生物学的活性を有する化合物の投与のための複合体
本発明は、ApoA分子または機能的に同等なその変異体と、治療に関連する化合物とを含んでなり、両成分が共有結合している複合体に関し、さらに当該複合体を、前記ApoA分子に対し特異的結合部位を有する組織を前記化合物の特異的標的とする治療において使用することに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の方法による治療を意図した化合物を、安定化しかつ標的組織に対してターゲッティングする方法の分野に包含される。本発明は、特にアポリポタンパク質Aが、当該タンパク質に対して高い親和性を有する結合部位をその表面に有する全ての組織に対し、治療を意図した化合物をターゲッティングすることができる能力に基づくものである。
【背景技術】
【0002】
活性成分として巨大分子(macromolecules)を用いた新しい治療形式の開発により、当該分子を安定化しかつそれらが相応する細胞標的に対してターゲッティングする効果的な形態を開発することが必要となった。標的組織に対する特異的ターゲッティングを必要とする治療の例として、特異的成長因子を用いた治療、あるいは標的組織に不在または欠乏している遺伝子を戻すために用いられる遺伝子を用いた治療などがある。ウイルスベクターに基づかない組織特異的な系では、細胞特異性が低いかあるいはそれが無いという問題を有することが多い。
【0003】
異なる系として、治療化合物を含む脂質小胞であり、肝細胞膜に対して親和性を示す分子が小胞表面にあることによるターゲッティングに基づいて、治療化合物を肝細胞に対してターゲッティングする系が記載されている。
【0004】
例えば、WO07130873は、微小胞を肝細胞に対してターゲティングするに際し、当該カプセルの表面に、肝細胞に存在するアシアログリコプロテイン、ヒアルロナン、N−アセチル−ガラクトサミンまたはマンノース受容体によって特異的に認識される化合物を組み込むことによってターゲッティングする方法を記載している。WO02086091は、ナノ小胞を肝細胞に対して、前記ナノ小胞にB型肝炎ウイルスコートタンパク質を組み込むことによりターゲッティングする方法を記載している。WO200473684は、表面にApoA1を含むリン脂質円盤状小胞に基づいて、部分的に疎水性の化合物を肝細胞に対してターゲッティングする方法を記載している。Lou等(World J.Gastroenterol.、2005、11:954−959)は、高密度リポタンパク質(HDL)を特異的キャリアとして用いて、HDLがコレステロールなどの疎水性化合物を収容する能力に基づいて、脂溶性抗腫瘍化合物を肝細胞の癌細胞にターゲッティングする方法
を記載している。
【0005】
最後に、Kim等(Molecular Therapy、 2007、 15:1145−1152)は、干渉RNAを肝細胞に対して、干渉RNAを含みかつ表面にApoA−Iを有するリポソームに基づいてターゲッティングする方法を記載している。しかしながら、これらの方法には、前記化合物が、リン脂質の疎水性画分と接触している小胞または人工膜内に収容されているため、疎水性化合物しか担持することができないという欠点を有する。
【0006】
あるいは、親水性化合物を肝臓に、肝臓により特異的に捕捉される薬剤と前記化合物との複合体を用いることによって、送達するが可能となる。例えば、Kramer等(J.Biol.Chem.、1992、267:18598−18604)は、治療化合物(細胞増殖抑制製剤クロラムブシルおよびプロリル−4ヒドロキシラーゼI−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−β−Ala−Phe−5−オキサプロリン−Glyインヒビター)を肝細胞に対して、前記化合物を胆汁酸に結合することによりターゲッティングする方法を記載している。しかしながら、この種の結合では、肝臓への送達のみが可能であり、化合物を治療を意図した他の組織に投与することができない。
【0007】
WO04082720は、治療活性を有する化合物を肝細胞に対して、B型肝炎ウイルス外被タンパク質により形成された擬ウイルス粒子に前記化合物を組み込むことによりターゲッティングする方法を記載している。しかしながら、これらのビヒクルは、血漿半減期が短く、持続した治療血漿濃度に至るには継続した投与または高用量での投与が必要であるという問題がある。さらに、擬ウイルス粒子を形成しているウイルスタンパク質は、体液性免疫反応を起こす。
【0008】
WO8702061Aは、LDL受容体を発現する組織に対して、アポリポタンパク質BまたはE受容体結合領域および活性成分により形成される融合タンパク質を使用することにより、化合物をターゲッティングする方法を記載している。
【0009】
インターフェロンの半減期が短い問題は、WO07021494により取り扱われた。WO07021494は、アルブミンとインターフェロンにより形成される融合タンパク質を記載している。これらの融合体では、血漿半減期が約14日である。
【0010】
したがって、治療化合物を特異的に肝細胞にターゲッティングし、かつ複合体の血漿半減期を長くすることができる好適なビヒクルが必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
第一の態様によれば、本発明は、
(i)ApoA分子またはその機能的に同等な変異体と、
(ii)治療を意図した化合物と、
を含んでなり、
成分(i)と成分(ii)とが共有結合してなる、複合体に関する。
【0012】
第二の態様によれば、本発明は、前記本発明による複合体をコードするポリヌクレオチド、またはそれを含んでなる遺伝子構築物であって、治療を意図した化合物(ii)が成分(i)と一本鎖を形成するポリペプチドであるものに関する。
【0013】
一連の態様によれば、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなるベクター、および本発明によるポリヌクレオチド、遺伝子構築物もしくはベクター、または本発明の複合体を含んでなるナノリポ粒子を含んでなる宿主細胞に関する。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、医薬として用いられる、本発明による複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、宿主細胞またはナノリポ粒子に関する。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、肝疾患または免疫系と関連した疾患の治療のための、本発明による複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、宿主細胞またはナノリポ粒子に関する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、
(a)成分(ii)がTGF−β1阻害ペプチドである、本発明による複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、宿主細胞、ナノリポ粒子または医薬製剤からなる群から選択される第1成分と、
(b)免疫刺激サイトカイン、前記サイトカインをコードしているポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、TGF−β1阻害ペプチド、細胞毒性薬またはそれらの組み合わせを含んでなる群から選択される第2成分と
を含んでなる組成物に関する。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、医薬として使用するための、特に癌の治療のための、本発明の組み合わせに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】IFNαの発現の動態。BALB/cマウスに、ApoA1(Apo)、IFNα(IFN)、Apo−IFN(AF)またはIFN−Apo(IA)を発現するプラスミドを水圧注入投与した。6時間後および1日目、3日目、6日目および9日目に、血液を採取し、血清IFNα濃度を、ELISAにより分析した。1群当たり動物4匹を用いた代表的な実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。結果を、反復測定ANOVAにより分析後、ボンフェローニ試験をおこなった。プラスミドAFおよびIAにより誘発された1日目と3日目のIFNα濃度と、プラスミドIFNにより誘発された濃度との間には有意の差があった(p<0.001)。
【図2】IFNα1の肝臓mRNAの定量的RT−PCR。水圧注入を、各プラスミドおよび各日の検討のために、3匹のBALB/cマウスで実施した。1日目、3日目および6日目に、動物を殺生し、肝臓を摘出した。肝臓mRNAを精製し、定量的RT−PCRを、IFNα1遺伝子について実施した。代表的実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。結果を、反復測定ANOVAにより分析後、ボンフェローニ試験をおこなった。プラスミドIFNα1、AFおよびIAにより誘発されたmRNA濃度の間には有意の差はなかった。
【図3】体温および血清ネオプテリン濃度。IFNαを有する構築物をコードするプラスミドを、BALB/cマウスに投与した。3日目に、血液を採取し、血清ネオプテリン(A)濃度を、ELISAにより測定した。同時に、体温(B)を分析した。2つの独立した実験(N=6マウス)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFNαを有する群とApoA1を有する対照群を比較した。***p<0.0001。
【図4】IFNα1により誘発できる遺伝子の肝臓mRNAの定量的RT−PCR。水圧注入を、BALB/cマウスにおいてIFNα1を有する構築物を発現するプラスミドを用いておこなった。3日目に、動物を殺生し、肝臓を摘出した。肝臓mRNAを精製し、定量的RT−PCRを、2’−5’OAS(A)、USP18(B)、ISG15(C)およびIRF1(D)遺伝子についておこなった。2つの独立した実験(N=6マウス)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFNαを有する群とApoA1を有する対照群を比較した。*p<0.05;***p<0.0001。
【図5A】脾細胞の数および活性化の増加。BALB/cマウスに、水圧経路によりIFNαを有する種々の構築物を投与し、6日後、マウスを殺生し、脾臓を単離した。脾細胞(A)の数、およびCD4+T細胞(B)、CD8+T細胞(C)、B細胞(D)およびNK細胞(E)における初期活性化マーカーCD69の発現を分析した。1群当たり7匹の動物を用いた代表的な実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFNαを有する群とApoA1を有する対照群を比較した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図5BC】図5A参照。
【図5DE】図5A参照。
【図6】IFNαを発現する構築物の存在下での遺伝子ワクチン接種により誘発された特異的溶解の増加。BALB/cマウスをβ−ガラクトシダーゼを発現するプラスミドの水圧注入により免疫化し、IFNαを有する種々の構築物を発現するプラスミドをアジュバントとして共投与した。7日後、細胞傷害性ペプチドおよび高濃度のCFSEをロードした標的細胞、並びに低濃度のCFSEを有する対照細胞を、静脈注射した。24時間後、動物を殺生し、標的細胞と対照細胞の割合を分析して、特異的溶解の百分率を算出した。各群を代表するヒストグラム(A)および1群当たり3匹の動物を用いた代表的実験の平均値および平均値の標準誤差(B)を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、Apo−IFNおよびIFN−Apoの群とIFNαを有する群とを比較した。**p<0.001。
【図7AB】種々の免疫系細胞集団におけるSR−BIの発現。BALB/cマウスからの脾細胞を単離し、抗SR−BI抗体並びにCD4+T細胞(抗CD4)(A)、CD8+ リンパ球(抗CD8)(B)、NK細胞(抗CD49b)(C)、単球/マクロファージ(抗CD11b)(D)または樹枝状細胞(抗CD11c)(E)を区別するための抗体で標識した。
【図7CD】図7AB参照。
【図7E】図7AB参照。
【図8】抗腫瘍ワクチン接種モデルにおけるアジュバント効果の影響。各処置群について、11〜17匹のBALB/cマウスに、ApoA1(Apo)、IFNα(IFN)またはIFN−Apo(IA)を発現するプラスミドを水圧注入により投与した。24時間後、これらに、フロイントの不完全アジュバントに細胞傷害性ペプチドAH1を添加したものをワクチン接種した。9日後、5x106CT26細胞を皮下接種し、腫瘍の発現を経時的に観察した。経時的な腫瘍のないマウスの百分率を示す。実験群を、対数順位検定により対照群と比較した。**p<0.01。
【図9】循環白血球および血小板の動態。IFNαを有する構築物をコードするプラスミドを、BALB/cマウスに投与した。血液を、水圧注入してから1日目に1つの群から採取し、3日目にもう1つの群から採取し、6日目に最後の群から採取した。白血球(A)数および血小板(B)数を、製造業者の説明書に従ってZ1 Coulter Particle Counterを用いて定量化した。2つの独立した実験(N=4マウス/日および群)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFN−Apoを有する群とIFNを有する群とを比較した。**p<0.01。
【図10】IFNαにより誘発可能な遺伝子の脳mRNAの定量的RT−PCR。BALB/cマウスにおいて、IFNαを有する構築物を発現するプラスミドを用いて、水圧注入を実施した。1日目に、動物を殺生し、脳を摘出した。脳mRNAを、精製し、定量的RT−PCRを、USP18(A)、ISG15(B)、2’−5’OAS(C)、Mx1(D)およびIRF1(D)遺伝子についておこなった。2つの独立した実験(N=5マウス/群)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFN−Apoを有する群とIFNを有する群とを比較した。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。これは、2を表す1つの実験である。
【図11】融合タンパク質の循環高密度リポタンパク質(HDL)への組み込み。IFNαを有する構築物をコードするプラスミドを、BALB/cマウスに投与した。24時間後、血液を採取し、得られた血清から、HDLをNaBr勾配で分画遠心分離により抽出した。種々の群のHDLにおけるIFNαの存在を、インターフェロンバイオアッセイ、細胞傷害性効果保護アッセイ(A)により分析した。HDLのない(HDL−)血清試料およびHDL含有分画(HDL+)を用いて、ウエスタンブロットをおこなって、アポリポタンパク質AI(B)の存在を測定した。
【図12】IFN−Apoを含有するHDLの投与の血液学的影響。IFN−Apoを含有するHDLのIFNの10000IUに相当する量、10000IUの組み換えIFNまたはPBSを、BALB/cマウスに投与した。3日後、白血球(A)数および血小板(B)数を、製造業者の説明書に従ってZ1 Coulter Particle Counterを用いて定量化した。2つの独立した実験(N=4〜6マウス/日および群)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFN−Apoを有する群とIFNを有する群とを比較した。**p<0.01;*** p<0.001。
【図13】IL12により誘発されたIFNγ誘発の増加。デオキシサイクリンにより誘発可能なプロモーターの制御下でIL12を発現するプラスミド、および対照構築物またはTGFβインヒビターp17(A)またはTGFβインヒビターp144(B)を有する構築物のうちの1つを、水圧注入により投与した。4日後、IFNγの血清濃度を、ELISAにより分析した。1群当たり3匹の動物を用いた代表的な実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、実験群と対照群とを比較した。**p<0.001。
【図14】CT26腫瘍の発現に対する防御。BALB/cマウスに、フロイント不完全アジュバントに細胞傷害性ペプチドAH1を添加したものをワクチン接種した。7日後、TGFβインヒビターを発現する構築物または対照としてのApoA1を水圧注入投与した。別の7日後、5x105CT26細胞を皮下接種し、腫瘍の発現を経時的に観察した。経時的な腫瘍のないマウスの百分率を示す。実験群を、対数順位検定により対照群と比較した。*p<0.05;**p<0.001。
【図15】循環高密度リポタンパク質(HDL)へのApo−リンカー−P144融合タンパク質の組み込み。ApoまたはApo−リンカー−P144を有する構築物をコードするプラスミドを、BALB/cマウスに投与した。24時間後、血液を採取し、得られた血清から、NaBr勾配での分画遠心分離により、HDLを抽出した。HDLを含む画分を用いて、ウエスタンブロットをおこなって、アポリポタンパク質AIの存在を測定した。
【図16】Apo−リンカー−P144を含有するHDLを投与した後にIL12により誘発されるIFNγ誘発の増加。デオキシサイクリンにより誘発可能なプロモーターの制御下でIL12を発現するプラスミドおよび対照構築物(Apo)またはApo−リンカー−P144を発現する別のプラスミドを、水圧注入投与した。最後の群に対して、プラスミドIL12およびApo−リンカー−P144を含むHDL14μg/マウス(腹腔内注射)を投与した。4日後、IFNγの血清濃度を、ELISAにより分析した。1群当たり3匹の動物を用いた代表的な実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、実験群と対照群とを比較した。** p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.本発明による複合体
本発明者等は、ApoAタンパク質またはその機能的に同等な変異体と、治療を意図した分子とにより形成される複合体は、患者に投与後、血中半減期が、結合なしに、治療を意図した分子を投与した患者で観察されるよりも長いことを見出した。さらに、ApoAと、治療を意図した分子との複合体が、患者の肝臓に特異的に運ばれることで、肝疾患の治療を非常に容易にしかつ他の組織における治療分子の作用による副作用が減少する。
【0020】
したがって、第一の態様によれば、本発明は、
(i)ApoA分子またはその機能的に同等な変異体と、
(ii)治療を意図した化合物と、
を含んでなり、
成分(i)と成分(ii)とが共有結合してなる、複合体に関する。
【0021】
いずれの理論にも拘束されることを望むものではないが、肝組織に対する複合体の親和性は、当該組織がApoAタンパク質に対し特異的な受容体を有し、その自然機能により表面上にApoA−Iを有するHDLを捕捉することによるものであると思われる。さらに、複合体のより長い半減期は、ApoA分子が生体において示す長い半減期(ApoA−Iの場合において、ヒトでは35時間程度、マウスで10時間程度)に関係があると思われる。さらに、表面にApoA−Iに特異的な受容体を発現する他の細胞もあり、これにより他の組織に運ばれる。
【0022】
1.1ApoA分子
本発明に関連して、「ApoAタンパク質」は、高密度リポタンパク質(HDL)の一部分を形成するApoAファミリーに属し、特異的に肝細胞の表面で受容体と相互作用することができ、したがって、前記ApoAタンパク質に結合した意図する分子をこの器官に運ぶ能力が確保できるもの、と理解される。本発明において使用できるApoA分子は、好ましくはApoA−I、ApoA−II、ApoA−III、ApoA−IVおよびApoA−Vまたは機能的に同等なそれらの変異体からなる群から選択される。
【0023】
好ましい実施態様によれば、本発明において用いられるApoAタンパク質は、ApoA−Iタンパク質である。本発明に関連して、ApoA−Iは、高密度リポタンパク質(HDL)の一部分を形成するpre−proApoA−Iタンパク質の成熟形態として理解される。ApoA−Iは、除去されて前駆体を生じる分泌シグナル配列を含む前駆体(pre−proApoA−I)として合成される。シグナル配列は18アミノ酸からなり、プロペプチドは6アミノ酸、およびタンパク質の成熟形態は243アミノ酸からなる。シグナルペプチドを欠きかつプロセッシングされたタンパク質の成熟形態が好ましくは使用される。好ましい実施態様によれば、ApoA−Iタンパク質は、ヒト由来であり、そのアミノ酸配列は、配列番号1(UniProtにおけるアクセス番号P02647)を示すものである。別の好ましい実施態様によれば、ApoA−Iタンパク質は、ネズミ由来、特にマウス由来であり、そのアミノ酸配列は、配列番号2(UniProtにおけるアクセス番号Q00623)を示すものである。別の好ましい実施態様によれば、ApoA−Iタンパク質は、ネズミ由来、特にラット由来であり、そのアミノ酸配列は、配列番号3(UniProtにおけるアクセス番号P04639)を示すものである。
【0024】
ApoA−Iの機能的に同等な変異体は、上記したヒトまたはネズミApoA−I配列の1つ以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失から生じするものであり、肝細胞に存在するHDL受容体を形成するいわゆる「スカベンジャー受容体クラスBタイプI」(SR−BI)と相互作用する能力は実質的にそのまま失われていない、全てのポリペプチドと理解される。HDL受容体と相互作用する能力は、実質的にMonaco等(EMBO J.、1987、6:3253−3260)に記載のようにして、肝細胞膜へのApoA−I結合を検討することによるか、またはApoA−Iまたはその変異体が肝細胞膜受容体へのHDLの結合を阻害する能力を測定することにより求める。肝細胞膜へのApoA−Iの変異体の結合の解離定数は、好ましくは少なくとも10−8M、10−7M、10−6M、10−5Mまたは10−4Mである。
【0025】
本発明におけるApoA−Iの変異体には、ApoA−Iポリペプチドとの類似性または同一性が少なくとも60%、65%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%または95%を示すポリペプチドなどがある。2つのポリペプチド間の同一度は、当業者に広く知られているコンピュータアルゴリズムおよび方法を用いて測定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくはBLASTPアルゴリズム(BLAST Manual、 Altschul、S.等、NCBI NLM NIH Bethesda、Md.20894、Altschul、S.等、J.、1990、Mol.Biol.215:403−410)を用いて測定される。
【0026】
本発明に関連して使用されるApoA−Iの変異体は、好ましくは野生型ApoA−Iに関して長い血中半減期を有しており、ApoA−Iで観察されるよりも大きな血清ApoA−I濃度に到達できる。タンパク質の血中半減期、特にApoA−Iの半減期を測定する方法は、当該技術分野において公知であり、とりわけEisenberg、S.等(J.Lipid Res.、1973、14:446−458)、Blum等(J.Clin.Invest.、1977、 60:795−807)およびGraversen等(J Cardiovasc Pharmacol.、2008、51:170−177)により記載されている標識タンパク質を用いた代謝標識に基づく方法を用いることなどがある。より長い半減期を示す前記変異体の一例として、例えば、Milano(突然変異体R173Cを含有する)と称される変異体が挙げられる。
【0027】
1.2 治療を意図した化合物
本発明に関連して、「治療を意図した化合物」は、疾患の症状を予防または取り除くことのできる化合物と理解される。本発明にあっては、まず、その生物学的活性を実質的に失うことなく、共有結合改変を受け入れ、その結果ApoA−Iまたは機能的に同等なその変異体に結合できる、いずれの治療化合物の使用をも意図している。したがって、本発明は、治療に有効な成分として、小有機分子、ペプチド、ペプチド模倣体、ペプトイド、タンパク質、ポリペプチド、糖タンパク質、オリゴ糖、核酸等を使用することを意図している。
【0028】
例えば、ApoA−Iまたは機能的に同等なその変異体に結合できる化合物には、抗生物質、コリンエステラーゼ剤、アトロピン、スコポラミン、交感神経作動薬、催眠剤、鎮静剤、抗てんかん薬、オピオイド、鎮痛薬、抗炎症薬、ヒスタミン、脂質誘導体、気管支喘息治療薬、解熱鎮痛薬、キサンチン、浸透圧性利尿薬、水銀化合物、チアジド系化合物およびスルホンアミド、炭酸脱水酵素阻害薬、有機硝酸エステル、高血圧治療薬、強心配糖体、抗不整脈薬、オキシトシン、プロスタグランジン、アルカロイド、子宮収縮抑制、抗蠕虫薬、抗原虫薬、抗マラリア剤、抗アメーバ薬、スルホンアミド、ペニシリン、トリメトロピン、セファロスポリン、スルファメトキサゾール、抗真菌剤、キノロン、抗ウイルス剤、抗生物質、アミノグリコシド、テトラサイクリン類、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、アルキル化剤、副腎皮質ホルモン、代謝拮抗薬、抗生物質、放射性同位元素、アザサイオプリン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メトトレキサート、抗凝固剤、血栓溶解剤、血小板凝集阻害剤、下垂体前葉ホルモン、甲状腺ホルモンおよび抗甲状腺ホルモン、エストロゲン薬およびプロゲステロン、男性ホルモン剤、アドレノコルチコトロピン、インスリン、副甲状腺ホルモン、ビタミンDのステロイド誘導体、ビタミン類、(水溶性ビタミン類、例えば、ビタミンB複合体およびアスコルビン酸または脂溶性ビタミン、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンKまたはビタミンE)、抗ヒスタミン薬、抗腫瘍化合物、抗ウイルス化合物、抗真菌化合物などがある。肝臓に影響しているか、または肝臓に原因がある疾患の治療に有用な化合物が好ましく使用される。
【0029】
好ましい実施態様によれば、本発明の複合体の成分(ii)は、ポリペプチド鎖を含んでなる。好ましい実施態様によれば、ポリペプチApoA−Iと、成分(ii)
を構成しているポリペプチドは、一本鎖ポリペプチドを形成する。本発明は、二つのポリペプチドの二つの相対配向を意図している。したがって、好ましい実施態様によれば、成分(i)のC末端は、成分(ii)のN末端に結合している。別の好ましい実施態様によれば、成分(i)のN末端は、成分(ii)のC末端に結合している。好ましくは、ApoA−I複合体が一本鎖ポリペプチドにより形成されるとき、以下のものは形成されない:
(i)ApoA−Iタンパク質のN末端に対して、C末端を介して連結されているS.aureus Aタンパク質。
(ii)血管作動性腸管ペプチド(VIP−1)のN末端に対して、C末端を介して連結されているApoA−Iタンパク質。
(iii)成分(ii)は、プラズミノゲン断片の免疫グロブリン重鎖であるか、またはプラズミノゲン断片である。
(iV)ApoA−Iタンパク質のN末端に対して、C末端を介して連結されているテトラネクチン三量化ドメイン(TTSE)。
【0030】
本発明による複合体を用いて肝臓に運ばれるポリペプチドには、エリトロポエチン(EPO)、レプチン、アドレノコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、体細胞親和性ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、プロラクチン放出ホルモン(PRH)、メラトニン放出ホルモン(MRH)、プロラクチン阻害ホルモン(PIH)、ソマトスタチン、アドレノコルチコトロピンホルモン(ACTH)、体細胞親和性ホルモンまたは成長ホルモン(GH)、黄体ホルモン(LH)、小胞刺激ホルモン(FSH)、チロトロピン(TSHまたは甲状腺刺激ホルモン)、プロラクチン、オキシトシン、抗利尿ホルモン(ADHまたはバソプレッシン)、メラトニン、ミュラー阻害因子、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ガストリン、コレシストキニン(CCK)、Arg−バソプレッシン、甲状腺ホルモン、アゾキシメタン、トリヨードチロニン、LIF、アンフィレグリン、可溶性トロンボモジュリン、SCF、骨形成タンパク質1、BMPF、MGSA、ヘレグリン、メラノトロピン、セクレチン、インシュリン様成長因子I(IGF−I)、インシュリン様成長因子II(IGF−II)、心房ナトリウム利尿性ペプチド(ANP)、ヒト絨毛膜性ゴナドトロピン(hCG)、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵ポリペプチド(PP)、レプチン、神経ペプチドY、レニン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII、第VIII因子、第IX因子、組織因子、第VII因子、第X因子、トロンビン、第V因子、第XI因子、第XIII因子、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン8(IL−8)、インターロイキン9(IL−9)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン11(IL−11)、インターロイキン12(IL−12)、インターロイキン13(IL−13)、インターロイキン14(IL−14)、インターロイキン15(IL−15)、インターロイキン16(IL−16)、インターロイキン24(IL−24)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、CD3、CD134、CD137、ICAM−1、LFA−I、LFA−3、ケモカイン、例えば、RANTES1α、MIP−1α、MIP−1β、神経成長因子(NGF)、Wilmsの腫瘍抑制遺伝子によりコードされているWT1タンパク質、血小板由来成長因子(PDGF)、変異成長因子ベータ(TGF−ベータ)、骨形成たん白質(BMP)、繊維芽細胞成長因子(FGFおよびKGF)、上皮成長因子(EGFおよび関連因子)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(GM−CSF)、グリア成長因子、ケラチノサイト成長因子、内皮成長因子、グリア細胞株由来、神経栄養因子(GDNF)、アルファ1−アンチトリプシン、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、カーディオトロフィン−1(CT−1)、オンコスタチンM(OSM)、セルピン(A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、C1、D1、E1、E2、F1、F2、G1、H1、I1およびI2)、サイクロスポリン、フィブリノゲン、フィブロネクチンのEDAドメイン、ラクトフェリン、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、キモトリプシン、イムノグロビン、ヒルジン、スーパーオキシドジスムターゼ、イミグルセラーゼ、β−グルコセレブロシダーゼ、アルグルコシダーゼ−α、α−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、ガルフルファーゼ、ヒトα−ガラクトシダーゼA、α−1プロテアーゼ阻害剤、ラクターゼ、膵酵素(リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ)、アデノシンデアミナーゼ、免疫グロブリン、アルブミン、ボツリヌストキシンタイプAおよびB、コラゲナーゼ、ヒトデオキシリボヌクレアーゼI、ヒアルロニダーゼ、パパイン、L−アスパラギナーゼ、レピルジン、ストレプトキナーゼ、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)、細胞形質転換因子ベータ(TGF−β)阻害ペプチド、IL10インヒビター、FoxP3インヒビター、TNFαインヒビター、VEGFインヒビター、PD−1インヒビターおよびCD152インヒビターなどがある。
【0031】
好ましい実施態様によれば、本発明による複合体の成分(ii)は、インターフェロン(IFN)である。インターフェロンは、I型インターフェロン、II型インターフェロンおよびIII型インターフェロンとして分類される。I型インターフェロンは、最初は生体内細胞株のウイルス感染に対する阻害活性の結果として見出され(Pestka、S.、Krause、C.D.およびWalter、M.R.2004.Immunol Rev.202:8−32)、いわゆるIFN−α受容体(IFNAR)に結合することにより特徴づけられる、サイトカイン活性を有するポリペプチドファミリーである。それらの配列の相同性に応じて、I型インターフェロンは、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)およびインターフェロン−ω(IFN−ω)として分類される。IFN−αとIFN−βは、ほとんどの有核細胞の表面で発現する単一の二量体受容体を共有する。これらのサイトカインの機能は、感染細胞のアポトーシスおよびウイルス複製阻害による死を促進する機構を開始すると同時に、抗原提示を促進することを考えると、複数種類のウイルス感染に対する免疫応答において極めて重要である。また、サイトカインは、直接にT細胞、B細胞およびNK細胞、ならびに免疫反応における樹枝状細胞の活性を活性化することによりその機能を果たすという最近の実験報告がある(Le Bon A.等、2003.Nat.Immunol.4:1009−1015;Le Bon A.等、2006.J.Immunol.176:4682−4689;Le Bon A.等、2006.J.Immunol.176:2074−8)。II型インターフェロンは、インターフェロンガンマ受容体(IFNGR)に結合され、単一のメンバーとしてIFN−γを含むことを特徴としている。III型インターフェロンは、それらのシグナルを、IL−10受容体2(IL10R2)およびIFNラムダ1受容体(IFNLR1)によって形成される複合体を介して導入し、IFN−λ1、IFN−λ2およびIFN−λ3と称される3種のインターフェロンラムダによって形成される。
【0032】
好ましい実施態様によれば、成分(ii)は、I型インターフェロン、例えば、IFN−α、IFN−β、IFN−δ、IFN−ε、IFN−κ、IFN−τおよびIFN−ωである。特定の実施態様によれば、本発明の組成物に含まれる少なくとも1つのI型インターフェロンは、インターフェロン−アルファ(IFN−α)およびインターフェロン−ベータ(IFN−β)を含む群から選択される。I型インターフェロンがIFN−αであるとき、後者は、ヒトIFN−α遺伝子のファミリーのいずれかの遺伝子メンバーによりコードされているいずれかのインターフェロンに対応することができる。特定の実施態様によれば、少なくとも1つのI型インターフェロンは、IFN−α2a、IFN−α2b、IFN−α4、IFN−α5、IFN−α8およびそれらの組み合わせ(医薬製剤における他の物質との組み合わせを含む)からなる群から選択されるIFN−αである。さらに特定の実施態様によれば、インターフェロンは、IFN−α1であり、好ましくはヒト起源のものである。好ましい実施態様によれば、インターフェロンは、IFN−α5である。
【0033】
I型インターフェロンのリスト、特に本発明において使用することができるIFN−αおよびIFN−βのリストが、Bekisz等(Growth Factors、 2004;22:243−251)およびPetska等(Immunological Reviews、2004;202:8−32)に記載されている。さらに、本発明によれば、複数種のインターフェロン、例えば、IFN−αn1(リンパ芽球腫誘導体)またはIFN−α3(Sendaiウイルス(または別のウイルス)またはウイルス粒子で刺激されたヒト白血球により産生されたインターフェロンの組み合わせ)の組み合わせの使用が提供される。
【0034】
使用されるI型インターフェロンの起源は、本発明において重要な点ではない。これは、天然起源であって生物学的液体または組織から抽出され、精製することもでき、また従来の組み換え遺伝子工学および方法、例えば、SambrookおよびRussel(Molecular Cloning(分子クローニング): to Laboratory manual、J. Sambrook、 D.W. Russel編、2001、第3版、ニューヨークにあるCold Spring Harbor)に記載されているようにして産生してもよく、または当該技術分野において記載されている合成プロセスまたはいずれかの他の通常の方法により製造することもできる。
【0035】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の組成物に含まれている少なくとも1つのI型インターフェロンは、ペグインターフェロンの形態である。ペグインターフェロンを調整するいくつかの例が、US5762923およびUS5766582に記載されている。さらに、すでに市販されているインターフェロン形態(ペグインターフェロンまたは非ペグインターフェロン)のものを使用することもできる。これらには、Hoffmann La Roche社製ROFERON−A(ヒト組み換えIFN−α2a)およびPEGASYS(ペグIFN−α)、Schering社製INTRON−A(ヒト組み換えIFN−α2b)およびPEG−INTRON(ヘグIFN−α2b)、Interferon Sciences社製ALFERON−N(IFN−α3n、天然のインターフェロンの組み合わせ)、またはInterMune Pharmaceuticals社製IFNERGEN(IFN−αcon1)(この配列はコンセンサス配列であり、天然の配列とは正確には対応しない)などがあるが、これらには限定されない。IFN−β製剤、例えば、Biogen Idec社製AVONEX(IFN−β1a)、EMD Serono社製REBIF(IFN−β1a)およびBayer Health Care社製BETASERON(IFN−β1b)も含まれる。
【0036】
好ましい実施態様によれば、本発明による複合体は、C末端を介して融合したApoA1により、およびインターフェロンα1分子のN末端を有する可撓性リンカーにより形成される。別の好ましい実施態様によれば、本発明の複合体は、C末端を介して融合されたインターフェロンα1分子により、およびApoA1分子のN末端を有する可撓性リンカーにより形成される。
【0037】
別の好ましい実施態様によれば、成分(ii)は、TGF−ベータインヒビターである。本発明による複合体の一部分を形成することができるTGF−ベータインヒビターには、TGF−β1における受容体結合部位に結合し、したがって、受容体への結合をブロックするTGF−ベータ1受容体配列から選択されるペプチドインヒビターなどがある。これらの種類のペプチドは、WO200031135に記載されており、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる。好ましい実施態様によれば、TGF−β1阻害ペプチドを、TGF−β1III型受容体から得る。さらに好ましい実施態様によれば、阻害ペプチドは、配列TSLDASIIWAMMQN(配列番号4)を有するペプチドp144である。
【0038】
同様に、本発明によれば、TGFβ1とTGFβ1受容体との間の相互作用を阻害する阻害ペプチドの使用が提供される。ここで、シグナル伝達は、前記相互作用に対する反応で生じ、WO200519244に記載されているファージ表示遺伝子ライブラリーとして同定される。引用することによりWO200519244の全体が本明細書の一部とされる。好ましい実施態様によれば、阻害ペプチドは、配列KRIWFIPRSSWYERA(配列番号5)、ならびにそのトランケート変異体として特徴付けられ、WO2007048857(引用することによりその全体が本明細書の一部とされる)に記載されているように、TGFβ1とその受容体との間の相互作用を阻害する能力を実質的に保存する、ペプチドp17である。
【0039】
1.3 成分ApoAと治療的に活性な化合物との間のリンカー要素
