産業車両の稼動管理方法及びシステム
【課題】障害物が多く存在する作業環境であっても無線通信により必要な車両データを確実に収集できる産業車両の稼動管理方法及びシステムを提供する。
【解決手段】走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラ10と、通信回線によりコントローラから車両データを受信し、該車両データに基づいて車両の稼動状況を管理するサーバ20とを備え、前記コントローラは、産業車両のキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出し、キースイッチONの時に、検出手段にて検出した走行動作状態及び荷役動作状態を車両データとして記録し、キースイッチOFFの時に、サーバと通信可能範囲内であるか否かを判断し、通信可能範囲内である場合にはキースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の車両データをファイル化して保存した後、保存データを無線通信により前記サーバに送信する。
【解決手段】走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラ10と、通信回線によりコントローラから車両データを受信し、該車両データに基づいて車両の稼動状況を管理するサーバ20とを備え、前記コントローラは、産業車両のキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出し、キースイッチONの時に、検出手段にて検出した走行動作状態及び荷役動作状態を車両データとして記録し、キースイッチOFFの時に、サーバと通信可能範囲内であるか否かを判断し、通信可能範囲内である場合にはキースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の車両データをファイル化して保存した後、保存データを無線通信により前記サーバに送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両における走行動作及び荷役動作などの作業動作に関する車両データを通信回線を利用してサーバに収集し、複数の産業車両を統合的に管理する産業車両の稼動管理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の運搬荷役用産業車両は、工場構内や倉庫等の様々な作業現場で使用されている。作業現場によっては複数の産業車両を導入している場合も多く、作業効率を向上させるために車両の効率的な稼動が求められている。
さらに近年は、多数のフォークリフトを所有するレンタル業者が車両使用者に一定の契約条件で以って産業車両を貸与レンタルするシステムも存在する。
そこで、車両の稼動状況を的確に把握してこれを管理することが求められており、これにより車両をより効率的に稼動させるための稼動計画の立案、修正、或いはメンテナンス時期、頻度の把握などを適切に行うことが可能となり、延いては作業の効率化、コスト削減、安全性向上が図れるようになる。
【0003】
産業車両の稼動管理システムは以下に示すように種々提案されている。
特許文献1(特開2002−187698号公報)には、作業車両内にてその動作履歴を管理するようにした装置について開示されている。これは、作業車両に搭載した管理装置にて、特定の動作履歴を時刻に関連付けて記憶させ、必要に応じて特定期間の動作量を演算して出力できるようにした構成となっている。
また、特許文献2(特開2005−139000号公報)には、産業車両から送られてくる車両状態データに基づいて、単位時間毎の車両の状態を判定し、時系列的に表示するようにしたシステムが開示されている。これは、車速センサ及び荷重センサに出力に基づいて所定時間間隔で車両状態を検出し、該検出したデータをサーバ側に通信インタフェースを介して送信し、該サーバにて積載走行、空荷走行、積載停止、空荷停止等の状態を判定するようになっている。
【0004】
さらに特許文献3(特開2002−123848号公報)には、作業車両の車両動作及び作業動作を管理センタの指令に基づき制御する管理システムが開示されている。これは、車両に対応して設定された車両動作内容及び作業動作内容をメモリカードに書き込む地上制御装置と、このメモリカードを読み込み、車両動作及び作業動作の検出内容と、メモリカードの設定内容とを比較してその差異を補正する指令を与える車載制御装置とから構成され、これにより運転員が異なっても適性な車両動作及び作業動作を行うことを可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−187698号公報
【特許文献2】特開2005−139000号公報
【特許文献3】特開2002−123848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、産業車両を管理する際には、車両の稼動状況を検出してこれを車両自体若しくはサーバ等の外部装置に蓄積し、必要に応じてこれを分析して出力する構成を採用していることが多い。
特許文献1は、車両自体に管理装置が搭載された構成となっており、その車両単体の稼動状況は把握できるものの、複数の産業車両の稼動状況を対比させることはできず、複数の車両を総合的に管理することはできない。
【0007】
特許文献2は、車両から通信インタフェースを介して送られてくる車両状態データに基づいて、サーバにて単位時間毎の車両の状態を判定するようになっており、通信インタフェースとしては無線通信若しくはケーブルを用いた有線通信を利用したものを挙げている。しかし、フォークリフト等の産業車両は、障害物が多く存在する作業環境で走行するため、有線回線では回線を引くことが困難で、また無線回線を用いた場合も障害物により電波が届かない場所が多く、定期的に通信を行うことは難しい。従って、単位時間毎の車両状態データをサーバ側で正確に取得することは困難である。
【0008】
そこで、特許文献3のようにメモリカードを利用することにより、情報の授受を円滑に行うことは可能となるが、これは物の移動が伴うため手間がかかり、また煩雑な作業環境内で使用する際には紛失や破損といった懸念がある。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、障害物が多く存在する作業環境であっても無線通信により必要な車両データを確実に収集でき、さらに複数の産業車両間における稼動状態の比較が容易に行え、効率的な稼動を図ることを可能とした産業車両の稼動管理方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラと、通信回線により前記コントローラから車両データを受信するサーバとからなり、該サーバにて受信した車両データに基づいて車両の稼動状況を管理する産業車両の稼動管理方法であって、
前記コントローラは、前記産業車両の電源起動/停止を指示するキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出し、キースイッチON状態の時に、前記産業車両が具備する検出手段により検出した走行動作状態及び荷役動作状態を車両データとして記録し、キースイッチOFF状態の時に、前記サーバとの通信可能範囲内であるか否かを判断し、通信可能範囲内である場合にはキースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の車両データをファイル化して保存した後、保存データを無線通信により前記サーバに送信し、
前記サーバでは、複数の産業車両より受信した前記車両データを蓄積し、該蓄積した車両データを、必要に応じて演算処理して、出力するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明では、キースイッチOFFの時に無線通信により車両データを送信するようにしており、即ち車両の停止時に通信を行う構成となっている。車両が停止する場所の無線通信環境を良好にしておくことで、データの送信が円滑に行えるため、障害物が多い作業環境で動作する産業車両においても、車両データを確実にサーバに送信することが可能となる。また、キースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の車両データを一つの単位として取り扱うようにしたため、複数の車両間にて稼動状況の比較が容易に行えるようになる。
【0011】
さらに、前記コントローラでは、前記キースイッチのOFF信号を検出した時に前記ピリオド間の車両データをファイル化して保存した後に電源停止する電源監視処理と、前記通信可能範囲内であるか否かの判断を行い、通信可能範囲内である場合に前記サーバに保存データを送信する通信監視処理と、を夫々独立して行うようにし、
前記通信監視処理にて、通信可能範囲内であると判断された時に、保存データの有無を判断し、該保存データが存在する場合にのみ前記サーバとの通信回線の接続を確立することを特徴とする。
このように、電源監視処理と通信監視処理を独立して行う構成としたため、サーバへのデータ送信中の電源断などの不慮の状態にも対応可能である。
また、前記サーバでは、前記車両データのうち、前記ピリオド内のある時点におけるデータを示す瞬時データと、所定期間内に存在するピリオドの車両データを累積した長期データとに区分して蓄積することが好ましい。
【0012】
さらに、前記サーバにて、前記産業車両における同一の作業種類若しくは作業エリアをグループ化基準とし、前記ピリオドを前記グループ化基準により区分して蓄積し、同じグループに属するピリオドの車両データを複数の産業車両間にて対比させて出力するようにしたことを特徴とする。
本発明のごとく、作業種類若しくは作業エリアを一つのピリオドとすることにより、複数のフォークリフト間における比較が容易に行えるようになり、同一作業種類若しくは同一作業エリアにおける稼動状況のばらつきを検出でき、その稼動状況の問題点を簡単に把握することができるようになる。
さらにまた、前記サーバと通信回線を介して接続されるユーザ側通信端末を備え、
