説明

生物活性被覆を備えたステント移植片

【課題】管腔内ステントおよび移植片を含むステント移植片を提供すること。
【解決手段】本発明は、ステント移植片を提供し、これは、ステント移植片の血管壁へのインビボ接着を誘発する試薬を放出するか、またはそうでなければ、このステント移植片を血管壁に接着させるインビボ繊維性反応を誘発もしくは加速させる。このようなステント移植片を作製する方法、および使用する方法もまた、提供される。関連した局面では、ステント移植片は、この移植片自体が血管壁との接着または繊維形成を誘発する材料から構成されるように構築される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬学的組成物、方法およびデバイスに関し、より詳細には、ステント移植片を血管壁にさらに接着性にするか、または血管壁にさらに容易に取り込むために、ステント移植片を調製する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ステント移植片は、通路を単に開いたままにしておくだけでなく、健康な血管から健康な血管へと疾患のある血管系を橋かけするために、開発された。ステント移植片の一般的な適用には、腹大動脈瘤(AAA)をバイパスすることにある。要約すると、ステント移植片は、大腿動脈または腸骨動脈からガイドワイヤ上を挿入されて、動脈瘤内で展開され、動脈瘤上方の許容可能な(通常、規定の)内径(caliber)の大動脈から動脈瘤下方の許容可能な(通常、規定の)内径の大動脈または腸骨動脈の一部まで血流を維持する。従って、この動脈瘤の嚢は排除される。従って、この排除された嚢血栓および動脈瘤は、内の血液は、その中で流れがなくなり、おそらくは血圧が下がり、それゆえ、破裂する傾向が少なくなる。
【0003】
しかし、現在利用可能なステント移植片は、多くの問題がある。例えば、現在のステント移植片は、ステント移植片の領域の周りで、持続的な漏れを起こす傾向にある。それゆえ、この嚢内の圧力は、動脈圧またはその近くにとどまり、依然として、破裂の危険がある。3つの一般的なタイプの移植片周囲の漏れがある。第一のタイプは、このステント移植片の周りでの直接的な漏れである。これは、このステント移植片と血管壁との間での密封が乏しいために、挿入時点から持続性であり得るか、またはこの密封が失われるので、後に発生し得る。さらに、この問題は、処置後、時間の経過と共に、この動脈瘤が成長、収縮、伸長または短縮するにつれて、動脈瘤に関連して、ステント移植片の位置または配向の変化のために、発生し得る。第二のタイプの移植片周囲の漏れは、血管の処置セグメントから伸長している側方動脈が存在しているので、起こり得る。一旦、この動脈瘤がこのデバイスにより排除されると、これらの血管内で血流が逆流し、このステント移植片の周りで、動脈瘤嚢を満たし続け得る。第三のタイプの移植片周囲の漏れは、血管の連続的な脈動によって移植材料が金属ステントタイン(tyne)を擦り最終的に移植片の故障を引き起こすので、このデバイス(モジュラーデバイスの場合)が分解するために、または、この移植材料内で穴が発生するために、起こり得る。動脈瘤が、処置後、時間の経過と共に、成長、収縮、伸長または短縮するにつれて、その形状が変化するために、このデバイスの分解が発生し得る。
【0004】
ステント移植片はまた、その用途が、動脈瘤を有する特定の患者のみに限定されている。例えば、血管内ステントは、それによって標準的な療法をしなくてすむので、AAAの処置において有利であるが、高い罹患率、死亡率を伴い、長期間の入院や長い回復時間がかかる大手術である。しかし、血管内技術は、(a)血管を経由して予定展開部位へのアクセスの適当な経路がないので(そのために、このデバイスを挿入できない)、そして(b)身体構造のために、AAAを有する特定の患者にのみ適用される。
【0005】
より詳細には、動脈瘤を排除するために、この移植材料は、一定の強度および耐久性がある必要があり、そうでないと、裂ける。代表的には、このことは、厚さがこの材料に強度を与える1つのパラメータであるので、通常の「外科的な」厚さのDacronまたはPTFE移植材料を包含する。このデバイスの移植部分の厚さにより、32 French(直径10.67mm)までであり得る送達デバイスの必要性が生じる。これにより、ほぼ常に、その挿入部位(通常、総大腿動脈)を外科的な露出を必要とし、より大きな送達デバイスは腸骨動脈を通って予定送達部部位に操縦するのがより困難であるので、この技術の適用が限定される。「低プロフィール」デバイス(これは、薄い移植材料を使用する)でさえ、依然として、このデバイスを挿入する血管を外科的に露出させる必要が常にある十分なサイズとなる。腸骨動脈または大動脈が、非常に蛇行している(頻繁には、AAAの場合)か、または著しく石灰化していて罹患している(AAAと頻繁に関連する別の合併症)の場合、デバイスを展開部位に前進できないかまたは腸骨動脈が破裂する可能性があるために、処置に対する禁忌(contraindication)となり得るか、または計画した処置が失敗するおそれがある。
【0006】
さらに、ステント移植片は、代表的には、上方の許容可能な内径から下方の許容可能な内径までの動脈部分から伸長している罹患した動脈(通常、動脈瘤)を橋渡しする。長期間の密封を達成するために、上方(「近位ネック」)の許容可能な内径の動脈は、そこから生じる主要な分枝血管なしで、少なくとも1.5cm長でありべきであり、そして、下方(「遠位ネック」)の許容可能な内径の動脈は、1cm以内で生じる主要な分枝血管なしで、少なくとも1.0cm長でありべきである。罹患したセグメントのいずれかの末端でのより短い「ネック」(円筒形よりもむしろ勾配のあるネック、または動脈瘤よりも小さいが依然としてこの位置での血管に対する通常の直径と比較して拡大されたネック)は、ステント移植片周囲での密封不全を受けやすくなるか、または遅れて移植片周囲の漏れが発生する。
【0007】
現在のステント移植片に伴うさらに困難な点の1つには、長い間に、特定のデバイスは、腹大動脈内で遠位に移動する傾向があることがある。このような移動の結果、デバイスの故障、移植片周囲の漏れおよび血管の閉塞が生じる。
【0008】
最終的には、AAAの処置としてのステント移植片技術全体について、長期的な不確実性が存在している。標準的な開放動脈瘤修復は、非常に耐久性がある。血管内ステント移植片についての不確実性には、それらが、動脈瘤破裂速度、移植片周囲の漏れ速度、デバイスの移動、長期間にわたり動脈瘤を効果的に排除する性能、およびデバイスの破裂または分解を少なくするかどうかが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規組成物、調製方法、およびステント移植片に関連したデバイスを開示しており、さらに、他の関連した利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
要約して述べると、本発明は、ステント移植片、ステント移植片を被覆する組成物、ならびに、これらの移植片を製造する方法および使用する方法を提供する。本発明の1局面では、血管における接着または繊維形成を誘発する(従って、このステント移植片の血管壁への接着を高めるかまたは加速する)ステント移植片が提供される。種々の実施形態では、このような接着または繊維形成は、このステント移植片からの試薬の放出により、誘発される。
【0011】
本発明の関連した局面では、管腔内ステントおよび移植片を含むステント移植片が提供され、ここで、このステント移植片は、ステント移植片の血管壁へのインビボ接着を誘発する試薬を放出する。本明細書中で使用される場合、「血管壁への接着を誘発する」は、このステント移植片の位置が血管内で固定されるように、このステント移植片と血管壁との間の反応を高めるかまたは加速する試薬または組成物を言及することが理解できるべきである。「試薬の放出」は、このステント移植片から解離された試薬、またはそれらの副成分の任意の統計的に有意な存在を言及する。
【0012】
関連した局面では、管腔内ステントおよび移植片を含むステント移植片が提供され、ここで、このステント移植片は、ステント移植片を血管壁に接着させるインビボ繊維性反応を誘発または加速させる。
【0013】
関連した局面では、ステント移植片は、この移植片自体が血管壁との接着または繊維形成を誘発する材料から構成されるように、構築される。
【0014】
本発明の種々の実施形態では、このステント移植片は、接着または繊維形成の開始を遅らせる組成物または化合物で被覆される。このような試薬の代表的な例には、ヘパリン、PLGA/MePEG、PLAおよびポリエチレングリコールが挙げられる。さらなる実施形態では、このステント移植片は、使用前に活性化される(例えば、この試薬は、まず、これまで不活性な試薬から活性な試薬に活性化されるか、またはステント移植片は、これまで不活性な試薬から、インビボ繊維形成反応を誘発または加速するものへと活性化される)。このような活性化は、挿入前、挿入中、または挿入に引き続いて、達成され得る。
【0015】
本発明の1実施形態では、このステント移植片は、血管壁刺激物を放出するように適合される。このような刺激物の代表例は、滑石粉、金属ベリリウムおよびシリカである。このステント移植片から放出され得る他の試薬には、細胞外マトリックスの成分、フィブロネクチン、ポリリシン、エチレンビニルアセテート、および炎症性サイトカイン(例えば、TGFβ、PDGF、VEGF、bFGF、TNFα、NGF、GM−CSF、IGF−a、IL−1、IL−8、IL−6、および成長ホルモンおよび接着剤(例えば、シアノアクリレート)が挙げられる。
【0016】
本発明の状況では、所望の処置の部位および性質に依存して、広範な種々のステント移植片が利用され得る。ステント移植片は、例えば、二股に分かれているかまたはチューブ移植片、円筒形または先細であるか、自己拡大可能またはバルーン拡大可能な単一本体(unibody)、またはモジュールであり得る。さらに、このステント移植片は、その遠位末端でだけ、またはステント移植片の全体に沿って、所望の試薬を放出するように適合され得る。
【0017】
また、本発明により、動脈瘤(例えば、腹大動脈瘤、胸大動脈瘤または腸骨動脈瘤)を有する患者を処置するための方法、血管の疾患のある部位をバイパスするための方法、または1本の血管と他の血管との間(例えば、動脈から静脈もしくはその逆、または動脈から動脈もしくは静脈から静脈)で連絡または通路を形成するための方法が提供され、その結果、動脈瘤の破裂の危険性が減少する。本明細書中で使用される場合、「破裂の危険の低減」または「破裂の危険の防止」は、破裂の数、タイミングまたは割合における統計的に有意な低減を言及し、破裂を永久的になくすことを言及しないことが理解できるべきである。
