説明

生体情報検出システム及び方法

【課題】 被検者に装着することが可能なコンパクトかつ軽量で、測定結果を無線送信することにより緊急事態が発生したような場合であっても迅速かつ確実に対応させることができる生体情報検出装置を提供できる。
【解決手段】 被検者の手首に少なくとも放射線被曝量を検出する被曝センサと3次元加速度センサを備える検出データを無線送信可能な生体状態検出装置100を装着すると共に、胸部にさらに心電信号と体温を検出可能で検出データを無線送信可能な生体情報検出装置500を貼着し、共に無線通信で生体よりの検出データが送られてくる場合には被検者は直立または移動が確認でき、胸部よりのデータは送信されてこないで手首よりのデータが送信されてくる場合には被験者が倒れていると判断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の状態及び放射線被曝量を無線送信可能な生体情報検出システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出量が問題となり、従来の火力発電などに代えて二酸化炭素排出量の少ない原子力発電が注目されてきている。また、従来より稼働されてきた原子力発電所の耐用年数切れも問題視されるようになってきた。更に、稼働中の放射能漏れに対する対策も万全を期す必要がある。
【0003】
特に、放射線は被曝すると重大な影響を受けるため、原子力施設で働く者や放射線被曝の機会が多い放射線技師などは特に被曝量の把握・管理が重要である。原子力発電所や原子力船舶などでは、大量の放射線に被曝する可能性も否定できず、健康上重大な結果をもたらす可能性があった。
【0004】
さらに、現在稼働中の原子力設備の老朽化のも進んできており、我が国では老朽化した原子力設備は同じ場所に立て替えることが予想される。このような作業現場では、放射線の被曝管理が特に重要になると予想され、万一の事態にも対応できるようにする必要がある。
【0005】
特に緊急事態が発生したような場合には、現場の状況を如何に迅速かつ正確に把握する必要がある。このため、作業現場に監視カメラなどを配設し、撮影画像により状況を判断するようにしていた。
【0006】
しかしながら、監視カメラの撮影範囲外では、全く状況判断ができなかった。このため、従来は例えば特許文献1に記載されているように、放射線測定値と自位置画像を無線送信する自走式車両を放射線漏れを測定すべき地域を遠隔操作により走行させ、自走式車両で測定された放射線測定値を取込み放射線汚染状況を検知していた。あるいは、施設内の所定箇所に放射線検出装置を設置して、設置装置が測定する測定値を監視していた。
【0007】
特許文献2に記載の線量計は、放射線検出器と検出器が検出した線量値を計数して被曝線量を求める機能と、無線通信機能を備え、処理装置に被曝量等の計測値をリアルタイムでデータ通信できる技術を開示していた。
【0008】
特許文献3に記載の線量計は、一般の人の個人被爆量を正確に測定するために、腕時計の中に放射線被曝量を測定する放射線センサとセンサの検出結果を積算して記憶する記憶部を内蔵させた技術を開示する。そして、通常の被曝量検出動作とは別個に送信モードを備え、送信モードを選択すると記憶部に記憶されている被曝量を送信する技術を開示していた。
【0009】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−35864号公報
【特許文献2】特開2003−14847号公報
【特許文献3】特開平11−190775号公報
【0011】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、緊急事態を認識してから現場に出動し、初めて状況を把握するものであった。特に、作業者が域内にいることが予想される場合には、特許文献1の様な機器を投入しない限り当該作業者が域外に出てきたときに状況を把握するしかなかった。特に、放射線漏れによる事故の可能性がある場合には、むやみに人を移動させることが憚られるため、現状把握が難しい事態も予想される。
【0013】
特許文献2に記載の装置は、リアルタイムで作業者の被曝量を監視でき、被曝量の変化が容易に把握できるが、これは作業者が直立して歩行などしていることが前提であり、作業者が倒れたような場合には収納部が体と床の間になることが多く、作業者の身体が電波障害となって無線通信ができなくなるおそれがあった。このため対応が不十分となるおそれがあった。
【0014】
