説明

用紙供給装置及びこれを搭載した画像形成装置

【課題】構成の簡素化及び製造コストの低廉化を図る用紙供給装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供する。
【解決手段】厚み方向に積層された枚葉の用紙を載置する底面(30)、及び用紙を囲繞する周壁(36)をそれぞれ有する給紙部(5)と、用紙の積載量に伴って移動する可撓性の検知端子(70)と、周壁の内周面に配設されており、検知端子に接触されることによってその用紙の積載量が識別可能なパターン(52)を有する基板(50)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等に代表される画像形成装置に用いられる用紙供給装置及びこれを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の用紙供給装置では用紙の積載量の識別が行われる。詳しくは、着脱可能な用紙カセットには上下方向に向けて移動する昇降板が設けられ、この昇降板に用紙が載置されている。また、カセットの側面部には、4個の位置センサが昇降板の移動方向に沿って配設されており、昇降板の上昇に伴ってセンサの光束を遮ることにより用紙の残量が識別可能になる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−351484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、4個の位置センサ等を用いていることから、部品点数が多く、その構成が複雑になるし、また、製造コストの低廉化が図れないとの問題がある。
さらに、上述の如く4個の位置センサ等を用いる構成によれば、用紙の残量の安定した識別が図れないとの懸念も生じる。例えばカセットの着脱による衝撃等によって光束の方向が変わり得るからである。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、構成の簡素化及び製造コストの低廉化を図る用紙供給装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1の発明は、厚み方向に積層された枚葉の用紙を載置する底面、及び用紙を囲繞する周壁をそれぞれ有する給紙部と、用紙の積載量に伴って移動する可撓性の検知端子と、周壁の内周面に配設されており、検知端子に接触されることにより用紙の積載量が識別可能なパターンを有する基板とを具備する。
【0007】
第1の発明によれば、給紙部は、枚葉の用紙を厚み方向に積層して載置する底面と、この用紙を囲繞する周壁とを有しており、この周壁の内周面には、用紙の積載量が識別可能なパターンを有する基板が配設され、検知端子が用紙の積載量に伴ってパターンに接触して移動することにより用紙の積載量が識別可能になる。よって、従来の如く4個の位置センサ等を用いて用紙の積載量を識別する構成に比して、部品点数が削減されるし、製造コストの低廉化も達成可能になる。
しかも、従来の如く光束の方向が変わるとの懸念がなく、用紙の積載量の安定した識別も図られる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の構成において、底面には、用紙の積載量に伴って移動する昇降板が配設されており、検知端子は、昇降板に設置されていることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、検知端子は、用紙の積載量に伴って移動する昇降板に設置されていることから、用紙の積載量を最も正確に識別することができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明の構成において、給紙部は、大容量の用紙を収納可能に構成されており、基板は、昇降板の移動方向に向けて長尺状に形成されていることを特徴とする。
第3の発明によれば、第2の発明の作用に加えてさらに、これら基板や検知端子が大容量の用紙を収納する給紙部に用いられていれば、部品点数の削減や製造コストの低廉化がより一層顕著になる。
【0010】
第4の発明は、第1から第3の発明の用紙供給装置を搭載した画像形成装置であることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、少ないコストや安定した画像形成が可能になる結果、画像形成装置の信頼性向上に寄与する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構成の簡素化、製造コストの低廉化や給紙部の小型化が達成可能な用紙供給装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1には、画像形成装置の一例である複合機1の構造が概略的に示されている。なお、図中に実線で示された矢印は用紙の搬送経路及びその搬送方向を示している。
【0013】
同図に示されるように、複合機1の本体2の下部には用紙供給装置4が配置されている。本実施例の供給装置4は3段のカセットを有しており、まず、本体2の最下部には用紙カセット6が配置されている。このカセット6は、複合機1の正面側に向けて引き出し可能に構成されており、約500枚程度の用紙を積層状態で収容可能に構成されている。各用紙はカセット6から1枚ずつ分離され、右方向に向けて送出される。
【0014】
また、当該カセット6の上方には大容量の用紙を収容可能な用紙カセット(給紙部)5,5が配置されている。
詳しくは、これらカセット5,5は左右方向に沿って並設され、複合機1の正面側に向けて引き出し可能に構成されている。また、各カセット5は約1500枚程度の用紙を積層状態で収容可能に構成されており、各用紙はカセット5から1枚ずつ分離され、右方向に向けてそれぞれ送出される。
【0015】