【0018】
本発明のさらに他の局面では、ステント移植片を製造する方法が提供され、これは、血管壁へのステント移植片の接着を誘発する(例えば、血管壁とのインビボ繊維形成反応の誘発を含む)試薬で、ステントを被覆する工程(例えば、噴霧、浸漬または包装する)を包含する。関連した局面では、このステント移植片は、血管壁との接着または繊維形成を放出またはそれ自体誘発する材料で構成され得る。
【0019】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(1) 管腔内ステントおよび移植片を含むステント移植片であって、該ステント移植片の血管壁へのインビボ接着を誘発する試薬を放出する、ステント移植片。
(2) 管腔内ステントおよび移植片を含むステント移植片であって、該ステント移植片を血管壁に接着させるインビボ繊維性反応を誘発または加速させる、ステント移植片。
(3) 前記ステント移植片が血管壁刺激物を放出する、項目1または2に記載のステント移植片。
(4) 前記血管壁刺激物が、滑石粉、金属ベリリウムおよびシリカからなる群から選択される、項目3に記載のステント移植片。
(5) 前記ステント移植片が、細胞外マトリックスの成分を放出する、項目1または2に記載のステント移植片。
(6) 前記試薬がフィブロニクチンである、項目1に記載のステント移植片。
(7) 前記ステント移植片が、ポリリシンまたはエチレンビニルアセテートを放出する、項目1または2に記載のステント移植片。
(8) 前記ステント移植片が、TGFβ、PDGF、VEGF、bFGF、TNFα、NGF、GM−CSF、IGF−a、IL−1、IL−8、IL−6、および成長ホルモンからなる群から選択される炎症性サイトカインを放出する、項目1または2に記載のステント移植片。
(9) 前記試薬が接着剤である、項目1に記載のステント移植片。
(10) 前記接着剤がシアノアクリレートである、項目9に記載のステント移植片。
(11) 前記ステント移植片が二股に分かれている、項目1または2に記載のステント移植片。
(12) 前記ステント移植片がチューブ移植片である、項目1または2に記載のステント移植片。
(13) 前記ステント移植片が円筒形である、項目12に記載のステント移植片。
(14) 前記ステント移植片が自己拡大可能である、項目1または2に記載のステント移植片。
(15) 前記ステント移植片がバルーン拡大可能である、項目1または2に記載のステント移植片。
(16) 前記ステント移植片の遠位末端が、接着を誘発する試薬を放出するように適合されている、項目1または2に記載のステント移植片。
(17) 前記ステント移植片の全体が、接着を誘発する試薬を放出するように適合されている、項目1または2に記載のステント移植片。
(18) 接着または繊維形成の開始を遅延する被覆をさらに含む、項目1または2に記載のステント移植片。
(19) 前記試薬が、まず、これまで不活性な試薬から活性な試薬に活性化される、項目1に記載のステント移植片。
(20) 前記ステント移植片が、これまで不活性なステント移植片から、インビボ繊維反応を誘発または加速するステント移植片に活性化される、項目1に記載のステント移植片。
(21) 動脈瘤を有する患者を処置する方法であって、該方法は、動脈瘤が破裂する危険を減らすように、項目1または2に記載のステント移植片を患者に送達する工程を包含する、方法。
(22) 前記動脈瘤が腹大動脈瘤である、項目21に記載の方法。
(23) 前記動脈瘤が胸大動脈瘤である、項目21に記載の方法。
(24) 前記動脈瘤が腸骨動脈瘤である、項目21に記載の方法。
(25) 血管内の疾患をバイパスする方法であって、該方法は、血管内容物が該血管の該罹患部分をバイパスするように、項目1〜20のいずれか1項に記載のステント移植片を患者に送達する工程を包含する、方法。
(26) 動脈と静脈との間で連絡を形成する方法であって、該方法は、該動脈と該静脈との間で通路を形成するように、項目1〜20のいずれか1項に記載のステント移植片を患者に送達する工程を包含する、方法。
(27) 第一静脈と第二静脈との間で連絡を形成する方法であって、該方法は、該第一静脈と該第二静脈との間で通路を形成するように、項目1〜20のいずれか1項に記載のステント移植片を患者に送達する工程を包含する、方法。
(28) 前記ステント移植片が、拘束された形状で患者に送達され、そして拘束デバイスの解除後、適当な位置に自己拡大する、項目21、25、26または27のいずれか1項に記載の方法。
(29) 前記ステント移植片が、バルーンカテーテルにより、前記患者に送達される、項目21、25、26または27のいずれか1項に記載の方法。
(30) 接着性ステント移植片を製造する方法であって、該方法は、ステント移植片を、該ステント移植片の血管壁への接着を誘発する試薬で被覆する工程を包含する、方法。
(31) 前記ステント移植片が、該ステント移植片を前記試薬で噴霧、浸漬または包装することにより被覆される、項目30に記載の方法。
(32) 前記試薬がさらに重合体を含有する、項目30に記載の方法。
(33) 前記試薬が血管壁刺激物である、項目30に記載の方法。
(34) 前記試薬が炎症性サイトカインである、項目30に記載の方法。
(35) 前記試薬が炎症性結晶である、項目30に記載の方法。
(36) 前記試薬がbFGFである、項目30に記載の方法。
【0020】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して、明らかとなる。さらに、本明細書中では、種々の参考文献が示されており、これらは、特定の手順または組成物をさらに詳細に記述しており、そして、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本発明を説明する前に、まず、本明細書中以下で使用される特定の用語の定義を説明することが、その理解に役立ち得る。
【0022】
「ステント移植片」とは、移植片またはラップ(wrap)(これは、織物、重合体または他の適当な材料(例えば、生体組織)から構成され、そして血管の一部から他の部分への流体(例えば、血液)の流れを維持する)および血管内足場またはステント(これは、身体の通路を開いたままにするか、および/または移植片またはラップを支持する)を含むデバイスを言及する。この移植片またはラップは、ステント内で織布され得、ステントの管腔内に含まれ得るか、および/またはステントの外側にあり得る。
【0023】
上述のように、本発明は、ステント移植片に関連する組成物、方法およびデバイスを提供し、これらは、ステント移植片の成功および適用を大きく高める。特に、このようなステント移植片は、ステント移植片の外側にある血管の管腔の閉塞を加速または増強し得、そしてこのデバイスの移植片部分の強度および耐久性を高め得る。
【0024】
ステント移植片を構成する方法、血管に接着するステント移植片を作成する組成物および方法、ならびにこのようなステント移植片を利用する方法が、以下でさらに詳細に記述される。
【0025】
(ステント移植片の構成)
上で述べたように、ステント移植片は、移植片またはラップ(これは、血管の一部から他の部分への流体(例えば、血液)の流れを維持する)および血管内足場またはステント(これは、身体の通路を開いたままにするか、および/または移植片またはラップを支持する)を含むデバイスを言及する。1つの代表的なステント移植片を、図1および2に図示する。
【0026】
このステントの移植部分は、織物、重合体、または他の適当な材料(例えば、生体組織)から構成され得る。適当な移植材料の代表例には、織物(例えば、ナイロン、Orlon、Dacron、または織布Teflon)、および非織物(例えば、拡大ポリテトラフロオロエチレン(PTFE))が挙げられる。この移植片またはラップは、ステント内で織布され得、ステントの管腔内で含まれ得るか、および/またはステントの外側にあり得る。
【0027】
この血管内足場またはステントは、身体の通路を開いたままにするか、および/またはこの移植片またはラップを支持するように、適合される。ステント移植片およびこのようなステントを製造し使用する方法の代表例は、米国特許第5,810,870号(これは、「Intraluminal Stent Graft」と表題される);米国特許第5,776,180号(これは、「Bifurcated Endoluminal Prosthesis」と表題される);米国特許第5,755,774号(これは、「Bistable Luminal Graft Endoprosthesis」と表題される);米国特許第5,735,892号および同第5,700,285号(これらは、「Intraluminal Stent Graft」と表題される);米国特許第5,723,004号(これは、「Expandable Supportive Endoluminal Grafts」と表題される);米国特許第5,718,973号(これは、「Tubular Intraluminal Graft」と表題される);米国特許第5,716,365号(これは、「Bifurcated Endoluminal Prosthesis」と表題される);米国特許第5,713,917号(これは、「Apparatus and Method for Engrafting a Blood Vessel」と表題される);米国特許第5,693,087号(これは、「Method for Repairing an Abdominal Aortic Aneurysm」と表題される);米国特許第5,683,452号(これは、「Method for Repairing an Abdominal Aortic Aneurysm」と表題される);米国特許第 5,683,448号(これは、「Intraluminal Stent and Graft」と表題される);米国特許第5,653,747号(これは、「Luminal Graft Endoprosthesis and Manufacture Thereof」と表題される);米国特許第5,643,208号(これは、「Balloon Device of Use in Repairing an Abdominal Aortic Aneurysm」と表題される);米国特許第5,639,278号(これは、「Expandable Supportive Bifurcated Endoluminal Grafts」と表題される);米国特許第5,632,772号(これは、「Expandable Supportive Branched Endoluminal Grafts」と表題される);米国特許第5,628,788号(これは、「Self−Expanding Endoluminal Stent−Graft」と表題される);米国特許第5,591,229号(これは、「Aortic Graft for Repairing an Abdominal Aortic Aneurysm」と表題される);米国特許第5,591,195号(これは、「Apparatus and Methods for Engrafting a Blood Vessel」と表題される);米国特許第5,578,072号(これは、「Aortic Graft and Apparatus for Repairing an Abdominal Aortic Aneurysm」と表題される);米国特許第5,578,071号(これは、「Aortic Graft」と表題される);米国特許第5,571,173号(これは、「Graft to Repair a Body Passageway」と表題される);米国特許第5,571,171号(これは、「Method for Repairing an Artery in a Body」と表題される);米国特許第5,522,880号(これは、「Method for Repairing an Abdominal Aortic Aneurysm」と表題される);米国特許第5,405,377号(これは、「Intraluminal Stent」と表題される);および米国特許第5,360,443号(これは、「Aortic Graft for Repairing an Abdominal Aortic Aneurysm」と表題される)で、さらに詳細に記述されている。