特許文献3に記載のものは、リアルタイムでの被曝量の監視を前提とした技術でなく、単に作業者が特別の操作をしたときに被曝量を把握できるに過ぎず、リアルタイムでの被曝量の監視等は全く考慮されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記従来技術の課題を解決することを目的としてなされたもので、作業現場に新たな人員を向かわせることなく、非常事態が発生したとしても良好な無線通信環境が維持でき、現場の作業者の状況を的確に把握することができる生体情報検出システム及び方法を提供することを目的とする。係る目的を達成する一手段として以下の構成を備える。
【0016】
即ち、放射線量を検知可能な放射線検出センサと、被検者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、前記放射線検出センサでの検出値を一定間隔で無線送信する無線通信手段と、動作電力を供給する電力供給手段とを備える少なくとも2つの検出装置と、前記検出装置より送信される検出値を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した前記検出装置毎の検出値を比較する比較手段とを備える生体監視装置とを有することを特徴とする。
【0017】
そして例えば、前記検出装置は、被検者の異なる部位にそれぞれ装着されることを特徴とする。あるいは、前記検出装置の一方は、被検者の手首に装着されることを特徴とする。
【0018】
また例えば、前記検出装置の生体情報検出手段は、3次元加速度センサと、該3次元加速度センサの検出するX方向、Y方向、Z方向の検出値を含むことを特徴とする。
【0019】
さらに例えば、前記検出装置の生体情報検出手段は、さらに心電図信号検出を含むことを特徴とする。あるいは、前記検出装置の他方は、被検者の胸部に装着されることを特徴とする。
【0020】
また例えば、前記生体監視装置の前記比較手段は、前記検出装置毎の検出値が共に同じ検出結果の時に検出結果を有効とすることを特徴とする。
【0021】
あるいは、前記生体監視装置の前記比較手段は、一の検出装置よりの検出値が無線送信されなかった場合には、無線送信されてきた検出装置よりの検出値を検出結果とすることを特徴とする。
【0022】
さらに例えば、前記生体監視装置の前記比較手段は、一の検出装置よりの検出値が無線送信されなかった場合には、一の検出装置が倒れた被検者の下側にあると判断することを特徴とする。
【0023】
または、放射線量を検知可能な放射線検出センサと、被検者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、前記放射線検出センサでの検出値を一定間隔で無線送信する無線通信手段と、動作電力を供給する電力供給手段とを備える少なくとも2つの検出装置を被検者のそれぞれ異なる部位に装着してなる生体情報検出システムにおける生体情報検出方法であって、前記検出装置毎の検出値が共に同じ検出結果の時に検出結果を有効とする生体情報検出方法とすることを特徴とする。
【0024】
そして例えば、一の検出装置よりの検出値が無線送信されなかった場合には、無線送信されてきた検出装置よりの検出値を検出結果とする生体情報検出方法とすることを特徴とする。
【0025】
また例えば、前記一の検出装置よりの検出値が無線送信されなかった場合には、前記一の検出装置が倒れた被検者の下側にあると判断する生体情報検出方法とすることを特徴とする。
【0026】
さらに例えば、前記検出装置の一方は、装着者の体が無線送信の障害とならない被検者の手首に装着される生体情報検出方法とすることを特徴とする。あるいは、前記検出装置の生体情報検出手段は、3次元加速度センサと、該3次元加速度センサの検出するX方向、Y方向、Z方向の検出値を含み、検出値により被検者の状態を検出可能とする生体情報検出方法とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、被検者の状態にかかわらず、良好な無線通信環境を維持すると共に、確実かつ迅速に被曝状況、被検者の状態を認識することが可能となる。
【0028】
また本発明によれば、例えば被検者が正常に動作できている状態のほか、倒れ込んだような状態であっても、確実に無線通信可能状態を維持でき、迅速に被検者の状態を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる一実施の形態例の生体状態検出装置の外観形状を示す図である。
【0030】
【図2】本実施の形態例の生体状態検出装置の詳細構成を示すブロック図である。
【0031】
【図3】本実施の形態例の生体情報検出装置の詳細構成を示すブロック図である。
【0032】
