説明

生分解性軟質シート

【課題】カレンダー成形法によるシート成形に好適で、かつ柔軟性を有し、しかも耐ブロッキング性に優れた生分解性軟質シートの提供。
【解決手段】生分解性樹脂成分100質量部に対して5〜50質量部の可塑剤成分を含む厚さ0.1〜1.0mmの可撓性シートにおいて、生分解性樹脂成分が(a)ポリ乳酸樹脂25〜75質量%、(b)ポリ乳酸樹脂(a)とは異なる脂肪族ポリエステル樹脂19〜70質量%、及び(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂1〜15質量%の不可欠3成分を含み、さらに、必要により可塑剤成分の一部を吸着する無機多孔質粒子を含ませ、及び/又は可撓性シートを、生分解性布帛からなる基布上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性及び可撓性を有する生分解シートに関するものであり、更に詳しく述べるならばカレンダー成形によって形成し得る可撓性シートを含む生分解性シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生分解性樹脂を含む商品として、ラッピングフィルム、コンポストバッグ及び農業用マルチフィルム等が提供され、普及し始めている。これらフィルム成形物に用いられる生分解性樹脂としては、例えばバイオマス原料由来のポリ乳酸樹脂、並びに、例えばポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート及びポリカプロラクトなどの石油原料由来の脂肪族ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらの生分解性樹脂はポリエチレン、ポリプロピレン、軟質塩化ビニル等のような、汎用熱可塑性樹脂に比べて、加工温度領域が狭く、特にフィルム成形においては、その成形温度において成形機の金属ロールに粘着するという問題点があり、このためカレンダー成形法による、シート及びフィルムの成形は困難なものとされていた。
【0003】
また、従来の前記生分解性樹脂は、総じて剛直であるため、成形されたシートは可撓性に乏しく、またフィルムの折曲部分が白化してチョークマーク痕となって残るという問題点があり、従って、これらの用途に制限があった。そこで生分解性樹脂の柔軟性及び可撓性を向上させ、かつチョークマークを無くす方法として、可塑剤成分の添加が試みられた。しかし、樹脂又は可塑剤成分の種類によっては、可塑化効果が十分ではなく、また可塑剤成分を配合しても経時的に可塑剤成分がシート表面にブリードし、実用に支障をきたすなどの問題点が認められた。また、可塑剤成分は、特に非晶性生分解性樹脂に対して相溶性があるが、この組み合わせでは成形時に溶融張力が極度に低いため、成形加工が困難であり、また成形体が得られても、その表面のタック性が強いので、巻き取り状態にするとブロッキングを発生するという問題があった。また、数種類の生分解性樹脂を組み合わせて得られる組成物を用いることによって柔軟性を有するフィルムを提供する方法(特開2003−1704号公報、特許文献1)が開示されている。この組成物はインフレーション法によるフィルム形成には有効であるが、カレンダー成形法には適さないものであった。一方、ポリ乳酸樹脂に変性オレフィン化合物及び/又はシンジオタクティックポリプロピレンを添加することによりポリ乳酸の軟質化を図る方法(特開平9−316310号公報、特許文献2、特開2001−123055号公報、特許文献3、特開平10−251498号公報、特許文献4)が開示されているが、これらの方法では、変性オレフィン化合物及び/又はシンジオタクティックポリプロピレンか多量に混用されるために、ポリ乳酸樹脂の生分解性が十分に発揮されないという欠点を有していた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−1704号公報
【特許文献2】特開平9−316310号公報
【特許文献3】特開2001−123055号公報
【特許文献4】特開平10−251498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カレンダー成形法によるシート成形に好適であって、かつ柔軟性・可撓性及び耐ブロッキング性に優れた生分解性軟質シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生分解性軟質シートは、生分解性樹脂成分と、その100質量部に対して5〜50質量部の可塑剤成分とを含み、かつ、0.1〜1.0mmの厚さを有する可撓性シートを含み、
前記生分解性樹脂が(a)25〜75質量%のポリ乳酸樹脂、(b)19〜70質量%の前記ポリ乳酸とは異なる脂肪族ポリエステル樹脂、及び(c)1〜15質量%の脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂からなる
ことを特徴とするものである。
本発明の生分解性軟質シートにおいて、前記可撓性シートが、さらに無機多孔質粒子を含み、前記可塑剤成分の一部が、前記無機多孔質粒子に吸着していてもよい。
本発明の生分解性軟質シートの前記可撓性シートにおいて、前記可塑剤成分の50質量%以上が、オキシ酸エステル系化合物からなることが好ましい。
本発明の生分解性軟質シートにおいて、前記可撓性シートが、さらに有機化された層状ケイ酸塩を含んでいてもよい。
