説明

球体研磨装置

【課題】球体の加工品質を向上させるとともに、研磨加工効率を高めることができる球体研磨装置を提供する。
【解決手段】軸方向に圧力を加えながら回転盤体3を固定盤体2に対して回転させることにより球体を研磨加工する球体研磨装置1において、加工中の球体5の直径を測定する球径測定器6と、球径測定器6の測定値により球体5を研磨する研磨加工能率を制御するPLC7と、を備え、球径測定器6は、被測定球体5の姿勢を変更する姿勢変更機構64を有し、PLC7は、加工完了寸法を設定する設定手段71と、測定値Dmより平均直径を算出する加工能率演算部72と、設定手段71により設定された設定値及び平均直径に応じて加工能率の目標値を設定する加工能率演算部72と、測定値Dmと加工完了寸法とを比較して加工を停止させる加工能率演算部72と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工球体を研磨する球体研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば玉軸受等に用いられる鋼球を製造する際に使用される球体研磨装置は、被加工球体を固定盤体と回転盤体(砥石)との間で挟持し、回転盤体を回転させることにより被加工球体を研磨している。この球体研磨装置は、多数の被加工球体を盤間(固定盤体と回転盤体との間)に供給する回転コンベアを備えている。回転コンベアにより搬送された被加工球体は、整列されながら入口シュートから盤間に送りこまれて研磨されるとともに、固定盤体を一周したところで出口シュートから再び回転コンベアに戻される。この動作を繰り返すことにより、被加工球体の表面が真球状に研磨される。
【0003】
球体研磨装置は、出口シュートから戻る一部(測定ロット)を抜き取った被加工球体の各直径を測定し、研磨開始時は研磨能率を高めて加工効率重視で加工し、測定ロットの平均直径が所定値に達すると研磨能率を下げて加工品質重視で加工し、その後、測定ロットの平均直径が加工目標寸法に一致したときに、この研磨加工を終了する。このように、球体研磨装置は、研磨加工効率を考慮して被加工球体を研磨している。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−5858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の球体研磨装置は、各球体の直径を一箇所測定したのみであるため、球体での直径不同及び測定ロットの平均直径の相互差が生じ、球体の加工品質を向上させることが課題となっていた。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、球体の加工品質を向上させるとともに、研磨加工効率を高めることができる球体研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る球体研磨装置の構成上の特徴は、固定盤体と、前記固定盤体に対して軸方向に所定間隔をあけて対向配置された回転盤体とを備え、前記固定盤体と前記回転盤体との間に球体を挟持した状態で、軸方向に圧力を加えながら前記回転盤体を前記固定盤体に対して回転させることにより前記球体を研磨加工する球体研磨装置において、
加工中の前記球体の直径を測定する球径測定部と、
前記球径測定部の測定値により前記球体を研磨する研磨加工能率を制御する制御部と、を備え、
前記球径測定部は、前記被測定球体の姿勢を変更する姿勢変更手段を有し、
前記制御部は、
加工完了寸法を設定する設定手段と、
前記測定値より平均直径を算出する演算部と、
前記加工完了寸法及び前記平均直径に応じて加工能率の目標値を設定する加工能率設定手段と、
前記平均直径と前記加工完了寸法とを比較して加工を停止させる完了判定手段と、を有することである。
【0008】
請求項1の球体研磨装置によれば、加工中の球体の直径を姿勢変更して複数箇所測定して平均直径を算出し、加工完了寸法、及び平均直径に応じて加工能率の目標値を設定して研磨加工し、平均直径と加工完了寸法とを比較して加工を停止する。これにより、球体の複数箇所を測定した平均直径により加工を停止するので、加工バラツキの影響を低減して加工でき、球体の加工品質を向上させることができ、また、加工完了寸法と平均直径とに応じて加工能率を設定して加工するので 研磨加工効率を高めることができる。
【0009】
請求項2に係る球体研磨装置の構成上の特徴は、前記加工能率設定手段は、前記回転盤体の軸方向圧力又は回転速度を変化させることにより前記加工能率を設定することである。
【0010】
請求項2の球体研磨装置によれば、回転盤体の軸方向圧力又は回転速度を変化させることにより加工能率を設定して加工し、研磨加工効率を高めることができる。
【0011】