【0028】
(血管壁に接着するステント移植片を作成するための組成物および方法)
本発明のステント移植片は、血管壁への接着を誘発する試薬で被覆されるか、そうでなければ、その試薬を放出するように適合される。ステント移植片は、(a)この移植片または装置に、所望の試薬または組成物を直接固着することにより(例えば、このステント移植片を重合体/薬剤フィルムで噴霧することにより、または移植片または装置を重合体/薬剤溶液に浸漬することにより、または他の共有結合性手段または非共有結合性手段により);(b)ステント移植片を、次に所望の試薬または組成物を吸収する物質(例えば、ヒドロゲル)で被覆することにより;(c)ステント移植片に、試薬または組成物を被覆した糸を織り合わせ(例えば、糸に形成される試薬を放出する重合体)、インプラントまたはデバイスにすることにより;(d)所望の試薬または組成物から構成されているかまたはそれで被覆されたスリーブまたはメッシュを挿入することにより;(e)ステント移植片それ自体を、所望の試薬または組成物を用いて構成することにより;または(f)そうではなしに、ステント移植片を、所望の試薬または組成物で含浸することにより、そのような試薬を放出するように適合され得る。適切な接着誘発試薬は、実施例14(移植片周囲反応の評価用のスクリーニング手順)および実施例15(動物の腹大動脈瘤モデル)で提供された動物モデルに基づいて、容易に決定され得る。
【0029】
接着誘発試薬の代表例には、刺激物(例えば、滑石粉、金属ベリリウムおよびシリカ)、細胞外マトリックスの成分(例えば、フィブロネクチン);重合体(例えば、ポリリジンまたはエチレンビニルアセテート);炎症性サイトカイン(例えば、TGFβ、PDGF、VEGF、bFGF、TNFα、NGF、GM−CSF、IGF−a、IL−1、IL−8、IL−6、および成長ホルモン);および炎症性微結晶(例えば、結晶性無機物(例えば、結晶性シリケート))が挙げられる。他の代表例には、単球走化性タンパク質、線維芽細胞刺激因子1、ヒスタミン、フィブリンまたはフィブリノーゲン、エンドセリン−1、アンギオテンシンII、ウシコラーゲン、ブロモクリプチン、メチルセルジド(methylsergide)、メトトレキサート、N−カルボキシブチルキトサン、四塩化炭素、チオアセトアミド、滑石粉、金属ベリリウム(またはその酸化物)、石英ダスト、ポリリジン、フィブロシン(fibrosin)、およびエタノールが挙げられる。
【0030】
必要に応じて、本発明の1実施形態では、所望の接着誘発剤は、重合体と混合、ブレンド、結合され得るか、そうでなければ、組成物として重合体を含有するように改変され得、この重合体は、生体分解性または非生体分解性であり得る。生体分解性組成物の代表例には、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カゼイン、デキストラン、多糖類、フィブリノーゲン、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)およびポリ(オルトエステル)、ポリエステル、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ無水物、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリ(アミノ酸)およびそれらの共重合体が挙げられる(一般に、Illum、L.、Davids、S. S.(編)「Polymers in Controlled Drug Delivery」Wright、Bristol、1987;Arshady、J.Controlled Release 17:1〜22,1991;Pitt,Int.J.Phar.59:173〜196、1990;Hollandら、J. Controlled Release 4:155〜0180、1986を参照)。非分解性重合体の代表例には、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(「EVA」)共重合体、シリコーンゴム、アクリル重合体(ポリアクリル酸、ポリメチルアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリアルキルシアノアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン6,6)、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステル−尿素)、ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、Plurpnicsおよびポリ(テトラメチレングリコール))、シリコーンゴムおよびビニル重合体(ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸フタル酸ビニル)が挙げられる。重合体はまた、アニオン性(例えば、アルギン酸塩、カラゲナン、カルボキシメチルセルロースおよびポリ(アクリル酸))またはカチオン性(例えば、キトサン、ポリ−L−リジン、ポリエチレンイミンおよびポリ(アリルアミン))のいずれかであり得る重合体がまた開発され得る(一般に、Dunnら、Applied Polymer Sci.50:353〜365,1993;Casconeら、J.Materials Sci.:Materials in Medicine 5:770−774,1994;Shiraishiら、Biol.Pharm.Bull.16(11):1164〜1168、1993;ThacharodiおよびRao、Int’l J.Pharm.120:115〜118、1995;Miyazakiら、Int’l J.Pharm.118:257〜263,1995を参照)。特に好ましい重合体担体には、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)、ポリウレタン、ポリ(D,L−乳酸)オリゴマーおよび重合体、ポリ(L−乳酸)オリゴマーおよび重合体、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸との共重合体、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ無水物、ポリ(カプロラクトン)またはポリ(乳酸)とポリエチレングリコール(例えば、MePEG)との共重合体、および上記のいずれかのブレンド、混合物または共重合体が挙げられる。他の好ましい重合体には、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、キトサンおよびフカン(fucans))および多糖類と分解性重合体との共重合体が挙げられる。
【0031】
上記重合体の全ては、必要な種々の組成で、ブレンドまたは共重合され得る。
【0032】
重合体担体は、所望の放出特性および/または特定の所望の特性を備えた種々の形状で、作ることができる。例えば、重合体担体は、特定の誘発事象(例えば、pH)に曝すと、治療剤を放出するように作られ得る(例えば、Hellerら、「Chemically Self−Regulated Drug Delivery Systems」、Polymers in Medicine III、Elsevier Science Publishers B.V.、Amsterdam、1988、175〜188頁;Kangら、J.Applied Polymer Sci.48:343〜354頁、1993;Dongら、J.Controlled Release 19:171〜178、1992;DongおよびHoffman、J.Controlled Release 15:141〜152、1991;Kimら、J.Controlled Release 28:143〜152、1994;Cornejo−Bravoら、J.Controlled Release 33:223〜229、1995;WuおよびLee、Pharm.Res.10(10):1544〜1547、1993;Serresら、Pharm.Res.13(2):196〜201、1996;Peppas、「Fundamentals of pH−and Temperature−Sensitive Delivery Systems」、Gurnyら(編)、Pulsatile Drug Delivery、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH、Stuttgart、1993、41〜55頁;Doelker、「Cellulose Derivatives」1993、PeppasおよびLanger(編)、Biopolymers I、Springer−Verlag、Berlinを参照)。pH感受性重合体の代表例には、ポリ(アクリル酸)およびその誘導体(例えば、単独重合体(例えば、ポリ(アミノカルボン酸);ポリ(アクリル酸);ポリ(メチルアクリル酸))、このような単独重合体の共重合体、ポリ(アクリル酸)およびアクリルモノマー(例えば、上で述べたもの)の共重合体)が挙げられる。他のpH感受性重合体には、多糖類(例えば、酢酸フタル酸セルロース;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸トリメリト酸セルロースおよびキトサン)が挙げられる。他のpH感受性重合体には、pH感受性重合体と水溶性重合体との任意の混合物が挙げられる。