ApoAタンパク質と、ペプチドの性質を有する第2成分を含んでなる本発明の目的とする複合体は、ApoAタンパク質と前記第2成分を直接接続する結合を含んでいてもよく、またはApoAタンパク質とペプチドの性質を有する前記第2成分との間に、リンカーとしての役割を果たす追加のアミノ酸配列を含むことができる。本発明によれば、前記非天然中間体アミノ酸配列は、ドメイン間のヒンジ領域としての役割を果たし、個々のドメインの立体形状を維持しながら、互いに独立して可動である。この意味において、本発明による好ましい非天然中間体アミノ酸配列は、この可動を可能にする構造的延性により特徴づけられるヒンジ領域である。特定の実施態様によれば、前記非天然中間体アミノ酸配列は、非天然可撓性リンカーである。好ましい実施態様によれば、前記可撓性リンカーは、長さが20アミノ酸以下である可撓性リンカーペプチドである。より好ましい実施態様によれば、リンカーペプチドは、グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される2以上のアミノ酸を含んでなる。本発明の好ましい実施態様によれば、前記可撓性リンカーは、ポリグリシンリンカーである。リンカー/スペーサー配列として、例えば、SGGTSGSTSGTGST(配列番号6)、AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号7)またはGGSGGAP(配列番号8)などを挙げることができる。これらの配列は、他のタンパク質ドメインに対して設計されたコイル状らせんを結合するのに使用されてきた(Muller、K.M.、Arndt、K.M.およびAlber、T.、Meth. Enzymology、2000、328:261−281)。前記リンカーは、好ましくはアミノ酸配列GGGVEGGG(配列番号9)を含んでなるか、またはアミノ酸配列GGGVEGGG(配列番号9)からなる。
【0040】
リンカー領域の効果により、ApoAタンパク質および成分(ii)との間に空間が形成される。したがって、ApoAの二次構造は、成分(ii)の存在により影響されることはなく、そして成分(ii)はApoAの二次構造によって影響されることはない。好ましくは、スペーサーは、ペプチドの性質を有している。好ましくは、リンカーペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸または約100個のアミノ酸を含んでなる。
【0041】
リンカーは、二重結合により本発明の複合体の2つの成分の側に伸びた成分に結合でき、好ましくは、スペーサーは実質的に非免疫原性でありおよび/またはシステイン残基を含んでいない。同じようにして、スペーサーの立体構造は、好ましくは直鎖または実質的に直鎖である。
【0042】
スペーサーまたはリンカーペプチドの好ましいものとして、例えば、結合タンパク質の機能を実質的に劣化させることなく、または結合タンパク質のうちの1つの機能を少なくとも実質的に劣化させることなく、タンパク質を結合するのに使用されているものなどである。より好ましくは、スペーサーまたはリンカーは、コイル状らせんを有する構造を含んでなるタンパク質を結合するために使用されている。
【0043】
リンカーは、テトラネクチンの残基53〜56(テトラネクチンにおいてβシートを形成している)および残基57〜59(テトラネクチンにおいてねじれを形成している)(Nielsen、B.B.等、FEBS Lett.412:388−396、1997)。セグメントの配列は、GTKVHMK(配列番号10)である。このリンカーは、野生型テトラネクチンに存在するとき、三量化領域をCRDドメインと結合させるので、一般的に三量化領域を別のドメインに接続するのに好適であるという利点がある。さらに、得られた構築物は、リンカーなしの構築物よりもより免疫原性であることはない。
【0044】
あるいは、ヒトフィブロネクチンからの接続ストランド3からのサブ配列を、アミノ酸1992〜2102(SWISSPROTナンバリング、エントリーP02751)に対応するリンカーとして選択することができる。アミノ酸番号2037〜2049に対応するサブ配列PGTSGQQPSVGQQ(配列番号11)が好ましくは使用され、そのサブ配列断片内で、アミノ酸2038〜2042に対応するGTSGQ(配列番号52)がより好ましい。この構築物は、容易にタンパク質分解的切断される傾向になく、そしてフィブロネクチンが血漿中に高濃度で存在するので、それほど免疫原性ではない。
【0045】
別法として、好適なペプチドリンカーは、ネズミIgG3の上ヒンジ領域の10アミノ酸残基配列に基づくものであることができる。このペプチド(PKPSTPPGSS、配列番号12)は、コイル状らせん(Pack P.およびPluckthun、A.、1992、Biochemistry31:1579−1584)により二量化した抗体を産生するのに使用されており、本発明によるスペーサーペプチドとして有用であることができる。ヒトIgG3の上ヒンジ領域の対応配列は、さらに好ましいことがある。ヒトIgG3配列は、ヒトにおいて免疫原性であるとは思われない。
【0046】
好ましい実施態様によれば、リンカーペプチドを、配列APAETKAEPMT(配列番号13)のペプチドおよび配列GAPのペプチドからなる群から選択する。
【0047】
あるいは、本発明の複合体の2つの成分は、ペプチドにより接続できる。このペプチドの配列はプロテアーゼの開裂標的を含んでいるので、成分(ii)からApoA1を分離することができる。本発明のポリペプチドに組み込むのに好適なプロテアーゼ開裂部位は、エンテロキナーゼ(開裂部位DDDDK、配列番号14)、第Xa因子(開裂部位IEDGR、配列番号15)、トロンビン(開裂部位LVPRGS、配列番号16)、TEVプロテアーゼ(開裂部位ENLYFQG、配列番号17)、PreScissionプロテアーゼ(開裂部位LEVLFQGP、配列番号18)、インテインなどである。好ましい実施態様によれば、複合体が肝臓に到達したら、ApoAおよび成分(ii)の分離が生じるように、開裂部位は、腫瘍組織、炎症組織または肝臓において発現されるプロテアーゼ開裂部位である。好ましい実施態様によれば、リンカーは、マトリックス金属プロテアーゼ−9認識部位(開裂部位LFPTS、配列番号19)を含む。
【0048】
2.本発明の複合体を得る方法
本発明による複合体は、当業者に公知のいずれかの方法を用いて得ることができる。すなわち、ApoAタンパク質または前記タンパク質の変異体は任意の標準法により得ることが可能である。例えば、ApoA―Iタンパク質は個人のまたは実験動物の血清サンプルから精製することができる(WO9807751、WO9811140、Jackson等.、1976、Biochim Biophys Acta.420:342−349、Borresen、A.L.およびKindt、T.J.、1978、J.Immunogenet.5:5−12およびForgez、P.およびChapman、M.J.、1982、J.Biochem、Biophys、Methods、6:283−96).一方、ApoA―Iタンパク質はcDNAから、例えば大腸菌、出芽酵母、メタノール資化酵母、昆虫細胞などの異種生体中の表現型の発現を利用し、WO07023476、WO9525786、WO8702062、Feng等、(Protein、Expr. Purif.、2006,46:337−42),Pyle等、1996 Biochemistry.35:12046−52、Brissette等.、(Protein Expr. Purif. 1991、2:296−303)およびBonen、D.K.(J. Biol. Chem.、1997,272:5659−67)に記載されているような従来技術に公知の方法を用いて得ることができる。
【0049】
十分な量の精製ApoAタンパク質があれば、それを目標の治療用化合物に複合できる。治療的に有効な成分(ii)のApo A分子への複合は様々な方法によっておこなうことができる。1つの可能性としては、官能基の治療的に有効な成分への前記成分の活性を阻害しない位置における直接複合がある。本発明において理解されるように、官能基とは分子中の特定の原子の基を指し、それは前記分子の特徴的な化学反応の要因となるものである。官能基の例としては、ヒドロキシ、アルデヒド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、カルボキサミド、1級、2級、3級、および4級アミン、アミノキシ、アジド、アゾ(ジイミド)、ベンジル、カーボネート、エステル、エーテル、グリオキシリル、ハロアルキル、ハロホルミル、イミン、イミド、ケトン、マレイミド、イソシアニド、イソシアネート、カルボニル、ニトレート、ニトライト、ニトロ、ニトロソ、ペルオキシド、フェニル、ホスフィン、ホスフェート、ホスホノ、ピリジル、スルフィド、スルホニル、スルフィニル、チオエステル、チオール、および酸化3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基が挙げられるが、これらに限定されない。前記基の例としては、Apo A分子中のチオール基と特定的に反応するマレイミドまたはグリオキシリル基、およびApo A分子中の1級アミン基と反応する酸化3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基が挙げられる。
【0050】
もう1つの可能性としては、治療的に有効な成分(ii)をApoA分子にホモ-またはヘテロ-2官能性基を用いて複合することである。2官能性基は最初治療的に有効な化合物に、そしてApoAタンパク質に複合できるか、あるいは2官能性基をApo Aタンパク質に複合し、そしてそれを治療的に有効な化合物に複合することが可能である。これらの複合体の種類の説明に役立つ実例としては、複合体の第1成分が、複合体の第2成分中のアミノ基に順に結合するヘテロ二官能性基中のケトン基に結合するアミノキシ基を含むケトン−オキシム(US20050255042に記載)として知られる複合体が挙げられる。
【0051】
他の実施態様においては、本発明による複合体の成分(i)および(ii)を複合するのに用いる薬剤は、光分解により、化学的に、熱的に、あるいは酵素により加工することができる。細胞標的中の酵素により加水分解可能な連結剤を用いることは特に興味深いので、治療的に有効な化合物は細胞の内側にのみ放出される。細胞内加工ができる連結剤の種類の例はWO04054622、WO06107617、WO07046893、およびWO07112193に記載されている。
【0052】
好ましい実施態様において、本発明の複合体の成分(ii)は、オリゴペプチドおよびペプチドの両方を含むペプチドの性質を有する化合物である。ポリペプチド鎖を化学的に変性する方法は当業者に広く知られており、その例としては、システイン部位に存在するチオール基を介する複合に基づく方法、リシン部位に存在する1級アミノ基を介する複合に基づく方法(US6809186)、およびN−およびC−末端部位を介する複合に基づく方法が挙げられる。ポリペプチドを変性して他の化合物に連結させるのに適した試薬の例としては、グルタルアルデヒド(化合物をポリペプチドのN末端に結合させる)、カルボジイミド(化合物をポリペプチドのC末端に結合させる)、N末端およびシステイン部位を活性化させるサクシンイミドエステル(例えば、MBS、SMCC)、チロシン部位を活性化させるベンジジン(BDB)、およびグリコシル化されたタンパク質の炭水化物部位を活性化させる過ヨウ素酸塩が挙げられる。
【0053】
成分ApoAおよび対象の治療用化合物が単純ペプチド鎖を形成する特殊な場合においては、複合体を単一の工程で前記複合体をコード化する本発明の遺伝子構築物を用いて発現させることが可能であり、そのために前記構築物は、転写成分および場合により翻訳調節成分と共に異種生体中の複合体の発現に適したベクター中に導入される。本発明の発現カセット中に存在する転写成分および場合により翻訳調節成分はプロモーターを含み、このプロモーターは、それらが動作可能に連結するヌクレオチドの配列および、例えば開始シグナルおよび停止シグナル、切断部位、ポリアデニル化シグナル、複製開始点、転写促進剤、転写阻害剤などの、転写およびその時と場所について適合する制御に対して必要なまたは適合するその他の配列を管理するものである。前記成分は、本発明による発現カセットおよび組換えベクターを構築するのに用いられるベクターと同様に、一般的に、用いられる宿主細胞に従って選択される。
【0054】
3.本発明によるポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、および宿主細胞
もう1つの態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。当業者に理解されるように、本発明のポリヌクレオチドは、その中で成分(ii)がペプチドの性質を有し、その中でポリペプチドApoAが(相対的な配向性に拘らずおよび両成分が直接接続されまたはスペーサ領域により分離されるという事実に拘らず)単一ペプチド鎖を形成する複合体だけをコードするものである。
【0055】
もう1つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子構築物に関する。構築物は好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの発現を制御する配列の操作制御下にある本発明のポリヌクレオチドを含んでなる。当業者に理解されるように、本発明によるポリヌクレオチドは、標的組織の核に接触し、そこで転写および翻訳され生物学的に活性な融合タンパク質を生成しなければならない。この理由から、投与される有効成分がポリヌクレオチドである場合、ポリヌクレオチドは好ましくは前躯体プレ−プロApoAIまたはApoAI変異体の前躯体をコード化せねばならず、すなわち、前躯体の発現の後、前躯体はシグナル配列の結果として分泌され、プロセッシングされて成熟ApoAIを生成する。
【0056】
インターフェロン分子とC−末端を介して融合されるApoAにより形成される複合体が発現される場合において、複合体をコード化するポリヌクレオチドにとって、ApoAIシグナル配列をコード化する配列が先行することは好ましいことである。ApoA分子のN−末端と共にそれのC−末端を介して融合されるインターフェロン分子により形成される複合体が発現される事象において、複合体をコード化するポリヌクレオチドにとって、インターフェロンα1シグナル配列をコード化する配列が先行することは好ましいことである。
【0057】
原則的にいかなるプロモーターも、当該プロモーターが、ポリヌクレオチドが発現すべき細胞と適合性がある限り、本発明の遺伝子構築物に用いることができる。よって、本発明の実施に適合するプロモーターとしては次のものが挙げられるが、必ずしもこれらのものに限定されるものではない。すなわち、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、トリ肉腫ウイルス、およびB型肝炎ウイルスなどの真核ウイルスのゲノムの誘導体などの構成的プロモーター、メタロチオネイン遺伝子のプロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーター、レトロウイルス長末端反復領域、免疫グロブリン遺伝子のプロモーター、アクチン遺伝子のプロモーター、EF−1アルファ遺伝子のプロモーター並びにテトラサイクリン系、NFκB/UV光系、Cre/Lox系、および熱ショック遺伝子のプロモーターなどのタンパク質の発現が分子または外因性シグナルの添加に依存する誘導性プロモーター、WO/2006/135436に記載されたRNAポリメラーゼIIの調節可能なプロモーター並びに組織特異的なプロモーター。好ましい実施態様において、本発明の遺伝子構築物は、ヒト血清アルブミン遺伝子、プロトロンビン遺伝子、アルファ−1−ミクログロブリン遺伝子、またはアルドラーゼ遺伝子などの主に肝の発現遺伝子のプロモーター領域に存在する発現向上領域を含み、それらは数種類のコピーの態様中の単一コピーの態様であるか、単離された態様であるか、あるいはサイトメガロウイルスプロモーター、アルファ-1-アンチトリプシンプロモーター、またはアルブミンプロモーターなどの他の肝特異的発現要素との組み合わせの態様であるか、である。
【0058】
組織特異的なプロモーターのその他の例としては、アルブミン遺伝子のプロモーター(Miyatake等.、1997、J.Virol、71:5124−32)、肝炎ウイルスの核プロモーター(Sandig等、1996、 Gene Ther.、 3:1002−9):、アルファ-フェトタンパク質遺伝子のプロモーター(Arbuthnot等.、1996、Hum.Gene Ther.、7:1503−14)、およびチロキシンに結合したグロブリン-結合タンパク質のプロモーター(Wang L.、等.、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11563−11566)が挙げられる。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドまたはそれらを形成する遺伝子構築物はベクターの一部分を形成できる。かくして、もう1つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなるベクターに関する。当業者に理解されるように、用いることのできるベクターの種類に制限はなく、それは前記ベクターが、増殖に適したおよびポリヌクレオチドまたは適合する遺伝子構築物を得るのに適したクローン化ベクターまたは複合体を精製するのに適した種々の異種生体中の発現ベクターであり得るからである。従って、本発明による適合するベクターには次のベクターが含まれる。すなわち、pUC18、pUC19、ブルースクリプトおよびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、CoIEI、pCRI、およびRP4などの原核生物中の発現ベクター、pSA3およびpAT28などのファージおよびシャトルベクター、2ミクロンプラスミド、統合プラスミド、YEPベクター、動原体性プラスミドなどの種類のベクターなどの酵母菌中の発現ベクター、pACシリーズベクターおよびpVLシリーズベクターなどの昆虫細胞中の発現ベクター、pIBI、pEarleyGate, pAVA, pCAMBIA、 pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREシリーズベクターなどの植物中の発現のベクターなどの植物中の発現ベクター、およびウイルスベクターに基づく上位の真核細胞中の発現ベクター(アデノウイルス、アデノウイルス関連のウイルス、並びにレトロウイルスおよびレンチウイルス)、並びにpSilencer 4、1−CMV(アンビオン)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、rTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXI、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2d、およびpTDT1などの非ウイルスベクター。
【0060】
本発明のベクターは、ベクターによって形質転換され、形質移入され、感染され得る細胞を形質転換させ、形質移入し、感染させるために用いることができる。該細胞は原核性であっても真核性であってもよい。一例として、該DNA配列が導入されるベクターは、プラスミドであり得るかまたはそれが宿主細胞に導入される場合に該細胞のゲノム中に統合され、それが統合されたクロモゾーム(或いは複数のクロモゾーム)と共に複製するベクターでもよい。ベクターは、当業者には公知の従来の方法により得ることができる(Sambrok等、(2001年)上述の通り)。
【0061】
したがって、もう1つの態様において、本発明はポリヌクレオチド、遺伝子構築物、または本発明のベクターを含んでなる細胞に関し、そのために該細胞は本発明により提供される構築物またはベクターにより形質転換され、形質移入され、または感染されることが可能であってきた。形質転換され、形質移入され、または感染された細胞は当業者に公知の従来法によって得ることができる(Sambrok等、(2001年)上述の通り)。特定の実施態様において、該宿主細胞は適したベクターで形質移入されたまたは感染された動物細胞である。
【0062】
本発明による複合体の発現に適した宿主細胞の例としては、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、および細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。細菌細胞の例としては、バチルス属、ストレプトミセス属、およびブドウ球菌属の種などのグラム陽性細菌細胞、およびエシェリキア属およびプソイドモナス属の細胞などのグラム陰性細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。真菌細胞の好ましい例としては、サッカロミセス属、ピキアパストリス属、およびハンゼヌラポリモルファ属などの酵母菌の細胞が挙げられる。昆虫細胞の例としては、ショウジョウバエ属細胞およびSf9細胞が挙げられるが、これらに限定されない。その他の細胞の中で、植物細胞の例としては、穀物用植物、医療用植物、観賞用植物、または球根植物などの作物植物の細胞が挙げられる。本発明における適した哺乳類細胞の例としては、上皮細胞系(ブタなど)、骨肉腫細胞系(ヒトなど)、神経芽細胞腫細胞系(ヒトなど)、上皮癌細胞系(ヒトなど)、グリア細胞(ネズミなど)、肝細胞系(サルなど)、CHO(中国ハムスター卵巣)細胞、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞、911、AT1080、A549、293またはPER.C6、NTERA−2ヒトECC細胞、mESC細胞系のD3細胞、HS293およびBGV01などのヒトES細胞、SHEF1、SHEF2およびHS181、NIH3T3細胞、293T、REHおよびMCF−7およびhMSC細胞が挙げられる。
【0063】
もう1つの態様において、本発明は、本発明による複合体を含んでなるナノリポ粒子に関する。
【0064】
本発明に用いられているように、用語「ナノリポ粒子」は用語「リポタンパク質」または「リポタンパク粒子」と同等であり、これらは相互変換可能に用いることができる。本明細書において「ナノリポ粒子」は、アポリポタンパク質、リン脂質、および遊離コレステロールにより形成される外部極性被覆により被覆された無極性脂質(エステル化コレステロールおよびトリグリセリドなど)の核により形成される水溶性の粒子を表すものと解釈される。
【0065】
ナノリポ粒子またはリポタンパク質はその比重に従い、カイロミクロン、超低比重リポタンパク質(VLDL)、中間比重リポタンパク質(IDL)、低比重リポタンパク質(LDL)、および高比重リポタンパク質(HDL)に分類される。種々のリポタンパク質の特徴を第1表に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
特定の態様において、本発明によるナノリポ粒子はその組成が表1に示されるHDLであり、タンパク質分画はApoA、ApoC、ApoD、およびApoEにより形成される。
【0068】
本発明のナノ粒子は当業者に公知の方法を用いて得られる。その1例として、ナノリポ粒子は試験管内ではLerch等(Vox Sang、1996、71:155−164)に記載のあるようにコレステロールおよびホスファチジルコリンを本発明の複合体に添加することにより得られ、生体内では本発明の複合体を肝臓内に発現する遺伝子導入非ヒト動物に用いることにより得られ、この場合複合体は、ナノ粒子がそこから単離され得るナノ粒子の血清中に分泌される。
【0069】
4.本発明による複合体の医療的使用
本発明による複合体は、治療対象の化合物を肝臓まで運び、またそれを安定化させるのに有用である。それゆえ、もう1つの態様において、本発明は、複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、または宿主細胞、または本発明によるナノリポ粒子の治療的に有効な量、および薬学的に許容し得る担体または賦形剤を含んでなる医薬製剤に関する。
【0070】
もう1つの態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の遺伝子構築物、本発明のベクター、本発明のナノリポ粒子、または医薬品に使用するための医薬品組成物に関する。
【0071】
医薬品として使用するために、本発明による複合体はプロドラッグ、塩、溶媒和物、または包接化合物の形態であってよく、これらの単独の形態であってもよく、また追加の活性剤との組み合わせの形態でもよい。本発明による化合物の組み合わせは、薬学的観点から許容し得る賦形剤と共に配合することができる。本発明における使用に対して好ましい賦形剤の例としては、糖類、澱粉、セルロース、ガム類、およびタンパク質が挙げられる。特定の実施態様において、本発明の医薬品組成物は固形医薬品剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、被覆錠剤、顆粒剤、坐剤、液状剤に再構成可能な結晶性または非晶性無菌固形剤、など)、液状医薬品財形(例えば、溶液、懸濁液、乳剤、エリキシル剤、ローション、軟膏、など)、または半固形医薬品剤形(ジェル、軟膏、クリーム、など)に配合される。本発明の医薬品組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、鞘内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、または直腸内経路を含むがこれらに限定されない如何なる経路によっても投与することができる。有効成分の投与の種々の形態の、用いられる賦形剤の、およびそれらを製造する方法の、審査は、Tratado de Farmacia Galenica、 C. Fauli i Trillo、 Luzan 5、 S.A. de Ediciones、 1993およびRemington‘s Pharmaceutical Sciences (A.R. Gennaro、 Ed.)、20th edition、Williams & Wilkins PA、USA(2000)に見出すことができる。薬学的に許容できるビヒクルの例としては従来技術に公知のものであり、リン酸塩緩衝の食塩水溶液、水、油/水乳剤などの乳剤、種々の種類の湿潤剤、無菌溶液などが挙げられる。該ビヒクルを含んでなる組成物は、従来技術に公知の従来法により配合することができる。
【0072】
核酸(本発明のポリヌクレオチド、ベクター、または遺伝子構築物)を投与する事象において、本発明は、該核酸の投与のために特に調製した医薬品組成物を提供する。医薬品組成物は該核酸を裸の形態で、即ち核酸を生体のヌクレアーゼによる劣化から保護する化合物の不在下で含むことができ、これには形質移入のために用いる試薬に伴う毒性が排除されるという有利が伴う。裸の形態の化合物を投与するのに適した経路としては、静脈内、腫瘍内、頭蓋内、腹腔内、脾臓内、筋肉内、網膜下、皮下、粘膜下、局所、および経口経路が挙げられる(Templeton、2002、DNA Cell Biol.、21:857−867)。一方、核酸はリポゾームの一部を形成しながら投与され得、コレステロールに複合され得、或いはHIV−1TATタンパク質から誘導されるペプチドTat、キイロショウジョウバエ・アンテナペディア・タンパク質のホメオドメインの第3螺旋、単純疱疹ウイルスのVP22タンパク質、およびWO07069090(Lindgren、A.等、2000、Trends Pharmacol. Sci、21:99−103、Schwarze、S.R.等、2000、Trends Pharmacol. Sci.、21:45−48、Lundberg、M等、2003、Mol. Therapy 8:143−150、およびSnyder、E.L.およびDowdy、 S.F.、2004、Pharm. Res. 21:389−393)に記載されたようなアルギニンオリゴマーおよびペプチドなどの、細胞膜を通して転座を促進できる化合物に複合され得る。一方、ポリヌクレオチドは、プラスミド・ベクターのまたはウイルス・ベクターの、好ましくはムリン・リュウケミア・ウイルス(MLV)またはレンチウイルス(HIV、FIV、EIAV)に基づくウイルスなどのアデノ−関連ウイルス中のまたはレトロウイルス中のアデノウイルスに基づくベクターの一部を形成しながら投与され得る。
【0073】
もう1つの実施態様において、本発明の組成物およびポリヌクレオチドはLiu,F.らが記述した(Gene Ther、1999、6:1258−66)ように、いわゆる「流体力学的投与(hydrodynamic administration)」の手段により投与される。該方法によれば、化合物は静脈内経路により生体内に高速度・高容量で導入され、より拡散された分散を伴う高形質移入を生じる。細胞内導入の効能は投与した薬液の容量および注射の速度に直接依存することが実証された(Liu等、1999、Science、305:1437−1441)。マウスにおいて、投与は3〜5秒間に1mL/体重10gの値に最適化した(Hodges等、2003、Exp.Opin.Biol.Ther、3:91−918)。ポリヌクレオチドの流体力学的投与後のポリヌクレオチドによる生体内細胞形質移入を可能にする精密な機構は未だ完全には知られていない。マウスの場合において、尾静脈経由の投与が心拍数を超える速度で行われ、その結果、投与された薬液は上大静脈中に蓄積するものと考えられている。この薬液は引き続き器官の管に到達し、更に引き続き該管中の窓を通して管外空間に到達する。かくしてポリヌクレオチドは、血液と混合される前に標的器官の細胞と接触し、そのためヌクレアーゼによる劣化の可能性が低減される。
【0074】
本発明の組成物は、体重1kgあたり10mg未満の投与量、好ましくは体重1kgあたり5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005、または0.00001mg未満およびRNA剤の200nmol未満(即ち、体重1kgあたり約4.4×1016または体重1kgあたり1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、または0.075nmol未満)で投与することができる。単位投与量は注射、吸引、または局所投与により投与できる。本発明の2官能性ポリヌクレオチドおよび組成物は、標的mRNAが発現している器官に直接投与できるが、この場合、1器官あたり0.00001mgから3mgの投与量、好ましくは1器官あたり0.0001mgから0.001mgの投与量、1器官あたり約0.03mgから3.0mgの投与量、1器官あたり約0.1mgから3.0mgの投与量、または1器官あたり0.3mgから3.0mgの投与量が投与される。
【0075】
投与量は処置される症状の重症度および反応に依存し、数日間および数ヶ月間の間にまたは症状が和らぐのが観察されるまで投与量を変動させることができる。最適投与量は、患者の生体内の薬剤の濃度を定期的に測定することにより決定できる。最適投与量は、動物実験における事前の試験管内または生体内アッセイにより得られるEC50値より決定できる。単位投与量は1日1回または1日1回未満の割りで、好ましくは2、4、8、30日ごとに1回未満の割で投与できる。一方、初回投与量を投与した後は、一般に初回投与量より少ない量を1回または数回一定量を投与できる。保守投与計画には、0.01μg〜1.4mg/体重1kg・日の範囲の、例えば10、1、0.1、0.01、0.001、0.00001mg/体重1kg・日の投与量で患者を処置することを含めることができる。保守投与は、好ましくは最大5、10、または30日ごとに1回の割りで投与される。処置は、患者の罹っている病気の種類、その重篤度、および患者の容態により変動する期間の間は続けられるべきである。処置後は患者の展開を監視して、病気が処置に対応しない場合には投与量を増やさねばならないとか、病気の回復が観察されたまたは望ましくない副作用が観察された場合には投与量を減らさねばならないとかを決定しなければならない。
【0076】
毎日の投与量は、個々の状況に応じて単一の投与量または2回以上の投与量で投与できる。繰り返しの投与または頻繁な投与が望ましい場合は、ポンプなどの投与装置の埋め込み、半恒久的な(静脈内、腹腔内、槽内、または包内)カテーテル、または液溜めなどが推奨できる。
【0077】
本発明による複合体、それらをコードするポリヌクレオチド、本発明の該ポリヌクレオチドおよびナノリポ粒子を含んでなる遺伝子構築物およびベクターは、治療対象の化合物を標的組織まで輸送する該複合体の能力を与えられた治療的処置の方法に用いることができる。当業者に理解されるように、本発明の化合物で処置し得る病気は、(i)ApoAに連結した有効成分に依存し、(ii)該複合体が輸送される組織に依存する。第2表には、該複合体および複合体中に組み込まれるべき有効成分によって処置され得る病気が、限定されない方法により記載されている。
【0078】
【表2】
【表3】
【0079】
本発明による複合体は、ApoAに対する十分な親和性を有し、該ポリペプチドと結合した後、内在化される能力を有する表面分子が発現する器官または組織にとって標的となる能力を有する。該表面分子は、SR−B1(スカベンジャー受容体B、1型)、SR−A1(スカベンジャー受容体A、1型)、SR−A2(スカベンジャー受容体A、1型)、およびSR−C(スカベンジャー受容体C)を含む。治療的に有効な化合物はかくして、該標的器官または組織に輸送され得る。これらの器官には、肝臓だけでなくその表面に十分な量のSR−B1受容体を発現する全ての細胞が含まれる。本発明の実施例7では、特にCD4+T細胞中、CD8+T細胞中、NK細胞中、樹状細胞中、および単球/マクロファージ中の、免疫系の種々の濃度でのSR−B1受容体の存在を例証している。本発明はかくして、免疫系関連の病気の治療のための本発明の複合体の使用も提供する。加えて、破骨細胞中(Brodeur等、2008、J.Bone Miner Res. 23:326−37)、内皮細胞中(Yeh等、2002、Atherosclerosis、161:95−103)、腸管上皮中(Cai、S.F.等、2001、J.Lipid Res.、42:902−909)、胆管上皮中(Miquel等、Gut.、2003、52:1017−1024)、脂肪組織中(Action 等、 1994、J.Biol.Chem、269:21003−21009”)、および肺中(Action等、1994、J.Biol.Chem、269:21003−21009)のSR−BI受容体の発現は知られている。
【0080】
したがって、本発明による複合体は、治療を意図した化合物を予め指示した部分に運ぶのに好適である。したがって、標的器官を考慮すると、本発明の複合体は、肝疾患、例えば、肝内胆汁鬱滞、肝疾患(アルコール性脂肪肝、ライ症候群)、肝静脈血栓症、肝室変性、肝腫脹、肝肺症候群、肝腎症候群、門脈圧亢進症、肝膿瘍、肝硬変(アルコール性肝硬変、胆汁性肝硬変、実験的肝硬変)、アルコール性肝障害(脂肪肝、肝炎、肝硬変)、寄生虫症(エキノコックス症、肝蛭症、アメーバ性腫瘍)、黄疸(溶血性、肝細胞性および胆汁鬱滞性)、肝(臓)炎(アルコール性肝炎、慢性肝炎、自己免疫性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、薬剤誘発肝炎、中毒性肝炎、ウィルス性肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎およびE型肝炎)、ウィルソン病、肉芽腫性の肝臓症、二次胆汁性肝硬変、一次胆汁性肝硬変、肝性エンセファロパシ、門脈圧亢進症、肝細胞腺腫、血管腫、胆石、肝新生物(血管筋脂肪腫、石灰化肝転移、石灰化肝転移、線維層板型肝細胞癌、限局性結節性過形成、肝細胞腺腫、肝胆道嚢胞腺腫、肝芽腫、肝細胞癌、肝細胞腫、肝癌、肝血管内皮腫、結節性再生性過形成、良性肝腫瘍、良性肝腫瘍(肝嚢胞、多嚢胞性嚢腫、肝胆道嚢胞腺腫、肝間葉系腫瘍[間葉性過誤腫、小児血管内皮腫、血管腫、肝臓紫斑病、脂肪腫、炎症性偽腫瘍]、胆管上皮腫瘍、胆管過誤腫、胆管腺腫、悪性肝腫瘍[肝芽腫、肝芽腫、肝細胞癌、胆管細胞癌、胆管癌、嚢胞腺癌、毛細管腫瘍、血管肉腫、カポジ肉腫、血管内皮腫、胎児性肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、癌肉腫、奇形腫、扁平上皮癌、原発性リンパ腫])、エリスロ肝性ポルフィリン症、肝性ポルフィリン症(急性間欠性ポルフィリン症、遅発性皮膚ポリフィリン症)、ツェルヴェーガー症候群の治療に使用することができる。
【0081】
本発明による複合体は、免疫系疾患、例えば、以下の疾患の治療に使用することができる:
自己免疫疾患:アジソン病、自己免疫性溶血性貧、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質症候群、リウマチ様関節炎、自己免疫性神経系疾患、疱疹状皮膚炎、1型糖尿病、家族性地中海熱、IGA糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、自己免疫性肝炎、Lambert−Eaton筋無力症候群、全身性エリテマトーデス、交感性眼炎、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌不全症、特発性血小板減少性紫斑病、ライター症候群および自己免疫性甲状腺炎);
血液型不適合による疾患:胎児赤芽球症、Rh同種免疫;
膜性増殖性糸球体腎炎;
移植片対宿主病;
過敏性:薬剤過敏症、公害病、過敏症障害(細胞移動抑制、急性散在性脳脊髄炎)、即時型アレルギー(アナフィラキシー、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎)、免疫複合体病(過敏症による血管炎、アルサス反応、血清病)、ラテックスアレルギー、ヴィスラー症候群;
免疫不全症候群、例えば、異常ガンマグロブリン血症、HIV−1感染症、HTLV−1またはHTLV−2感染症、地方病性牛白血病、リンパ球減少、ファージ機能障害、例えば、チェディアック・東症候群、慢性肉芽腫症、ヨブ症候群、無ガンマグロブリン血、毛細血管拡張性運動失調症、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、白血球粘着不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群;
血小板減少性紫斑病;
免疫増殖性疾患:高グロブリン血症(シュニッツラー症候群)、リンパ(組織)増殖性疾患(肉芽腫、重鎖病、ヘアリー細胞白血病、リンパ性白血病、骨髄性白血病、リンパ増殖性疾患、リンパ腫、サルコイドーシス、無ガンマグロブリン血、巨大リンパ節過形成、免疫芽細胞リンパ腫、感染性腺熱、リンパ腫様肉芽腫症、マレック病、セザリー症候群、腫瘍崩壊症候群、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、免疫増殖性小腸疾患、形質細胞性白血病、異常蛋白血症および血小板減少性紫斑病)、異常蛋白血症。
【0082】
本発明による複合体は、毛細血管内皮病、例えば、以下の疾患の治療に使用することができる:動脈硬化、閉塞性動脈症、結合性によるレイノー病、原始高血圧および二次性肺高血圧、糖尿病性細小血管症、バージャー病、全身性硬化症、脈管炎および続いて局所貧血を伴う内皮障害により特徴付けられる全ての疾患。
【0083】
本発明の複合体は、骨疾患、例えば、骨の異常な増大により特徴付けられる異形成の治療に使用されることができる。このような状態の代表例として、軟骨無形成症、鎖骨頭蓋骨形成不全症、内軟骨腫症、線維性骨異形成、ゴーシェ病、低リン血症性くる病、マルファン症候群、遺伝性多発性外骨腫症、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑紋症、硬化性病変、骨折、歯周病、仮関節、化膿性骨髄炎、骨減少を生じる状態、例えば、貧血症状、ステロイドおよびヘパリンにより生じる骨減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏、特発性骨粗しょう症、先天性骨減少、アルコール依存症、クッシング病、先端巨大症、性腺機能低下症、一過性局所骨粗鬆症および骨軟化症が挙げられる。
【0084】
本発明による複合体は、腸上皮疾患、例えば、吸収不全症候群、クローン病、腸憩室性疾患、麻痺性イレウスおよび腸閉塞の治療に使用できる。
【0085】
本発明による複合体は、呼吸器疾患、例えば、以下の疾患の治療に使用することができる:鼻前庭炎、非アレルギー鼻炎(例えば、急性鼻炎、慢性鼻炎、萎縮性鼻炎、血管運動神経性鼻炎)、鼻ポリープ、副鼻腔炎、若年性の血管線維腫、鼻の癌および若年性の血管線維腫、声帯ポリープ、小節、接触潰瘍、声帯まひ、喉頭嚢胞、咽頭炎、へんとう炎、扁桃腺蜂巣炎、副咽頭間隙膿瘍、喉頭炎、喉頭嚢胞、咽喉癌(例えば、鼻咽腔癌、へんとう腺癌、喉頭癌)、肺癌(扁平上皮癌、小球性癌、大球性癌、腺癌)、アレルギー性疾患(好酸性肺炎、アレルギー性肺胞炎、アレルギー性間質性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、喘息、ヴェーゲナー肉芽腫、グッドパスチャー症候群、肺炎(例えば、細菌性肺炎(例えば、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、グラム陰性細菌、例えば、クレブシエラおよびPseudomonas sppにより生じる肺炎、Mycoplasma pneumoniae、Haemophilus influenzae、Legionella pneumophilおよびChlamydia psittaciにより生じる肺炎ならびにウイルス性肺炎(例えば、インフルエンザまたは水痘)、細気管支炎、ポリオ、喉頭気管気管支炎(クループ