請求項3に係る球体研磨装置の構成上の特徴は、前記姿勢変更手段は、前記被測定球体を少なくとも一方向に回動させる回動手段を含むことである。
【0012】
請求項3の球体研磨装置によれば、球形測定部の姿勢変更手段が被測定球体を回動させて複数箇所測定するので、加工バラツキの影響を低減して加工でき、球体の加工品質を向上させることができる。
【0013】
請求項4に係る球体研磨装置の構成上の特徴は、前記演算部は、前記測定値より測定ロットの平均直径の相互差を算出し、
前記加工能率設定手段は、前記相互差に応じて前記加工能率の目標値を設定することである。
【0014】
請求項4の球体研磨装置によれば、被測定球体の測定ロットの平均直径の相互差を算出し、相互差に応じて加工能率を設定及び加工を停止するので、加工ロット内での加工バラツキの影響を低減して加工でき、球体の加工品質を向上させることができる。
【0015】
請求項5に係る球体研磨装置の構成上の特徴は、前記演算部は、前記測定値より直径不同を算出し、
前記加工能率設定手段は、前記直径不同に応じて前記加工能率の目標値を設定することである。
【0016】
請求項5の球体研磨装置によれば、被測定球体の直径不同を算出し、直径不同に応じて加工能率を設定及び加工を停止するので、球体での加工バラツキの影響を低減して加工でき、球体の加工品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、球体の加工品質を向上させるとともに、研磨加工効率を高めることができる球体研磨装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の球体研磨装置を示す斜視図である。
【図2】図1の球形測定器の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態の球体研磨装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】図3の測定制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】(a)は図3の加工能率演算部による演算処理の加工時間と直径寸法との関係を示す説明図あり、(b)は図3の加工能率演算部による演算処理の加工時間と直径不同との関係を示す説明図あり、(c)は図3の加工能率演算部による演算処理の加工時間と測定ロットの平均直径の相互差との関係を示す説明図ある。
【図6】図3の加工能率演算部の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図3の加工能率演算部の段階1加工の加工能率演算処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図3の加工能率演算部の段階2加工の加工能率演算処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図3の加工能率演算部の段階3加工の加工能率演算処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の球体研磨装置の主実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態の球体研磨装置1を示す斜視図である。球体研磨装置1は、プレス加工された被加工球体5を研磨する際に使用されるものである。球体研磨装置1は、固定盤体2と、固定盤体2と同一軸心A1上に対向配置された回転盤体3と、多数の球体5を固定盤体2と回転盤体3との間に供給する回転コンベア4と、加工中の球体5の一部(測定ロット)を抜き取った球体5の各直径を測定する球径測定器6(球径測定部)と、球体5の直径測定値により球体5を研磨する研磨加工能率を制御するプログラマブルコントローラ7(制御部)と、を備えている。
【0020】
回転コンベア4は、その軸心C1周りに回転可能に配置された円柱状の内壁部41と、内壁部41とともに回転する底板部42と、底板部42の外側に配置された外壁部43とを備えている。内壁部41及び底板部42は、図示しない駆動モータを駆動することにより、軸心C1を中心として矢印C方向に回転される。これにより、多数の球体5を、回転コンベア4によって同時に搬送することができる。
【0021】
固定盤体2は、球体5を回転コンベア4から盤間(固定盤体2と回転盤体3との間)に送り込むための入口シュート23と、球体5を盤間から回転コンベア4へ戻すための出口シュート24とが、本体の一部を切り欠くことによって形成されている。
【0022】
回転コンベア4により搬送された球体5は、整列されながら入口シュート23から盤間に送り込まれて研磨されるとともに、固定盤体2を一周したところで出口シュート24から再び回転コンベア4に戻される。
【0023】
