説明

生分解性ポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形体

【課題】 成形加工に好適な溶融粘度を有し、かつ耐熱性があり、さらに良好な外観を有するポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 生分解性ポリエステル樹脂(A)と、無機充填材(B)と、重量平均エポキシ官能基数が3以上であるエポキシ官能性鎖延長剤(C)とを含有するポリエステル樹脂組成物であって、(A)と(B)の質量比率(A/B)が、99.9/0.1〜80/20であり、(C)の含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、およびそれを用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の見地から、ポリ乳酸をはじめとする生分解性樹脂が注目されている。生分解性樹脂のうちでポリ乳酸は、透明性が良好であり、またトウモロコシやサツマイモなどの植物由来原料から大量生産可能なため、コストが低いうえに石油原料の使用量の削減にも貢献できることから、有用性が高い。
【0003】
しかし、ポリ乳酸などを含む生分解性樹脂は耐熱性が不十分であり、この問題を改善するために板状無機充填材である層状珪酸塩を添加する方法が提案されている(非特許文献1)。ところが、生分解性樹脂に層状珪酸塩を添加すると、その分散性が十分でないために、凝集が起こりやすく、樹脂を用いた成形物の外観に問題が生じる可能性がある。このため、良好な外観を必要とすることが多い包装材料や容器に用いる樹脂組成物には、この方法は不適であった。
【0004】
凝集物を低減させる方法として、水又は水系溶媒で予め膨潤させた層状珪酸塩を用いて融点以下でポリ乳酸と混練することにより分散性を高める方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、特殊な混練機が必要になり経済的に好ましくなく、また混練中に樹脂組成物の分子量が低下することにより、成形時に熱劣化が生じる可能性がある。また、層間にラクチドもしくは数平均分子量が50000以下の低分子量ポリ乳酸が挿入されて層間距離が拡大された層状珪酸塩を用いて、その分散性を向上させる方法が提示されている(特許文献2)。しかし、この方法では、層状珪酸塩の分散性に関してはさらなる改善の余地がある。さらに、アルキレンオキシド単位の繰返しからなる数平均分子量200〜50000の化合物によりポリ乳酸中に層状珪酸塩を分散させたフィルムが提示されている(特許文献3)。しかし、アルキレンオキシド化合物は親水性が高く、耐熱性が高くないため、添加可能な量が限られてしまう。したがって、この方法でも、層状珪酸塩の分散性に関してはさらなる改善の余地がある。
【0005】
一方で、フィルムやシートの成形時に溶融状態のポリ乳酸は溶融粘度や溶融張力が低いため、製造工程でネッキングを起こし、厚さや幅の制御が困難である。インフレーション成形ではフロストラインが不安定になったり、ブロー成形ではパリソンがドローダウンしたりして、成形品に偏肉が生じるといった問題が起こりやすかった。そこで溶融粘度や溶融張力を向上させる手段として、脂肪族ポリエステルにアクリル系樹脂改質剤を添加する方法が開示されている(特許文献4)。この方法により溶融粘度及び溶融張力は改善されるが、脂肪族ポリエステルの耐熱性を改善する方法は提示されていなかった。
【0006】
また、ボトルやフィルムの成形加工に適切な溶融粘度を有するポリマーを製造するために、重合触媒を多量に添加することがあるが、多量の触媒残渣を含有するポリマーに成形加工の熱履歴が加わると、劣化しやすく、分子量低下やそれに伴う黄変が生じることが知られている(非特許文献2)。黄変の生じたプラスチックは、商品価値が低くなる。このため、良好な外観を必要とすることが多い包装材料や容器に用いる樹脂組成物には、この方法は不適であった。さらに、溶融粘度の低いポリマーでは熱履歴が少ないため色調には優れているものの、溶融粘度が低いと溶融混練時のせん断力が低いため、耐熱性向上のために添加する充填材を十分に分散させることができなかった。
【0007】
したがって、成形加工に好適な溶融粘度を有し、さらに得られた成形体が優れた耐熱性を有しており、なおかつ包装材料や容器に用いることのできる優れた外観を有する生分解性ポリエステル材料は、未だ提供されていなかった。
【0008】
【非特許文献1】「高分子論文集」、2002年、第59巻、第12号、p.760−766
【非特許文献2】「高分子の長命化技術」、シーエムシー株式会社、2001年1月、p.35
【特許文献1】特開2004−027136号公報
【特許文献2】特開2004−323758号公報
【特許文献3】特開2003−261695号公報
【特許文献4】特開2006−265399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するものであり、特にボトルやフィルムの成形加工に好適な溶融粘度を有し、かつ耐熱性があり、さらに良好な外観を有するポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生分解性ポリエステル樹脂に、充填材と、鎖延長剤とを添加することにより、ボトルやフィルムを生産性良く製造可能な溶融粘度を有し、耐熱性があり、良好な外観を有するポリエステル樹脂組成物を提供できることを見出した。また、分散剤を添加することで凝集物が少なく透明性が高くさせることができることを見出した。さらに、酸化防止剤および/または末端封鎖剤を添加することで、色調、熱安定性にも優れたポリエステル樹脂組成物を提供できることを見出した。
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)生分解性ポリエステル樹脂(A)と、無機充填材(B)と、重量平均エポキシ官能基数が3以上であるエポキシ官能性鎖延長剤(C)とを含有するポリエステル樹脂組成物であって、(A)と(B)の質量比率(A/B)が、99.9/0.1〜80/20であり、(C)の含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
(2)生分解性ポリエステル樹脂(A)が、ポリ乳酸を50質量%以上含有したものであることを特徴とする(1)記載のポリエステル樹脂組成物。
(3)無機充填材(B)が、板状無機充填材であることを特徴とする(1)または(2)記載のポリエステル樹脂組成物。
(4)鎖延長剤(C)の重量平均エポキシ官能基数が3〜30であり、ガラス転移温度が0〜70℃であり、エポキシ当量が180〜2800g/molであり、かつ重量平均分子量が2,000〜40,000であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(5)鎖延長剤(C)が、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーと、非官能性(メタ)アクリルモノマーおよび/またはスチレンモノマーとから生成したコポリマーであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(6)ポリエーテルリン酸エステル、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル、極性ワックスの中から選ばれる少なくとも1種の分散剤(D)を含有し、その含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.1〜15質量部であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(7)ホスファイト系酸化防止剤(E)を含有し、その含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(8)末端封鎖剤(F)を含有し、その含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(9)190℃、2.16kgfで測定したメルトインデックス(MI)が0.1〜10.0(g/10分)であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(10)YIが30以下であり、厚み1mmの成形体としたときのヘーズが50%以下であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(11)溶融混練時に、生分解性ポリエステル樹脂(A)に、無機充填材(B)と、鎖延長剤(C)とを添加することを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(12)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生分解性ポリエステル樹脂に、無機充填材と、鎖延長剤と、分散剤とを添加することにより、成形性と耐熱性が改善された生分解性ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。特に無機充填材は耐熱性の改善に有効であり、鎖延長剤は成形性の改善に有効である。また、本発明の樹脂組成物は、生分解性を有することから、廃棄する際にはコンポスト化でき、廃棄物の減量化や、肥料としての再利用化が可能である。さらに、生分解性ポリエステル樹脂として植物由来であるポリ乳酸を使用した場合は、石油資源の枯渇防止に貢献し、環境にやさしい材料として提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