本発明の生分解性軟質シートにおいて、前記可撓性シートが、さらに生分解性布帛を含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の生分解性軟質シートの可撓性シートは(a).ポリ乳酸樹脂、(b).(a)とは異なる脂肪族ポリエステル樹脂、及び(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂の3種成分を含有する生分解性樹脂を含むものである。このうち(a)ポリ乳酸樹脂としては、L−乳酸体および/またはD−乳酸体を主たる構成成分とする重合体を用いることができ、その製造方法には制限はない。特にD体含有量に富む非晶性のポリ乳酸樹脂は、可塑剤成分との相溶性に優れるため、本発明に好ましく用いられる。また、ポリ乳酸樹脂(a)は、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸と、それとは異なるモノマーとの共重合体を包含する。このようなポリ乳酸樹脂の具体例としては、三井化学(株)製「商標:レイシア H−280」、(株)島津製作所製「商標:ラクティー5000」、東洋紡績(株)製「商標:バイロエコロールBE−400」などが挙げられる。これらのポリ乳酸樹脂(a)は、ガラス点移転が約60℃であって、室温以上であるため、常温では剛直なガラス状態であって、これをフィルム又はシートに成形しても硬く、可撓性の低いものしか得ることができない。また、これらのポリ乳酸樹脂(a)に可塑剤成分を添加した場合、軟質化に伴い、シート表面のタック感が増し、耐ブロッキング性が低下するという問題を発生する。更にポリ乳酸樹脂(a)を軟質化すると、溶融張力が極度に低下するため、それをカレンダー成形することは一層困難になるという弊害が発生する。
【0008】
また、本発明に用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(b)は、ポリ乳酸樹脂とは異なるものであって、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを種々の組み合わせで重縮合させることにより製造され、例えばポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジベート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・カーボネート、ポリエチレンセバケート、ポリカプロラクトン等を包含する。脂肪族ポリエステル樹脂(b)には、それが生分解性を有するものである限り、特に限定はない。これらの脂肪族ポリエステル樹脂(b)は一般的にはアジペート基が導入されたものが分子内の可撓性が高く、かつ生分解性も向上するので、本発明に好ましく用いられる。これらの脂肪族ポリエステル樹脂(b)の融点は80〜140℃の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは90〜125℃である。このような脂肪族ポリエステル樹脂(b)の具体例としては、(株)日本触媒製「商標:ルナーレSE−P5000(ポリエチレンサクシネート・アジペート)」、昭和高分子(株)製「商標:ビオノーレ3000(ポリブチレンサクシネート・アジペート)」、(株)利来化学製「商標:Enpol4000(ポリブチレンサクシネート・コ・アジペート)」が挙げられる。これらの脂肪族ポリエステル樹脂(b)それ自身は、可塑剤成分添加の効果が低く、結晶性が高く、ブリードもし易いものである。更に脂肪族ポリエステル樹脂(b)のフィルム又はシートには、その形成直後の冷却時に寸法収縮するという問題がある。
【0009】
本発明に用いられる脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(c)は、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールとを種々組み合わせて重縮合することによって製造されるポリエステル樹脂であって、それが、生分解性を有するものである限り特に制限はないが、例えばポリブチレンアジペート・テレフタレート、ポリブチレンアジペート・コ・テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート・コ・テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・サクシネート、及びポリエチレンテレフタレート・コ・サクシネート等を包含する。これらの脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(c)の融点は80〜130℃の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは90〜115℃である。このような脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(c)の具体例としては、BASF(株)製「商標:エコフレックス(ポリブチレンアジペート・テレフタレート)」、(株)利来化学製「商標:EnPol8000(ポリブチレンアジペート・コ・テレフタレート)」が挙げられる。これらの脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(c)それ自身は金属ロールに粘着し易く、カレンダー成形には適さない樹脂である。
