説明

環境を光学的に走査および測定する方法

レーザスキャナ10の環境を光学的に走査および測定する方法であって、レーザスキャナ10が、発光器17および受光器21をもつ測定ヘッド12と、測定ヘッド12に対して第1の軸Aの周りを回転可能な鏡16と、測定ヘッド12がそれに対して第2の軸Bの周りを回転可能な基部14と、制御および評価ユニット22と、走査に対して、レーザスキャナ10の静止基準系およびこの走査の中心を画定する中心C10とを備え、発光器17が発光ビーム18を放射し、鏡16が、発光ビーム18を環境内へ反射し、また測定ヘッド12の回転中にいくつかの完全な回転を行い、受光器21が、鏡16を介して受光ビームを受け取り、受光ビームが、レーザスキャナ10の環境内で物体Oによって反射され、または他の形で散乱され、制御および評価ユニット22が、走査の多数の測定点Xに対して、少なくとも中心C10と物体Oの距離dを判定し、測定ヘッド12が、走査に対して半分より大きな回転を行い、少なくともいくつかの測定点Xが2重に判定される方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の一般的な用語の特徴を有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば独国実用新案第202006005643号明細書から周知のものなど、レーザスキャナとして設計されるデバイスを用いて、導入で述べた種類の方法を実行することができる。レーザスキャナ上の損傷または他の誤差要因のため、走査は不正確になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国実用新案第202006005643号明細書
【特許文献2】米国特許第7,430,068号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、導入で述べたタイプの方法を改善するという目的に基づく。この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を含む方法を用いて実現される。従属請求項は、有利な構成に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
測定ヘッドを必要な半回転より大きく回転させることによって、少なくともいくつかの測定点が2重に判定される。次いで、そのような点は、レーザスキャナの異なる機械構成を使用して2回判定される(水平と垂直の角度の別の組合せが、空間内の同じ点を指す)。これはやはり同じレーザスキャナであるが、2つの異なる構成の結果、2つの異なる走査が得られ、すなわち2つの異なるレーザスキャナによってもたらされるような2つの異なる走査が得られる。しかし、2つの異なる走査は、規定の形で相関する。
【0006】
2重に判定された測定点から得られる追加の情報は、誤差補正のために使用することができる。したがって、測定点の座標、すなわち測定点の角座標を優先的に補正することができる。より多くの2重の測定点が利用可能であればあるほど、より良好な補正を行うことができる。誤差の種類によっては、レーザスキャナの単一の較正で十分である。単一の較正は、2重の測定点を用いないその後の走査でさらに使用される。しかし、動的な誤差も、同様に補正することができる。この方法はまた、データを確定するために使用することができる。測定されたデータは、一貫している場合、すなわち2重の測定点に偏差がまったく、および/または非常にわずかにしか存在しない場合に確定される。
【0007】
たとえば傾斜軸の誤差を判定するのに使用される2つの円の位置における測定とは異なり、本発明では、測定されるのは領域の同じ点ではないが、測定は、(理論的には)同一の座標で2回行われ、2重に測定された物体の座標から、潜在的な誤差が判定される。
【0008】
本発明について、図面に示す例示的な実施形態に基づいて、より詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】レーザスキャナの環境の光学的走査および測定の概略部分断面図である。
【図2】軸および角度の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
レーザスキャナ10が、レーザスキャナ10の環境を光学的に走査および測定するデバイスとして提供される。レーザスキャナ10は、測定ヘッド12および基部14を有する。測定ヘッド12は、垂直軸の周りを回転できるユニットとして、基部14上に取り付けられる。測定ヘッド12は鏡16を有し、鏡16は水平軸の周りを回転することができる。鏡16の水平軸を第1の軸Aと呼び、鏡16の割り当てられた回転角度を第1の角度αと呼び、測定ヘッド12の垂直軸を第2の軸Bと呼び、測定ヘッド12の割り当てられた回転角度を第2の角度βと呼び、第1の軸Aと第2の軸Bの交差点をレーザスキャナ10の中心C10と呼ぶ。
【0011】
