説明

産業用X線CT装置および撮像方法

【課題】撮像対象被検体の任意の指定された特定領域のみ高い空間分解能で撮像可能であるとともに、簡便に高精度で画像合成が可能な産業用X線CT装置および撮像方法を提供することにある。
【解決手段】制御手段20は、X線焦点サイズ調整手段9と検出器ピクセル積算処理手段5とを制御して、被検体全体を粗い空間分解能で撮像した画像と、前記被検体の一部に指定された領域に対して、細かい分解能で撮像した画像を得る。合成画像作成手段4Aは、全体領域の粗い画像データの中に特定の指定領域の細かい画像データを組み込み合成させて一体画像データを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて、対象とする被検体を透過するX線の透過量を計測することにより、非破壊で被検体内部の状況を画像化する産業用X線CT装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、医療用の人体内部計測装置としての活用が広く普及しているが、工業用途においても対象物を切断することなく非破壊で内部状態が計測できるため、鋳造部品の内部欠陥計測、など非破壊検査として多くの用途に用いられている。X線CT装置では、X線源と検出器の間に撮像被検体を設置し、X線源から照射されるX線が被検体を透過し減衰した後のX線透過量を検出器で計測し、このX線の透過量分布から被検体内部の画像を再構成する。そのため、X線源の焦点サイズと検出器サイズが画像の空間分解能に強く影響する。
【0003】
医療用と異なり工業用途のX線CT装置では、対象物が金属物の場合が多く人体に比較して透過能力の強いX線エネルギーが必要となる。X線を発生させるX線源としては、800kVまではX線管が使用可能であり、MV領域のエネルギーレベルでは線形加速器によるX線源が必要となる。X線管では、エネルギーレベルの低い領域(〜225kV)では焦点サイズがミクロンオーダーのX線源が存在するが、透過能力が低いため厚い金属物の被検体は撮像不能となる。また、エネルギーレベルが比較的高い領域(320kV〜800kV)のX線管では、透過能力は増加するがX線発生源の焦点サイズはサブミリからミリオーダーに大きくなる。MV領域のX線エネルギーレベルが得られる線形加速器では、透過能力がさらに増加し、エネルギーレベルが比較的高い領域(320kV〜800kV)のX線管と同様、X線発生源の焦点サイズはサブミリからミリオーダーに大きくなる。これらのX線管、線形加速器からは通常、コーン状に、またX線発生直後にコリメートされファン状にX線が照射される。
【0004】
X線源から照射され撮像被検体内部で減衰したX線の減衰量を計測する検出器には、シンチレータや化合物半導体、等の放射線検出器が用いられる。これらの検出器は、撮像被検体を挟んでX線源と相対する位置に設置される。検出器は、一定間隔で離散的に配置されX線源から各検出器素子中心を結んだ直線上のX線透過量積算値を計測する。被検体全体を撮像するには、X線源と検出器の間に設置された被検体をターンテーブルに乗せ回転させて、全体画像を再構成するために必要な投影データを取得する(例えば、特許文献1参照)。または、撮像被検体は静止させ、X線源と検出器を被検体周囲に回転させ必要な投影データを取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−96321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のような既存の産業用X線CT装置を用いた工業製品の非破壊検査における内部計測では、被検体の構造強度や性能特性に影響を与えるサイズの欠陥を検出する必要がある。鋳造物を対象とした場合は、これらの致命的な鋳造欠陥は既存のCT装置で検出可能であるが、さらに、これらの欠陥の周辺に存在するより小さい欠陥を検出するには、さらなる分解能の向上が必要となる。一方、これらの被検体全体サイズに比較して非常に小さな欠陥を検出する場合、これらの欠陥の最小サイズに合わせて被検体全体を撮像すると膨大な撮像時間を必要とする。また、撮像空間分解能を最小欠陥サイズに合わせて被検体全体の画像再構成を実施した場合、画像データが膨大となり再構成演算自体および画像作成後のデータ分析に膨大な計算時間が必要となる。
【0007】
また、X線CTを用いて鋳造物の鋳造欠陥を検出する場合では、鋳造過程において3次元的に欠陥が発生し易い箇所が、鋳造シミュレーションや既存の破壊検査から、ある程度、絞り込みが可能である。このようなケースでは、鋳造欠陥が発生し易い部位のみ、空間分解能を高めて撮像する方法が効率的である。一方、全体領域をある程度の空間分解能で撮像し、被検体の構造強度や性能特性に影響を与えるサイズの欠陥の有無を確認する事も重要である。