前記ユーザ側通信端末では、前記サーバから提示される複数の車両データ項目から所望の車両データ項目を選択し、該選択した車両データ項目に対応した車両データを前記サーバに要求し、該当する車両データを前記サーバから受信して画面表示するようにし、
前記ユーザ側通信端末にて画面表示する車両データ項目を変更自在としたことを特徴とする。
本発明では、ユーザが車両データを選択可能とすることにより、ユーザ毎に必要なデータのみが出力されることとなり閲覧し易く稼動状況を把握しやすくなる。
【0013】
また、走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラと、該コントローラから通信回線を介して車両データを受信し、該車両データに基づいて車両の稼動状況を管理するサーバと、からなる産業車両の稼動管理システムであって、
前記コントローラは、前記産業車両が具備する検出手段にて検出した走行動作状態及び荷役動作状態に関する検出信号を入力する走行・荷役動作状態入力部と、前記産業車両の電源起動/停止を指示するキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出する電源監視部と、キースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の前記検出信号に対応する車両データを記録する記憶部と、前記サーバに対して無線により通信可能範囲内に存在するか否かを判断する無線通信部と、を備え、
前記電源監視部にてキースイッチOFF状態を検出した際に、前記記憶部に記録されたピリオド間車両データをファイル化して保存し、前記無線通信部にて通信可能範囲内である場合に前記記録部の保存データを前記サーバに送信するようにし、
前記サーバは、複数の産業車両の前記コントローラから受信した車両データを蓄積するデータベースを備え、必要に応じて前記車両データを出力するようにしたことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記サーバは、前記コントローラから受信した車両データに所定の演算処理を施す制御部を備え、この処理結果を前記データベースに蓄積するようにしたことを特徴とする。
また、前記データベースには、前記車両データのうち、前記ピリオド内のある時点におけるデータである瞬時データと、所定期間内に存在するピリオドの車両データを累積した長期データとに区分して蓄積されることを特徴とする。
さらに、前記電源監視部と前記無線通信部とが独立して作動するように構成されるとともに、
前記電源監視部にはカウンタが設定され、該カウンタにて処理時間若しくは処理回数により制限を設けたことを特徴とする。
さらにまた、前記サーバは、前記産業車両における同一の作業種類若しくは作業エリアをグループ化基準とし、前記ピリオドを前記グループ化基準により区分して前記データベースに蓄積し、同じグループに属するピリオドの車両データを複数の産業車両間にて対比させて出力するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上記載のごとく本発明によれば、障害物が多く存在する作業環境であっても無線通信により必要な車両データを確実に収集でき、さらに複数の産業車両間における稼動状態の比較が容易に行え、効率的な稼動を図ることが可能である。延いては、車両の最適な稼動計画を立案、修正することができ、且つメンテナンス時期、頻度を容易に把握することができ、さらには適切な安全対策を講じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本実施例1に係るシステムの基本構成図、図2は図1のシステムにおける内部構成を示すブロック図、図3は通信タイミングとデータ種類を説明する図、図4はキースイッチOFF時における処理動作のフローチャート、図5は電源監視部の処理動作を示すフローチャート、図6は無線通信部の処理動作を示すフローチャート、図7は車両データ項目の例を示す表、図8はピリオドに作業種類/作業エリアを対応させた場合の説明図、図9は本実施例2に係るシステムの基本構成図、図10は車両データ項目の表である。
【0017】
本実施例では、産業車両としてフォークリフトを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、他にもリーチスタッカー等のように走行動作及び荷役動作を行う産業車両全般に適用可能である。
図11に、本実施例が適用されるフォークリフトの具体的構成例を示す。同図において、11は車体、12は荷物昇降用の昇降マスト、13は爪、14は操縦用ハンドル、15はヘッドガード、16は車輪、17は運転席である。このフォークリフト1においては、エンジンにより車輪16を駆動して走行し、リフトシリンダ(図示略)により昇降マスト12を昇降させるとともにチルトシリンダ(図示略)により昇降マスト12を傾斜させ、爪13に架けた荷物を持ち上げ、運搬するようになっている。
【実施例1】
【0018】
図1を参照して、本実施例1に係るシステムの基本構成につき説明する。
本システムは、フォークリフト1に搭載された車載コントローラ10と、管理センタ2内に設置され、通信回線を利用して前記コントローラ10とデータの授受を行うサーバ20とから構成される。
フォークリフト1が複数存在する場合には、夫々にコントローラ10が搭載される。管理センタ2は、例えば、作業現場を管理する会社により運営される形態、或いは本管理システムを製造したメーカにより運営される形態、或いは管理システムを保守・管理サービスを提供する会社により運営される形態等が挙げられる。
【0019】
このシステムでは、フォークリフト1の走行動作状態、若しくは荷役動作状態を検出し、これらの検出信号に対応した車両データを車載コントローラ10に記録し、所定のタイミングで無線通信を利用して該車両データをサーバ20に送信する。この所定のタイミングとは、フォークリフト1のキースイッチがOFF状態の時とする。即ち、図3に示すように、キースイッチをONに切り替えた直後からOFFに切り替える直前までの間を一つのピリオドとすると、一のピリオド間の車両データを記録し、これをファイル化してピリオド間データとして保存し、キーOFF時にこのピリオド間データをサーバ20に送信するようにしている。
【0020】
一方、サーバ20では、コントローラ10から受信したピリオド間データを蓄積し、必要に応じてデータ解析、累計、比較等の所定の演算処理を行った後、前記ピリオド間データや、演算処理により得られた処理結果をデータベース21に蓄積、或いは更新する。そして、必要に応じてデータベース21からピリオド間データを始めとする車両データを出力する。この車両データは、フォークリフト1の運転計画の立案、修正、或いはメンテナンス時期や頻度の把握、或いは安全対策に有効に利用することができる。
【0021】
図2に本実施例の具体的な構成を示す。同図には、フォークリフト1が具備する各種機器と、該フォークリフト1に搭載された車載コントローラ10の内部構成を示すとともに、管理センタ2に設置されるサーバ20の内部構成を示す。
フォークリフト1は、走行・荷役動作検出器18と電源キースイッチ19と車載コントローラ10と、を具備する。
【0022】
前記走行・荷役動作検出器18は、フォークリフト1の走行動作状態と荷役動作状態を検出する装置である。この装置は、フォークリフトの走行速度、エンジン運転状態(出力、回転数、冷却水温度、潤滑油温度等)、運転時間及び停止時間等の走行動作、或いはフォークリフト1に搭載されているリフトシリンダ、チルトシリンダ等の作業機器の運転状態及び稼動時間、即ち作動油圧、作動油温度、作業機器毎の稼動時間等の作業動作を検出する。具体的には、車速センサ、荷重センサ、荷役操作検出センサ、等が挙げられる。
前記電源キースイッチ19は、フォークリフト1のエンジンまたはモータの起動/停止を指示する装置である。
【0023】
前記車載コントローラ10は、走行・荷役動作入力部101と、記憶部102と、電源監視部103と、制御部104と、無線通信部105と、を備えている。
前記走行・荷役動作入力部101は、走行・荷役動作検出器18からの検出信号を、車両データとしてコントローラ内に入力する機能を有する。
前記記憶部102は、走行・荷役動作入力部101から入力された車両データを定期的に記録(ログ)し、格納する。ログ期間は、電源キースイッチ10のON直後からOFF直前までのピリオド内である。
前記電源監視部103は、電源キースイッチ19のON/OFF状態を検出する。この電源監視部102では、キースイッチOFF信号を検出したら、前記記憶部102に対して、ログを完了させ、ログしたデータをファイル化して保存するように指示を与える。
このファイル化された車両データは、次回のOFF時にサーバ20に送信するまで記憶部102に一時的に記憶しておくが、通信不可だった場合にはさらに次のOFF時まで記憶させておく。また、サーバ20に送信後の車両データは、その都度消去してもよいし、随時上書き保存してもよい。
【0024】
前記無線通信部105は、フォークリフト1(コントローラ10)が、無線回線を利用した通信可能範囲内に存在するか否かを判断し、通信可能範囲に存在する場合にはサーバ20との接続を確立し、無線回線を利用してサーバ20とデータの授受を行うための通信インタフェースである。
本実施例では、車載コントローラ10は無線LANシステムを利用してサーバに接続する構成となっている。即ち、インターネット等の通信回線に接続された無線中継機器31が作業現場若しくはその周囲に設置されており、該中継機器31を中心とした通信可能範囲内にフォークリフト1が存在するか否かを無線通信部105により判断する。
【0025】
前記制御部104は、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM、及びこれら各機器がそれぞれ接続されるバスラインから構成されている。
尚、前記ROMに予め書き込まれた制御プログラムにより実行される機能として、上記した走行・荷役動作入力部101と、記憶部102と、電源監視部103と、無線通信部105を示してある。
【0026】