測定ヘッド12は、発光ビーム18を放射する発光器17をさらに備える。発光ビーム18は、波長790nmなど、約340〜1000nmの可視域内のレーザビームであることが好ましいが、原則として、たとえばより大きい波長を有する他の電磁波を使用することもできる。発光ビーム18は、たとえば正弦波または矩形波の波形変調信号によって振幅変調される。発光ビーム18は発光器17によって鏡16上へ放射され、鏡16で偏向されて環境へ放射される。物体Oによって環境内で反射され、または他の形で散乱される受光ビーム20は、鏡16によって再び捕獲され、偏向され、かつ受光器21へ誘導される。発光ビーム18および受光ビーム20の方向は、鏡16および測定ヘッド12の角度位置、すなわち2つの角度αおよびβに起因する。2つの角度αおよびβは、この場合もそれぞれ1つのエンコーダによって位置合わせされる対応する回転アクチュエータの位置に依存する。制御および評価ユニット22は、測定ヘッド12内の発光器17および受光器21へのデータ接続を有し、それによって制御および評価ユニット22の部分は、測定ヘッド12の外側に構成することもでき、たとえば基部14に接続されたコンピュータとすることができる。制御および評価ユニット22は、多数の測定点Xに対して、発光ビーム18および受光ビーム20の伝搬時間から、レーザスキャナ10と物体O(の照らされた点)の間の距離dを判定する。この目的のため、2つの光ビーム18および20間の位相シフトが判定および評価される。
【0012】
走査は、第1の軸Aの周りの鏡16の(急速)回転を用いて円に沿って行われ、すなわち第1の角度αは毎回、回転(360°)を行う。しかし、約40°の角度範囲は、発光ビーム18がこの角度範囲内で基部14上へ誘導され、かつ基部14上に取り付けられた測定ヘッド12の部分上へ誘導されるため、使用することができない。基部14に対する第2の軸Bの周りの測定ヘッド12の(低速)回転によって、円を用いて空間全体がステップごとに走査される。鏡16は、測定ヘッド12が回転する間に、いくつかの完全な回転を同時に実施する。そのような測定の測定点Xのエンティティを走査と呼ぶ。そのような走査では、レーザスキャナ10の中心C10は、レーザスキャナ10の静止基準系を画定し、その中に基部14が位置する。レーザスキャナ10、特に測定ヘッド12の設計に関するさらなる詳細は、たとえば米国特許第7,430,068号明細書および独国実用新案第202006005643号明細書に記載されている。それぞれの開示を引用して援用する。
【0013】
その設計のため、レーザスキャナ10は、中心C10、半径として距離d、ならびに2つの角度αおよびβをもつ球座標系を画定する。しかし球座標では原則的に、一方の角度が完全な回転を行い、他方の角度は遠くても半分しか進まない。第2の角度βが0°から180°まで進んだとき、すなわち測定ヘッド12が回転の半分を実施したとき、本発明のレーザスキャナでは、第1の角度αがすでに完全な回転を行うため、(座標に対する)完全な走査が行われている。
【0014】
測定ヘッド12の初期の位置(β=0°)は、垂直平面によって分離される2つの半球を画定する。第2の角度βが180°であるとき、一方の半球は、下から上へ進む(発光ビーム18の)レーザビームスポットで走査され、他方の半球は、上から下へ進む(発光ビーム18の)レーザビームスポットで走査されている。しかし本発明では、測定ヘッド12は、半分より大きい回転(β>180°)、具体的には1回の完全な回転を行う。鏡16はやはり同じ方向に回転しているが、発光ビーム18のスポットはこのとき、各半球内で反対の方向に進んでいる。同じレーザスキャナ10は、反対の(逆の)機械構成で走査している。第1の角度αと第2の角度βの点の別の組合せは空間内の同じ点を指し、すなわち空間内の同じ点は、第1の角度αと第2の角度βの2つの異なる組合せによって記述される。
【0015】
したがって、いくつかの測定点X、具体的にはすべての測定点Xが、2回判定される。レーザスキャナ10が完全な状態であり、ならびに完全に設置されている場合、2重の測定点Xは同一であるはずである。しかし、レーザスキャナ10の損傷、たとえば鏡および/または測定ヘッドの軸受の湾曲により、2つの軸AおよびBがもはや中心C10で交差しなくなり、かつ/またはもはや互いに対して正確に垂直でなくなる可能性がある。そのような誤差の場合、2重の測定点Xは互いからずれ、すなわち実際に対応する測定点Xは、ずれている座標を有する。このとき、これらの偏差(測定点Xの不整合性)を使用して、レーザスキャナ10を較正し、したがって測定点Xを補正することができる。その際、すべての補正された測定点Xが1回だけ利用可能になるように、測定点Xを再び低減させることができる。
【0016】
たとえば方法は、いくつかの走査をともにつなぎ合わせるように開発されているため、対応する測定点Xを探索するために使用することができる。走査を行う前、いくつかの標的T、T、...、すなわち特殊な物体Oまたは物体Oの特殊な部分が環境内に停止していることがある。測定点12が180°より大きい第2の角度βだけ回転するため、いくつか(好ましくは少なくとも3つ)の標的T、T、...が2重に位置合わせされるように、走査の少なくとも1つの領域は重複する。球またはチェッカボード模様が特に適した(したがって好ましい)標的T、T、...であることがわかっている。次いで、走査内で標的T、T、...の場所を特定して識別しなければならない。互いに対応する測定点Xの偏差は、標的T、T、..の座標の偏差に起因する。
【0017】
測定点Xの(座標の)偏差が大きすぎるはずはないため、互いに対応する測定点Xは、同じく誤差補正方法を用いて、たとえば最小2乗誤差方法を用いて探すことができる。
【0018】
測定ヘッド12が回転すればするほど、すなわち第2の角度βが180°〜360°の範囲内で大きくなればなるほど、較正はより良好になる。動的な誤差を認識するには、測定点12が2回以上の完全な回転を行うとさらに賢明であろう。
【0019】
データは、不整合性に関して検査される。測定点Xに偏差または他の不整合性がまったく、または非常にわずかにしか存在しない場合、本発明による方法は、データの確定を(ほぼ自動的に)与える。不整合性が特定の制限を超過する場合、たとえば、走査中に衝撃のため、レーザスキャナ10の向きが変化した場合、深刻な誤差が検出される可能性がある。