【図4】本実施の形態例の生体情報検出装置の被検者への装着状態を示す図である。
【0033】
【図5】本実施の形態例の生体情報検出装置計の外観形状例を示す図である。
【0034】
【図6】本実施の形態例生体情報検出装置の心電電極の構成例を示す図である。
【0035】
【図7】本実施の形態例の被検者の状況把握制御を説明するためにフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
100 生体状態検出装置ケース
110、310 制御部
120 放射線検出センサ
130 被曝量積算部
150 3次元加速度センサ
160、330 通信制御部
170 音響出力部
180 電源部
185 電源スイッチ
190、340 表示部
210 温度センサ
220、600 心電電極
300 生体監視装置
320 被検者情報管理部
350 入力部
500 生体情報検出装置ケース
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明に係る一発明の実施の形態例を詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する構成要素の相対配置、数値等に何ら限定されるものではなく、特に特定的な記載がない限り本発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨ではない。
【0038】
本発明に係る一実施の形態例として、時計形ケース内に各構成要素を収納した例を説明する。図1は本実施の形態例の生体状態検出装置の外観形状を示す図、図2は生体状態検出装置の詳細構成を示すブロック図、図3は生体情報検出装置の詳細構成を示すブロック図、図4は生体情報検出装置の被検者への装着状態を説明するための図、図5は生体情報検出装置の概略を示す図、図6は生態情報検出装置で用いる心電電極(生体電極)を説明するための図である。
【0039】
まず、生体の状態を検出するため、放射線の被曝量を無線送信可能とするほか、被検者の姿勢や動きを具体的に検出して無線送信可能な生体状態検出装置を無線送信の障害となることがほとんど無い手首に装着させ、予想されるあらゆる状態においても、被検者の状態を確実に送ることができる様にした生体状態検出装置について図1及び図2を参照して説明する。
【0040】
図1において、100は本実施の形態例の生体状態検出装置ケースであり、例えば合成樹脂(プラスチック)で形成されている。合成樹脂としては、例えばポリスチレン系合成樹脂、或いは、ポリメチルメタクリレート系合成樹脂を使用することができる。
【0041】
大きさとしては、例えば、最大でも40×40×10mm程度以下の軽量小型の大きさとする。生体状態検出装置ケース100において、185は電源スイッチ、195は表示部である発光ダイオード確認窓である。
【0042】
また、210、220は装着ベルトであり、215は尾錠、216はつく棒、217は游革、225はベルト孔である。装着ベルトを手首に巻き付けて適切なベルト孔に尾錠のつく棒を挿入して、腕時計ベルトのように装着して用いる。
【0043】
図1に示す生体状態検出装置の詳細構成を図2を参照して以下に説明する。図2において、110は生体状態検出装置の全体制御を司る制御部であり、例えばマイクロプロセッサとメモリ、入出力インタフェース部などを備えている。他の全ての各生体状態検出装置及び後述する全ての生体情報検出装置にはそれぞれ固有の識別番号、例えば14桁の識別番号が付与されている。この識別番号は制御部110が管理している。
【0044】
120は放射線量を検出する放射線検出センサである。放射線検出センサ120としては、小形軽量化が可能な半導体検出器を用いることが望ましい。放射線検出センサ120としては、。放射線検出センサ120としては、X線、α線、β線、γ線、中性子線の少なくとも一つを定量的に検出するものが望ましく、小形軽量化が可能な半導体検出器を用いることが望ましい。半導体検出器は、逆バイアスを与えられたP−N接合ダイオードであり、入射放射線のエネルギーに比例したパルス電流を生成することにより放射線被曝量を検出できる。
【0045】
生体状態検出装置100では、エネルギー範囲40KeV〜3MeVのγ(X)線量を検出できるアロカ株式会社製のポケットサーベイメータに使用している半導体検出器を用いることとしている。これにより、放射線検出を小型軽量素子で行うことが可能となる。
【0046】
130は被曝量積算部であり、放射線検出センサ120で検出した放射線量(放射線検出値)の積算値を求める。なお、被曝量積算部130は制御部110に内蔵されていても、放射線検出センサ120と一体に構成されていてもよい。