【0033】
同様に、温度感受性の重合体担体を作ることができる(例えば、Chenら、「Novel Hydrogels of a Temperature−Sensitive Pluronic Grafted to a Bioadhesive Polyacrylic Acid Backbone for Vaginal Drug Delivery」、Proceed.Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.22:167〜168、Controlled Release Society、Inc.、1995;Okano、「Molecular Design of Stimuli−Responsive Hydrogels for Temporal Controlled Drug Delivery」、Proceed.Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.22:111〜112、Controlled Release Society,Inc.、1995;Johnstonら、Pharm.Res.9(3):425〜433、1992;Tung、Int’l J.Pharm.107:85〜90、1994;HarshおよびGehrke、J.Controlled Release 17:175〜186、1991;Baeら、Pharm.Res.8(4):531〜537、1991;DinarvandおよびD’Emanuele、J.Controlled Release 36:221〜227、1995;YuおよびGrainger、「Novel Thermo−sensitive Amphiphilic Gels:Poly N−isopropylacrylamide−co−sodium acrylate−co−n−N−alkylacrylamide Network Synthesis and Physicochemical Characterization」、Dept.of Chemical & Biological Sci.,Oregon Graduate Institute of Science & Technology、Beaverton、OR、820〜821頁;ZhouおよびSmid、「Physical Hydrogels of Associative Star Polymers」、Polymer Research Institute、Dept.of Chemistry、College of Environmental Science and Forestry、State Univ.of New York、Syracuse、NY、822〜823頁;Hofftnanら、「Characterizing Pore Sizes and Water ’Structure’ in Stimuli−Responsive Hydrogels」、Center for Bioengineering、Univ.of Washington、Seattle、WA、828頁;YuおよびGrainger、「Thermo−sensitive Swelling Behavior in Crosslinked N−isopropylacrylamide Networks:Cationic,Anionic and Ampholytic Hydrogels」、Dept.of Chemical & Biological Sci.、Oregon Graduate Institute of Science & Technology、Beaverton、OR、829〜830頁;Kimら、Pharm.Res.9 (3):283〜290、1992;Baeら、Pharm.Res.8(5):624〜628、1991;Konoら、J.Controlled Release 30:69〜75、1994;Yoshidaら、J.Controlled Release 32:97〜102、1994;Okanoら、J.Controlled Release 36:125〜133、1995;ChunおよびKim、J.Controlled Release 38:39〜47、1996;D’EmanueleおよびDinarvand、Int’l J.Pharm.118:237〜242、1995;Katonoら、J.Controlled Release 16:215〜228、1991;Hoffman、「Thermally Reversible Hydrogels Containing Biologically Active Species」、Migliaresiら(編)、Polymers in Medicine III、Elsevier Science Publishers B.V.、Amsterdam、1988、161〜167頁;Hoffman、「Applications of Thermally Reversible Polymers and Hydrogels in Therapeutics and Diagnostics」、Third International Symposium on Recent Advances in Drug Delivery Systems、Salt Lake City、UT、Feb.24〜27、1987、297〜305頁;Gutowskaら、J.Controlled Release 22:95〜104、1992;PalasisおよびGehrke、J.Controlled Release 18:1−12、1992;Paavolaら、Pharm.Res.12 (12):1997〜2002、1995を参照)。
【0034】
熱ゲル化重合体およびそれらのゲル化温度(LCST(℃))の代表例には、単独重合体、例えば、ポリ(N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド)、19.8;ポリ(N−n−プロピルアクリルアミド)、21.5;ポリ(N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド)、22.3;ポリ(N−n−プロピルメタクリルアミド)、28.0;ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、30.9;ポリ(N,n−ジエチルアクリルアミド)、32.0;ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、44.0;ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)、45.5;ポリ(N−エチルメタクリルアミド)、50.0;ポリ(N−メチル−N−エチルアクリルアミド)、56.0;ポリ(N−シクロプロピルメタクリルアミド)、59.0;ポリ(N−エチルアクリルアミド)、72.0が挙げられる。さらに、熱ゲル化重合体は、上記の単量体の間(中)で共重合体を調製することにより、またはこのような単独重合体を他の水溶性重合体、例えば、アクリルモノマー、例えば、アクリル酸またはその誘導体(例えば、メタクリル酸、アクリレートおよびそれらの誘導体(例えば、メタクリル酸ブチル、アクリルアミドおよびN−n−ブチルアクリルアミド))を組み合わせることにより、作製され得る。
【0035】
熱ゲル化重合体の他の代表例には、セルロースエーテル誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、41℃;メチルセルロース、55℃;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、66℃;およびエチルヒドロキシエチルセルロース、およびPluronics(例えば、F−127、10〜15℃;L−122、19℃;L−92、26℃;L−81、20℃;およびL−61、24℃)が挙げられる。
【0036】
治療剤は、この重合体のマトリックスでの閉塞により結合され得るか、共有結合により結合され得るか、またはマイクロカプセルでカプセル化され得る。本発明の特定の好ましい実施形態では、治療組成物は、非カプセル処方(例えば、微小球体(ナノメートルのサイズからマイクロメートルのサイズまでの範囲)、ペースト、種々のサイズの糸、フィルムおよび噴霧)で、提供される。
【0037】
本発明の特定の局面では、この治療組成物は、生体適合性であって、数時間、数日間または数ヶ月にわたって、1種またはそれ以上の治療剤を放出すべきである。例えば、7〜10日間にわたって10%、20%または25%(w/v)より多くの治療剤を放出する「迅速放出」または「破裂」治療組成物が提供される。このような「迅速放出」組成物は、特定の実施形態では、化学治療レベル(適用可能な場合)の所望試薬を放出できるべきである。他の実施形態では、7〜10日間にわたって1%(w/v)未満の治療剤を放出する「遅延放出」治療組成物が提供される。さらに、本発明の治療組成物は、好ましくは、数ヶ月安定であって、無菌条件下で製造され保存され得るべきである。
【0038】
本発明の特定の局面では、治療組成物は、その特定の用途に依存して、50nm〜500μmの範囲の任意のサイズで作られ得る。あるいは、このような組成物はまた、「噴霧」として容易に塗布され得、これは固化して、フィルムまたは被覆となる。このような噴霧は、広範囲のサイズの微小球体から調製され得、これには、例えば、0.1μm〜3μm、10μm〜30μm、および30μm〜100μmが挙げられる。
【0039】
本発明の治療組成物はまた、種々の「ペースト」形態またはゲル形態で調製され得る。例えば、本発明の1実施形態では、ある温度(例えば、37℃より高い温度(例えば、40℃、45℃、50℃、55℃または60℃))で液体であるが別の温度(例えば、通常の体温、または37℃より低い任意の温度)で固化または半固化する治療組成物が提供される。このような「熱ペースト」は、種々の方法(例えば、PCT公報WO98/24427を参照)を使用して、容易に作製され得る。他のペーストは、このペーストの水溶性成分の解離およびカプセル化した薬剤の水性身体環境への沈殿によってインビボで固化する液体として、塗布され得る。
【0040】
