厚を規制することにより、下流側規制ブレードと現像ローラとの間隔を容易に調節でき、簡単な構造で確実に現像剤の層厚を規制することができる等、優れた効果を奏する。
【0032】
本発明では、上流側規制ブレードと下流側規制ブレードとがなす角θを鈍角とすることにより、上流側規制ブレードが現像ローラに相対する面の面積を確保することができ、また、上流側規制ブレードと下流側規制ブレードと現像ローラとで囲むことにより、トナーが一時蓄積された空間を形成することができる。上流側規制ブレードと現像ローラとの間を通ったトナーを一時当該空間に蓄積した後、規制領域へ流入させることにより、規制領域手前のトナー量を一定にさせることができ、感光体に供給するトナー量を安定にさせることができる等、優れた効果を奏する。
【0033】
本発明では、下流側ブレード及び現像ローラ夫々の現像ローラの回転方向の変位を検知することで、下流側ブレード及び現像ローラ夫々の変動を把握した上で、下流側規制ブレードに振動を付与することができる。下流側ブレードの変位と現像ローラの変位との差が一定となるように下流側規制ブレードに振動を付与することにより、下流側ブレードと現像ローラとの間隔を常に一定とさせることができる。
【0034】
本発明では、下流側ブレードに現像ローラの振動と同一振幅で逆位相の振動を付与することにより、下流側ブレードと現像ローラとの間隔を常に一定とさせ、感光体に供給するトナー量を安定にさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る現像装置を備える画像形成装置の要部構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係る現像装置に設けられている現像剤層規制部材及びその周辺について説明する模式図である。
【図3】本発明に係る現像装置に設けられている現像剤層規制部材の拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る現像装置をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
【0037】
図1は本発明に係る現像装置1を備える画像形成装置の要部構成を示す模式図である。同図において、現像装置1は、例えば、トナー像を形成するための感光体2を含む電子写真方式の各種画像形成装置に用いられ、トナーのみを含む一成分現像剤を感光体2の表面の静電潜像に供給して静電潜像を現像する非磁性一成分現像装置である。
【0038】
感光体2は、その表面に静電潜像ひいてはトナー像が形成される感光膜を有するローラ状部材であり、図中矢印方向Rとして示すように、時計方向へ軸線回りに回転可能に設けられる。
【0039】
感光体2の周囲には、回転方向に沿って、感光体2の表面を均一な所定の電位に帯電させる帯電部材3と、静電潜像が形成された感光体2の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像に可視像化する現像装置1と、トナー像を記録紙に転写する転写部材4とを配置してある。
【0040】
感光体2には、例えば、図示しない導電性基体と、導電性基体の表面に形成される図示しない感光膜とを含むローラ状部材を使用できる。本実施の形態では、感光体2としては、有機感光膜を用い、直径30mm、長さ30cm、回転速度150mm/secに設定した。感光体2の表面電位は、−550Vに設定した。
【0041】
現像装置1は、直方体形状をなす現像槽5を備えている。現像槽5は、内部に空間を有する容器状部材であり、その内部の空間に図示しない現像剤を収容するものである。本実施の形態では、現像剤はトナーを含む一成分現像剤である。
【0042】
また、現像槽5内には、感光体2の表面と所定の間隔を保持して対設された現像ローラ6と、現像ローラ6と回転軸が平行になるように配置している供給ローラ7と、内部に収容しているトナーを攪拌する攪拌部材8と、現像ローラ6に付着したトナーの層厚を規制する現像剤層規制部材9とをさらに収容している。
【0043】
現像槽5の感光体2を臨む側には、開口部5aが開設されている。現像ローラ6の一部が当該開口部5aから現像槽5の外側へ突出し、感光体2に接近して対向している。本実施の形態では、現像槽5は、例えば、合成樹脂好ましくは射出形成可能な熱可塑性樹脂によって形成されたものである。
【0044】
また、図示しないが、現像槽5の鉛直方向上方には、トナーカートリッジ及びトナーホッパーが設けられている。より詳しくは、鉛直方向上方から下方に向けて、トナーカートリッジ、トナーホッパー及び現像槽5がこの順で設けられている。トナーホッパーは、トナーカートリッジから供給されるトナーを現像槽5に補給する。