回転盤体3は、砥石によって形成されており、回転軸10に軸心A1周りに回転可能に支持されている。また、回転盤体3は、軸方向にスライド可能に支持されており、図示しない押圧手段により固定盤体2側(矢印B方向)に押圧可能とされている。これにより、回転盤体3は、球体5を盤間に送り込んだ状態で、押圧手段により固定盤体2側に高圧の押圧力で押し込まれるとともに、図示しない駆動モータにより矢印A方向に所定の回転速度で回転される。
【0024】
球径測定器6は、プログラマブルコントローラ7(PLC)からの指示により出口シュート24から戻る一部(測定ロット)を抜き取った球体5の各直径を測定し、測定値をPLC7に出力する。
【0025】
図2(a)は、図1の球形測定器6を正面から見た概略図である。図2(b)は、図1の球形測定器6を上部から見た概略図である。図2(a)及び図2(b)を参照しながら球形測定器6の構成を説明する。
球形測定器6は、球体5を載置するV字溝が形成された置き台61と、球体5の水平方向の一方に当接する測定基準62と、球体5の水平方向の他方に測定子63aが進退して直径を測定する測定器63と、置き台61に載置された球体5の姿勢を変更する姿勢変更機構64(姿勢変更手段)と、を備える。
なお、出口シュート24から戻る一部(測定ロット)を抜き取った球体5は、図示しない搬入装置により置き台61に搬入され、図示しない搬出装置により置き台61から回転コンベアに搬出される。
【0026】
測定器63は、直進軸1軸を有し、図1に示すPLC7からの指示により、水平方向(X軸)に動作する直進アクチュエーターL1の先端に設けられた測定子63aが、置き台61に載置された被計測球体5の水平方向の他方に接触して測定し、測定値をPLC7に出力する。
【0027】
姿勢変更機構64は、直進軸1軸及び回動軸1軸を有するアーム64aと、直進軸1軸及び回動軸1軸を有しアーム64aの先端に設けられるハンド64bとからなる。
アーム64aは、アーム64aを上下させるために垂直方向(Y軸)に動作する直進アクチュエーターL2と、アーム64aを回動(Y1軸)する回動アクチュエーターR2(回動手段)とからなる。
ハンド64bは、球体5に向けて進退(Z軸)させるための直進アクチュエーターL3と、先端部が合成ゴムからなり球体5を掴持して回動(Z1軸)させるための回動アクチュエーターR3(回動手段)とからなる。
【0028】
姿勢変更機構64は、図1に示すPLC7からの指示により、アーム64a及びハンド64bを動作させて球体5の姿勢を変更し、複数箇所の直径測定を可能にする。
【0029】
ここで、図2(b)は、図2(a)のアーム64aを正面から見て向こう側に90度回動させて、上部から見た図である。
【0030】
図3は、本発明の実施形態の球体研磨装置1の制御構成を示すブロック図である。球体研磨装置1が備えるPLC7が制御する制御構成について説明する。
加工制御部76は、図示しない作業者により操作されて加工開始信号76aを入力すると、研磨加工を指示する加工中信号76bをオンし、後述する加工能率演算部72から研磨加工が完了した加工完了判定信号72aを入力すると加工中信号76bをオフする。
【0031】
設定手段71は、球体5を研磨する目標値の加工完了寸法Km及び加工条件Kcを設定し記憶する。
加工完了寸法Kmは、球体5の直径を複数測定し、その平均値である平均直径Df±Δdと、球体5の直径を複数測定し、その最大値と最小値の差である直径不同Sfと、球体研磨装置1内にあって加工中の加工ロットから一部を抜き取った測定ロットの球体5の平均直径の最大値と最小値との差である相互差Efとからなる。
加工条件Kcは、回転コンベア4の回転速度Kvからなる。
【0032】
加工能率演算部72(演算部、加工能率設定手段、完了判定手段)は、加工中信号76bがオンのときに以下の演算処理を実行し、研磨加工が完了すると完了判定信号72aを出力する。そして、加工能率演算部72は、設定手段71から加工完了寸法Km及び加工条件Kcを入力し、また、球径測定器6から球体5の直径測定値Dmを入力し、これらの入力情報に応じて回転盤体3の回転速度及び回転盤体3を固定盤体2側に押し付ける押圧力を演算して、それぞれを回転速度変更手段73及び押圧力変更手段74に出力する。加工能率演算部72の処理手順は、後述する。
【0033】
回転速度変更手段73は、入力した回転速度の指示に基づき回転盤体3を回転させるモータMを駆動する。
【0034】
押圧力変更手段74は、入力した押圧力の指示に基づき回転盤体3を固定盤体2側に押し付ける直進型の電動シリンダECを駆動する。
【0035】
過去データ蓄積手段79は、加工能率演算部72の演算結果データを蓄積し、この過去データを加工能率演算部72が参照して加工精度を高めるとともに、加工能率を高めるように演算される。