本発明のさらに他の局面では、本発明の治療組成物は、フィルムとして形成され得る。好ましくは、このようなフィルムは、一般に、5mm厚未満、4mm厚未満、3mm厚未満、2mm厚未満または1mm厚未満であり、さらに好ましくは、0.75mm厚未満、0.5mm厚未満、0.25mm厚未満または0.10mm厚未満である。フィルムはまた、50μm未満、25μm未満または10μm未満の厚さで作成できる。このようなフィルムは、好ましくは、可撓性であり、良好な引張り強さ(例えば、50N/cmより大きく、好ましくは、100N/cmより大きく、さらに好ましくは、150または200N/cmより大きい)、良好な接着性(すなわち、濡れた面または湿潤面に接着する)を備え、そして制御された浸透性を有する。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、この治療組成物はまた、追加成分、例えば、界面活性剤(例えば、Pluronics(例えば、F−127、L−122、L−101、L−92、L−81、およびL−61))を含有し得る。
【0042】
本発明のさらに他の局面では、疎水性化合物を含有し放出するように適合された重合体担体が提供され、この担体は、炭水化物、タンパク質またはポリペプチドと組み合わせて、この疎水性化合物を含有する。特定の実施形態では、この重合体担体は、1種またはそれ以上の疎水性化合物の領域、ポケットまたは顆粒を含有する。例えば、本発明の1実施形態では、疎水性化合物は、この疎水性化合物を含有するマトリックス内に組み込まれ、続いて、このマトリックスが、この重合体担体内に組み込まれる。種々のマトリックスは、この点について利用でき、これには、例えば、炭水化物および多糖類(例えば、デンプン、セルロース、デキストラン、メチルセルロース、キトサンおよびヒアルロン酸、タンパク質またはポリペプチド(例えば、アルブミン、コラーゲンおよびゼラチン))が挙げられる。代替実施形態では、疎水性化合物は、疎水性核内に含有され得、この核は、親水性殻内に含有される。
【0043】
本明細書中で記述される治療剤を含有し送達するのに同様に利用され得る他の担体には、以下が挙げられる:ヒドロキシプロピル β シクロデキストリン(CserhatiおよびHollo、Int.J.Pharm.108:69〜75、1994)、リポソーム(例えば、Sharmaら、Cancer Res.53:5877〜5881、1993;SharmaおよびStraubinger、Pharm.Res.77(60):889〜896、1994;WO93/18751;米国特許第5,242,073号)、リポソーム/ゲル(WO94/26254)、ナノカプセル(Bartoliら、J.Macroencapsulation 7(2):191〜197、1990)、ミセル(Alkan−Onyukselら、Pharm.Res.11(2):206〜212、1994)、移植片(Jampelら、Invest.Ophthalm.Vis.Science 34(11):3076〜3083、1993;Walterら、Cancer Res.54:22017〜2212、1994)、ナノ粒子(ViolanteおよびLanzafame PAACR)、ナノ粒子変性(米国特許第5,145,684号)、ナノ粒子(表面変性)(米国特許第5,399,363号)、タキソール乳濁液/溶液(米国特許第5,407,683号)、ミセル(界面活性剤)(米国特許第5,403,858号)、合成リン脂質成分(米国特許第4,534,899号)、気体性介分散体(米国特許第5,301,664号)、液体乳濁液、発泡体、噴霧体、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、分散ビヒクル、粒子または小滴固体または液体エアロゾル、微小乳濁液(米国特許第5,330,756号)、重合体殻(ナノカプセルおよびマイクロカプセル)(米国特許第5,439,686号)、界面活性剤中のタキソイド(taxoid)系組成物(米国特許第5,438,072号)、乳濁液(Tarrら、Pharm Res.4:62〜165、1987)、ナノ球体(Haganら、Proc.Intern.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.22、1995;Kwonら、Pharm Res.12(2):192〜195;Kwonら、Pharm Res.10(7):970〜974;Yokoyamaら、J. Contr. Rel. 32:269〜277、1994;Grefら、Science 263:1600〜1603、1994; Bazileら、J.Pharm. Sci. 84: 493〜498、1994)および移植片(米国特許第4,882,168号)。
【0044】
本発明のさらなる局面では、血管壁とのインビボ接着および/またはインビボ繊維反応を誘発するステント移植片は、さらに、この接着を引き起こすかまたは繊維形成を誘発する試薬の放出および/または活性を遅延する化合物または組成物でさらに被覆される。このような薬剤の代表例には、生体不活性物質(例えば、ゼラチン、PLGA/MePEGフィルム、PLA、またはポリエチレングリコール)ならびに生体活性物質(例えば、ヘパリン(例えば、凝固を誘発するために))が挙げられる。
【0045】
例えば、本発明の1実施形態では、このステント移植片の活性剤(例えば、ポリ−1−リジン、フィブロネクチンまたはキトサン)は、物理的障壁で被覆される。このような障壁には、特に、不活性生体分解性物質(例えば、ゼラチン、PLGA/MePEGフィルム、PLA、またはポリエチレングリコール)を挙げることができる。PLGA/MePEGの場合、一旦、PLGA/MePEGが血液に晒されると、MePEGは、PLGAから溶け出し、PLGAを通ってチャネルを出て、下にある生体活性物質(例えば、ポリ−1−リジン、フィブロネクチンまたはキトサン)の層に至り、これは、次いで、その生体活性を開始できる。
【0046】
生体活性面の保護はまた、この面を立体障害によって活性部位へのアクセスを妨げる不活性分子で被覆することにより、またはこの面を不活性形態の生体活性物質(これは、後に活性化される)で被覆することにより、達成できる。例えば、このステント移植片は、この生体活性剤の放出を起こすかまたは生体活性剤を活性化するかいずれかの酵素、または不活性被覆を開裂してこの活性剤に曝す酵素で、被覆できる。
【0047】
例えば、1実施形態では、ステント移植片は、通常の様式で、生体活性物質(例えば、ポリ−1−リジン)で被覆される。このステント移植片は、次いで、重合体(例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル)でさらに被覆され、開裂可能架橋剤(例えば、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)または任意の他の類似の試薬(例えば、dtbp、dtme、dtssp(これらは、Pierce,Rockford,Illinois,USAから入手でき、その活性部位の周りで、保護剤を形成する))を使用して、アミノ停止されて、このポリ−1−リジン分子上にある活性部位の一部を結合する。このステント移植片は、次いで、遅延放出重合体中のジチオトレイトール、B−メルカプトエタノール、ホウ水素化ナトリウム(S−S開裂試薬の例)の混合物でさらに被覆され得る。一旦、このステント移植片が完全に展開されて動脈瘤を排除すると、この遅延放出重合体は、この開裂試薬を放出し、この保護重合体を取り除き、そしてこの活性剤を露出させる。
【0048】
適切な表面被覆の別の例は、ヘパリンであり、これは、この生体活性剤(例えば、ポリ−1−リジン、フィブロネクチンまたはキトサン)の上部に被覆できる。ヘパリンが存在すると、凝固が遅くなる。このヘパリンまたは他の抗凝固剤が溶け去るにつれて、その抗凝固活性は停止し、新たに露出された生体活性剤(例えば、ポリ−1−リジン、フィブロネクチンまたはキトサン)は、その意図した作用を開始できる。
【0049】
別のストラテジーでは、このステント移植片は、不活性形態の生体活性被覆で被覆でき、これは、次いで、一旦、ステント移植片が展開されると、活性化される。このような活性化は、別のステント移植片を展開した後、別の物質を動脈瘤嚢に注入することにより、達成できる。この反復で、この移植片物質は、不活性形態の生体活性物質(例えば、ポリ−1−リジン、フィブロネクチンまたはキトサン)で被覆でき、通常の様式で塗布できる。この装置の大動脈セグメントの展開前に、カテーテルが、対向する腸骨動脈を経由して、上肢血管(例えば、上腕動脈)を経由して、または大動脈セグメントが挿入されるのと同じ血管を経由して、動脈瘤嚢内で配置され、その結果、一旦、このステント移植片が展開されると、このカテーテルは、動脈瘤嚢の内側にあるが、ステント移植片の外側にあるようにされる。このステント移植片は、次いで、通常の様式で展開される。一旦、このステント移植片が完全に展開されると、動脈瘤を排除して、その活性化物質は、ステント移植片の外側の周りで、動脈瘤嚢に注入される。
【0050】
この方法の一例には、この移植片材料を、通常の様式で、この生体活性物質(例えば、ポリ−1−リジン、フィブロネクチンまたはキトサン)で被覆することがある。この生体活性被覆は、次いで、ポリエチレングリコールで覆われ、これらの2種の物質は、次いで、縮合反応を使用して、エステル結合を介して、結合される。この装置の大動脈セグメントの展開前に、カテーテルが、対向する腸骨動脈を経由して、上肢血管(例えば、上腕動脈)を経由して、または大動脈セグメントが挿入されるのと同じ血管を経由して、動脈瘤嚢内で配置される。一旦、このステント移植片が完全に展開されると、動脈瘤を排除して、このステント移植片の外側の周りで、動脈瘤嚢には、エステラーゼが注入され、これは、このエステルと生体活性物質との間の結合を開裂し、この物質が所望の反応を開始できるようにする。
【0051】
さらなる実施形態では、このステント移植片の各末端では、血管壁の反応または接着を誘発するが中心部では別の反応(例えば、「フィルター効果」)を誘発して、ステント移植片と血管壁との間の密封を締め、それにより、排除した動脈瘤を満たすかまたは動脈瘤嚢内の血液を凝固させるのが望まれ得る。これは、これらの物質をこの装置の全長に沿って配置することにより、または装置の末端を接着剤/繊維形成誘発剤で被覆することにより、そして、その中心部を、その試薬、および空間占有剤(例えば、「Water Lock」(G−400、Grain Processing Corporation、Muscatine.IA))の組合せで被覆することにより、行われ得る。この空間占有剤は、次いで、PLGA/MePEGの層で被覆できる。一旦、PLGA/MePEGが血液に曝されると、MePEGは、PLGAから溶け出し、PLGAを通るチャネルを出て、下にある膨潤物質(これは、次いで、相当に膨潤して、動脈瘤の管腔に衝突する)の層に至る。使用され得る他の物質には、ヒアルロン酸、非水性媒体(例えば、プロピレングリコール)中のキトサン粒子が挙げられる。
【0052】
(ステント移植片を利用する方法)
本発明のステント移植片は、移植片周囲の反応を誘発するか、そうでなければ、血管内補綴物と血管壁との間で堅い接着剤結合を形成するのに、利用され得る。このような移植片は、血管内ステント移植片技術に付随した以下の一般的な問題に対する解決法を提供する。