供給装置4の右方には用紙搬送部8が配置されており、供給装置4から送出された用紙は本体2の右側面に沿って上方に向けて搬送される。次いで、この用紙は、本体2の内部で左側面へ向けて反転され、そのまま左側面に向けて搬送される。
【0016】
本体2の内部には、搬送部8からの用紙搬送方向でみて下流側にレジストローラ10、プリントエンジン14及び転写部20が順番に配置されている。このエンジン14の上方には光学部12が備えられており、この光学部12からはエンジン14の感光体ドラム16に向けてレーザ光が照射される。
【0017】
また、用紙搬送方向でみて転写部20の下流側には定着部22及び排出・分岐部24が順番に配置され、片面印刷の場合には、定着部22から排出された用紙は排出・分岐部24を経て用紙受けトレイ26に排出される。
一方、この排出・分岐部24と供給装置4との間には両面印刷用ユニット28が配置されており、このユニット28では定着部22から排出された用紙を用紙搬送部8に向けて搬送し、この用紙はエンジン14に再び送られる。
【0018】
ここで、本実施例の上述したカセット5は、図2に示されるように、複合機1の正面側に操作面31が設けられ、操作面31の適宜位置には取手32が形成されている。また、この操作面31の裏側には端面部34が形成されており、この端面部34の左右両端側には、複合機1の長手方向、つまり、複合機1の背面側に向けて側面部38,40が延設されている。
【0019】
これら側面部38,40は複合機1の背面側にて端面部(周壁)36で連結されており、これら端面部34,36及び側面部38,40で区画された領域内に枚葉の用紙が収納される。
より詳しくは、カセット5の最下部には底面30が設けられ(図3)、端面部34,36及び側面部38,40に固設されている。一方、この底面30の上側には昇降板44が配設されており、昇降板44は、端面部34,36及び側面部38,40に対して所定の間隙を有した遊嵌可能に構成され、この昇降板44に用紙が載置される。
【0020】
また、この昇降板44は、図示しないウインチ等を有する昇降機構に連結されており、用紙の積載量に伴って本体2の高さ方向、換言すれば、上下方向に向けて移動可能に構成されている。
ところで、本実施例では、複合機1の背面側に位置する上記端面部36にはプリント基板(基板)50が配設されている。
【0021】
具体的には、この基板50は、図3に示される如く、昇降板44の移動方向に沿って長尺状に形成されており、端面部36の内周面37に固定されている。
この基板50の表面には、用紙の残量を識別可能な識別パターン(パターン)52が形成されている。このパターン52は銅箔等の導電体をエッチング等の処理にて形成されており、本実施例では4個のパターンで構成される。
【0022】
より詳しくは、本実施例のパターン52は、基準パターン60、並びに、多残量用のパターン61、中残量用のパターン62、及び、少残量用のパターン63から構成されている。まず、基準パターン60は、同図にて基板50の最も右側に配置されており、上下方向に亘って連続して形成されている。
また、多残量用のパターン61は、同図にて基板50の最も左側に配置され、基板50の下方から約1/3程度の長さにて上方向に向けて形成されている。
【0023】
次に、中残量用のパターン62は、同図にてパターン61の右側に隣接して配置されており、このパターン61の上端から基板50の約1/3程度の長さにて上方向に向けて形成されている。さらに、少残量用のパターン63は、同図にてパターン62の右側、つまり、基準パターン60の左側に隣接して配置され、パターン62の上端から基板50の約1/3程度の長さにて上方向に向けて形成されている。
【0024】
そして、この内周面37に対峙する昇降板44の端面には導電性の接触子(検知端子)70が連結される。
具体的には、本実施例の接触子70は、図4や図5に示されるように、昇降板44に連結される固定部72と、固定部72から上方に向けて延びる弾性片74とを有している。
【0025】
この固定部72には例えば2個の孔73,73が穿設されており、各孔73に締結具80が挿入されることにより、接触子70は昇降板44に固定される。
一方、弾性片74は、その縦軸線が基板50に向けて凸状に湾曲して形成され、昇降板44の移動に連動して撓み、各パターン60〜63に接触可能に構成されている。
【0026】
再び図2に戻り、取手32を掴んでカセット5を複合機1の正面側に向けて引き出すと、残った用紙が外部に開けられ、新たな用紙が補充可能になる。次いで、ユーザは当該新たな用紙を手で掴み、その左手を切り欠き部41内に受容させる。そして、用紙は右端、つまり、側面部38に向けて揃えられて昇降板44の上方にセットされる。
【0027】
これにより、接触子70は、昇降板44とともに下方向に向けて移動し、残った用紙と新たな用紙とを合わせた残量に一致する所定のパターンを閉成する。仮に、その弾性片74がパターン60とパターン61とを電気的に接続した場合には、用紙の残量が多量である旨が識別され、その結果は図示しないコントローラに向けて出力される。
【0028】
そして、この供給装置4を搭載した複合機1では、例えばカセット5から用紙が1枚ずつ分離して送出され、この用紙は、用紙搬送部8を通ってレジストローラ10に到達する。このローラ10は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、プリントエンジン14で形成されるトナー画像とのタイミングを計りながら、用紙を転写部20へと送出する。
【0029】
また、図示しないコントローラからの画像データに基づき、複合機1では光学部12によるレーザ光の照射が制御される。これにより、エンジン14においてドラム16上に原稿画像の静電潜像が作られ、続いてこの潜像からドラム16上にトナー画像が形成され、用紙に転写される。その後、用紙は未定着トナー画像を担持した状態で定着部22に向けて送られ、この定着部22にて熱ローラによりトナー画像が定着される。次いで、定着部22から排出された用紙は排出・分岐部24を通ってトレイ26に排出される。