【0045】
現像ローラ6は、図中矢印方向R1として示すように、反時計方向へ軸線回りに回転可能に設けられるローラ部材である。現像ローラ6としては、特に限定されるものではないが、表面にカーボンブラック等の導電化剤が添加された導電性ウレタンゴム等で形成している導電性の弾性ローラ、表面を溝或いはサンドブラスト処理した金属製のローラ、又は表面を樹脂コートしたゴム製或いは金属製のローラ等を用いることができる。本実施の形態では、現像ローラ6としては、体積抵抗率が約106 Ωcm、JIS−A硬度が60〜70度の導電性ウレタンゴムで形成している直径16mm、長さ30cmのローラ部材を用いた。現像ローラ6は、後述する供給ローラ7により搬送されるトナーを表面に付着させて回転する。現像ローラ6が回転することにより、表面に付着したトナーは、感光体2の表面に対向している領域において、感光体2の表面の静電潜像に供給される。静電潜像にトナーが供給されることにより、静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0046】
なお、現像ローラ6から感光体2の表面の静電潜像にトナーを供給する場合には、現像ローラ6に接続される図示しない電源から現像ローラ6に現像バイアス電圧が印加される。印加される現像バイアス電圧としては、通常、−200〜−1000V程度であり、要求される画像濃度に応じて適宜に設定される。本実施の形態では、現像バイアス電圧は−300Vに、現像ローラ6の線速度は145mm/secに設定した。
【0047】
供給ローラ7は、現像ローラ6と互いの外周面同士が対面した状態で回転可能に現像槽5内に設けられ、トナーの攪拌、搬送及び現像後のトナー除去を兼ねたローラ部材である。供給ローラ7は、現像ローラ6の回転方向と同方向へ回転することにより、現像槽5の内部空間に収容されるトナーを現像ローラ6まで搬送し、現像ローラ6に摺擦することにより、トナーは帯電し、現像ローラ6の表面に付着する。
【0048】
また、供給ローラ7の回転速度を制御することによって、現像ローラ6の表面に供給されるトナー量を調整することができる。本実施の形態では、供給ローラ7は、体積抵抗約105 Ωcm、セル密度が約3個/mmの導電性のウレタンフォームで形成されており、直径14mm、長さ30cmであり、現像ローラ6と接触深さ0.5〜1.0mmで接触している。供給ローラ7の回転速度は、後述の制御部14によって制御でき、現像ローラ6の回転速度に対して0.7〜1.2の割合であることが好ましい。なぜならば、供給ローラ7の回転速度が現像ローラ6の回転速度に対して0.7未満であれば、現像ローラ6へのトナーの搬送が十分に行われず、画像濃度の不足或いは搬送ムラによる画像欠陥が生じる恐れがある一方、供給ローラ7の回転速度が現像ローラ6の回転速度に対して1.2以上であれば、現像ローラ6へのトナー搬送量が過剰となり、下流側規制ブレード9bでのトナー層規制が十分行われず、トナー帯電量の低下とともに、トナー飛散による画像欠陥が生じる恐れがあるからである。本実施の形態では、供給ローラ7の線速度を116mm/secとした。また、本実施の形態では、供給ローラ7にバイアス電圧を印加していないが、トナー搬送性を上げるために−100V〜−500V程度のバイアス電圧を印加することもできる。
【0049】
攪拌部材8は、供給ローラ7の現像ローラ6と反対する側に設けられ、現像槽5内のトナーを攪拌する部材である。攪拌部材8は、時計方向へ軸線回りに回転することにより、現像槽5内に収容されるトナーと、図示しないトナーホッパーを介して図示しないトナーカートリッジから現像槽5内に新たに供給されるトナーとを均一に混合し、供給ローラ7の周辺に搬送する。
【0050】
現像剤層規制部材9は、現像ローラ6の回転方向における上流側と下流側との2箇所に夫々設けられている、固有振動数が異なる上流側規制ブレード9aと下流側規制ブレード9bとを有する。上流側規制ブレード9aと下流側規制ブレード9bとは、振動が付与された場合に、固有振動数が異なるため、振幅が異なる。このため、現像ローラ6の回転方向の2箇所でそれぞれ現像ローラ6に付着したトナーに異なる振動を与えることができる。よって、サイズが異なるトナーの凝集体があったとしても、上流側規制ブレード9a及び/又は下流側規制ブレード9bで潰すことができ、凝集体の付着及び滞留等を防止することができる。
【0051】