前記管理センタ2には、サーバ20とこれに接続されたデータベース21とが設けられている。サーバ20は、データ更新部201と、累計算出部202と、データ解析部203と、出力部204と、入力部205と、制御部206と、外部通信部207と、を備えている。
前記入力部205は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力操作を行うもので、前記出力部204は、要求した車両データを出力するものであり、例えばデータを画面表示するディスプレイや紙面上に印刷するプリンタ等である。
【0027】
前記制御部206は、上記したコントローラ10の制御部105と同様に、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM、及びこれら各機器がそれぞれ接続されるバスラインから構成されている。
尚、前記ROMに予め書き込まれた制御プログラムにより実行される機能として、データ更新部201と、累計算出部202と、データ解析部203を示してある。
前記データ更新部201は、コントローラ10より新たに車両データを受信した場合に、該当する既受信データを随時更新する。
前記累計算出部202は、データベース21に蓄積された車両データを、所定の期間だけ累積して長期データを取得する。
前記データ解析部203は、必要に応じて所定の演算処理を行い、所望の車両データを得るものである。
【0028】
前記データベース21には、コントローラ10から受信した車両データが格納されている。該データベース21に格納される車両データとしては、ピリオド間データ(一つのピリオド間の保存ファイル)の他に、前記累計算出部202により得られた長期データ、或いは、ある時点における車両データからなる瞬時データなどがある。この車両データの種類については後述する。
【0029】
また、データベース21には、フォークリフト1の許容稼動時間及び車両走行速度の制限値を含む走行動作の許容値(範囲)あるいは基準値(範囲)、並びに荷役作業における荷物重量の制限値を含む荷役動作の許容値(範囲)あるいは基準値(範囲)が予め設定されている。
例えば、車速の許容値が設定されている場合、データベース21に記憶されている車両データから車速データを抽出し、前記データ解析部203にて、この車速データと前記車速の許容値とを比較し、該車速データが許容値を超える場合には危険運転と判断する。この危険運転の回数をピリオド毎にカウントし、車速オーバー回数として出力するようにしてもよい。
前記外部通信部207は、インターネット等の通信回線51に接続して、コントローラ10とデータの授受を行うための通信インタフェースである。
【0030】
次に、上記した構成を有するシステムにおける処理動作を説明する。
フォークリフト1の運転開始時に、電源キースイッチ19をONに入れると、コントローラ10の電源監視部103にてON信号が検出され、車両データの記録が開始される。走行・荷役動作検出器18からの検出信号に基づいてコントローラ10の記憶部102に車両データが記録、保存される。これは、一定時間毎に車両データを記録するように設定されていることが好ましい。記録する車両データは、予めサーバ20より指定されたデータ項目に該当するデータとする。
【0031】
作業の終了、或いは一旦休止などによりキースイッチがOFFに切り替えられると、電源監視部103にてOFF信号が検出され、それまで記録してきた車両データをファイル化して記憶部102に保存する。さらに無線通信部104により、通信可能範囲内か否かを判断し、通信可能範囲内である場合にはこの保存ファイルをサーバ20に送信する。通信可能範囲内ではない場合は、サーバ20との接続を確立せず、保存データは記憶部102に蓄積しておく。この保存データは、次回のOFF時まで蓄積される。
ここで、キースイッチOFF時におけるコントローラ10の処理動作を図4に示す。
コントローラ10は、キースイッチOFFの信号を検出したら(S1)、通信可能範囲内であるか否かを判断する(S2)。通信可能範囲外であると判断された場合には、電源OFFまでの設定時間が経過したか否か?または保存データが無いか否か?を判定し(S3)、電源OFFまでの設定時間が経過していない場合、或いは保存データがある場合には、所定時間後に再度リトライする(S4)。尚、電源OFFまでの設定時間は、予めコントローラ10内の環境設定ファイルに設定しておく。
電源OFFまでの設定時間が経過した場合、或いは保存データがない場合には、電源をOFFする(S5)。
【0032】
通信可能範囲内であるか否かを判断した際に(S2)、通信可能範囲内である場合には、コントローラ10の記憶部102に保存データがあるか否かを判断する(S6)。保存データが無い場合には電源OFFする(S7)。保存データがある場合には、サーバへ接続し(S8)、接続が失敗したら、再び通信可能範囲確認ステップ(S2)まで戻る。サーバへの接続が確立したら、車両データをサーバ20に送信する(S9)。データを全て送信したら、保存データ確認ステップ(S6)まで戻り、保存データが残っていないことを確認した後電源OFFする(S7)。通信状態が悪く、データ送信が完了しないまま通信が途絶えた場合には、通信可能範囲確認ステップ(S2)まで戻り、再度上記した処理フローを行う。尚、本フローにおいて、通信可能確認ステップ(S2)と、保存データ確認ステップ(S6)の順序は逆であってもよい。
【0033】
このように、キースイッチOFFの信号を検出したら、電源をOFFする前に、車両データをサーバ20に送信する。コントローラ10の記憶部102に保存した車両データを全て送信完了したら電源をOFFする。
上記した処理動作を行うことによって、通信状態が悪い場合であっても、記憶部102に保存されている車両データを確実にサーバ20へ送信することが可能である。
【0034】
また、上記処理フローを実行する構成として、電源監視ロジックと、無線通信ロジックは夫々独立して動作するように構成することが好ましい。ここで、電源監視ロジックは、キースイッチのON/OFFの信号をリアルタイムで監視し、OFF時に車両データの記録を記憶部102にファイル化して保存する処理である。また、無線通信ロジックは、通信の可否を監視し、通信可能で且つ車両データが保存されていればサーバに接続してデータを送信する処理である。
図5に電源監視ロジックのフローチャートを示し、図6に無線通信ロジックのフローチャートを示す。
【0035】
まず、図5を参照して、電源監視ロジックにつき説明する。予めコントローラ10の環境設定ファイルに、カウンタ初期値を設定しておく。ON/OFF検出部103のカウンタに、この環境設定ファイルからカウンタ初期値を代入し(S11)、ここからカウンタを減算する(S12)。キースイッチONの信号を検出したら(S13)、カウンタを再度初期値に設定しなおす。キースイッチOFFの信号を検出したら、カウンタが0であるか否かを判定し(S14)、0以上である場合には、車両データの記録(ログ)が完了しているか否かを確認する(S15)。ここで記録が完了していない場合には、カウンタ減算ステップ(S12)まで戻る。ログが完了している場合には、車両データの保存処理を行い(S16)、保存データがあるか否かを判定する(S17)。保存データがある場合には、カウンタ減算ステップ(S12)まで戻る。カウンタ減算ステップ(S12)を数回繰り返すと、カウンタが0になる。カウンタが0になったら所定時間が経過したものとみなし、電源をOFFする(S18)。また、保存データ確認ステップ(S17)にて、保存データが無い場合にも電源をOFFする(S18)。
【0036】
次に、図6を参照して、無線通信ロジックにつき説明する。キースイッチONの状態にて(S21)、通信可能範囲内であるか否かを判断し(S22)、通信可能範囲外の場合にはリトライする(S23)。通信可能範囲内である場合には、上記電源監視ロジックにて保存したデータがあるか否かを確認し(S24)、保存データがある場合には、サーバ20へ接続する(S25)。サーバの接続が失敗したら通信可能判断ステップ(S22)まで戻る。サーバ20への接続が成功したら、保存されている車両データをサーバへ送信して(S26)、データを全て送信し終わったら通信を完了する(S27)。
このように、電源監視ロジックと無線通信ロジックとを独立して動作する構成とすることにより、データ送信中の電源断などの不慮の状態に対応可能とすることができる。
【0037】
このようにしてサーバ20に送信された車両データは、必要に応じて演算処理され、データベース21に蓄積される。データベース21内に格納されるデータ種類は、図3に示されるように、キースイッチON時に収集されたピリオド間データと、該ピリオド間データのうちのある時点における車両データからなる瞬時データと、所定期間のピリオド間データを累積して得られた長期データとがある。
【0038】
ここで、前記データベース21に蓄積される車両データのデータ種類を示す。データ種類としては、一つのピリオド間の車両データであるピリオド間データと、前記累積算出部202により、前記ピリオド間データを累積した長期データと、前記ピリオド間データのうち、ある時点における車両データからなる瞬時データ等がある。瞬時データは、前記データ解析部203にて、所定条件に該当する一時点のデータを抽出することなどにより得られる。例えば、あるピリオド内にて基準速度を超えた時の車両速度などである。
さらに、図7に、データベース21に格納された長期データの具体例を示す。同図は車両データ項目表であり、フォークリフト1を識別する機番と、これに対応して車両データが蓄積されている。ここに示す車両データは何れも、ピリオド間データを累計して取得した長期データである。同図において、運行時間(h)は1日あたり運行時間の累計、走行距離(km)は1日あたり走行距離の累計、着座率(%)は就業日数における着座時間、稼働率(%)は就業日数における運行時間、積載率(%)は就業日数における積載時間、走行率(%)は就業日数における前後進レバー操作時間、燃費(L/h)は累計運行時間中の燃料消費量、車速(km/h)は累計運行時間中の累計走行距離、車速オーバ(回/h)は累計運行時間中の車速オーバー回数、荷役率(%)は累計運行時間中の空荷液走行時間、アイドル率(%)は累計運行時間中の停止・荷役作業なし時間、着座アイドル率(%)は累計運行時間内の、前後進レバー中立・停止・荷役作業なし状態でエンジン回転数が規定以上の回数、空吹かし回数(回/日)は累計運行時間内の、前後進レバー中立・停止・荷役作業なし状態でエンジン回転数が規定以上の回数である。