【0010】
そこで、例えばポリ乳酸樹脂(a)と脂肪族ポリエステル樹脂(b)を混合して得られた混合樹脂成分に、可塑剤成分を添加するという従来技術では、柔軟性・耐ブロッキング性の高い生分解性軟質シートが得られるが、ポリ乳酸樹脂(a)と脂肪族ポリエステル樹脂(b)との相溶性が低いため、前記添加混合物の加工性が悪く、得られたシートの強度及び引裂強度が不十分であるなどの欠点があり、実用性に乏しいものであった。そこで本発明においては、上述の配合(a)+(b)に脂肪族 - 芳香族コポリエステル樹脂(c)をさらに添加することによりポリ乳酸樹脂(a)と脂肪族ポリエステル樹脂(b)との相溶性を向上させ、カレンダー成形時のバンク回り性を改善し、良好なシート成形性を得ることに成功したものであって、その結果、柔軟性・耐ブロッキング性に優れた生分解性軟質シートを提供することが可能になったのである。したがって、本発明の課題を達成するには上述の樹脂(a),(b)及び(c)3成分の混合が不可欠なのである。
【0011】
本発明の生分解性軟質シートは(I).生分解性樹脂成分100質量部に対して5〜50質量部の可塑剤成分を含み、かつ、0.1〜1.0mmの厚さを有する可撓性シートである。また前記生分解性樹脂はポリ乳酸樹脂(a)25〜75質量%、前記ポリ乳酸とは異なる脂肪族ポリエステル樹脂(b)19〜70質量%、及び脂肪族 - 芳香族コポリエステル樹脂(c)1〜15質量%の3成分からなるものである。好ましい例としては(II).生分解性樹脂成分100質量部に対して7〜45質量部の可塑剤成分を含み、かつ、0.15〜0.7mmの厚さを有する可撓性シートであって、前記生分解性樹脂がポリ乳酸樹脂(a)30〜70質量%、前記ポリ乳酸とは異なる脂肪族ポリエステル樹脂(b)25〜65質量%、及び脂肪族 - 芳香族コポリエステル樹脂(c)3〜12質量%の範囲にあるものである。特に好ましい例としては(III ).生分解性樹脂成分100質量部に対して10〜40質量部の可塑剤成分を含み、かつ、0.18〜0.5mmの厚さを有する可撓性シートであって、前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸樹脂(a)35〜65質量%、前記ポリ乳酸とは異なる脂肪族ポリエステル樹脂(b)30〜60質量%、及び脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(c)5〜10質量%の範囲内にあるものである。特に前記生分解性軟質シート(I)〜(III )は、成形性、柔軟性、外観品位、等に優れたシートである。これら生分解性軟質シート(I)〜(III )において、可塑剤成分の含有量が50質量部を超えると可塑剤成分のブリードが生じやすくなり、更に溶融張力が低下するため、成形加工性が低下する。また可塑剤成分の含有量が5質量部未満では、得られるシートが堅くなりチョークマークが目立という問題を生ずることがある。またポリ乳酸樹脂(a)の配合割合が75質量%を超えると、得られるシートの変形復元力が低下し、またシート表面にタック感が目立つようになり、更に溶融張力が低下するため、成形加工性が低下する。また、ポリ乳酸成分(a)の含有量が25質量%未満では、得られるシートが堅くなり、チョークマークが目立つという問題を生ずる。また脂肪族ポリエステル樹脂(b)の配合割合が70質量%を超えると、樹脂冷却時の寸法安定性が低下し、更にシートが硬くなるという問題を生ずる。またそれが19質量%未満では、得られるシートの変形復元力が低下し、更にシート表面にタック感が目立つという問題を生ずる。また脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(c)の配合割合が15質量%を超えると、得られるシートの金属ロール離型性が低下し、またそれが1質量%未満では、混合樹脂の溶融混練時のバンク回り性が不良となり、得られるシート表面の荒れ、裂けが目立つという問題を生ずる。
【0012】
本発明の生分解性軟質シートには、無機多孔質粒子が含まれていてもよく、このとき無機多孔質粒子は可塑剤成分の一部を吸着していることが好ましい。無機多孔質粒子への可塑剤成分の吸着は、生分解性軟質シートの製造工程で容易に実施することができ、これにより可塑剤成分を生分解性樹脂中に封じ込めることを容易とし、さらに可塑剤成分のブリードを軽減させる効果を得ることができる。このような効果を有する無機多孔質粒子としては、樹脂用添加剤として用いられるものが挙げられ、シリカ、ゼオライト、ハイドロカルマイト、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等を包含する。これら無機多孔質粒子は1種のみで用いられてもよく、或は2種以上を混合して使用することも可能である。これらの粒子径には特に制限はないが、平均粒子径が50μm以下のものが好ましく、更に好ましくは30μm以下である。無機多孔質粒子の添加量は、質量比で、可塑剤成分1に対し0.25〜1の割合であれば上述の効果を得ることができるが、特に好ましくは可塑剤成分1に対し0.35〜0.8の割合で用いられる。無機多孔質粒子の含有割合が高すぎると、カレンダー成形時において、得られるシートの金属ロール離型性が低下し、またそれが低すぎると可塑剤成分の吸着量が不足して、可塑剤成分の加工機投入が困難となり、また可塑剤成分のシート表面へのブリードトラブルを生ずることがある。