下流側規制ブレード9bは、現像ローラ6の軸線方向に平行に延びる板状部材であり、現像ローラ6の上方に水平に設けられ、自由端(図1における右端)が現像ローラ6の回転方向R1の上流側に向かって延設されているように片持ち状に支持されている。下流側規制ブレード9bは、自由端と反対側の一端(図1における左端)において、上面に支持部材10が設けられており、下面が現像ローラ6に相対して現像ローラ6の表面に付着したトナーの層厚を規制する。具体的には、下流側規制ブレード9bは、その下面の一部が規制部として現像ローラ6の表面に付着したトナーに接することにより、トナーの層厚を規制する。ここで、規制部と現像ローラ6の表面との間の、トナーの層厚を規制する領域を規制領域Nという。
【0052】
本実施の形態では、下流側規制ブレード9bによる現像ローラ6の表面に対する線圧は、下流側規制ブレード9bの板厚及び規制部の位置により任意に設定又は変更可能である。但し、10gf/cm未満とすれば、現像ローラ6上のトナーの層厚が均一でなく、かつトナーに十分な帯電が付与できない恐れがある一方で、30gf/cmより大きくすれば、トナーへのストレスが大きく、トナーの凝集体の付着等による画質劣化が発生する恐れがあるので、約10〜30gf/cmとすることが好ましい。
【0053】
下流側規制ブレード9bとして、例えば、導電性樹脂、ステンレス、りん青銅等の材料が用いられる。本実施の形態では、厚み0.1mmのりん青銅を用いた。このときの線圧は15gf/cmであった。また、現像ローラ6上のトナー量は0.6〜0.8mg/cm2 の範囲とし、トナー帯電量は−20〜−25μC/gとし、現像ローラ6と同電位のバイアス電圧を印加した。
【0054】
また、上流側規制ブレード9aは、板状部材であり、一端が基端として下流側規制ブレード9bの下面に連結してあり、その連結部が規制部よりもやや現像ローラ6の回転方向の上流側である。また、上流側規制ブレード9aは、他端が自由端として現像ローラ6の回転方向の上流側に向けて延び、一面が現像ローラ6の表面に相対しているように構成してある。また、トナーの凝集体を効率的に潰すために、上流側規制ブレード9aの現像ローラ6に相対している面と現像ローラ6の表面との間に、一定の隙間が空くように構成することが好ましい。
【0055】
また、支持部材10の上面には、下流側規制ブレード9bに振動を付与する振動部11が設けられている。付与された振動の振動数が下流側規制ブレード9bよりも上流側規制ブレード9aの固有振動数に近くなるように、上流側規制ブレード9aと下流側規制ブレード9bとの固有振動数を調整することが好ましい。このように、振動を付与した時に、上流側規制ブレード9aの振幅が下流側規制ブレード9bよりも大きいため、上流側規制ブレード9aの現像ローラ表面に衝突する力が大きくなる。よって、トナーの凝集体があったとしても、予め上流側規制ブレード9aの振動で当該トナーの凝集体を規制領域Nに入る前に潰すことができる。従って、トナーの凝集体が規制領域Nに入ることを効率的に防止することができる。
【0056】
また、上流側規制ブレード9aと下流側規制ブレード9bとを連結してあるため、振動部11にて下流側規制ブレード9bに振動を付与した時に、上流側規制ブレード9aも振動する。従って、振動部11の簡素化、ひいては現像装置1の小型化が図れる。
【0057】
また、規制部の上方の領域には、下流側規制ブレード9bの上面に、下流側規制ブレード9bの変位を検知する検知部12が設けられている。現像ローラ6が回転駆動されるため、回転方向に偏芯又は駆動による振動が発生する。下流側規制ブレード9bは、現像ローラ6と接近して設けられているため、現像ローラ6の振動を受けて振動することもある。この時、下流側規制ブレード9bと現像ローラ6との間隔が変化し、トナーの層厚及びトナー量の変化を招く。検知部12は下流側規制ブレード9bの振動による現像ローラ6の回転方向の変位を検知するためのものである。
【0058】
次に、現像剤層規制部材9及びその周辺について説明する。図2は本発明に係る現像装置1に設けられている現像剤層規制部材9及びその周辺について説明する模式図である。
【0059】
前述のように、下流側規制ブレード9bの上面には、支持部材10と、振動部11と、検知部12とが配設されている。また、図2に示すように、現像ローラ6にその回転方向の変位を検知する検知部13が設けられている。
【0060】
図2において、振動部11、検知部12、及び検知部13は夫々制御部14に電気的に接続している。検知部12は、下流側規制ブレード9bの現像ローラ6の回転方向に対する変位を検知し、検知した変位を制御部14に出力する。検知部13は、現像ローラ6のその回転方向に対する変位を検知し、検知した変位を制御部14に出力する。制御部14は検知部12と検知部13から入力された変位に基づいて振動部11を制御する。振動部11は制御部14の制御に基づいて、検知部12にて検知した変位と検知部13にて検知した変位との差が一定となるように、下流側規制ブレード9bに振動を付与する。これにより、下流側規制ブレード9bと現像ローラ6との間隔を一定とさせる。ここで、振動による変位を検知する検知部12、検知部13としては、特に限定されるものではないが、加速度センサー等の圧電素子を用いる方法が一般的である。