【0039】
これらのデータの中でも、特に、着座率、稼働率、積載率、走行率、荷役率、アイドル率、着座アイドル率、空吹かし率は、他の車両との比較や複数の車両間での総合評価を行うこにより、稼動計画の効率化、コスト削減、安全対策の提案等が容易に行えるようになるため、これらを算出して蓄積することが好ましい。
このような長期データをデータベース化して出力することにより、フォークリフトの稼動状況、稼動履歴を瞬時に把握することができ、フォークリフトの最適な運転計画の立案、修正、或いはメンテナンス時期の把握、或いは安全対策が可能となる。
【0040】
図8に、ピリオドの設定例を示す。上記したように、車両データの一つの単位となるピリオドは、キースイッチON直後からOFF直前までの間をいう。
本実施例では、このピリオドとして、作業種類若しくは作業エリアを適用する作業種類毎に設定してもよいし、作業エリア毎に設定してもよい。
一般に、複数台のフォークリフトを使用する場合、フォークリフト毎に作業内容や作業エリアがある程度決まっている。また、ある一定期間は作業内容が決まっていることが多い。例えば、図8に示すように、フォークリフト1Aは、納入車55から荷積、荷降ろしを行い受渡し場所まで運搬する作業を行い、フォークリフト1Bは、受渡し場所から保管場所までの入庫或いは出庫作業を行うというように、フォークリフト毎に作業内容、作業エリアは殆ど決まっている。
【0041】
従って、作業種類若しくは作業エリアをピリオドとすることにより、複数のフォークリフト間における比較が容易に行えるようになり、同一作業種類若しくは同一作業エリアにおける稼動状況のばらつきを検出でき、その稼動状況の問題点を簡単に把握することができるようになる。
【実施例2】
【0042】
図9に、本実施例2に係るシステムの基本構成を示す。尚、実施例2では、上記した実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2は、フォークリフト1に搭載されたコントローラ10と、管理センタ2内に設置されたサーバ20と、該サーバ20に接続されたデータベース21と、サーバ20とインターネット等の通信回線50を介してデータの授受を行うユーザ側通信端末40と、主要構成とする。
このシステムでは、サーバ20のデータベース21に蓄積された車両データを、ユーザ側通信端末40に出力できる構成となっている。さらに、ユーザ側通信端末40では、データベース21の車両データを必要に応じて選択的に受信して画面表示等の出力ができるようになっている。
【0043】
ユーザ側通信端末40は、サーバ20から提示されたデータ項目から、予め必要とするデータ項目を選択し、選択したデータ項目に対する車両データについて通信回線を介してサーバ20に要求する。この要求に対して、サーバ20では、該当するデータ項目をデータベース21から抽出して、該抽出した車両データをユーザ側通信端末40に送信する。ユーザ側通信端末40では、その車両データを受信して、ディスプレイに画面表示するなどして出力する。このとき、受信したデータ項目のうち、表示するデータ項目はさらに選択可能とすることが好ましい。
図10(a)に、データベース21に蓄積された車両データを示し、(b)に、ユーザ側通信端末40に出力される車両データを示す。これらの図に示されるように、データベース21に蓄積された車両データから、収集するデータをユーザが自由に選択可能とすることにより、利用者毎に必要なデータのみが出力されることとなり閲覧し易く稼動状況を把握しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本実施例は、障害物が多く存在する作業環境であっても無線通信により必要な車両データを確実に収集でき、さらに複数の産業車両間における稼動状態の比較が容易に行え、効率的な稼動を図ることが可能であるため、フォークリフトやリーチスタッカー等の荷役運搬用産業車両全般に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施例1に係るシステムの基本構成図である。
【図2】図1のシステムにおける内部構成を示すブロック図である。
【図3】通信タイミングとデータ種類を説明する図である。
【図4】キースイッチOFF時における処理動作のフローチャートである。
【図5】電源監視部の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】無線通信部の処理動作を示すフローチャートである。
【図7】車両データ項目の例を示す表である。
【図8】ピリオドに作業種類/作業エリアを対応させた場合の説明図である。
【図9】本実施例2に係るシステムの基本構成図である。
【図10】車両データ項目の表を示し、(a)は変更前の表、(b)は変更後の表である。
【図11】本実施例のシステムが適用されるフォークリフトを示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 産業車両
2 管理センタ
10 車載コントローラ
18 走行・荷役動作検出器
19 電源キースイッチ
20 サーバ
21 データベース
31 無線通信装置
40 ユーザ側通信端末
50、51 通信回線
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両における走行動作及び荷役動作などの作業動作に関する車両データを通信回線を利用してサーバに収集し、複数の産業車両を統合的に管理する産業車両の稼動管理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の運搬荷役用産業車両は、工場構内や倉庫等の様々な作業現場で使用されている。作業現場によっては複数の産業車両を導入している場合も多く、作業効率を向上させるために車両の効率的な稼動が求められている。
さらに近年は、多数のフォークリフトを所有するレンタル業者が車両使用者に一定の契約条件で以って産業車両を貸与レンタルするシステムも存在する。
そこで、車両の稼動状況を的確に把握してこれを管理することが求められており、これにより車両をより効率的に稼動させるための稼動計画の立案、修正、或いはメンテナンス時期、頻度の把握などを適切に行うことが可能となり、延いては作業の効率化、コスト削減、安全性向上が図れるようになる。
【0003】
産業車両の稼動管理システムは以下に示すように種々提案されている。
特許文献1(特開2002−187698号公報)には、作業車両内にてその動作履歴を管理するようにした装置について開示されている。これは、作業車両に搭載した管理装置にて、特定の動作履歴を時刻に関連付けて記憶させ、必要に応じて特定期間の動作量を演算して出力できるようにした構成となっている。
また、特許文献2(特開2005−139000号公報)には、産業車両から送られてくる車両状態データに基づいて、単位時間毎の車両の状態を判定し、時系列的に表示するようにしたシステムが開示されている。これは、車速センサ及び荷重センサに出力に基づいて所定時間間隔で車両状態を検出し、該検出したデータをサーバ側に通信インタフェースを介して送信し、該サーバにて積載走行、空荷走行、積載停止、空荷停止等の状態を判定するようになっている。
【0004】
さらに特許文献3(特開2002−123848号公報)には、作業車両の車両動作及び作業動作を管理センタの指令に基づき制御する管理システムが開示されている。これは、車両に対応して設定された車両動作内容及び作業動作内容をメモリカードに書き込む地上制御装置と、このメモリカードを読み込み、車両動作及び作業動作の検出内容と、メモリカードの設定内容とを比較してその差異を補正する指令を与える車載制御装置とから構成され、これにより運転員が異なっても適性な車両動作及び作業動作を行うことを可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−187698号公報
【特許文献2】特開2005−139000号公報
【特許文献3】特開2002−123848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、産業車両を管理する際には、車両の稼動状況を検出してこれを車両自体若しくはサーバ等の外部装置に蓄積し、必要に応じてこれを分析して出力する構成を採用していることが多い。
特許文献1は、車両自体に管理装置が搭載された構成となっており、その車両単体の稼動状況は把握できるものの、複数の産業車両の稼動状況を対比させることはできず、複数の車両を総合的に管理することはできない。
【0007】
特許文献2は、車両から通信インタフェースを介して送られてくる車両状態データに基づいて、サーバにて単位時間毎の車両の状態を判定するようになっており、通信インタフェースとしては無線通信若しくはケーブルを用いた有線通信を利用したものを挙げている。しかし、フォークリフト等の産業車両は、障害物が多く存在する作業環境で走行するため、有線回線では回線を引くことが困難で、また無線回線を用いた場合も障害物により電波が届かない場所が多く、定期的に通信を行うことは難しい。従って、単位時間毎の車両状態データをサーバ側で正確に取得することは困難である。
【0008】
そこで、特許文献3のようにメモリカードを利用することにより、情報の授受を円滑に行うことは可能となるが、これは物の移動が伴うため手間がかかり、また煩雑な作業環境内で使用する際には紛失や破損といった懸念がある。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、障害物が多く存在する作業環境であっても無線通信により必要な車両データを確実に収集でき、さらに複数の産業車両間における稼動状態の比較が容易に行え、効率的な稼動を図ることを可能とした産業車両の稼動管理方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラと、通信回線により前記コントローラから車両データを受信するサーバとからなり、該サーバにて受信した車両データに基づいて車両の稼動状況を管理する産業車両の稼動管理方法であって、