【0013】
本発明で使用する可塑剤成分としては、その50質量%以上がオキシ酸エステル系化合物であることが好ましく、オキシ酸エステル化合物100質量%からなることがより好ましい。可塑剤成分中にオキシ酸エステル系化合物と併用される可塑剤としては、市販品から特に制限なく選択することができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤等、が挙げられる。これら併用可塑剤は1種であってもよく、また2種以上を混合して使用することも可能である。可塑剤成分中に50質量%以上含まれるオキシ酸エステル系化合物としては、例えばアセチル化モノグリセライド、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。そのような可塑剤成分の具体例としては、理研ビタミン(株)製「商標:リケマールPL−019(グリセリンジアセトモノラウレート)」、「商標:ポエムG−038(グリセリンジアセトモノオレート)」、荒川化学工業(株)製「商標:ラクトサイザー GP−4001(乳酸エステル)が挙げられる。可塑剤成分の添加量としては、生分解性樹脂成分(a)+(b)+(c)の合計量100質量部に対して5〜50質量部であり、好ましくは7〜45質量部であり、さらに好ましくは10〜40質量部である。可塑剤成分の添加量が50質量部を超えるとカレンダー成形に必要な溶融張力が低下して成形加工性が不十分になる。また、その添加量が5質量部よりも少ない場合には、十分な柔軟性付与効果を得ることができない。
【0014】
また、本発明の生分解性樹脂成分に有機化された層状ケイ酸塩を配合してもよく、このようにすることによって、本発明のシートの高温雰囲気下でのブロッキングを防ぎ、かつカレンダー成形時においては良好な寸法安定性を付与することができる。有機化された層状ケイ酸塩としては、溶融混練時に本発明の生分解性樹脂成分中で層間剥離して分散するものであれば特に制限がないが、例えばモンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトナイト、カオリナイト、スティブンサイト、バイデライト、ハイドロタルサイト、バーミキュライト、ハロサイト等を用いることができ、特にこれらの層状ケイ酸塩の層間に存在する交換性カチオンが、有機カチオンで置換され、層表面が疎水性に変性されたものを用いることが好ましい。このような有機化された層状ケイ酸塩の具体例としては、ズードケミー触媒(株)製の「商標:ナノフィル15(疎水性有機変性モンモリロナイト)」が挙げられる。これらの有機化された層状ケイ酸塩は一種のみ用いられてもよく、また2種以上を混合して使用することも可能である。有機化層状ケイ酸塩の平均層間距離は40Å以下で、完全に層間剥離したときの平均アスペクト比が50以上であることが好ましく、さらに好ましくは平均層間距離35Å以下で完全に層間剥離したときのアスペクト比が100以上であることである。有機化層状ケイ酸塩の添加量としては、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜7質量部であり、更に好ましくは1.0〜5.0質量部である。その添加量が10質量部を超えると、カレンダー成形時において得られるシートの金属ロール離型性が損なわれることがあり、また添加量が0.1質量部よりも少ない場合には、十分なブロッキング防止効果及び寸法安定性効果を得ることができないことがある。
【0015】
また、本発明の生分解性軟質シートは、基布を含む積層体であってもよい。基布は生分解性を有する繊維材料によって構成された布帛であることが好ましく、これらの繊維材料は綿、絹、麻、ケナフ、カポック、羊毛、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、レーヨン、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、セルロース、アミロース、ポリアスパラギン酸等、が挙げられる。これらの繊維材料はスパンヤーン、フィラメントヤーン、テープヤーン、スプリットヤーン等、のいずれの形状であってもよい。また、基布の組織は、織物、編み物、不織布、またはこれらの複合布であってもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、基布には必要に応じて撥水処理、接着処理、防炎処理を施したものであってもよい。
【0016】
本発明の生分解性軟質シートにおいて、生分解性樹脂成分(樹脂(a)(b)(c)の混合物)に良好なカレンダー成形性を付与するために公知の酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤は加工中の熱による樹脂成分の分子鎖切断で生成される低分子成分が、金属ロールに付着することを防止することができる。そのような酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤を使用することができる。これら酸化防止剤は一種のみで用いられてもよく、また2種以上を併用して使用することも可能である。酸化防止剤の添加量は0.01〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量部である。添加量が過多であると酸化防止剤がブリードすることがあり、またそれが過少であると目的の効果が得られないことがある。