【0036】
測定制御部75は、加工中信号76bがオンすると、搬入装置81に球体5の搬入を指示する。この搬入指示により、搬入装置81は、球体5を図1に示す出口シュート24から球径測定器6へ搬入して、測定可能な状態となる。
また、測定制御部75は、球体5の複数箇所の測定が完了したならば、搬出装置82に球体5の搬出を指示する。この搬出指示により、搬出装置82は、球体5を球径測定器6から図1に示す回転コンベア4に搬出する。そして、測定制御部75は、次の球体5を測定するために搬入装置81に球体5の搬入を指示し、加工中信号76bがオンの間はこれを続ける。
【0037】
測定制御部75は、球径測定器6の置き台61に球体5が載置されたならば、測定器63に球体5の直径計測を指示する。また、測定制御部75は、球体5の直径を複数箇所測定するために、姿勢変更機構64に球体5の所定の姿勢への変更を指示する。測定制御部75の処理手順は、後述する。
【0038】
図4は、図3の測定制御部75の処理手順を示すフローチャートである。PLC7は、測定制御部75の処理を常時実行する。ここで、例えば、球体5の測定箇所数nは「4」とし、測定ロット数mは「8」とする。
PLC7は、測定ロット数mに「1」を設定し(ステップS11)、測定箇所数nに「1」を設定し(ステップS12)、加工中信号76bがオンか判定し(ステップS13)、加工中信号76bがオンでない場合、ステップS11に移行し(ステップS13:NO)、加工中信号76bがオンするまで待機する。
【0039】
一方、PLC7は、ステップS13において加工中信号76bがオンの場合(ステップS13:YES)、搬入装置81に球体5の搬入を指示し(ステップS14)、測定器63に球体5の測定箇所n番目の直径計測を指示し(ステップS15)、測定箇所数nが「4」であるか判定し(ステップS16)、測定箇所数nが「4」の場合、ステップS19に移行し(ステップS16:YES)、ステップS16において測定箇所数nが「4」でない場合(ステップS16:NO)、nを+1し(ステップS17)、姿勢変更機構64に球体5を測定箇所n番目に対応した姿勢への変更を指示し(ステップS18)、ステップS13に移行する。
【0040】
一方、PLC7は、ステップS16において測定箇所数nが「4」の場合(ステップS16:YES)、搬出装置82に球体5の搬出を指示し(ステップS19)、測定ロット数mが「8」であるか判定し(ステップS20)、測定ロット数mが「8」の場合、ステップS11に移行する(ステップS20:YES)。
【0041】
一方、PLC7は、ステップS20において測定ロット数mが「8」でない場合(ステップS20:NO)、mを+1し(ステップS21)、ステップS12に移行する。
【0042】
これにより、PLC7は、加工中信号76bがオンの間、球体5の直径測定を制御する。
【0043】
次に、加工能率演算部72の演算処理について図5、図6、図7、図8、及び図9を参照しながら説明する。図5(a)は図3の加工能率演算部72による演算処理の加工時間と直径寸法との関係を示す説明図あり、図5(b)は図3の加工能率演算部72による演算処理の加工時間と直径不同との関係を示す説明図あり、図5(c)は図3の加工能率演算部72による演算処理の加工時間と測定ロットの平均直径の相互差との関係を示す説明図あり、図6は、図3の加工能率演算部72の処理手順を示すフローチャートであり、図7は図3の加工能率演算部72の段階1加工の加工能率演算処理手順を示すフローチャートであり、図8は図3の加工能率演算部72の段階2加工の加工能率演算処理手順を示すフローチャートであり、図9は図3の加工能率演算部72の段階3加工の加工能率演算処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
加工能率演算部72の演算処理は、研磨加工の開始から終了までは他段階に区分される。本実施例では図5に示すように3段階に区分され、各段階の演算処理が図6に示すように順次実行される。PLC7は、図6に示す加工能率演算部72の処理を常時実行する。具体的には、PLC7は、加工中信号76bがオンか判定し(ステップS3)、加工中信号76bがオンでない場合ステップS3を再度処理し(ステップS3:NO)、加工中信号76bがオンするまで待機する。
【0045】
一方、ステップS3において加工中信号76bがオンの場合(図5に示す時刻T0)、PLC7は、ステップS4に移行し(ステップS3:YES)、段階1の初期加工の加工能率演算処理を実行し(ステップS4)、段階2の粗加工の加工能率演算処理を実行し(ステップS5)、段階3の仕上げ加工の加工能率演算処理を実行し(ステップS6)、ステップS3に移行する。これにより、加工ロットの研磨加工が完了し、加工中信号76bがオンするまで待機する。