前記コントローラは、前記産業車両の電源起動/停止を指示するキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出し、キースイッチON状態の時に、前記産業車両が具備する検出手段により検出した走行動作状態及び荷役動作状態を車両データとして記録し、キースイッチOFF状態の時に、前記サーバとの通信可能範囲内であるか否かを判断し、通信可能範囲内である場合にはキースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の車両データをファイル化して保存した後、保存データを無線通信により前記サーバに送信し、
前記サーバでは、複数の産業車両より受信した前記車両データを蓄積し、該蓄積した車両データを、必要に応じて演算処理して、出力するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明では、キースイッチOFFの時に無線通信により車両データを送信するようにしており、即ち車両の停止時に通信を行う構成となっている。車両が停止する場所の無線通信環境を良好にしておくことで、データの送信が円滑に行えるため、障害物が多い作業環境で動作する産業車両においても、車両データを確実にサーバに送信することが可能となる。また、キースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の車両データを一つの単位として取り扱うようにしたため、複数の車両間にて稼動状況の比較が容易に行えるようになる。
【0011】
さらに、前記コントローラでは、前記キースイッチのOFF信号を検出した時に前記ピリオド間の車両データをファイル化して保存した後に電源停止する電源監視処理と、前記通信可能範囲内であるか否かの判断を行い、通信可能範囲内である場合に前記サーバに保存データを送信する通信監視処理と、を夫々独立して行うようにし、
前記通信監視処理にて、通信可能範囲内であると判断された時に、保存データの有無を判断し、該保存データが存在する場合にのみ前記サーバとの通信回線の接続を確立することを特徴とする。
このように、電源監視処理と通信監視処理を独立して行う構成としたため、サーバへのデータ送信中の電源断などの不慮の状態にも対応可能である。
また、前記サーバでは、前記車両データのうち、前記ピリオド内のある時点におけるデータを示す瞬時データと、所定期間内に存在するピリオドの車両データを累積した長期データとに区分して蓄積することが好ましい。
【0012】
さらに、前記サーバにて、前記産業車両における同一の作業種類若しくは作業エリアをグループ化基準とし、前記ピリオドを前記グループ化基準により区分して蓄積し、同じグループに属するピリオドの車両データを複数の産業車両間にて対比させて出力するようにしたことを特徴とする。
本発明のごとく、作業種類若しくは作業エリアを一つのピリオドとすることにより、複数のフォークリフト間における比較が容易に行えるようになり、同一作業種類若しくは同一作業エリアにおける稼動状況のばらつきを検出でき、その稼動状況の問題点を簡単に把握することができるようになる。
さらにまた、前記サーバと通信回線を介して接続されるユーザ側通信端末を備え、
前記ユーザ側通信端末では、前記サーバから提示される複数の車両データ項目から所望の車両データ項目を選択し、該選択した車両データ項目に対応した車両データを前記サーバに要求し、該当する車両データを前記サーバから受信して画面表示するようにし、
前記ユーザ側通信端末にて画面表示する車両データ項目を変更自在としたことを特徴とする。
本発明では、ユーザが車両データを選択可能とすることにより、ユーザ毎に必要なデータのみが出力されることとなり閲覧し易く稼動状況を把握しやすくなる。
【0013】
また、走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラと、該コントローラから通信回線を介して車両データを受信し、該車両データに基づいて車両の稼動状況を管理するサーバと、からなる産業車両の稼動管理システムであって、
前記コントローラは、前記産業車両が具備する検出手段にて検出した走行動作状態及び荷役動作状態に関する検出信号を入力する走行・荷役動作状態入力部と、前記産業車両の電源起動/停止を指示するキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出する電源監視部と、キースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の前記検出信号に対応する車両データを記録する記憶部と、前記サーバに対して無線により通信可能範囲内に存在するか否かを判断する無線通信部と、を備え、
前記電源監視部にてキースイッチOFF状態を検出した際に、前記記憶部に記録されたピリオド間車両データをファイル化して保存し、前記無線通信部にて通信可能範囲内である場合に前記記録部の保存データを前記サーバに送信するようにし、
前記サーバは、複数の産業車両の前記コントローラから受信した車両データを蓄積するデータベースを備え、必要に応じて前記車両データを出力するようにしたことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記サーバは、前記コントローラから受信した車両データに所定の演算処理を施す制御部を備え、この処理結果を前記データベースに蓄積するようにしたことを特徴とする。
また、前記データベースには、前記車両データのうち、前記ピリオド内のある時点におけるデータである瞬時データと、所定期間内に存在するピリオドの車両データを累積した長期データとに区分して蓄積されることを特徴とする。
さらに、前記電源監視部と前記無線通信部とが独立して作動するように構成されるとともに、
前記電源監視部にはカウンタが設定され、該カウンタにて処理時間若しくは処理回数により制限を設けたことを特徴とする。
さらにまた、前記サーバは、前記産業車両における同一の作業種類若しくは作業エリアをグループ化基準とし、前記ピリオドを前記グループ化基準により区分して前記データベースに蓄積し、同じグループに属するピリオドの車両データを複数の産業車両間にて対比させて出力するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上記載のごとく本発明によれば、障害物が多く存在する作業環境であっても無線通信により必要な車両データを確実に収集でき、さらに複数の産業車両間における稼動状態の比較が容易に行え、効率的な稼動を図ることが可能である。延いては、車両の最適な稼動計画を立案、修正することができ、且つメンテナンス時期、頻度を容易に把握することができ、さらには適切な安全対策を講じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本実施例1に係るシステムの基本構成図、図2は図1のシステムにおける内部構成を示すブロック図、図3は通信タイミングとデータ種類を説明する図、図4はキースイッチOFF時における処理動作のフローチャート、図5は電源監視部の処理動作を示すフローチャート、図6は無線通信部の処理動作を示すフローチャート、図7は車両データ項目の例を示す表、図8はピリオドに作業種類/作業エリアを対応させた場合の説明図、図9は本実施例2に係るシステムの基本構成図、図10は車両データ項目の表である。
【0017】
本実施例では、産業車両としてフォークリフトを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、他にもリーチスタッカー等のように走行動作及び荷役動作を行う産業車両全般に適用可能である。
図11に、本実施例が適用されるフォークリフトの具体的構成例を示す。同図において、11は車体、12は荷物昇降用の昇降マスト、13は爪、14は操縦用ハンドル、15はヘッドガード、16は車輪、17は運転席である。このフォークリフト1においては、エンジンにより車輪16を駆動して走行し、リフトシリンダ(図示略)により昇降マスト12を昇降させるとともにチルトシリンダ(図示略)により昇降マスト12を傾斜させ、爪13に架けた荷物を持ち上げ、運搬するようになっている。
【実施例1】
【0018】
図1を参照して、本実施例1に係るシステムの基本構成につき説明する。
本システムは、フォークリフト1に搭載された車載コントローラ10と、管理センタ2内に設置され、通信回線を利用して前記コントローラ10とデータの授受を行うサーバ20とから構成される。
フォークリフト1が複数存在する場合には、夫々にコントローラ10が搭載される。管理センタ2は、例えば、作業現場を管理する会社により運営される形態、或いは本管理システムを製造したメーカにより運営される形態、或いは管理システムを保守・管理サービスを提供する会社により運営される形態等が挙げられる。
【0019】
このシステムでは、フォークリフト1の走行動作状態、若しくは荷役動作状態を検出し、これらの検出信号に対応した車両データを車載コントローラ10に記録し、所定のタイミングで無線通信を利用して該車両データをサーバ20に送信する。この所定のタイミングとは、フォークリフト1のキースイッチがOFF状態の時とする。即ち、図3に示すように、キースイッチをONに切り替えた直後からOFFに切り替える直前までの間を一つのピリオドとすると、一のピリオド間の車両データを記録し、これをファイル化してピリオド間データとして保存し、キーOFF時にこのピリオド間データをサーバ20に送信するようにしている。
【0020】
一方、サーバ20では、コントローラ10から受信したピリオド間データを蓄積し、必要に応じてデータ解析、累計、比較等の所定の演算処理を行った後、前記ピリオド間データや、演算処理により得られた処理結果をデータベース21に蓄積、或いは更新する。そして、必要に応じてデータベース21からピリオド間データを始めとする車両データを出力する。この車両データは、フォークリフト1の運転計画の立案、修正、或いはメンテナンス時期や頻度の把握、或いは安全対策に有効に利用することができる。