【0047】
150は3次元加速度センサであり、本装置装着者の3次元の動きを検出してX方向、Y方向、Z方向のそれぞれの3方向の検出電圧値を出力する。3次元加速度センサ150としては、例えばKionix社製のKXM52シリーズを適用できる。KXM52シリーズの加速度センサであればほぼ5mm×5mm×1.8mmの小形DFNパッケージであり、生体状態検出装置も小型の構成できる。
【0048】
160は通信制御部であり、制御部110の制御下で被曝量積算部130の保持する被曝量と3次元加速度センサ150の検出値を生体監視装置300の通信制御部330に一定の間隔でデータ伝送する。データ伝送は、例えば2.4GHzの周波数で行われる。
【0049】
生体状態検出装置100が検出値を送信する間隔は、任意で良く、数mS間隔であっても、数十mS間隔でも、数百mS間隔であってもよい。
【0050】
170は音響出力部であり、被曝量が予め設定された閾値を超えた場合や電源部の容量低下など、正常動作が保証できない状態になったときに例えば警報音を出力する。検知した状態により音響出力パターンを変化させることにより、より詳細に生体状態検出装置の状態を報知できる。
【0051】
なお、この音響出力部170は必ず備えなければならないものではなく、通常のものでは省略し、特に緊急性を最優先する、原子炉解体現場などで用いられる場合などに限定して備えるようにすることがより望ましい。
【0052】
180は電源部であり、本実施の形態例ではボタン電池を採用している。しかし、電池に限定されるものではなく、必要な電力供給が可能であれば1次電池であるか2次電池であるかも問わない。
【0053】
185は電源スイッチであり、本実施の形態例に動作電源を供給するか否かを指示する。190は表示部であり、例えば発光ダイオードが含まれ、発光しているか否かで動作状態を示している。しかし、以上の例に限定されるものではなく、赤と青等の2種の発光ダイオードを備え、どちらを表示するかで被検者の状態を容易に目視確認できるようにしてもよい。
【0054】
300は生体状態検出装置からの線量データなどを受け取って被検者の状態管理を行っている生体監視装置である。生体監視装置300において、310は全体制御を司る制御部、320は作業者毎の放射線被曝量や動作状態を管理する被検者情報管理部である。
【0055】
被検者情報管理部320では、各被験者毎に装着されている生体状態検出装置や生体情報検出装置にそれぞれ割り当てられている識別番号を関連付けて一体に登録し、当該識別番号と共に送られてくるパケット情報を時系列に格納していく。
【0056】
330は生体状態検出装置100とのデータ通信を行う通信制御部であり、生体状態検出装置100より一定間隔で送られてくる被曝量や被検者の状態を示す情報などを受信する。
【0057】
340は表示部であり、生体情報管理部で管理している被検者毎の状態を読み出してきて表示すると共に、生体状態検出装置100よりの被曝量や姿勢状態を表示する。更に緊急時のメッセージ表示なども行う。350は各種指示や情報を入力するキーボードあるいはカードリーダなどからなるデータ入力部である。
【0058】
通信制御部160、330間のデータ通信制御の詳細を以下に説明する。本実施の形態例では、上述したように生体状態検出装置か一定間隔でパケットデータを送信し、これを生体監視装置300で受信している。
【0059】
パケットには、予め各生体状態検出装置毎に割り当てられている識別番号(送信元情報)格納領域、パケットを送信する毎に歩進される送信番号情報(位置情報)格納領域、生体状態検出装置で測定した送信するべきデータ等が割り当てられているデータ格納領域、誤り訂正符号であるCRCデータを格納するCRC格納領域等からなり、データ格納領域に被曝量データと加速度センサの各方向データなどが格納される。
【0060】
生体監視装置300では、順次受信した生体情報検出装置毎の受信データ変化をリアルタイムで監視すると共に、表示部340に表示している。
【0061】
以上説明したように本実施の形態例によれば、放射線検出センサと被検者の姿勢や移動状態を検出できる加速度センサをを備える生体情報検出装置を被検者に装着することを可能とするのみならず、無線通信によりリアルタイムで測定データを管理装置に送ることができる。
【0062】
このため、単なる被曝量の検出のみならず被検者の状態までも検出することができ、確実に被検者の状態を検出することが可能となる。
【0063】
さらに、放射線被曝量をリアルタイムで監視することが可能になるため、一部の領域における放射線被曝量の異常が発生しても、速やかに事態を把握することができるという優れた作用効果を奏することができる。