【0046】
続いて、図7に示す段階1加工の可能能率演算処理手順について説明する。球体研磨装置1は、段階1の初期加工では、前工程における仕上がり寸法のばらつきをなくすための研磨加工が行われる。PLC7は、設定された回転コンベア4の回転速度Kvに応じて回転盤体3の回転速度Vを演算して出力し(ステップS41)、球体5が回転コンベア4から盤間に送り込まれる数量と、盤間から回転コンベア4に戻される数量とを一致させる。
【0047】
そして、PLC7は、入力する球体5の直径測定値Dmから、現在の平均直径Dnow、直径不同Snow、及び相互差Enowを算出し(ステップS42)、加工完了寸法の平均直径Df±Δdと現在の平均直径Dnowとの差に応じて押圧力Pを演算して出力し(ステップS43)、現在の平均直径Dnowが加工完了寸法の平均直径の下限値Df−Δd未満か判定し(ステップS44)、現在の平均直径Dnowが加工完了寸法の平均直径の下限値Df−Δd未満の場合、ステップS45に移行し(ステップS44:YES)、研磨加工しようとするが現在の平均直径Dnowが加工完了寸法の平均直径Df±Δdを下回っているので所定の異常処理を行い(ステップS45)、段階1加工の加工能率演算処理を終了する。
【0048】
一方、PLC7は、ステップS44において現在の平均直径Dnowが加工完了寸法の平均直径の下限値Df−Δd未満でない場合ステップS46に移行し(ステップS44:NO)、現在の直径不同Snowがばらつき低減目標の直径不同S1以下であるか判定し(ステップS46)、現在の直径不同Snowが直径不同S1以下でない場合、ステップS42に移行し(ステップS46:NO)、段階1加工の加工能率演算処理を継続する。
【0049】
一方、PLC7は、ステップS46において現在の直径不同Snowが直径不同S1以下の場合(図5に示すポイントPT1)、ステップS47に移行し(ステップS46:YES)、現在の相互差Enowがばらつき低減目標の相互差E1以下であるか判定し(ステップS47)、現在の相互差Enowが相互差E1以下でない場合、ステップS42に移行し(ステップS47:NO)、段階1加工の加工能率演算処理を継続する。
【0050】
一方、PLC7は、ステップS47において現在の相互差Enowが相互差E1以下の場合(図5に示すポイントPT1a及び時刻T1)、段階1加工の可能能率演算処理を終了する(ステップS47:YES)。
【0051】
これにより、球体研磨装置1は、前工程における仕上がり寸法のばらつきをなくす(即ち、直径不同および相互差が大きく低減、例えば、半減)ための研磨加工が行われる。
【0052】
ここで、ステップS42の処理が本発明の演算部が実行する処理に、ステップS43,S46,S47の処理が本発明の加工能率設定手段が実行する処理に、それぞれ相当する。
【0053】
続いて、図8に示す段階2加工の可能能率演算処理手順について説明する。段階2の粗加工では、加工能率重視での研磨加工が行われる。PLC7は、設定された回転コンベア4の回転速度Kvに応じて回転盤体3の回転速度Vを演算して出力し(ステップS51)、球体5が回転コンベア4から盤間に送り込まれる数量と、盤間から回転コンベア4に戻される数量とを一致させる。
【0054】
そして、PLC7は、入力する球体5の直径測定値Dmから、現在の平均直径Dnow、直径不同Snow、及び相互差Enowを算出し(ステップS52)、加工完了寸法の平均直径Df±Δdと現在の平均直径Dnowとの差に応じて押圧力Pを演算(押圧力Pを高くして加工能率を上げる)して出力し(ステップS53)、現在の平均直径Dnowが平均直径D1(段階3加工の精度重視の仕上げ加工に移行する寸法)以下か判定し(ステップS54)、現在の平均直径Dnowがの平均直径D1以下でない場合、ステップS52に移行し(ステップS54:NO)、段階2加工の加工能率演算処理を継続する。
【0055】
一方、PLC7は、ステップS54において現在の平均直径Dnowが平均直径D1以下の場合(図5に示すポイントPT2及び時刻T2)、段階2加工の可能能率演算処理を終了する(ステップS54:YES)。
ここで、平均直径D1は、過去データ蓄積手段79に記憶されている過去データを参照して、現在の直径寸法Dnowから加工完了寸法がその目標値Df±Δd,Sf,Efに到達するに十分な取代を残したものとする。
【0056】
これにより、球体研磨装置1は、加工能率重視での研磨加工が行われる。
【0057】
ここで、ステップS52の処理が本発明の演算部が実行する処理に、ステップS53,S54の処理が本発明の加工能率設定手段が実行する処理に、それぞれ相当する。
【0058】