【0030】
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部22から排出された用紙はトレイ26に排出される直前にてユニット28側に引き戻され、この用紙は用紙搬送部8に合流し、再び転写部20に向けて送られる。そして、この場合には、用紙の未だ印刷がされていない方の面にトナー画像が転写される。
【0031】
ここで、用紙がカセット5から送出されると、昇降板44が上方向に向けて移動する。この昇降板44の上昇に伴い、仮に、接触子70の弾性片74がパターン60とパターン62とを閉成した場合には、用紙の残量が中量である旨が、その後、弾性片74がパターン60とパターン63とを閉成した場合には、用紙の残量が少量である旨がそれぞれ識別され、各結果は上記コントローラに向けて出力される。
【0032】
以上のように、本実施例によれば、カセット5は、枚葉の用紙を厚み方向に積層して載置する昇降板44を有する底面30と、この用紙の側端部分を囲繞する端面部34,36や側面部38,40を備えており、このうち、端面部36の内周面37には、用紙の残量が識別可能な識別パターン52を有するプリント基板50が配設され、接触子70が用紙の残量に伴ってパターン52に接触して移動することにより用紙の残量が識別可能になる。
【0033】
よって、従来の如く4個の位置センサや遮光板を用いて用紙の残量を識別する構成に比して、部品点数が削減されるし、製造コストの低廉化も達成可能になる。
しかも、従来の如く光束の方向が変わるとの懸念がなく、用紙の残量の安定した識別も図られる。さらに、各センサの配置角度等を合わせる作業も一切不要になる。
【0034】
さらにまた、接触子70が可撓性を利用して構成されているので、従来の如く各センサ等を配置させるための大きな空間が不要になり、カセット5の長手方向における接触子70と基板50との調整裕度が大きくなる。この結果、カセット5の小型化も図られる。
【0035】
また、接触子70は、用紙の残量に伴って移動する昇降板44に設置されていることから、用紙の残量を最も正確に識別することができる。
さらに、これら基板50や接触子70が大容量の用紙を収納するカセット5に用いられていれば、部品点数の削減や製造コストの低廉化がより一層顕著になる。
【0036】
さらにまた、少ないコストや安定した画像形成が可能になる結果、複合機1の信頼性向上にも寄与する。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0037】
例えば、上記実施例では、複合機1の背面側の端面部36に基板50が固定されているが、この端面部36に対峙する端面部34、或いは、側面部38,40に固定されていても良い。また、接触子70は昇降板44に直接に設けられていなくても良く、この昇降板44に連動する他の部材に設けられていても良い。さらに、本発明は、大容量の用紙を収容可能なカセット5に限定されない。つまり、約500枚程度の用紙を収容可能なカセット6に設けられていても良く、これらの場合にも上記と同様に、構成の簡素化及び製造コストの低廉化が達成されるとの効果を奏する。
【0038】
最後に、上記実施例では画像形成装置として複合機に具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は複写機、プリンタ、ファクシミリやスキャナ等自体にも当然に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例に係る複合機の概略構成図である。
【図2】図1の給紙部の斜視図である。
【図3】図2の給紙部における要部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図3や図4の検知端子の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 複合機(画像形成装置)
4 用紙供給装置
5 用紙カセット(給紙部)
30 底面
36 端面部(周壁)
37 内周面
44 昇降板
50 プリント基板(基板)
52 識別パターン(パターン)
70 接触子(検知端子)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に積層された枚葉の用紙を載置する底面、及び該用紙を囲繞する周壁をそれぞれ有する給紙部と、
前記用紙の積載量に伴って移動する可撓性の検知端子と、
前記周壁の内周面に配設されており、該検知端子に接触されることにより前記用紙の積載量が識別可能なパターンを有する基板と
を具備することを特徴とする用紙供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙供給装置であって、
前記底面には、前記用紙の積載量に伴って移動する昇降板が配設されており、
前記検知端子は、該昇降板に設置されていることを特徴とする用紙供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の用紙供給装置であって、
前記給紙部は、大容量の用紙を収納可能に構成されており、
前記基板は、前記昇降板の移動方向に向けて長尺状に形成されていることを特徴とする用紙供給装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の用紙供給装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7094(P2009−7094A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168971(P2007−168971)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】