症候群とも称される)、合胞体ウイルスによる呼吸器感染、流行性耳下腺炎、伝染性紅斑、小児ばら疹、風疹、真菌性肺炎(例えば、免疫抑制患者におけるヒストプラスマ症、コクシジオイデス症、ブラストミセス症および真菌症、例えば、Cryptococcus neoformansにより生じるクリプトコッカス症;Aspergillus spp.により生じるアスペルギルス症;Candidaにより生じるカンジダ症;およびムコール菌症)、Pneumocystis cariniiによる感染、異型肺炎(例えば、MycoplasmaおよびChlamydia spp.により生じるもの)、日和見肺炎、院内肺炎、化学肺臓炎および誤嚥性肺炎、胸膜疾患(例えば、胸膜炎、胸水および気胸(例えば、単純自然気胸、複雑自然気胸、緊張性気胸)、閉塞性気道疾患(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、慢性または急性慢性気管支炎)、職業性肺疾患(例えば、珪肺、炭塵肺、アスベスト肺、ベリリウム症、職業喘息、綿肺および良性塵肺症)、浸潤性肺疾患、例えば、肺線維症、線維化性肺胞炎、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、類リンパ球性間質性肺炎、原因不明性組織球増殖(例えば、レッテレル-シヴェ病、ハンド-シュラー-クリスチャン病、エオジン好性細胞肉芽腫)、特発性肺血鉄症、サルコイドーシスおよび肺胞蛋白症、急性呼吸窮迫症候群、浮腫、肺塞栓症、気管支炎(例えば、ウイルス性、細菌性気管支炎)、気管支拡張症、肺拡張不全、肺膿瘍および肺嚢胞性線維症。
【0086】
好ましい実施態様によれば、本発明は、治療活性成分はインターフェロンであることを意図している。この場合、複合体またはそれらをコードするポリヌクレオチドは、インターフェロンに反応する肝疾患、例えば、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、肝細胞癌、肝硬変、線維症の治療に有用である。
【0087】
さらに、免疫系細胞にSR−BI受容体が存在することを考えると、本発明による複合体は、治療活性成分を前記細胞にターゲッティングするのに使用できる。したがって、好ましい実施態様によれば、インターフェロンを治療活性成分として含有する本発明による複合体は、ワクチンの免疫反応を高めるためにアジュバントとして使用できる。ワクチンは、感染症をトリガーできる生物に対するワクチン、腫瘍に対するワクチン、アレルゲンに対するワクチンであることができる。ワクチンは、病原菌、腫瘍またはアレルゲンの成分(ペプチド、ポリペプチド、グリコペプチド、マルチエピトープペプチド、断片等)を含んでいてもよく、または前記生物、腫瘍またはアレルゲンのポリペプチドをコードする核酸により形成される遺伝子ワクチンでもよい。
【0088】
別の実施態様によれば、本発明の複合体は、TGF−β1ペプチドインヒビターを含んでなる。これらの複合体は、TGF−β1の過剰または自由発現に関連した疾患または病理学的障害、例えば、以下の疾患または障害の治療に使用できる:(i)器官または組織の機能の喪失と関連した線維症、例えば、肺線維症、肝線維症(肝硬変)、心臓線維症、腎線維症、角膜線維症等、(ii)外科および美容外科合併症、例えば、皮膚および腹膜手術に関連した線維症、やけどに関連した線維症、骨関節線維症、ケロイドなど。
【0089】
本発明者等は、TGF−β1ペプチドインヒビターをIL−12とともに含んでなる本発明による複合体を投与すると、IL−12によりもたらされるIFN−ガンマの誘発の刺激を生じることを示した。IFN−γが公知の抗腫瘍剤であることを考えると、本発明者等の知見は、免疫刺激サイトカインと、TGF−β1阻害ペプチドを含んでなる本発明による複合体の組み合わせに基づく新規な抗腫瘍治療の道を開く。
【0090】
したがって、別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明による複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、宿主細胞、ナノリポ粒子および医薬製剤からなる群から選択される第1成分であって、成分(ii)がTGF−β1阻害ペプチドである第1成分と、
(b)免疫刺激サイトカイン、前記サイトカインをコードしているポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、TGF−β1阻害ペプチド、細胞毒性薬およびそれらの組み合わせを含んでなる群から選択される第2成分と、
を含んでなる組成物に関する。
【0091】
TGF−β1阻害ペプチドを含んでなるApoA複合体とともに投与することができる免疫刺激サイトカインには、IL−12、IL−2、IL−15、IL−18、IL−24、GM−CSF、TNF−α、CD40リガンド、IFN−α、IFN−β、IFN−γなどがあるが、これらには限定されない。好ましい実施態様によれば、刺激サイトカインは、IL−12である。
【0092】
本発明による組成物の成分(b)を構成することができるTGF−β1阻害ペプチドは、上記した本発明による複合体の一部分を構成するものと実質的に同じである。したがって、TGF−β1阻害ペプチドは、ペプチドp144(配列番号4)またはペプチドp17(配列番号5)であることができるが、これらには限定されない。本発明の複合体の一部分を構成するおよび第二成分を構成するペプチドは、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0093】
本明細書において使用される用語「細胞毒性薬」は、細胞の成長を選択的または非選択的に殺生または阻害することができる化合物である。細胞毒性薬としては、例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、塩酸エピルビシン、およびシクロホスファミドおよびそれらの類似体または同族体、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロルエタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルマスティン(BCNU)およびロムスチン(CCNU)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシンおよびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン)、ブレオマイシンが挙げられる。
【0094】
別の態様によれば、本発明による組成物は、種々の種類の腫瘍、例えば、以下の腫瘍(これらには限定されない)の治療に使用することができる:血液癌(例えば、白血病またはリンパ腫)、神経性腫瘍(例えば、星状細胞腫または膠芽細胞腫)、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃腸腫瘍(例えば、胃、膵または大腸癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、腎細胞癌、尿生殖器腫瘍(卵嚢癌、膣癌、子宮頚癌、膀胱癌、睾丸癌、前立腺癌)、骨腫瘍および血管腫瘍。
【0095】
したがって、別の態様によれば、本発明は、癌の治療のための、本発明による組成物に関する。別の態様によれば、本発明は、本発明による組成物を、それを必要としている対象に投与することを含んでなる癌の治療方法に関する。別の態様によれば、本発明は、本発明の組成物の、癌の治療薬剤の調製のための使用に関する。
【0096】
使用されるべき本明細書に記載の本発明の組成物の成分の治療に有効な量は、例えば、治療対象、投与経路および患者の状態に依存する。したがって、治療者が最適な治療効果を得るために必要とする用量を決定し、投与経路を修正することが好ましい。典型的な1日の用量は、約0.01mg/kgから250mg/kgまたはそれ以上で、毎日、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、6日おき、または週1回でよい。
【0097】
組成物の投与は、種々の手段でおこなうことができる。例えば、組成物の成分(a)および成分(b)は、順次、別個および/または同時に投与することができる。一実施態様によれば、組成物の成分(a)および成分(b)は、同時に投与される(必要に応じて反復して)。一実施態様によれば、別個の製剤を順次投与(必要に応じて反復投与)する。一実施態様によれば、別個の製剤を別々に(必要に応じて反復して)投与する。当業者には、成分(a)および成分(b)の別個の製剤は、順次または連続投与されるよく、その場合、成分(a)を投与してから成分(b)を投与してもよく、または成分(b)を投与してから成分(a)を投与してもよいことは理解されるであろう。一実施態様によれば、成分(a)および成分(b)の別個の製剤は、選択的投与パターンで投与できる。本発明の組成物の成分(a)および成分(b)の別個の製剤投与がシーケンス投与または別個投与の場合、第二製剤の投与の遅延は併用療法の有益な効果が失われるものであってはならない。
【0098】
本発明を、以下実施例により説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0099】
実施例1
材料および方法
1.発現ベクターの構築:
1.1RNA抽出:
マウスの肝臓または処置マウスの脳から得た総RNAを、個々の試料から、TRI試薬(Sigma社、スペイン、マドリッド)を用いて単離した。試料の濃度および純度を、分光光度計(Biophotometer、エッペンドルフ社)で、260nmおよび280nmでの吸光度(320nmでバックグラウンド補正)により測定した。
【0100】
1.2総cDNAのRT−PCR合成
総RNA(3μg)をDNaseIで処理し、RNaseOUTの存在下でM−MLV RTを用いて、cDNAにレトロ転写した(全ての試薬は、カリフォルニア州Carlsbed、Invitrogen社から入手)。肝総cDNA25μlを得た。反応を37℃で1時間インキュベーションし、95℃で1分間変性し、そして4℃とした。試料を直ちにPCRに使用するか、または−20℃で保存した。
【0101】
1.3マウスアポリポタンパク質A1(mApoA1)cDNAの獲得およびクローニング:
センスプライマー5’−ATGAAAGCTGTGGTGCTGGC−3’(FwATGmApoA1)(配列番号20)およびアンチセンスプライマー5’−TCACTGGGCAGTCAGAGTCT−3’(RvTGAmmApoA1)(配列番号21)を、設計した。mApoA1cDNA(795総ヌクレオチド:シグナルペプチドをコードしている72ヌクレオチドおよび天然タンパク質をコードしている723ヌクレオチド)を、2720 Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)を用いて、肝総cDNAについて、BioTaq DNAポリメラーゼ(Bioline社、英国、ロンドン)を用いて、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、55℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間の処理により、PCR増幅した。PCR産物を、Agarose D−1低EEO 1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションさせ、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmApoA1のcDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mApoA1と称する)。最後に、得られた配列を、配列決定法により確認した。
【0102】
1.4 マウスインターフェロンアルファ1(mIFNα1)cDNAの獲得およびクローニング
センスプライマー5’−ATGGCTAGGCTCTGTGCTTT−3’(FwATGmIFNα1)(配列番号22)およびアンチセンスプライマー5’−TCATTTCTCTTCTCTCAGTC−3’(RvTGAmIFNα1)(配列番号23)を設計した。mIFNα1 cDNA(570総ヌクレオチド:シグナルペプチドをコードしている69ヌクレオチドおよび天然タンパク質をコードしている501ヌクレオチド)を、肝総cDNAについて、BioTaq DNAポリメラーゼ(英国ロンドンにあるBioline社)を用いたPCRにより増幅した。増幅条件は、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、55℃で40秒間および72℃で40秒間後、72℃で7分間であった。PCR産物を、Agarose D−1低EEO 1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてミグレーションさせ、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmIFNα1のcDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mIFNα1と称する)。最後に、配列を、配列決定法により確認した。
【0103】
1.5遺伝子融合設計:
1.5.1 mApoA1遺伝子へのmIFNα1遺伝子のC末端融合:アポIFN
ApoA1遺伝子の3’におけるAscI酵素の制限部位を構成する9−ヌクレオチド配列(GGCGCGCCC)を導入し、停止コドンを除去した、アンチセンスプライマー5’−GGCGCGCCCTGGGCAGTCAGAGTCTCGC−3’(RvAscImApoA1)(配列番号24)を設計した。この付加した制限配列は、構成タンパク質に対して一定の移動度を提供する短結合ペプチドGAPに翻訳される。成熟mIFNα1タンパク質をコードしている配列の5’にAscI制限配列を導入(すなわち、シグナルペプチド配列を除去)した、センスプライマー5’GGCGCGCCCTGTGACCTGCCTCAGACTCA−3’(FwAscImIFNα1)(配列番号:25)を設計した。
【0104】
BioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline社、英国、ロンドン)とともに、鋳型としてのpCMV−mApoA1ならびにプライマーであるFwATGmApoA1およびRvAscImApoA1を用いて、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、57℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間の条件でのPCRにより増幅を実施した。PCR産物(804ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)でマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmApoA1−AscIのDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)mApoA1にクローニングした(以下、pCMV−mApoA1−AscIと称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0105】
平行して、鋳型としてのpCMV−mIFNα1ならびにプライマーであるFwAscImIFNα1およびRvTGAmIFNα1を用いたPCRにより増幅を実施した。BioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline社、英国、ロンドン)および以下の増幅条件を使用した:2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、57℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間。PCR産物(510ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したAscI−mIFNα1のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−AscI−mIFNα1と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0106】
遺伝子融合を実施するために、プラスミドpCMV−mApoA1−AscIおよびpCMV−AscI−mIFNα1を、pcDNA 3.1 V5−His TOPO(登録商標)TA骨格に存在する制限部位PmeIを用いて、AscI/PmeI酵素、1xBSAおよびBuffer4(New England Biolabs社)により、それぞれ独立して37℃で1.5時間消化した。両方の消化物を1%アガロースゲルにおいてマイグレーションし、対応するバンドから開環ベクターpCMV−mApoA1−AscIおよびpCMV−AscI−mIFNα1インサートを精製した。産物を、T4DNAリガーゼ(高濃度)および2XRapid Ligation Buffer(Promega Madison社、米国ウイスコンシン州)(緩衝液)を用いて、1:3(ベクター:インサート)比でライゲーションし、混合物を室温で10分間インキュベーションした。続いて、Top10バクテリア(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)を形質転換した。ベクターがこの抗生物質に耐性のある遺伝子を含有するので、形質転換したバクテリアを、アンピシリン含有LB培地を入れたペトリ皿での成長により選択した。陽性細菌のプラスミドDNAを、MiniPrep法(Qiagen社、ドイツ)により抽出し、続いてこのプラスミド2μgをAscI/PmeI酵素(New EnglandにあるBiolabs社)で消化し、1%アガロースゲルにおいて電気泳動により消化物を分離してインサートの存在を確認する。得られた6825ヌクレオチドプラスミドを、以下pCMV−Apo−IFN(pCMV−AF)と称する。
【0107】
1.5.2 mApoA1遺伝子へのmIFNα1遺伝子のN末端融合:IFN−Apo
mIFNα1遺伝子の3’にAscI酵素の制限部位を形成し、停止コドンを除去する9−ヌクレオチド配列(GGCGCGCCC)を導入したアンチセンスプライマー5’−GGGCGCGCCTTTCTCTTCTCTCAGTCTTC−3’(RvAscImIFNα1)(配列番号:26)を設計した。AscI制限配列を成熟mApoA1タンパク質をコードする配列の5’に導入した(すなわち、シグナルペプチド配列を削除した)センスプライマー5’−CCAGGCGCGCCGGATGAACCCCAGTCCCAATG−3’(FwAscImApoA1)(配列番号:27)を設計した。このプライマーは、5’に3ヌクレオチドを含み、AscIでの開裂を可能とする。
【0108】
BioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline社、英国、ロンドン)とともに、鋳型としてのpCMV−mApoA1ならびにプライマーであるFwAscImApoA1およびRvTGAmApoA1を用いて、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、57℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間の条件でのPCRにより増幅を実施した。PCR産物(732ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)でマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したAscI−mApoA1のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−AscI−mApoA1と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0109】
平行して、BioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline社、英国、ロンドン)とともに、鋳型としてのpCMV−mIFNα1ならびにプライマーであるFwATGmIFNα1およびRvAscImIFNα1を用い、以下の増幅条件下でのPCRにより増幅を実施した:2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、57℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間。PCR産物(576ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmIFNα1−AscIのDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mIFNα1−AscIと称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0110】
遺伝子融合を実施するために、プラスミドpCMV−AscI−mApoA1およびpCMV−mIFNα1−AscIを、pcDNA 3.1 V5−His TOPO(登録商標)TA骨格に存在する制限部位PmeIを用いて、AscI/PmeI酵素、1xBSAおよびBuffer4(New EnglandにあるBiolabs社)により、独立的に37℃で1.5時間消化した。両方の消化物を1%アガロースゲルにおいてマイグレーションし、対応するバンドから開環ベクターpCMV−mIFNα1−AscIおよびpCMV−AscI−mApoA1インサートを精製した。産物を、T4DNAリガーゼ(高濃度)および2XRapid Ligation Buffer(Promega Madison社、米国ウイスコンシン州)(緩衝液)を用いて、1:3(ベクター:インサート)比でライゲーションし、混合物を室温で10分間インキュベーションした。続いて、Top10バクテリア(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)を形質転換した。ベクターがこの抗生物質に耐性のある遺伝子を含有するので、形質転換したバクテリアを、アンピシリン含有LB培地を入れたペトリ皿での成長により選択した。陽性細菌のプラスミドDNAを、MiniPrep法(Qiagen社、ドイツ)により抽出し、続いてこのプラスミド2μgをAscI/PmeI酵素(New England Biolabs社)で消化し、1%アガロースゲルにおいて電気泳動により消化物を分離してインサートの存在を確認する。得られた6822ヌクレオチドプラスミドを、以下pCMV−IFN−Apo(pCMV−IA)と称する。
【0111】
1.5.3 mApoA1遺伝子へのペプチドp17のC末端融合
プライマー5’−TCACGCACGCTCATACCAAGAACTCCTAGGAATAAACCAAATACGCTTGGGCGCGCCCTGGGC−3’(RvmApoA1p17)(配列番号:28)を設計した。これを、Easy−A High Fidelity PCRクローニング酵素(Stratagene社、カリフォルニア州La Jolla)とともに、鋳型としてのpCMV−mApoA1−AscIおよびプライマーであるFwATGmApoA1およびRvmApoA1p17を用いてPCRにより増幅した。PCRは、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、以下の条件でおこなった:95℃で1分間、95℃で40秒間の30サイクル、60℃で40秒間および72℃で1分間、その後72℃で7分間。PCR産物を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmApoA1−AscI−p17のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mApoA1−AscI−p17と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0112】
1.5.4 mApoA1遺伝子へのペプチドp144のC末端融合
プライマー5’−TCAATTCTGCATCATGGCCCAGATTATCGAGGCGTCCAGCGAGGTGGGCGCGCCCTGGGC−3’ (RvmApoA1p144)(配列番号:29)を設計した。これを、Easy−A High Fidelity PCRクローニング酵素(Stratagene社、カリフォルニア州La Jolla)とともに、鋳型としてのpCMV−mApoA1−AscIおよびプライマーであるFwATGmApoA1およびRvmApoA1p144を用いてPCRにより増幅した。PCRは、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、以下の条件でおこなった:95℃で1分間、95℃で40秒間の30サイクル、65℃で40秒間および72℃で1分間、その後72℃で7分間。PCR産物を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(スペインのマドリッドにあるPronadisa社)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmApoA1−AscI−p144のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mApoA1−AscI−p144と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0113】
1.5.5 mApoA1シグナルペプチドの遺伝子配列のクローニング:
融合mApoA1およびペプチド融合実験において対照としての役割を果たすプラスミドを構築するために、mApoA1シグナルペプチド配列(SPmApoA1)をペプチドp17およびp144と遺伝子融合する(AscIの配列を付加しない)ことにより、確実にペプチドの分泌がmApoA1−ペプチドと同じであるようにする。プライマーFwATGmApoA1とともに使用し、鋳型としてpCMV−mApoA1を用いてSPmApoA1を増幅する、プライマー5’−TTGCTGCCATACGTGCCAAG−3’ (RvSPmApoA1)(配列番号:30)を設計した。PCR産物(72ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したSPmApoA1のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(カリフォルニア州CarlsbedにあるInvitrogen社)にクローニングした(以下、pCMV−SPmApoA1と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0114】
1.5.6 mApoA1シグナルペプチド遺伝子配列へのペプチドp17のC末端融合:
プライマー5’−TCACGCACGCTCATACCAAGAACTCCTAGGAATAAACCAAATACGCTTTTGCTGCCAGAAATGCCG−3’(RvSPmApoA1p17)(配列番号:31)を設計し、これをプライマーFwATGmApoA1とともに使用して、pCMV−mApoA1鋳型から始めて、SPmApoA1−p17を増幅した。PCR産物(120ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したSPmApoA1−p17のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−SPmApoA1−p17と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0115】
1.5.7 mApoA1シグナルペプチド遺伝子配列へのペプチドp144のC末端融合
プライマー5’−TCATTCTGCATCATGGCCCAGATTATCGAGGCGTCCAGCGAGGTTTGCTGCCAGAAATGCCG−3’(RvSPmApoA1p144)(配列番号:32)を設計し、これをプライマーFwATGmApoA1とともに使用して、pCMV−mApoA1鋳型から始めて、SPmApoA1−p144を増幅した。PCR産物(117ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(カリフォルニア州ValenciaにあるQiagen社)により精製した。精製したSPmApoA1−p144のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−SPmApoA1−p144と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0116】
1.5.8 pCMV−mApoA1−AscI−p144へのMMP9配列の導入
ペプチドp144の開裂により放出される可能性のあるこの遺伝子から生成される融合タンパク質を提供するために、融合タンパク質のアミノ酸配列を開裂して完全p144を放出できるタンパク質分解酵素を、MEROPSデータベース(http://merops.sanger.ac.uk/)により検討した。調査の結果、候補として金属プロテアーゼ9(MMP9)が見いだされ、これは、開裂を生じさせて、p144配列にアミノ酸Sを残すものであった。癌における存在が報告されていることから、このタンパク質分解酵素の使用により、構築物に、阻害(局在であり、全身性でない阻害)が必要な部位にこのTGF−β阻害が放出される能力がさらに付与された。DNA配列CTTTTCCCGACGTCT(配列番号:51)(アミノ酸:LFPTS、配列番号:19)は、前記開裂部位に翻訳される:LFPT−S TSLDASIIWAMMQN(配列番号:4)。
【0117】
プライマー5’−CCAGGCGCGCCGCTTTTCCCGACGTCTACCTCGCTGGACGCCTC−3’(FwMMp9AscIp144)(配列番号:33)および5’−TCAATTCTGCATCATGGCCCA−3’(RvMMp9AscIp144)(配列番号:34)を設計した。これを、Easy−A High Fidelity PCRクローニング酵素(Stratagene社、カリフォルニア州La Jolla)とともに、鋳型としてのpCMV−SPmApoA1−p144を用いて増幅した。PCRは、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、以下の条件でおこなった:94℃で2分間、94℃で40秒間の30サイクル、54℃で45秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間。PCR産物を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片を、PerfectPrep DNA Cleanup(Eppendorf社、ドイツ)で精製した(70ヌクレオチド)。精製したAscI−MMP9−p144のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−AscI−MMP9−p144と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0118】
遺伝子融合を実施するために、プラスミドpCMV−mApoA1−AscI−p144およびpCMV−AscI−MMp9−p144を、独立してAscI/PmeI制限酵素(後者はpcDNA 3.1 V5−His TOPO(登録商標)TA骨格に存在する)で消化した。AscI/PmeI酵素、1xBSAおよびBuffer4(New England Biolabs社、米国Beverly)を用いて、消化を、37℃で1.5時間おこなった。両方の消化物を1%アガロースゲルにおいてマイグレーションし、対応するバンドから開環ベクターpCMV−mApoA1−AscI−p144およびpCMV−AscI−MMp9−p1441インサートを精製した。産物を、T4DNAリガーゼ(高濃度)および2XRapid Ligation Buffer(米国ウイスコンシン州にあるPromega Madison社)(緩衝液)を用いて、1:3(ベクター:インサート)比でライゲーションし、混合物を室温で10分間インキュベーションした。続いて、Top10バクテリア(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)を形質転換した。ベクターがこの抗生物質に耐性のある遺伝子を含有するので、形質転換したバクテリアを、アンピシリン含有LB培地を入れたペトリ皿での成長により選択した。陽性細菌のプラスミドDNAを、MiniPrep法(Qiagen社、ドイツ)により抽出し、続いてこのプラスミド2μgをAscI/PmeI酵素(New England Biolabs社)で消化し、1%アガロースゲルにおいて電気泳動により消化物を分離してインサートの存在を確認する。得られた6324ヌクレオチドプラスミドを、以下pCMV−mApoA1−AscI−MMP9−p144と称する。
【0119】
1.5.9 pCMV−mApoA1−p144へのリンカー配列の導入
タンパク質とペプチドp144との間を移動する可能性のある、この遺伝子から生成した融合タンパク質を提供するために、アミノ酸に翻訳されたときの配列がAPAETKAEPMT(配列番号:13)である可撓性延長リンカーをコードするDNA配列(GCACCAGCAGAAACAAAAGCAGAACCAATGAC、配列番号:53)を導入した。これは、CCCCCCCCCCC(コイル)構造をとり、天然ピルビン酸フェレドキシンオキシドレダクターゼ(1b0pA_2)において結合ペプチドとして存在する。
【0120】
プライマー5’−CGCGCCGGCACCAGCAGAAACAAAAGCAGAACCAATGACAACCTCGCTGGACGCCTCGATAATCTGGGCCATGATGCAGAATTGAGC−3’(FwLINKERp144)(配列番号:35)および5’−GGCCGCTCAATTCTGCATCATGGCCCAGATTATCGAGGCGTCCAGCGAGGTTGTCATTGGTTCTGCTTTTGTTTCTGCTGGTGCCGG−3’(RvLINKERp144)(配列番号:36)を、各々濃度100mMで設計した。各プライマー10μlを混合し、サーマルサイクラーにおいてハイブリダイゼーション(95℃で2分間、52℃で10分間)し、4℃とした。これらのプライマーのハイブリダイゼーションでは、リンカーに対応する配列およびp144に対応する配列で完了するが、5’におけるAscIによる開裂と適合する付着末端および3’におけるNotIと適合する付着末端が残る。
【0121】
プラスミドpCMV−mApoA1−AscI−p144を、AscI(Buffer4、New England Biolabs社)で消化し、PerfectPrep DNA Cleanup(Eppendorf社、ドイツ)でDNAを精製し、続いて、消化緩衝液が不適合であるために、NotI(Buffer3およびBSA、New England Biolabs社)で消化した。1%アガロースゲルでマイグレーションし、開環ベクターをPerfectPrep DNA Cleanup (Eppendorf社、ドイツ)で精製した。産物を、T4DNAリガーゼ(高濃度)および2XRapid Ligation Buffer(Promega Madison社、米国ウイスコンシン州)(緩衝液)を用いて、1:3(ベクター:インサート)比でライゲーションし、混合物を室温で10分間インキュベーションした。続いて、Top10バクテリア(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)を形質転換した。ベクターがこの抗生物質に耐性のある遺伝子を含有するので、形質転換したバクテリアを、アンピシリン含有LB培地を入れたペトリ皿での成長により選択した。得られた6373ヌクレオチドプラスミドを、以下pCMV−mApoA1−AscI−LINKER−p144と称する。最後に、この配列を、配列決定法により確認した。
【0122】
1.実験:
2.1動物:
実験を、雌の免疫適格BALB/cおよびC57BL/6マウスで5〜7週間おこなった(Harlan社、スペイン、バルセロナ)。動物を、特定の外部無病原条件下で、Centro de Investigacion Medica Aplicada(CIMA社、スペイン、パンプローナ)の指示および倫理規定に従って処置した。
【0123】
2.2 動物の取り扱いおよび腫瘍モデル:
各DNAプラスミド(20μg)を、0.9%食塩水(Braun)1.8mlに再懸濁し、27.5G針および2.5mlシリンジ(Becton−Dickinson社、スペイン)を用いて、水圧注入(Liu等,1999,Gene Ther.,6:1258−1266)により、尾静脈を介して導入した。血液試料は、イソフルレン(Forane、Abbott社)の吸入による麻酔後、後眼窩経路により得た。血清を2回の連続遠心分離(9.1xg、5分間)して回収し、−20℃で保存した。非経口麻酔を、ケタミン(Imalgene)とキシラジン(Rompun)との9:1混合物を200μl/マウス腹腔内注射することによりおこなった。温度を、ThermoKlinik温度計(Artsana社、イタリア、Grandateにある)と腹部を接触させることにより測定した。
【0124】
2.2.1 血液分析
血液をマウスから管に採取し、最終濃度0.5%ヘパリン(Mayne社)とした。i)総白血球を測定するために、全血を、容器内で、IsotonII希釈液20mlで1:1000希釈し、測定2分前に、Zap−OglobinII溶解試薬3滴を添加した。ii)総赤血球細胞を測定するために、全血を、容器内で、IsotonII希釈液10mlで1:50000希釈をした。iii)血小板を測定するために、全血を、管内で、IsotonII希釈液500μlで1:25希釈し、4℃、600gの条件で1.5分間遠心分離し、上清を管に移して、IsotonII希釈液20mlで1:400希釈し、Z1 Coulter Particle Counterにより、試料を製造業者により各々推薦されている設定で分析した(全ての材料および試薬は、Beckman Coulter社から入手した)。
【0125】
2.2.2 CT26に対するワクチン接種モデル
遺伝子導入による抗腫瘍効果を分析するために、2種のワクチン接種プロトコルを実施した:
A)0.9%生理食塩水(100μl/マウス)に溶解した、アミノ酸配列SPSYVYHQF(配列番号:54)を有するペプチドAH−1(Proimmune社、英国オックスフォード)(50μg/マウス)と、フロイントの不完全アジュバント(IFA、SIGMA社、スペイン、マドリッド)(100μl/マウス)を用いて、ワクチン接種プロトコルを実施した。混合物を、Branson社SONIFIER250で超音波処理した。各動物に、25G針および1mlシリンジ(Becton−Dickinson社、スペイン)を用いて、混合物200μlを接種した。このとき、100μlをマウスの左側腹に導入し、50μlを足の裏に導入した。7日後、種々の構築物を、水圧注入により投与した(Liu等、1999、Gene Ther.、6:1258−1266)。水圧注入してから7日後、インスリンシリンジ(Becton−Dickinson社、スペイン)を用いて、同系BALB/cマウスの右側腹に、5x105CT26結腸癌細胞を200μlのHBSS(Gibco−BRL社、英国、ペイズリー)に再懸濁したものを皮下注射することにより腫瘍を確立した。
B)遺伝子構築物を水圧注入により投与した。水圧注入してから1日後、ペプチドAH−1でのワクチン接種を、上記の方法で実施した。9日後、5x106個の結腸直腸腺癌細胞(CT26)、皮下注射により接種した。デジタル精密ゲージを用いて、腫瘍の追跡をおこなった。
【0126】
2.3 使用細胞株の詳細な説明
CT26細胞株を、BALB/cマウス結腸直腸腺癌から得、発癌物質N−ニトロソ−N−メチル−ウレタンにより導入し、完全RPMI−1640培地(Gibco−BRL社、英国、ペイズリー)で培養し、56℃で不活性化した10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100mg/mlペニシリン、1%5x10−3β−メルカプトエタノールを添加した。細胞株MC38(マウス腺癌細胞)、完全DMEM(56℃で不活性化した10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100mg/mlペニシリンを添加)において培養した、L929(マウス線維芽細胞由来の細胞)および293(ヒトアデノウイルス型5に属するE1領域を安定導入したヒト胎児腎臓細胞、ECACC第85120602号)。