【0017】
さらに、カレンダー成形法において金属ロールと生分解性樹脂成分(樹脂(a)(b)(c)の混合物)との離型性を向上させるために滑剤を添加することが好ましい。そのような滑剤としては、例えばステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックス等の長鎖エステルワックスである脂肪酸エステル系滑剤、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン等の脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸ナトリウム等の金属石鹸系滑剤、ステアリン酸、ラウリル酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油等の脂肪酸系滑剤、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤等、を用いることができる。これらの滑剤は一種のみで用いられてもよく、また2種以上を併用して使用することも可能である。滑剤の添加量は0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜7質量部である。添加量が過多であると滑剤がブリードすることがあり、またそれが過少であると目的の効果が得られないことがある。本発明の生分解性軟質シートには、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤を必要に応じて添加してもよい。そのような添加剤としては紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、防炎剤、発泡剤、撥水剤、撥油剤、充填剤、防曇剤、防霧剤、防臭剤、防カビ剤、抗菌剤、核剤、除草剤、帯電防止剤、架橋剤、加水分解防止剤、水分除去剤、自動酸化劣化促進剤等を挙げることができる。
【0018】
本発明の生分解性軟質シートを成形する生分解性樹脂成分(樹脂(a)(b)(c)の混合物)は、カレンダー成形が可能であり、またカレンダー成形法に適したものであるが、カレンダー成形法以外に射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法等でも成形可能である。本発明の生分解性軟質シートをカレンダー成形法にてシート成形するに際し、可塑剤成分を生分解性樹脂成分(樹脂(a)(b)(c)の混合物)に配合混練するには、予め可塑剤成分を無機多孔質粒子に吸着させたものを使用することが好ましい。このようにすることにより、液状の可塑剤成分を、生分解性樹脂成分(樹脂(a)(b)(c)の混合物)中に、効率よく配合することが可能となる。また必要に応じて本発明の生分解性軟質シートの表面には、シート表面を改質するための熱可塑性樹脂層を設けることができる。
【実施例】
【0019】
本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により制限されるものではない。
評価方法の説明
直径6インチの二本ロール機をカレンダー成形の評価機として用いて、実施例及び比較例の組成物の混練及びシート成形を行い、離型性、表面状態、寸法安定性、を評価した。また成形したシートを用いて柔軟性、ブロッキングの有無を評価した。
離型性
シートの厚さが0.25mmになるように金属ロールのロールギャップを設定し、混練した樹脂成分の金属ロール表面からの剥がれ易さで評価した。
4 : 非常に剥がれ易くカレンダー成形に適している。
3 : 剥がれ易いがカレンダー成形の条件が狭い。
2 : 粘着性があり金属ロール表面が汚れてしまい、カレンダー成形に適さない。
1 : 強い粘着を示し、金属ロールに張り付いてしまいカレンダー成形不能である。
表面状態
混練中の樹脂成分表面の荒れ、裂けの有無を目視にて確認して評価した。
4 : 表面がフラットでカレンダー成形に適している。
3 : 表面がフラットであるがカレンダー成形の条件が狭い。
2 : 荒れ、裂けがあり、カレンダー成形に適さない。
1 : 荒れ、裂けが酷く、カレンダー成形不能である。
寸法安定性
シートの厚さが0.25mmになるようにロールギャップを設定し、混練した樹脂成分を金属ロール表面から剥がした際の、シートの寸法変化を評価した。
4 : 収縮や伸びによる寸法変化がなくカレンダー成形に適している。
3 : 収縮や伸びよる寸法変化はないがカレンダー成形の条件が狭い。
2 : 収縮や伸びよる寸法変化があり、カレンダー成形に適さない。
1 : 収縮や伸びよる寸法変化が大きく、カレンダー成形不能である。
柔軟性
成形した0.25mmのシートを、直径10cmの円筒状に丸め、横置した時の直径の変化を評価した。
4 : 自重で円筒体が潰れるほどの柔軟性である。
3 : 自重で円筒体(直径)が半分以下に潰れるほどの柔軟性である。
2 : 自重で円筒体(直径)が半分までに潰れない。(硬い)
1 : 円筒体の潰れが僅かである。(極めて硬い)
耐チョーキング性
成形した0.25mmのシートを360°に2つ折りしたときの折れ曲り部分の白化度合い(チョーキング)を目視にて確認して評価した。
4 : 白化を認めない。
3 : 白化は認めないが、少し曲げ跡が残る。
2 : 白化し、白化痕が元に戻らない。
1 : 白化し、クラックを発生する。または破壊する。
耐ブロッキング性