【0008】
従来の産業用X線CT装置では、X線源特性(焦点サイズ)および検出器のサイズは一定値に設定され不変のため、画像分解能は一つの装置では一定になる。そのため、装置としての分解能を高めた場合、被検体全体を撮像する場合に、撮像時間やデータ処理時間が膨大になる。
【0009】
本発明の目的は、撮像対象被検体の任意の指定された特定領域のみ高い空間分解能で撮像可能であるとともに、簡便に高精度で画像合成が可能な産業用X線CT装置および撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的のために、本発明は、X線を照射するX線源と、撮像対象被検体を透過したX線を検出する検出器と、X線源と検出器の間に配置された撮像対象被検体を回転・並進させる駆動機構と、検出器で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路と、該信号処理回路からの信号を元に画像を再構成する画像再構成手段からなるX線CT装置であって、前記X線源から放射されるX線ビームの焦点サイズを可変にするX線焦点サイズ調整手段と、前記検出器の各検出素子サイズの見かけ上のサイズを可変にする検出器ピクセル積算処理手段と、前記X線焦点サイズ調整手段と前記検出器ピクセル積算処理手段と連動して制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記X線焦点サイズ調整手段と前記検出器ピクセル積算処理手段とを制御して、前記X線源から放射されるX線ビームの焦点サイズと検出器の各検出素子サイズを粗い分解能に設定し、被検体全体を粗い空間分解能で撮像し、さらに、前記被検体の一部に指定された領域に対して、前記X線焦点サイズ調整手段と前記検出器ピクセル積算処理手段とを制御して、X線ビームの焦点サイズと検出器の各検出素子サイズを細かい分解能に再設定し、指定した特定領域のみを再撮像し、さらに、全体領域の粗い画像データの中に特定の指定領域の細かい画像データを組み込み合成させて一体画像データとする合成画像作成手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、撮像対象被検体の任意の指定された特定領域のみ高い空間分解能で撮像可能であるとともに、簡便に高精度で画像合成が可能となる。
【0011】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記被検体全体の撮像は被検体の回転操作のみで実施し、指定した特定領域のみの再撮像は被検体の回転と並進を併用して実施するようにしたものである。
【0012】
(3)上記目的のために、本発明は、X線を照射するX線源と、撮像対象被検体を透過したX線を検出する検出器と、X線源と検出器の間に配置された撮像対象被検体を回転・並進させる駆動機構と、検出器で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路と、該信号処理回路からの信号を元に画像を再構成する画像再構成手段からなるX線CT装置を用いたX線CT撮像方法であって、前記X線源から放射されるX線ビームの焦点サイズと検出器の各検出素子サイズを粗い分解能に設定し、被検体全体を粗い空間分解能で撮像した後、撮像画像を分析し、より細かな分解能で撮像する領域を指定し、X線ビームの焦点サイズと検出器の各検出素子サイズを細かい分解能に再設定し、指定した特定領域のみを再撮像し、 さらに、全体領域の粗い画像データの中に特定の指定領域の細かい画像データを組み込み合成させて一体画像データとするものである。
かかる方法により、撮像対象被検体の任意の指定された特定領域のみ高い空間分解能で撮像可能であるとともに、簡便に高精度で画像合成が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮像対象被検体の任意の指定された特定領域のみ高い空間分解能で撮像可能であるとともに、簡便に高精度で画像合成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による産業用X線CT装置の装置構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による産業用X線CT装置による撮像方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態による産業用X線CT装置のシステム構成図である。