<生分解性ポリエステル樹脂(A)>
本発明において、生分解性ポリエステル樹脂(A)としては、α−および/またはβ−ヒドロキシカルボン酸単位と、ω−ヒドロキシアルカノエート単位とのいずれかを主成分とする脂肪族ポリエステルや、脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分からなるポリエステルが挙げられる。
【0013】
α−および/またはβ−ヒドロキシカルボン酸単位の例としては、D−乳酸、L−乳酸、これらの混合物、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸など、およびこれらの混合物、共重合体が挙げられる。D−乳酸、L−乳酸が特に好ましい。
ω−ヒドロキシアルカノエート単位としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、またはその誘導体としての低級アルキルエステル化合物、酸無水物などを挙げることができる。なかでも好ましいのは、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸である。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。特に好ましいのは1,4−ブタンジオールである。
なお、ポリエステル樹脂の生分解性を損なわない範囲であれば、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が共重合されていてもよく、こうした共重合ポリエステルも本発明でいう生分解性ポリエステル樹脂に含まれる。
【0014】
本発明において生分解性ポリエステル樹脂(A)の具体例としては、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)のほか、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンアジペート)等に代表されるジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(δ−バレロラクトン)に代表されるポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート−co−ブチレンテレフタレート)などの芳香族成分を含むポリエステル樹脂、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネート、澱粉等の多糖類等が挙げられる。これらの成分は、1種でも、2種以上用いてもよく、混合されていてもよいし、共重合されていてもよい。
これらの樹脂は公知の溶融重合法で製造される。ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)およびポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)などについては、微生物による生産が可能である。
【0015】
本発明においては、ポリ乳酸を50質量%以上含有している生分解性ポリエステル樹脂(A)を用いると、植物由来度が高いことから環境への効果が高い上に、透明性、耐熱性とのバランスもとれるためにさらに好ましい。ポリ乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸の含有比率は特に限定されないが、市販されているものとしては(L−乳酸/D−乳酸)または(D−乳酸/L−乳酸)が、80/20〜99.95/0.05(モル比)の範囲のものを制限無く使用することができる。ポリ乳酸の含有量は、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0016】
本発明の樹脂組成物に、ポリ乳酸以外の樹脂として、植物由来原料からなる樹脂を使用すると、植物由来の樹脂含量が増えることになり、石油資源使用量の削減効果が大きくなる。植物由来原料からなる樹脂としては、ポリ乳酸のほか、ナイロン11、天然ゴムなどが挙げられる。
【0017】
本発明において生分解性ポリエステル樹脂(A)の分子量は、特に限定されないが、その指標となる190℃、2.16kgf(21.2N)におけるメルトインデックス(MI)が0.1〜50(g/10分)の範囲であれば、そのポリエステル樹脂を好ましく使用することができる。さらに好ましい範囲は、0.2〜40(g/10分)である。
【0018】
本発明において生分解性ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸を用いる場合、その樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、成形加工性や成形体の強度を考慮すると、Mwが50,000以上であることが好ましく、より好ましくは70,000〜400,000の範囲であり、さらに好ましくは80,000〜250,000の範囲であり、最も好ましくは85,000〜160,000の範囲である。なお、上記Mwは、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(GPC)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、流速1.0ml/min、40℃で測定した際に、ポリスチレン換算で求めた値である。
【0019】
<無機充填材(B)>
本発明の樹脂組成物には、機械特性、成形性、耐熱性などに優れた樹脂組成物を得るために、無機充填材(B)を配合する必要がある。
充填材としては、通常、熱可塑性樹脂の充填材として用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを制限無く用いることができる。
具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ウォラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維などの繊維状無機充填材、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、合成フッ素マイカなどの膨潤性雲母、層状珪酸塩、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、ラポナイト、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土などの板状や粒状の無機充填材が挙げられる。
充填材は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。
これらの充填材の中では、板状無機充填材が好ましく、ベントナイトや膨潤性合成フッ素マイカのような層状珪酸塩、タルク、グラファイトがさらに好ましく、層状珪酸塩が特に好ましい。
【0020】