【0021】
図2に本実施例の具体的な構成を示す。同図には、フォークリフト1が具備する各種機器と、該フォークリフト1に搭載された車載コントローラ10の内部構成を示すとともに、管理センタ2に設置されるサーバ20の内部構成を示す。
フォークリフト1は、走行・荷役動作検出器18と電源キースイッチ19と車載コントローラ10と、を具備する。
【0022】
前記走行・荷役動作検出器18は、フォークリフト1の走行動作状態と荷役動作状態を検出する装置である。この装置は、フォークリフトの走行速度、エンジン運転状態(出力、回転数、冷却水温度、潤滑油温度等)、運転時間及び停止時間等の走行動作、或いはフォークリフト1に搭載されているリフトシリンダ、チルトシリンダ等の作業機器の運転状態及び稼動時間、即ち作動油圧、作動油温度、作業機器毎の稼動時間等の作業動作を検出する。具体的には、車速センサ、荷重センサ、荷役操作検出センサ、等が挙げられる。
前記電源キースイッチ19は、フォークリフト1のエンジンまたはモータの起動/停止を指示する装置である。
【0023】
前記車載コントローラ10は、走行・荷役動作入力部101と、記憶部102と、電源監視部103と、制御部104と、無線通信部105と、を備えている。
前記走行・荷役動作入力部101は、走行・荷役動作検出器18からの検出信号を、車両データとしてコントローラ内に入力する機能を有する。
前記記憶部102は、走行・荷役動作入力部101から入力された車両データを定期的に記録(ログ)し、格納する。ログ期間は、電源キースイッチ10のON直後からOFF直前までのピリオド内である。
前記電源監視部103は、電源キースイッチ19のON/OFF状態を検出する。この電源監視部102では、キースイッチOFF信号を検出したら、前記記憶部102に対して、ログを完了させ、ログしたデータをファイル化して保存するように指示を与える。
このファイル化された車両データは、次回のOFF時にサーバ20に送信するまで記憶部102に一時的に記憶しておくが、通信不可だった場合にはさらに次のOFF時まで記憶させておく。また、サーバ20に送信後の車両データは、その都度消去してもよいし、随時上書き保存してもよい。
【0024】
前記無線通信部105は、フォークリフト1(コントローラ10)が、無線回線を利用した通信可能範囲内に存在するか否かを判断し、通信可能範囲に存在する場合にはサーバ20との接続を確立し、無線回線を利用してサーバ20とデータの授受を行うための通信インタフェースである。
本実施例では、車載コントローラ10は無線LANシステムを利用してサーバに接続する構成となっている。即ち、インターネット等の通信回線に接続された無線中継機器31が作業現場若しくはその周囲に設置されており、該中継機器31を中心とした通信可能範囲内にフォークリフト1が存在するか否かを無線通信部105により判断する。
【0025】
前記制御部104は、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM、及びこれら各機器がそれぞれ接続されるバスラインから構成されている。
尚、前記ROMに予め書き込まれた制御プログラムにより実行される機能として、上記した走行・荷役動作入力部101と、記憶部102と、電源監視部103と、無線通信部105を示してある。
【0026】
前記管理センタ2には、サーバ20とこれに接続されたデータベース21とが設けられている。サーバ20は、データ更新部201と、累計算出部202と、データ解析部203と、出力部204と、入力部205と、制御部206と、外部通信部207と、を備えている。
前記入力部205は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力操作を行うもので、前記出力部204は、要求した車両データを出力するものであり、例えばデータを画面表示するディスプレイや紙面上に印刷するプリンタ等である。
【0027】
前記制御部206は、上記したコントローラ10の制御部105と同様に、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM、及びこれら各機器がそれぞれ接続されるバスラインから構成されている。
尚、前記ROMに予め書き込まれた制御プログラムにより実行される機能として、データ更新部201と、累計算出部202と、データ解析部203を示してある。
前記データ更新部201は、コントローラ10より新たに車両データを受信した場合に、該当する既受信データを随時更新する。
前記累計算出部202は、データベース21に蓄積された車両データを、所定の期間だけ累積して長期データを取得する。
前記データ解析部203は、必要に応じて所定の演算処理を行い、所望の車両データを得るものである。
【0028】
前記データベース21には、コントローラ10から受信した車両データが格納されている。該データベース21に格納される車両データとしては、ピリオド間データ(一つのピリオド間の保存ファイル)の他に、前記累計算出部202により得られた長期データ、或いは、ある時点における車両データからなる瞬時データなどがある。この車両データの種類については後述する。
【0029】
また、データベース21には、フォークリフト1の許容稼動時間及び車両走行速度の制限値を含む走行動作の許容値(範囲)あるいは基準値(範囲)、並びに荷役作業における荷物重量の制限値を含む荷役動作の許容値(範囲)あるいは基準値(範囲)が予め設定されている。
例えば、車速の許容値が設定されている場合、データベース21に記憶されている車両データから車速データを抽出し、前記データ解析部203にて、この車速データと前記車速の許容値とを比較し、該車速データが許容値を超える場合には危険運転と判断する。この危険運転の回数をピリオド毎にカウントし、車速オーバー回数として出力するようにしてもよい。
前記外部通信部207は、インターネット等の通信回線51に接続して、コントローラ10とデータの授受を行うための通信インタフェースである。
【0030】
次に、上記した構成を有するシステムにおける処理動作を説明する。
フォークリフト1の運転開始時に、電源キースイッチ19をONに入れると、コントローラ10の電源監視部103にてON信号が検出され、車両データの記録が開始される。走行・荷役動作検出器18からの検出信号に基づいてコントローラ10の記憶部102に車両データが記録、保存される。これは、一定時間毎に車両データを記録するように設定されていることが好ましい。記録する車両データは、予めサーバ20より指定されたデータ項目に該当するデータとする。
【0031】
作業の終了、或いは一旦休止などによりキースイッチがOFFに切り替えられると、電源監視部103にてOFF信号が検出され、それまで記録してきた車両データをファイル化して記憶部102に保存する。さらに無線通信部104により、通信可能範囲内か否かを判断し、通信可能範囲内である場合にはこの保存ファイルをサーバ20に送信する。通信可能範囲内ではない場合は、サーバ20との接続を確立せず、保存データは記憶部102に蓄積しておく。この保存データは、次回のOFF時まで蓄積される。
ここで、キースイッチOFF時におけるコントローラ10の処理動作を図4に示す。
コントローラ10は、キースイッチOFFの信号を検出したら(S1)、通信可能範囲内であるか否かを判断する(S2)。通信可能範囲外であると判断された場合には、電源OFFまでの設定時間が経過したか否か?または保存データが無いか否か?を判定し(S3)、電源OFFまでの設定時間が経過していない場合、或いは保存データがある場合には、所定時間後に再度リトライする(S4)。尚、電源OFFまでの設定時間は、予めコントローラ10内の環境設定ファイルに設定しておく。
電源OFFまでの設定時間が経過した場合、或いは保存データがない場合には、電源をOFFする(S5)。
【0032】
通信可能範囲内であるか否かを判断した際に(S2)、通信可能範囲内である場合には、コントローラ10の記憶部102に保存データがあるか否かを判断する(S6)。保存データが無い場合には電源OFFする(S7)。保存データがある場合には、サーバへ接続し(S8)、接続が失敗したら、再び通信可能範囲確認ステップ(S2)まで戻る。サーバへの接続が確立したら、車両データをサーバ20に送信する(S9)。データを全て送信したら、保存データ確認ステップ(S6)まで戻り、保存データが残っていないことを確認した後電源OFFする(S7)。通信状態が悪く、データ送信が完了しないまま通信が途絶えた場合には、通信可能範囲確認ステップ(S2)まで戻り、再度上記した処理フローを行う。尚、本フローにおいて、通信可能確認ステップ(S2)と、保存データ確認ステップ(S6)の順序は逆であってもよい。
【0033】
このように、キースイッチOFFの信号を検出したら、電源をOFFする前に、車両データをサーバ20に送信する。コントローラ10の記憶部102に保存した車両データを全て送信完了したら電源をOFFする。
上記した処理動作を行うことによって、通信状態が悪い場合であっても、記憶部102に保存されている車両データを確実にサーバ20へ送信することが可能である。
【0034】
また、上記処理フローを実行する構成として、電源監視ロジックと、無線通信ロジックは夫々独立して動作するように構成することが好ましい。ここで、電源監視ロジックは、キースイッチのON/OFFの信号をリアルタイムで監視し、OFF時に車両データの記録を記憶部102にファイル化して保存する処理である。また、無線通信ロジックは、通信の可否を監視し、通信可能で且つ車両データが保存されていればサーバに接続してデータを送信する処理である。
図5に電源監視ロジックのフローチャートを示し、図6に無線通信ロジックのフローチャートを示す。
【0035】