【0127】
記載の細胞を、加湿インキュベートチャンバー中、37℃、5%CO2雰囲気の条件で培養した。培養瓶およびプレートは、Greiner Bio−one社(ドイツ、Essen)から入手した。
【0128】
2.4 mIFNα1、IFNγおよびNeopterinの測定
mIFNα1濃度を、NUNCマキシソープフラット96ウエルプレートにおいて、ELISA法により測定した。抗mIFNα1中和Ab抗体(RMMA−1、PBL)を、PBS1xで1/1000希釈し、100μl/ウエルをプレーティングし、湿潤環境下4℃でO/Nインキュベーションした。PBS 1x−0.1%Tween−20(pH7.2〜7.4)で5回洗浄後、プレートを、室温で1時間、PBS 1x 1%BSA溶液300μl/ウエルでブロッキングした。血清試料をPBS 1x 1% BSA溶液で1/100希釈し、室温で1時間インキュベーションした。PBS 1x−0.1%Tween−20で5回洗浄後、100μl/ウエルのウサギ抗IFNαポリクローナル抗体(PBL)で1時間インキュベーションし、PBS1x 1%BSA溶液で1/1000希釈した。PBS 1x−0.1%Tween−20で5回洗浄後、100μl/ウエルのHRP−複合ロバα−ウサギIgG(Southern Biotech社、米国カリフォルニア州Birmingham)を添加し、PBS1x1%BSA溶液で1/4000希釈し、室温で1時間保持した。PBS1x−0.1%Tween−20で5回洗浄後、100μl/ウエルのBD OptEIA基質溶液(BD)を添加し、室温かつ暗所で15分後、2N H2SO450μlを添加した。最後に、450nmでの吸光度を測定し、540nmで補正した。
【0129】
血清中IFNγ濃度を、IFN−γ ELISA Set(BD Biosciences社、カリフォルニア州サンディエゴ)で測定した。血清中ネオプテリン濃度を、製造業者から提供された説明書に従って、Neopterin ELISA(IBL社、ハンブルグ)により測定した。
【0130】
2.5 定量的PCR
cDNA 2μlを、iQ SYBR Green Supermix(Bio−Rad社、カリフォルニア州Hercules)を用いて、表1の特定のプライマーとともにインキュベーションした。発現がmIFNα1またはmApoA1により影響されないので、マウスアクチンを使用して遺伝子発現を標準化した。mRNA値を式2ΔCt(式中、ΔCtは、mアクチンと標的遺伝子との間の閾値サイクル差を示す)により表した。
【0131】
表1 使用プライマーリスト
【表4】
【表5】
【0132】
2.6 In vivo Killing
雌BALB/cマウス(N=3/群)に、0日目に、pCMV−LacZ 20μgおよび検討する各構築物(i)pCMV−mApoA1、ii)pCMV−IFNα1、iii)pCMV−mApo−IFN、iv)0.9%生理食塩水(Braun社)に溶解したpCMV−mIFN−ApoA1)20μgを、上記した水圧注入により免疫化した。7日目に、非免疫化BALB/cマウス脾臓から得た脾細胞を単離し、赤血球細胞をACK溶液(Cambrex社、メリーランド州Walkersville)で溶解した。得られた脾細胞を2群に分け、そのうちの1群を、RPMI1640培地および9μMペプチドTPHPARIGL(β−ガラクトシダーゼ由来の細胞傷害性エピトープ、Proimmune社、英国オックスフォード)を用いて、37℃で30分間インキュベーションした。第2群を、ペプチドなしで同じ処理をした。ペプチドを添加した脾細胞を、2.5μMCFSE(CFSEhigh)(オレゴン州EugeneにあるMolecular Probes社)で標識した。対照脾細胞を、0.25μM CFSE(CFSElow)で標識した。最後に、両方の集団を、1:1比で混合し、107細胞を野生型マウスまたは免疫化マウスに静脈内注射した。24時間後、動物を殺生した。取り出した脾臓を細分し、CFSEhigh細胞とCFSElow細胞との比を、FACSalibur(Becton Dickinson社、米国カリフォルニア州Mountain View)を用いたフローサイトメトリーにより分析した。特異的溶解百分率を、下式中により算出した:
【数1】
【0133】
2.7 SRB1の発現の測定:
C57BL/6マウス脾臓由来の脾細胞を、単離した。取り出し、細分した脾臓を8群に分け、それらのうちの4群を、ウサギ抗SR−B1ポリクローナル抗体(Biologicals Littleton社、コロラド州Novus)およびBD Pharmigen抗体とともに、10分間インキュベーションした:i)CD4+細胞集団を定義するためのR−PE−複合ラット抗マウスCD4(L3T4)モノクローナル抗体、およびCD8+細胞集団を定義するためのAPC複合ラット抗マウスCD8a(Ly−2)モノクローナル抗体、ii)NK細胞集団を定義するためのAPC−複合マウス抗マウスNK−1.1(NKR−P1BおよびNKR−P1C)モノクローナル抗体、iii)単球
細胞集団を定義するためのAPC−ラット抗マウスCD11b、iv)樹状細胞集団を定義するためのAPC− CD11c。その他の4群を、対照として使用し、抗SRB1なしで、それぞれの抗体とともに、10分間インキュベーションした。標識脾細胞を、PBSおよび5%ウシ胎仔血清で洗浄し、FITC複合ロバ抗ウサギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch社、ペンシルベニア州West Grove)とともに、10分間インキュベーションした。このように染色した試料を、FACSalibur(Becton Dickinson社、米国カリフォルニア州Mountain View)を用いて、フローサイトメトリーにより検討した。
【0134】
2.8 臭化ナトリウム勾配での分画遠心法によるHDLの単離:
プラスミドmApoA1、IFNα1、Apo−IFN、IFN−ApoまたはApoAI−リンカー−P144を水圧注入してから24時間後、血液をマウスから管に採取し、最終濃度0.5%ヘパリン(Mayne)とし、直ちに血漿を遠心分離(5000g、20分間)により抽出した。
【0135】
種々の密度の臭化ナトリウム(NaBr)溶液を、蒸留水で25mLの最終溶液とした。EDTAを最終濃度0.05%(w/v)で添加した。NaBr(Fluka社)を添加して溶液を得た:0.225g(ρ=1.006g/ml)、1.431g(ρ=1.04g/ml)、7.085g(ρ=1.21g/ml)および13.573g(ρ=1.4 g/ml)。NaBrは高吸湿性の塩であるので、密度を確認し、必要なときに蒸留水を添加して補正した。
【0136】
超遠心分離後の浮遊によりリポタンパク質を順次分離する方法を、Rodriguez−Sureda等(Analytical Biochemistry 303、73−77(2002))により記載されたプロトコルを少し改良して、TLA100.4ロータ(Beckman Coulter社)を備えたUltracentrifuge Optima MAXにおいて、2〜4mLのマウス血漿(試料に応じて一つとする)から、以下の密度でおこなった:VLDL<1.006g/mL、LDL1.006〜1.04g/mLおよびHDL1.04〜1.21g/mL。i)VLDLの単離:マウス血漿400μlを3mlポリカーボネート管に移し、ρ=1.006g/ml NaBr溶液1100μlを添加した。試料を、2時間、4℃、336000gの条件で遠心分離した。上清約650μlを、ピペットで採取し、−20℃で保存した。ii)LDLの単離:残り容積の沈殿物に、下式で算出された容積のρ=1.4g/ml NaBr溶液を添加することにより密度を1.04とした。
【数2】
【0137】
ρ=1.04g/ml NaBr溶液で容積を1.5mlとし、試料を2.5時間、4℃、336000gの条件で遠心分離した。上清300〜400μlをピペットで採取し、−20℃で保存した。iii)HDLの単離:沈殿物約800μlを新しい管に移し、上記したようにして密度を1.21g/mLとし、ρ=1.21g/ml NaBr溶液で容積を1.5mLとした。試料を、3.5時間、4℃、336000gの条件で遠心分離し、HDLに相当する上清画分約400μlおよびリポタンパク質不含有血漿(LDP)に相当する沈殿画分を採取し、−20℃で保存した。
【0138】
2.9 mApoA1に対する電気泳動および免疫ブロッティング
各試料について、HDLまたはLDP画分25μlを、4−20%Tris−ヘペス PAGE LongLife iGels(Nusep社)勾配ゲルで分離し、ニトロセルロース膜(Whatman社)に移した。タンパク質を、mApoA1に対するヤギポリクローナル抗体、1:200希釈(ヤギポリクローナル抗アポリポタンパク質A1、Santa Cruz Biotechnology社)およびヤギIgGに対する抗体、1:20000希釈(抗ヤギIgG(全分子)−HRP複合体、Sigma−Aldrich社)を用いて検出した。膜を、ECLプラス ウエスタンブロッティング検出試薬(Amersham社)を用いて展開した。
【0139】
2.10 IFN活性バイオアッセイ:細胞変性効果(CPE):
Apo−IFNおよびIFN−Apoを含有するマウス血漿から単離したHDL画分のIFN活性を、活性バイオアッセイにより算出し、IFNが脳心筋炎溶菌ウイルス(EMCV)の細胞変性活性に対して細胞を保護する能力を、試料を順次希釈により、広範囲なプレーティングしたIFN濃度にわたって、測定した。この希釈で、3x105L929細胞/ウエルを、96−ウエルCellstar細胞培養プレート(Greiner Bio−one社)にプレーティングし、37℃、5%CO2で、O/Nインキュベーションして、付着細胞の単層を形成した。次に、同量のEMCV(pfu/ウエル)を添加し、対照として使用した未処理細胞が溶解するまで24時間インキュベーションした。この時点で、IFN効果により保護されている生存細胞を、製造業者の説明書に従って、ViaLight Plus Kit展開溶液(Lonza社)を用いて、光度法により測定した。読み取り値を、プロットして用量−反応曲線(Prism5、GraphPad Software社)を作成した。この曲線から、抗ウイルス活性でのIFN製剤の効力を、各アッセイに使用されるrIFNα組み換えタンパク質標準(PBL)の希釈を参照して算出することができる。
【0140】
2.11 rIFNおよび単離したHDL IFN−Apo画分を用いた実験
活性バイオアッセイにより測定された10000IUのマウスrIFNアルファ(CHO由来マウス、Hycult Biotechnol社)または10000IUのHDL IFN−Apoを、マウスに後眼窩注射した。
【0141】
2.12 データの統計的分析
データの統計的分析を、Prism5コンピュータプログラム(GraphPad Software社)を用いておこなった。腫瘍発生データを、Kaplan−Meierグラフで表し、対数順位検定により分析した。種々の時間で検討したデータを、反復測定ANOVAにより分析後、ボンフェローニ検定をおこなった。残りのパラメータを、ANOVAにより分析後、Dunnettの事後分析により多重比較した。p<0.05値は、有意であると考えられた。
【0142】
実施例2
キメラ構築物ApoA1−IFNαの水圧投与より、血清IFN濃度が増加する
血清マウスIFNα濃度のレベルを比較するために、アポリポタンパク質AI(ApoAI)、マウスインターフェロンアルファ1(IFNα1)、Apo−IFN(ApoA1とIFNα1の融合物)またはIFN−Apo(IFNα1とApoA1の融合物)を発現するプラスミドを、水圧注入によりマウス4匹からなる群に投与する。6時間後および1日目、3日目、6日目および9日目に得られた血清を、サンドイッチELISAにより分析した。ApoA1を発現する対照プラスミドを投与したマウスの血清は、検出可能なIFNα濃度を示さず、水圧投与自体またはApoA1の発現は、内在性IFNαの発現を誘発しなかった(図1)。IFNα1を発現するプラスミドを注射したマウスは、6時間後高IFNα1濃度となり、急速に減少した(図1)。Apo−IFNまたはIFN−Apoをコードするプラスミドを投与したマウスは、1日目でより高い血清インターフェロン濃度を有していた。さらに、プラスミドIFNα1を注射したマウスとは異なり、3日目で高IFNα濃度が得られた(図1)。したがって、IFNαとApoA1の融合タンパク質を発現する構築物は、より高くかつより持続した血清IFNα濃度を有している。
【0143】
実施例3
メッセンジャーRNA動態は、キメラ構築物ApoA1−IFNαにおいて変化しない
血清IFNα濃度差は、IFNαに関する融合タンパク質の血漿半減期の増加によるか、これらのタンパク質の発現の増加により説明できる。これらの2つの選択肢の間を区別するために、これらの構築物のメッセンジャーRNA(mRNA)動態を分析した。このために、0日目、1日目、3日目および6日目に、ApoA1、IFNα1、Apo−IFNおよびIFN−Apoを発現するプラスミドを水圧注入投与したマウスの肝臓を、採取した。これらの試料のRNAを抽出し、定量的RT−PCRをおこなった。図2から明らかなように、IFNα1 mRNA濃度を、ApoA1試料ではなく、IFNα1、Apo−IFNおよびIFN−Apo試料について、1日目に検出した。mRNA濃度は、IFNαを有する構築物の群間では有意な差はなかった。3日目と6日目に、IFNα1 mRNA濃度は、いずれの試料でも検出されなかった。したがって、mRNA動態はIFNα1含有構築物を投与した全ての群において類似しており、キメラ構築物ApoA1−IFNα1では発現が増加するという仮説を捨てることができる。
【0144】
実施例4
キメラ構築物ApoA1−IFNαを注射したマウスは、より高い血清ネオプテリンおよび体温レベルを有する
i)キメラタンパク質がIFNαの生物学的活性を維持したこと、およびii)より持続するレベルがより高い生物学的活性と相関することを確認するために、IFNαの投与後に増加する2つのパラメータを分析した。プラスミドを投与してから3日後に、これらのパラメータを検討した。このときに、IFNα1を有する構築物により産生されたIFNαは、もはや検出されなかったが、キメラ構築物により産生されたものが検出された。まず、血清ネオプテリン濃度を分析した。ネオプテリンは、I型およびII型インターフェロンにより刺激されたマクロファージにより合成されたGTPのカタボライト産物である。IFNα配列を含む3つのプラスミドは、血清ネオプテリン濃度を増加したが、キメラ構築物のみが顕著に増加した(図3A)。第2に、注射したマウスの腹部の体温を測定した。3つの構築物で、高レベルが観察され、キメラ構築物を投与した後に得られるレベルが際立っている(図3B)。したがって、キメラタンパク質は、インターフェロンにより誘発される2つの生物学的パラメータを増加することができ、生物学的活性を保持し、この活性が3日目における血清IFNα濃度と相関することが明らかである。
【0145】
実施例5
キメラ構築物ApoA1−IFNαはインターフェロン刺激遺伝子の肝臓発現レベルを増加させる
I型インターフェロンの活性には、インターフェロン刺激遺伝子(ISG)によりコードされているタンパク質が介在している。IFNαがそれらの膜受容体に結合した後、シグナル伝達カスケードが活性化され、ISG転写の活性化を生じる。また、キメラ構築物がこれらの遺伝子を誘発するかどうかを確認するために、これらの遺伝子のうちの4個のmRNAレベルを、水圧投与してから3日目に分析した。分析した遺伝子は、IRF1、2’〜5’OAS、USP18、ISG15、Mx1である。図4から明らかなように、キメラ構築物は検討したISGのmRNAレベルを増加する。また、IFNαを発現するプラスミドにより生じた増加は、3日目に血清IFNα濃度がもはや検出されなかったにもかかわらず、検出することができる。
【0146】
実施例6
IFNαを有する構築物は脾細胞の数および活性を増加させる
構築物の免疫刺激活性を調べるために、脾臓細胞の数および活性の増加を、まず分析した。そのために、プラスミドを水圧注入で注射し、6日後に脾臓を細分し、総細胞をカウントし、脾細胞を、主リンパ球集団を同定するための抗体および活性化マーカー(CD69)で標識後、フローサイトメトリーにより分析した。IFNαを有する構築物を注射すると、顕著に脾細胞を増加させた。IFN−Apoをコードする構築物は、アッセイにおいてかなり際立っている(図5A)。種々の脾細胞集団を標識するために、抗CD4抗体をCD4+T細胞マーカーとして;抗CD8をCD8+T細胞マーカーとして;抗CD19をB細胞マーカーとして;抗CD49bをNK細胞マーカーとして使用した。CD4+T細胞との関係で、キメラ構築物は、IFNαとは異なり、活性化CD4+細胞百分率を増加させた(図5B)。しかしながら、IFNαは、顕著ではないがCD8+細胞百分率を増加させた。増加は、Apo−IFNで顕著であり、IFN−Apoでとりわけ高かった(図5C)。活性化B細胞百分率は、CD8+と同じプロファイルに従う。この場合、IFN−Apoのみは、顕著な増加を生じる(図5D)。最後に、NK細胞は、IFNαプラスミドで高活性を示し、このパラメータはキメラ構築物によっては超えられない(図5E)。このデータは、IFN−Apoが高いアジュバント効果を有することができることを示唆している。
【0147】
実施例7
IFN−Apoは細胞傷害性リンパ球により誘発される特異的溶解を増加させる
IFN−Apoのアジュバント効果を確認するために、DNAワクチンにより誘発される細胞傷害活性の増加を、種々の構築物の存在下で分析した。免疫原性β−ガラクトシダーゼタンパク質をコードするLacZ遺伝子を、抗原モデルとして選択した。このタンパク質をコードするプラスミドを、ApoA1、IFNα1、Apo−IFNまたはIFN−Apoをコードするプラスミドとともに、注射した。遺伝子のワクチン接種をしてから7日後、2.5μM CFSEで標識し、β−ガラクトシダーゼタンパク質由来の細胞傷害性エピトープH2Kd TPHPARIGLをロードした脾細胞を、静脈注射した。内部対照として、脾細胞にペプチドなしで、0.25μM CFSEを注射した。24時間後、細胞傷害性エピトープをロードした脾細胞の特異的溶解をフローサイトメトリーにより定量化した。図6において、IFNαを有するApoA1に関してより高い溶解が観察され、Apo−IFNおよびIFN−Apoが続き、これを有する構築物で特異的溶解の最高値が得られる。これらの結果は、CD8+T細胞活性化百分率の結果と相関し、IFN−Apoは、遺伝子ワクチン接種モデルにおける最高のアジュバント効果を有する構築物であると結論することができた。
【0148】
実施例8
SR−BIの発現
アジュバント活性における増加は、IFNαの安定性の増加によるか、またはIFN−ApoのApoA1画分によりIFNαと免疫系細胞との相互作用がより顕著になるからである。後者の仮説を調査するために、ApoA1の主要な受容体、SR−BIの存在を、種々の免疫系集団で分析した。野生型マウスからの脾細胞を、単離し、抗SRB−I抗体および集団を定義するための抗体で標識した。以下の抗体を使用した:CD4+T細胞マーカーとしての抗CD4;CD8+T細胞マーカーとしての抗CD8;NK細胞マーカーとしての抗CD49b;単球/マクロファージマーカーとしての抗CD11b;および樹枝状細胞マーカーとしての抗CD11c。SRB−I受容体は、全ての分析した集団において検出された。免疫系エフェクター細胞(CD4+T細胞、CD8+T細胞およびNK細胞)において、この受容体を発現する細胞の百分率は、15%〜28%の範囲である。この百分率は、単球および樹枝状細胞などの抗原提示能を有する細胞において50%超に上昇する(図7)。この結果は、アジュバント能を増加するための可能な機構の一つは、抗原提示細胞の成熟がより高レベルあることができることを示唆している。
【0149】
実施例9
IFN−Apoは抗腫瘍ワクチン接種プロトコルの効果を向上させる
IFN−ApoがIFNよりも高いアジュバント活性を有することを明らかにした後、この効果がワクチン接種プロトコルにおけるより高い抗腫瘍効果につながるかどうかを評価した。このために、BALB/cマウスに、Apo、IFNまたはIFN−Apoプラスミドを投与し、次の日に、フロイントの不完全アジュバントに細胞傷害性ペプチドAH−1を添加したものをワクチン接種した。このペプチドは、ワクチン接種から9日後に種々の実験群に接種したCT26腫瘍株により提示される。ワクチン接種とApoプラスミドを水圧注入した対照群のマウスのほとんどは、CT26腫瘍細胞の接種部位において皮下腫瘍を生じた。ワクチン接種に加えてIFNを投与したマウスは、対照群とは大きくは異ならない挙動を示す。しかしながら、ワクチン接種とIFN−Apoプラスミドを投与したマウスの約60%は、腫瘍細胞を拒絶できかつ実験の30日全体を通じて腫瘍を提示しなかった(図8)。したがって、IFN−Apoのアジュバント効果が大きいほど、ワクチン接種プロトコル効果が増加する。
【0150】
実施例10
IFN−ApoはIFNよりも血液毒性が低い
IFNの限界の一つは、そのかなりの血液毒性にあり、それにより、強い白血球減少および/または血小板減少を生じた特定の患者の治療を停止しなければならないことがある。種々の構築物を水圧投与した後、血中の白血球および血小板がどのようになるかを分析した。図9Aから、インターフェロンを有する全ての構築物は、プラスミドを水圧投与してから1日後の白血球の血中レベルが低いことが明らかである。この初期の影響は、IFNについて記載の二次リンパ器官からの白血球の出口をブロックすることによりもたらされる(Shiow LR等、Nature.440(7083):540−4(2006))。しかしながら、3日目に、IFNの抗増殖性による毒作用があるとき、IFNで処置したマウスのみが低レベルを示した。IFN−Apoで処置したマウスにおいて、血中白血球がそれらの正常レベルに回復した。血小板に関して(図9B)、IFNで処置した動物において、3日目に減少が観察された。この減少は、IFN−Apoで処置したマウスにおいて顕著に低かった。したがって、IFN−Apoは、白血球と血小板の両方のIFNにより生じる減少程度を減少させる。
【0151】
実施例11
IFN−Apoは脳におけるインターフェロン誘発遺伝子の増加がIFNより少ない
特定の患者における使用を制限するIFNの別の主要な悪影響は、神経精神病学的障害である。中枢神経系における新規な融合分子の影響を検討するために、BALB/cマウスに、種々の構築物をコードするプラスミドを注射し、24時間後に、マウスを殺生し、それらの脳を摘出した。種々の群におけるインターフェロン誘発遺伝子(ISG)の増加(図10)を、定量的RT−PCRにより分析した。融合タンパク質の血漿濃度はIFNよりも高い(図1)けれども、ISGの増加は、IFNにおいて、IFN−Apo分子よりも顕著に大きかった。このデータは、IFNへのApo分子の融合が血液−脳バリア(BBB)通路を変更することを示している。0.02%〜0.18%の血漿インターフェロンアルファは、受動拡散によりBBBを妨害する(Greig、N.H.等、J Pharmacol Exp Ther、245(2):574−80(1988);Greischel、A.等、Arzneimittelforschung、38(10):1539〜43(1988);Smith、R.A.等、Clin Pharmacol Ther.37(1):85−8(1985))。したがって、脳中濃度は、血漿濃度に比例する。これに対して、HDLのBBB通路は、SR−BIによる活性輸送により生じ、非常に制御されかつ低い濃度が維持される(Karasinska、J.M.等、J Neurosci.29(11):3579−89(2009))。本発明者等の結果は、アポリポタンパク質A1への生物学的活性化合物の結合により、これらのキメラ分子がHDLのBBBを介した輸送機構に従うことになることを示唆している。
【0152】
実施例12
IFN−Apo融合タンパク質は、循環し、高密度リポタンパク質(HDL)に組み込まれる
血液中に存在するアポリポタンパク質A1の約97%は、高密度リポタンパク質と称される高分子のリポタンパク質複合体の形態で循環する。融合タンパク質がHDLに組み込まれることができるかどうかを検討するために、IFNおよびIFN−Apo分子をコードするプラスミドを水圧経路により注射してから24時間後に、HDLを、NaBr勾配の分画遠心法により血清から単離した。IFNバイオアッセイ、すなわち、ウイルスの細胞変性効果からの保護のアッセイを、これらの画分を用いておこなった。段階希釈においてIFNを有する試料とともに上記でインキュベーションした細胞を、細胞変性ウイルスと比較する。試料にインターフェロンがある場合、ウイルスは前処理した細胞を溶解できないであろう。IFNをコードするプラスミドを投与したマウスから得たHDLは、脳脊髄炎ウイルスの細胞変性効果から細胞を保護することができなかった。このことは、IFNが循環しHDLに結合しないことを示している。これに対して、2つのIFN−Apo分子は、HDLにおけるこの手法により実際に検出することができる(図11A)。その後、ウエスタンブロットをおこなって、HDL不含(HDL−)血清画分および各群実験のHDL(HDL+)の画分中のアポリポタンパク質A1を検出した。アポリポタンパク質A1は、いずれのHDL枯渇画分にも検出されなかった。このことは、HDLが正しく単離されたことを示している。Apoプラスミドを投与した群と、IFNを投与した群の両方において、HDLの画分において、内在性アポリポタンパク質A1の高さに相当する1つのバンドだけが検出された。これに対して、融合分子に相当するApo−IFN分子を有する群において、より大きな高さを有するバンドが検出された。IFN−Apo分子の場合において、内在性ApoA1の他に2つのバンドが検出された。これは、キメラタンパク質の一部分において、二量体が形成されたことを示している(図11B)。この現象は、C末端がこの構築物において自由であり、他のApoA1分子との相互作用ができることによるものである。このデータは、融合分子が高密度リポタンパク質に組み込まれることができることを示している。したがって、これらの分子の生体内分布は、HDLの生体内分布を支配する法則により支配されている。これは、少なくとも部分的にIFN活性の一部分で観察される大きな変化を説明している。
【0153】
実施例13
IFN−Apoを含むHDLを再投与すると、水圧投与後に観察される性質が維持される
IFN−Apoをコードするプラスミドを投与したマウスの血清からIFN−Apoを含むHDLを精製できる可能性があり、生理学的IFN−Apoナノリポ粒子を提供して生体外と生体内の両方の特性を検討することができる。IFN−Apoを有するHDLを精製し、IFN10000IU/マウスに相当する量を投与した。3日目に、血中のリンパ球数と血小板数を分析した。組み換えIFNの投与量では、これらのパラメータを減少させることはできなかった。しかしながら、IFN−ApoのHDLを投与したマウスは、顕著に高いレベルを示した(図12A)。この現象は、IFN−ApoがIFNよりも効率的に潜在的な造血細胞増殖を刺激するという事実によるものである(Essers MA等、Nature.2月11日(2009))。1日目において、IFNにより誘発される鬱状態を、これらのマウスで測定した。ここでも、組み換えIFNを投与したマウスと、IFN−ApoのHDLを同等の投与量で投与したマウスとの間には大きな差がある。水圧投与後に得られるデータは再現される。
【0154】
実施例14
ApoA1−リンカー−P144構築物は、IL12−介在IFNγ誘発を増加する
インターロイキン12(IL12)は、強力な抗腫瘍活性を有する免疫刺激サイトカインである。その活性は、IFNγにより実質的もたらされる。このメディエーターの産生は、TGFβにより調整され、したがって、阻害ペプチドp17またはp144によるブロッキングは、IFNγ誘発を増加し、したがって、IL12の抗腫瘍活性を増加する。種々のペプチド配列により結合されたApoA1およびTGFβ阻害ペプチドにより形成されたキメラ構築物がIl12介在IFNγ誘発を増加するかどうかを検討するために、マウスIL12をコードするプラスミドおよび種々の構築物をコードするプラスミドを、水圧注入により投与した。ApoA1を、対照として使用した。2つの構築物を、p17を用いて生成した:i)ApoA1シグナルペプチドが先にあるペプチドp17をコードする配列を含むspP17であり、細胞外培地へのペプチドp17の放出が得られる、ii)ApoA1をコードする遺伝子、続いて3つの結合アミノ酸(GAP)、およびp17をコードする配列を含むApoA1−P17。構築物spP144およびApoA1−P144を、p144を用いて生成し、p17をコードする配列を、p144をコードする配列と置き換える。別の2つの構築物をさらに生成した:i)結合ペプチドとしてのメタロプロテイナーゼ9(MMP9)の標的を含むApoA1−MMP9−P144、ii)結合ペプチドとしての延長配置を有する配列を含むApoA1−リンカー−P144。
【0155】
水圧注入してから4日後、血清IFNγ濃度を、ELISAにより分析した。IL12およびApoA1をコードするプラスミドを注射することにより、検出可能なレベルのIFNγを生成した。p17を有する構築物を注射しても、これらのレベルは増加しなかった(図13A)。しかしながら、p144を生成する構築物を投与すると、IFNγレベルが大きく増加した(図13B)。構築物ApoA1−リンカー−P144は、p144単独により誘発されたよりも顕著に大きな最高レベルを生成した(図13B)。不思議なことに、構築物ApoA1−P144およびApoA1−MMP9−P144は、IFNγ誘発を増加しなかった。このことは、結合ペプチド配列がキメラ構築物の活性に大きな影響を有することを示している。構築物ApoA1−MMP9−P144は、MMP9の存在下でだけ活性である潜在性インヒビターの一例であり、ApoA1への配列結合を開裂すると、MMP9が発現する部位において活性ペプチドp144を放出するであろう。このプロテアーゼは、数多くの種類の腫瘍、例えば、肝細胞癌、および腫瘍間質に侵入する骨髄サプレッサー細胞により発現する。したがって、この構築物は、主に作用しなければならない部位にp144を放出でき、全身性TGFβ阻害の悪影響を制限することができる。
【0156】
実施例15
p17およびApoA1−リンカー−P144を発現する構築物は、腫瘍のないワクチン接種マウスの百分率を増加する
独立した実験モデルでのTGFβ阻害ペプチドを有する構築物の生物学的活性を確認するために、BALB/cマウスに、フロイントの不完全アジュバントを用いて細胞傷害性エピトープH2Kd AH1(SPSYVYHQF、配列番号:54)をワクチン接種した。7日後、種々の構築物を、水圧注入により投与した。さらに7日後、5x105CT26細胞を、皮下接種した。腫瘍のない動物の百分率を、経時的に分析した。ワクチン、およびApoA1を発現する対照構築物を投与した群において、全てのマウスは、CT26細胞接種部位において皮下腫瘍を生じた。しかしながら、p17を発現する2種の構築物の1つを投与したマウスの50%超は、実験の終わりに腫瘍のない状態のままであった(図14A)。p144を有する構築物の場合において、ペプチドp144を発現する構築物、構築物ApoA1−P144および構築物ApoA1−MMp9−P144は、極めて限定した効果を有し、実験の終わりでは、腫瘍のないマウスは20%未満であった。
驚くべきことに、構築物ApoAI−リンカー−P144は、85%を超えるマウスにおいて、主要の発症を防止することができた。
【0157】
実施例16
ApoA1−リンカー−P144タンパク質は、循環して高密度リポタンパク質に組み込まれる
ApoA1−リンカー−P144タンパク質が、HDLと複合体を形成するかどうかを検討するために、HDLを含む画分を、ApoA1−リンカーP144をコードするプラスミドを水圧経路により投与したマウスの血清から単離した。このため、血清を、NaBr勾配で分画遠心分離した。HDLを精製した後、ウエスタンブロットをおこなってアポリポタンパク質A1を検出した。内在性アポリポタンパク質A1に対応する主要バンドの他に、ApoA1−リンカー−P144分子に対するより大きな高さを有するバンドが検出された(図15)。したがって、融合治療ペプチドを有するアポリポタンパク質A1は、生理学的ナノリポ粒子の形態で組み込まれかつ循環することができる。
【0158】
実施例17
ApoA1−リンカー−P144を含むHDLは、IL−12により誘発されるIFNγを増加する
ApoA1−リンカー−P144を含むHDLを精製することにより、TGFβ活性を阻害する能力を有する生理学的ナノリポ粒子を得ることができる。これらの生体内活性を示すために、ApoA1−リンカー−P144を発現する動物から精製したHDLを、マウスに接種した。このマウスには、ドキシサイクリンの投与に反応してインターロイキン12を発現するプラスミドの水圧注入投与を同時におこなった。陽性対照として、プラスミドApoA1−リンカー−P144を共投与した。HDLの投与後に得られるIFNγ濃度は、水圧注入後に得られるものと類似している(図16)。両方の場合において、TGFβインヒビターの存在なしでのIL−12プラスミドの誘発後に得られるよりも顕著に高い。したがって、HDLに存在するペプチドP144は生体内でTGFβをブロックすることができ、IFNγのより大きな誘発を可能とする。したがって、アポリポタンパク質AIとの融合を介してHDLにペプチドを組み込むことは、新規な治療ペプチドを考案する魅力的な戦略である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の方法による治療を意図した化合物を、安定化しかつ標的組織に対してターゲッティングする方法の分野に包含される。本発明は、特にアポリポタンパク質Aが、当該タンパク質に対して高い親和性を有する結合部位をその表面に有する全ての組織に対し、治療を意図した化合物をターゲッティングすることができる能力に基づくものである。
【背景技術】
【0002】
活性成分として巨大分子(macromolecules)を用いた新しい治療形式の開発により、当該分子を安定化しかつそれらが相応する細胞標的に対してターゲッティングする効果的な形態を開発することが必要となった。標的組織に対する特異的ターゲッティングを必要とする治療の例として、特異的成長因子を用いた治療、あるいは標的組織に不在または欠乏している遺伝子を戻すために用いられる遺伝子を用いた治療などがある。ウイルスベクターに基づかない組織特異的な系では、細胞特異性が低いかあるいはそれが無いという問題を有することが多い。
【0003】
異なる系として、治療化合物を含む脂質小胞であり、肝細胞膜に対して親和性を示す分子が小胞表面にあることによるターゲッティングに基づいて、治療化合物を肝細胞に対してターゲッティングする系が記載されている。
【0004】
例えば、WO07130873は、微小胞を肝細胞に対してターゲティングするに際し、当該カプセルの表面に、肝細胞に存在するアシアログリコプロテイン、ヒアルロナン、N−アセチル−ガラクトサミンまたはマンノース受容体によって特異的に認識される化合物を組み込むことによってターゲッティングする方法を記載している。WO02086091は、ナノ小胞を肝細胞に対して、前記ナノ小胞にB型肝炎ウイルスコートタンパク質を組み込むことによりターゲッティングする方法を記載している。WO200473684は、表面にApoA1を含むリン脂質円盤状小胞に基づいて、部分的に疎水性の化合物を肝細胞に対してターゲッティングする方法を記載している。Lou等(World J.Gastroenterol.、2005、11:954−959)は、高密度リポタンパク質(HDL)を特異的キャリアとして用いて、HDLがコレステロールなどの疎水性化合物を収容する能力に基づいて、脂溶性抗腫瘍化合物を肝細胞の癌細胞にターゲッティングする方法
を記載している。
【0005】
最後に、Kim等(Molecular Therapy、 2007、 15:1145−1152)は、干渉RNAを肝細胞に対して、干渉RNAを含みかつ表面にApoA−Iを有するリポソームに基づいてターゲッティングする方法を記載している。しかしながら、これらの方法には、前記化合物が、リン脂質の疎水性画分と接触している小胞または人工膜内に収容されているため、疎水性化合物しか担持することができないという欠点を有する。
【0006】
あるいは、親水性化合物を肝臓に、肝臓により特異的に捕捉される薬剤と前記化合物との複合体を用いることによって、送達するが可能となる。例えば、Kramer等(J.Biol.Chem.、1992、267:18598−18604)は、治療化合物(細胞増殖抑制製剤クロラムブシルおよびプロリル−4ヒドロキシラーゼI−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−β−Ala−Phe−5−オキサプロリン−Glyインヒビター)を肝細胞に対して、前記化合物を胆汁酸に結合することによりターゲッティングする方法を記載している。しかしながら、この種の結合では、肝臓への送達のみが可能であり、化合物を治療を意図した他の組織に投与することができない。
【0007】
WO04082720は、治療活性を有する化合物を肝細胞に対して、B型肝炎ウイルス外被タンパク質により形成された擬ウイルス粒子に前記化合物を組み込むことによりターゲッティングする方法を記載している。しかしながら、これらのビヒクルは、血漿半減期が短く、持続した治療血漿濃度に至るには継続した投与または高用量での投与が必要であるという問題がある。さらに、擬ウイルス粒子を形成しているウイルスタンパク質は、体液性免疫反応を起こす。
【0008】
WO8702061Aは、LDL受容体を発現する組織に対して、アポリポタンパク質BまたはE受容体結合領域および活性成分により形成される融合タンパク質を使用することにより、化合物をターゲッティングする方法を記載している。
【0009】
インターフェロンの半減期が短い問題は、WO07021494により取り扱われた。WO07021494は、アルブミンとインターフェロンにより形成される融合タンパク質を記載している。これらの融合体では、血漿半減期が約14日である。
【0010】
したがって、治療化合物を特異的に肝細胞にターゲッティングし、かつ複合体の血漿半減期を長くすることができる好適なビヒクルが必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
第一の態様によれば、本発明は、
(i)ApoA分子またはその機能的に同等な変異体と、
(ii)治療を意図した化合物と、
を含んでなり、
成分(i)と成分(ii)とが共有結合してなる、複合体に関する。
【0012】
第二の態様によれば、本発明は、前記本発明による複合体をコードするポリヌクレオチド、またはそれを含んでなる遺伝子構築物であって、治療を意図した化合物(ii)が成分(i)と一本鎖を形成するポリペプチドであるものに関する。
【0013】
一連の態様によれば、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなるベクター、および本発明によるポリヌクレオチド、遺伝子構築物もしくはベクター、または本発明の複合体を含んでなるナノリポ粒子を含んでなる宿主細胞に関する。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、医薬として用いられる、本発明による複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、宿主細胞またはナノリポ粒子に関する。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、肝疾患または免疫系と関連した疾患の治療のための、本発明による複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、宿主細胞またはナノリポ粒子に関する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、
(a)成分(ii)がTGF−β1阻害ペプチドである、本発明による複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、宿主細胞、ナノリポ粒子または医薬製剤からなる群から選択される第1成分と、
(b)免疫刺激サイトカイン、前記サイトカインをコードしているポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、TGF−β1阻害ペプチド、細胞毒性薬またはそれらの組み合わせを含んでなる群から選択される第2成分と
を含んでなる組成物に関する。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、医薬として使用するための、特に癌の治療のための、本発明の組み合わせに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】IFNαの発現の動態。BALB/cマウスに、ApoA1(Apo)、IFNα(IFN)、Apo−IFN(AF)またはIFN−Apo(IA)を発現するプラスミドを水圧注入投与した。6時間後および1日目、3日目、6日目および9日目に、血液を採取し、血清IFNα濃度を、ELISAにより分析した。1群当たり動物4匹を用いた代表的な実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。結果を、反復測定ANOVAにより分析後、ボンフェローニ試験をおこなった。プラスミドAFおよびIAにより誘発された1日目と3日目のIFNα濃度と、プラスミドIFNにより誘発された濃度との間には有意の差があった(p<0.001)。