【図4】本発明の一実施形態による産業用X線CT装置による表示例の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態による産業用X線CT装置による表示例の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による産業用X線CT装置による表示例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図6を用いて、本発明の一実施形態による産業用X線CT装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による産業用X線CT装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による産業用X線CT装置の装置構成図である。
【0016】
本実施形態の産業用X線CT装置は、X線源1と検出器2が対向されて設置され、両者の間にターンテーブル6が置かれ、ターンテーブル6上に撮像対象被検体8が設置される。ターンテーブル6は、駆動手段15により、紙面内で回転されるとともに、紙面に垂直な上下方向に移動可能である。
【0017】
X線源1から照射されたX線7は被検体8を透過して減衰し、対向する位置の検出器2に入射する。検出器2には、化合物半導体検出器やシンチレータが用いられる。これらの検出器2は、水平方向に一定間隔で各検出器素子が並ぶラインアレイセンサまたは水平方向と垂直方向の2次元に一定間隔で各検出器素子が並ぶ平面アレイセンサを用いる。これらの検出器2に入射したX線は、検出器内で入射X線量に相当する電気信号に変換される。得られた各検出器素子の電気信号は、検出器ピクセル積算処理機構5により指定された各検出器素子数の信号を加算処理する。処理された信号は信号処理回路3に伝送され、増幅・ビット変換された後、画像再構成装置4に伝送される。被検体全体の画像を再構成するには、ターンテーブル6を回転させ、一定角度ピッチ毎に、検出器2で検出されたX線透過量データ(投影データ)を1回転分収集する。一定角度ピッチ毎の投影データは、順次、画像再構成装置3に伝送・格納され、1回転分が得られた時点で画像再構成演算を実行し、再構成画像が得られる。得られた再構成画像は、CT画像表示装置11に伝送されデイスプレイ上に表示される。
【0018】
本実施例のX線CT装置を用いた撮像では、初期に被検体全体の撮像を行う場合は、検出器2の検出素子サイズでの空間分解能では細かすぎるため、検出器ピクセル積算処理機構5において隣接する複数の検出素子の信号を加算処理する。それにより撮像時間の短縮、画像再構成後の画像データのコンパクト化が可能となる。この時、X線源1に設けられたX線源焦点サイズ調整機構9によりX線源の焦点サイズを積算する検出器素子サイズに連動して変化させる。
【0019】
X線源焦点サイズ調整機構9によるX線源焦点サイズ調整方法としては、X線源の種類により異なるが、X線発生直後にサイズ可変コリメータを設置する方法がある。また、線形加速器(LINAC)の場合は、X線を発生させるターゲットに当てる電子ビームの収束サイズを加速管により調整する方法がある。X線管では、ターゲットを回転させる事が可能なタイプがあり、回転方向にターゲット厚みを調整して焦点サイズを可変に調整できる。他の方法によるX線源でもターゲットの自動交換機構を設置する事により焦点サイズを可変に調整できる。
【0020】
本実施例では、制御手段20は、検出器ピクセル積算処理機構5により指定された各検出器素子数の信号の加算処理と、X線源焦点サイズ調整を連動させて実施する。
【0021】
本実施例では、初期に被検体全体の撮像を実施した後、撮像画像をCT画像表示装置11に表示させ、被検体全体画像から欠陥発生頻度の高い領域や鋳造シミュレーションから得られる欠陥発生確率が高い領域をデスプレイ上から、マウス等の入力手段30を用いて指定する。詳細撮像を実施する領域を指定後、制御手段20は、X線源1に設けられたX線源焦点サイズ調整機構9と、検出器ピクセル積算処理機構5によりX線源の焦点サイズと各検出器素子数の信号の加算処理方法を設定する。このときは、被検体の一部の撮像であるため、X線源焦点サイズ調整機構9は、焦点サイズが小さくなるように設定され、また、検出器ピクセル積算処理機構5は複数の加算は行わず、各検出器素子の検出信号をそのまま出力する。これにより全体撮像時より高い空間分解能での撮像が可能となる。これらの設定終了後、全体撮像時と同様にターンテーブル6上の撮像被検体8を回転させ各角度での投影データを取得し、指定領域のみの画像を得る。
【0022】
ここで、例えば、具体例について説明する。検出器2は、水平方向と垂直方向の2次元に一定間隔で各検出器素子が並ぶ平面アレイセンサとする。個々の検出器素子は、長方形状であり、短辺の長さが0.4mmで、長辺の長さが1.0mmである。隣接する検出器素子の間には、0.4mmのギャップが形成されている。従って、短辺方向に隣接する検出器素子のピッチは、0.8mmである。長辺方向に隣接する検出器素子のピッチは、1.4mmである。例えば、長辺方向が図1の紙面に垂直な方向とし、短辺方向が図1の紙面に平行な方向である。