成形した0.25mmのシートを2枚重ね合わせ、シート同士の接触面に1cm2 あたり約3.4kgの荷重を掛けた状態で40℃のギアーオーブン中に1週間静置した後のシート同士のブロッキング状態を評価した。
4 : 全くブロッキングしないのでカレンダー成形に適している。
3 : 殆どブロッキングしないが、シート厚が薄いとカレンダー成形条件が狭くなる。
2 : ブロッキングを生じるためカレンダー成形(巻取)に適さない。
1 : 強いブロッキングを生じるためカレンダー成形(巻取)不能である。
【0020】
[実施例1]
i)乳酸エステル系可塑剤成分「商標:ラクトサイザーGP−4001(荒川化学工業(株)製)」20質量部と、無機多孔質粒子としてシリカ粒子(平均粒子径:35μm)10質量部とを、小型ブレンダー内で攪拌し、上述の可塑剤成分が吸着したシリカ粒子30質量部を調製した。
ii)成分(a)非晶性ポリ乳酸樹脂「商標:レイシアH−280(三井化学(株)製)」50質量部を165℃に設定した二本ロール機(直径6インチ:ロールギャップ1.0mm)で混練しながら、滑剤(脂肪酸エステル系)2.0質量部と酸化防止剤(ヒンダートフェノール系)1.0質量部を全量添加した。その後、i)で調整した可塑剤成分が吸着したシリカ粒子を少しずつ添加した。全量添加した時点で二本ロール機の金属ロール表面温度が125℃となるように二本ロールの温度調整を行い、可塑剤成分が吸着したシリカ粒子を含む非晶性ポリ乳酸樹脂を調製した。
iii )成分(b)脂肪族ポリエステル樹脂として商標:ルナーレSE−P5000(日本触媒(株)製)42質量部と、成分(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂として商標:エコフレックス(BASF(株)製)8質量部とを、前記工程i)で調製された可塑剤成分が吸着したシリカ粒子を含む非晶性ポリ乳酸樹脂の全量に添加して、これらをさらに混練し、得られた均一混練樹脂組成物を、厚さ0.25mmに圧延成形して、シートを得た。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表1に示す。
【0021】
[実施例2]
実施例1と同一として、厚さ0.25mmに圧延成形したシートを製造した。但し、実施例1で用いられた成分(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂「商標:エコフレックス(BASF(株)製)」の代りに、脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(商標:Enpol8060((株)利来化学製))を用いた。得られたシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表1に示す。
【0022】
[実施例3]
実施例1と同一として、厚さ0.25mmに圧延成形したシートを製造した。但し、実施例1で用いられた成分(b)脂肪族ポリエステル樹脂「商標:ルナーレSE−P5000(日本触媒(株)製)」の代りに、脂肪族ポリエステル樹脂(商標:ビオノーレ1001(昭和高分子(株)製))を用いた。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表1に示す。
【0023】
[実施例4]
実施例1と同様にして、厚さ0.25mmに圧延成形したシートを製造した。実施例1で用いられた乳酸エステル系可塑剤成分(商標:ラクトサイザーGP−4001(荒川化学工業(株)製))の代りに、グリセリンジアセトモノラウレート系可塑剤成分(商標:リケマールPL−019(理研ビタミン(株)製))を用いた。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表1に示す。
【0024】
[実施例5]
実施例1と同様の手順で調製した均一混練樹脂組成物に、有機化された層状ケイ酸塩「商標:ナノフィル15(ズードケミー触媒(株)製)」8質量部と、滑剤(脂肪酸エステル系)3.0質量部とを、追加添加し、この混合物をさらに混練し、厚さ0.25mmに圧延成形してシートを製造した。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表1に示す。
【0025】
[比較例1]
i)乳酸エステル系可塑剤成分(商標:ラクトサイザーGP−4001(荒川化学工業(株)製))40質量部と、無機多孔質粒子(シリカ(平均粒子径:35μm))20質量部とを小型ブレンダー内で攪拌し、上述の可塑剤成分が吸着した無機多孔質粒子60質量部を調製した。
ii)成分(a)非晶性ポリ乳酸樹脂(商標:レイシアH−280(三井化学(株)製))100質量部を165℃に温度設定された二本ロール機(ロールギャップ1.0mm)により混練しながら、これに滑剤(脂肪酸エステル系)2.0質量部と、酸化防止剤(ヒンダートフェノール系)1.0質量部とを添加した。その後、前記工程i)で調製された可塑剤成分が吸着したシリカ粒子を少しずつ添加した。全量添加した時点で二本ロールの金属ロール表面温度が125℃となるように二本ロールの温度調整を行い、これらをさらに混練し、均一混練樹脂組成物から厚さ0.25mmに圧延成形されたシートを製造した。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0026】
[比較例2]