まず、図5を参照して、電源監視ロジックにつき説明する。予めコントローラ10の環境設定ファイルに、カウンタ初期値を設定しておく。ON/OFF検出部103のカウンタに、この環境設定ファイルからカウンタ初期値を代入し(S11)、ここからカウンタを減算する(S12)。キースイッチONの信号を検出したら(S13)、カウンタを再度初期値に設定しなおす。キースイッチOFFの信号を検出したら、カウンタが0であるか否かを判定し(S14)、0以上である場合には、車両データの記録(ログ)が完了しているか否かを確認する(S15)。ここで記録が完了していない場合には、カウンタ減算ステップ(S12)まで戻る。ログが完了している場合には、車両データの保存処理を行い(S16)、保存データがあるか否かを判定する(S17)。保存データがある場合には、カウンタ減算ステップ(S12)まで戻る。カウンタ減算ステップ(S12)を数回繰り返すと、カウンタが0になる。カウンタが0になったら所定時間が経過したものとみなし、電源をOFFする(S18)。また、保存データ確認ステップ(S17)にて、保存データが無い場合にも電源をOFFする(S18)。
【0036】
次に、図6を参照して、無線通信ロジックにつき説明する。キースイッチONの状態にて(S21)、通信可能範囲内であるか否かを判断し(S22)、通信可能範囲外の場合にはリトライする(S23)。通信可能範囲内である場合には、上記電源監視ロジックにて保存したデータがあるか否かを確認し(S24)、保存データがある場合には、サーバ20へ接続する(S25)。サーバの接続が失敗したら通信可能判断ステップ(S22)まで戻る。サーバ20への接続が成功したら、保存されている車両データをサーバへ送信して(S26)、データを全て送信し終わったら通信を完了する(S27)。
このように、電源監視ロジックと無線通信ロジックとを独立して動作する構成とすることにより、データ送信中の電源断などの不慮の状態に対応可能とすることができる。
【0037】
このようにしてサーバ20に送信された車両データは、必要に応じて演算処理され、データベース21に蓄積される。データベース21内に格納されるデータ種類は、図3に示されるように、キースイッチON時に収集されたピリオド間データと、該ピリオド間データのうちのある時点における車両データからなる瞬時データと、所定期間のピリオド間データを累積して得られた長期データとがある。
【0038】
ここで、前記データベース21に蓄積される車両データのデータ種類を示す。データ種類としては、一つのピリオド間の車両データであるピリオド間データと、前記累積算出部202により、前記ピリオド間データを累積した長期データと、前記ピリオド間データのうち、ある時点における車両データからなる瞬時データ等がある。瞬時データは、前記データ解析部203にて、所定条件に該当する一時点のデータを抽出することなどにより得られる。例えば、あるピリオド内にて基準速度を超えた時の車両速度などである。
さらに、図7に、データベース21に格納された長期データの具体例を示す。同図は車両データ項目表であり、フォークリフト1を識別する機番と、これに対応して車両データが蓄積されている。ここに示す車両データは何れも、ピリオド間データを累計して取得した長期データである。同図において、運行時間(h)は1日あたり運行時間の累計、走行距離(km)は1日あたり走行距離の累計、着座率(%)は就業日数における着座時間、稼働率(%)は就業日数における運行時間、積載率(%)は就業日数における積載時間、走行率(%)は就業日数における前後進レバー操作時間、燃費(L/h)は累計運行時間中の燃料消費量、車速(km/h)は累計運行時間中の累計走行距離、車速オーバ(回/h)は累計運行時間中の車速オーバー回数、荷役率(%)は累計運行時間中の空荷液走行時間、アイドル率(%)は累計運行時間中の停止・荷役作業なし時間、着座アイドル率(%)は累計運行時間内の、前後進レバー中立・停止・荷役作業なし状態でエンジン回転数が規定以上の回数、空吹かし回数(回/日)は累計運行時間内の、前後進レバー中立・停止・荷役作業なし状態でエンジン回転数が規定以上の回数である。
【0039】
これらのデータの中でも、特に、着座率、稼働率、積載率、走行率、荷役率、アイドル率、着座アイドル率、空吹かし率は、他の車両との比較や複数の車両間での総合評価を行うこにより、稼動計画の効率化、コスト削減、安全対策の提案等が容易に行えるようになるため、これらを算出して蓄積することが好ましい。
このような長期データをデータベース化して出力することにより、フォークリフトの稼動状況、稼動履歴を瞬時に把握することができ、フォークリフトの最適な運転計画の立案、修正、或いはメンテナンス時期の把握、或いは安全対策が可能となる。
【0040】
図8に、ピリオドの設定例を示す。上記したように、車両データの一つの単位となるピリオドは、キースイッチON直後からOFF直前までの間をいう。
本実施例では、このピリオドとして、作業種類若しくは作業エリアを適用する作業種類毎に設定してもよいし、作業エリア毎に設定してもよい。
一般に、複数台のフォークリフトを使用する場合、フォークリフト毎に作業内容や作業エリアがある程度決まっている。また、ある一定期間は作業内容が決まっていることが多い。例えば、図8に示すように、フォークリフト1Aは、納入車55から荷積、荷降ろしを行い受渡し場所まで運搬する作業を行い、フォークリフト1Bは、受渡し場所から保管場所までの入庫或いは出庫作業を行うというように、フォークリフト毎に作業内容、作業エリアは殆ど決まっている。
【0041】
従って、作業種類若しくは作業エリアをピリオドとすることにより、複数のフォークリフト間における比較が容易に行えるようになり、同一作業種類若しくは同一作業エリアにおける稼動状況のばらつきを検出でき、その稼動状況の問題点を簡単に把握することができるようになる。
【実施例2】
【0042】
図9に、本実施例2に係るシステムの基本構成を示す。尚、実施例2では、上記した実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2は、フォークリフト1に搭載されたコントローラ10と、管理センタ2内に設置されたサーバ20と、該サーバ20に接続されたデータベース21と、サーバ20とインターネット等の通信回線50を介してデータの授受を行うユーザ側通信端末40と、主要構成とする。
このシステムでは、サーバ20のデータベース21に蓄積された車両データを、ユーザ側通信端末40に出力できる構成となっている。さらに、ユーザ側通信端末40では、データベース21の車両データを必要に応じて選択的に受信して画面表示等の出力ができるようになっている。
【0043】
ユーザ側通信端末40は、サーバ20から提示されたデータ項目から、予め必要とするデータ項目を選択し、選択したデータ項目に対する車両データについて通信回線を介してサーバ20に要求する。この要求に対して、サーバ20では、該当するデータ項目をデータベース21から抽出して、該抽出した車両データをユーザ側通信端末40に送信する。ユーザ側通信端末40では、その車両データを受信して、ディスプレイに画面表示するなどして出力する。このとき、受信したデータ項目のうち、表示するデータ項目はさらに選択可能とすることが好ましい。
図10(a)に、データベース21に蓄積された車両データを示し、(b)に、ユーザ側通信端末40に出力される車両データを示す。これらの図に示されるように、データベース21に蓄積された車両データから、収集するデータをユーザが自由に選択可能とすることにより、利用者毎に必要なデータのみが出力されることとなり閲覧し易く稼動状況を把握しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本実施例は、障害物が多く存在する作業環境であっても無線通信により必要な車両データを確実に収集でき、さらに複数の産業車両間における稼動状態の比較が容易に行え、効率的な稼動を図ることが可能であるため、フォークリフトやリーチスタッカー等の荷役運搬用産業車両全般に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施例1に係るシステムの基本構成図である。
【図2】図1のシステムにおける内部構成を示すブロック図である。
【図3】通信タイミングとデータ種類を説明する図である。
【図4】キースイッチOFF時における処理動作のフローチャートである。
【図5】電源監視部の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】無線通信部の処理動作を示すフローチャートである。
【図7】車両データ項目の例を示す表である。
【図8】ピリオドに作業種類/作業エリアを対応させた場合の説明図である。
【図9】本実施例2に係るシステムの基本構成図である。
【図10】車両データ項目の表を示し、(a)は変更前の表、(b)は変更後の表である。
【図11】本実施例のシステムが適用されるフォークリフトを示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 産業車両
2 管理センタ
10 車載コントローラ
18 走行・荷役動作検出器
19 電源キースイッチ
20 サーバ
21 データベース
31 無線通信装置
40 ユーザ側通信端末
50、51 通信回線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラと、通信回線により前記コントローラから車両データを受信するサーバとからなり、該サーバにて受信した車両データに基づいて車両の稼動状況を管理する産業車両の稼動管理方法であって、
前記コントローラは、前記産業車両の電源起動/停止を指示するキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出し、キースイッチON状態の時に、前記産業車両が具備する検出手段により検出した走行動作状態及び荷役動作状態を車両データとして記録し、キースイッチOFF状態の時に、前記サーバとの通信可能範囲内であるか否かを判断し、通信可能範囲内である場合にはキースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の車両データをファイル化して保存した後、保存データを無線通信により前記サーバに送信し、
前記サーバでは、複数の産業車両より受信した前記車両データを蓄積し、該蓄積した車両データを、必要に応じて演算処理して、出力するようにしたことを特徴とする産業車両の稼動管理方法。
【請求項2】