【0023】
被検体全体の撮像する際には、検出器ピクセル積算処理機構5は、短辺方向に隣接する4個の検出器素子及び長辺方向に隣接する4個の検出器素子,すなわち、合計16個の検出器素子の出力信号を積算する。これにより、検出器2における検出器素子の見かけ上の大きさは、短辺方向が4.4mm(=検出器素子の短辺の長さ0.4mm×4+隣接する検出器素子のギャップ0.4mm×3)となり、長辺方向が4.8mm(=検出器素子の長辺の長さ1.0mm×4+隣接する検出器素子のギャップ0.4mm×2)となる。従って、空間分解能は、ここの検出器素子から個別に信号を取り出した場合の1/12となるが、信号処理回路3や画像再構成装置4におけるデータ量は1/12となる。また、このとき、X線源焦点サイズ調整機構9は、X線源1を制御して、出射するX線の開き角を40度する。これにより、駆動機構15は、ターンテーブル6を並進移動させることになく、一度に、ターンテーブル6に設置された被検体8に対して、その高さ方向にもX線を照射することができる。したがって、ターンテーブル6の回転移動のみで、被検体全体のCT画像を得ることができる。
【0024】
一方、被検体全体ではなく指定された領域の撮像の際には、検出器ピクセル積算処理機構5は、個々の検出器素子からの出力信号を積算することなく、個々の検出器素子からの出力を独立して、信号処理回路3や画像再構成装置4に送る。このとき、指定された領域は、被検体全体に比べて小さいため、データ量が極端に増加することはないものである。また、このとき、X線源焦点サイズ調整機構9は、X線源1を制御して、出射するX線の開き角を20度する。従って空間分解能の高いCT画像を得ることができる。この場合、被検体の高さ方向について一度にX線を照射することはできないため、駆動機構15は、ターンテーブル6を回転移動させるとともに並進移動も併用する必要がある。
【0025】
次に、図2を用いて、本実施形態による産業用X線CT装置による撮像方法について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による産業用X線CT装置による撮像方法を示すフローチャートである。
【0026】
ステップS10において、X線源焦点サイズ、検出器ピッチ、画像ピクセルサイズの初期撮像条件を設定する。次に、ステップS20において、この撮像条件で撮像を実施し、ステップS30において、得られた投影データから被検体全体の画像再構成を実施する。この全体撮像では、被検体の回転のみの操作で撮像する方式を用いる。
【0027】
次に、ステップS40において、被検体全体撮像結果を基に詳細撮像領域を設定する。そして、ステップS50において、設定した領域に対して改めてX線源焦点サイズ、検出器ピッチ、画像ピクセルサイズの撮像条件を再設定する。その後、ステップS60において、この撮像条件で指定領域のみ再撮像を実施する。この指定領域の撮像では、被検体を回転と並進させ撮像する撮像方式を用いる。 そして、ステップS70において、複数の指定領域がある場合は、撮像条件の再設定、指定領域の再撮像を全ての指定領域に対して繰り返す。
【0028】
次に、ステップS80において、これらの指定領域の詳細撮像データを全ての領域に対して画像再構成した後、ステップS90において、全体撮像で得られたCT画像データと指定領域の詳細画像データを一体化させる。
【0029】
次に、図3を用いて、本実施形態による産業用X線CT装置のシステム構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による産業用X線CT装置のシステム構成図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0030】
ここで、図1と図3の対応関係について説明する。
【0031】
図3に示した全体撮像条件指定手段30A,X線焦点サイズ指定手段30B,検出器ピクセルサイズ条件指定手段30C,画像再構成計算条件指定手段30D,合成画像作成条件指定手段30E,X線照射条件修正手段30F,再構成計算条件修正手段30GBは、図1の入力手段30に備えられている。入力手段30は、マウスやキーボードからなる。
【0032】
図3に示した全体撮像条件記憶手段40A,X線源照射条件データ記憶手段40B,投影データ記憶手段40C,再構成画像データ記憶手段40D,合成画像記憶手段40Eは、図1の記憶手段40に備えられている。
【0033】
図3に示した部分領域再構成画像の合成画像作成手段4Aは、図1に示した画像再構成手段4に備えられている。図3に示した画像再構成用投影データ作成手段3Aは、図1の信号処理回路3に備えられている。