【0053】
1.持続的な移植片周囲の漏れ−このステント移植片のステント部分と血管壁との間の近位および遠位界面間の繊維応答または接着または堅い接着結合の形成により、この装置の周りでのさらに有効な密封が得られ、動脈瘤形態の変化によってさえも装置のいずれかの末端で生じる遅い移植片周囲の漏れを防止する。さらに、この移植片の本体と動脈瘤それ自体との間の繊維応答または堅い接着の形成により、逆流による移植片周囲の漏れの閉塞または防止(すなわち、動脈瘤へと伸長している内部腸間膜動脈または腰動脈の持続または遅発再開放)を生じ得る。それに加えて、これらの被覆は、排除された動脈瘤嚢内での血液の凝固を誘発または向上し、これは、さらに、移植片周囲の漏れ速度を低くする。
【0054】
2.送達装置のサイズ−本発明の送達装置に付随した1つの難点には、このステント移植片に必要な厚さのために、極めて大きいことがある。血管壁で反応を誘発することにより、それ自体、このステント移植片の補綴物の移植片部分に強度を伝達して、より薄い移植材料が使用され得る。
【0055】
3.血管内ステント移植片での処置の候補となる動脈瘤疾患のある患者を制限する身体構造上の要因−この補綴物の移植部分の近位および遠位縁部で補綴物と血管壁との間において繊維反応を誘発するかまたは堅い耐久性のある接着結合を形成することにより、この移植片と血管壁との間での接触長が短いとき、この移植片と血管壁との間の繊維反応または堅い接着が移植片の密封を向上させるので、ネック(特に、近位ネック)の長さは、現在提案されている1.5センチメートルよりも短くできる。(動脈瘤では、血管壁は、明らかに拡張され、それゆえ、この移植片から離れて伸長する。長いネックが存在するとき、移植材料と血管壁との間の並置は、「通常の」直径の血管壁の部分間にあるにすぎない)。ある場合には、この装置を固着する血管部分は、拡張される(例えば、腹大動脈瘤から遠位の拡張腸骨動脈)。血管のこの部分は、拡張しすぎたなら、移植片挿入後、引き続いて拡大し続ける傾向にあり、その結果、遅れて移植片周囲の漏れが起こる。腸骨動脈または大動脈のネックを拡張した患者は、未被覆装置での治療を拒否され得る。この移植片と血管壁との間でフィルム結合を形成することにより、このネックは、さらに拡大しなくなる。
【0056】
4.ステント移植片の移動−このステント移植片は、このステント移植片と血管壁との間のフックまたは拡大力のみではなくそれ以上のものにより、血管壁にしっかりと固定され、ステント移植片またはステント移植片の一部の移動は、防止される。
【0057】
5.ステント移植片の用途の拡大−実用的な目的のためのステント移植片の現在の用途は、ステント移植片が血管壁内で完全に展開された状況に限られている。この装置と血管壁との間の密封を強化することにより、この装置が血管外導管または体外導管(例えば、動脈間、動脈と静脈との間、静脈間、または静脈と腹腔の間が挙げられるが、これらに限定されない)として、使用できる。これらの目的のためのステント移植片の拡大は、少なくとも部分的には、このステント移植片が血管のような身体管に入るか出ていく部位での乏しい密封のために、血液のような体液の漏れの危険により、制限される。
【0058】
それゆえ、ステント移植片(これは、血管壁に接着するように適合されている)は、広範囲の治療用途で利用できる。例えば、ステント移植片は、身体構造内で一方の動脈を他の動脈に接続するために(例えば、動脈瘤(例えば、頸動脈、胸大動脈、腹大動脈、鎖骨下動脈、腸骨動脈、冠状動脈、静脈)をバイパスするために;切開部(例えば、頸動脈、冠状動脈、腸骨動脈、鎖骨下動)を処置するために;長セグメント疾患(例えば、頸動脈、冠状動脈、大動脈、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈)をバイパスするために;または局所破裂(例えば、頸動脈、大動脈、腸骨動脈、腎動脈、大腿動脈)を処置するために)、いずれかで利用できる。ステント移植片はまた、身体構造外で、例えば、動脈から動脈へまたは動脈から静脈への透析瘻管のために;または静脈から静脈への血管アクセスのために、利用され得る。
【0059】
本発明のステント移植片はまた、動脈を静脈に接続するのに(例えば、透析瘻管)、または一方の静脈を他の静脈に接続するのに(例えば、門脈大静脈吻合または静脈バイパス)利用され得る。
【0060】
(A.腹大動脈瘤)
代表的な一例では、ステント移植片は、腹大動脈の破裂を処置または予防するために、腹大動脈瘤(AAA)に挿入され得る。要約すると、無菌条件を使用して、適切な麻酔および鎮痛下で、総大腿動脈を外科的に露出させ、動脈のクランピング後、動脈切開が実行される。腸骨動脈系を通って、ガイドワイヤが操縦され、この上で、近位腹大動脈に、カテーテルが挿入され、そして血管造影または血管内超音波撮影が実行される。引き続いて、この診断用カテーテルは、送達システム(通常、このステント移植片システムの大動脈部分を含む鞘)の代わりに、ガイドワイヤと交換される。もし、このデバイスが、関節でつながった二股のシステムであるなら、この大動脈部分には、この補綴物の同側腸骨動脈部分よりも一般的な反復が接続される。このデバイスは、自己拡大ステントから構成されたステント移植片の場合、その拘束された構造から解放することにより、展開される。もし、このステント移植片の骨格が、バルーン拡大可能ステントから構成されるなら、この鞘を引き出してバルーンを膨張させステント移植片を適切な位置で拡大することにより、解放される。この補綴物の大動脈部分および同側腸骨部分を解放した後、補綴物の展開部分を通るように、対向している腸骨動脈の外科的な露出および切開が行われ、そしてガイドワイヤが操作される。この補綴物の側副腸骨節(contralateral iliac limb)を含む類似の送達デバイスは、次いで、補綴物の展開した大動脈部分へと操作され、蛍光透視案内下で、適切な位置で解放される。この位置は、このステント移植片部分の全移植部分が腎動脈の下に位置し、そして好ましくは、内部腸骨動脈の上に展開する(一方または両方は、閉塞され得るものの)ように、選択される。患者の身体構造に依存して、いずれかの側では、さらに別の節伸長部が挿入され得る。もし、このデバイスがチューブ移植片または一体型二股デバイスであるなら、1本だけの大腿動脈を経由した挿入が必要であり得る。最終的な血管造影は、通常、上部腹大動脈において、その遠位部分に備得られた血管造影カテーテル位置により、得られる。
【0061】
(B.胸大動脈瘤または切開)
他の代表的な例では、ステント移植片は、胸大動脈瘤を処置または予防するために利用され得る。要約すると、適切な麻酔および鎮痛下で、無菌技術を使用して、右上腕動脈を経由して、上行胸大動脈へと、カテーテルが挿入され、血管造影が実行される。一旦、処置する大動脈の罹患セグメントの近位および遠位境界が規定されると、総大腿動脈の1本(通常、右側のもの)の手術のよる露出、および手術による動脈切開が実行される。大動脈の罹患セグメントを通って、ガイドワイヤが操縦され、この上で、この送達デバイス(通常、鞘)は、この罹患セグメントを横切って位置するように前進され、このステントの移植部分は、左鎖骨下動脈の起点の直下にある。このステント移植片の正確な位置を明確にするために造影剤を注入した後、このデバイスは、通常、左鎖骨下動脈からすぐ遠位に位置しているように、自己拡大ステントの場合、外部鞘を引き出すことにより、展開され、その遠位部分は、胸大動脈の罹患部分を超えるが腹腔動脈(celiac axis)の上で伸長している。右上腕動脈により挿入されたカテーテルを経由して、最終的な血管造影が実行される。この血管アクセス創傷は、次いで、閉じられる。
【0062】
(C.ステント被覆の活性の開始の遅延)
このデバイスを挿入するためにかかる時間は、非常に長時間であり得る;例えば、理論的には、デバイスの第一部分(通常、大動脈セグメント)が展開する時間とデバイスの第二部分が展開する時間との間で、数時間であり得る。このデバイスの全部が挿入されて、やっと、動脈瘤の十分な排除が達成される。言い換えれば、このデバイス上の被覆は、デバイス上またはその周りで形成される血液の凝固を引き起こし得る。このデバイスが完全に展開するまで、その周りだけでなくそこを通って血液が殺到して、動脈瘤を排除するので、このような血餅は、取り除かれて下流に流され得るか、または遠位に伝播され得る。この結果、このデバイスの予定挿入部位から下流の血管(これらは、操作者が開いたままにするつもりであった)の不慮の望ましくない閉塞または部分閉塞が生じ得る。このような問題を検討するために、いくつかの戦略が使用され得る。
【0063】
例えば、上でさらに詳細に述べたように、(例えば、このステント移植片を、接着または繊維形成を遅延する物質(例えば、ヘパリンまたはPLGA)で被覆することにより)この接着誘発および/または繊維形成剤の活性の開始を遅延するように設計されたステント移植片が構成され得る。あるいは、最初は不活性であり(すなわち、繊維形成または接着を実質的に誘発しない)、そしてその後、挿入時点か、より好ましくは、挿入に続いてのいずれかで他の薬剤により活性化されるステント移植片が構成され得る。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、限定ではなく例示のために提供されている。
【0065】
(実施例)
(実施例1)
(身体構造内大動脈移植片のフィブロネクチンでの被覆)
オーバーヘッド攪拌機(Fisher Scientific)からなる被覆装置を水平に向けた。この攪拌機の回転チャックに、円錐形ステンレス鋼ヘッドを装着した。身体構造内大動脈移植片の一端を、しっかりと保持されるまで、この円錐形ヘッド上に引き上げた。その他端を、この移植片を水平位置で保持するクリップ旋回デバイスに装着したが、この移植片は、その軸に沿って回転できるようにした。この攪拌機を、次いで、その移植片全体が30rpmで水平軸に沿って回転するように、この速度で回転するように設定した。滅菌水中の1%(重量/重量)フィブロネクチン(Calbiochem,San Diego,CA)溶液を調製した。この溶液の200マイクロリットルを、この移植片を回転する場合、2分間にわたって、この円錐形鋼鉄ヘッドに固定した移植片の末端から5mmに位置している3mm幅リングとしてゆっくりとピペットでゆっくりと採取した。この移植片を引き続いて回転しつつ、このフィブロネクチンを、次いで、窒素流下にて、乾燥した。乾燥すると、この移植片を取り除き、反転し、移植片の他端を同じ様式で被覆した。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、フィブロネクチンの可撓性リングを堆積した。
【0066】