本発明に用いることができる膨潤性層状粘土鉱物の一種である層状珪酸塩は、具体的には、スメクタイト、バーミキュライト、膨潤性フッ素雲母などが挙げられる。スメクタイトの例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイトなどが挙げられる。バーミキュライトの例としては、Na型バーミキュライト、Li型バーミキュライト、Mg型バーミキュライトなどが挙げられる。膨潤性フッ素雲母の例としては、Na型フッ素四ケイ素雲母、Na型テニオライト、Li型テニオライトなどが挙げられる。
また上記の他に、カネマイト、マカタイト、マガディアイト、ケニアイトなどの、アルミニウムやマグネシウムを含まない層状珪酸塩を使用することもできる。
好ましい層状珪酸塩としては、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母などが挙げられる。
なお、層状珪酸塩は、天然品以外に合成品でもよく、合成方法としては、溶融法、インターカレーション法、水熱法などが挙げられるが、いずれの方法であってもよい。
これらの層状珪酸塩は単独で使用してもよいし、鉱物の種類、産地、粒径などが異なるものを2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
生分解性ポリエステル樹脂(A)中での層状珪酸塩の分散性を向上させるために、層状珪酸塩の層間には、1級ないし4級アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはホスホニウムイオンがイオン結合していることが好ましい。
1級ないし3級アンモニウムイオンは、対応する1級ないし3級アミンがプロトン化したものであり、1級アミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミンなどが挙げられる。
2級アミンとしては、ジオクチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジオクタデシルアミンなどが挙げられる。
3級アミンとしては、トリオクチルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジドデシルモノメチルアミンなどが挙げられる。
4級アンモニウムイオンとしては、ジヒドロキシエチルメチルオクタデシルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ヒドロキシエチルジメチルオクタデシルアンモニウム、ヒドロキシエチルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジヒドロキシエチルドデシルアンモニウム、ベンジルジヒドロキシエチルオクタデシルアンモニウム、ドデシル(ジヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、オクタデシル(ジヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(3′−ドデシルオキシ−2′−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウム、メチルドデシルビス(ポリエチレングリコール)アンモニウム、メチルジエチル(ポリプロピレングリコール)アンモニウムなどが挙げられる。
ピリジニウムイオンとしては、1−ドデシルピリジニウムなどが挙げられる。
イミダゾリウムイオンとしては、1−エチルメチルイミダゾリウム、1−ヘプタデシル−2,2′−エチルヒドロキシエチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
さらに、ホスホニウムイオンとしては、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
これらのうち、ジヒドロキシエチルメチルオクタデシルアンモニウム、ヒドロキシエチルジメチルオクタデシルアンモニウム、ヒドロキシエチルジメチルドデシルアンモニウム、ドデシル(ジヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、オクタデシル(ジヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(3′−ドデシルオキシ−2′−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウム、メチルドデシルビス(ポリエチレングリコール)アンモニウム、メチルジエチル(ポリプロピレングリコール)アンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウムなどの、分子内に1つ以上の水酸基を有するアンモニウムイオンやホスホニウムイオンで処理した層状珪酸塩は、生分解性ポリエステル樹脂との親和性が特に高く、層状珪酸塩の分散性が向上するため、特に好ましい。これらのイオン化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
層状珪酸塩を上記1級ないし4級アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオンで処理する方法は、特に制限はない。例えば、まず層状珪酸塩を水またはアルコール中に分散させ、ここへ上記1級ないし3級アミンと酸(塩酸など)、または4級アンモニウム塩もしくはホスホニウム塩を添加して撹拌混合することにより、層状珪酸塩の層間の無機イオンを上記アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンとイオン交換させた後、濾別・洗浄・乾燥する方法が挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、生分解性ポリエステル樹脂(A)と無機充填材(B)の質量比率(A/B)は、99.9/0.1〜80/20であることが必要であり、99.5/0.5〜90/10であることが好ましく、99/1〜95/5であることがより好ましい。無機充填材(B)の配合量が0.1質量%未満では、本発明の目的とする耐熱性向上効果が得られない。また、20質量%を超える場合には、外観の悪化や、分子量低下などによる成形加工性が低下する傾向がある。
【0024】
<鎖延長剤(C)>
本発明で用いられる鎖延長剤(C)の重量平均エポキシ官能基数(EFW)とは、(EFW)=(重量平均分子量)/(エポキシ当量)で表される重量平均のエポキシ官能基数である。本発明においては、鎖延長剤(C)のEFWは3以上であることが必要であり、3〜30であることが好ましく、5〜28であることがさらに好ましく、10〜25であることがもっとも好ましい。鎖延長剤(C)のEFWが3未満であると、生分解性ポリエステル樹脂(A)に対する増粘効果が小さく、成形性を十分に改善するに至らなくなる。また、30を超える場合には、過剰なエポキシ基が生分解性ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基やヒドロキシル基と、あるいは水素引抜反応のようなものによる過度の架橋反応を起こし、成形性が悪化する場合がある。
【0025】
本発明において用いられる鎖延長剤(C)のガラス転移温度は0〜70℃であることが好ましく、ガラス転移温度は30℃以上がより好ましく、50℃以上であることが操業面からさらに好ましい。
また、鎖延長剤(C)のエポキシ当量は、本発明の目的である適切な溶融粘度に調整するために、180〜2800g/molであることが好ましく、200〜1000g/molであることがさらに好ましく、200〜450g/molであることが最も好ましい。
さらに鎖延長剤(C)の重量平均分子量は、生分解性ポリエステル樹脂(A)とよく混ざるためには2,000〜40,000であることが好ましく、3,500〜25,000であることが好ましく、4,000〜15,000であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明において、鎖延長剤(C)の骨格部分には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリブタジエン水添ポリマー、ポリエチレンブチレン、ポリイソブチレン、シクロオレフィンなどのオレフィン系、またはビニル系、アクリル系、エステル系、アミド系などの樹脂構造を有するものが好ましい。これらは共重合されていてもよく、あるいは、エポキシ基は上記の樹脂構造に直接付加されたものでも、また、エポキシ基を付加したポリマーを上記樹脂構造にグラフトした構造であってもよい。
【0027】