【0034】
入力手段30の、全体撮像条件指定手段30A,X線源焦点サイズ指定手段30B,検出器ピクセルサイズ指定手段30C,画像再構成計算条件指定手段30D,合成画像条件指定手段30E9により、それぞれの処理プロセスで必要となる条件を入力する。
【0035】
図2のステップS10の処理により、全体撮像条件指定手段30Aにより指定された全体撮像条件D3(撮像領域サイズデータ,照射条件データ,検出器サイズデータ)は、全体撮像条件記憶手段40Aに格納される。
【0036】
図2のステップ40の処理により詳細領域が設定されると、ステップs50の処理により、X線源焦点サイズ変更手段30Bで設定されたX線源焦点サイズおよびX線源照射条件記憶手段40Aに記憶された照射条件データD10が、X線源焦点サイズ変更手段9に入力され、X線源焦点サイズ変更手段9は入力された照射条件データD10に基づいて、X線源1の照射条件を変更する。X線照射条件D4は、X線源照射条件データ記憶手段40Bに記憶される。
【0037】
画像再構成用投影データ作成手段3Aは、X線源照射条件データ記憶手段40Bに記憶されたX線照射条件D4と、図2のステップs50の処理によって検出器ピクセルサイズ条件指定手段30Cにより指定された検出器ピクセルサイズ条件D11と、X線照射条件修正手段30Fにより修正されたX線照射条件に基づいて、画像再構成用投影データD5を作成する。作成された画像再構成用投影データは、投影データ記憶手段C6に記憶される。
【0038】
画像再構成手段4は、図2のステップS30の処理やステップS80の処理により、X線源照射条件データ記憶手段40Bに記憶されたX線照射条件D4と、投影データ記憶手段40Cに記憶された画像再構成用投影データD5と、画像再構成計算条件指定手段30Dから指定された画像再構成計算条件D12と、再構成計算条件修正手段30Gにより修正された再構成計算条件D17に基づいて、画像データD6を作成する。作成された画像データD6は、再構成画像データ記憶手段40Dに記憶される。
【0039】
以上により、全体撮像条件により図2のステップS20における全体撮像画像が得られ、X線源焦点サイズや検出器ピクセルサイズを変更することで、図2のステップS60における指定領域の詳細撮像画像が得られる。
【0040】
部分領域再構成画像の合成画像作成手段4Aは、図2のステップS90の処理により、再構成画像データ記憶手段40Dに記憶された全体撮像画像および指定領域の詳細撮像画像D6を、合成画像作成条件指定手段30Eにより指定された合成画像作成条件D13に基づいて合成し、合成画像データD7を合成画像記憶手段40Eに記憶する。
【0041】
X線源照射条件データ記憶手段40B,投影データ記憶手段40C,再構成画像データ記憶手段40D,合成画像記憶手段40Eに記憶された各条件D3やデータD4,D5,D6,D7は、CT画像表示装置11に表示される。
【0042】
次に、図4〜図6を用いて、本実施形態による産業用X線CT装置による表示例について説明する。
図4〜図6は、本発明の一実施形態による産業用X線CT装置による表示例の説明図である。
【0043】
図4は、CT画像表示装置11に表示される全体画像の表示例である。表示手段11には、表示領域指定枠24が設けられ、「全体領域」と「部分領域:の指定がデスプレイ上から可能である。部分領域の指定には、指定領域一覧表示枠25が設けられ複数指定領域(例えば、領域a,領域b,領域c)の設定と選択をする。例えば、指定領域一覧表示枠25において領域aを選択した上で、画像表示画面26において、対角線の2点をマウス等で指定することで、領域aが表示される。
【0044】
図示した表示例は、例えば、鋳造された2気筒のエンジンブロックである。中央付近の2つの大きな円がシリンダの空隙である。シリンダの周囲の円弧状の長円は冷却水通路の空隙である。
【0045】
図5は、画像表示画面26に、詳細画像が表示されている場合の表示例である。指定領域一覧表示枠25において領域bを選択すると、領域bの拡大画像が表示される。ここで、領域bのように、周辺の部分では鋳巣が発生しやすく、角田画像では、鋳巣D1が表示される。
【0046】
図6は、図2のステップS90の処理により、画像表示画面26に全体画像と詳細画像を合成して表示した例を示している。詳細画像を全体画像に合成することで、鋳巣D1でも表示することができる。
【0047】