【0064】
これにより、作業衣の収納ポケット等に出し入れする必要がなく、しかも体を良く動かすような環境であっても、確実に所持者の体に直接装着でき、作業性が向上する。
【0065】
さらに、生体状態監視装置は被検者の手首に装着されるため、移動量が大きくなると予想され、被検者の動きがより確実に検出できると共に、作業中に不具合が発生し作業者が倒れ込んだような場合であっても、手首部分が電波の通りにくい状態になることはほとんど無く、確実に無線通信できる状態に維持できることになる。
【0066】
以上に説明した生体状態検出装置100は、放射線検出センサと加速度センサとを備えていた。しかし、近時は各種のセンサ類の小型軽量化も進み、同じ大きさのケースの中にさらに数多くのセンサ類を具備させることが可能である。
【0067】
次に、被検者に装着して使用することが可能な特徴を生かして、放射線検出センサと3次元加速度センサに加え、体温を測定可能な温度センサ、被検者の精神状態までも検出可能な心電センサを備えさせ、被検者より広範囲の生体情報を検出可能な生体情報検出装置を図3乃至図6を参照して以下説明する。
【0068】
図3は本実施の形態例の被検者の生理状態を検出可能な多機能の生体情報検出装置の詳細構成を示すブロック図、図4は本実施の形態例の生体情報検出装置の被検者への装着状態を説明するための図、図5は本実施の形態例の生体情報検出装置の概略形状を示す図、図6は本実施の形態例の心電電極(生体電極)を説明するための図である。
【0069】
生体情報検出装置は、心電センサとしての心電図情報を収集可能な心電電極が備えられている。心電図情報として最も信頼性が高いのはやはり左胸部から収集する心電信号である。そこで、生体情報検出装置は胸部に装着する心電電極に係止する様にしている。
【0070】
生体情報検出装置の説明において、上述した図2に示す生体状態検出装置と同様構成には同一番号を附し詳細説明を省略する。
【0071】
図3において、210が被検者の体表面温度(体温)を検出する温度センサであり、例えば温度により抵抗値が変化するサーミスタ素子を用いている。体温の検出方法は電子体温計などで公知であるため詳細説明を省略する。
【0072】
600は生体情報検出装置ケース500に着脱自在に接続可能な心電センサを構成する心電電極(生体電極)、510、610は生体情報検出装置ケースと生体電極を電気的に接続するための電極端子を構成するスナップボタンである。
【0073】
心電電極600は、生体皮膚表面に貼着するため、繰り返し使用すると特性が劣化する。このため、心電電極のみ取り替え使用可能とする必要があるため、使い捨てタイプの生体電極を使用する。心電電極については、公知の一般的なものをそのまま適用でき、例えば日本光電工業製の「ディスポ電極Tビトロード」を使用できる。
【0074】
生体情報検出装置は、被検者の胸部に直接装着することを前提としているため、小形軽量化することが特に求められる。このため、温度センサ210により検出した温度データ及び心電電極220での検出電位を記憶などすることなく、通信制御部160がデータ送信をするタイミングになった時点での検出温度データと心電電極220での検出電位、3次元加速度センサ150のX,Y,Zの各センサ検出とをそれぞれ読み取って送信パケットの予め設定された領域に格納して送信する。
【0075】
これにより、生体情報検出装置が備える制御部110などの構成をより簡略化でき、消費電力の省電力化を達成すると共に、小形軽量化を達成している。このため多くの生体情報の収集を実現しながら、被検者に直接装着しても、被検者に余分な負荷を与えることがない、優れた生体情報検出装置を提供できる。
【0076】
心電電極部は、図6に示すように剥離紙650と、裏面に生体電極と生体への貼着用ゲルが配設されている電極パッド600とで構成されており、生体電極は接続端子を構成するスナップボタン610を介して表面側と電気的に接続されている。
【0077】
生体情報検出装置500は、図6に示す外形としている。そして、生体情報検出装置500の裏面には、図5に示すように図6のスナップボタン610と係合する対となるスナップボタン510が設けられており、該スナップボタン510で電極パッド600に固定された状態に維持可能に構成されている。なお、185は電源スイッチ、190は表面側に設けられている表示部(発光ダイオード)である。
【0078】
被検者への装着は、例えば、図4に示すように、左胸上部の心臓の心室位置近傍に装着することにより、心臓の状態がより明瞭に判別できる心電図信号が得られる。
【0079】