本発明において好ましい鎖延長剤(C)の様態としては、少なくとも1種のエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーと、少なくとも1種の非官能性(メタ)アクリルモノマーおよび/またはスチレンモノマーとから生成したエポキシ官能性(メタ)アクリルコポリマーが挙げられる。なお、本明細書で使用する用語(メタ)アクリルモノマーには、アクリルモノマーおよびメタクリルモノマーの両方が含まれる。
【0028】
鎖延長剤(C)を構成するエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーの例としては、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの両方が挙げられ、これらのモノマーの具体例には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの1,2−エポキシ基を含有するモノマーが含まれるが、それらに限定されない。なお、アリルグリシジルエーテル、エタクリン酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどのエポキシ官能性モノマーを併用してもよい。
【0029】
鎖延長剤(C)を構成する非官能性アクリル酸モノマーとしては、アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸i−アミル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
また、鎖延長剤(C)を構成する非官能性メタクリル酸モノマーとしては、メタクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸シンナミル、メタクリル酸クロチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、およびメタクリル酸イソボルニルが含まれるが、それらに限定されない。
非官能性アクリル酸エステルモノマーおよび非官能性メタクリル酸エステルモノマーには、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、およびメタクリル酸イソボルニルが含まれ、それらを組み合わせたものが特に適している。
さらに、鎖延長剤(C)を構成する非官能性スチレンモノマーとしては、スチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、ビニルピリジン、およびこれらの化学種の混合物が挙げられるが、それらに限定されない。スチレンモノマーとしては、スチレン、アルファ−メチルスチレンが好ましく使用される。
【0030】
鎖延長剤(C)を構成する各モノマー(エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー/スチレンモノマー/非官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマー)の質量比率(質量%)の例としては、50〜80/20〜50/0、25〜50/15〜30/20〜60、50〜80/15〜45/0〜5、5〜25/50〜95/0〜25などが挙げられる。
【0031】
このようなエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーと、非官能性(メタ)アクリルおよび/またはスチレンモノマーからなる鎖延長剤は、例えば、特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報、特表2005−517061、米国特許出願第09/354350号および米国特許出願第09/614402号中に記載された公知の方法で製造することができ、本発明で規定した以外は制限無く使用することができる。
【0032】
鎖延長剤(C)として特に好ましいものは、ポリエチレンやポリプロピレンの骨格にエポキシ基が付加された構造を有するものであり、このような構造を有する市販のエポキシ基含有添加剤としては、モディパーA4200(日本油脂社製)、ボンドファースト2C、ボンドファーストE(いずれも住友化学社製)、ARUFON UG4030(東亞合成社製)、JONCRYL−ADR4300、JONCRYL−ADR4368(いずれもBASF社製)などを挙げることができる。
【0033】
鎖延長剤(C)の含有量は、生分解性ポリエステル樹脂(A)と無機充填材(B)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが必要であり、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.1〜2質量部であることがさらに好ましい。鎖延長剤(C)の含有量が0.05質量部未満では、樹脂組成物の溶融粘度を向上させることができず、成形性を向上させることができないことがある。一方、含有量が10質量部を超えると、樹脂組成物が高粘度化し、成形性が低下することがある。
【0034】
<分散剤(D)>
本発明の樹脂組成物には、無機充填材(B)の分散性向上の目的で、ポリエーテルリン酸エステル、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル、極性ワックスの中から選ばれる少なくとも1種の分散剤(D)を添加することが好ましい。
【0035】
ポリエーテルリン酸エステルとしては、下記一般式(1)および/または一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
R−O(CHCHO)−PO(OH) (1)
(R−O(CHCHO)−)−PO(OH) (2)
上記一般式(1)、(2)中、Rは、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアルキルアリール基、又は炭素数6〜20のアルキルフェノキシ基を表す。nは1〜50の整数を表す。これらは市販品を使用してもよく、前記式(1)及び式(2)で表される化合物として、ディスパロンDA375(楠本化成社製)、プライサーフA215C(第一工業製薬社製)、プライサーフA217E(第一工業製薬社製)、ネオスコアCM57(東邦化学社製)、アデカコールTS、アデカコールCS(旭電化社製)などが挙げられる。
【0036】
脂肪酸エステルの例としては、ジメチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、あるいは糖アルコールの脱水縮合物と脂肪酸とからなる脂肪酸エステルとしてソルビタンモノカプレート、ソルビタンジカプレート、ソルビタントリカプレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノミスチレート、ソルビタンジミスチレート、ソルビタントリミスチレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレートなどが挙げられる。
【0037】
多価アルコールエステルの例としては、グリセリンと脂肪酸のエステルであるモノグリセリド、ジグリセリド、あるいはグリセリンジアセトモノカプリレートのようなトリグリセリド等のグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0038】
多価カルボン酸エステルの例としては、クエン酸トリブチルやクエン酸トリブチルアセテート等のクエン酸エステル等が挙げられる。
【0039】
本発明で用いる極性ワックスは、天然ワックス、合成ワックスのいずれでもよい。
天然ワックスとしては、石油ワックス、モンタンワックス、動物ワックス、植物ワックスなどが挙げられる。石油ワックスとしては、パラフィンワックスやマイクロワックスなど飽和脂肪族炭化水素を主とする構造を有するような無極性ワックス以外のものであればよく、例えばこれらを酸化反応などによりアルコール型ワックスなどに変性したものであれば極性を有することもある。モンタンワックスとしてはエステル化または部分ケン化により極性を有する構造をものであればよい。植物ワックスではカルナバワックスやライスワックスやキャンデリラワックスのような高級脂肪酸と高級アルコールのエステルの混合物を含むものなどが挙げられる。