【図2】IFNα1の肝臓mRNAの定量的RT−PCR。水圧注入を、各プラスミドおよび各日の検討のために、3匹のBALB/cマウスで実施した。1日目、3日目および6日目に、動物を殺生し、肝臓を摘出した。肝臓mRNAを精製し、定量的RT−PCRを、IFNα1遺伝子について実施した。代表的実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。結果を、反復測定ANOVAにより分析後、ボンフェローニ試験をおこなった。プラスミドIFNα1、AFおよびIAにより誘発されたmRNA濃度の間には有意の差はなかった。
【図3】体温および血清ネオプテリン濃度。IFNαを有する構築物をコードするプラスミドを、BALB/cマウスに投与した。3日目に、血液を採取し、血清ネオプテリン(A)濃度を、ELISAにより測定した。同時に、体温(B)を分析した。2つの独立した実験(N=6マウス)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFNαを有する群とApoA1を有する対照群を比較した。***p<0.0001。
【図4】IFNα1により誘発できる遺伝子の肝臓mRNAの定量的RT−PCR。水圧注入を、BALB/cマウスにおいてIFNα1を有する構築物を発現するプラスミドを用いておこなった。3日目に、動物を殺生し、肝臓を摘出した。肝臓mRNAを精製し、定量的RT−PCRを、2’−5’OAS(A)、USP18(B)、ISG15(C)およびIRF1(D)遺伝子についておこなった。2つの独立した実験(N=6マウス)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFNαを有する群とApoA1を有する対照群を比較した。*p<0.05;***p<0.0001。
【図5A】脾細胞の数および活性化の増加。BALB/cマウスに、水圧経路によりIFNαを有する種々の構築物を投与し、6日後、マウスを殺生し、脾臓を単離した。脾細胞(A)の数、およびCD4+T細胞(B)、CD8+T細胞(C)、B細胞(D)およびNK細胞(E)における初期活性化マーカーCD69の発現を分析した。1群当たり7匹の動物を用いた代表的な実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFNαを有する群とApoA1を有する対照群を比較した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図5BC】図5A参照。
【図5DE】図5A参照。
【図6】IFNαを発現する構築物の存在下での遺伝子ワクチン接種により誘発された特異的溶解の増加。BALB/cマウスをβ−ガラクトシダーゼを発現するプラスミドの水圧注入により免疫化し、IFNαを有する種々の構築物を発現するプラスミドをアジュバントとして共投与した。7日後、細胞傷害性ペプチドおよび高濃度のCFSEをロードした標的細胞、並びに低濃度のCFSEを有する対照細胞を、静脈注射した。24時間後、動物を殺生し、標的細胞と対照細胞の割合を分析して、特異的溶解の百分率を算出した。各群を代表するヒストグラム(A)および1群当たり3匹の動物を用いた代表的実験の平均値および平均値の標準誤差(B)を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、Apo−IFNおよびIFN−Apoの群とIFNαを有する群とを比較した。**p<0.001。
【図7AB】種々の免疫系細胞集団におけるSR−BIの発現。BALB/cマウスからの脾細胞を単離し、抗SR−BI抗体並びにCD4+T細胞(抗CD4)(A)、CD8+ リンパ球(抗CD8)(B)、NK細胞(抗CD49b)(C)、単球/マクロファージ(抗CD11b)(D)または樹枝状細胞(抗CD11c)(E)を区別するための抗体で標識した。
【図7CD】図7AB参照。
【図7E】図7AB参照。
【図8】抗腫瘍ワクチン接種モデルにおけるアジュバント効果の影響。各処置群について、11〜17匹のBALB/cマウスに、ApoA1(Apo)、IFNα(IFN)またはIFN−Apo(IA)を発現するプラスミドを水圧注入により投与した。24時間後、これらに、フロイントの不完全アジュバントに細胞傷害性ペプチドAH1を添加したものをワクチン接種した。9日後、5x106CT26細胞を皮下接種し、腫瘍の発現を経時的に観察した。経時的な腫瘍のないマウスの百分率を示す。実験群を、対数順位検定により対照群と比較した。**p<0.01。
【図9】循環白血球および血小板の動態。IFNαを有する構築物をコードするプラスミドを、BALB/cマウスに投与した。血液を、水圧注入してから1日目に1つの群から採取し、3日目にもう1つの群から採取し、6日目に最後の群から採取した。白血球(A)数および血小板(B)数を、製造業者の説明書に従ってZ1 Coulter Particle Counterを用いて定量化した。2つの独立した実験(N=4マウス/日および群)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFN−Apoを有する群とIFNを有する群とを比較した。**p<0.01。
【図10】IFNαにより誘発可能な遺伝子の脳mRNAの定量的RT−PCR。BALB/cマウスにおいて、IFNαを有する構築物を発現するプラスミドを用いて、水圧注入を実施した。1日目に、動物を殺生し、脳を摘出した。脳mRNAを、精製し、定量的RT−PCRを、USP18(A)、ISG15(B)、2’−5’OAS(C)、Mx1(D)およびIRF1(D)遺伝子についておこなった。2つの独立した実験(N=5マウス/群)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFN−Apoを有する群とIFNを有する群とを比較した。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。これは、2を表す1つの実験である。
【図11】融合タンパク質の循環高密度リポタンパク質(HDL)への組み込み。IFNαを有する構築物をコードするプラスミドを、BALB/cマウスに投与した。24時間後、血液を採取し、得られた血清から、HDLをNaBr勾配で分画遠心分離により抽出した。種々の群のHDLにおけるIFNαの存在を、インターフェロンバイオアッセイ、細胞傷害性効果保護アッセイ(A)により分析した。HDLのない(HDL−)血清試料およびHDL含有分画(HDL+)を用いて、ウエスタンブロットをおこなって、アポリポタンパク質AI(B)の存在を測定した。
【図12】IFN−Apoを含有するHDLの投与の血液学的影響。IFN−Apoを含有するHDLのIFNの10000IUに相当する量、10000IUの組み換えIFNまたはPBSを、BALB/cマウスに投与した。3日後、白血球(A)数および血小板(B)数を、製造業者の説明書に従ってZ1 Coulter Particle Counterを用いて定量化した。2つの独立した実験(N=4〜6マウス/日および群)の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、IFN−Apoを有する群とIFNを有する群とを比較した。**p<0.01;*** p<0.001。
【図13】IL12により誘発されたIFNγ誘発の増加。デオキシサイクリンにより誘発可能なプロモーターの制御下でIL12を発現するプラスミド、および対照構築物またはTGFβインヒビターp17(A)またはTGFβインヒビターp144(B)を有する構築物のうちの1つを、水圧注入により投与した。4日後、IFNγの血清濃度を、ELISAにより分析した。1群当たり3匹の動物を用いた代表的な実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、実験群と対照群とを比較した。**p<0.001。
【図14】CT26腫瘍の発現に対する防御。BALB/cマウスに、フロイント不完全アジュバントに細胞傷害性ペプチドAH1を添加したものをワクチン接種した。7日後、TGFβインヒビターを発現する構築物または対照としてのApoA1を水圧注入投与した。別の7日後、5x105CT26細胞を皮下接種し、腫瘍の発現を経時的に観察した。経時的な腫瘍のないマウスの百分率を示す。実験群を、対数順位検定により対照群と比較した。*p<0.05;**p<0.001。
【図15】循環高密度リポタンパク質(HDL)へのApo−リンカー−P144融合タンパク質の組み込み。ApoまたはApo−リンカー−P144を有する構築物をコードするプラスミドを、BALB/cマウスに投与した。24時間後、血液を採取し、得られた血清から、NaBr勾配での分画遠心分離により、HDLを抽出した。HDLを含む画分を用いて、ウエスタンブロットをおこなって、アポリポタンパク質AIの存在を測定した。
【図16】Apo−リンカー−P144を含有するHDLを投与した後にIL12により誘発されるIFNγ誘発の増加。デオキシサイクリンにより誘発可能なプロモーターの制御下でIL12を発現するプラスミドおよび対照構築物(Apo)またはApo−リンカー−P144を発現する別のプラスミドを、水圧注入投与した。最後の群に対して、プラスミドIL12およびApo−リンカー−P144を含むHDL14μg/マウス(腹腔内注射)を投与した。4日後、IFNγの血清濃度を、ELISAにより分析した。1群当たり3匹の動物を用いた代表的な実験の平均値および平均値の標準誤差を示す。データをANOVA、その後にダネット試験により分析し、実験群と対照群とを比較した。** p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.本発明による複合体
本発明者等は、ApoAタンパク質またはその機能的に同等な変異体と、治療を意図した分子とにより形成される複合体は、患者に投与後、血中半減期が、結合なしに、治療を意図した分子を投与した患者で観察されるよりも長いことを見出した。さらに、ApoAと、治療を意図した分子との複合体が、患者の肝臓に特異的に運ばれることで、肝疾患の治療を非常に容易にしかつ他の組織における治療分子の作用による副作用が減少する。
【0020】
したがって、第一の態様によれば、本発明は、
(i)ApoA分子またはその機能的に同等な変異体と、
(ii)治療を意図した化合物と、
を含んでなり、
成分(i)と成分(ii)とが共有結合してなる、複合体に関する。
【0021】
いずれの理論にも拘束されることを望むものではないが、肝組織に対する複合体の親和性は、当該組織がApoAタンパク質に対し特異的な受容体を有し、その自然機能により表面上にApoA−Iを有するHDLを捕捉することによるものであると思われる。さらに、複合体のより長い半減期は、ApoA分子が生体において示す長い半減期(ApoA−Iの場合において、ヒトでは35時間程度、マウスで10時間程度)に関係があると思われる。さらに、表面にApoA−Iに特異的な受容体を発現する他の細胞もあり、これにより他の組織に運ばれる。
【0022】
1.1ApoA分子
本発明に関連して、「ApoAタンパク質」は、高密度リポタンパク質(HDL)の一部分を形成するApoAファミリーに属し、特異的に肝細胞の表面で受容体と相互作用することができ、したがって、前記ApoAタンパク質に結合した意図する分子をこの器官に運ぶ能力が確保できるもの、と理解される。本発明において使用できるApoA分子は、好ましくはApoA−I、ApoA−II、ApoA−III、ApoA−IVおよびApoA−Vまたは機能的に同等なそれらの変異体からなる群から選択される。
【0023】
好ましい実施態様によれば、本発明において用いられるApoAタンパク質は、ApoA−Iタンパク質である。本発明に関連して、ApoA−Iは、高密度リポタンパク質(HDL)の一部分を形成するpre−proApoA−Iタンパク質の成熟形態として理解される。ApoA−Iは、除去されて前駆体を生じる分泌シグナル配列を含む前駆体(pre−proApoA−I)として合成される。シグナル配列は18アミノ酸からなり、プロペプチドは6アミノ酸、およびタンパク質の成熟形態は243アミノ酸からなる。シグナルペプチドを欠きかつプロセッシングされたタンパク質の成熟形態が好ましくは使用される。好ましい実施態様によれば、ApoA−Iタンパク質は、ヒト由来であり、そのアミノ酸配列は、配列番号1(UniProtにおけるアクセス番号P02647)を示すものである。別の好ましい実施態様によれば、ApoA−Iタンパク質は、ネズミ由来、特にマウス由来であり、そのアミノ酸配列は、配列番号2(UniProtにおけるアクセス番号Q00623)を示すものである。別の好ましい実施態様によれば、ApoA−Iタンパク質は、ネズミ由来、特にラット由来であり、そのアミノ酸配列は、配列番号3(UniProtにおけるアクセス番号P04639)を示すものである。
【0024】
ApoA−Iの機能的に同等な変異体は、上記したヒトまたはネズミApoA−I配列の1つ以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失から生じするものであり、肝細胞に存在するHDL受容体を形成するいわゆる「スカベンジャー受容体クラスBタイプI」(SR−BI)と相互作用する能力は実質的にそのまま失われていない、全てのポリペプチドと理解される。HDL受容体と相互作用する能力は、実質的にMonaco等(EMBO J.、1987、6:3253−3260)に記載のようにして、肝細胞膜へのApoA−I結合を検討することによるか、またはApoA−Iまたはその変異体が肝細胞膜受容体へのHDLの結合を阻害する能力を測定することにより求める。肝細胞膜へのApoA−Iの変異体の結合の解離定数は、好ましくは少なくとも10−8M、10−7M、10−6M、10−5Mまたは10−4Mである。
【0025】
本発明におけるApoA−Iの変異体には、ApoA−Iポリペプチドとの類似性または同一性が少なくとも60%、65%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%または95%を示すポリペプチドなどがある。2つのポリペプチド間の同一度は、当業者に広く知られているコンピュータアルゴリズムおよび方法を用いて測定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくはBLASTPアルゴリズム(BLAST Manual、 Altschul、S.等、NCBI NLM NIH Bethesda、Md.20894、Altschul、S.等、J.、1990、Mol.Biol.215:403−410)を用いて測定される。
【0026】
本発明に関連して使用されるApoA−Iの変異体は、好ましくは野生型ApoA−Iに関して長い血中半減期を有しており、ApoA−Iで観察されるよりも大きな血清ApoA−I濃度に到達できる。タンパク質の血中半減期、特にApoA−Iの半減期を測定する方法は、当該技術分野において公知であり、とりわけEisenberg、S.等(J.Lipid Res.、1973、14:446−458)、Blum等(J.Clin.Invest.、1977、 60:795−807)およびGraversen等(J Cardiovasc Pharmacol.、2008、51:170−177)により記載されている標識タンパク質を用いた代謝標識に基づく方法を用いることなどがある。より長い半減期を示す前記変異体の一例として、例えば、Milano(突然変異体R173Cを含有する)と称される変異体が挙げられる。
【0027】
1.2 治療を意図した化合物
本発明に関連して、「治療を意図した化合物」は、疾患の症状を予防または取り除くことのできる化合物と理解される。本発明にあっては、まず、その生物学的活性を実質的に失うことなく、共有結合改変を受け入れ、その結果ApoA−Iまたは機能的に同等なその変異体に結合できる、いずれの治療化合物の使用をも意図している。したがって、本発明は、治療に有効な成分として、小有機分子、ペプチド、ペプチド模倣体、ペプトイド、タンパク質、ポリペプチド、糖タンパク質、オリゴ糖、核酸等を使用することを意図している。
【0028】
例えば、ApoA−Iまたは機能的に同等なその変異体に結合できる化合物には、抗生物質、コリンエステラーゼ剤、アトロピン、スコポラミン、交感神経作動薬、催眠剤、鎮静剤、抗てんかん薬、オピオイド、鎮痛薬、抗炎症薬、ヒスタミン、脂質誘導体、気管支喘息治療薬、解熱鎮痛薬、キサンチン、浸透圧性利尿薬、水銀化合物、チアジド系化合物およびスルホンアミド、炭酸脱水酵素阻害薬、有機硝酸エステル、高血圧治療薬、強心配糖体、抗不整脈薬、オキシトシン、プロスタグランジン、アルカロイド、子宮収縮抑制、抗蠕虫薬、抗原虫薬、抗マラリア剤、抗アメーバ薬、スルホンアミド、ペニシリン、トリメトロピン、セファロスポリン、スルファメトキサゾール、抗真菌剤、キノロン、抗ウイルス剤、抗生物質、アミノグリコシド、テトラサイクリン類、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、アルキル化剤、副腎皮質ホルモン、代謝拮抗薬、抗生物質、放射性同位元素、アザサイオプリン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メトトレキサート、抗凝固剤、血栓溶解剤、血小板凝集阻害剤、下垂体前葉ホルモン、甲状腺ホルモンおよび抗甲状腺ホルモン、エストロゲン薬およびプロゲステロン、男性ホルモン剤、アドレノコルチコトロピン、インスリン、副甲状腺ホルモン、ビタミンDのステロイド誘導体、ビタミン類、(水溶性ビタミン類、例えば、ビタミンB複合体およびアスコルビン酸または脂溶性ビタミン、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンKまたはビタミンE)、抗ヒスタミン薬、抗腫瘍化合物、抗ウイルス化合物、抗真菌化合物などがある。肝臓に影響しているか、または肝臓に原因がある疾患の治療に有用な化合物が好ましく使用される。
【0029】
好ましい実施態様によれば、本発明の複合体の成分(ii)は、ポリペプチド鎖を含んでなる。好ましい実施態様によれば、ポリペプチApoA−Iと、成分(ii)
を構成しているポリペプチドは、一本鎖ポリペプチドを形成する。本発明は、二つのポリペプチドの二つの相対配向を意図している。したがって、好ましい実施態様によれば、成分(i)のC末端は、成分(ii)のN末端に結合している。別の好ましい実施態様によれば、成分(i)のN末端は、成分(ii)のC末端に結合している。好ましくは、ApoA−I複合体が一本鎖ポリペプチドにより形成されるとき、以下のものは形成されない:
(i)ApoA−Iタンパク質のN末端に対して、C末端を介して連結されているS.aureus Aタンパク質。
(ii)血管作動性腸管ペプチド(VIP−1)のN末端に対して、C末端を介して連結されているApoA−Iタンパク質。
(iii)成分(ii)は、プラズミノゲン断片の免疫グロブリン重鎖であるか、またはプラズミノゲン断片である。
(iV)ApoA−Iタンパク質のN末端に対して、C末端を介して連結されているテトラネクチン三量化ドメイン(TTSE)。
【0030】
本発明による複合体を用いて肝臓に運ばれるポリペプチドには、エリトロポエチン(EPO)、レプチン、アドレノコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、体細胞親和性ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、プロラクチン放出ホルモン(PRH)、メラトニン放出ホルモン(MRH)、プロラクチン阻害ホルモン(PIH)、ソマトスタチン、アドレノコルチコトロピンホルモン(ACTH)、体細胞親和性ホルモンまたは成長ホルモン(GH)、黄体ホルモン(LH)、小胞刺激ホルモン(FSH)、チロトロピン(TSHまたは甲状腺刺激ホルモン)、プロラクチン、オキシトシン、抗利尿ホルモン(ADHまたはバソプレッシン)、メラトニン、ミュラー阻害因子、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ガストリン、コレシストキニン(CCK)、Arg−バソプレッシン、甲状腺ホルモン、アゾキシメタン、トリヨードチロニン、LIF、アンフィレグリン、可溶性トロンボモジュリン、SCF、骨形成タンパク質1、BMPF、MGSA、ヘレグリン、メラノトロピン、セクレチン、インシュリン様成長因子I(IGF−I)、インシュリン様成長因子II(IGF−II)、心房ナトリウム利尿性ペプチド(ANP)、ヒト絨毛膜性ゴナドトロピン(hCG)、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵ポリペプチド(PP)、レプチン、神経ペプチドY、レニン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII、第VIII因子、第IX因子、組織因子、第VII因子、第X因子、トロンビン、第V因子、第XI因子、第XIII因子、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン8(IL−8)、インターロイキン9(IL−9)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン11(IL−11)、インターロイキン12(IL−12)、インターロイキン13(IL−13)、インターロイキン14(IL−14)、インターロイキン15(IL−15)、インターロイキン16(IL−16)、インターロイキン24(IL−24)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターフェロンアルファ、ベータ、ガンマ、CD3、CD134、CD137、ICAM−1、LFA−I、LFA−3、ケモカイン、例えば、RANTES1α、MIP−1α、MIP−1β、神経成長因子(NGF)、Wilmsの腫瘍抑制遺伝子によりコードされているWT1タンパク質、血小板由来成長因子(PDGF)、変異成長因子ベータ(TGF−ベータ)、骨形成たん白質(BMP)、繊維芽細胞成長因子(FGFおよびKGF)、上皮成長因子(EGFおよび関連因子)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(GM−CSF)、グリア成長因子、ケラチノサイト成長因子、内皮成長因子、グリア細胞株由来、神経栄養因子(GDNF)、アルファ1−アンチトリプシン、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、カーディオトロフィン−1(CT−1)、オンコスタチンM(OSM)、セルピン(A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、C1、D1、E1、E2、F1、F2、G1、H1、I1およびI2)、サイクロスポリン、フィブリノゲン、フィブロネクチンのEDAドメイン、ラクトフェリン、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、キモトリプシン、イムノグロビン、ヒルジン、スーパーオキシドジスムターゼ、イミグルセラーゼ、β−グルコセレブロシダーゼ、アルグルコシダーゼ−α、α−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、ガルフルファーゼ、ヒトα−ガラクトシダーゼA、α−1プロテアーゼ阻害剤、ラクターゼ、膵酵素(リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ)、アデノシンデアミナーゼ、免疫グロブリン、アルブミン、ボツリヌストキシンタイプAおよびB、コラゲナーゼ、ヒトデオキシリボヌクレアーゼI、ヒアルロニダーゼ、パパイン、L−アスパラギナーゼ、レピルジン、ストレプトキナーゼ、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)、細胞形質転換因子ベータ(TGF−β)阻害ペプチド、IL10インヒビター、FoxP3インヒビター、TNFαインヒビター、VEGFインヒビター、PD−1インヒビターおよびCD152インヒビターなどがある。
【0031】
好ましい実施態様によれば、本発明による複合体の成分(ii)は、インターフェロン(IFN)である。インターフェロンは、I型インターフェロン、II型インターフェロンおよびIII型インターフェロンとして分類される。I型インターフェロンは、最初は生体内細胞株のウイルス感染に対する阻害活性の結果として見出され(Pestka、S.、Krause、C.D.およびWalter、M.R.2004.Immunol Rev.202:8−32)、いわゆるIFN−α受容体(IFNAR)に結合することにより特徴づけられる、サイトカイン活性を有するポリペプチドファミリーである。それらの配列の相同性に応じて、I型インターフェロンは、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)およびインターフェロン−ω(IFN−ω)として分類される。IFN−αとIFN−βは、ほとんどの有核細胞の表面で発現する単一の二量体受容体を共有する。これらのサイトカインの機能は、感染細胞のアポトーシスおよびウイルス複製阻害による死を促進する機構を開始すると同時に、抗原提示を促進することを考えると、複数種類のウイルス感染に対する免疫応答において極めて重要である。また、サイトカインは、直接にT細胞、B細胞およびNK細胞、ならびに免疫反応における樹枝状細胞の活性を活性化することによりその機能を果たすという最近の実験報告がある(Le Bon A.等、2003.Nat.Immunol.4:1009−1015;Le Bon A.等、2006.J.Immunol.176:4682−4689;Le Bon A.等、2006.J.Immunol.176:2074−8)。II型インターフェロンは、インターフェロンガンマ受容体(IFNGR)に結合され、単一のメンバーとしてIFN−γを含むことを特徴としている。III型インターフェロンは、それらのシグナルを、IL−10受容体2(IL10R2)およびIFNラムダ1受容体(IFNLR1)によって形成される複合体を介して導入し、IFN−λ1、IFN−λ2およびIFN−λ3と称される3種のインターフェロンラムダによって形成される。
【0032】
好ましい実施態様によれば、成分(ii)は、I型インターフェロン、例えば、IFN−α、IFN−β、IFN−δ、IFN−ε、IFN−κ、IFN−τおよびIFN−ωである。特定の実施態様によれば、本発明の組成物に含まれる少なくとも1つのI型インターフェロンは、インターフェロン−アルファ(IFN−α)およびインターフェロン−ベータ(IFN−β)を含む群から選択される。I型インターフェロンがIFN−αであるとき、後者は、ヒトIFN−α遺伝子のファミリーのいずれかの遺伝子メンバーによりコードされているいずれかのインターフェロンに対応することができる。特定の実施態様によれば、少なくとも1つのI型インターフェロンは、IFN−α2a、IFN−α2b、IFN−α4、IFN−α5、IFN−α8およびそれらの組み合わせ(医薬製剤における他の物質との組み合わせを含む)からなる群から選択されるIFN−αである。さらに特定の実施態様によれば、インターフェロンは、IFN−α1であり、好ましくはヒト起源のものである。好ましい実施態様によれば、インターフェロンは、IFN−α5である。
【0033】
I型インターフェロンのリスト、特に本発明において使用することができるIFN−αおよびIFN−βのリストが、Bekisz等(Growth Factors、 2004;22:243−251)およびPetska等(Immunological Reviews、2004;202:8−32)に記載されている。さらに、本発明によれば、複数種のインターフェロン、例えば、IFN−αn1(リンパ芽球腫誘導体)またはIFN−α3(Sendaiウイルス(または別のウイルス)またはウイルス粒子で刺激されたヒト白血球により産生されたインターフェロンの組み合わせ)の組み合わせの使用が提供される。
【0034】
使用されるI型インターフェロンの起源は、本発明において重要な点ではない。これは、天然起源であって生物学的液体または組織から抽出され、精製することもでき、また従来の組み換え遺伝子工学および方法、例えば、SambrookおよびRussel(Molecular Cloning(分子クローニング): to Laboratory manual、J. Sambrook、 D.W. Russel編、2001、第3版、ニューヨークにあるCold Spring Harbor)に記載されているようにして産生してもよく、または当該技術分野において記載されている合成プロセスまたはいずれかの他の通常の方法により製造することもできる。
【0035】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の組成物に含まれている少なくとも1つのI型インターフェロンは、ペグインターフェロンの形態である。ペグインターフェロンを調整するいくつかの例が、US5762923およびUS5766582に記載されている。さらに、すでに市販されているインターフェロン形態(ペグインターフェロンまたは非ペグインターフェロン)のものを使用することもできる。これらには、Hoffmann La Roche社製ROFERON−A(ヒト組み換えIFN−α2a)およびPEGASYS(ペグIFN−α)、Schering社製INTRON−A(ヒト組み換えIFN−α2b)およびPEG−INTRON(ヘグIFN−α2b)、Interferon Sciences社製ALFERON−N(IFN−α3n、天然のインターフェロンの組み合わせ)、またはInterMune Pharmaceuticals社製IFNERGEN(IFN−αcon1)(この配列はコンセンサス配列であり、天然の配列とは正確には対応しない)などがあるが、これらには限定されない。IFN−β製剤、例えば、Biogen Idec社製AVONEX(IFN−β1a)、EMD Serono社製REBIF(IFN−β1a)およびBayer Health Care社製BETASERON(IFN−β1b)も含まれる。
【0036】
好ましい実施態様によれば、本発明による複合体は、C末端を介して融合したApoA1により、およびインターフェロンα1分子のN末端を有する可撓性リンカーにより形成される。別の好ましい実施態様によれば、本発明の複合体は、C末端を介して融合されたインターフェロンα1分子により、およびApoA1分子のN末端を有する可撓性リンカーにより形成される。
【0037】
別の好ましい実施態様によれば、成分(ii)は、TGF−ベータインヒビターである。本発明による複合体の一部分を形成することができるTGF−ベータインヒビターには、TGF−β1における受容体結合部位に結合し、したがって、受容体への結合をブロックするTGF−ベータ1受容体配列から選択されるペプチドインヒビターなどがある。これらの種類のペプチドは、WO200031135に記載されており、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる。好ましい実施態様によれば、TGF−β1阻害ペプチドを、TGF−β1III型受容体から得る。さらに好ましい実施態様によれば、阻害ペプチドは、配列TSLDASIIWAMMQN(配列番号4)を有するペプチドp144である。
【0038】
同様に、本発明によれば、TGFβ1とTGFβ1受容体との間の相互作用を阻害する阻害ペプチドの使用が提供される。ここで、シグナル伝達は、前記相互作用に対する反応で生じ、WO200519244に記載されているファージ表示遺伝子ライブラリーとして同定される。引用することによりWO200519244の全体が本明細書の一部とされる。好ましい実施態様によれば、阻害ペプチドは、配列KRIWFIPRSSWYERA(配列番号5)、ならびにそのトランケート変異体として特徴付けられ、WO2007048857(引用することによりその全体が本明細書の一部とされる)に記載されているように、TGFβ1とその受容体との間の相互作用を阻害する能力を実質的に保存する、ペプチドp17である。
【0039】
1.3 成分ApoAと治療的に活性な化合物との間のリンカー要素
ApoAタンパク質と、ペプチドの性質を有する第2成分を含んでなる本発明の目的とする複合体は、ApoAタンパク質と前記第2成分を直接接続する結合を含んでいてもよく、またはApoAタンパク質とペプチドの性質を有する前記第2成分との間に、リンカーとしての役割を果たす追加のアミノ酸配列を含むことができる。本発明によれば、前記非天然中間体アミノ酸配列は、ドメイン間のヒンジ領域としての役割を果たし、個々のドメインの立体形状を維持しながら、互いに独立して可動である。この意味において、本発明による好ましい非天然中間体アミノ酸配列は、この可動を可能にする構造的延性により特徴づけられるヒンジ領域である。特定の実施態様によれば、前記非天然中間体アミノ酸配列は、非天然可撓性リンカーである。好ましい実施態様によれば、前記可撓性リンカーは、長さが20アミノ酸以下である可撓性リンカーペプチドである。より好ましい実施態様によれば、リンカーペプチドは、グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される2以上のアミノ酸を含んでなる。本発明の好ましい実施態様によれば、前記可撓性リンカーは、ポリグリシンリンカーである。リンカー/スペーサー配列として、例えば、SGGTSGSTSGTGST(配列番号6)、AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号7)またはGGSGGAP(配列番号8)などを挙げることができる。これらの配列は、他のタンパク質ドメインに対して設計されたコイル状らせんを結合するのに使用されてきた(Muller、K.M.、Arndt、K.M.およびAlber、T.、Meth. Enzymology、2000、328:261−281)。前記リンカーは、好ましくはアミノ酸配列GGGVEGGG(配列番号9)を含んでなるか、またはアミノ酸配列GGGVEGGG(配列番号9)からなる。
【0040】
リンカー領域の効果により、ApoAタンパク質および成分(ii)との間に空間が形成される。したがって、ApoAの二次構造は、成分(ii)の存在により影響されることはなく、そして成分(ii)はApoAの二次構造によって影響されることはない。好ましくは、スペーサーは、ペプチドの性質を有している。好ましくは、リンカーペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸または約100個のアミノ酸を含んでなる。
【0041】
リンカーは、二重結合により本発明の複合体の2つの成分の側に伸びた成分に結合でき、好ましくは、スペーサーは実質的に非免疫原性でありおよび/またはシステイン残基を含んでいない。同じようにして、スペーサーの立体構造は、好ましくは直鎖または実質的に直鎖である。
【0042】
スペーサーまたはリンカーペプチドの好ましいものとして、例えば、結合タンパク質の機能を実質的に劣化させることなく、または結合タンパク質のうちの1つの機能を少なくとも実質的に劣化させることなく、タンパク質を結合するのに使用されているものなどである。より好ましくは、スペーサーまたはリンカーは、コイル状らせんを有する構造を含んでなるタンパク質を結合するために使用されている。
【0043】
リンカーは、テトラネクチンの残基53〜56(テトラネクチンにおいてβシートを形成している)および残基57〜59(テトラネクチンにおいてねじれを形成している)(Nielsen、B.B.等、FEBS Lett.412:388−396、1997)。セグメントの配列は、GTKVHMK(配列番号10)である。このリンカーは、野生型テトラネクチンに存在するとき、三量化領域をCRDドメインと結合させるので、一般的に三量化領域を別のドメインに接続するのに好適であるという利点がある。さらに、得られた構築物は、リンカーなしの構築物よりもより免疫原性であることはない。
【0044】
あるいは、ヒトフィブロネクチンからの接続ストランド3からのサブ配列を、アミノ酸1992〜2102(SWISSPROTナンバリング、エントリーP02751)に対応するリンカーとして選択することができる。アミノ酸番号2037〜2049に対応するサブ配列PGTSGQQPSVGQQ(配列番号11)が好ましくは使用され、そのサブ配列断片内で、アミノ酸2038〜2042に対応するGTSGQ(配列番号52)がより好ましい。この構築物は、容易にタンパク質分解的切断される傾向になく、そしてフィブロネクチンが血漿中に高濃度で存在するので、それほど免疫原性ではない。
【0045】
別法として、好適なペプチドリンカーは、ネズミIgG3の上ヒンジ領域の10アミノ酸残基配列に基づくものであることができる。このペプチド(PKPSTPPGSS、配列番号12)は、コイル状らせん(Pack P.およびPluckthun、A.、1992、Biochemistry31:1579−1584)により二量化した抗体を産生するのに使用されており、本発明によるスペーサーペプチドとして有用であることができる。ヒトIgG3の上ヒンジ領域の対応配列は、さらに好ましいことがある。ヒトIgG3配列は、ヒトにおいて免疫原性であるとは思われない。
【0046】
好ましい実施態様によれば、リンカーペプチドを、配列APAETKAEPMT(配列番号13)のペプチドおよび配列GAPのペプチドからなる群から選択する。
【0047】
あるいは、本発明の複合体の2つの成分は、ペプチドにより接続できる。このペプチドの配列はプロテアーゼの開裂標的を含んでいるので、成分(ii)からApoA1を分離することができる。本発明のポリペプチドに組み込むのに好適なプロテアーゼ開裂部位は、エンテロキナーゼ(開裂部位DDDDK、配列番号14)、第Xa因子(開裂部位IEDGR、配列番号15)、トロンビン(開裂部位LVPRGS、配列番号16)、TEVプロテアーゼ(開裂部位ENLYFQG、配列番号17)、PreScissionプロテアーゼ(開裂部位LEVLFQGP、配列番号18)、インテインなどである。好ましい実施態様によれば、複合体が肝臓に到達したら、ApoAおよび成分(ii)の分離が生じるように、開裂部位は、腫瘍組織、炎症組織または肝臓において発現されるプロテアーゼ開裂部位である。好ましい実施態様によれば、リンカーは、マトリックス金属プロテアーゼ−9認識部位(開裂部位LFPTS、配列番号19)を含む。
【0048】
2.本発明の複合体を得る方法
本発明による複合体は、当業者に公知のいずれかの方法を用いて得ることができる。すなわち、ApoAタンパク質または前記タンパク質の変異体は任意の標準法により得ることが可能である。例えば、ApoA―Iタンパク質は個人のまたは実験動物の血清サンプルから精製することができる(WO9807751、WO9811140、Jackson等.、1976、Biochim Biophys Acta.420:342−349、Borresen、A.L.およびKindt、T.J.、1978、J.Immunogenet.5:5−12およびForgez、P.およびChapman、M.J.、1982、J.Biochem、Biophys、Methods、6:283−96).一方、ApoA―Iタンパク質はcDNAから、例えば大腸菌、出芽酵母、メタノール資化酵母、昆虫細胞などの異種生体中の表現型の発現を利用し、WO07023476、WO9525786、WO8702062、Feng等、(Protein、Expr. Purif.、2006,46:337−42),Pyle等、1996 Biochemistry.35:12046−52、Brissette等.、(Protein Expr. Purif. 1991、2:296−303)およびBonen、D.K.(J. Biol. Chem.、1997,272:5659−67)に記載されているような従来技術に公知の方法を用いて得ることができる。
【0049】