また、生体情報検出装置の形状も小さく、又合成樹脂製のケースとすることより軽量化を実現している。このため、生体情報検出装置を被検者に装着した状態であっても、被検者に与えるストレスを最小限に抑えることができ、違和感なく日常とほぼ同じ状態の放射線被曝量及び生体情報を検出できる。
【0080】
以上説明したように心電図信号が検出できる生体情報検出装置500を胸部に装着したことにより、被検者の身体的な状態がリアルタイムで把握可能であり、事態の急変に迅速に対処できる。さらに、本実施の形態例の生体情報検出装置は放射線の被曝量のみならず、3次元加速度センサを備えているため、装着されている被検者の状態や作業状態をリアルタイムで確実に把握することができる。
【0081】
このため、体の向きや動作状態が把握でき、作業状況を離れた場所から監視できると共に、不足の事態が起きて被検者の動きが止まったような場合にもその状況を的確かつ迅速に把握することができ、速やかに対応策をとることが可能となる。
【0082】
更に、体温や心電図情報を検出することも可能であり、心電図信号から心拍数も検出できることから、被検者の交感神経や副交感神経の働きも認識可能となるため、他方面から作業現場の状態を知ることができる。このため、あらゆる事態により広範囲に対応することが可能となる。
【0083】
これらのことは単に放射線の被曝量を検出できるのみではとうてい得られない優れた作用効果である。なお、以上の説明においては、心電電極を胸部に装着した例を説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、心電図信号が検出できる部位であれば被検者のどこに設けても良いことは勿論である。例えば左胸でなく、右胸であっても、背中側であっても、形であっても、脇の下であっても良く、装着場所に限定はない。
【0084】
以上の構成を備える本実施の形態例における被検者の状態認識制御を図7を参照して以下に説明する。以下の説明は、例えば生体監視装置300における被検者の状態検出処理と、被検者の状態から作業現場などの被検者の周囲の状況を把握する制御例について図7を参照して以下に説明する。図7は本実施の形態例の被検者の状況把握制御を説明するためにフローチャートである。
【0085】
上記したように、生体監視装置300は、生体状態検出装置100及び生体情報検出装置500より一定間隔で送られてくる被検者よりのパットに含まれる検出データ及び放射線被曝量を、順次被検者情報管理部320の不図示の被検者に対応付けられた生体情報検出装置及び生体状態検出装置毎のそれぞれの受信データバッファに格納している。
【0086】
このため、生体監視装置300は、図7のステップS1に示すように通信制御部330が生体状態検出装置または生体情報検出装置より送られてくるパケットを受信するのを監視している。
【0087】
そして、パケットを受信するとステップS1よりステップS3に進み、受信したパケットの送信元装置を特定する識別番号毎に割り当てられた受信バッファに時系列に格納する。
【0088】
続いてステップS5に進み、受信した検出データが予め定めた閾値の範囲外か否かを調べて受信データか否かを判定する。ここでは、例えば1回の受信データのみを判断して結論を出すのではなく、一定時間の間、例えば1秒間以上閾値の範囲外のデータが続いたか否かで判定する。しかし以上の例に限定されるものではなく、異常状態が連続しない場合には異常の間のみ警報を出力などするようにすれば異常状態からの復帰までの時間をみて誤判定か否か容易に判断できる。
【0089】
そして続くステップS7で判定の結果、データ異常であったか否か調べ、データ異常と判定されなかった場合にはステップS1に戻り次のパケット受信に備える。
【0090】
一方、ステップS7でデータ異常と判定されていた場合にはステップS10に進み、異常内容が放射線被曝量の異常か否かを調べる。放射線被曝量が規定値以上であるような被曝量異常である場合にはステップS12に進み、放射線被曝異常を表示部340に表示するなどして報知する。そしてステップS22に進む。
【0091】
これを確認すると、たとえばその被検者のみ被曝量が多いのか、周辺にいる他の人に装着した装置も同様に検出被曝量が多いのかで所定領域における放射線異常の発生に対しても迅速に状況が検知でき、速やかな対処が可能になる。
【0092】
一方、ステップS10で被曝量の異常でない場合にはステップS14に進み、3次元加速度センサの検出信号が所定時間変化がない等の3次元加速度センサ検出信号の異常か否かを調べる。3次元加速度センサの異常である場合にはステップS16に進み、被検者の状態の異常を報知してステップS22に進む。
【0093】