続いて、図9に示す段階3加工の可能能率演算処理手順について説明する。段階3の仕上げ加工では、精度重視の研磨加工が行われる。PLC7は、設定された回転コンベア4の回転速度Kvに応じて回転盤体3の回転速度Vを演算して出力し(ステップS61)、球体5が回転コンベア4から盤間に送り込まれる数量と、盤間から回転コンベア4に戻される数量とを一致させる。
【0059】
そして、PLC7は、入力する球体5の直径測定値Dmから、現在の平均直径Dnow、直径不同Snow、及び相互差Enowを算出し(ステップS62)、加工完了寸法の平均直径Df±Δdと現在の平均直径Dnowとの差に応じて押圧力Pを演算(押圧力Pを低くして精度重視とする)して出力し(ステップS63)、現在の平均直径Dnowと加工完了寸法の平均直径Df±Δdとを比較し(ステップS64)、現在の平均直径Dnowが加工完了寸法の平均直径Df+Δdを超える場合、ステップS62に移行し(ステップS64:S64a)、段階3加工の加工能率演算処理を継続する。
【0060】
一方、PLC7は、ステップS64において現在の平均直径Dnowが加工完了寸法の平均直径Df−Δd未満の場合、ステップS68に移行し(ステップS64:S64b)、現在の平均直径Dnowが加工完了寸法の平均直径Df±Δdを下回っているので所定の異常処理を行い(ステップS68)、段階3加工の加工能率演算処理を終了する。
【0061】
一方、PLC7は、ステップS64において現在の平均直径Dnowが加工完了寸法の平均直径Df±Δdの範囲内にある場合(図5に示すポイントPT3)、ステップS65に移行し(ステップS64:S64c)、現在の直径不同Snowが加工完了寸法の直径不同Sf以下であるか判定し(ステップS65)、現在の直径不同Snowが加工完了寸法の直径不同Sf以下でない場合、ステップS62に移行し(ステップS65:NO)、段階3加工の加工能率演算処理を継続する。
【0062】
一方、PLC7は、ステップS65において現在の直径不同Snowが加工完了寸法の直径不同Sf以下の場合、(図5に示すポイントPT3a)、ステップS66に移行し(ステップS65:YES)、現在の相互差Enowが加工完了寸法の相互差Ef以下であるか判定し(ステップS66)、現在の相互差Enowが加工完了寸法の相互差Ef以下でない場合、ステップS62に移行し(ステップS66:NO)、段階3加工の加工能率演算処理を継続する。
【0063】
一方、PLC7は、ステップS66において現在の相互差Enowが加工完了寸法の相互差Ef以下の場合(図5に示すポイントPT3b)、ステップS67に移行し(ステップS66:YES)、加工停止信号72aを出力し(ステップS67)、段階3加工の可能能率演算処理を終了する(図5に示す時刻Tf)。
【0064】
これにより、球体研磨装置1は、精度重視での研磨加工が行われ、その加工を終了する。
【0065】
ここで、ステップS62の処理が本発明の演算部が実行する処理に、ステップS63の処理が本発明の加工能率設定手段が実行する処理に、ステップS64〜S67の処理が本発明の完了判定手段が実行する処理に、それぞれ相当する。
【0066】
以上のように、本実施の形態に係る球体研磨装置1によれば、加工中の加工ロットから一部を抜き取った測定ロットの球体5の直径を姿勢変更して複数箇所測定することにより、平均直径、直径不同、及び相互差を演算し、これらの演算結果とこれらに対応した加工完了寸法とを比較して、比較結果に応じて加工能率の目標値を設定して研磨加工する。本実施形態に係る球体研磨装置1によれば、加工開始からの段階1加工は前工程における仕上がり寸法のばらつきをなくすための研磨加工が行われ、続く段階2加工は加工能率重視での研磨加工が行われ、続く段階3加工は精度重視での研磨加工が行われ、そして、加工を停止するので、加工バラツキの影響を低減して加工でき、球体の加工品質を向上させるとともに研磨加工効率を高めることができる球体研磨装置を提供することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、段階1加工として前工程における仕上がり寸法のばらつきをなくすための研磨加工を行うとしたが、しかし、これに限らず、前工程における仕上がり寸法のばらつきが小さい場合、段階1加工を省略した構成にも適用可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、球体5の測定箇所数nは「4」とし、測定ロット数mは「8」としたが、しかし、これに限らず、これらの設定値は経験値(過去データ)から適宜決定してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、姿勢変更手段は、直進軸1軸及び回動軸1軸を有するアーム64aと、直進軸1軸及び回動軸1軸を有しアーム64aの先端に設けられるハンド64bとからなる姿勢変更機構64としたが、しかし、これに限らず、例えばロボットやマニピュレータなどにより球体5を姿勢変更する構成にも適用可能である。