(実施例2)
(身体構造内大動脈移植片のポリ−L−リシンでの被覆)
Fisherオーバーヘッド攪拌機からなる被覆装置を水平に向けた。この攪拌機の回転チャックに、円錐形ステンレス鋼ヘッドを装着した。身体構造内大動脈移植片の一端を、しっかりと保持されるまで、この円錐形ヘッド上に引き上げた。その他端を、この移植片を水平位置で保持するクリップ旋回デバイスに装着したが、この移植片は、その軸に沿って回転できるようにした。この攪拌機を、その移植片全体が30rpmで水平軸に沿って回転するように、この速度で回転するように設定した。滅菌水中の1%(重量/重量)ポリ−L−リシン(Sigma,St.Louis,MO)溶液を調製した。この移植片を回転する場合に、2分間にわたって、この円錐形鋼鉄ヘッドに固定した移植片の末端から5mmに位置している3mm幅リングとして、この溶液の200マイクロリットルをピペットでゆっくりと採取した。この移植片を引き続いて回転しつつ、このポリ−L−リシンを、次いで、窒素流下にて、乾燥した。乾燥すると、この移植片を取り除き、反転し、移植片の他端を同じ様式で被覆した。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、ポリ−L−リシンの可撓性リングを堆積した。
【0067】
(実施例3)
(身体構造内大動脈移植片のN−カルボキシブチルキトサンでの被覆)
Fisherオーバーヘッド攪拌機からなる被覆装置を水平に向ける。この攪拌機の回転チャックに、円錐形ステンレス鋼ヘッドを装着する。身体構造内大動脈移植片の一端を、しっかりと保持されるまで、この円錐形ヘッド上に引き上げる。その他端を、この移植片を水平位置で保持するクリップ旋回デバイスに装着するが、この移植片は、その軸に沿って回転できるようにする。この攪拌機を、その移植片全体が30rpmで水平軸に沿って回転するように、この速度で回転するように設定する。滅菌水中の1%(重量/重量)N−カルボキシブチルキトサン(Carbomer,Westborough,MA)溶液を調製する。この移植片を回転する場合に、2分間にわたって、この円錐形鋼鉄ヘッドに固定した移植片の末端から5mmに位置している3mm幅リングとして、この溶液の200マイクロリットルをピペットでゆっくりと採取する。この移植片を回転しつつ、このN−カルボキシブチルキトサンを、次いで、窒素流下にて乾燥する。乾燥すると、この移植片を取り除き、反転し、移植片の他端を同じ様式で被覆する。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、N−カルボキシブチルキトサンの可撓性リングを堆積する。
【0068】
(実施例4)
(身体構造内大動脈移植片のポリ(エチレン酢酸ビニル)中のブロモクリプチンでの被覆)
Fisherオーバーヘッド攪拌機からなる被覆装置を水平に向ける。この攪拌機の回転チャックに、円錐形ステンレス鋼ヘッドを装着する。身体構造内大動脈移植片の一端を、しっかりと保持されるまで、この円錐形ヘッド上に引き上げる。その他端を、この移植片を水平位置で保持するクリップ旋回デバイスに装着するが、この移植片は、その軸に沿って回転できるようにする。この攪拌機を、その移植片全体が30rpmで水平軸に沿って回転するように、この速度で回転するように設定する。4.5%(重量/重量)EVA(60/40の比のエチレン:酢酸ビニル)(Polysciences USA)溶液を、ジクロロメタン中で調製する。この溶液に、5mg/mlで、ブロモクリプチンメシレート(Sigma,St.Louis,MO)を溶解/懸濁する。この溶液の200マイクロリットルを、この移植片を回転する場合に、2分間にわたって、この円錐形鋼鉄ヘッドに固定した移植片の末端から5mmに位置している3mm幅リングとしてピペットでゆっくりと採取する。この移植片を引き続いて回転しつつ、このEVA/ブロモクリプチンを、窒素流下にて乾燥する。乾燥すると、この移植片を取り除き、反転し、移植片の他端を同じ様式で被覆する。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、EVA/ブロモクリプチンの可撓性リングを堆積する。
【0069】
(実施例5)
(炎症性微結晶(尿酸一ナトリウム一水和物およびピロリン酸カルシウム二水和物)の調製)
尿酸一ナトリウム一水和物(MSUM)微結晶を成長させた。55℃およびpH8.9の尿酸(A.C.S.認定,Fisher Scientific)および水酸化ナトリウムの溶液を、室温で一晩放置した。これらの結晶を、冷(4℃)蒸留水で数回リンスし、そして循環熱風炉(Fisher,Isotemp)で60℃で12時間乾燥した。
【0070】
三斜晶系ピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)結晶を、以下のようにして調製した。蒸留水103mlを含有する250mlビーカーを、水浴で、60±2℃まで加熱し、そしてテフロン(登録商標)被覆攪拌棒で絶えず攪拌した。この攪拌を遅くし、そして濃塩酸0.71mlおよび氷酢酸0.32mlを添加し、続いて、酢酸カルシウム(Fisher Certified Reagent)0.6gを添加した。蒸留水20mlを含有する150mlビーカーを、水浴で、60℃まで加熱し、そして酢酸カルシウム0.6gを添加した。攪拌速度を250mlビーカー中で増大させ、そしてピロリン酸カルシウム2gを急速に添加した。このCaHがほぼ全て溶解したとき、この攪拌速度を5分間にわたって低下させ、次いで、15秒間にわたって、この小ビーカーの内容物を、激しく攪拌しながら、大ビーカーに注いだ。引き続いたバッチの調製において、種物質として、この大ビーカーに、微量の三斜晶系CPPD結晶を添加した。攪拌を中断すると、白色のゲルが残った。これを、冷却水浴で、乱さないままにした。その上澄み液のpHは、常に、3.0未満であった。24時間でCPPD結晶が形成されるにつれて、このゲルは崩壊した。これらの結晶を蒸留水で3回洗浄し、エタノールに次いでアセトンで洗浄し、そして空気乾燥した。
【0071】
(実施例6)
(身体構造内大動脈移植片の炎症性微結晶(尿酸一ナトリウム一水和物またはリン酸カルシウム二水和物)での被覆)
Fisherオーバーヘッド攪拌機からなる被覆装置を水平に向ける。この攪拌機の回転チャックに、円錐形ステンレス鋼ヘッドを装着する。身体構造内大動脈移植片の一端を、しっかりと保持されるまで、この円錐形ヘッド上に引き上げる。その他端を、この移植片を水平位置で保持するクリップ旋回デバイスに装着するが、この移植片は、その軸に沿って回転できるようにする。この攪拌機を、その移植片全体が30rpmで水平軸に沿って回転するように、この速度で回転するように設定する。4.5%(重量/重量)EVA(60/40の比のエチレン:酢酸ビニル)(Polysciences USA)溶液を、ジクロロメタン中で調製する。炎症性微結晶(MSUMまたはCPPD)を、乳棒および乳鉢で、10〜50マイクロメーターの粒径まで粉砕し、そして5mg/mlでこの溶液中に懸濁する。この懸濁液の200マイクロリットルを、この移植片を回転する場合に、2分間にわたって、この円錐形鋼鉄ヘッドに固定した移植片の末端から5mmに位置している3mm幅リングとしてピペットでゆっくりと採取する。この移植片を引き続いて回転しつつ、このEVA/微結晶を、次いで、窒素流下にて乾燥する。乾燥すると、この移植片を取り除き、反転し、移植片の他端を同じ様式で被覆する。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、EVA/微結晶の可撓性リングを堆積する。
【0072】
(実施例7)
(身体構造内大動脈移植片の炎症性微結晶(尿酸一ナトリウム一水和物またはピロリン酸カルシウム二水和物)での被覆)
ポリウレタン(PU)(医用等級、Thermomedics,Woburn,MA)の1%(重量/重量)溶液を、ジクロロメタン中で調製する。炎症性微結晶を、乳棒および乳鉢で、10〜50マイクロメーターの粒径まで粉砕し、そして2mg/mlでこの溶液中に懸濁する。外科的挿入の直前に、この移植片の各末端を、2秒間にわたって、およそ5mmの深さまで、この振とうした懸濁液に挿入する。この移植片を空気乾燥する(3分間にわたって、手で穏やかに回転する)。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、EVA/微結晶の可撓性リングを堆積する。
【0073】
(実施例8)
(身体構造内大動脈移植片のポリウレタン中のブロモクリプチンでの被覆)
ポリウレタン(PU)(医用等級、Thermomedics,Woburn,MA)の1%(重量/重量)溶液を、ジクロロメタン中で調製する。ブロモクリプチンメシレート(Sigma,St.Louis,MO)を、PUに対して5%(重量/重量)で、この溶液に溶解/懸濁する。この溶液を、5mlのFisher TLCアトマイザー(Fisher Scientific)に入れる。手術前に、この移植片を、ヒュームフード内で垂直に吊し、この溶液1mlを、(窒素推進剤を使用して)、移植片を360度回転することにより、移植片の底部1cmに噴霧する。この移植片を2分間乾燥し、次いで、移植片の他端を同様に噴霧する。この移植片を、次いで、さらに空気乾燥する(3分間にわたって、手で穏やかに回転する)。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、ブロモクリプチン/PUの可撓性リングを堆積する。最終的に、ブロモクリプチン/PUのDCM溶液は、上記処置用の小さいエアロゾル缶の形状で、外科医が入手できると予見される。
【0074】
(実施例9)
(身体構造内大動脈移植片の炎症性微結晶(尿酸一ナトリウム一水和物またはリン酸カルシウム二水和物)での被覆)
Fisherオーバーヘッド攪拌機からなる被覆装置を水平に向ける。この攪拌機の回転チャックに、円錐形ステンレス鋼ヘッドを装着する。身体構造内大動脈移植片の一端を、しっかりと保持されるまで、この円錐形ヘッド上に引き上げる。その他端を、この移植片を水平位置で保持するクリップ旋回デバイスに装着するが、この移植片は、その軸に沿って回転できるようにする。この攪拌機を、その移植片全体が30rpmで水平軸に沿って回転するように、この速度で回転するように設定する。80:20(重量/重量)の(PLGA:MePEG)の比でメトキシポリエチレングリコール350(MePEG 350)(Union Carbide,Danbury,CT)と配合したポリ(ラクチドコ−グリコリド)(85:15)(IV 0.61)(Birmingham Polymers,Birmingham,AL)の4.5%(重量/重量)溶液を、ジクロロメタン中で調製する。炎症性微結晶を、この溶液中で、5mg/mlで懸濁する。この懸濁液の200マイクロリットルを、この移植片を回転する場合に、2分間にわたって、この円錐形鋼鉄ヘッドに固定した移植片の末端から5mmに位置している3mm幅リングとしてピペットでゆっくりと採取する。この移植片を引き続いて回転しつつ、このPLGA/MePEG/炎症性結晶を、次いで、窒素流下にて乾燥する。乾燥すると、この移植片を取り除き、反転し、移植片の他端を同じ様式で被覆する。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、PLGA/MePEG/微結晶の可撓性リングを堆積する。