成分(b)脂肪族ポリエステル樹脂(商標:ルナーレSE−P5000(日本触媒(株)製))100質量部を、125℃に温度設定された二本ロール機(ロールギャップ1.0mm)で混練しながら、これに滑剤(脂肪酸エステル系)2.0質量部と酸化防止剤(ヒンダートフェノール系)1.0質量部を混合し、この混合物をさらに混練し、均一混練樹脂組成物から、厚さ0.25mmに圧延成形したシートを製造した。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0027】
[比較例3]
成分(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(商標:エコフレックス(BASF(株)製))100質量部を、125℃に温度設定された二本ロール機(ロールギャップ1.0mm)で混練しながら、これに滑剤(脂肪酸エステル系)2.0質量部と酸化防止剤(ヒンダートフェノール系)1.0質量部とを混合し、この混合物をさらに混練したところ、混練中の樹脂成分が二本ロール機の金属ロール表面に張り付いてしまい評価用の圧延シートを得ることができなかった。
【0028】
[比較例4]
実施例1と同様にして、厚さ0.25mmに圧延成形されたシートを製造した。但し、実施例1で用いた成分(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(商標:エコフレックス(BASF(株)製))8質量部の代りに、成分(b)脂肪族ポリエステル樹脂(商標:ルナーレSE−P5000(日本触媒(株)製))を用いた。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0029】
[比較例5]
実施例1と同様にして、厚さ0.25mmに圧延成形されたシートを製造した。但し、実施例1で用いられた成分(b)脂肪族ポリエステル樹脂(商標:ルナーレSE−P5000(日本触媒(株)製))の使用量42質量部を10質量部に変更し、かつ成分(c)脂肪族 - 芳香族コポリエステル樹脂(商標:エコフレックス(BASF(株)製))の使用量8質量部を40質量部に変更した。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0030】
[比較例6]
成分(a)非晶性ポリ乳酸樹脂(商標:レイシアH−280(三井化学(株)製))50質量部を、165℃に温度設定された二本ロール機(ロールギャップ1.0mm)で混練しながら、これに滑剤(脂肪酸エステル系)2.0質量部と、酸化防止剤(ヒンダートフェノール系)1.0質量部とを混合した。その後、さらに成分(b)脂肪族ポリエステル樹脂(商標:ルナーレSE−P5000(日本触媒(株)製))42質量部と、成分(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(商標:エコフレックス(BASF(株)製))8質量部とを混合し、得られた混合物をさらに混練し、得られた均一混練樹脂組成物を厚さ0.25mmに圧延成形してシートを製造した。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0031】
[比較例7]
i)乳酸エステル系可塑剤成分(商標:ラクトサイザーGP−4001(荒川化学工業(株)製))10質量部と、無機多孔質粒子としてシリカ粒子(平均粒子径:35μm)5質量部とを小型ブレンダー内で攪拌し、上述の可塑剤成分が吸着されたシリカ粒子15質量部を調製した。
ii)成分(b)脂肪族ポリエステル樹脂(商標:ルナーレSE−P5000(日本触媒(株)製))42質量部を125℃に温度設定された二本ロール機(ロールギャップ1.0mm)で混練しながら、これに成分(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(商標:エコフレックス(BASF(株)製))8質量部と、滑剤(脂肪酸エステル系)2.0質量部と、酸化防止剤(ヒンダートフェノール系)1.0質量部とを混合した。その後工程i)で調製された、可塑剤成分が吸着されているシリカ粒子を添加し、次に、(a)非晶性ポリ乳酸樹脂(商標:レイシアH−280(三井化学(株)製))10質量部を添加して、これらの混合物をさらに混練し、得られた均一混練樹脂組成物を厚さ0.25mmに圧延成形してシートを製造した。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0032】
[比較例8]
i)乳酸エステル系可塑剤成分(商標:ラクトサイザーGP−4001(荒川化学工業(株)製))30質量部と、無機多孔質粒子としてシリカ粒子(平均粒子径:35μm)15質量部とを小型ブレンダー内で攪拌し、上述の可塑剤成分が吸着したシリカ粒子45質量部を調製した。
ii)成分(a)非晶性ポリ乳酸樹脂(商標:レイシアH−280(三井化学(株)製))90質量部を165℃に温度設定された二本ロール機(ロールギャップ1.0mm)で混練しながら、これに滑剤(脂肪酸エステル系)2.0質量部と酸化防止剤(ヒンダートフェノール系)1.0質量部とを添加した。その後、これに工程i)で調製され、可塑剤成分が吸着されているシリカ粒子を少しずつ添加した。全量添加した時点で二本ロール機の金属ロール表面温度が125℃となるように二本ロールの温度調整を行い、可塑剤成分が吸着しているシリカ粒子を含む非晶性ポリ乳酸樹脂を調製した。