合成ワックスとしては、脂肪酸や脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが挙げられ、例えば、ヒマシ油、硬化ひまし油、ホホバ油などの植物油や、セバシン酸のエステル化物、12−ヒドロキシステアリン酸およびそのエステル化物やアミド化合物、けん化物などでもよい。
これらのワックスは極性を有するため、生分解性ポリエステル樹脂と混合したときに半透明性が維持され、外観に優れるという効果がある。この効果は、生分解性ポリエステル樹脂としてポリ乳酸を用いた場合に顕著である。
【0040】
分散剤(D)の含有量は、生分解性ポリエステル樹脂(A)と無機充填材(B)の合計100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましく、0.2〜8質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらに好ましい。0.1質量部未満では、本発明の目的とする分散性効果が得られず、15質量部を超える場合には、機械物性や成形加工性が低下する傾向がある。無機充填材(B)100質量部に対して、10〜200質量部の分散剤(D)を添加することが無機充填材の分散性を向上させるために好ましい。これらの分散剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
<ホスファイト系酸化防止剤(E)>
本発明の樹脂組成物には、その熱安定性を高め、分子量低下による低粘度化や色調の悪化を防ぐために、ホスファイト系の酸化防止剤を添加することが好ましい。具体的には、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャリティーケミカルズ社製IRGAFOS168)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(チバスペシャリティーケミカルズ社製IRGAFOS12)、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜りん酸(チバスペシャリティーケミカルズ社製IRGAFOS38)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]4,4′−ジイルビスホスフォナイト(チバスペシャリティーケミカルズ社製IRGAFOS P−EPQ)、3,9−ビス(p−ノニルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(ADEKA製アデカスタブPEP−4C)、O,O′−ジアルキル(C=8〜18)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA製アデカスタブPEP−8,PEP−8W)、ADEKA製アデカスタブPEP−11C、ビス(2,4−ジ―tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA製アデカスタブPEP24G)、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(ADEKA製アデカスタブPEP36,PEP−36Z)、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト(ADEKA製アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイト(ADEKA製アデカスタブ2112)、4,4′−ブチリデン−ビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)(ADEKA製アデカスタブ260)、ヘキサアルキル又は[トリアルキル(C=8〜18)トリス(アルキル(C=8,9)フェニル)]1,1,3−トリス(3−t−ブチル−6−メチル−4−オキシフェニル)−3−メチルプロパントリホスファイト(ADEKA製アデカスタブ522A)、ジ又はモノ(ジノニルフェニル)モノ又はジ(p−ノニルフェニル)ホスファイト(ADEKA製アデカスタブ329K)、トリスノニルフェニルホスファイト(ADEKA製アデカスタブ1178)、(1−メチルエチリデン)−ジ−4,1−フェニレン−テトラ−アルキル(C=12〜15)ホスファイト(ADEKA製アデカスタブ1500)、2−エチルヘキシル−ジフェニルホスファイト(ADEKA製アデカスタブC)、ジフェニルイソデシルホスファイト(ADEKA製アデカスタブ135A)、トリイソデシルホスファイト(ADEKA製アデカスタブ3010)、トリフェニルホスファイト(ADEKA製TPP)、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー(城北化学工業社製JPH3800)などが挙げられ、中でもペンタエリスリトールジフォスファイト(PEP24G)、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(PEP36,PEP−36Z)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイト(2112)、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー(JPH3800)などがより好ましい。これらは1種でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
ホスファイト系酸化防止剤(E)の含有量は、特に限定されないが、生分解性ポリエステル樹脂(A)と無機充填材(B)の合計100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましい。0.01質量部未満では本発明の目的とする着色の抑制や耐熱、耐湿熱性が得られず、5質量部を超えるとホスファイト系有機化合物の分解による樹脂組成物の物性の低下が生じる。
【0043】
<末端封鎖剤(F)>
本発明の樹脂組成物には、その耐久性を向上させるために、末端封鎖剤(F)を添加して、樹脂の末端を封鎖することが好ましい。末端封鎖剤としては、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、あるいは本発明で規定している以外のエポキシ化合物などが挙げられる。中でもカルボジイミド化合物が特に好ましく、具体的には同一分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミドとしてN,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(例えば、松本油脂製薬製EN−160)や、あるいは同一分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドとして芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインヘミー社製スタバックゾールP、スタバックゾールP−100など)、脂肪族(脂環族)ポリカルボジイミド(例えば、日清紡績株式会社製LA−1など)が挙げられる。これら末端封鎖剤は単独で使用してもよいが2種以上を組み合わせて使用してもよい。末端封鎖剤(F)の含有量は、特に限定されないが、生分解性ポリエステル樹脂(A)と無機充填材(B)の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましい。
【0044】
<ヘーズ>
本発明の樹脂組成物は、生分解性ポリエステル樹脂(A)、無機充填材(B)、分散剤(D)の組み合わせや添加量を適切に選ぶことで、無機充填材(B)は優れた分散性を示し、外観に優れ、厚み1mmの成形体としたときのヘーズを50%以下とすることができる。ヘーズがこの値より大きいものでは、透明性が不十分である場合や、たとえヘーズがこの値をそれほど大きくは超えない場合でも粗大な凝集物が見られるために、商品価値が低くなる場合がある。なお、ここでいうヘーズとは、濁度計で測定した濁度のことをいう。ヘーズが大きいほど濁度は強く、ヘーズが小さいほど、濁度が弱く透明であることを示す。厚み1mmの成形体で、好ましくは上述のようにヘーズが50%以下であり、より好ましくはヘーズが45%以下であり、さらに好ましくはヘーズが38%以下であり、最も好ましくはヘーズが30%以下である。
【0045】
<YI>