前記コントローラでは、前記キースイッチのOFF信号を検出した時に前記ピリオド間の車両データをファイル化して保存した後、電源停止する電源監視処理と、前記通信可能範囲内であるか否かの判断を行い、通信可能範囲内である場合に前記サーバに保存データを送信する通信監視処理と、を夫々独立して行うようにし、
前記通信監視処理にて、通信可能範囲内であると判断された時に、前記保存データの有無を判断し、該保存データが存在する場合にのみ前記サーバとの通信回線の接続を確立することを特徴とする請求項1記載の産業車両の稼動管理方法。
【請求項3】
前記サーバでは、前記車両データのうち、前記ピリオド内のある時点におけるデータである瞬時データと、所定期間内に存在するピリオドの車両データを累積した長期データとに区分して蓄積するようにしたことを特徴とする請求項1記載の産業車両の稼動管理方法。
【請求項4】
前記サーバにて、前記産業車両における同一の作業種類若しくは作業エリアをグループ化基準とし、前記ピリオドを前記グループ化基準により区分して蓄積し、同じグループに属するピリオドの車両データを複数の産業車両間にて対比させて出力するようにしたことを特徴とする請求項1記載の産業車両の稼動管理方法。
【請求項5】
前記サーバと通信回線を介して接続されるユーザ側通信端末を備え、
前記ユーザ側通信端末では、前記サーバから提示される複数の車両データ項目から所望の車両データ項目を選択し、該選択した車両データ項目に対応した車両データを前記サーバに要求し、該当する車両データを前記サーバから受信して画面表示するようにし、
前記ユーザ側通信端末にて画面表示する車両データ項目を変更自在としたことを特徴とする請求項1記載の産業車両の稼動管理方法。
【請求項6】
走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラと、該コントローラから通信回線を介して車両データを受信し、該車両データに基づいて車両の稼動状況を管理するサーバと、からなる産業車両の稼動管理システムであって、
前記コントローラは、前記産業車両が具備する検出手段にて検出した走行動作状態及び荷役動作状態に関する検出信号を入力する走行・荷役動作状態入力部と、前記産業車両の電源起動/停止を指示するキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出する電源監視部と、キースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の前記検出信号に対応する車両データを記録する記憶部と、前記サーバに対して無線により通信可能範囲内に存在するか否かを判断する無線通信部と、を備え、
前記電源監視部にてキースイッチOFF状態を検出した際に、前記記憶部に記録されたピリオド間車両データをファイル化して保存し、前記無線通信部にて通信可能範囲内である場合に前記記録部の保存データを前記サーバに送信するようにし、
前記サーバは、複数の産業車両の前記コントローラから受信した車両データを蓄積するデータベースを備え、必要に応じて前記車両データを出力するようにしたことを特徴とする産業車両の稼動管理システム。
【請求項7】
前記サーバは、前記コントローラから受信した車両データに所定の演算処理を施す制御部を備え、この処理結果を前記データベースに蓄積するようにしたことを特徴とする請求項6記載の産業車両の稼動管理システム。
【請求項8】
前記データベースには、前記車両データのうち、前記ピリオド内のある時点におけるデータである瞬時データと、所定期間内に存在するピリオドの車両データを累積した長期データとに区分して蓄積されることを特徴とする請求項6記載の産業車両の稼動管理システム。
【請求項9】
前記電源監視部と前記無線通信部とが独立して作動するように構成されるとともに、
前記電源監視部にはカウンタが設定され、該カウンタにて処理時間若しくは処理回数により制限を設けたことを特徴とする請求項6記載の産業車両の稼動管理システム。
【請求項10】
前記サーバは、前記産業車両における同一の作業種類若しくは作業エリアをグループ化基準とし、前記ピリオドを前記グループ化基準により区分して前記データベースに蓄積し、同じグループに属するピリオドの車両データを複数の産業車両間にて対比させて出力するようにしたことを特徴とする請求項6記載の産業車両の稼動管理システム。
【請求項1】
走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラと、通信回線により前記コントローラから車両データを受信するサーバとからなり、該サーバにて受信した車両データに基づいて車両の稼動状況を管理する産業車両の稼動管理方法であって、
前記コントローラは、前記産業車両の電源起動/停止を指示するキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出し、キースイッチON状態の時に、前記産業車両が具備する検出手段により検出した走行動作状態及び荷役動作状態を車両データとして記録し、キースイッチOFF状態の時に、前記サーバとの通信可能範囲内であるか否かを判断し、通信可能範囲内である場合にはキースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の車両データをファイル化して保存した後、保存データを無線通信により前記サーバに送信し、
前記サーバでは、複数の産業車両より受信した前記車両データを蓄積し、該蓄積した車両データを、必要に応じて演算処理して、出力するようにしたことを特徴とする産業車両の稼動管理方法。
【請求項2】
前記コントローラでは、前記キースイッチのOFF信号を検出した時に前記ピリオド間の車両データをファイル化して保存した後、電源停止する電源監視処理と、前記通信可能範囲内であるか否かの判断を行い、通信可能範囲内である場合に前記サーバに保存データを送信する通信監視処理と、を夫々独立して行うようにし、
前記通信監視処理にて、通信可能範囲内であると判断された時に、前記保存データの有無を判断し、該保存データが存在する場合にのみ前記サーバとの通信回線の接続を確立することを特徴とする請求項1記載の産業車両の稼動管理方法。
【請求項3】
前記サーバでは、前記車両データのうち、前記ピリオド内のある時点におけるデータである瞬時データと、所定期間内に存在するピリオドの車両データを累積した長期データとに区分して蓄積するようにしたことを特徴とする請求項1記載の産業車両の稼動管理方法。
【請求項4】
前記サーバにて、前記産業車両における同一の作業種類若しくは作業エリアをグループ化基準とし、前記ピリオドを前記グループ化基準により区分して蓄積し、同じグループに属するピリオドの車両データを複数の産業車両間にて対比させて出力するようにしたことを特徴とする請求項1記載の産業車両の稼動管理方法。
【請求項5】
前記サーバと通信回線を介して接続されるユーザ側通信端末を備え、
前記ユーザ側通信端末では、前記サーバから提示される複数の車両データ項目から所望の車両データ項目を選択し、該選択した車両データ項目に対応した車両データを前記サーバに要求し、該当する車両データを前記サーバから受信して画面表示するようにし、
前記ユーザ側通信端末にて画面表示する車両データ項目を変更自在としたことを特徴とする請求項1記載の産業車両の稼動管理方法。
【請求項6】
走行動作及び荷役動作を行う産業車両に搭載されたコントローラと、該コントローラから通信回線を介して車両データを受信し、該車両データに基づいて車両の稼動状況を管理するサーバと、からなる産業車両の稼動管理システムであって、
前記コントローラは、前記産業車両が具備する検出手段にて検出した走行動作状態及び荷役動作状態に関する検出信号を入力する走行・荷役動作状態入力部と、前記産業車両の電源起動/停止を指示するキースイッチのON信号若しくはOFF信号を検出する電源監視部と、キースイッチON直後からOFF直前までのピリオド間の前記検出信号に対応する車両データを記録する記憶部と、前記サーバに対して無線により通信可能範囲内に存在するか否かを判断する無線通信部と、を備え、
前記電源監視部にてキースイッチOFF状態を検出した際に、前記記憶部に記録されたピリオド間車両データをファイル化して保存し、前記無線通信部にて通信可能範囲内である場合に前記記録部の保存データを前記サーバに送信するようにし、
前記サーバは、複数の産業車両の前記コントローラから受信した車両データを蓄積するデータベースを備え、必要に応じて前記車両データを出力するようにしたことを特徴とする産業車両の稼動管理システム。
【請求項7】
前記サーバは、前記コントローラから受信した車両データに所定の演算処理を施す制御部を備え、この処理結果を前記データベースに蓄積するようにしたことを特徴とする請求項6記載の産業車両の稼動管理システム。
【請求項8】
前記データベースには、前記車両データのうち、前記ピリオド内のある時点におけるデータである瞬時データと、所定期間内に存在するピリオドの車両データを累積した長期データとに区分して蓄積されることを特徴とする請求項6記載の産業車両の稼動管理システム。
【請求項9】
前記電源監視部と前記無線通信部とが独立して作動するように構成されるとともに、
前記電源監視部にはカウンタが設定され、該カウンタにて処理時間若しくは処理回数により制限を設けたことを特徴とする請求項6記載の産業車両の稼動管理システム。
【請求項10】
前記サーバは、前記産業車両における同一の作業種類若しくは作業エリアをグループ化基準とし、前記ピリオドを前記グループ化基準により区分して前記データベースに蓄積し、同じグループに属するピリオドの車両データを複数の産業車両間にて対比させて出力するようにしたことを特徴とする請求項6記載の産業車両の稼動管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−201554(P2008−201554A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41490(P2007−41490)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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