従来の撮像においても、X線源のエネルギーレベルの高いCT装置とX線源のエネルギーレベルが低いが空間分解能が高い装置を一つの被検体に対して併用して撮像する事ができたが、X線源のエネルギーレベルが低いCT装置では、X線透過能力が低いため、被検体全体の撮像はできず、対象とする一部分のみを物理的に切り出し小さなサイズに分解して撮像する必要があった。また全体撮像データと物理的に切り出した部分の詳細撮像データを合成するためには高精度で位置決めを実施する必要があり撮像時および画像データ処理が非常に困難であった。 それに対して、本実施形態では、一つの装置で被検体位置も同一状態で全体撮像と詳細撮像を実施するため、撮像時および画像データ合成時における位置決めの問題は発生せず、簡便に高精度で画像合成が実施可能である。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、産業用X線CT装置において撮像対象被検体の任意の指定された特定領域のみ高い空間分解能で撮像可能な装置および撮像方法を提供することにより、対象被検体の全体を粗い空間分解能で撮像し必要領域のみ高分解能で撮像する事が可能となり、高分解能の撮像を実現可能な短い時間で撮像可能としえられる撮像データも必要最小限のサイズに抑制し演算および分析時間を短縮できる。
【符号の説明】
【0049】
1…X線源
2…検出器
3…信号処理回路
4…画像再構成装置
5…検出器ピクセル積算処理機構
6…ターンテーブル
7…X線
8…撮像対象被検体
9…X線源焦点サイズ調整機構
10…信号伝送回路
11…CT画像表示装置
15…駆動手段
20…制御手段
24…表示領域指定枠
25…指定領域一覧表示枠
26…画像表示画面
30…入力手段
40…記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線源と、
撮像対象被検体を透過したX線を検出する検出器と、
X線源と検出器の間に配置された撮像対象被検体を回転・並進させる駆動機構と、
検出器で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路と、
該信号処理回路からの信号を元に画像を再構成する画像再構成手段からなるX線CT装置であって、
前記X線源から放射されるX線ビームの焦点サイズを可変にするX線焦点サイズ調整手段と、
前記検出器の各検出素子サイズの見かけ上のサイズを可変にする検出器ピクセル積算処理手段と、
前記X線焦点サイズ調整手段と前記検出器ピクセル積算処理手段と連動して制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記X線焦点サイズ調整手段と前記検出器ピクセル積算処理手段とを制御して、前記X線源から放射されるX線ビームの焦点サイズと検出器の各検出素子サイズを粗い分解能に設定し、被検体全体を粗い空間分解能で撮像し、さらに、前記被検体の一部に指定された領域に対して、前記X線焦点サイズ調整手段と前記検出器ピクセル積算処理手段とを制御して、X線ビームの焦点サイズと検出器の各検出素子サイズを細かい分解能に再設定し、指定した特定領域のみを再撮像し、
さらに、全体領域の粗い画像データの中に特定の指定領域の細かい画像データを組み込み合成させて一体画像データとする合成画像作成手段を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線CT装置において、
前記被検体全体の撮像は被検体の回転操作のみで実施し、指定した特定領域のみの再撮像は被検体の回転と並進を併用して実施することを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
X線を照射するX線源と、撮像対象被検体を透過したX線を検出する検出器と、X線源と検出器の間に配置された撮像対象被検体を回転・並進させる駆動機構と、検出器で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路と、該信号処理回路からの信号を元に画像を再構成する画像再構成手段からなるX線CT装置を用いたX線CT撮像方法であって、
前記X線源から放射されるX線ビームの焦点サイズと検出器の各検出素子サイズを粗い分解能に設定し、被検体全体を粗い空間分解能で撮像した後、撮像画像を分析し、より細かな分解能で撮像する領域を指定し、X線ビームの焦点サイズと検出器の各検出素子サイズを細かい分解能に再設定し、指定した特定領域のみを再撮像し、
さらに、全体領域の粗い画像データの中に特定の指定領域の細かい画像データを組み込み合成させて一体画像データとすることを特徴とするX線CT撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−122930(P2011−122930A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280673(P2009−280673)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】