十分な量の精製ApoAタンパク質があれば、それを目標の治療用化合物に複合できる。治療的に有効な成分(ii)のApo A分子への複合は様々な方法によっておこなうことができる。1つの可能性としては、官能基の治療的に有効な成分への前記成分の活性を阻害しない位置における直接複合がある。本発明において理解されるように、官能基とは分子中の特定の原子の基を指し、それは前記分子の特徴的な化学反応の要因となるものである。官能基の例としては、ヒドロキシ、アルデヒド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、カルボキサミド、1級、2級、3級、および4級アミン、アミノキシ、アジド、アゾ(ジイミド)、ベンジル、カーボネート、エステル、エーテル、グリオキシリル、ハロアルキル、ハロホルミル、イミン、イミド、ケトン、マレイミド、イソシアニド、イソシアネート、カルボニル、ニトレート、ニトライト、ニトロ、ニトロソ、ペルオキシド、フェニル、ホスフィン、ホスフェート、ホスホノ、ピリジル、スルフィド、スルホニル、スルフィニル、チオエステル、チオール、および酸化3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基が挙げられるが、これらに限定されない。前記基の例としては、Apo A分子中のチオール基と特定的に反応するマレイミドまたはグリオキシリル基、およびApo A分子中の1級アミン基と反応する酸化3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基が挙げられる。
【0050】
もう1つの可能性としては、治療的に有効な成分(ii)をApoA分子にホモ-またはヘテロ-2官能性基を用いて複合することである。2官能性基は最初治療的に有効な化合物に、そしてApoAタンパク質に複合できるか、あるいは2官能性基をApo Aタンパク質に複合し、そしてそれを治療的に有効な化合物に複合することが可能である。これらの複合体の種類の説明に役立つ実例としては、複合体の第1成分が、複合体の第2成分中のアミノ基に順に結合するヘテロ二官能性基中のケトン基に結合するアミノキシ基を含むケトン−オキシム(US20050255042に記載)として知られる複合体が挙げられる。
【0051】
他の実施態様においては、本発明による複合体の成分(i)および(ii)を複合するのに用いる薬剤は、光分解により、化学的に、熱的に、あるいは酵素により加工することができる。細胞標的中の酵素により加水分解可能な連結剤を用いることは特に興味深いので、治療的に有効な化合物は細胞の内側にのみ放出される。細胞内加工ができる連結剤の種類の例はWO04054622、WO06107617、WO07046893、およびWO07112193に記載されている。
【0052】
好ましい実施態様において、本発明の複合体の成分(ii)は、オリゴペプチドおよびペプチドの両方を含むペプチドの性質を有する化合物である。ポリペプチド鎖を化学的に変性する方法は当業者に広く知られており、その例としては、システイン部位に存在するチオール基を介する複合に基づく方法、リシン部位に存在する1級アミノ基を介する複合に基づく方法(US6809186)、およびN−およびC−末端部位を介する複合に基づく方法が挙げられる。ポリペプチドを変性して他の化合物に連結させるのに適した試薬の例としては、グルタルアルデヒド(化合物をポリペプチドのN末端に結合させる)、カルボジイミド(化合物をポリペプチドのC末端に結合させる)、N末端およびシステイン部位を活性化させるサクシンイミドエステル(例えば、MBS、SMCC)、チロシン部位を活性化させるベンジジン(BDB)、およびグリコシル化されたタンパク質の炭水化物部位を活性化させる過ヨウ素酸塩が挙げられる。
【0053】
成分ApoAおよび対象の治療用化合物が単純ペプチド鎖を形成する特殊な場合においては、複合体を単一の工程で前記複合体をコード化する本発明の遺伝子構築物を用いて発現させることが可能であり、そのために前記構築物は、転写成分および場合により翻訳調節成分と共に異種生体中の複合体の発現に適したベクター中に導入される。本発明の発現カセット中に存在する転写成分および場合により翻訳調節成分はプロモーターを含み、このプロモーターは、それらが動作可能に連結するヌクレオチドの配列および、例えば開始シグナルおよび停止シグナル、切断部位、ポリアデニル化シグナル、複製開始点、転写促進剤、転写阻害剤などの、転写およびその時と場所について適合する制御に対して必要なまたは適合するその他の配列を管理するものである。前記成分は、本発明による発現カセットおよび組換えベクターを構築するのに用いられるベクターと同様に、一般的に、用いられる宿主細胞に従って選択される。
【0054】
3.本発明によるポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、および宿主細胞
もう1つの態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。当業者に理解されるように、本発明のポリヌクレオチドは、その中で成分(ii)がペプチドの性質を有し、その中でポリペプチドApoAが(相対的な配向性に拘らずおよび両成分が直接接続されまたはスペーサ領域により分離されるという事実に拘らず)単一ペプチド鎖を形成する複合体だけをコードするものである。
【0055】
もう1つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子構築物に関する。構築物は好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの発現を制御する配列の操作制御下にある本発明のポリヌクレオチドを含んでなる。当業者に理解されるように、本発明によるポリヌクレオチドは、標的組織の核に接触し、そこで転写および翻訳され生物学的に活性な融合タンパク質を生成しなければならない。この理由から、投与される有効成分がポリヌクレオチドである場合、ポリヌクレオチドは好ましくは前躯体プレ−プロApoAIまたはApoAI変異体の前躯体をコード化せねばならず、すなわち、前躯体の発現の後、前躯体はシグナル配列の結果として分泌され、プロセッシングされて成熟ApoAIを生成する。
【0056】
インターフェロン分子とC−末端を介して融合されるApoAにより形成される複合体が発現される場合において、複合体をコード化するポリヌクレオチドにとって、ApoAIシグナル配列をコード化する配列が先行することは好ましいことである。ApoA分子のN−末端と共にそれのC−末端を介して融合されるインターフェロン分子により形成される複合体が発現される事象において、複合体をコード化するポリヌクレオチドにとって、インターフェロンα1シグナル配列をコード化する配列が先行することは好ましいことである。
【0057】
原則的にいかなるプロモーターも、当該プロモーターが、ポリヌクレオチドが発現すべき細胞と適合性がある限り、本発明の遺伝子構築物に用いることができる。よって、本発明の実施に適合するプロモーターとしては次のものが挙げられるが、必ずしもこれらのものに限定されるものではない。すなわち、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、トリ肉腫ウイルス、およびB型肝炎ウイルスなどの真核ウイルスのゲノムの誘導体などの構成的プロモーター、メタロチオネイン遺伝子のプロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーター、レトロウイルス長末端反復領域、免疫グロブリン遺伝子のプロモーター、アクチン遺伝子のプロモーター、EF−1アルファ遺伝子のプロモーター並びにテトラサイクリン系、NFκB/UV光系、Cre/Lox系、および熱ショック遺伝子のプロモーターなどのタンパク質の発現が分子または外因性シグナルの添加に依存する誘導性プロモーター、WO/2006/135436に記載されたRNAポリメラーゼIIの調節可能なプロモーター並びに組織特異的なプロモーター。好ましい実施態様において、本発明の遺伝子構築物は、ヒト血清アルブミン遺伝子、プロトロンビン遺伝子、アルファ−1−ミクログロブリン遺伝子、またはアルドラーゼ遺伝子などの主に肝の発現遺伝子のプロモーター領域に存在する発現向上領域を含み、それらは数種類のコピーの態様中の単一コピーの態様であるか、単離された態様であるか、あるいはサイトメガロウイルスプロモーター、アルファ-1-アンチトリプシンプロモーター、またはアルブミンプロモーターなどの他の肝特異的発現要素との組み合わせの態様であるか、である。
【0058】
組織特異的なプロモーターのその他の例としては、アルブミン遺伝子のプロモーター(Miyatake等.、1997、J.Virol、71:5124−32)、肝炎ウイルスの核プロモーター(Sandig等、1996、 Gene Ther.、 3:1002−9):、アルファ-フェトタンパク質遺伝子のプロモーター(Arbuthnot等.、1996、Hum.Gene Ther.、7:1503−14)、およびチロキシンに結合したグロブリン-結合タンパク質のプロモーター(Wang L.、等.、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11563−11566)が挙げられる。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドまたはそれらを形成する遺伝子構築物はベクターの一部分を形成できる。かくして、もう1つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなるベクターに関する。当業者に理解されるように、用いることのできるベクターの種類に制限はなく、それは前記ベクターが、増殖に適したおよびポリヌクレオチドまたは適合する遺伝子構築物を得るのに適したクローン化ベクターまたは複合体を精製するのに適した種々の異種生体中の発現ベクターであり得るからである。従って、本発明による適合するベクターには次のベクターが含まれる。すなわち、pUC18、pUC19、ブルースクリプトおよびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、CoIEI、pCRI、およびRP4などの原核生物中の発現ベクター、pSA3およびpAT28などのファージおよびシャトルベクター、2ミクロンプラスミド、統合プラスミド、YEPベクター、動原体性プラスミドなどの種類のベクターなどの酵母菌中の発現ベクター、pACシリーズベクターおよびpVLシリーズベクターなどの昆虫細胞中の発現ベクター、pIBI、pEarleyGate, pAVA, pCAMBIA、 pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREシリーズベクターなどの植物中の発現のベクターなどの植物中の発現ベクター、およびウイルスベクターに基づく上位の真核細胞中の発現ベクター(アデノウイルス、アデノウイルス関連のウイルス、並びにレトロウイルスおよびレンチウイルス)、並びにpSilencer 4、1−CMV(アンビオン)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、rTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXI、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2d、およびpTDT1などの非ウイルスベクター。
【0060】
本発明のベクターは、ベクターによって形質転換され、形質移入され、感染され得る細胞を形質転換させ、形質移入し、感染させるために用いることができる。該細胞は原核性であっても真核性であってもよい。一例として、該DNA配列が導入されるベクターは、プラスミドであり得るかまたはそれが宿主細胞に導入される場合に該細胞のゲノム中に統合され、それが統合されたクロモゾーム(或いは複数のクロモゾーム)と共に複製するベクターでもよい。ベクターは、当業者には公知の従来の方法により得ることができる(Sambrok等、(2001年)上述の通り)。
【0061】
したがって、もう1つの態様において、本発明はポリヌクレオチド、遺伝子構築物、または本発明のベクターを含んでなる細胞に関し、そのために該細胞は本発明により提供される構築物またはベクターにより形質転換され、形質移入され、または感染されることが可能であってきた。形質転換され、形質移入され、または感染された細胞は当業者に公知の従来法によって得ることができる(Sambrok等、(2001年)上述の通り)。特定の実施態様において、該宿主細胞は適したベクターで形質移入されたまたは感染された動物細胞である。
【0062】
本発明による複合体の発現に適した宿主細胞の例としては、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、および細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。細菌細胞の例としては、バチルス属、ストレプトミセス属、およびブドウ球菌属の種などのグラム陽性細菌細胞、およびエシェリキア属およびプソイドモナス属の細胞などのグラム陰性細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。真菌細胞の好ましい例としては、サッカロミセス属、ピキアパストリス属、およびハンゼヌラポリモルファ属などの酵母菌の細胞が挙げられる。昆虫細胞の例としては、ショウジョウバエ属細胞およびSf9細胞が挙げられるが、これらに限定されない。その他の細胞の中で、植物細胞の例としては、穀物用植物、医療用植物、観賞用植物、または球根植物などの作物植物の細胞が挙げられる。本発明における適した哺乳類細胞の例としては、上皮細胞系(ブタなど)、骨肉腫細胞系(ヒトなど)、神経芽細胞腫細胞系(ヒトなど)、上皮癌細胞系(ヒトなど)、グリア細胞(ネズミなど)、肝細胞系(サルなど)、CHO(中国ハムスター卵巣)細胞、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞、911、AT1080、A549、293またはPER.C6、NTERA−2ヒトECC細胞、mESC細胞系のD3細胞、HS293およびBGV01などのヒトES細胞、SHEF1、SHEF2およびHS181、NIH3T3細胞、293T、REHおよびMCF−7およびhMSC細胞が挙げられる。
【0063】
もう1つの態様において、本発明は、本発明による複合体を含んでなるナノリポ粒子に関する。
【0064】
本発明に用いられているように、用語「ナノリポ粒子」は用語「リポタンパク質」または「リポタンパク粒子」と同等であり、これらは相互変換可能に用いることができる。本明細書において「ナノリポ粒子」は、アポリポタンパク質、リン脂質、および遊離コレステロールにより形成される外部極性被覆により被覆された無極性脂質(エステル化コレステロールおよびトリグリセリドなど)の核により形成される水溶性の粒子を表すものと解釈される。
【0065】
ナノリポ粒子またはリポタンパク質はその比重に従い、カイロミクロン、超低比重リポタンパク質(VLDL)、中間比重リポタンパク質(IDL)、低比重リポタンパク質(LDL)、および高比重リポタンパク質(HDL)に分類される。種々のリポタンパク質の特徴を第1表に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
特定の態様において、本発明によるナノリポ粒子はその組成が表1に示されるHDLであり、タンパク質分画はApoA、ApoC、ApoD、およびApoEにより形成される。
【0068】
本発明のナノ粒子は当業者に公知の方法を用いて得られる。その1例として、ナノリポ粒子は試験管内ではLerch等(Vox Sang、1996、71:155−164)に記載のあるようにコレステロールおよびホスファチジルコリンを本発明の複合体に添加することにより得られ、生体内では本発明の複合体を肝臓内に発現する遺伝子導入非ヒト動物に用いることにより得られ、この場合複合体は、ナノ粒子がそこから単離され得るナノ粒子の血清中に分泌される。
【0069】
4.本発明による複合体の医療的使用
本発明による複合体は、治療対象の化合物を肝臓まで運び、またそれを安定化させるのに有用である。それゆえ、もう1つの態様において、本発明は、複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、または宿主細胞、または本発明によるナノリポ粒子の治療的に有効な量、および薬学的に許容し得る担体または賦形剤を含んでなる医薬製剤に関する。
【0070】
もう1つの態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の遺伝子構築物、本発明のベクター、本発明のナノリポ粒子、または医薬品に使用するための医薬品組成物に関する。
【0071】
医薬品として使用するために、本発明による複合体はプロドラッグ、塩、溶媒和物、または包接化合物の形態であってよく、これらの単独の形態であってもよく、また追加の活性剤との組み合わせの形態でもよい。本発明による化合物の組み合わせは、薬学的観点から許容し得る賦形剤と共に配合することができる。本発明における使用に対して好ましい賦形剤の例としては、糖類、澱粉、セルロース、ガム類、およびタンパク質が挙げられる。特定の実施態様において、本発明の医薬品組成物は固形医薬品剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、被覆錠剤、顆粒剤、坐剤、液状剤に再構成可能な結晶性または非晶性無菌固形剤、など)、液状医薬品財形(例えば、溶液、懸濁液、乳剤、エリキシル剤、ローション、軟膏、など)、または半固形医薬品剤形(ジェル、軟膏、クリーム、など)に配合される。本発明の医薬品組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、鞘内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、または直腸内経路を含むがこれらに限定されない如何なる経路によっても投与することができる。有効成分の投与の種々の形態の、用いられる賦形剤の、およびそれらを製造する方法の、審査は、Tratado de Farmacia Galenica、 C. Fauli i Trillo、 Luzan 5、 S.A. de Ediciones、 1993およびRemington‘s Pharmaceutical Sciences (A.R. Gennaro、 Ed.)、20th edition、Williams & Wilkins PA、USA(2000)に見出すことができる。薬学的に許容できるビヒクルの例としては従来技術に公知のものであり、リン酸塩緩衝の食塩水溶液、水、油/水乳剤などの乳剤、種々の種類の湿潤剤、無菌溶液などが挙げられる。該ビヒクルを含んでなる組成物は、従来技術に公知の従来法により配合することができる。
【0072】
核酸(本発明のポリヌクレオチド、ベクター、または遺伝子構築物)を投与する事象において、本発明は、該核酸の投与のために特に調製した医薬品組成物を提供する。医薬品組成物は該核酸を裸の形態で、即ち核酸を生体のヌクレアーゼによる劣化から保護する化合物の不在下で含むことができ、これには形質移入のために用いる試薬に伴う毒性が排除されるという有利が伴う。裸の形態の化合物を投与するのに適した経路としては、静脈内、腫瘍内、頭蓋内、腹腔内、脾臓内、筋肉内、網膜下、皮下、粘膜下、局所、および経口経路が挙げられる(Templeton、2002、DNA Cell Biol.、21:857−867)。一方、核酸はリポゾームの一部を形成しながら投与され得、コレステロールに複合され得、或いはHIV−1TATタンパク質から誘導されるペプチドTat、キイロショウジョウバエ・アンテナペディア・タンパク質のホメオドメインの第3螺旋、単純疱疹ウイルスのVP22タンパク質、およびWO07069090(Lindgren、A.等、2000、Trends Pharmacol. Sci、21:99−103、Schwarze、S.R.等、2000、Trends Pharmacol. Sci.、21:45−48、Lundberg、M等、2003、Mol. Therapy 8:143−150、およびSnyder、E.L.およびDowdy、 S.F.、2004、Pharm. Res. 21:389−393)に記載されたようなアルギニンオリゴマーおよびペプチドなどの、細胞膜を通して転座を促進できる化合物に複合され得る。一方、ポリヌクレオチドは、プラスミド・ベクターのまたはウイルス・ベクターの、好ましくはムリン・リュウケミア・ウイルス(MLV)またはレンチウイルス(HIV、FIV、EIAV)に基づくウイルスなどのアデノ−関連ウイルス中のまたはレトロウイルス中のアデノウイルスに基づくベクターの一部を形成しながら投与され得る。
【0073】
もう1つの実施態様において、本発明の組成物およびポリヌクレオチドはLiu,F.らが記述した(Gene Ther、1999、6:1258−66)ように、いわゆる「流体力学的投与(hydrodynamic administration)」の手段により投与される。該方法によれば、化合物は静脈内経路により生体内に高速度・高容量で導入され、より拡散された分散を伴う高形質移入を生じる。細胞内導入の効能は投与した薬液の容量および注射の速度に直接依存することが実証された(Liu等、1999、Science、305:1437−1441)。マウスにおいて、投与は3〜5秒間に1mL/体重10gの値に最適化した(Hodges等、2003、Exp.Opin.Biol.Ther、3:91−918)。ポリヌクレオチドの流体力学的投与後のポリヌクレオチドによる生体内細胞形質移入を可能にする精密な機構は未だ完全には知られていない。マウスの場合において、尾静脈経由の投与が心拍数を超える速度で行われ、その結果、投与された薬液は上大静脈中に蓄積するものと考えられている。この薬液は引き続き器官の管に到達し、更に引き続き該管中の窓を通して管外空間に到達する。かくしてポリヌクレオチドは、血液と混合される前に標的器官の細胞と接触し、そのためヌクレアーゼによる劣化の可能性が低減される。
【0074】
本発明の組成物は、体重1kgあたり10mg未満の投与量、好ましくは体重1kgあたり5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005、または0.00001mg未満およびRNA剤の200nmol未満(即ち、体重1kgあたり約4.4×1016または体重1kgあたり1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、または0.075nmol未満)で投与することができる。単位投与量は注射、吸引、または局所投与により投与できる。本発明の2官能性ポリヌクレオチドおよび組成物は、標的mRNAが発現している器官に直接投与できるが、この場合、1器官あたり0.00001mgから3mgの投与量、好ましくは1器官あたり0.0001mgから0.001mgの投与量、1器官あたり約0.03mgから3.0mgの投与量、1器官あたり約0.1mgから3.0mgの投与量、または1器官あたり0.3mgから3.0mgの投与量が投与される。
【0075】
投与量は処置される症状の重症度および反応に依存し、数日間および数ヶ月間の間にまたは症状が和らぐのが観察されるまで投与量を変動させることができる。最適投与量は、患者の生体内の薬剤の濃度を定期的に測定することにより決定できる。最適投与量は、動物実験における事前の試験管内または生体内アッセイにより得られるEC50値より決定できる。単位投与量は1日1回または1日1回未満の割りで、好ましくは2、4、8、30日ごとに1回未満の割で投与できる。一方、初回投与量を投与した後は、一般に初回投与量より少ない量を1回または数回一定量を投与できる。保守投与計画には、0.01μg〜1.4mg/体重1kg・日の範囲の、例えば10、1、0.1、0.01、0.001、0.00001mg/体重1kg・日の投与量で患者を処置することを含めることができる。保守投与は、好ましくは最大5、10、または30日ごとに1回の割りで投与される。処置は、患者の罹っている病気の種類、その重篤度、および患者の容態により変動する期間の間は続けられるべきである。処置後は患者の展開を監視して、病気が処置に対応しない場合には投与量を増やさねばならないとか、病気の回復が観察されたまたは望ましくない副作用が観察された場合には投与量を減らさねばならないとかを決定しなければならない。
【0076】
毎日の投与量は、個々の状況に応じて単一の投与量または2回以上の投与量で投与できる。繰り返しの投与または頻繁な投与が望ましい場合は、ポンプなどの投与装置の埋め込み、半恒久的な(静脈内、腹腔内、槽内、または包内)カテーテル、または液溜めなどが推奨できる。
【0077】
本発明による複合体、それらをコードするポリヌクレオチド、本発明の該ポリヌクレオチドおよびナノリポ粒子を含んでなる遺伝子構築物およびベクターは、治療対象の化合物を標的組織まで輸送する該複合体の能力を与えられた治療的処置の方法に用いることができる。当業者に理解されるように、本発明の化合物で処置し得る病気は、(i)ApoAに連結した有効成分に依存し、(ii)該複合体が輸送される組織に依存する。第2表には、該複合体および複合体中に組み込まれるべき有効成分によって処置され得る病気が、限定されない方法により記載されている。
【0078】
【表2】
【表3】
【0079】
本発明による複合体は、ApoAに対する十分な親和性を有し、該ポリペプチドと結合した後、内在化される能力を有する表面分子が発現する器官または組織にとって標的となる能力を有する。該表面分子は、SR−B1(スカベンジャー受容体B、1型)、SR−A1(スカベンジャー受容体A、1型)、SR−A2(スカベンジャー受容体A、1型)、およびSR−C(スカベンジャー受容体C)を含む。治療的に有効な化合物はかくして、該標的器官または組織に輸送され得る。これらの器官には、肝臓だけでなくその表面に十分な量のSR−B1受容体を発現する全ての細胞が含まれる。本発明の実施例7では、特にCD4+T細胞中、CD8+T細胞中、NK細胞中、樹状細胞中、および単球/マクロファージ中の、免疫系の種々の濃度でのSR−B1受容体の存在を例証している。本発明はかくして、免疫系関連の病気の治療のための本発明の複合体の使用も提供する。加えて、破骨細胞中(Brodeur等、2008、J.Bone Miner Res. 23:326−37)、内皮細胞中(Yeh等、2002、Atherosclerosis、161:95−103)、腸管上皮中(Cai、S.F.等、2001、J.Lipid Res.、42:902−909)、胆管上皮中(Miquel等、Gut.、2003、52:1017−1024)、脂肪組織中(Action 等、 1994、J.Biol.Chem、269:21003−21009”)、および肺中(Action等、1994、J.Biol.Chem、269:21003−21009)のSR−BI受容体の発現は知られている。
【0080】
したがって、本発明による複合体は、治療を意図した化合物を予め指示した部分に運ぶのに好適である。したがって、標的器官を考慮すると、本発明の複合体は、肝疾患、例えば、肝内胆汁鬱滞、肝疾患(アルコール性脂肪肝、ライ症候群)、肝静脈血栓症、肝室変性、肝腫脹、肝肺症候群、肝腎症候群、門脈圧亢進症、肝膿瘍、肝硬変(アルコール性肝硬変、胆汁性肝硬変、実験的肝硬変)、アルコール性肝障害(脂肪肝、肝炎、肝硬変)、寄生虫症(エキノコックス症、肝蛭症、アメーバ性腫瘍)、黄疸(溶血性、肝細胞性および胆汁鬱滞性)、肝(臓)炎(アルコール性肝炎、慢性肝炎、自己免疫性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、薬剤誘発肝炎、中毒性肝炎、ウィルス性肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎およびE型肝炎)、ウィルソン病、肉芽腫性の肝臓症、二次胆汁性肝硬変、一次胆汁性肝硬変、肝性エンセファロパシ、門脈圧亢進症、肝細胞腺腫、血管腫、胆石、肝新生物(血管筋脂肪腫、石灰化肝転移、石灰化肝転移、線維層板型肝細胞癌、限局性結節性過形成、肝細胞腺腫、肝胆道嚢胞腺腫、肝芽腫、肝細胞癌、肝細胞腫、肝癌、肝血管内皮腫、結節性再生性過形成、良性肝腫瘍、良性肝腫瘍(肝嚢胞、多嚢胞性嚢腫、肝胆道嚢胞腺腫、肝間葉系腫瘍[間葉性過誤腫、小児血管内皮腫、血管腫、肝臓紫斑病、脂肪腫、炎症性偽腫瘍]、胆管上皮腫瘍、胆管過誤腫、胆管腺腫、悪性肝腫瘍[肝芽腫、肝芽腫、肝細胞癌、胆管細胞癌、胆管癌、嚢胞腺癌、毛細管腫瘍、血管肉腫、カポジ肉腫、血管内皮腫、胎児性肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、癌肉腫、奇形腫、扁平上皮癌、原発性リンパ腫])、エリスロ肝性ポルフィリン症、肝性ポルフィリン症(急性間欠性ポルフィリン症、遅発性皮膚ポリフィリン症)、ツェルヴェーガー症候群の治療に使用することができる。
【0081】
本発明による複合体は、免疫系疾患、例えば、以下の疾患の治療に使用することができる:
自己免疫疾患:アジソン病、自己免疫性溶血性貧、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質症候群、リウマチ様関節炎、自己免疫性神経系疾患、疱疹状皮膚炎、1型糖尿病、家族性地中海熱、IGA糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、自己免疫性肝炎、Lambert−Eaton筋無力症候群、全身性エリテマトーデス、交感性眼炎、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌不全症、特発性血小板減少性紫斑病、ライター症候群および自己免疫性甲状腺炎);
血液型不適合による疾患:胎児赤芽球症、Rh同種免疫;
膜性増殖性糸球体腎炎;
移植片対宿主病;
過敏性:薬剤過敏症、公害病、過敏症障害(細胞移動抑制、急性散在性脳脊髄炎)、即時型アレルギー(アナフィラキシー、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎)、免疫複合体病(過敏症による血管炎、アルサス反応、血清病)、ラテックスアレルギー、ヴィスラー症候群;
免疫不全症候群、例えば、異常ガンマグロブリン血症、HIV−1感染症、HTLV−1またはHTLV−2感染症、地方病性牛白血病、リンパ球減少、ファージ機能障害、例えば、チェディアック・東症候群、慢性肉芽腫症、ヨブ症候群、無ガンマグロブリン血、毛細血管拡張性運動失調症、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、白血球粘着不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群;
血小板減少性紫斑病;
免疫増殖性疾患:高グロブリン血症(シュニッツラー症候群)、リンパ(組織)増殖性疾患(肉芽腫、重鎖病、ヘアリー細胞白血病、リンパ性白血病、骨髄性白血病、リンパ増殖性疾患、リンパ腫、サルコイドーシス、無ガンマグロブリン血、巨大リンパ節過形成、免疫芽細胞リンパ腫、感染性腺熱、リンパ腫様肉芽腫症、マレック病、セザリー症候群、腫瘍崩壊症候群、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、免疫増殖性小腸疾患、形質細胞性白血病、異常蛋白血症および血小板減少性紫斑病)、異常蛋白血症。
【0082】
本発明による複合体は、毛細血管内皮病、例えば、以下の疾患の治療に使用することができる:動脈硬化、閉塞性動脈症、結合性によるレイノー病、原始高血圧および二次性肺高血圧、糖尿病性細小血管症、バージャー病、全身性硬化症、脈管炎および続いて局所貧血を伴う内皮障害により特徴付けられる全ての疾患。
【0083】
本発明の複合体は、骨疾患、例えば、骨の異常な増大により特徴付けられる異形成の治療に使用されることができる。このような状態の代表例として、軟骨無形成症、鎖骨頭蓋骨形成不全症、内軟骨腫症、線維性骨異形成、ゴーシェ病、低リン血症性くる病、マルファン症候群、遺伝性多発性外骨腫症、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑紋症、硬化性病変、骨折、歯周病、仮関節、化膿性骨髄炎、骨減少を生じる状態、例えば、貧血症状、ステロイドおよびヘパリンにより生じる骨減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏、特発性骨粗しょう症、先天性骨減少、アルコール依存症、クッシング病、先端巨大症、性腺機能低下症、一過性局所骨粗鬆症および骨軟化症が挙げられる。
【0084】
本発明による複合体は、腸上皮疾患、例えば、吸収不全症候群、クローン病、腸憩室性疾患、麻痺性イレウスおよび腸閉塞の治療に使用できる。
【0085】
本発明による複合体は、呼吸器疾患、例えば、以下の疾患の治療に使用することができる:鼻前庭炎、非アレルギー鼻炎(例えば、急性鼻炎、慢性鼻炎、萎縮性鼻炎、血管運動神経性鼻炎)、鼻ポリープ、副鼻腔炎、若年性の血管線維腫、鼻の癌および若年性の血管線維腫、声帯ポリープ、小節、接触潰瘍、声帯まひ、喉頭嚢胞、咽頭炎、へんとう炎、扁桃腺蜂巣炎、副咽頭間隙膿瘍、喉頭炎、喉頭嚢胞、咽喉癌(例えば、鼻咽腔癌、へんとう腺癌、喉頭癌)、肺癌(扁平上皮癌、小球性癌、大球性癌、腺癌)、アレルギー性疾患(好酸性肺炎、アレルギー性肺胞炎、アレルギー性間質性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、喘息、ヴェーゲナー肉芽腫、グッドパスチャー症候群、肺炎(例えば、細菌性肺炎(例えば、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、グラム陰性細菌、例えば、クレブシエラおよびPseudomonas sppにより生じる肺炎、Mycoplasma pneumoniae、Haemophilus influenzae、Legionella pneumophilおよびChlamydia psittaciにより生じる肺炎ならびにウイルス性肺炎(例えば、インフルエンザまたは水痘)、細気管支炎、ポリオ、喉頭気管気管支炎(クループ
症候群とも称される)、合胞体ウイルスによる呼吸器感染、流行性耳下腺炎、伝染性紅斑、小児ばら疹、風疹、真菌性肺炎(例えば、免疫抑制患者におけるヒストプラスマ症、コクシジオイデス症、ブラストミセス症および真菌症、例えば、Cryptococcus neoformansにより生じるクリプトコッカス症;Aspergillus spp.により生じるアスペルギルス症;Candidaにより生じるカンジダ症;およびムコール菌症)、Pneumocystis cariniiによる感染、異型肺炎(例えば、MycoplasmaおよびChlamydia spp.により生じるもの)、日和見肺炎、院内肺炎、化学肺臓炎および誤嚥性肺炎、胸膜疾患(例えば、胸膜炎、胸水および気胸(例えば、単純自然気胸、複雑自然気胸、緊張性気胸)、閉塞性気道疾患(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、慢性または急性慢性気管支炎)、職業性肺疾患(例えば、珪肺、炭塵肺、アスベスト肺、ベリリウム症、職業喘息、綿肺および良性塵肺症)、浸潤性肺疾患、例えば、肺線維症、線維化性肺胞炎、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、類リンパ球性間質性肺炎、原因不明性組織球増殖(例えば、レッテレル-シヴェ病、ハンド-シュラー-クリスチャン病、エオジン好性細胞肉芽腫)、特発性肺血鉄症、サルコイドーシスおよび肺胞蛋白症、急性呼吸窮迫症候群、浮腫、肺塞栓症、気管支炎(例えば、ウイルス性、細菌性気管支炎)、気管支拡張症、肺拡張不全、肺膿瘍および肺嚢胞性線維症。
【0086】
好ましい実施態様によれば、本発明は、治療活性成分はインターフェロンであることを意図している。この場合、複合体またはそれらをコードするポリヌクレオチドは、インターフェロンに反応する肝疾患、例えば、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、肝細胞癌、肝硬変、線維症の治療に有用である。
【0087】
さらに、免疫系細胞にSR−BI受容体が存在することを考えると、本発明による複合体は、治療活性成分を前記細胞にターゲッティングするのに使用できる。したがって、好ましい実施態様によれば、インターフェロンを治療活性成分として含有する本発明による複合体は、ワクチンの免疫反応を高めるためにアジュバントとして使用できる。ワクチンは、感染症をトリガーできる生物に対するワクチン、腫瘍に対するワクチン、アレルゲンに対するワクチンであることができる。ワクチンは、病原菌、腫瘍またはアレルゲンの成分(ペプチド、ポリペプチド、グリコペプチド、マルチエピトープペプチド、断片等)を含んでいてもよく、または前記生物、腫瘍またはアレルゲンのポリペプチドをコードする核酸により形成される遺伝子ワクチンでもよい。
【0088】
別の実施態様によれば、本発明の複合体は、TGF−β1ペプチドインヒビターを含んでなる。これらの複合体は、TGF−β1の過剰または自由発現に関連した疾患または病理学的障害、例えば、以下の疾患または障害の治療に使用できる:(i)器官または組織の機能の喪失と関連した線維症、例えば、肺線維症、肝線維症(肝硬変)、心臓線維症、腎線維症、角膜線維症等、(ii)外科および美容外科合併症、例えば、皮膚および腹膜手術に関連した線維症、やけどに関連した線維症、骨関節線維症、ケロイドなど。
【0089】
本発明者等は、TGF−β1ペプチドインヒビターをIL−12とともに含んでなる本発明による複合体を投与すると、IL−12によりもたらされるIFN−ガンマの誘発の刺激を生じることを示した。IFN−γが公知の抗腫瘍剤であることを考えると、本発明者等の知見は、免疫刺激サイトカインと、TGF−β1阻害ペプチドを含んでなる本発明による複合体の組み合わせに基づく新規な抗腫瘍治療の道を開く。
【0090】
したがって、別の態様によれば、本発明は、
(a)本発明による複合体、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクター、宿主細胞、ナノリポ粒子および医薬製剤からなる群から選択される第1成分であって、成分(ii)がTGF−β1阻害ペプチドである第1成分と、
(b)免疫刺激サイトカイン、前記サイトカインをコードしているポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、TGF−β1阻害ペプチド、細胞毒性薬およびそれらの組み合わせを含んでなる群から選択される第2成分と、
を含んでなる組成物に関する。
【0091】
TGF−β1阻害ペプチドを含んでなるApoA複合体とともに投与することができる免疫刺激サイトカインには、IL−12、IL−2、IL−15、IL−18、IL−24、GM−CSF、TNF−α、CD40リガンド、IFN−α、IFN−β、IFN−γなどがあるが、これらには限定されない。好ましい実施態様によれば、刺激サイトカインは、IL−12である。
【0092】
本発明による組成物の成分(b)を構成することができるTGF−β1阻害ペプチドは、上記した本発明による複合体の一部分を構成するものと実質的に同じである。したがって、TGF−β1阻害ペプチドは、ペプチドp144(配列番号4)またはペプチドp17(配列番号5)であることができるが、これらには限定されない。本発明の複合体の一部分を構成するおよび第二成分を構成するペプチドは、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0093】
本明細書において使用される用語「細胞毒性薬」は、細胞の成長を選択的または非選択的に殺生または阻害することができる化合物である。細胞毒性薬としては、例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、塩酸エピルビシン、およびシクロホスファミドおよびそれらの類似体または同族体、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロルエタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルマスティン(BCNU)およびロムスチン(CCNU)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシンおよびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン)、ブレオマイシンが挙げられる。
【0094】
別の態様によれば、本発明による組成物は、種々の種類の腫瘍、例えば、以下の腫瘍(これらには限定されない)の治療に使用することができる:血液癌(例えば、白血病またはリンパ腫)、神経性腫瘍(例えば、星状細胞腫または膠芽細胞腫)、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃腸腫瘍(例えば、胃、膵または大腸癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、腎細胞癌、尿生殖器腫瘍(卵嚢癌、膣癌、子宮頚癌、膀胱癌、睾丸癌、前立腺癌)、骨腫瘍および血管腫瘍。
【0095】
したがって、別の態様によれば、本発明は、癌の治療のための、本発明による組成物に関する。別の態様によれば、本発明は、本発明による組成物を、それを必要としている対象に投与することを含んでなる癌の治療方法に関する。別の態様によれば、本発明は、本発明の組成物の、癌の治療薬剤の調製のための使用に関する。
【0096】