【0061】
また、検知部13にて検知した現像ローラ6の変位と同振幅、逆位相となるように、下流側規制ブレード9bに振動を付与することが好ましい。検知部13にて検知した現像ローラ6の回転方向の変位が制御部14に入力され、制御部14は、検知部13から入力された検知結果に基づいて、振動部11の振動を制御して、振動部11にて現像ローラ6の回転方向の変位と同振幅、逆位相となるように、下流側規制ブレード9bに振動を付与する。また、検知部12は下流側規制ブレード9bの変位を随時検知し、検知した結果を制御部14に出力する。制御部14は、検知部12から入力された検知結果に基づいて、下流側規制ブレード9bに付与する振動を調整するようにしてある。これにより、現像ローラ6に何らかの変位が生じた場合にも、下流側規制ブレード9bに付与する振動を調整して現像ローラ6と下流側規制ブレード9bとの間隔だけでなく、位相も一定となるように制御することができ、層厚を均一にし、トナー量を安定させることができる。ただし、下流側規制ブレード9bに付与する振動は、共振が起こって振幅が増幅しないように予め下流側規制ブレード9bの固有振動数を考慮し、制御する必要がある。
【0062】
また、振動部11で下流側規制ブレード9bに振動を付与した場合には、下流側規制ブレード9bが振動すると同時に、下流側規制ブレード9bに支持された固有振動数の異なる上流側規制ブレード9aも振動する。このとき、上流側規制ブレード9aの固有振動数は、下流側規制ブレード9bよりも付与した振動の振動数に近いので、上流側規制ブレード9aの振幅が大きくなる。従って、現像ローラ6の表面上で振動する作用が強く、流動性が悪化して凝集体となったトナーが搬送されてきた場合でも、トナーの凝集体を潰すことができる。そして、上流側規制ブレード9aで粉砕されたトナーは下流側規制ブレード9bと現像ローラ6との間の規制領域Nへ流入し、均一な層厚に規制される。
【0063】
ここで、上流側規制ブレード9aは、下流側規制ブレード9bと異なる材料で構成しても良いが、一般に、物体の固有振動数は寸法形状、密度、弾性率等により変化するため、下流側規制ブレード9bと同じりん青銅板を用い、寸法形状、密度、弾性率等の条件を変えて固有振動数を調整するようにしても良い。
【0064】
次に、現像剤層規制部材9と現像ローラ6との位置関係を詳述する。図3は本発明に係る現像装置1に配設されている現像剤層規制部材9の拡大図である。説明上の便宜のために、同図において、下流側規制ブレード9bと現像ローラ6との間隔を拡大して示しているが、当該間隔は実装の状況によって適宜に変更できる。
【0065】
図3に示すように、上流側規制ブレード9aと現像ローラ6との間を通るトナーが上流側規制ブレード9aによる振動を受け、トナーの凝集体があったとしても、規制領域Nに入る前に当該振動により潰される。従って、トナーの凝集体が規制領域Nに入ることを防止することができ、トナーの凝集体の付着等を防止することができる。
【0066】
また、上流側規制ブレード9aと下流側規制ブレード9bとが現像ローラ側でなす角θは鈍角とすることが好ましい。角θを鈍角とすることにより、現像ローラ6の表面のトナー層との接触面積を大きく確保することができる。また、上流側規制ブレード9aと下流側規制ブレード9bと現像ローラの表面とで囲むことにより、トナーを一時に蓄積する空間Sが形成されている。上流側規制ブレード9aを通過したトナーを当該空間Sに一時蓄積してから規制領域Nへ流入することで、規制領域N手前のトナー量が一定に保たれるため、トナー量が安定して、トナーの層厚が一定となる効果も有する。
【0067】
以上、本実施の形態では、上流側規制ブレード9aが下流側規制ブレード9bに連結された例を説明したが、上流側規制ブレード9aと下流側規制ブレード9bとは、個別に設置するようにしても良い。この場合、両者に夫々に振動部を設置し、或いは、他の連結部材を介して連結した後、振動部を設置しても良い。
【0068】
本実施の形態では、下流側規制ブレード9bが水平に現像ローラ6の上方に配置されている形態を例として説明したが、このような形態に限らず、下流側規制ブレード9bが水平以外の姿勢で現像ローラ6の他の位置に配置されていても良い。
【0069】