また、本発明の樹脂組成物は、生分解性ポリエステル樹脂(A)、無機充填材(B)、分散剤(D)の組み合わせや添加量を適切に選ぶことで、色調にも優れ、YIを30以下とすることができる。好ましくはYIが26以下であり、さらに好ましくは22以下である。なお、ここでいうYIとは三刺激値から算出した黄色度のことをいう。YIが大きいほど黄色度は強く、YIが小さいほど黄色度は弱いことを示す。
【0046】
<MI>
本発明の樹脂組成物は、190℃、2.16kgfの条件で測定したメルトインデックス(MI)が、0.1〜10.0(g/10分)であることが好ましい。MIが0.1(g/10分)未満である場合には、成形加工に必要な流動性が得られず、10.0(g/10分)を超える場合には、加工安定性が低下し、厚さや幅など形状の制御が困難になり、最終成形品に偏肉が生じることがある。MIは0.5〜8.0であることがより好ましく、1.0〜7.0であることがさらに好ましい。生分解性ポリエステル樹脂(A)、無機充填材(B)、鎖延長剤(C)の組み合わせや添加量を適切に選ぶことで、樹脂組成物のMIを上記範囲に調節することができる。
【0047】
<製造方法>
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。
生分解性ポリエステル樹脂(A)に、無機充填材(B)および鎖延長剤(C)を添加する方法としては、生分解性ポリエステル樹脂(A)の重合時に添加する方法、溶融混練時に添加する方法などが挙げられる。なかでも、製造工程が簡略化できる、あるいは、無機充填材(B)、鎖延長剤(C)を添加した樹脂組成物の熱劣化を少しでも低減するという理由により、溶融混練時に添加することが好ましい。なお、溶融混練時に添加する場合には、無機充填材(B)と、鎖延長剤(C)とを予めドライブレンドしておいてから一般的な混練機に供給する方法や、サイドフィーダーを利用して混練の途中から添加する方法や、液体の場合には定量供給ポンプを用いて液注する方法などが挙げられる。無機充填材(B)と、鎖延長剤(C)とは、同時に供給してもよいし、別々に供給しても構わないが、無機充填材(B)の分散性を向上させるという目的からは、同時、あるいは鎖延長剤(C)を先に樹脂中へ添加することが好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物の製造においては、他の公知の架橋方法を併用しても構わない。例えば架橋剤として多官能イソシアネート化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物および/または過酸化物を添加する方法、あるいは電子線照射により架橋させる方法などが挙げられる。このうち、(メタ)アクリル酸エステル化合物および/または過酸化物を添加する方法は生分解性ポリエステル樹脂組成物の架橋剤として用いられ、結晶化を促進し、耐熱性を改善することができるため好ましい。
【0049】
架橋剤としては、ポリ乳酸樹脂との反応性が高く、モノマーが残りにくく、かつ、毒性が少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または、1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。具体的な化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジメタクリレート、または、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
【0050】
架橋剤の添加量は、生分解性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1質量部である。0.05質量部未満では、結晶化を促進することができず、また、10質量部を超えて添加すると、混練時の操業性が低下する。
【0051】
また過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。
【0052】
過酸化物の添加量は、生分解性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.2〜10質量部である。0.1質量部未満では、目的とする効果が得られず、また、20質量部を超えて添加すると、混練時の操業性が低下する場合がある。
【0053】
溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダーなどの一般的な混練機を使用することができ、添加剤の分散性向上のためには二軸押出機を使用することが好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、顔料、染料、耐光剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、有機充填材、本発明で規定した以外の分散剤、末端封鎖剤、充填材などを添加してもよい。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物を使用することができる。これらの添加剤は一般に溶融混練時あるいは重合時に加えられる。
結晶核剤としては、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩などが挙げられる。
有機充填材としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維、絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤもしくはラクダなどの動物繊維、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末・微粒子、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、単糖類、澱粉などの多糖類、籾殻、木材チップ、おから、モミ殻、フスマ、古紙粉砕材、衣料粉砕材やこれらの変性品などの、繊維状、粉末状もしくはチップ状の有機充填材が挙げられる。
【0055】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、脂肪族ジカルボン酸、その共重合体、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびそれらの共重合体などの、非生分解性樹脂を添加してもよい。
【0056】
<成形体>
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形などの公知の成形方法により、各種成形体とすることができる。なお、成形機において樹脂を十分に溶融混練することができるのであれば、成形機に、生分解性ポリエステル樹脂(A)と無機充填材(B)と鎖延長剤(C)とを添加することによって、成形機内で樹脂組成物を製造し、続いて成形してもよい。すなわち、一台の成形機で樹脂組成物の製造と成形体の製造とを連続して実施してもよい。
射出成形法としては、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形法、射出プレス成形法などを採用できる。射出成形時のシリンダ温度は、樹脂組成物の融点(Tm)または流動開始温度以上であることが必要であり、好ましくは180〜230℃、さらに好ましくは190〜220℃の範囲である。成形温度が低すぎると、樹脂の流動性の低下により成形不良や装置の過負荷に陥りやすい。逆に成形温度が高すぎると、生分解性ポリエステル樹脂が分解し、成形体の強度低下、着色などの問題が発生する。一方、金型温度に関しては、樹脂組成物のTg(ガラス転移温度)以下とする場合には、好ましくは(Tg−10℃)以下である。また、剛性、耐熱性向上を目的として樹脂組成物の結晶化を促進するために、金型温度を、Tg以上かつ(Tm−30℃)以下とすることもできる。
【0057】
ブロー成形法としては、例えば原料チップから直接成形を行うダイレクトブロー法や、まず射出成形で予備成形体(有底パリソン)を成形後にブロー成形を行う射出ブロー成形法などが挙げられる。また予備成形体の成形後に連続してブロー成形を行うホットパリソン法、いったん予備成形体を冷却し取り出してから再度加熱してブロー成形を行うコールドパリソン法のいずれの方法も採用できる。
【0058】