使用されるべき本明細書に記載の本発明の組成物の成分の治療に有効な量は、例えば、治療対象、投与経路および患者の状態に依存する。したがって、治療者が最適な治療効果を得るために必要とする用量を決定し、投与経路を修正することが好ましい。典型的な1日の用量は、約0.01mg/kgから250mg/kgまたはそれ以上で、毎日、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、6日おき、または週1回でよい。
【0097】
組成物の投与は、種々の手段でおこなうことができる。例えば、組成物の成分(a)および成分(b)は、順次、別個および/または同時に投与することができる。一実施態様によれば、組成物の成分(a)および成分(b)は、同時に投与される(必要に応じて反復して)。一実施態様によれば、別個の製剤を順次投与(必要に応じて反復投与)する。一実施態様によれば、別個の製剤を別々に(必要に応じて反復して)投与する。当業者には、成分(a)および成分(b)の別個の製剤は、順次または連続投与されるよく、その場合、成分(a)を投与してから成分(b)を投与してもよく、または成分(b)を投与してから成分(a)を投与してもよいことは理解されるであろう。一実施態様によれば、成分(a)および成分(b)の別個の製剤は、選択的投与パターンで投与できる。本発明の組成物の成分(a)および成分(b)の別個の製剤投与がシーケンス投与または別個投与の場合、第二製剤の投与の遅延は併用療法の有益な効果が失われるものであってはならない。
【0098】
本発明を、以下実施例により説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0099】
実施例1
材料および方法
1.発現ベクターの構築:
1.1RNA抽出:
マウスの肝臓または処置マウスの脳から得た総RNAを、個々の試料から、TRI試薬(Sigma社、スペイン、マドリッド)を用いて単離した。試料の濃度および純度を、分光光度計(Biophotometer、エッペンドルフ社)で、260nmおよび280nmでの吸光度(320nmでバックグラウンド補正)により測定した。
【0100】
1.2総cDNAのRT−PCR合成
総RNA(3μg)をDNaseIで処理し、RNaseOUTの存在下でM−MLV RTを用いて、cDNAにレトロ転写した(全ての試薬は、カリフォルニア州Carlsbed、Invitrogen社から入手)。肝総cDNA25μlを得た。反応を37℃で1時間インキュベーションし、95℃で1分間変性し、そして4℃とした。試料を直ちにPCRに使用するか、または−20℃で保存した。
【0101】
1.3マウスアポリポタンパク質A1(mApoA1)cDNAの獲得およびクローニング:
センスプライマー5’−ATGAAAGCTGTGGTGCTGGC−3’(FwATGmApoA1)(配列番号20)およびアンチセンスプライマー5’−TCACTGGGCAGTCAGAGTCT−3’(RvTGAmmApoA1)(配列番号21)を、設計した。mApoA1cDNA(795総ヌクレオチド:シグナルペプチドをコードしている72ヌクレオチドおよび天然タンパク質をコードしている723ヌクレオチド)を、2720 Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)を用いて、肝総cDNAについて、BioTaq DNAポリメラーゼ(Bioline社、英国、ロンドン)を用いて、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、55℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間の処理により、PCR増幅した。PCR産物を、Agarose D−1低EEO 1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションさせ、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmApoA1のcDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mApoA1と称する)。最後に、得られた配列を、配列決定法により確認した。
【0102】
1.4 マウスインターフェロンアルファ1(mIFNα1)cDNAの獲得およびクローニング
センスプライマー5’−ATGGCTAGGCTCTGTGCTTT−3’(FwATGmIFNα1)(配列番号22)およびアンチセンスプライマー5’−TCATTTCTCTTCTCTCAGTC−3’(RvTGAmIFNα1)(配列番号23)を設計した。mIFNα1 cDNA(570総ヌクレオチド:シグナルペプチドをコードしている69ヌクレオチドおよび天然タンパク質をコードしている501ヌクレオチド)を、肝総cDNAについて、BioTaq DNAポリメラーゼ(英国ロンドンにあるBioline社)を用いたPCRにより増幅した。増幅条件は、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、55℃で40秒間および72℃で40秒間後、72℃で7分間であった。PCR産物を、Agarose D−1低EEO 1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてミグレーションさせ、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmIFNα1のcDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mIFNα1と称する)。最後に、配列を、配列決定法により確認した。
【0103】
1.5遺伝子融合設計:
1.5.1 mApoA1遺伝子へのmIFNα1遺伝子のC末端融合:アポIFN
ApoA1遺伝子の3’におけるAscI酵素の制限部位を構成する9−ヌクレオチド配列(GGCGCGCCC)を導入し、停止コドンを除去した、アンチセンスプライマー5’−GGCGCGCCCTGGGCAGTCAGAGTCTCGC−3’(RvAscImApoA1)(配列番号24)を設計した。この付加した制限配列は、構成タンパク質に対して一定の移動度を提供する短結合ペプチドGAPに翻訳される。成熟mIFNα1タンパク質をコードしている配列の5’にAscI制限配列を導入(すなわち、シグナルペプチド配列を除去)した、センスプライマー5’GGCGCGCCCTGTGACCTGCCTCAGACTCA−3’(FwAscImIFNα1)(配列番号:25)を設計した。
【0104】
BioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline社、英国、ロンドン)とともに、鋳型としてのpCMV−mApoA1ならびにプライマーであるFwATGmApoA1およびRvAscImApoA1を用いて、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、57℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間の条件でのPCRにより増幅を実施した。PCR産物(804ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)でマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmApoA1−AscIのDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)mApoA1にクローニングした(以下、pCMV−mApoA1−AscIと称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0105】
平行して、鋳型としてのpCMV−mIFNα1ならびにプライマーであるFwAscImIFNα1およびRvTGAmIFNα1を用いたPCRにより増幅を実施した。BioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline社、英国、ロンドン)および以下の増幅条件を使用した:2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、57℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間。PCR産物(510ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したAscI−mIFNα1のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−AscI−mIFNα1と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0106】
遺伝子融合を実施するために、プラスミドpCMV−mApoA1−AscIおよびpCMV−AscI−mIFNα1を、pcDNA 3.1 V5−His TOPO(登録商標)TA骨格に存在する制限部位PmeIを用いて、AscI/PmeI酵素、1xBSAおよびBuffer4(New England Biolabs社)により、それぞれ独立して37℃で1.5時間消化した。両方の消化物を1%アガロースゲルにおいてマイグレーションし、対応するバンドから開環ベクターpCMV−mApoA1−AscIおよびpCMV−AscI−mIFNα1インサートを精製した。産物を、T4DNAリガーゼ(高濃度)および2XRapid Ligation Buffer(Promega Madison社、米国ウイスコンシン州)(緩衝液)を用いて、1:3(ベクター:インサート)比でライゲーションし、混合物を室温で10分間インキュベーションした。続いて、Top10バクテリア(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)を形質転換した。ベクターがこの抗生物質に耐性のある遺伝子を含有するので、形質転換したバクテリアを、アンピシリン含有LB培地を入れたペトリ皿での成長により選択した。陽性細菌のプラスミドDNAを、MiniPrep法(Qiagen社、ドイツ)により抽出し、続いてこのプラスミド2μgをAscI/PmeI酵素(New EnglandにあるBiolabs社)で消化し、1%アガロースゲルにおいて電気泳動により消化物を分離してインサートの存在を確認する。得られた6825ヌクレオチドプラスミドを、以下pCMV−Apo−IFN(pCMV−AF)と称する。
【0107】
1.5.2 mApoA1遺伝子へのmIFNα1遺伝子のN末端融合:IFN−Apo
mIFNα1遺伝子の3’にAscI酵素の制限部位を形成し、停止コドンを除去する9−ヌクレオチド配列(GGCGCGCCC)を導入したアンチセンスプライマー5’−GGGCGCGCCTTTCTCTTCTCTCAGTCTTC−3’(RvAscImIFNα1)(配列番号:26)を設計した。AscI制限配列を成熟mApoA1タンパク質をコードする配列の5’に導入した(すなわち、シグナルペプチド配列を削除した)センスプライマー5’−CCAGGCGCGCCGGATGAACCCCAGTCCCAATG−3’(FwAscImApoA1)(配列番号:27)を設計した。このプライマーは、5’に3ヌクレオチドを含み、AscIでの開裂を可能とする。
【0108】
BioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline社、英国、ロンドン)とともに、鋳型としてのpCMV−mApoA1ならびにプライマーであるFwAscImApoA1およびRvTGAmApoA1を用いて、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、57℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間の条件でのPCRにより増幅を実施した。PCR産物(732ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)でマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したAscI−mApoA1のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−AscI−mApoA1と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0109】
平行して、BioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline社、英国、ロンドン)とともに、鋳型としてのpCMV−mIFNα1ならびにプライマーであるFwATGmIFNα1およびRvAscImIFNα1を用い、以下の増幅条件下でのPCRにより増幅を実施した:2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、94℃で5分間、94℃で40秒間の30サイクル、57℃で40秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間。PCR産物(576ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmIFNα1−AscIのDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mIFNα1−AscIと称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0110】
遺伝子融合を実施するために、プラスミドpCMV−AscI−mApoA1およびpCMV−mIFNα1−AscIを、pcDNA 3.1 V5−His TOPO(登録商標)TA骨格に存在する制限部位PmeIを用いて、AscI/PmeI酵素、1xBSAおよびBuffer4(New EnglandにあるBiolabs社)により、独立的に37℃で1.5時間消化した。両方の消化物を1%アガロースゲルにおいてマイグレーションし、対応するバンドから開環ベクターpCMV−mIFNα1−AscIおよびpCMV−AscI−mApoA1インサートを精製した。産物を、T4DNAリガーゼ(高濃度)および2XRapid Ligation Buffer(Promega Madison社、米国ウイスコンシン州)(緩衝液)を用いて、1:3(ベクター:インサート)比でライゲーションし、混合物を室温で10分間インキュベーションした。続いて、Top10バクテリア(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)を形質転換した。ベクターがこの抗生物質に耐性のある遺伝子を含有するので、形質転換したバクテリアを、アンピシリン含有LB培地を入れたペトリ皿での成長により選択した。陽性細菌のプラスミドDNAを、MiniPrep法(Qiagen社、ドイツ)により抽出し、続いてこのプラスミド2μgをAscI/PmeI酵素(New England Biolabs社)で消化し、1%アガロースゲルにおいて電気泳動により消化物を分離してインサートの存在を確認する。得られた6822ヌクレオチドプラスミドを、以下pCMV−IFN−Apo(pCMV−IA)と称する。
【0111】
1.5.3 mApoA1遺伝子へのペプチドp17のC末端融合
プライマー5’−TCACGCACGCTCATACCAAGAACTCCTAGGAATAAACCAAATACGCTTGGGCGCGCCCTGGGC−3’(RvmApoA1p17)(配列番号:28)を設計した。これを、Easy−A High Fidelity PCRクローニング酵素(Stratagene社、カリフォルニア州La Jolla)とともに、鋳型としてのpCMV−mApoA1−AscIおよびプライマーであるFwATGmApoA1およびRvmApoA1p17を用いてPCRにより増幅した。PCRは、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、以下の条件でおこなった:95℃で1分間、95℃で40秒間の30サイクル、60℃で40秒間および72℃で1分間、その後72℃で7分間。PCR産物を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmApoA1−AscI−p17のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mApoA1−AscI−p17と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0112】
1.5.4 mApoA1遺伝子へのペプチドp144のC末端融合
プライマー5’−TCAATTCTGCATCATGGCCCAGATTATCGAGGCGTCCAGCGAGGTGGGCGCGCCCTGGGC−3’ (RvmApoA1p144)(配列番号:29)を設計した。これを、Easy−A High Fidelity PCRクローニング酵素(Stratagene社、カリフォルニア州La Jolla)とともに、鋳型としてのpCMV−mApoA1−AscIおよびプライマーであるFwATGmApoA1およびRvmApoA1p144を用いてPCRにより増幅した。PCRは、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、以下の条件でおこなった:95℃で1分間、95℃で40秒間の30サイクル、65℃で40秒間および72℃で1分間、その後72℃で7分間。PCR産物を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(スペインのマドリッドにあるPronadisa社)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したmApoA1−AscI−p144のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−mApoA1−AscI−p144と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0113】
1.5.5 mApoA1シグナルペプチドの遺伝子配列のクローニング:
融合mApoA1およびペプチド融合実験において対照としての役割を果たすプラスミドを構築するために、mApoA1シグナルペプチド配列(SPmApoA1)をペプチドp17およびp144と遺伝子融合する(AscIの配列を付加しない)ことにより、確実にペプチドの分泌がmApoA1−ペプチドと同じであるようにする。プライマーFwATGmApoA1とともに使用し、鋳型としてpCMV−mApoA1を用いてSPmApoA1を増幅する、プライマー5’−TTGCTGCCATACGTGCCAAG−3’ (RvSPmApoA1)(配列番号:30)を設計した。PCR産物(72ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したSPmApoA1のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(カリフォルニア州CarlsbedにあるInvitrogen社)にクローニングした(以下、pCMV−SPmApoA1と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0114】
1.5.6 mApoA1シグナルペプチド遺伝子配列へのペプチドp17のC末端融合:
プライマー5’−TCACGCACGCTCATACCAAGAACTCCTAGGAATAAACCAAATACGCTTTTGCTGCCAGAAATGCCG−3’(RvSPmApoA1p17)(配列番号:31)を設計し、これをプライマーFwATGmApoA1とともに使用して、pCMV−mApoA1鋳型から始めて、SPmApoA1−p17を増幅した。PCR産物(120ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社、カリフォルニア州Valencia)により精製した。精製したSPmApoA1−p17のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−SPmApoA1−p17と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0115】
1.5.7 mApoA1シグナルペプチド遺伝子配列へのペプチドp144のC末端融合
プライマー5’−TCATTCTGCATCATGGCCCAGATTATCGAGGCGTCCAGCGAGGTTTGCTGCCAGAAATGCCG−3’(RvSPmApoA1p144)(配列番号:32)を設計し、これをプライマーFwATGmApoA1とともに使用して、pCMV−mApoA1鋳型から始めて、SPmApoA1−p144を増幅した。PCR産物(117ヌクレオチド)を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片をQIAquick Gel Extraction Kit(カリフォルニア州ValenciaにあるQiagen社)により精製した。精製したSPmApoA1−p144のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−SPmApoA1−p144と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0116】
1.5.8 pCMV−mApoA1−AscI−p144へのMMP9配列の導入
ペプチドp144の開裂により放出される可能性のあるこの遺伝子から生成される融合タンパク質を提供するために、融合タンパク質のアミノ酸配列を開裂して完全p144を放出できるタンパク質分解酵素を、MEROPSデータベース(http://merops.sanger.ac.uk/)により検討した。調査の結果、候補として金属プロテアーゼ9(MMP9)が見いだされ、これは、開裂を生じさせて、p144配列にアミノ酸Sを残すものであった。癌における存在が報告されていることから、このタンパク質分解酵素の使用により、構築物に、阻害(局在であり、全身性でない阻害)が必要な部位にこのTGF−β阻害が放出される能力がさらに付与された。DNA配列CTTTTCCCGACGTCT(配列番号:51)(アミノ酸:LFPTS、配列番号:19)は、前記開裂部位に翻訳される:LFPT−S TSLDASIIWAMMQN(配列番号:4)。
【0117】
プライマー5’−CCAGGCGCGCCGCTTTTCCCGACGTCTACCTCGCTGGACGCCTC−3’(FwMMp9AscIp144)(配列番号:33)および5’−TCAATTCTGCATCATGGCCCA−3’(RvMMp9AscIp144)(配列番号:34)を設計した。これを、Easy−A High Fidelity PCRクローニング酵素(Stratagene社、カリフォルニア州La Jolla)とともに、鋳型としてのpCMV−SPmApoA1−p144を用いて増幅した。PCRは、2720Thermalサイクラー(Applied Biosystems社、米国Foster City)において、以下の条件でおこなった:94℃で2分間、94℃で40秒間の30サイクル、54℃で45秒間および72℃で40秒間、その後72℃で7分間。PCR産物を、AgaroseD−1低EEO1%アガロースゲル(Pronadisa社、スペイン、マドリッド)においてマイグレーションし、ゲル断片を、PerfectPrep DNA Cleanup(Eppendorf社、ドイツ)で精製した(70ヌクレオチド)。精製したAscI−MMP9−p144のDNAを、製造業者から提供された説明書にしたがって、発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)にクローニングした(以下、pCMV−AscI−MMP9−p144と称する)。最後に、配列を配列決定法により確認した。
【0118】
遺伝子融合を実施するために、プラスミドpCMV−mApoA1−AscI−p144およびpCMV−AscI−MMp9−p144を、独立してAscI/PmeI制限酵素(後者はpcDNA 3.1 V5−His TOPO(登録商標)TA骨格に存在する)で消化した。AscI/PmeI酵素、1xBSAおよびBuffer4(New England Biolabs社、米国Beverly)を用いて、消化を、37℃で1.5時間おこなった。両方の消化物を1%アガロースゲルにおいてマイグレーションし、対応するバンドから開環ベクターpCMV−mApoA1−AscI−p144およびpCMV−AscI−MMp9−p1441インサートを精製した。産物を、T4DNAリガーゼ(高濃度)および2XRapid Ligation Buffer(米国ウイスコンシン州にあるPromega Madison社)(緩衝液)を用いて、1:3(ベクター:インサート)比でライゲーションし、混合物を室温で10分間インキュベーションした。続いて、Top10バクテリア(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)を形質転換した。ベクターがこの抗生物質に耐性のある遺伝子を含有するので、形質転換したバクテリアを、アンピシリン含有LB培地を入れたペトリ皿での成長により選択した。陽性細菌のプラスミドDNAを、MiniPrep法(Qiagen社、ドイツ)により抽出し、続いてこのプラスミド2μgをAscI/PmeI酵素(New England Biolabs社)で消化し、1%アガロースゲルにおいて電気泳動により消化物を分離してインサートの存在を確認する。得られた6324ヌクレオチドプラスミドを、以下pCMV−mApoA1−AscI−MMP9−p144と称する。
【0119】
1.5.9 pCMV−mApoA1−p144へのリンカー配列の導入
タンパク質とペプチドp144との間を移動する可能性のある、この遺伝子から生成した融合タンパク質を提供するために、アミノ酸に翻訳されたときの配列がAPAETKAEPMT(配列番号:13)である可撓性延長リンカーをコードするDNA配列(GCACCAGCAGAAACAAAAGCAGAACCAATGAC、配列番号:53)を導入した。これは、CCCCCCCCCCC(コイル)構造をとり、天然ピルビン酸フェレドキシンオキシドレダクターゼ(1b0pA_2)において結合ペプチドとして存在する。
【0120】
プライマー5’−CGCGCCGGCACCAGCAGAAACAAAAGCAGAACCAATGACAACCTCGCTGGACGCCTCGATAATCTGGGCCATGATGCAGAATTGAGC−3’(FwLINKERp144)(配列番号:35)および5’−GGCCGCTCAATTCTGCATCATGGCCCAGATTATCGAGGCGTCCAGCGAGGTTGTCATTGGTTCTGCTTTTGTTTCTGCTGGTGCCGG−3’(RvLINKERp144)(配列番号:36)を、各々濃度100mMで設計した。各プライマー10μlを混合し、サーマルサイクラーにおいてハイブリダイゼーション(95℃で2分間、52℃で10分間)し、4℃とした。これらのプライマーのハイブリダイゼーションでは、リンカーに対応する配列およびp144に対応する配列で完了するが、5’におけるAscIによる開裂と適合する付着末端および3’におけるNotIと適合する付着末端が残る。
【0121】
プラスミドpCMV−mApoA1−AscI−p144を、AscI(Buffer4、New England Biolabs社)で消化し、PerfectPrep DNA Cleanup(Eppendorf社、ドイツ)でDNAを精製し、続いて、消化緩衝液が不適合であるために、NotI(Buffer3およびBSA、New England Biolabs社)で消化した。1%アガロースゲルでマイグレーションし、開環ベクターをPerfectPrep DNA Cleanup (Eppendorf社、ドイツ)で精製した。産物を、T4DNAリガーゼ(高濃度)および2XRapid Ligation Buffer(Promega Madison社、米国ウイスコンシン州)(緩衝液)を用いて、1:3(ベクター:インサート)比でライゲーションし、混合物を室温で10分間インキュベーションした。続いて、Top10バクテリア(Invitrogen社、カリフォルニア州Carlsbed)を形質転換した。ベクターがこの抗生物質に耐性のある遺伝子を含有するので、形質転換したバクテリアを、アンピシリン含有LB培地を入れたペトリ皿での成長により選択した。得られた6373ヌクレオチドプラスミドを、以下pCMV−mApoA1−AscI−LINKER−p144と称する。最後に、この配列を、配列決定法により確認した。
【0122】
1.実験:
2.1動物:
実験を、雌の免疫適格BALB/cおよびC57BL/6マウスで5〜7週間おこなった(Harlan社、スペイン、バルセロナ)。動物を、特定の外部無病原条件下で、Centro de Investigacion Medica Aplicada(CIMA社、スペイン、パンプローナ)の指示および倫理規定に従って処置した。
【0123】
2.2 動物の取り扱いおよび腫瘍モデル:
各DNAプラスミド(20μg)を、0.9%食塩水(Braun)1.8mlに再懸濁し、27.5G針および2.5mlシリンジ(Becton−Dickinson社、スペイン)を用いて、水圧注入(Liu等,1999,Gene Ther.,6:1258−1266)により、尾静脈を介して導入した。血液試料は、イソフルレン(Forane、Abbott社)の吸入による麻酔後、後眼窩経路により得た。血清を2回の連続遠心分離(9.1xg、5分間)して回収し、−20℃で保存した。非経口麻酔を、ケタミン(Imalgene)とキシラジン(Rompun)との9:1混合物を200μl/マウス腹腔内注射することによりおこなった。温度を、ThermoKlinik温度計(Artsana社、イタリア、Grandateにある)と腹部を接触させることにより測定した。
【0124】
2.2.1 血液分析
血液をマウスから管に採取し、最終濃度0.5%ヘパリン(Mayne社)とした。i)総白血球を測定するために、全血を、容器内で、IsotonII希釈液20mlで1:1000希釈し、測定2分前に、Zap−OglobinII溶解試薬3滴を添加した。ii)総赤血球細胞を測定するために、全血を、容器内で、IsotonII希釈液10mlで1:50000希釈をした。iii)血小板を測定するために、全血を、管内で、IsotonII希釈液500μlで1:25希釈し、4℃、600gの条件で1.5分間遠心分離し、上清を管に移して、IsotonII希釈液20mlで1:400希釈し、Z1 Coulter Particle Counterにより、試料を製造業者により各々推薦されている設定で分析した(全ての材料および試薬は、Beckman Coulter社から入手した)。
【0125】
2.2.2 CT26に対するワクチン接種モデル
遺伝子導入による抗腫瘍効果を分析するために、2種のワクチン接種プロトコルを実施した:
A)0.9%生理食塩水(100μl/マウス)に溶解した、アミノ酸配列SPSYVYHQF(配列番号:54)を有するペプチドAH−1(Proimmune社、英国オックスフォード)(50μg/マウス)と、フロイントの不完全アジュバント(IFA、SIGMA社、スペイン、マドリッド)(100μl/マウス)を用いて、ワクチン接種プロトコルを実施した。混合物を、Branson社SONIFIER250で超音波処理した。各動物に、25G針および1mlシリンジ(Becton−Dickinson社、スペイン)を用いて、混合物200μlを接種した。このとき、100μlをマウスの左側腹に導入し、50μlを足の裏に導入した。7日後、種々の構築物を、水圧注入により投与した(Liu等、1999、Gene Ther.、6:1258−1266)。水圧注入してから7日後、インスリンシリンジ(Becton−Dickinson社、スペイン)を用いて、同系BALB/cマウスの右側腹に、5x105CT26結腸癌細胞を200μlのHBSS(Gibco−BRL社、英国、ペイズリー)に再懸濁したものを皮下注射することにより腫瘍を確立した。
B)遺伝子構築物を水圧注入により投与した。水圧注入してから1日後、ペプチドAH−1でのワクチン接種を、上記の方法で実施した。9日後、5x106個の結腸直腸腺癌細胞(CT26)、皮下注射により接種した。デジタル精密ゲージを用いて、腫瘍の追跡をおこなった。
【0126】
2.3 使用細胞株の詳細な説明
CT26細胞株を、BALB/cマウス結腸直腸腺癌から得、発癌物質N−ニトロソ−N−メチル−ウレタンにより導入し、完全RPMI−1640培地(Gibco−BRL社、英国、ペイズリー)で培養し、56℃で不活性化した10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100mg/mlペニシリン、1%5x10−3β−メルカプトエタノールを添加した。細胞株MC38(マウス腺癌細胞)、完全DMEM(56℃で不活性化した10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100mg/mlペニシリンを添加)において培養した、L929(マウス線維芽細胞由来の細胞)および293(ヒトアデノウイルス型5に属するE1領域を安定導入したヒト胎児腎臓細胞、ECACC第85120602号)。
【0127】
記載の細胞を、加湿インキュベートチャンバー中、37℃、5%CO2雰囲気の条件で培養した。培養瓶およびプレートは、Greiner Bio−one社(ドイツ、Essen)から入手した。
【0128】
2.4 mIFNα1、IFNγおよびNeopterinの測定
mIFNα1濃度を、NUNCマキシソープフラット96ウエルプレートにおいて、ELISA法により測定した。抗mIFNα1中和Ab抗体(RMMA−1、PBL)を、PBS1xで1/1000希釈し、100μl/ウエルをプレーティングし、湿潤環境下4℃でO/Nインキュベーションした。PBS 1x−0.1%Tween−20(pH7.2〜7.4)で5回洗浄後、プレートを、室温で1時間、PBS 1x 1%BSA溶液300μl/ウエルでブロッキングした。血清試料をPBS 1x 1% BSA溶液で1/100希釈し、室温で1時間インキュベーションした。PBS 1x−0.1%Tween−20で5回洗浄後、100μl/ウエルのウサギ抗IFNαポリクローナル抗体(PBL)で1時間インキュベーションし、PBS1x 1%BSA溶液で1/1000希釈した。PBS 1x−0.1%Tween−20で5回洗浄後、100μl/ウエルのHRP−複合ロバα−ウサギIgG(Southern Biotech社、米国カリフォルニア州Birmingham)を添加し、PBS1x1%BSA溶液で1/4000希釈し、室温で1時間保持した。PBS1x−0.1%Tween−20で5回洗浄後、100μl/ウエルのBD OptEIA基質溶液(BD)を添加し、室温かつ暗所で15分後、2N H2SO450μlを添加した。最後に、450nmでの吸光度を測定し、540nmで補正した。
【0129】
血清中IFNγ濃度を、IFN−γ ELISA Set(BD Biosciences社、カリフォルニア州サンディエゴ)で測定した。血清中ネオプテリン濃度を、製造業者から提供された説明書に従って、Neopterin ELISA(IBL社、ハンブルグ)により測定した。
【0130】
2.5 定量的PCR
cDNA 2μlを、iQ SYBR Green Supermix(Bio−Rad社、カリフォルニア州Hercules)を用いて、表1の特定のプライマーとともにインキュベーションした。発現がmIFNα1またはmApoA1により影響されないので、マウスアクチンを使用して遺伝子発現を標準化した。mRNA値を式2ΔCt(式中、ΔCtは、mアクチンと標的遺伝子との間の閾値サイクル差を示す)により表した。
【0131】
表1 使用プライマーリスト
【表4】
【表5】
【0132】
2.6 In vivo Killing
雌BALB/cマウス(N=3/群)に、0日目に、pCMV−LacZ 20μgおよび検討する各構築物(i)pCMV−mApoA1、ii)pCMV−IFNα1、iii)pCMV−mApo−IFN、iv)0.9%生理食塩水(Braun社)に溶解したpCMV−mIFN−ApoA1)20μgを、上記した水圧注入により免疫化した。7日目に、非免疫化BALB/cマウス脾臓から得た脾細胞を単離し、赤血球細胞をACK溶液(Cambrex社、メリーランド州Walkersville)で溶解した。得られた脾細胞を2群に分け、そのうちの1群を、RPMI1640培地および9μMペプチドTPHPARIGL(β−ガラクトシダーゼ由来の細胞傷害性エピトープ、Proimmune社、英国オックスフォード)を用いて、37℃で30分間インキュベーションした。第2群を、ペプチドなしで同じ処理をした。ペプチドを添加した脾細胞を、2.5μMCFSE(CFSEhigh)(オレゴン州EugeneにあるMolecular Probes社)で標識した。対照脾細胞を、0.25μM CFSE(CFSElow)で標識した。最後に、両方の集団を、1:1比で混合し、107細胞を野生型マウスまたは免疫化マウスに静脈内注射した。24時間後、動物を殺生した。取り出した脾臓を細分し、CFSEhigh細胞とCFSElow細胞との比を、FACSalibur(Becton Dickinson社、米国カリフォルニア州Mountain View)を用いたフローサイトメトリーにより分析した。特異的溶解百分率を、下式中により算出した:
【数1】
【0133】
2.7 SRB1の発現の測定:
C57BL/6マウス脾臓由来の脾細胞を、単離した。取り出し、細分した脾臓を8群に分け、それらのうちの4群を、ウサギ抗SR−B1ポリクローナル抗体(Biologicals Littleton社、コロラド州Novus)およびBD Pharmigen抗体とともに、10分間インキュベーションした:i)CD4+細胞集団を定義するためのR−PE−複合ラット抗マウスCD4(L3T4)モノクローナル抗体、およびCD8+細胞集団を定義するためのAPC複合ラット抗マウスCD8a(Ly−2)モノクローナル抗体、ii)NK細胞集団を定義するためのAPC−複合マウス抗マウスNK−1.1(NKR−P1BおよびNKR−P1C)モノクローナル抗体、iii)単球
細胞集団を定義するためのAPC−ラット抗マウスCD11b、iv)樹状細胞集団を定義するためのAPC− CD11c。その他の4群を、対照として使用し、抗SRB1なしで、それぞれの抗体とともに、10分間インキュベーションした。標識脾細胞を、PBSおよび5%ウシ胎仔血清で洗浄し、FITC複合ロバ抗ウサギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch社、ペンシルベニア州West Grove)とともに、10分間インキュベーションした。このように染色した試料を、FACSalibur(Becton Dickinson社、米国カリフォルニア州Mountain View)を用いて、フローサイトメトリーにより検討した。
【0134】
2.8 臭化ナトリウム勾配での分画遠心法によるHDLの単離:
プラスミドmApoA1、IFNα1、Apo−IFN、IFN−ApoまたはApoAI−リンカー−P144を水圧注入してから24時間後、血液をマウスから管に採取し、最終濃度0.5%ヘパリン(Mayne)とし、直ちに血漿を遠心分離(5000g、20分間)により抽出した。
【0135】
種々の密度の臭化ナトリウム(NaBr)溶液を、蒸留水で25mLの最終溶液とした。EDTAを最終濃度0.05%(w/v)で添加した。NaBr(Fluka社)を添加して溶液を得た:0.225g(ρ=1.006g/ml)、1.431g(ρ=1.04g/ml)、7.085g(ρ=1.21g/ml)および13.573g(ρ=1.4 g/ml)。NaBrは高吸湿性の塩であるので、密度を確認し、必要なときに蒸留水を添加して補正した。
【0136】
超遠心分離後の浮遊によりリポタンパク質を順次分離する方法を、Rodriguez−Sureda等(Analytical Biochemistry 303、73−77(2002))により記載されたプロトコルを少し改良して、TLA100.4ロータ(Beckman Coulter社)を備えたUltracentrifuge Optima MAXにおいて、2〜4mLのマウス血漿(試料に応じて一つとする)から、以下の密度でおこなった:VLDL<1.006g/mL、LDL1.006〜1.04g/mLおよびHDL1.04〜1.21g/mL。i)VLDLの単離:マウス血漿400μlを3mlポリカーボネート管に移し、ρ=1.006g/ml NaBr溶液1100μlを添加した。試料を、2時間、4℃、336000gの条件で遠心分離した。上清約650μlを、ピペットで採取し、−20℃で保存した。ii)LDLの単離:残り容積の沈殿物に、下式で算出された容積のρ=1.4g/ml NaBr溶液を添加することにより密度を1.04とした。
【数2】
【0137】