ステップS14で3次元加速度センサ信号の異常でない場合にはステップS18に進み、一定期間ある検出装置よりの受信が無い状態か否かを調べる。受信がある場合にはステップS22に進み、検出値が異常であった内容、例えば、体温センサ検出値の異常である場合の体温上昇や体温低下、心電図信号の異常である場合の脈拍上昇や心肺停止等それぞれの異常内容を表示してステップS22に進む。
【0094】
ステップS22以下の処理は、本実施の形態例に特有の処理であり、異常と判定された装置を装着していた人は、そのほかにもうひとつの装置が装着されているため、他の装置の検出データを読み出してきて比較する。
【0095】
そしてステップS24で被検者の装着部位毎の検出値を対比して異常を判定する。すなわち、同じセンサを装着している場合の一方のセンサ値のみ異常がある場合で、他方のセンサ検出値が正常な範囲内の検出値である様な場合には、一方の装置のセンサ異常か検出ミスと判断でき、被検者の状況がより正確に判断できる。
【0096】
そして、続くステップS26でステップS24での状況判断に基づいた被検者及び被検者の周囲状況を報知する。そしてステップS1に戻る。これにより、あらゆる状況に確実かつ迅速に対応できる。
【0097】
ステップS24における状況判定の例を以下に列挙する。
【0098】
なお、基本的に検出結果が共に同じ許容範囲内にある時に検出結果を有効と判断し、検出結果が異なっている場合でも、検出結果を比較することで以下の様に判断する。
(1)放射線被曝量
一方の被曝量が高い数値で他方が予想正常範囲である場合には、一方装置のセンサ異常かあるいは通信状態に由来するミスと予測でき、要経過観察と判断できる。
【0099】
両方の被曝量が高い数値の場合には放射の漏れの可能性があり警報出力の必要があると判断できる。
【0100】
一方の装置の検出被曝量が高く、他方の装置との無線通信ができない場合には3次元加速度センサ検出結果と併せて総合的に判断する必要があるが、他方の装置が体の下にあるために無線通信できない状態である可能性もあり、放射能漏れの可能性が疑われる。
(3次元加速度センサ)
一方装置のセンサの検出値が一定の動きを検出し、他方のセンサからの検出値が所定範囲外の低い場合には、被検者への装着状態が非装着状態となった可能性(例えば、体表面への装着が外れて衣服内に脱落した可能性等)があると判断できる。
【0101】
一方装置のセンサの検出値が一定の動きを検出し、他方の装置のセンサからの検出値が無い場合には、被検者への装着状態が外れて外部に脱落した可能性があると判断できる。
【0102】
両装置とも3次元加速度センサの検出がない場合には被検者が全く動いていない状態と判断でき、被曝量に問題がなければ被検者個人に原因がある不測の事態発生の可能性があると判断でき周辺作業員に確認を促すことなどが考えられる。
【0103】
一方の装置の3次元加速度センサの検出が無く、他方の装置とのパケット通信が中断している状態では、他方の装置が体の下になって無線通信できない状態である可能性もあり、被曝量に問題がなければ被検者個人に原因がある不測の事態発生の可能性があると判断でき周辺作業員に確認を促すことなどが考えられる。
【0104】
以上の様に、本実施の形態襟では被検者の異なる2つの部位に検出装置を装着するため、装着部位毎の異常を対比して状況判断することができ、一つのみを装着する場合では全く予想もできなかった種々の状況に迅速かつ確実に対応可能となる判断ができる。
【0105】
特に、被検者に不測の事態が発生したような場合であって、例えば被検者がうつぶせに倒れたような場合(統計上、俯せに倒れる場合がほとんどである)、胸部の生体情報検出装置が体の下側になってしまい、体が電波の遮断効果を発揮して無線通信ができない状態になっても、ほとんど体の下側になることがない手首に生体状態検出装置を装着しているため、確実に検出データを無線通信でき、現場の状況を確実に送信できる。
【0106】
これは従来のように作業衣のポケットに線量計などを収納していた場合であっても、人間の体が電波遮蔽効果を発揮して全く無線通信できない状態であったものが、本実施の形態例によればこのような事態を未然に防止できる。
【0107】
なお、以上の説明では生体状態検出装置を手首に装着する例を説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、足首に装着しても、脛の部分または大腿の部分に装着しても良く、上腕であっても、腕先であっても、また更なる小型化した場合には指に装着しても良く、装着部位に限定はない。
【0108】