【0020】
レーザスキャナ10は、様々なセンサ、たとえば温度計、傾斜計、高度計、コンパス、ジャイロコンパス、GPSなどを備えることが好ましく、これらのセンサは、制御および評価ユニット22に接続されることが好ましい。前記センサを用いて、幾何学的な向きまたは温度のような特定のパラメータによって規定されたレーザスキャナ10の動作条件が監視される。1つ以上のパラメータがずれを示す場合、関連するセンサはそのずれを検出する。ずれは、制御および評価ユニット22によって補償することができる。前記センサを用いて、動作条件の突然の変化、たとえばレーザスキャナ10の向きを変化させる衝撃、またはレーザスキャナ10のシフトを検出することもできる。前記変化量を十分正確に検出できない場合、走査動作は中断または中止される。動作条件の前記変化量を大まかに予測できる場合、測定ヘッド12は、(突然の変化前に走査された領域との重複が利用可能になるまで)ある程度逆に回転することができ、走査動作は継続される。重複領域を評価することによって、走査の2つの異なる部分を組み合わせることができる。
【0021】
本発明による方法はまた、動作条件の突然の変化前または後の走査の一部、すなわちより小さい部分を廃棄することを可能にする。
【符号の説明】
【0022】
10 レーザスキャナ、12 測定ヘッド、14 基部、16 鏡、17 発光器、18 発光ビーム、20 受光ビーム、21 受光器、22 制御および評価ユニット、A 第1の軸、α 第1の角度、B 第2の軸、β 第2の角度、C10 レーザスキャナの中心、d 距離、O 物体、T 標的、X 測定点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザスキャナ(10)の環境を光学的に走査および測定する方法であって、前記レーザスキャナ(10)が、発光器(17)および受光器(21)をもつ測定ヘッド(12)と、前記測定ヘッド(12)に対して第1の軸(A)の周りを回転可能な鏡(16)と、前記測定ヘッド(12)がそれに対して第2の軸(B)の周りを回転可能な基部(14)と、制御および評価ユニット(22)と、走査に対して、前記レーザスキャナ(10)の静止基準系およびこの走査の中心を画定する中心(C10)とを備え、前記発光器(17)が発光ビーム(18)を放射し、前記鏡(16)が、前記発光ビーム(18)を前記環境内へ反射し、また前記測定ヘッド(12)の回転中にいくつかの完全な回転を行い、前記受光器(21)が、前記鏡(16)を介して受光ビームを受け取り、前記受光ビームが、前記レーザスキャナ(10)の環境内で物体(O)によって反射され、または他の形で散乱され、前記制御および評価ユニット(22)が、前記走査の多数の測定点(X)に対して、少なくとも前記中心(C10)と前記物体(O)の距離(d)を判定し、前記測定ヘッド(12)が、前記走査に対して半分より大きな回転を行い、少なくともいくつかの測定点(X)が2重に判定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記測定ヘッド(12)が、前記走査に対して完全な回転を行い、すべての測定点(X)を2回判定することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記2重の測定点(X)の偏差が判定され、前記レーザスキャナ(10)の較正および補償に使用されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記2重の測定点(X)の前記偏差が、すべての測定点(X)の補正に使用されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法であって、偏差として、互いに実際に対応する測定点(X)の座標の偏差が判定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、互いに実際に対応する前記測定点(X)の前記座標の前記偏差が、誤差補正方法によって判定されることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法であって、前記レーザスキャナ(10)の前記環境が、標的(T、T、...)を備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記測定ヘッド(12)の回転のため、いくつかの標的(T、T、..)が2重に位置合わせされるように、前記走査の領域が重複することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法であって、データの確定が、2重に判定された前記測定点(X)を用いて実施されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法を実施するレーザスキャナ(10)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−502571(P2013−502571A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525222(P2012−525222)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002258
【国際公開番号】WO2011/021103
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(598064510)ファロ テクノロジーズ インコーポレーテッド (60)
【Fターム(参考)】