ρ=1.04g/ml NaBr溶液で容積を1.5mlとし、試料を2.5時間、4℃、336000gの条件で遠心分離した。上清300〜400μlをピペットで採取し、−20℃で保存した。iii)HDLの単離:沈殿物約800μlを新しい管に移し、上記したようにして密度を1.21g/mLとし、ρ=1.21g/ml NaBr溶液で容積を1.5mLとした。試料を、3.5時間、4℃、336000gの条件で遠心分離し、HDLに相当する上清画分約400μlおよびリポタンパク質不含有血漿(LDP)に相当する沈殿画分を採取し、−20℃で保存した。
【0138】
2.9 mApoA1に対する電気泳動および免疫ブロッティング
各試料について、HDLまたはLDP画分25μlを、4−20%Tris−ヘペス PAGE LongLife iGels(Nusep社)勾配ゲルで分離し、ニトロセルロース膜(Whatman社)に移した。タンパク質を、mApoA1に対するヤギポリクローナル抗体、1:200希釈(ヤギポリクローナル抗アポリポタンパク質A1、Santa Cruz Biotechnology社)およびヤギIgGに対する抗体、1:20000希釈(抗ヤギIgG(全分子)−HRP複合体、Sigma−Aldrich社)を用いて検出した。膜を、ECLプラス ウエスタンブロッティング検出試薬(Amersham社)を用いて展開した。
【0139】
2.10 IFN活性バイオアッセイ:細胞変性効果(CPE):
Apo−IFNおよびIFN−Apoを含有するマウス血漿から単離したHDL画分のIFN活性を、活性バイオアッセイにより算出し、IFNが脳心筋炎溶菌ウイルス(EMCV)の細胞変性活性に対して細胞を保護する能力を、試料を順次希釈により、広範囲なプレーティングしたIFN濃度にわたって、測定した。この希釈で、3x105L929細胞/ウエルを、96−ウエルCellstar細胞培養プレート(Greiner Bio−one社)にプレーティングし、37℃、5%CO2で、O/Nインキュベーションして、付着細胞の単層を形成した。次に、同量のEMCV(pfu/ウエル)を添加し、対照として使用した未処理細胞が溶解するまで24時間インキュベーションした。この時点で、IFN効果により保護されている生存細胞を、製造業者の説明書に従って、ViaLight Plus Kit展開溶液(Lonza社)を用いて、光度法により測定した。読み取り値を、プロットして用量−反応曲線(Prism5、GraphPad Software社)を作成した。この曲線から、抗ウイルス活性でのIFN製剤の効力を、各アッセイに使用されるrIFNα組み換えタンパク質標準(PBL)の希釈を参照して算出することができる。
【0140】
2.11 rIFNおよび単離したHDL IFN−Apo画分を用いた実験
活性バイオアッセイにより測定された10000IUのマウスrIFNアルファ(CHO由来マウス、Hycult Biotechnol社)または10000IUのHDL IFN−Apoを、マウスに後眼窩注射した。
【0141】
2.12 データの統計的分析
データの統計的分析を、Prism5コンピュータプログラム(GraphPad Software社)を用いておこなった。腫瘍発生データを、Kaplan−Meierグラフで表し、対数順位検定により分析した。種々の時間で検討したデータを、反復測定ANOVAにより分析後、ボンフェローニ検定をおこなった。残りのパラメータを、ANOVAにより分析後、Dunnettの事後分析により多重比較した。p<0.05値は、有意であると考えられた。
【0142】
実施例2
キメラ構築物ApoA1−IFNαの水圧投与より、血清IFN濃度が増加する
血清マウスIFNα濃度のレベルを比較するために、アポリポタンパク質AI(ApoAI)、マウスインターフェロンアルファ1(IFNα1)、Apo−IFN(ApoA1とIFNα1の融合物)またはIFN−Apo(IFNα1とApoA1の融合物)を発現するプラスミドを、水圧注入によりマウス4匹からなる群に投与する。6時間後および1日目、3日目、6日目および9日目に得られた血清を、サンドイッチELISAにより分析した。ApoA1を発現する対照プラスミドを投与したマウスの血清は、検出可能なIFNα濃度を示さず、水圧投与自体またはApoA1の発現は、内在性IFNαの発現を誘発しなかった(図1)。IFNα1を発現するプラスミドを注射したマウスは、6時間後高IFNα1濃度となり、急速に減少した(図1)。Apo−IFNまたはIFN−Apoをコードするプラスミドを投与したマウスは、1日目でより高い血清インターフェロン濃度を有していた。さらに、プラスミドIFNα1を注射したマウスとは異なり、3日目で高IFNα濃度が得られた(図1)。したがって、IFNαとApoA1の融合タンパク質を発現する構築物は、より高くかつより持続した血清IFNα濃度を有している。
【0143】
実施例3
メッセンジャーRNA動態は、キメラ構築物ApoA1−IFNαにおいて変化しない
血清IFNα濃度差は、IFNαに関する融合タンパク質の血漿半減期の増加によるか、これらのタンパク質の発現の増加により説明できる。これらの2つの選択肢の間を区別するために、これらの構築物のメッセンジャーRNA(mRNA)動態を分析した。このために、0日目、1日目、3日目および6日目に、ApoA1、IFNα1、Apo−IFNおよびIFN−Apoを発現するプラスミドを水圧注入投与したマウスの肝臓を、採取した。これらの試料のRNAを抽出し、定量的RT−PCRをおこなった。図2から明らかなように、IFNα1 mRNA濃度を、ApoA1試料ではなく、IFNα1、Apo−IFNおよびIFN−Apo試料について、1日目に検出した。mRNA濃度は、IFNαを有する構築物の群間では有意な差はなかった。3日目と6日目に、IFNα1 mRNA濃度は、いずれの試料でも検出されなかった。したがって、mRNA動態はIFNα1含有構築物を投与した全ての群において類似しており、キメラ構築物ApoA1−IFNα1では発現が増加するという仮説を捨てることができる。
【0144】
実施例4
キメラ構築物ApoA1−IFNαを注射したマウスは、より高い血清ネオプテリンおよび体温レベルを有する
i)キメラタンパク質がIFNαの生物学的活性を維持したこと、およびii)より持続するレベルがより高い生物学的活性と相関することを確認するために、IFNαの投与後に増加する2つのパラメータを分析した。プラスミドを投与してから3日後に、これらのパラメータを検討した。このときに、IFNα1を有する構築物により産生されたIFNαは、もはや検出されなかったが、キメラ構築物により産生されたものが検出された。まず、血清ネオプテリン濃度を分析した。ネオプテリンは、I型およびII型インターフェロンにより刺激されたマクロファージにより合成されたGTPのカタボライト産物である。IFNα配列を含む3つのプラスミドは、血清ネオプテリン濃度を増加したが、キメラ構築物のみが顕著に増加した(図3A)。第2に、注射したマウスの腹部の体温を測定した。3つの構築物で、高レベルが観察され、キメラ構築物を投与した後に得られるレベルが際立っている(図3B)。したがって、キメラタンパク質は、インターフェロンにより誘発される2つの生物学的パラメータを増加することができ、生物学的活性を保持し、この活性が3日目における血清IFNα濃度と相関することが明らかである。
【0145】
実施例5
キメラ構築物ApoA1−IFNαはインターフェロン刺激遺伝子の肝臓発現レベルを増加させる
I型インターフェロンの活性には、インターフェロン刺激遺伝子(ISG)によりコードされているタンパク質が介在している。IFNαがそれらの膜受容体に結合した後、シグナル伝達カスケードが活性化され、ISG転写の活性化を生じる。また、キメラ構築物がこれらの遺伝子を誘発するかどうかを確認するために、これらの遺伝子のうちの4個のmRNAレベルを、水圧投与してから3日目に分析した。分析した遺伝子は、IRF1、2’〜5’OAS、USP18、ISG15、Mx1である。図4から明らかなように、キメラ構築物は検討したISGのmRNAレベルを増加する。また、IFNαを発現するプラスミドにより生じた増加は、3日目に血清IFNα濃度がもはや検出されなかったにもかかわらず、検出することができる。
【0146】
実施例6
IFNαを有する構築物は脾細胞の数および活性を増加させる
構築物の免疫刺激活性を調べるために、脾臓細胞の数および活性の増加を、まず分析した。そのために、プラスミドを水圧注入で注射し、6日後に脾臓を細分し、総細胞をカウントし、脾細胞を、主リンパ球集団を同定するための抗体および活性化マーカー(CD69)で標識後、フローサイトメトリーにより分析した。IFNαを有する構築物を注射すると、顕著に脾細胞を増加させた。IFN−Apoをコードする構築物は、アッセイにおいてかなり際立っている(図5A)。種々の脾細胞集団を標識するために、抗CD4抗体をCD4+T細胞マーカーとして;抗CD8をCD8+T細胞マーカーとして;抗CD19をB細胞マーカーとして;抗CD49bをNK細胞マーカーとして使用した。CD4+T細胞との関係で、キメラ構築物は、IFNαとは異なり、活性化CD4+細胞百分率を増加させた(図5B)。しかしながら、IFNαは、顕著ではないがCD8+細胞百分率を増加させた。増加は、Apo−IFNで顕著であり、IFN−Apoでとりわけ高かった(図5C)。活性化B細胞百分率は、CD8+と同じプロファイルに従う。この場合、IFN−Apoのみは、顕著な増加を生じる(図5D)。最後に、NK細胞は、IFNαプラスミドで高活性を示し、このパラメータはキメラ構築物によっては超えられない(図5E)。このデータは、IFN−Apoが高いアジュバント効果を有することができることを示唆している。
【0147】
実施例7
IFN−Apoは細胞傷害性リンパ球により誘発される特異的溶解を増加させる
IFN−Apoのアジュバント効果を確認するために、DNAワクチンにより誘発される細胞傷害活性の増加を、種々の構築物の存在下で分析した。免疫原性β−ガラクトシダーゼタンパク質をコードするLacZ遺伝子を、抗原モデルとして選択した。このタンパク質をコードするプラスミドを、ApoA1、IFNα1、Apo−IFNまたはIFN−Apoをコードするプラスミドとともに、注射した。遺伝子のワクチン接種をしてから7日後、2.5μM CFSEで標識し、β−ガラクトシダーゼタンパク質由来の細胞傷害性エピトープH2Kd TPHPARIGLをロードした脾細胞を、静脈注射した。内部対照として、脾細胞にペプチドなしで、0.25μM CFSEを注射した。24時間後、細胞傷害性エピトープをロードした脾細胞の特異的溶解をフローサイトメトリーにより定量化した。図6において、IFNαを有するApoA1に関してより高い溶解が観察され、Apo−IFNおよびIFN−Apoが続き、これを有する構築物で特異的溶解の最高値が得られる。これらの結果は、CD8+T細胞活性化百分率の結果と相関し、IFN−Apoは、遺伝子ワクチン接種モデルにおける最高のアジュバント効果を有する構築物であると結論することができた。
【0148】
実施例8
SR−BIの発現
アジュバント活性における増加は、IFNαの安定性の増加によるか、またはIFN−ApoのApoA1画分によりIFNαと免疫系細胞との相互作用がより顕著になるからである。後者の仮説を調査するために、ApoA1の主要な受容体、SR−BIの存在を、種々の免疫系集団で分析した。野生型マウスからの脾細胞を、単離し、抗SRB−I抗体および集団を定義するための抗体で標識した。以下の抗体を使用した:CD4+T細胞マーカーとしての抗CD4;CD8+T細胞マーカーとしての抗CD8;NK細胞マーカーとしての抗CD49b;単球/マクロファージマーカーとしての抗CD11b;および樹枝状細胞マーカーとしての抗CD11c。SRB−I受容体は、全ての分析した集団において検出された。免疫系エフェクター細胞(CD4+T細胞、CD8+T細胞およびNK細胞)において、この受容体を発現する細胞の百分率は、15%〜28%の範囲である。この百分率は、単球および樹枝状細胞などの抗原提示能を有する細胞において50%超に上昇する(図7)。この結果は、アジュバント能を増加するための可能な機構の一つは、抗原提示細胞の成熟がより高レベルあることができることを示唆している。
【0149】
実施例9
IFN−Apoは抗腫瘍ワクチン接種プロトコルの効果を向上させる
IFN−ApoがIFNよりも高いアジュバント活性を有することを明らかにした後、この効果がワクチン接種プロトコルにおけるより高い抗腫瘍効果につながるかどうかを評価した。このために、BALB/cマウスに、Apo、IFNまたはIFN−Apoプラスミドを投与し、次の日に、フロイントの不完全アジュバントに細胞傷害性ペプチドAH−1を添加したものをワクチン接種した。このペプチドは、ワクチン接種から9日後に種々の実験群に接種したCT26腫瘍株により提示される。ワクチン接種とApoプラスミドを水圧注入した対照群のマウスのほとんどは、CT26腫瘍細胞の接種部位において皮下腫瘍を生じた。ワクチン接種に加えてIFNを投与したマウスは、対照群とは大きくは異ならない挙動を示す。しかしながら、ワクチン接種とIFN−Apoプラスミドを投与したマウスの約60%は、腫瘍細胞を拒絶できかつ実験の30日全体を通じて腫瘍を提示しなかった(図8)。したがって、IFN−Apoのアジュバント効果が大きいほど、ワクチン接種プロトコル効果が増加する。
【0150】
実施例10
IFN−ApoはIFNよりも血液毒性が低い
IFNの限界の一つは、そのかなりの血液毒性にあり、それにより、強い白血球減少および/または血小板減少を生じた特定の患者の治療を停止しなければならないことがある。種々の構築物を水圧投与した後、血中の白血球および血小板がどのようになるかを分析した。図9Aから、インターフェロンを有する全ての構築物は、プラスミドを水圧投与してから1日後の白血球の血中レベルが低いことが明らかである。この初期の影響は、IFNについて記載の二次リンパ器官からの白血球の出口をブロックすることによりもたらされる(Shiow LR等、Nature.440(7083):540−4(2006))。しかしながら、3日目に、IFNの抗増殖性による毒作用があるとき、IFNで処置したマウスのみが低レベルを示した。IFN−Apoで処置したマウスにおいて、血中白血球がそれらの正常レベルに回復した。血小板に関して(図9B)、IFNで処置した動物において、3日目に減少が観察された。この減少は、IFN−Apoで処置したマウスにおいて顕著に低かった。したがって、IFN−Apoは、白血球と血小板の両方のIFNにより生じる減少程度を減少させる。
【0151】
実施例11
IFN−Apoは脳におけるインターフェロン誘発遺伝子の増加がIFNより少ない
特定の患者における使用を制限するIFNの別の主要な悪影響は、神経精神病学的障害である。中枢神経系における新規な融合分子の影響を検討するために、BALB/cマウスに、種々の構築物をコードするプラスミドを注射し、24時間後に、マウスを殺生し、それらの脳を摘出した。種々の群におけるインターフェロン誘発遺伝子(ISG)の増加(図10)を、定量的RT−PCRにより分析した。融合タンパク質の血漿濃度はIFNよりも高い(図1)けれども、ISGの増加は、IFNにおいて、IFN−Apo分子よりも顕著に大きかった。このデータは、IFNへのApo分子の融合が血液−脳バリア(BBB)通路を変更することを示している。0.02%〜0.18%の血漿インターフェロンアルファは、受動拡散によりBBBを妨害する(Greig、N.H.等、J Pharmacol Exp Ther、245(2):574−80(1988);Greischel、A.等、Arzneimittelforschung、38(10):1539〜43(1988);Smith、R.A.等、Clin Pharmacol Ther.37(1):85−8(1985))。したがって、脳中濃度は、血漿濃度に比例する。これに対して、HDLのBBB通路は、SR−BIによる活性輸送により生じ、非常に制御されかつ低い濃度が維持される(Karasinska、J.M.等、J Neurosci.29(11):3579−89(2009))。本発明者等の結果は、アポリポタンパク質A1への生物学的活性化合物の結合により、これらのキメラ分子がHDLのBBBを介した輸送機構に従うことになることを示唆している。
【0152】
実施例12
IFN−Apo融合タンパク質は、循環し、高密度リポタンパク質(HDL)に組み込まれる
血液中に存在するアポリポタンパク質A1の約97%は、高密度リポタンパク質と称される高分子のリポタンパク質複合体の形態で循環する。融合タンパク質がHDLに組み込まれることができるかどうかを検討するために、IFNおよびIFN−Apo分子をコードするプラスミドを水圧経路により注射してから24時間後に、HDLを、NaBr勾配の分画遠心法により血清から単離した。IFNバイオアッセイ、すなわち、ウイルスの細胞変性効果からの保護のアッセイを、これらの画分を用いておこなった。段階希釈においてIFNを有する試料とともに上記でインキュベーションした細胞を、細胞変性ウイルスと比較する。試料にインターフェロンがある場合、ウイルスは前処理した細胞を溶解できないであろう。IFNをコードするプラスミドを投与したマウスから得たHDLは、脳脊髄炎ウイルスの細胞変性効果から細胞を保護することができなかった。このことは、IFNが循環しHDLに結合しないことを示している。これに対して、2つのIFN−Apo分子は、HDLにおけるこの手法により実際に検出することができる(図11A)。その後、ウエスタンブロットをおこなって、HDL不含(HDL−)血清画分および各群実験のHDL(HDL+)の画分中のアポリポタンパク質A1を検出した。アポリポタンパク質A1は、いずれのHDL枯渇画分にも検出されなかった。このことは、HDLが正しく単離されたことを示している。Apoプラスミドを投与した群と、IFNを投与した群の両方において、HDLの画分において、内在性アポリポタンパク質A1の高さに相当する1つのバンドだけが検出された。これに対して、融合分子に相当するApo−IFN分子を有する群において、より大きな高さを有するバンドが検出された。IFN−Apo分子の場合において、内在性ApoA1の他に2つのバンドが検出された。これは、キメラタンパク質の一部分において、二量体が形成されたことを示している(図11B)。この現象は、C末端がこの構築物において自由であり、他のApoA1分子との相互作用ができることによるものである。このデータは、融合分子が高密度リポタンパク質に組み込まれることができることを示している。したがって、これらの分子の生体内分布は、HDLの生体内分布を支配する法則により支配されている。これは、少なくとも部分的にIFN活性の一部分で観察される大きな変化を説明している。
【0153】
実施例13
IFN−Apoを含むHDLを再投与すると、水圧投与後に観察される性質が維持される
IFN−Apoをコードするプラスミドを投与したマウスの血清からIFN−Apoを含むHDLを精製できる可能性があり、生理学的IFN−Apoナノリポ粒子を提供して生体外と生体内の両方の特性を検討することができる。IFN−Apoを有するHDLを精製し、IFN10000IU/マウスに相当する量を投与した。3日目に、血中のリンパ球数と血小板数を分析した。組み換えIFNの投与量では、これらのパラメータを減少させることはできなかった。しかしながら、IFN−ApoのHDLを投与したマウスは、顕著に高いレベルを示した(図12A)。この現象は、IFN−ApoがIFNよりも効率的に潜在的な造血細胞増殖を刺激するという事実によるものである(Essers MA等、Nature.2月11日(2009))。1日目において、IFNにより誘発される鬱状態を、これらのマウスで測定した。ここでも、組み換えIFNを投与したマウスと、IFN−ApoのHDLを同等の投与量で投与したマウスとの間には大きな差がある。水圧投与後に得られるデータは再現される。
【0154】
実施例14
ApoA1−リンカー−P144構築物は、IL12−介在IFNγ誘発を増加する
インターロイキン12(IL12)は、強力な抗腫瘍活性を有する免疫刺激サイトカインである。その活性は、IFNγにより実質的もたらされる。このメディエーターの産生は、TGFβにより調整され、したがって、阻害ペプチドp17またはp144によるブロッキングは、IFNγ誘発を増加し、したがって、IL12の抗腫瘍活性を増加する。種々のペプチド配列により結合されたApoA1およびTGFβ阻害ペプチドにより形成されたキメラ構築物がIl12介在IFNγ誘発を増加するかどうかを検討するために、マウスIL12をコードするプラスミドおよび種々の構築物をコードするプラスミドを、水圧注入により投与した。ApoA1を、対照として使用した。2つの構築物を、p17を用いて生成した:i)ApoA1シグナルペプチドが先にあるペプチドp17をコードする配列を含むspP17であり、細胞外培地へのペプチドp17の放出が得られる、ii)ApoA1をコードする遺伝子、続いて3つの結合アミノ酸(GAP)、およびp17をコードする配列を含むApoA1−P17。構築物spP144およびApoA1−P144を、p144を用いて生成し、p17をコードする配列を、p144をコードする配列と置き換える。別の2つの構築物をさらに生成した:i)結合ペプチドとしてのメタロプロテイナーゼ9(MMP9)の標的を含むApoA1−MMP9−P144、ii)結合ペプチドとしての延長配置を有する配列を含むApoA1−リンカー−P144。
【0155】
水圧注入してから4日後、血清IFNγ濃度を、ELISAにより分析した。IL12およびApoA1をコードするプラスミドを注射することにより、検出可能なレベルのIFNγを生成した。p17を有する構築物を注射しても、これらのレベルは増加しなかった(図13A)。しかしながら、p144を生成する構築物を投与すると、IFNγレベルが大きく増加した(図13B)。構築物ApoA1−リンカー−P144は、p144単独により誘発されたよりも顕著に大きな最高レベルを生成した(図13B)。不思議なことに、構築物ApoA1−P144およびApoA1−MMP9−P144は、IFNγ誘発を増加しなかった。このことは、結合ペプチド配列がキメラ構築物の活性に大きな影響を有することを示している。構築物ApoA1−MMP9−P144は、MMP9の存在下でだけ活性である潜在性インヒビターの一例であり、ApoA1への配列結合を開裂すると、MMP9が発現する部位において活性ペプチドp144を放出するであろう。このプロテアーゼは、数多くの種類の腫瘍、例えば、肝細胞癌、および腫瘍間質に侵入する骨髄サプレッサー細胞により発現する。したがって、この構築物は、主に作用しなければならない部位にp144を放出でき、全身性TGFβ阻害の悪影響を制限することができる。
【0156】
実施例15
p17およびApoA1−リンカー−P144を発現する構築物は、腫瘍のないワクチン接種マウスの百分率を増加する
独立した実験モデルでのTGFβ阻害ペプチドを有する構築物の生物学的活性を確認するために、BALB/cマウスに、フロイントの不完全アジュバントを用いて細胞傷害性エピトープH2Kd AH1(SPSYVYHQF、配列番号:54)をワクチン接種した。7日後、種々の構築物を、水圧注入により投与した。さらに7日後、5x105CT26細胞を、皮下接種した。腫瘍のない動物の百分率を、経時的に分析した。ワクチン、およびApoA1を発現する対照構築物を投与した群において、全てのマウスは、CT26細胞接種部位において皮下腫瘍を生じた。しかしながら、p17を発現する2種の構築物の1つを投与したマウスの50%超は、実験の終わりに腫瘍のない状態のままであった(図14A)。p144を有する構築物の場合において、ペプチドp144を発現する構築物、構築物ApoA1−P144および構築物ApoA1−MMp9−P144は、極めて限定した効果を有し、実験の終わりでは、腫瘍のないマウスは20%未満であった。
驚くべきことに、構築物ApoAI−リンカー−P144は、85%を超えるマウスにおいて、主要の発症を防止することができた。
【0157】
実施例16
ApoA1−リンカー−P144タンパク質は、循環して高密度リポタンパク質に組み込まれる
ApoA1−リンカー−P144タンパク質が、HDLと複合体を形成するかどうかを検討するために、HDLを含む画分を、ApoA1−リンカーP144をコードするプラスミドを水圧経路により投与したマウスの血清から単離した。このため、血清を、NaBr勾配で分画遠心分離した。HDLを精製した後、ウエスタンブロットをおこなってアポリポタンパク質A1を検出した。内在性アポリポタンパク質A1に対応する主要バンドの他に、ApoA1−リンカー−P144分子に対するより大きな高さを有するバンドが検出された(図15)。したがって、融合治療ペプチドを有するアポリポタンパク質A1は、生理学的ナノリポ粒子の形態で組み込まれかつ循環することができる。
【0158】
実施例17
ApoA1−リンカー−P144を含むHDLは、IL−12により誘発されるIFNγを増加する
ApoA1−リンカー−P144を含むHDLを精製することにより、TGFβ活性を阻害する能力を有する生理学的ナノリポ粒子を得ることができる。これらの生体内活性を示すために、ApoA1−リンカー−P144を発現する動物から精製したHDLを、マウスに接種した。このマウスには、ドキシサイクリンの投与に反応してインターロイキン12を発現するプラスミドの水圧注入投与を同時におこなった。陽性対照として、プラスミドApoA1−リンカー−P144を共投与した。HDLの投与後に得られるIFNγ濃度は、水圧注入後に得られるものと類似している(図16)。両方の場合において、TGFβインヒビターの存在なしでのIL−12プラスミドの誘発後に得られるよりも顕著に高い。したがって、HDLに存在するペプチドP144は生体内でTGFβをブロックすることができ、IFNγのより大きな誘発を可能とする。したがって、アポリポタンパク質AIとの融合を介してHDLにペプチドを組み込むことは、新規な治療ペプチドを考案する魅力的な戦略である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ApoA分子または機能的に同等なその変異体と、
(ii)治療に関連する化合物と
を含んでなり、
成分(i)と成分(ii)とが共有結合してなる、複合体。
【請求項2】
前記ApoA分子が、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−III、ApoA−IVおよびApoA−Vまたは機能的に同等なそれらの変異体からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ApoA分子が、ヒトApoAおよびマウスApoAからなる群から選択されるものである、請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
成分(ii)が、ポリペプチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
成分(i)および成分(ii)が、一本鎖ポリペプチドを形成してなる、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
成分(i)のC末端が成分(ii)のN末端に結合しているか、または成分(i)のN末端が成分(ii)のC末端に結合してなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
成分(ii)が、インターフェロンである、請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
前記インターフェロンが、ヒトまたはマウスインターフェロンα1またはインターフェロンα5である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
成分(ii)が、TGF−β阻害剤である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
前記TGF−β阻害剤が、配列番号1(P144)および配列番号2(P17)または機能的に同等なそれらの変異体からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
成分(i)と成分(ii)とが、ペプチドリンカーにより接続されてなる、請求項4〜10のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項12】
前記ペプチドリンカーが、可撓性ペプチドであり、および/またはプロテアーゼ認識部位を含むものである、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
前記リンカーが、配列番号3(APAETKAEPMT)、配列番号4(GAP)またはマトリックスメタロプロテアーゼ−9認識部位からなる群から選択されるものである、請求項12に記載の複合体。
【請求項14】
請求項5〜13のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含んでなる、ポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物。
【請求項15】
請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなる、ベクター。
【請求項16】
請求項14に記載のポリヌクレオチドもしくは遺伝子構築物または請求項15に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の複合体を含んでなる、ナノリポ粒子。
【請求項18】
前記ナノリポ粒子が、高密度リポタンパク質(HDL)である、請求項17に記載のナノリポ粒子。
【請求項19】
治療に有効な量の請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、または請求項17または18に記載のナノリポ粒子と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含んでなる、医薬製剤。
【請求項20】
医薬として用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子、または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
肝疾患の治療または免疫系関連疾患の治療に用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子、または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項22】
慢性肝炎C、慢性肝炎B、肝細胞癌、パーキンソン病、急性間欠性ポルフィリン症、肺線維症、骨転移、全身性硬化症、 限局性強皮症、皮膚癌、光線角化症、ケロイド瘢痕、やけど、心臓線維症、腎線維症、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、リウマチ様関節炎および非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される疾患の治療に用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子、または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項23】
ワクチンアジュバント、免疫療法におけるアジュバント、大腸癌の治療におけるアジュバント、抗血管新生薬、または腎臓プロテクターとして用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子、または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項24】
(a)請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子または請求項17に記載の医薬製剤からなる群から選択される第1成分であって、成分(ii)がTGF−β1 阻害ペプチドである第1成分と、
(b)免疫刺激サイトカイン、前記サイトカインをコードしているポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、TGF−β1阻害ペプチド、細胞毒性薬またはそれらの組み合わせを含んでなる群から選択される第2成分と、
を含んでなる組み合わせ。
【請求項25】
成分(a)または成分(b)における前記TGF−β1阻害ペプチドが、ペプチドp144およびペプチドp17からなる群から選択されるものである、請求項24に記載の組み合わせ。
【請求項26】
成分(b)における前記免疫刺激サイトカインが、IL−12である、請求項24または25に記載の組み合わせ。
【請求項27】
癌の治療のための、請求項24〜26のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項1】
(i)ApoA分子または機能的に同等なその変異体と、
(ii)治療に関連する化合物と
を含んでなり、
成分(i)と成分(ii)とが共有結合してなる、複合体。
【請求項2】
前記ApoA分子が、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−III、ApoA−IVおよびApoA−Vまたは機能的に同等なそれらの変異体からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ApoA分子が、ヒトApoAおよびマウスApoAからなる群から選択されるものである、請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
成分(ii)が、ポリペプチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
成分(i)および成分(ii)が、一本鎖ポリペプチドを形成してなる、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
成分(i)のC末端が成分(ii)のN末端に結合しているか、または成分(i)のN末端が成分(ii)のC末端に結合してなる、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
成分(ii)が、インターフェロンである、請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
前記インターフェロンが、ヒトまたはマウスインターフェロンα1またはインターフェロンα5である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
成分(ii)が、TGF−β阻害剤である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
前記TGF−β阻害剤が、配列番号1(P144)および配列番号2(P17)または機能的に同等なそれらの変異体からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
成分(i)と成分(ii)とが、ペプチドリンカーにより接続されてなる、請求項4〜10のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項12】
前記ペプチドリンカーが、可撓性ペプチドであり、および/またはプロテアーゼ認識部位を含むものである、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
前記リンカーが、配列番号3(APAETKAEPMT)、配列番号4(GAP)またはマトリックスメタロプロテアーゼ−9認識部位からなる群から選択されるものである、請求項12に記載の複合体。
【請求項14】
請求項5〜13のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含んでなる、ポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物。
【請求項15】
請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなる、ベクター。
【請求項16】
請求項14に記載のポリヌクレオチドもしくは遺伝子構築物または請求項15に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の複合体を含んでなる、ナノリポ粒子。
【請求項18】
前記ナノリポ粒子が、高密度リポタンパク質(HDL)である、請求項17に記載のナノリポ粒子。
【請求項19】
治療に有効な量の請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、または請求項17または18に記載のナノリポ粒子と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含んでなる、医薬製剤。
【請求項20】
医薬として用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子、または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
肝疾患の治療または免疫系関連疾患の治療に用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子、または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項22】
慢性肝炎C、慢性肝炎B、肝細胞癌、パーキンソン病、急性間欠性ポルフィリン症、肺線維症、骨転移、全身性硬化症、 限局性強皮症、皮膚癌、光線角化症、ケロイド瘢痕、やけど、心臓線維症、腎線維症、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、リウマチ様関節炎および非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される疾患の治療に用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子、または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項23】
ワクチンアジュバント、免疫療法におけるアジュバント、大腸癌の治療におけるアジュバント、抗血管新生薬、または腎臓プロテクターとして用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子、または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項24】
(a)請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体、請求項14に記載のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17または18に記載のナノリポ粒子または請求項17に記載の医薬製剤からなる群から選択される第1成分であって、成分(ii)がTGF−β1 阻害ペプチドである第1成分と、
(b)免疫刺激サイトカイン、前記サイトカインをコードしているポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、TGF−β1阻害ペプチド、細胞毒性薬またはそれらの組み合わせを含んでなる群から選択される第2成分と、
を含んでなる組み合わせ。
【請求項25】
成分(a)または成分(b)における前記TGF−β1阻害ペプチドが、ペプチドp144およびペプチドp17からなる群から選択されるものである、請求項24に記載の組み合わせ。
【請求項26】
成分(b)における前記免疫刺激サイトカインが、IL−12である、請求項24または25に記載の組み合わせ。
【請求項27】
癌の治療のための、請求項24〜26のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5BC】
【図5DE】
【図9】
【図10】
【図13】
【図15】
【図16】
【図6】
【図7AB】
【図7CD】
【図7E】
【図8】
【図11】
【図12】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5BC】
【図5DE】
【図9】
【図10】
【図13】
【図15】
【図16】
【図6】
【図7AB】
【図7CD】
【図7E】
【図8】
【図11】
【図12】
【図14】
【公表番号】特表2011−523857(P2011−523857A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513010(P2011−513010)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/ES2009/070224
【国際公開番号】WO2009/150284
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/ES2009/070224
【国際公開番号】WO2009/150284
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【Fターム(参考)】
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