押出成形法としては、Tダイ法、丸ダイ法などを適用することができる。押出成形温度は樹脂組成物の融点(Tm)以上または流動開始温度以上であることが必要であり、好ましくは180〜230℃、さらに好ましくは190〜220℃の範囲である。成形温度が低すぎると、操業が不安定になったり、過負荷に陥ったりしやすい。逆に成形温度が高すぎると、生分解性ポリエステル成分が分解し、押出成形体の強度低下や着色などの問題が発生する。押出成形により、シートやパイプなどを作製することができる。
【0059】
押出成形法により得られたシートまたはパイプの具体的用途としては、深絞り成形用原反シート、バッチ式発泡用原反シート、クレジットカードなどのカード類、下敷き、クリアファイル、ストロー、農業・園芸用硬質パイプなどが挙げられる。また、シートは、さらに、真空成形や、圧空成形や、真空圧空成形などの深絞り成形を行うことで、食品用容器、農業・園芸用容器、ブリスターパック容器、プレススルーパック容器などを製造することができる。
深絞り成形温度および熱処理温度は、(Tg+20℃)〜(Tg+100℃)であることが好ましい。深絞り温度が(Tg+20℃)未満では深絞りが困難になり、逆に深絞り温度が(Tg+100℃)を超えると、生分解性ポリエステル成分が分解して、偏肉が生じたり、配向がくずれて耐衝撃性が低下したりする場合がある。
食品用容器、農業・園芸用容器、ブリスターパック容器、プレススルーパック容器の形態は、特に限定されないが、食品、物品、薬品などを収容するためには、深さ2mm以上に深絞りされていることが好ましい。容器の厚さは、特に限定されないが、強力の点から、50μm以上であることが好ましく、150〜500μmであることがより好ましい。
食品用容器の具体例としては、生鮮食品のトレー、インスタント食品容器、ファーストフード容器、弁当箱などが挙げられる。農業・園芸用容器の具体例としては、育苗ポットなどが挙げられる。ブリスターパック容器の具体例としては、食品以外にも事務用品、玩具、乾電池などの多様な商品群の包装容器が挙げられる。
【0060】
本発明の樹脂組成物を用いて製造されるその他の成形品としては、皿、椀、鉢、箸、スプーン、フォーク、ナイフなどの食器、流動体用容器、容器用キャップ、定規、筆記具、クリアケース、CDケースなどの事務用品、台所用三角コーナー、ゴミ箱、洗面器、歯ブラシ、櫛、ハンガーなどの日用品、プラモデルなどの各種玩具類、エアコンパネル、各種筐体などの電化製品用樹脂部品、バンパー、インパネ、ドアトリムなどの自動車用樹脂部品などが挙げられる。
なお、上記流動体用容器の形態は、特に限定されないが、流動体を収容するためには深さ20mm以上に成形されていることが好ましい。容器の厚さは、特に限定されないが、強力の点から、0.1mm以上であることが好ましく、0.1〜5mmであることがより好ましい。流動体用容器の具体例としては、乳製品や清涼飲料水や酒類などのための飲料用コップおよび飲料用ボトル、醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、食用油などの調味料の一時保存容器、シャンプー、リンスなどの容器、化粧品用容器、農薬用容器などが挙げられる。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、繊維とすることもできる。その製造方法は、特に限定されないが、溶融紡糸し、延伸する方法が好ましい。溶融紡糸温度としては、160℃〜260℃が好ましい。160℃未満では溶融押出しが困難となる傾向にあり、一方、250℃を超えると分解が顕著となって、高強度の繊維を得られ難くなる傾向にある。溶融紡糸した繊維糸条は、目的とする繊維径となるようにTg以上の温度で延伸させるとよい。
上記方法により得られた繊維は、衣料用繊維、産業資材用繊維、短繊維不織布などとして利用される。
本発明の樹脂組成物は、長繊維不織布に展開することもできる。その製造方法は、特に限定されないが、樹脂組成物を高速紡糸法により紡糸して得られる繊維を堆積した後ウェッブ化し、さらに熱圧接などの手段を用いて布帛化する方法を挙げることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
<評価方法>
下記の実施例および比較例の評価に用いた方法は、次のとおりである。
(1)メルトインデックス(MI:単位[g/10分])
JIS K7210にしたがい、付属書A表1のDの条件(190℃、21.2N[2.16kgf])にて測定した。
(2)成形性
射出ブロー成形機(日精ASB機械社製「ASB−50TH」、ホットパリソン法)を用いて、樹脂組成物をシリンダ設定温度200℃で溶融して10℃の金型に充填し、10秒間冷却して3.5mm厚の予備成形体(有底パリソン)を得た。これを120℃のヒーターで加熱した後、20℃に設定された金型に入れ、圧力空気3.5MPaの条件下でブロー成形し、内容積350ミリリットル、平均厚み0.4mmのボトル容器を作製し、成形時の状況を確認した。有底パリソン成形時に、ドローダウンが発生し、ブロー後のボトルに偏肉が生じる、あるいは肩部に皺状の成形ムラが確認された場合を成形性不良(×)とした。ドローダウンや偏肉の無いものを成形性良好(○)と評価した。
(3)耐熱性
上記(2)で得られたボトルに水を充填して密栓して55℃の熱風乾燥機中で1週間保存後の形状変化により評価した。容器が変形しなかったものを耐熱性良好(○)と評価し、変形や歪みが生じたものを耐熱性不良(×)と評価した。
(4)色調(YI)
日本電色工業社製の色差計Z−Σ90を用いた。1.5mm×3mm角のペレットを、12mm×30mmφのガラスセルに充填して測定した。
(5)透明性(ヘーズ)
JIS K−7136に従い、樹脂組成物にて形成された厚さ1mmのプレスシートに対して測定を行った。すなわち、樹脂組成物にテスター産業社製の卓上テストプレス機を使用し、190℃で約3分間プレスして、成形体として厚さ1mmのプレスシートを作製した。このプレスシートについて、日本電色工業社製 NDH−2000型 濁度・曇り度計を用いて、測定を行った。
(6)分散性(外観目視)
上記(5)で作製したプレスシートの目視評価を行い、ゲルや凝集物があるものを不良(×)、無機充填材が均一に分散されたものを良(○)、凝集物がほとんど確認できないものを最良(◎)とした。
【0064】
<原料>
次に、下記の実施例、比較例において用いた各種原料を示す。
(1)生分解性ポリエステル樹脂(A)
・PLA1:NatureWorks製ポリ乳酸、重量平均分子量(MW)=123,000、融点=166℃、D体含有率=1.3モル%、MI=8.0(g/10分)
・PLA2:NatureWorks製ポリ乳酸、重量平均分子量(MW)=170,000、融点=169℃、D体含有率=1.3モル%、MI=3.5(g/10分)
【0065】
(2)無機充填材(B)
・MEE:板状層状珪酸塩。層間イオンがジヒドロキシエチルメチルドデシルアンモニウムイオンで置換された膨潤性合成フッ素雲母(コープケミカル社製、ソマシフMEE、平均粒径6.2μm)
・SBW:板状層状珪酸塩。層間イオンがジオクタデシルジメチルアンモニウムイオンで置換されたモンモリロナイト(ホージュン社製、エスベンW)
・タルク:板状無機充填材。(林化成製、MW−HS−T、平均粒径2.7μm)
【0066】
(3)エポキシ官能性鎖延長剤(C)
・ADR−4300:エポキシ基含有スチレン―アクリル系共重合体。エポキシ当量=445g/mol、重量平均エポキシ官能基数(EFW)=12.3、ガラス転移温度=56℃、重量平均分子量(Mw)=5,500。(BASF社製、JONCRYL−ADR4300)
・ADR−4368:エポキシ基含有スチレン―アクリル系共重合体。エポキシ当量=285g/mol、重量平均エポキシ官能基数(EFW)=23.9、ガラス転移温度=54℃、重量平均分子量(Mw)=6,800。(BASF社製、JONCRYL−ADR4368)
【0067】
(4)低分子量エポキシ化合物
・EX−810:エチレングリコールジグリシジルエーテル。エポキシ当量=113g/mol、重量平均エポキシ官能基数(EFW)=1.5、液体、分子量=174g/mol。(ナガセケムテックス社製、デナコールEX−810)
【0068】
(5)分散剤(D)
・ポリエーテルリン酸エステル:ディスパロンDA375(楠本化成製)
・ソルビタン脂肪酸エステル:ソルビタントリステアレート(理研ビタミン社製、ポエムS−65V)
・グリセリン脂肪酸エステル:グリセリンアセトカプリレート(理研ビタミン社製、リケマールPL−019)
【0069】
(6)ホスファイト系酸化防止剤(E)