本実施の形態では、下流側規制ブレード9bの下面の一部で規制部を形成した例を説明したが、従来の現像剤層規制ブレードのように、先端で規制部を形成しても良い。同様に、上流側規制ブレード9aも従来の現像剤層規制ブレードのように、先端が現像ローラ6に相対するように構成しても良い。
【0070】
本実施の形態では、振動部11が支持部材10の上面に設けられる例を説明したが、振動部11を直接に下流側規制ブレード9bに設置しても良い。
【0071】
要するに、本実施の形態は例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0072】
以上のように、本発明に係る現像装置では、固有振動数が異なる上流側規制ブレードと前記下流側規制ブレードを、現像ローラの回転方向の2箇所に配置することにより、現像ローラの回転方向の2箇所でそれぞれ現像ローラに付着したトナーに異なる振動の作用を与えることができる。このように、サイズが異なるトナーの凝集体があったとしても、上流側規制ブレード及び/又は下流側規制ブレードで潰すことができ、小さな凝集体が規制領域に滞留することを防止することができるため、現像ローラ表面に均一な薄層を形成して、画質を向上することができ、かつ長期に亘って繰り返し画像形成に使用しても、画質の低下を招くことなく、安定して良好な画像を形成することができる。
【0073】
また、下流側規制ブレードと現像ローラ夫々の現像ローラの回転方向に対する変位を検知し、現像ローラの変位と同振幅、逆位相の振動を下流側規制ブレードに付与することにより、トナーへの過剰なストレスを与えることなく、感光体に供給するトナー量を安定とさせるため、高画質な画像を安定して供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 現像装置
2 感光体
3 帯電部材
4 転写部材
5 現像槽
6 現像ローラ
7 供給ローラ
8 攪拌部材
9 現像剤層規制部材
9a 上流側規制ブレード
9b 下流側規制ブレード
10 支持部材
11 振動部
12 検知部
13 検知部
14 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に現像剤を担持する現像ローラと、該現像ローラの回転方向の2箇所に夫々該現像ローラの表面に対設され、該現像ローラの表面に付着する現像剤の層厚を規制する上流側規制ブレード及び下流側規制ブレードとを備え、規制された現像剤を感光体表面の静電潜像に供給して該静電潜像を可視像化する現像装置において、
前記上流側規制ブレードの固有振動数と前記下流側規制ブレードの固有振動数とが異なることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記下流側規制ブレードの固有振動数よりも、前記上流側規制ブレードの固有振動数に近い振動数の振動を前記上流側規制ブレード及び/又は下流側規制ブレードに付与する振動手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記上流側規制ブレードは、基端部が前記下流側規制ブレードに連結してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記下流側規制ブレードは、前記現像ローラの軸線方向に平行に延びる板状部材であり、自由端部が前記現像ローラの回転方向の上流側に向かって延設されるように、片持ち状に支持され、前記現像ローラと相対する面で前記現像ローラに付着する現像剤の層厚を規制するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記下流側規制ブレードと前記上流側規制ブレードとが現像ローラ側でなす角は鈍角であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一つに記載の現像装置。
【請求項6】
前記下流側ブレード及び前記現像ローラ夫々の前記現像ローラの回転方向の変位を検知する検知手段を備え、
前記振動手段は、該検知手段にて検知した変位に基づいて、前記下流側規制ブレードに振動を付与することを特徴とする請求項2から請求項5の何れか一つに記載の現像装置。
【請求項7】
前記振動手段は、前記下流側規制ブレードに、前記現像ローラの前記変位と同振幅、逆位相となる振動を付与することを特徴とする請求項6に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145898(P2012−145898A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6320(P2011−6320)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】