【0075】
(実施例10)
(身体構造内大動脈移植片の溶媒(例えば、エタノールまたはクロロホルム)での被覆)
ポリウレタン(PU)(医用等級、Thermomedics,Woburn,MA)の1%(重量/重量)溶液をクロロホルム中で調製し、そして必要になるまで保存する。外科的挿入の直前に、この移植片の各末端を、2秒間にわたって、およそ5mmの深さまで、この溶液中に浸す。この移植片を、この重合体が完全に乾燥する前に、直ちに、動物に挿入する。この方法を使用して、相当量のクロロホルムを含有するPU可撓性リングを、この移植片の物理的特性を損なうことなく、必要な血栓形成部位に配置する。あるいは、このPUは、エタノールをこの部位に堆積可能にするために、1%(重量/容量)で、クロロホルム:エタノール(80:20)の溶液に溶解し得る。
【0076】
(実施例11)
(身体構造内大動脈移植片のポリエチレングリコール(PEG)でカプセル化したアンジオテンシン2での被覆)
ポリエチレングリコール1475(Union Carbide,Danbury,CT)1.8グラムを、20ml平底ガラス製シンチレーションバイアルに置き、そして50℃まで暖めて、このPEGを水浴中で融解し、グリセロール(Fisher Scientific)200グラムを添加する。アンジオテンシン2(Sigma,St.Louis,MO)2mgをこのバイアルの中に秤量して、そして50℃で、融解したPEGに混合/溶解する。このバイアルを、クランプを使用して、水浴中で、10度の角度にする。この移植片の各末端を、この溶融処方物中で回転させて、移植片の外面の底部5mmで、物質のリングが堆積するようにする。この移植片を、次いで、冷却し、そして使用するまで4℃で保存する。あるいは、手術前に直ちに浸漬できるように、このPEG/アンジオテンシン混合物を、使用するまで、4℃で保存する。手術の直前、このPEG/アンジオテンシンのバイアルを、2分間にわたって、50℃まで暖めて融解し、この移植片を、上記のようにして、被覆する。
【0077】
(実施例12)
(身体構造内大動脈移植片の架橋ヒアルロン酸中のトランスホーミング増殖因子−β(TGF−β)での被覆)
Fisherオーバーヘッド攪拌機からなる被覆装置を水平に向ける。この攪拌機の回転チャックに、円錐形ステンレス鋼ヘッドを装着する。身体構造内大動脈移植片の一端を、しっかりと保持されるまで、この円錐形ヘッド上に引き上げる。その他端を、この移植片を水平位置で保持するクリップ旋回デバイスに装着するが、この移植片は、その軸に沿って回転できるようにする。この攪拌機を、その移植片全体が30rpmで水平軸に沿って回転するように、この速度で回転するように設定する。ヒアルロン酸(HA)(ナトリウム塩、Sigma,St.Louis,MO)の1%水溶液(これは、30%グリセロール(HAに対して重量/重量)(Fisher Scientific)および8mM 1−エチル−3−(−3ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)(Sigma,St.Louis,MO)を含有する)を、一晩溶解することにより調製する。この溶液に、0.01mg/mlで、TGF−β(Calbiochem,San Diego,CA)を溶解する。この溶液の200マイクロリットルを、この移植片を回転する場合に、2分間にわたって、この円錐形鋼鉄ヘッドに固定した移植片の末端から5mmに位置している3mm幅リングとしてピペットでゆっくりと採取する。この移植片を引き続いて回転しつつ、このHA/グリセロール/TGF−β溶液を、次いで、窒素流下にて乾燥する。乾燥すると、この移植片を取り除き、反転し、移植片の他端を同じ様式で被覆する。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、HA/グリセロール/TGF−βの可撓性リングを堆積する。
【0078】
(実施例13)
(身体構造内大動脈移植片の架橋キトサン中の繊維芽細胞成長因子(FGF)での被覆)
Fisherオーバーヘッド攪拌機からなる被覆装置を水平に向ける。この攪拌機の回転チャックに、円錐形ステンレス鋼ヘッドを装着する。身体構造内大動脈移植片の一端を、しっかりと保持されるまで、この円錐形ヘッド上に引き上げる。その他端を、この移植片を水平位置で保持するクリップ旋回デバイスに装着するが、この移植片は、その軸に沿って回転できるようにする。この攪拌機を、その移植片全体が30rpmで水平軸に沿って回転するように、この速度で回転するように設定する。希酢酸(pH5)中のキトサン(医用等級、Carbomer,Westborough,MA)の1%溶液(これは、30%グリセロール(キトサンに対して重量/重量)(Fisher Scientific)および0.5%グルタルアルデヒド(Sigma,St.Louis,MO)を含有する)を、一晩溶解することにより、調製する。この溶液に、0.01mg/mlで、FGF(Calbiochem,San Diego,CA)を溶解する。この溶液の200マイクロリットルを、この移植片を回転する場合に、2分間にわたって、この円錐形鋼鉄ヘッドに固定した移植片の末端から5mmに位置している3mm幅リングとしてピペットでゆっくりと採取する。この移植片を引き続いて回転しつつ、このキトサン/グリセロール/FGF溶液を、次いで、窒素流下にて乾燥する。乾燥すると、この移植片を取り除き、反転し、移植片の他端を同じ様式で被覆する。この方法を使用して、この移植片の物理的特性を損なうことなく、移植片の両端に、キトサン/グリセロール/FGFの可撓性リングを堆積する。
【0079】
(実施例14)
(移植片周囲の反応を評価するためのスクリーニング手順)
大型の飼い慣らされたウサギを、全身麻酔にかける。無菌処置を施して、その腎臓下部の腹大動脈を露出させ、その上部および下部でクランプ留めする。長手動脈壁切開術を実行し、この動脈内に、PTFE移植片の2ミリメートル直径で1センチメートル長のセグメントを挿入し、ヒトにおける開放外科腹大動脈修復(open surgical abdominal aortic repair)の様式(このモデルでは、動脈瘤が存在していることを除いて)で、全動脈血流が腹大動脈に含まれる移植片を通るように、この移植片の近位端および遠位端を縫い付ける。この大動脈切開部は、次いで、手術で閉じられ、その腹腔創傷は閉じられ、この動物は回復される。
【0080】
これらの動物を、標準的なPTFE移植片、またはその中間部1cmを、周囲がステント移植片と血管壁単独との間の血管壁の反応もしくは接着を誘発する薬剤で被覆したかまたは何も被覆していない移植片、または遅延放出重合体(例えば、ポリカプロラクトンまたはポリ乳酸)に含有させた移植片を受容するように、無作為抽出する。
【0081】
これらの動物を、術後1週間と6週間の間で屠殺し、その大動脈を一括して取り出し、この移植片に関係する領域を、接着反応について、肉眼で見て検査する。移植片を含まない動脈部分、被覆なしの移植片を含む動脈部分、および被覆のある移植片を含む動脈部分について、血管壁の形態および組織の相違を記録する。
【0082】
(実施例15)
(腹大動脈瘤の動物モデル)
ブタまたはヒツジを、全身麻酔にかける。無菌処置を施して、その腹大動脈を露出させる。この動物をヘパリン処理し、その大動脈を、腎動脈の下および二股の上で交差クランプ留めする。側副枝は、血管ループまたはクリップ(これらは、この処置が完了すると、取り除かれる)で一時的に制御する。大動脈の動脈側面において、長手大動脈切開部を作成し、同じ動物に由来する腹直筋鞘の楕円形部分を大動脈切開部に縫合して、動脈瘤を作成する。腰動脈および側副枝から大動脈クランプを取り除き、腹部を閉じる。30日後、この動物を再び麻酔にかけ、その腹壁を再度開く。腸骨動脈において、これを通る切開を実行し、正常な腎臓下部の腹大動脈の上から、外科的に作成した動脈瘤の下の正常な腎臓下部の腹大動脈まで伸長している腎臓下部の腹大動脈瘤を横切って、ステント移植片を配置し、このデバイスを従来の方法で解放する。
【0083】
動物を、非被覆ステント移植片、遅延放出重合体のみを含有するステント移植片、および先に言及したスクリーニング試験で決定した生体活性物質または刺激性物質を含有するステント移植片を受ける5つの群に無作為抽出する。動脈切開部および腹腔創傷の閉鎖後、この動物を回復させる。ステント移植片挿入後の6週目および3ヶ月目で、この動物を屠殺し、その大動脈を一括して取り出す。この腎臓下部の大動脈は、組織学反応および移植片周囲の漏れの証拠を捜すために、検査する。
【0084】
前述のことから、本発明の特定の実施態様は、例示の目的のために、本明細書中で記述しているものの、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行い得る。従って、本発明は、添付の請求の範囲を除いて、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、1つの代表的なステント移植片の概略図である。点線は、この移植片の各末端に所望の試薬を備えた移植片の被覆を示す。
【図2】図2は、図1で図示したステント移植片の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−155040(P2008−155040A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23377(P2008−23377)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【分割の表示】特願2000−592031(P2000−592031)の分割
【原出願日】平成11年12月30日(1999.12.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(399047518)アンジオテック ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(399016651)ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (3)
【Fターム(参考)】