なお、生体情報検出装置と生体状態検出装置の装着箇所を体の表側と裏側に分けても、あるいは右側と左側に分けてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線量を検知可能な放射線検出センサと、被検者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、前記放射線検出センサでの検出値を一定間隔で無線送信する無線通信手段と、動作電力を供給する電力供給手段とを備える少なくとも2つの検出装置と、
前記検出装置より送信される検出値を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した前記検出装置毎の検出値を比較する比較手段とを備える生体監視装置とを有することを特徴とする生体情報検出システム。
【請求項2】
前記検出装置は、被検者の異なる部位にそれぞれ装着されることを特徴とする請求項1記載の生体情報検出システム。
【請求項3】
前記検出装置の一方は、被検者の手首に装着されることを特徴とする請求項2記載の生体情報検出システム。
【請求項4】
前記検出装置の生体情報検出手段は、3次元加速度センサと、該3次元加速度センサの検出するX方向、Y方向、Z方向の検出値を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の生体情報検出システム。
【請求項5】
前記検出装置の生体情報検出手段は、さらに心電図信号検出を含むことを特徴とする請求項4記載の生体情報検出システム。
【請求項6】
前記検出装置の他方は、被検者の胸部に装着されることを特徴とする請求項5記載の生体情報検出システム。
【請求項7】
前記生体監視装置の前記比較手段は、前記検出装置毎の検出値が共に同じ検出結果の時に検出結果を有効とすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の生体情報検出システム。
【請求項8】
前記生体監視装置の前記比較手段は、一の検出装置よりの検出値が無線送信されなかった場合には、無線送信されてきた検出装置よりの検出値を検出結果とすることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の生体情報検出システム。
【請求項9】
前記生体監視装置の前記比較手段は、一の検出装置よりの検出値が無線送信されなかった場合には、一の検出装置が倒れた被検者の下側にあると判断することを特徴とする請求項8記載の生体情報検出システム。
【請求項10】
放射線量を検知可能な放射線検出センサと、被検者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、前記放射線検出センサでの検出値を一定間隔で無線送信する無線通信手段と、動作電力を供給する電力供給手段とを備える少なくとも2つの検出装置を被検者のそれぞれ異なる部位に装着してなる生体情報検出システムにおける生体情報検出方法であって、
前記検出装置毎の検出値が共に同じ検出結果の時に検出結果を有効とすることを特徴とする生体情報検出方法。
【請求項11】
一の検出装置よりの検出値が無線送信されなかった場合には、無線送信されてきた検出装置よりの検出値を検出結果とすることを特徴とする請求項10記載の生体情報検出方法。
【請求項12】
前記一の検出装置よりの検出値が無線送信されなかった場合には、前記一の検出装置が倒れた被検者の下側にあると判断することを特徴とする請求項11記載の生体情報検出方法。
【請求項13】
前記検出装置の一方は、装着者の体が無線送信の障害とならない被検者の手首に装着されることを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれかに記載の生体情報検出方法。
【請求項14】
前記検出装置の生体情報検出手段は、3次元加速度センサと、該3次元加速度センサの検出するX方向、Y方向、Z方向の検出値を含み、検出値により被検者の状態を検出可能とすることを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれかに記載の生体情報検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−99793(P2011−99793A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255584(P2009−255584)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【出願人】(509131339)株式会社アール・アイ・イー (8)
【Fターム(参考)】