iii )成分(b)脂肪族ポリエステル樹脂(商標:ルナーレSE−P5000(日本触媒(株)製))5質量部と、成分(c)脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂(商標:エコフレックス(BASF(株)製))5質量部とを、工程i)で調製され、可塑剤成分が吸着しているシリカ粒子を含む非晶性ポリ乳酸樹脂の全量を添加して、これらをさらに混練し、得られた均一混練樹脂組成物を厚さ0.25mmに圧延成形して、シートを製造した。このシートのカレンダー成形性及び得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
<本発明の生分解性軟質シートの生分解性>
加水分解試験による生分解性評価
実施例1〜5において製造した圧延成形シートを、それぞれ160℃で熱プレスして厚さ1.0mmのシートを作成し、このシートからJIS K6732:ダンベル3号の試験片を作成した。このダンベル試験片に、温度50℃、湿度95%の条件下で6日間の湿熱促進処理を施し、湿熱促進処理前後の破断強度を測定し比較した。破断強度保持率は、促進前の破断強度に対する促進後の破断強度の比を百分率で表したもので、この値が小さい程、自然界における分解性が優れているものとして評価した。この評価の結果、本発明により得られたシート(例えば実施例1〜5)は全て湿熱促進処理後の破断強度保持率が50%未満であった。この試験結果から、本願発明により得られたシートを自然環境下の土壌に埋没させた時に、生分解が円滑に進行することが予見された。
土中埋没試験による生分解性評価
実施例1〜5で得られた圧延成形シートを、自然環境下の土壌に埋没させ、土壌埋没6ヶ月後の状態を外観評価した結果、本発明により得られたシート(例えば実施例1〜5)は、加水分解試験による生分解の予見通りに、円滑に生分解されて朽葉状となり、掘出しの時には全て形状破壊していた。
【0036】
[実施例6]
実施例1で得られ、厚さ0.25mmのシートを、綿織物の片面上に積層接着し、厚さ0.55mmの帆布を製造した。
【0037】
[実施例7]
実施例1で得られ、厚さ0.25mmのシートを、ポリ乳酸繊維からなる平織物の両面に積層して、厚さ0.60mmのターポリンを製造した。
【0038】
[実施例8]
実施例1で得られ、厚さ0.25mmのシートを、ケナフ50%、麻50%の混紡糸により製造された平織物の両面に積層接着し、厚さ0.70mmの帆布を製造した。
【0039】
実施例6〜8で得られた帆布、及びターポリン積層体を、自然環境下の土壌に埋没させ、土壌埋没12ヶ月後の状態を外観評価した結果、本発明により得られた基布を含むシート(例えば実施例6〜8)は、円滑に生分解され、掘出した時には、織物に積層した実施例1のシート層が朽葉状となり、その形状を残しておらず、また綿織物とケナフ50%、麻50%の混紡糸からなる平織物は、半ば腐りかけており、ポリ乳酸繊維による平織物は、ぼろぼろに脆化していた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の生分解性軟質シートは、カレンダー成形法により容易に製造することができ、しかも軟質な風合いと実用上十分な強度を有し、さらに良好な生分解性を有している。このため本発明の生分解性軟質シートを従来の熱可塑性樹脂シート(フィルム)、特に軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート(フィルム)の代わりに実用し、例えば、土木工事用型枠シート、建設現場用養生シート、工事用保水シート、緊急災害時用テントシート、燻蒸用シート、農業用マルチシート、あるいはディズポーザブルシートとして幅広く使用することが可能である。これらの使用済みシートは、土中に埋立てれば、時間の経過と共に分解してやがて消失してしまうので、産業廃棄物処分場の負担を軽減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂成分と、その100質量部に対して5〜50質量部の可塑剤成分とを含み、かつ、0.1〜1.0mmの厚さを有する可撓性シートを含み、
前記生分解性樹脂が(a)25〜75質量%のポリ乳酸樹脂、(b)19〜70質量%の前記ポリ乳酸とは異なる脂肪族ポリエステル樹脂、及び(c)1〜15質量%の脂肪族−芳香族コポリエステル樹脂からなる
ことを特徴とする、生分解性軟質シート。
【請求項2】
前記可撓性シートが、さらに無機多孔質粒子を含み、前記可塑剤成分の一部が、前記無機多孔質粒子に吸着している、請求項1に記載の生分解性軟質シート。
【請求項3】
前記可撓性シートにおいて、前記可塑剤成分の50質量%以上が、オキシ酸エステル系化合物からなる、請求項1または2に記載の生分解性軟質シート。
【請求項4】
前記可撓性シートが、さらに有機化された層状ケイ酸塩を含んでいる、請求項1〜3の何れか1項に記載の生分解性軟質シート。
【請求項5】
前記可撓性シートが、さらに生分解性布帛を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の生分解性軟質シート。

【公開番号】特開2007−186543(P2007−186543A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3492(P2006−3492)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】