【0070】
また、上記実施形態では、回転盤体3を固定盤体2側に押し付ける押圧力を発生させる手段は、直進型の電動シリンダECとしたが、しかし、これに限らず、例えば油圧シリンダなどの高圧の押圧力を発生させる構成にも適用可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、段階2加工から段階3加工に移行する判定手段は、現在の平均直径Dnowとしたが、しかし、これに限らず、例えば、現在の平均直径Dnow+現在の直径不同Snow、現在の平均直径Dnow+現在の相互差Enow、又は、現在の平均直径Dnow+現在の直径不同Snow+現在の相互差Enowにより判定する構成にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1:球体研磨装置、 2:固定盤体、 3:回転盤体、 4:回転コンベア、 5:球体、 6:球径測定器(球径測定部)、 7:プログラマブルコントローラ(制御部)、 23:入口シュート、 24:出口シュート、 61:置き台、 62:測定基準、 63:測定器、 63a:測定子、 64:姿勢変更機構(姿勢変更手段)、 64a:アーム、 64b:ハンド、 71:設定手段、 72:加工能率演算部(演算部、加工能率設定手段、完了判定手段)、 72a:加工完了判定信号、 73:回転速度変更手段、 74:押圧力変更手段、 75:測定制御部、 76:加工制御部、 76a:加工開始信号、 76b:加工中信号、 79:過去データ蓄積手段、 A:回転盤体の回転方向、 A1:回転盤体の回転軸心、 B:回転盤体の押圧方向、 C:回転コンベアの回転方向、 C1:回転コンベアの回転軸心、 D1,Df,Dnow:平均直径、 Dm:測定値、 EC:直進型の電動シリンダ、 E1,E2,Ef,Enow:ロットの平均直径の相互差、 Kc:加工条件、 Km:加工寸法、 Kv:回転コンベアの回転速度、 L1,L2,L3:直進アクチュエーター、 M:モータ、 R2,R3:回動アクチュエーター(回動手段)、 S1,S2,Sf,Snow:直径不同

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤体と、前記固定盤体に対して軸方向に所定間隔をあけて対向配置された回転盤体とを備え、前記固定盤体と前記回転盤体との間に球体を挟持した状態で、軸方向に圧力を加えながら前記回転盤体を前記固定盤体に対して回転させることにより前記球体を研磨加工する球体研磨装置において、
加工中の前記球体の直径を測定する球径測定部と、
前記球径測定部の測定値により前記球体を研磨する研磨加工能率を制御する制御部と、を備え、
前記球径測定部は、前記被測定球体の姿勢を変更する姿勢変更手段を有し、
前記制御部は、
加工完了寸法を設定する設定手段と、
前記測定値より平均直径を算出する演算部と、
前記加工完了寸法及び前記平均直径に応じて加工能率の目標値を設定する加工能率設定手段と、
前記平均直径と前記加工完了寸法とを比較して加工を停止させる完了判定手段と、を有することを特徴とする球体研磨装置。
【請求項2】
前記加工能率設定手段は、前記回転盤体の軸方向圧力又は回転速度を変化させることにより前記加工能率を設定することを特徴とする請求項1に記載の球体研磨装置。
【請求項3】
前記姿勢変更手段は、前記被測定球体を少なくとも一方向に回動させる回動手段を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の球体研磨装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記測定値より測定ロットの平均直径の相互差を算出し、
前記加工能率設定手段は、前記相互差に応じて前記加工能率の目標値を設定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の球体研磨装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記測定値より直径不同を算出し、
前記加工能率設定手段は、前記直径不同に応じて前記加工能率の目標値を設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の球体研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236260(P2012−236260A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107208(P2011−107208)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】