・PEP36:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(ADEKA社製、アデカスタブPEP36)
【0070】
(7)末端封鎖剤(F)
・EN160:N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、純度98.8%(松本油脂製薬製、EN−160)
・LA−1:ポリカルボジイミド(日清紡製、カルボジライトLA−1)
【0071】
実施例1
99質量部のPLA1と、1質量部のMEEと、0.5質量部のADR−4300とをドライブレンドし、上記の押出機(池貝社製PCM−30型二軸押出機、スクリュー径=30mmφ、平均溝深さ=2.5mm)を用いて、190℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練を行い、押出し、ペレット状に加工し、乾燥して、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物のペレットを用いてMI、YIを測定した。ペレットをプレスシートに成形して、透明性、分散性の評価を行った。さらにブローボトルを成形して、成形性、耐熱性の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0072】
実施例2〜10
樹脂組成物の組成を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様として、樹脂組成物を得て評価を行った。その結果を表1に示す。
また、実施例9の樹脂組成物を用いて、最終金型を120℃に設定した以外は同様の方法で、高温金型ブロー成形し、内容積350ミリリットル、平均厚み0.4mmのボトル容器を作製し、成形時の状況を確認した。
【0073】
比較例1、2
生分解性ポリエステル樹脂(A)のみを用いて、樹脂組成物を得て評価を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
比較例3
無機充填材(B)を添加せずに、同様の混練を行い、樹脂組成物を得て評価を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
比較例4
鎖延長剤(C)の代わりにEX−810を使用した以外は同様の混練を行い、樹脂組成物を得て評価を行った。その結果を表1に示す。
【0076】
比較例5、6
鎖延長剤(C)の添加量を変えた以外は同様の混練を行い、樹脂組成物を得て評価を行った。その結果を表1に示す。
【0077】
比較例7
鎖延長剤(C)を添加しなかった以外は同様の混練を行い、樹脂組成物を得て評価を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例1〜10の樹脂組成物は、適切な鎖延長剤(C)を含有しているため原料の生分解性ポリエステル樹脂(A)より溶融粘度が向上しており、成形性は良好であった。さらに、無機充填材(B)が添加されているので、得られたボトルの耐熱性も良好であった。
実施例2〜10の樹脂組成物には、分散剤(D)が添加されているため、凝集物が少なく良好な外観を示しており、特に実施例2〜9の樹脂組成物においてはほとんど凝集物が見えず良好な透明性を有していた。
実施例7〜8の樹脂組成物には、ホスファイト系酸化防止剤(E)が添加されているため、酸化防止剤未添加の樹脂組成物(実施例5〜6)に比べてYIは低くなり、外観を改善することができた。また、実施例9の樹脂組成物では末端封鎖剤(F)を添加しているため、末端封鎖剤未添加の樹脂組成物(実施例8)に比べて、MIが低くなっていることから混練による分子量低下を抑制しながら増粘することができた。
実施例9の樹脂組成物を、高温金型を用いてブロー成形を実施したところ、無機充填材(B)により耐熱性が向上し、鎖延長剤(C)により粘度が適切に調整されているのでドローダウンや偏肉がなく、さらに高温金型による熱収縮も無い、形状の良好なボトルが得られた。また、分散剤(D)を添加してあるため無機充填材(B)の分散性が良好で、ボトル胴部の透明性は良好だった。さらに酸化防止剤(E)と末端封鎖剤(F)とが添加されているため、色調も良好であった。
【0080】
これに対し比較例1〜7の樹脂組成物は、良好な成形性、耐熱性、および外観を併せ持つものはなかった。すなわち、比較例1〜3は無機充填材(B)を含んでいないため、耐熱性が得られなかった。比較例4は鎖延長剤(C)が適切でないため、溶融粘度が向上せず、成形性が悪かった。また、得られたボトルは偏肉が生じていたため、耐熱性も不十分であった。比較例5は鎖延長剤(C)の添加量が少ないため溶融粘度がほとんど向上せず、成形性を改善できなかった。比較例6では鎖延長剤(C)の添加量が多すぎて過度に高粘度化してしまい、MI測定、ブロー成形を実施することができなかった。比較例7では、鎖延長剤(C)未添加のため、成形性を改善することができず、比較例4と同様に成形性、耐熱性ともに不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリエステル樹脂(A)と、無機充填材(B)と、重量平均エポキシ官能基数が3以上であるエポキシ官能性鎖延長剤(C)とを含有するポリエステル樹脂組成物であって、(A)と(B)の質量比率(A/B)が、99.9/0.1〜80/20であり、(C)の含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
生分解性ポリエステル樹脂(A)が、ポリ乳酸を50質量%以上含有したものであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
無機充填材(B)が、板状無機充填材であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
鎖延長剤(C)の重量平均エポキシ官能基数が3〜30であり、ガラス転移温度が0〜70℃であり、エポキシ当量が180〜2800g/molであり、かつ重量平均分子量が2,000〜40,000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
鎖延長剤(C)が、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーと、非官能性(メタ)アクリルモノマーおよび/またはスチレンモノマーとから生成したコポリマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエーテルリン酸エステル、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル、極性ワックスの中から選ばれる少なくとも1種の分散剤(D)を含有し、その含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.1〜15質量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
ホスファイト系酸化防止剤(E)を含有し、その含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
末端封鎖剤(F)を含有し、その含有量が、(A)と(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
190℃、2.16kgfで測定したメルトインデックス(MI)が0.1〜10.0(g/10分)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
YIが30以下であり、厚み1mmの成形体としたときのヘーズが50%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
溶融混練時に、生分解性ポリエステル樹脂(A)に、無機充填材(B)と、鎖延長剤(C)とを添加することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。

【公開番号】特開2009−79124(P2009−79124A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249229(P2007−249229)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】